(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】排尿管理装置、排尿管理方法、プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/20 20060101AFI20230808BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20230808BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20230808BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20230808BHJP
G01N 33/493 20060101ALI20230808BHJP
G01N 25/18 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
A61B5/20
G01J5/48 A
G01J5/48 E
E03D9/00 Z
E03D11/00 Z
G01N33/493 B
G01N25/18 C
(21)【出願番号】P 2020013880
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2019016258
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発表した研究集会:平成30年度 日本生体医工学会北陸支部大会 主催者名:日本生体医工学会北陸支部 開催日:平成30年12月 1日 発表日(発明を公開した日):平成30年12月 1日 発表した刊行物:平成30年度 日本生体医工学会北陸支部大会 予稿集 第15頁 発行者名:平成30年度日本生体医工学会北陸支部大会 実行委員会 発行年月日:平成30年12月 1日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)、研究開発課題「トイレ排泄生理現象データを活用したクラウド健康ネットワーク技術に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】金山 義男
(72)【発明者】
【氏名】中島 一樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 衛
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178764(JP,A)
【文献】特開2010-008364(JP,A)
【文献】特開2003-302397(JP,A)
【文献】特開2017-217228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0087969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/20
G01J 5/48
E03D 9/00
E03D 11/00
G01N 33/493
G01N 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度空間分布取得部と、補正用温度情報取得部と、排尿量推定部とを含み、
前記温度空間分布取得部は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し
前記補正用温度情報取得部は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定部は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数である
ことを特徴とする排尿管理装置。
【請求項2】
前記温度空間分布取得部が、
前記便器内の空間における温度画像を取得し、
前記温度画像から、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を、前記温度の空間分布情報として、抽出し、
前記排尿量推定部が、
前記尿流量の面積を示す前記尿流温度画像の合計画素値と、前記尿流温度画像が得られた時間の長さとに基づいて、前記仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、前記推定排尿量を推定する、
請求項1記載の排尿管理装置。
【請求項3】
前記温度画像が、非接触マトリクス温度センサで検出された画像である、請求項2記載の排尿管理装置。
【請求項4】
さらに、行動推測部を含み、
前記行動推測部は、
前記温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報とから、対象者の行動を推測し、
前記推測情報は、行動に紐づけられた温度変化情報である、請求項1から3のいずれか一項に記載の排尿管理装置。
【請求項5】
さらに、便器と、複数の温度センサとを有し、
前記便器に、前記複数の温度センサが配置され、
前記複数の温度センサが、前記温度空間分布取得部を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の排尿管理装置。
【請求項6】
前記温度センサが、非接触マトリクス温度センサである、請求項5記載の排尿管理装置。
【請求項7】
温度空間分布取得工程と、補正用温度情報取得工程と、排尿量推定工程とを含み、
前記温度空間分布取得工程は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し、
前記補正用温度情報取得工程は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定工程は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数である
ことを特徴とする排尿管理方法。
【請求項8】
前記温度空間分布取得工程が、
前記便器内の空間における温度画像を取得し、
前記温度画像から、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を、前記温度の空間分布情報として、抽出し、
前記排尿量推定工程が、
前記尿流量の面積を示す前記尿流温度画像の合計画素値と、前記尿流温度画像が得られた時間の長さとに基づいて、前記仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、排尿温度の補正係数および環境温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、前記推定排尿量を推定する、
請求項7記載の排尿管理方法。
【請求項9】
前記温度画像が、非接触マトリクス温度センサで検出された画像である、請求項8記載の排尿管理方法。
【請求項10】
さらに、行動推測工程を含み、
前記行動推測工程が、
前記温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報とから、対象者の行動を推測し、
前記推測情報は、行動に紐づけられた温度変化情報である、
請求項7から9のいずれか一項に記載の排尿管理方法。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載の排尿管理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項13】
便器本体と、請求項1から6のいずれか一項に記載の排尿管理装置とを備えることを特徴とする便器。
【請求項14】
便座本体と、請求項1から6のいずれか一項に記載の排尿管理装置とを備えることを特徴とする便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排尿管理装置、排尿管理方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や認知症患者の排尿障害は、QoL(Quality of Life)に影響を与える大きな問題である。このような排尿障害を有する患者の診断および治療においては、医療機関では、一般的に、一回あたりの排尿量、尿の放出力である尿流量等の排尿情報の測定等が行われている。しかしながら、診察室等での測定は、患者が緊張するため、うまく行うことできず、通常よりも劣る結果となる場合がある。このため、プライベートな環境で、簡便に排尿情報を測定し、信頼性のあるデータを取得することが望まれている。
【0003】
そこで、生理的なモニタリングを利用して排尿量を管理する装置が提案されている(非特許文献1)。具体的には、力を検出するセンサ(ロードセル)を便座に配置し、便座に座った人の体重を時系列的に計測することから、自動的に、排尿量を算出するものである。しかしながら、数十Kgオーダの人の体重に対して、算出しようする排出される尿の重量は数十から数百gオーダであり、測定精度が問題となる。また、高精度のロードセルが必要となり、コストもかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K. Yamakoshi, Unconstrained physiological monitoring in daily living for health care, Frontiers Med. Biol. Eng., 2000, 10, 239-259.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に対して、新たに、便座に温度センサを配置し、温度情報に基づいて排尿量を測定するシステムが提案されている。このようなシステムによれば、安価な温度センサが利用でき、コストも低減できる。しかしながら、医療機関での治療や診断への利用の観点から、より優れた精度で排尿量を測定できるシステムの提供が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、より優れた精度で排尿量を測定できる新たなシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の排尿管理装置は、
温度空間分布取得部と、補正用温度情報取得部と、排尿量推定部とを含み、
前記温度空間分布取得部は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し
前記補正用温度情報取得部は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定部は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であることを特徴とする。
【0008】
本発明の排尿管理方法は、
温度空間分布取得工程と、補正用温度情報取得工程と、排尿量推定工程とを含み、
前記温度空間分布取得工程は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し、
前記補正用温度情報取得工程は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定工程は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
本発明のプログラムは、本発明の排尿管理方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0010】
本発明の記録媒体は、前記本発明のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0011】
本発明の便器は、便器本体と、前記本発明の排尿管理装置とを備えることを特徴とする。また、本発明の便座は、便座本体と、前記本発明の排尿管理装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境温度ごとまたは排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数を用いて補正することにより、より精度に優れた排尿量を測定することができる。このため、本発明によれば、より優れた精度で排尿の管理を行い、それらの情報を、例えば、排尿障害の患者の診断や治療に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1の温度センサを備える便器の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の排尿管理装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の排尿管理装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4(A)は、排尿前と排尿中の尿との温度画像を例示する二次元平面の概要であり、
図4(B)は、前記二次元平面から仮定される排尿の三次元立体の概要である。
【
図5】
図5は、実施形態2の排尿管理装置の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、各空間温度センサの各チャンネルによる測定温度の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、空間温度センサの結果に基づく、温度変化の波形の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、空間温度センサの結果に基づく、温度変化の波形の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態2における排尿管理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例1における温度センサを備える便器への疑似尿の添加を示す概略図である。
【
図11】
図11は、実施例1(1)における各温度センサの各チャンネルによる測定温度を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例1(1)における室温変化と推定排尿量との関係を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例1(2)における疑似尿温と推定排尿量との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例1(3)における、被検者の排尿時における各温度センサの各チャンネルによる測定温度を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例1(3)における推定排尿量と排尿前後の体重差との関係を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例1(2)における全排尿回数についての推定排尿量と排尿前後の体重差との関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例2における空間温度センサの各チャンネルによる測定温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「排尿量」とは、一回の排尿による尿の全量(voided volume)を意味し、「尿流量」とは、排尿の速度(urinary flow rate)を意味する。本発明において、「環境温度」とは、便器が配置されている環境の温度であり、例えば、便器が配置されているトイレの温度でもよいし、便器内部の大気空間の温度でもよく、室温ともいう。本発明において、「排尿温度」とは、排尿の直接的または間接的な温度である。直接的な温度とは、排尿を直接的に測定した温度であり、例えば、温度計を排尿に直接接触させて測定した温度等である。間接的な温度とは、排尿を間接的に測定した温度であり、例えば、排尿の温度は、体温に対応することから、体温を測定した温度等である。本発明において、「対象者」とは、本発明の排尿管理装置により排尿を管理される者であり、例えば、健常者、被介護者、患者等があげられ、具体例として、認知症高齢者等があげられる。本発明において、「ユーザ」とは、例えば、本発明の排尿管理装置により、前記対象者の排尿管理を行う者であり、対象者自身、介護者または介護施設、医療関係者(医師、看護師等)または病院等の医療機関、会社、健康保険組合、保健所、および地域包括支援センター等があげられる。
【0015】
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下の実施形態には限定されない。以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用でき、各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。
【0016】
[実施形態1]
(1)便器
まず、本発明の排尿管理装置を説明するにあたって、温度情報の取得に使用する便器について説明する。本発明の排尿管理装置は、例えば、使用時において、便器、または便器が設置されたトイレとは離れた場所にある別個の装置でもよいし、便器に取り付け可能または便器に組み込まれた装置でもよい。前者の場合、例えば、前記便器が、温度に関する様々な情報を取得して、有線または無線により前記排尿管理装置に送信し、前記排尿管理装置は、前記便器からの前記情報を取得して、排尿量の推定を行うことができる。また、後者の場合は、前記本発明の排尿管理装置を備える便器において、前記各種情報の取得と排尿量の推定とを行うことができる。後者の場合、前記排尿管理装置は、例えば、前記便器の便座に設置されてもよいし、便座の座面の高さを調整するための補高便座に設置され、前記便器に前記補高便座が配置されることで、便器に設置されてもよいし、便器と便座の間に挟んで使用する採尿器に設置され、前記採尿器が便器と便座との間に設置されることで、便器に設置されてもよい。前記採尿器の具体例は、例えば、ユーリパン(商品名)、尿取りハット(商品名)等があげられる。
【0017】
図1に、便器の一例を示す。
図1において、(A)は、便器1を上からみた平面図であり、(B)は、(A)の便器1の側面の断面図であり、(C)は、便器1に取り付けられた補高便座14の下面(裏面)の平面図であり、(D)は、空間温度センサ13の概略図である。便器1は、便器本体10と、便座部12と、補高便座14とを備える。
図1において、Xは、便器1の前後方向であり、Yは、左右方向であり、Zは、上下方向(高さ方向)である。
【0018】
図1において、便器本体10は、洋式の便器本体である。便器本体10は、排泄物を受ける上部が開口したボウル部11を有し、さらに、ボウル部11の底部と外部の排水管とを連結する排水路(図示せず)を有する。便器本体10は、ボウル部11の上側の縁部に便座部12を有し、便座部12は、上げ下げ可能に連結されている。また、便器本体10は、便座部12の下に、便座部12の座面の高さを調整するための補高便座14を有し、補高便座14が、後述するように、空間温度センサ13等を備える。本実施形態において、便器本体10は、洋式を例示したが、和式であってもよい。
【0019】
図1(C)に示すように、便座部12の下に配置された補高便座14は、例えば、その裏面に、4つの空間温度センサ13(ID=0、1、2、3)が配置されている。具体的に、4つの空間温度センサ13は、補高便座14の前方からボウル部11内をセンシングするように、補高便座14の前方に設置されている。空間温度センサ13の種類は、特に制限されず、ボウル部11内の空間における温度の空間分布情報を取得できればよく、例えば、非接触温度センサがあげられ、具体例としては、非接触マトリクス温度センサがあげられる。前記非接触温度センサによれば、例えば、ボウル部11内の温度の空間分布を非接触で計測できる。前記非接触温度センサは、例えば、サーモカメラがあげられる。本発明において、前記経時的な温度の空間分布情報は、仮排尿量の算出に使用される。本発明において、前記温度の空間分布情報は、例えば、温度変化の取得のため、経時的な温度の空間分布情報が好ましい。前記経時的な温度の空間分布情報とは、例えば、時間軸に沿って、連続的な情報でもよいし、非連続的(断続的)な情報でもよく、後者の場合、例えば、一定の周期で得られる情報でもよいし、不定の周期で得られる情報でもよいし、情報の取得開始からの時間指定で得られる情報でもよい。以下、経時的な温度の空間分布情報の使用を例にあげて説明するが、これには限定されない。
【0020】
空間温度センサ13の設置位置は、特に制限されず、
図1に示すように、補高便座14でもよいし、それには制限されず、便座部12と、便座部12下の便器本体10との間でもよいし、便座部12下の便器本体10でもよいし、便座部12等でもよい。中でも、
図1(C)に示すように、空間温度センサ13を、補高便座14により、便器本体10と便座部12との間であって、前方に設置すれば、例えば、空間温度センサ13と排尿との距離が近くなり、排尿が影響する前記温度の空間分布情報の計測精度をより向上でき、また、取付けおよび手入れも容易である。
【0021】
空間温度センサ13の個数は、特に制限されず、本発明の排尿管理装置の利用目的に応じて適宜設定でき、1つでも、2つ以上の複数でもよく、好ましくは複数である。具体的には、例えば、更なる排尿量の推定精度向上の観点からは、空間温度センサ13の個数を相対的に多く設定でき、例えば、2、3、4、5、6、7、または8個に設定できる。複数の空間温度センサ13を設置する場合、例えば、前部、後部、および側部等に設置することができる。複数の空間温度センサ13を設置することで、例えば、排尿から放射される熱エネルギーを取得する範囲が広がり、後述する排尿量の推定精度をより向上できる。他方、コストおよび便器1への設置性向上等の観点からは、空間温度センサ13の個数を相対的に少なく設定でき、例えば、1つに設定できる。空間温度センサ13を1つだけ設置する場合、その設置場所は、特に制限されず、ボウル部11内の空間における温度の空間分布情報を取得できる場所に設置されていればよく、例えば、前部、後部、および側部等のいずれに設置してもよいし、これ以外の場所に設置してもよいが、前部に設置することが好ましい。
【0022】
空間温度センサ13は、例えば、m行×n列のサーモパイル素子を有する前記非接触マトリクス温度センサである。この空間温度センサ13によれば、ボウル部11内の空間について、X方向にm行、Y方向にn列のマトリクス状に区分された各検査面18の温度を、非接触で計測できる。
図1(D)に例示する空間温度センサ13は、4行×4列のサーモパイル素子を有し、計16の検査面18の温度を計測でき、検査面18には、
図1(D)に示すように、0から15までの16個のチャンネル番号chが割り振られる。
【0023】
便器1は、例えば、さらに、空間温度センサ13の出力を増幅する増幅部と、前記出力をデジタルデータに変換するA/D変換部とを備え、空間温度センサ13で計測した情報を、デジタルデータとして出力してもよい。便器1は、例えば、空間温度センサ13で計測した情報を通信するための、有線または無線の通信部を備えてもよい。空間温度センサ13により取得された情報は、例えば、前記通信部を介して、有線または無線により外部機器に出力し、前記外部機器の表示部に表示したり、前記外部機器の記憶部に記憶してもよい。前記外部機器は、例えば、PC、スマートフォン、タブレット等があげられる。
図1(C)において、補高便座14における符号16は、プロセッサであり、例えば、Raspberry Pi等のCPUがあげられ、また、符号17は、信号を入出力する多重装置(Multiplexer)である。空間温度センサ13により得られた情報は、例えば、信号として、多重装置17に入力され、前記信号は、多重装置17からプロセッサ16に出力され、プロセッサ16により、後述するような情報の処理が行われる。
図1(C)におけるプロセッサ16は、例えば、後述する
図3におけるCPU30に該当する。
【0024】
便器1は、前述のように、空間温度センサ13が設置されていることから、空間温度センサ13により、ボウル部11内における温度の空間分布を時系列的(経時的)に計測できる。すなわち、ボウル部11内に排尿されると、例えば、排尿によって、ボウル部11内の温度が変化するため、空間温度センサ13によって、排尿の通過を拾う検査面18において、温度が変化する。
【0025】
(2)排尿管理装置
つぎに、本発明の排尿管理装置および排尿管理方法の一例について、図を用いて説明する。
【0026】
図2は、本実施形態の排尿管理装置の一例を示すブロック図である。排尿管理装置2は、温度空間分布取得部20、補正用温度情報取得部21、および排尿量推定部22を含む。排尿管理装置2は、例えば、さらに、記憶部23を備えてもよく、記憶部23は、環境温度の補正係数231および排尿温度の補正係数232が記憶されている。本実施形態の排尿管理装置2は、システムとしてサーバに組み込まれていてもよい。また、本実施形態の排尿管理装置2は、本発明のプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ(PC)であってもよい。排尿管理装置2は、例えば、前記各部を含む1つの装置でもよいし、前記各部が、通信回線網を介して接続可能な装置でもよいし、例えば、通信回線網を介してサーバ、ユーザの端末等と接続可能であってもよく、排尿管理システムともいう。また、図示していないが、本実施形態の排尿管理装置2は、例えば、通信回線網を介して、システム管理者の外部端末と接続可能であってもよい。システム管理者は、前記外部端末から排尿管理装置2の管理を実施してもよい。排尿管理装置2は、例えば、各部の処理がクラウド上で行われてもよい。
【0027】
前記通信回線網は、特に制限されず、公知の通信回線網を使用でき、有線でも無線でもよい。前記通信回線網は、例えば、例えば、インターネット回線、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、LPWA(Low Power Wide Area)等があげられる。排尿管理装置2は、例えば、各部の処理がクラウド上で行われてもよい。
【0028】
温度空間分布取得部20は、便器1内の空間における経時的な温度の空間分布情報を取得する。温度空間分布取得部20は、例えば、空間温度センサでもよいし、前記空間温度センサからの情報を、無線または有線により取得する通信部でもよい。前者の場合、例えば、前述した便器1に設置された空間温度センサ13でもよく、具体例は、便器1に排尿管理装置2が設置された形態である。後者の場合、例えば、便器1に設置された空間温度センサ13からの情報を、無線または有線により取得する通信部でもよく、具体例は、空間温度センサ13と排尿管理装置2とが、通信回線網を介して、接続される形態である。
【0029】
前記温度の空間分布情報の形態は、特に制限されず、例えば、便器1内の空間の経時的な温度画像があげられる。前記温度画像から、例えば、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を抽出することで、経時的な温度の空間分布情報が得られる。前記温度画像は、例えば、前述のような、非接触マトリクス温度センサ等の空間温度センサ(例えば、
図1における空間温度センサ13)により取得できる。
【0030】
補正用温度情報取得部21は、環境温度および排尿温度を取得する。ここで、前記環境温度とは、前述のように、便器が配置されている環境の温度、いわゆる室温であり、例えば、便器が配置されているトイレの温度でもよいし、便器1内の大気空間の温度でもよい。また、前記排尿温度とは、前述のように、排尿の直接的または間接的な温度である。直接的な温度は、例えば、温度計を排尿に直接接触させて測定した温度であり、間接的な温度は、例えば、体温である。
【0031】
補正用温度情報取得部21は、例えば、温度センサでもよいし、前記温度センサからの情報を、無線または有線により取得する通信部でもよい。前者の場合、前記温度センサは、例えば、空間温度センサ13とは別に、補高便座14に配置されてもよい。後者の場合、例えば、便器1またはトイレに前記温度センサが配置され、前記温度センサと排尿管理装置2とが、通信回線網を介して接続される形態であり、前記温度センサからの情報を、前記通信部が取得してもよい。環境温度と排尿温度とは、例えば、一つの温度センサで測定してもよいし、それぞれを別個の温度センサで測定してもよい。前記温度センサは、例えば、温度計である。以下、補正用温度情報を取得するための前記温度センサは、以下、補正用温度センサという。
【0032】
前記補正用温度センサの設置部位は、特に制限されず、例えば、環境温度と排尿温度とを測定できればよい。排尿温度用の補正用温度センサは、例えば、便器1において、そのセンサ部が、排尿に直接接触する位置に配置してもよいし、非接触であるが、排尿と一定距離を置いた位置に配置されてもよい。また、排尿温度は、例えば、対象者の体温と対応することから、例えば、便座部12に接触している大腿部の温度を測定できる位置等でもよい。また、本実施形態において、例えば、対象者の体温を前記補正用温度センサ(例えば、体温計)で測定し、前記補正用温度センサから有線または無線により取得してもよい。体温の測定部位は、特に制限されず、例えば、脇下温、舌下温、鼓膜温度、前頭温等でもよい。
【0033】
排尿量推定部22は、例えば、仮排尿量算出部221と、補正部222とを含む。仮排尿量算出部221は、前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、補正部222は、前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正する。これによって、得られた補正排尿量を推定排尿量として推定できる。
【0034】
本発明者らは、前記便器内の空間における経時的な温度の空間分布情報から排尿量(本発明における仮排尿量)を算出した際、算出した仮排尿量(算出排尿量ともいう)と実際の排尿量(実排尿量)との間に、ズレが生じる場合があることを見出した。そして、鋭意研究の結果、そのズレが、前記便器の配置環境における環境温度(すなわち室温)と、排出される尿の温度に影響されるとの知見を得た。このため、前記温度の空間分布情報に基づいて仮排尿量を算出し、さらに、その排尿時の温度条件(前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方)に基づいて、前記排尿時の環境温度に応じた補正係数および前記排尿温度に応じた補正係数の少なくとも一方を用いて、前記仮排尿量の補正を行うことで、得られた補正排尿量を、より正確な推定排尿量として推定することが可能になった。前記環境温度の補正係数および前記排尿温度の補正係数は、例えば、尿または疑似尿(例えば、水)をサンプルとして用い、排尿量の実測値と、経時的な温度の空間分布情報に基づく算出値(仮排尿量)とから求めることができる。具体的には、前記サンプルの量、前記サンプルの温度、環境温度を変化させ、排尿量の実測値と算出値(仮排尿量)とを比較することにより、補正係数を求めることができる。
【0035】
前記温度の空間情報に基づく排尿量(本発明における仮排尿量)の算出方法は、特に制限されず、例えば、特開2015-178764号公報の方法が参照できる。
【0036】
前記経時的な温度の空間情報は、例えば、温度画像でもよい。前記温度画像は、例えば、温度差を示す画像であり、対象部位の温度は、例えば、背景温度に対する温度差から算出することができる。温度空間分布取得部20は、例えば、便器1内の空間における経時的な温度画像を取得し、前記温度画像から、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を、前記温度の分布情報として、抽出する。そして、仮排尿量算出部221は、例えば、前記尿流量の面積を示す前記尿流温度画像の合計画素値と、前記尿流温度画像が得られた時間の長さとに基づいて、前記仮排尿量を算出し、補正部222は、例えば、前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方により補正することで、前記推定排尿量を推定できる。
【0037】
以下に、尿流量からの排尿量(本発明における仮排尿量)の算出の原理を説明するが、本発明は、これには制限されない。前記原理について、
図4の例示を参照する。
図4(A)は、
図1(D)に例示する検査面18の16個のチャンネルにおける、排尿前と排尿中の尿との温度画像を例示する二次元平面の概要であり、
図4(B)は、前記二次元平面から仮定される排尿の三次元立体の概要である。便器1のボウル部11へ排出される尿の尿流を、前記サーモカメラ等の空間温度センサ13で撮影することにより、例えば、排尿前と排尿中との温度差を示す温度画像が得られる。具体的には、
図4(A)の液滴で例示されるような、背景温度に対して温度差を示す尿について、尿流量のみの二次元の温度画像が得られる。尿流量を円柱と仮定した場合、自然排尿であれば、尿流量が速いほど、円柱は太くなる。ここで、排尿温度が一定であり、且つ、排尿される尿から空間温度センサ13までの距離が一定であれば、前記温度画像における尿流のみの各画素値(すなわち、測定温度に対応)の合計は、尿流の太さ(面積A)を反映する値となる。つまり、
図4(A)に示すように、横方向の矢印は、尿流の幅(直径2r[m])を示し、縦方向の矢印は、尿流の長さ(高さh[m])を示すため、直径2rと高さhとを掛け合わせた面積(2rh[m
2])は、尿流量の表面温度A[℃]と同等と考えられる。そして、
図4(B)に示すように、その面積(m
2)を3/2乗することで、三次元の円柱の体積(m
3)を算出できる。
【0038】
さらに具体的に例示する。尿流表面からの温度だけを検出するには、例えば、背景温度の影響を除去するために、背景差分を行うことが好ましい。具体的には、例えば、まず、下記式(1)に示すように、排尿前と排尿中との温度差A(t)、すなわち尿流の表面温度を求める。下記式(1)において、chは、空間温度センサ13のチャンネル番号を表す。
【数1】
【0039】
そして、排尿前の測定温度Temp(t0)[℃]と、排尿中を含む時刻t[s]の測定温度Temp(t)[℃]との差A(t)を、下記式(2)に示すように3/2乗し、各時刻における排尿量に比例するS(t)、すなわち温度差Aの3/2乗[℃
3/2]を得る。下記式(2)において、IDは、空間温度センサ13の識別子、chは、空間温度センサ13のチャンネル番号を表し、sは、秒(sec)を表す。
【数2】
【0040】
つぎに、尿流量Q(t)[ml/s]は、例えば、下記式(3)に示すように、単位時間あたりのS(t)に換算係数a[ml/℃
3/2]を乗算して、算出できる。下記式(3)において、Δt[s]は、空間温度センサ13のサンプリング周期を表す。
【数3】
【0041】
さらに、下記式(4)に示すように、Q(t)を時間積分することで、尿量V[ml]が算出できる。この尿量Vは、本発明における仮排尿量に該当する。
【数4】
【0042】
そして、この算出された尿量(仮排尿量)V[ml]について、前述のような補正係数を用いることで補正を行い、補正排尿量[ml]を算出し、これを推定排尿量と推定できる。
【0043】
排尿管理装置2は、例えば、外部装置と接続可能であり、具体例として、通信回線網を介して接続可能である。前記外部装置は、例えば、前記補正係数等の各種データが記憶されたデータベース、サーバ、端末、温度センサ(前記空間温度センサ、前記補正用温度センサ)、プリンタ等があげられる。前記端末は、例えば、PC、タブレット、スマートフォン等である。前記通信回線網は、例えば、前述と同様である。
【0044】
排尿管理装置2で得られた情報(例えば、前記推定排尿量等)は、例えば、出力部により、出力されてもよい。出力の形式は、特に制限されず、例えば、前記出力部として表示部を有する場合、前記表示部に出力してもよいし、前記出力部として通信デバイス(前記通信部)を有する場合、前記通信デバイスを介して、接続された前記外部装置に出力してもよい。
【0045】
つぎに、
図3に、排尿管理装置2のハードウエア構成のブロック図を例示する。排尿管理装置2は、例えば、プロセッサの一例としてCPU(中央処理装置)30、メモリ31、バス32、記憶装置36を有する。排尿管理装置2は、例えば、さらに、前記経時的な温度の空間分布情報を取得する空間温度センサ13を備えてもよく、補正用の前記環境温度および排尿温度を取得する前記補正用温度センサを備えてもよい。排尿管理装置2は、また、各種情報を入力する入力装置33、前記外部機器に対する通信デバイス35、前記表示部であるディスプレイ34等を備えてもよい。排尿管理装置2の各部は、それぞれのインターフェース(I/F)により、バス32を介して、相互に接続されている。
【0046】
CPU30は、例えば、コントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)等により、他の構成と連携動作し、排尿管理装置2の全体の制御を担う。排尿管理装置2において、CPU30により、例えば、本発明のプログラムやその他のプログラムが実行され、また、各種情報の読み込みや書き込みが行われる。具体的には、例えば、CPU30が、温度空間分布取得部20、補正用温度情報取得部21、および排尿量推定部22として機能する。排尿管理装置2は、演算装置として、CPUを備えるが、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等の他の演算装置を備えてもよいし、CPUとこれらとの組合せを備えてもよい。なお、CPU30は、例えば、後述する実施形態における記憶部以外の各部として機能する。
【0047】
排尿管理装置2は、例えば、バス32に接続された通信デバイス35により、通信回線網に接続でき、前記通信回線網を介して、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、特に制限されず、例えば、前述の通りである。排尿管理装置2と前記外部機器との接続方式は、特に制限されず、例えば、有線による接続でもよいし、無線による接続でもよい。前記有線による接続は、例えば、コードによる接続でもよいし、通信回線網を利用するためのケーブル等による接続でもよい。前記無線による接続は、例えば、通信回線網を利用した接続でもよいし、無線通信を利用した接続でもよい。前記通信回線網は、特に制限されず、例えば、公知の通信回線網を使用でき、前述と同様である。排尿管理装置2と前記外部機器との接続形式は、例えば、USB等であってもよい。
【0048】
メモリ31は、例えば、メインメモリを含み、前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU30が処理を行う際には、例えば、後述する補助記憶装置に記憶されている、本発明のプログラム等の種々のプログラム37を、メモリ31が読み込み、CPU30は、メモリ31からデータを受け取って、プログラム37を実行する。前記メインメモリは、例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ31は、例えば、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含む。
【0049】
記憶装置36は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。記憶装置36は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置36は、例えば、記憶媒体とドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)も例示できる。記憶装置36には、例えば、前述のように、プログラム37が格納され、前述のように、CPU30を実行させる際、メモリ31が、記憶装置36からプログラム37を読み込む。また、記憶装置36は、例えば、記憶部23であり、前述の環境温度の補正係数231および排尿温度の補正係数232等を記憶する。
【0050】
入力装置33は、例えば、カメラ、スキャナー等の撮像手段;タッチパネル、トラックパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード;ICカードリーダ、磁気カードリーダ等のカードリーダ;マイク等の音声入力手段;等があげられる。ディスプレイ34は、例えば、LEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示装置があげられる。本実施形態において、入力装置33とディスプレイ34とは、別個に構成されているが、入力装置33とディスプレイ34とは、タッチパネルディスプレイのように、一体として構成されていてもよい。
【0051】
排尿管理装置2において、メモリ31および記憶装置36は、ユーザからのアクセス情報およびログ情報、ならびに、外部データベース(図示せず)から取得した情報を記憶することも可能である。
【0052】
つぎに、本実施形態の排尿管理方法について説明する。本実施形態の排尿管理方法は、例えば、
図1の便器1、
図2および
図3に示す排尿管理装置2を用いて実施できる。なお、本実施形態の排尿管理方法は、これらの図面に示す便器1および排尿管理装置2の使用には限定されない。
【0053】
本発明の排尿管理方法は、前述のように、前記温度空間分布取得工程と、前記温度情報取得工程と、前記排尿量推定工程とを含む。
【0054】
前記温度空間分布取得工程は、便器1内の空間における経時的な温度の空間分布情報を取得する工程であり、排尿管理装置2の温度空間分布取得部20により実行できる。
【0055】
前記補正用温度情報取得工程は、便器1の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得する工程であり、排尿管理装置2の補正用温度情報取得部21により実行できる。
【0056】
前記排尿量推定工程は、前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定する工程である。前記仮排尿量の算出は、排尿管理装置2の排尿量推定部22における仮排尿量算出部221により実行でき、前記仮排尿量の補正は、排尿管理装置2の排尿量推定部22における補正部222により実行できる。
【0057】
前記環境温度の補正係数により補正を行う場合は、前記補正用温度情報取得工程において取得された環境温度に対する補正係数を選択し、これにより補正を行えばよい。前記排尿温度の補正係数により補正を行う場合は、前記補正用温度情報取得工程において取得された排尿温度に対する補正係数を選択し、これにより補正を行えばよい。
【0058】
[実施形態2]
本発明の排尿管理装置および排尿管理方法について、対象者の行動推測を行う形態の一例について、説明する。なお、特に示さない限り、本実施形態の排尿管理装置および排尿管理方法は、前記実施形態1と同様である。
【0059】
図5は、本実施形態の排尿管理装置の一例を示すブロック図である。排尿管理装置2は、例えば、さらに、行動推測部24を含み、記憶部23が、さらに推測情報233を記憶する以外は、前記実施形態1と同様である。
【0060】
行動推測部24は、前記経時的な温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報233とから、対象者の行動を推測する。推測情報233は、例えば、行動に紐づけられた温度変化情報である。推測情報233は、例えば、前記経時的な温度の空間分布情報に基づく温度変化と、実際の行動とを対比し、前記温度変化と前記行動とを紐づけることによって設定できる。
【0061】
本実施形態の排尿管理方法は、例えば、さらに、行動推測工程を含み、前記行動推測部は、前記経時的な温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報とから、対象者の行動を推測する工程である。この工程は、例えば、排尿管理装置2の行動推測部24により実行できる。
【0062】
つぎに、推測情報233の一例として、前記経時的な温度の空間分布情報に基づく温度変化と、対象者の行動との関係を、図を用いて説明する。以下は、
図1のように、4つの空間温度センサ13を含む排尿管理装置2を備える便器1の使用を例にあげるが、これには制限されない。便器1または便器1を設置したトイレに、予め、距離センサ等の人感センサを配置しておき、前記人感センサにより人の入室または人の着座を感知することにより、空間温度センサ13による温度測定が開始される(時刻T=0)。
【0063】
図6は、4つの空間温度センサ13(ID=0、1、2、3)の16個の各チャンネル(ch0-15)の経時的な温度を示すグラフである。横軸は、時間(s)であり、縦軸は、温度(℃)である。具体的に、前記温度は、空間温度センサ13により得られる温度画像における背景温度に対する温度差から算出される温度である。なお、便宜上、
図6には、対象者の着座、排尿開始、起立、流水開始、流水終了の時点を示す線を併記する。
【0064】
図7は、
図6に示す4つの空間温度センサ13(ID=0、1、2、3)の結果に基づいて、温度(℃)の経時的変化を示すグラフである。横軸は、時間であり、縦軸は、温度(℃)である。
【0065】
図7(A)における曲線X1(実線)について説明する。曲線X1は、4つの空間温度センサ13のそれぞれについて、16個のチャンネルから代表的な4個のチャンネルの温度を抽出し、それに基づいて算出したフレーム内平均値a(4ID×4ch)を、プロットした曲線である。代表的なチャンネルとは、例えば、ch8、ch9、ch10、ch11である。この曲線Xにより、前記背景温度に対する全体的な温度変化の挙動がわかる。
【0066】
図7(A)における曲線X2(点線)について説明する。曲線X2は、4つの空間温度センサ13のそれぞれについて、4つのチャンネル(ch0、ch1、ch2、ch3)の温度を抽出し、それに基づいて算出したフレーム内平均値a(4ID×4ch)を、プロットした曲線である。これら4つのチャンネル(ch0、ch1、ch2、ch3)は、
図6に示すように、温度変化が、着座による影響を受けやすいチャンネルであるため、この曲線X2は、例えば、便座への着座と起立との推測に利用できる。
【0067】
図7(A)における曲線X3(一点鎖線)について説明する。曲線X3は、4つの空間温度センサ13のそれぞれについて、4つのチャンネル(ch12、ch13、ch14、ch15)の温度を抽出し、それに基づいて算出したフレーム内平均値a(4ID×4ch)を、プロットした曲線である。これら4つのチャンネル(ch12、ch13、ch14、ch15)は、
図6に示すように、温度変化が、流水による影響を受けやすいチャネルであるため、この曲線X3は、例えば、流水の開始と終了との推測に利用できる。
【0068】
つぎに、曲線X1、X2、およびX3を用いて、対象者の行動の推測について、説明する。
【0069】
(1)着座および起立の推定
図7(B)に、
図7(A)の曲線X1および曲線X2を示す。曲線X2は、前述のように、着座による影響を受けやすいチャンネルからの温度であることから、曲線X2と曲線X1との差が閾値を超えた時点を、着座と推定することができる。着座を推測する閾値は、特に制限されず、任意に設定でき、具体例としては、0.5℃~1℃である。また、同様の理由から、着座後、曲線X2と曲線X1との差が閾値を回復した時点(閾値に達した時点)を、着座の終了(起立)と推定することができる。起立を推測する閾値は、特に制限されず、任意に設定でき、具体例としては、0.3~0.8℃である。
【0070】
(2)流水の開始および終了の推定
図7(C)に、
図7(A)の曲線X1および曲線X3を示す。曲線X3は、前述のように、流水による影響を受けやすいチャンネルからの温度であることから、曲線X3と曲線X1との差が閾値を超えた時点を、流水の開始と推定することができる。流水開始を推測する閾値は、特に制限されず、任意に設定でき、具体例としては、0.5℃~1℃である。また、同様の理由から、流水開始後、曲線X3と曲線X1との差が閾値を回復した時点(閾値に達した時点)を、流水の終了と推定することができる。流水終了を推測する閾値は、特に制限されず、任意に設定でき、具体例としては、0.3~0.8℃である。
【0071】
(3)排尿の開始と終了
図8に、説明の補足のため、温度変化の代表的な曲線として、
図7(A)の曲線X1を示す。
【0072】
ここでは、排尿以外の熱源の影響を受けにくい、4つの空間温度センサ13の8個のチャンネル(ch4、ch5、ch6、ch7、ch8、ch9、ch10、ch11)の温度を利用する。すなわち、これらのチャンネルから温度情報が得られると、T=0から単位時間(測定間隔Δt)当たりの温度の平均値a(以下、フレーム内平均値aという)を順次算出していく。排尿が開始されるまでは、
図8に示すように、フレーム内平均値aは、ほぼ同程度の温度が続く。この温度を、着座後、排尿前の平均温度(Temp.Ave.)とする。引き続き、フレーム内平均値aを算出していくと、前記平均温度(Temp.Ave.)よりも0.3℃高くなるフレーム内平均値aがでてくる。これは、排尿による温度上昇の結果であることから、[Temp.Ave.+0.3(℃)]の時点(時刻T(s)+Δt)よりも前に、実際の排尿が開始されたと推測できる。このため、時刻T(s)+Δtを、実際の排尿開始時刻である、との推測情報に設定しておく。この推測情報に基づけば、
図8のグラフに示すように、フレーム内平均値aを順次算出していき、安定した[Temp.Ave.]から、[Temp.Ave+0.3(℃)]に変移する時点T(s)+Δtを探索し、その時刻から1フレーム遡った時刻T(s)を排尿開始時刻と推定できる。つまり、対象者の排尿開始との行動を推測できる。
【0073】
また、排尿により便器1内の空間温度が徐々に上昇した後、排尿の終了に近づくにつれ、便器1内の温度は徐々に下降していく。そこで、排尿終了の判断基準温度[Temp.Ave+0.5(℃)]となった2回目の時点が、排尿終了時刻T(e)である、との推測情報に設定しておく。2回目の時点とするのは、排尿の開始により温度が徐々に上昇する段階で[Temp.Ave+0.5(℃)]を超えるため、これは無視して、その次に、温度が下がっていくことにより[Temp.Ave+0.5(℃)]となる時刻を排尿終了として設定するためである。この推定情報に基づけば、
図8のグラフに示すように、[Temp.Ave+0.5(℃)]となった時刻T(e)を排尿終了時刻と推定できる。つまり、対象者の排尿終了との行動を推測できる。なお、2回目の時点には制限されず、例えば、排尿開始時刻T(s)から所定時間経過後(例えば、3秒経過後)に、[Temp.Ave+0.5(℃)]となった時点を、排尿数量時刻T(e)である、との推測情報に設定してもよい。
【0074】
排尿開始の判断基準温度[Temp.Ave+0.3(℃)]および排尿終了の判断基準温度[Temp.Ave+0.5(℃)]は、任意であり、例えば、平均値(Temp.Ave)との差は、任意に設定できる。便器1内の空間温度は、例えば、季節によって変動することから、それぞれの季節に応じて設定してもよい。本実施形態において、日本の場合、空間温度の設定は、例えば、3~5月にかけては、15℃とし、6~8月にかけては、25℃とし、9月~11月にかけては、15℃とし、12~2月にかけては15℃としてもよい。
【0075】
このように、本実施形態によれば、例えば、容易に、着座、流水の開始、排尿開始および排尿終了を推定できる。また、このように排尿開始および排尿終了の時刻を推定できることから、この開始から終了までの時間内に取得された空間温度情報を用いて、前述のように仮排尿量の算出を行い、補正により推定排尿量を推定してもよい。
【0076】
つぎに、対象者の行動として、排尿開始および排尿終了を推定し、さらに、推定排尿量を算出する、排尿管理装置2を用いた排尿管理方法のフローチャートの一例を、
図9に示す。なお、空間温度センサ13による経時的な空間温度情報については、
図6-8を参照する。また、環境温度および排尿温度は、一例として、別の補正用温度センサにより直接測定した温度を、使用する。
【0077】
まず、便器1に設置した距離センサにより、対象者の便器1の便座部12への着座が検出されたら、空間温度センサ13による測定を開始する(START)。
【0078】
空間温度センサ13により便器1内の温度の空間分布情報の測定を開始し(S101)、フレームごとにフレーム内平均値aの算出を繰り返し行う(S102)。そして、着座後、排尿前の温度として、平均温度(Temp.Ave.)を設定する(S103)。そして、[Temp.Ave+0.3(℃)]を示す最初のフレーム内平均値aがあるか否かを判断する(S104)。ない場合(NO)、排尿なしと推定する(S105)。ある場合(YES)、その時刻から1フレーム遡った時刻を排尿開始時刻T(s)として推定し(S106)、さらに、対象者の行動を排尿開始と推定する(S107)。
【0079】
つぎに、排尿開始時刻より後で、[Temp.Ave+0.5(℃)]を示す2回のフレーム内平均値aがあるか否かを判断する(S108)。ない場合(NO)、排尿開始は推定されるものの、排尿終了は推定不可となる(S109)。ある場合(YES)、2回目の時刻を排尿終了時刻T(e)と推定し(S110)、さらに、対象者の行動を排尿終了と推定する(S111)。
【0080】
一方、空間温度センサ13とは別の補正用温度センサにより、便器1またはトイレの環境温度を測定し(S201)、または、排尿温度を測定する(S301)。これらの工程で測定した環境温度に基づいて、環境温度の補正係数が選択でき、排尿温度に基づいて、排尿温度の補正係数が選択できる。
【0081】
そして、前記工程(S106)および工程(S110)の推定結果である排尿開始時刻T(s)と排尿終了時刻T(e)とに基づいて、この間に取得された温度の空間分布情報より、仮排尿量を算出する(S112)。さらに、前記工程(S201)で測定した環境温度における補正係数および/または前記工程(S301)で測定した排尿温度における補正係数により、仮排尿量を補正する(S113)。そして、得られた補正排尿量を推定排尿量として推定する(S114)。
【0082】
そして、各工程で得られた推定結果および推定不可の結果、前記推定排尿量を出力し(S115)、終了する(END)。
【0083】
[実施形態3]
本発明の便器、本発明の補高便座、本発明の便座は、それぞれ、前記本発明の排尿管理装置を備えていればよく、前記各実施形態の例示を援用できる。
【0084】
[実施形態4]
本実施形態のプログラムは、前記本発明の排尿管理方法を、コンピュータ上で実行可能なプログラムである。または、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体は、例えば、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)である。前記記録媒体としては、特に限定されず、例えば、前述のような記憶媒体等があげられる。
【実施例】
【0085】
[実施例1]
本発明によれば、前述のように、算出排尿量(推定排尿量)を、環境温度の補正係数または排尿温度の補正係数により補正することで、より正確な補正排尿量を算出することができる。そこで、本実施例においては、この前提となる、推定排尿量に対する環境温度および排尿温度の影響を確認した。具体的には、
図1に示す空間温度センサ13を設置した便器1を用いて、以下に示す各種評価を行った。
【0086】
まず、空間温度センサ13を設置した便器1の作成について、説明する。座面を調整するための補高便座14に、
図1(C)に示すように、空間温度センサ13を配置した。具体的には、市販の補高便座(商品名EWC441S、TOTO)に、4個の空間温度センサ13(商品名D6T-44L-06、オムロン社)、プロセッサ16(商品名Raspberry Pi 3 Model B_Single、Raspberry Pi Foundation)、多重装置(Multiplexer)17、距離センサ(商品名GP2Y0E03、SHARP)、電源を組み込んだ。プロセッサ16は、Java(登録商標)言語で開発したプログラムで、前記式(1)から式(4)による排尿量算出を行うように制御した。
図1の便器1における各空間温度センサ13の位置は、補高便座14の内周における最前且つ上面の位置を原点(
図1(A)における星印)とする座標(x、y、z)で示す。男性および女性の排尿落下位置を、解剖学的な見地に基づき、前記原点からx軸方向に、それぞれ60mmおよび120mmとした。空間温度センサ13の配置は、x軸上の前記原点から150mmまでの距離において、連続的に排尿を測定できるよう決定した。空間温度センサ13のうち、ID=1およびID=2は、水平方向の視野角中央が男性排尿位置(x=60mm)と一致する位置および角度に設置し、空間温度センサ13のうちID=0およびID=3は、水平方向の視野角中央が女性排尿位置(x=120mm)と一致する位置および角度に設置した。空間温度センサ13は、
図1(D)に示すように、4行×4列の16のチャンネルを有し、視野角が、x方向に44.2°、y方向に45.7°のものを使用した。
【0087】
空間温度センサ13の視野角は、一般的に、角度を変化させた場合の最大出力を基準として、その50%以上の出力が得られる角度範囲と定義されている。そして、視野角外に熱源があれば、視野角内よりも小さな値になるが、出力が得られる。このため、本実施例においては、ID=0とID=1との間における視野角外空間、ID=2とID=3のとの間における視野角外空間でも、死角とならず、隣り合う空間温度センサ13からの出力を合計することで、補完的に温度測定が行われた。空間温度センサ13は、5~50℃の温度範囲を検出でき、温度データを250ms毎(Δt)に送信するものとした。各空間温度センサ13について、原点からの配置の座標位置を下記表1に示す。空間温度センサ13には、カバー材として、赤外線が透過する超高分子量ポリエチレンフィルム(No.440、厚み0.5mm、白色、日東電工)を使用した。空間温度センサ13を備える補高便座14は、市販の腰掛式便器(衛生陶器)の便器本体10と便座部12との間に設置した。
【0088】
【0089】
(1)環境温度による影響の評価
図10の概略図に示すように、空間温度センサ13を設置した便器1に、ボトル40から疑似尿41を落下させた。疑似尿41は、水を使用し、前記原点からx軸方向60mmの位置(
図1(A)における黒点の位置)に落下させ、疑似尿41の落下位置からZ軸方向70mm下方の位置で、空間温度センサ13により温度差画像を取得した。この際、トイレの室温は、所定温度(15.0℃、20.0℃、25.0℃、および30.0℃)を目標として、±1.0℃に制御した。疑似尿41の排尿量は、100ml、200ml、300mlとし、落下条件は、平均疑似尿流量20ml/s、30ml/s、40ml/sとした。
【0090】
ボトル40は,予め、落下前のボトル40内の疑似尿41が、空間温度センサ13に影響を与えない位置に設置した。また、平均疑似尿流量は、ボトル40先端の穴径を調整して変化させた。平均疑似尿流量20ml/sの場合、穴径5.7mm、平均疑似尿流量30ml/sの場合、穴径7.1mm、平均疑似尿流量40ml/sの場合、穴径7.5mmとした。落下させる前記疑似尿の温度は、37.0±0.5℃とした。また、疑似尿41の排尿量200ml、平均疑似尿流量20ml/sの条件については、室温37.0±1.0℃についても、温度測定を行った。
【0091】
また、温度差画像の取得は、各条件について、それぞれ9回行い、それぞれについて得られた温度差画像に基づいて前記プログラムにより算出された9回の仮排尿量から、最大値と最小値とを除き、7回の仮排尿量を解析に使用した。各室温における全ての仮排尿量の結果から、近似直線を生成し、その傾きから、換算係数a[ml/℃3/2]を算出した。
【0092】
図11に、室温20.0℃、疑似排尿量200ml、平均疑似尿流量20ml/sの条件について、各空間温度センサ13(ID=0、1、2、3)の各チャンネル(ch0~15)における測定温度の典型例を示す。
図11は、各温度センサの各チャンネルのグラフであり、横軸が時間、縦軸が温度を示す。
図11における各チャンネルのグラフの配置は、
図1(D)の各チャンネルの配置に対応する。その結果、中央2列のチャンネルにおいて、落下する疑似尿41による一時的な温度上昇が確認された。具体的には、前方配置の2つのセンサ、すなわちID=1のch=1、5、9および13、ならびにID=2のch=2、6、10および14で、疑似尿41による一時的な温度上昇が得られた。一方、後方配置の2つのセンサ、すなわち、ID=0ならびにID=3のch=0、4、8およびch=3、7、11では、顕著な温度変化が認められなかったが、ID=0のch=12およびID=3のch=15では、一時的な温度上昇が認められ、さらに、疑似尿41の落下終了時刻以降も、温度は、疑似尿41の落下前の温度にまで戻らなかった。
【0093】
つぎに、
図12に、室温変化の仮排尿量への影響に関して、室温変化との仮排尿量との関係のグラフを示す。
図12は、(A)が疑似排尿量100ml、(B)が200ml、(C)が300mlの結果であり、横軸は室温、縦軸は仮排尿量を示す。
図12に示すように、室温上昇と共に、仮排尿量は直線的に減少し、低室温になる程、仮排尿量(n=7)に大きな分散が確認された。また、平均疑似尿流量を変化させても、仮排尿量の変化は小さく、室温と仮排尿量との間に、一定の傾きを持つ直線関係が得られた。疑似排尿量300ml、平均疑似尿流量30ml/sの条件では、近似直線の相関が最も悪く(R
2=0.93)、他の条件では、これより良い相関関係を示した。さらに、
図12(B)において、室温37.0℃、疑似排尿温37.0℃、疑似排尿量200ml、平均疑似尿流量20ml/sの条件における仮排尿量(右端のプロット)は、室温と疑似排尿量が同温であるものの理論値のゼロにはならなかったが、最も小さな値36.1±4.0mlを示した。
【0094】
(2)排尿温度影響評価
つぎに、排尿温度の変化がセンサ部に与える影響を、前記(1)の環境温度影響評価と同じ方法で測定した。疑似尿の温度は、35.0℃、37.0℃、39.0℃、41.0℃を目標温度として、±0.5℃に制御し、疑似排尿量200ml、平均疑似尿流量20ml/sの条件で落下させた.室温は、20.0±1.0℃とした。そして、各条件での測定を、それぞれ9回行い、各温度測定値に基づいて前記プログラムにより算出された9回の仮排尿量から、最大値と最小値とを除き、7回の仮排尿量を解析に使用した。各室温における全ての仮排尿量の結果から、近似直線を生成し、その傾きから、換算係数a[ml/℃3/2]を算出した。
【0095】
図13に、疑似尿温の仮排尿量への影響に関して、疑似尿温と仮排尿量との関係のグラフを示す。
図13において、横軸は、疑似尿温であり、縦軸は、仮排尿量を示す。測定時の室温20.0℃、疑似尿温20.0℃の条件における仮排尿量は、同温であるものの、理論値のゼロにはならなかったが、最も小さな値13.5±1.4mlを示した。また、疑似尿温の上昇と共に、仮排尿量は、線形に増加した。疑似尿温35.0~41.0℃における近似直線の相関係数は、R
2=0.98であった。疑似尿温上昇に伴い、仮排尿量(n=7)の分散が増大する傾向が確認された。
【0096】
(3)トイレ排尿での影響評価
被検者の便座への着座および洗浄水が、尿量評価に与える影響を確認した。
【0097】
6名の被検者1~6(健常成人男性、22.5±0.76歳、mean±SD)に対して、2018年5月8日から6月15日までの期間、トイレ個室の室温が20.0±1.0℃の条件下、空間温度センサ13による温度測定と推定排尿量の算出を行った。被検者は、尿意を催した時点で、前記実施例1の空間温度センサ13が設置された便器1を有する個室トイレに入り、下着を下ろして、便器1の便座部12に着座し、座位姿勢で排尿し、その後、便器1内の排泄物を水洗し、着衣を整えて退出した。また、被検者は、トイレ個室への入退室の前後(すなわち、排尿前後)の体重を、電子体重計(DP-7800PW-120:秤量120kg、目量20g、Yamato Scale)で測定した。そして、前後の体重差を、排尿量の参照値として記録し、推定排尿量との比較に使用した。空間温度センサ13による温度測定は、被検者が、便器1に設置された前記距離センサに500mmまで近づいたときに、開始(t=0s)し、180s間測定を行い、記録した。排尿開始時刻および排尿終了時刻の温度の判断は、排尿以外の熱源の影響を受け難い、チャンネルch=4~11の温度変化によって決定した。排尿開始時刻(ts)は、TempID,ch(0)から温度が0.3℃上昇した時刻とした。排尿終了時刻(te)は、排泄前の背景温度に対して0.5℃高い状態にまで温度が低下した時刻とした。換算係数a[ml/℃3/2]は、重量差と推定排尿量とから算定した。
【0098】
図14に、被検者6名のうち、被検者1について、トイレ排尿時の温度分布の典型例を示す。
図14は、各補正用温度センサ(ID=0、1、2、3)の各チャンネル(ch=0~15)における測定時間と温度との関係を示すグラフであり、横軸は、測定時間であり、縦軸は、温度である。
図14に示すように、垂直方向のチャンネル並びであるch=1、5、9、13およびch=2、6、10、14の温度は、時刻7sから3~5℃上昇し、時刻17sから低下して、測定開始時の温度に戻った。一方、水平方向で便器1内部の上方温度を測定するチャンネル並びのch=0~3では、測定開始直後の時刻1sから25sまで、1℃程度の温度上昇が確認された。また、便器1内部の下方温度を測定するch=8~15では、時刻7sから一過性の温度上昇があった後、17s以降も、測定開始時より1~2℃程度の高い温度を保った。その後、時刻37sで一時的に1℃程度の温度低下を記録し、時刻約50sで測定開始時の温度に戻った。これらに対して、便器1内部の中央上方の水平方向の温度を測定するチャンネル並びであるch=4~7では、他のチャンネル並びに比べて、3~5℃の一時的な温度上昇のみが記録された。被検者6名のうち、被検者6を除いた他の4名(被検者2~5)も、被検者1と同様の傾向を示した。
【0099】
図15に、6名の被検者により得られた全排尿30回の結果を、Bland-Altman plotsにより示した。
図15において、横軸は、推定排尿量であり、縦軸は、排尿前後の体重差である。
図15に示すように、体重差と推定排尿量との差は、-0.2±93.3(mean±SD)であった。30回の排尿のうち、21回は、±1SDの範囲に収まり、特に強い正または負の相関はみられなかった。
【0100】
図16に、6名の被検者により得られた全排尿30回について、重量差と推定排尿量との相関関係を示す。重量差と推定排尿量との近似直線の傾きは、1.06であり、相関係数は、R
2>0.50であった。また、全排尿30回の推定排尿量の誤差率は、-49~123%の範囲であった。全ての推定排尿量の平均誤差率は、31%(n=30)であった。被検者6を除いた被検者1~5の推定排尿量の誤差率は、-49~42%の範囲であった。被検者6を除いた被検者1~5の推定排尿量の平均誤差率は、25%であった(n=25)。
【0101】
以上の結果から、以下のことが明らかになった。
【0102】
前記(1)の環境温度評価では、落下させる疑似尿温と室温との温度差が小さくなるほど、推定排尿量が少なく算出された(
図12)。また、前記(2)の尿温評価では、疑似尿温が高くなるほど、推定排尿量が多く算出された(
図13)。このように、推定排尿量は、測定環境の温度および排尿温度の影響を受けることが明らかとなった。一方、疑似排尿量の大小にかかわらず、推定排尿量は、室温の変化および疑似尿温の変化に対して、一定の傾きを持つ直線関係を示した。これらの結果から、室温が尿温に近く、温度差が小さいときには、大きな換算係数を補正係数とし、一方、室温が低く、尿温との温度差が大きいときには、小さな換算係数を補正係数とし、算出される推定排尿量をさらに補正することで、実排尿量との誤差がより少ない補正排尿量を算出することができる。
【0103】
前記(3)では、トイレの個室の室温(環境温度)を20.0±1.0℃に制御して、被検者の排尿に関する温度情報を収集した。その結果、被検者の行動と、温度変化との間に、以下のような関係があることが明らかとなった。すなわち、前記(1)における疑似排尿を用いた結果と同様に、前記(3)における被検者の排尿においても、
図14に示すように、一時的な温度上昇が、空間温度センサ13のch=1、5、9、13およびch=2、6、10、14で観察された。そして、
図14に示す温度波形の変化から、時刻7sで排尿を開始し、17sに排尿が終了したと推測できる。さらに、
図14に示す温度波形の変化から、以下に示すように、被検者の着座による臀部からの温度上昇、洗浄水による一時的な温度低下も推測できる。すなわち、
図14に示すように、空間温度センサ13において、便座の下部方向を測定するチャンネル並びch=0~3により、被検者の着座による臀部からの一時的な温度上昇が確認された。このことから、被検者は、時刻1sで着座し、時刻25sに起立したと推測できる。また、空間温度センサ13において、便器1のボウル部11内部の洗浄面方向を測定するチャンネル並びch=8~15により、洗浄水による一時的な温度低下が、時刻37sに確認された。さらに、チャンネル並びch=12~15は、ボウル部11の水溜方向を測定するチャンネル並びであるため、これらのチャンネルにより、排尿開始から洗浄水が流れるまで、水溜に集まった排尿からの熱が測定されたと推測される。このように、温度変化データから、被検者の便座への着座、排尿開始、排尿終了、洗浄水による洗浄開始、被検者の起立の時刻等を推定できる。このため、温度変化の情報から、プライベートな個室トイレであっても、人の行動が把握できる。
【0104】
図15に示すように、温度情報から算出される推定排尿量は、ほぼ±1SD内に収まった。また、
図16に示すように、30回の測定のうち、9回の測定は、1SD外となったが、体重変化と推定排尿量とのの近似直線の傾きは、1.06であった。30回の推定排尿量の平均誤差率は31%であった。対象者6は、他の対象者よりも、推定排尿量が多く推定される傾向があったが、これは、対象者6の体格指数BMIが18.3kg/m
2であり、他の対象者に比べて細身であったため、臀部が便器1の内部にまで落ち込んだ可能性があると考えられる。同様の理由から、対象者6の測定結果は、他の対象者と同様に、ch=0~3に加えてch=4~7でも、着座時に温度が高く測定されていた。これらのチャンネルは、排尿による温度上昇に加え、着座による臀部の温度も測定していた可能性が推測される。
【0105】
[実施例2]
空間温度センサ13の個数を1つにしても、温度空間分布情報を取得可能なことを確認した。
【0106】
空間温度センサを、
図1(C)に示すうちの1つ(ID=2)とした以外は前記実施例1(1)と同様にして、便器1に疑似尿41を落下させ、空間温度センサ13(ID=2)により温度評価を行った。
【0107】
図17に、室温25.0℃、疑似排尿量300ml、平均疑似尿流量20ml/sの条件について、空間温度センサ13(ID=2)の各チャンネル(ch0~15)における測定温度の典型例を示す。
図17は、空間温度センサ13(ID=2)の各チャンネルのグラフであり、横軸が時間、縦軸が温度を示す。
図17における各チャンネルのグラフの配置は、
図1(D)の各チャンネルの配置に対応する。その結果、ch=2、6、10および14で、疑似尿41による一時的な温度上昇が得られた。
【0108】
図17に示すように、空間温度センサ13(ID=2)が1つであっても、排尿による温度空間分布情報の変化を確認できた。このため、本発明の排尿管理装置によれば、便器1に設置される空間温度センサ13が1つであっても、排尿量の測定が可能である。
【0109】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0110】
この出願は、2019年1月31日に出願された日本出願特願2019-016258を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【0111】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
温度空間分布取得部と、補正用温度情報取得部と、排尿量推定部とを含み、
前記温度空間分布取得部は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し
前記補正用温度情報取得部は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定部は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数である
ことを特徴とする排尿管理装置。
(付記2)
前記温度空間分布取得部が、
前記便器内の空間における温度画像を取得し、
前記温度画像から、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を、前記温度の空間分布情報として、抽出し、
前記排尿量推定部が、
前記尿流量の面積を示す前記尿流温度画像の合計画素値と、前記尿流温度画像が得られた時間の長さとに基づいて、前記仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、前記推定排尿量を推定する、付記1記載の排尿管理装置。
(付記3)
前記温度画像が、非接触マトリクス温度センサで検出された画像である、付記2記載の排尿管理装置。
(付記4)
さらに、行動推測部を含み、
前記行動推測部は、
前記温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報とから、対象者の行動を推測し、
前記推測情報は、行動に紐づけられた温度変化情報である、付記1から3のいずれかに記載の排尿管理装置。
(付記5)
さらに、便器と、複数の温度センサとを有し、
前記便器に、前記複数の温度センサが配置され、
前記複数の温度センサが、前記温度空間分布取得部を含む、付記1から4のいずれかに記載の排尿管理装置。
(付記6)
前記温度センサが、非接触マトリクス温度センサである、付記5記載の排尿管理装置。
(付記7)
温度空間分布取得工程と、補正用温度情報取得工程と、排尿量推定工程とを含み、
前記温度空間分布取得工程は、
便器内の空間における温度の空間分布情報を取得し
前記補正用温度情報取得工程は、
便器の配置環境における環境温度および排尿温度の少なくとも一方を取得し、
前記排尿量推定工程は、
前記温度の空間分布情報に基づいて、仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、環境温度の補正係数および排尿温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、補正排尿量を推定排尿量として推定し、
前記環境温度の補正係数は、環境温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数であり、
前記排尿温度の補正係数は、排尿温度ごとに設定された、仮排尿量と実排尿量との相関関係を示す係数である
ことを特徴とする排尿管理方法。
(付記8)
前記温度空間分布取得工程が、
前記便器内の空間における温度画像を取得し、
前記温度画像から、排尿の尿流量の面積を示す尿流温度画像を、前記温度の空間分布情報として、抽出し、
前記排尿量推定工程が、
前記尿流量の面積を示す前記尿流温度画像の合計画素値と、前記尿流温度画像が得られた時間の長さとに基づいて、前記仮排尿量を算出し、
前記仮排尿量を、前記環境温度および前記排尿温度の少なくとも一方に基づいて、排尿温度の補正係数および環境温度の補正係数の少なくとも一方で補正することにより、前記推定排尿量を推定する、
付記7記載の排尿管理方法。
(付記9)
前記温度画像が、非接触マトリクス温度センサで検出された画像である、付記8記載の排尿管理方法。
(付記10)
さらに、行動推測工程を含み、
前記行動推測工程が、
前記温度の空間分布情報に基づく温度変化と、推測情報とから、対象者の行動を推測し、
前記推測情報は、行動に紐づけられた温度変化情報である、付記7から9のいずれかに記載の排尿管理方法。
(付記11)
付記7から10のいずれかに記載の排尿管理方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
(付記12)
付記11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(付記13)
便器本体と、付記1から6のいずれかに記載の排尿管理装置とを備えることを特徴とする便器。
(付記14)
便座本体と、付記1から6のいずれかに記載の排尿管理装置とを備えることを特徴とする便座。
【符号の説明】
【0112】
1 便器
10 便器本体
11 ボウル部
12 便座部
13 空間温度センサ
18 検査面
2 排尿管理装置
20 温度空間分布取得部
21 補正用排尿温度情報取得部
22 排尿量推定部
23 記憶部
30 CPU
31 メモリ
32 バス
33 入力装置
34 ディスプレイ
35 通信デバイス
36 記憶装置
37 プログラム