(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法およびシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230808BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230808BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230808BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q10/04
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020037373
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】梅田 豊裕
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-277713(JP,A)
【文献】米国特許第07245980(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 10/04
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションする装置であって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得部を備え、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記装置は、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成部を備え、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記装置は、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成部を備え、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記装置は、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定部を備える、シミュレーション装置。
【請求項2】
前記副資材は、前記複数工程に含まれる連続する2以上の工程にわたって用いられており、
前記使用開始の前記イベント時刻は、前記2以上の工程の中で最初の工程が開始する時刻であり、
前記使用終了の前記イベント時刻は、前記2以上の工程の中で最後の工程が終了する時刻であり、
前記準備完了の前記イベント時刻は、前記使用終了の前記イベント時刻に、前記準備完了に要する予め定められた第1の時間を加えた時刻である、請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記最初の工程で前記副資材が複数用いられており、
前記最初の工程後、前記複数の副資材は別々の工程で用いられており、
前記複数の副資材において、前記使用開始の前記イベント時刻は、前記最初の工程が開始する時刻であり、
前記使用終了の前記イベント時刻は、前記複数の副資材毎に定められており、前記複数の副資材のそれぞれおける前記最後の工程が終了する時刻であり、
前記準備完了の前記イベント時刻は、前記複数の副資材毎に定められており、前記複数の副資材のそれぞれおける前記使用終了の前記イベント時刻に、前記第1の時間を加えた時刻である、請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記使用開始の前記イベント時刻は、前記最初の工程が開始する時刻から第2の時間を引いた時刻であり、
前記第2の時間は、前記副資材の前記使用開始の前において、前記仕掛品を処理する設備に前記副資材をセットするために要する予め定められた時間である、請求項2又は3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションする方法であって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得ステップを備え、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記方法は、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成ステップを備え、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記方法は、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成ステップを備え、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記方法は、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定ステップを備える、シミュレーション方法。
【請求項6】
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションするプログラムであって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得ステップを、コンピュータに実行させ、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記プログラムは、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成ステップを、前記コンピュータに実行させ、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記プログラムは、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成ステップを、前記コンピュータに実行させ、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記プログラムは、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定ステップを、前記コンピュータに実行させる、シミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、副資材の数をシミュレーションする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数工程によって仕掛品が処理されて製品が生産される過程で、工程中および工程間で使用される副資材の数をシミュレーションする技術がある。例えば、特許文献1は、現工程と現工程より一つ前の前工程とにおいて、ジョブの処理開始時刻と処理終了時刻とから、所定期間内における副資材の使用数を算出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によって算出される副資材の使用数は、所定期間における「のべ」の使用数である。生産過程中に副資材は、メンテナンスされて再使用されるので、生産過程における副資材の必要数は、副資材の「のべ」の使用数と異なる。
【0005】
生産設備や製品毎に、使用される副資材の種類が異なるので、副資材の種類毎に副資材の必要数が求められるべきであるが、特許文献1の技術は、これを考慮していない。
【0006】
製品の生産過程において、副資材はメンテナンスされて再使用されるが、副資材のメンテナンス中は副資材を使用できない。従って、副資材のメンテナンス時間が考慮されるべきであるが、特許文献1の技術は、これを考慮していない。
【0007】
複数工程の中に、仕掛品から副資材が着脱されない工程(例えば、熱処理工程)が含まれることがある。この場合、副資材の使用時間は、次の工程以降へ継続するので、仕掛品から副資材が着脱されない工程に対応できるようにするべきである。特許文献1の技術は、前工程と現工程の二つの工程を基にして副資材の使用数を算出するので、仕掛品から副資材が着脱されない工程が含まれる場合に対応できない。
【0008】
本発明の目的は、副資材のメンテナンス時間を考慮し、かつ、副資材の種類毎に副資材の必要数を算出できるシミュレーション装置、シミュレーション方法およびシミュレーションプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1局面に係るシミュレーション装置は、
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションする装置であって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得部を備え、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記装置は、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成部を備え、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記装置は、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成部を備え、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記装置は、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定部を備える。
【0010】
第1のデータ群は、例えば、
図12に示すデータ群である。第1のデータは、このデータ群を構成する行であり、例えば、1番目の行の「B、使用開始」が一つの第1のデータである。
【0011】
取得部は、第1のデータ群を作成することにより、第1のデータ群を取得してもよいし、取得部が、記憶部に予め記憶されている第1のデータ群を読み出すことにより、第1のデータ群を取得してもよい。
【0012】
第2のデータ群は、例えば、
図13に示す本数増減テーブルである。第2のデータは、本数増減テーブルを構成する行であり、例えば、1番目の行の「B、1、空欄」が一つの第2のデータである。第1のステイタスは、本数増減テーブルの「使用中」の欄の内容である。第2のステイタスは、本数増減テーブルの「準備中」の欄の内容である。
【0013】
第3のデータ群は、例えば、
図16に示すデータ群である。第3のデータは、このデータ群を構成する行であり、例えば、1番目の行の「1、0、1」が一つの第3のデータである。第1のステイタスの累積合計は、このデータ群の「累積の使用中」の欄の内容である。第2のステイタスの累積合計は、このデータ群の「累積の準備中」の欄の内容である。第1のステイタスの累積合計と第2のステイタスの累積合計との合計は、このデータ群の「累積の合計」の欄の内容である。
【0014】
第3のデータ群は、複数種類の副資材のそれぞれについて作成される。例えば、
図16に示すデータ群216A、
図17に示すデータ群216B、
図18に示すデータ群216Cである。
【0015】
本発明者は、第1のステイタスの累積合計と第2のステイタスの累積合計との合計(
図16、
図17、
図18)が、イベント時刻に応じて変化することに着目し、合計の最大値を副資材の必要数と見なすことができることを見出した。本発明の第1の局面に係るシミュレーション装置は、この必要数を算出(決定)することができる装置である。
【0016】
本発明の第1の局面に係るシミュレーション装置は、パラメータに副資材種を含めているので、副資材の種類別に副資材の必要数を算出することができる。
【0017】
本発明の第1の局面に係るシミュレーション装置は、パラメータに準備完了(副資材の使用終了の後に、副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされること)を含めているので、副資材のメンテナンス時間を考慮した副資材の必要数を算出することができる。
【0018】
上記構成において、
前記副資材は、前記複数工程に含まれる連続する2以上の工程にわたって用いられており、
前記使用開始の前記イベント時刻は、前記2以上の工程の中で最初の工程が開始する時刻であり、
前記使用終了の前記イベント時刻は、前記2以上の工程の中で最後の工程が終了する時刻であり、
前記準備完了の前記イベント時刻は、前記使用終了の前記イベント時刻に、前記準備完了に要する予め定められた第1の時間を加えた時刻である。
【0019】
この構成は、副資材が複数工程に含まれる連続する2以上の工程にわたって用いられる場合について、副資材の使用開始のイベント時刻 副資材の使用終了のイベント時刻、副資材の準備完了のイベント時刻の決定の仕方を規定する。
【0020】
副資材の使用終了のイベント時刻は、連続する2以上の工程の中で最後の工程が終了する時刻とされている。従って、連続する2以上の工程が2つの工程の場合(仕掛品から副資材が着脱されない工程を含まない場合)は、例えば、
図8に示すように、使用終了のイベント時刻が決定される。連続する2以上の工程が3以上の工程の場合(仕掛品から副資材が着脱されない工程を含む場合)は、例えば、
図10に示すように、使用終了のイベント時刻が決定される。従って、この構成によれば、仕掛品から副資材が着脱されない工程に対応することができる。
【0021】
上記構成において、
前記最初の工程で前記副資材が複数用いられており、
前記最初の工程後、前記複数の副資材は別々の工程で用いられており、
前記複数の副資材において、前記使用開始の前記イベント時刻は、前記最初の工程が開始する時刻であり、
前記使用終了の前記イベント時刻は、前記複数の副資材毎に定められており、前記複数の副資材のそれぞれおける前記最後の工程が終了する時刻であり、
前記準備完了の前記イベント時刻は、前記複数の副資材毎に定められており、前記複数の副資材のそれぞれおける前記使用終了の前記イベント時刻に、前記第1の時間を加えた時刻である。
【0022】
この構成は、連続する2以上の工程の中で最初の工程に、副資材が複数用いられる場合(員数が複数の場合)、例えば、
図9に示すように、複数の副資材のそれぞれについて、使用終了のイベント時刻、準備完了のイベント時刻が決定される。従って、この構成によれば、員数が複数の場合に対応することができる。
【0023】
上記構成において、
前記使用開始の前記イベント時刻は、前記最初の工程が開始する時刻から第2の時間を引いた時刻であり、
前記第2の時間は、前記副資材の前記使用開始の前において、前記仕掛品を処理する設備に前記副資材をセットするために要する予め定められた時間である。
【0024】
副資材の使用開始の前に、仕掛品を処理する設備に副資材をセットすることが必要な場合、セットに要する時間中、副資材は、別の仕掛品のために使用することができない。この構成によれば、セットに要する時間を、副資材が使用されている時間と見なし、副資材の使用開始のイベント時刻をこの時間分だけ早めている。従って、副資材の必要数の精度を高めることができる。
【0025】
本発明の第2局面に係るシミュレーション方法は、
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションする方法であって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得ステップを備え、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記方法は、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成ステップを備え、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記方法は、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成ステップを備え、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記方法は、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定ステップを備える。
【0026】
本発明の第2局面に係るシミュレーション方法は、本発明の第1局面に係るシミュレーション装置を方法の観点から規定しており、本発明の第1局面に係るシミュレーション装置と同様の作用効果を有する。
【0027】
本発明の第3局面に係るシミュレーションプログラムは、
複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数をシミュレーションするプログラムであって、
前記複数工程が実行される期間に発生する前記副資材の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の前記副資材のうち前記イベントで用いられる前記副資材の種類である副資材種と、が紐づけられた第1のデータに関して、前記イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の前記第1のデータを時系列に並べた第1のデータ群を取得する取得ステップを、コンピュータに実行させ、
前記準備完了とは、前記使用終了の後に、前記副資材がメンテナンスされて再び使用可能にされることであり、
前記プログラムは、さらに、
前記副資材種と、第1のステイタスと、第2のステイタスと、が紐づけられた第2のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第2のデータを時系列に並べた第2のデータ群を、前記第1のデータ群を基にして作成する第2のデータ群作成ステップを、前記コンピュータに実行させ、
前記第1のステイタスおよび前記第2のステイタスには、前記イベントが前記使用開始の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記使用終了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第1のステイタスが-1かつ前記第2のステイタスが+1にされており、前記イベントが前記準備完了の場合、当該イベントの前記イベント時刻と同じ前記イベント時刻において、前記第2のステイタスが-1にされており、
前記プログラムは、さらに、
前記第1のステイタスの累積合計と、前記第2のステイタスの累積合計と、前記第1のステイタスの累積合計と前記第2のステイタスの累積合計との合計と、が紐づけられた第3のデータに関して、前記イベント時刻に従って複数の前記第3のデータを時系列に並べた第3のデータ群を、前記第2のデータ群を基にして作成する第3のデータ群作成ステップを、前記コンピュータに実行させ、
前記第3のデータ群は、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成されており、
前記プログラムは、さらに、
前記第3のデータ群における前記合計の最大値を前記副資材の必要数と決定することを、前記複数種類の副資材のそれぞれについて作成された前記第3のデータ群に対して実行する決定ステップを、前記コンピュータに実行させる。
【0028】
本発明の第3局面に係るシミュレーションプログラムは、本発明の第1局面に係るシミュレーション装置をプログラムの観点から規定しており、本発明の第1局面に係るシミュレーション装置と同様の作用効果を有する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、副資材のメンテナンス時間を考慮し、かつ、副資材の種類毎に副資材の必要数を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態において、スプールの必要数が算出される対象となる複数工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】これら複数工程のスケジューリング結果の一例を表形式で示す図である。
【
図4】スプールマスタの一例を表形式で示す図である。
【
図5】準備リードタイムマスタの一例を表形式で示す図である。
【
図6】スケジュール結果にスプール種が設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図7】スプールイベントが設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図8】
図7に示すデータ群において、1行目から6行目を抜き出した図である。
【
図9】
図7に示すデータ群において、1行目から6行目、7行目、13行目を抜き出した図である。
【
図10】
図7に示すデータ群において、7行目から12行目を抜き出した図である。
【
図11】スプールイベント毎にデータが並び変えられたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図12】イベント時刻が早い順にデータを並び変えたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図14】本数増減テーブルの作成の仕方を説明する説明図である。
【
図15】スプール本数の累積が設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図16】スプール種Aのスプール本数の累積が設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図17】スプール種Bのスプール本数の累積が設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図18】スプール種Cのスプール本数の累積が設定されたデータ群の一例を表形式で示す図である。
【
図19】各スプール種について、スプールの必要数を表形式で示す図である。
【
図20】実施形態に係るシミュレーション装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図23】実施形態の変形例で用いられる準備リードタイムマスタの一例を表形式で示す図である。
【
図24】スプールに装着された圧延コイルの模式図である。
【
図25】スプールの使用開始、スプールの使用終了、スプールの準備完了を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。各図において、同一符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その構成について、既に説明している内容については、その説明を省略する。
【0032】
本実施形態に係るシミュレーション装置、方法およびプログラムは、複数工程によって仕掛品を処理する場合に用いられる副資材の必要数を事前に算出する。仕掛品として、鉄鋼薄板や非鉄薄板を圧延したコイル(以下、圧延コイル)を例にし、副資材として、スプールを例にして説明する。
【0033】
図24は、スプールに装着された圧延コイルの模式図である。スプールは、圧延コイルの芯として利用する円筒状の副資材であり、圧延コイルの巻ずれを防止し、生産設備への確実な固定のために必要となる。
【0034】
図25は、スプールの使用開始、スプールの使用終了、スプールの準備完了を説明する説明図である。この図には、複数工程として、工程N(圧延工程)、工程N+1(熱処理工程)、工程N+2(洗浄工程)および工程N+3(表面処理工程)が示されている。スプールは、現工程の開始から次工程の終了まで圧延コイルに装着され、その後、必要なメンテナンスを行った後に、再使用可能となる。工程N+1のように、スプールを圧延コイルから着脱しない工程も存在する。生産設備や製品の品種により、利用できるスプールの種類が決まっている。スプールの種類として、スプール種Aとスプール種Bがあるとする。
【0035】
スプール種Aのスプールは、工程N、工程N+1および工程N+2で使用される。スプール種Aのスプールの使用開始は、工程Nの開始時刻である。スプール種Aのスプールの使用終了は、工程N+2の終了時刻である。スプール種Aのスプールの準備完了(メンテナンス終了)は、スプール種Aのスプールの使用終了から予め定められた時間が経過したときである。
【0036】
スプール種Bのスプールは、工程N+2および工程N+3で使用される。スプール種Bのスプールの使用開始は、工程N+2の開始時刻である。スプール種Bのスプールの使用終了は、工程N+3の終了時刻である。スプール種Bのスプールの準備完了(メンテナンス終了)は、スプール種Bのスプールの使用終了から予め定められた時間が経過したときである。
【0037】
実施形態では、生産スケジュールまたはシミュレーション結果が与えられたとき、それを実行するために、どの種類のスプールがどれだけ必要かを定量化する。これにより、必要となる数のスプールを事前に準備することが可能となるので、スプール不足による製品の生産停止を回避することができる。
【0038】
図1は、実施形態に係るシミュレーション装置100の構成を示すブロック図である。シミュレーション装置100は、演算処理部1と、記憶部2と、データ入出力部3と、入力部4と、出力部5と、を備える。
【0039】
演算処理部1は、スプールの必要数を算出するために必要な各種演算および各種処理をするハードウェアプロセッサであり、機能ブロックとして、スプール種設定部11と、スプールイベント作成部12と、スプールイベント順序作成部13と、本数増減テーブル作成部14と、スプール本数累計部15と、必要スプール本数決定部16と、を備える。演算処理部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびHDD(Hard Disk Drive)等のハードウェア、上記機能ブロックの機能を実行するためのプログラムおよびデータ等によって実現される。
【0040】
入力部4は、シミュレーション装置100のユーザが、各種の情報、データ、命令等を入力するための装置である。入力部4は、キーボード、マウス、タッチパネル等によって実現される。
【0041】
出力部5は、シミュレーションの結果等を出力する。出力部5は、プリンタ、表示装置等によって実現される。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)である。
【0042】
データ入出力部3は、記憶部2に記憶されているスケジューリング結果21、スプールマスタ22、準備リードタイムマスタ23を、演算処理部1へ入力させる。スケジューリング結果21、スプールマスタ22および準備リードタイムマスタ23は、ユーザによって予め作成されている。ユーザは、入力部4を操作して、これらをシミュレーション装置100に入力すると、データ入出力部3は、これを記憶部2へ出力する。記憶部2は、出力されたこれらを記憶する。データ入出力部3は、入出力インターフェース(入出力インターフェース回路)により実現される。
【0043】
記憶部2は、スケジューリング結果21、スプールマスタ22および準備リードタイムマスタ23を予め記憶する機能を有する。記憶部2は、フラッシュメモリやHDD等のハードウェアによって実現される。
【0044】
スケジューリング結果21について説明する。
図2は、実施形態において、スプールの必要数が算出される対象となる複数工程の一例を示すフロー図である。
図3は、これら複数工程のスケジューリング結果21の一例を表形式で示す図である。
図2および
図3を参照して、設備CD(設備コード)がM1~M12である設備が使用される複数工程によって、製品No.がP1である製品の仕掛品、製品No.がP2である製品の仕掛品、製品No.がP1-1である製品の仕掛品、および、製品No.がP1-2である製品の仕掛品が処理される。製品No.P1である製品の仕掛品は、設備CDがM6である設備(例えば、スリッタ)によって二つに分割され、製品No.がP-1である製品の仕掛品と製品No.がP-2である製品の仕掛品とが作製される。
【0045】
スケジューリング結果21は、製品No.の欄と、工程追番の欄と、設備CDの欄と、員数の欄と、開始時刻の欄と、終了時刻の欄と、で構成される表である。スケジューリング結果21の見方を説明する。スケジューリング結果21の1行目を参照して、製品No.がP1である製品の仕掛品は、追番1の工程において、設備CDがM1である設備によって処理される。この工程の員数は、1であり、開始時刻は、4月1日10時00分であり、終了時刻は、4月1日11時00分である。6行目を参照して、製品No.がP1である製品の仕掛品は、追番6の工程において、設備CDがM6である設備で、製品No.がP-1である製品の仕掛品と製品No.がP-2である製品の仕掛品とに分割されるので、員数が2にされている。
【0046】
スプールマスタ22について説明する。
図4は、スプールマスタ22の一例を表形式で示す図である。スプールマスタ22は、製品No.の欄と、前設備CDの欄と、後設備CDの欄と、スプール種の欄と、で構成される表である。製品No.の欄は、スケジューリング結果21の製品No.の欄と同じ内容を示す。前設備CDの欄は、現工程と次工程(連続する二つの工程)において、現工程で使用される設備の設備CDを示し、後設備CDは、次工程で使用される設備の設備CDを示す。スプール種の欄は、現工程と次工程で使用されるスプールの種類を示す。
【0047】
スプールマスタ22の見方を説明する。スプールマスタ22の2行目を参照して、製品No.がP1である製品の仕掛品は、設備CDがM2である設備が使用される現工程と設備CDがM3である設備が使用される次工程で処理される。これらの工程でスプール種Aのスプールが使用される。従って、前設備CDの欄がM2とされ、後設備CDの欄がM3とされ、スプール種の欄がAとされている。
【0048】
スプールマスタ22において、「*」は、設備を限定しないことを示す(設備CDがM1~M12である設備のいずれでもよく、また、これらの設備でなくてもよい)。「↓」は、次工程で、スプールが着脱されないこと示す。このような設備は、例えば、熱処理炉、一部のレバース圧延機である。(U)は、出荷用の製品に使用されるスプールを示す。このスプールは、スプールの必要数に含まれない。
【0049】
準備リードタイムマスタ23について説明する。
図5は、準備リードタイムマスタ23の一例を表形式で示す図である。スプールは使用が終了すると、メンテナンスがされて再使用される。準備リードタイムは、スプールの使用終了から次に使用可能になるまでに要する予め定められた時間(第1の時間)であり、スプール種毎に定められている。
【0050】
図1を参照して、演算処理部1は、スプール種設定部11と、スプールイベント作成部12と、スプールイベント順序作成部13と、本数増減テーブル作成部14と、スプール本数累計部15と、必要スプール本数決定部16と、を備える。
【0051】
スプール種設定部11は、データ入出力部3を用いて、記憶部2からスケジューリング結果21とスプールマスタ22を読みだし、スプールマスタ22を参照して、スケジューリング結果21にスプール種が設定されたデータ群211を作成する。
図6は、データ群211の一例を表形式で示す図である。データ群211は、
図3に示すスケジューリング結果21にスプール種の欄が追加されている。
【0052】
スプールイベント作成部12は、データ入出力部3を用いて、記憶部2から準備リードタイムマスタ23を読みだし、準備リードタイムマスタ23(
図5)とデータ群211(
図6)とを用いて、スプールイベントを作成し、スプールイベントが設定されたデータ群212を作成する。
図7は、データ群212の一例を表形式で示す図である。データ群212は、
図6に示すデータ群211にスプールイベントの欄が付加されている。スプールイベントには、スプールの使用開始と、スプールの使用終了と、スプールの準備完了と、がある。使用開始時刻は、スプールの使用開始の時刻である。使用終了時刻は、スプールの使用終了の時刻である。準備完了時刻は、スプールの準備完了の時刻である。
【0053】
スプールイベントの作成の仕方について説明する。
図8は、
図7に示すデータ群212において、1行目から6行目を抜き出した図である。使用開始時刻は、現工程の処理開始時刻である。使用終了時刻は、次工程の処理終了時刻である。但し、次工程が、スプールが着脱されない工程の場合、その次の工程の処理終了時刻である。これについては後で説明する。スプールイベントの準備完了時刻は、使用終了時刻に準備リードタイムを加えた時刻である。
【0054】
1行目を例にして具体的に説明する。使用開始時刻は、1行目の開始時刻である。使用終了時刻は、2行目の終了時刻である。準備完了時刻は、使用終了時刻に、スプール種Bの準備リードタイム(
図5)を加えた時刻である。
【0055】
員数が2の場合における使用開始時刻、使用終了時刻、準備完了時刻について説明する。
図9は、
図7に示すデータ群212において、1行目から6行目、7行目、13行目を抜き出した図である。製品No.がP1である製品の仕掛品は、追番が6である工程で、製品No.がP1-1である製品の仕掛品と製品No.がP1-2である製品の仕掛品とに分割されるので、員数2とされている。この場合、スプールイベントが二つ設定される。
【0056】
使用開始時刻は、二つのスプールイベントに共通であり、6行目の開始時刻である。使用終了時刻は、一つ目のスプールイベントの場合、7行目の終了時刻であり、二つ目のスプールイベントの場合、13行目の終了時刻である。準備完了時刻は、一つ目のスプールイベントの場合、一つ目のスプールイベントの使用終了時刻に、6行目のスプール種Bの準備リードタイムを加えた時刻であり、二つ目のスプールイベントの場合、二つ目のスプールイベントの使用終了時刻に、6行目のスプール種Bの準備リードタイムを加えた時刻である。
【0057】
次工程が、スプールの着脱がされない工程における使用終了時刻について説明する。
図10は、
図7に示すデータ群212において、7行目から12行目を抜き出した図である。8行目において、スプール種が「↓」にされている。これは、スプールの着脱がされないことを示す。従って、7行目の使用終了時刻は、9行目の終了時刻となる。8行目のスプールイベントは設定されない。
【0058】
スプールイベント順序作成部13は、
図7に示すデータ群212を基にして、スプールイベント毎にデータが並び変えられたデータ群213を作成する。
図11は、データ群213の一例を表形式で示す図である。データ群213は、データ群212から、開始時刻と終了時刻の欄が除かれ、スプールイベント別(使用開始、使用終了、準備完了)にまとめてデータが並び変えられている。
【0059】
データ群213は、製品No.の欄と、工程追番の欄と、設備CDの欄と、員数の欄と、スプール種の欄と、時刻(イベント時刻)の欄と、イベントの欄と、で構成される表である。時刻(イベント時刻)は、イベントが発生する時刻である。時刻(イベント時刻)の欄は、イベントが使用開始の場合、使用開始時刻を示し、イベントが使用終了の場合、使用終了時刻を示し、イベントが準備完了の場合、準備完了時刻が示される。
【0060】
スプールイベント順序作成部13は、
図11に示すデータ群213を基にして、イベント時刻が早い順にデータを並び変えたデータ群214(第1のデータ群の一例)を作成する。
図12は、データ群214の一例を表形式で示す図である。
図12を参照して、第1のデータ群は、複数工程が実行される期間に発生する副資材(スプール)の使用開始、使用終了、準備完了のいずれかであるイベントと、複数種類の副資材のうちイベントで用いられる副資材の種類である副資材種(スプール種A、B、C)と、が紐づけられた第1のデータ(
図12の表を構成する各行;例えば、1番目の行「B、使用開始」が一つの第1のデータ)に関して、イベントが発生する時刻であるイベント時刻に従って、複数の第1のデータを時系列に並べたデータ群である。
【0061】
スプール種設定部11、スプールイベント作成部12およびスプールイベント順序作成部13により、第1のデータ群を取得する取得部17が構成される。実施形態では、取得部17が第1のデータ群を作成することにより、第1のデータ群を取得しているが、取得部17が記憶部2に予め記憶されている第1のデータ群を読み出すことにより第1のデータ群を取得してもよい。
【0062】
本数増減テーブル作成部14は、
図12に示すデータ群214(第1のデータ群)を基にして、本数増減テーブル215(第2のデータ群)を作成する。
図13は、本数増減テーブル215の一例を示す図である。本数増減テーブル215は、ステイタス別(使用中、準備中)にスプールの本数の増減を示すデータ群である。
【0063】
図13を参照して、第2のデータ群は、副資材種(スプール種A、B、C)と、第1のステイタス(使用中)と、第2のステイタス(準備中)と、が紐づけられた第2のデータ(
図13で示す表を構成する各行;例えば、1番目の行「B、1、空欄」が一つの第2のデータ)に関して、イベント時刻に従って複数の第2のデータを時系列に並べたデータ群である。
【0064】
第1のステイタス(使用中)および第2のステイタス(準備中)には、イベントが使用開始の場合、当該イベントのイベント時刻と同じイベント時刻において、第1のステイタス(使用中)が+1にされており、イベントが使用終了の場合、当該イベントのイベント時刻と同じイベント時刻において、第1のステイタス(使用中)が-1かつ第2のステイタス(準備中)が+1にされており、イベントが準備完了の場合、当該イベントのイベント時刻と同じイベント時刻において、第2のステイタス(準備中)が-1にされている。
【0065】
図14は、本数増減テーブル215の作成の仕方を説明する説明図である。本数増減テーブル215は、時刻(イベント時刻)の欄と、スプール種の欄と、使用中(第1のステイタス)の欄と、準備中(第2のステイタス)の欄と、で構成される表である。時刻の欄とスプール種の欄は、データ群214のそれらの欄と同じ内容である。
【0066】
データ群214のイベント欄が使用開始の場合、当該イベントの時刻(イベント時刻)と同じ時刻(イベント時刻)において、使用中の欄が+1にされる。準備中の欄は空欄、すなわちゼロにされる。データ群214のイベント欄が使用終了の場合、当該イベントの時刻(イベント時刻)と同じ時刻(イベント時刻)において、使用中の欄が-1かつ準備中の欄が+1にされる。データ群214のイベント欄が準備完了の場合、当該イベントの時刻(イベント時刻)と同じ時刻(イベント時刻)において、準備中の欄が-1にされる。使用中の欄は空欄、すなわちゼロにされる。
【0067】
スプール本数累計部15は、
図13に示す本数増減テーブル215を用いて、スプール本数の累積を作成し、スプール本数の累積が設定されたデータ群216を作成する。
図15は、データ群216の一例を表形式で示す図である。データ群216は、本数増減テーブル215にスプール本数の累積の欄が付加されている。
【0068】
累積の欄は、使用中(第1のステイタス)の累積欄と、準備中(第2のステイタス)の累積欄と、合計の累積欄と、により構成される。使用中の累積欄は、本数増減テーブル215の使用中(第1のステイタス)の累積合計が示される。準備中の累積欄は、本数増減テーブル215の準備中(第2のステイタス)の累積合計が示される。合計の累積欄は、使用中の累積合計と準備中の累積合計との合計が示される。
【0069】
出力部5は、データ群216を出力する。ユーザは、データ群216を見ることにより、各時刻(イベント時刻)で使用中のスプールの本数、準備中のスプールの本数を知ることができる。
【0070】
スプール本数累計部15は、
図13に示す本数増減テーブル215(第2のデータ群)からスプール種Aのデータを抽出し、スプール種Aのスプール本数の累積を作成し、スプール種Aのスプール本数の累積が設定されたデータ群216A(第3のデータ群)を作成する。
図16は、データ群216Aの一例を表形式で示す図である。データ群216Aは、スプール種Aに関するデータ群216(
図15)である。
【0071】
スプール本数累計部15は、
図13に示す本数増減テーブル215(第2のデータ群)からスプール種Bのデータを抽出し、スプール種Bのスプール本数の累積を作成し、スプール種Bのスプール本数の累積が設定されたデータ群216B(第3のデータ群)を作成する。
図17は、データ群216Bの一例を表形式で示す図である。データ群216Bは、スプール種Bに関するデータ群216である。
【0072】
スプール本数累計部15は、
図13に示す本数増減テーブル215(第2のデータ群)からスプール種Cのデータを抽出し、スプール種Cのスプール本数の累積を作成し、スプール種Cのスプール本数の累積が設定されたデータ群216C(第3のデータ群)を作成する。
図18は、データ群216Cの一例を表形式で示す図である。データ群216Cは、スプール種Cに関するデータ群216である。
【0073】
第3のデータ群について、
図16を参照して説明する。第3のデータ群は、第1のステイタスの累積合計(累積の使用中欄)と、第2のステイタスの累積合計(累積の準備中欄)と、第1のステイタスの累積合計と第2のステイタスの累積合計との合計(累積の合計欄)と、が紐づけられた第3のデータ(
図16で示す表を構成する各行;例えば、1番目の行「1、0、1」が一つの第3のデータ)に関して、イベント時刻に従って複数の第3のデータを時系列に並べたデータ群である。
【0074】
必要スプール本数決定部16は、データ群216A(第3のデータ群)から累積の合計欄の最大値を抽出し(ここでは4)、これをスプール種Aのスプールの必要数と決定し、データ群216B(第3のデータ群)から累積の合計欄の最大値を抽出し(ここでは4)、これをスプール種Bのスプールの必要数と決定し、データ群216C(第3のデータ群)から累積の合計欄の最大値を抽出し(ここでは2)、これをスプール種Cのスプールの必要数と決定する。
【0075】
必要スプール本数決定部16は、決定した必要数を示す表を生成し、出力部5は、この表を出力する。この表を
図19に示す。
図19は、各スプール種について、スプールの必要数を表形式で示す図である。実施形態において、スケジューリング結果21を実行するためには、スプール種Aのスプールが最低限で4本、スプール種Bのスプールが最低限で4本、スプール種Cのスプールが最低限で2本、合計で10本が必要となることが分かる。
【0076】
演算処理部1には、スプール種設定部11、スプールイベント作成部12、スプールイベント順序作成部13、本数増減テーブル作成部14、スプール本数累計部15、必要スプール本数決定部16について、これらの機能ブロックをそれぞれ実現するためのプログラムが記憶されている。これらは、スプール種設定プログラム、スプールイベント作成プログラム、スプールイベント順序作成プログラム、本数増減テーブル作成プログラム、スプール本数累計プログラム、必要スプール本数決定プログラムと表現される。
【0077】
演算処理部1のCPUによって実行されるこれらのプログラムのフローチャートが、
図20、
図21および
図22である。これらのプログラムは、機能ブロックの定義を用いて表現される。スプール種設定部11とスプール種設定プログラムを例にして説明する。スプール種設定部11は、上述したように、記憶部2からスケジューリング結果21とスプールマスタ22を読みだし、スプールマスタ22を参照して、スケジューリング結果21にスプール種が設定されたデータ群211を作成する。スプール種設定プログラムは、記憶部2からスケジューリング結果21とスプールマスタ22を読みだし、スプールマスタ22を参照して、スケジューリング結果21にスプール種が設定されたデータ群211を作成するプログラムである。
【0078】
実施形態に係るシミュレーション装置100の動作について説明する。
図20は、この動作を説明するフローチャートである。
図1および
図20を参照して、ユーザは、入力部4を操作して、スケジューリング結果21、スプールマスタ22および準備リードタイムをシミュレーション装置100に入力し(S1)、記憶部2に記憶させる。
【0079】
ユーザは、入力部4を操作してシミュレーションの実行命令をシミュレーション装置100に入力する。これにより、スプール種設定部11は、記憶部2からスケジューリング結果21とスプールマスタ22を読みだし、スプール種が設定されたデータ群211(
図6)を作成する(S2)。
【0080】
スプールイベント作成部12は、記憶部2から準備リードタイムマスタ23を読みだし、準備リードタイムマスタ23(
図5)とデータ群211(
図6)とを用いて、スプールイベントを作成し、スプールイベントが設定されたデータ群212(
図7)を作成する(S3)。
【0081】
図21は、処理S3のフローチャートである。
図7および
図21を参照して、スプールイベント作成部12は、全ての製品No.の製品について、
図21のフローを実行する。スプールイベント作成部12は、まず、製品No.1の製品について、
図21のフローを実行する。
【0082】
スプールイベント作成部12は、工程追番Nを1に設定する(S31)。スプールイベント作成部12は、工程追番N(ここでは1)のスプールが、着脱されないスプール、または、出荷用のスプールか否かを判断する(S32)。すなわち、スプールイベント作成部12は、スプール種の欄が「↓」、または、空欄か否かを判断する。スプールイベント作成部12は、工程追番1のスプール種の欄が「B」なので、工程追番1のスプールが着脱されないスプール、または、出荷用のスプールのいずれにも該当しないと判断し(S32でNo)、処理S34へ進む。
【0083】
スプールイベント作成部12は、工程追番N(ここでは1)のスプールの使用開始時刻を工程追番N(ここでは1)の処理の開始時刻と決定する(S34)。スプールイベント作成部12は、変数mを1に設定する(S35)。スプールイベント作成部12は、工程追番N+m(ここでは工程追番2(=1+1))のスプールが着脱されないスプールか否かを判断する(S36)。これは データ群212のスプール種の欄に、スプールが着脱されないスプールを示すフラグ(実施形態では「↓」)が設定されているか否かで判断される。
【0084】
スプールイベント作成部12は、工程追番2のスプール種の欄が「A」なので、工程追番2のスプールは着脱されるスプールと判断し(処理S36でNo)、処理S38へ進む。スプールイベント作成部12は、工程追番N(ここでは1)のスプールの使用終了時刻を工程追番N+m(ここでは工程追番2(=1+1))の処理の終了時刻と決定し(S38)、工程追番N(ここでは1)のスプールの準備完了時刻を、工程追番N(ここでは1)のスプールの使用終了時刻に準備リードタイム(
図5)を加えた時刻と決定する(S39)。
【0085】
スプールイベント作成部12は、工程追番N(ここでは1)が最終工程か否かを判定する(S40)。スプールイベント作成部12は、工程追番1が最終工程でないので(S40でNo)、工程追番をN=N+1(ここではN=2)に設定し(S41)、処理S32に戻る。
【0086】
スプールイベント作成部12は、工程追番Nが最終工程と判断したとき(S40でYes)、次の製品No.の製品について、
図21に示すフローを実行する。
【0087】
スプールイベント作成部12は、工程追番Nのスプールが着脱されないスプール、または、出荷用のスプールと判断したとき(S32でYes)、工程追番Nのスプールイベントを設定しない(S33)。そして、スプールイベント作成部12は、処理S40を実行する。
【0088】
スプールイベント作成部12は、工程追番N+mのスプールが着脱されるスプールと判断したとき(S36でYes)、変数mをm+1に設定し(処理S37)、処理S36へ戻る。これは、
図10と対応する。
【0089】
図21のフローでは示されていないが、員数が2の場合、スプールイベント作成部12は、
図9で説明したように、二つのスプールイベントを設定する。
【0090】
図20の説明に戻る。
図1および
図20を参照して、スプールイベント順序作成部13は、スプールイベントをソートする(S4)。これは、データ群212(
図7)を基にして、データ群213(
図11)を作成し、データ群213を基にして、データ群214(
図12)を作成することである。
【0091】
本数増減テーブル作成部14は、データ群214(
図12)を基にして、本数増減テーブル215(
図13)を作成する(S5)。
図22は、処理S5のフローチャートである。
図14および
図22を参照して、本数増減テーブル作成部14は、イベントkを1に設定する(S51)。イベントkは、データ群214において、1行目から順に示されるイベント内容である。例えば、イベント1は、1行目のイベント内容(使用開始)であり、イベント2は、2行目のイベント内容(使用開始)であり、イベント3は、3行目のイベント内容(使用開始)であり、イベント4は、4行目のイベント内容(使用終了)である。
【0092】
本数増減テーブル作成部14は、データ群214からイベントkのイベント内容を取得し、これをEV(k)とする(S52)。ここでは、イベント1なので、EV(1)が使用開始となる。
【0093】
本数増減テーブル作成部14は、本数増減テーブル215のイベント時刻の欄にEV(k)のイベント時刻を設定し、本数増減テーブル215のスプール種の欄にEV(k)のスプール種を設定する(S53)。ここでは、EV(1)なので、本数増減テーブル215の1行目にEV(1)のイベント時刻4月1日10時00分、EV(1)のスプール種Bが設定される。
【0094】
本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が使用開始か否かを判断する(S54)。ここでは、EV(1)が使用開始なので(S54でYes)、本数増減テーブル作成部14は、本数増減テーブル215の1行目の使用中の欄に+1を設定する(S57)。
【0095】
本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が使用開始でないと判断したとき(S54でNo)、EV(k)が使用終了か否かを判断する(S55)。本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が使用終了と判断したとき(S55でYes)、本数増減テーブル215の使用中の欄に-1を設定し、かつ、準備中の欄に+1を設定する(S58)。例えば、イベント4の場合、本数増減テーブル215の4行目の使用中の欄に-1が設定され、かつ、準備中の欄に+1が設定される。
【0096】
本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が使用終了でないと判断したとき(S55でNo)、EV(k)が準備完了か否かを判断する(S56)。本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が準備完了と判断したとき(S56でYes)、本数増減テーブル215の準備中の欄に-1を設定する(S59)。例えば、イベント7の場合、本数増減テーブル215の7行目の準備中の欄に-1が設定される。
【0097】
本数増減テーブル作成部14は、EV(k)が準備完了でないと判断したとき(S56でNo)、または、処理S57、S58、S59のいずれかを実行したとき、データ群214の全てのスプールイベントについて、本数増減テーブル215への設定が終了したか否かを判断する(S60)。すなわち、データ群214の最後の行のイベントについて、本数増減テーブル215への設定が終了したか否かが判断される。
【0098】
本数増減テーブル作成部14は、データ群214の全てのスプールイベントについて、本数増減テーブル215への設定が終了していないと判断したとき(S60でNo)、k+1をイベントkに設定する(S61)。そして、処理S52に戻る。本数増減テーブル作成部14は、データ群214の全てのスプールイベントについて、本数増減テーブル215への設定が終了したと判断したとき(S60でYes)、処理S5が終了する。
【0099】
図1および
図20を参照して、スプール本数累計部15は、本数増減テーブル215(
図13)を用いて、スプール種毎にスプール本数の累積を作成し、スプール種毎にスプール本数の累積が設定されたデータ群216A、216B、216C(
図16、
図17、
図18)を作成する(S6)。
【0100】
必要スプール本数決定部16は、データ群216A、216B、216Cを基にして、スプール種毎にスプールの必要数を計算し(S7)、この結果を示す表(
図19)を作成する。出力部5は、この表を出力する(S9)。
【0101】
実施形態の主な効果を説明する。本発明者は、累積の使用中欄の値(累積合計)と累積の準備中欄の値(累積合計)との合計(
図16、
図17、
図18)が、イベント時刻に応じて変化することに着目し、合計の最大値をスプールの必要数と見なすことができることを見出した。実施形態に係るシミュレーション装置100は、この必要数を算出(決定)することができる装置である。
【0102】
実施形態に係るシミュレーション装置100は、パラメータにスプール種を含めているので、スプールの種類別にスプールの必要数を算出することができる。
【0103】
実施形態に係るシミュレーション装置100は、パラメータに準備完了(スプールの使用終了の後に、スプールがメンテナンスされて再び使用可能にされること)を含めているので、スプールのメンテナンス時間を考慮したスプールの必要数を算出することができる。
【0104】
実施形態の変形例を説明する。
図23は、変形例で用いられる準備リードタイムマスタ23の一例を表形式で示す図である。準備リードタイムには、前準備リードタイムと後準備リードタイムとがある。後準備リードタイムは、
図5に示す準備リードタイムのことであり、スプールの使用終了から次に使用可能になるまでに要する予め定められた第1の時間である(スプールのメンテナンスに要する時間)。
【0105】
前準備リードタイムは、スプールの使用開始前に、仕掛品を処理するための設備(例えば、
図25に示す圧延機)にスプールをセットするために要する第2の時間である。
【0106】
実施形態の場合、スプールイベント作成部12(
図1)がスプールイベント(
図7)を作成するとき、使用開始時刻は、現工程の処理の開始時刻である(
図8)。これに対して、変形例の場合、使用開始時刻は、現工程の処理の開始時刻から前準備リードタイムを引いた時刻である。
図8を参照して、例えば、工程追番1の使用開始時刻は、この工程(現工程)の開始時刻(4月1日10時00分)からスプール種Bの前準備リードタイム(1時間)を引いた時刻である。
【符号の説明】
【0107】
100 シミュレーション装置
214 データ群(第1のデータ群)
215 本数増減テーブル(第2のデータ群)
216A データ群(第3のデータ群)
216B データ群(第3のデータ群)
216C データ群(第3のデータ群)