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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】伸縮可撓継手構造と耐震補修弁
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/10 20060101AFI20230808BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
F16L27/10 Z
F16K27/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019090511
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020186755
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000147291
【氏名又は名称】株式会社清水合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】呉竹 賢二
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 由男
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 幸一
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172799(JP,A)
【文献】特表平09-510531(JP,A)
【文献】特開2003-214573(JP,A)
【文献】特表2007-506925(JP,A)
【文献】特開2010-270771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0341344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/00-27/12
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管機材に設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、前記挿し口側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、前記押輪の内周或は前記挿し口の外周に保持されたスペーサと、前記受け口部材の内周面と前記挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、前記押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、この抜け止めリングの内周に保持された前記スペーサが前記挿し口に一体に又は別体に形成された前記係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、前記係止突条部が前記スペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において前記挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の前記係止突条部の前記スペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、前記挿し口側の下方からの水圧により前記配管機材に設けられた前記挿し口が旧位に復帰された直立状態で、前記抜け止めリングに前記係止突条部が下方から係止されることにより前記挿し口が抜け止め可能としたことを特徴とする伸縮可撓継手構造。
【請求項2】
補修弁用ボデーに設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、前記挿し口側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、前記押輪の内周或は前記挿し口の外周に保持されたスペーサと、前記受け口部材の内周面と前記挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、前記押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、この抜け止めリングの内周に保持された前記スペーサが前記挿し口に一体に又は別体に形成された前記係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、前記係止突条部が前記スペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において前記挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の前記係止突条部の前記スペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、前記挿し口側の下方からの水圧により前記ボデーに設けられた前記挿し口が旧位に復帰された直立状態で、前記抜け止めリングに前記係止突条部が下方から係止されることにより前記挿し口が抜け止め可能としたことを特徴とする耐震補修弁。
【請求項3】
配管機材に設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、前記押輪側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、前記押輪の内周或は前記挿し口の外周に保持されたスペーサと、前記受け口部材の内周面と前記挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、前記押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、前記挿し口の外周に保持された前記スペーサが前記抜け止めリングに一体に形成された前記係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、前記係止突条部が前記スペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において前記挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の前記係止突条部の前記スペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、前記挿し口側の下方からの水圧により前記配管機材に設けられた前記挿し口が旧位に復帰された直立状態で、前記抜け止めリングに前記挿し口が下方から係止されることにより、前記挿し口が抜け止め可能としたことを特徴とする伸縮可撓継手構造。
【請求項4】
補修弁用ボデーに設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、前記押輪側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、前記押輪の内周或は前記挿し口の外周に保持されたスペーサと、前記受け口部材の内周面と前記挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、前記押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、前記挿し口の外周に保持された前記スペーサが前記抜け止めリングに一体に形成された前記係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、前記係止突条部が前記スペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において前記挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の前記係止突条部の前記スペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、前記挿し口側の下方からの水圧により前記ボデーに設けられた前記挿し口が旧位に復帰された直立状態で、前記抜け止めリングに前記挿し口が下方から係止されることにより、前記挿し口が抜け止め可能としたことを特徴とする耐震補修弁。
【請求項5】
前記挿し口側が傾倒したときには、この挿し口の傾倒側が反傾倒側よりも下降することによって前記係止突条部が前記スペーサを変形させ、前記係止突条部の前記スペーサへの係止による保持状態が解除されるようにした請求項1乃至4の何れか1項に記載の伸縮可撓継手構造と耐震補修弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震性を備えた伸縮可撓継手構造とこの構造を有する耐震補修弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば補修弁は、地中に埋設された水道管と消火栓や空気弁等との間に設けられ、この補修弁を閉止して水道管側からの通水を遮断することで消火栓や空気弁等の点検修理等が可能になっている。この種の補修弁として、例えば、図6(a)に示した補修弁1が知られている。同図において、地中には水道管2が水平方向に埋設され、この水道管2に到達するように地表から弁室3が設けられる。この弁室3付近には、垂直方向に分岐する分岐部4を備えたT字管5が接続され、その分岐部4の上部に補修弁1が設けられる。補修弁1は、短管6とバルブ部7とを備え、これらがボルト等により一体に接続された状態で、短管6側にT字管5、バルブ部7の上部に消火栓(又は空気弁)8が接続される。補修弁1と弁室3の室壁3aとの間には、初期隙間Gが設けられている。
この場合、地中に配管を敷設する際には耐震性が要求され、上記のように水道管2に消火栓8や空気弁等を分岐して設けるときに、これらの間に補修弁1を設ける場合にもその接合(継手)部分に耐震性が求められる。
【0003】
この種の耐震機能を有する継手構造を有する補修弁として、本出願人は、特許文献1の耐震補修弁を出願している。この耐震補修弁では、図7に示すように、補修弁本体10のボデー11の一次側に設けられた挿し口12、挿し口12の外周側に嵌められた押輪13、押輪13に固着された受け口部材14、抜け止めリング15、ゴム輪16を有する、押輪13には装着溝17が設けられ、この装着溝17に抜け止めリング15が装着され、この抜け止めリング15に設けられた突条部18が、伸縮可撓スペースLを設けた状態で挿し口12の外周面に形成された外周溝19に挿入され、この外周溝19に装着されたスペーサ20に係止している。受け口部材14の内周面と挿し口12の外周面との間にはゴム輪16が装着され、このゴム輪16により水密性を確保しつつ、伸縮可撓性を発揮するようになっている。
【0004】
特許文献1の耐震補修弁が図6(a)の状態に敷設されている場合、地震発生時には、弁室3が設けられている地盤と水道管2とが相対変位し、この相対変位により、図6(b)に示すように、初期の隙間Gが無くなって消火栓(或は空気弁)8が室壁3aに接触(衝突)することがある。このように管路に力が加わった場合、双方の変位が拘束されることになり、その後も地盤と水道管2の相対変位が続いたときには、消火栓8が室壁3aから反力Fを受けて傾倒し、この傾倒に伴う変形が限界変形量を超えた場合、消火栓8、補修弁1のフランジ部やT字管5に過大な力が加わる。
【0005】
この場合、図7の耐震補修弁10では、図8(a)の平常時の直立状態で地震が発生すると、図6の弁室3に接触したときに、図8(b)に示すように伸縮可撓スペースL内で挿し口12が伸縮可撓し、図6における消火栓8や補修弁のフランジ部やT字管5の損傷を防ぐようになっている。その際、抜け止めリング15の内周に形成された突条部18により、挿し口12の外周溝19に装着されたスペーサ20の傾倒側(図における右側)の反対側、すなわち反傾倒側(図における左側)が潰されて変形し、挿し口12の反傾倒側が、傾倒側よりも上昇しながら傾倒する。これにより、伸縮可撓後の耐震補修弁10が、弁壁3aに衝突して接触した状態、或は弁壁3aから離れた状態で傾倒している場合がある。
地震後の復帰作業時には、耐震補修弁10に漏水や破損がみられないときには、弁室3部分のみを交換し、耐震補修弁10はそのまま再利用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-172799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7の耐震補修弁10の場合、図8(b)に示すように、挿し口12の反傾倒側(図における左側)が傾倒側(図における右側)よりも上昇しつつ傾倒するため、可撓後の挿し口12は、その反傾倒側が下降する方向にのみ移動可能な状態になる。このため、水道管2等の管路の復旧後に、ボデー11(挿し口12)の下方側から水圧等の力が加わった場合にも、図8(c)に示すように、挿し口12の反傾倒側の外周溝19の底面が突条部18に当接するまで反傾倒側が上昇するだけであり、挿し口12全体が傾いた状態から旧位の直立状態に復帰することはない。この状態で水圧が加わり続けると、さらに傾いた状態が強固に保持される。
【0008】
この場合、図9に示すように、耐震補修弁10がキャップ式である場合、そのキャップ21も耐震補修弁10の傾きにともなって傾いた状態になるため、開閉操作用の開栓器22で耐震補修弁10を開閉操作する際に、この開栓器が弁室3に干渉して開閉操作が難しくなったり、開閉操作できなくなることもある。また、耐震補修弁10の上部への空気弁の取付けが難しくなったり、仮に空気弁を取り付けた場合であっても、傾きにより空気弁が十分に機能を発揮できずに漏水を生じるおそれがある。
【0009】
仮に、図7の挿し口12の上方から外力を加えて直立状態に戻そうとする場合には、この挿し口12の反傾倒側を下方に移動させるように力を加え、さらにこの直立状態を維持する力を加える必要もある。このため、変形したスペーサ20の代わりとして、挿し口12の反傾倒側の上昇を防ぐための新たな治具が必要になり、しかも、水圧で上昇しようとする挿し口12の反傾倒側を確実に下方に抑え続けるためには、強度を備えた治具が必要になる。
【0010】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、地震発生時には伸縮可撓性を発揮して消火栓や空気弁の損傷を防ぎ、管路の水圧を利用して旧位に復帰することにより、伸縮可撓後にも継続して使用できる伸縮可撓継手構造と耐震補修弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、配管機材に設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、挿し口側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、押輪の内周或は挿し口の外周に保持されたスペーサと、受け口部材の内周面と挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、この抜け止めリングの内周に保持されたスペーサが挿し口に一体に又は別体に形成された係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、係止突条部がスペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口側の下方からの水圧により配管機材に設けられた挿し口が旧位に復帰された直立状態で、抜け止めリングに係止突条部が下方から係止されることにより挿し口が抜け止め可能とした伸縮可撓継手構造である。
【0012】
請求項2に係る発明は、補修弁用ボデーに設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、挿し口側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、押輪の内周或は挿し口の外周に保持されたスペーサと、受け口部材の内周面と挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、この抜け止めリングの内周に保持されたスペーサが前記挿し口に一体に又は別体に形成された係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、係止突条部がスペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口側の下方からの水圧によりボデーに設けられた挿し口が旧位に復帰された直立状態で、抜け止めリングに係止突条部が下方から係止されることにより挿し口が抜け止め可能とした耐震補修弁である。
【0013】
請求項3に係る発明は、配管機材に設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、押輪側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、押輪の内周或は挿し口の外周に保持されたスペーサと、受け口部材の内周面と挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、挿し口の外周に保持されたスペーサが抜け止めリングに一体に形成された係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、係止突条部がスペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口側の下方からの水圧により配管機材に設けられた挿し口が旧位に復帰された直立状態で、抜け止めリングに挿し口が下方から係止されることにより、挿し口が抜け止め可能とした伸縮可撓継手構造である。
【0014】
請求項4に係る発明は、補修弁用ボデーに設けられた挿し口と、この挿し口の外周面に可撓スペースを介して遊嵌状態に嵌められた押輪と、この押輪が固着された受け口部材と、押輪側に一体に又は別体に形成された係止突条部と、押輪の内周或は挿し口の外周に保持されたスペーサと、受け口部材の内周面と挿し口の外周面との間にシール性を保持するためのゴム輪とを備え、押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングが装着され、挿し口の外周に保持されたスペーサが前記抜け止めリングに一体に形成された前記係止突条部を係止状態に保持し、平常時において、係止突条部がスペーサに係止状態で保持され、伸縮可撓時において挿し口側が傾倒した際、この挿し口の傾倒側の係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口側の下方からの水圧によりボデーに設けられた挿し口が旧位に復帰された直立状態で、抜け止めリングに挿し口が下方から係止されることにより、挿し口が抜け止め可能とした耐震補修弁である。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記挿し口側が傾倒したときには、この挿し口の傾倒側が反傾倒側よりも下降することによって係止突条部がスペーサを変形させ、係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されるようにした伸縮可撓継手構造と耐震補修弁である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、例えば、水道管と消火栓や空気弁との間に接続して使用できる。この場合、平常時において、係止突条部がスペーサに係止状態で保持されることにより、挿し口側の傾倒や移動を防いで安定した直立状態を維持する。一方、地震発生時に消火栓や空気弁が弁室の室壁に接触し、挿し口側が傾倒した際、挿し口の傾倒側の係止突条部がスペーサへの係止による保持状態を解除することで挿し口側が伸縮可撓性を発揮する。これにより、挿し口側が塑性変形を伴うことなく傾倒して伸縮可撓し、消火栓や空気弁のフランジ部や一次側に接続される部品の損傷を防ぎつつゴム輪により水密性を保って漏れを防止する。伸縮可撓時において挿し口側が傾倒した際、この挿し口側の傾倒側の係止突条部のスペーサへの係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口側の下方からの水圧により挿し口が旧位に復帰可能としているので、水道管からの水圧を利用して傾倒側を上昇させて挿し口を直立状態に復帰できる。このため、挿し口側や押輪、受け口部材、抜け止めリング、ゴム輪などの部品の交換を伴うことなくこれらを再利用し、伸縮可撓後にも継続して使用できる。水道管と消火栓や空気弁との間以外の各種の配管に接続することもでき、この場合、既存又は新設に限らず配管の一部として簡単に接続でき、上記と同様に伸縮可撓性を発揮して耐震性を向上させることができる。
【0019】
さらに、平常時の挿し口側の直立状態を維持し、挿し口側に強い力が加わったときには、この挿し口の抜けを防ぎつつ伸縮可撓させて破損を防止できる。押輪又は/及び受け口部材で構成される装着溝に抜け止めリングを装着し、この抜け止めリングの内周にスペーサを保持していることで、これらスペーサや抜け止めリングを予め押輪に取付けでき、挿し口を押輪に容易に嵌め込んで組立てできる。
【0020】
この場合、下方からの水圧を利用して抜け止めリングに係止突条部を下方から係止でき、これらの係止によって挿し口を旧位の直立状態に復帰させ、水圧を継続して加えることでこの直立状態を維持することができる。強い水圧が加わった場合にも、これら抜け止めリングと係止突条部とが係止状態を維持することで挿し口側の抜けを確実に防止できる。
【0021】
また、押輪及び/又は受け口部材で構成された装着溝に抜け止めリングを装着し、挿し口の外周に保持されたスペーサが抜け止めリングの係止突条部を係止状態に保持していることで、これらスペーサや抜け止めリングを容易に組付けできる。
【0022】
この場合、下方からの水圧を利用して抜け止めリングに挿し口を下方から係止でき、これらの係止によって挿し口を旧位の直立状態に復帰させ、水圧を継続して加えることでこの直立状態を維持することができる。強い水圧が加わった場合にも、これら抜け止めリングと挿し口とが係止状態を維持することで挿し口側の抜けを確実に防止できる。
【0023】
また、本発明によると、挿し口の傾倒側を反傾倒側よりも下降させることにより保持状態を解除するようにしたことで、伸縮可撓後に挿し口の下方から水圧が加わったときに、反傾倒側の高さを維持した状態で水圧が加わる方向に挿し口の下降した傾倒側を上昇させることができる。このため、外力を加えることなく、管路の水圧を利用して容易に挿し口を直立状態に復帰できる。


【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の伸縮可撓継手構造を有する耐震補修弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大断面図である。(a)は平常時の状態を示す断面図である。(b)は伸縮可撓時の状態を示す断面図である。(c)は直立に戻した状態を示す断面図である。
図3】耐震補修弁の第2実施形態を示す要部断面図である。(a)は平常時の状態を示す断面図である。(b)は伸縮可撓時の状態を示す断面図である。(c)は直立に戻した状態を示す断面図である。
図4】本発明の伸縮可撓継手構造を短管に適用した実施形態を示す縦断面図である。
図5】本発明の伸縮可撓継手構造を短管に適用した他の実施形態を示す縦断面図である。
図6】従来の補修弁の配管状態を示す説明図である。(a)は従来の地下式消火栓の平常時の状態を示す図である。(b)は地下式消火栓が弁室の室壁に衝突する状況を説明する図である。
図7】従来の耐震補修弁を示す縦断面図である。
図8図7の耐震補修弁の要部拡大縦断面図である。(a)は平常時の直立状態を示す要部拡大断面図である。(b)は伸縮可撓時の傾倒状態を示す要部拡大断面図である。(c)は伸縮可撓後に下方側から水圧が加わった状態を示す要部拡大断面図である。
図9】従来のキャップ式耐震補修弁の配管状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における伸縮可撓継手構造を実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明の伸縮可撓継手構造は、種々の配管機材に適用可能であるが、本例では配管機材として耐震補修弁に適用した例を述べる。図1は、耐震補修弁の第1実施形態を示しており、図2は、図1の要部拡大断面図である。
【0026】
図1において、耐震補修弁(以下、弁本体30という)は、T字管31と消火栓(或は空気弁)32との間に設けられる。T字管31は、弁本体30の一次側に配置され、地中に埋設された図示しない水道管から垂直方向に分岐された分岐部34を有している。消火栓32は、弁本体30の二次側に配置され、この消火栓32に図示しない消火用ホースが接続可能に設けられる。弁本体30は、水道管(T字管31)と消火栓32との間の流路を開閉可能に設けられ、この弁本体30を閉止することで水道管側の水圧を遮断可能とし、消火栓32の点検や修理を実施可能になっている。
【0027】
弁本体30は、ボールバルブ40と、押輪41と、受け口部材42とを備え、これらの間には、スペーサ50、ゴム輪51、抜け止めリング52、バックアップリング53が設けられている。
【0028】
ボールバルブ40は、補修弁用ボデー60を有し、このボデー60の一次側に挿し口61、二次側にはフランジ部62が形成され、このフランジ部62を介して弁本体30の二次側に消火栓32が接続される。
【0029】
ボールバルブ40のボデー60内には、ボール63、ステム64、ボールシート65が装着される。ボール63は、ステム64によりボデー60内に回動自在に収納され、このステム64には操作用のハンドル66が固定される。ボール63の一、二次側にはボールシート65がそれぞれ配設され、ボデー60の二次側には弁座受け68が螺合により固着される。ボールバルブ40は、ハンドル66の操作により流路を開閉可能になっている。
【0030】
ボデー60の挿し口61は、このボデー60の一次側に延設されるように形成され、この挿し口61の外周面の所定位置には、鍔状の係止突条部70が一体に形成されている。挿し口61の外周面には、後述の可撓スペースSを介して押輪41が遊嵌状態に嵌められている。
【0031】
押輪41は、金属材料により略環状に形成され、その内周には挿し口61の外周を遊嵌可能な挿通穴71が設けられる。押輪41の上部には、挿し口61よりも大径の段部72が形成され、この段部72と挿し口61との間に上記可撓スペースSが設けられる。ボデー60側に管軸方向と交差する方向の過大な力が加わったときには、可撓スペースSを介してボデー60(挿し口61)が傾倒可能となる。押輪41の外周にはフランジ部73が形成され、このフランジ部73を介して後述の受け口部材42が接続される。押輪41の内周には環状の装着溝74が形成され、この装着溝74には、抜け止めリング52が装着される。
【0032】
抜け止めリング52は、金属材料により形成されていることで高水圧、水撃圧に耐えうる十分な強度を有し、装着溝74に収容可能な分割したリング状に形成されていることで、この分割リングを装着溝74内で組み合わせることで装着される。抜け止めリング52の上部内周には、環状の上部突起部75が形成され、これにより、装着後の抜け止めリング52の内周側に凹状の可撓スペースTが設けられる。上部突起部75の内径は、係止突条部70の外径よりも小径に設けられ、この上部突起部75に係止突条部70が係止される。
【0033】
押輪41の内周には、抜け止めリング52を介してスペーサ50が保持される。スペーサ50は、金属材料或は樹脂材料により環状に形成され、その外径が抜け止めリング52の内周面に保持可能な大きさに設けられる。スペーサ50の内周中央部付近には、係止突条部70の外径よりも内径の小さい鍔部77が環状或は複数の突起状に形成され、この鍔部77に係止突条部70が係止可能になっている。スペーサ50は円環状に形成され、抜け止めリング52の内周面で保持される。
【0034】
受け口部材42は、金属材料により押輪41と略同径の環状に形成され、外周側に形成されたフランジ部78を介して押輪41がボルト79により固着される。受け口部材42の内周面には環状の収容溝80が形成され、この収容溝80に抜け止めリング52の下部側が収容可能に設けられる。収容溝80の下方には、この収容溝80よりも小径の環状溝部81が形成され、この環状溝部81内にゴム輪51が収納される。受け口部材42の環状溝部81よりも下方の底面内周側には、内径方向に突出する小径環状部82が形成される。受け口部材42の一次側にはT字管31の分岐部34が接続され、このとき、小径環状部82によってT字管31との間にガスケットの当たり面が確保される。
【0035】
ゴム輪51は、弾力性に富んだゴム材料によって環状に成形されて、受け口部材42の環状溝部81の内周面と挿し口61の外周面との間に装着され、このゴム輪51によりこれら受け口部材42の内周面と挿し口61の外周面との間のシール性が確保される。ゴム輪51は、十分なつぶし量を確保できる形状に形成され、挿し口61が受け口部材42に対して傾倒し、環状溝部81の容積が変化した場合にもこれらの間に密着シールした状態を維持して漏れを防ぐことが可能になっている。
【0036】
バックアップリング53は、金属材料又は樹脂材料により環状に形成され、抜け止めリング52とゴム輪51との間に介在された状態で装着される。この場合、バックアップリング53は、環状溝部81よりも大径の収容溝80に装着可能な外径に設けられ、その装着時には上方の抜け止めリング52により押圧される。このことから、ゴム輪51の抜け出し方向への変形を防ぎ、その変形部分が抜け止めリング52の分割部分に入ることを防止するようになっている。
【0037】
上記の弁本体30を一体化する場合には、ボデー60(ボールバルブ40)の挿し口61の外周面に押輪41を嵌めた状態にし、ボデー60の係止突条部70にスペーサ50を嵌め、その外側から抜け止めリング52を嵌め、押輪41の装着溝74に装着する。この場合、抜け止めリング52を分割して形成し、スペーサ50は少なくとも1ヶ所カットした円環状に形成しているので、これらを係止突条部70の外側より組み合わせた状態で装着溝74に装着して組み合わせることが可能となる。
【0038】
抜け止めリング52及びスペーサ50の装着後には、係止突条部70の上面が上部突起部75の底面に係止し、この係止突条部70の底面がスペーサ50の鍔部77の上面に係止した状態となる。これにより、抜け止めリング52とスペーサ50との挿し口61側からの抜け止めが図られた状態で、スペーサ50が係止突条部70を係止状態に保持するようになっている。
【0039】
この状態で挿し口61の外周面にバックアップリング53、ゴム輪51をこの順序で嵌め込み、これらを抜け止めリング52の下部に配置した状態とする。
【0040】
続いて、挿し口61の先端側を受け口部材42の内周側に挿入し、これらを受け口部材42に押し込むことで、ゴム輪51を弾性変形させた状態で環状溝部81内に収納し、所定の圧力を加えた状態で押輪41を受け口部材42にボルト79で固着する。これにより、ボールバルブ40(ボデー60)の挿し口61側が可撓スペースSを介して押輪41、受け口部材42側に対して伸縮可撓する弁本体30が構成される。この場合、押輪41の装着溝74と受け口部材42の収容溝80との間に抜け止めリング52が位置決め保持されて、ずれが防がれた状態で装着される。
【0041】
組込み後には、平常時において、スペーサ50が係止突条部70を上部突起部75との間に係止状態で保持することで、押輪41及び受け口部材42に対してボデー60(挿し口61側)の直立状態を維持する。
【0042】
挿し口61の直立状態において、抜け止めリング52の上部突起部75の底面に係止突条部70の上面が下方から係止されることにより、挿し口61が押輪41に対して抜け止めされる。スペーサ50の鍔部77が抜け止めリング52の内周に保持された状態で係止突条部70に係止されていることで、スペーサ50が受け口部材42方向に脱落するおそれがない。また、抜け止めリング52を介して、押輪41でゴム輪51を押圧するようになっているので、漏水するおそれはない。
【0043】
一方、地震等の異常時には、弁本体30の挿し口61側が外部、例えば弁本体30が収納される図6の弁室3の室壁3aなどに衝突(接触)して外力が加わったときには、挿し口61が傾倒する。挿し口61が傾倒した際、この挿し口61の傾倒側の係止突条部70のスペーサ50への係止による保持状態が解除されて傾倒された状態で、挿し口61の下方からの水圧によりボデー60に設けられた挿し口61が旧位に復帰可能となる。
【0044】
この場合、本実施形態では、挿し口61が傾倒するときには、この挿し口61の傾倒側が反傾倒側よりも下降することにより、傾倒側の係止突条部70がスペーサ50をその鍔部77と共に上方から潰して変形させた状態としつつ傾倒し、この状態で係止突条部70のスペーサ50(鍔部77)への係止による保持状態が解除される。このときにも、抜け止めリング52を介して押輪41でゴム輪51を押圧するようになっているので、漏水するおそれはない。
【0045】
伸縮可撓後には、直立状態に戻すようにすれば、伸縮可撓前と同様に、抜け止めリング52の上部突起部75の底面に係止突条部70の上面が下方から係止され、挿し口61が抜け止めされる。
【0046】
また、装着溝74及び収容溝80を押輪41及び受け口部材42の双方の内周に形成しているが、この装着溝或は収容溝を前記の押輪41或は受け口部材42の何れか一方の内周に形成し、この装着溝又は収容溝に抜け止めリング52を装着した構造としてもよい。
【0047】
抜け止めリング52とゴム輪51との間にバックアップリング53を介在しているが、このバックアップリング53を押輪41とゴム輪51との間に介在させた構造としてもよい。
【0048】
挿し口61の外周面に係止突条部70が一体に形成されているが、この係止突条部70は挿し口61と別体に設けられていてもよい。この場合、図1図2の破線に示すように、係止突条部70を断面略L字状で径方向に分割したリング状に形成し、これを挿し口61の外周面に形成した凹状の取付け溝に組み合わせることで取付けできる。
【0049】
前述した抜け止めリング52及び係止突条部70を分割して設ける場合には、これらの分割数を任意に設定できる。
【0050】
図示しないが、ボデー60と押輪41との間には、環状ゴム製カバーを装着するようにしてもよい。この場合、カバーがボデー60の傾倒等の動作に追随して変形することで、ボデー60と押輪61との隙間からの土砂等の浸入を防止できる。
【0051】
次いで、上記実施形態における耐震補修弁の平常時及び伸縮可撓時におけるそれぞれの動作並びに作用を詳しく説明する。
図2(a)において、本発明の伸縮可撓継手構造を用いた弁本体30は、上述したように、挿し口61と、押輪41と、受け口部材42と、係止突条部70と、スペーサ50と、ゴム輪51とを備え、平常時において、挿し口61の係止突条部70の上面が上部突起部75の底面に環状に当接し、係止突条部70の下面がスペーサ50の鍔部77上面に環状に当接した状態で、係止突条部70が抜け止めリング52とスペーサ50との間に係止している。
【0052】
これにより、スペーサ50が係止突条部70を係止状態に保持し、この係止突条部70の上面側、下面側が全周に渡って抜け止めリング52、スペーサ50によって水平状態に保持されることで、挿し口61(ボデー60)が安定した直立状態となる。このとき、押輪41が、抜け止めリング52とバックアップリング53を介してゴム輪51を押圧した状態となり、漏れを確実に防いでいる。
【0053】
消火栓32の保守点検時などにおいて、ボール63を閉止位置に回動して水道管側からこのボール63に水圧が加わった場合にも、環状の係止突条部70が環状の上部突起部75に均圧状態で当接してボデー60の傾倒を防ぎ、これら係止突条部70と上部突起部75との係止状態が保持されて、押輪41からのボデー60の抜け出しも防止される。
【0054】
一方、地震等の発生などにより地盤と水道管に相対変位が発生し、図6(b)に示すような状態で、水道管2が左方向に移動して弁本体30に接続された消火栓32が弁室3の室壁3aに接触した場合、この外力により消火栓32には左側から過大な力が加わり、この力が挿し口61側に加わることとなる。
【0055】
係止突条部70の上面が上部突起部75の底面に当接し、上部突起部75とスペーサ50の鍔部77との間に係止突条部70が係止されていることから、この係止突条部70が上下方向に位置規制されている。
【0056】
そのため、図2(b)に示すように、係止突条部70よりも上方の箇所に左側から力が加わると、反傾倒側の係止突条部70が上部突起部75の底面に押圧される。これにより、これら係止突条部70と上部突起部75との左側(反傾倒側)の当接部位が支点Pとなり、この支点Pが上下方向に変化することなく回転の中心となって、てこの原理により挿し口61に右回転方向の力が働いてこの挿し口61が右側(傾倒側)に倒れようとする。
【0057】
上記のてこの原理により、傾倒側の係止突条部70が傾倒するときには、強い力で鍔部77(スペーサ50)を押圧し、傾倒側の係止突条部70がスペーサ50を上方から押し潰すように伸縮可撓スペースT内を下降する。これによってスペーサ50が変形し、傾倒側の係止突条部70のスペーサ50への係止による保持状態が解除され、その後、右側の係止突条部70がバックアップリング53に当接したときに、挿し口61の移動(回転)が規制されて傾倒を停止する。このとき、挿し口61は、直立方向から4°程度の傾きで可撓可能になっている。このように、可撓スペースTを介して挿し口61が傾倒することで弁本体30が伸縮可撓して耐震性を発揮する。
【0058】
挿し口61の傾倒後にも、反傾倒側では係止突条部70が上部突起部75に当接して抜け止めされる。このことから、挿し口61側が押輪41に干渉することがなく、ボデー60などの部品の破損が防がれる。つぶし量を十分に確保したゴム輪51を環状溝部81に装着しているので、反傾倒側及び傾倒側の何れにおいても、抜け止めリング52とバックアップリング53を介して押輪41でゴム輪51を押圧するようになり、このゴム輪51の弾性変形により挿し口61の外周面と受け口部材42の内周面との間のシール性を維持し、確実に水漏れを防止する。
【0059】
挿し口61は、その傾倒側が反傾倒側よりも下降するように傾倒することにより、その傾倒後には、傾倒側の係止突条部70と上部突起部75との間に空隙Wが生じることとなる。この空隙Wを介して、支点Pを中心として挿し口61が左回転することで、傾倒側の係止突条部70が空隙W内を上昇可能となる。
【0060】
このことから、図2(c)において、挿し口61の傾倒側の係止突条部70のスペーサ50への係止による保持状態が解除されて傾倒した状態で、挿し口61の下方のT字管側から水圧を加えるようにすれば、この水圧が矢印に示すように挿し口61の底面側から上方に向けて作用する。この挿し口61の下方からの水圧により、挿し口61が支点Pを中心に左回転してその傾倒側が上昇し、係止突条部70の上面が上部突起部75の底面に当接するまで傾倒側が上昇することで、ボデー60に設けられた挿し口61が、伸縮可撓前の旧位の直立状態に復帰する。
【0061】
上記により、地震等により地盤と管路とが相対変位して消火栓32や空気弁が弁室に接触し、弁本体30が伸縮可撓して傾倒した場合などには、この弁本体30に漏水や破損がみられないときには弁室部分のみを交換し、弁本体30をそのまま再利用可能になる。その際、治具等を別途必要とすることなく復旧後の水道管の管路の水圧を利用して弁本体30を自動復帰させることができ、この弁本体30の部品を交換することなく引き続き継続して使用できる。また、水圧に加えて外部からボデー60に直立方向の外力を加えることもできる。
【0062】
また、図示しないが、挿し口61(ボデー60)全体に垂直方向の過大な抜け出し力が作用したときには、挿し口61に上昇しようとする力が働き、係止突条部70には抜け出し方向の力が加わることとなる。この場合、係止突条部70の上面が全周に渡って上部突起部75の底面に当接した状態でボデー60の上昇が規制される。このため、ボデー60の抜け止めを確実に阻止して破損等を防止できる。
【0063】
図3(a)~図3(c)においては、本発明の耐震補修弁の第2実施形態を示している。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
【0064】
この実施形態における弁本体100では、押輪41の内周に環状の装着溝74が形成され、この装着溝74には抜け止めリング101が装着されている。抜け止めリング101の内周には、係止突条部102が一体に形成される。
【0065】
一方、ボデー105の挿し口110の外周には外周溝111が形成され、この外周溝111に環状のスペーサ112が直接保持されている。スペーサ112の内径は、このスペーサ112を外周溝111に保持可能な大きさに設けられ、スペーサ112の外周中央部付近には、係止突条部102の内径よりも大きい外径による鍔部113が円周状或は断続的に形成される。スペーサ112は、少なくとも1ヶ所カットした円環状に形成される。
【0066】
この実施形態の弁本体100の構成後には、装着溝74に装着された抜け止めリング101の係止突条部102の上面がスペーサ112の鍔部113の底部側から係止し、係止突条部102の下面が外周溝111の底面側に係止した状態となる。これにより、抜け止めリング101とスペーサ112との挿し口110側からの抜け止めが図られた状態で、スペーサ112が、抜け止めリング101の係止突条部102を係止状態に保持するようになっている。
【0067】
組込み後には、平常時において、図3(a)に示すようにスペーサ112が係止突条部102を外周溝111の底部との間に係止状態で保持することで、押輪41及び受け口部材42に対するボデー105(挿し口110側)の直立状態を維持する。
【0068】
挿し口110の直立状態で、抜け止めリング101に挿し口110が下方から係止されることにより、この挿し口110が抜け止めされる。スペーサ112の鍔部113が係止突条部102に係止していることで、スペーサ112が受け口部材42の方向に脱落するおそれがない。また、抜け止めリング101とバックアップリング53を介して、押輪41でゴム輪51を押圧するようになっているので、漏水するおそれはない。
【0069】
一方、地震等により、弁本体100の挿し口61側が外部に接触したときには、図3(b)において、反傾倒側の抜け止めリング101と挿し口110の外周溝111の外径側との当接部位が支点P1となり、この支点P1が上下方向に変化することなく、てこの原理で傾倒側の方向に右回転する。これによって傾倒側の鍔部113を傾倒側の係止突条部102が下方から押圧し、この力によりスペーサ112が下方から潰されて変形しつつ、挿し口110の傾倒側が伸縮可撓スペースT1内を下降する。このようにして、係止突条部102のスペーサ112への係止状態を解除し、挿し口110の傾倒側が反傾倒側よりも下降しつつ傾倒することで、傾倒後には傾倒側の係止突条部102と外周溝111との間には空隙W1が生じる。
【0070】
そのため、前述した第1実施形態の場合と同様に、支点P1を中心として、傾倒側の外周溝111の底面側が空隙W1内を上昇するようにして、挿し口110が左回転することが可能になる。
図3(c)において、下方側から水圧を加えることにより、この水圧が挿し口110の底面側から矢印の上方向に作用し、この水圧を利用して挿し口110が支点P1を中心に左回転することで挿し口110の傾倒側が上昇する。これにより、係止突条部102の底面が外周溝111の底面側に当接するまで傾倒側が上昇し、挿し口110側が旧位の直立状態に復帰する。
【0071】
図示しないが、弁本体を復旧させる際の水圧が弱い場合などには、傾き矯正用の治具を装着することもできる。傾き矯正用治具は、略円筒形状に設けられ、その上下両端がフランジ部62と押輪41上面との間に挟まれた状態で、弁本体を包囲する大きさに設けられる。弁本体を直立させた状態で、フランジ部62と押輪41との間にこの傾き矯正用治具を取付け、弁本体の直立状態を保持するようにすれば、弁本体の傾倒側への再度の傾倒をより確実に防止できる。この場合、傾き矯正用治具は、水圧による挿し口側の復旧を補助するものであればよいため、強固に設ける必要はなく、簡易的なものであればよい。
【0072】
図4は、本発明の伸縮可撓継手構造の配管例であり、伸縮可撓継手構造を短管130からなる配管機材に適用した形態を示している。
地中には図示しない水道管が水平方向に埋設され、この水道管は、T字管31の分岐部34により垂直方向に分岐されている。分岐部34には短管130が伸縮可撓継手構造を介して接続され、この短管の二次側に消火栓32(又は空気弁)が接続される。
【0073】
短管130には挿し口131が設けられ、この挿し口131の外周には係止突条部132が形成されている。一方、押輪41と受け口部材42とにより装着溝74が構成され、この装着溝74には抜け止めリング52が装着され、この抜け止めリング52の内周にスペーサ50が保持されている。スペーサ50は、その鍔部77を介して係止突条部132を係止状態に保持している。
【0074】
この実施形態においても、前述した図2の耐震補修弁の場合と同様に、平常時には、係止突条部132の上面が抜け止めリング52の上部突起部75の底面に環状に当接し、係止突条部132の下面がスペーサ50の鍔部77上面に環状に当接した状態で、係止突条部132が抜け止めリング52とスペーサ50との間に係止している。
これにより、係止突条部132の上面側、下面側が全周に渡って抜け止めリング52、スペーサ50によって水平状態に保持されることで、挿し口131が安定した直立状態となる。
【0075】
一方、伸縮可撓時において挿し口131側が傾倒した際には、この挿し口131の傾倒側の係止突条部132がスペーサ50をその鍔部77とともに上方から潰し、傾倒側の係止突条部132のスペーサ50への係止による保持状態が解除されて、可撓スペースSを介して挿し口131側が傾倒した状態となる(図示せず)。
挿し口131の傾倒後においては、この傾倒状態で、挿し口131側の下方から水圧を加えることで、この水圧により短管130の挿し口131が旧位に復帰可能となる。
【0076】
図5は、図4とは異なる伸縮可撓継手構造の配管例を示しており、伸縮可撓継手構造を短管140による配管機材に適用した形態を示している。
短管140には挿し口141が設けられ、この挿し口141外周に形成された外周溝142にはスペーサ112が保持されている。一方、押輪41と受け口部材42とによる装着溝74には抜け止めリング101が装着され、この抜け止めリング101内周には係止突条部102が一体に形成されている。
前記スペーサ112は、その鍔部113を介して係止突条部102を係止状態に保持している。
【0077】
この場合にも、図4と同様に、平常時には係止突条部102がスペーサ112に係止状態で保持されることで、挿し口141(短管140)が安定した直立状態に維持される。
一方、伸縮可撓時には、挿し口141の傾倒側のスペーサ112の鍔部113が係止突条部102によって下方から潰され、傾倒側の係止突条部102のスペーサ112への係止による保持状態が解除されて、挿し口141が傾倒した状態となる。
挿し口141の傾倒後においては、この挿し口141側の下方から水圧を加えることで、この水圧により短管140の挿し口141が旧位に復帰可能となる。
【0078】
さらに、本発明の伸縮可撓継手構造は、図4図5とは異なる形状や長さの短管や、短管以外の管材など、各種態様の配管機材に適用可能であり、何れの場合であっても上述した実施形態と同様に伸縮可撓性を発揮させることが可能である。しかも、縦向きの配管に加えて、横向きの配管にも適用することができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0080】
30、100 弁本体(配管機材)
40 ボールバルブ
41 押輪
42 受け口部材
50、112 スペーサ
51 ゴム輪
52、101 抜け止めリング
60、105 ボデー
61、110 挿し口
70、102 係止突条部
74 装着溝
130、140 短管(配管機材)
S、T、T1 伸縮可撓スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9