(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】2液反応型ウレタン樹脂組成物を用いたポリウレタンフォームの形成方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230808BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230808BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
C08G18/00 H
C08G18/00 F
C08G18/08
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2018067401
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片 岡 伸 介
(72)【発明者】
【氏名】河 瀬 英 一
(72)【発明者】
【氏名】高 崎 政 憲
(72)【発明者】
【氏名】渡 邉 裕 司
(72)【発明者】
【氏名】竹 内 広 史
(72)【発明者】
【氏名】佐 渡 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】井 戸 博 章
(72)【発明者】
【氏名】西 川 新 治
(72)【発明者】
【氏名】木 南 冴 子
(72)【発明者】
【氏名】村 田 一 樹
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342345(JP,A)
【文献】特開2003-206327(JP,A)
【文献】特開2000-169442(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02400370(GB,A)
【文献】米国特許第05006569(US,A)
【文献】特開2018-083929(JP,A)
【文献】チェコスロバキア特許発明第203382(CS,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08J 9/00- 9/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液反応型ウレタン樹脂組成物を用いたポリウレタンフォームの形成方法であって、
前記2液反応型ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)とから調製され、
ポリオール含有成分(Y)が、ポリオール成分(a)、触媒(b)、整泡剤(c)、及び1級アミノ基または2級のアミノ基を有するアミン化合物(d)と二酸化炭素(e)との付加物であるアミン炭酸塩を含み、
硬化した際の前記2液反応型ウレタン樹脂組成物が、連続気泡性軟質ポリウレタンフォームであり、該ポリウレタンフォームのJIS A 1405-2:2007により測定される63ヘルツから5000ヘルツの平均吸音率が30%以上であり、かつ、
下記の方法により測定される液だれ長さが、300mm以内であり、
下記の記載により定義されるクリームタイムが、1秒未満であり、かつ
下記の記載により定義されるライズタイムが、17秒以下である、
前記2液反応型ウレタン樹脂組成物を、開放キャビティを有する基体の上にフロス吐出し、硬化を含む反応を経て前記ポリウレタンフォームを前記基体中で形成する方法:
測定方法:射出成形機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して射出成形機から、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に射出物を形成する。吐出後5分経過後、アクリル板上の射出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液だれ長さとして測定する、
クリームタイム:ポリオール含有成分(Y)とポリイソシアネート成分(X)とを
混合して混合液としたとき、混合開始する時間をゼロ秒として、当該混合液において色相の変化が起こり始め、発泡が開始するまでの時間をいう、
ライズタイム:ポリオール含有成分(Y)とポリイソシアネート成分(X)とを
混合して混合液としたとき、混合開始する時間をゼロ秒として、当該混合液において発泡が終了するまでの時間(発泡によるフォーム表面の上昇が停止するまでの時間)をいう。
【請求項2】
前記アミン化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミンまたは脂環族アミンを含む、請求項1に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項3】
前記アミン化合物の分子量が33~220である、請求項1または2に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項4】
前記アミン化合物の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して1~15質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して0.5~5質量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項6】
前記アミン化合物および二酸化炭素とから形成されるアミン炭酸塩の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して1.5~20質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項7】
ポリイソシアネート成分(X)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートおよびそれらの変性体からなる群から選択される少なくとも1つのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項8】
前記ポリウレタンフォームのコア密度が、10~110kg/m
3である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項9】
JIS K 6400-7:2012で測定される前記ポリウレタンフォームの通気量が3~60L/minである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項10】
前記ポリウレタンフォームのセルサイズの平均直径が400
μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項11】
JIS A 1405-2:2007により測定される500ヘルツから2500ヘルツの前記ポリウレタンフォームの平均吸音率が40%以上である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項12】
JIS A 1405-2:2007により測定される前記ポリウレタンフォームの吸音率のピークトップが500ヘルツから2500ヘルツの間に存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【請求項13】
前記2液反応型ウレタン樹脂組成物を、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を射出成形機から吐出することにより調製する工程を更に有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタンフォームの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液反応型ウレタン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、ポリウレタン原料の混合反応液が吐出されたその場所において、瞬時に発泡とウレタン化およびウレア化反応が進行してほとんど流動することなく軟質ポリウレタンフォームを生成し、生成されたフォームが優れた吸音特性を有することを特徴とする、2液反応型ウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では生活空間の各所で快適な音響環境が求められることが多くなって来ている。例えば建物であれば、特殊な静穏室や無響室ならもちろんのこと、汎用的な使用においても、外部からの音の侵入低減、部屋間での音の通過防止、建物壁等による反響音の低減や、雨音対策等が求められ、そのための吸音材の需要が広がっている。また、車体、重機、発電機、OA機器、家電製品などの他の用途においても快適な音響環境への適応が進んでいる。特に車両空間としては、代表的には自動車車内や鉄道車両内が挙げられ、快適な音響環境の創出のために既に多種多様の吸音材料が報告されている。
【0003】
現在用いられている吸音性材料の多くは、工場等で生産されたシート状や繊維状物、あるいはパネル化された材であり、それらを適正な形状や量分を切り出し、吸音性を付与したい空間に貼付または充填する場合が多い。しかし切り出しと貼付には手間がかかるし、空間に充填する場合は、吸音性材料と周りの接触する材との間にどうしても隙間が出来てしまうため、吸音性能が十分発揮できないケースがある。その問題を解決するのが、吸音性能を付与したいその現場で原料を注入し、その場で発泡反応が進む(反応開始、発泡、反応完了)タイプの、現場発泡型の吸音材である。この場合、周りの材料と吸音材がしっかり接着することで隙間のないシームレス構造をとることから、より効果的な吸音性能が期待できる。特に従来より自動車業界では、車体全体の剛性力向上および居住空間の快適な音響環境を確保することが求められているが、その中で閉断面構造を有するセンタピラーや、車体骨格内の閉断面部分に注入型の樹脂発泡材や防音材を埋め込む工夫がなされている。
【0004】
例えば、熱硬化型の発泡性材料(エポキシ、ゴム等)を閉断面部分に取付け、塗装焼付炉にて発泡硬化させて剛性および防音性を高める技術が試みられている。しかしながら、この熱硬化型の発泡性材料は、自動車の塗装焼付炉を利用して発泡硬化に付されるため、使用部位によっては焼付温度が変化することに伴なう、発泡倍率のぶれ(未充填空間ができたり、逆に過発泡部ができたりする)を抑制する必要があり、また閉断面の形状に対して発泡性材料の形状を合せる必要もある。
【0005】
これに対し、常温混合下で発泡硬化させる方法として、いわゆるポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤からなり、発泡剤(従来では、専ら水、またはこれに代えてもしくは併用して用いられる水素原子含有ハロゲン化炭化水素系や低沸点炭化水素類)の存在下の反応でウレタンフォームを形成しうる2液反応型ウレタン樹脂組成物を用い、該組成物を注入、発泡硬化せしめて補強および防音効果を付与する技術も試みられている。この注入技術は、上記発泡ぶれ等の問題を解決しうるが、流動状態で注入するため、閉断面部分に存在するわずかな隙間(もしくは孔部)からも反応樹脂物が漏れ出てしまうことが少なくなく、このため何らかのシールの工夫や、ポリウレタン組成物での調整等の対応が必要となる。
【0006】
また、特許文献1では、自動車のボディの隙間にウレタン原料混合液を泡状(フロス)で吐出して、開口部分からの漏れを少なくし特定の部分だけにポリウレタンフォームを充填させる技術が報告されている。しかしながら、ここでは具体的な実施例は示されておらず、ウレタン化の反応性調整を伴わないフロス法だけによる技術のみでは、開口部分からの漏れには十分に対応できない。またポリウレタンフォームの特性値が示されておらず、どのような吸音特性が期待できるのか不明である。
【0007】
特許文献2および特許文献3では、特定のアミン類を特定量使用し、2液反応型ウレタン化の反応性を促進することによりポリウレタンフォームを形成し、隙間もしくは孔部からの漏れを抑制する技術が報告されている。しかしながら、これらはもっぱら、ベースポリオールの水酸基が150~800mgKOH/gである硬質性のポリウレタンフォームに関するものであり、吸音性能としては不十分である。また製品の密度(実施例では比重0.4)も、今日の市場から求められる程度の低いものではない。
【0008】
特許文献4では、発泡剤としてアルカノールアミンのカルバメート(アルカノールアミンと二酸化炭素の付加物)又はアルカノールアミンのカルバメートと水との混合物を使用する、開放キャビティを有しかつ車体又は車体フレームの上に組立てられる自動車部品に結合された、硬質ポリウレタンフォームの形成方法が示されている。しかしこれもやはり硬質ポリウレタンフォームに関するものであることから吸音性能としては不十分である。また製品の密度(実施例では192~384kg/m3)も、今日の市場から求められる程度の低いものではない。また、一般に、ウレタンフォームのような多孔質材料に音波が入射すると、その空気振動が直接材料内部の隙間や気泡部分の空気に伝わり、その際、セル膜に当たると膜面が振動して音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換され吸音作用を生じるとされている。そのため、優れた吸音特性のためには、セル膜が振動するための柔軟性が必要であり、硬質性のフォームでは空気振動を熱エネルギーに変換する程度が小さいため、十分な吸音性を達成できない。
【0009】
このような技術状況下、作業現場で所望の部位に簡便に注入することができ、かつ音漏れを防止しうる吸音性能に優れた材料を創出することが依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭61-116509号公報
【文献】特開平10-212332号公報
【文献】特開平11-105057号公報
【文献】特表2007-528434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、作業現場で所望の部位に簡便に適用することができ、かつ音漏れを効果的に防止しうる吸音性能に優れた材料を提供することを目的としている。また、本発明は、優れた吸音性と低密度とを両立し、作業適性に優れた材料を提供することを目的としている。
【0012】
本発明者らは、今般、特定の原料成分の組み合わせから調製される2液反応型ウレタン樹脂組成物を作業現場で適用したところ、所望の部位に簡便にフォームを形成させ、音漏れを顕著に防止しうることを見出した。さらに、本発明者らは、上記フォームは吸音性の優れているのみならず、低密度であり、作業適性にも優れ、効率的かつ簡便に現場で生産しうることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下が提供される。
(1)ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)とから調製される2液反応型ウレタン樹脂組成物であって、
ポリオール含有成分(Y)が、ポリオール成分(a)、触媒(b)、整泡剤(c)、1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物(d)および二酸化炭素(e)を含み、
硬化した際の前記2液反応型ウレタン樹脂組成物が、連続気泡性軟質ポリウレタンフォームであり、該ポリウレタンフォームのJIS A 1405-2:2007により測定される63ヘルツから5000ヘルツの平均吸音率が30%以上であり、かつ、
以下の方法により測定される液垂れ長さが、300mm以内である、2液反応型ウレタン樹脂組成物:
測定方法:射出成形機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して射出成形機から、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に射出物を形成する。吐出後5分経過後、アクリル板上の射出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定する。
(2)前記アミン化合物が、脂肪族アミン、芳香族アミンまたは脂環族アミンを含む、(1)に記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(3)前記アミン化合物の分子量が33~220である、(1)または(2)に記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(4)前記アミン化合物が1級または2級のアミノ基を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(5)前記アミン化合物の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して1~15質量部である、(1)~(4)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(6)前記二酸化炭素の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して0.5~5質量部である、(1)~(5)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(7)前記アミン化合物および二酸化炭素とから形成されるアミン炭酸塩の含有量が、ポリオール成分(a)100質量部に対して1.5~20質量部である、(1)~(6)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(8)ポリイソシアネート成分(X)が、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートおよびそれらの変性体からなる群から選択される少なくとも1つのものである、(1)~(7)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(9)ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物のクリームタイムが1秒以下である、(1)~(8)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(10)前記ポリウレタンフォームのコア密度が、10~110kg/m3である、(1)~(9)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(11)JIS K 6400-7:2012で測定される前記ポリウレタンフォームの通気量が3~60L/minである、(1)~(10)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(12)前記ポリウレタンフォームのセルサイズの平均直径が400nm以下である、(1)~(11)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(13)前記ポリウレタンフォームのJIS A 1405-2:2007により測定される500ヘルツから2500ヘルツの平均吸音率が40%以上である、(1)~(12)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(14)前記ポリウレタンフォームのJIS A 1405-2:2007により測定される500ヘルツから2500ヘルツの間に吸音率ピークトップが存在する、(1)~(13)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
(15)ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を射出成形機から吐出することにより調製される、(1)~(14)のいずれかに記載の2液反応型ウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた吸音性を有し、射出しても過度に液垂れしない2液反応型ウレタン樹脂組成物を用いることにより、優れた吸音性を有する軟質ポリウレタンフォームを作業現場で所望の部位に簡便に形成させることができる。
また、本発明によれば、特に車両室内の音響環境に求められる500~2500Hzの吸音特性を有する軟質ポリウレタンフォームを射出成形により所望の部位に注入しうることから、車両室内の優れた音響環境の創出のために有利に利用することができる。
また、本発明によれば、優れた吸音性を有する低密度の軟質ポリウレタンフォームを効率的かつ簡便に所望の部位で生産しうることから、車体をはじめとする適用対象基体の防音性向上と軽量化とを両立する上で有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物の液垂れ性の測定方法を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の実施例における吸音率の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
2液反応型ウレタン樹脂組成物
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)とから調製される2液反応型ウレタン樹脂組成物であって、ポリオール含有成分(Y)が、ポリオール成分(a)、触媒(b)、整泡剤(c)、1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物(d)および二酸化炭素(e)を含み、硬化した際の前記2液反応型ウレタン樹脂組成物が、連続気泡性軟質ポリウレタンフォームであり、該ポリウレタンフォームのJIS A 1405-2:2007により測定される63ヘルツから5000ヘルツの平均吸音率が30%以上であり、かつ、以下の方法により測定される液垂れ長さが、300mm以内であることを特徴としている:
測定方法:射出成形機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して射出成形機から、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に射出物を形成する。吐出後5分経過後、アクリル板上の射出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定する。
【0017】
本発明のように、ポリイソシアネート成分(X)と、アミン化合物と二酸化炭素を含むポリオール含有成分(Y)とを構成原料として用いて、射出しても過度に液垂れせず、優れた吸音性を有するポリウレタンフォームを形成する2液反応型ウレタン樹脂組成物を製造しうることは意外な事実である。
以下、2液反応型ウレタン樹脂組成物を各原料成分毎に説明する。
【0018】
[ポリイソシアネート成分(X)]
本発明のウレタン原液に用いられるポリイソシアネート成分(X)としては、特に制限はなく、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
ポリイソシアネート成分(X)の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。また変性ポリイソシアネートの具体例としては、上記各ポリイソシアネートのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。これらのうちでも、MDI、クルードMDI、またはこれらの変性体が好ましい。MDI、クルードMDIまたはその変性体を用いることは、発泡安定性および耐久性が向上する、価格等の点で好ましい。
【0020】
本発明のポリイソシアネート成分の粘度(mPa・s/25℃)は、特に限定されないが、好ましくは50~2,000であり、より好ましくは100~1,000であり、さらに好ましくは120~500である。
【0021】
また、ポリイソシアネート成分(X)の比重は、特に限定されないが、例えば、1.1~1.25とすることができる。
【0022】
[ポリオール含有成分(Y)]
本発明のポリオール含有成分(Y)は、ポリオール成分(a)、触媒(b)、整泡剤(c)、アミン化合物(d)および二酸化炭素(e)を含む。
【0023】
[ポリオール成分(a)]
ポリオール成分(a)は、好ましくはポリエーテルポリオールであり、より好ましくはポリオキシアルキレンポリオールである。また、本発明の特に好ましい態様によれば、ポリオールは、平均官能基数が2~4、水酸基価が20~100mgKOH/gである。
【0024】
ポリオール成分(a)の平均官能基数は、上述の通り、好ましくは2~4であり、より好ましくは2~3である。ここで、本発明における平均官能基数とは、一分子当たりの官能基の数をいい、開始剤の活性水素数の平均値を意味する。ポリオール成分(a)の平均官能基数を上記範囲とすることは、ポリウレタンフォームの乾熱圧縮永久歪等の物性が著しく低下する不具合を回避する上で有利である。また、ポリオール成分(a)の平均官能基数を上記範囲とすることは、得られるポリウレタンフォームの伸びが低下して硬度が高くなり引っ張り強度等の物性が低下することを回避する上でも好ましい。
【0025】
ポリオール成分(a)の水酸基価は、好ましくは20~100mgKOH/gであり、より好ましくは25~90mgKOH/g、さらに好ましくは25~80mgKOH/gである。ここで、ポリオール成分(a)の水酸基価を20mgKOH/g以上とすることは、コラップス等を抑制しポリウレタンフォーム成形品を安定して製造する上で有利である。また、ポリオールの水酸基価を100mgKOH/g以下とすることは、ポリウレタンフォームの柔軟性を損なわず、かつ、吸音性能を得る上で好ましい。なおここで、本発明における水酸基価とは、試料(固形分)1g中に含まれる水酸基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数である。そして、無水酢酸を用いて試料中の水酸基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定した後、下記の式により求められる。
水酸基価〔mgKOH/g〕=[((A-B)×f×28.05)/S]+酸価
A:空試験に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
B:滴定に用いた0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f:ファクター
S:試料採取量(g)
【0026】
ポリオール成分(a)は、開始剤、重合触媒、アルキオキシド等の重合単位を用いて当該技術分野における公知の手法により製造することができる。ポリオールの製造に用いられる重合触媒としては、アルカリ金属触媒、セシウム触媒、ホスフェイト系触媒、複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)等が挙げられる。
【0027】
また、ポリオール成分(a)の製造に用いられる開始剤としては、分子中の活性水素数が2または3である化合物を、単独で用いるか、または併用することが好ましい。活性水素数が2である化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられる。また活性水素数が3である化合物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0028】
また、ポリオール成分(a)は、上述の通り、アルキレンオキシドを開環付加重合単位として用いることが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン等が挙げられるが、プロピレンオキシド、またはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましい。プロピレンオキシドとエチレンオキシドとを併用する場合、それぞれを別々に順次開環付加重合させてブロック重合鎖を形成してもよく、プロピレンオキシドとエチレンオキシドの混合物を開環付加重合させてランダム重合鎖を形成しても良い。さらに、ランダム重合鎖の形成とブロック重合鎖の形成を組み合せてもよい。ブロック重合鎖を形成させる場合、アルキレンオキシドを開環付加重合させる順序は、プロピレンオキシド、エチレンオキシドの順で付加するか、または先にエチレンオキシドを付加し、プロピレンオキシド、エチレンオキシドの順に付加することが好ましい。
【0029】
また、別の種類としては、ポリカルボン酸と低分子量の水酸基含有化合物を反応して得られるポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合して得たポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をアミノ化し、あるいはポリエーテルポリオールのイソシアネートプレポリマーを加水分解して得られるポリエーテルポリアミンであってもよい。
ポリオール成分(a)は1種類であってもよいし、2種類以上を混合してもよい。
【0030】
ポリオール含有成分(Y)におけるポリオール成分(a)の含有量は、ポリオール含有成分(Y)100質量%に対して、好ましくは50~100質量%であり、より好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは70~90質量%である。
【0031】
[触媒(b)]
本発明のポリオール含有成分における触媒(b)の好適な例としては、ウレタン化触媒が挙げられる。ウレタン化触媒は、ポリオール類とポリイソシアネート成分とを反応させる上で有利である。ウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進する全ての触媒を使用でき、例えば、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類;酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物が挙げられる。
触媒の量は、ポリオール成分100質量部当たり0.1~5質量部であってよい。
【0032】
[整泡剤(c)]
本発明のポリオール含有組成物には、ポリウレタンフォームにおいて良好なセルを形成する観点から、整泡剤(c)を好適に含有する。整泡剤の種類とその組み合わせ、使用量を適宜決定することにより、本発明に適した吸音性軟質ポリウレタンフォームのセル構造を調整できる。発泡後にフォーム崩壊や収縮が起こらないことはもちろんのこと、優れた吸音特性を発揮するためには、整泡剤を用いて、平均セルサイズと通気量を適切に調整することが好ましい。
【0033】
整泡剤(c)は、1種であってもよく、2種以上の成分を組み合わせた組成物であってもよい。整泡剤(c)の具体的な例としては、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤等が挙げられるが、シリコーン系整泡剤が好ましい。本発明の好ましい一態様によれば、シリコーン系整泡剤は、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマーを主成分とするシリコーン整泡剤である。該シリコーン系整泡剤はポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマー単独であっても、これに他の併用成分を含んでいてもよい。他の併用成分としては、ポリアルキルメチルシロキサン、グリコール類およびポリオキシアルキレン化合物等が例示できる。また、本発明の整泡剤の別の好ましい態様によれば、整泡剤(c)は、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ポリアルキルメチルシロキサンおよびポリオキシアルキレン化合物から選択される2種以上を含む組成物である。かかる組成物は、フォームの安定性の点から特に有利である。整泡剤の市販品の例としては、MOMENTIVE社製の商品名:L-580、L-590、L-620、L-680、L-682、L-690、SC-154、SC-155、SC-240、L-598、L-2100、L-2171、SH-210、L-2114、SE-232、L-533、L-534、L-539、M-6682B、L-626、L-627、L-3001、L-3111、L-3415、L-3002、L-3010、L-3222、L-3416、L-3003、L-3333、L-3417、L-2171、L-3620、L-3630、L-3640、L-3170、L-3360、L-3350、L-3555、L-3167、L-3150/L-3151、L-5309、SH-209、L-3184などが挙げられる。また、別の市販品の例としては、東レ・ダウ・コーニング社製の商品名:SF-2964、SF-2962、SF-2969、SF-2971、SF-2902L、SF-2904、SF-2908、SF-2909、SRX-274C、SZ-1328、SZ-1329、SZ-1330、SZ-1336、SZ-1346、SZ-3601、SRX-294A、SRX-280A、SRX-294A、SRX-298、SH-190、SH-192、SH-194などが挙げられる。また、別の市販品の例としては、信越化学工業社製の商品名:F-327、F-345、F-305、F-242Tなどや、BYK Chemie社製の商品名:Silbyk 9700、Silbyk 9705、Silbyk 9710などが挙げられる。また、EVONIC社製 B4113,B4900、B8002、B8110、B8123、B8228、B8232、B8715LF2, B8724LF2、BF2370、BF2470などが挙げられる。
【0034】
ポリオール含有組成物において、整泡剤の含有量は、適宜選択してよいが、ポリオール成分100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部である。
【0035】
[1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物(d)]
本発明のアミン化合物(d)は、2液反応型組成物において架橋剤として機能しうる。したがって、アミン化合物(d)は、好ましくはアミン架橋剤である。
【0036】
本発明のアミン化合物(d)は、好ましくは、1級または2級のアミノ基を有する、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂環式アミン等である。
【0037】
1級または2級のアミノ基を有する脂肪族アミン化合物の好適な例としては、エチレンジアミン、m-キシレンジアミン、1,4-ジアミノヘキサン、ブチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジメチルアミノプロピルアミン等のアルキルアミン化合物、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン化合物、ヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0038】
1級または2級のアミノ基を有する芳香族アミン化合物の好適な例としては、3,5-ジエチル-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン(DETDA)、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン、1-トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-クロロ-3,5-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0039】
1級または2級のアミノ基を有する脂環族アミン化合物の好適な例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等のアミノ基および/またはアミノアルキル基を2個以上有するシクロアルカンが挙げられる。
【0040】
アミン化合物(d)の含有量は、ポリオール成分(a)100質量部に対して、1~10質量部である。好ましくは2~9質量部であり、さらに好ましくは3~8質量部である。
含有量を1質量部以上とすることは、ポリウレタンフォームの液垂れ性を確保する上で好ましい。また含有量を10質量部以下とすることは、フォーム形成時の安定化を図る点(不安定になるとフォームの崩壊や収縮が発生する)において、またかつアミン化合物の使用量を低レベルとし、フォームの製造コストを抑制する上で好ましい。
【0041】
[二酸化炭素(e)]
本発明の二酸化炭素(e)は、2液反応させ射出した直後のごく初期の発泡形成(いわゆるフロス化)に寄与し、2液反応型組成物において発泡剤として機能しうる。
【0042】
二酸化炭素の含有量は、ポリオール成分(a)100質量部に対して、0.5~5質量部である。好ましくは1~5質量部であり、さらに好ましくは2~5質量部である。含有量を0.5質量部以上とすることは、ポリウレタンフォームの液垂れ性と低密度性を確保する上で好ましい。また含有量を5質量部以下とすることは、フォーム形成時の安定化を図る点(不安定になるとフォームの崩壊や収縮が発生する)において好ましい。
【0043】
二酸化炭素は液状であっても気体状であってもよい。二酸化炭素が液状であれば、そのまま、所望によりポリオール成分(a)等の他の原料成分と共にポリオール含有成分(Y)中に加えることができる。また、二酸化炭素が気体状であれば、その他の原料成分と共にタンク等の密閉容器内に入れ、加圧することにより二酸化炭素をポリオール含有成分(Y)中に加えることができる。タンク等の容器中で二酸化炭素をポリオール含有成分(Y)中に加える場合は、タンク内ガスを二酸化炭素に置換した後、タンク圧を2~5kgf/cm2程度に加圧し、タンク中のポリオール含有成分(Y)を適度に撹拌することにより可能である。
溶解した二酸化炭素の量は、大気圧下でポリオール含有成分(Y)の密度を測定し、以下の式により求めることができる。
【0044】
【0045】
なお、二酸化炭素の他の発泡剤としては、水や、フレオン系発泡剤であるハイドロフルオロカーボンHFC等、ハイドロフルオロオレフィンHFO(1233zd、1336mzz)等を使用してもよい。
【0046】
水は、ポリイソシアネート成分(X)と反応した後、二酸化炭素を放出し、ポリウレタンフォームの生成に寄与することができる。水の使用は、ポリウレタンフォームの密度を小さくするためには特に有利である。水の使用量は、好ましくはポリオール成分(a)100質量部に対し、0~10質量部、さらに好ましくは4~6質量部である。水の使用量を0質量部以上とすることはポリウレタンフォームの密度を小さくするために好ましく、10質量部以下とすることは成形時のポリウレタンフォームの安定性を確保するために好ましい。
【0047】
[1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物と二酸化炭素との付加物]
1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物(d)と二酸化炭素(e)は、容易に付加反応を起こし、1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物と二酸化炭素との付加物(「アミン炭酸塩」ともいう)となることが知られている(例えば、特許公報 昭62-220512)。本発明の組成物においては、アミン炭酸塩を、アミン化合物と二酸化炭素が一体化した材料として使用することができる。また、アミン炭酸塩とポリイソシアネートの反応は非常に速く、瞬時にウレア化反応が起こるとともに二酸化炭素を放出することができる。したがって、アミン炭酸塩は、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を反応させ吐出した直後のごく初期の発泡形成(いわゆるフロス化)に寄与することができる。
【0048】
アミン炭酸塩の合成は、特許公報 昭62-220512に記載の方法を参考に準備することができる。例えば、アミン化合物を30~110℃、好ましくは50~80℃に加温し、ゆっくり撹拌しながら、1~5barの条件下で二酸化炭素を吹込めば、比較的短時間で容易に合成することができる。通常2アミン当量のアミン化合物に1モルの二酸化炭素が吸収された段階で反応は終了し発熱がとまる。この反応液は常温で固化する場合があるため、それを避けるために、アミン化合物に液状のポリオールあるいはエチレングリコール等を前もって加えておいてもよい。
【0049】
本発明においては、ポリオール含有成分(Y)の製造工程中でアミン炭酸塩を形成させてもよい。1つの態様によれば、アミン化合物および二酸化炭素から形成されたアミン炭酸塩と、アミン化合物および二酸化炭素を除くポリオール含有成分(Y)の原料成分とを混合して、ポリオール含有成分(Y)を得ることができる。また、別の態様によれば、二酸化炭素と、アミン化合物を含むポリオール含有成分(Y)の原料成分とを混合して、ポリオール含有成分(Y)を得、ポリオール含有成分(Y)中でアミン炭酸塩を発生させることができる。
【0050】
アミン化合物と二酸化炭素とのモル比は、十分な発泡剤としての機能を得るために、アミノ基1モルに対して、二酸化炭素のモル比は好ましくは0.3~0.5モルであり、より好ましくは0.4~0.5モルである。アミノ基を2個以上有する1~2級アミン化合物においても、アミノ基1モルに対して、二酸化炭素は、好ましくは0.3~0.5モルである。
【0051】
本発明のポリオール含有成分(Y)において、1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物と二酸化炭素との付加物の含有量は、ポリオール成分(a)100質量部に対し、3~20質量部であり、好ましくは4~18質量部であり、さらに好ましくは5~15質量部である。上記付加物の含有量を3質量部以上とすることは、ポリウレタンフォームの初期の発泡性が低下することを防止し、車体骨格充填時の液漏れを防止する上で好ましい。また、上記付加物の含有量を20質量部以下とすることは、フォーム形成時の安定化を図る点(不安定になるとフォームの崩壊や収縮が発生する)において、またかつアミン化合物の使用量を低レベルとし、フォームの製造コストを抑制する上で好ましい。
【0052】
アミン炭酸塩を使用する場合も、さらに発泡剤として、水や、二酸化炭素を併用してもよい。しかしながら、密度コントロールの観点からは、発泡剤としては、水とアミン炭酸塩のみを用いることが好ましい。水とアミン炭酸塩のみを用いることは、発泡量を正確に予測し、安定した密度と品質のフォームを得る上で有利である。
【0053】
[その他の成分]
本発明のポリウレタンフォームを製造する際には、上述した成分以外に所望の成分をさらにウレタン原液中に配合してもよい。添加剤としては、炭酸カリウム、硫酸バリウム等の充填剤;乳化剤等の界面活性剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0054】
本発明のポリオール含有成分(Y)には、安定性確保の観点から、所望により難燃剤を含有させてもよい。難燃剤は好ましくはリン系難燃剤であり、好適な例としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)等が挙げられる。難燃剤は1種でもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
他の難燃剤の例としては、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム)、金属水酸化物(例えば、水酸化アルミニウム)、臭素系化合物(例えば、臭素化ジフェニルエーテル、臭素化ジフェニルアルカン、臭素化フタルイミド)、リン系化合物(例えば、赤リン、リン酸エステル、リン酸エステル塩、リン酸アミド、有機フォスフィンオキサイド)、窒素系化合物(例えば、ポリリン酸アンモニウム、フォスファゼン、トリアジン、メラミンシアヌレート)である。これら難燃剤を単独使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。
【0055】
また必要に応じて、ポリイソシアネート反応性の活性水素を有する、比較的分子量の小さい所謂架橋剤を配合してもよい。
【0056】
架橋剤としては、水酸基を2個以上有する化合物が挙げられる。好適な架橋剤としては、平均官能基数が2.0~8.0、水酸基価が200~2,000mgKOH/gである化合物が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。以下、架橋剤のより具体的な例を説明する。
【0057】
水酸基を有する架橋剤としては、2~8個の水酸基を有する化合物が好ましく、多価アルコール、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加して得られる低分子量ポリオキシアルキレンポリオール、3級アミノ基を有するポリオール等が挙げられる。(1級または2級のアミノ基を有するアミン化合物は除く)
【0058】
水酸基を有する架橋剤の具体例としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエタノールアミン、グリセリン、ソルビトール、シュークロース、ペンタエリシリトール、N-アルキルジエタノール、ビスフェノールA-アルキレンオキシド付加物、グリセリン-アルキレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-アルキレンオキシド付加物、ペンタエリシリリトール-アルキレンオキシド付加物、ソルビトール-アルキレンオキシド付加物、シュークロース-アルキレンオキシド付加物、脂肪族アミン-アルキレンオキシド付加物、脂環式アミン-アルキレンオキシド付加物、複素環ポリアミン-アルキレンオキシド付加物、芳香族アミン-アルキレンオキシド付加物、天然物由来のポリオール等が挙げられる。
【0059】
[イソシアネートインデックス]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物は、上述のようなポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)とから調製することができる。ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)の使用量は、原料中のポリオール含有成分(Y)とポリイソシアネート成分(X)の割合がイソシアネートインデックスで80~120となる量使用することが好ましい。イソシアネートインデックスとは[(ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量とポリオール含有成分中の活性水素の当量との比)×100]で表される。
【0060】
[製造方法/ポリウレタンフォーム成形機]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物は、射出成形機により射出し、硬化して軟質ポリウレタンフォームを形成することができる。したがって、本発明のウレタン樹脂組成物の製造方法は、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を射出成形機から射出する工程を含んでなる。ポリウレタンフォーム成形品の製造に用いられる成形機としては、特に制限なく、当該技術分野で公知の二液混合型(および三液以上の混合型)の成形機を使用することができる。かかる成形機としては、例えば、Cannon社製、Hennecke社製またはポリウレタンエンジニアリング製の反応射出成形機をはじめとする、高圧ポリウレタン成形機または低圧ポリウレタン成形機が挙げられる。かかる成形機における2液の混合方式は特に制限されることなく種々の方法が使用できる。例示すれば、撹拌羽根等を用いて機械的に撹拌する方法、スタティックミキサーによる方法、高圧下で2液成分を対向させ衝突させ、キャビティ内の液の乱流により混合する方法等である。また2液混合型のスプレー機も使用できる。本発明においては、必要とされるその場で、成形機から2液混合型ウレタン樹脂組成物が吐出され、ポリウレタンフォームが成形されることになる。
【0061】
本発明の製造方法において、射出の際のポリイソシアネート成分(X)およびポリオール含有成分(Y)の原料温度は、ポリウレタンフォームの形成を妨げない限り特に限定されないが、例えば、20~60℃であり、好ましくは30~50℃である。
【0062】
また、ポリイソシアネート成分(X)およびポリオール含有成分(Y)の吐出量は各々、適用対象基体のサイズ、原料の反応性に応じて適宜設定してよいが、例えば、1~2000g/秒であり、好ましくは10~1000g/秒である。
【0063】
本発明の製造方法では、射出工程において、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)とから得られる2液反応型ウレタン樹脂組成物を硬化させて連続気泡性軟質ポリウレタンフォームとすることができる。したがって、一つの態様によれば、ポリオール含有成分(Y)を含んでなる、ポリイソシアネート成分(X)と共に2液反応型ウレタン樹脂組成物を製造するための組成物が提供される。また、別の態様によれば、ポリイソシアネート成分(X)を含んでなる、ポリオール含有成分(Y)と共に2液反応型ウレタン樹脂組成物を製造するための組成物が提供される。本発明によれば、2液反応型ウレタン樹脂組成物のウレタン化およびウレア化反応を介して、液垂れを抑制しつつ、吸音性のポリウレタンフォームを作業現場で迅速に形成しうることから、優れた吸音性を所望の部位に簡便に付与する上で有利である。
【0064】
[機能/用途]
[液垂れ性]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物の液垂れ性の測定方法は、以下の通りである。
測定方法:射出成形機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して射出成形機から、ポリイソシアネート成分(X)とポリオール含有成分(Y)との混合物を120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に射出物を形成する。吐出後5分経過後、アクリル板上の射出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定する。測定方法のさらなる詳細は、後述する実施例に準じて行うことができる。
【0065】
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物の液垂れ長さは、好ましくは300mm以内であり、より好ましくは50~300mmであり、さらに好ましくは70~280mmである。このような液垂れ範囲とすることは、作業現場で所望の位置に組成物を加え、ポリウレタンフォームを配置する上で有利である。
【0066】
[反応性]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物のクリームタイム、ゲルタイムおよびライズタイムは、液垂れを抑制して迅速にポリウレタンフォームを形成する観点から、短時間であることが好ましい。ここで、クリームタイムとは、ポリオール含有成分とポリイソシアネート成分とを混合開始する時間をゼロ秒として、当該混合液において色相の変化が起こり始め、発泡が開始するまでの時間をいう。また、ゲルタイムとは、ポリオール含有成分とポリイソシアネート成分との混合液が硬化する期間(棒状の固体で触った際に、液が糸を引き始めるまでの時間)(秒)をいう。また、ライズタイムとは、上記混合液において発泡が終了するまでの時間(発泡によるフォーム表面の上昇が停止するまでの時間)をいう。本発明において、クリームタイム、ゲルタイムおよびライズタイムは、後述する実施例も含め、訓練された専門パネラー(n=10)の攪拌における目視判定による時間測定の平均値による。
【0067】
より具体的には、本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物のクリームタイムは、好ましくは2秒以下、さらに好ましくは1秒以下である。また、上記組成物のゲルタイムは、好ましくは25秒以下であり、より好ましくは5~21秒であり、さらに好ましくは7~10秒である。また、上記組成物のライズタイムは好ましくは50秒以下、さらに好ましくは40秒以下である。
【0068】
[連続気泡性軟質ポリウレタンフォーム]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物が硬化して形成されるポリウレタンフォームは、上述の通り、連続気泡性軟質ポリウレタンフォームとされる。ここで、本発明の「連続気泡性軟質ポリウレタンフォーム」とは、ポリウレタンフォームが有するセル(気泡)の全てが連通しているポリウレタンフォームを意味するのではなく、少なくとも一部が連通していることを意味し、ポリウレタンフォーム中に独立気泡が存在していてもよい。本発明においては、ポリウレタンフォーム中の連続気泡の割合と独立気泡の割合とを適宜に制御することによって、本発明において得られるポリウレタンフォームの通気量や柔軟性、復元性を様々に設定することが可能になる。したがって、本発明の好ましい態様によれば、連続気泡性軟質ポリウレタンフォームでは、通気性や柔軟性、復元性の確保の観点から、連続気泡と独立気泡とが混在している。
【0069】
[吸音特性]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物が硬化して軟質ポリウレタンフォームとなる場合、当該軟質ポリウレタンフォームの、JIS A 1405-2:2007により測定される500ヘルツ(Hz)から2500ヘルツ(Hz)の平均吸音率は、好ましくは40%以上であり、より好ましくは45~99%である。かかる平均吸音率を有するポリウレタンフォームを使用することは、車両室内環境において、会話を妨げず、外部から侵入する雑音や騒音を選択的に吸収する上で特に有利である。
【0070】
また、JIS A 1405-2:2007により測定される上記軟質ポリウレタンフォームの吸音率ピークトップは、好ましくは500ヘルツから2500ヘルツの間、より好ましくは500ヘルツから2000ヘルツの間、に存在する。一般的な軟質ポリウレタンフォームでは、2500Hz超の領域に吸収ピークや主たる吸収域があることが多いが、本発明によれば、ポリウレタンフォームの吸音率ピークトップを上記範囲とすることにより、車両や室内において良好な音響環境を実現することが可能となる。
【0071】
[平均セルサイズと通気量]
また、本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物が硬化して軟質ポリウレタンフォームとなる場合、軟質ポリウレタンフォームには連続気泡性のセル構造を付与することができる。
十分な吸音性能を得るためには、音がポリウレタンフォーム内を通過する際にできるだけ長距離にわたりセル間を経由し、その間に乱反射し、分散吸収させるセル構造であることが好ましい。本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物は、上述のような吸音に適したセルサイズ、通気量をポリウレタンフォームにて実現する上で特に有利である。セルサイズと通気量の調節は、上述の整泡剤や、ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、アミン、触媒などの各原料成分の調整、およびその条件等を適宜調節することにより実施することができる。
【0072】
本発明のポリウレタンフォームにおいて、平均セルサイズ(直径)は、好ましくは100~400μmであり、より好ましくは100~350μmである。平均セルサイズを100μm以上とすることは、成形されるフォームの収縮を防止する上で有利である。また、平均セルサイズを400μm以下とすることは、音が適度な距離でフォーム内を通過し優れた吸音特性を発揮する上で有利である。
【0073】
本発明のポリウレタンフォームにおいて、好ましくは通気量は3~60 L/min であり、より好ましくは4~50L/minである。通気量を3L/min以上とすることは成形されるフォームの収縮を防止する上で有利である。また、通気量を60L/min以下とすることは、優れた吸音特性を発揮する上で有利である。
【0074】
[適用対象基体]
本発明においては、上記2液反応型ウレタン樹脂組成物を、「開放キャビティ」を有する所望の基体の上に吐出し、発泡、硬化を含む反応を経てポリウレタンフォームを基体中で成形することができる。ここで「開放キャビティ」とは、大気に対して開放している部分を意味し、ウレタン樹脂組成物を基体中に注入する際に注入口として使用することができる。基体は、開放キャビティ(開口部)を有している限り、形状および配置は特に限定されない。具体的には、実質的に平らな領域、湾曲した領域、部分内の中空空間または他の適当な形状であってよい。また、本発明のウレタン樹脂組成物は液だれ性が低いことから、その形状または配置のために流体を保有できない基体であっても使用することができる。
[吸音材用途]
本発明の2液反応型ウレタン樹脂組成物は、上記適用対象基体における吸音材として好適に用いることができる。好適な適用対象基体としては、車体またはその部品、重機、発電機、OA機器、家電製品、建築部材等が挙げられるが、車体(特には自動車)または建築部材が特に好ましい。車体部品としては、好ましくは車体骨格部材であり、ピラー、シル(ロッカーパネル)、シャーシレール等が挙げられる。特に車体の製造において、本発明のウレタン樹脂組成物は、例えば、車体骨格充填材として、車体組み立てラインにおいて、車体部品に好適に適用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。実施例1~11のうち、実施例1及び9~11は参考例である。なお使用する数値は、特記ない場合は質量部を表している。また、特に記載の無い限り、単位および測定方法は、JIS(日本工業規格)による。
【0076】
比較例1
特開2015-4011に記載の例1と同様の硬質ウレタンポリウレタンフォームを製造した。使用した原料は以下の化合物である。
[ポリオール含有成分原料]
ポリオールA1:ノニルフェノール1モルに対し、ホルムアルデヒドを1.6モル、ジエタノールアミンを2.4モル反応させてマンニッヒ化合物1を得た。このマンニッヒ化合物1に対し、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)をこの順で開環付加重合させて、25℃における粘度が800mPa・s、水酸基価が300mgKOH/gのマンニッヒポリオールを得た。このときのPOとEOとの合計量に対するEOの割合は、70重量%であった。
ポリオールB1:開始剤としてグリセリンを用い、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)をこの順で開環付加重合させて、25℃における粘度が800mPa・s、水酸基価が35mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。 このときのPOとEOとの合計量に対するEOの割合は、15重量%であった。
ポリオールC1:開始剤としてペンタエリスリトールを用い、プロピレンオキシドのみを開環付加重合させて、25℃における粘度が1800mPa・s、水酸基価が370mgKOH/gのポリエーテルポリオールを得た。
触媒1:商品名TOYOCAT-RX3、東ソー社製 (泡化、反応性触媒)
触媒2:商品名TOYOCAT-RX7、東ソー社製 (泡化、反応性触媒)
整泡剤1:商品名SF-2937、東レダウコーニング社製
整泡剤2:商品名SH-194、東レダウコーニング社製
難燃剤:トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学社製)
[ポリイソシアネート]
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、住化コベストロウレタン社製
【0077】
上記原料を用いて以下に示す配合によりポリオール含有成分を準備し、ポリオール含有成分と、ポリイソシアネートとを液温40℃、室温20℃、体積比率1:1にて、スプレー発泡機を用いて混合反応させ、JIS-A-9526に準拠して硬質フォームを製造した。
ポリオールA1:70質量部
ポリオールB1:20質量部
ポリオールC1:10質量部
水:17質量部
触媒1:7質量部
触媒2:3質量部
整泡剤1:2質量部
整泡剤2:2質量部
難燃剤:40質量部
【0078】
実施例1~11および比較例2~4
ポリオール化合物、触媒、整泡剤、発泡剤であるアミン炭酸塩・水を含有するポリオール混合物と、ポリイソシアネート化合物を高圧発泡機により混合、反応させてポリウレタンフォームを形成した。表1に示す配合で軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0079】
実施例および比較例2~4で用いた原料は、以下のとおりである。
【0080】
[ポリイソシアネート]
x1:住化コベストロウレタン社製のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート
粘度(25℃)180mPa・s、NCO含有率:31.5%
【0081】
[ポリオール]
a1:平均官能基数3で、アルキレンオキシドを開環付加重合させた、25℃における粘度が1600mPa・s、水酸基価が28mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0082】
[触媒]
b1:Dabco33LV(エボニック社製)
b2:ジメチルアミノエタノール
b3:Toyocat ET (東ソー社製)
b4:ジラウリン酸ジブチル錫
【0083】
[整泡剤]
c1:Tegostab B8724LF2(エボニック社製)
【0084】
[アミン架橋剤]
d1:モノエタノールアミン
d2:ジエタノールアミン
d3:ジエチルトルエンジアミン
d4:Ethacure 300 (アルベマール社製)
【0085】
[発泡剤]
e1:水
e2:二酸化炭素
e3:モノエタノールアミンと二酸化炭素からなるアミン炭酸塩
(アミンと二酸化炭素とのモル比が1:0.5)
【0086】
[成形条件]
発泡機 :A-system 40Std(Cannon社)
原料温度:ポリオール含有成分/ポリイソシアネート成分=30~50℃/30~50℃
秒間吐出量:120g/sec
吐出圧:ポリオール含有成分/ポリイソシアネート成分=13MPa/13MPa
混合比:ポリオール含有成分/ポリイソシアネート成分=100/42.4~115(質量比)(イソシアネートインデックスを100とする)
吐出口径: 直径1cm (0.785 cm2)
【0087】
以下の方法により各評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
<反応性>
表1に記載の成形条件で注入時間を0.6秒に設定し、72gのウレタン混合液を1Lカップに入れ、クリームタイム・ゲルタイム・ライズタイムを測定した。ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物を混合開始する時間をゼロ秒として、色相の変化が起こり始め、発泡が開始するまでの時間をクリームタイム・発泡体を割り箸で軽くつき、発泡体から引き抜いた時に糸状になる時間をゲルタイム・発泡によるフォームの上昇が停止するまでの時間をライズタイムとして目視で測定した(単位:秒)。
【0089】
<収縮または崩壊>
上記反応性測定時において、ライズタイム後のフォームの形状を維持したものを“無”、収縮したものを“有”とした。崩壊した場合は“崩壊”とした。
【0090】
<コア密度>
表1に記載の成形条件で注入時間を1.2秒に設定し、144gのウレタン混合液を上面開放系の金型200×200×50mmに入れ、フリー発泡させたフォームの中心部から50mm×50mm×30mmに切り出し、その重量より密度を算出した。
【0091】
<通気量>
表1に記載の成形条件で注入時間を1.2秒に設定し、144gのウレタン混合液を上面開放系の金型200×200×50mmに入れ、フリー発泡させたフォームの中心部から51mm×51mm×25mmに切り出し、JIS K 6400-7:2012に準拠した装置を用いて通気量を算出した。
【0092】
<吸音性>
表1に記載の成形条件で注入時間を1.2秒に設定し、144gのウレタン混合液を上面開放系の金型200×200×50mmに入れ、フリー発泡させたフォームの中心部からΦ40mm×30mmに切り出し、JIS A 1405-2:2007 に準拠する日本音響エンジニアリング株式会社製 垂直入射吸音率測定システム WinZacMTXを用いて吸音性を測定した。規定された周波数領域(63~5000Hz)の吸音率の総和を測定数で割った値を平均吸音率1とした。規定された周波数領域(500~2500Hz)の吸音率の総和を測定数で割った値を平均吸音率2とした。
【0093】
<液垂れ性>
液垂れ性を
図1の模式図に示される方法に従い測定した。具体的には、射出成形機の吐出位置から10cm離れた位置にアクリル板を垂直に配置し、アクリル板に対して射出成形機から前記2液混合物24gを120g/秒の速度にて0.2秒間吐出し、アクリル板上に射出物を形成した。吐出後5分経過後、アクリル板上の射出物の垂直方向の最上点から最下点までの長さを液垂れ長さとして測定した。併せて、射出物(フォーム)の幅および高さも測定した。なお、アクリル板から流れ落ちたものは、落下とした。また、成形条件の詳細は表
1に示される通りとした。
長さが300mm以下の場合を適正(○)、300mm超の場合を不適正(×)と判
定した。
【0094】
<平均セルサイズ>
実施例または比較例から得られたフォームの中心部から100x50x30(t)mmの直方体を切り出した。次に、直方体の断面のSEM写真(倍率40倍、撮影装置名 卓上走査電子顕微鏡 NeoScopeTM JCM-6000、会社名 日本電子株式会社(JEOL Ltd.))を撮影し、セル状態を観察した。そして、セルの状態を専門パネラー(10名)により評価した。観察区域の全域から均等に50個のセルを選択し、各セル径を測定した。平均径はセル径においての平均値を示した。
【表1】
【0095】
表1の比較例1は、住宅用断熱材である全水発泡の硬質ポリウレタンフォームであり、反応性が早く連続気泡性であるため液垂れや収縮が起こらない。しかしながら、比較例1は、硬質性であるために、すべての周波数領域で軟質ポリウレタンフォーム(実施例1)より吸音性能が低かった。このことは、
図2の吸音率にも示されている。また、
図2において、比較例1のピークトップ(3135Hz)と比較して、実施例1、実施例7および実施例8のピークトップ(1250Hz)は大きく短周期側に位置していた。また、図示しないが、他の実施例においても、比較例1の吸音率・吸音ピーク位置とは大きく相違していた。
【0096】
表1に示す比較例2では、アミン化合物を使用せず、反応性を速くライズタイムを14秒に調整しても液垂れし、フォームが落下した。比較例4では、アミン化合物の添加量を多く16質量部とすると、軟質ポリウレタンフォームのセルがクローズになり、ポリウレタンフォームが崩壊する問題が発生した。
【0097】
一方で、実施例1,2では、発泡剤としての水を6質量部、アミン化合物を3および6質量部(アミン炭酸塩として4および8質量部)として評価した。実施例2では、反応性、フォーム特性もすべて良好であった。
【0098】
実施例3では、実施例2と同じ配合だが、ポリオール含有成分とポリイソシネート成分の液温を50℃に上げて成形しても、収縮や崩壊状態になることなくフォームが生成でき、このシステムの安定した成形性が確認できた。
【0099】
比較例3では、通気量や平均セルサイズが大きくなると、平均吸音率が大きく低下した。これから、優れた吸音特性を得るためには、通気量や平均セルサイズを調整することが重要なことが分かる。
【0100】
実施例4,5,6では、発泡剤としての水を使用せず、アミン炭酸塩のみでその量を8~18.7質量部に変化させて発泡させた。これらは、反応性、フォーム特性もすべて良好であった。しかしアミン炭酸塩量を21質量部とすると、比較例4に示すようにフォームの崩壊が発生した。
【0101】
実施例7,8では、発泡剤としての水をそれぞれ4、5質量部としたが、反応性、フォーム特性もすべて良好であった。
【0102】
実施例9,10,11では、アミン化合物と二酸化炭素が一体化したアミン炭酸塩を使用しなくとも、アミン化合物と二酸化炭素を個別にポリオール含有成分に配合することで、実施例と同様な効果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、吸音性能に優れた軟質性ポリウレタンフォームを現場発泡用に適応させることが可能となる。また反応混合液が吐出されたその場で流動することなく瞬時に発泡完了し、低密度でかつ高い生産性も有することから、建築、建材、車体等の現場発泡用の広い用途に好適である。