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7327858ペプチド化合物の製造方法及びアミド化反応剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の製造方法及びアミド化反応剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/08 20060101AFI20230808BHJP
   B01J 31/14 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C07K1/08
B01J31/14 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022565830
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2022021434
(87)【国際公開番号】W WO2022255195
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021091438
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/060843(WO,A1)
【文献】特表2009-507906(JP,A)
【文献】MARTIN, S. F. et al.,APPLICATION OF AIMe3-MEDIATED AMIDATION REACTIONS TO SOLUTION PHASE PEPTIDE SYNTHESIS,Tetrahedron Letters,1998年,Vol.39,pp.1517-1520
【文献】MURAMATSU, W. et al.,Substrate-Directed Lewis-Acid Catalysis for Peptide Synthesis,J. Am. Chem. Soc.,2019年,Vol.141,pp.12288-12295
【文献】MURAMATSU, W. et al.,Game Change from Reagent- to Substrate-Controlled Peptide Synthesis,Bull. Chem. Soc. Jpn.,2020年,Vol.93,pp.759-767
【文献】CHUNG, S. W. et al.,Trimethylaluminium-Facilitated Direct Amidation of Carboxylic Acids,SYNLETT,2011年,No. 14,pp.2072-2074
【文献】LI, J. et al.,AlMe3-Promoted Formation of Amides from Acids and Amines,Org. Lett.,2012年,Vol. 14, No. 1,pp.214-217
【文献】DUBOIS, N. et al.,On DABAL-Me3 promoted formation of amides,Tetrahedron,2013年,Vol.69,pp.9890-9897
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド化合物を製造する方法であって、
(i)下記式(A)で表されるアルミニウム化合物の存在下、下記式(R1)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基又は置換カルボキシル基と、下記式(R2)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P1)で表されるペプチド化合物を得る工程、及び、
(ii)前記工程(i)の後、得られた下記式(P1)で表されるペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基と、下記式(R3)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基又は置換カルボキシル基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P2)で表されるペプチド化合物を得る工程
を含む製造方法。
【化1】
但し、式(A)中、
a、Rb、及びRcは、各々独立に、炭素原子数10以下の一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基表す。
【化2】
但し、式(R1)中、
a1 は、水素原子を表し、
a2は、素原子又は一価の置換基を表し、
11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
13は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R11とR13とが互いに結合して、R11が結合する炭素原子及びR13が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
11及びA12は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p11及びp12は、各々独立に、0又は1を表し、
1は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n1が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化3】
但し、式(R2)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
21及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
23は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R21とR23とが互いに結合して、R21が結合する炭素原子及びR23が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
21及びA22は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p21及びp22は、各々独立に、0又は1を表し、
2は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n2が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化4】
し、式(P1)中、
a1 、R11、R12、R13、A11、A12、p11、p12、及びn1は、前記式(R1)における定義と同じ基を表し、
PGb、R21、R22、R23、A21、A22、p21、p22、及びn2は、前記式(R2)における定義と同じ基を表す。
【化5】
但し、式(R3)中、
cは、水素原子又は一価の置換基を表し、
cは、ハロゲン原子、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
3は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n3が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化6】
但し、式(P2)中、
11、R12、R13、A11、A12、p11、p12、及びn1は、前記式(R1)における定義と同じ基を表し、
PGb、R21、R22、R23、A21、A22、p21、p22、及びn2は、前記式(R2)における定義と同じ基を表し、
c、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びn3は、前記式(R3)における定義と同じ基を表す。
【請求項2】
反応系にシラン化合物を共存させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応がバッチ反応又はフロー反応である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法に使用するためのアミド化反応剤であって、下記式(A)で表されるアルミニウム化合物を含むアミド化反応剤。
【化7】
但し、式(A)中、
a、Rb、及びRcは、各々独立に、炭素原子数10以下の一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド化合物の新規な製造方法、及び、当該製造方法に使用されるアミド形成反応剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチドに代表されるアミド化合物は、医薬品、化粧品、機能性食品をはじめ、幅広い分野で利用されており、その合成法の開発は、合成化学における重要な研究課題として精力的に実施されてきた(非特許文献1~3)。しかし、そのペプチド合成に最も重要であるアミド化にはカルボン酸活性化剤の他には、真に有効な触媒や反応剤が殆ど存在していない。そのため、大量の副生成物を生ずる反応様式を用いざるを得ず、しかも多段階の反応を繰り返すペプチド合成はアトム・エコノミー(原子収率)の観点から極めて非効率な合成であり、副生成物は膨大な量となり、また、有効な精製手段も少ない。その結果、副生成物の廃棄と精製にかかるコストがペプチド合成の殆どの必要経費を占め、この分野の発展における最大障壁の一つとなっている。
【0003】
アミノ酸又はその誘導体を原料とするペプチド合成では、高立体選択的にアミド化を行うことが求められる。高立体選択的なアミド化としては、生体内での酵素反応が挙げられる。例えば、生体内では、酵素と水素結合を巧みに利用して、極めて高立体選択的にペプチドを合成している。しかしながら、酵素反応は、大量生産には不向きであり、合成化学に適用すると、膨大な金銭的・時間的なコストが必要となる。
【0004】
合成化学においても、触媒を用いたアミド化が検討されているが、従来の手法では、主にカルボン酸を活性化する手法によりアミド結合を形成しているため、ラセミ化の進行が早く、高立体選択的且つ効率的にアミド化合物を合成することは困難である。
【0005】
また、従来の方法では、複数のアミノ酸又はその誘導体が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸又はその誘導体をアミド結合によりライゲーション(Chemical Ligation)することや、二以上のペプチドをアミド結合によりライゲーションすることは、極めて困難である。斯かるペプチドに対するライゲーションのためのアミド化法としては、硫黄原子を有するアミノ酸を用い、硫黄原子の高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献4)や、アミノ酸のヒドロキシアミンを合成し、ヒドロキシアミンの高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献5)が知られているが、前者は硫黄原子を有するアミノ酸の合成が難しく、後者は数工程に亘るヒドロキシアミン合成が別途必要となるため、何れも時間・費用がかかり、効率性の面で難がある。
【0006】
本発明者等は、β位にヒドロキシ基を有するカルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献1)、アミノ酸前駆体としてヒドロキシアミノ/イミノ化合物を用い、これを特定の金属触媒の存在下でアミド化した後、特定の金属触媒の存在下で還元する方法(特許文献2)、カルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献3)等により、高化学選択的にアミド化合物を合成する技術を開発している。更には、N末端保護アミノ酸・ペプチドのカルボキシル基と、C末端保護アミノ酸・ペプチドのアミノ基を、特定のシリル化剤(及び任意により併用されるルイス酸触媒)の存在下でアミド反応させた後、脱保護することにより、種々のアミノ酸残基からなるペプチドを高効率・高選択的に合成する技術(特許文献4)や、N末端保護若しくは無保護アミノ酸・ペプチドのカルボキシル基と、C末端保護若しくは無保護アミノ酸・ペプチドのアミノ基を、特定のシリル化剤の存在下でアミド反応させた後、脱保護することにより、種々のアミノ酸残基からなるペプチドを高効率・高選択的に合成する技術(特許文献5、6)、更にはブレンステッド酸を触媒として用いてアミド化反応を行う技術(特許文献7)も開発している。
【0007】
なお、近年では無保護アミノ酸を用いたペプチド合成の試みもなされているが(非特許文献6~8)、何れも使用可能なアミノ酸の種類や反応効率の点で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/204144号
【文献】国際公開第2018/199146号
【文献】国際公開第2018/199147号
【文献】国際公開第2019/208731号
【文献】国際公開第2021/085635号
【文献】国際公開第2021/085636号
【文献】国際公開第2021/149814号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Chem. Rev., 2011, Vol.111, p.6557-6602
【文献】Org. Process Res. Dev., 2016, Vol.20, No.2, p.140-177
【文献】Chem. Rev., 2016, Vol.116, p.12029-12122
【文献】Science, 1992, Vol.256, p.221-225
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2006, Vol.45, p.1248-1252
【文献】Chem. Eur. J. 2019, Vol.25, p.15091
【文献】Org. Lett. 2020, Vol.22, p.8039
【文献】Chem. Eur. J. 2018, Vol.24, p.7033
【文献】Synlett, 2011, p.2072-2074
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の背景から、種々のアミノ酸からなるペプチド化合物を安価且つ効率的に合成する方法が求められていた。本発明は、斯かる課題に鑑みなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構造を有するアルミニウム化合物が、種々のアミノ酸やペプチドの末端カルボキシル基と末端アミノ基との間にアミド形成反応を生じさせる作用を有することを見出した。その上で、斯かるアルミニウム化合物をアミド形成反応剤として用いることで、種々のアミノ酸やペプチドを基質として、それらの末端カルボキシル基と末端アミノ基との間に高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、種々のアミノ酸からなるペプチド化合物を安価且つ効率的に合成することが可能となることを見出した。更には、斯かるアルミニウム化合物をアミド形成反応剤として用いることで、N末端無保護のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを求電子性アミノ酸として、求核種である他のアミノ酸又はペプチドの末端アミノ基とアミド化反応させることも可能となるのを見出し、本発明に到達した。
【0012】
従来、カルボン酸化合物とアミノ化合物とのアミド化反応にトリメチルアルミニウムを使用するとの報告はあったものの(非特許文献9参照)、トリメチルアルミニウムを含む特定構造のアルミニウム化合物が、アミノ酸やペプチドの間のアミド化によるペプチド合成用の反応剤として利用できることはこれまで知られておらず、本願発明者等が初めて見出した驚くべき知見である。また、アミノ酸エステル又はペプチドエステルを求電子種として用いたアミド化反応もこれまで殆ど報告されておらず、この点でも本願発明者等の知見は驚くべきものと言える。
【0013】
すなわち、本発明の趣旨は、以下に存する。
[項1]
ポリペプチド化合物を製造する方法であって、(i)下記式(A)で表されるアルミニウム化合物の存在下、下記式(R1)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基と、下記式(R2)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P1)で表されるペプチド化合物を得ることを含む製造方法。
【化1】
但し、式(A)中、
a、Rb、及びRcは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式基、脂肪族炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、複素環式基置換オキシ基、若しくはメタロキシ基を表す。
【化2】
但し、式(R1)中、
11及びTa2は、各々独立に、水素原子又は一価の置換基を表し、
11及びR12は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
13は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R11とR13とが互いに結合して、R11が結合する炭素原子及びR13が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
11及びA12は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p11及びp12は、各々独立に、0又は1を表し、
1は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n1が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化3】
但し、式(R2)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
21及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
23は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R21とR23とが互いに結合して、R21が結合する炭素原子及びR23が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
21及びA22は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p21及びp22は、各々独立に、0又は1を表し、
2は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n2が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化4】
但し、式(P1)中、
a、R11、R12、R13、A11、A12、p11、p12、及びn1は、前記式(R1)における定義と同じ基を表し、
PGb、R21、R22、R23、A21、A22、p21、p22、及びn2は、前記式(R2)における定義と同じ基を表す。
[項2]
前記工程(i)の後、更に(ii)下記式(R3)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基と、前記式(P1)で表されるペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P2)で表されるペプチド化合物を得る工程を更に含む、項1に記載の方法。
【化5】
但し、式(R3)中、
cは、水素原子又は一価の置換基を表し、
cは、ハロゲン原子、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
3は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、n3が2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化6】
但し、式(P2)中、
11、R12、R13、A11、A12、p11、p12、及びn1は、前記式(R1)における定義と同じ基を表し、
PGb、R21、R22、R23、A21、A22、p21、p22、及びn2は、前記式(R2)における定義と同じ基を表し、
c、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びn3は、前記式(R3)における定義と同じ基を表す。
[項3]
反応系にシラン化合物を共存させる、項1又は2に記載の方法。
[項4]
前記反応がバッチ反応又はフロー反応である、項1~3の何れか一項に記載の方法。
[項5]
項1~4の何れか一項に記載の方法に使用されるアミド化反応剤であって、下記式(A)で表されるアルミニウム化合物を含むアミド化反応剤。
【化7】
但し、式(A)中、
a、Rb、及びRcは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式基、脂肪族炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、若しくは複素環式基置換オキシ基を表す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、特定の構造を有するアルミニウム化合物をアミド形成反応剤として用いることで、種々のアミノ酸やペプチドを基質として、それらの末端カルボキシル基と末端アミノ基との間に高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、種々のアミノ酸からなるペプチド化合物を安価且つ効率的に合成することが可能となる。また、斯かるアルミニウム化合物をアミド形成反応剤として用いることで、N末端無保護のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを求電子性アミノ酸として、求核種である他のアミノ酸又はペプチドの末端アミノ基とアミド化反応させることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0016】
なお、本開示で引用する特許公報、特許出願公開公報、及び非特許文献は、何れもその全体が援用により、あらゆる目的において本開示に組み込まれるものとする。
【0017】
[I.用語の定義]
本開示において「アミノ酸」とは、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物を意味する。別途明示しない限り、アミノ酸の種類は特に限定されない。例えば、光学異性の観点からは、D体でもL体でもラセミ体でもよい。また、カルボキシル基とアミノ基との相対位置の観点からは、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ω-アミノ酸等の何れであってもよい。アミノ酸の例としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質を構成する天然アミノ酸等が挙げられ、具体例としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、トレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリン等が挙げられる。
【0018】
本開示において「ペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合を介して連結された化合物を意味する。別途明示しない限り、ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は、互いに同じ種類のアミノ酸単位であってもよく、二種類以上の異なるアミノ酸単位であってもよい。ペプチドを構成するアミノ酸の数は、2以上であれば特に制限されない。例としては、2(「ジペプチド」ともいう)、3(「トリペプチド」ともいう)、4(「テトラペプチド」ともいう)、5(「ペンタペプチド」ともいう)、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100、又はそれ以上が挙げられる。また、トリペプチド以上のペプチドを指して「ポリペプチド」という場合もある。
【0019】
本開示において「アミノ基」とは、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから水素を除去して得られる、それぞれ式-NH2、-NRH、又は-NRR’(但しR及びR’はそれぞれ置換基を意味する。)で表される官能基を意味する。
【0020】
本開示において、別途明示しない限り、炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよい。脂肪族炭化水素基は鎖状でも環状でもよい。鎖状炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。環状炭化水素基は、単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。炭化水素基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。即ち、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等を含む概念である。なお、別途明示しない限り、炭化水素基の一又は二以上の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよく、炭化水素基の一又は二以上の炭素原子が、価数に応じた任意のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0021】
本開示において「炭化水素オキシ基」とは、前記定義の炭化水素基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。即ち、炭化水素オキシ基は、アルキルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基、シクロアルキニルオキシ基、アリールオキシ基等を含む概念である。
【0022】
本開示において「炭化水素カルボニル基」とは、前記定義の炭化水素基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。即ち、炭化水素カルボニル基は、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、シクロアルキルカルボニル基、シクロアルケニルカルボニル基、シクロアルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基等を含む概念である。
【0023】
本開示において「炭化水素スルホニル基」とは、前記定義の炭化水素基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。即ち、炭化水素スルホニル基は、アルキルスルホニル基、アルケニルスルホニル基、アルキニルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、シクロアルケニルスルホニル基、シクロアルキニルスルホニル基、アリールスルホニル基等を含む概念である。
【0024】
本開示において「複素環式基」は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。また、複素環式基は単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。また、複素環式基の複素環構成原子に含まれるヘテロ原子は制限されないが、例としては窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素等が挙げられる。
【0025】
本開示において「複素環オキシ基」とは、前記定義の複素環式基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0026】
本開示において「複素環カルボニル基」とは、前記定義の複素環式基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0027】
本開示において「複素環スルホニル基」とは、前記定義の複素環式基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0028】
本開示において(1又は2以上の置換基を有していてもよい)「メタロキシ基」とは、式(R)n-M-O-で表される基を意味する。なお、式中、Mは、任意の金属元素を意味し、Rは、任意の置換基を意味し、nは、金属元素Mの配位数に応じて取り得る0以上8以下の整数を意味する。
【0029】
本開示において「置換基」とは、各々独立に、別途明示しない限り、本発明の製造方法におけるアミド化工程が進行すれば特に制限されず、任意の置換基を意味する。例としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素基、複素環式基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基等が挙げられる。また、これらの官能基が、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、更にこれらの官能基により置換された官能基も、本開示における「置換基」に含まれるものとする。なお、ある官能基が置換基を有する場合、その個数は、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、特に限定されない。また、複数の置換基が存在する場合、これらの置換基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
本開示において使用する主な略語を以下の表1に示す。
【表1】
【0031】
本開示において、アミノ酸及びその残基は、当業者に周知の三文字略称で表す場合がある。本開示において使用する主なアミノ酸の三文字略称を以下の表に示す。
【表2】
【0032】
本開示において、β-ホモアミノ酸及びその残基は、対応するα-アミノ酸の三文字略称の前に「Ho」を付して表す場合がある。
【0033】
[II.アミド化反応剤]
本発明の一側面は、下記式(A)で表されるアルミニウム化合物を含むアミド化反応剤(以下、適宜「本発明のアミド化反応剤」等略称する場合がある。)に関する。
【0034】
【化8】
【0035】
式(A)中、Ra、Rb、及びRcは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式基、脂肪族炭化水素オキシ基、芳香族炭化水素オキシ基、複素環式基置換オキシ基、若しくはメタロキシ基を表す。なお、これらの基が置換基を有する場合、その種類は先に詳述した中から任意に選択される。置換基の数も制限されないが、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0036】
式(A)において、Ra、Rb、及び/又はRcが、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基である場合は、斯かる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0037】
【化9】
【0038】
式(A)において、Ra、Rb、及び/又はRcが(1又は2以上の置換基を有していてもよい)脂肪族炭化水素基である場合、斯かる脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0039】
式(A)において、Ra、Rb、及び/又はRcが(1又は2以上の置換基を有していてもよい)芳香族炭化水素基である場合、斯かる芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0040】
式(A)において、Ra、Rb、及び/又はRcが(1又は2以上の置換基を有していてもよい)複素環式基である場合、斯かる複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0041】
式(A)において、Ra、Rb、及び/又はRcが(1又は2以上の置換基を有していてもよい)メタロキシ基、即ち上記式(R)n-M-O-で表される基である場合、その種類は特に限定されないが、Mがアルミニウム(Al)である基(即ち、アルミニウムオキシ基)が好ましい。なお、アルミニウムオキシ基の場合、上記式中のnは通常は2である。斯かるアルミニウムオキシ基を有する式(A)の化合物は、アミノ化反応の際に系内で複数の式(A)の化合物が反応することにより生じる可能性がある。例えば、Mがアルミニウム(Al)である式(A)の化合物(これを仮に「R3Al」とする。ここではRa、Rb、及びRcを区別せずにRで表す。)である場合、斯かる化合物は系内でR2Al-OHを生じ、これが未反応のR3Alと反応してR2Al-O-AlR2を生じると考えられる。斯かる化合物R2Al-O-AlR2は、置換アルミニウムオキシ基R2Al-O-を置換基Rの一つとして考えれば、式(A)の化合物に該当することになる。理論に束縛されるものではないが、本発明者等は、系内に於ける斯かる化合物R2Al-O-AlR2の形成が、本発明の製造方法に於ける優れた反応効率の一因であると推測している。
【0042】
中でも、式(A)におけるRa、Rb、及び/又はRcとしては、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、複素環オキシ基、又はメタロキシ基等であることが好ましい。
【0043】
式(A)におけるRa、Rb、及び/又はRcの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0044】
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;
・以上の基が1又は2以上の置換基(例えばハロゲン基)で置換された基;
・以上の基を置換基Rとして有する置換アルミニウムオキシ基R2Al-O-;等。
【0045】
なお、本発明のアミド化反応剤としては、以上に説明した式(A)のアルミニウム化合物を何れか一種単独で使用してもよく、何れか二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0046】
式(A)のアルミニウム化合物を用いた本発明のアミド化反応剤によれば、前述の式(R1)で表される種々のアミノ酸又はペプチド化合物の末端カルボキシル基と、前述の式(R2)で表される種々のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物の末端アミノ基との間に高効率的及び/又は高立体選択的にアミド化反応を生じさせ、前述の式(P1)で表されるペプチド化合物を製造することが可能となる(本発明の製造方法(1))。また、斯かる反応に引き続いて、当該式(P1)のペプチドエステル化合物の末端アミノ基と、前述の式(R3)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の末端カルボキシル基との間に高効率的及び/又は高立体選択的にアミド化反応を生じさせ、前述の式(P2)で表されるペプチド化合物を製造することも可能となる(本発明の製造方法(2))。
【0047】
また、アミド化反応の求電子種としては、従来はC末端無保護のアミノ酸やペプチド化合物が用いられてきた。C末端がエステル化されたアミノ酸エステルやペプチドエステルは、C末端無保護アミノ酸と比較して有機溶媒に対する溶解性が高く、比較的安定なためこれまで求核種として汎用されてきたが、C末端が強固にブロックされているため、求電子種としての有用性は着目されていなかった。しかし、式(A)のアルミニウム化合物を用いた本発明のアミド化反応剤によれば、式(R1)の求電子性化合物としてC末端がエステル化されたアミノ酸エステル又はペプチドエステルを用いた場合でも、式(R2)の求核性アミノ酸エステル又はペプチド化合物とアミド化反応を生じさせ、式(P2)のペプチド化合物を製造することが可能となる。
【0048】
本発明のアミド化反応剤を用いたこれらの反応において、従来のアミド化に用いられていた金属触媒やその他の添加剤等は必須ではなく、基質化合物との組み合わせや反応条件によっては溶媒(反応媒)すらも使用する必要がないため、反応後の生成物の単離・精製が格段に容易となる。但し、本発明では金属触媒、添加剤、溶媒等の使用を何ら排除するものではなく、一部の添加剤(例えば後述するシラン化合物)や溶媒を使用することで反応効率や立体選択性が更に向上する場合も存在する。
【0049】
[III.ペプチド化合物の製造方法(1)]
・概要
本発明の別の側面は、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、前記式(A)で表されるアルミニウム化合物の存在下、下記式(R1)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基と、下記式(R2)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P1)で表されるペプチド化合物を得ることを含む製造方法(以降適宜「本発明のペプチド化合物の製造方法(1)」或いは単に「本発明の製造方法(1)」と称する。)に関する。
【0050】
【化10】
【0051】
【化11】
【0052】
【化12】
【0053】
・基質化合物
上記一般式(R1)及び(R2)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0054】
11、R12、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、これらの基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0055】
また、R11、R12、R21、及び/又はR22が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0056】
【化13】
【0057】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0058】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0059】
中でも、R11、R12、R21、及びR22としては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0060】
11、R12、R21、及びR22の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0061】
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;等。
【0062】
なお、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基は、保護基を有していてもよいが、いなくてもよい。反応に用いる化合物(R1)と化合物(R2)との反応性により異なるが、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基が保護基を有する場合には、通常は化合物(R2)の式中右側のカルボン酸エステル基との反応選択性が、その他の置換基に存在するカルボキシル基との反応選択性よりも向上する。
【0063】
13及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0064】
また、R13及び/又はR23が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0065】
【化14】
【0066】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0067】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0068】
中でも、R13及びR23としては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、若しくはカルボキシル基、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0069】
13及びR23の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0070】
・水素原子、水酸基、カルボキシル基;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;等。
【0071】
なお、R11とR13とが互いに結合して、R11が結合する炭素原子及びR13が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、R21とR23とが互いに結合して、R21が結合する炭素原子及びR23が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0072】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0073】
斯かる複素環の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基等が挙げられる。
【0074】
11、A12、A21、及びA22は、それぞれ独立に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表す。具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びイソプロピレン基等、並びにこれらの基が1又は2以上の前記の置換基で置換された基が挙げられる。置換基の数の具体例は、例えば3、2、1、又は0である。
【0075】
p11、p12、p21、及びp22は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0076】
1は、一般式(R1)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す、1以上の整数である。n1が1の場合、化合物(R1)はアミノ酸となり、n1が2以上の場合、化合物(R1)はペプチドとなる。n1の上限は、アミノ化工程が進行する限りにおいて特に制限されないが、例えば100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、12以下、又は10以下等である。n1の具体例は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100等である。
【0077】
2は、一般式(R2)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す、1以上の整数である。n2が1の場合、化合物(R2)はアミノ酸となり、n2が2以上の場合、化合物(R2)はペプチドとなる。n2の上限は、アミノ化工程が進行する限りにおいて特に制限されなず、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等が挙げられる。但し、n2は1であることが好ましく、即ち、化合物(R2)はアミノ酸であることが好ましい。理論に束縛されるものではないが、本願発明者等は、n2が1である場合、即ち化合物(R2)がアミノ酸である場合、前記式(A)のアルミニウム化合物と反応して、アルミニウム原子を含む環化中間体を形成し、これが反応効率を向上させる一因になると推測している。
【0078】
なお、言うまでもないことであるが、n1が2以上である場合は、[ ]内の構造を規定するR11、R12、R13、A11、A12、p11、及びp12は、複数のアミノ酸単位の間で同一であってもよく、異なっていてもよい。同様に、n2が2以上である場合は、[ ]内の構造を規定するR21、R22、R23、A21、A22、p21、及びp22は、複数のアミノ酸単位の間で同一であってもよく、異なっていてもよい。即ち、化合物(R1)及び/又は化合物(R2)がペプチドの場合には、当該ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
a1は、水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基の場合、その種類は特に制限されるものではないが、R13及びR23として上述した各基の他、アミノ基の保護基(これを以下適宜PGaとする)が挙げられる。アミノ基の保護基PGaとしては、アミド化反応において当該アミノ基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してアミノ基に変換可能なものであれば、特に制限されない。アミノ基の保護基PGaの詳細は後述する。
【0080】
a2は、水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基の場合、その種類は特に制限されるものではないが、例としては、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基等が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0081】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0082】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0083】
a2が一価の置換基の場合、その具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0084】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
以上の各置換基における1又は2以上の水素原子が、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基等の置換基で置換された基;等。
【0085】
PGbは、カルボキシル基の保護基を意味する。カルボキシル基の保護基PGbとしては、アミド化反応において当該カルボキシル基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してカルボキシル基に変換可能なものであれば、特に制限されない。カルボキシル基の保護基PGbの詳細は後述する。
【0086】
なお、化合物(R2)において、一般式(R2)の式中左側のアミノ基は、他の酸と塩を形成していてもよい。この場合、他の酸としては、これらに限定されるものではないが、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~5の脂肪族カルボン酸;トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸等が挙げられる。
【0087】
なお、上述の基質化合物(R1)及び(R2)は何れも、一種の化合物を単独で使用してもよく、二種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0088】
なお、式(R1)のC末端側の基-Taが一価の置換基の場合、化合物(R1)はC末端がエステル化されたアミノ酸エステル又はペプチドエステルとなり、化合物(R2)の定義にも該当することになる。この場合、基質化合物である式(R1)及び(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルは同一の化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。複数の異なるアミノ酸エステル又はペプチドエステルを基質化合物として使用する場合、どちらが求電子性化合物(R1)として機能し、どちらが求核性化合物(R2)として機能するかは、以下の基準で決まることになる。
【0089】
1)複数のアミノ酸エステル又はペプチドエステルが有するエステル基の反応性に差がある場合、通常は反応性の高いエステル基を使用しているアミノ酸エステル又はペプチドエステルが求電子性化合物(R1)となり、反応性の低いエステル基を使用しているアミノ酸エステル又はペプチドエステルが求核性化合物(R2)となる。例えば、後述の実施例で使用されているtert-ブチルエステル基は強固な結合を有するため、本発明の方法の反応条件で脱保護されることはない。そのため、複数のアミノ酸エステル又はペプチドエステルのうち何れか一方がtert-ブチルエステル基を有する場合、通常はそちらが求核種アミノ酸として機能する。
2)複数のアミノ酸エステル又はペプチドエステルのうち一方を式(A)のアルミニウム化合物と混合し、その後に他方を混合する場合、先に式(A)のアルミニウム化合物と混合されるアミノ酸エステル又はペプチドエステルが求電子性化合物(R1)となり、後で混合されるアミノ酸エステル又はペプチドエステルが求核性化合物(R2)となる。先に式(A)のアルミニウム化合物と混合されるアミノ酸エステル又はペプチドエステルは、エステル化されたカルボニル基が活性エステルとなるため、求核攻撃を著しく受けやすい状態になるためである。
【0090】
また、上述の基質化合物(R1)又は(R2)の一部又は全部が、何れかの置換基において基板や樹脂等の担体に連結・固定化されていてもよい。この場合、基板や樹脂等の担体の種類は限定されない。本発明の製造方法におけるアミド結合反応を実質的に阻害することなく、且つ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の任意の基板や樹脂等の担体を使用することが可能である。基質化合物と基板や樹脂等の担体との連結・固定化の態様も何ら限定されるものではないが、基質化合物が有する何れかの置換基と、基板や樹脂等の担体上に存在する置換基との間に、共有結合を形成することが好ましい。各置換基の種類や共有結合の形成方法についても何ら限定されない。本発明の製造方法におけるアミド結合反応を実質的に阻害することなく、且つ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の任意の種類の置換基及び共有結合の形成方法を使用することが可能である。なお、基質化合物が有する(アミド結合反応の形成対象となるカルボン酸エステル基又はアミノ基以外の)カルボキシル基又はアミノ基を用いた共有結合により、基質化合物を基板や樹脂等の担体に連結・固定化してもよい。こうした態様は、基質化合物が有する(アミド結合反応の形成対象となるカルボン酸エステル基又はアミノ基以外の)カルボキシル基又はアミノ基を、保護基を導入することにより保護した態様と同様に捉えることが可能である。
【0091】
・アミノ基の保護基:
アミノ基の保護基としては、公知の多種多様のものが知られている。例としては、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の複素環式基等が挙げられる。中でも、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基が好ましい。但し、斯かる炭化水素基又は複素環式基と、それが保護するアミノ基の窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す連結基から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0092】
【化15】
【0093】
保護基の炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0094】
中でも、アミノ基の保護基は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基、アシル基、炭化水素オキシカルボニル基、及び炭化水素スルホニル基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0095】
以下、アミノ基の保護基の具体例を列記する。なお、アミノ基の保護基の名称としては、アミノ基の窒素原子に結合している官能基の名称の他、窒素原子をも含めた名称も存在しており、以下の名称においても両者が含まれている。
【0096】
非置換又は置換の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、アリル基、等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリル基、トリフェニルメチル基(トロック基)等のアリール基;シアノメチル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0097】
非置換又は置換のアシル基の具体例としては、ベンゾイル基(Bz)、オルトメトキシベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、フタロイル基(Phth)等が挙げられる。
【0098】
非置換又は置換の炭化水素オキシカルボニル基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz又はZ)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエトキシカルボニル基、1-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-メチルエトキシカルボニル基、ビニロキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、N-ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2-(1,3-ジチアニル)メトキシカルボニル、m-ニトロフェノキシカルボニル基、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0099】
非置換又は置換の炭化水素スルホニル基の具体例としては、メタンスルホニル基(Ms)、トルエンスルホニル基(Ts)、2-又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)基等が挙げられる。
【0100】
非置換又は置換のアミド基の具体例としては、アセトアミド、o-(ベンゾイロキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル]ベンズアミド、2-トルエンスルホンアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-ニトロベンゼンスルホンアミド、4-ニトロベンゼンスルホンアミド、tert-ブチルスルフィニルアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-(トリメチルシリル)エタンスルホンアミド、ベンジルスルホンアミド等が挙げられる。
【0101】
また、脱保護の手法の観点からは、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護等のうち、少なくとも1種の手法により脱保護可能な保護基も、アミノ基の保護基の例として挙げられる。
【0102】
アミノ基の保護基の好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn又はBzl)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、シアノメチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。これらの保護基は、前記の通り、容易にアミノ基を保護でき、かつ比較的温和な条件で除去することができるためである。
【0103】
アミノ基の保護基のより好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、トルエンスルホニル基(Ts)、フタロイル基(Phth)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0104】
・カルボキシル基の保護基:
カルボキシル基の保護基としては、種々のものが知られている。例としては、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0105】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0106】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0107】
カルボキシル基の保護基の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0108】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、トリtert-ブチルシリル(TBS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、トリス(トリアルキルシリル)シリル基等のケイ素系保護基;等。
【0109】
・シラン化合物:
本発明の製造方法(1)では、反応系にシラン化合物を共存させてもよい。反応系にシラン化合物を共存させて反応を実施することにより、反応収率の向上や立体選択性の向上等、種々の利点が得られる場合がある。
【0110】
シラン化合物の例としては、HSi(OCH(CF323、HSi(OCH2CF33、HSi(OCH2CF2CF2H)3、HSi(OCH2CF2CF2CF2CF2H)3等の各種のトリス{ハロ(好ましくはフッ素)置換アルキル}シランの他、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMS-OTf)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIM)、ジメチルエチルシリルイミダゾール(DMESI)、ジメチルイソプロピルシリルイミダゾール(DMIPSI)、1-(tert-ブチルジメチルシリル)イミダゾール(TBSIM)、1-(トリメチルシリル)トリアゾール、1-(tert-ブチルジメチルシリル)トリアゾール、ジメチルシリルイミダゾール、ジメチルシリル(2-メチル)イミダゾール、トリメチルブロモシラン(TMBS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)、N-メチル-Nトリメチルシリルトリフルオロアセタミド(MSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(BSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセタミド(BSA)、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、N-(tert-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0111】
・ルイス酸触媒:
本発明の製造方法(1)では、反応系にルイス酸触媒を共存させてもよい。反応系にルイス酸触媒を共存させて反応を実施することにより、反応収率の向上や立体選択性の向上等、種々の利点が得られる場合がある。但し一方で、ルイス酸触媒を使用した場合、反応生成物からルイス酸触媒を分離除去する作業が必要となる場合もある。よって、ルイス酸触媒の使用如何は、本発明の製造方法を使用する目的等を考慮して適宜決定することが好ましい。
【0112】
本発明の製造方法にルイス酸触媒を使用する場合、その種類は制限されないが、ルイス酸として機能する金属化合物であることが好ましい。金属化合物を構成する金属元素としては、元素周期律表の第2族から第15族に属する種々の金属が挙げられる。金属元素の具体例としては、ホウ素、マグネシウム、ガリウム、インジウム、珪素、カルシウム、鉛、ビスマス、水銀、遷移金属、ランタノイ系元素等が挙げられる。遷移金属の具体例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、タリウム等が挙げられる。ランタノイ系元素の具体例としては、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム等が挙げられる。これらの中でも、優れた反応促進効果を発揮し、高立体選択的にアミド化合物を製造する観点からは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ホウ素、バナジウム、タングステン、ネオジム、鉄、鉛、コバルト、銅、銀、パラジウム、スズ、タリウム等から選択される1種又は2種以上が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ等から選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、金属化合物に含まれる金属元素は1つでも2つ以上でもよい。金属化合物が2つ以上の金属元素を含む場合、これらはそれぞれ同じ種類の元素でもよく、2種類以上の異なる金属元素であってもよい。
【0113】
金属化合物を構成する配位子としては、金属の種類に応じて適宜選択される。配位子の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基等の、置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~10のアリロキシ基;アセチルアセトナート基(acac)、アセトキシ基(AcO)、トリフルオロメタンスルホナート基(TfO);置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基;フェニル基、酸素原子、硫黄原子、基-SR(ここでRは置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、基-NRR’(ここでR及びR’は、各々独立に、水素原子又は置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、シクロペンタジエニル(Cp)基等が挙げられる。
【0114】
中でも、金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、タンタル化合物、又はニオブ化合物が好ましい。以下、それぞれの具体例を挙げる。なお、これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0115】
チタン化合物の具体例としては、TiX1 4(但し、4つのX1は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX1は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるチタン化合物が挙げられる。X1がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X1がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X1がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばTi(OMe)4、Ti(OEt)4、Ti(OPr)4、Ti(Oi-Pr)4、Ti(OBu)4、Ti(Ot-Bu)4、Ti(OCH2CH(Et)Bu)4、CpTiCl3、Cp2TiCl2、Cp2Ti(OTf)2、(i-PrO)2TiCl2、(i-PrO)3TiCl等が好ましい。
【0116】
ジルコニウム化合物の具体例としては、ZrX2 4(但し、4つのX2は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX2は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるジルコニウム化合物が挙げられる。X2がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X2がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X2がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばZr(OMe)4、Zr(OEt)4、Zr(OPr)4、Zr(Oi-Pr)4、Zr(OBu)4、Zr(Ot-Bu)4、Zr(OCH2CH(Et)Bu)4、CpZrCl3、Cp2ZrCl2、Cp2Zr(OTf)2、(i-PrO)2ZrCl2、(i-PrO)3ZrCl等が好ましい。
【0117】
ハフニウム化合物の具体例としては、HfX3 4(但し、4つのX3は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX3は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるハフニウム化合物が挙げられる。X3がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X3がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X3がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばHfCp2Cl2、HfCpCl3、HfCl4等が好ましい。
【0118】
タンタル化合物の具体例としては、TaX4 5(但し、5つのX4は、各々独立に、前記で例示した配位子である。5つのX4は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるタンタル化合物が挙げられる。X4がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X4がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X4がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、タンタルアルコキシド化合物(例えばX4がアルコキシ基の化合物)等であることが好ましく、例えばTa(OMe)5、Ta(OEt)5、Ta(OBu)5、Ta(NMe25、Ta(acac)(OEt)4、TaCl5、TaCl4(THF)、TaBr5等が好ましい。また、X4が酸素である化合物、即ちTa25も使用することができる。
【0119】
ニオブ化合物の具体例としては、NbX5 5(但し、5つのX5は、各々独立に、前記で例示した配位子である。5つのX5は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるニオブ化合物が挙げられる。X5がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X5がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X5がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、ニオブアルコキシド化合物(例えばX5がアルコキシ基の化合物)であることが好ましく、例えばNbCl4(THF)、NbCl5、Nb(OMe)5、Nb(OEt)5等が好ましい。また、X5が酸素である化合物、即ちNb25も使用することができる。
【0120】
なお、ルイス酸触媒は、担体に担持されていてもよい。ルイス酸触媒を担持する担体としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。また、ルイス酸触媒を担体に担持させる方法としても、公知の方法が採用できる。
【0121】
・その他の成分:
本発明の製造方法(1)では、基質化合物である前記式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物及び前記式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物、並びにアミド化反応剤である前記式(A)のアルミニウム化合物、更には任意で使用されるシラン化合物及び/又はルイス酸触媒に加えて、他の成分を共存させてもよい。斯かる他の成分の例としては、制限されるものではないが、アミド化反応に使用可能な(ルイス酸触媒以外の)従来の触媒や、塩基、リン化合物、溶媒等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0122】
(ルイス酸触媒以外の)触媒の例としては、メチルアルミニウムビス(4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MABR)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMS-OTf)、メチルアルミニウムビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MAD)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0123】
塩基の種類は制限されず、反応効率を向上させることが知られている公知の塩基を使用することができる。斯かる塩基の例としては、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルアミン(i-Pr2NH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2EtN)等の、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を1~4個有するアミンや、フッ化セシウム等の無機塩基などが挙げられる。挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0124】
リン化合物の例としては、ホスフィン化合物(例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリメチロキシホスフィン、トリエチロキシホスフィン、トリプロピロキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリフェニロキシホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフィン等)、ホスフェート化合物(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリメチロキシホスフェート、トリエチロキシホスフェート、トリプロピロキシホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリフェニロキシホスフェート、トリス(4-メチルフェニル)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフェート、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフェート等)、多価ホスフィン化合物又は多価ホスフェート化合物(例えば、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、5,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(SEGPHOS)等)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0125】
また、反応効率を高める観点から、反応時に溶媒を用いてもよい。溶媒としては、特に制限されないが、例えば水性溶媒や有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、制限されるものではないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-Pr2O)、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、アセトニトリル(MeCN)等の窒素系有機溶媒、ジクロロメタン(DCM)等の塩素系有機溶媒、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0126】
・反応手順:
本発明の製造方法(1)では、基質化合物である前記式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物、及び、前記式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を、アミド化反応剤である前記式(A)のアルミニウム化合物と混合して反応させればよい。また、任意成分としてシラン化合物、ルイス酸触媒、及び/又はその他の成分(ルイス酸触媒以外の触媒、塩基、及び/又はリン化合物等)を使用する場合には、それらを上記の基質化合物及びアミド化反応剤と混合すればよい。また、任意により溶媒を使用する場合には、以上の各成分を溶媒に加えて溶媒中で混合すればよい。
【0127】
なお、上記の何れの成分についても、全量を一度に纏めて系内に加えてもよく、複数回に分けて系内に加えてもよく、少量ずつ連続的に系内に加えてもよい。
【0128】
・各成分の使用量比:
本発明の製造方法(1)において、各成分の使用量は限定されるものではないが、好ましくは以下の通りである。
【0129】
式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物と式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物との量比は、特に制限されないが、式(R1)の化合物1モルに対して、式(R2)の化合物を例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は10モル以下、又は5モル以下、又は4モル以下、又は3モル以下の範囲で用いることができる。なお、式(R1)の化合物よりも式(R2)の化合物を多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、式(R1)の化合物1モルに対して、式(R2)の化合物が概ね2モル程度となるように用いることができる。なお、当然ながら、製造対象となる式(P1)の化合物の目標製造量に対し、基質となる式(R1)の化合物及び式(R2)の化合物をそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0130】
式(A)のアルミニウム化合物の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物と式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物から式(P1)のペプチド化合物の形成反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、式(R1)の化合物1モルに対して、式(A)のアルミニウム化合物を例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は10モル以下、又は5モル以下、又は4モル以下、又は3モル以下の範囲で用いることができる。なお、2種類以上の式(A)のアルミニウム化合物を併用する場合には、2種類以上の式(A)のアルミニウム化合物の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。
【0131】
シラン化合物を使用する場合、その使用量は特に制限されるものではないないが、式(R1)の化合物の使用量を100mol%とした場合に、例えば0.1mol%以上、又は0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、例えば50mol%以下、又は30mol%以下、又は20mol%以下、又は15mol%以下のシラン化合物を用いることができる。
【0132】
ルイス酸触媒を使用する場合、その使用量は特に制限されるものではないないが、式(R1)の化合物の使用量を100mol%とした場合に、例えば0.1mol%以上、又は0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、例えば50mol%以下、又は30mol%以下、又は20mol%以下、又は15mol%以下のルイス酸触媒を用いることができる。
【0133】
その他の任意成分を使用する場合、その使用量は、例えば本発明者等の過去の特許文献(特許文献1~6)等の従来の知見等を参考に、適宜調整すればよい。
【0134】
・反応条件:
本発明の製造方法(1)における反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例示すると以下のとおりである。
【0135】
反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0136】
反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0137】
反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常はアルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0138】
反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0139】
なお、本発明の製造方法(1)は、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。
【0140】
・後処理等(精製・回収等):
本発明の製造方法(1)により得られたペプチド化合物(P1)に対して、更に種々の後処理を施してもよい。例えば、生成されたペプチド化合物(P1)を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。また、生成されたペプチド化合物(P1)が、保護基等により保護されたアミノ基及び/又はカルボキシル基を有する場合には、後述する手法に従って脱保護を行うことができる。また、生成されたペプチド化合物(P1)を直接、又は単離・精製後、後述する本発明の製造方法(2)の後段工程に供し、更にアミノ酸残基を伸長したポリペプチドを製造してもよい。
【0141】
[IV.ペプチド化合物の製造方法(2)]
・概要
本発明の別の側面は、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、工程(i)として、前述の本発明の製造方法(1)に相当する工程を実施した後、更に工程(ii)として、下記式(R3)で表されるアミノ酸又はペプチド化合物の式中右側のカルボキシル基と、前記式(P1)で表されるペプチドエステル化合物の式中左側のアミノ基とをアミド形成反応させることにより、下記式(P2)で表されるペプチド化合物を得る工程を含む製造方法(以降適宜「本発明のペプチド化合物の製造方法(2)」或いは単に「本発明の製造方法(2)」と称する。)に関する。
【0142】
【化16】
【0143】
【化17】
【0144】
本発明の製造方法(2)によれば、本発明の製造方法(1)により製造された式(P1)のペプチドエステル化合物に対して、そのN末端側のアミノ基に対し、更に式(R3)のアミノ酸又はペプチド化合物の末端カルボキシル基をアミド形成反応により連結し、アミノ酸残基を伸長した式(P2)のポリペプチド化合物を製造することが可能となる。
【0145】
本発明の製造方法(2)において、その前段工程(i)は、前述した本発明の製造方法(1)と同一である。従って以下の説明では、主に後段工程(ii)について説明する。
【0146】
・基質化合物
上記一般式(R3)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0147】
式(R3)において、Xcは、ハロゲン原子、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基を表す。一態様によれば、Xcはハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子である。一態様によれば、Xcは塩素原子である。
【0148】
式(R3)において、Tcは、水素原子又は一価の置換基を表す。Tcの詳細は、式(R1)のTa1について先に説明したとおりである。
【0149】
式(R3)において、R31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表す。R33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表す。ここで、R33が一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよい。或いは、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。R31、R32、及びR33の詳細は、それぞれ式(R1)のR11、R12、及びR13について先に説明したとおりである。
【0150】
式(R3)において、A31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表す。A31及びA32の詳細は、それぞれ式(R1)のA11及びA12について先に説明したとおりである。
【0151】
式(R3)において、p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表す。
【0152】
式(R3)において、n3は、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。n3が1の場合、化合物(R3)はアミノ酸となり、n3が2以上の場合、化合物(R3)はペプチドとなる。n3の定義は、それぞれ式(R1)のn1について先に説明したとおりである。
【0153】
なお、上述の基質化合物(R3)は、一種の化合物を単独で使用してもよく、二種以上の化合物を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0154】
また、上述の基質化合物(R3)の一部又は全部が、何れかの置換基において基板や樹脂等の担体に連結・固定化されていてもよい。その詳細については、本発明の製造方法(1)の基質化合物(R1)及び(R2)について上述したとおりである。
【0155】
・シラン化合物:
本発明の製造方法(2)では、工程(i)及び/又は(ii)において、反応系にシラン化合物を共存させてもよい。その詳細については、本発明の製造方法(1)について上述したとおりである。
【0156】
・ルイス酸触媒:
本発明の製造方法(2)では、工程(i)及び/又は(ii)において、反応系にルイス酸触媒を共存させてもよい。その詳細については、本発明の製造方法(1)について上述したとおりである。
【0157】
・その他の成分:
本発明の製造方法(2)では、工程(i)及び/又は(ii)において、反応系に他の成分(例えばルイス酸触媒以外の触媒や、塩基、リン化合物、溶媒等)を共存させてもよい。その詳細については、本発明の製造方法(1)について上述したとおりである。
【0158】
・反応手順及び反応条件:
本発明の製造方法(2)では、まず工程(i)において、基質化合物である前記式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物、及び、前記式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を、アミド化反応剤である前記式(A)のアルミニウム化合物と混合して反応させ、次に工程(ii)において、前記式(R3)のアミノ酸又はペプチド化合物を混合して更に反応させればよい。なお、式(A)のアルミニウム化合物は、少なくとも工程(i)において混合すればよいが、工程(ii)において更に適量を追加してもよい。
【0159】
なお、工程(i)の終了後、生成された前記式(P1)のペプチド化合物をいったん反応系から分離・精製してから、前記式(R3)のアミノ酸又はペプチド化合物と混合することも可能ではある。但し、式(P1)のペプチド化合物がジペプチド化合物(即ち、基質化合物(R1)及び(R2)が共にアミノ酸)の場合等は、工程(i)の反応時に生成する水酸化アルミニウム等によって化合物(P1)が吸着されてしまい、その分離・精製が困難となる場合がある。従って、工程(i)の終了後、前記式(P1)のペプチド化合物を分離・精製することなく、そのまま前記式(R3)のアミノ酸又はペプチド化合物を加えて工程(ii)を開始することが好ましい。こうしてより大きな式(P2)のペプチド化合物とすることで、水酸化アルミニウム等による吸着を防止し、効率的に分離・精製を行うことが可能となる。
【0160】
任意成分としてシラン化合物、ルイス酸触媒、及び/又はその他の成分(ルイス酸触媒以外の触媒、塩基、及び/又はリン化合物等)を使用する場合には、工程(i)及び/又は(ii)において、それらを反応系に入れて混合すればよい。また、任意により溶媒を使用する場合には、工程(i)及び/又は(ii)において、以上の各成分を溶媒に加えて溶媒中で混合すればよい。
【0161】
なお、上記の何れの成分についても、全量を一度に纏めて系内に加えてもよく、複数回に分けて系内に加えてもよく、少量ずつ連続的に系内に加えてもよい。
【0162】
・各成分の使用量比:
本発明の製造方法(2)において、各成分の使用量は限定されるものではないが、好ましくは以下の通りである。
【0163】
式(R1)のアミノ酸又はペプチド化合物と式(R2)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物との量比、及び、式(A)のアルミニウム化合物の使用量は、本発明の製造方法(1)について先に詳述したとおりである。また、シラン化合物を使用する場合の使用量、ルイス酸触媒を使用する場合の使用量、その他の任意成分を使用する場合のそれぞれの使用量も、本発明の製造方法(1)について先に詳述したとおりである。
【0164】
式(R1)及び式(R2)の化合物と式(R3)の化合物との量比は、特に制限されないが、式(R1)の化合物を基準とすると、式(R1)の化合物1モルに対して、式(R3)の化合物を例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は10モル以下、又は5モル以下、又は4モル以下、又は3モル以下の範囲で用いることができる。なお、式(R1)の化合物よりも式(R3)の化合物を多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、式(R1)の化合物1モルに対して、式(R3)の化合物が概ね2モル程度となるように用いることができる。なお、当然ながら、製造対象となる式(P3)の化合物の目標製造量に対し、基質となる式(R1)、式(R2)、及び式(R3)の化合物をそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0165】
・反応手順及び反応条件:
本発明の製造方法(2)における反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、前段の工程(i)における反応条件は、対応する本発明の製造方法(1)について先に詳述したとおりである。一方、後段の工程(ii)における反応条件は、以下に説明するとおりである。
【0166】
工程(ii)における反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0167】
工程(ii)における反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0168】
工程(ii)における反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常はアルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0169】
工程(ii)における反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0170】
なお、本発明の製造方法(2)における工程(i)及び(ii)は何れも、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。工程(i)及び工程(ii)を、それぞれ連続してワンポッドで行ってもよい。
【0171】
・後処理等(精製・回収等):
本発明の製造方法(2)により得られたペプチド化合物(P2)に対して、更に種々の後処理を施してもよい。例えば、生成されたペプチド化合物(P2)を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。また、生成されたペプチド化合物(P2)が、保護基により保護されたアミノ基及び/又はカルボキシル基を有する場合には、後述する手法に従って脱保護を行うことができる。
【0172】
[V.その他]
上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。
【0173】
例えば、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。
【0174】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物において、保護基により保護されたアミノ基の脱保護を行うこともできる。保護アミノ基を脱保護する方法は特に制限されず、保護基の種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などが挙げられる。水素化による脱保護の場合、(a)水素ガスの存在下に、還元触媒として、パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒を用いて還元して脱保護する方法、(b)パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、ジボラン等の水素化還元剤を用いて還元して脱保護する方法等が挙げられる。
【0175】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物において、保護基により保護されたカルボキシル基の脱保護を行うこともできる。保護カルボキシル基を脱保護する方法は特に制限されず、保護基の種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、塩基による脱保護、弱酸による脱保護などが挙げられる。塩基による脱保護の場合、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を用いて脱保護する方法等が挙げられる。
【0176】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を(必要に応じて脱保護及び/又は置換基の変換等の処理を施した上で)、更に前記の式(R1)のペプチド化合物として用い、再び本発明の製造方法(1)又は(2)に供してもよい。或いは、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を(必要に応じて脱保護及び/又は置換基の変換等の処理を施した上で)、従来公知の他のアミド化方法又はペプチド製造方法に供してもよい。こうして、式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物に他のアミノ酸又はペプチドをアミド結合により連結し、アミノ酸残基を伸長して、より大型のポリペプチドを合成することができる。こうした手順を逐次繰り返すことにより、原理的には任意のアミノ酸残基数及びアミノ酸配列のポリペプチドを合成することが可能となる。
【0177】
なお、本発明者等はアミノ酸又はペプチドを連結するためのアミド化反応やそれによるポリペプチドの製造方法に関し、以下の先行特許出願を行っているところ、本発明の種々のポリペプチドの製造方法を、これらの先行特許出願に記載のアミド化反応やポリペプチドの製造方法と適宜組み合わせて実施し、及び/又は、これらの先行特許出願に記載のアミド化反応やポリペプチドの製造方法の条件を考慮して適宜改変することも可能である。なお、これらの先行特許出願の記載は、その全体が援用により本明細書に組み込まれる。
(1)国際公開第2017/204144号(前記の特許文献1)
(2)国際公開第2018/199146号(前記の特許文献2)
(3)国際公開第2018/199147号(前記の特許文献3)
(4)国際公開第2019/208731号(前記の特許文献4)
(5)国際公開第2021/085635号(前記の特許文献5)
(6)国際公開第2021/085636号(前記の特許文献6)
(7)国際公開第2021/149814号(前記の特許文献7)
【実施例
【0178】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0179】
[実施例群I:無保護アミノ酸を求電子種として用いたアミド化反応]
(実施例I-1:H-Phe-OHとH-Ala-OtBtとのアミド化によるジペプチドH-Phe-Ala-OtBuの合成)
【化18】
【0180】
20mL試験管にスターラーバーを入れ、ジクロロメタン中、フェニルアラニン(0.25mmol;41.3mg)、トリメチルアルミニウム(AlMe3)のヘキサン溶液(ヘキサン中2mol/L)(250μL、2.0当量)、H-Ala-OtBu(70μL、2当量)を添加し、室温で24時間攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物が得られた(収率91%、dr)。
【0181】
(実施例I-2:H-Phe-OHとH-Ala-OtBtとFmoc-Ala-Clのアミド化によるトリペプチドFmoc-Ala-Phe-Ala-OtBuの合成)
【化19】
【0182】
20mL試験管にスターラーバーを入れ、ジクロロメタン中、フェニルアラニン(0.25mmol;41.3mg)、トリメチルアルミニウム(AlMe3)のヘキサン溶液(ヘキサン中2mol/L)(250μL、2.0当量)、及びH-Ala-OtBu(70μL、2当量)を添加し、室温で24時間攪拌した。その後、試験管にTMS-OTf(4.5μL、10mol%)、Fmoc-Ala-Cl(165mg、2当量)を加え、室温で更に24時間攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物が得られた。
【0183】
[実施例群II:N末端保護アミノ酸を求電子種として用いたアミド化反応]
【化20】
【0184】
20mL試験管にスターラーバーとアミノ酸エステル(0.25mmol)、トリメチルアルミニウムヘキサン溶液(トルエン中2mol/L)(187μL、1.5当量)を添加し、ジクロロメタン中、-78℃で5分間攪拌した。-20℃に昇温した後、試験管にアミノ酸tertブチルエステル(2当量)を加えて、室温で36~48時間攪拌した。反応後、硫酸ナトリウムを加えて室温で30分間攪拌した後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物が得られた。上記反応式中の基-O-R、-R1、及び-R2、並びに対応する目的化合物の収率及びdr比を以下の表に示す。
【0185】
【表3】