(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】粘着シート及び粘着シートを粗面に適用する方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230808BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230808BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20230808BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230808BHJP
C09J 7/40 20180101ALI20230808BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J7/22
C09J11/06
C09J7/40
(21)【出願番号】P 2018239528
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】小野 雄也
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178080(JP,A)
【文献】特開2017-113890(JP,A)
【文献】特開平09-157606(JP,A)
【文献】国際公開第2009/011396(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、
前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と
を含む粘着シート
であって、
前記粘着シートは、前記第1感圧接着層の上に配置された、前記第1感圧接着層の前記微細構造化表面と相補的な微細構造化表面を有するライナーをさらに含み、
前記剛性シートが10MPa以上300MPa以下の降伏弾性率を有し、前記剛性シートの降伏弾性率と厚みとの積が、0.9×10
4
N/m以上5×10
4
N/m以下である、粘着シート。
【請求項2】
透明樹脂フィルムであって、前記透明樹脂フィルムの表面に印刷されたグラフィック画像を有する透明樹脂フィルムをさらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記第1感圧接着層の25℃における剪断貯蔵弾性率G’が5×10
4Pa以上1×10
6Pa以下である、請求項1又は2のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項4】
前記剛性シートの2%引張強度が40N/25mm以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記剛性シートがポリエステルフィルムである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記第1感圧接着層の微細構造化表面が、凸部と、その凸部の周りを取り囲む凹部とから構成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記凸部及び前記凹部が幅5μm以上100μm以下の連通路を形成する、請求項
6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記凸部及び前記凹部が深さ10μm以上400μm以下の連通路を形成する、請求項
6又は
7のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項9】
前記第1感圧接着層がアクリル系粘着剤を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記第1感圧接着層が白色顔料を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
金属層をさらに含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記金属層が前記剛性シートの他方の面上に配置されている、請求項
11に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記金属層がアルミニウムを含む、請求項
11又は
12のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項14】
前記剛性シートの他方の面に第2感圧接着層を有する、請求項2~
13のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項15】
前記第2感圧接着層が白色顔料を含む、請求項
14に記載の粘着シート。
【請求項16】
前記透明樹脂フィルムが前記剛性シートである、請求項2~
15のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項17】
80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、
前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と
を含む粘着シート
であって、
前記粘着シートは、前記第1感圧接着層の上に配置された、前記第1感圧接着層の前記微細構造化表面と相補的な微細構造化表面を有するライナーをさらに含み、
前記剛性シートが10MPa以上300MPa以下の降伏弾性率を有し、前記剛性シートの降伏弾性率と厚みとの積が、0.9×10
4
N/m以上5×10
4
N/m以下である、粘着シートを提供することと、
前記第1感圧接着層が粗面に接触するように前記粘着シートを
前記粗面に適用することと
を含む、粘着シートを粗面に適用する方法であって、
前記粗面に適用された後に前記粘着シートが平滑な外観を呈する、方法。
【請求項18】
前記粘着シートが透明樹脂フィルムを含み、前記透明樹脂フィルムが、前記透明樹脂フィルムの表面に印刷されたグラフィック画像を有する、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記粗面に適用された前記粘着シートの周縁部及び前記粗面の少なくとも一部を覆うようにシールテープを適用することをさらに含む、請求項
17又は
18のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は粘着シート及び粘着シートを粗面に適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは様々な用途に使用されており、例えばグラフィック画像を有する粘着性のグラフィックシートは、外装及び内装の装飾、又は広告目的で使用されている。凹凸形状を有する基材表面に適用される一般的な粘着シートは、良好な接着を達成するために基材表面の形状に対して追従することができる柔軟性を有している。
【0003】
特許文献1(特開平6-287525号公報)は、「フィルム基材の表面に、粘着剤を塗布して成る装飾用粘着フィルムにおいて、該フィルムの硬さがJISK5400に準拠する鉛筆引っかき試験においてHから3Bの範囲であり、該粘着剤が、弾性率が1×104~1×106dyn/cm2の粘着性微小球を含有したことを特徴とする粘着フィルム」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開平9-157606号公報)は、「I)支持体と、II)上記支持体上に形成され、粘着性の粘着性微小球と粘着性ポリマーとを含んでなる粘着層とを有してなる粘着シートにおいて、a)上記粘着層は、上記粘着性微小球が少なくとも2個集まって形成されたクラスターと上記粘着性ポリマーとを含有する凸状粘着部を有し、b)その粘着シートを1kg/cmの圧力で平坦なガラス板表面に貼り付けて測定した場合、粘着層と板表面との面積接触率が20~90%である、粘着シート」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開平8-113768号公報)は、「フィルム基材の表面に粘着剤を塗布して成る装飾用粘着フィルムにおいて、当該粘着剤が微小球を有し、その微小球の弾性率が1×104~1×107dyn/cm2であり、且つ粒径が10~100μm(体積平均直径として)であることを特徴とする粘着フィルム」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-287525号公報
【文献】特開平9-157606号公報
【文献】特開平8-113768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モルタル、コンクリート、サイディングボード、スタッコ、エンボス加工を施した壁紙などの粗面に接着した後でも平滑な外観を呈する粘着シートに対する要求がある。また、粘着シートは、これらの粗面のみならず、金属板、樹脂フィルムなどの平滑面に対しても十分な接着力を有することが望ましい。例えば、そのような粘着シートをグラフィックシートとして用いると、グラフィック画像の品質を維持しつつ様々な表面にグラフィックシートを設置することができる。
【0008】
本開示は、十分な接着力で平滑面及び粗面のいずれにも接着することができ、かつ適用する表面に拘らず接着後に平滑な外観を呈する粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施態様によれば、80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と
を含む粘着シートが提供される。
【0010】
別の実施態様によれば、80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層とを含む粘着シートを提供することと、前記粘着シートを粗面に適用することとを含む、粘着シートを粗面に適用する方法であって、前記粗面に適用された後に前記粘着シートが平滑な外観を呈する、方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の粘着シートは、所定の厚みを有し凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と、所定の厚みを有する剛性シートとを組み合わせることにより、平滑面及び粗面のいずれに対しても十分な接着力を示し、かつ適用する表面に拘らず接着後に平滑な外観を呈することができる。
【0012】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【
図2】別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【
図3】さらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【
図4】さらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【
図5】さらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【
図6】さらに別の実施態様の粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0015】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0016】
本開示において「感圧接着」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。
【0017】
本開示において「上に配置される」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に上に配置される場合も含む。
【0018】
一実施態様の粘着シートは、80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層とを含む。第1感圧接着層の凹凸を有する微細構造化表面を被着体表面に接触させ、必要に応じて加圧することで、粘着シートが被着体に接着される。
【0019】
図1に、一実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、剛性シート12と、剛性シート12の一方の面(
図1では下面)の上に配置された第1感圧接着層14とを含む。第1感圧接着層14は凹凸を有する微細構造化表面142を有する。
図1では、任意の構成要素として第1感圧接着層14の上(
図1では下面)に、第1感圧接着層14の微細構造化表面142と相補的な微細構造化表面を有するライナー16が示されている。
【0020】
第1感圧接着層は剛性シートの上に直接配置されてもよく、剛性シートの上に間接的に配置、すなわち剛性シート上の他の層、例えば印刷層、金属蒸着層などの装飾層、金属層、追加の樹脂フィルム層などの上に配置されてもよい。
【0021】
剛性シートは、第1感圧接着層の支持体として機能し、かつ、粘着シートの適用時に第1感圧接着層の微細構造化表面の凹凸が変形することにより生じた応力に抵抗して粘着シートの変形を防止し、その結果、粘着シートの外観を平滑に保つことに寄与する。被着体が凹凸表面を有する場合は、剛性シートは接着時に粘着シートが凹凸表面に過度に追従することを抑制し、凹凸表面の突起が粘着シートを貫通することを防止できる。粘着シートを垂直面に適用した場合、剛性シートは粘着シートの変形を抑制して、自重による剥離を防止することができる。
【0022】
剛性シートの厚みは約80μm以上、約2mm以下である。いくつかの実施態様では、剛性シートの厚みは約100μm以上又は約150μm以上、約1mm以下又は約500μm以下である。剛性シートの厚みを上記範囲とすることで、シート自身の有する剛性と組み合わされて、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができる。剛性シートの厚みが面内で異なる場合、本開示において剛性シートの厚みとは剛性シートの最小厚みを指す。
【0023】
いくつかの実施態様では、剛性シートの降伏弾性率は、約10MPa以上、約15MPa以上、又は約20MPa以上、約300MPa以下、約250MPa以下又は約200MPa以下である。剛性シートの降伏弾性率を上記範囲とすることで、剛性シートの厚みと組み合わされて、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができる。降伏弾性率は、剛性シートを幅15mm、長さ100mmの長方形に切断して試験片を作製し、JIS K 7127:1999に準拠して試験片の伸び特性を、引張試験機を用いて20℃、掴み間隔50mm、引張速度300mm/分の条件で測定したときの、降伏点における弾性率と定義される。
【0024】
いくつかの実施態様では、剛性シートの降伏弾性率と厚みの積は、約0.9×104N/m以上、約1.0×104N/m以上、又は約1.5×104N/m以上、約5×104N/m以下、約4×104N/m以下、又は約3×104N/m以下である。降伏弾性率と厚みの積は、剛性シートの曲げ剛性に比例する。剛性シートの降伏弾性率と厚みの積を上記範囲とすることで、剛性シートが接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持するのに十分な曲げ剛性を有することができる。
【0025】
いくつかの実施態様では、剛性シートの2%引張強度は、約40N/25mm以上、約45N/25mm以上、又は約50N/25mm以上である。剛性シートの2%引張強度を上記範囲とすることで、接着時に粘着シートの外観の平滑性を維持することができ、粘着シートの破断又は破壊及びそれに伴う糊残りを生じさせずに粘着シートを除去することができる。2%引張強度は、剛性シートを幅25mm、長さ100mmの長方形に切断して試験片を作製し、引張試験機を用いて20℃、掴み間隔50mm、引張速度300mm/分の条件で測定したときの、2%伸びにおける引張強度と定義される。
【0026】
剛性シートの材料は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などの樹脂を含むフィルム;上質紙、塗工紙、及び珪藻土等の種々の材料を含む含浸紙などの紙;並びにこれらの紙に前記樹脂がラミネートされたラミネート紙が挙げられる。高い降伏弾性率と強度を有し、耐候性に優れ、比較的安価であることから、剛性シートとしてポリエステルフィルムを用いることが有利である。
【0027】
剛性シートに、装飾等を目的としたエンボス処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理などが施されていてもよい。表面処理を行うことで第1感圧接着層及び/又は第2感圧接着層と剛性シートの密着性を高めることができる。
【0028】
剛性シートは延伸フィルムであってもよく非延伸フィルムであってもよい。剛性シートは延伸フィルム、特に2軸延伸フィルムであることが、フィルムの剛性及び引張強度を有利に高めることができる。
【0029】
剛性シートはその他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。
【0030】
第1感圧接着層は、凹凸を有する微細構造化表面を有する。凹凸を有する微細構造化表面は接着面として被着体表面と対向する。粘着シートの接着時に微細構造化表面の凸部が変形して、例えば粘着シートの厚み方向に圧縮されて、第1感圧接着層の被着体表面との接触面積が増大し、粘着シートが被着体表面に接着する。凹凸を有する微細構造化表面は、凸部と凹部の高低差を利用して粗面との接触面積も大きくすることができ、それにより粗面に対する接着力も高めることができる。
【0031】
第1感圧接着層の厚みは約40μm以上、約1.2mm以下である。いくつかの実施態様では、第1感圧接着層の厚みは約100μm以上又は約150μm以上、約1mm以下又は約500μm以下である。第1感圧接着層の厚みを約40μm以上とすることで、平滑面及び粗面のいずれに対しても十分な接着力を得ることができる。第1感圧接着層の厚みを約1.2mm以下とすることで、粗面の凹凸に対して第1感圧接着層が過度に追従して粘着シートの外観の平滑性が低下することを防止又は抑制することができる。本開示において第1感圧接着層の厚みとは第1感圧接着層の最大厚みを指す。
【0032】
いくつかの実施態様において、第1感圧接着層の25℃における剪断貯蔵弾性率G’は、約5×104Pa以上、約1×105Pa以上、又は約2×105Pa以上、約1×106Pa以下、約8×105Pa以下、又は約6×105Pa以下である。第1感圧接着層の剪断貯蔵弾性率G’を上記範囲とすることにより、第1感圧接着層の接着力及び微細構造化表面の形状を粗面及び平滑面の両方に適したものに維持することができる。剪断貯蔵弾性率G’は、測定温度範囲-80℃~150℃、昇温速度5.0℃/分、周波数1.0Hzの剪断モードで測定したときの25℃における値である。剪断貯蔵弾性率G’は、例えばティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社(日本国東京都品川区)の動的粘弾性測定装置ARESを用いて測定することができる。
【0033】
第1感圧接着層は粘着剤を含む。粘着剤としてアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の樹脂を含む粘着剤を使用することができる。粘着剤は粘着付与剤を含んでもよく、架橋されていてもよい。本開示における「粘着(性)」とは常温で短時間わずかな圧力を加えただけで接着性を示す材料の性質を意味しており、「感圧接着」と相互に交換可能に使用される。
【0034】
一実施態様では粘着剤はアクリル系粘着剤である。アクリル系粘着剤は、接着性能及び耐候性に優れており、変性が容易であることから、被着体の材料の種類及び表面状態、例えば表面粗さ、プライマー処理の有無などに合わせて接着特性を調節することができる。
【0035】
アクリル系粘着剤は粘着性アクリル系ポリマーを含む。いくつかの実施態様では、アクリル系粘着剤は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上のモノマーを含むモノマー組成物の重合物である粘着性アクリル系ポリマーを含む。
【0036】
アルキル(メタ)アクリレートは粘着性アクリル系ポリマーの主成分を構成する。いくつかの実施態様では、アルキル(メタ)アクリレートの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約50質量部以上、約70質量部以上、又は約80質量部以上、約99.5質量部以下、約99質量部以下、又は約98質量部以下である。本開示における「重合性成分」とは、以下説明するラジカル重合により重合可能な成分を意味する。「重合性成分」が質量部に関して用いられるときは、これらの成分の合計質量を意味する。
【0037】
水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、及び(メタ)アクリルアミドは、比較的高い極性を有する官能基を分子内に有する極性モノマーである。極性モノマーは、粘着性アクリル系ポリマーに高い凝集力を付与する、及び/又は粘着性アクリル系ポリマーと基材表面との相互作用を高めることが知られている。いくつかの実施態様では、極性モノマーの配合量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約10質量部以下、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0038】
粘着性アクリル系ポリマーは、上記モノマー組成物を、通常のラジカル重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などを用いて重合することにより得ることができる。重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。重合開始剤の使用量は、モノマー組成物の重合性成分100質量部を基準として、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下とすることができる。
【0039】
いくつかの実施態様では、粘着性アクリル系ポリマーの重量平均分子量は約10万以上、又は約20万以上、約100万以下、又は約70万以下である。粘着性アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により標準ポリスチレンを用いて決定される。
【0040】
粘着性アクリル系ポリマーは架橋剤で架橋されていてもよい。架橋剤として、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)などのエポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、1,1’-イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)などの二塩基酸のビスアジリジン誘導体などが使用できる。架橋剤として、エポキシ化合物、特にN,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)を用いることが好ましい。架橋剤の添加量は、架橋剤の種類にもよるが、粘着性アクリル系ポリマー100質量部に対して、一般に約0.1質量部以上、又は約0.2質量部以上、約10質量部以下、又は約5質量部以下とすることができる。架橋剤をこの範囲で調整し、架橋密度を上げることで、第1感圧接着層の凝集力を高めて、第1感圧接着層の接着力及び微細構造化表面の形状を粗面及び平滑面の両方に適したものに維持することができる。
【0041】
粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度Tgは、例えば、約-65℃以上、約-60℃以上、又は約-50℃以上、約25℃以下、約0℃以下、又は約-10℃以下とすることができる。粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度を上記範囲とすることにより、第1感圧接着層の接着力を調節して第1感圧接着層に必要な接着力と微細構造化表面の形状保持性の両方を付与することができる。粘着性アクリル系ポリマーのガラス転移温度Tg(℃)は、粘着性アクリル系ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、以下のFOXの式
【数1】
より求めることができる(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)。式中、Tg
iは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、X
iは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0042】
第1感圧接着層の凹凸を有する微細構造化表面は、凸部と、その凸部の周りを取り囲む凹部とから構成することができる。このような微細構造化表面を第1感圧接着層に形成する方法の一例を以下説明するがこれに限られない。
【0043】
所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、粘着シートの第1感圧接着層を形成するための粘着剤を塗布、及び必要に応じて乾燥、加熱及び/又は放射線照射して第1感圧接着層を形成する。これにより、第1感圧接着層のライナーと接する面(これが粘着シートの接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、第1感圧接着層に所定の凹凸構造(ポジ構造)を有する微細構造化表面を形成する。したがって、この方法によれば、第1感圧接着層の微細構造化表面とライナーの微細構造化表面とは互いに相補的である。
【0044】
粘着シートの被着体への貼り付け操作中に微細構造化表面の凹凸が圧力で変形することで、粘着性の凸部は被着体表面に接着するのに適した形状に変形する。変形の程度は、第1感圧接着層を被着体に接触させた際に凸部及び凹部と被着体表面の接触面積が大きくなるように、第1感圧接着層の厚み、微細構造化表面の凸部及び凹部の形状、寸法及び配置、及び粘着剤の剪断貯蔵弾性率G’などにより制御することができる。
【0045】
微細構造化表面は様々な形状の凸部を含むことができる。凸部の形状として、例えば、円柱、楕円柱、角柱、半球、半楕円球、円錐、角錐、切頭円錐、切頭角錐などが挙げられる。微細構造化表面が複数の種類の形状の凸部の組み合わせを含んでもよい。凸部の基部の断面形状が頂部の断面形状と異なっていてもよい。例えば、頂部の断面が円形であるのに対して、基部の断面が正方形であってもよい。凸部の基部の断面積は、通常凸部の頂部の断面積より大きい。凸部の基部は互いに又は交互に当接していてもよく、隣接する凸部の基部が所定の距離で互いに分離していてもよい。
【0046】
いくつかの実施態様では、凸部の基部の断面積は、約10000μm2以上、約20000μm2以上、又は約30000μm2以上、約5mm2以下、約4mm2以下、約3mm2以下である。凸部の基部の断面積を上記範囲とすることにより、粘着シートを粗面に対して高い接着力で接着することができる。
【0047】
一実施態様では、凸部の頂部は平面を有してもよい。頂部に平面を有する凸部の形状として、例えば、円柱、楕円柱、角柱、切頭円錐、及び切頭角錐が挙げられる。これらの形状を有する凸部を第1感圧接着層の微細構造化表面に有する粘着シートは、平滑面に対して高い接着力で接着することができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、凸部の頂部の合計断面積は、第1感圧接着層の平面面積の約30%以上、約50%以上、又は約70%以上、約99%以下、約95%以下、又は約90%以下である。凸部の頂部の合計断面積を上記範囲の割合とすることにより、平滑面への接着力及び粗面への接着力の両方を有利な範囲でバランスさせることができる。本開示において「平面面積」とは、第1感圧接着層の厚み方向に沿って見たときの第1感圧接着層の平面形状から求められる面積を意味する。
【0049】
第1感圧接着層の構造化表面の凸部と凹部の高低差は、第1感圧接着層の凹凸表面のトポグラフィー(表面の形状又は特徴)を示す指標の一つであり、特に粗面に対する接着性に関係する。いくつかの実施態様では、第1感圧接着層の構造化表面の凸部と凹部の高低差は、約10μm以上、約40μm以上、又は約80μm以上、約400μm以下、約350μm以下、又は約300μm以下である。第1感圧接着層の構造化表面の凸部と凹部の高低差を上記範囲とすることで、例えば高さ1~2mmの突起を有する粗面に対しても粘着シートを接着することができる。
【0050】
一実施態様では、第1感圧接着層の微細構造化表面の間隙は空気抜け性に好適な形状及び深さを有しており、粘着シートを平滑面に容易に設置することができる。
【0051】
微細構造化表面の凸部及び凹部は連通路を形成してもよい。第1感圧接着層の微細構造化表面は、例えば、一定形状の溝部が規則的パターンで配置されて形成された規則的パターンの連通路を有してもよく、不定形の溝部が配置されて形成された不規則なパターンの連通路を有してもよい。
【0052】
連通路は接着層の外縁に延在してもよい。この実施態様では、粘着シートの被着体への貼り付け時に第1感圧接着層表面と被着体表面に挟まれた空気を連通路を通じて外部に排出して、粘着シートと被着体の界面における観察可能な気泡の混入を抑制又は防止することができる。
【0053】
複数の連通路が互いに略平行に配置されるように形成される場合、連通路の間隔は、一般に約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上、約2mm以下、約1mm以下、又は約500μm以下とすることができる。
【0054】
連通路の幅(第1感圧接着層の厚み方向に沿って見たときの最大幅)は、一般に約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
【0055】
連通路の深さ(第1感圧接着層の厚み方向に沿って測定したときの連通路に隣接する凸部の頂部から連通路の底までの距離)は、一般に約10μm以上、約40μm以上、又は約80μm以上、約400μm以下、約350μm以下、又は約300μm以下とすることができる。一実施態様では、連通路の底も接着面を有する、すなわち第1感圧接着層が連通路によって分断されていない。
【0056】
第1感圧接着層は、その他の任意成分、例えば、フィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。これらの任意成分は粘着剤中に溶解又は分散させることができる。一実施態様では第1感圧接着層は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。
【0057】
粘着シートは公知の方法で被着体表面に適用することができる。適用時に粘着シートをローラーなどで被着体表面に対して押し付けてもよく、手で擦ってもよい。粘着シートは適用時に一旦変形することがあるが、経時で形状を復元して平滑な表面を提供することができる。一実施態様では、粘着シートはモルタル、コンクリートなどの粗面に適用され、適用された後に平滑な外観を呈する。さらに、粗面に適用された粘着シートの周縁部及び粗面の少なくとも一部を覆うようにシールテープを適用してもよい。このようにシールテープを粘着シートの上から適用することにより、粘着シートの端部と粗面との隙間からの水分等の侵入を防止することができ、粗面への適用時に粘着シートに残留しうる内部応力に起因した粘着シートの変形を抑制することができる。
【0058】
粘着シートの接着力は被着体表面によって様々であるが、180度剥離力で表したときに、例えば約0.5N/25mm以上、又は約1N/25mm以上、約50N/25mm以下、又は約25N/25mm以下である。粘着シートは剛性シートを有することから曲げ方向に変形しにくく、粘着シートの剥離を開始するのに必要な力が剥離開始位置に集中しない。そのため、180度剥離力が小さい場合であっても、粘着シートを被着体表面に保持することができる。180度剥離力は、粘着シートを幅25mm、長さ150mmの長方形に切断して試験片を作製し、JIS Z 0237:2009に準拠して被着体表面の上に20℃で貼り付けた後、20℃で24時間放置し、引張試験機を用いて20℃、300mm/分の剥離速度で180度剥離を行ったときの接着力として定義される。
【0059】
粘着シートと被着体を貼りあわせた構造における剪断力は被着体表面によって様々であるが、例えば約0.05MPa以上、又は約0.10MPa以上、約1.5MPa以下、又は約1.0MPa以下である。粘着シートは特に粗面に対して適用したときに高い剪断力を示すことができる。いかなる理論に拘束される訳ではないが、これは第1感圧接着層の凹凸を有する微細構造化表面と粗面の凹凸とが噛み合うためであると考えられる。高い剪断力は粘着シートを垂直面に適用するときに粘着シートの自重によるずれを防止するのに有利である。剪断力は、粘着シートを幅25mm、長さ60mmの長方形に切断して試験片を作製し、接触領域が25mm×12mmとなるように、試験片を幅25mm、長さ60mm、厚み1mmのアルミニウムパネルの上に23℃でローラーを用いて貼り付けた後、20℃で24時間放置し、引張試験機を用いて20℃、引張速度50mm/分で測定したときの接着力として定義される。
【0060】
一実施態様の粘着シートは再配置性を有する。凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層は、粘着シートに再配置性を付与することができる。
【0061】
粘着シートは、任意の構成要素、例えば剛性シートの一方の面上若しくは他方の面上に設けられた表面保護層、印刷層、金属蒸着層などの装飾層、これらの層を接着する接着層、追加の樹脂フィルム層などをさらに有してもよい。
【0062】
一実施態様では、粘着シートは透明樹脂フィルムを含み、透明樹脂フィルムはその表面に印刷されたグラフィック画像を有する。
【0063】
剛性シートは、他方の面に第2感圧接着層を有してもよい。第2感圧接着層により剛性シートと、透明樹脂フィルム又は他の層例えば金属層とを接着することができる。グラフィック画像は透明樹脂フィルムと第2感圧接着層の間に位置してもよい。このことによりグラフィック画像を透明樹脂フィルムで保護することができる。
【0064】
図2に、本開示の別の実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、剛性シート12の他方の面(
図2では上面)の上に配置された第2感圧接着層24と、透明樹脂フィルム22とを含む。透明樹脂フィルム22の表面(
図2では下面)には、グラフィック画像26が印刷されている。グラフィック画像26は透明樹脂フィルム22と第2感圧接着層24の間に位置している。
【0065】
透明樹脂フィルムの材料は特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。耐候性及び透明性に優れていることから、透明樹脂フィルムとしてアクリル系樹脂フィルムを用いることが有利である。
【0066】
透明樹脂フィルムの厚みは様々であってよく、例えば約25μm以上又は約40μm以上、約500μm以下又は約300μm以下とすることができる。
【0067】
透明樹脂フィルムに、装飾等を目的としたマット処理、エンボス処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理などが施されていてもよい。透明樹脂フィルムはその表面にレセプター層を有してもよく、レセプターフィルムであってもよい。レセプター層を有する又はレセプターフィルムである透明樹脂フィルムを用いることで、インクジェット印刷などを用いてグラフィック画像を透明樹脂フィルム上に直接形成することができる。透明樹脂フィルムはその他の任意成分、例えばフィラー、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを含んでもよい。
【0068】
透明樹脂フィルムは無色であってもよく、着色されていてもよい。いくつかの実施態様では、透明樹脂フィルムの全光線透過率は、波長範囲400~700nmにおいて、約85%以上、又は約90%以上である。本開示における全光線透過率はJIS K 7361-1:1997(ISO 13468-1:1996)に準拠して決定することができる。
【0069】
グラフィック画像は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、静電印刷などを用いて透明樹脂フィルムに印刷されたものであってよい。剛性フィルムに印刷する場合に比べ、透明樹脂フィルムはよりフレキシブルであるため、印刷時のハンドリング性が良好である。
【0070】
第2感圧接着層は、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の公知の樹脂を含有する感圧接着剤組成物を用いて形成することができる。第2感圧接着層は粘着付与剤を含んでもよく、架橋されていてもよい。一実施態様では第2感圧接着層は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では被着体表面を隠蔽することができる。
【0071】
第2感圧接着層の厚みは様々であってよく、例えば約10μm以上、約20μm以上又は約30μm以上、約200μm以下又は約100μm以下とすることができる。
【0072】
このようなグラフィック画像を有する粘着シートは、例えば以下の手順で製造することができる。剛性シート及び第1感圧接着層を有する粘着シートを用意する。次に、必要に応じて剛性シートの表面又は剛性シート上のその他の層の表面を表面処理し、これらの表面に感圧接着層組成物を塗布し、乾燥することにより第2感圧接着層を形成する。透明樹脂フィルムの一方の表面にインクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などを用いてグラフィック画像を印刷する。透明樹脂フィルムのグラフィック画像印刷面と第2感圧接着層が対向するように、透明樹脂フィルムと粘着シートを積層する。必要に応じて透明樹脂フィルムの非印刷面にバッキングを配置してもよく、第1感圧接着層の上に剥離ライナーを配置してもよい。必要に応じて第2感圧接着層と透明樹脂フィルムの間の密着性を高めるため、透明樹脂フィルムの表面にコロナ処理、プライマー処理などを施してもよい。
【0073】
グラフィック画像を有する粘着シートは以下の手順で製造することもできる。剛性シートの表面上に第2感圧接着層を形成し、第2感圧接着層上に剥離ライナーを貼り合わせる。次に、剛性シートの反対面に第1感圧接着層を形成し、第1感圧接着層の上に剥離ライナーを貼り合わせる。第2感圧接着層上の剥離ライナーを除去した後、グラフィック画像が印刷された透明樹脂フィルムを第2感圧接着層上に積層する。
【0074】
透明樹脂フィルムが剛性シートであってもよい。
図3に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、透明樹脂フィルム22でもある剛性シート12と、剛性シート12上に印刷されたグラフィック画像26と、接着層34と、追加の樹脂フィルム層32と、第1感圧接着層14とを含む。接着層34は第2感圧接着層と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。追加の樹脂フィルム層として、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などのフィルムが挙げられ、その厚みは様々であってよく、例えば約25μm以上又は約40μm以上、約500μm以下又は約300μm以下とすることができる。透明樹脂フィルムと追加の樹脂フィルムの合計厚みが80μm以上500μm以下であることで、これらのフィルムが協働して剛性シートとして機能してもよい。
【0075】
剛性シートはその表面にレセプター層を有してもよく、レセプターフィルムであってもよい。一実施態様ではレセプター層又はレセプターフィルムはアクリル系樹脂を含む。レセプター層を有する又はレセプターフィルムである剛性シートを用いることで、インクジェット印刷などを用いてグラフィック画像を剛性シート上に直接形成することができる。レセプター層は接着層を介して剛性シートに積層されていてもよい。
【0076】
図4に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、透明樹脂フィルム22と、透明接着層36と、グラフィック画像26と、グラフィック画像26を受容するレセプター層38と、剛性シート12と、第1感圧接着層14とを含む。透明接着層36は透明であることを条件として第2感圧接着層と同様のものであってよい。
【0077】
図5に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、透明樹脂フィルム22と、透明接着層36と、グラフィック画像26と、グラフィック画像26を受容するレセプター層38と、接着層34と、剛性シート12と、第1感圧接着層14とを含む。接着層34は第2感圧接着層と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。透明接着層36は透明であることを条件として第2感圧接着層と同様のものであってよい。レセプター層38は透明なアクリル系樹脂フィルムであってよい。
【0078】
粘着シートは金属層をさらに含んでもよい。金属層を用いることにより、粘着シートに低燃焼性、難燃性又は不燃性(以下、合わせて「不燃性」という。)を付与することができる。いかなる理論に拘束される訳ではないが、金属層は、それ自体が高い不燃性を有しており、粘着シートの構成要素の少なくとも一部を火炎、熱、酸素などから保護又は遮蔽できることから、粘着シートを全体として不燃性にすることができると考えられる。
【0079】
金属層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール、スチール合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、又はこれらの2種以上の組み合わせを含んでもよい。金属層は複数の金属層の積層体であってもよい。一実施態様では金属層は金属箔又は金属シートの形態で使用される。入手しやすく不燃性にも優れていることから、金属層はアルミニウム又はスチールを含むことが望ましく、安価で実用的な不燃性が得られることから、金属層はアルミニウムを含むことがより望ましい。
【0080】
いくつかの実施態様では、金属層の厚みは、約8μm以上、約10μm以上又は約15μm以上、約200μm以下、約150μm以下又は約100μm以下とすることができる。金属層の厚みを約8μm以上とすることで良好な不燃性を得ることができる。金属層の厚みを約200μm以下とすることで粘着シートの製造コストの不要な増大を避けることができる。
【0081】
金属層がアルミニウムを含む場合、金属層の厚みは、約12μm以上、約15μm以上又は約25μm以上とすることができ、約30μm以上、約40μm以上又は約50μm以上とすることでより優れた不燃性を得ることができる。
【0082】
一実施態様では、金属層は剛性シートの他方の面上に、すなわち、剛性シートの第1感圧接着層が配置された面とは反対側の面に直接接触して又は他の層を介して配置される。この実施態様では、粘着シートを基材に適用したときに剛性シートは金属層と基材の間に位置する。そのため、粘着シートの構成要素のうち厚みが比較的大きく燃焼しやすい剛性シートを、金属層の存在により、効果的に火炎、熱、酸素などから保護又は遮蔽して、粘着シートに高い不燃性を付与することができる。
【0083】
図6に、本開示のさらに別の実施態様による粘着シート10の概略断面図を示す。粘着シート10は、剛性シート12の一方の面(
図6では下面)の上に配置された第1感圧接着層14と、剛性シート12の他方の面(
図6では上面)の上に配置された金属層42とを含む。金属層42は第2感圧接着層24を介して剛性シート12に接着されている。粘着シート10は、剛性シート12の他方の面上に透明樹脂フィルム22をさらに含み、透明樹脂フィルム22の表面(
図6では下面)には、グラフィック画像26が印刷されている。透明樹脂フィルム22は接着層34を介して金属層42に接着され、グラフィック画像26は透明樹脂フィルム22と接着層34の間に位置している。粘着シート10を基材に適用すると、剛性シート12は金属層42と基材の間に位置して、粘着シート10の最表面(
図6では透明樹脂フィルム22の上面)が最初に暴露される火炎、熱、酸素などから金属層42によって保護又は遮蔽され、厚みが比較的大きく燃焼しやすい剛性シート12への延焼を防止又は抑制することができる。接着層34は第2感圧接着層24と同様のものであってよく、酸化チタンなどの白色顔料を含んでもよい。
【0084】
一実施態様では、金属層と装飾層の間に配置される接着層(
図6では金属層42とグラフィック画像26の間に配置される接着層34)は酸化チタンなどの白色顔料を含む。この実施態様では金属層の色調を隠蔽して装飾層の意匠性を維持する又は向上させることができる。
【0085】
いくつかの実施態様において、金属層を含む粘着シートの総発熱量は、20分間の合計で例えば約10MJ/m2以下、好ましくは約8MJ/m2以下、さらに好ましくは約6MJ/m2以下である。本開示における総発熱量は、ISO 5660-1に準拠してコーンカロリメータ法を用いて測定することができる。防火材料規格値によれば、粘着シートは、その総発熱量が、5分間の合計で8MJ/m2以下であれば難燃材料、10分間の合計で8MJ/m2以下であれば準不燃材料、20分間の合計で8MJ/m2以下であれば不燃材料にそれぞれ分類される。
【0086】
不燃性を有する粘着シートの厚みをより薄くすることでその不燃性をより高めることができる。いくつかの実施態様では、不燃性を有する粘着シートの厚みを約500μm以下、約300μm以下、又は約150μm以下とすることができる。
【0087】
粘着シートを構成する層は不燃性添加剤を含有してもよい。不燃性添加剤として、臭素化合物、リン化合物、塩素化合物、アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物などが挙げられる。臭素化合物として、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE、DBDPO)、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、ヘキサブロモベンゼンなどを使用することができる。リン化合物として、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル、赤リン、ハロゲンを含むリン酸エステルなどを使用することができる。塩素化合物として、塩素化パラフィンなどを使用することができる。アンチモン化合物として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどを使用することができる。金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを使用することができる。窒素化合物として、メラミンシアヌレートなどを使用することができる。不燃性添加剤の配合量は、粘着シートに所望される特性、例えば接着性、意匠性、透明性などを損なわない範囲で適宜決定することができる。
【0088】
粘着シートは様々な用途及び表面に使用することができる。一例として、建築物などの壁面、床面、天井面などに貼り付けて使用されるグラフィックシートが挙げられる。特に、粘着シートが、モルタル、コンクリート、壁紙等で表面が覆われ、凹凸の程度が大きく、凹凸の形状及び寸法が不規則な表面と平滑な表面のいずれにも適用される場合に有用である。
【0089】
粘着シートは、照明看板用のグラフィックシートとしても好適に使用することができる。照明看板に使用される粘着シートは、粘着シートの背面に位置する照明からの光の少なくとも一部を透過する領域を含む。ガラス、プラスチックなどで作られた照明看板のパネルの上に粘着シートを取り付けることで、照明の消灯時及び点灯時に観察できる装飾を照明看板に付与することができる。粘着シートが再配置性を有する場合は、不要になった粘着シートを照明看板から容易に除去し、必要に応じて新たな粘着シートを照明看板に貼り付けることができる。
【0090】
いくつかの実施態様では、粘着シートの全光線透過率は、粘着シート全面で平均して約5%以上、約7%以上、又は約10%以上、約90%以下、約60%以下、又は約30%以下とすることができる。
【実施例】
【0091】
粘着シートの作製に使用した材料を表1に示す。
【0092】
【0093】
白色接着剤の調製
白色顔料1(PG1)、分散剤1(D1)及びメチルエチルケトンを混合して白色顔料分散溶液(プレミックス)を調製した。白色顔料1と分散剤1の質量比は固形分で5:1であった。白色顔料分散溶液の固形分は約66質量%であった。白色顔料分散溶液と粘着性ポリマー1(ADH1)を混合して白色接着剤溶液を調製した。白色接着剤溶液中、粘着性ポリマー1は100質量部、白色顔料1は50質量部、分散剤1は10質量部であった。白色接着剤溶液に架橋剤1(CL1)を100質量部の粘着性ポリマー1に対して0.20質量部の量で添加した。白色接着剤溶液の固形分は約55質量%であった。
【0094】
例1
白色接着剤溶液をポリエステルフィルム1(PET1)上にナイフコーターで塗布した。塗布層を95℃で5分間乾燥して、厚み30μmの白色感圧接着層を形成した。白色感圧接着層を剥離ライナー4(L4)のシリコーン処理面に貼り合わせた。
【0095】
同じ白色接着剤溶液を剥離ライナー1(L1)のシリコーン処理面上にナイフコーターで塗布した。塗布層を95℃で10分間乾燥して、厚み65μmの白色感圧接着層を形成した。得られた白色感圧接着層をポリエステルフィルム1の反対面にラミネートした。白色感圧接着層には剥離ライナー1の凹凸構造(ネガ構造)が転写されて、その表面に深さ約28μm、幅約90μmの連通路が1.25mmのピッチで配設された凹凸構造(ポジ構造)が形成された。グラフィックスを施したスコッチカル(登録商標)PF997(50μm厚アクリルフィルム、スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を、ポリエステルフィルム1上の厚み30μmの白色感圧接着層から38μm厚ポリエステルライナーを除去した後、厚み30μmの白色感圧接着層の上に貼り合わせて例1の粘着シートを作製した。25℃における白色粘着剤の剪断貯蔵弾性率G’は3.6×105Paであった。
【0096】
例2
剥離ライナー1(L1)側の白色感圧接着層の厚みを100μmに変更した以外は例1と同様にして例2の粘着シートを作製した。
【0097】
例3
白色接着剤溶液を剥離ライナー1(L1)のシリコーン処理面上にナイフコーターで塗布した。塗布層を95℃で10分間乾燥して、厚み65μmの白色感圧接着層を形成した。ポリエステルフィルム1(PET1)を白色感圧接着層と貼り合わせて例3の粘着シートを作製した。
【0098】
例4
剥離ライナー1(L1)側の白色感圧接着層の厚みを100μmに変更した以外は例3と同様にして例4の粘着シートを作製した。
【0099】
例5
ポリエステルフィルム1(PET1)をポリエステルフィルム2(PET2)に変更した以外は例2と同様にして例5の粘着シートを作製した。
【0100】
例6
剥離ライナー1(L1)を剥離ライナー2(L2)に変更した以外は例2と同様にして例6の粘着シートを作製した。白色感圧接着層には剥離ライナー2の凹凸構造(ネガ構造)が転写されて、その表面に深さ約11μm、幅約20μmの連通路が0.2mmのピッチで配設された凹凸構造(ポジ構造)が形成された。
【0101】
例7
例1の厚み65μmの白色感圧接着層に代えて、白色接着剤溶液を剥離ライナー1(L1)のシリコーン処理面上に塗布及び乾燥して形成した厚み46μmの白色感圧接着層を両面接着テープKRT-15(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))にラミネートして厚み546μmの感圧接着層を形成した後、ポリエステルフィルム1の厚み30μmの白色感圧接着層とは反対側の面にラミネートした以外は例1と同様にして例7の粘着シートを作製した。
【0102】
例8
両面接着テープKRT-15の代わりにアクリルフォーム両面接着テープVHB 4481MH(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を使用して厚み1046μmの感圧接着層を形成した以外は例7と同様にして例8の粘着シートを作製した。
【0103】
例9
剥離ライナー1(L1)側の白色感圧接着層の厚みを46μmに変更した以外は例1と同様にして例9の粘着シートを作製した。
【0104】
比較例1
剥離ライナー4(L4)、及び白色感圧接着層として両面接着テープKRT-15(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を使用した以外は例1と同様にして比較例1の粘着シートを作製した。
【0105】
比較例2
剥離ライナー4(L4)、及び白色感圧接着層としてアクリルフォーム両面接着テープVHB 4481MH(スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))を使用した以外は例1と同様にして比較例2の粘着シートを作製した。
【0106】
比較例3
ポリエステルフィルム1(PET1)をポリエステルフィルム3(PET3)に変更した以外は例2と同様にして比較例3の粘着シートを作製した。
【0107】
比較例4
ポリエステルフィルム1(PET1)をポリエステルフィルム4(PET4)に変更した以外は例2と同様にして比較例4の粘着シートを作製した。
【0108】
比較例5
剥離ライナー1(L1)側の白色感圧接着層の厚みを30μmに変更した以外は例1と同様にして比較例5の粘着シートを作製した。
【0109】
比較例6
剥離ライナー1(L1)を剥離ライナー3(L3)に変更した以外は例1と同様にして比較例6の粘着シートを作製した。
【0110】
感圧接着層、剛性シート及び粘着シートを以下の手順で試験して評価した。
【0111】
降伏弾性率
ポリエステルフィルムを幅15mm、長さ100mmの長方形に切断して試験片を作製した。JIS K 7127:1999に準拠して試験片の伸び特性を引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて20℃、掴み間隔50mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。降伏点における弾性率を降伏弾性率とした。
【0112】
2%引張強度
樹脂フィルムを幅25mm、長さ100mmの長方形に切断して試験片を作製した。20℃における2%伸びの時点での引張強度を引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて、20℃、掴み間隔50mm、引張速度300mm/分の条件で測定した。
【0113】
外観(平滑性)
粘着シートを約150mm角に切断して試験片を作製した。試験片をスタッコ塗装パネル(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。試験片が貼り付けられたスタッコ塗装パネルを23℃で48時間垂直に保持した。基材上の試験片の表面が目視で平坦である場合に外観を「良好」とした。基材上の試験片の表面が目視で粗面に見える場合に外観を「不良」とした。スタッコ塗装パネル上の試験片の剥がれが目視で確認できた場合に外観を「不可」とした。
【0114】
接着力
試験片を幅25mm、長さ150mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装パネル、モルタルパネル、及びDI-NOC(登録商標)PS959フィルム(マット表面加工、表面粗さ50μm、スリーエムジャパン株式会社(日本国東京都品川区))の上に23℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009に準拠した。試験片を20℃で24時間放置した。引張試験機(テンシロン万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ(日本国東京都豊島区))を用いて20℃、300mm/分の剥離速度で180度剥離を行ったときの接着力を測定した。
【0115】
空気抜け性
粘着シートを約150mm角に切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装パネル(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。基材と試験片の界面に気泡が観察されない場合に空気抜け性を「良好」とした。基材と試験片の界面に気泡が観察された場合に空気抜け性を「不良」とした。
【0116】
DI-NOC(登録商標)フィルムからの除去性
試験片を幅25mm、長さ150mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をDI-NOC(登録商標)PS959フィルムの上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。試験片を23℃で48時間放置した。試験片を除去したときに、感圧接着剤残渣がDI-NOC(登録商標)PS959フィルム上に確認できない場合、除去性を「優良」とし、感圧接着剤残渣がDI-NOC(登録商標)PS959フィルム上に僅かに確認されたがイソプロパノールを用いて容易に清浄することができる場合、除去性を「良好」とし、試験片をDI-NOC(登録商標)PS959フィルムから除去するのが難しい場合、除去性を「不良」とした。「優良」及び「良好」は実用上許容である。DI-NOC(登録商標)PS959フィルムの表面粗さは約50μmであった。
【0117】
モルタルパネルからの除去性
試験片を幅25mm、長さ150mmの長方形に切断して試験片を作製した。試験片をモルタルパネル(株式会社パルテック(日本国神奈川県平塚市))の上に23℃でローラーを用いて貼り付けた。試験片を23℃で48時間放置した。試験片を除去したときに、感圧接着剤残渣がモルタルパネル上に確認できない場合、除去性を「優良」とし、感圧接着剤残渣がモルタルパネル上に僅かに確認されたがイソプロパノールを用いて容易に清浄することができる場合、除去性を「良好」とし、試験片をモルタルパネルから除去するのが難しい場合、除去性を「不良」とした。「優良」及び「良好」は実用上許容である。
【0118】
作製した粘着シートの詳細及び評価結果を表2に示す。表2において評価していない項目はNDと記載されている。
【0119】
【表2】
本発明の実施態様の一部を以下の態様1~22に記載する。
[態様1]
80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、
前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と
を含む粘着シート。
[態様2]
透明樹脂フィルムであって、前記透明樹脂フィルムの表面に印刷されたグラフィック画像を有する透明樹脂フィルムをさらに含む、態様1に記載の粘着シート。
[態様3]
前記第1感圧接着層の25℃における剪断貯蔵弾性率G’が5×10
4
Pa以上1×10
6
Pa以下である、態様1又は2のいずれかに記載の粘着シート。
[態様4]
前記剛性シートが10MPa以上300MPa以下の降伏弾性率を有する、態様1~3のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様5]
前記剛性シートの降伏弾性率と厚みとの積が、0.9×10
4
N/m以上5×10
4
N/m以下である、態様1~4のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様6]
前記剛性シートの2%引張強度が40N/25mm以上である、態様1~5のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様7]
前記剛性シートがポリエステルフィルムである、態様1~6のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様8]
前記第1感圧接着層の微細構造化表面が、凸部と、その凸部の周りを取り囲む凹部とから構成される、態様1~7のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様9]
前記凸部及び前記凹部が幅5μm以上100μm以下の連通路を形成する、態様8に記載の粘着シート。
[態様10]
前記凸部及び前記凹部が深さ10μm以上400μm以下の連通路を形成する、態様8又は9のいずれかに記載の粘着シート。
[態様11]
前記第1感圧接着層の上に配置された、前記第1感圧接着層の前記微細構造化表面と相補的な微細構造化表面を有するライナーをさらに含む、態様1~10のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様12]
前記第1感圧接着層がアクリル系粘着剤を含む、態様1~11のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様13]
前記第1感圧接着層が白色顔料を含む、態様1~12のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様14]
金属層をさらに含む、態様1~13のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様15]
前記金属層が前記剛性シートの他方の面上に配置されている、態様14に記載の粘着シート。
[態様16]
前記金属層がアルミニウムを含む、態様14又は15のいずれかに記載の粘着シート。
[態様17]
前記剛性シートの他方の面に第2感圧接着層を有する、態様2~16のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様18]
前記第2感圧接着層が白色顔料を含む、態様17に記載の粘着シート。
[態様19]
前記透明樹脂フィルムが前記剛性シートである、態様2~18のいずれか一態様に記載の粘着シート。
[態様20]
80μm以上2mm以下の厚みを有する剛性シートと、
前記剛性シートの一方の面上に配置された第1感圧接着層であって、40μm以上1.2mm以下の厚みを有し、凹凸を有する微細構造化表面を有する第1感圧接着層と
を含む粘着シートを提供することと、
前記粘着シートを粗面に適用することと
を含む、粘着シートを粗面に適用する方法であって、
前記粗面に適用された後に前記粘着シートが平滑な外観を呈する、方法。
[態様21]
前記粘着シートが透明樹脂フィルムを含み、前記透明樹脂フィルムが、前記透明樹脂フィルムの表面に印刷されたグラフィック画像を有する、態様20に記載の方法。
[態様22]
前記粗面に適用された前記粘着シートの周縁部及び前記粗面の少なくとも一部を覆うようにシールテープを適用することをさらに含む、態様20又は21のいずれかに記載の方法。
【符号の説明】
【0120】
10 粘着シート
12 剛性シート
14 第1感圧接着層
142 微細構造化表面
16 ライナー
22 透明樹脂フィルム
24 第2感圧接着層
26 グラフィック画像
32 追加の樹脂フィルム層
34 接着層
36 透明接着層
38 レセプター層
42 金属層