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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20230808BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20230808BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20230808BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230808BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01B7/02 Z
H01B7/04
H01B7/18 H
C08L23/16
C08K3/22
C08K3/34
C08K3/36
C08K3/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019144638
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024965
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592189860
【氏名又は名称】住友電工産業電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 成幸
(72)【発明者】
【氏名】西川 信也
(72)【発明者】
【氏名】内野 道夫
(72)【発明者】
【氏名】大見 博志
(72)【発明者】
【氏名】森岡 恒典
(72)【発明者】
【氏名】上原 真一
(72)【発明者】
【氏名】中筋 悠介
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077851(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122495(WO,A1)
【文献】特開2012-082277(JP,A)
【文献】特開平07-330980(JP,A)
【文献】特開2016-141766(JP,A)
【文献】特開2002-167482(JP,A)
【文献】特開2015-008615(JP,A)
【文献】特開2013-014714(JP,A)
【文献】特開2012-241041(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01B 7/00-7/288、7/38-7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、
前記導体の外側に設けられる絶縁体と、
前記絶縁体の外側に設けられるシースとを備えるケーブルであって、
前記絶縁体及び前記シースの少なくとも一方がゴム組成物からなり、
前記ゴム組成物は、
エチレンプロピレンゴムからなるゴム成分と、
ハロゲンを含まない添加剤とを含み、
タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、
弾性率が10MPa以下であり、
引張強さが7MPa以上であり、
前記添加剤は、
パラフィン系プロセスオイルからなる軟化剤と、
水酸化アルミニウムからなる難燃剤と、
タルク、シリカ、又は炭酸カルシウムのいずれか一つからなる充填剤とを含み、
前記軟化剤の含有量は、前記ゴム成分を100重量部として、0.1重量部以上10重量部以下であり、
前記難燃剤の含有量は、前記ゴム成分を100重量部として、80重量部以上160重量部以下であり、
前記充填剤の含有量は、前記ゴム成分を100重量部として、重量部以上40重量部以下であり、
前記弾性率は、引張試験機で引張速度50mm/分で引張り、伸び率が2%となったときの抗張力を測定し、その抗張力を50倍した値である、
ケーブル。
【請求項2】
前記ゴム組成物に対してヘキサンを溶剤としてソックスレー抽出を24時間実施した際の抽出分が3質量%以上15質量%以下である請求項1に記載のケーブル
【請求項3】
前記ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、前記ゴム成分を100質量%として、60質量%以上67質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のケーブル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム組成物、及びケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、キャブタイヤケーブルの絶縁体やシースの構成材料に用いられるゴム組成物を開示する。特許文献1に開示するゴム組成物は、エチレンプロピレンゴムを主成分とする。特許文献2に開示するゴム組成物は、クロロプレンゴムを主成分とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-241041号公報
【文献】特開2017-162735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャブタイヤケーブルは、取り回しが行い易いように、高い柔軟性が求められる。キャブタイヤケーブルの柔軟性を向上するにあたり、絶縁体やシースの構成材料であるゴム組成物の柔軟性を向上することが挙げられる。特許文献2に開示するゴム組成物は、クロロプレンゴムを主成分としているため、高い柔軟性を備える。しかし、クロロプレンゴムは、ハロゲンを含むため、燃焼時に有害な塩素ガスを発生するおそれがある。一方、特許文献1に開示するゴム組成物は、エチレンプロピレンゴムを主成分としており、ハロゲンを含まない。しかし、エチレンプロピレンゴムは、クロロプレンゴムに比較して、柔軟性に劣る。
【0005】
そこで、本開示は、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れるゴム組成物を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れるケーブルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のゴム組成物は、
エチレンプロピレンゴムからなるゴム成分と、
ハロゲンを含まない添加剤とを含むゴム組成物であって、
タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、
弾性率が10MPa以下であり、
引張強さが7MPa以上である。
【0007】
本開示のケーブルは、
導体と、
前記導体の外側に設けられる絶縁体と、
前記絶縁体の外側に設けられるシースとを備えるケーブルであって、
前記絶縁体及び前記シースの少なくとも一方は、本開示のゴム組成物からなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示のゴム組成物及び本開示のケーブルは、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態のケーブルの一例を示す断面図である。
図2図2は、試験例における摩耗輪試験に使用した装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示に係るゴム組成物は、
エチレンプロピレンゴムからなるゴム成分と、
ハロゲンを含まない添加剤とを含むゴム組成物であって、
タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、
弾性率が10MPa以下であり、
引張強さが7MPa以上である。
【0012】
本開示のゴム組成物は、ハロゲンを含まない。具体的には、ゴム組成物の大部分を構成するゴム成分は、エチレンプロピレンゴムからなる。エチレンプロピレンゴムは、ハロゲンを含まない。ゴム組成物は、ゴム成分以外に添加剤を含む。この添加剤も、ハロゲンを含まない。よって、本開示のゴム組成物は、燃焼時に有害な塩素ガスが発生することを防止できる。
【0013】
本開示のゴム組成物は、タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、弾性率が10MPa以下である。このタイプAデュロメータ硬さの値及び弾性率の値は、ゴム成分がクロロプレンゴムからなる場合に匹敵する柔軟性を示す。また、本開示のゴム組成物は、引張強さが7MPa以上である。この引張強さは、機械的強度に優れることを示す。以上より、本開示のゴム組成物は、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れると共に機械的強度に優れる。
【0014】
(2)本開示のゴム組成物の一例として、
前記ゴム組成物に対してヘキサンを溶剤としてソックスレー抽出を24時間実施した際の抽出分が3質量%以上15質量%以下である形態が挙げられる。
【0015】
本開示のゴム組成物をソックスレー抽出した際に溶解・抽出される成分は、ゴムの低分子量成分を含む。また、添加剤としてパラフィン系プロセスオイルを含む場合、ゴムの低分子量成分とパラフィン系プロセスオイルとを含む。ゴムの低分子量成分とは、分子量が1万未満のものを言う。パラフィン系プロセスオイルは、軟化剤である。ゴムの低分子量成分やパラフィン系プロセスオイルは、後述する試験例で示すように、タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率の低下に寄与する。上記抽出分が3質量%以上であることで、柔軟性を向上し易い。また、上記抽出分が3質量%以上であることで、ゴム組成物の製造時に、製造機にかかる負荷を小さくし易く、得られるゴム組成物の表面を滑らかにできる。上記抽出分が多くなり過ぎると、機械的強度が低下する傾向にある。また、上記抽出分が多くなり過ぎると、得られるゴム組成物の表面にオイル状の成分が染み出すブリード現象が生じ得る。よって、上記抽出分が15質量%以下であることで、機械的強度の低下を抑制でき、かつブリード現象の発生を抑制できる。
【0016】
(3)本開示のゴム組成物の一例として、
前記ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、前記ゴム成分を100質量%として、60質量%以上67質量%以下である形態が挙げられる。
【0017】
ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、少ない方が柔軟性に優れる傾向にある。ゴム成分に占めるエチレンの含有量が67質量%以下であることで、ゴム組成物の柔軟性を向上し易い。一方、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が少な過ぎると、機械的強度が低下する傾向にある。ゴム成分に占めるエチレンの含有量が60質量%以上であることで、ゴム組成物の機械的強度を向上し易い。
【0018】
(4)本開示のゴム組成物の一例として、
前記添加剤は、水酸化アルミニウムを含み、
前記水酸化アルミニウムの含有量は、前記ゴム成分を100重量部として、60重量部以上160重量部以下である形態が挙げられる。
【0019】
水酸化アルミニウムは、分解温度が低く、難燃性を高める効果を有する。よって、添加剤として水酸化アルミニウムを含むことで、ゴム組成物の難燃性を高めることができる。水酸化アルミニウムの含有量が60重量部以上であることで、難燃性を効果的に高めることができる。水酸化アルミニウムの含有量が多くなり過ぎると、柔軟性に劣る傾向にある。水酸化アルミニウムの含有量が160重量部以下であることで、ゴム組成物は、難燃性に優れると共に、柔軟性に優れる。
【0020】
(5)本開示のゴム組成物の一例として、
前記添加剤は、タルクを含み、
前記タルクの含有量は、前記ゴム成分を100重量部として、2重量部以上50重量部以下である形態が挙げられる。
【0021】
タルクは、耐摩耗性を高める効果を有する。タルクの含有量が2重量部以上であることで、耐摩耗性を効果的に高めることができる。タルクの含有量が多くなり過ぎると、柔軟性に劣る傾向にある。タルクの含有量が50重量部以下であることで、ゴム組成物は、耐摩耗性に優れると共に、柔軟性に優れる。
【0022】
(6)本開示に係るケーブルは、
導体と、
前記導体の外側に設けられる絶縁体と、
前記絶縁体の外側に設けられるシースとを備えるケーブルであって、
前記絶縁体及び前記シースの少なくとも一方は、上記(1)から(5)のいずれか一つのゴム組成物からなる。
【0023】
本開示のケーブルは、絶縁体及びシースの少なくとも一方が本開示のゴム組成物からなることで、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れると共に機械的強度に優れる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
≪ゴム組成物≫
実施形態のゴム組成物は、ゴム成分と添加剤とを含む。ゴム成分は、ハロゲンを含まないエチレンプロピレンゴムからなる。添加剤も、ハロゲンを含まない。実施形態のゴム組成物は、タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、弾性率が10MPa以下であり、引張強さが7MPa以上である点を特徴の一つとする。以下、詳細に説明する。
【0026】
<ゴム成分>
ゴム成分は、エチレンプロピレンゴムからなる。ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%として、60質量%以上67質量%以下であることが好ましい。以下、エチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%としたときの含有量である。ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、少ない方が柔軟性に優れる傾向にある。よって、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が67質量%以下であることで、ゴム組成物の柔軟性を向上し易い。一方、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が少な過ぎると、引張強さが低下する傾向にある。よって、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が60質量%以上であることで、ゴム組成物の引張強さを向上し易い。ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、更に62質量%以上66質量%以下、特に64質量%以上66質量%以下であることが好ましい。ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、核磁気共鳴吸収法(H-NMR法)によって測定できる。
【0027】
ゴム成分は、エチレンの含有量が単一のエチレンプロピレンゴムから構成されることが挙げられる。この場合、エチレンプロピレンゴムにおけるエチレンの含有量は、60質量%以上67質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
また、ゴム成分は、エチレンの含有量が異なる複数のエチレンプロピレンゴムから構成されることが挙げられる。この場合、エチレンの含有量が相対的に少ない第一のエチレンプロピレンゴムと、エチレンの含有量が相対的に多い第二のエチレンプロピレンゴムとを含むことが挙げられる。エチレンの含有量は、上述したように、少ない方が柔軟性に優れる。そこで、エチレンの含有量が60質量%未満の第一のエチレンプロピレンゴムを含むことで、柔軟性の向上が期待できる。なお、ここでの第一のエチレンプロピレンゴム及び第二のエチレンプロピレンゴムにおける各エチレンの含有量は、原料段階におけるエチレンの含有量である。第一のエチレンプロピレンゴムと第二のエチレンプロピレンゴムとが混合されてゴム成分を構成した際には、ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、平均化される。エチレンの含有量が異なる複数のエチレンプロピレンゴムを含む場合、各エチレンプロピレンゴムにおけるエチレンの含有量は、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が60質量%以上67質量%以下を満たすように適宜選択することが好ましい。例えば、第一のエチレンプロピレンゴムにおけるエチレンの含有量は、50質量%以上60質量%以下、更に55質量%以上60質量%以下であることが挙げられる。一方、第二のエチレンプロピレンゴムにおけるエチレンの含有量は、60質量%超90質量%以下、更に62質量%以上90質量%以下、65質量%以上90質量%以下、70質量%以上80質量%以下であることが挙げられる。第一のエチレンプロピレンゴムと第二のエチレンプロピレンゴムの配合比は、質量比で10:90以上90:10以下、更に20:80以上55:45以下、30:70以上55:45以下、30:70以上50:50以下であることが挙げられる。
【0029】
<添加剤>
添加剤として、軟化剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、着色剤、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、分散剤等が挙げられる。添加剤は、上記に列挙したものを少なくとも一種含むことが挙げられる。
【0030】
軟化剤として、パラフィン系プロセスオイルを含むことが好ましい。パラフィン系プロセスオイルは、常に液体で存在する。パラフィン系プロセスオイルは、タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率の低下に寄与する。タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率については、後述する。パラフィン系プロセスオイルを含むことで、ゴム組成物は、柔軟性に優れる。
【0031】
パラフィン系プロセスオイルの含有量は、ゴム成分を100重量部として、0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。パラフィン系プロセスオイルの含有量が0.1重量部以上であることで、柔軟性を向上し易い。パラフィン系プロセスオイルの含有量が多くなり過ぎると、ゴム組成物の表面にプロセスオイルが染み出すブリード現象が生じ得る。よってパラフィン系プロセスオイルの含有量が10重量部以下であることで、ブリード現象の発生を抑制できる。なお、ここでのパラフィン系プロセスオイルの含有量は、原料段階における含有量である。パラフィン系プロセスオイルの含有量は、ゴム成分を100重量部として、更に0.2重量部以上8重量部以下、特に1重量部以上7重量部以下であることが好ましい。
【0032】
難燃剤として、金属水酸化物を含むことが好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。特に、水酸化アルミニウムは、分解温度が低く、難燃性をより高める効果を有する。そのため、難燃剤として、水酸化アルミニウムを含むことで、ゴム組成物の難燃性を効果的に高めることができる。特に、軟化剤としてパラフィン系プロセスオイルを含む場合、難燃剤として水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。パラフィン系プロセスオイルは、発火温度が低く、燃え易いからである。
【0033】
難燃剤として、水酸化アルミニウムを含む場合、水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分を100重量部として、60重量部以上160重量部以下であることが好ましい。水酸化アルミニウムの含有量が60重量部以上であることで、難燃性を効果的に高めることができる。水酸化アルミニウムの含有量が多くなり過ぎると、柔軟性に劣る傾向にある。よって、水酸化アルミニウムの含有量が160重量部以下であることで、ゴム組成物は、難燃性に優れると共に、柔軟性に優れる。なお、ここでの水酸化アルミニウムの含有量は、原料段階における含有量である。水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分を100重量部として、更に80重量部以上150重量部以下、特に90重量部以上140重量部以下であることが好ましい。得られるゴム組成物における金属水酸化物の含有量は、ICP発光分光分析法によって測定できる。
【0034】
難燃剤や難燃補助剤は、他に、赤リン、リン酸エステル、三酸化アンチモン、錫酸亜鉛等が挙げられる。
【0035】
充填剤として、タルクを含むことが好ましい。タルクは、耐摩耗性を高める効果を有する。タルクの含有量は、ゴム成分を100重量部として、2重量部以上50重量部以下であることが好ましい。タルクの含有量が2重量部以上であることで、耐摩耗性を効果的に高めることができる。タルクの含有量が多くなり過ぎると、柔軟性に劣る傾向にある。タルクの含有量が50重量部以下であることで、ゴム組成物は、耐摩耗性に優れると共に、柔軟性に優れる。なお、ここでのタルクの含有量は、原料段階における含有量である。タルクの含有量は、ゴム成分を100重量部として、更に5重量部以上40重量部以下、特に10重量部以上30重量部以下であることが好ましい。
【0036】
充填剤は、他に、シリカ、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。
【0037】
着色剤は、カーボン等が挙げられる。架橋剤は、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等の有機過酸化物や硫黄等が挙げられる。架橋助剤は、エチレンジメタアクリレート、ジアリルフタレート、P-キノンジオキシム等が挙げられる。酸化防止剤は、フェニル-α-ナフチルアミン、N,N′-ジ-β-ナフチル-P-フェニレンジアミン等のアミン系、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒンダードフェノール等のフェノール系のものが挙げられる。これらの添加剤は、公知の材料及び添加量を適宜利用できる。
【0038】
<ハロゲンの含有量>
ゴム組成物は、ハロゲンを含まない。ここでの「ハロゲンを含まない」とは、ハロゲンの含有量が、質量基準で900ppm以下であることを言う。ハロゲンの含有量は、酸素を満たしたフラスコ内でゴム組成物の試料を燃焼分解し、発生したガスをフラスコ内の吸収液に溶解させて分析試料とし、イオンクロマト法で測定される。上記吸収液には、水又はアルカリ水を用いる。
【0039】
<ヘキサンによる抽出分>
ゴム組成物は、ヘキサンを溶剤としてソックスレー抽出を24時間実施した際の抽出分が3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。ゴム組成物をソックスレー抽出した際に溶解・抽出される成分は、ゴムの低分子量成分を含む。また、添加剤としてパラフィン系プロセスオイルを含む場合、ゴムの低分子量成分とパラフィン系プロセスオイルとを含む。ゴムの低分子量成分やパラフィン系プロセスオイルは、タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率の低下に寄与する。上記抽出分が3質量%以上であることで、柔軟性を向上し易い。また、上記抽出分が3質量%以上であることで、ゴム組成物の製造時に、製造機にかかる負荷を小さくし易く、得られるゴム組成物の表面を滑らかにできる。上記抽出分が多くなり過ぎると、機械的強度が低下する傾向にある。また、上記抽出分が多くなり過ぎると、得られるゴム組成物の表面にオイル状の成分が染み出すブリード現象が生じ得る。よって、上記抽出分が15質量%以下であることで、機械的強度の低下を抑制でき、かつブリード現象の発生を抑制できる。上記抽出分は、更に4質量%以上14質量%以下、特に5質量%以上13質量%以下であることが好ましい。
【0040】
<特性>
ゴム組成物は、以下の特性を有する。
【0041】
〔タイプAデュロメータ硬さ〕
タイプAデュロメータ硬さが70以下である。タイプAデュロメータ硬さが70以下であることで、柔軟性に優れる。タイプAデュロメータ硬さは、低いほど好ましく、更に69以下、特に68以下であることが好ましい。タイプAデュロメータ硬さが低くなり過ぎると、相対的に引張強さが低下する傾向にある。よって、タイプAデュロメータ硬さは、64以上、更に65以上、特に66以上であることが挙げられる。タイプAデュロメータ硬さは、64以上70以下、更に65以上68以下、特に66以上68以下であることが挙げられる。タイプAデュロメータ硬さとは、JIS-K6253:2012に基づいてタイプAデュロメータによって測定される硬度のことである。
【0042】
〔弾性率〕
弾性率が10MPa以下である。弾性率が10MPa以下であることで柔軟性に優れる。弾性率は、低いほど好ましく、更に9MPa以下、特に8MPa以下であることが好ましい。弾性率が低くなり過ぎると、相対的に引張強さが低下する傾向にある。よって、弾性率は、5MPa以上、更に5.5MPa以上、特に6MPa以上であることが挙げられる。弾性率は、5MPa以上10MPa以下、更に5.5MPa以上9MPa以下、特に6MPa以上8MPa以下であることが挙げられる。ここでの弾性率とは、引張試験機で引張速度50mm/分で引張り、伸び率が2%となったときの抗張力を測定し、その抗張力を50倍した値のことである。この値を2%セカントモジュラスと言うことがある。
【0043】
〔引張強さ〕
引張強さが7MPa以上である。引張強さが7MPa以上であることで機械的強度に優れる。引張強さは、高いほど好ましく、更に8MPa以上、特に9MPa以上であることが好ましい。引張強さが高くなり過ぎると、相対的にタイプAデュロメータ硬さや弾性率が高くなる傾向にある。よって、引張強さは、40MPa以下、更に30MPa以下、20MPa以下、特に10MPa以下であることが挙げられる。引張強さは、7MPa以上40MPa以下、更に8MPa以上30MPa以下、特に9MPa以上20MPa以下であることが挙げられる。引張強さは、JIS-C3005:2014に基づいて測定される。
【0044】
〔引張伸び〕
引張伸びが300%以上であることが好ましい。引張伸びは、高いほど好ましく、更に350%以上、特に400%以上であることが好ましい。引張伸びは、JIS-C3005:2014に基づいて測定される。
【0045】
〔摩耗深さ〕
摩耗輪試験機による荷重5kgf、毎分60回転の条件において750回転させたときの摩耗深さが2.6mm以下であることが好ましい。摩耗深さは、小さいほど好ましく、更に2.4mm以下、特に2mm以下であることが好ましい。摩耗深さは、JIS-K7204:1999に基づく摩耗輪試験によって測定される。
【0046】
≪ケーブル≫
上述したゴム組成物は、ケーブルの絶縁体やシースの構成材料に好適に用いられる。図1に、ケーブル1の一例を示す。図1は、ケーブル1をケーブル1の長手方向と直交する方向に切断した断面図である。図1に示すケーブル1は、複数の絶縁電線10と、複数の絶縁電線10を一括して被覆するシース20とを備える。本例のケーブル1は、3本の絶縁電線10を備える。各絶縁電線10は、導体11と、導体11を被覆する絶縁体12とを備える。本例のケーブル1は、シース20が上述したゴム組成物で構成される。
【0047】
導体11は、特に限定されないが、例えば銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなる。導体11の断面形状は、特に限定されないが、例えば円形が挙げられる。導体11は、単線であってもよいし、複数の素線を撚り合わせた撚線であってもよい。
【0048】
絶縁体12は、絶縁樹脂材料により構成され、例えばエチレンプロピレンゴムで構成されることが挙げられる。絶縁体12も、上述したゴム組成物で構成されてもよい。また、絶縁体12が上述したゴム組成物で構成され、シース20が上述したゴム組成物以外で構成されてもよい。
【0049】
上述したゴム組成物で構成されるシース20は、溶融押出機等の公知の押出成形機を用いて、一括に纏めた絶縁電線10の外周にゴム組成物を押出成形することにより構成される。本例では、3本の絶縁電線10が撚り合わされている。ゴム組成物は、上述したゴム組成物の構成材料を公知の混合機を用いて混合して得られる。混合機としては、ロール混合機、単軸混練押出機、二軸混練押出機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ロール混合機等が挙げられる。ゴム組成物の構成材料の混合は、混合中に加硫反応が進行しないように、100℃未満で行い、必要に応じて水冷することが挙げられる。ゴム組成物を押出成形した後は、加硫する。加硫の方法としては、加圧水蒸気法、缶加硫法等を用いることができる。
【0050】
≪効果≫
実施形態のゴム組成物は、ハロゲンを含まない。よって、上記ゴム組成物は、燃焼時に有害な塩素ガスが発生することを防止できる。上記ゴム組成物は、タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、弾性率が10MPa以下である。このタイプAデュロメータ硬さの値及び弾性率の値は、ゴム成分がクロロプレンゴムからなる場合に匹敵する柔軟性を示す。また、上記ゴム組成物は、引張強さが70MPa以上である。この引張強さは、機械的強度に優れることを示す。以上より、上記ゴム組成物は、ハロゲンを含まず、かつ柔軟性に優れると共に機械的強度に優れる。タイプAデュロメータ硬さ、弾性率、及び引張強さがそれぞれ上記値を満たすゴム組成物は、ケーブルの絶縁体やシースの構成材料として好適に利用できる。そして、上記ゴム組成物を備えるケーブルは、取り回しが行い易く、工場内での移動機器の給電線等のキャブタイヤケーブルとして好適に利用できる。
【0051】
[試験例]
3本の絶縁電線を一括してシースで被覆したケーブルを作製した。シースは、以下に説明する各試料のゴム組成物からなる。各試料のケーブルについて、シースを構成するゴム組成物における以下の項目を評価した。評価した項目は、タイプAデュロメータ硬さ、弾性率、引張強さ、引張伸び、耐摩耗性、難燃性、押出外観、ブリード、ハロゲンの含有量である。
【0052】
≪試料の説明≫
<使用した材料>
使用した材料は、ゴム成分を構成する材料と、添加剤を構成する材料とに区別される。
【0053】
<ゴム成分>
〔エチレンプロピレンゴム〕
・第一のエチレンプロピレンゴム
住友化学社製のエスプレン502を用いた。エチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%として、56質量%である。第一のエチレンプロピレンゴムは、表中では、EPゴム1と表記する。
・第二のエチレンプロピレンゴム
住友化学社製のエスプレン301を用いた。エチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%として、62質量%である。第二のエチレンプロピレンゴムは、表中では、EPゴム2と表記する。
・第三のエチレンプロピレンゴム
住友化学社製のエスプレン512Fを用いた。エチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%として、65質量%である。第三のエチレンプロピレンゴムは、表中では、EPゴム3と表記する。
・第四のエチレンプロピレンゴム
住友化学社製のエスプレン6101を用いた。エチレンの含有量は、ゴム成分を100質量%として、70質量%である。第四のエチレンプロピレンゴムは、表中では、EPゴム4と表記する。
【0054】
表1には、ゴム成分に占めるエチレンの含有量も示す。ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、ゴム成分中に含まれる各エチレンプロピレンゴムの含有量と、ゴム成分中に含まれるエチレンプロピレンゴムの合計含有量に対する各エチレンプロピレンの質量比で算出される。単位は質量%である。
【0055】
〔クロロプレンゴム〕
電気化学工業社製のデンカクロロプレンM-40を用いた。このクロロプレンゴムは、キサントゲン変性クロロプレンゴムである。
【0056】
<添加剤>
軟化剤として、液体パラフィン又は固体パラフィンを用いた。液体パラフィンは、パラフィン系プロセスオイルのことである。液体パラフィンは、日本サン石油社製のSUNPAR110を用いた。固体パラフィンは、三井化学社製のハイワックス430Pを用いた。
【0057】
難燃剤として、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを用いた。水酸化アルミニウムは、住友化学社製のC301Nを用いた。水酸化マグネシウムは、神島化学工業社製のマグシーズW-H5を用いた。
【0058】
充填剤として、タルク又はシリカ又は炭酸カルシウムを用いた。タルクは、日本タルク社製のシムゴンタルクを用いた。シリカは、日本アエロジル社製のアエロジル200Vを用いた。炭酸カルシウムは、白石カルシウム社製のホワイトンSBを用いた。
【0059】
酸化防止剤として、ADEKA社製のアデカスタブAO-60を用いた。
【0060】
着色剤として、東海カーボン社製のシースト3Hのカーボンを用いた。
【0061】
過酸化物架橋剤として、日本油脂社製のパークミルDを用いた。
【0062】
上述したゴム成分及び添加剤の各含有量を表1及び表2に示す。添加剤の含有量はいずれも、ゴム成分を100重量部としたときの含有量を重量部で示す。
【0063】
<ケーブルの作製>
表1及び表2に示す配合割合で調整したゴム組成物をオープンロールで帯状に延ばし、ゴム押出機を用いて図1に示す3本の絶縁電線の外周に押出被覆した。押出は、ゴム組成物の温度が100℃を超えないように水冷しながら行った。その後、熱加硫処理を160分行ってケーブルを作製した。ケーブルは、導体断面積を3.5mm、絶縁層の外径を2.5mm、シースの厚さを2.9mmとした。シースの厚さは、JIS-C3005:2014に基づいて測定した。
【0064】
<ヘキサンによる抽出分>
得られた各試料のケーブルにおけるシースから幅5mmの短冊状の試験片を切り出した。その試験片に対して、ヘキサンを溶剤としてソックスレー抽出を24時間実施し、抽出した成分量を測定した。その結果は、表1及び表2に示す。この抽出した成分は、主にゴムの低分子量成分とパラフィン系プロセスオイルとを含む。
【0065】
≪評価項目≫
得られた各試料のケーブルについて、タイプAデュロメータ硬さ、弾性率、引張強さ、引張伸び、耐摩耗性、難燃性、押出外観、ブリード、ハロゲンの含有量を調べた。各結果は、表1及び表2に示す。
【0066】
≪タイプAデュロメータ硬さ≫
JIS-K6253:2012に基づき、各試料のケーブルにおけるシースの表面にタイプAデュロメータを押し当てて硬度を測定した。
【0067】
≪弾性率≫
各試料のケーブルにおけるシースから幅5mmの短冊状の試験片を切り出し、表裏を研磨して平行にした。その試験片を引張試験機で引張速度50mm/分で引張り、伸び率が2%となったときの抗張力を測定し、その抗張力を50倍にした値を弾性率とした。
【0068】
≪引張強さ、引張伸び≫
引張強さ及び引張伸びは、JIS-C3005:2014に基づいて測定した。
【0069】
≪耐摩耗性≫
JIS-K7204:1999に基づき摩耗輪試験を行い、摩耗深さにより耐摩耗性を評価した。具体的には、図2に示すように、各試料のケーブル1の先端側の一端部に錘130を吊り下げ、ケーブル1の他端部を摩耗輪試験装置100の把持部120で把持し、ケーブル1の側面を摩耗輪110に押し当てる。本例の錘130は、5kgfとした。この状態で、摩耗輪110を毎分60回転で750回転させる。このときの、シースの摩耗深さを測定した。摩耗深さが2.6mm以下である場合を合格とし、2.6mm超である場合を不合格とした。表1及び表2では、摩耗深さが2.6mm以下である場合をAと表示し、摩耗深さが2.6mm超である場合をBと表示する。
【0070】
≪難燃性≫
JIS-C3005:2014に基づき60°傾斜燃焼試験を行い、燃焼の程度により燃焼性を評価した。具体的には、各試料のケーブルを水平に対して60°傾斜させて支持し、ブンゼンバーナーにより還元炎の先端をケーブルの下端から約20mmの位置に当てた。ブンゼンバーナーは、口径10mmのものを用い、炎の長さを約130mm、還元炎の長さを約35mmに調整した。還元炎は、30秒以内でケーブルのシースが燃焼するまで当てた。シースが燃焼したら炎を静かに取り去り、シースの燃焼の程度を観察した。60秒以内に炎が自然に消えた場合を合格とし、60秒を超えても燃焼している場合を不合格とした。表1及び表2では、60秒以内に炎が自然と消えた場合をAと表示し、60秒を超えた場合をBと表示する。
【0071】
≪押出外観≫
シースの表面のメルトフラクチャ及びざらつきの発生の有無を目視で確認した。メルトフラクチャ及びざらつきの発生が見られない場合を合格とし、メルトフラクチャ及びざらつきの発生が見られる場合を不合格とした。表1及び表2では、メルトフラクチャ及びざらつきの発生が見られない場合をAと表示し、メルトフラクチャ及びざらつきの発生が見られる場合をBと表示する。
【0072】
≪ブリード≫
各試料のケーブルを40℃で30日間保管した後、シースの表面のブリードの発生の有無を目視で確認した。ブリードの発生が見られない場合を合格とし、ブリードの発生が見られる場合を不合格とした。表1及び表2では、ブリードの発生が見られない場合をAと表示し、ブリードの発生が見られる場合をBと表示する。
【0073】
≪ハロゲンの含有量≫
各試料のケーブルにおけるシースから幅5mmの短冊状の試験片を切り出した。この試験片を酸素が充満したフラスコ内で熱分解し、発生したガスをフラスコ内の吸収液に溶解させて分析試料とした。この分析試料について、イオンクロマト法によりハロゲンの含有量を測定した。ハロゲンの含有量が900質量ppm以下である場合を合格とし、ハロゲンの含有量が900質量ppm超である場合を不合格とした。表1及び表2では、ハロゲンの含有量が900質量ppm以下である場合をAと表示し、ハロゲンの含有量が900質量ppm超である場合をBと表示する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1及び表2から以下のことがわかる。まず、ゴム成分がクロロプレンゴムからなる試料No.11は、タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、かつ弾性率が10MPa以下である。つまり、試料No.11は、柔軟性に優れる。また、試料No.11は、引張強さが7MPa以上であり、機械的強度にも優れる。しかし、試料No.11は、ハロゲンの含有量が900質量ppm超である。試料No.11は、クロロプレンゴムがハロゲンを含むからである。
【0077】
次に、ゴム成分がエチレンプロピレンゴムからなる試料に着目する。試料No.1から試料No.8は、タイプAデュロメータ硬さが70以下であり、弾性率が10MPa以下であり、引張強さが7MPa以上である。これらの試料は、ゴム成分がクロロプレンゴムからなる場合に匹敵して柔軟性に優れ、かつ機械的強度に優れる。そして、これらの試料は、エチレンプロピレンゴムからなるため、ハロゲンの含有量が900質量ppm以下である。
【0078】
ここで、ゴム成分に占めるエチレンの含有量について、多過ぎると、柔軟性が低下する傾向にある。試料No.14は、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が68質量%であるため、タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率が大きくなったと考えられる。一方、ゴム成分に占めるエチレンの含有量は、少な過ぎると、柔軟性が向上することに相関して、引張強さが低下する傾向にある。よって、ゴム成分に占めるエチレンの含有量が58質量%と少ない試料No.13では、柔軟性に優れる一方で、引張強さが小さく、耐摩耗性に劣った。
【0079】
ヘキサンによる抽出分が少ない試料No.15は、タイプAデュロメータ硬さ及び弾性率が大きく、柔軟性に劣ることがわかる。試料No.15は、パラフィン系プロセスオイルが少ないからと考えられる。ヘキサンによる抽出分は、ゴムの低分子量成分とパラフィン系プロセスオイルとを含む。よって、ヘキサンによる抽出分が少ないということは、パラフィン系プロセスオイルが少ないということである。パラフィン系プロセスオイルが少ないと、ゴム組成物内にパラフィン系プロセスオイルが均一的に混ざり難く、柔軟性の効果を発揮し難いからと考えられる。柔軟性の効果が発揮し難いことで、ゴム組成物の製造時に、押出機にかかる負荷が大きくなり、ゴム組成物の表面に大きな凹凸が形成されたと考えられる。よって、試料No.15は、押出外観に劣る。一方で、ヘキサンによる抽出分が多い試料No.16では、引張強さが小さく、耐摩耗性に劣ることがわかる。試料No.16は、パラフィン系プロセスオイルが多過ぎるため、柔軟性に優れることに相関して、引張強さが低下したからと考えられる。また、試料No.16では、パラフィン系プロセスオイルが多過ぎることで、ブリードが発生した。
【0080】
パラフィン系プロセスオイルを含む場合であっても、水酸化アルミニウムではなく水酸化マグネシウムを含む試料No.17は、難燃性に劣ることがわかる。水酸化マグネシウムは、水酸化アルミニウムに比較して、分解温度が高いからと考えられる。パラフィン系プロセスオイルは、発火温度が低く、燃え易い。一方、水酸化アルミニウムは、分解温度が低く、難燃性を高める効果を有する。よって、パラフィン系プロセスオイルを含む場合、水酸化マグネシウムではなくて水酸化アルミニウムを混合することで、ゴム組成物の難燃性を高められると考えられる。
【0081】
タルクの含有量が少ない試料No.18では、耐摩耗性に劣ることがわかる。タルクは、耐摩耗性の向上に寄与するからである。一方で、タルクの含有量が多い試料No.19では、耐摩耗性の向上に相関して、柔軟性に劣り、更には機械的強度に劣ることがわかる。試料No.19では、柔軟性に劣ることで、押出外観に劣る。
【0082】
以上より、ハロゲンを含まないエチレンプロピレンゴムを含む場合、パラフィン系プロセスオイルを含むことで、柔軟性に優れると共に機械的強度に優れることがわかる。更に、エチレンの含有量、及びタルクの含有量を特定範囲とすることで、効果的に柔軟性を向上できると共に、機械的強度を向上でき、耐摩耗性に優れ、かつ押出外観にも優れることがわかる。更に、水酸化アルミニウムを含むことで、難燃性にも優れることがわかる。
【符号の説明】
【0083】
1 ケーブル
10 絶縁電線、11 導体、12 絶縁体、20 シース
100 摩耗輪試験装置
110 摩耗輪、120 把持部、130 錘
図1
図2