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特許7328181重ねすみ肉溶接継手及びその製造方法並びに閉断面部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】重ねすみ肉溶接継手及びその製造方法並びに閉断面部材
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/02 20060101AFI20230808BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20230808BHJP
   B23K 26/348 20140101ALI20230808BHJP
   B23K 26/26 20140101ALI20230808BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20230808BHJP
   B23K 31/00 20060101ALN20230808BHJP
【FI】
B23K9/02 D
B23K9/16 K
B23K26/348
B23K26/26
B23K9/00 501C
B23K31/00 F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020121667
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022024315
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 励一
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-87266(JP,A)
【文献】特開2017-80802(JP,A)
【文献】特開2015-199072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/02
B23K 9/16
B23K 26/348
B23K 26/26
B23K 9/00
B23K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属板と第2の金属板とが重ね合わされて溶接された重ねすみ肉溶接継手であって、
前記第1の金属板は、前記第2の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第1の金属板における前記一方側の縁部から他方側の縁部に向う長さ方向に沿って延び、平板部分に対して前記第2の金属板と対面する方向に膨出する、少なくとも1つの膨出部を有しており、
前記第2の金属板は、前記第1の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第2の金属板における他方側の縁部から前記一方側の縁部に向かう方向に突出し、前記膨出部に挿入可能な少なくとも1つの突出部を有しており、
前記膨出部に前記突出部が挿入された状態で、前記第1の金属板と、前記第2の金属板における前記一方側の縁部とが溶接された第1溶接ビードを有し、
前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計以上であり、かつ、前記第1の金属板の前記長さ方向における長さが、前記第1の金属板及び前記第2の金属板間の前記第1溶接ビードの脚長と、前記第1溶接ビードから前記第1の金属板の前記他方側に延びる溶接熱影響部の長さの合計を超えるように形成される、重ねすみ肉溶接継手。
【請求項2】
前記第2の金属板では、その前記一方側の縁部から前記長さ方向に沿って形成される一対の切欠きによって、該一対の切欠きの間に前記突出部が形成される、請求項1に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項3】
前記膨出部は、プレス成型により形成されてなる、請求項1又は2に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項4】
さらに、前記膨出部に対応する位置における前記第1の金属板の一方側の縁部と、前記第2の金属板とが溶接された第2溶接ビードを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項5】
前記第1溶接ビードと前記第2溶接ビードとが連続して形成されてなる、請求項4に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項6】
前記第1の金属板は、
前記第1の金属板における前記一方側の縁部において、少なくとも1つの切欠き部を有しており、
前記膨出部は、前記切欠き部に対応する位置に形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項7】
前記膨出部により形成される内部空間における、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計と略同一である、請求項1~6のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項8】
前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記突出部の入口側から前記第1の金属板の他方側の縁部に向かうにつれて徐々に低くなるように形成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手が適用される閉断面部材。
【請求項10】
第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせて溶接する重ねすみ肉溶接継手の製造方法であって、
前記第1の金属板に対し、前記第2の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第1の金属板における前記一方側の縁部から他方側の縁部に向う長さ方向に沿って延び、平板部分に対して前記第2の金属板と対面する方向に膨出する、少なくとも1つの膨出部を形成する工程と、
前記第2の金属板に対し、前記第1の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第2の金属板における他方側の縁部から前記一方側の縁部に向かう方向に突出し、前記膨出部に挿入可能な少なくとも1つの突出部を形成する工程と、
前記膨出部に前記突出部を挿入しながら、前記第1の金属板と前記第2の金属板を重ね合わせる工程と、
前記第1の金属板と、前記第2の金属板における前記一方側の縁部とを溶接して第1溶接ビードを形成する工程と、
を有し、
前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計以上であり、かつ、前記第1の金属板の前記長さ方向における長さが、前記第1の金属板及び前記第2の金属板間の前記第1溶接ビードの脚長と、前記第1溶接ビードから前記第1の金属板の前記他方側に延びる溶接熱影響部の長さの合計を超えるように形成される、重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項11】
前記第2の金属板では、その前記一方側の縁部から前記長さ方向に沿って形成される一対の切欠きによって、該一対の切欠きの間に前記突出部が形成される、請求項10に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項12】
前記膨出部をプレス成型により形成する、請求項10又は11に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項13】
前記第1溶接ビードを形成する工程は、アーク溶接方法、レーザ溶接方法又はレーザアークハイブリッド溶接方法のいずれかの方法により行われる、請求項10~12のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記膨出部に対応する位置における前記第1の金属板の一方側の縁部と、前記第2の金属板とを溶接して第2溶接ビードを形成する工程を有する、請求項10~13のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項15】
前記第1溶接ビードと前記第2溶接ビードとを連続溶接により形成する、請求項14に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【請求項16】
さらに、前記第1の金属板に対し前記膨出部を形成する前に、前記第1の金属板における前記一方側の縁部において、少なくとも1つの切欠き部を形成する工程を有し、
前記切欠き部に対応する位置に、前記膨出部を形成する、請求項10~15のいずれか1項に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねすみ肉溶接継手及びその製造方法並びに閉断面部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構造部材には、静的な強度及び剛性だけでなく、高い耐疲労特性が要求される。また、鋼板やアルミニウム合金板は、類似材質同士であれば、能率やコスト的優位性から溶接によって接合されることが多い。一方、燃費向上のために車体を軽量化するニーズは常にあり、その対策として、最近は鋼材やアルミニウム合金材の高強度化による薄板化が進んでいる。しかし、溶接継手の強度は、素材の強度と連動して線形的に上昇することはなく、さほど向上しないというのが常識的知見となっている。この継手疲労強度の問題が、高強度素材及び薄板化によって解消しにくい原因の一つとなっている。
【0003】
溶接継手の疲労が板材よりも低下する原因は主に3つあると言われている。以下、図12に示すように、第1の金属板10と第2の金属板20とが重ね合わされ、第2の金属板20の縁部21と第1の金属板10の縁部12近傍の表面11とが溶接ビード30により溶接される、重ねすみ肉溶接継手1を例に説明する。
【0004】
第1の原因は、形状的な応力集中である。図13に示すように、溶接部である溶接ビード30と金属部材である第1の金属板10及び第2の金属板20の境界は不連続線となるため、溶接ビード止端部に応力が集中する。その応力集中の大きさは、溶接ビード止端部の滑らかさと反比例する関係にある。
【0005】
第2の原因は、材質的な劣化である。第1の金属板10及び第2の金属板20は、急速加熱・急速冷却によって、本来の材質とは結晶組織が変化した熱影響部31が形成される。それに伴い、熱影響部31では、硬さや靱性、伸びといった材料特性が局部的に変化する。
【0006】
第3の原因は、引張残留応力である。溶接部の近傍は、温度上昇と低下の一連の熱履歴に加えて、溶接部周囲の拘束の関係から、一般的に室温冷却後に引張りの残留応力が残ることが普通である。この引張残留応力が疲労強度低下の要因になっているとされる。
これらの形状的応力集中、局部材質劣化、及び引張残留応力が重畳して、継手疲労特性を劣化させる。
【0007】
このような背景から、従来から溶接継手の疲労強度向上策について、そのメカニズムを考慮して各種考案、研究されている。例えば、特許文献1では、溶接ビードから応力集中部を離すことを目的として、素材の一部を局部的に減厚している。特許文献2及び3では、アーク溶接後に各種ピーニング処理を行い、応力集中箇所に対して圧縮残留応力を付与する。また、特許文献4では、特殊組成の溶接材料を採用してマルテンサイト変態を利用して圧縮応力を付与している。特許文献5及び6では、溶接終了後に止端部周辺をプラズマアークやレーザといった熱源で再熱処理を加える。特許文献7及び8では、補剛ビードと呼称される別の溶接金属を設けている。特許文献9では、溶接ビードに隣接して、凸状のプレスビードを設ける。さらに、グラインダー研削手段によって止端部を滑らかに形成したり、製造物そのものを炉に入れて焼鈍し、引張残留応力を低減する方法なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018―30169号公報
【文献】特許第5880260号公報
【文献】特許第3899007号公報
【文献】特許第5450293号公報
【文献】特開2014-4609号公報
【文献】特許第6515299号公報
【文献】特許第5522317号公報
【文献】特許第5843015号公報
【文献】特許第6008072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、薄板の場合には、上述した疲労強度低下要因の他に、更にもう一つの劣化要因がある。それは金属部材の拘束不良、金属部材自体のゆがみ・たわみ、溶接時に発生する熱変形などによって発生する板合わせ精度の劣化、いわゆる板間隙間であるルートギャップGの拡大である。ルートギャップGが無い場合は、継手1に対する最大の応力集中箇所は溶接ビード止端部となる。しかし、図14及び図15に示すように、ルートギャップGが生じると、剛性劣化も伴って、必ずしも止端部が最大応力集中箇所とはならず、ルートギャップG部分が最大応力集中箇所となり、より早期に破断することが多くなる。これまで各種考案されてきた特許文献1~9に記載の継手疲労強度改善手段は、ルートギャップGの拡大を抑制する効果を伴っていないため、更なる改善の余地があった。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構造で、疲労強度を効果的に改善できる、重ねすみ肉溶接継手及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の上記目的は、重ねすみ肉溶接継手に係る下記(1)の構成により達成される。
(1) 第1の金属板と第2の金属板とが重ね合わされて溶接された重ねすみ肉溶接継手であって、
前記第1の金属板は、前記第2の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第1の金属板における前記一方側の縁部から他方側の縁部に向う長さ方向に沿って延び、平板部分に対して前記第2の金属板と対面する方向に膨出する、少なくとも1つの膨出部を有しており、
前記第2の金属板は、前記第1の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第2の金属板における他方側の縁部から前記一方側の縁部に向かう方向に突出し、前記膨出部に挿入可能な少なくとも1つの突出部を有しており、
前記膨出部に前記突出部が挿入された状態で、前記第1の金属板と、前記第2の金属板における前記一方側の縁部とが溶接された第1溶接ビードを有し、
前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計以上であり、かつ、前記第1の金属板の前記長さ方向における長さが、前記第1の金属板及び前記第2の金属板間の前記第1溶接ビードの脚長と、前記第1溶接ビードから前記第1の金属板の前記他方側に延びる溶接熱影響部の長さの合計を超えるように形成される、重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、簡単な構造で、溶接部の応力集中が緩和されると共に、ルートギャップが抑制された溶接部が形成され、継手疲労強度を効果的に改善できる。
【0012】
また、重ねすみ肉溶接継手に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(8)に関する。
(2) 前記第2の金属板では、その前記一方側の縁部から前記長さ方向に沿って形成される一対の切欠きによって、該一対の切欠きの間に前記突出部が形成される、(1)に記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、切欠きを設けることで、突出部を容易に形成できる。
(3) 前記膨出部は、プレス成型により形成されてなる、(1)又は(2)に記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、膨出部を精度よく、かつ容易に形成できる。
(4) さらに、前記膨出部に対応する位置における前記第1の金属板の一方側の縁部と、前記第2の金属板とが溶接された第2溶接ビードを有する、(1)~(3)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、重ねすみ肉溶接継手の疲労強度が更に向上できる。
(5) 前記第1溶接ビードと前記第2溶接ビードとが連続して形成されてなる、(4)に記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、第1溶接ビード及び第2溶接ビードの溶接作業が容易になる。
(6) 前記第1の金属板は、
前記第1の金属板における前記一方側の縁部において、少なくとも1つの切欠き部を有しており、
前記膨出部は、前記切欠き部に対応する位置に形成されている、(1)~(5)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、第1の金属板と第2の金属板との重なり部の面積を広くとることができ、疲労強度が更に向上する。
(7) 前記膨出部により形成される内部空間における、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計と略同一である、(1)~(6)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、ルートギャップの抑制効果がより向上する。
(8) 前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記突出部の入口側から前記第1の金属板の他方側の縁部に向かうにつれて徐々に低くなるように形成される、(1)~(7)のいずれか1つに記載の重ねすみ肉溶接継手。
この構成によれば、突出部を膨出部に容易に挿入しつつ、第1の金属板と第2の金属板とを緩みなく拘束させることができる。
【0013】
また、本発明の上記目的は、閉断面部材に係る下記(9)の構成により達成される。
(9) (1)~(8)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手が適用される閉断面部材。
この構成によれば、継手疲労強度が改善された閉断面部材を作成できる。
【0014】
また、本発明の上記目的は、重ねすみ肉溶接継手の製造方法に係る下記(10)の構成により達成される。
(10) 第1の金属板と第2の金属板を重ね合わせて溶接する重ねすみ肉溶接継手の製造方法であって、
前記第1の金属板に対し、前記第2の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第1の金属板における前記一方側の縁部から他方側の縁部に向う長さ方向に沿って延び、平板部分に対して前記第2の金属板と対面する方向に膨出する、少なくとも1つの膨出部を形成する工程と、
前記第2の金属板に対し、前記第1の金属板と溶接される側である一方側の縁部において、前記第2の金属板における他方側の縁部から前記一方側の縁部に向かう方向に突出し、前記膨出部に挿入可能な少なくとも1つの突出部を形成する工程と、
前記膨出部に前記突出部を挿入しながら、前記第1の金属板と前記第2の金属板を重ね合わせる工程と、
前記第1の金属板と、前記第2の金属板における前記一方側の縁部とを溶接して第1溶接ビードを形成する工程と、
を有し、
前記膨出部は、前記第1の金属板の板厚方向における高さが、前記第1の金属板の板厚と前記第2の金属板の板厚の合計以上であり、かつ、前記第1の金属板の前記長さ方向における長さが、前記第1の金属板及び前記第2の金属板間の前記第1溶接ビードの脚長と、前記第1溶接ビードから前記第1の金属板の前記他方側に延びる溶接熱影響部の長さの合計を超えるように形成される、重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、簡単な構造で、溶接部の応力集中が緩和されると共に、ルートギャップが抑制された溶接部が形成され、継手疲労強度を効果的に改善できる。
【0015】
また、重ねすみ肉溶接継手の製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(11)~(16)に関する。
(11) 前記第2の金属板では、その前記一方側の縁部から前記長さ方向に沿って形成される一対の切欠きによって、該一対の切欠きの間に前記突出部が形成される、(10)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、切欠きを設けることで、突出部を容易に形成できる。
(12) 前記膨出部をプレス成型により形成する、(10)又は(11)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、膨出部を精度よく、かつ容易に形成できる。
(13) 前記第1溶接ビードを形成する工程は、アーク溶接方法、レーザ溶接方法又はレーザアークハイブリッド溶接方法のいずれかの方法により行われる、(10)~(12)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、いずれかの溶接方法により継手疲労強度を効果的に改善できる。
(14) さらに、前記膨出部に対応する位置における前記第1の金属板の一方側の縁部と、前記第2の金属板とを溶接して第2溶接ビードを形成する工程を有する、(10)~(13)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、重ねすみ肉溶接継手の疲労強度が更に向上できる。
(15) 前記第1溶接ビードと前記第2溶接ビードとを連続溶接により形成する、(14)に記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、第1溶接ビード及び第2溶接ビードを連続した溶接作業により容易に形成できる。
(16) さらに、前記第1の金属板に対し前記膨出部を形成する前に、前記第1の金属板における前記一方側の縁部において、少なくとも1つの切欠き部を形成する工程を有し、
前記切欠き部に対応する位置に、前記膨出部を形成する、(10)~(15)のいずれかに記載の重ねすみ肉溶接継手の製造方法。
この構成によれば、第1の金属板と第2の金属板との重なり部の面積を広くとることができ、疲労強度が更に向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の重ねすみ肉溶接継手及び重ねすみ肉溶接継手の製造方法によれば、簡単な構造で、溶接部の応力集中が緩和されると共に、ルートギャップが抑制された溶接部が形成され、継手疲労強度を効果的に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す重ねすみ肉溶接継手のC―C断面図である。
図4図4は、図1に示す第1の金属板のD―D断面図である。
図5図5は、第1実施形態の第1変形例に係る重ねすみ肉溶接継手の斜視図である。
図6図6は、第1実施形態の第2変形例に係る重ねすみ肉溶接継手の斜視図である。
図7図7は、第1実施形態の第3変形例に係る重ねすみ肉溶接継手の斜視図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の第1変形例に係る重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図である。
図10図10は、本発明の重ねすみ肉溶接継手の一例であるサスペンションアームの斜視図である。
図11図11は、図10のE―E断面を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、2枚の金属板を重ね合わせて溶接した、従来の重ねすみ肉溶接継手の斜視図である。
図13図3は、図12に示す重ねすみ肉溶接継手のA―A断面図である。
図14図14は、ギャップを有する、従来の重ねすみ肉溶接継手の斜視図である。
図15図15は、図14に示す重ねすみ肉溶接継手のB―B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る重ねすみ肉溶接継手の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手を示す斜視図であり、図2図1の重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図であり、図3は、図2のC―C断面図である。図2及び図3に示すように、本発明の第1実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手1は、第1の金属板10と第2の金属板20とが重ね合わされ、第2の金属板20の第2の縁部21が第1の金属板10に溶接された構成を有する。
【0020】
なお、以下の説明においては、第1の金属板10は、第2の金属板20と溶接される側を一方側、反対側を他方側とし、第1の金属板10の一方側の縁部を第1の縁部12とする。また、第2の金属板20は、第1の金属板10と溶接される側を一方側、反対側を他方側とし、第2の金属板20の一方側の縁部を第2の縁部21として説明する。すなわち、第1の縁部12と第2の縁部21は、互いに対向し、第1の金属板10及び第2の金属板20における一方側及び他方側は、互いに逆方向になる。
また、本実施形態では、第1及び第2の金属板10,20は、略矩形状の平坦な薄板であり、重ね合わされる方向を高さ方向、溶接線(各縁部12,21)に沿った方向を幅方向、溶接線から離れる方向を長さ方向とも言う。
【0021】
第1の金属板10は、第2の金属板20と溶接される側である第1の縁部12に、平板部分に対して第2の金属板20と対面する方向(表面側)に膨出し、裏面側に内部空間Sを形成する複数の膨出部13が、該縁部12に沿ってそれぞれ離間して形成されている。例えば、図1に示す実施形態では2個の膨出部13が設けられている。膨出部13では、第1の金属板10の板厚方向における高さXtが、第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計であるta+tb以上に設定される。また、第1の金属板10の長さ方向の長さXは、第1の金属板10及び第2の金属板20間の第1溶接ビード30の脚長L1と、第1溶接ビード30から第1の金属板10の他方側に延びる溶接熱影響部31の長さL2(図13参照)の合計であるL1+L2を超える長さに設定される。
【0022】
一方、第2の金属板20は、第1の金属板10と溶接される側である第2の縁部21に設けられた切欠き23により形成され、第2の縁部21から第1の金属板10に向かって突出する複数の突出部22を備える。例えば、図1に示す実施形態では2個の突出部22が設けられている。2個の突出部22は、2個の膨出部13の間隔に対応して形成されており、膨出部13の内部空間Sに挿入可能である。
【0023】
なお、第1の金属板10の膨出部13は、第1の金属板10を冷間又は熱間プレス加工することで容易、かつ精度よく作成可能である。
【0024】
そして、第1の金属板10の膨出部13の内部空間Sに、第2の金属板20の突出部22を挿入して、第1の金属板10と第2の金属板20とを重ね合わせる。これにより、第2の金属板20の突出部22の表面が、膨出部13の裏面と接触し、第2の金属板20の第2の縁部21側の裏面のうち、突出部22を除く部分が第1の金属板10の表面11と接触して、第2の金属板20が第1の金属板10で挟持される。
【0025】
なお、内部空間Sにおける、第1の金属板10の板厚方向における高さXtは、第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計と略同一であることが好ましいが、完全に同一であると、突出部22が膨出部13の内部空間Sに入らない可能性があるので、実際には少し余裕を持たせている。ただし、この場合も、第2の金属板20の突出部22の表面の少なくとも一部が、膨出部13の裏面と物理的に接触していることが望ましく、これにより、第1の金属板10と第2の金属板20とのルートギャップGが、最小隙間に抑制される。
【0026】
また、この実施形態では、第2の金属板20の突出部22の表面と、膨出部13の裏面とを略平行としているが、膨出部13は、突出部22の入口側から後述する根元部40側(第1の金属板10の他方側の縁部)に向かって徐々に高さが低くなるように緩やかに傾斜させてもよい。具体的に、膨出部13は、突出部22の入口側開口の高さXtを第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計であるta+tb以上に設定し、また、膨出部13と突出部22が第1の金属板10の長さ方向においてオーバーラップする領域において、膨出部13の高さXtを第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計であるta+tb未満とする。このような膨出部13とすることで、突出部22の膨出部13への挿入を容易としつつ、途中で、突出部22が膨出部13内で押し込みながら突き当てられるので、第1の金属板10と第2の金属板20を緩みなく拘束させることができる。
【0027】
次いで、膨出部13に突出部22が挿入された状態で、第2の金属板20の第2の縁部21と第1の金属板10の表面11の一部を、アーク溶接又はレーザアークハイブリッド溶接により溶接して第1溶接ビード30を形成する。ここで、溶接される一部とは、第1の金属板10の表面11上に露出する、第2の金属板20の第2の縁部21のことであり、膨出部13に挿入された突出部22の第2の縁部21は溶接されない。なお、第1溶接ビード30は、膨出部13の第1の縁部12から他方側に向かって延びる、膨出部13の外側側面41と接触して形成されてもよい。
【0028】
本実施形態の溶接継手1では、溶接継手1に板厚方向の荷重が作用したときに、膨出部13の第1の縁部12から離間した側の根元部40が、応力集中部の一部となることで、溶接部である第1溶接ビード30から、応力集中を緩和することができる。したがって、応力集中は、溶接熱影響によって強度が低下した溶接熱影響部31(図13参照)には作用せず、第1の金属板10及び第2の金属板20の母材強度が維持される。
これにより、応力集中部となる根元部40は、第1溶接ビード30から離れているため、溶接熱によって強度が低下した溶接熱影響部31が、重ねすみ肉溶接継手1の疲労強度に及ぼす影響は少なく、母材である第1の金属板10及び第2の金属板20の持つ強度が維持される。
【0029】
なお、本実施形態のように、矩形の第2金属板20に形成された切欠き23によって、第1の金属板10の膨出部13と第2の金属板20の縁部21がオーバーラップして、第1の金属板10及び第2の金属板20が重ね合わされる場合、第1の金属板10の長さ方向における膨出部13の長さXは、第1の金属板10及び第2の金属板20の重ね合わせ部分の長さL3も考慮することが好ましい。すなわち、本実施形態では、膨出部13では、第1の金属板10の長さ方向の長さXは、第1の金属板10及び第2の金属板20間の第1溶接ビード30の脚長L1と、第1溶接ビード30から第1の金属板10の他方側に延びる溶接熱影響部31の長さL2と、第1の金属板10及び第2の金属板20の重ね合わせ部分の長さL3の合計L1+L2+L3を超える長さに設定される。
【0030】
また、板間のギャップGの抑制に一般的に用いられるクランプ治具などを使用することなく、第1の金属板10と第2の金属板20とのギャップGが最小隙間に抑制され、溶接継手1の疲労強度が向上する。なお、クランプ治具の数は、多いほどギャップGの抑制効果が高くなるが、クランプ治具が多くなると、セット工数や治具費のコストアップにつながり、好ましくない。
【0031】
また、膨出部13単体の長さX、膨出部13単体の幅X、膨出部13の幅Xの合計長さ(ΣX)と第1溶接ビード30の合計長さ(ΣB;図1に示す例では、ΣB=B+B+B)との比(ΣX/ΣB)、また、図4に示すような、膨出部13の根元部40の半径Xrを適切に設定することで、強度の最適化を図ることができる。なお、膨出部13は、プレス加工(プレス成型)で形成されるので、膨出部13の根元部40の半径Xrは、安定して滑らかな形状に形成できる。
【0032】
このように、本実施形態の重ねすみ肉溶接継手1によれば、第1の金属板10及び第2の金属板20間のギャップGを抑制できるので、溶接性能が安定する。さらに、プレス加工により形成された膨出部13の形状が、溶接によって損なわれることはなく、耐疲労性が向上する。
【0033】
なお、本実施形態では、第2の金属板20の突出部22の先端部は、継手剛性の観点から、第2の縁部21から突出しているが、これに限らず、突出部22の先端部が第2の縁部21と長さ方向において同じ位置にあってもよい。
【0034】
図5は、第1実施形態の第1変形例の重ねすみ肉溶接継手の斜視図であり、第2の金属板20の第2の縁部21と第1の金属板10の表面11とが、レーザ溶接により溶接されて第1溶接ビード30が形成されている。なお、レーザ溶接する際、フィラーワイヤを別途利用してもよい。
【0035】
次に、第1実施形態の第2変形例及び第3変形例の重ねすみ肉溶接継手について、図6及び図7を参照して説明する。
第2変形例の溶接継手1は、図6に示すように、第1の金属板10の膨出部13に、第2の金属板20の突出部22を挿入して嵌合させて、第2の金属板20の第2の縁部21と第1の金属板10の表面11をアーク溶接又はレーザアークハイブリッド溶接により溶接して、第1溶接ビード30を形成する。さらに、膨出部13における第1の縁部14と第2の金属板20の表面24とをアーク溶接又はレーザアークハイブリッド溶接により溶接して、第2溶接ビード30Aを形成する。第1溶接ビード30と第2溶接ビード30Aは、連続して溶接してもよい。これにより、第1溶接ビード30と第2溶接ビード30Aを別工程で溶接する場合と比較して溶接工数が削減される。
【0036】
第3変形例の重ねすみ肉溶接継手1は、図7に示すように、第1の金属板10の膨出部13に、第2の金属板20の突出部22を挿入して嵌合させて、第2の金属板20の第2縁部21と第1の金属板10の表面11をレーザ溶接して、第1溶接ビード30を形成し、更に、膨出部13における第1の縁部14と第2の金属板20の表面24とをレーザ溶接して、第2溶接ビード30Aを形成する。第1溶接ビード30と第2溶接ビード30Aは、レーザ溶接により連続して溶接してもよい。
【0037】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図である。図8に示すように、第2実施形態の第1の金属板10の第1の縁部12には、第1の縁部12に沿って複数個所の切欠き部15が形成されている。例えば、図8に示す実施形態では2か所の切欠き部15が設けられている。そして、各切欠き部15には、それぞれ膨出部13が形成されている。
【0038】
膨出部13は、第1実施形態の第1の金属板10と同様に、第1の金属板10の板厚方向における高さXtが、第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計であるta+tb以上であり、第1の縁部12から他方側に向かう方向の長さが、長さXの内部空間Sを有する(図2参照)。長さXは、第1の金属板10及び第2の金属板20間の第1溶接ビード30の脚長L1と、第1溶接ビード30から第1の金属板10の他方側に延びる溶接熱影響部31の長さL2(図13参照)の合計であるL1+L2を超える長さになっている。
【0039】
一方、第2の金属板20は、第1の金属板10と溶接される側である第2の縁部21から第1の金属板10方向に突出する、複数の突出部22を有している。突出部22は、膨出部13の間隔に対応して形成されており、膨出部13の内部空間Sに挿入可能である。
【0040】
そして、第1の金属板10の膨出部13に、第2の金属板20の突出部22を挿入して嵌合させ、第1の金属板10と第2の金属板20とを重ね合わせる。これにより、第2の金属板20の突出部22の表面が、膨出部13の裏面と接触し、第2の金属板20の第2の縁部21側の裏面のうち、突出部22を除く部分が第1の金属板10の表面11と接触して、第2の金属板20が第1の金属板10で挟持される。これにより、第1の金属板10と第2の金属板20とのギャップGが、最小隙間に抑制される。
【0041】
次いで、第2の金属板20の縁部21と第1の金属板10の表面11の一部が、アーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより溶接されて、第1溶接ビード30を形成する。なお、更に膨出部13における第1の縁部14と第2の金属板20の表面24とを、アーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより溶接して、第2溶接ビード30Aを形成してもよい。
【0042】
図9は、第2実施形態の第1変形例に係る重ねすみ肉溶接継手の製造工程を示す斜視図である。本変形例では、第1の金属板10の第1の縁部12に沿って形成された切欠き部15は、角部がR状に形成されており、該切欠き部15には、それぞれ膨出部13が形成されている。
【0043】
膨出部13は、第2実施形態の第1の金属板10と同様の大きさの内部空間Sを有する。すなわち、第1の金属板10の板厚方向における高さXtが、第1の金属板10の板厚taと第2の金属板20の板厚tbの合計であるta+tb以上であり、第1の縁部12から他方側に向かう方向の長さXの内部空間Sを有する。
【0044】
一方、第2の金属板20には、第1の金属板10が重ね合わされる第2の縁部21に、第1の金属板10方向に突出する複数の突出部22が、膨出部13の間隔に対応して形成されている。突出部22の形状は、R形状になっている。
【0045】
そして、第1の金属板10の膨出部13に、第2の金属板20の突出部22を挿入して嵌合させ、第1の金属板10と第2の金属板20とを重ね合わせ、第2の金属板20の第2の縁部21と第1の金属板10の表面11とを、アーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより溶接して、第1溶接ビード30を形成する。
【0046】
第1の金属板10の切欠き部15及び第2の金属板20の突出部22をR形状に形成することで、第1の金属板10と第2の金属板20との重なり面積を広くとることができ、接合強度が向上する。
【0047】
図10は、上記した重ねすみ肉溶接継手1の一例であるサスペンションアーム100の斜視図であり、図11は、図10のE―E断面を模式的に示す斜視図である。サスペンションアーム100は、略碗状に形成された第1部材110と第2部材120とが突き合わされ、その接合面がアーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより溶接されている。
【0048】
図11に示すように、第1部材110及び第2部材120は、その断面が、互いに内側に向かって湾曲する略樋状に形成されて、第1部材110の幅方向両端部には、立設部111が設けられ、第2部材120の幅方向両端部には、立設部111に対応して立設部121が設けられている。第1部材110の各立設部111には、第1実施形態(図1参照)で説明した複数の膨出部13が、長さ方向に離間して形成されている。また、第2部材120の各立設部121には、第1実施形態(図1参照)で説明した複数の突出部22が、膨出部13の間隔に対応して形成されている。
【0049】
そして、第1部材110の膨出部13に第2部材120の突出部22を挿入して、立設部111と立設部121の端部同士を重ね合わせた後、アーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより、第2部材120の縁部114と第1部材110の立設部111とを溶接して、第1溶接ビード30を形成する。なお、図示は省略するが、更に膨出部13における第1の縁部14と第2部材120とを、アーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかにより溶接して、第2溶接ビード30Aを形成してもよい。
これにより、重ねすみ肉溶接継手1は、任意の形状を有し、軽量かつ高い耐疲労強度を有する中空形状の閉断面部材にも適用される。
【0050】
なお、本発明は、前述した各実施形態、及び各変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、上記の実施形態では、接合方法はアーク溶接、レーザ溶接、レーザアークハイブリッド溶接のいずれかの溶接について説明したが、これに限定されず、ロー付けなども用いることができる。この場合には、異材同士の接合も可能になる。
また、上記の実施形態では、第2の金属板では、その一方側の縁部に切欠きを設けることで、突出部を設けているが、例えば、一方側の縁部を、凹部と凸部が連続する波形の形状として、そのうちの凸部を突出部としてもよい。
また、本発明は、第2の金属板の第2の縁部側の裏面が第1の金属板の表面と接触しつつ、複数の膨出部のうちの少なくとも一つの裏面が、第2の金属板の複数の突出部のうちの少なくとも一つの表面と接触することで、第2の金属板が第1の金属板によって挟持されればルートギャップを抑制できる。
【符号の説明】
【0051】
1 重ねすみ肉溶接継手
10 第1の金属板
12 第1の縁部(第1の金属板の一方側の縁部)
13 膨出部
15 切欠き部
20 第2の金属板
21 第2の縁部(第2の金属板の一方側の縁部、端面)
22 突出部
23 切欠き
30 第1溶接ビード
30A 第2溶接ビード
31 溶接熱影響部
100 サスペンションアーム(閉断面部材)
L1 溶接ビードの脚長
L2 溶接熱影響部の長さ
S 内部空間
ta 第1の金属板の板厚
tb 第2の金属板の板厚
膨出部の長さ(第1の金属板における一方側の縁部から他方側の縁部に向かう方向の長さ)
Xt 膨出部の板厚方向における高さ(第1の金属板の板厚方向における高さ)
膨出部の幅
図1
図2
図3
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図5
図6
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