(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電動機および電動機の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20230808BHJP
H02K 15/14 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K15/14 Z
(21)【出願番号】P 2019156493
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 大和
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-149582(JP,A)
【文献】特開2001-178060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが設けられたステータと、
前記ステータに囲まれ、シャフトが取り付けられたロータと、
前記コイルを覆うように前記ステータに取り付けられ、前記シャフトが配置される貫通孔を有するハウジングと、
前記コイルに含浸した含浸剤と、
を備え、
前記シャフトが延びる方向での前記ハウジングの外側表面には、前記貫通孔の開口に沿って前記貫通孔の開口の全周を囲う第1突起と、前記ハウジングの端面の縁に沿って前記端面の縁の全周を囲う第2突起とが設けられ
ており、
前記ハウジングの前記外側表面は、前記シャフトの軸方向に沿って延びる側面と、前記シャフトの軸方向と交わる方向に延びる前記端面とを有しており、
前記第1突起は、前記端面と、前記端面側における前記貫通孔の開口との間に位置し、前記貫通孔を囲む前記ハウジングの内周面から前記軸方向に向かって延びており、
前記第2突起は、前記側面と前記端面との間に位置し、前記側面から前記軸方向に向かって延びている、電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記ハウジングは、前記シャフトが延びる方向での前記ステータの両端側を覆っており、
前記第1突起および前記第2突起は、エンコーダが設けられる側とは逆側を覆う前記ハウジングに設けられている、電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記ハウジングの
前記端面よりも陥入する溝を形成することで設けられる、電動機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々には、前記ハウジングの
前記端面よりも突出する突出部が設けられる、電動機。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記ハウジングの
前記端面よりも前記シャフトが延びる方向に突出する、電動機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記シャフトが延びる方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成される、電動機。
【請求項7】
シャフトが取り付けられたロータを挿通可能な貫通孔を有するハウジングを、コイルが設けられたステータに取り付ける取り付け工程と、
前記取り付け工程の後、前記ステータと前記ハウジングとを含浸剤に浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程の後、浸漬した前記ステータと前記ハウジングとを前記含浸剤から取り出し、余分な前記含浸剤を前記シャフトが延びる方向に沿って流して除去する除去工程と、
前記除去工程の後、前記コイルに含浸した前記含浸剤を硬化させる硬化工程と、
を含み、
余分な前記含浸剤が流れる側の前記ハウジングの外側表面には、前記貫通孔の開口に沿って前記貫通孔の開口の全周を囲う第1突起と、前記ハウジングの端面の縁に沿って前記端面の縁の全周を囲う第2突起とが設けられ
ており、
前記ハウジングの前記外側表面は、前記シャフトの軸方向に沿って延びる側面と、前記シャフトの軸方向と交わる方向に延びる前記端面とを有しており、
前記第1突起は、前記端面と、前記端面側における前記貫通孔の開口との間に位置し、前記貫通孔を囲む前記ハウジングの内周面から前記軸方向に向かって延びており、
前記第2突起は、前記側面と前記端面との間に位置し、前記側面から前記軸方向に向かって延びている、電動機の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機の製造方法であって、
前記ハウジングは、前記シャフトが延びる方向での前記ステータの両端側を覆っており、
前記第1突起および前記第2突起は、エンコーダが設けられる側とは逆側を覆う前記ハウジングに設けられている、電動機の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電動機の製造方法であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記ハウジングの
前記端面よりも陥入する溝を形成することで設けられる、電動機の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電動機の製造方法であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々には、前記ハウジングの
前記端面よりも突出する突出部が設けられる、電動機の製造方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載の電動機の製造方法であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記ハウジングの
前記端面よりも前記シャフトが延びる方向に突出する、電動機の製造方法。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であって、
前記第1突起および前記第2突起の各々は、前記シャフトが延びる方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成される、電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸剤がハウジングの端面に流れ出て硬化することが低減された電動機および電動機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたように、ステータと、ステータの両端に接合されたハウジングと、ワニス(含浸剤)と、を備えるモータ(電動機)が知られている。含浸剤は、ステータのコイルに含浸させることを主な目的として電動機に備わることが多い。特許文献1では、その含浸剤を、ステータに接触するハウジングの接触面に形成した、軸芯を囲む環状の溝に充填することで、水や油が接合部分から電動機の内部に浸入することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、多量の含浸剤を電動機に含ませるための電動機の構造が提案されている。しかしながら、含浸剤が電動機のハウジングの端面に流れ出てしまうと、ハウジングの端面で硬化し、その含浸剤を取り除く工数が掛かる。
【0005】
そこで、本発明は、含浸剤がハウジングの端面に流れ出て硬化することが低減された電動機および電動機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一つの態様は、電動機であって、
コイルが設けられたステータと、
前記ステータに囲まれ、シャフトが取り付けられたロータと、
前記コイルを覆うように前記ステータに取り付けられ、前記シャフトが配置される貫通孔を有するハウジングと、
前記コイルに含浸した含浸剤と、
を備え、
前記シャフトが延びる方向での前記ハウジングの外側表面には、前記貫通孔の開口に沿って前記貫通孔の開口の全周を囲う第1突起と、前記ハウジングの端面の縁に沿って前記端面の縁の全周を囲う第2突起とが設けられる。
【0007】
発明の他の一つの態様は、電動機の製造方法であって、
シャフトが取り付けられたロータを挿通可能な貫通孔を有するハウジングを、コイルが設けられたステータに取り付ける取り付け工程と、
前記取り付け工程の後、前記ステータと前記ハウジングとを含浸剤に浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程の後、浸漬した前記ステータと前記ハウジングとを前記含浸剤から取り出し、余分な前記含浸剤を前記シャフトが延びる方向に沿って流して除去する除去工程と、
前記除去工程の後、前記コイルに含浸した前記含浸剤を硬化させる硬化工程と、
を含み、
余分な前記含浸剤が流れる側の前記ハウジングの外側表面には、前記貫通孔の開口に沿って前記貫通孔の開口の全周を囲う第1突起と、前記ハウジングの端面の縁に沿って前記端面の縁の全周を囲う第2突起とが設けられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、含浸剤がハウジングの端面に流れ出て硬化することが低減された電動機および電動機の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施の形態の電動機の製造方法の一部が示されたフローチャートである。
【
図4】実施の形態の電動機の製造中の様子(1)を示す断面図である。
【
図5】実施の形態の電動機の製造中の様子(2)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
[実施の形態]
図1および
図2を用いて、実施の形態の電動機10の構成を説明する。なお、
図1は電動機10の斜視図であり、
図2は電動機10の断面図である。
【0012】
電動機10は、コイル22(
図2)が設けられたステータ12と、コイル22を覆うようにステータ12に取り付けられたハウジング14と、含浸剤16(
図2)と、を備える。本実施の形態のステータ12は、電動機10の回転軸であるシャフト18と、シャフト18が取り付けられたロータ20(
図2)と、の周囲を囲むように配置される円筒状のパーツである。
図2では、シャフト18およびロータ20が二点鎖線で示されている。なお、本実施の形態のステータ12の形状は、シャフト18およびロータ20の周囲を囲むことのできる筒状である限り、特に限定されない。
【0013】
ステータ12に設けられたコイル22(
図2)は、シャフト18の軸方向でのステータ12の両端(一方の端12a、他方の端12b)側においてコイルエンド22a(
図2)を有する。コイル22に電流を流すことで、ロータ20にトルクが発生し、そのトルクによってシャフト18が回転する。
【0014】
ハウジング14は、コイル22とともにステータ12の両端12a、12bを覆う。これにより、例えば、外部の物体にコイルエンド22aが接触して破損するおそれが防止される。
【0015】
図2に示すように、ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14との各々は、凹部を有するように成形される。凹部を有する断面がΠ字状であってもよい。
【0016】
ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14との各々は、内側表面14aおよび外側表面14bを有する。
【0017】
内側表面14aは、ハウジング14に設けられる凹部の表面であり、換言すると、ステータ12を覆う側の面である。外側表面14bは、内側表面14aとは逆側の表面であり、シャフト18が延びる方向(シャフト18の軸方向)に沿って延びる側面14bSと、軸方向に対して略直交する方向に延びる端面14bEとを有する。
【0018】
ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14との各々は、シャフト18を配置する貫通孔24を有する。貫通孔24は、内側表面14aと外側表面14bとの間を貫通しており、シャフト18およびロータ20を挿通可能である。
【0019】
ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14の外側表面14bの端面14bEには、第1突起26および第2突起28が設けられる。なお、ステータ12の一方の端12a側は、ステータ12に対してエンコーダが取り付けられる側とは逆側である。
【0020】
第1突起26は、貫通孔24の開口に沿ってその開口の全周を囲う(
図1参照)。第2突起28は、ハウジング14の端面14bEの縁に沿ってその端面14bEの縁の全周を囲う(
図1参照)。
【0021】
第1突起26および第2突起28の各々は、ハウジング14の端面14bEよりも陥入する溝14G(
図2)を形成することで設けられる。すなわち、第1突起26および第2突起28の各々は、溝14Gの底面から軸方向に突き出ているが、ハウジング14の端面14bE(端面14bE側における貫通孔24の開口面)から軸方向に突き出ていない。したがって、台などにハウジング14の端面14bE側を向けてハウジング14を置いたときに第1突起26または第2突起28が破損することを抑制することができる。
【0022】
第1突起26および第2突起28の各々は、軸方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されてもよい。また、軸方向に沿った第1突起26の断面形状と、軸方向に沿った第2突起28の断面形状とは互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、
図2では、軸方向に沿った第1突起26の断面形状と、軸方向に沿った第2突起28の断面形状とが互いに異なっている場合が例示される。
【0023】
含浸剤16は、絶縁性の樹脂を材料に含んだワニスであってもよく、エステル系の無溶剤であってもよい。含浸剤16は、コイル22の線間に充填された状態で硬化している。これにより、例えば、コイル22がステータ12に良好に固定される。また、含浸剤16は、ステータ12とハウジング14との間の隙間30にも充填された状態で硬化している。これにより、ステータ12とハウジング14とが含浸剤16によって接合され、且つ、ステータ12とハウジング14との間の隙間30から油や水が電動機10の内部に浸入することが防止される。
【0024】
電動機10は、ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、そのハウジング14の貫通孔24に配置されたシャフト18との間の隙間をシールするシール部材32をさらに備える。これにより、ステータ12の一方の端12a側からハウジング14内に水や油が浸入することを防止できる。シール部材32は、Oリングであってもよい。
【0025】
なお、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14にはエンコーダが取り付けられ、このエンコーダによりステータ12の一方の端12a側からハウジング14内に水や油が浸入することが防止される。このため、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14と、そのハウジング14の貫通孔24に配置されたシャフト18との間の隙間はシール部材32でシールされていなくてもよい。
【0026】
次に、
図3~
図5を用いて、電動機10の製造方法について説明する。
図3は実施の形態の電動機10の製造方法の一部が示されたフローチャートであり、
図4は実施の形態の電動機10の製造中の様子(1)であり、
図5は実施の形態の電動機10の製造中の様子(2)である。
【0027】
なお、前提として、ハウジング14を成形する作業、および、ステータ12にコイル22を設ける作業は、予め済んでいることとする。
【0028】
まず、ハウジング14をステータ12に取り付ける(取り付け工程S1)。本実施の形態では、
図4に示すように、軸方向でのステータ12の両端12a、12b側にハウジング14を取り付ける。これにより、ステータ12の両端12a、12b側を、コイルエンド22aごとハウジング14によって覆う。
【0029】
取り付け工程S1が完了することにより、ステータ12と、ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14と、で囲われた空間34が形成される。空間34は、ステータ12とハウジング14との間の隙間30(
図2)、および、ハウジング14に形成された貫通孔24を介して、外部と連通している。
【0030】
次に、ステータ12とハウジング14とを含浸剤16に浸漬する(浸漬工程S2)。本工程では、含浸剤16は、ステータ12とハウジング14との間の隙間30、および、ハウジング14に形成された貫通孔24を介して、空間34に入り込む。これにより、含浸剤16はコイル22に到達し、コイル22の線間に含浸する。
【0031】
次に、浸漬したステータ12とハウジング14とを含浸剤16から取り出し、余分な含浸剤16を軸方向に沿って流して除去する(除去工程S3)。「余分な含浸剤16」とは、ステータ12とハウジング14との間の隙間30に含浸した含浸剤16と、コイル22の線間に含浸した含浸剤16と、を除いて、ステータ12およびハウジング14に残留する含浸剤16のことを指す。
【0032】
本工程では、含浸剤16の中からステータ12とハウジング14とが引き揚げられる。その後、ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14が重力方向で下に位置する状態で、ステータ12とハウジング14とが配置され、その配置状態が所定の期間を経過するまで放置される。
【0033】
これにより、余分な含浸剤16は、重力に従って、下に位置するハウジング14の外側表面14bの側面14bSおよびそのハウジング14の貫通孔24の壁面を流れ、当該ハウジング14から落ちる。このとき、ハウジング14の外側表面14bの端面14bEに第1突起26および第2突起28が設けられていることで、含浸剤16の除去が促される。すなわち、第1突起26および第2突起28によって含浸剤16がハウジング14の端面14bEに流れ出ることが抑制され、この結果、含浸剤16が粒状や柱状などの形状で端面14bEに残留することを抑制することができる。
【0034】
なお、第1突起26および第2突起28が軸方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されている場合、当該先端が平らである場合に比べて、含浸剤16を落とし易い。つまり、余分な含浸剤16の除去が促される。したがって、端面14bEに含浸剤16が残留することをより一段と低減することができる。
【0035】
一方、
図5に示すように、ステータ12とハウジング14との間の隙間30に含浸した含浸剤16は、隙間30において含浸剤16に作用する表面張力、あるいは含浸剤16自体の粘性によって、隙間30から抜け落ちることなく残留する。同様に、コイル22の線間に含浸した含浸剤16は、コイル22の線間において含浸剤16に作用する表面張力、あるいは含浸剤16自体の粘性によって、コイル22の線間から抜け落ちることなく残留する。
【0036】
次に、ステータ12とハウジング14との間の隙間30に含浸した含浸剤16を硬化させる(硬化工程S4)。含浸剤16を硬化させることにより、ステータ12とハウジング14との間の隙間30から油や水が空間34に浸入することが防止される。なお、含浸剤16を加熱することで硬化させてもよい。
【0037】
なお、除去工程S3では、ハウジング14の外側表面14bの端面14bEに設けられた第1突起26および第2突起28によってハウジング14の端面14bEに対する含浸剤16の流出が抑制される。このため、硬化工程S4では、ハウジング14の端面14bEにおいて含浸剤16が硬化することが抑制される。したがって、ハウジング14の端面14bEで硬化した含浸剤16を研磨する工程を省くことができる。
【0038】
次に、ステータ12に対してロータ20を装着する(ロータ装着工程S5)。本工程では、ハウジング14の貫通孔24を介して、ステータ12に囲まれる所定位置にロータ20が配置され、配置されたロータ20がステータ12に対して装着される。ロータ20の装着によって、ステータ12の一方の端12a側を覆うハウジング14と、ステータ12の他方の端12b側を覆うハウジング14との各々の貫通孔24にシャフト18が配置された状態になる。
【0039】
次に、貫通孔24に配置されたシャフト18とハウジング14との間の隙間をシール部材32でシールする(シール工程S6)。これにより、ハウジング14の空間34に水や油が浸入することを防止できる。
【0040】
以上の製造方法により、
図2の構成が得られる。本実施の形態は、ハウジング14の外側表面14bの端面14bEに第1突起26および第2突起28が設けられたハウジング14をステータ12に取り付けた。これにより、余分な含浸剤16を軸方向に沿って流して除去する際に含浸剤16がハウジング14の端面14bEに流れ出ることが抑制される。その結果、ハウジング14の端面14bEで含浸剤16が硬化することが抑制される。
【0041】
とくに、第1突起26および第2突起28が、軸方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されている場合には、余分な含浸剤16の除去が促される。
【0042】
このように、上記の製造方法によれば、含浸剤16がハウジング14の端面14bEに流れ出て硬化することが低減された電動機10を製造することができる。
【0043】
[変形例]
以上、本発明の一例として実施の形態が説明されたが、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることはもちろんである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0044】
(変形例1)
図6は、変形例1の電動機10の断面図である。変形例1では、ハウジング14の端面14bEに溝14Gを形成することにより設けられた第1突起26に対し、ハウジング14の端面14bEよりも突出する突出部26Aが設けられる。また、ハウジング14の端面14bEに溝14Gを形成することにより設けられた第2突起28に対し、ハウジング14の端面14bEよりも突出する突出部28Aが設けられる。これにより、含浸剤16がハウジング14の端面14bEに流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0045】
(変形例2)
図7は、変形例2の電動機10の断面図である。変形例2では、ハウジング14の端面14bEに溝14Gを形成することにより設けられた第1突起26に代えて、第1突起36がハウジング14の端面14bEに設けられる。また、変形例2では、ハウジング14の端面14bEに溝14Gを形成することにより設けられた第2突起28に代えて、第2突起38がハウジング14の端面14bEに設けられる。
【0046】
第1突起36は、実施の形態と同様に、貫通孔24の開口に沿ってその開口の全周を囲う。第2突起38は、実施の形態と同様に、ハウジング14の端面14bEの縁に沿ってその端面14bEの縁の全周を囲う。
【0047】
一方、第1突起36および第2突起38の各々は、ハウジング14の端面14bEよりも軸方向に突出する点で、実施の形態の第1突起26および第2突起28と異なる。これにより、実施の形態の第1突起26および第2突起28の場合に比べて、含浸剤16がハウジング14の端面14bEに流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0048】
なお、第1突起36および第2突起38の各々は、実施の形態の第1突起26および第2突起28と同様に、軸方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されてもよい。
【0049】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0050】
<第1の発明>
第1の発明は、電動機(10)であって、
コイル(22)が設けられたステータ(12)と、
ステータ(12)に囲まれ、シャフト(18)が取り付けられたロータ(20)と、
コイル(22)を覆うようにステータ(12)に取り付けられ、シャフト(18)が配置される貫通孔(24)を有するハウジング(14)と、
コイル(22)に含浸した含浸剤(16)と、
を備え、
シャフト(18)が延びる方向でのハウジング(14)の外側表面(14b)には、貫通孔(24)の開口に沿って貫通孔(24)の開口の全周を囲う第1突起(26、36)と、ハウジング(14)の端面(14bE)の縁に沿って端面(14bE)の縁の全周を囲う第2突起(28、38)とが設けられる。
【0051】
これにより、含浸剤(16)がハウジング(14)の端面(14bE)に流れ出て硬化することが低減された電動機(10)が提供される。
すなわち、ハウジング(14)の端面(14bE)に設けられた第1突起(26、36)および第2突起(28、38)によって、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることを抑制できる。このため、ハウジング(14)の端面(14bE)に含浸剤(16)が流れ出て硬化することが抑制される。
【0052】
ハウジング(14)は、シャフト(18)が延びる方向でのステータ(12)の両端(12a、12b)側を覆っており、第1突起(26、36)および第2突起(28、38)は、エンコーダが設けられる側とは逆側を覆うハウジング(14)に設けられてもよい。これにより、ステータ(12)の両端(12a、12b)側を覆うハウジング(14)の各々に第1突起(26、36)および第2突起(28、38)が設けられる場合に比べて、部品点数を抑えることができる。
【0053】
第1突起(26)および第2突起(28)の各々は、ハウジング(14)の端面(14bE)よりも陥入する溝(14G)を形成することで設けられてもよい。これにより、台などにハウジング(14)の端面(14bE)側を向けてハウジング(14)を置いたときに第1突起(26)または第2突起(28)が破損することを抑制することができる。
【0054】
第1突起(26)および第2突起(28)の各々には、ハウジング(14)の端面(14bE)よりも突出する突出部(26A、28A)が設けられてもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0055】
第1突起(36)および第2突起(38)の各々は、ハウジング(14)の端面(14bE)よりもシャフト(18)が延びる方向に突出してもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0056】
第1突起(26、36)および第2突起(28、38)の各々は、シャフト(18)が延びる方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されてもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に、当該先端が平らである場合に比べて含浸剤(16)を落とし易い。つまり、余分な含浸剤(16)の除去が促される。
【0057】
<第2の発明>
第2の発明は、電動機(10)の製造方法であって、
シャフト(18)が取り付けられたロータ(20)を挿通可能な貫通孔(24)を有するハウジング(14)を、コイル(22)が設けられたステータ(12)に取り付ける取り付け工程と、
取り付け工程の後、ステータ(12)とハウジング(14)とを含浸剤(16)に浸漬する浸漬工程と、
浸漬工程の後、浸漬したステータ(12)とハウジング(14)とを含浸剤(16)から取り出し、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する除去工程と、
除去工程の後、コイル(22)に含浸した含浸剤(16)を硬化させる硬化工程と、
を含み、
余分な含浸剤(16)が流れる側のハウジング(14)の外側表面(14b)には、貫通孔(24)の開口に沿って貫通孔(24)の開口の全周を囲う第1突起(26、36)と、ハウジング(14)の端面(14bE)の縁に沿って端面(14bE)の縁の全周を囲う第2突起(28、38)とが設けられる。
【0058】
これにより、含浸剤(16)がハウジング(14)の端面(14bE)に流れ出て硬化することが低減された電動機(10)の製造方法が提供される。
すなわち、ハウジング(14)の端面(14bE)に設けられた第1突起(26、36)および第2突起(28、38)によって、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることを抑制できる。このため、ハウジング(14)の端面(14bE)に含浸剤(16)が流れ出て硬化することが抑制される。
【0059】
ハウジング(14)は、シャフト(18)が延びる方向でのステータ(12)の両端(12a、12b)側を覆っており、第1突起(26、36)および第2突起(28、38)は、エンコーダが設けられる側とは逆側を覆うハウジング(14)に設けられてもよい。これにより、ステータ(12)の両端(12a、12b)側を覆うハウジング(14)の各々に第1突起(26、36)および第2突起(28、38)が設けられる場合に比べて、部品点数を抑えることができる。
【0060】
第1突起(26)および第2突起(28)の各々は、ハウジング(14)の端面(14bE)よりも陥入する溝(14G)を形成することで設けられてもよい。これにより、台などにハウジング(14)の端面(14bE)側を向けてハウジング(14)を置いたときに第1突起(26)または第2突起(28)が破損することを抑制することができる。
【0061】
第1突起(26)および第2突起(28)の各々には、ハウジング(14)の端面(14bE)よりも突出する突出部(26A、28A)が設けられてもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0062】
第1突起(36)および第2突起(38)の各々は、ハウジング(14)の端面(14bE)よりもシャフト(18)が延びる方向に突出してもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に余分な含浸剤(16)が端面(14bE)に流れ出ることをより一層抑制することができる。
【0063】
第1突起(26、36)および第2突起(28、38)の各々は、シャフト(18)が延びる方向に沿った断面において先端から鋭角となるように形成されてもよい。これにより、余分な含浸剤(16)をシャフト(18)が延びる方向に沿って流して除去する際に、当該先端が平らである場合に比べて含浸剤(16)を落とし易い。つまり、余分な含浸剤(16)の除去が促される。
【符号の説明】
【0064】
10…電動機 12…ステータ
12a…一方の端 12b…他方の端
14…ハウジング 14a…内側表面
14b…外側表面 14bE…端面
16…含浸剤 18…シャフト(回転軸)
20…ロータ 22…コイル
24…貫通孔 26、36…第1突起
26A、28A…突出部 28、38…第2突起