(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】荷役システム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230808BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20230808BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20230808BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230808BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20230808BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B66F9/24 A
B60L53/67
B60L53/68
H02J7/00 P
H02J7/02 B
H02J7/10 J
(21)【出願番号】P 2021156447
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒金 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠也
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-142704(JP,A)
【文献】特開2020-028196(JP,A)
【文献】特許第6901228(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0200240(US,A1)
【文献】特開2021-160905(JP,A)
【文献】特開2021-59435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B60L 53/67
B60L 53/68
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無人フォークリフトと、前記複数の無人フォークリフトを充電する第1充電場所と、管理装置と、を備えた荷役システムであって、
前記管理装置は、
各荷役作業における、前記無人フォークリフトの識別子、荷役動作および荷の重量を入力データとし各荷役作業における荷役消費電力を出力データとする教師データによって、それらの相関を学習させられる第1ニューラルネットワークと、
消費電力予測部と、
荷役車予定出力部と、
前の荷役作業における荷置位置の座標と、次の荷役作業における荷取位置の座標とに基づいて、各荷役作業間における前記無人フォークリフトの走行消費電力を算出する荷役間消費電力算出部と、
前の荷役作業における前記荷置位置の座標と、次の荷役作業における前記荷取位置の座標とに基づいて、各荷役作業間における前記無人フォークリフトの走行時間を算出する荷役間走行時間算出部と、
各前記無人フォークリフトに搭載されるバッテリの容量と、各荷役作業における各前記無人フォークリフトの荷役予測消費電力と、各荷役作業の前記荷取位置および前記荷置位置の座標と、各荷役作業間の前記無人フォークリフトの前記走行消費電力とに基づいて、前記無人フォークリフトが充電までの間により多くの荷役作業をすることができる荷役予定を出力するよう学習させられる第2ニューラルネットワークと、
荷役時間予測部と、
各荷役作業における、前記無人フォークリフトの識別子、前記荷役動作、前記荷の重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を学習させられる第3ニューラルネットワークと、
充電計画部と、を備え、
前記消費電力予測部が、前記無人フォークリフトの識別子、前記荷役動作、前記荷の重量を前記第1ニューラルネットワークに入力して、電力効率のよい無人フォークリフトの各荷役作業における前記荷役予測消費電力を出力させるステップと、
前記荷役車予定出力部が、前記電力効率のよい無人フォークリフトに搭載される前記バッテリの容量と、各荷役作業における前記電力効率のよい無人フォークリフトの前記荷役予測消費電力とを前記第2ニューラルネットワークに入力して前記電力効率のよい無人フォークリフトの荷役予定を出力させるステップと、
荷役間走行時間算出部が、各荷役作業間における前記無人フォークリフトの走行時間を算出するステップと、
前記荷役時間予測部が、前記無人フォークリフトの識別子、出力された前記荷役予定に係る前記荷役動作および前記荷の重量を前記第3ニューラルネットワークに入力して、前記電力効率のよい無人フォークリフトの前記荷役予定に係る各荷役作業の予測荷役作業時間を出力させるステップと、
前記荷役時間予測部が、出力された各荷役作業の予測荷役作業時間と、各荷役作業間における走行時間とを足し合わせて、荷役開始から次の充電開始までの予測荷役時間を算出するステップと、
充電計画部が、前記バッテリの充電時間に基づいて、第1充電場所において荷役開始から予測荷役時間後に前記電力効率のよい無人フォークリフトを充電させる第1充電時刻を設定するステップと、
充電計画部が、他の前記無人フォークリフトの第1充電場所における充電時刻を第1充電時刻以外に設定するステップと、を含む
ことを特徴とする荷役システム。
【請求項2】
第2充電場所をさらに備え、
充電計画部は、前記第1充電時刻の間、他の前記無人フォークリフトの充電場所を第1充電場所以外に設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷役システム。
【請求項3】
前記複数の無人フォークリフトには、3方向フォークリフトおよび1方向フォークリフトが含まれており、前記3方向フォークリフトは、前記1方向フォークリフトよりも電力効率が高い
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷役システム。
【請求項4】
前記第2ニューラルネットワークは、強化学習によって学習させられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の荷役システム。
【請求項5】
前記第2ニューラルネットワークに与える報酬を生成する報酬生成部をさらに備え、
前記報酬生成部は、前記第2ニューラルネットワークが出力する前記荷役予定に対して、前記電力効率のよい無人フォークリフトが充電までの間により多くの荷役作業を割り当てられれば割り当てられるほど、より多くの報酬を生成する
ことを特徴とする請求項4に記載の荷役システム。
【請求項6】
前記報酬生成部は、前記第2ニューラルネットワークが出力する前記荷役予定に対して、各前記無人フォークリフトの荷役間消費電力が少なければ少ないほど、より多くの報酬を生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、自律して動作するバッテリ式の無人フォークリフトが知られている。この無人フォークリフトは、施設内外で荷役作業を行う。施設内での荷役作業には、棚に荷置きしたり、棚から荷取りする作業が含まれている。無人フォークリフトは、棚と棚との間の通路に進入し棚に荷置きするとき、通常、一度方向転換しなければならない。フォークリフトの電力は、この方向転換のたびに消費される。一方、特許文献2に記載のように、通路に進入した後、自らは方向転換せずにフォークの方向のみ左右に90°角度変更することのできる3方向フォークリフトが知られている。このフォークリフトは、進行方向から棚方向に方向転換することなく荷役作業を行うことができるので、電力効率がよい。この3方向フォークリフトのうち、フォークのシフト(左右スライド)とローテート(旋回)の駆動方式を電動式としたフォークリフトが、特に電力効率に優れている。
【0003】
ところで、特許文献3および4に記載のように、無人フォークリフトの稼働率を向上させるために、複数のフォークリフトのバッテリを管理する荷役システムが知られている。特許文献3に記載のバッテリ交換時期管理システムは、各フォークリフトのバッテリの交換時期を所定時間ずつ互いにずらせて順次指定するバッテリ交換時期指定手段と、このバッテリ交換時期指定手段のバッテリ交換時期の指定に応じてフォークリフトに対してバッテリ交換を指令するバッテリ交換指令手段とを備えている。
【0004】
また、特許文献4に記載の充電システムは、複数のフォークリフトのバッテリの各残量を取り込み、複数のフォークリフトの現在から所定時間後までの予想消費電力を演算し、バッテリの残量と該予想消費電力との差から、複数のフォークリフトのバッテリ交換順位を定めるための指標値を演算し、そして、当該指標値およびバッテリの充電可能な許容量に基づき該当するフォークリフトに対して帰還指令を出力する。また、特許文献4に開示の充電システムは、各フォークリフトの消費電力と電池残量を考慮して、荷役作業の中止やスケジュールの変更をする。
【0005】
しかしながら、上記荷役システムは、充電池の使用・交換・充電といったものに着目し、フォークリフトの電力効率については考慮されていない。したがって、上記荷役システムは、荷役車全体における荷役作業の効率化が実現されないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-59435号公報
【文献】特開2020-52630号公報
【文献】特開2003-70104号公報
【文献】特開2011-142704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無人フォークリフトの電力効率も考慮して無人フォークリフトの充電タイミングを管理する荷役システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役システムは、
複数の無人フォークリフトと、複数の無人フォークリフトを充電する第1充電場所と、管理装置と、を備えた荷役システムであって、
管理装置は、
各荷役作業における、無人フォークリフトの識別子、荷役動作および荷の重量を入力データとし各荷役作業における荷役消費電力を出力データとする教師データによって、それらの相関を学習させられる第1ニューラルネットワークと、
消費電力予測部と、
荷役車予定出力部と、
前の荷役作業における荷置位置の座標と、次の荷役作業における荷取位置の座標とに基づいて、各荷役作業間における無人フォークリフトの走行消費電力を算出する荷役間消費電力算出部と、
前の荷役作業における荷置位置の座標と、次の荷役作業における荷取位置の座標とに基づいて、各荷役作業間における無人フォークリフトの走行時間を算出する荷役間走行時間算出部と、
各無人フォークリフトに搭載されるバッテリの容量と、各荷役作業における各無人フォークリフトの荷役予測消費電力と、各荷役作業の荷取位置および荷置位置の座標と、各荷役作業間の無人フォークリフトの走行消費電力とに基づいて、無人フォークリフトが充電までの間により多くの荷役作業をすることができる荷役予定を出力するよう学習させられる第2ニューラルネットワークと、
荷役時間予測部と、
各荷役作業における、無人フォークリフトの識別子、荷役動作、荷の重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を学習させられる第3ニューラルネットワークと、
充電計画部と、を備え、
消費電力予測部が、無人フォークリフトの識別子、荷役動作、荷の重量を第1ニューラルネットワークに入力して、電力効率のよい無人フォークリフトの各荷役作業における荷役予測消費電力を出力させるステップと、
荷役車予定出力部が、電力効率のよい無人フォークリフトに搭載されるバッテリの容量と、各荷役作業における電力効率のよい無人フォークリフトの荷役予測消費電力とを第2ニューラルネットワークに入力して電力効率のよい無人フォークリフトの荷役予定を出力させるステップと、
荷役間走行時間算出部が、各荷役作業間における無人フォークリフトの走行時間を算出するステップと、
荷役時間予測部が、無人フォークリフトの識別子、出力された荷役予定に係る荷役動作および荷の重量を第3ニューラルネットワークに入力して、電力効率のよい無人フォークリフトの荷役予定に係る各荷役作業の予測荷役作業時間を出力させるステップと、
荷役時間予測部が、出力された各荷役作業の予測荷役作業時間と、各荷役作業間における走行時間とを足し合わせて、荷役開始から次の充電開始までの予測荷役時間を算出するステップと、
充電計画部が、バッテリの充電時間に基づいて、第1充電場所において荷役開始から予測荷役時間後に電力効率のよい無人フォークリフトを充電させる第1充電時刻を設定するステップと、
充電計画部が、他の無人フォークリフトの第1充電場所における充電時刻を第1充電時刻以外に設定するステップと、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
上記荷役システムは、好ましくは、
第2充電場所をさらに備え、
充電計画部が、第1充電時刻の間、他の無人フォークリフトの充電場所を第1充電場所以外に設定する。
【0010】
上記荷役システムは、例えば、
複数の無人フォークリフトには、3方向フォークリフトおよび1方向フォークリフトが含まれており、3方向フォークリフトは、1方向フォークリフトよりも電力効率が高い。
【0011】
上記荷役システムは、好ましくは、
第2ニューラルネットワークが、強化学習によって学習させられている。
【0012】
上記荷役システムは、好ましくは、
第2ニューラルネットワークに与える報酬を生成する報酬生成部をさらに備え、
報酬生成部が、第2ニューラルネットワークが出力する荷役予定に対して、電力効率のよい無人フォークリフトが充電までの間により多くの荷役作業を割り当てられれば割り当てられるほど、より多くの報酬を生成する。
【0013】
上記荷役システムは、好ましくは、
報酬生成部が、第2ニューラルネットワークが出力する荷役予定に対して、各無人フォークリフトの荷役間消費電力が少なければ少ないほど、より多くの報酬を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の荷役システムは、無人フォークリフトの電力効率も考慮して無人フォークリフトの充電タイミングを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る荷役システムの全体を示す平面図である。
【
図2】
図1に示された無人フォークリフトの構成を示す側面図である。
【
図3】
図1に示された別の無人フォークリフトの構成を示す側面図である。
【
図5】
図4に示された荷役動作出力部の機能を示す図である。
【
図6】
図4に示された第1ニューラルネットワークを示し、Aは機械学習を示す図であり、Bは荷役予測電力を出力する機能を示す図である。
【
図7】
図4に示された第2ニューラルネットワークの動作を示す図である。
【
図9】本発明の荷役システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の荷役システムに係る一実施形態について説明する。図中において両矢印Xは前後方向を示し、両矢印Zは上下方向を示している。
【0017】
図1に示すように、荷役システムSは、施設内に配置された複数のバッテリ式無人フォークリフト(以下、単に、「フォークリフト」という)1a、1bと、管理装置4と、複数(本実施形態では2つ)の充電場所CP1、CP2と、2つの充電装置3a、3bと、棚100と、を備えている。以下において、フォークリフト全体における説明の場合、フォークリフト1といい、充電場所を特定しない場合、充電場所CPということがある。管理装置4および複数のフォークリフト1は、ネットワークを介して互いに通信可能に構成されている。管理装置4は、ネットワーク上に構成されたサーバコンピュータでもよい。本実施形態に係る複数のフォークリフト1には、2種類のフォークリフト1a、1bが含まれているが単なる一例であって、本発明に係る複数のフォークリフトは、下記フォークリフト1a、1b以外のフォークリフトが含まれていてもよい。
【0018】
<フォークリフト>
図2に示すように、フォークリフト1aは、前後の車輪10と、車体11と、車体11の上方に配置されたレーザスキャナ12と、バッテリ20と、バッテリ残量検出部13と、を備えている。レーザスキャナ12は、回転しながら水平方向にレーザを照射し、施設内の所定箇所に配置された反射板からの反射光を受信することによりフォークリフト1aの現在位置を検出する。
【0019】
バッテリ残量検出部13は、バッテリ20の残量を検出する。検出されたバッテリ20の残量は、管理装置4に送信される。
【0020】
フォークリフト1aは、さらに、上下に延びる左右一対のマスト14と、左右のマスト14に連結され上下に昇降させられるリフトブラケット15と、リフトブラケット15に設けられ左右方向に延びる上下一対のサイドレール16と、サイドレール16に沿って左右方向にシフトするシフトキャリッジ17と、を備えている。シフトキャリッジ17には、フィンガーバー18が設けられ、フィンガーバー18には、左右一対のフォーク19が設けられている。フィンガーバー18は、シフトキャリッジ17に旋回可能に設けられている。フォークリフト1aは、これら構成を備えていることにより、車体11の向きを変えずにフォーク19の向きを3方向に変更することができる。
【0021】
図3に示すように、フォークリフト1bは、前後の車輪10と、車体11と、車体11の上方に配置されたレーザスキャナ12と、を備えており、上述のように、レーザスキャナ12によって現在位置を取得する。また、フォークリフト1bは、フォークリフト1aと同様に、バッテリ20の残量を検出するバッテリ残量検出部13を備えている。さらに、フォークリフト1bは、上下に延びる左右一対のマスト14と、マスト14に連結され上下に昇降させられるリフトブラケット15と、リフトブラケット15に連結された左右一対のフォーク19と、を備えている。このフォークリフト1bは、車体11の向きを変更することによりフォーク19の向きを変更する。
【0022】
本実施形態における3方向フォークリフト1aは、荷役作業において車体11の方向を変更せずにフォーク19の向きだけを変更して荷役作業をすることができるので、1方向フォークリフト1bに比して電力効率がよい。しかも、フォークリフト1aは、フォーク19のシフトとローテートの駆動方式を電動式としたフォークリフトであるのでさらに電力効率がよい。荷役システムSでは、バッテリ容量の多いバッテリ20を電力効率のよいフォークリフト1aに優先的に割り当てている。これにより、荷役システムS全体の電力効率が上昇させられている。
【0023】
<充電場所>
図1に示すように、本実施形態に係る充電場所CPは、施設内に2つ設けられており、各充電場所CPには、充電装置3a、3bがそれぞれ配置されている。充電場所CP1には、充電装置3aが配置され、充電場所CP2には、充電装置3bが配置されている。充電装置3は、充電場所CPに移動してきたフォークリフト1のバッテリ20を充電する。本実施形態では、充電場所CP1の充電装置3aの方が充電場所CP2の充電装置3bよりも充電性能がよいとなっている。そして、本実施形態の荷役システムSは、充電効率のよいフォークリフト1aに充電場所CP1を提供するよう構成されている。充電場所CP1が本実施形態の「第1充電場所」に相当し、充電場所CP2が本実施形態の「第2充電場所」に相当する。
【0024】
<管理装置>
図4に示すように、管理装置4は、施設記憶部40と、バッテリ情報記憶部41と、走行消費電力記憶部42と、荷役記憶部43と、荷役動作出力部46と、消費電力算出部47と、第1ニューラルネットワーク48と、消費電力予測部49と、荷役間消費電力算出部51と、第2ニューラルネットワーク53と、報酬生成部54と、荷役車予定出力部55と、を備えている。
【0025】
施設記憶部40は、荷役作業に係る施設内の棚100、通路および充電場所CPの座標を記憶している。
【0026】
バッテリ情報記憶部41は、バッテリ20の容量および充電時間を含むバッテリ20の情報をバッテリ20ごとに記憶している。
【0027】
走行消費電力記憶部42は、非荷役時における各フォークリフト1の走行距離当たりの消費電力を記憶している。非荷役時の走行とは、フォークリフト1が荷Wを積載していないときの走行のことである。すなわち、前の荷役作業の荷置位置から次の荷役作業の荷取位置に向うとき、充電場所CPから次の荷取り位置に向かうとき、および前の荷置位置から充電場所CPに向かうときの走行が、非荷役時の走行となる。この非荷役時の走行距離当たりの走行消費電力は、各フォークリフト1の仕様から取得してもよいし、または走行時におけるフォークリフト1の実消費電力から取得してもよい。なお、以下において、先の荷役作業における荷取位置から次の荷役作業における荷置位置まで、充電場所CPから次の荷取り位置まで、および前の荷置位置から充電場所CPまでのこと、またはそのいずれかのことを「荷役作業間」ということがある。
【0028】
荷役記憶部43は、荷役情報を記憶している。荷役情報は、各荷役作業の荷取位置および荷置位置の座標ならびに荷Wの重量を含む。荷取位置および荷置位置の座標は、水平方向の座標と高さ方向の座標とを含んでいる。
【0029】
図5に示すように、荷役動作出力部46は、フォークリフト1の種類、施設内情報ならびに荷取位置および荷置位置の座標に基づいて、各荷役作業における各フォークリフト1の走行距離、荷取時フォーク揚高、荷置時フォーク揚高および車体方向転換回数を含む荷役動作を出力する。なお、荷役動作出力部46は、「過去の荷役作業」におけるフォークリフト1の荷役動作だけでなく、まだ行われていない「先の荷役作業」におけるフォークリフト1の荷役動作も出力する。
【0030】
「各フォークリフト1の走行距離」とは、荷取位置から荷置位置までの走行距離のことである。荷役動作出力部46は、施設内情報および荷取位置および荷置位置の座標からそのルートを取得し、次いで、そのルートの距離に基づいて荷役時の走行距離を出力する。
【0031】
「荷取時および荷置時フォーク揚高」とは、荷取作業および荷置作業の際のフォーク19の揚高のことである。荷役動作出力部46は、荷取位置および荷置位置の高さ座標とフォークリフト1の仕様とに基づいて荷取時および荷置時におけるフォークリフト1のフォーク19の揚高を出力する。
【0032】
「車体方向転換回数」とは、荷取位置から荷置位置までに行われるフォークリフト1の車体11の方向転換のことである。荷役動作出力部46は、フォークリフト1の種類、施設内情報ならびに荷取位置および荷置位置の座標からフォークリフト1が荷取位置から荷置位置まで何回方向転換しなければならないのかを出力する。当然ながら、フォークリフト1aの方向転換回数は、フォークリフト1bの方向転換回数よりも少なく出力される。
【0033】
消費電力算出部47は、通信によってバッテリ残量検出部13からフォークリフト1のバッテリ20の残量を受信する。消費電力算出部47は、荷役作業開始時のバッテリ20の残量と荷役作業完了時のバッテリ20の残量とに基づいて、各荷役作業におけるフォークリフト1の荷役消費電力を算出する。
【0034】
図6Aに示すように、第1ニューラルネットワーク48は、過去に行われた各荷役作業における、フォークリフト1の識別子、各フォークリフト1の荷役動作および荷Wの重量を入力データとし、荷役消費電力を出力データとする教師データによって、ディープラーニングによる教師あり学習をさせられる。これにより、第1ニューラルネットワーク48は、各フォークリフト1、各フォークリフト1の荷役動作および荷Wの重量と、荷役消費電力との相関を学習する。第1ニューラルネットワーク48は、随時または定期的に、過去に行われた各荷役作業に基づく教師データから機械学習を行う。
【0035】
図6Bに示すように、消費電力予測部49は、各荷役作業における各フォークリフト1の荷役予測消費電力を出力するために、先の各荷役作業における、フォークリフト1の識別子、各フォークリフト1の荷役動作および荷Wの重量を第1ニューラルネットワーク48に入力して、先の各荷役作業における各フォークリフト1の荷役予測消費電力を出力させる。第1ニューラルネットワーク48は、機械学習によって得られた相関に基づいて、荷役予測消費電力を出力する。
【0036】
荷役間消費電力算出部51は、充電場所CPの座標と、荷置位置の座標と、荷取位置の座標と、施設内情報とを参照して、各荷役作業間におけるフォークリフト1の走行消費電力RCPを算出する。例えば、荷役間消費電力算出部51は、前の荷役作業における荷置位置の座標と、次の荷役作業における荷取位置の座標と、施設内情報とから、荷役作業間の走行ルートを割り出すとともに、当該走行ルートの走行距離(すなわち荷役作業間の走行距離)を算出する。次いで、荷役間消費電力算出部51は、非荷役時における各フォークリフト1の走行距離当たりの消費電力を荷役作業間の走行距離に積算して各荷役作業間におけるフォークリフト1の走行消費電力RCPを算出する。また、荷役間消費電力算出部51は、充電場所CPから荷取位置、または荷置位置から充電場所CPへの移動についても同様に走行ルートの走行距離を算出し、当該走行距離に非荷役時における各フォークリフト1の走行距離当たりの消費電力を積算して走行消費電力RCPを算出する。
【0037】
第2ニューラルネットワーク53は、各フォークリフト1に搭載されるバッテリ20の容量と、各荷役作業における各フォークリフト1の荷役予測消費電力と、各荷役作業の荷取位置および荷置位置の座標と、各荷役作業間のフォークリフト1の走行消費電力RCPとに基づいて、電力効率の順位が上のフォークリフト1が電力効率の順位が下のフォークリフト1よりも多くの荷役作業をすることができる荷役予定を出力するよう、ディープラーニングによって強化学習をさせられている。なお、第2ニューラルネットワーク53は、本実施形態では、強化学習を採用しているが、第2ニューラルネットワーク53の機械学習は、電力効率の順位が上のフォークリフト1が電力効率の順位が下のフォークリフト1よりも多くの荷役作業をすることができる荷役予定を出力するよう機械学習されるのであれば、これに限定されない。
【0038】
報酬生成部54は、第2ニューラルネットワーク53に割り当てる報酬を生成する。報酬生成部54は、第2ニューラルネットワーク53が出力する荷役予定において、電力効率のよいフォークリフト1aがバッテリ充電までの間により多くの荷役作業を割り当てられれば割り当てられるほどより多くの報酬を生成する。さらに、報酬生成部54は、第2ニューラルネットワーク53が出力する荷役予定に対して、荷役作業間の走行距離が短ければ短いほどより多くの報酬を生成する。
【0039】
図7を参照して、第2ニューラルネットワーク53の動作を説明する。
図7は、第2ニューラルネットワーク53の動作をビジュアル化したものである。
図7中における「jn」は、各荷役作業を示しており、「jn」を囲む四角部の面積が各荷役作業におけるフォークリフト1aの消費電力を示している。四角部の高さはどれも同じなので、各荷役作業における四角部の横幅の差が、各荷役作業におけるフォークリフト1aの消費電力の差を示している。つまり四角部の横幅が短いほどその荷役作業によるフォークリフト1aの消費電力が少ないことを示している。
【0040】
図7の上段の右向き矢印において、フォークリフト1aが搭載しているバッテリ20の容量を示している。「CC」は、バッテリ20の満バッテリ時の容量を示しており、「CT」は、充電時間を示している。
【0041】
第2ニューラルネットワーク53は、バッテリ20の満バッテリ容量CC上に荷役作業jn(四角部)を配置していく。配置された荷役作業jnと荷役作業jnとの間には、荷役作業間の走行消費電力RCPが加算配置されていく。また、最初の荷役作業jnの前およびバッテリ充電の直前の荷役作業jnの後にも荷役間の走行消費電力RCPが加算配置される。
【0042】
なお、第2ニューラルネットワーク53は、同じ荷役作業jnを
図7における上段に配置することはできない。そして、第2ニューラルネットワーク53は、満バッテリ容量CCに、各荷役作業jnおよび各荷役間の走行消費電力RCPが収まるように、各荷役作業jnを配置しなければならない。第2ニューラルネットワーク53は、これら環境のもと、この作業を行っていく。これにより、各荷役作業がフォークリフト1に割り振られるとともに、荷役作業の順序も決定されていく。
【0043】
報酬生成部54は、第2ニューラルネットワーク53が荷役作業jnを配置した結果に対して、報酬を生成する。すなわち、報酬生成部54は、上述したように、電力効率のよいフォークリフト1がバッテリ充電までの間により多くの荷役作業jnを割り当てられれば割り当てられるほど、より多くの報酬を生成する。第2ニューラルネットワーク53は、報酬が最大化するように上記作業を繰り返す。第2ニューラルネットワーク53は、報酬が最大化するように、荷取位置および荷置位置の座標を参照して、荷役作業間における走行距離を短く配置することができるように何度も繰り返し学習していく。報酬生成部54は、この荷役作業間における走行距離を短くすることに対する報酬を強化学習のQ学習における「Q値」としてもよい。
【0044】
第2ニューラルネットワーク53は、上記強化学習により、フォークリフト1aに搭載されるバッテリ20の容量と、各荷役作業におけるフォークリフト1aの荷役予測消費電力とを入力されるとフォークリフト1aの最適な荷役予定を出力することができるようになる。本実施形態における第2ニューラルネットワーク53の強化学習は単なる一例であって、本発明における第2ニューラルネットワーク53の強化学習は、これに限定されるものではない。
【0045】
荷役車予定出力部55は、フォークリフト1aに搭載されたバッテリ20の容量と、各荷役作業におけるフォークリフト1aの荷役予測消費電力と、を第2ニューラルネットワーク53に入力してフォークリフト1aの荷役予定を出力させる。
【0046】
荷役システムSは、さらに、荷役間走行時間算出部56と、第3ニューラルネットワーク57と、荷役時間予測部58と、充電計画部59と、荷役指令部60と、帰還指令部61と、を備えている。
【0047】
荷役間走行時間算出部56は、充電場所CPの座標、荷置位置の座標と、荷取位置の座標と、施設内情報とを参照して、各荷役作業間におけるフォークリフト1の走行時間RTを算出する。例えば、荷役間消費電力算出部51は、前の荷役作業における荷置位置の座標と、次の荷役作業における荷取位置の座標と、施設内情報とから、荷役作業間の走行ルートを割り出すとともに、当該走行ルートの距離を算出する。次いで、荷役間走行時間算出部56は、非荷役時における各フォークリフト1の走行速度に基づいて、各荷役作業間におけるフォークリフト1の走行時間RTを算出する。
【0048】
第3ニューラルネットワーク57は、各荷役作業における、フォークリフト1の識別子、荷役動作、荷Wの重量を入力データとし荷役作業時間を出力データとする教師データによってそれらの相関を学習させられる。
【0049】
第3ニューラルネットワーク57は、具体的には、過去に行われた各荷役作業における、フォークリフト1の識別子、各フォークリフト1の荷役動作および荷Wの重量を入力データとし、荷役作業時間を出力データとする教師データによって、ディープラーニングによる教師あり学習をさせられる。これにより、第3ニューラルネットワーク57は、各フォークリフト1、各フォークリフト1の荷役動作および荷Wの重量と、荷役作業時間との相関を学習する。第3ニューラルネットワーク57は、随時または定期的に、過去に行われた各荷役作業に基づく教師データから機械学習を行う。
【0050】
荷役時間予測部58は、フォークリフト1aの識別子、荷役車予定出力部55によって出力された荷役予定に係る各荷役動作および各荷の重量を第3ニューラルネットワーク57に入力して、フォークリフト1aの荷役予定に係る各荷役作業の予測荷役作業時間jtnを出力させる。
【0051】
次いで、荷役時間予測部58は、
図8に示すように、出力された各荷役作業の予測荷役作業時間jtnと、各荷役作業間における走行時間RTとを足し合わせて、フォークリフト1aの荷役開始から次の充電開始までの予測荷役時間JTを算出する。
【0052】
充電計画部59は、バッテリ20の充電時間に基づいて、充電場所CPにおいて荷役開始時刻(
図8では「8:00」)から予測荷役時間JT後(
図8では4.5時間後)に、フォークリフト1aを充電させる第1充電時刻(
図8では、「12:30~13:30」)を設定する。次いで、充電計画部59は、他のフォークリフト1bの充電場所CP1における充電時刻を第1充電時刻外に設定する。また、充電計画部59は、上記充電時刻の間、他のフォークリフト1の充電場所を充電場所CP2に設定してもよい。これにより、電力効率のよいフォークリフト1aは、他のフォークリフト1に優先して充電場所CP1および充電タイミングを提供される。
【0053】
図9を参照して、上記荷役システムの動作を説明すると、次のとおりである。
(1)第1ニューラルネットワーク48が、各荷役作業におけるフォークリフト1aの荷役予測消費電力を出力する(
図9のS81)。
(2)第2ニューラルネットワーク53が、フォークリフト1aの荷役予定を出力する(
図9のS82)。
(3)荷役間走行時間算出部56が、各荷役作業間におけるフォークリフト1の走行時間RTを算出する(
図9のS83)。
(4)第3ニューラルネットワーク57が、各荷役作業の予測荷役作業時間jtnを出力する(
図9のS84)。
(5)荷役時間予測部58が、フォークリフト1aの予測荷役時間JTを算出する(
図9のS85)。
(6)充電計画部59が、フォークリフト1aの第1充電時刻を設定する(
図9のS86)。
(7)充電計画部59が、他のフォークリフト1bの充電場所CP1における充電時刻を第1充電時刻外に設定する(
図9のS87)。
【0054】
荷役車予定出力部55は、フォークリフト1aの荷役予定を優先して、他のフォークリフト1bの荷役予定を決定する。荷役指令部60は、荷役車予定出力部55によって決定された荷役予定に基づいて、各フォークリフト1に荷役作業を指令する。
【0055】
帰還指令部61は、出力された荷役予定に基づく荷役作業を完了したフォークリフト1aに充電場所CP1への帰還を指令する。これにより、フォークリフト1aは、バッテリ20の残量によって帰還させられるのではなく、荷役予定どおりに帰還することになる。そのため、管理装置4は、フォークリフト1aが次の荷役位置に向かう途中で電力不足になり帰還させられることを防止しフォークリフト1aを適切なタイミングで帰還させるので、荷役システムS全体の電力効率を上昇させることができる。
【0056】
しかも、管理装置4は、以上の構成を備えていることにより、電力効率のよいフォークリフト1aに充電場所CP1および充電タイミングを優先的に配分し、かつ、電力効率のよいフォークリフト1aにより多くの荷役作業をさせることにより、荷役システムS全体の電力効率を上昇させることができる。したがって、荷役システム全体の電力効率がよくなることにより、フォークリフト全体における充電場所での充電回数が減少するので、荷役システム全体の荷役作業の効率化が実現する。
【0057】
以上、本発明の一実施形態に係る荷役システムSについて説明してきたが、本発明に係る荷役システムは、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係る荷役システムは、公知の技術と組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
S 荷役システム
CP1、CP2 充電場所
W 荷
1a、1b バッテリ式無人フォークリフト
10 車輪
11 車体
12 レーザスキャナ
13 バッテリ残量検出部
14 マスト
15 リフトブラケット
16 サイドレール
17 シフトキャリッジ
18 フィンガーバー
19 フォーク
20 バッテリ
3a、3b 充電装置
4 管理装置
40 施設記憶部
41 バッテリ情報記憶部
42 走行消費電力記憶部
43 荷役記憶部
46 荷役動作出力部
47 消費電力算出部
48 第1ニューラルネットワーク
49 消費電力予測部
51 荷役間消費電力算出部
53 第2ニューラルネットワーク
54 報酬生成部
55 荷役車予定出力部
56 荷役間走行時間算出部
57 第3ニューラルネットワーク
58 荷役時間予測部
59 充電計画部
60 荷役指令部
61 帰還指令部
100 棚