(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症(ALS)を処置する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20230808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230808BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230808BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20230808BHJP
A61P 21/02 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10
C12N7/01 ZNA
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61P21/02
(21)【出願番号】P 2019562332
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(86)【国際出願番号】 US2018031880
(87)【国際公開番号】W WO2018208972
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
【住所又は居所原語表記】One Beacon Street,31st Floor,Boston,Massachusetts 02108
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アブダラ,アッバース
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/210372(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/109757(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/064600(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/057727(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/112132(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/167780(WO,A1)
【文献】Mochtar Pribadi et al.,CRISPR-Cas9 targeted deletion of the C9orf72 repeat expansion mutation corrects cellular phenotypes in patient-derived iPS cells,bioRxiv [online],2016年,インターネット<https://www.biorxiv.org/content/10.1101/051193v1>[検索日2022年6月2日]
【文献】Fang Liu et al.,Identification of a novel loss-of-function C9orf72 splice site mutation in a patient with amyotrophic lateral sclerosis,Neurobiology of Aging,2016年,Vol.47,pp.219.e1-219.e5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端リピート(ITR)を含む、C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする2以上のガイドRNA(gRNA)をコードする導入遺伝子を含む、単離された核酸であって、ここで、導入遺伝子は、配列番号1または配列番号2に示される配列を有する第1のgRNA、および配列番号
3に示される配列を有する第2のgRNAをコードする、前記単離された核酸。
【請求項2】
導入遺伝子が、配列番号1に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAをコードする、請求項
1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
導入遺伝子が、配列番号2に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAをコードする、請求項
1に記載の単離された核酸。
【請求項4】
AAV ITRが、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、またはAAV9 ITRである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項5】
導入遺伝子がプロモーターを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項6】
プロモーターがCBプロモーターである、請求項
5に記載の単離された核酸。
【請求項7】
(i)請求項1~
6のいずれか一項に記載の単離された核酸;および
(ii)少なくとも1のAAVカプシドタンパク質
から形成される、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)。
【請求項8】
カプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9から選択される血清型のものである、請求項
7に記載のrAAV。
【請求項9】
カプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質である、請求項
7または
8に記載のrAAV。
【請求項10】
(i)C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする2以上のガイドRNA(gRNA)、ここで、
2以上のgRNA
の1つは、配列番号1または配列番号2に示される配列を有し、
2以上のgRNA
の1つは、配列番号
3に示される配列を有する;および
(ii)2以上のgRNAと相互作用する組み換え遺伝子編集タンパク質
を発現する、哺乳動物の細胞。
【請求項11】
組み換え遺伝子編集タンパク質がCasタンパク質である、請求項
10に記載の哺乳動物の細胞。
【請求項12】
組み換え遺伝子編集タンパク質が、Cas9、Cas6、およびCpf1から選択されるCasタンパク質である、請求項
10または
11に記載の哺乳動物の細胞。
【請求項13】
配列番号1に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAを発現する、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の哺乳動物の細胞。
【請求項14】
配列番号2に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAを発現する、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の哺乳動物の細胞。
【請求項15】
(i)組み換え遺伝子編集タンパク質;および
(ii)C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする2以上のガイドRNA(gRNA)、ここで、
2以上のgRNA
の1つは、配列番号1または配列番号2に示される配列を有し、
2以上のgRNA
の1つは、配列番号
3に示される配列を有する;
をインビトロで細胞へ送達することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月9日に出願された米国仮出願第62/503,909号の出願日の35 U.S.C. 119(e)下の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳(上部運動ニューロン)および脊髄(下部運動ニューロン)の両方における運動ニューロンの進行性喪失を特徴とする致命的な神経変性疾患である。発症の平均年齢は50代後半~60代であり、患者は3~5年で死亡する。米国の現在の推定有病率は、50,000人に1人である。ALSは、疾患が遺伝するか否かに応じて2つのカテゴリに分類される。症例の約50~10%は家族性ALSであり、残りのパーセンテージは散発性ALSに該当する。SOD1の発見以来、25を超える遺伝子の突然変異がALSに関連している。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示の側面は、ALSを処置するための方法および組成物に関する。いくつかの側面は、C9orf72遺伝子の非コード領域での(GGGGCC)nリピート伸長に関連し、これは家族性(25~40%)と散発性(7%)の両方のALSの主な原因である。いくつかの態様において、リピート伸長は、低減したC9orf72転写産物レベルおよび/または低減したC9orf72遺伝子産物の活性または機能に起因するハプロ不全につながり得る。いくつかの態様において、リピート伸長は、核RNAフォーカス形成につながり得、これは、RNAおよびRNA結合タンパク質の隔離をもたらす。いくつかの態様において、リピート伸長は、リピート関連非ATG(RAN)翻訳を介して産生される毒性ジペプチドタンパク質につながり得る。本開示は、部分的に、C9orf72遺伝子における(GGGCC)nリピート伸長の切断、切除または分解を指示する遺伝子編集分子(例として、ガイドRNA(gRNA)、トランス活性化crRNA(tracrRNA)、等々のRNA、CRISPR/Casタンパク質、等々のタンパク質、およびRNAおよびCRISPR/Casタンパク質の複合体)に基づいている。結果的に、本開示のいくつかの側面は、C9ORF72ゲノム遺伝子座からのリピート伸長を編集(例えば、物理的消去)して遺伝子を正常または健康な状態に戻すことを伴うC9FTD/ALSを処置するための方法に関する。
【0004】
いくつかの態様において、本明細書で提供される方法は、CRISPR/Cas9誘導ゲノム編集または関連した系の使用を伴う。いくつかの態様において、CRISPR/Cas9は、ゲノムDNAの二本鎖切断を行うことができるヌクレアーゼとして機能する。いくつかの態様において、CRISPR/Cas9は、例として、標的配列に対して約20ヌクレオチドの相補性を有する関連ガイドRNAにより標的配列に導かれる。いくつかの態様において、本明細書で提供されるCRISPR/Cas9関連方法は、1以上のAAVベクターを介したガイドRNAとのCas9酵素の送達を伴う。
いくつかの態様において、本明細書で提供される方法は、C9orf72の特定の突然変異を有する患者のALSの原因を軽減する。本開示のさらなる側面は、エキソンのいずれにも影響を与えずにイントロン領域のリピート伸長を標的化するための方法(例として、遺伝子編集系(例として、CRISPR/Cas9)を使用する)に関する。いくつかの態様において、CRISPR Cas9系を使用してリピート領域の除去を指示することができるガイドRNAが開発された。いくつかの態様において、RNAガイドは、in vivo送達のためにrAAVベクター(例として、rAAV9ベクター)にパッケージ化される。いくつかの態様において、遺伝子編集は、培養中の一次ニューロンで生じる。いくつかの態様において、遺伝子編集は、動物のin vivo、例として、尾静脈注射を通じてマウスで生じる。
【0005】
結果的に、いくつかの側面において、本開示は、配列番号1~6のいずれか1つに示される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む単離された核酸を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、配列番号1~6のいずれか1つに示される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を有するガイドRNA(gRNA)をコードする核酸配列を含む単離された核酸を提供する。
いくつかの態様において、単離された核酸配列は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端リピート(ITR)に隣接する。いくつかの態様において、AAV ITRは、AAV2 ITR、AAV3 ITR、AAV4 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、またはAAV9 ITRである。
いくつかの側面において、本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端リピート(ITR)に隣接する、C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする、2以上のガイドRNA(gRNA)をコードする導入遺伝子を含む単離された核酸を提供する。
【0006】
いくつかの態様において、2以上のgRNAは、各々、配列番号1~4のいずれか1つに示される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含むかまたはそれらからなる。
いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号1に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAをコードする。いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号2に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAをコードする。
いくつかの態様において、導入遺伝子はプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、CBプロモーターである。
いくつかの側面において、本開示は、本開示により記載される単離された核酸;および少なくとも1のAAVカプシドタンパク質を含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供する。
いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、または上記のいずれかのバリアントから選択される血清型のものである。いくつかの態様において、カプシドタンパク質はAAV9カプシドタンパク質である。
【0007】
いくつかの側面において、本開示は、本開示により記載されるrAAV、および組み換え遺伝子編集タンパク質を含む組成物を提供する。。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、rAAVベクターによってコードされる。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、CRISPR/Casタンパク質、任意にCas9タンパク質である。
いくつかの側面において、本開示は、以下を発現する哺乳動物の細胞を提供する:C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする2以上のガイドRNA(gRNA);および2以上のgRNAと相互作用する組み換え遺伝子編集タンパク質。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、CRISPR/Casタンパク質である。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、Cas9、Cas6、およびCpf1から選択されるCasタンパク質である。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質はCas9である。
【0008】
いくつかの態様において、gRNAの各々は、配列番号1~4のいずれか1つに示される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む。
いくつかの態様において、哺乳動物の細胞は、各々C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする、2、3、または4のgRNAを発現する。
いくつかの態様において、哺乳動物の細胞は、配列番号1に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAを発現する。
いくつかの態様において、哺乳動物の細胞は、配列番号2に示される配列を有する第1のgRNAおよび配列番号3に示される配列を有する第2のgRNAを発現する。
いくつかの態様において、哺乳動物の細胞は、トランス活性化crRNA(tracrRNA)をさらに発現する。
いくつかの態様において、標的核酸配列は、C9ORF72遺伝子のエキソン1bとエキソン2との間の非タンパク質コード領域に位置するか、またはC9ORF72遺伝子のエキソン2とエキソン3との間の非タンパク質コード領域に位置する。
【0009】
いくつかの側面において、本開示は、以下を細胞へ送達することを含む方法を提供する:組み換え遺伝子編集タンパク質;およびC9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする2以上のガイドRNA(gRNA)。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質およびgRNAの細胞への送達は、細胞においてC9ORF72遺伝子の少なくとも1のアレルからのG4C2リピートの除去をもたらす。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質および/またはgRNAは、細胞においてタンパク質またはgRNAを発現するように操作された核酸を含む組み換えAAVベクターを使用して細胞へ送達される。
いくつかの態様において、細胞はin vivoである。いくつかの態様において、細胞は一次ニューロンである。
いくつかの態様において、組み換えAAVベクターは、AAV9カプシドタンパク質またはそのバリアントを含む。
いくつかの態様において、gRNAは、配列番号1~4から選択される配列またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む。
【0010】
いくつかの態様において、本開示は、C9ORF72遺伝子のエキソン領域に対して特異的にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA);およびgRNAと相互作用する組み換え遺伝子編集タンパク質を発現する哺乳動物の細胞を提供する。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、CRISPR/Casタンパク質である。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質は、Cas9、Cas6、およびCpf1から選択されるCasタンパク質である。いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質はCas9である。
いくつかの態様において、gRNAは、配列番号5または6に示される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む。
いくつかの態様において、哺乳動物の細胞はトランス活性化crRNA(tracrRNA)をさらに含む。
いくつかの態様において、gRNAおよび組み換え遺伝子編集タンパク質の相互作用は複合体の形成をもたらし、複合体のC9ORF72遺伝子への結合はC9ORF72遺伝子のナンセンス変異依存分解(non-sense mediated decay)をもたらす。
【0011】
いくつかの側面において、本開示は、細胞においてRNAフォーカスおよび/またはジペプチド形成を低減する方法を提供し、この方法は、C9ORF72遺伝子のエキソン領域に対して特異的にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)およびgRNAと相互作用する組み換え遺伝子編集タンパク質を含む組み換え遺伝子編集複合体を細胞において発現させることを含み、ここで、組み換え遺伝子編集複合体の細胞への送達は、前記遺伝子から転写されたC9orf72転写産物のナンセンス変異依存分解につながるC9ORF72遺伝子における挿入または欠失をもたらす。
いくつかの態様において、複合体の組み換え遺伝子編集タンパク質および/またはgRNA(単数または複数)は、細胞においてタンパク質またはgRNAを発現するように操作された核酸を含む組み換えAAVベクターを使用して細胞において発現される。
いくつかの態様において、細胞はin vivoである。いくつかの態様において、細胞は一次ニューロンである。
いくつかの態様において、組み換えAAVベクターはAAV9カプシドタンパク質またはそのバリアントを含む。
【0012】
いくつかの態様において、gRNAは、配列番号5または6から選択される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む。
いくつかの態様において、本開示は、以下を細胞へ送達することを含む方法を提供する:C9ORF72遺伝子の1以上のエキソン領域に対して特異的にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA);およびgRNAと相互作用する組み換え遺伝子編集タンパク質。
いくつかの態様において、前記方法は、C9ORF72遺伝子の同じエキソン内の種々の位置に対して特異的にハイブリダイズする2つのガイドRNAを細胞へ送達することをさらに含む。
いくつかの態様において、エキソン領域は、C9ORF72遺伝子のエキソン3内にある。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質および/またはgRNA(単数または複数)は、細胞においてタンパク質またはgRNAを発現するように操作された核酸を含む組み換えAAVベクターを使用して細胞へ送達される。
【0013】
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質およびgRNAの細胞への送達は、前記遺伝子から転写されたC9orf72転写産物のナンセンス変異依存分解につながるC9ORF72遺伝子における挿入または欠失をもたらす。
いくつかの態様において、gRNAは、配列番号5または6から選択される配列、またはそれらのいずれか1つに相補的な配列を含む。
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質はCrisper/Cas9タンパク質である。
いくつかの側面において、本開示は、細胞においてC9ORF72遺伝子の少なくとも1のアレルからG4C2リピートのすべてまたは一部を除去するか、または前記遺伝子から転写されたC9orf72転写産物のナンセンス変異依存分解をもたらす細胞におけるC9ORF72遺伝子のエキソン領域内の挿入または欠失を誘導するように構成された組み換え遺伝子編集複合体を提供する。
いくつかの態様において、本開示は、以下を細胞へ送達することを含む方法を提供する:C9ORF72遺伝子のG4C2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする1以上のガイドRNA(gRNA);またはC9ORF72遺伝子の1以上のエキソン領域に対して特異的にハイブリダイズする1以上のガイドRNA(gRNA)。
いくつかの態様において、細胞は、1以上のガイドRNA(gRNA)に結合する組み換え遺伝子編集タンパク質を発現する。
図面の簡単な記載
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1A~1Cは、例1に記載のガイドRNAを示す。
図1Aは、G
4C
2伸長リピートを取り巻くヒトC9orf72(NG_031977.1)遺伝子配列を示す。RNAr9(「gr-r9」または「gRNA2」とも称される)、f11(「gr-f11」または「gRNA3」とも称される)、およびr1=(「gr-r1」または「gRNA4」とも称される);PCRプライマーC9Var1-fおよびC9In1-R。
【
図1B-C】
図1Bは、(GGGCC)
n伸長を含むC9領域の概略図を示す。G
4C
2のリピート伸長、非コードエキソン2、RNAガイドgr-r9、gr-r1、およびgr-f11、編集プライマーC9Var1-fおよびC9Ind1-R、非編集フォワードプライマーNoE-F1、およびリピートプライムPCR(repeat primed PCR)プライマーRP-PCR-Rが示されている。
図1Cは、HEK293細胞におけるgRNAの設計および試験を示す。リピート伸長はエキソン2に近いため、3’末端の唯一の効率的なガイドはエキソン2(これは翻訳されず)にもまたがるであろう。HEK293細胞では、「GGGGCC」リピートは3つしかなく、編集が成功すると、示された2つのプライマーを使用して、PCR産物のサイズが520bpからほぼ315bpに低減されるであろう。2-3および2-4のgRNAの組み合わせを含むベクターが最も効率的であり、続いてAAV9カプシドタンパク質にパッケージ化された。
【0015】
【
図2A】
図2A~2Bは、Cas9媒介C9orf72 G
4C
2編集についてのデータを示す。
図2Aは、C9Var1-fおよびC9In1-Rプライマーによって増幅されたPCR産物のアガロース電気泳動を示す。未編集のPCR産物のサイズは523bpである;gRNA1および4(f1+r1)およびgRNA1および3(f1+f11)についての編集されたPCR産物のサイズは約250bpである;gRNA2および3(r9+f11)およびgRNA2および4(r9+r1)による編集されたPCR産物は約320bp(+/-インデルを有するいくつかの塩基対)である。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aから抽出されたPCR産物ゲルの配列のアラインメントを示す(矢印で表示)。
【0016】
【
図3】
図3は、マウス一次ニューロンにおけるCas9媒介C9orf72 G
4C
2編集を示す。C9Var1-fおよびC9In1-Rプライマーによって増幅されたPCR産物のアガロース電気泳動。編集されたPCR産物はほぼ320bpに見えるが、未編集のDNAは増幅されない。
【
図4】
図4は、Cas9媒介C9orf72 G
4C
2のin vivo編集を通常のPCRを通じて確認したことを示す。同じウェルで組み合わせたC9Var1-fおよびC9In1-RプライマーまたはNoE-F1およびC9In1-Rによって増幅されたPCR産物のアガロース電気泳動。編集されたPCR産物は約320bpであるが、未編集のPCR産物は約120bpである。
【0017】
【
図5A】
図5A~5Dは、リピートプライムPCRを通じて確認されたCas9媒介C9orf72 G
4C
2のin vivo編集を示す。リピートプライムPCR産物の電気泳動図をフラグメントアナライザーにかけ、ピークスキャナーソフトウェアを使用してプロットした。PCR反応は、AAV9 SOD1ガイドRNA(
図5A)、r9-r1に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5B)、r9-f11に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5C)のいずれかを尾静脈に注射したBAC436マウスまたはヒトC9を発現しない未注射の野生型C57BLマウス(
図5D)からのDNAを使用して実行した。
【
図5B】
図5A~5Dは、リピートプライムPCRを通じて確認されたCas9媒介C9orf72 G
4C
2のin vivo編集を示す。リピートプライムPCR産物の電気泳動図をフラグメントアナライザーにかけ、ピークスキャナーソフトウェアを使用してプロットした。PCR反応は、AAV9 SOD1ガイドRNA(
図5A)、r9-r1に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5B)、r9-f11に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5C)のいずれかを尾静脈に注射したBAC436マウスまたはヒトC9を発現しない未注射の野生型C57BLマウス(
図5D)からのDNAを使用して実行した。
【
図5C】
図5A~5Dは、リピートプライムPCRを通じて確認されたCas9媒介C9orf72 G
4C
2のin vivo編集を示す。リピートプライムPCR産物の電気泳動図をフラグメントアナライザーにかけ、ピークスキャナーソフトウェアを使用してプロットした。PCR反応は、AAV9 SOD1ガイドRNA(
図5A)、r9-r1に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5B)、r9-f11に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5C)のいずれかを尾静脈に注射したBAC436マウスまたはヒトC9を発現しない未注射の野生型C57BLマウス(
図5D)からのDNAを使用して実行した。
【
図5D】
図5A~5Dは、リピートプライムPCRを通じて確認されたCas9媒介C9orf72 G
4C
2のin vivo編集を示す。リピートプライムPCR産物の電気泳動図をフラグメントアナライザーにかけ、ピークスキャナーソフトウェアを使用してプロットした。PCR反応は、AAV9 SOD1ガイドRNA(
図5A)、r9-r1に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5B)、r9-f11に隣接するAAV9-CB-GFP-C9gR(
図5C)のいずれかを尾静脈に注射したBAC436マウスまたはヒトC9を発現しない未注射の野生型C57BLマウス(
図5D)からのDNAを使用して実行した。
【0018】
【
図6A】
図6A~6Cは、例2に記載された代表的なデータを示す。
図6Aは、エキソン3のヒトC9orf72遺伝子配列を示す。ナンセンス変異依存分解(NMD)ガイドRNA1rおよび2fの場所およびPCRインデル分析プライマーC9NMDインデルF1およびR1の場所および配列が示されている。
【
図6B-C】
図6Bは、C9NMD-インデルF1およびR1のPCRプライマーによって増幅されたPCR産物のアガロースゲル電気泳動を示す。HEK293T細胞にLV-SpCas9(対照)またはLV-NMDgR-SpCas9プラスミド(2μg)を3連でトランスフェクトした。
図6Cは、
図6Bからの細胞におけるC9orf72 RNAレベルのデジタル液滴PCR(ddPCR)分析を示す。C9orf72のすべてのバリアントは、この特定のプローブ-プライマーセットで検出さる。(インプットRNA-試料当たり10ng)
*p<0.001。
【0019】
【
図7】
図7は、尾静脈を介して注射されたマウスにおける遺伝子編集の代表的なデータを示す。ガイド鎖は、C9/Cas9の両方を発現するBAC111マウスの尾静脈注射を通じて試験され、それらがin vivoで機能的であるかどうかを決定した。注射したマウスの肝臓を解剖し、ゲノムDNAを抽出し、2つのPCR反応を実行した。上部パネルは、遺伝子編集がgRNA2-4およびgRNA2-3の注射後に生じ、PBSまたはSOD1-gRNAの注射後に生じないことを示す。下部パネルに示すように、1つの反応(プライマーC9Var1FおよびC9IndRを使用)は、編集されたDNAのみを増幅する。これは、リピートがGCリッチであり、ポリメラーゼがリピートを通じて増幅できないためである。よって、バンドは編集されたDNAを示す。他の反応(プライマーNoE-F1およびC9IndRを使用)は、未編集のDNAのみを増幅できる。
【0020】
【
図8A-B】
図8A~8Bは、C9orf72およびCas9を発現するBAC111からの培養した一次ニューロンにおける遺伝子編集を示す。
図8Aは、PBS、AAV9-ssGFP、AAV9-ROSA-tRFP、AAV9-gRNA2および3、またはAAV9-gRNA2-4に感染したニューロンの蛍光顕微鏡写真を示す。
図8Bは、C9Var1-FおよびNoER2プライマーで増幅された培養したニューロンからの編集されたDNAのPCR増幅、ならびにプライマーNoE-F1およびNoER2を使用した非編集DNAの増幅を示す。編集された試料では、プライマーの第2セットによって増幅されたバンドの強度は有意に低くなった。
【
図9】
図9は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によるC9/Cas9を発現するBAC111マウスから単離された一次培養ニューロンからの未編集DNAに結合したgRNAの直接可視化および定量化を示す。未編集の細胞のほぼ55~60%が10を超えるフォーカスを持つ多くのフォーカスを有する。編集された細胞は、細胞の約35~40%にフォーカスを示し、フォーカスの数も劇的に低減した。
【0021】
【
図10A-B】
図10A~10Bは、Cas9ではなくC9orf72を発現するBAC111からの培養一次ニューロンにおける遺伝子編集を示す。
図10Aは、Cas9、AAV9-ssGFP+Cas9、AAV9-ROSA-tRFP+Cas9、AAV9-gRNA2-3+Cas9、またはAAV9-gRNA2-4+Cas9に感染したニューロンの蛍光を示す。
図10Bは、C9Var1-FおよびNoER2で増幅された培養ニューロンからの編集されたDNAのPCR増幅を示す。増幅バンドは、編集された細胞(例として、AAV9-gRNA2-3+Cas9、またはAAV9-gRNA2-4+Cas9で処理された細胞)でのみ生じる。
【
図11】
図11は、FISHによる、C9を発現するBAC111マウスから単離された一次培養ニューロンからの未編集DNAに結合したgRNAの直接的な視覚化および定量化を示す。未編集のとき(Cas9のみ、一本鎖GFP、ROSA)、細胞のほぼ55~60%がフォーカスを有する。編集された細胞は35~40%に低減した。両方のgRNAペアは、有意に異なる減少をもたらす。
【0022】
【
図12】
図12は、PBS、SOD gRNA(対照)、R9-r1(gRNA2および4)、またはR9-f11(gRNA2および3)を注射したC9/Cas9を発現するBAC111マウスにおけるin vivoでの遺伝子編集を示す。8週間後に採取した脳、筋肉、および肝臓の組織試料は、各々、gRNA2および3およびgRNA2および4ガイドによる遺伝子編集を示したが、PBSおよび対照SOD gRNAによるものは示さなかった。
【
図13】
図13は、p1-2で顔面に注射されたCAC111マウスの前頭切断のFISHデータ(センス方向)を示す。上部パネルは、未処理および対照細胞と比較した編集された細胞におけるフォーカスの数の減少を示す蛍光顕微鏡写真を示す。下部のパネルは、ヘテロ接合体およびホモ接合体マウスで低減が一貫していることを示すデータを示す。
【0023】
【
図14A-1】
図14A~14Bは、BalohおよびBAC111マウスにおける定位線条体脳注射を通じた遺伝子編集を示す。
図14Aは、注射部位および組織の単離に使用された脳スライスを示す。
【
図14A-2】
図14Aは、注射部位および組織の単離に使用された脳スライスを示す。
【
図14B】
図14Bは、PBS+Cas9、ROSA-tRFP+Cas9、gRNA2および3+Cas9、gRNA2および4+Cas9の注射が、Baloh C9マウスおよびBAC111 C9/Cas9マウスにおける遺伝子編集を促進することを示す。
【0024】
詳細な記載
家族性ALS患者の遺伝的連鎖分析を通じて、いくつかの遺伝子がALSのリスク因子であることが同定されている。染色体9オープンリーディングフレーム72(C9orf72)の最初のイントロンでは、GGGGCCヘキサヌクレオチドからなる大きなリピート伸長が家族性ALS患者の家族において同定されている。これらのマイクロサテライト伸長は双方向に転写され、センスおよびアンチセンス転写産物の両方を生成する。RNA転写産物は、RNAフォーカスとして脳における影響を受ける領域の核に蓄積し、その上、転写産物のリピート関連の非ATG(RAN)翻訳は、影響を受ける領域内のニューロン細胞質においてジペプチド凝集体の生成をもたらす。ジペプチドおよびRNAフォーカスが毒性であり、核細胞質輸送、オートファジー、および免疫応答を混乱させ得ることを示す証拠がある。
【0025】
本明細書に提供されるのは、GGGGCC(例として、G4C2)リピート伸長を低減または除去(例として、完全に除去)するのに有用な方法および関連する組成物である。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法は、それぞれ核および細胞質におけるRNAフォーカスおよびジペプチド凝集体の蓄積を低減する。これを達成するために、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼおよびC9orf72遺伝子の種々の領域を標的とするガイドRNAを伴う遺伝子編集アプローチが、いくつかの態様において使用された。いくつかの態様において、in vitroおよびin vivoのマウスモデルの両方でGGGGCCリピートを切除する戦略が概説されている。
【0026】
遺伝子編集分子
いくつかの側面において、本開示は、以下を含む組み換え遺伝子編集複合体を提供する:組み換え遺伝子編集タンパク質、および、GGGGCCリピート伸長のすべてまたは一部を切除するのに有用なC9ORF72遺伝子座内の標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)をコードする核酸。
本明細書に使用されるとき、「遺伝子編集複合体」は、例えば、標的DNAに1以上の二本鎖切断(DSB)を引き起こすことによってゲノム配列(例として、遺伝子配列)を追加、破壊または変化するように構成された生物学的に活性な分子(例として、タンパク質、1以上のタンパク質、核酸、1以上の核酸、または上記の任意の組み合わせ)を指す。遺伝子編集複合体の例は、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、操作されたメガヌクレアーゼ再操作ホーミングエンドヌクレアーゼ(engineered meganuclease re-engineered homing endonuclease)、CRISPR/Cas系、およびメガヌクレアーゼ(例として、メガヌクレアーゼI-SceI)を含む。いくつかの態様において、遺伝子編集複合体は、Cas9、Cas6、Cpf1、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化crRNA(tracrRNA)、およびそのバリアントを含むが、これらに限定されないCRISPR/Cas系に関連するタンパク質または分子(例として、組み換え遺伝子編集タンパク質)を含む。
【0027】
いくつかの態様において、組み換え遺伝子編集タンパク質はヌクレアーゼである。本明細書に使用されるとき、「エンドヌクレアーゼ」および「ヌクレアーゼ」という用語は、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合(単数または複数)を切断する酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然に存在するものでも、遺伝子操作されたものでもよい。遺伝子操作されたヌクレアーゼはゲノム編集に特に有用であり、一般に4つのファミリーに分類される:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ(例として、操作されたメガヌクレアーゼ)およびCRISPR関連タンパク質(Casヌクレアーゼ)。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはZFNである。いくつかの態様において、ZFNはFokI切断ドメインを含む。いくつかの態様において、ZFNはCys2His2フォールド基(fold group)を含む。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはTALENである。いくつかの態様において、TALENはFokI切断ドメインを含む。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼの例は、I-SceI、I-CreI、I-DmoI、およびそれらの組み合わせ(例として、E-DreI、DmoCre)を含むが、これらに限定されない。
【0028】
「CRISPR」という用語は、「クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドロームのリピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)」を指し、これは塩基配列の短いリピートを含むDNA遺伝子座である。CRISPR遺伝子座は、外来の遺伝物質に対する耐性を付与する原核生物の適応免疫系の一部を形成する。各CRISPR遺伝子座は、ウイルスゲノム材料に由来する「スペーサーDNA」の短いセグメントに隣接されている。II型CRISPR系では、スペーサーDNAはトランス活性化RNA(tracrRNA)にハイブリダイズし、CRISPR-RNA(crRNA)に処理され、続いてCRISPR関連ヌクレアーゼ(Casヌクレアーゼ)と結合して、外来のDNAを認識および分解する複合体を形成する。ある態様において、ヌクレアーゼは、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Casヌクレアーゼ)である。CRISPRヌクレアーゼの例は、Cas9、dCas9、Cas6、Cpf1、およびそれらのバリアントを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、ヌクレアーゼはCas9である。いくつかの態様において、Cas9は、化膿連鎖球菌(例として、SpCas9)または黄色ブドウ球菌(例として、SaCas9)に由来する。いくつかの態様において、Casタンパク質またはそのバリアントは、例えばRan et al. (2015) Nature. 520(7546); 186-91によって記載されているように、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターのパッケージ化能力を超えない。例えば、いくつかの態様において、Casタンパク質をコードする核酸は約4.6kb未満の長さである。
【0029】
ゲノム編集の目的のために、CRISPR系は、単一のガイドRNA(sgRNA)または単なる(gRNA)においてtracrRNAおよびcrRNAを組み合わせるように改変され得る。本明細書に使用されるとき、「ガイドRNA」、「gRNA」、および「sgRNA」という用語は、細胞において標的配列に相補的であり、Casヌクレアーゼと結合し、それによりCasヌクレアーゼを標的配列に導くポリヌクレオチド配列を指す。いくつかの態様において、gRNA(例として、sgRNA)は、1と30との間のヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、gRNA(例として、sgRNA)は5と25との間のヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、gRNA(例として、sgRNA)は10と22との間のヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、gRNA(例として、sgRNA)は14と24との間のヌクレオチド長の範囲である。いくつかの態様において、Casタンパク質およびガイドRNA(例として、sgRNA)は同じベクターから発現される。いくつかの態様において、Casタンパク質およびガイドRNA(例として、sgRNA)は別個のベクター(例として、2以上のベクター)から発現される。
【0030】
典型的には、ガイドRNA(例として、gRNAまたはsgRNA)は、標的配列にハイブリダイズ(例として、例えばワトソン-クリック塩基対によって特異的に結合)し、そしてCRISPR/Casタンパク質または単純なタンパク質を標的配列に誘導する。いくつかの態様において、ガイドRNAは、例としてC9ORF72遺伝子座内の核酸配列にハイブリダイズする(例として、標的化する)。いくつかの態様において、ガイドRNAは、遺伝子のセンス鎖(例として、5’-3’鎖)上の標的配列にハイブリダイズする。いくつかの態様において、ガイドRNAは、遺伝子のアンチセンス鎖(例えば、3’-5’鎖)上の標的配列にハイブリダイズする。
いくつかの側面において、本開示は、C9ORF72遺伝子のG
4C
2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)に関する。本明細書に使用されるとき、「G
4C
2リピートの反対側に隣接する」は、G
4C
2リピートに関して上流(例えば、5’)である標的核酸配列の第1の部分と、G
4C
2リピート(および第1の部分も)に関して下流(例として、3’)である標的核酸配列の第2の部分を指す。例えば、gRNA-R9およびgRNA-R1は、
図1Aに示されるように、G
4C
2リピートの反対側に隣接する標的核酸配列に対して特異的にハイブリダイズする一対のgRNAを表す。
【0031】
いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピート(例として、最初のGGGGCC単位のリピート)に関して上流(例として、5’)の1ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間(例として、1と1000との間の任意の整数)に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して上流(例として、5’)の10ヌクレオチドと800ヌクレオチドとの間に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して上流(例として、5’)の200ヌクレオチドと700ヌクレオチドとの間に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して上流(例として、5’)の1000ヌクレオチド超(例として、1500、2000、2500、または5000以上)の間に位置する。
いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピート(例として、最後のGGGGCC単位のリピート)に関して下流(例として、3’)の1ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間(例として、1と1000との間の任意の整数)に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して下流(例として、3’)の10ヌクレオチドと800ヌクレオチドとの間に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して下流(例として、3’)の200ヌクレオチドと700ヌクレオチドとの間に位置する。いくつかの態様において、G4C2リピートに隣接する配列は、G4C2リピートに関して下流(例として、3’)の1000ヌクレオチド超(例えば、1500、2000、2500、または5000以上)の間に位置する。
【0032】
処置の方法
いくつかの側面において、本開示は、ALSを有するかまたはALSを有するリスクがある対象を処置する方法を提供する。対象は、ヒト、非ヒト霊長目の動物、ラット、マウス、ネコ、イヌ、または他の哺乳動物であり得る。
本明細書に使用されるとき、「処置」、「処置する」、および「治療」という用語は、治療的処置および予防的または防止的操作を指す。前記用語は、既存の兆候の改善、追加の兆候の予防、兆候の根本原因の改善または予防、兆候、例えばALSに関連する兆候の予防または逆転をさらに含む。よって、前記用語は、ALSを有する対象、またはかかる障害を発症する可能性のある対象に有益な結果が付与されたことを示す。さらにまた、処置は、疾患、疾患の兆候、または疾患に対する素因を治癒(cure)すること、治癒(heal)すること、軽減すること、緩和すること、変更すること、治療すること、改善すること、改良すること、またはこれに影響を与えることを目的として、薬剤(例として、治療剤または治療組成物)の、対象、または疾患、疾患の兆候または疾患に対する素因を有し得る対象からの単離された組織または細胞株への適用または投与を含み得る。
【0033】
治療剤または治療組成物は、特定の疾患(例として、ALS)の兆候を予防および/または低減する薬学的に許容し得る形態の化合物、ベクター、等々を含んでもよい。例えば、治療用組成物は、ALSの兆候を予防および/または低減する医薬組成物であり得る。いくつかの態様において、本開示は、本開示により記載される遺伝子編集複合体の1以上の構成要素または前記遺伝子編集複合体をコードする1以上の構成要素、例として、本開示により記載されるベクターを含む組成物(例として、治療組成物)を提供する。いくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。本発明の治療組成物は、任意の好適な形態で提供されるだろうと考えられる。治療組成物の形態は、本明細書に記載の投与の様式を含む数多くの因子に依存するだろう。治療組成物は、本明細書に記載の他の成分の中でも、希釈剤、アジュバント、および賦形剤を含んでもよい。
【0034】
医薬組成物
いくつかの側面において、本開示は、遺伝子編集複合体を含む医薬組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、遺伝子編集複合体および薬学的に許容し得る担体を含む。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容し得る担体」という用語は、薬学的投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むものとする。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、本明細書に記載されるように調製され得る。活性成分は、任意の従来の薬学的に許容し得る担体または賦形剤と混合または配合され得る。組成物は滅菌されたものであってもよい。
【0035】
典型的には、医薬組成物は、有効量の薬剤(例として、遺伝子編集複合体)を送達するために処方される。一般に、活性剤の「有効量」は、所望される生物学的応答を誘発するのに充分な量を指す。薬剤の有効量は、所望される生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置中の疾患(例として、ALS)、投与の様式、および患者などの因子に応じて変わり得る。
組成物は、レシピエント患者がその投与に耐えられる場合、「薬学的に許容し得る担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は、薬学的に許容し得る担体の一例である。他の好適な担体は、当該技術分野において周知である。本開示の医薬組成物を調製および投与するために、従来使用され、活性剤に対して不活性である任意の投与の様式、ビヒクルまたは担体が利用され得ることは当業者に理解されるであろう。
化合物(例えば、本開示により記載される遺伝子編集複合体またはベクター)の治療有効量とも称される有効量は、状態(例えば、ALS)に関連する少なくとも1の副作用を改善するのに充分な量である。ウイルスベクターの場合、各剤形に一定量の活性剤を含めて、対象当たり約1010、1011、1012、1013、1014、または1015ゲノムコピーの間のものを提供することができる。当業者は、適切な治療有効量を経験的に決定することができるだろう。
【0036】
好適な液体または固体の医薬製剤の形態は、例えば、吸入用の水溶液または生理食塩水であり、マイクロカプセル化され、渦巻き状であり、微小金粒子へコーティングされ、リポソームへ包含され、噴霧され、エアロゾルであり、皮膚への埋め込み用ペレットであり、または皮膚に傷を付けて入れるために鋭利な物体上で乾燥させてある。医薬組成物は、顆粒、粉末、錠剤、コートされた錠剤、(マイクロ)カプセル、座薬、シロップ、エマルション、懸濁液、クリーム、ドロップまたは活性化合物の持続放出を伴う製剤も含み、その調製において、賦形剤および添加剤および/または崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味料、甘味料または可溶化剤などの補助剤が上記のように慣習的に使用される。
組成物は、単位剤形で便利に提供され得る。すべての方法は、化合物を1以上の補助成分を構成する担体と結合させるステップを含む。一般に、組成物は、化合物を液体担体、微粉化した固体担体、またはその両方と均一かつ密接に結合させ、次いで、必要に応じて産物を成形することにより調製される。いくつかの態様において、液体用量単位はバイアルまたはアンプルである。いくつかの態様において、固体用量単位は、錠剤、カプセルおよび坐剤である。
【0037】
投与の様式
いくつかの態様において、本開示により記載される遺伝子編集複合体またはベクターの治療有効量は、標的組織または標的細胞へ送達される。遺伝子編集複合体またはベクター、および/または他の化合物を含む医薬組成物は、薬剤を投与するための任意の好適な経路によって投与され得る。非経口、静脈内、くも膜下腔内、頭蓋内、皮内、筋肉内または皮下、または経皮を含む様々な投与経路が利用可能である。本開示の方法は、一般的に言えば、医学的に許容し得る任意の投与の様式、すなわち臨床的に許容し得ない副作用を引き起こさずに治療効果をもたらす任意の様式を使用して実施され得る。様々な投与の様式が本明細書で議論されている。治療で使用するために、有効量の遺伝子編集複合体またはベクター、および/または他の治療剤は、薬剤を所望される組織、例として、全身、筋肉内、等々に送達する任意の様式で対象に投与され得る。いくつかの態様において、本開示により記載される遺伝子編集複合体またはベクターは、筋肉内(IM)注射を介してまたは静脈内で対象に投与される。
【0038】
いくつかの態様において、遺伝子編集複合体(例として、遺伝子編集複合体の1以上の構成要素をコードする核酸)は、遺伝子編集複合体を発現するように操作された発現ベクターを介して細胞へ送達され得る。発現ベクターは、調節配列に作動可能に連結され、RNA転写産物として発現され得るように、例として制限(restriction)およびライゲーションにより、所望される配列が挿入され得るものである。発現ベクターは、典型的には、タンパク質(例として、CRISPR/Casタンパク質などの遺伝子編集タンパク質)またはガイドRNA(gRNA、sgRNA、等々)などのポリヌクレオチドのコード配列であるインサートを含む。ベクターは、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされたまたはされていない細胞の同定における使用に好適な1以上のマーカー配列をさらに含み得る。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する耐性または感受性のいずれかを増加または減少させるタンパク質をコードする遺伝子、活性が標準的なアッセイまたは蛍光タンパク質によって検出可能な酵素をコードする遺伝子、等々を含む。
【0039】
本明細書に使用されるとき、コード配列(例として、タンパク質コード配列、miRNA配列、shRNA配列)および調節配列は、それらがコード配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に配置するように共有結合されるとき、「作動可能」に結合すると言われる。コード配列を機能性タンパク質に翻訳することが所望される場合、5’調節配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、2つのDNA配列間の結合の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)コード配列の転写を指示するプロモーター領域の能力に干渉しない、または(3)対応するRNA転写産物のタンパク質に翻訳される能力に干渉しない場合、2つのDNA配列は作動可能に結合すると言われる。よって、プロモーター領域がそのDNA配列の転写を行うことができ、その結果得られる転写産物が所望されるタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得る場合、プロモーター領域はコード配列に作動可能に結合されるだろう。コード配列は機能的RNAをコードし得ることが理解されるだろう。
【0040】
遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種または細胞型間で変わり得るが、一般に、必要に応じて、転写および翻訳の開始にそれぞれ関与する、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、5’非転写配列および5’非翻訳配列を含む。かかる5’非転写調節配列は、作動可能に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含むだろう。しかしながら、いくつかの態様において、ベクターはプロモーター配列を含まない。調節配列は、所望されるとき、エンハンサー配列、上流アクチベーター配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、および/または自己プロセシングペプチド配列(例として、2Aペプチド)も含み得る。本開示のベクターは、任意に5’リーダーまたはシグナル配列を含み得る。
【0041】
いくつかの態様において、核酸分子を送達するためのウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、等々からなる群から選択される。いくつかの態様において、ウイルスベクターは組み換えアデノ随伴ウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、広範な細胞型および種に感染することができ、複製欠損になるように操作され得る。さらに、それは、熱および脂質溶媒の安定性、造血細胞を含む多様な系統の細胞での高い形質導入頻度、複数のシリーズの形質導入を可能にする重複感染阻害の欠如などの利点を有する。アデノ随伴ウイルスは、部位特異的な様式でヒト細胞DNAに組み込まれ、それにより挿入変異誘発の可能性および挿入遺伝子発現の変動性を最小限にすることができる。アデノ随伴ウイルスは染色体外でも機能し得る。
いくつかの態様において、組み換えAAVベクター(rAAV)は、少なくとも、導入遺伝子コード配列(例として、Casタンパク質またはgRNAなどの遺伝子編集タンパク質をコードする核酸配列)および2つのAAV逆位末端リピート(ITR)配列に隣接するその関連調節配列を含む。調節配列の例は、プロモーター(例として、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーター)、エンハンサー配列、等々を含む。いくつかの態様において、ITR配列は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9 ITR配列、またはそのバリアントである。
【0042】
いくつかの態様において、遺伝子編集複合体のすべてまたは一部をコードする核酸(例として、遺伝子編集タンパク質、gRNA、またはその両方をコードする核酸配列)を含むrAAVベクターは、組み換えAAV(rAAV)にパッケージ化される。典型的には、AAVベクターは、1以上のAAVカプシドタンパク質を含むウイルス粒子にパッケージ化される。いくつかの態様において、AAVカプシドは、これらの組織特異的な標的化能力を決定する際の重要な要素である。よって、標的とされる組織に適切なカプシドを有するrAAVが選択され得る。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39、およびAAVrh.43またはそれらのいずれか1つの好適なバリアントから選択される血清型を有する。。いくつかの態様において、rAAVは、神経細胞を標的とするカプシドタンパク質を含む。
【0043】
いくつかの態様において、他の有用なウイルスベクターは、必須でない遺伝子が目的の遺伝子で置き換えられた非細胞変性の真核生物ウイルスに基づく。非細胞変性ウイルスは、あるレトロウイルスを含み、その生活環は、ゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写と、それに続く宿主細胞DNAへのプロウイルスの組み込みを伴う。一般に、レトロウイルスは複製欠損である(例として、所望される転写産物の合成を指示することはできるが、感染性粒子を産生することはできない)。かかる遺伝的に改変されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの遺伝子の高効率形質導入に一般的な有用性を有する。複製欠損レトロウイルスを産生するための標準的なプロトコル(外因性遺伝物質のプラスミドへの組み込みのステップ、プラスミドでのパッケージ化細胞株のトランスフェクションのステップ、パッケージ化細胞株による組み換えレトロウイルスの産生のステップ、組織培養培地からのウイルス粒子の収集のステップ、および標的細胞へのウイルス粒子の感染のステップを含む)は、Kriegler, M., "Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual," W.H. Freeman Co., New York (1990) and Murry, E.J. Ed. "Methods in Molecular Biology," vol. 7, Humana Press, Inc., Clifton, New Jersey (1991)に提供されている。いくつかの態様において、遺伝子編集複合体(例として、遺伝子編集タンパク質、gRNA、またはその両方をコードする核酸配列)は、レンチウイルスベクターによって細胞(例として、対象の細胞)へ送達される。
【0044】
本開示の核酸分子を細胞に導入するために、核酸分子がin vitroで導入されるかまたはin vivoで宿主に導入されるかに応じて、様々な技法が用いられ得る。かかる技法は、核酸分子-リン酸カルシウム沈殿物のトランスフェクション、DEAEに関連する核酸分子のトランスフェクション、目的の核酸分子を含む上記のウイルスによるトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなどを含む。他の例は、以下を含む:Sigma-AldrichによるN-TER(商標)Nanoparticle Transfection System、Polyplus TransfectionによるFectoFly(商標)transfection reagents for insect cells、Polysciences, Inc.によるPolyethylenimine "Max"、 Cosmo Bio Co., Ltd.によるUnique, Non-Viral Transfection Tool、InvitrogenによるLipofectamine(商標)LTX Transfection Reagent、StratageneによるSatisFection(商標)Transfection Reagent、InvitrogenによるLipofectamine(商標)Transfection Reagent、Roche Applied ScienceによるFuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent、Polyplus TransfectionによるGMP compliant in vivo-jetPEI(商標)transfection reagent、およびNovagenによるInsect GeneJuice(登録商標)Transfection Reagent。
【0045】
例
例1:G
4C
2伸長の切除
HEK細胞における戦略設計および試験。
この例は、CRISPR/Cas9系を使用したC9Orf72におけるG
4C
2伸長リピートの除去について説明する。G
4C
2伸長の隣接領域を標的とするいくつかのガイドRNAを設計した。G
4C
2伸長およびガイドRNAを
図1Aに示す。本明細書に記載の顕著な編集を達成することに成功したと決定したガイドを示す。遺伝子編集イベントを試験するために、リピート伸長およびガイドにまたがる2つのプライマー、C9Var1-FおよびC9In1-Rを設計した(
図1A~1C)。これらのプライマーは数回のリピートで増幅できるが、一般にBAC436マウスモデルに存在する45~60のリピートでは増幅しないだろう。BAC436モデルで編集がないことを検出するために、C9In1-R-と結合して未編集DNAの約120bpバンドを増幅できるNoE-F1プライマーを設計した(
図1B~1C)。リピート内のGGGGCC配列を認識する別のプライマーを設計した(
図1B~1C)。このプライマーは、本明細書に記載のリピートプライムPCR(RP-PCR)に使用した。
【0046】
4つの異なるガイドRNAコンストラクト、2つはリピート伸長の5’末端にあり(f1は「gRNA1」とも称され、r9は「gRNA2」とも称される)、2つは3’末端にある(r1は「gRNA4」とも称され、f11は「gRNA3」とも称される)(表1)を生成した。次いで、以下の各ガイドの2つを発現するプラスミドを生成した:gRNAf1-r1、gRNAf1-f11、gRNAr9-f11、gRNAr9-r1。これらのプラスミドの各々を、化膿連鎖球菌Cas9を発現する別のプラスミドと共にHEK293T細胞に同時トランスフェクトした。これらのHEK293T細胞からDNAを抽出し、C9Var1-FおよびC9In1-Rを使用してPCRを行った。産物をアガロースゲルにかけた(
図2A)。編集が生じない場合、これらのプライマーは523bpのバンドを増幅するだろう。編集が生じる場合、gRNAf1-r1およびf1-f11は約250bpのバンドを生成し、r9-f11およびr9-r1は約320bpのバンドを生成するだろう。
【表1】
【0047】
ゲル(
図2A)で見られるように、これらの4つの異なる組み合わせは、これらのガイドRNAの組み合わせの各々で予想される編集サイズのバンドが観察されるため、HEK細胞におけるC9遺伝子を編集することができる。gRNAf1-r1およびgRNAf1-f11はどちらも200bpと300bpとの間のわずかなバンドを有するが、gRNAr9-f11およびgRNAr9-r1はほぼ320bpに強いバンドを有する。これらのバンドは両方とも、未処理の対照にはない。しかしながら、r9-f11およびr9-r1の組み合わせは、編集したバンドがf1-r1およびf1-f11単独よりもはるかに強いため、遺伝子編集においてはるかに効率的であると思われる。加えて、523bpの未編集のバンドは、r9-f11およびr9-r1からほぼ完全になくなっている。
図2Aにおいて矢印で標識されたバンドは、次いで、予想される位置で遺伝子編集が生じたことを確認するために抽出および配列決定した(
図2B)。このデータに基づいて、gRNAr9-r1およびr9-f11を含むAAV9ウイルスを生成し、in vivo研究に使用した。
【0048】
マウス一次ニューロンにおけるC9ORf72遺伝子編集
45~65伸長GGGGCCリピートを有するヒトC9orf72を発現するマウスモデル(Bac436)を開発した。このモデルは、ヘテロ接合(het)動物ではC9orf72遺伝子の6~8コピー、ホモ接合(homo)動物では12~16コピーを含む。さらに、伸長を有するC9orf72に加えて、Cas9遺伝子を発現しているマウスがこのモデルでは観察される。ガイドがマウス一次ニューロンのGGGGCCリピートを成功裏に切除するかどうかを決定するために、C9orf72およびCas9を発現するBAC436マウスの適切な交配を設定して、ヘテロ接合子孫のみを生成した。一次ニューロンは胚の14日目(E14)に単離し、適切に培養した。培養4日後、ニューロンをPBS単独で処理するか、またはAAV9 CB-GFP、AAV9 SOD1ガイドRNA(対照ガイド)、AAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-r1、またはAAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-f11に感染させた。72時間で、25,000のMOIを記録し、細胞を回収した。DNAはQIAGEN(商標)血液および組織DNA抽出キットを使用して単離した。
【0049】
これらの単離した神経細胞において編集が生じたかどうかを決定するために、C9Var1-fおよびC9In1-Rを使用してPCR反応を実施した(
図1Aおよび1B)。遺伝子編集がないと、これらのプライマーはリピートを通じて増幅することに失敗し、ゲルにバンドが現れない。遺伝子編集が生じると、リピートが切除され、プライマーは321bpの単一バンドを増幅する。ガイドの両方のセットでは、正しいサイズで現れる強いバンドが観察されるが、このバンドは、非AAV処理ニューロンおよびCB-GFPまたはSOD1-gRでトランスフェクトされたものの両方に存在しない(
図3)。
【0050】
マウス肝臓におけるガイドRNAコンストラクトの試験
遺伝子編集がin vivoでも成功するかどうかを決定するために、Cas9/+、C9/+マウスの4つのグループに、PBS単独、AAV9 SOD1ガイドRNA、AAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-r1、またはAAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-f11を尾静脈注射した。注射の2週間後、マウスを犠牲死させ、組織を採取した。尾静脈注射は肝細胞のトランスフェクションに極めて効率的であるため、肝臓から単離したDNAを分析した。C9In1-Rと結合した未編集DNAを増幅できる第3のプライマー(NoE-F1)を設計した(
図1B)。C9Var1-fとNoE-F1との間の競合を低減するために、C9Var1-fおよびC9In1-RまたはNoE-F1およびC9In1-Rによって2つの異なるPCR反応を個別に実行した。これらの2つのPCRからの産物を混合し、同じゲルにかけた(
図4)。AAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-r1およびAAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-f11を注射したマウスからの試料には321bpのバンドが現れるが、AAV9 SOD1ガイドRNAまたはPBS単独を注射したマウスからは現れない(
図4)。その上、未編集DNAからNoE-F1およびC9In1-Rによって増幅された100bpは、対照マウスと比較してr9-r1およびr9-f11マウスではるかに弱かった。正しいサイズの遺伝子編集産物が作成されたことを確認するために、標識バンドを単離し、配列決定した。
【0051】
編集をさらに明確にするために、FAM標識付きC9Var1-fおよびc9ccccggLCM13F_MRX-R1bを使用して、リピートプライムPCRを実行した。後者は、GGGGCCリピートを認識して結合するリバースプライマーである。この形式のPCR反応は、リピートにおいてリバースプライマーが結合して増幅を開始する場所に基づいて、種々のサイズのフラグメントを生成する。次いで、これらのフラグメントをフラグメントアナライザーで分析して、各ピークが異なるサイズのフラグメントを反映し、その強度がフラグメントの存在量を反映する電気泳動図を作成した。プライマーがリピートの奥深くに結合すると、増幅がより難しくなり、よってフラグメントが大きくなると電気泳動図のピークの強度が減少する。これらのフラグメントは、未編集DNAでのみ増幅でき、最も短い最も強いフラグメントのサイズはほぼ330bpである。AAV9 SOD1ガイドRNA、AAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-r1、AAV9-CB-GFP-C9gR隣接r9-f11、およびヒトC9を発現しない非注入野生型C57BLマウスのリピートプライムPCR産物の電気泳動図を、それぞれ5A~5Dに示す。結果は、Cas9媒介C9orf72 G4C2のin vivo編集を確認する。
【0052】
例2:C9orf72転写産物のナンセンス変異依存分解の誘導
この例では、ガイドRNAを、C9orf72のATG開始コドンの後のエキソン3を標的とするように設計した(表2)。戦略は、早期終止コドンにつながる小さなインデルを導入することによって、C9orf72転写産物のナンセンス変異依存分解を誘導し、RNAフォーカスおよびジペプチド形成を低減することだった。
図6Aは、ナンセンス変異依存分解(NMD)ガイドRNA1rおよび2fの場所およびPCRインデル分析プライマーC9NMDインデルF1およびR1の場所および配列をマークしたエキソン3のヒトC9orf72遺伝子配列を示す。
図6Bは、C9NMD-インデルF1およびR1 PCRプライマーによって増幅したPCR産物のアガロースゲル電気泳動の結果を示す。この例では、HEK293T細胞にLV-SpCas9(対照)またはLV-NMDgR-SpCas9プラスミド(2μg)を3連でトランスフェクトした。
図6Cは、
図6BからのC9orf72 RNAレベルのデジタル液滴PCT(ddPCR)分析の結果を示す。
【表2】
【0053】
例3:一次ニューロンにおけるC9ORf72遺伝子編集の直接可視化
45~65伸長GGGGCCリピートを有するヒトC9orf72を発現するマウスモデル(BAC111)を開発した。このモデルは、ヘテロ接合(het)動物ではC9orf72遺伝子の6~8コピーを、ホモ接合(homo)動物では12~16コピーを含む。加えて、このマウスモデルは、伸長を有するC9orf72に加えて、Cas9を発現する。ガイドがマウス一次ニューロンにおいてGGGGCCリピートを成功裏に切除するかどうかを決定するために、C9orf72およびCas9を発現するBAC111マウスの適切な交配を設定して、ヘテロ接合子孫のみを生産した。一次ニューロンを胚の14日目(E14)に単離し、適切に培養した。培養4日後、ニューロンをPBS単独で処理するか、またはAAV9一本鎖GFP(ss-GFP)、AAV9-ROSA-tRFPガイドRNA(対照ガイド)、AAV9-GFP-C9gR隣接gRNA2および3、またはAAV9-GFP-C9gR隣接gRNA2および4に感染させた。72時間で、25,000のMOIを記録し、細胞を回収した。DNAはQIAGEN(商標)血液および組織DNA抽出キットを使用して単離した。PCRの結果を
図7に示す。GFPまたはRFP蛍光について培養した一次ニューロンを画像化して、一次ニューロンへのAAV9-gRNAコンストラクトの取り込みを視覚化した(
図8A)。
【0054】
これらの単離した神経細胞で編集が生じたかどうかを決定するために、C9Var1-FおよびNoER2プライマーを使用してPCR反応を実施した(
図8B)。遺伝子編集なしでは、これらのプライマーはリピートを通じて増幅することに失敗し、ゲルにバンドが現れない。遺伝子編集が生じると、リピートが切除され、プライマーは約720塩基対で単一のバンドを増幅する。ガイドの両方のセットで、適切なサイズで現れる強いバンドが観察されるが、このバンドは非AAV処理ニューロン(PBS)およびss-GFPまたはROSA-tRFPをトランスフェクトしたものの両方に存在しない(
図8B)。未編集DNAのレベルを推定するために、NoE-F1およびNoER2を使用してPCR反応を実施した(
図8B)。遺伝子編集が生じていないとき、約500塩基対のバンドがゲルに現れる。対照遺伝子編集条件(PBS、ss-GFP、またはROSA-tRFP)は、約500塩基対で強いバンドを生成したが、gRNA2および3およびgRNA2および4ガイドの両方のセットはより少ない未編集の試料を有する。
【0055】
遺伝子編集を直接視覚化するために、ヒトC9orf72およびCas9を発現するBAC111マウスから培養一次ニューロンを単離し、上記のように、PBS、AAV9-ss-GFP、AAV9-ROSA-tRFP、AAV9-gRNA2および3、AAV9-gRNA2および4で処理した。蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、未編集のC9orf72RNA(点状染色、例として、フォーカス)を視覚化し、核をDAPIで染色した(
図9)。未編集の細胞のほとんど55~60%は10個以上のフォーカスを有するが、編集された細胞は35~40%の細胞のみで有意に少ない(
図9)。
【0056】
例4:外因性Cas9は、一次ニューロンにおけるC9ORf72遺伝子編集を促進する
GGGGCCリピートのC9orf72切除が内因性のCas9発現を必要とするかどうかを直接試験するために、Cas9ではなくC9orf72を発現するBAC111マウスモデルを作成した。一次ニューロンを胚の14日目(E14)に単離し、適切に培養した。培養4日後、ニューロンにCas9を補充し、Cas9単独で処理するか、またはAAV9-ss-GFP+Cas9、AAV9-ROSA-RFP+Cas9(対照ガイド)、AAV9-GFP-C9gR隣接gRNA2および3、またはAAV9-GFP-C9gR隣接gRNA2および4に感染させた。72時間で、25,000のMOIを記録し、細胞を回収した。DNAはQIAGEN(商標)血液および組織DNA抽出キットを使用して単離した。培養した一次ニューロンをGFPまたはRFP蛍光について画像化し、一次ニューロンへのAAV9-gRNAコンストラクトの取り込みを視覚化した(
図10A)。
【0057】
培養ニューロンからの編集されたDNAのPCR増幅を行った。簡潔に言えば、編集されたDNAを、C9Var1-FおよびNoER2を用いたPCRによって増幅した(
図10B)。
図10Bに示すように、増幅バンドは、編集された細胞(例として、AAV9-gRNA2-3+Cas9、またはAAV9-gRNA2-4+Cas9で処理した細胞)でのみ生じる。
図11は、FISHによりC9を発現するBAC111マウスから単離された一次培養ニューロンからの未編集DNAに結合したgRNAの直接的な視覚化および定量化を示す。未編集(Cas9のみ、一本鎖GFP、ROSA)のとき、細胞のほぼ55~60%がフォーカスを有する。編集した細胞におけるフォーカスは35~40%に減少した。両方のgRNAペアによる処理は、有意に異なる低減をもたらした。
遺伝子編集コンストラクト(例として、rAAV)の組織分布を調べた。
図12は、PBS、SOD gRNA(対照)、R9-r1(gRNA2および4)、またはR9-f11(gRNA2および3)を注射したC9/Cas9を発現するBAC111マウスにおけるin vivoでの遺伝子編集を示す。8週間後に採取した脳、筋肉、および肝臓の組織試料は、各々、gRNA2および3およびgRNA2および4ガイドによる遺伝子編集が示したが、PBSおよび対照SOD gRNAによるものは示さなかった。
【0058】
図13は、p1-2で顔面に注射したCAC111マウスの前頭切断のFISHデータ(センス方向)を示す。上部パネルは、未処理および対照細胞と比較した編集細胞のフォーカスの数の低減を示す蛍光顕微鏡写真を示す。下部パネルは、ヘテロ接合体およびホモ接合体マウスにおいて低減が一貫していることを示すデータを示す。
図14A~14Bは、BalohおよびBAC111マウスにおける定位線条体脳注射を通じた遺伝子編集を示す。
図14Aは、注射部位および組織の単離に使用された脳スライスを示す。
図14Bは、PBS+Cas9、ROSA-tRFP+Cas9、gRNA2および3+Cas9、gRNA2および4+Cas9の注射が、Baloh C9マウスおよびBAC111 C9/Cas9マウスにおける遺伝子編集を促進することを示す。
【0059】
本明細書では本発明のいくつかの態様を説明および図示したが、当業者は、機能を実行し、および/または本明細書に記載の結果および/または1以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に構想するだろうし、かかる変形および/または改変の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的に、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であること、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成が本発明の教示が使用される特定の用途(単数または複数)に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験法のみを使用すること、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。したがって、上記の態様は例としてのみ提示されており、添付のクレームおよびその均等物の範囲内で、本発明は具体的に説明およびクレームされたもの以外で実施できることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載の各個々の特色、系、物品、材料、および/または方法に関する。加えて、かかる特色、系、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2以上のかかる特色、系、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
本明細書およびクレームにおいて本明細書で使用される不定冠詞「a」および「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1」を意味すると理解されるべきである。
本明細書およびクレームにおいて本明細書で使用される語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわちいくつかの場合に連言的に存在し、他の場合に選言的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」節によって具体的に特定される要素以外で、他の要素は、特に明記しない限り、具体的に特定されるものに関連するかどうかに関係なく、任意に存在してもよい。よって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンド言語と組み合わせて使用するときの「Aおよび/またはB」への言及は、一態様において、BなしのA(任意でB以外の要素を含む)を、別の態様において、AなしのB(任意でA以外の要素を含む)を、さらに別の態様において、AおよびBの両方(任意で他の要素を含む)、等々を指すことができる。
【0061】
本明細書およびクレームで使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテムを分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈されるものとし、つまり要素の数またはリストの少なくとも1を含むが複数も含み、任意で追加のリストにないアイテムも含むと解釈されるものとする。「1つのみ」または「正確に1つ」などの明確に反対の用語、またはクレームで使用されるときは「からなる」のみが、要素の数字またはリストの正確に1つの要素を含むことを指すだろう。一般に、本明細書で使用されるとき、「または」という用語は、「いずれか」、「の1つ」、「の1つのみ」または「の正確に1つ」などの排他性の用語が先行する場合に、排他的な代替手段(すなわち「一方または他方であり、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるものとする。クレームの中で使用されるとき、「本質的にからなる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0062】
本明細書およびクレームで使用される場合、1以上の要素のリストに関する「少なくとも1」という語句は、要素のリストにおける1以上の要素から選択される少なくとも1の要素を意味するが、要素のリスト内に具体的にリストされている各要素および全要素の少なくとも1を必ずしも含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外しないものと理解されるべきである。また、この定義により、「少なくとも1」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連するかどうかに関係なく、要素が任意で存在し得る。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1」(または同等に「AまたはBの少なくとも1」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1」)は、一態様において、Bが存在しない、少なくとも1、任意で複数を含むA(および任意でB以外の要素を含む)を、別の態様において、Aが存在しない、少なくとも1、任意で複数を含むB(および任意でA以外の要素を含む)を、さらに別の態様において、少なくとも1、任意で複数を含むA、および少なくとも1、任意で複数のBを含む(および任意で他の要素を含む)、等々を指すことができる。
【0063】
クレームならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち、これを含むがこれに限定されないことを意味すると理解されたい。米国特許庁の特許審査手続マニュアル、セクション2111.03に記載されているように、「からなる」および「から本質的になる」の移行句のみをそれぞれクローズまたはセミクローズの移行句とする。
クレーム要素を変更するクレームでの「第1」、「第2」、「第3」、等々の順序用語の使用は、それ自体では、あるクレーム要素の別のものに対する任意の優先度、優先順位、または順序、または、方法の動作が実行される時間的な順序を意味しないが、特定の名前を有するあるクレーム要素を同じ名前を有する別の要素と区別するための標識としてのみ使用され(ただし、順序用語の使用のため)、クレーム要素を区別する。
【配列表】