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特許7328108電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/008 20060101AFI20230808BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20230808BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/048 Z
H01G9/00 290Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019182222
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021057551
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】中山 誠
(72)【発明者】
【氏名】前田 正史
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-075791(JP,A)
【文献】特開2010-147336(JP,A)
【文献】特開平02-277217(JP,A)
【文献】特開昭54-121958(JP,A)
【文献】実公昭35-028652(JP,Y1)
【文献】実開昭58-187134(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/008
H01G 9/048
H01G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びた電極箔と、
前記電極箔の厚み方向の一方側の面に配置され、前記電極箔から、前記第1方向および前記厚み方向のいずれとも直交する第2方向に引き出されたリードと、を備え、
前記厚み方向に前記電極箔を貫通して突出した前記リードのバリが、前記電極箔の前記厚み方向の他方側の面に圧接されることで、前記リードと前記バリとで前記電極箔が挟み込まれて、前記電極箔と前記リードとが接続され、
前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の端と、前記電極箔と前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の端部側の端縁領域に貫通孔を備え
前記電極箔の前記端縁領域以外の領域には、前記リードと前記バリとで挟み込まれた領域に貫通形成されたカシメ孔を除き、前記電極箔を貫通する孔が形成されていないことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
前記貫通孔が、円形または楕円形であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記貫通孔が、前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の両端の各々と、前記電極箔と前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の両端部側にそれぞれ備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記貫通孔が、前記電極箔の前記リードとの接続部分から前記第1方向にずれた部分に備えられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記貫通孔が、前記電極箔の前記リードとの接続部分の前記第1方向における両側に位置する部分に、それぞれ備えられていることを特徴とする請求項4に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
前記貫通孔が、前記電極箔と前記リードが重なる位置から離れた位置に備えられていることを特徴とする請求項4または5に記載の電解コンデンサ。
【請求項7】
前記貫通孔の径が前記カシメ孔の径よりも小さいことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の電解コンデンサ。
【請求項8】
第1方向に延びた電極箔と、
前記電極箔の厚み方向における一方側の面に配置され、前記電極箔から前記第1方向および前記厚み方向のいずれとも直交する第2方向に引き出されたリードと、を備えた電解コンデンサの製造方法であって、
前記リードを前記電極箔の前記厚み方向の一方側の面に配置し、前記電極箔および前記リードに、前記厚み方向における前記一方側からカシメ針を挿通することで、前記リードに前記厚み方向に前記電極箔を貫通するバリを形成するバリ形成工程と、
前記バリを電極箔の前記厚み方向の他方側の面に圧接することによって、前記リードと前記バリとで前記電極箔を挟み込んで、前記電極箔と前記リードとを接続する圧接工程と、を備え、
さらに、
前記圧接工程よりも前に、前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の端部側の端縁領域に貫通孔を形成する貫通孔形成工程、を備え
前記電極箔の前記端縁領域以外の領域には、前記リードと前記バリとで挟み込まれた領域に貫通形成されたカシメ孔を除き、前記電極箔を貫通する孔を形成しないことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、電解コンデンサを構成する電極箔とリードとを接続するために、電極箔の厚み方向の一方側の面にリードを配置し、厚み方向の一方側から、カシメ針を突き刺して、リードに電極箔を厚み方向に貫通するバリを形成する。その後、カシメ針を抜くとともに、突き上げピンにより厚み方向の他方側からバリを圧接する。これにより、リードと圧接されたバリとによって電極箔が挟み込まれ、電極箔とリードとが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-106203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載されているようにして電極箔とリードとを接続する場合、バリを圧接したときに、バリに圧縮応力による歪みが生じ、この圧縮応力による歪みが電極箔に伝わって、電極箔の端部にクラックが生じてしまうことがある。電極箔にクラックが生じると、電極箔とリードとの接合強度が低下し、最悪の場合、電極箔とリードとの導通が完全に切断されてしまう(オープンになってしまう)。
【0005】
また、特許文献1に記載されているような電解コンデンサの電極箔の表面には、通常、酸化アルミニウム(Al23)の酸化皮膜(誘電体皮膜)が形成されている。ここで、酸化皮膜の厚みが大きいほど、電解コンデンサの耐電圧が高くなり、酸化皮膜の表面積が大きいほど電解コンデンサの静電容量が大きくなる。そのため、電解コンデンサの性能向上のために、電極箔の表面に形成する酸化皮膜の厚みや表面積を大きくすることがある。一方、酸化アルミニウムは、硬く脆い特性を有するものである。そのため、酸化皮膜の厚みや表面積を大きくした電極箔においては、上述したようにして電極箔とリードとを接合すると、電極箔にクラックが特に生じやすい。
【0006】
本発明の目的は、電極箔とリードとの接続時に電極箔にクラックが生じにくい電解コンデンサおよび電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る電解コンデンサは、第1方向に延びた電極箔と、前記電極箔の厚み方向の一方側の面に配置され、前記電極箔から、前記第1方向および前記厚み方向のいずれとも直交する第2方向に引き出されたリードと、を備え、前記厚み方向に前記電極箔を貫通して突出した前記リードのバリが、前記電極箔の前記厚み方向の他方側の面に圧接されることで、前記リードと前記バリとで前記電極箔が挟み込まれて、前記電極箔と前記リードとが接続され、前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の端と、前記電極箔と前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の端部側に貫通孔を備えている。
【0008】
本発明によると、バリの圧接時にバリに生じて電極箔に伝わった圧縮応力による歪みが、貫通孔において吸収される。これにより、電極箔の第2方向の端部にクラックを生じにくくすることができる。
【0009】
第2の発明に係る電解コンデンサは、第1の発明に係る電解コンデンサであって、前記貫通孔が、円形または楕円形である。特に、貫通孔が円形であることが好ましい。
【0010】
電極箔に楕円形の貫通孔を形成する場合、貫通孔による圧縮応力の吸収性能は、主に、楕円の短軸方向の長さによって決まる。これに対して、貫通孔を上記楕円の短軸方向の長さと同じ直径の円形とすれば、貫通孔を楕円形とする場合と同等の圧縮応力の吸収性能を確保しつつも、貫通孔を楕円形とする場合よりも貫通孔を小さくすることができる。そして、貫通孔を小さくできることにより、電極箔の貫通孔が形成されていない部分の面積を極力大きくして、電解コンデンサの静電容量を確保することができる。
【0011】
第3の発明に係る電解コンデンサは、第1または第2の発明に係る電解コンデンサであって、前記貫通孔が、前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の両端の各々と、前記電極箔と前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の両端部側にそれぞれ備えられている。
【0012】
本発明によると、電極箔の第2方向の両端部のいずれにおいてもクラックを生じにくくすることができる。
【0013】
第4の発明に係る電解コンデンサは、第1~第3のいずれかの発明に係る電解コンデンサであって、前記貫通孔が、前記電極箔の前記リードとの接続部分から前記第1方向にずれた部分に備えられている。
【0014】
電極箔とリードとの接続部分で発生した圧縮応力による歪みは、電極箔を放射線状に伝播し、電極箔のリードとの接続部分に近い部分ほど圧縮応力による歪みが大きくなる。そのため、貫通孔と、電極箔とリードとの接続部分との距離が短いと、電極箔の貫通孔が形成された部分における圧縮応力による歪みが大きく、圧縮応力による歪みを貫通孔で十分に吸収できないことがある。本発明では、貫通孔が、電極箔のリードとの接続部分から第1方向にずれた部分に備えられている。これにより、貫通孔が、電極箔のリードとの接続部分と第1方向の位置が同じとなる部分に備えられている場合と比較して、貫通孔と、電極箔とリードとの接続部分との距離を長くすることができる。これにより、上記圧縮応力による歪みを、貫通孔において十分に吸収することができる。
【0015】
第5の発明に係る電解コンデンサは、第4の発明に係る電解コンデンサであって、前記貫通孔が、前記電極箔の前記リードとの接続部分の前記第1方向における両側に位置する部分に、それぞれ備えられている。
【0016】
本発明によると、電極箔のリードとの接続部分の、第1方向における両側に位置する部分を伝わる圧縮応力による歪みを、貫通孔によって吸収することができる。
【0017】
第6の発明に係る電解コンデンサは、第4又は第5の発明に係る電解コンデンサであって、前記貫通孔が、前記電極箔と前記リードが重なる位置から離れた位置に備えられている。
【0018】
本発明では、貫通孔が、電極箔とリードとが重なる位置から離れた部分に備えられている。これにより、貫通孔が、電極箔とリードとが重なる部分に備えられている場合と比較して、貫通孔と、電極箔とリードとの接続部分との距離を長くすることができる。これにより、上記圧縮応力による歪みを、貫通孔において十分に吸収することができる。
【0019】
第7の発明に係る電解コンデンサの製造方法は、第1方向に延びた電極箔と、前記電極箔の厚み方向における一方側の面に配置され、前記電極箔から前記第1方向および前記厚み方向のいずれとも直交する第2方向に引き出されたリードと、を備えた電解コンデンサの製造方法であって、前記リードを前記電極箔の前記厚み方向の一方側の面に配置し、前記電極箔および前記リードに、前記厚み方向における前記一方側からカシメ針を挿通することで、前記リードに前記厚み方向に前記電極箔を貫通するバリを形成するバリ形成工程と、前記バリを電極箔の前記厚み方向の他方側の面に圧接することによって、前記リードと前記バリとで前記電極箔を挟み込んで、前記電極箔と前記リードとを接続する圧接工程と、を備え、さらに、前記圧接工程よりも前に、前記電極箔の前記第2方向において、前記電極箔の前記リードとの接続部分との間に位置する部分に対して、前記電極箔の端部側に貫通孔を形成する貫通孔形成工程、を備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電極箔とリードとの接続時に、電極箔の端部にクラックを生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における電解コンデンサの外観を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態における電解コンデンサの構成部品を示す分解図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンデンサ素子の構成部品を示す説明図である。
図4】(a)は電極箔とリードとの接続を示す図であり、(b)は(a)のIVB-IVB線断面図である。
図5】(a)は電極箔に貫通孔を形成する工程を示す図であり、(b)は電極箔とリードとの積層体をプレス装置にセットする工程を示す図であり、(c)はバリを形成する工程を示す図であり、(d)はバリを圧接する工程を示す図である。
図6】(a)は実施例1に係る電極箔とリードとの接合体を示す図であり、(b)は比較例1に係る電極箔とリードとの接合体を示す図である。
図7】(a)は実施例2に係る解析モデルを示す図であり、(b)は実施例3に係る解析モデルを示す図であり、(c)は実施例4に係る解析モデルを示す図であり、(d)は実施例5に係る解析モデルを示す図であり、(e)は比較例2に係る解析モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0023】
<電解コンデンサの構成>
図1は、本発明の実施形態における電解コンデンサ1の外観を示す正面図、図2は、本発明の実施形態における電解コンデンサ1の構成部品を示す分解図である。図2に示すように、本実施形態の電解コンデンサ1は、コンデンサ素子2と、ケース3aと、封口体3bと、を備えている。
【0024】
コンデンサ素子2は、静電容量に応じた電荷を蓄えたり、放出したりする素子であり、図2に示すように、ケース3aの内部に収容される。
ケース3aは、アルミニウム材からなる有底の円筒体であって、軸方向の一端側が開放されており、他端側が閉鎖されている。
【0025】
封口体3bは、コンデンサ素子2を収容したケース3aの開口を封止する、絶縁性を有する略円柱状の部材であり、例えば、ゴムや合成樹脂によって構成されている。
【0026】
<コンデンサ素子の構成>
次に、コンデンサ素子2について説明する。
図3は、コンデンサ素子2の構成部品を示す説明図である。
図3に示すように、コンデンサ素子2は、陽極箔2xと、陰極箔2yと、複数のセパレータ2zと、陽極リード2bと、陰極リード2aと、素子止めテープ2tと、を有している。
【0027】
陽極箔2xは、アルミニウム等の弁作用金属で形成された長尺の帯状の電極箔であり、後述するように表面に誘電体となる酸化皮膜が必須的に形成されている。陰極箔2yは、陽極箔2xと同様にアルミニウム等の弁作用金属で形成された長尺の帯状の電極箔である。陽極箔2xおよび陰極箔2yは矩形であり、以下の説明の便宜上、矩形において、長尺方向に延びる幅を横幅または電極長さ方向(本発明の「第1方向」)と称し、長尺方向に対して垂直方向に延びる幅を縦幅または電極幅方向(本発明の「第2方向」)と称することにする。陽極箔2xおよび陰極箔2yの縦幅は同一であるが異ならせてもよく、横幅は陽極箔2xよりも陰極箔2yの方が長く設定されているが陰極箔の方を短く設定したり同じ長さに設定してもよい。また、陽極箔2xは厚さ0.05~0.12mm、陰極箔2yは厚さ0.02~0.05mm程度であり、陽極箔2xの方が若干厚く設定されている。
【0028】
この陽極箔2xの表面はエッチング処理により粗面化(エッチングピット形成)されるとともに陽極酸化(化成)による陽極酸化皮膜が形成されている。また、陰極箔2yも陽極箔2xと同様にアルミニウム等で形成されており、その表面は粗面化(エッチングピット形成)されるとともに自然酸化皮膜または陽極酸化皮膜が形成されている。なお、陰極箔2yの表面はTi、TiNまたはTiC等が形成されていてもよい。
【0029】
セパレータ2zは、矩形の帯状の電解紙または不織布であり、その両面には駆動用電解液および/または固体電解質が保持されている。本実施形態によれば2枚のセパレータ2zが使用される。2枚のセパレータ2z,2zは縦幅が同一に設定されており、横幅は一方のセパレータ2zが長く設定されている。またセパレータ2zの縦幅は、陽極箔2xおよび陰極箔2yの縦幅よりも若干長く設定されている。
【0030】
陽極リード2bは、陽極箔2xに電気的に接続された導電性を有する金属部材である。陰極リード2aは、陰極箔2yに電気的に接続された導電性を有する金属部材である。
【0031】
素子止めテープ2tは、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド等の長尺のフィルムを基材とするものであり、その一方の面はアクリル系接着剤が塗布された粘着面となっており、他方の面は非接着面となっている。なお、素子止めテープ2tの縦幅は、電極箔の縦幅の70%以上、セパレータ2zの縦幅以下が好ましく、電極箔の縦幅以上、セパレータ2zの縦幅以下がより好ましい。
【0032】
そして、コンデンサ素子2は、陰極リード2aが取り付けられた陰極箔2yと陽極リード2bが取り付けられた陽極箔2xとを、セパレータ2zを介して巻回し、これにより形成された巻回体の外周を素子止めテープ2tで固定し、その後巻回体に導電性高分子分散体溶液を含浸後乾燥および/または駆動用電解液を含浸させることにより、形成されている。
【0033】
<電極箔とリードとの接続構造>
次に、陽極箔2xと陽極リード2bとの接続、および、陰極箔2yと陰極リード2aとの接続について説明する。ただし、これらは同様であるので、以下では、図4(a)、(b)に示すように、陽極箔2xおよび陰極箔2yを電極箔21とし、陽極リード2bおよび陰極リード2aをリード22として説明を行う。
【0034】
図4(a)、(b)に示すように、リード22は、電極箔21の厚み方向における一方側の面に配置されている。また、リード22は、電極箔21から電極幅方向の一方端側に引き出されている。また、リード22と電極箔21とは、電極幅方向に間隔をあけた3つの接続部31において互いに接続されている。なお、接続部31の数は3つであることには限られず、リード22と電極箔21とは、1つの接続部31において接続されていてもよいし、電極幅方向に間隔をあけて並んだ2つあるいは4つ以上の接続部31において接続されていてもよい。
【0035】
各接続部31では、電極箔21およびリード22に、それぞれ、カシメ孔21a、22aが形成されている。そして、後述するようにカシメ孔22aが形成されるときに形成された、リード22の一部であるバリ22bが、カシメ孔21aを通って(電極箔21を貫通して)、電極箔21の厚み方向の他方側まで突出し、このバリ22bが、電極箔21の厚み方向における他方側の面に圧接されている。これにより、電極箔21の厚み方向の一方側のリード22と、圧接されたバリ22bとによって電極箔21が挟み込まれ、電極箔21とリード22とが接続されている。
【0036】
また、電極箔21には、4つの貫通孔32が形成されている。4つの貫通孔32のうち、2つの貫通孔32は、電極幅方向において、3つの接続部31のうち最も一方端側の接続部31に対して、電極箔21の一方端側に配置されている。そして、これら2つの貫通孔32は、リード22から、前記電極長さ方向の両側にずれた、リード22と厚み方向に重ならない位置に1つずつ配置されている。4つの貫通孔32のうち、残り2つの貫通孔32は、電極幅方向において、3つの接続部31のうち最も他方端側の接続部31に対して、電極箔21の他方端側に配置されている。そして、これら2つの貫通孔32は、リード22から前記電極長さ方向の両側にずれた、リード22と厚み方向に重ならない位置に1つずつ配置されている。そして、4つの貫通孔32がこのように配置されていることにより、3つの接続部31のカシメ孔21a,22aのそれぞれの中心は、図4(a)に一点鎖線で示す、4つの貫通孔32の中心を頂点とする長方形の領域R内に位置している。
【0037】
<リードの電極箔への固定方法>
次に、電極箔21にリード22を接続する方法について説明する。電極箔21とリード22とを接続する際には、まず、図5(a)に示すように、電極箔21に上述の4つの貫通孔32を形成する(本発明の「貫通孔形成工程」)。電極箔21への貫通孔32の形成は、例えば、円柱形状のパンチなどを用いて行う。あるいは、レーザ加工などによって電極箔21に貫通孔32を形成してもよい。
【0038】
続いて、図5(b)に示すように、4つの貫通孔32を形成した電極箔21とリード22とを積層させ、カシメ装置100にセットする。カシメ装置100は、下型101と、上型102と、カシメ針103と、圧接ピン104とを有する。
【0039】
下型101は、上下方向に延びて上端に開口した摺動孔101aを有し、圧接ピン104が摺動孔101aに沿って上下方向に移動可能となっている。圧接ピン104は、上面が平坦な部材である。
【0040】
上型102は、下型101の上側に配置されている。上型102には、摺動孔101aと上下方向に重なる部分に、上下方向に延びたガイド孔102aが形成されている。そして、カシメ針103が、ガイド孔102aを通して上下方向に移動可能となっている。カシメ針103は、下端部が先細り形状となっている。
【0041】
そして、本実施形態では、電極箔21とリード22との積層体を、リード22が電極箔21の上側に位置する向き(厚み方向の一方側が上側となる向き)で、下型101と上型102とに挟まれ、かつ、電極箔21およびリード22が、摺動孔101aおよびガイド孔102aと上下方向に重なるように、電極箔21とリード22との積層体をカシメ装置100にセットする。
【0042】
続いて、図5(c)に示すように、ガイド孔102aに沿ってカシメ針103を降下させる(本発明の「バリ形成工程」)。これにより、カシメ針103が、リード22および電極箔21を貫通することで、電極箔21およびリード22にそれぞれカシメ孔21a、22aが形成される。また、リード22にカシメ孔22aが形成されるときに、リード22に、カシメ孔21aを通って(電極箔21を貫通して)、電極箔21よりも下側(電極箔21のリード22と反対側)まで延びたバリ22bが形成される。
【0043】
続いて、図5(d)に示すように、カシメ針103を上昇させて降下前の位置(図5(b)位置)に戻し、圧接ピン104を上昇させる(本発明の「圧接工程」)。これにより、バリ22bが、圧接ピン104によって電極箔21の厚み方向の一方側のリード22と反対側の面(他方側の面)に圧接される。そして、厚み方向の一方側のリード22と厚み方向の他方側の圧接されたバリ22bとによって電極箔21が挟み込まれ、電極箔21とリード22とが接続される。
【0044】
また、ここでは、3つの接続部31のうち1つの接続部31における、電極箔21とリード22との接続について説明したが、残り2つの接続部31においても、図5(c)、図5(d)と同様の工程を行って、電極箔21とリード22とを接続する。
【0045】
<効果>
リード22のバリ22bを電極箔21の厚み方向の他方側の面に圧接したときには、バリ22bに圧縮応力による歪みが生じ、この圧縮応力による歪みが電極箔21に伝わる。そして、この圧縮応力による歪みが電極箔に伝わると、電極箔の電極幅方向の端部にクラックが生じるおそれがある。
【0046】
また、本実施形態では、陽極箔2xおよび陰極箔2yは、表面に酸化アルミニウムの酸化皮膜が形成されたものであるところ、酸化アルミニウムは、比較的硬く、脆い性質がある。そのため、酸化アルミニウムの酸化皮膜が形成された陽極箔2xおよび陰極箔2yは、圧縮応力による歪みが伝わったときに、クラックが生じやすい。また、上述したように、陽極箔2xは、厚みが比較的大きい陽極酸化皮膜が表面に形成されたものであるため、圧縮応力による歪みが伝わったときに特にクラックが生じやすい。
【0047】
これに対して、本実施形態では、電極箔21の、電極幅方向において、接続部31に対して電極箔21の一方端側及び他方端側の部分に、円形の貫通孔32が形成されている。これにより、上記圧縮応力による歪みが貫通孔32において吸収される。その結果、電極箔21の電極幅方向の端部にクラックを生じにくくすることができる。
【0048】
ここで、本実施形態と異なり、電極箔に楕円形の貫通孔を形成することによっても、上述したのと同様、電極箔21の電極幅方向の端部にクラックを生じにくくすることができる。この場合、貫通孔による圧縮応力による歪みの吸収性能は、主に、楕円の短軸方向の長さによって変わる。
【0049】
そして、本実施形態では、電極箔21に円形の貫通孔32を形成する。これにより、貫通孔32を上記楕円の短軸方向の長さと同じ直径の円形とすれば、貫通孔を楕円形とする場合と同等の圧縮応力の吸収性能を確保しつつも、貫通孔を楕円形とする場合よりも貫通孔32を小さくすることができる。これにより、電極箔21の貫通孔32が形成されていない部分の面積を極力大きくして、電解コンデンサ1の静電容量を確保することができる。
【0050】
また、本実施形態では、貫通孔32が、電極箔21の、電極幅方向において、接続部31に対して電極箔21の一方端側及び他方端側の部分に、それぞれ、備えられている。これにより、電極箔21の電極幅方向の両端部のいずれにおいてもクラック生じにくくすることができる。
【0051】
また、電極箔21とリード22との接続部31で発生した圧縮応力による歪みは、電極箔21を放射線状に伝播し、接続部31に近い部分ほど圧縮応力による歪みが大きくなる。そのため、貫通孔32と、接続部31との距離が短すぎると、電極箔21の貫通孔32が形成された部分における圧縮応力による歪みが大きく、上記圧縮応力による歪みを貫通孔32で十分に吸収できないことがある。本実施形態では、貫通孔32が、電極箔21の、リード22との接続部分から電極長さ方向にずれた部分に備えられている。これにより、貫通孔32が、電極箔21の、接続部31と電極長さ方向の位置が同じとなる部分に備えられている場合と比較して、貫通孔32と接続部31との距離を長くすることができる。これにより、上記圧縮応力による歪みを、貫通孔32において十分に吸収することができる。また、本実施形態では、貫通孔32が、電極箔21とリード22とが重なる部分から離れた位置に備えられている。これにより、貫通孔32が、電極箔21と接続部31とが重なる部分に備えられている場合と比較して、貫通孔32と接続部31との距離を長くすることができる。これにより、上記圧縮応力による歪みを、貫通孔32において十分に吸収することができる。
【0052】
また、本実施形態では、貫通孔32が、電極箔21の、接続部31の電極長さ方向(第1方向)における両側に位置する部分に、それぞれ、備えられている。これにより、電極箔21の、電極長さ方向において、接続部31の両側の部分を伝わる圧縮応力による歪みを、貫通孔によって吸収することができる。
【実施例
【0053】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0054】
実施例1では、上記実施形態と同様に、電極箔21に貫通孔32を形成してから、電極箔21とリード22とを接続することによって、電極箔21とリード22との接合体を10個作製した。図6(a)は、これら10個の接合体のうちの1つを示している。比較例1では、電極箔21に貫通孔32を形成せずに、電極箔21とリード22とを接続することによって、電極箔21とリード22との接合体を10個作製した。図6(b)は、これら10個の接合体のうちの1つを示している。
【0055】
また、実施例1および比較例1では、電極箔21の電極幅方向の長さを12mmとし、電極箔21の厚み(図6の紙面垂直方向の長さ)を0.105mmとした。また、実施例1および比較例1では、リード22の電極長さ方向の長さを2.2mmとし、リード22の厚みを0.28mmとした。なお、歪みの影響を大きくするため、カシメ部の厚み(カシメ後のリード厚み、電極箔厚み、バリ厚みの合計)が0.390mmと通常のカシメ部の厚みより薄くなるように圧接ピンの上昇位置を調整した。
【0056】
また、実施例1では、貫通孔32の直径を0.45mmとし、電極長さ方向において、リード22の端と、貫通孔32の中心との間の長さを0.33mmとした。また、実施例1では、電極幅方向において、電極箔の端と貫通孔32の中心との間の長さを1.55mmとした。また、実施例1および比較例1では、直径が1.15mmのカシメ針を用いて、カシメ孔21a、22aおよびバリ22bを形成した。
【0057】
表1は、実施例1および比較例1において、それぞれ、作製した10個の接合体の中で、電極箔21にシワSが生じた接合体の数、および、電極箔21にクラックCが生じた接合体の数を示している。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から分かるように、実施例1の場合には、比較例1の場合と比較して、電極箔21にクラックCが生じにくい、すなわち、電極箔21とリード22との間の接合強度が低下しにくいことが分かる。
【0060】
また、実施例1では、比較例1よりも電極箔21にシワSが生じている接合体の数が多いが、図6(a)と図6(b)とを比較すれば、比較例1では、シワSが、電極箔21の、接続部31と電極幅方向の端との間の領域の全体にわたってはっきりと痕跡が判別できる強いシワが生じているのに対して、実施例1では、シワSが、電極箔21の、接続部31と電極幅方向の端との間の領域のうち、接続部31と、貫通孔32との間の部分にのみわずかに痕跡が判別できる程度の弱いシワ生じており、シワSの生じる領域が小さく、痕跡も弱くなっていることが分かる。
【0061】
実施例2~5および比較例2は、電極箔21とリード22の積層体において、バリ22bを厚み方向に変位させたときに電極箔21に生じる、厚み方向における最大変位量を数値解析によって算出するための解析モデルである。バリ22bを厚み方向に変位させることが、バリ22bを電極箔21に圧接することに対応している。そして、電極箔21の厚み方向における最大変位量が大きいほど、電極箔21における圧縮応力による歪みが大きく、電極箔21にクラックが発生しやすいことを示している。
【0062】
実施例2は、図7(a)に示すように、電極箔21に上記実施形態で説明した4つの貫通孔32のうち、電極幅方向における図中上側(リード引出し側)、かつ、電極長さ方向における図中左側の1つの貫通孔32を形成した例である。実施例3は、図7(b)に示すように、電極箔21に上記実施形態で説明した4つの貫通孔32のうち、電極幅方向における図中下側(リード引出し方向と反対側)、かつ、電極長さ方向における図中左側の1つの貫通孔を形成した例である。実施例4は、図7(c)に示すように、電極箔に上記実施形態で説明した4つの貫通孔のうち、電極長さ方向における図中左側の2つ(片側2つ)の貫通孔を形成した例である。実施例5は、図7(d)に示すように、電極箔に上記実施形態で説明した4つの貫通孔32を全て形成した例である。比較例2は、図7(e)に示すように、電極箔21に貫通孔32を形成しない例である。
【0063】
また、実施例2~5および比較例2では、実際に作製した電極箔21とリード22との接合体のサンプルをCT(Computed Tomography)で読み取り、CTのデータから解析のためのCADモデルを作成した。
【0064】
上記サンプルにおいては、リード22の電極長さ方向の長さL1を2.2mmとし、実施例2~5および比較例2の上記サンプルでは、電極箔21の電極長さ方向の図中左端を固定し、右端に5Nの引っ張り応力を加えた。また、実施例2~5および比較例2の上記サンプルでは、電極箔21の電極幅方向の長さW1を12mmとした。また、実施例2~5および比較例2での上記サンプルでは、電極箔21の厚み(図7の紙面垂直方向の長さ)を0.105mmとし、リード22の厚みを0.28mmとした。
【0065】
また、実施例2~5の上記サンプルでは、貫通孔32の直径Dを0.45mmとし、電極長さ方向において、電極箔21の端と貫通孔32の中心との間の長さW2を0.33mmとした。また、実施例2~5の上記サンプルでは、電極幅方向において、リード22の端と貫通孔32の中心との間の長さL2を0.33mmとした。また、実施例2~5の上記サンプルでは、直径が0.45mmのカシメ針を用いて、カシメ孔21a、22aを形成した。
【0066】
そして、実施例2~5および比較例2では、上記解析用のモデルにおいて、バリ22bを電極箔21側に0.02mm変位させたときの電極箔の厚み方向における最大変位量を算出した。表2は、実施例2~5および比較例2における上記最大変位量、および、実施例2~5における比較例2に対する上記最大変位量の低減率を示している。
【表2】
【0067】
表2の結果から、電極箔21に貫通孔32を形成した実施例2~5では、電極箔21に貫通孔を形成しない比較例2と比較して、電極箔21とリード22とを接合したときの上記最大変位量が小さい、すなわち、電極箔21とリード22との接合時に電極箔21にクラックが発生しにくいことが分かる。
【0068】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0069】
上述の実施形態では、電極箔21の、電極幅方向において、3つの接続部31が配置された領域と、電極箔21の両端の各々との間の部分のうち、電極長さ方向においてリード22の両側に位置する部分に、それぞれ、貫通孔32を形成したが、これには限られない。
【0070】
例えば、電極箔21に、上記4つの貫通孔32のうち、電極長さ方向においてリード22の片側に位置する2つの貫通孔32のみを形成してもよい。さらには、電極箔21に、これら2つの貫通孔32のうち1つの貫通孔32のみを形成してもよい。
【0071】
あるいは、電極箔21に、上記4つの貫通孔32のうち、電極幅方向において、接続部31に対して電極箔21の片側の端に位置する2つの貫通孔32のみを形成してもよい。さらには、電極箔21に、これら2つの貫通孔32のうち1つの貫通孔32のみを形成してもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、貫通孔32が、電極箔21の、電極長さ方向において接続部31からずれた部分に位置しており、電極箔21とリード22とが重なる部分から離れた位置に備えられているが、これには限られない。例えば、電極幅方向において、最も一方側の接続部31と電極箔21の一方端との距離、および、最も他方側の接続部31と電極箔21の他方端との距離が十分に長い等、接続部31と貫通孔32との距離を十分に確保することができる場合には、貫通孔32を、電極箔21の、接続部31と電極長さ方向の位置が同じとなる、電極箔21のリード22と重なる部分に形成してもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、貫通孔32が円形のものであったが、これには限られない。貫通孔32は楕円形または円形および楕円形に近似した多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 電解コンデンサ
2a 陰極リード
2b 陽極リード
2x 陽極箔
2y 陰極箔
21 電極箔
22 リード
22a バリ
32 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7