(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】整列装置、整列方法
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B65G47/14 102A
(21)【出願番号】P 2019059770
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592245568
【氏名又は名称】東レ・プレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230112276
【氏名又は名称】藤野 睦子
(72)【発明者】
【氏名】植田 征典
(72)【発明者】
【氏名】上原 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】森口 涼介
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105811(JP,A)
【文献】特開平09-221217(JP,A)
【文献】特開2008-254884(JP,A)
【文献】特開平06-329238(JP,A)
【文献】国際公開第2009/150960(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0073439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルと、
前記テーブル上でワークを移動させながら整列させるワーク整列部と、
整列したワークの姿勢が正方向か異方向かを判定する判定装置と、
異方向と判定されたワークの整列方向前後のワークを前記テーブル上に吸着する吸着部と、
異方向と判定されたワークにエアを吹き付けることで列から排除する排除部と、
を備え
、
前記ワーク整列部は、前記テーブルを回転させることでワークを移動させる回転駆動部を備え、
前記テーブルに孔が設けられており、
前記排除部は、前記孔を介して異方向と判定された前記ワークを前記テーブルから吹き上げる吹き上げブロー部、および吹き上げられたワークにテーブルの面方向のエアを吹き付けることで列から排除する横向きブロー部と、を備え、
前記吸着部は、前記吹き上げブロー部の前後で、前記孔を介した吸引により、ワークをテーブルに吸着する整列装置。
【請求項2】
テーブルを回転させることで、テーブル上でワークを移動させながら整列させる工程、
整列したワークの姿勢が正方向か異方向かを判定する工程、
異方向と判定されたワークの整列方向前後のワークを前記テーブルに設けられた孔を介した吸引によりテーブル上に吸着する吸着工程、および
異方向と判定されたワークに前記テーブルに設けられた孔を介してエアを吹き付けることで吹き上げ、吹き上げられたワークにテーブルの面方向のエアを吹き付けることにより列から排除する排除工程
を備える整列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を整列させる装置および整列させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作部品、電子部品等のワークを、個々のワークの向きが同じになるように整列させることで、その後の検査または組立等が効率良く進められる。
【0003】
そのため、これまでにいくつかの整列方法およびそれを実現するための装置が提案されてきた。特許文献1の整列搬送装置は、回転する搬送ドラム上で半導体装置を整列させながら、半導体装置の姿勢が所望の方向と異なるかどうかを判定し、半導体装置が所望の姿勢にない場合、整列をやり直させるために、エア供給孔からエアを吹き出させて、半導体装置を内側、すなわち、搬送ドラムの回転軸に近い方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
時間当たりの処理量を増やすためにワークの間隔を小さくすると、列から排除する標的のワーク以外のワークも排除されてしまい、結果的に処理量が低下することがある。本発明は、排除すべきワークを精度良く選択する方法およびそれを実現するための装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段が挙げられる。
【0007】
(1)テーブルと、
前記テーブル上でワークを移動させながら整列させるワーク整列部と、
整列したワークの姿勢が正方向か異方向かを判定する判定装置と、
異方向と判定されたワークの整列方向前後のワークを前記テーブル上に吸着する吸着部と、
異方向と判定されたワークにエアを吹き付けることで列から排除する排除部と、
を備える整列装置。
【0008】
(2)前記テーブルに孔が設けられており、
前記排除部は、前記孔を介して異方向と判定された前記ワークを前記テーブルから吹き上げる吹き上げブロー部、および吹き上げられたワークにテーブルの面方向のエアを吹き付けることで列から排除する横向きブロー部と、を備える、(1)に記載の整列装置。
【0009】
(3)前記ワーク整列部は、前記テーブルを回転させることでワークを移動させる回転駆動部を備え、
前記テーブルに孔が設けられており、
前記排除部は、前記孔を介して異方向と判定された前記ワークを前記テーブルから吹き上げる吹き上げブロー部、および吹き上げられたワークにテーブルの面方向のエアを吹き付けることで列から排除する横向きブロー部と、を備え、
前記吸着部は、前記吹き上げブロー部の前後で、前記孔を介した吸引により、ワークをテーブルに吸着する、(1)に記載の整列装置。
【0010】
(4)テーブル上でワークを移動させながら整列させる工程、
整列したワークの姿勢が正方向か異方向かを判定する工程、
異方向と判定されたワークの整列方向前後のワークを前記テーブル上に吸着する吸着工程、および
異方向と判定されたワークにエアを吹き付けることで列から排除する排除工程
を備える整列方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、異方向ワークのみを高精度に列から排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ワーク分別に関わる機構を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[整列装置]
図1に整列装置の一例を示す。整列装置1は、回転テーブル(テーブル)11、各種ガイド(G1等)、センサ13、分別部14、リニアフィーダ17等を備える。
【0014】
また、以下では、
図3に示すワークWを搬送する場合を例に挙げる。ワークWは、L1、L2、L3の寸法を持つ直方体であって、L1<L2<L3である。また、整列装置1は、ワークWを搬送しつつ、一列に並べ、かつ、ワークWを、L3の辺がワークWの並ぶ方向に沿い、かつ、L1が鉛直方向を向く状態(以下「正方向」と呼ぶ)に揃える。つまり、L2の辺が整列方向に垂直になる。正方向でない状態を「異方向」と呼ぶ。
【0015】
回転テーブル11は円盤状の平坦な部材であり、ワークWを載せた状態で、図示しない回転駆動部によって
図1における時計回りに回転する。回転の中心と、回転テーブル11の中心は一致する。回転テーブルの外周の近傍には、回転テーブル11との同心円に沿って、複数の孔12が設けられている。図示しないホッパからワークWが供給される回転テーブル11上の位置を、供給位置として、
図1に一点鎖線で示す。
【0016】
以下、特に断らない限り、「回転方向」は回転テーブル11の回転方向であり、「径方向」は回転テーブル11の径方向であり、「内側」は回転テーブル11の中心側、「外側」は回転テーブル11の外周側を意味する。なお、「回転方向」はワーク搬送方向および整列方向に一致する。
【0017】
ガイドとしては、回転方向に沿って、内寄せガイドG1、第1外寄せガイドG2、第2外寄せガイドG3,第3外寄せガイドG4、中央ガイドG5が設けられる。また、高さ規制部15が、内寄せガイドG1と第1外寄せガイドG2との間に設けられる。回転テーブル11を回転させる図示しない回転駆動部、および各種ガイドG1~G5は、ワークWを移動させながら整列させるワーク整列部として機能する。また高さ規制部15をワーク整列部の一部と考えてもよい。
【0018】
内寄せガイドG1は、ワークWの供給位置よりも回転テーブル11の外側に設けられ、ワークWに外側から当接することで、ワークWを内側に寄せる。
【0019】
高さ規制部15は、回転テーブル11の上面から、ワークWの正方向における高さL1よりも大きく、異方向における高さL2およびL3よりも小さい距離をおいて配置される。これによってワークWは、長さL2またはL3の辺が鉛直方向を向いていても、高さ規制部15によって倒され、長さL1の辺が鉛直方向を向くようになる。なお、高さ規制部15の位置はこれに限定されず、ワークWの搬送経路上の他の位置に設けられてもよい。ただし、ワークWが倒れると列からずれるので、少なくとも1つの外寄せガイド(整列させるガイド)の上流にあること、センサ13で異方向か正方向かを判定できるような姿勢にしておきたいので、センサ13の上流にあることが好ましい。
【0020】
第1外寄せガイドG2は、内寄せガイドG1を経たワークWに、内側から当接するように配置される。そのため、回転テーブル11の回転により移動してきたワークWは、内寄せガイドG1を過ぎると、第1外寄せガイドG2によって、回転方向に沿って一列に並べられつつ、回転テーブル11の外側に寄せられる。またこのとき、回転テーブル11の表面とワークWとの間、および第1外寄せガイドG2とワークWとの摩擦によって、多くのワークWの長手方向が回転方向に沿う正方向になる。
【0021】
第2外寄せガイドG3は、第1外寄せガイドG2よりさらに外側に配置される。第1外寄せガイドG2を過ぎたワークWの一部は、回転テーブル11の径方向において重なっていたり、その長手方向が回転方向に沿っていなかったりするが、第2外寄せガイドG3によって、より整列した状態となる。
【0022】
後述する分別部14により、長さL1の辺が回転方向を向いていないワークWは列から排除される。正方向で整列しているワークWは第3外寄せガイドG4によって、リニアフィーダ17に導かれる。
【0023】
中央ガイドG5は、回転テーブル11の中心に設けられ、第3外寄せガイドG4よりも回転方向下流で外側に膨らむ形状を有する。ホッパにより供給されたワークW、および分別部14によって列よりも内側に寄せられたワークWに対して、中央ガイドG5の膨らんだ部分が内側から当接することで、ワークWは内寄せガイドG1へと導かれる。
【0024】
リニアフィーダ17は、一列に並んだワークWをその整列を維持した状態で、回転テーブル11外に導く。
【0025】
図2は整列装置1における分別に関する制御構成を示すブロック図である。分別部14は、吹き上げブロー部141,横向きブロー部142、図示しないエジェクタを備える。また整列装置1はさらに、制御部30を備える。制御部30は、センサ13の検知結果に基づいて、吹き上げブロー部141および横向きブロー部142の動作を制御する。なお、制御部30は、他のセンサおよびユーザの操作信号を受けることで整列装置1の他の部分の動作を制御することもできる。
【0026】
図2,4,5を参照して、異方向ワークWの分別について説明する。
【0027】
本形態では、センサ13は、上方から回転テーブルに向けて光を出射し、その反射から異方向ワークを検知し、検知結果を制御部30に出力する。つまり、センサ13は整列したワークの姿勢が正方向か異方向かを判定する判定装置である。具体的には、本形態において、ワークWは、異方向が検出される位置に至る前に、回転テーブル11の内側から第1および第2外寄せガイド(G2,G3)がワークWに当接している。つまり、回転中心からワークWの内側の縁までの距離は一定に揃えられている。よって、正方向であれば、回転テーブル11の中心からワークWの外端までの距離は、第2外寄せガイドG3の外端までの距離にL2を加えたものである。よって、そのさらに外側の位置(
図5に黒丸で示す)におけるワークWの有無を検知するようにセンサ13を配置すればよい。この位置を以下「姿勢検出位置」と呼ぶ。
【0028】
異方向の検知の手段はこれに限られず、種々の構成が採用され得る。例えば、上述の高さ規制部15を設けない場合は、ワークの高さがL1を超える場合に異方向として検知するような高さセンサをさらに設けてもよい。また、外形では判断できない場合、例えばワーク表面の模様の向きを揃える場合は、ワークを撮影して画像処理から判断してもよい。
【0029】
第2外寄せガイドG3の下流の所定の領域(
図5に細点線で囲む領域)では、回転テーブル11の下方でエジェクタによる常時吸引(減圧)がなされる。
図4の下向き矢印は、エジェクタによる常時吸引を表す。この吸引によって、ワークWは孔12を介して、回転テーブル11に引きつけられる。ワークが吸引される領域を「吸引領域」と呼ぶ。
【0030】
吹き上げブロー部141は、吸引領域内の一部の孔12から、回転テーブル11の下方に設けられたブローノズル141aを介して空気を吹き上げる。これによって、ワークWが持ち上げられる。空気が吹き上げられる孔12の数は、
図4,5では1つである。ただし、1つのワークWのみを吹き上げられるようになっていれば、空気は複数の孔12から吹き上げられるようになっていてもよい。吹き上げブロー部141によりワークWが吹き上げられる位置を「分別位置」と呼ぶ。
【0031】
本形態では、センサ13は分別位置にあるワークWの姿勢を検出するようになっているが、センサ13が搬送方向において分別位置の上流でワークWの姿勢を検出し、制御部30が搬送速度、つまり回転テーブル11の回転速度から異方向ワーク分別位置に達するタイミングを判断して、異方向ワークを吹き上げるように吹き上げブロー部141を制御してもよい。
【0032】
横向きブロー部142は、制御部30の制御により、吹き上げ位置で持ち上げられたワークWにエアを吹き付けることで、ワークの列から異方向ワークを排除する。本形態では、横向きブロー部142は、回転テーブル11の外側から内側に向かってエアを吹き出す。これによって、異方向ワークは回転テーブル11の内側に移動し、列から外れる。その結果、正方向ワークのみを整列させることができる。
【0033】
以上の構成により、ワークWの搬送方向において、分別位置の前後のワークは回転テーブル11に吸引され、異方向ワークのみが吹き上げられる。そのため、ワークW間の距離が小さくても、誤って正方向ワークを排除することなく異方向ワークのみを排除することができる。また、この構成であれば、ワーク間の距離が小さくても、異方向ワークのみを排除することができる。
【0034】
このように、エジェクタは、異方向ワークの前後のワークを回転テーブル上に吸着する吸着部として機能し、吹き上げブロー部141および横向きブロー部142は、異方向ワークにエアを吹き付けることで列から排除する排除部として機能する。
【0035】
回転テーブル11の孔12の寸法および間隔は、異方向ワークのみを列から排除できるように設定される。まず、孔12は、ワークWの取り得る姿勢を考慮して、ワークWが嵌まらないような大きさに設定されていることが望ましい。例えば、回転テーブル11の平面方向における孔12の最大長さを、ワークWの最小長さ(
図3の例ではL1)よりも小さく設定してもよい。また、本形態では高さ規制部15によってL2×L3の面が回転テーブル11に対向するようになっているので、孔12の最大長さをL2よりも小さく設定すればよい。他にも、ワークWの各面の外接円よりも長径の小さい楕円(円も含む)等も採用できる。
【0036】
また、孔12間の距離は、ワークWの取り得る姿勢を考慮して、ワークWが必ずいずれかの孔12に被るように設定される。例えば、孔12間の距離が、ワークWの最小長さ(
図3の例ではL1)より小さく設定してもよい。また、本形態では高さ規制部15によってL2×L3の面が回転テーブル11に対向するようになっているので、孔12間の距離をL2よりも小さく設定すればよい。
【0037】
こうして整列したワークWは、第3外寄せガイドG4が内側から当接することで、さらに外側によりつつ整列する。
【0038】
リニアフィーダ17は、ワークWをその整列を維持したままで回転テーブル11外に導く。
【0039】
排除された異方向ワークは、上述のとおり、内寄せガイドG1に導かれ、再びワークWの列に取り込まれる。
【0040】
[整列方法]
図6に整列装置1による整列方法のフローを示す。以下のフローは制御部30により制御される。
【0041】
図6に示すように、ユーザの操作または他のトリガーによって(”スタート”)、エジェクタによる吸引を開始し(ステップS1)、回転テーブル11を稼動させ(ステップS2)、ホッパによるワークW供給を開始する(ステップS3)。供給されたワークWは、回転テーブル11の回転および各種ガイドにより整列し、姿勢検出位置に運ばれる。
【0042】
センサ13によりワークWの異方向が検知されると(ステップS4でYes)、吹き上げブロー部141および横向きブロー部142により異方向ワークが列から排除される(ステップS5)。このとき、その前後のワークWは、上述のエジェクタによる吸引で回転テーブル11上に吸着されている。
【0043】
異方向が検知されなければ(ステップS4でNo)、ワークWはそのまま搬送される。
【0044】
この動作は、ユーザから停止操作がなされるまでまたは他の停止トリガーがあるまで継続される(ステップS6でNo)。停止操作または他の停止トリガーがあると(ステップS6でYes)、ホッパ、テーブル駆動、エジェクタ等の動作を停止し(ステップS7~S9)、動作が終了する(”エンド”)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、部品等の微細なワークの向きを揃えて整列させることができるので、ワークの検査およびワークを用いた他の作業を効率良く進めることに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
W ワーク
1 整列装置
11 回転テーブル
G1 内寄せガイド
G2 第1外寄せガイド
G3 第2外寄せガイド
G4 第3外寄せガイド
G5 中央ガイドG5
13 センサ
14 分別部
141 吹き上げブロー部
142 横向きブロー部
15 高さ規制部
17 リニアフィーダ
30 制御部