(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】DCリンク電圧変動の原因を判定するモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230808BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2019219030
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】田川 貴聡
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138657(JP,A)
【文献】特開2019-187002(JP,A)
【文献】特開2012-210012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流入力側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流出力側であるDCリンクへ出力する整流器と、
前記DCリンクにおける直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力する逆変換器と、
前記DCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧を検出するDCリンク電圧検出部と、
前記整流器の前記交流入力側から入力される入力電流を検出する入力電流検出部と、
前記DCリンク電圧と、第1の電圧閾値及び前記第1の電圧閾値より高い値として設定された第2の電圧閾値のそれぞれとを比較するDCリンク電圧比較部と、
前記入力電流と電流閾値とを比較する電流比較部と、
前記DCリンク電圧比較部により前記DCリンク電圧が前記第1の電圧閾値よりも低いと判定されまたは前記DCリンク電圧が前記第2の電圧閾値も高いと判定された場合において、前記電流比較部により前記入力電流が前記電流閾値よりも低いと判定されたときは第1の異常が発生したと判定し、前記電流比較部により前記入力電流が前記電流閾値以上であると判定されたときは第2の異常が発生したと判定する異常検出部と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記整流器の前記交流入力側に設けられ、前記交流入力側から前記整流器への前記入力電流の電流経路を開閉する第1の開閉部と、
前記整流器へ入力される交流電力の供給源である交流電源と前記第1の開閉部との間に設けられ、前記交流電源から前記第1の開閉部への電流経路を開閉する第2の開閉部と、
を備える、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記第1の異常には、前記交流電源の長期停電、前記交流電源の瞬時停電、前記第1の開閉部による電流経路の開状態、及び前記第2の開閉部による電流経路の開状態のうちの少なくとも1つが含まれ、
前記第2の異常には、前記モータ駆動装置の故障、前記モータ駆動装置に対する過負荷、及び前記交流電源の容量不足のうちの少なくとも1つが含まれる、請求項2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記第1の開閉部と前記第2の開閉部との間における相電圧である入力電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記DCリンク電圧比較部により前記DCリンク電圧が前記第1の電圧閾値よりも低いと判定されまたは前記DCリンク電圧が前記第2の電圧閾値も高いと判定された場合において、前記入力電圧と停電閾値とを比較する入力電圧比較部と、
をさらに備え、
前記異常検出部は、
前記入力電圧比較部により前記入力電圧が前記停電閾値以下である状態が所定の時間未満だけ継続したと判定された場合、前記交流電源の瞬時停電が発生したと判定し、
前記入力電圧比較部により前記入力電圧が前記停電閾値以下である状態が前記所定の時間以上にわたって継続したと判定された場合、前記第2の開閉部による電流経路の開状態または前記交流電源の長期停電のいずれかが発生したと判定する、請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、前記入力電圧比較部により前記入力電圧が前記停電閾値より高いと判定された場合、前記第1の開閉部による電流経路の開状態が発生したと判定する、請求項4に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記第1の開閉部は、電磁接触器である、請求項2~5のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記第2の開閉部は、ブレーカである、請求項2~6のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCリンク電圧変動の原因を判定するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、あるいは各種ロボット内のモータの駆動を制御するモータ駆動装置においては、交流電源から供給された交流電力を整流器にて直流電力に変換してDCリンクへ出力し、さらに逆変換器にてDCリンクにおける直流電力を交流電力に変換して、この交流電力をモータ駆動電力としてモータに供給している。「DCリンク」とは、整流器の直流出力側と逆変換器の直流入力側とを電気的に接続する回路部分のことを指し、「DCリンク部」、「直流リンク」、「直流リンク部」、「直流母線」あるいは「直流中間回路」などとも別称されることもある。DCリンクには、DCリンクコンデンサが設けられる。
【0003】
一般にDCリンクコンデンサの容量は電源容量と比較して小さい。このため、例えば、何らかの原因により交流電源からの交流電力がモータ駆動装置内の整流器に供給されなくなった場合にモータの加速が行われると、モータの加速エネルギーはDCリンクコンデンサのみから供給されることになり、DCリンク電圧は一瞬で低下する。また例えば、モータの減速時に何らかの原因により整流器を介した交流電源への電源回生が不十分であると、DCリンク電圧は一瞬で上昇する。
【0004】
モータ駆動装置において、何らかの原因によりDCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧が大幅に低下または上昇すると、モータは正常な運転を継続することができなくなる。この結果、モータ駆動装置のみならず、当該モータ駆動装置が駆動するモータ、当該モータに接続された各種装置、当該モータ駆動装置を有する各種システムなどが、破損したり変形したりするなどといった障害が生じる可能性がある。そのため、DCリンク電圧が大幅に低下または上昇した場合はモータ駆動装置内の制御装置からはアラーム信号が出力される。このアラーム信号に基づき、上記障害を回避または最小限にするためのモータ駆動装置の非常停止や保護動作が行われる。
【0005】
例えば、自装置と電源との間の電源入力部の異常検出機能を有するモータ駆動装置であって、前記電源からの交流電力を前記電源入力部を介して入力し、前記交流電力を直流電力に変換する順変換器と、前記順変換器からの前記直流電力を交流電力に変換する逆変換器と、前記順変換器と前記逆変換器との間のDCリンクに設けられたDCリンクコンデンサと、前記DCリンクコンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で検出した電圧値に基づいて、前記DCリンクコンデンサの所定時間における電圧変化量を求め、求めた前記電圧変化量に基づいて前記電源入力部の異常検出を行う異常検出部と、を備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
例えば、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC変換部と、交流電源と前記AC/DC変換部とを接続または遮断するためのスイッチングを行う電磁接触器と、前記AC/DC変換部から出力される直流電圧を平滑化するDCリンク部と、前記DCリンク部により平滑化された直流電圧をモータ駆動用の交流電圧に変換するDC/AC変換部と、前記DCリンク部の端子間電圧を測定するDCリンク電圧検出部と、前記電磁接触器を接続または遮断する指令を送信するとともに、前記AC/DC変換部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電磁接触器によりスイッチングを行ってからの経過時間を計測する時間計測部と、交流電源と前記AC/DC変換部とを接続させて前記DCリンク部に充電を行った後の前記DCリンク部の端子間電圧と、前記DCリンク部の充電を行った後に前記制御部が交流電源と前記AC/DC変換部との接続を遮断する指令を送信してから所定の時間経過後の前記DCリンク部の端子間電圧との差分が所定の電圧値未満である場合には、前記電磁接触器が溶着していると判定する溶着判定部と、を有することを特徴とするモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
例えば、交流電力を直流電力に変換する順変換器からの前記直流電力を交流電力に変換する少なくとも1つの逆変換器と、前記順変換器と前記逆変換器との間のDCリンクに、前記逆変換器ごとに設けられたDCリンクコンデンサと、前記DCリンクにおける前記順変換器と前記DCリンクコンデンサとの間に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記DCリンクにおける前記DCリンクコンデンサと前記逆変換器との間に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記DCリンクコンデンサの電圧を検出する電圧検出部と、前記第1電流検出部で検出した電流値と前記第2電流検出部で検出した電流値との差分を所定時間にわたって積分した積分値から前記所定時間における前記DCリンクコンデンサの電荷の変化量を求め、前記電圧検出部で検出した電圧値に基づいて前記所定時間における前記DCリンクコンデンサの電圧の変化量を求め、求めた電荷の変化量と電圧の変化量とに基づいて前記DCリンクコンデンサの容量値を求め、求めた容量値に基づいて前記DCリンクコンデンサの容量低下の検出を行う容量低下検出部と、を備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
例えば、特許文献4の段落[0003]には、「この種の電力変換装置においては、インバータ部等の保護を図るために、電源電圧の異常(例えば瞬時電圧低下等)を検出する異常検出手段を備えたものがある。」と記載されている。
【0009】
例えば、交流電源から入力された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され、互いに直列接続された複数のコンデンサを有するDCリンク部と、前記DCリンク部に並列接続され、前記DCリンク部における直流電力をモータの駆動のための交流電力に変換して出力するインバータと、前記DCリンク部と前記インバータとの間を流れる直流電流の値と予め規定された第1の閾値とを比較するとともに前記コンバータを介して前記交流電源から前記DCリンク部へ流れる入力電流の値と予め規定された第2の閾値とを比較し、比較の結果、前記DCリンク部と前記インバータとの間を流れる直流電流の値が前記第1の閾値を下回った状態において前記コンバータを介して前記交流電源から前記DCリンク部へ流れる入力電流の値が前記第2の閾値を上回った場合、前記DCリンク部内の前記複数のコンデンサのうち少なくとも1つが短絡したと判定する短絡判定部と、を備える、モータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
例えば、3相交流電源からの3相交流を直流に変換するAC/DC変換部と、AC/DC変換部が出力する直流を3相交流に変換してモータへ供給するDC/AC変換部とを具備するモータ駆動装置であって、前記3相交流電源から前記AC/DC変換部を経て前記DC/AC変換部への電流の総和を検出する総和電流検出部と、前記DC/AC変換部の出力電流における過電流を検出する過電流検出部と、前記過電流検出部が過電流を検出するとき、前記総和電流検出部が検出する電流の総和がゼロでないと判定できれば地絡の発生と判定し、前記総和電流検出部が検出する電流の総和がゼロであると判定できれば相間短絡の発生と判定する判定部とをさらに具備するモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-121408号公報
【文献】特開2015-216018号公報
【文献】特開2018-102082号公報
【文献】特開2012-151959号公報
【文献】特開2019-138656号公報
【文献】特開2011-217518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
DCリンク電圧が大幅に低下または上昇する原因には、例えば、交流電源の長期にわたる停電、瞬時停電、電源設備の容量不足、過負荷、モータ駆動装置自体の故障、並びに、ブレーカ及び電磁接触器の遮断などがある。アラーム信号の出力やDCリンク電圧の測定結果に基づいて、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の現象自体は検知できるが、その原因の特定作業は手間及び時間がかかる。DCリンク電圧の大幅な低下または上昇が発生した場合、一般的には、作業者は、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因の調査を、まずはモータ駆動装置から開始する。しかしながら、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因がモータ駆動装置以外にある場合、その真の原因にたどり着くまでに時間がかかる。作業者による原因調査の間は、モータ駆動装置で駆動される機械の稼動が停止されるので、機械の稼働率が低下してしまう。
【0013】
また、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因に応じて、作業者が取るべき対応も異なる。例えば、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因がモータ駆動装置自体の故障以外である場合は、作業者はモータ駆動装置自体の交換やモータ駆動装置内の部品の交換作業や修理作業は、本来的には必要ない。しかしながら、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因が正確に特定されないと、作業者は、モータ駆動装置が正常であるにもかかわらずモータ駆動装置が故障したと誤認識してしまうことがある。この結果、正常なモータ駆動装置自体を不必要に交換したりモータ駆動装置内の部品を不必要に交換または修理してしまうことになり、不経済である。
【0014】
したがって、整流器と逆変換器とがDCリンクを介して接続されるモータ駆動装置において、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因を容易かつ正確に判別することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、交流入力側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流出力側であるDCリンクへ出力する整流器と、DCリンクにおける直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力する逆変換器と、DCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧を検出するDCリンク電圧検出部と、整流器の交流入力側から入力される入力電流を検出する入力電流検出部と、DCリンク電圧と第1の電圧閾値及び第1の電圧閾値より高い値として設定された第2の電圧閾値のそれぞれとを比較するDCリンク電圧比較部と、入力電流と電流閾値とを比較する電流比較部と、DCリンク電圧比較部によりDCリンク電圧が第1の電圧閾値よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値も高いと判定された場合において、電流比較部により入力電流が電流閾値よりも低いと判定されたときは第1の異常が発生したと判定し、電流比較部により入力電流が電流閾値以上であると判定されたときは第2の異常が発生したと判定する異常検出部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、整流器と逆変換器とがDCリンクを介して接続されるモータ駆動装置において、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因を容易かつ正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態の変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して、DCリンク電圧変動の原因を判定するモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
【0020】
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、モータ3を制御する場合について示す。本実施形態においては、モータ3の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。また、交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
【0021】
図1に示すように、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1は、整流器11と、逆変換器12と、DCリンク電圧検出部13と、入力電流検出部14と、DCリンク電圧比較部15と、電流比較部16と、異常検出部17とを備える。また、モータ駆動装置1は、第1の開閉部としての電磁接触器18と、第2の開閉部としてのブレーカ19と、表示部23とを備える。
【0022】
整流器11は、交流入力側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流出力側であるDCリンクへ出力する。整流器11は、交流電源2から三相交流電力が供給される場合は三相ブリッジ回路で構成され、交流電源2から単相交流電力が供給される場合は単相ブリッジ回路で構成される。図示の例では、交流電源2を三相交流電源としたので、整流器11は三相ブリッジ回路で構成される。整流器11の例としては、ダイオード整流器、120度通電方式整流器、及びPWMスイッチング制御方式整流器などがある。例えば、整流器11が120度通電方式整流器及びPWMスイッチング制御方式整流器である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、上位制御装置(図示せず)から受信した駆動指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ制御されて交直双方向に電力変換を行う。この場合、スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、その他の半導体素子であってもよい。なお、整流器11の交流入力側には、交流リアクトルやACラインフィルタなどが設けられることがあるが、ここでは図示を省略している。
【0023】
第1の開閉部としての電磁接触器18は、整流器11の交流入力側に設けられ、交流入力側から整流器11への入力電流の電流経路を開閉する。交流入力側から整流器11への入力電流の電流経路を形成する閉動作は、電磁接触器18の接点が閉成することにより実現され、交流入力側から整流器11への入力電流の電流経路を遮断する開動作は、電磁接触器18の接点が開離することにより実現される。なお、電磁接触器18に代えて、交流入力側から整流器11への入力電流の電流経路を開閉する半導体スイッチング素子を第1の開閉部として用いてもよい。
【0024】
第2の開閉部としてのブレーカ19は、整流器11へ入力される交流電力の供給源である交流電源2と電磁接触器18との間に設けられ、交流電源2から電磁接触器18への電流経路を開閉する。交流電源2から電磁接触器18への電流経路を形成する閉動作は、ブレーカ19の接点が閉成することにより実現され、交流電源2から電磁接触器18への電流経路を遮断する開動作は、ブレーカ19の接点が開離することにより実現される。なお、ブレーカ19に代えて、交流電源2から電磁接触器18への電流経路を開閉する半導体スイッチング素子を第2の開閉部として用いてもよい。
【0025】
整流器11の直流出力側と逆変換器12の直流入力側とを接続するDCリンクには、DCリンクコンデンサ20が設けられる。DCリンクコンデンサ20は、逆変換器12が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能及び整流器11の直流出力の脈動分を抑える機能を有する。DCリンクコンデンサ20の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
【0026】
逆変換器12は、DCリンクを介して整流器11に接続され、DCリンクにおける直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力する。逆変換器12は、直流電力を交流電流に変換することができる構成を有していればよく、例えば、内部にスイッチング素子を備えるPWM制御方式インバータなどがある。逆変換器12は、モータ3が三相交流モータである場合は三相のブリッジ回路として構成され、モータ3が単相モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。図示の例では、モータ3を三相交流モータとしたので、逆変換器12は三相ブリッジ回路で構成される。逆変換器12がPWM制御方式インバータとして構成される場合は、整流素子及びこれに逆並列に接続されたスイッチング素子のブリッジ回路からなる。この場合、スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO(Gate Turn-OFF thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)、トランジスタなどがあるが、その他の半導体素子であってもよい。逆変換器12は、上位制御装置(図示せず)の指令に基づき内部のスイッチング素子のオンオフ動作がPWM制御されることで、DCリンクにおける直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換して出力する。モータ3は、逆変換器12から供給される交流電力に基づいて、速度、トルクまたは回転子の位置が制御される。なお、逆変換器12は、スイッチング素子のオンオフ動作が適切にPWM制御されることにより、モータ3で回生された交流電力を直流電力に変換して直流側のDCリンクへ戻すこともできる。
【0027】
DCリンク電圧検出部13は、DCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧を検出する。すなわちDCリンク電圧検出部13は、整流器11の直流出力側の正側端子に現れる正電位と整流器11の直流出力側の負側端子に現れる負電位との間の電位差の値を、DCリンク電圧として検出する。あるいは、DCリンク電圧検出部13は、DCリンクコンデンサ20の正負両極端子間に印加される電圧を、DCリンク電圧として検出してもよい。DCリンク電圧検出部13により検出されたDCリンク電圧の値は、DCリンク電圧比較部15へ送られる。
【0028】
DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と、第1の電圧閾値Vth1及び第1の電圧閾値Vth1より高い値として設定された第2の電圧閾値Vth2のそれぞれとを比較する。電磁接触器18及びブレーカ19が閉状態にあり交流電源2に停電がない状態において、モータ駆動装置1が故障なくモータ3を正常に駆動している場合(以下、単に「正常状態」と称する。)においても、DCリンク電圧には多少の脈動が発生する。第1の電圧閾値Vth1は、モータ駆動装置1によりモータ3を駆動しているときに発生する正常状態の下での脈動に起因して低下したDCリンク電圧よりも低い値に設定される。また、第2の電圧閾値Vth2は、モータ駆動装置1によりモータ3を駆動しているときに発生する正常状態の下での脈動に起因して上昇したDCリンク電圧よりも高い値に設定される。第1の電圧閾値Vth1及び第2の電圧閾値Vth2については、例えば実験もしくは実際の運用によりモータ駆動装置1を動作させたり、またはコンピュータによるシミュレーションにより、モータ駆動装置1の適用環境や整流器11の直流出力側の電圧値とモータ駆動装置1におけるアラーム信号の出力の有無との関係性などを事前に求めたうえで、適宜設定することができる。一例を挙げると、一般にモータ駆動装置1の適用環境に応じて正常状態におけるDCリンク電圧の目標値が設定されることから、第1の電圧閾値Vth1を、この目標値よりも例えば数十パーセント程度低い値に設定し、第2の電圧閾値Vth2を、この目標値よりも例えば数十パーセント程度高い値に設定してもよい。ここで示した数値例はあくまでも一例であって、これ以外の値であってもよい。なお、第1の電圧閾値Vth1及び第2の電圧閾値Vth2については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、第1の電圧閾値Vth1及び第2の電圧閾値Vth2を一旦設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0029】
DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1と第2の電圧閾値Vth2との間で画定される範囲に収まる場合は、DCリンク電圧は正常状態にある。一方、DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低い場合はDCリンク電圧が大幅に低下した状態であり、DCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2よりも高い場合はDCリンク電圧が大幅に上昇した状態である。DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と第1の電圧閾値Vth1とを比較するとともに、DCリンク電圧と第2の電圧閾値Vth2とを比較する。DCリンク電圧比較部15による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0030】
入力電流検出部14は、整流器11に対して交流入力側から入力される入力電流すなわち電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力される入力電流を検出する。図示の例では、交流電源2は三相交流電源であるので電磁接触器18から整流器11の交流入力側へは三相交流の入力電流が流れるが、入力電流検出部14は、例えば三相のうちの二相分の入力電流を検出する。この代替例として、入力電流検出部14は、三相のうちの単相分または三相分の入力電流を検出してもよい。入力電流検出部14により検出された入力電流の値は、電流比較部16へ送られる。
【0031】
電流比較部16は、入力電流と電流閾値Ithとを比較する。電流閾値Ithは、電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れているか否かを判定するために用いられる。電流閾値Ithについては、例えば実験もしくは実際の運用によりモータ駆動装置1を動作させたり、またはコンピュータによるシミュレーションにより、モータ駆動装置1の適用環境や電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ流れる入力電流の大きさなどを事前に求めたうえで、適宜設定することができる。一例を挙げると、電流閾値Ithは、入力電流検出部14の検出誤差などを考慮して、定格入力電流の例えば数パーセント程度に設定してもよい。ここで示した数値例はあくまでも一例であって、これ以外の値であってもよい。入力電流が電流閾値Ithより低い場合は、電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れていないことを意味する。入力電流が電流閾値Ith以上である場合は、電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れていることを意味する。電流比較部16による比較結果は、異常検出部17へ送られる。なお、電流閾値Ithについては、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、電流閾値Ithを一旦設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。
【0032】
なお、図示の例のように、入力電流検出部14は二相分の入力電流を検出するので、電流比較部16は、二相の各相についての入力電流と電流閾値Ithとを比較する。電流比較部16は、二相のうちの少なくとも一相の入力電流が電流閾値Ithより低ければ、「入力電流は電流閾値Ithより低い」と判定する。この代替例として、電流比較部16は、入力電流検出部14が検出した二相分の入力電流を二相座標上のベクトルノルムに変換し、当該ベクトルノルムが電流閾値Ithより低ければ、「入力電流は電流閾値Ithより低い」と判定してもよい。
【0033】
また、入力電流検出部14は三相分の入力電流を検出する場合は、電流比較部16は、三相の各相についての入力電流と電流閾値Ithとを比較する。電流比較部16は、三相のうちの少なくとも一相の入力電流が電流閾値Ithより低ければ、「入力電流は電流閾値Ithより低い」と判定する。この代替例として、電流比較部16は、入力電流検出部14が検出した三相二相変換して得られる二相座標上のベクトルノルムに変換し、当該ベクトルノルムが電流閾値Ithより低い場合に「入力電流は電流閾値Ithより低い」と判定してもよい。
【0034】
また、入力電流検出部14は単相の入力電流を検出する場合は、電流比較部16は、単相の入力電流と電流閾値Ithとを比較する。電流比較部16は、単相の三相の入力電流が電流閾値Ithより低ければ、「入力電流は電流閾値Ithより低い」と判定する。
【0035】
異常検出部17は、DCリンク電圧比較部15によりDCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2も高いと判定された場合において、電流比較部16により入力電流が電流閾値Ith1よりも低いと判定されたときは第1の異常が発生したと判定し、電流比較部16により入力電流が電流閾値Ith1以上であると判定されたときは第2の異常が発生したと判定する。
【0036】
異常検出部17による判定結果の1つである「第1の異常」には、交流電源2の長期停電、交流電源2の瞬時停電、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態、及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態のうちの少なくとも1つが含まれる。電流比較部16により入力電流が電流閾値Ith1よりも低いと判定された場合、電磁接触器18から整流器11の交流入力側へは入力電流が流れていない。電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れていない状態は、交流電源2の長期停電、交流電源2の瞬時停電、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態、及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態のうちの、いずれかにおいて発生する。よって、本実施形態では、異常検出部17は、DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2も高いと判定された場合において、入力電流が電流閾値Ith1よりも低いと判定されたとき(すなわち電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れていないとき)は第1の異常が発生したと判定する。なお、一般的な解釈では、電磁接触器18及びブレーカ19による電流経路の開状態は「異常」として認識されることは少ない。本実施形態では、「電磁接触器18及びブレーカ19による電流経路の開状態」は、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇をもたらす原因となり得ることから、「電磁接触器18及びブレーカ19による電流経路の開状態」も「第1の異常」の定義に含める。
【0037】
異常検出部17による判定結果の1つである「第2の異常」には、モータ駆動装置1の故障、モータ駆動装置1に対する過負荷、及び交流電源2の容量不足のうちの少なくとも1つが含まれる。電流比較部16により入力電流が電流閾値Ith1以上であると判定された場合、電磁接触器18から整流器11の交流入力側へは入力電流が流れている。電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れているにもかかわらず、DCリンク電圧が大幅に低下または上昇する原因として、まずはモータ駆動装置1自体の故障が考えられる。また、モータ駆動装置1内の逆変換器12に適正な負荷が接続された状態では、交流電源2から整流器11へ取り込まれる交流電力と逆変換器12から負荷(モータ3)へ供給される交流電力とはバランスし、DCリンク電圧は多少の脈動はあるもののほぼ目標値通りの一定値となるはずである。しかしながら、モータ駆動装置1内の逆変換器12に過負荷が接続されると、交流電源2から整流器11へ取り込まれる交流電力と逆変換器12から負荷(モータ3)へ供給される交流電力とはバランスせず、DCリンクコンデンサ20に蓄積された直流電力がいつも以上に消費されることになる。また、モータ駆動装置1に対して交流電源2の容量が不足している場合も、交流電源2から整流器11へ取り込まれる交流電力と逆変換器12から負荷(モータ3)へ供給される交流電力とはバランスせず、DCリンクコンデンサ20に蓄積された直流電力がいつも以上に消費されることになる。これら直流電力がいつも以上に消費される場合も、DCリンク電圧は大幅に低下する。よって、本実施形態では、異常検出部17は、DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2も高いと判定された場合において、入力電流が電流閾値Ith1以上であると判定されたとき(すなわち電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力電流が流れているとき)は第2の異常が発生したと判定する。
【0038】
表示部23は、異常検出部17の判定結果を表示する。表示部23の例としては、ディスプレイ、パソコン、携帯端末及びタッチパネルなどのディスプレイなどがあるが、これらはモータ駆動装置1の付属のものやその上位制御装置に付属のものであってもよい。例えば「第1の異常が発生」または「第2の異常が発生」といった表示を行う。また、表示部23は、「第1の異常が発生」及び「第2の異常が発生」のいずれかが表示されない間は、無表示とするか、「正常」を表示してもよい。なお、表示部23は、「第1の異常が発生」については、「交流電源の長期停電、交流電源の瞬時停電、電磁接触器による電流経路の開状態、ブレーカによる電流経路の開状態のいずれかが発生」といったようにより詳細に表示してもよい。同様に、表示部23は、「第2の異常が発生」については、「モータ駆動装置の故障、モータ駆動装置に対する過負荷、交流電源の容量不足のいずれかが発生」といったように、より詳細に表示してもよい。表示部23による上述の表示例は、あくまでも一例であって、これ以外の表現や絵に基づいて「第1の異常が発生」、「第2の異常が発生」、及び「正常」を表示してもよい。この代替例として、表示部23に代えて、例えば音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて実現してもよい。音響機器によって、作業者に対して異常検出部17の判定結果を報知する場合、例えば「第1の異常が発生」及び「第2の異常が発生」の違いが区別できるように、音色、音階、リズム、あるいは曲調などを設定すればよい。この場合、音響装置は、「第1の異常が発生」及び「第2の異常が発生」が報知されない間は、無音とするのが好ましい。またあるいは、プリンタを用いて紙面等にプリントアウトして表示させる形態をとってもよい。またあるいは、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。
【0039】
本実施形態によれば、作業者は、異常検出部17の判定結果に基づいて、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因を容易かつ正確に判別することができる。また、作業者は、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因に応じた正確な対応を迅速にとることができる。
【0040】
例えば、異常検出部17により「第1の異常」と判定された場合、作業者は、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因が、交流電源2の長期停電、交流電源2の瞬時停電、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態、及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態のうちの少なくとも1つであることを把握することができる。よって、作業者が、モータ駆動装置1が正常であるにもかかわらず故障であると誤認識することはないので、正常なモータ駆動装置1自体の交換やモータ駆動装置1内の部品の交換または修理を行うことはない。また、作業者は、電磁接触器18やブレーカ19の開閉を確認する作業を直ぐに着手することができる。電磁接触器18やブレーカ19が開状態にあることの確認が取れ次第、迅速に電磁接触器18やブレーカ19の復帰作業にとりかかることができる。また、作業者は、電磁接触器18やブレーカ19が閉状態にあることの確認が取れた場合は、交流電源2の復旧作業を行ったり、交流電源2が復旧するまで待機するといった対応をとることができる。
【0041】
例えば、異常検出部17により「第2の異常」と判定された場合、作業者は、DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因が、モータ駆動装置1の故障、モータ駆動装置1に対する過負荷、及び交流電源2の容量不足のうちの少なくとも1つであることを把握することができる。よって、作業者は、モータ駆動装置1に対する負荷状態や交流電源2の容量を確認する作業を直ぐに着手することができる。DCリンク電圧の大幅な低下または上昇の原因がモータ駆動装置1に対する過負荷や交流電源2の容量不足であることの確認が取れ次第、作業者は、モータ駆動装置1の設計変更や交流電源2の設備増強といった対応を直ぐに取り掛かることができる。また、作業者は、モータ駆動装置1に対する負荷状態や交流電源2の容量に問題がないことの確認が取れた場合は、モータ駆動装置1の故障であると把握できるので、モータ駆動装置1自体の交換作業またはモータ駆動装置1内の部品の交換作業もしくは修理作業を、効率よく行うことができる。
【0042】
DCリンク電圧比較部15、電流比較部16、及び異常検出部17(後述する変形例の場合も含む)は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよく、あるいは各種電子回路のみで構成されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、DCリンク電圧比較部15、電流比較部16、及び異常検出部17(後述する変形例の場合も含む)を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、DCリンク電圧比較部15、電流比較部16、及び異常検出部17(後述する変形例の場合も含む)を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ記録媒体として実現してもよい。また、DCリンク電圧比較部15、電流比較部16、及び異常検出部17(後述する変形例の場合も含む)は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよく、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよい。
【0043】
また、DCリンク電圧検出部13及び入力電流検出部14は、アナログ回路とディジタル回路との組み合わせで構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアプログラム形式で構築された演算処理装置にて実現されてもよく、あるいは、アナログ回路のみで構成されてもよい。なお、DCリンク電圧検出部13及び入力電流検出部14については、モータ駆動装置1に一般的に設けられるものを流用してもよい。
【0044】
また、第1の電圧閾値Vth1、第2の電圧閾値Vth2、及び電流閾値Ithを記憶する記憶部は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成されてもよい。
【0045】
図2は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0046】
モータ駆動装置1によりモータ3の駆動を行っている場合において、ステップS101において、DCリンク電圧検出部13は、DCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧を検出する。DCリンク電圧検出部13により検出されたDCリンク電圧の値は、DCリンク電圧比較部15へ送られる。
【0047】
ステップS102において、入力電流検出部14は、整流器11に対して交流入力側から入力される入力電流すなわち電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力される入力電流を検出する。入力電流検出部14により検出された入力電流の値は、電流比較部16へ送られる。
【0048】
なお、ステップS101のDCリンク電圧検出処理とステップS102の入力電流検出処理とは入れ替えて実行してもよい。
【0049】
ステップS103において、DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と第1の電圧閾値Vth1とを比較し、DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いか否かを判定する。ステップS103において、DCリンク電圧が、第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定された場合はステップS104へ進み、第1の電圧閾値Vth1以上であると判定された場合はステップS101へ戻る。ステップS103におけるDCリンク電圧比較部15による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0050】
ステップS104において、DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と第2の電圧閾値Vth2とを比較し、DCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2よりも高いか否かを判定する。ステップS104において、DCリンク電圧が、第2の電圧閾値Vth2よりも高いと判定された場合はステップS105へ進み、第2の電圧閾値Vth2よりも高いと判定された場合はステップS101へ戻る。ステップS104におけるDCリンク電圧比較部15による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0051】
なお、ステップS103のDCリンク電圧比較処理とステップS104のDCリンク電圧比較処理とは入れ替えて実行してもよい。
【0052】
ステップS105において、電流比較部16は、入力電流と電流閾値Ithとを比較し、入力電流が電流閾値Ithよりも低いか否かを判定する。ステップS105において、入力電流が、電流閾値Ithよりも低いと判定された場合はステップS106へ進み、電流閾値Ith以上であると判定された場合はステップS107へ進む。ステップS105における電流比較部16による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0053】
なお、ステップS104のDCリンク電圧比較処理とステップS105の入力電流比較処理との間に、ステップS102の入力電流検出処理を実行してもよい。
【0054】
ステップS106において、異常検出部17は、第1の異常が発生したと判定する。第1の異常には、交流電源2の長期停電、交流電源2の瞬時停電、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態、及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0055】
ステップS107において、異常検出部17は、第2の異常が発生したと判定する。第2の異常には、モータ駆動装置1の故障、モータ駆動装置1に対する過負荷、及び交流電源2の容量不足のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0056】
なお、
図2では図示していないが、ステップS106及びS107の異常判定処理の後に、表示部23は異常検出部17の判定結果を表示してもよい。
【0057】
上述のステップS101~S107の一連の処理は、所定の周期で、例えば異常検出部17により第1の異常または第2の異常が検出されるまで、繰り返し実行される。
【0058】
続いて、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置1の変形例について、
図3及び
図4を参照して説明する。本変形例は、第1の異常に含まれる交流電源2の瞬時停電と、交流電源2の長期停電及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態と、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態と、をさらに判別可能にしたものである。
【0059】
図3は、本開示の一実施形態の変形例によるモータ駆動装置を示す図である。
【0060】
図3に示すように、本変形例によるモータ駆動装置1は、入力電圧検出部21及び入力電圧比較部22をさらに備える。なお、入力電圧検出部21及び入力電圧比較部22並びに異常検出部17以外の回路構成要素については
図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0061】
入力電圧検出部21は、第1の開閉部である電磁接触器18と第2の開閉部であるブレーカ19との間における相電圧である入力電圧を検出する。図示の例では、交流電源2は三相交流電源であるので電磁接触器18とブレーカ19との間における三相の各相の相電圧を検出する。交流電源2が単相交流電源である場合は電磁接触器18とブレーカ19との間における単相電圧を検出する。入力電圧検出部21によって検出された入力電圧の値は、入力電圧比較部22へ送られる。
【0062】
入力電圧比較部22は、DCリンク電圧比較部15によりDCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2も高いと判定された場合において、入力電圧と停電閾値Vth3とを比較する。また、入力電圧比較部22は、この比較処理において、入力電圧が停電閾値Vth3より低い状態が所定の時間未満だけ継続したかあるいは所定の時間以上継続したかについても判定する。停電閾値Vth3は、交流電源2に長期停電または瞬時停電が発生しているか否かを判定するために用いられる。停電閾値Vth3については、例えば実験もしくは実際の運用によりモータ駆動装置1を動作させたり、またはコンピュータによるシミュレーションにより、モータ駆動装置1の適用環境やモータ駆動装置1によりモータ3を正常に駆動することができる交流電圧などを事前に求めたうえで、適宜設定することができる。一例を挙げると、停電閾値Vth3は、例えばモータ駆動装置1にてモータ3を正常に駆動することができる交流電源2の交流電圧の下限値よりも、安全性を考慮して例えば数十パーセント程度低い値に設定すればよい。ここで示した数値例はあくまでも一例であって、これ以外の値であってもよい。なお、停電閾値Vth3については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、停電閾値Vth3を一旦設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。入力電圧比較部22による比較結果は、異常検出部17へ送られる。また、入力電圧が停電閾値Vth3より低い状態が所定の時間未満だけ継続したかあるいは所定の時間以上継続したかの判定に用いられる上記「所定の時間」は、交流電源2の停電を、瞬時の停電(瞬停)とそれ以外の長期的な停電とを切り分けることができる程度の値に設定される。一般に、交流電源2の瞬時停電は数秒以下の停電を指すことが多いので、上記「所定の時間」は数秒程度(例えば2秒)に設定すればよい。ここで示した数値例はあくまでも一例であって、これ以外の値であってもよい。なお、上記「所定の時間」については、書き換え可能な記憶部(図示せず)に記憶されて外部機器によって書き換え可能であってもよく、上記「所定の時間」を一旦設定した後であっても、必要に応じて適切な値に変更することができる。入力電圧比較部22による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0063】
上述のように、入力電圧検出部21は三相の各相の相電圧である入力電圧を検出するので、入力電圧比較部22は、三相の各相についての入力電圧と停電閾値Vth3とを比較する。入力電圧比較部22は、三相のうちの少なくとも一相の入力電流が停電閾値Vth3より低ければ、「入力電圧は停電閾値Vth3より低い」と判定する。この代替例として、入力電圧比較部22は、例えば、三相の入力電圧を二相座標上の電圧ベクトルに座標変換し、当該電圧ベクトルの振幅が停電閾値Vth3とよりも低い場合に「入力電圧は停電閾値Vth3より低い」と判定してもよい。
【0064】
異常検出部17は、入力電圧比較部22により入力電圧が停電閾値Vth3以下である状態が所定の時間未満だけ継続したと判定された場合、交流電源2の瞬時停電が発生したと判定する。また、異常検出部17は、入力電圧比較部22により入力電圧が停電閾値Vth3以下である状態が所定の時間以上にわたって継続したと判定された場合、第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態または交流電源2の長期停電のいずれかが発生したと判定する。また、異常検出部17は、入力電圧比較部22により入力電圧が停電閾値Vth3より高いと判定された場合、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態が発生したと判定する。異常検出部17による判定結果は、表示部23により表示される。
【0065】
例えば、異常検出部17により「交流電源2の瞬時停電が発生した」と判定された場合、作業者は、交流電源2が復旧するまで待機するといった対応をとることができる。例えば、異常検出部17により「ブレーカ19による電流経路の開状態または交流電源2の長期停電のいずれかが発生した」と判定された場合、作業者は、ブレーカ19の開閉を確認する作業を直ぐに着手することができる。ブレーカ19が開状態にあることの確認が取れ次第、迅速にブレーカ19の復帰作業にとりかかることができる。また、作業者は、ブレーカ19が閉状態にあることの確認が取れた場合は、交流電源2の復旧作業を行ったり、交流電源2が復旧するまで待機するといった対応をとることができる。例えば、異常検出部17により電磁接触器18による電流経路の開状態が発生した」と判定された場合、作業者は、電磁接触器18の復帰作業に直ぐに着手することができる。
【0066】
このように本変形例によれば、第1の異常に含まれる交流電源2の瞬時停電と、交流電源2の長期停電及び第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態と、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態と、をさらに判別することができる。なお、本変形例においても、DCリンク電圧比較部15によりDCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定されまたはDCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2も高いと判定された場合において、「電流比較部16により入力電流が電流閾値Ith以上であると判定されたとき」は、異常検出部17は「第2の異常が発生した」と判定する。
【0067】
入力電圧比較部22は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよく、あるいは各種電子回路のみで構成されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、入力電圧比較部22を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、入力電圧比較部22を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ記録媒体として実現してもよい。また、入力電圧比較部22は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよく、ロボットを制御するロボットコントローラ内に設けられてもよい。
【0068】
また、入力電圧検出部21は、アナログ回路とディジタル回路との組み合わせで構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアプログラム形式で構築された演算処理装置にて実現されてもよく、あるいは、アナログ回路のみで構成されてもよい。なお、入力電圧検出部21については、モータ駆動装置1に一般的に設けられるものを流用してもよい。
【0069】
また、停電閾値Vth3、及び交流電源2の停電が瞬時停電であるか否かを判定するために用いられる上記「所定の時間」を記憶する記憶部は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成されてもよい。
【0070】
図4は、本開示の一実施形態の変形例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0071】
モータ駆動装置1によりモータ3の駆動を行っている場合において、ステップS201において、DCリンク電圧検出部13は、DCリンクの端子間電圧であるDCリンク電圧を検出する。DCリンク電圧検出部13により検出されたDCリンク電圧の値は、DCリンク電圧比較部15へ送られる。
【0072】
ステップS202において、入力電流検出部14は、整流器11に対して交流入力側から入力される入力電流すなわち電磁接触器18から整流器11の交流入力側へ入力される入力電流を検出する。入力電流検出部14により検出された入力電流の値は、電流比較部16へ送られる。
【0073】
ステップS203において、入力電圧検出部21は、第1の開閉部である電磁接触器18と第2の開閉部であるブレーカ19との間における相電圧である入力電圧を検出する。入力電圧検出部21によって検出された入力電圧の値は、入力電圧比較部22へ送られる。
【0074】
なお、ステップS201のDCリンク電圧検出処理とステップS202の入力電流検出処理とステップS203の入力電圧検出処理とは入れ替えて実行してもよい。
【0075】
ステップS204において、DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と第1の電圧閾値Vth1とを比較し、DCリンク電圧が第1の電圧閾値Vth1よりも低いか否かを判定する。ステップS204において、DCリンク電圧が、第1の電圧閾値Vth1よりも低いと判定された場合はステップS205へ進み、第1の電圧閾値Vth1以上であると判定された場合はステップS201へ戻る。ステップS204におけるDCリンク電圧比較部15による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0076】
ステップS205において、DCリンク電圧比較部15は、DCリンク電圧と第2の電圧閾値Vth2とを比較し、DCリンク電圧が第2の電圧閾値Vth2よりも高いか否かを判定する。ステップS205において、DCリンク電圧が、第2の電圧閾値Vth2よりも高いと判定された場合はステップS206へ進み、第2の電圧閾値Vth2よりも高いと判定された場合はステップS201へ戻る。ステップS205におけるDCリンク電圧比較部15による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0077】
なお、ステップS204のDCリンク電圧比較処理とステップS205のDCリンク電圧比較処理とは入れ替えて実行してもよい。
【0078】
ステップS206において、電流比較部16は、入力電流と電流閾値Ithとを比較し、入力電流が電流閾値Ithよりも低いか否かを判定する。ステップS206において、入力電流が、電流閾値Ithよりも低いと判定された場合はステップS208へ進み、電流閾値Ith以上であると判定された場合はステップS207へ進む。ステップS206における電流比較部16による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0079】
なお、ステップS205のDCリンク電圧比較処理とステップS206の入力電流比較処理との間に、ステップS202の入力電流検出処理を実行してもよい。
【0080】
ステップS208において、入力電圧比較部22は、入力電圧と停電閾値Vth3とを比較し、入力電圧が停電閾値Vth3よりも高いか否かを判定する。ステップS208において、入力電圧が、停電閾値Vth3よりも高いと判定された場合はステップS209へ進み、停電閾値Vth3以下であると判定された場合はステップS210へ進む。ステップS208における入力電圧比較部22による比較結果は、異常検出部17へ送られる。
【0081】
ステップS210において、入力電圧比較部22は、入力電圧と停電閾値Vth3とを比較し、入力電圧が停電閾値Vth3以下である状態が所定の時間以上にわたって継続したか否かを判定する。ステップS210において、入力電圧が停電閾値Vth3以下である状態が、所定の時間以上にわたって継続したと判定された場合はステップS211へ進み、所定の時間未満だけ継続したと判定された場合はステップS212へ進む。
【0082】
ステップS207において、異常検出部17は、第2の異常が発生したと判定する。第2の異常には、モータ駆動装置1の故障、モータ駆動装置1に対する過負荷、及び交流電源2の容量不足のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0083】
ステップS209において、異常検出部17は、第1の開閉部である電磁接触器18による電流経路の開状態が発生したと判定する。
【0084】
ステップS211において、異常検出部17は、第2の開閉部であるブレーカ19による電流経路の開状態または交流電源2の長期停電のいずれかが発生したと判定する。
【0085】
ステップS212において、異常検出部17は、交流電源2の瞬時停電が発生したと判定する。
【0086】
なお、
図4では図示していないが、ステップS207、S209、S211及びS212の異常判定処理の後に、表示部23は異常検出部17の判定結果を表示してもよい。
【0087】
上述のステップS201~S212の一連の処理は、所定の周期で、例えば異常検出部17により交流電源2の長期停電、交流電源2の瞬時停電、電磁接触器18による電流経路の開状態、ブレーカ19による電流経路の開状態、または第2の異常が検出されるまで、繰り返し実行される。
【符号の説明】
【0088】
1 モータ駆動装置
2 交流電源
3 モータ
11 整流器
12 逆変換器
13 DCリンク電圧検出部
14 入力電流検出部
15 DCリンク電圧比較部
16 電流比較部
17 異常検出部
18 電磁接触器
19 ブレーカ
20 DCリンクコンデンサ
21 入力電圧検出部
22 入力電圧比較部
23 表示部