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特許7328160洗浄済みミックスベビーリーフ及びその製造方法
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  • 特許-洗浄済みミックスベビーリーフ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】洗浄済みミックスベビーリーフ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20230808BHJP
   A23B 7/157 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A23L19/00 Z
A23B7/157
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020015941
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122192
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-10-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和元年7月2日、販売先:イオン赤羽北本通り店 他 記事欠損あり
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和元年7月3日、販売先:カスミフードスクエア柏千代田店 他 記事欠損あり
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和元年9月18日、販売先:ヨークマート青葉台店 他 記事欠損あり
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和元年11月12日、販売先:スーパーアルプス愛川店 他 記事欠損あり
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:令和元年11月19日、販売先:東武ストアみずほ台東店 他 記事欠損あり
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 孝治
(72)【発明者】
【氏名】公文 敬夫
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 賢祐
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041057(JP,A)
【文献】特開2008-237208(JP,A)
【文献】特開2017-060442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/
A23B 7/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄済みミックスベビーリーフであって、それを構成するのは、少なくとも、レタスのベビーリーフであり、
前記レタスのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下であり、
前記ミックスベビーリーフが含まないのは、ミズナのベビーリーフ及びホウレンソウのベビーリーフであり、
前記ミックスベビーリーフの製造から72時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g未満であり、
前記ミックスベビーリーフの製造から0時間後の一般生菌数は、1.0E+03CFU/g以上である。
【請求項2】
洗浄済みミックスベビーリーフであって、それを構成するのは、少なくとも、レタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフであり、
前記レタスのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり20g以下であり、
前記コマツナのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下であり、
前記ミックスベビーリーフが含まないのは、ミズナのベビーリーフ及びホウレンソウのベビーリーフであり、
前記ミックスベビーリーフの製造から72時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g未満であり、
前記ミックスベビーリーフの製造から0時間後の一般生菌数は、1.0E+03CFU/g以上である。
【請求項3】
洗浄済みミックスベビーリーフの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、レタスのベビーリーフであり、それにより得られるのは、ミックスベビーリーフであり、
前記レタスのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下であり、
前記ミックスベビーリーフが含まないのは、ミズナのベビーリーフ及びホウレンソウのベビーリーフであり、
洗浄:ここで洗浄されるのは、ベビーリーフであり、
前記洗浄の手段は、殺菌水への接液であり、
前記接液時間は、60分間未満であり、
前記ミックスベビーリーフの製造から72時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g未満である。
【請求項4】
洗浄済みミックスベビーリーフの製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程である:
混合:ここで混合されるのは、少なくとも、レタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフであり、それにより得られるのは、ミックスベビーリーフであり、
前記レタスのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり20g以下であり、
前記コマツナのベビーリーフは、前記ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下であり、
前記ミックスベビーリーフが含まないのは、ミズナのベビーリーフ及びホウレンソウのベビーリーフであり、
洗浄:ここで洗浄されるのは、ベビーリーフであり、
前記洗浄の手段は、殺菌水への接液であり、
前記接液時間は、60分間未満であり、
前記ミックスベビーリーフの製造から72時間後の一般生菌数は、1.0E+06CFU/g未満である。
【請求項5】
請求項3又は4の製造方法であって、
前記殺菌水が含むのは、次亜塩素酸ナトリウムであり、
前記殺菌水の有効塩素濃度は、10ppm乃至200ppmである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、洗浄済みミックスベビーリーフ及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、市場で求められている野菜の要件の1つは、調理の一部又は全部が既に施されていることである。具体的な調理を例示すると、洗浄、カット、加熱等である。各調理の中でも洗浄は、葉野菜においてその需要が高い。洗浄済みの葉野菜の需要が高い理由は、その工程の煩雑さである。つまり、葉野菜の洗浄には、ボウルやザルなどの調理器具が必要であることに加え、カット、水晒し、水切り等の複数の工程を行う必要がある。また、洗浄済みの葉野菜は、調理の手間を省くことが可能であるだけでなく、そのまま盛り付けるだけでサラダとして提供することも可能であり、時間のない現代社会において重宝されている。
【0003】
葉野菜を洗浄する方法は各種知られているが、対象となる葉野菜は、生長した大人葉であり、ベビーリーフを洗浄する方法は限られたものしか知られていない。例えば、特許文献1が開示するのは、殺菌葉野菜の製造方法であり、その目的は、葉野菜にダメージを与えることや外観を損なうことなく、菌数を低減させることである。その方法は、殺菌作用のある溶液が付着した状態で特定時間保管することである。特許文献2が開示するのは、ベビーリーフの選別方法であり、その目的は、溶液へ浸すことなくベビーリーフから不要物を除去することである。その方法は、フルイ孔から不要物を落下させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-237208号
【文献】特開2017-131138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、喫食時に洗浄する必要のないベビーリーフの提供である。すなわち、ベビーリーフを洗浄することと、洗浄後の一般生菌数を特定の値以下にすることを両立させることである。ベビーリーフは、洗浄を行うと、そのダメージによって一般生菌数が上昇してしまう。なぜならベビーリーフは、植物の幼葉であり、他の葉野菜に比べ著しくダメージに弱いからである。しかし、洗浄を行わなければ、喫食時に洗浄する必要のない一般生菌数を実現することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、特定の植物種のベビーリーフにおいて、洗浄後の一般生菌数が高くなることである。つまり、当該植物種のベビーリーフを、特定の割合以下とすることで、洗浄後においても、ベビーリーフの一般生菌数を特定の値以下にすることが可能となる。
【0007】
本発明に係る洗浄済みミックスベビーリーフを構成するのは、少なくともレタスのベビーリーフである。ここで、レタスのベビーリーフは、ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下である。
【0008】
本発明に係る洗浄済みミックスベビーリーフを構成するのは、少なくともレタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフである。ここで、レタスのベビーリーフは、ミックスベビーリーフ100gあたり20g以下であり、コマツナのベビーリーフは、ミックスベビーリーフ100gあたり50g以下である。
【0009】
本発明に係る洗浄済みミックスベビーリーフの製造方法を構成するのは、少なくとも、混合と洗浄である。混合において、少なくとも、レタスのベビーリーフが混合される。洗浄において、ベビーリーフが洗浄される。
【0010】
本発明に係る洗浄済みミックスベビーリーフの製造方法を構成するのは、少なくとも、混合と洗浄である。混合において、少なくとも、レタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフが混合される。洗浄において、ベビーリーフが洗浄される。
【発明の効果】
【0011】
本発明が可能にするのは、喫食時に洗浄する必要のないベビーリーフの提供である。すなわち、洗浄後の一般生菌数が特定の値を越えないベビーリーフの提供である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る洗浄済みミックスベビーリーフの製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<洗浄済みミックスベビーリーフ>
本発明に係る洗浄済みミックスベビーリーフ(以下、「本ミックスベビーリーフ」という。)とは、少なくともレタスのベビーリーフが混合されたミックスベビーリーフであって、洗浄済みのものである。または、本ミックスベビーリーフとは、少なくともレタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフが混合されたミックスベビーリーフであって、洗浄済みのものである。本ミックスベビーリーフを流通させる温度帯は、好ましくは、いわゆるチルド(冷蔵)帯である。チルド帯とは、流通温度帯であって、10℃以下の凍結しない温度帯である。好ましくは、0℃から10℃であり、より好ましくは、0℃から5℃である。本ミックスベビーリーフの製造から72時間後の一般生菌数は、好ましくは、1.0E+06CFU/g未満である。本ミックスベビーリーフが排除しないのは、レタスやコマツナ以外のベビーリーフである。
【0014】
<ベビーリーフ>
ベビーリーフとは、播種後10日から90日程度の葉菜を意味する。本出願において、用語「ベビーリーフ」が使用される場合、ベビーリーフの種類の単複は不問であり、具体的には、1種類のベビーリーフでもよく、数種類のベビーリーフをミックスしたものでもよい。ベビーリーフの大きさは、植物の種類により変わるため、限定されないが、食べやすさの観点から、4cm以上15cm以下であり、好ましくは4cm以上12cm以下であり、より好ましくは4cm以上10cm以下である。
【0015】
<ベビーリーフに用いられる植物>
ベビーリーフに用いられる植物は、食用可能であればよく、特に限定されないが、例示すると、アブラナ科、ヒユ科、キク科、セリ科、ユリ科、アカザ科の野菜等である。具体例としては、コマツナ、ミズナ、ルッコラ、タカナ、ターサイ、カラシナ、マスタードグリーン、レッドアジアンマスタード、ケール、ホワイトケール、レッドケール、パクチョイ、セルバチコ、キャベツ、レッドキャベツ、ブロッコリ、ホウレンソウ、ビート、デトロイト、フダンソウ、スイスチャード、レタス、サニーレタス、リーフレタス、カールレタス、コスレタス、レッドロメイン、グリーンロメイン、サラダナ、サンチュ、ロロロッサ、チコリ、エンダイブ、トレビス、ミツバ、パセリ、ニンジン、セロリ、チャービルなどである。
【0016】
<ミックスベビーリーフ>
ミックスベビーリーフとは、ベビーリーフであって、2種以上のベビーリーフが混合されたものをいう。好ましくは、本ミックスベビーリーフは、少なくとも、5種以上のベビーリーフが混合されたものである。
【0017】
<レタス>
レタスは、キク科(Asteraceae)に属する野菜である。ベビーリーフ向けに栽培されるレタスを例示すると、グリーンロメイン、レッドロメイン等である。
【0018】
<コマツナ>
コマツナは、アブラナ科(Brassicacear)に属する野菜である。ベビーリーフ向けに栽培されるコマツナを例示すると、ピノグリーン等である。コマツナのベビーリーフは、収量性に優れ、食べやすい香味である。そのため、ミックスベビーリーフの製造において、ベースとして利用しやすい。
【0019】
<本ミックスベビーリーフの製造方法>
図1が示すのは、本ミックスベビーリーフの製造方法の流れである。本ミックスベビーリーフの製造方法を構成するのは、主に、混合(S10)、洗浄(S20)、水晒し(S30)、脱水(S40)、充填(S50)である。
【0020】
<混合(S10)>
混合工程では、少なくとも、レタスのベビーリーフが混合される。または、混合工程では、少なくとも、レタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフが混合される。その目的は、風味、食感、彩り、栄養バランス等の好適化である。好ましくは、混合工程では、少なくとも、5種以上のベビーリーフが混合される。ベビーリーフが混合されて得られるのは、ミックスベビーリーフである。当該ミックスベビーリーフ100gあたりのレタスのベビーリーフは、50g以下である。好ましくは、当該ミックスベビーリーフ100gあたりのミズナのベビーリーフは、40g以下であり、より好ましくは、30g以下であり、さらに好ましくは、20g以下であり、最も好ましくは、15g以下である。または、当該ミックスベビーリーフ100gあたりのミズナのベビーリーフは、20g以下であり、かつ、コマツナのベビーリーフは、50g以下である。本工程が排除しないのは、ミズナやコマツナ以外のベビーリーフの混合である。混合工程は、必ずしも洗浄工程の前である必要はなく、洗浄工程の後に混合工程を行ってもよい。さらに混合工程は、必ずしも独立した工程である必要はなく、例えば、充填工程等と併せて行ってもよい。
【0021】
<洗浄(S20)>
洗浄工程では、ベビーリーフが洗浄される。その目的は、異物の除去及び菌数の低減である。異物を例示すると、ベビーリーフに付着する泥、土、砂等である。ベビーリーフを洗浄する手段は、特に限定されないが、好ましくは、殺菌水への接液である。接液する方法は、特に限定されないが、例示すると、浸漬、噴霧、流水等である。ベビーリーフの洗浄を行う回数は、1回又は2回以上である。洗浄に使用される液の効果は、一般生菌数の低減である。そのような洗浄液は、特に限定されないが、例示すると、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸水、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、焼成カルシウム、塩酸、酢酸、過酢酸、クエン酸、フマル酸、オゾンなどであり、好ましくは、次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩である。次亜塩素酸及び次亜塩素酸塩の好ましい条件は、濃度が10ppm乃至200ppm、pHが4.8乃至8.0である。当該pHは、より好ましくは、5.0乃至7.0である。これらにより、菌数の低減効果が高まる。
【0022】
<接液温度>
殺菌水への接液を行う場合、当該殺菌水の温度は、0℃乃至30℃であり、好ましくは、0℃乃至15℃であり、最も好ましいのは、0℃乃至10℃である。殺菌水の水温は、高すぎても低すぎても、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。例えば、殺菌水の臭いが付きやすくなったり、しおれやすくなったり、日持ちがしにくくなる。
【0023】
<接液時間>
接液時間は、特に限定されないが、10秒間乃至60分間であり、好ましくは、10秒間乃至15分間であり、最も好ましくは、10秒間乃至10分間である。殺菌水への接液時間が短すぎると、一般生菌数が低減難い。他方、接液時間が長すぎると、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
【0024】
<水晒し(S30)>
水晒し工程では、ベビーリーフが水晒しされる。その目的は、殺菌剤の除去である。すなわち、水晒しを要するのは、殺菌水への接液を行う場合である。言い換えれば、この工程は、適宜省略される。水晒しの手段は、特に限定されないが、好ましくは、水への浸漬や水の噴霧等である。
【0025】
<晒し水>
晒し水は、特に限定されないが、例えば、水道水、井戸水、浄水などである。付言すると、衛生上必要な措置のとられた水に含まれる塩素(水道法施行規則(昭和32年12月14日厚生省令第45号)を参照)は、水晒しにおける除去の対象外である。
【0026】
<水晒し温度>
水晒しの温度は、0℃乃至30℃であり、好ましくは、0℃乃至20℃であり、最も好ましくは、0℃乃至10℃である。水晒しの処理温度が高すぎても低すぎても、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
【0027】
<水晒し時間>
水晒し時間は、特に限定されないが、好ましくは、1秒間乃至60分間であり、さらに好ましくは5秒間乃至30分間であり、最も好ましくは、10秒間乃至10分間である。水晒し時間が短すぎると、殺菌剤の除去効果が低くなる。他方、水晒し時間が長すぎると、ベビーリーフへのダメージが大きくなる。
【0028】
<除水(S40)>
除水工程では、ベビーリーフに付着する水分の一部又は全部が除去される。その目的は、洗浄後のベビーリーフの外観の向上である。除水とは、付着した水を除くことをいい、具体的には、脱水及び乾燥である。除水の方法は、特に限定されず、静置、送風、冷風、熱風、遠心分離、真空による吸引、吸湿素材の利用やこれらの組合せである。ベビーリーフ同士の接触による傷みや、遠心分離による圧力による傷みを考慮して、遠心分離を避け、風をあてることによる乾燥であることが好ましい。
【0029】
<充填(S50)>
充填工程では、本ミックスベビーリーフが容器に充填される。それにより得られるのは、容器詰め本ミックスベビーリーフである。本ミックスベビーリーフを充填する容器は、公知のものでよく、特に限定されないが、好ましくは、材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらの複合素材等であり、形態は、袋、トレー又はカップ等である。さらに、窒素ガス等の不活性ガスと共に充填してもよい。
【実施例
【0030】
<原料のベビーリーフ>
2017年8月に、栽培ハウス内で土耕栽培したベビーリーフを用いた。ベビーリーフの種類は、ホウレンソウ、コマツナ、ビート及びルッコラとした。
【0031】
<洗浄済みベビーリーフの製造>
原料のベビーリーフを、次亜塩素酸を含有する洗浄水で洗浄した。洗浄後のベビーリーフの水晒しを行った。水晒し後のベビーリーフについて、真空での吸引及び風をあてることで、乾燥させた。乾燥後のベビーリーフをプラスチックの袋に充填し、洗浄済みベビーリーフを製造した。
【0032】
<一般生菌数の測定>
製造した洗浄済みベビーリーフを、10℃の冷蔵庫で保管した。洗浄前、製造から0時間後、製造から72時間後における、洗浄済みベビーリーフの一般生菌数を測定した。本測定で採用した一般生菌数の測定方法は、食品衛生検査指針(社団法人日本食品衛生協会、2004年)に準拠した標準寒天培地を用いた混釈法である。付言すると、弁当及びそうざいの衛生規範(昭和54年6月29日環食第161号改正平成7年10月12日衛食第188号・衛乳第211号・衛化第119号)における、一般生菌数は、1.0E+06CFU/g以下である。
【0033】
【表1】
【0034】
表1が示すのは、洗浄済みベビーリーフの一般生菌数(対数)である。この結果によれば、ホウレンソウは、製造から72時間後の一般生菌数(対数)が、6.0以上である。すなわち、ホウレンソウは、洗浄後の一般生菌数が高い。
【0035】
<洗浄済みミックスベビーリーフの製造>
前述の原料のベビーリーフを、表2に示す割合で混合して、ミックスベビーリーフとした。当該ミックスベビーリーフについて、前述と同様の方法で洗浄、水晒し、乾燥及び充填を行い、洗浄済みミックスベビーリーフ(実施例1及び実施例2)を製造した。
【0036】
【表2】
【0037】
<一般生菌数の測定>
製造した洗浄済みミックスベビーリーフを、10℃の冷蔵庫で保管した。製造から72時間後における、洗浄済みミックスベビーリーフの一般生菌数を測定した。一般生菌数の測定方法は、前述と同様の方法とした。
【0038】
<一般生菌数のシミュレーション値の算出>
前述の洗浄済みベビーリーフの一般生菌数及びその配合割合を用い、洗浄済みミックスベビーリーフの一般生菌数のシミュレーション値を算出した。算出は、各洗浄済みベビーリーフの一般生菌数と、各ベビーリーフの配合割合を、以下の式に当てはめて、算出した。
【0039】
一般生菌数のシミュレーション値=洗浄済みホウレンソウの一般生菌数×ホウレンソウの配合割合+洗浄済みコマツナの一般生菌数×コマツナの配合割合+洗浄済みビートの一般生菌数×ビートの配合割合+洗浄済みルッコラの一般生菌数×ルッコラの配合割合
【0040】
【表3】
【0041】
表3が示すのは、実施例1及び実施例2の製造から72時間後の一般生菌数(対数)及び一般生菌数のシミュレーション値(対数)である。この結果によれば、実際に測定した一般生菌数と一般生菌数のシミュレーション値は略同じである。すなわち、様々な配合割合に変化させた場合の一般生菌数は、シミュレーションによって、把握することが可能である。
【0042】
<原料のベビーリーフ(追加)>
2018年1月から9月の間に、栽培ハウス内で土耕栽培したベビーリーフについて、洗浄後の一般生菌数の挙動を把握した。ベビーリーフの種類は、ミズナ、レタス、パクチョイ、ケールを用いた。洗浄済みベビーリーフの製造及び一般生菌数の測定は、前述と同様の方法で行った。
【0043】
【表4】
【0044】
表4が示すのは、洗浄済みベビーリーフの一般生菌数(対数)である。この結果によれば、ミズナ及びレタスは、製造から72時間後の一般生菌数(対数)が、6.0以上である。すなわち、ミズナ及びレタスは、洗浄後の一般生菌数が高い。
【0045】
<洗浄済みミックスベビーリーフの一般生菌数のシミュレーション及び評価>
製造から72時間後の洗浄済みベビーリーフの一般生菌数を用いて、各ベビーリーフの配合割合を変化させた場合の一般生菌数のシミュレーション値を算出した。さらに、一般生菌数のシミュレーション値(対数)から、評価を行った。評価基準は、一般生菌数のシミュレーション値(対数)が6.0以上のものは「×」、5.6以上5.9以下のものは「〇」、5.5以下のものは「◎」とした。
【0046】
【表5】
【0047】
表5が示すのは、各区分の配合割合、一般生菌数のシミュレーション値(対数)及び評価である。この結果によれば、レタスのベビーリーフを60%以上にすると、残りの40%全てを最も一般生菌数の低いケールのベビーリーフにしても、一般生菌数のシミュレーション値(対数)は、6.0となってしまう。他方、レタスのベビーリーフを50%以下とすることで、一般生菌数のシミュレーション値(対数)を5.9にすることが可能になる。すなわち、レタスのベビーリーフを配合する場合は、その割合を50%以下とすることで、製造から72時間後の洗浄済みミックスベビーリーフの一般生菌数(対数)を6.0未満とすることが可能となる。また、レタスのベビーリーフを15%以下にすると、一般生菌数のシミュレーション値(対数)は、5.5以下となり、配合する他のベビーリーフの自由度はさらに向上する。
【0048】
【表6】
【0049】
表6が示すのは、コマツナのベビーリーフが50%の場合における、各区分の配合割合、一般生菌数のシミュレーション値(対数)及び評価である。この結果によれば、コマツナのベビーリーフを50%含む場合、レタスのベビーリーフを30%にすると、残りの20%全てを最も一般生菌数の低いケールのベビーリーフにしても、一般生菌数のシミュレーション値(対数)は、6.0となってしまう。他方、コマツナのベビーリーフを50%含む場合であっても、レタスのベビーリーフを20%以下とすることで、一般生菌数のシミュレーション値(対数)を5.9にすることが可能になる。コマツナのベビーリーフは、収量性に優れ、食べやすい香味であるため、ベースとして利用しやすい。すなわち、レタスのベビーリーフ及びコマツナのベビーリーフを配合する場合は、レタスのベビーリーフを20%以下、コマツナのベビーリーフを50%以下とすることで、製造から72時間後の洗浄済みミックスベビーリーフの一般生菌数(対数)を6.0未満とすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明が有用な分野は、洗浄済みミックスベビーリーフ及びその製造方法である。
図1