(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】力覚センサモジュール及びロボットハンド
(51)【国際特許分類】
G01L 5/162 20200101AFI20230808BHJP
【FI】
G01L5/162
(21)【出願番号】P 2019119876
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧 智仁
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-316193(JP,A)
【文献】特開2001-021427(JP,A)
【文献】特開昭63-111677(JP,A)
【文献】特開2016-077121(JP,A)
【文献】特開2019-095318(JP,A)
【文献】実開平04-061041(JP,U)
【文献】米国特許第04982611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/16-5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子と、前記センサ素子を搭載した起歪体と、前記起歪体に固定された受力板とを有する、多軸の力覚センサ装置と、
前記力覚センサ装置の上側に取り付けられた上側アタッチメントと、
前記力覚センサ装置の下側に取り付けられた下側アタッチメントと、
を有し、
前記上側アタッチメントは、内部空間に前記力覚センサ装置を収容する第1円柱状部と、前記第1円柱状部の上端部に接続された半円球状部とを有し、前記半円球状部は前記受力板に取り付けられ、
前記下側アタッチメントは、前記第1円柱状部に隣接して配置される第2円柱状部と、前記第2円柱状部の下端部に接続されたフランジ状部とを有し、前記第2円柱状部は前記起歪体に取り付けられ、
前記第1円柱状部の下端部は、前記第2円柱状部の上端部の外周側と対向する部分を有し、
前記フランジ状部は、外形が前記第2円柱状部よりも大きく、前記フランジ状部の下端側は被取付部に固定されることを特徴とする力覚センサモジュール。
【請求項2】
前記半円球状部には、前記上側アタッチメントを前記受力板に取り外し可能に締結するための締結部材が挿入される貫通孔が、前記第1円柱状部の中心軸方向に延伸して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の力覚センサモジュール。
【請求項3】
前記上側アタッチメントには、前記内部空間に突出する位置決め用の第1突起が形成され、
前記第1突起は、前記受力板に形成された凹部に嵌合していることを特徴とする請求項1又は2に記載の力覚センサモジュール。
【請求項4】
前記フランジ状部には、底部に凹部が形成され、
前記凹部内には、前記下側アタッチメントを前記起歪体に取り外し可能に締結するための締結部材が挿入される貫通孔が、前記第2円柱状部の中心軸方向に延伸して形成されていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項5】
前記起歪体は、前記下側アタッチメントが取り付けられる土台を備え、
前記第2円柱状部の上端部には、位置決め用の第2突起が形成され、
前記第2突起は、前記土台に形成された凹部に嵌合していることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項6】
前記上側アタッチメント、前記下側アタッチメント、前記起歪体、及び前記受力板は、同一の材料により形成されていることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項7】
前記センサ素子には、フレキシブル基板を介してコネクタを搭載したリジッド基板が接続されており、前記リジッド基板は前記下側アタッチメントに固定されていることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項8】
前記センサ素子は、MEMSセンサチップであることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載の力覚センサモジュール。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項に記載の力覚センサモジュールが、各指の第1関節より先端側の第1指節に搭載されていることを特徴とするロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサモジュール及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属からなる起歪体にセンサ素子を取り付け、外力が印加されることにより生じる起歪体の弾性変形をセンサ素子で検出することで、多軸の力を検出する力覚センサ装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-93213号公報
【文献】特開2007-10379号公報
【文献】特開2018-185296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の力覚センサ装置を、ロボットハンドやグリッパの先端に取り付け、力覚センサ装置により検知される力に基づいてロボットハンドやグリッパを制御することが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記の力覚センサ装置の形状は、ロボットハンドやグリッパで、物を掴む、挟む、保持するといった動作に適していない。例えば、特許文献1に記載の力覚センサ装置は、外形が円筒状であるので、直接対象物に接触して対象物を掴む等の動作には適していない。このように、従来の力覚センサ装置は、ロボットハンドやグリッパの動作には適していないという問題がある。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであって、力覚センサ装置をロボットハンドやグリッパの動作に適合させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、センサ素子と、前記センサ素子を搭載した起歪体と、前記起歪体に固定された受力板とを有する、多軸の力覚センサ装置と、前記力覚センサ装置の上側に取り付けられた上側アタッチメントと、前記力覚センサ装置の下側に取り付けられた下側アタッチメントと、を有し、前記上側アタッチメントは、内部空間に前記力覚センサ装置を収容する第1円柱状部と、前記第1円柱状部の上端部に接続された半円球状部とを有し、前記半円球状部は前記受力板に取り付けられ、前記下側アタッチメントは、前記第1円柱状部に隣接して配置される第2円柱状部と、前記第2円柱状部の下端部に接続されたフランジ状部とを有し、前記第2円柱状部は前記起歪体に取り付けられ、前記第1円柱状部の下端部は、前記第2円柱状部の上端部の外周側と対向する部分を有し、前記フランジ状部は、外形が前記第2円柱状部よりも大きく、前記フランジ状部の下端側は被取付部に固定されることを特徴とする力覚センサモジュールである。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、力覚センサ装置をロボットハンドやグリッパの動作に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュールを斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュールを斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】上側アタッチメントを取り外した状態における力覚センサモジュールの斜視図である。
【
図4】起歪体にフレキシブル基板が取り付けられた状態における力覚センサ装置の斜視図である。
【
図5】起歪体に基板が取り付けられた状態における力覚センサ装置の平面図及び側面図である。
【
図6】起歪体にカバーが取り付けられた状態における力覚センサ装置の斜視図である。
【
図7】各軸にかかる力及びモーメントを説明する図である。
【
図11】力覚センサモジュールを上側アタッチメントの貫通孔を通るように切断した縦断面図である。
【
図12】力覚センサモジュールを下側アタッチメントの貫通孔を通るように縦方向に切断した縦断面図である。
【
図13】本実施形態に係る力覚センサモジュールのロボットハンドへの適用例を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る力覚センサモジュールのグリッパへの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
(概略構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュールを斜め上方から見た斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る力覚センサモジュールを斜め下方から見た斜視図である。
図3は、上側アタッチメントを取り外した状態における力覚センサモジュールの斜視図である。
【0012】
図1~
図3において、本実施形態に係る力覚センサモジュール1は、多軸の力覚センサ装置10と、上側アタッチメント200と、下側アタッチメント300とを有している。力覚センサ装置10は、起歪体20と、フレキシブル基板30と、受力板40と、カバー50とを含む。
【0013】
上側アタッチメント200は、力覚センサモジュール1の受力板40に取り外し可能に取り付けられている。下側アタッチメント300は、力覚センサモジュール1の起歪体20に取り外し可能に取り付けられている。
【0014】
上側アタッチメント200は、半円球状部210と、円柱状部(第1円柱状部)220とにより構成されている。円柱状部220は、内部に力覚センサ装置10を収容し、下端側が下側アタッチメント300に近接又は接触している。円柱状部220の下端部には、フレキシブル基板30を挿通させるための切欠き部220aが形成されている。
【0015】
半円球状部210は、下端側が円柱状部220の上端部に接続されている。半円球状部210と円柱状部220とは、ほぼ直径が同一であり、接続箇所で段差が生じないように滑らかに接続されている。なお、半円球状部210と円柱状部220とは、一体に形成されていてもよい。
【0016】
半円球状部210には、上側アタッチメント200を受力板40に締結するための締結部材が挿入される貫通孔211が設けられている。本実施形態では、4つの貫通孔211が設けられている。各貫通孔211は、上側アタッチメント200内を、円柱状部220の中心軸方向(図中のZ軸方向)に延伸して貫通している。各貫通孔211は、受力板40に形成された各貫通孔40y(
図3参照)に対応する位置に形成されている。
【0017】
下側アタッチメント300は、円柱状部(第2円柱状部)310と、フランジ状部320とにより構成されている。円柱状部310は、上端側が上側アタッチメント200の円柱状部220の下端部に近接又は接触している。円柱状部310は、上側アタッチメント200の円柱状部220とほぼ同一の直径を有する。フランジ状部320は、外形が円形であって、その直径が円柱状部310よりも大きく、上端側が円柱状部310の下端部に接続されている。なお、円柱状部310とフランジ状部320は、一体に形成されていてもよい。
【0018】
円柱状部310の側面には、リジッド基板30aを締結するための締結部材30bが係合する穴311が形成されている。本実施形態では、2つの締結部材30bが設けられている。リジッド基板30aは、フレキシブル基板30の端部に接続されている。リジッド基板30aには、コネクタ30cが実装されている。コネクタ30cには、ロボットハンド等の外部装置からケーブル(図示せず)が接続される。
【0019】
フランジ状部320には、力覚センサモジュール1をロボットハンドやグリッパに取り付けるための貫通孔321が形成されている。本実施形態では、4つの貫通孔321が設けられている。
【0020】
また、フランジ状部320には、底部に円形の凹部322が形成されている。この凹部322内には、下側アタッチメント300を起歪体20に締結するための締結部材が挿入される貫通孔323が形成されている。本実施形態では、4つの貫通孔323が設けられている。各貫通孔323は、下側アタッチメント300内を、円柱状部310の中心軸方向(図中のZ軸方向)に延伸して貫通している。各貫通孔323は、起歪体20に形成された各貫通孔21xに対応する位置に形成されている。
【0021】
図4は、起歪体にフレキシブル基板が取り付けられた状態における力覚センサ装置の斜視図である。
図5(a)は平面図、
図5(b)は側面図である。
図6は、起歪体にカバーが取り付けられた状態における力覚センサ装置の斜視図である。
【0022】
図4及び
図5に示すように、起歪体20にはセンサチップ110が搭載されている。起歪体20にはフレキシブル基板30が取り付けられている。
図6に示すように、フレキシブル基板30が取り付けられた起歪体20の土台21より上側及びセンサチップ110を覆うように、カバー50が取り付けられる。
【0023】
カバー50は、例えば、金属材の表面にニッケルめっき等を施した材料で形成されている。カバー50には、起歪体20の入力部24a~24dを露出させる開口部が設けられており、入力部24a~24d上に受力板40が設けられている。
【0024】
センサチップ110は、所定の軸方向の変位を最大で6軸を検知する機能を有している。起歪体20は、印加された力をセンサチップ110に伝達する機能を有している。本実施形態では、センサチップ110が6軸を検知する場合について説明するが、これには限定されず、例えば、センサチップ110は3軸を検知するものであってもよい。
【0025】
センサチップ110は、起歪体20の上面側に、起歪体20から突出しないように接着されている。また、起歪体20の上面及び各側面に、センサチップ110に対して信号の入出力を行うフレキシブル基板30の一端側が適宜屈曲された状態で接着されている。センサチップ110とフレキシブル基板30の各電極31とは、ボンディングワイヤ等(図示せず)により、電気的に接続されている。
【0026】
起歪体20の側面には、能動部品32~35が配置されている。具体的には、能動部品32~35は、フレキシブル基板30の一方の面に実装され、フレキシブル基板30の他方の面は、起歪体20の側面に固定されている。能動部品32~35は、フレキシブル基板30に形成された配線パターン(図示せず)を介して、対応する電極31と電気的に接続されている。
【0027】
より詳しくは、フレキシブル基板30において、起歪体20の第1の側面に配置された領域には能動部品32が実装されている。フレキシブル基板30において、起歪体20の第2の側面に配置された領域には能動部品33及び受動部品39が実装されている。フレキシブル基板30において、起歪体20の第3の側面に配置された領域には能動部品34及び受動部品39が実装されている。フレキシブル基板30において、起歪体20の第4の側面に配置された領域には能動部品35及び受動部品39が実装されている。
【0028】
能動部品33は、例えば、センサチップ110から出力されるX軸方向の力Fxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるY軸方向の力Fyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
【0029】
能動部品34は、例えば、センサチップ110から出力されるZ軸方向の力Fzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるX軸を軸として回転させるモーメントMxを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
【0030】
能動部品35は、例えば、センサチップ110から出力されるY軸を軸として回転させるモーメントMyを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号、及びセンサチップ110から出力されるZ軸を軸として回転させるモーメントMzを検出するブリッジ回路からのアナログの電気信号をディジタルの電気信号に変換するIC(ADコンバータ)である。
【0031】
能動部品32は、例えば、能動部品33~35から出力されるディジタルの電気信号に対して所定の演算を行い、力Fx、Fy、及びFz、並びにモーメントMx、My、及びMzを示す信号を生成し、外部に出力するICである。受動部品39は、能動部品32~35に接続される抵抗やコンデンサ等である。
【0032】
図7は、各軸にかかる力及びモーメントを説明する図である。
図7に示すように、X軸方向の力をFx、Y軸方向の力をFy、Z軸方向の力をFzとしている。また、X軸を軸として回転させるモーメントをMx、Y軸を軸として回転させるモーメントをMy、Z軸を軸として回転させるモーメントをMzとしている。
【0033】
センサチップ110は、1チップで6軸を検知するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサチップであり、SOI(Silicon On Insulator)基板等の半導体基板から形成されている。センサチップ110の平面形状は、例えば、3000μm角程度の正方形とすることができる。なお、センサチップ110の構成は、本出願人により出願された特許出願(特開2018-185296号公報)等により知られているので、詳細な説明は省略する。
【0034】
(受力板)
図3に示すように、受力板40は起歪体20に接続されている。受力板40の平面形状は、例えば、円形である。受力板40の上面側には平面形状が矩形の4つの凹部40xと、平面形状が円形の4つの貫通孔40yが設けられている。また、受力板40の上面側の中心部には、平面形状が円形の1つの凹部40zが設けられている。
【0035】
4つの凹部40xは各々起歪体20の入力部24a~24dを覆うように配置され、各々の凹部40xの底面は起歪体20側に突起して起歪体20の入力部24a~24dの上面と接している。但し、凹部40x、貫通孔40y、及び凹部40zの平面形状は、任意に決定することができる。
【0036】
図示はしないが、入力部24a~24dの上面に突起(または突起受部)を形成し、起歪体20側に突起した凹部40xの底面に突起受部(または突起)を形成して、入力部24a~24dの上面の突起(または突起受部)と凹部40xの底面の突起受部(または突起)を嵌め合わせることで受力板40と起歪体20とを位置決めするようにしてもよい。
【0037】
凹部40zは、力覚センサ装置10を上側アタッチメント200に取り付ける際の位置決めに用いられる。また、貫通孔40yは、力覚センサ装置10を上側アタッチメント200に締結するためのねじ孔である。
【0038】
受力板40の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)630等を用いることができる。受力板40は、例えば、溶接により起歪体20に固定することができる。
【0039】
このように、受力板40を設けることで、受力板40を介して起歪体20の入力部24a~24dに外部から力を入力することができる。
【0040】
(起歪体)
図8は、起歪体20を例示する図(その1)であり、
図8(a)は斜視図、
図8(b)は側面図である。
図9は、起歪体20を例示する図(その2)であり、
図9(a)は平面図、
図9(b)は
図9(a)のA-A線に沿う縦断面斜視図である。
図10は、起歪体20を例示する図(その3)であり、
図10(a)は
図9(a)のB-B線に沿う縦断面図であり、
図10(b)は
図10(a)のC-C線に沿う横断面図である。
【0041】
図8~
図10に示すように、起歪体20は、下側アタッチメント300が取り付けられる土台21と、センサチップ110を搭載するセンサチップ搭載部となる柱28と、柱28の周囲に離間して配置された柱22a~22dとを備えている。
【0042】
より詳しくは、起歪体20において、略円形の土台21の上面に、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように4本の柱22a~22dが配置され、隣接する柱の土台21とは反対側同士を連結する梁23a~23dが枠状に設けられている。そして、土台21の上面中央の上方に、柱28が配置されている。なお、土台21の平面形状は円形には限定されず、多角形等(例えば、正方形等)としてもよい。
【0043】
柱28は、柱22a~22dよりも太く、かつ短く形成されている。なお、センサチップ110は、柱22a~22dの上面から突出しないように、柱28上に固定される。
【0044】
柱28は、土台21の上面には直接固定されていなく、接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定されている。そのため、土台21の上面と柱28の下面との間には空間がある。柱28の下面と、接続用梁28a~28dの各々の下面とは、面一とすることができる。
【0045】
柱28の接続用梁28a~28dが接続される部分の横断面形状は例えば矩形であり、矩形の四隅と矩形の四隅に対向する柱22a~22dとが接続用梁28a~28dを介して接続されている。接続用梁28a~28dが、柱22a~22dと接続される位置221~224は、柱22a~22dの高さ方向の中間よりも下側であることが好ましい。この理由については、後述する。なお、柱28の接続用梁28a~28dが接続される部分の横断面形状は矩形には限定されず、円形や多角形等(例えば、六角形等)としてもよい。
【0046】
接続用梁28a~28dは、土台21の中心に対して均等(点対称)となるように、土台21の上面と所定間隔を空けて土台21の上面と略平行に配置されている。接続用梁28a~28dの太さや厚み(剛性)は、起歪体20の変形を妨げないようにするため、柱22a~22dや梁23a~23dよりも細く薄く形成することが好ましい。
【0047】
このように、土台21の上面と柱28の下面とは所定の距離(例えば、数mm程度)だけ離れている。柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造とした場合、土台21の上面と柱28の下面との距離を長くするほど、ねじ締結時の柱28の変形が低減され、結果としてセンサチップ110のFz出力(オフセット)が低減される。一方、土台21の上面と柱28の下面との距離を長くするほど、センサチップ110の出力が低下する(感度が低下する)。
【0048】
すなわち、柱28は、柱22a~22dの中間よりも下側に接続することが好ましい。これにより、センサチップ110の感度を確保しながら、ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)を低減することができる。
【0049】
ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)の低減を土台21の剛性を上げることで達成しようとした場合、土台21の厚みを厚くする必要があり、力覚センサ装置10のサイズが大きくなってしまう。柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造することにより、力覚センサ装置10のサイズを大きくすることなく、ねじ締結時のセンサチップ110のFz出力(オフセット)を低減することができる。
【0050】
また、柱28を土台21の上面には直接固定せず、柱28を、接続用梁28a~28dを介して柱22a~22dに固定する構造することにより、モーメント(Mx、My)入力時のモーメント成分(Mx、My)と並進方向の力成分(Fx、Fy)の分離性を向上することができる。
【0051】
土台21には、起歪体20を下側アタッチメント300に締結するための貫通孔21xが設けられている。本実施の形態では、土台21には4つの貫通孔21xが設けられているが、貫通孔21xの個数は任意に決定することができる。
【0052】
土台21を除く起歪体20の概略形状は、例えば、縦5000μm程度、横5000μm程度、高さ7000μm程度の直方体状とすることができる。柱22a~22dの横断面形状は、例えば、1000μm角程度の正方形とすることができる。柱28の横断面形状は、例えば、2000μm角程度の正方形とすることができる。
【0053】
起歪体20において、土台21、柱22a~22d、柱28、梁23a~23d、入力部24a~24d、柱25a~25e、梁26a~26d、及び突起部27a~27dの各部位は、剛性を確保しかつ精度良く作製する観点から、一体に形成されていることが好ましい。起歪体20の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の硬質な金属材料を用いることができる。中でも、特に硬質で機械的強度の高いSUS630を用いることが好ましい。
【0054】
(断面構造)
次に、力覚センサモジュール1の断面構造について説明する。
【0055】
図11は、力覚センサモジュール1を上側アタッチメント200の貫通孔211を通るように縦方向(Z軸方向)に切断した縦断面図である。
図11に示すように、上側アタッチメント200の円柱状部220には内部空間212が設けられている。力覚センサ装置10に上側アタッチメント200を取り付けた際に、上側アタッチメント200は、内部空間212に収容される。
【0056】
上側アタッチメント200には、内部空間212に突出する突起213が形成されている。上側アタッチメント200を力覚センサ装置10に取り付ける際に、突起213が受力板40の凹部40zに嵌合することにより、上側アタッチメント200が力覚センサ装置10に対して位置決めされる。また、このとき、上側アタッチメント200の各貫通孔211は、受力板40の各貫通孔40yに連通するように位置決めされる。
【0057】
締結部材としてのネジ214を各貫通孔211に挿入し、各貫通孔40yに対する締結操作を行うことで、ネジ214が貫通孔40yに螺合され、上側アタッチメント200が力覚センサ装置10に取り付けられる。なお、上側アタッチメント200が力覚センサ装置10に取り付けられた際に、上側アタッチメント200は、受力板40に接触する。これにより、上側アタッチメント200に加わった力は、受力板40に伝達される。
【0058】
また、下側アタッチメント300の円柱状部310の上端部には、位置決め用の突起324が形成されている。本実施形態では、例えば4つの突起324が設けられている。下側アタッチメント300を力覚センサ装置10に取り付ける際に、突起324が、起歪体20の土台21に形成された凹部21aに嵌合することにより、下側アタッチメント300が力覚センサ装置10に対して位置決めされる。
【0059】
図12は、力覚センサモジュール1を下側アタッチメント300の貫通孔323を通るように縦方向(Z軸方向)に切断した縦断面図である。上述のように、下側アタッチメント300を力覚センサ装置10に対して位置決めした際に、下側アタッチメント300の各貫通孔323は、起歪体20の各貫通孔21xに連通するように位置決めされる。
【0060】
締結部材としてのネジ325を各貫通孔323に挿入し、各貫通孔21xに対する締結操作を行うことで、ネジ325が貫通孔21xに螺合され、下側アタッチメント300が力覚センサ装置10に取り付けられる。
【0061】
上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300は、起歪体20及び受力板40と同一の材料で形成することが好ましい。例えば、起歪体20及び受力板40がSUS630で形成されている場合には、上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300を同様にSUS630で形成することがよい。
【0062】
なお、上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300は、起歪体20及び受力板40と同等の線膨張係数(ヤング率)を有するものであれば、異なる材質の金属で形成してもよい。上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300は、起歪体20及び受力板40と線膨張係数が異なると、温度により生じる変形により、センサチップ110の出力にオフセットを生じさせてしまうが、上述のように線膨張係数が同等の材質とすることにより、オフセットが低減される。これにより、温度変化時の出力変動が抑制される。
【0063】
また、上側アタッチメント200の受力板40と接触する面は、受力板40の上面と同等以上の平面度を有することが好ましい。また、下側アタッチメント300の起歪体20と接触する面は、起歪体20の上面と同等以上の平面度を有することが好ましい。このように、上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300の接触面の平面度を高くすることにより、力覚センサ装置10への取り付けにより発生するセンサチップ110の出力のオフセット変動を抑制することができる。
【0064】
(ロボットハンド等への適用)
図13は、本実施形態に係る力覚センサモジュール1のロボットハンドへの適用例を示す図である。
図13に示すロボットハンドは、5本の指を有している。このように、力覚センサモジュール1を、各指の第1関節Aより先端側の第1指節に適用することができる。
【0065】
図14は、本実施形態に係る力覚センサモジュール1のグリッパへの適用例を示す図である。
図14に示すグリッパは、2本の指を有する2指グリッパである。ロボットハンドの場合と同様に、力覚センサモジュール1を、各指の第1関節Aより先端側の第1指節に適用することができる。
【0066】
以上のように、本実施形態に係る力覚センサモジュール1は、表面積が大きい上側アタッチメント200が力覚センサ装置10に取り付けられている。したがって、力覚センサモジュール1は、ロボットハンドやグリッパに適用した際に、対象物への接触可能領域が大きく、対象物に接触して対象物を掴む等の動作に適したものである。
【0067】
また、力覚センサモジュール1は、フランジ状部320を有する下側アタッチメント300が力覚センサ装置10に取り付けられていることから、ロボットハンドやグリッパへの取り付け自由度が高く、取り付け作業が容易である。
【0068】
また、力覚センサモジュール1では、下側アタッチメント300にコネクタ30cを搭載したリジッド基板30aが固定されているので、コネクタ30cに対するケーブルの挿抜が容易である。また、下側アタッチメント300に対してコネクタ30cが固定されていることにより、コネクタ30cから力覚センサ装置10への応力の伝達が防止される。
【0069】
また、上記実施形態に係る力覚センサ装置10は、センサ素子としてMEMSのセンサチップ110を起歪体に搭載したものであるが、本発明は、センサ素子として歪みゲージを起歪体に張り付けた力覚センサ装置にも適用可能である。
【0070】
なお、上記実施形態では、上側アタッチメント200及び下側アタッチメント300を力覚センサ装置10に取り付けているが、下側アタッチメント300は必須ではない。また、上記実施形態では、下側アタッチメント300は、フランジ状部320を有するが、外形を小さくするために、フランジ状部320を除去してもよい。
センサ素子は、軸方向に印加された力と、軸回りに印加された力(モーメント)のうち、少なくとも一方を検知するものであればよい。
【0071】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 力覚センサモジュール、10 力覚センサ装置、20 起歪体、21 土台、21a 凹部、21x 貫通孔、30 フレキシブル基板、30a リジッド基板、30b 締結部材、30c コネクタ、40 受力板、40x 凹部、40y 貫通孔、40z 凹部、50 カバー、110 センサチップ(センサ素子)、200 上側アタッチメント、210 半円球状部、211 貫通孔、212 内部空間、213 突起、214 ネジ、220 円柱状部(第1円柱状部)、220 円柱状部、220a 切欠き部、300 下側アタッチメント、310 円柱状部(第2円柱状部)、311 穴、320 フランジ状部、321 貫通孔、322 凹部、323 貫通孔、324 突起、325 ネジ