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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】熱電併給システム
(51)【国際特許分類】
   F02G 5/04 20060101AFI20230808BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20230808BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20230808BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
F02G5/04 H
F01K23/10 Z
F01K25/10 C
F01K25/10 F
F01K27/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019174287
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021050664
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】河合 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨田 敦史
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-076383(JP,A)
【文献】特開2007-127060(JP,A)
【文献】特開2010-174845(JP,A)
【文献】特開平04-237807(JP,A)
【文献】特開昭55-019985(JP,A)
【文献】特開昭61-149507(JP,A)
【文献】特開昭60-222510(JP,A)
【文献】特開昭63-003298(JP,A)
【文献】特開2001-141286(JP,A)
【文献】特公昭45-014204(JP,B1)
【文献】特開2013-217342(JP,A)
【文献】特開2013-213658(JP,A)
【文献】特開平05-240004(JP,A)
【文献】特開2002-129980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 5/04
F01K 23/10
F01K 25/10
F01K 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用のタービンと、
再生器と、
凝縮器と、
加熱器と、
熱交換器とを備え、
前記発電用のタービンから出る有機媒体の作動媒体は、前記再生器、前記凝縮器、前記再生器、前記熱交換器、前記タービンの順に循環し、
前記加熱器は、汚泥焼却炉の排ガスを処理する排煙処理塔から出る洗煙排水と、冷却水とを熱交換し、加熱された冷却水を前記凝縮器に供給し、
前記凝縮器は、前記作動媒体と前記加熱器から出る前記冷却水とを熱交換し、
前記熱交換器は、前記洗煙排水よりも高温の、前記汚泥焼却炉の排熱と、前記再生器から出る前記作動媒体とを熱交換する
熱電併給システム。
【請求項2】
前記加熱器に供給する前記冷却水の流量を制御する制御器と、
前記凝縮器から他のシステムに供給される冷却水の温度を測定する測定器とを備え、
前記制御器は、前記計測器の測定結果に基づき、前記冷却水の流量を制御して前記凝縮器から前記他のシステムに供給される冷却水の温度を制御する、請求項1に記載の熱電併給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電併給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle)の発電システム(以下、ORCシステムと適宜記す)における作動媒体を、汚泥焼却システムから得られる2つの熱源で加熱する、発電システムが本発明者により提案されている(特許文献1参照)。また、ORCシステムから回収した熱(回収熱)を他の用途に利用する熱電併給システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5271100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、熱電併給システムにおいて、回収する温水の熱量を増加させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱電併給システムは、発電用のタービンと、再生器と、凝縮器と、加熱器と、熱交換器とを備え、前記発電用のタービンから出る有機媒体の作動媒体は、前記再生器、前記凝縮器、前記再生器、前記熱交換器、前記タービンの順に循環し、前記加熱器は、汚泥焼却炉の排ガスを処理する排煙処理塔から出る洗煙排水と、冷却水とを熱交換し、加熱された冷却水を前記凝縮器に供給し、前記凝縮器は、前記作動媒体と前記加熱器から出る前記冷却水とを熱交換し、前記熱交換器は、前記洗煙排水よりも高温の、前記汚泥焼却炉の排熱と、前記再生器から出る前記作動媒体とを熱交換する熱電併給システムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱電併給システムにおいて、回収する温水の熱量を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態における熱電併給システムを示す説明図である。
図2】冷却水の流量制御を示す説明図である。
図3】作動媒体としてオクタメチルトリシロキサン(MDM)を用いた実施例を示す説明図である。
図4】1熱源熱電併給システムにおいて、作動媒体としてオクタメチルトリシロキサンを用いた比較例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施の形態における熱電併給システムの説明図である。本実施の形態における熱電併給システムは、排煙処理塔12から出る洗煙排水(低温熱源)の保有熱量を冷却水に与えること、すなわち冷却水を予熱することで、回収する温水の熱量を増やす。
【0009】
最初に、汚泥処理システムの概要について説明する。汚泥処理システムは、低温熱源、高温熱源を熱電併給システムに供給する。汚泥処理システムは、汚泥焼却炉(図示しない)、熱媒ヒータ10、集塵機11、排煙処理塔12を備える。
【0010】
熱媒ヒータ10は、高温熱源である汚泥焼却炉の排ガスと、熱媒とを熱交換する。焼却排ガスは集塵機11に供給される。また、熱媒は、後記する熱電併給システム20の熱交換器25に高温熱源として供給される。汚泥焼却炉は、例えば下水脱水汚泥を焼却する流動焼却炉である。その焼却排ガスは850℃前後の高温であるが、流動用空気加熱器などの様々な熱交換器を通過する間に冷却され、500~700℃程度の温度で熱媒ヒータ10に供給される。
【0011】
熱媒は、例えば油または空気である。本実施形態では熱媒ヒータ10で約300℃に加熱された熱媒油が熱媒供給管を通じて循環供給されている。熱媒の温度は200~500℃である。実施形態においては、熱媒油を使用した場合には耐熱温度を考慮して熱媒油の温度は最大340℃、空気の場合には最大500℃である。
【0012】
集塵機11は、熱媒ヒータ10の後段に配置され、熱媒ヒータ10から供給される焼却排ガスからダストを除去する。しかし排ガス中には除去できないSOx等や微細なダストが含まれているため、排ガスは排煙処理塔12に供給される。
【0013】
排煙処理塔12は、塔体の下部に供給される排ガスと、塔の上方のノズル13からスプレイされる洗浄水とを接触させて洗煙する。塔内下部には排ガスとの接触により60~75℃に加熱された洗煙排水が溜まる。排煙処理塔12を通過した排ガスは排煙処理塔12の上端から排出される。排煙処理塔12の洗煙排水は、後記する熱電併給システム20の加熱器26に低温熱源として供給される。
【0014】
次に、熱電併給システム20について説明する。図1の右側の破線で囲んだ部分に熱電併給システム20の構成を示す。熱電併給システム20は、発電用のタービン21、再生器22、凝縮器23、ポンプ24、熱交換器25、加熱器26を備える。発電用のタービン21、再生器22、凝縮器23、ポンプ24、熱交換器25により有機ランキンサイクルが構成される。有機ランキンサイクルにおいて、タービン21から出る作動媒体は、再生器22、凝縮器23、ポンプ24、再生器22、熱交換器25、タービン21の順に循環する。
【0015】
有機ランキンサイクルの作動媒体について説明する。タービン21から出る気体状態の作動媒体は、再生器22を通り、凝縮器23で冷却水により冷却されて液化し、液化された作動媒体は、ポンプ24で加圧されて、再生器22に供給される。更に、作動媒体は、再生器22から熱交換器25に供給される。そして、作動媒体は、熱交換器25で加熱されて高温高圧の気体となりタービン21の入側に供給される。
なお、作動媒体として、有機媒体、具体的には、シクロペンタン、MM(ヘキサメチルジシロキサン)、MDM(オクタメチルトリシロキサン)を使用することができる。他にも、アンモニア等の各種作動媒体を使用することができる。
【0016】
加熱器26は、排煙処理塔12からの洗煙排水と、外部から供給される冷却水とを熱交換する。加熱された冷却水は凝縮器23に供給される。なお、加熱器26は、洗煙排水を排煙処理塔12に戻す。
【0017】
凝縮器23は、作動媒体と加熱器26から出る冷却水とを熱交換する。作動媒体はポンプ24により加圧されて再生器22に供給される。作動媒体により加熱された冷却水は他のシステムに供給される。凝縮器23から供給される冷却水(温水)は、洗煙排水の温度よりも高温の温水である。温水は、他のシステム、例えば汚泥の消化システムに供給される。なお、この実施形態では図1に示すように洗煙排水を循環させているが、洗煙排水はワンパスで系外に放出してもよい。
【0018】
図2は、冷却水の流量制御を示す説明図である。図2では、冷却水の流量を制御して温水の温度を制御する処理について説明する。
制御器31は、測定器32の測定結果、測定器33の測定結果の少なくとも1つの測定結果に基づき弁34の開閉を制御し、加熱器26に供給する冷却水の流量を制御する。なお、図2における点線はいわゆる電気的信号を模式的に示す。
測定器32は、凝縮器23から供給される温水の温度を測定し測定結果を制御器31に出力する。測定器33は、排煙処理塔12から供給される洗煙排水の温度を測定し測定結果を制御器31に出力する。
弁34は、制御器31の制御に基づき、加熱器26に入る冷却水の流量を制御する。
【0019】
制御器31は、測定器32の測定温度(温水の温度)が所定の温度(例えば、87℃)より大きくなると弁34の弁開度を調整し冷却水の流量を増やして、温水の温度を下げる。一方、制御器31は、測定器32の測定温度が所定の温度より小さくなると弁34の弁開度を調整し冷却水の流量を減らして、温水の温度を上げる。
【0020】
また、制御器31は、洗煙排水の温度に基づき、弁34の開閉を制御しても良い。例えば、制御器31は、測定器33の測定温度(洗煙排水の温度)が所定の温度(例えば、72℃)より大きくなると弁34の弁開度を調整し冷却水の流量を増やして、温水の温度を下げる。一方、制御器31は、測定器33の測定温度が所定の温度より小さくなると弁34の弁開度を調整し冷却水の流量を減らして、温水の温度を上げる。
【0021】
上記のように冷却水の流量を制御することで、他のシステムに供給される温水の温度を制御することができる。
【0022】
なお、熱交換器25を複数の機器、例えば過熱器、蒸発器、予熱器と分けても良い。この場合、蒸発器の前段に予熱器が配置され、後段に過熱器が配置される。そして熱媒ヒータ10から供給される熱媒が、過熱器、蒸発器、予熱器の順でこれらの内部を通過し、作動媒体を加熱蒸発させている。作動媒体は、予熱器、蒸発器、過熱器の順でこれらの内部を通過し、タービン21に供給される。このように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、各機器の間に更に機器を追加しても良い。更に、複数の機器を1つの機器としてまとめたり、1つの機器を複数の機器に分けても良い。
【実施例
【0023】
図3は、作動媒体としてオクタメチルトリシロキサン(MDM)を用いた場合の熱電併給システム20の実施例である。なお、図3で説明する温度、圧力、流量、熱量等のデータは一例である。
【0024】
熱交換器25から気体状態の作動媒体がタービン21に供給される。気体状態の作動媒体は、タービン21を回転させつつタービン翼列の間を通過する間に断熱膨張し、低圧気体となる。タービン21より123kWの発電量が得られる。タービン21から低圧気体の作動媒体が再生器22に供給される。
【0025】
再生器22は、タービン21から出た気体状態の作動媒体と、ポンプ24を介して凝縮器23から供給される液体状態の作動媒体とを熱交換する。タービン21から出た気体状態の作動媒体は再生器22から凝縮器23に供給される。ポンプ24を介して凝縮器23から供給された作動媒体は再生器22から熱交換器25に供給される。再生器22から凝縮器23に供給される気体状態の作動媒体の熱量は237kW、温度は107℃、圧力は0.01MPaである。
【0026】
加熱器26は、入口温度が72℃の洗煙排水と入口温度が22℃の冷却水とを熱交換し、冷却水の温度を35℃に上昇させる。温度が上昇した冷却水は凝縮器23に供給される。出口温度が69℃の洗煙排水は加熱器26から排煙処理塔12に戻される。
【0027】
凝縮器23は、再生器22から出た気体状態の作動媒体と、加熱器26により温度が上昇した冷却水(入口温度が35℃)とを熱交換して、冷却水の温度を87℃に更に上昇させる。温度が上昇した冷却水(温水)は外部システムに供給される。このときの冷却水の流量は、10.5m/hであり、後記するように、冷却水を洗煙排水で加熱しない場合に比べて、冷却水の流量が多くなる。
【0028】
凝縮器23から液体状態の作動媒体がポンプ24に供給される。液体状態の作動媒体の熱量は-399kW、温度は87.1℃、圧力は0.01MPaである。
【0029】
ポンプ24は、作動媒体を加圧して再生器22に供給する。加圧された作動媒体の温度は171℃、圧力は0.6MPaである。作動媒体は再生器22から熱交換器25に供給される。
【0030】
熱交換器25は、熱媒ヒータ10(図1参照)から供給される熱媒と再生器22から供給される作動媒体とを熱交換する。熱交換器25から気体状態の作動媒体がタービン21に供給される。気体状態の作動媒体の熱量は895kW、流量は10,850kg/h、温度は239℃、圧力は0.6MPaである。
【0031】
以上、説明したように実施例1によれば、流量が10.5mの冷却水の温度を22℃から、洗煙排水の温度72℃よりも高い87℃に上昇させることができる。
【0032】
(第1の比較例)
以下、図4、表1を参照して、本実施の形態の熱電併給システムと、加熱器26を備えない、有機ランキンサイクルの熱電併給システム(以下、1熱源熱電併給システムと適宜記す)との温水熱量の回収量の相違を説明する。
【0033】
図4は、1熱源熱電併給システムにおいて、作動媒体としてオクタメチルトリシロキサンを用いた比較例を示す説明図である。表1は、本実施の形態の熱電併給システムと1熱源熱電併給システムとの対比表である。なお、対比表に記載した、冷却水の入口温度とは、凝縮器23sに入る冷却水の温度であり、冷却水の出口温度とは、凝縮器23sから出る冷却水の温度である。
【0034】
【表1】
【0035】
図4に示すように、1熱源熱電併給システムの有機ランキンサイクルの各機器の接続関係と、本実施の形態の熱電併給システムの有機ランキンサイクルの接続関係とは同様である。また、表1、図3図4に示すように、本実施の形態の熱電併給システム、1熱源熱電併給システムにおける、作動媒体の種類、高温熱源の熱量、作動媒体循環量、発電量、冷却水出口温度の各データは、同じ値である。
【0036】
図4の1熱源配電システムでは、出口温度が87℃の冷却水を生成するために、冷却水の流量を8.4m/hに制御している。その結果、冷却水(温水)の回収熱量が653kwになる。
これに対して、本実施の形態の熱電併給システムでは、出口温度が87℃の冷却水(温水)を生成するために、冷却水の流量を10.5m/hに制御している。その結果、温水の回収熱量が816kWに増えている。なお、図2で説明した制御器31が、この冷却水の流量制御を行う。
【0037】
すなわち、本実施の形態によれば、温水の出口温度を1熱源配電システムにおける温水の出口温度と同じ温度にしても、冷却水の流量を増やすことができる、すなわち、回収する温水の熱量を増やすことができる。前記の例では、本実施の形態の熱電併給システムの回収熱量は、1熱源配電システムの回収熱量に比べて25%増加している。このように、本実施の形態によれば、洗煙排水を有効活用して、温水の回収熱量を増やすことができる。
【0038】
(第2の比較例)
以下、表2を参照して、第2の比較例について説明する。第2の比較例では、本実施の形態の熱電併給システムにおいて、温水回収量を第1の比較例の温水回収熱量と同値にした場合の、冷却水入口温度、冷却水量を示している。表2に示したように、第2の比較例では、第1の比較例の場合に比べて、冷却水の流量を8.9m/hに低下させて、冷却水の入口温度及び出口温度を上昇させている。このように冷却水の流量を制御することで、冷却水の入口温度及び出口温度を制御することができる。なお、図2で説明した制御器31が、この冷却水の流量制御を行う。
【0039】
【表2】
【符号の説明】
【0040】
10…熱媒ヒータ、11…集塵機、12…排煙処理塔、13…ノズル、20…熱電併給システム、21…発電用のタービン、22…再生器、23…凝縮器、24…ポンプ、25…、熱交換器、26…加熱器、31…制御器、32,33…測定器、34…弁
図1
図2
図3
図4