(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】係合部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20230808BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B19/00 Q
(21)【出願番号】P 2019139735
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晴久
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
(72)【発明者】
【氏名】大下 慎史
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-262139(JP,A)
【文献】特開平10-336844(JP,A)
【文献】特開2017-135813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に組み付けるための係合部と、結束部材によって長手状の配策材と共に結束される被結束部と、を一体に備え、
前記被結束部は、
前記係合部を挟んで前記配策材の長手方向
両側に
連続して板状に延び出しており、
前記係合部の車体側への挿入方向から見たとき長手方向に直交する方向
である横幅方向の横幅が一定となる定幅区間が、
長手方向両側においてそれぞれの横幅を異にする形で複数
対称的に形成され
るとともに、
前記被結束部は、各々の前記定幅区間の境界位置において前記結束部材の長手方向へのずれを防ぐずれ防止部となるように長手方向と直交する方向に突出する突出部を有することを特徴とする係合部材。
【請求項2】
前記被結束部は、各前記定幅区間が横幅方向の両端側に段差を形成する形で形成されている請求項1に記載の係合部材。
【請求項3】
前記被結束部は、前記長手方向の外側ほど横幅が狭くなるよう形成されている請求項1又は請求項2に記載の係合部材。
【請求項4】
前記被結束部は、全ての前記定幅区間において前記配策材が配置される側の面が面一となっている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の係合部材。
【請求項5】
前記被結束部は、全ての前記定幅区間において横幅方向の中心位置が前記長手方向に延びる同一の直線上に重なる請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の係合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は係合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、信号線や電源線を有した配線群からなるワイヤーハーネスを結束状態で車体に保持するために、特許文献1のクランプ等のような係合部材が使用されている。
【0003】
こうした係合部材には、ベルトやテープ等の結束部材によって、ワイヤーハーネスのような可撓性配策材や、電源線をなす平板状の平型配策材等の配策材を結束するものがある。この場合、係合部材は、結束部材によって配策材と共に結束される被結束部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、被結束部を有した係合部材では、配策材の横幅が広い場合、被結束部の横幅も広くなければ、配策材を安定して結束保持することが難しい。逆に配策材の横幅が狭い場合には、被結束部の横幅も狭くなければ配策材は安定しない。配策材の横幅と被結束部の横幅との間で差が大きくなると、それらを結束部材で取り囲んだときに、結束部材と配策材との間により大きな空隙が形成され、その空隙が配策材と被結束部との相対移動を許容する要因になる。このため、係合部材は、配策材の横幅のバリエーションの数だけ、異なる横幅のものを用意しておく必要があった。
【0006】
本発明の課題は、様々な横幅の配策材に対しより安定して結束保持できる係合部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するための係合部材は、
車体側に組み付けるための係合部と、結束部材によって長手状の配策材と共に結束される被結束部と、を一体に備え、
前記被結束部は、前記係合部を挟んで前記配策材の長手方向両側に連続して板状に延び出しており、前記係合部の車体側への挿入方向から見たとき長手方向に直交する方向である横幅方向の横幅が一定となる定幅区間が、長手方向両側においてそれぞれの横幅を異にする形で複数対称的に形成されるとともに、
前記被結束部は、各々の前記定幅区間の境界位置において前記結束部材の長手方向へのずれを防ぐずれ防止部となるように長手方向と直交する方向に突出する突出部を有することを特徴とする。
【0008】
上記本発明の構成によれば、被結束部を配策材と共に結束する際に、テープやベルトのような結束部材で結束する位置を、長手方向の両側で配策材の横幅に合う被結束部の定幅区間に対称に設定することで、配策材を安定して結束保持することができる。
【0009】
上記本発明における前記被結束部は、各前記定幅区間が横幅方向の両端側に段差を形成する形で形成できる。この構成によれば、配策材の長手方向における結束部材のずれを、段差によってストップすることができるため、配策材を安定して結束保持することができる。
【0010】
上記本発明における前記被結束部は、前記長手方向の外側ほど横幅が狭くなるよう形成できる。この構成によれば、配策材を結束するにあたりどの定幅区間で結束するのかを決定しやすい。
【0011】
上記本発明における前記被結束部は、全ての前記定幅区間において前記配策材が配置される側の面が面一となるようにできる。この構成によれば、配策材の長手方向における被結束部材の全区間が、配策材に密着した状態で結束保持されるため、配策材を安定して結束保持することが可能になる。
【0012】
上記本発明における前記被結束部は、全ての前記定幅区間において横幅方向の中心位置が前記長手方向に延びる同一の直線上に重なるようにできる。この構成によれば、配策材の横幅方向の中心位置に係合部材を配置することができるから、係合部材の配置が安定する。また、係合部を上記中心位置から上方に突出形成すれば、配策材の横幅方向の中心位置に直立させることができるから、車体側への組み付けを安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1の係合部材を、
図1とは異なる向きから見た斜視図。
【
図3】
図1の係合部材が配策材を結束保持した状態を示した斜視図。
【
図5】車体側の固定孔に
図3の係合部材が挿入固定された状態を示した正面図。
【
図6】
図3とは異なる配策材の結束保持状態を示した斜視図。
【
図7】
図3及び
図6とは異なる配策材の結束保持状態を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第一実施例を、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施例の係合部材4は、
図1及び
図2に示すように、係合部40と、被結束部41R、41Lと、を一体に備える。そして、
図3及び
図4に示すように、この係合部材4と、長手状の配策材3と、結束部材5R、5Lと、によって、配策材の結束構造1が形成される。
【0016】
配策材3は、
図3に示すように、長手状に延出する配線部材である。ここでの配策材3は、平板状をなして長手状に延出する平型配策材であり、電源線を形成する金属製のバスバーをなす。この配策材3は、外周面を形成する四面がそれぞれ配策材3自身の長手方向Xに延びる平面として形成されている。なお、本発明の平型配策材3は、フラット電線をなすFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)でもよく、バスバーに限るものではない。また、本発明の配策材3は、平型配策材に限るものではなく、例えば長手状に延出する複数の配線が束をなしたワイヤーハーネスのように、可撓性を有した配策材(可撓性配策材)等でもよいし、1または複数、あるいは複数種の配策材からなるものでもよい。
【0017】
係合部材4は、
図5に示すように、車体100側に組み付けるための係合部40を有する。
【0018】
係合部40は、車体100(パネル部材)側に設けられた固定部の所定の固定孔101Hに挿入されることにより(挿入方向Z)、その固定孔101Hに対し、抜け止め状態となるよう係合して組み付くアンカー部である。ここでの係合部40は、固定孔101Hに挿入される柱部40Bと、柱部40Bと共に固定孔101Hに挿入され、挿入された先で固定孔101Hの周辺部101Rに対し抜け止め状態となるよう係合する弾性係止片40Aと、その抜け止め状態において固定孔101Hの周辺部101Rを弾性係止片40Aとの間で挟み込む当接部40Cと、を有する。
【0019】
また、係合部材4は、
図1及び
図2に示すように、上記係合部40と一体をなす形で被結束部41R、41Lを有する。被結束部41R、41Lは、配策材3を取り付けるための取付部として機能する。
【0020】
被結束部41R、41Lは、配策材3に添設されて結束部材5R、5Lにより結束される。被結束部41R、41Lは、結束部材5R、5Lによって配策材3が結束される際に、配策材3と共に取り巻かれて結束保持される配策材3のための取付部である。また、ここでの被結束部41R、41Lは、結束部材5R、5Lによって配策材3と共に結束保持された結束保持状態において、配策材3の長手方向Xに延出する袖部である。具体的にいえば、被結束部41R(第一側袖部)は、中間に位置する係合部40を基端側として上記結束保持状態における配策材3の長手方向Xの第一側(
図1右側)に延出する。他方、被結束部41L(第二側袖部)は、中間に位置する係合部40を基端側として第一側とは逆の長手方向Xの第二側(
図1左側)に延出する。
【0021】
結束部材5R(第一側結束部材)は、係合部材4の係合部40に対し上記長手方向Xの第一側(
図1右側)で、配策材3と共に被結束部41Rを結束する。他方、結束部材5L(第二側結束部材)は、第一側とは逆の長手方向Xの第二側(
図1左側)で、配策材と共に被結束部41Lを結束する。このように結束部材5R、5Lは、配策材3と共に被結束部41R、41Lを結束した結束状態となることにより、配策材3が係合部材4に取り付けられて保持された結束保持状態となる。
【0022】
なお、ここでの結束部材5R、5Lは、可撓性を有した長手状の部材であり、
図4に示すように、結束対象と対面する側の面(結束対象を取り巻いたときの内周面)が接着面5bをなすテープ部材である。結束部材5R、5Lは、取り巻いた結束対象との接触部分に対し接着するとともに、自身の両端部が重なる形で互いに接着することにより結束状態となる。なお、結束部材5R、5Lは、配策材3と共に被結束部41R、41Lを取り巻いて結束保持するものであればよく、例えばタイバンドのようなベルト部材等でもよい。
【0023】
ところで、被結束部41R、41Lは、
図1及び
図2に示すように、配策材3の長手方向Xにおいてその長手方向Xに直交する方向Y(以下、横幅方向Yともいう)の横幅が一定となる定幅区間S1、S2、S3が、それぞれの横幅を異にする形で複数形成されている。なお、ここでの被結束部41R、41Lは、係合部40を中心として、長手方向Xの両側に対称に形成されており、定幅区間S1、S2、S3が長手方向Xの両側で対称をなしている。
【0024】
被結束部41R、41Lは、各定幅区間S1、S2、S3が横幅方向の両端側に段差を形成する形で形成されている。具体的にいえば、被結束部41R、41Lは、長手方向Xの両外側ほど横幅が狭くなるよう、横幅方向Yの両端が階段状をなして形成されている。
【0025】
また、被結束部41R、41Lは、各定幅区間S1、S2、S3の長手方向Xの両側で、結束する結束部材5R、5Lの長手方向Xへのずれを防ぐずれ防止部42を有する。
図1及び
図2に示すずれ防止部42は、各定幅区間S1、S2、S3の長手方向Xにおける境界位置において、長手方向Xと直交する方向に突出する突出部として形成される。ここでのずれ防止部42は、各定幅区間S1、S2、S3の長手方向Xの両側で係合部40の突出側(上側)に突出している。なお、定幅区間S1については、係合部40が突出部をなしており、ずれ防止部42としての役割を果たしている。
【0026】
また、被結束部41R、41Lは、
図2に示すように、全ての定幅区間S1、S2、S3において配策材3が配置される側の面4bが面一となっている。ここでの係合部材4は、係合部40の突出側とは逆の裏面4bが、全面平坦に形成されている。このため、係合部材4は、その裏面4b全面が配策材3に密着した状態で結束保持される(
図5参照)。
【0027】
また、被結束部41R、41Lは、
図1及び
図2に示すように、全ての定幅区間S1、S2、S3において横幅方向の中心位置が長手方向Xに延びる同一の直線X0上に重なっている。これにより、係合部材4は、
図4に示すように、係合部40が配策材3上でその横幅方向Yの中心位置に直立した状態で結束保持される。
【0028】
このように本実施例の係合部材によれば、結束部材5R、5Lによって被結束部41R、41Lを配策材3と共に結束する際に、結束部材5R、5Lが結束する位置を、
図6及び
図7に示すように、被結束部の複数の定幅区間S1、S2、S3の中から、配策材3の横幅に近い区間に設定することができる。結束部材5R、5Lが結束する位置を、配策材3の横幅との差が大きい区間に設定すると、
図4の符号Sが示す隙間が大きくなり、配策材3を安定して結束保持しにくくなってしまう。
【0029】
以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0030】
以下、上記した実施例とは別の実施例やそれら実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0031】
上記実施例における被結束部41R、41Lは、定幅区間S1、S2、S3を有しているが、定幅区間は複数あればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 配策材の結束構造
3 配策材
4 係合部材
40 係合部
41R、41L 被結束部
5R、5L 結束部材
X 長手方向
Y 横幅方向
S1、S2、S3 定幅区間