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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20230808BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20230808BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L31/10 D
H01L31/02 D
G01J1/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019122832
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021009916
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 崇博
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 弘治
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-253630(JP,A)
【文献】特開平04-280685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0154906(US,A1)
【文献】特開2007-335596(JP,A)
【文献】特開2011-109034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光強度に応じたレベルの電流を出力する光センサであって、
半導体基板と、
開口部が形成されており、前記半導体基板に照射される光を部分的に遮光するように構成された遮光部材とを備え、
前記半導体基板は、
第1P型層と、
前記第1P型層上に形成され、第1N型層を含む受光部とを含み、
前記第1P型層および前記第1N型層により第1フォトダイオードが形成され、
前記光センサを平面視した場合に、
前記受光部は前記開口部の内側になるように形成されており
前記開口部の面積は前記受光部の面積の2倍以上であり、かつ、
前記開口部の内側における前記受光部以外の領域には、他の素子は形成されていない、光センサ。
【請求項2】
前記受光部は、
前記第1N型層上に形成された第2P型層と、
前記第2P型層上に形成された第2N型層とをさらに含み、
前記第1N型層および前記第2P型層により第2フォトダイオードが形成され、
前記第2P型層および前記第2N型層により第3フォトダイオードが形成される、請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記第1フォトダイオードは赤外線の検出に用いられ、
前記第2フォトダイオードおよび前記第3フォトダイオードは、可視光の検出に用いられる、請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記受光部と離隔して前記受光部の周囲を囲うように形成された第3N型層をさらに含み、
前記第3N型層は、接地電位に接続されており、かつ、前記光センサを平面視した場合に前記遮光部材と重なるが前記開口部とは重ならないように形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項5】
光強度に応じたレベルの電流を出力する光センサであって、
半導体基板と、
開口部が形成されており、前記半導体基板に照射される光を部分的に遮光するように構成された遮光部材とを備え、
前記半導体基板は、
第1P型層と、
前記第1P型層上に形成され、第1N型層を含む受光部と、
前記受光部と離隔して前記受光部の周囲を囲うように形成された第3N型層と、
前記第3N型層と前記受光部との間に、前記受光部の周囲を囲うように形成された第4N型層とを含み、
前記第1P型層および前記第1N型層により第1フォトダイオードが形成され、
前記光センサを平面視した場合に、前記受光部は前記開口部の内側になるように形成されており、かつ、前記開口部の面積は前記受光部の面積の2倍以上であり、
前記第3N型層は、接地電位に接続されており、かつ、前記光センサを平面視した場合に前記遮光部材と重なるように形成されており、
前記第4N型層は、前記受光部の厚みよりも薄く、かつ、前記接地電位に接続されている、光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光センサに関し、より特定的には、光センサのS/N比を向上させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光を電流に変換する光センサが知られている。このような光センサから出力される電流を積分することによって、光センサに入射される光の強度に比例した電圧を得ることができる。当該電圧を用いることで、入射光の照度の算出あるいは光源の種類を判別することができる。
【0003】
特開2015-65357号公報(特許文献1)には、複数種類の受光素子(フォトダイオード)を同一の縦構造に集積化した受光部について、各受光素子を時分割で切換えることによって、光学指向性を改善する光センサ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-65357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光センサ装置においては、光の検出感度を向上させることが求められる。検出感度を上げるためには、一般的には、受光部であるフォトダイオードの面積を大きくすることが有効である。しかしながら、一方で、フォトダイオードの面積を大きくすると、フォトダイオードの寄生容量が増加してしまう。その結果、フォトダイオードにおける信号の検出レベルは上昇するものの、それとともにノイズレベルも高くなってしまい、期待通りのS/N比の改善が実現できない場合がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、光センサにおいて、ノイズレベルの増加を抑制しつつ光センサの感度を向上させて、光センサのS/N比を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光センサは、半導体基板と遮光部材とを備え、光強度に応じたレベルの電流を出力する。遮光部材には開口部が形成されており、半導体基板に照射される光を部分的に遮光するように構成される。半導体基板は、第1P型層と、第1P型層上に形成され第1N型層を含む受光部とを含む。第1P型層および第1N型層により第1フォトダイオードが形成される。光センサを平面視した場合に、受光部は開口部の内側になるように形成されており、かつ、開口部の面積は受光部の面積の2倍以上である。
【0008】
好ましくは、受光部は、第1N型層上に形成された第2P型層と、第2P型層上に形成された第2N型層とをさらに含む。第1N型層および第2P型層により第2フォトダイオードが形成される。第2P型層および第2N型層により第3フォトダイオードが形成される。
【0009】
好ましくは、第1フォトダイオードは赤外線の検出に用いられる。第2フォトダイオードおよび第3フォトダイオードは可視光の検出に用いられる。
【0010】
好ましくは、半導体基板は、受光部と離隔して受光部の周囲を囲うように形成された第3N型層をさらに含む。第3N型層は、接地電位に接続されており、かつ、光センサを平面視した場合に遮光部材と重なるように形成されている。
【0011】
好ましくは、半導体基板は、第3N型層と受光部との間に、受光部の周囲を囲うように形成された第4N型層をさらに含む。第4N型層は、受光部の厚みよりも薄く、かつ、接地電位に接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光センサによれば、開口部によって半導体基板へ光が入射される面積が、受光部(フォトダイオード)の面積の2倍以上とされる。これにより、半導体基板において、フォトダイオードが形成される領域の周辺にも光が入射されるため、当該周辺領域で発生した電子および正孔がフォトダイオードに収集されやすくなる。すなわち、開口部の面積が狭い場合に比べて、フォトダイオードの面積が同じであっても、電子および正孔の収集効率を上げることができる。これにより、フォトダイオードの寄生容量を変化させずに感度を上げることができるので、S/N比を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に従う光センサが適用される光センサ装置のブロック図である。
図2図1の光センサ装置の動作を説明するための図である。
図3】フォトダイオードの面積とS/N比との関係を説明するための図である。
図4】実施の形態1に従う光センサの構造を説明するための図である。
図5】比較例の光センサの構造を説明するための図である。
図6】変形例に従う光センサの構造を説明するための図である。
図7図1の光センサの受光部を説明するための図である。
図8図7の受光部における光の波長と感度との関係を説明するための図である。
図9】実施の形態2に従う光センサの受光部を説明するための図である。
図10図9の受光部における光の波長と感度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従う光センサ100が適用される光センサ装置10のブロック図である。図1を参照して、光センサ装置10は、光センサ100に加えて、オペアンプOPと、スイッチSWA,SWBと、キャパシタC1とを備える。光センサ100は、フォトダイオードPDを含んでいる。フォトダイオードPDは、当該フォトダイオードPDに光が入射されると、光の強度に応じたレベルの電流(以下、「光電流」とも称する。)が流れる特性を有している。
【0016】
オペアンプOPの非反転入力端子には、所定のバイアス電圧が接続される。オペアンプOPの反転入力端子と出力端子との間には、スイッチSWAとキャパシタC1が並列に接続される。すなわち、オペアンプOPは、スイッチSWAが非導通状態にされることによって、全帰還型の積分アンプとして機能し、電流-電圧変換を実行する。
【0017】
スイッチSWBは、互いに相補的に動作するスイッチSWB1およびスイッチSWB2とを含んで構成される。すなわち、スイッチSWB1が導通状態の場合にスイッチSWB2が非導通状態となり、スイッチSWB1が非導通状態の場合にSWB2が導通状態となる。なお、以下においては、スイッチSWB1の動作状態をスイッチSWBの動作状態として表現する。
【0018】
スイッチSWB1の一方端は、オペアンプOPの反転入力端子に接続される。スイッチSWB1の他方端はフォトダイオードPDのカソードに接続され、フォトダイオードPDのアノードは接地電位に接続される。スイッチSWB2は、フォトダイオードPDのカソードと接地電位との間に接続される。
【0019】
スイッチSWAおよびスイッチSWBは、図示されていない制御装置からの制御信号によって動作状態が切換えられる。オペアンプOPは、スイッチSWAが非導通状態にされている期間中、反転入力端子に入力される光電流を積分して、光センサ100に照射された光の強度に比例した電圧をAoutとして出力する。なお、図2には示されていないが、オペアンプOPの出力端子はA/D変換器を介して制御装置に接続されている。
【0020】
図2は、図1の光センサ装置10の動作を説明するための図である。図2の横軸には、時間が示されており、縦軸にはスイッチSWA,SWBの状態、およびオペアンプOPの出力Aoutが示されている。
【0021】
図2を参照して、時刻t0より前においては、スイッチSWAおよびスイッチSWBのいずれも導通状態である。この状態では、オペアンプOPの反転入力端子には、光センサ100からの光電流が入力されるが、スイッチSWAが導通状態であるため、オペアンプOPの出力Aoutは基準電圧(バイアス電圧)のままである(待機状態)。
【0022】
時刻t0においてスイッチSWAが非導通状態とされると、オペアンプOPは、光センサ100からの光電流を時間積分した電圧を出力Aoutに出力する。そして、所定期間が経過した時刻t1においてスイッチSWBが非導通状態にされると、当該所定期間に積分された電圧が出力される。光センサ100から出力される光電流は、光センサ100に照射される光の強度に応じた大きさとなるため、予め定められた期間においてオペアンプOPで積分された出力電圧Aoutによって、光の強度を検出することができる。
【0023】
なお、図2には記載されていないが、時刻t1以降において、スイッチSWA,SWBを導通状態とすることで、キャパシタC1に蓄えられている電荷が放電され、時刻t0以前のような待機状態に戻される。
【0024】
このような構成の光センサ装置において、検出感度を上げるためには、光センサ100における出力電流を増加させること、および/または、キャパシタC1を小さくすることが必要となる。
【0025】
ここで、光センサ100における出力電流を増加させる手法としては、光センサ100に形成されるフォトダイオードPDの面積(受光面積)を大きくすることが考えられる。しかしながら、図1に破線で示されるように、光センサ100においては、接地電位との間に寄生容量C2が生じ、フォトダイオードPDの面積を大きくすると、それに伴って寄生容量C2も大きくなる。
【0026】
ここで、キャパシタC1の容量を一定と仮定した場合、フォトダイオードPDの寄生容量C2が大きくなると、C1/C2で表わされる帰還率が低下することになる。積分アンプのクローズドループゲインは帰還率にほぼ反比例するため、帰還率が低下すると積分アンプのクローズドループゲインが大きくなる。その結果、オペアンプOPの感度は増加するものの、オペアンプOPの出力電圧のノイズ成分も大きくなってしまうので、フォトダイオードPDのS/N比を思うように改善できない可能性がある。
【0027】
図3は、フォトダイオードPDの面積とS/N比との関係を概念的に説明するための図である。図3においては、横軸にフォトダイオードPDの面積示され、縦軸にはS/N比が示される。なお、図3において、破線LN10は理想的な場合のフォトダイオードPDの面積とS/N比との関係を示しており、実線LN11は実際のフォトダイオードPDの面積とS/N比との関係を示している。
【0028】
図3を参照して、フォトダイオードPDの面積が大きくなると、それに伴って、光強度に対する光センサ100の出力電流が増加するため、光センサ100の検出感度が増加する。フォトダイオードPDの寄生容量C2が変化しない理想の場合(破線LN10)には、フォトダイオードPDの面積の拡大とともにS/N比も大きく向上する。
【0029】
しかしながら、上記のように、実際には、フォトダイオードPDの面積の拡大に伴ってフォトダイオードPDの寄生容量C2も大きくなってしまうため、オペアンプOPの出力Aoutにおけるノイズレベルも高くなってしまう。これにより、実際のS/N比の改善量(実線LN11)は理想の場合(破線LN10)よりも小さくなってしまう。
【0030】
すなわち、S/N比の改善量を理想の状態に近づけるためには、フォトダイオードPDの寄生容量C2を増加させずに、フォトダイオードPDの出力電流を増加させることが必要となる。
【0031】
そこで、本実施の形態1においては、光センサにおいて、フォトダイオード(受光部)が形成される半導体基板上において、フォトダイオードの周囲の光が照射される領域を拡大する構成を採用する。これによって、フォトダイオードの面積が同じ場合であっても、その周囲の半導体基板の領域において、照射される光によって発生する電子および正孔が増加し、フォトダイオードに取り込まれる確率が高くなる。その結果、フォトダイオードの面積を拡大することなく(すなわち、フォトダイオードの寄生容量を増加させることなく)、同じ光強度におけるフォトダイオードの出力電流が増加することになる。したがって、光センサ装置のS/N比を改善することが可能となる。
【0032】
図4は、実施の形態1に従う光センサ100の構造を説明するための図である。図4においては、上段の図4(a)に光センサ100の平面図が示されており、下段の図4(b)に図4(a)の線IV-IVにおける断面図が示されている。
【0033】
図4を参照して、光センサ100は、半導体基板105と、半導体基板105の主面を覆うように配置された遮光部材150とを備える。
【0034】
半導体基板105は、たとえばシリコンで形成されており、P型層110の基板の表面にN型層120が形成されている。N型層120は、光センサ100を平面視した場合に略正方形の形状を有している。P型層110とN型層120との間のPN接合面によってフォトダイオードPDが形成される。すなわち、実施の形態1においては、N型層120の部分が受光部115に対応する。
【0035】
P型層110の基板の表面において、N型層120と離隔して受光部115(N型層120)の周囲を囲うようにN型層130が形成されている。図示されていないが、N型層130は接地電極に接続されている。さらに、N型層130を取り囲むように、回路層140が形成されている。回路層140は必須の構成ではないが、たとえば図1に示したスイッチSWA,SWBあるいはオペアンプOPなどが形成されてもよい。N型層130の厚みは、N型層120と同等の厚みとされる。N型層130は、受光部115と回路層140とを絶縁するための遮蔽壁としても機能を有する。
【0036】
遮光部材150は、たとえばアルミニウムなどの材料を用いて形成される。遮光部材150には、略正方形の形状を有する開口部170が形成されている。開口部170は、光センサ100を平面視した場合に、受光部115が開口部170の内部の領域となるように、かつ、N型層130および回路層140が遮光部材150に覆われるように配置される。
【0037】
図4に示されるように、半導体基板105の表面において、受光部115と遮光部材150との間には、半導体基板105のP型層110が露出した部分が存在する。ここで、光センサ100を平面視した場合において、開口部170の面積は受光部115の面積の2倍以上となっている。
【0038】
このような光センサ100に光が照射されると、遮光部材150によって、開口部170の内側の半導体基板105の領域のみに光が入射する。このとき、P型層110の表面から所定の深さの範囲で、入射光によって電子160および/または正孔165が発生する。発生した電子160および/または正孔165は、N型層120あるいはN型層130に収集され、それによってP型層110から各N型層へ電流が流れる。
【0039】
ここで、P型層110において、開口部170の下部の領域AR1で発生した電子160および/または正孔165は、主にフォトダイオードPDを形成するN型層120によって収集される。また、遮光部材150の下部の領域AR2で発生した電子160および/または正孔165は、主に接地電位に接続されるN型層130によって収集される。
【0040】
図5は比較例に従う光センサ100#の構造を説明するための図である。図5において、上段の図5(a)に光センサ100#の平面図が示されており、下段の図5(b)に図5(a)の線V-Vにおける断面図が示されている。
【0041】
図5を参照して、比較例の光センサ100#に形成される受光部115の面積は、実施の形態1の場合と同じである。光センサ100#においては、受光部115と受光部115の周囲に形成されるN型層130#との間の離隔距離は、図4の実施の形態1よりも短く、それに伴って遮光部材150の開口部170の開口幅RCV2も、実施の形態1における開口幅RCV1よりも狭くなっている。そのため、比較例と実施の形態1とを比較すると、主にフォトダイオードPDを形成するN型層120によって収集される電子160および/または正孔165を発生させる領域AR1の体積は、比較例よりも実施の形態1のほうが大きい。すなわち、領域AR1において発生する電子160および/または正孔165の量は、比較例に比べて実施の形態1の方が多くなる。したがって、同じ強度の光が光センサ100に照射された場合に、実施の形態1の方が比較例に比べて発生する電流が多くなるので、光センサ100の感度が向上する。
【0042】
一方で、上述のように受光部115であるフォトダイオードPDの面積については、実施の形態1の場合も比較例の場合も同じであるため、フォトダイオードPDの寄生容量C2は実質的に同じである。このように、実施の形態1の光センサ100においては、比較例と比べると、フォトダイオードPDの寄生容量C2を変化させずに、フォトダイオードPDの感度を上げることができるので、S/N比を効果的に向上させることができる。
【0043】
(変形例)
図6は、変形例に従う光センサ100Aの構造を説明するための図である。図6において、上段の図6(a)に光センサ100Aの平面図が示されており、下段の図6(b)に図6(a)の線VI-VIにおける断面図が示されている。
【0044】
変形例においては、実施の形態1の光センサ100と同様に、遮光部材150の開口部170の面積が受光部115の面積の2倍以上とされている。しかしながら、変形例においては、光センサ100Aを平面視した場合に、開口部170の内部の受光部115以外の領域に、N型層130Aが配置された構成となっている。N型層130Aは遮光部材150の下部に位置するN型層130と接続されており、N型層130Aの厚みはN型層130よりも薄くされている。
【0045】
変形例の光センサ100Aにおいては、開口部170の下部のP型層110の表層部分で発生した電子160および/または正孔165は、フォトダイオードPDを形成するN型層120よりもN型層130Aにより収集されやすくなる。そのため、N型層120においては、半導体基板105Aの表面よりもやや内部の領域AR1Aで発生した電子160および/または正孔165が収集されることになる。
【0046】
ここで、P型層110内において電子160および/または正孔165が発生する基板表面からの位置(深さ)は、照射される光の波長によって異なることが知られている。具体的には、照射される光の波長が短いほどP型層110の浅い位置で電子の励起が生じ、光の波長が長くなるとより深い位置で電子の励起が生じる。そのため、変形例のように、光の照射領域(開口部170の内部)の受光部115以外の部分に、接地電位に接続されたN型層130Aを形成することによって、赤外線のような比較的波長の長い光の感度を上げつつ、可視光のような比較的波長の短い光の感度を抑えることができる。なお、感度を下げたい光の波長に応じて、N型層130Aの厚みを適宜調整することができる。
【0047】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、受光部に形成されるフォトダイオードが1つである例について説明した。実施の形態2においては、受光部に複数のフォトダイオードを形成し、入射光に含まれる複数の波長の光の感度を検出する例について説明する。
【0048】
図7は、実施の形態1における光センサ100の受光部115を説明するための図である。上述のように、光センサ100においては、P型層110上に1つのN型層120が形成された構成となっており、当該N型層130が受光部115に対応している。この場合には、P型層110とN型層130との接合面において、フォトダイオードPDが形成される。
【0049】
図8は、図7の受光部115における光の波長と感度との関係を説明するための図である。上述のように光の波長によって、P型層110内で電子が励起される位置(深さ)が異なる。図7の受光部115においては、形成されるフォトダイオードが1つであり、P型層110の浅い位置で発生した電子および/または正孔、およびP型層110の深い位置で発生した電子および/または正孔が収集される。そのため、図8の実線L20に示されるように、可視光領域の波長の光も、赤外線領域の波長の光も検出されてしまう。このような光センサでは、入射光に含まれる複数の光の強度を検出することはできない。
【0050】
図9は、実施の形態2に従う光センサ100Bの受光部115Bを説明するための図である。光センサ100Bの半導体基板105Bにおいては、P型層110上にN型層121が形成され、当該N型層121上にP型層122が形成され、さらにP型層122上にN型層123が形成されている。なお、図9に示された部分以外の構成は、実施の形態1の図4と同様であり、重複する要素の説明は繰り返さない。
【0051】
このような構成により、P型層110とN型層121との接合面においてフォトダイオードPDAが形成され、N型層121とP型層122との接合面においてフォトダイオードPDBが形成され、P型層122とN型層123との接合面においてフォトダイオードPDCが形成される。なお、実施の形態2においては、N型層121、P型層122およびN型層123の部分が受光部115Bに対応する。
【0052】
実施の形態2の受光部115Bにおいては、P型層およびN型層が半導体基板105Bの異なる深さに形成されている。このため、各フォトダイオードで収集される電子および/または正孔は、対応する深さの電子を励起する光の強度に対応することになる。
【0053】
図10は、図9の受光部115Bで検出される光の波長と感度との関係を説明するための図である。図10を参照して、P型層110およびN型層121で形成されるフォトダイオードPDAは最も深い位置に形成されているため、比較的波長の長い赤外線領域の光に対する感度が高くなる(実線L30)。
【0054】
一方で、N型層121およびP型層122で形成されるフォトダイオードPDB、ならびに、P型層122およびN型層123で形成されるフォトダイオードPDCは、いずれも相対的に波長の短い可視光領域の光に対する感度が高くなる(一点鎖線L31,破線L32)。その中でも、フォトダイオードPDCの感度はより短波長側の光に対する感度が高くなる(破線L32)。
【0055】
実施の形態2の光センサ装置においては、各フォトダイオードに対して図1で示したような積分回路が形成され、各フォトダイオードで検出された光の強度が個別に検出される。
【0056】
このように、実施の形態2の光センサにおいては、受光部に複数のP型層およびN型層を形成することにより複数のフォトダイオードが形成され、各フォトダイオードの出力を個別に検出することによって、異なる波長の光の強度を検出することが可能となる。そして、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、遮光部材の開口部の面積を受光部の面積の2倍以上にすることによって、S/N比を向上させることができる。
【0057】
なお、上記の実施の形態における「P型層110」および「P型層122」は、本発明における「第1P型層」および「第2P型層」にそれぞれ対応する。また、実施の形態における「N型層120」および「N型層121」は、いずれも本発明における「第1N型層」に対応する。また、実施の形態における「N型層123」,「N型層130」,「N型層130A」は、本発明における「第2N型層」,「第3N型層」,「第4N型層」にそれぞれ対応する。また、実施の形態における「フォトダイオードPD」および「フォトダイオードPDA」は、いずれも本発明の「第1フォトダイオード」に対応する。さらに、実施の形態における「フォトダイオードPDB」および「フォトダイオードPDC」は、本発明における「第2フォトダイオード」および「第3フォトダイオード」にそれぞれ対応する。
【0058】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10 光センサ装置、100,100A,100B 光センサ、105,105A,105B,105# 半導体基板、110,122 P型層、115,115B 受光部、120,121,123,130,130A,130# N型層、140 回路層、150 遮光部材、160 電子、165 正孔、170 開口部、AR1,AR1A,AR2,AR2A 領域、C1 キャパシタ、C2 寄生容量、OP オペアンプ、PD,PDA~PDC フォトダイオード、SWA,SWB,SWB1,SWB2 スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10