(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】転写捺染用紙
(51)【国際特許分類】
D06P 5/24 20060101AFI20230808BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230808BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20230808BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20230808BHJP
【FI】
D06P5/24 Z
B41J2/01 501
B41M5/52 110
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2020142671
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019199053
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 巨訓
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175250(JP,A)
【文献】特開2018-059252(JP,A)
【文献】特開2003-313785(JP,A)
【文献】特開2012-192625(JP,A)
【文献】特開2001-277707(JP,A)
【文献】特開2001-277706(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109844216(CN,A)
【文献】特開2018-202852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 5/24
B41J 2/01
B41M 5/52
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙層と、前記原紙層の片面に対して多糖類を主成分とする塗工層とを有し、前記多糖類が、カルボキシメチルセルロース及び澱粉類を少なくとも含有し、ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、前記原紙層の透気度が30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の10倍以上である、昇華型染料インクを用いる転写捺染法に使用する転写捺染用紙。
【請求項2】
多糖類を主成分とする塗工層の付与量が、乾燥固形分量で片面あたり4g/m
2以下である請求項1に記載の転写捺染用紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料等の被印刷物へ図柄を形成する転写捺染法において、図柄を転写するために使用する転写捺染用紙に関する。特に、インクに昇華型染料インクを使用する転写捺染法に好適な転写捺染用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維材料等の被印刷物に図柄を形成させる方法として、昇華型染料インクを用いて転写捺染用紙に図柄を印刷して転写捺染紙を作製し、転写捺染紙を被印刷物に密着させて、昇華型染料インクを被印刷物に転写させる転写捺染法が公知である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
既に、転写捺染法に用いる転写捺染用紙は公知である。
例えば、古紙パルプとして再利用された場合で色斑点の発生を抑制することが可能であり、転写性に優れた昇華型捺染用転写紙として、木材パルプを主成分とする基紙と、顔料と水溶性バインダーを含有するインク受容層とを有し、前記インク受容層の全固形分に対して前記顔料を5~40質量%含有することを特徴とする昇華型捺染用転写紙が公知である(例えば、特許文献3参照)。また、転写濃度及び残留印字濃度に優れ、インク乾燥性も良好な昇華型インクジェット捺染転写紙として、基紙の一方面に昇華型捺染インク受容層が形成されており、前記昇華型捺染インク受容層は、少なくとも1種類のバインダーと無機粒子とを含有したインク受容層塗料からなり、前記無機粒子が軽質炭酸カルシウムであり、前記バインダーは少なくともエチレン酢酸ビニル共重合体を含み、前記エチレン酢酸ビニル共重合体は無機粒子の合計100質量部に対して5.0~15.0質量部の割合で含有されており、表面・サイズ度テスターで測定した、前記基紙の初期吸水特性の超音波が100%に達するまでの時間が、0.01~3.00秒であることを特徴とする、昇華型インクジェット捺染転写紙が公知である(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
昇華型捺染インクを用いて転写捺染用紙に図柄を印刷して転写捺染紙を作製する方法では、特許文献3及び特許文献4に記載されるように、インクジェット印刷方式がよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-168705号公報
【文献】特開2015-124324号公報
【文献】特開2019-064186号公報
【文献】特許第6391792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図柄が印刷される前の白紙である転写捺染用紙と、転写捺染用紙に転写用の図柄を印刷した転写捺染紙との間では、相反する2つの特性を有する必要がある。すなわち、インクを受容する能力とインクを転写する能力である。転写捺染用紙には、昇華型染料インク等のインクを上手く受容する能力が必要である。転写捺染紙には、昇華型染料インク等が含む色材を被印刷物に上手く転写する能力が必要である。一般に、前記受容する能力を高めると、前記転写する能力が低下する。その結果、被印刷物に転写した図柄の色濃度は、低下する場合がある。
【0007】
また、転写捺染用紙に印刷した図柄の画質を超えて、転写捺染紙から被印刷物に転写した図柄の画質は得られない。よって、転写捺染用紙は、転写捺染用紙に印刷した図柄の画質に対して転写捺染紙から被印刷物に転写した図柄の画質が劣化しない又は画質の劣化を抑制する能力が必要である。
【0008】
また、転写捺染紙から被印刷物へ効率良く転写するために、転写捺染用紙と昇華型染料インク等のインクとは、親和性が低いことが望まれる。転写捺染用紙と昇華型染料インク等のインクとの親和性が低くなければ、転写捺染紙から被印刷物へのインクが含む色材の転写に、相対的に大きいエネルギーを要することになる。例えば、同じ温度条件で転写する場合では、相対的に長い時間を要して、転写捺染紙から被印刷物へ昇華型染料インク等が含む色材が転写することになる。
【0009】
インクジェット用紙には、最大含有量成分が白色顔料である塗工液を原紙に塗工した顔料系インクジェット用紙と、最大含有量成分が樹脂である塗工液を原紙に塗工した樹脂系インクジェット用紙とがある。顔料系インクジェット用紙の特徴は、一般に、インクの吸収速度が速いもののインクの吸収容量に劣る。樹脂系インクジェット用紙の特徴は、一般に、インクの吸収速度が遅いもののインクの吸収容量に優れる。インクの吸収速度が遅くなると、用紙上でインクが拡散するために、インクジェット用紙に印刷した図柄の画質が劣化する。インクの吸収容量が不足すると、インクの溶媒によってインクジェット用紙に皺が発生する。
【0010】
特許文献3の昇華型捺染用転写紙及び特許文献4の昇華型インクジェット捺染転写紙の品質は必ずしも十分とはいえない。
【0011】
上記を鑑みて、本発明の目的は、後記項目の品質を有する転写捺染用紙を提供することである。
(1)転写捺染紙において皺の発生が抑制できること(耐皺発生性)
(2)転写捺染紙において転写効率が良好であること(転写性)
(3)被印刷物において画質の劣化が抑制できること(耐画質劣化性)
(4)被印刷物において色濃度の低下が抑制できること(発色性)
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、本発明の目的は、以下により達成される。
[1]原紙層と、前記原紙層の片面に対して多糖類を主成分とする塗工層とを有し、前記多糖類が、カルボキシメチルセルロース及び澱粉類を少なくとも含有し、ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、前記原紙層の透気度が30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の10倍以上である、昇華型染料インクを用いる転写捺染法に使用する転写捺染用紙。
【0013】
[2]多糖類を主成分とする塗工層の付与量が、乾燥固形分量で片面あたり4g/m2以下である上記[1]に記載の転写捺染用紙。
【0014】
[3]多糖類を主成分とする前記塗工層が、実質的に顔料を含有しない上記[1]又は上記[2]に記載の転写捺染用紙。
【0015】
[4]上記澱粉類の少なくとも一種が、尿素燐酸エステル化澱粉である上記[1]乃至上記[3]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0016】
[5]上記カルボキシメチルセルロースが、低分子量タイプである上記[1]乃至上記[4]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0017】
[6]ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、上記原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下である、上記[1]乃至上記[5]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0018】
[7]上記尿素燐酸エステル化澱粉が、尿素置換度平均値0.005以上0.05以下である上記[4]に記載の転写捺染用紙。
【0019】
[8]上記カルボキシメチルセルロースにおいて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下である上記[1]乃至上記[7]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0020】
[9]上記カルボキシメチルセルロースにおいて、エーテル化度が0.6以上1.27以下である上記[1]乃至上記[7]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0021】
[10]上記カルボキシメチルセルロースにおいて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下かつエーテル化度が0.6以上1.27以下である上記[1]乃至上記[7]のいずれかに記載の転写捺染用紙。
【0022】
[11]ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、上記原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下であり、上記尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下である上記[4]に記載の転写捺染用紙。
【0023】
[12]ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、上記原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下であり、上記尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下であり、上記カルボキシメチルセルロースにおいてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下かつエーテル化度が0.6以上1.27以下である上記[4]に記載の転写捺染用紙。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、耐皺発生性、転写性、耐画質劣化性及び発色性を有する転写捺染用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、「転写捺染用紙」とは、転写する図柄が印刷される前の白紙状態にある用紙を指す。「転写捺染紙」とは、転写捺染用紙に対して転写する図柄が印刷された状態にある用紙を指す。
【0026】
転写捺染用紙は、原紙層と、前記原紙層の片面に対して塗工層とを有する。
原紙層は、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)等の化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)、CGP(ChemiGroundwood Pulp)等の機械パルプ、及びDIP(DeInked Pulp)等の古紙パルプから選ばれる少なくとも一種のパルプに、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等の各種填料、さらに、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン化剤、紙力剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤等の各種添加剤を必要に応じて配合した紙料を抄造して得られる抄造紙からなる。さらに、原紙層には、前記抄造紙に従来公知のカレンダー処理を施したカレンダー処理抄造紙が含まれる。カレンダー処理には、従来公知のカレンダー処理装置を用いることができる。カレンダー処理装置の例としては、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等を挙げることができる。
【0027】
抄造は、紙料を酸性、中性又はアルカリ性に調整して、従来公知の抄紙機を用いて行うことができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
【0028】
塗工層は、上記原紙層に対して、従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工層用塗工液を原紙層に付与することによって得ることができる。実施態様として、塗工層は、塗工層用塗工液の成分が抄造紙表面に塗工層領域として存在する状態及び/又は抄造紙の内部に塗工層用塗工液の成分が浸透した拡散層領域として存在する状態を含む。すなわち、塗工層は、原紙層に対して、塗工層領域として存在する状態、拡散層領域として存在する状態、並びに塗工層領域及び拡散層領域の両状態として存在する状態のいずれかである。塗工層の前記状態は、エネルギー分散形X線分光器等の元素分析機能付の電子顕微鏡で用紙の断面を観察し、元素分布を解析することによって確認することができる。
塗工層領域として存在する状態及び/又は拡散層領域として存在する状態は、原紙層のバインダーの種類及び含有量、原紙層のサイズ剤の種類及び含有量、原紙層の紙力剤の種類及び含有量、並びにカレンダー処理条件によって制御できる。
【0029】
塗工層は、多糖類を主成分として有する。多糖類は、カルボキシメチルセルロースと澱粉類とを少なくとも含有する。ここで、「主成分として有する」とは、塗工層を構成する乾燥固形分に対して50質量%超を占める状態を指す。この様な塗工層は、カルボキシメチルセルロースと澱粉類とを少なくとも含有する塗工層塗工液を、従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて、原紙層に対して塗工及び乾燥することによって得ることができる。従来公知の塗工装置の例としては、サイズプレス、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、バーコーター、Eバーコーター、カーテンコーター等を挙げることができる。従来公知の乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等の各種乾燥装置を挙げることができる。
塗工層塗工液を塗工及び乾燥後に、塗工層には、従来公知のカレンダー処理を施すことができる。
【0030】
転写捺染用紙の実施形態として、原紙層に対して塗工層は、原紙層の片面に存在する。転写捺染用紙は、原紙層の塗工層を有する側の反対側に、従来公知のバックコート層を有することができる。
【0031】
いくつかの実施態様として、原紙層に対する塗工層の付与量は、乾燥固形分量で原紙層の片面あたり4g/m2以下である。また、いくつかの実施態様として、原紙層に対する塗工層の付与量は、乾燥固形分量で原紙層の片面あたり1.5g/m2以上である。また、いくつかの実施態様として、原紙層に対する塗工層の付与量は、乾燥固形分量で原紙層の片面あたり2.4g/m2以上である。さらに、少なくとも一つの実施態様として、原紙層に対する塗工層の付与量は、乾燥固形分量で原紙層の片面あたり1.5g/m2以上4g/m2以下である。原紙層に対する塗工層の付与量がこの範囲であると、耐画質劣化性が良化する。
【0032】
カルボキシメチルセルロースは、セルロースエーテルの一種であり、従来公知のものであって特に限定されない。カルボキシメチルセルロースには、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩が含まれる。カルボキシメチルセルロースは、例えば、パルプを原料としてモノクロル酢酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを反応させて得ることができる(直接法)。また、直接法以外にアルセル法及び溶媒法によって得ることができる。カルボキシメチルセルロースは、使用するパルプの性状及び製造方法により様々な分子量又は重合度のものが製造可能である。一般的に、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩として工業的に生産及び販売される。カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩は、多くは、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩又はカルボキシメチルセルロースカリウム塩である。慣用的に、ナトリウム塩やカリウム塩の記載は省略する場合が多い。少なくとも一つの実施態様として、カルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩はカルボキシメチルセルロースナトリウム塩である。この理由は、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が商業的に入手し易いからである。カルボキシメチルセルロースは、例えば、シグマアルドリッチ社、ダイセルミライズ社、第一工業製薬社、CPKelco社、日本製紙社、及びAshland社等から市販される。
【0033】
いくつかの実施態様として、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が100万未満の低分子量タイプである。いくつかの実施態様として、カルボキシメチルセルロースは同換算の重量平均分子量が770,000以下である。また、いくつかの実施態様として、カルボキシメチルセルロースは同換算の重量平均分子量が27,000以上である。また、少なくとも一つの実施形態として、カルボキシメチルセルロースは同換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下である。カルボキシメチルセルロースの重量平均分子量がこの範囲であると、転写性及び/又は耐画質劣化性が良化する。また、少なくとも一つの実施形態として、カルボキシメチルセルロースは同換算の重量平均分子量が27,000以上360,000以下である。カルボキシメチルセルロースの重量平均分子量がこの範囲であると、塗工層塗工液の製造が容易となる。
いくつかの実施態様として、カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は0.6以上1.27以下である。カルボキシメチルセルロースのエーテル化度がこの範囲であると、耐画質劣化性が良化する。エーテル化度は、セルロースを構成するグルコース環上にある3つの水酸基のうちカルボキシメチル基で置換された水酸基の数(平均値)を指す。エーテル化度は、理論的に0から3の間の値を有することができ、一般的に置換度が高いほど親水性となる。
少なくとも一つの実施態様として、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下であり、かつエーテル化度が0.6以上1.27以下である。
【0034】
いくつかの実施態様として、塗工層におけるカルボキシメチルセルロースの含有量は、0.75g/m2以上3.5g/m2以下である。また、少なくとも一つの実施態様として、塗工層におけるカルボキシメチルセルロースの含有量は、1g/m2以上3.4g/m2以下である。カルボキシメチルセルロースの含有量がこの範囲であると、耐皺発生性、転写性及び/又は耐画質劣化性が良化する。
【0035】
澱粉類は、グルコースがグリコシド結合によって重合した従来公知の多糖類又はグルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類においてグルコースが有する水酸基を種々置換基によって変性した従来公知の多糖類であって、特に限定されない。澱粉類の例としては、澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、ジアルデヒド澱粉、燐酸エステル化澱粉及び尿素燐酸エステル化澱粉等のエステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、並びにヒドロキシブチル化澱粉等を挙げることができる。
【0036】
少なくとも一つの実施態様として、澱粉類の少なくとも一種は尿素燐酸エステル化澱粉である。澱粉類が尿素燐酸エステル化澱粉であると、転写性、耐画質劣化性及び/又は発色性が良化する。尿素燐酸エステル化澱粉は、燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とをグルコースに有する澱粉である。燐酸エステル基を導入する方法の例としては、トリポリ燐酸ナトリウム等の燐酸塩を単独で添加して焙焼反応させる方法、燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とを導入する方法の例としては、無機燐酸類と共に尿素を添加して焙焼反応させる方法を挙げることができる。尿素燐酸エステル化澱粉は、主に、後者の無機燐酸類と尿素を焙焼反応させる方法によって各種尿素置換度のものを得ることができる。尿素燐酸エステル化澱粉は、王子コーンスターチ社、日本食品化工社、ジー・エス・エル・ジャパン社等から市販される。
【0037】
いくつかの実施態様において、尿素燐酸エステル化澱粉は尿素置換度平均値が0.005以上0.09以下である。少なくとも一つの実施態様として、尿素燐酸エステル化澱粉は尿素置換度平均値が0.005以上0.05以下である。尿素燐酸エステル化澱粉の尿素置換度平均値がこの範囲であると、転写性及び/又は発色性が良化する。「尿素置換度」とは、澱粉を構成するグルコース単位が有する水酸基におけるカルバミン酸エステル基の置換度である。例えば、尿素置換度=0.02は、澱粉を構成するグルコース単位100個当たり置換基が2個有することを意味する。尿素置換度は、澱粉において従来から知られた値であって公知の方法で求められる。例えば、熱分解GC法又はCHN元素分析計を用いた窒素含有量から求めることができる。また、「澱粉科学実験法」鈴木繁男・中村道徳編集、1979年第1刷発行、朝倉書店発行を参考にすることができる。
【0038】
いくつかの実施態様として、塗工層における澱粉類の含有量は、0.5g/m2以上3g/m2以下である。また、少なくとも一つの実施態様として、塗工層における尿素燐酸エステル化澱粉の含有量は、0.5g/m2以上2.7g/m2以下である。尿素燐酸エステル化澱粉の含有量がこの範囲であると、耐皺発生性及び/又は耐画質劣化性が良化する。
【0039】
いくつかの実施態様として、塗工層におけるカルボキシメチルセルロースの含有量が0.75g/m2以上3.5g/m2以下かつ塗工層における澱粉類の含有量が0.5g/m2以上3g/m2以下である。また、少なくとも一つの実施態様として、塗工層におけるカルボキシメチルセルロースの含有量が1g/m2以上3.4g/m2以下かつ塗工層における尿素燐酸エステル化澱粉の含有量が0.5g/m2以上2.7g/m2以下である。
【0040】
少なくとも一つの実施態様として、カルボキシメチルセルロースは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下であり、かつエーテル化度が0.6以上1.27以下であって、並びに澱粉類の少なくとも一種は、尿素燐酸エステル化澱粉であって、尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下である。
【0041】
塗工層は、カルボキシメチルセルロース及び澱粉類以外に従来公知のバインダーを含有することができる。従来公知のバインダーの例としては、カルボキシメチルセルロースを除くヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム及びアルブミン等の天然由来の樹脂又はその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及び各種変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体等の共重合体並びにこれらの各種共重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性共重合体、メラミン樹脂及び尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール、並びにアルキッド樹脂ラテックス等を挙げることができる。
【0042】
いくつかの実施態様として、塗工層は、従来公知の顔料を含有する。顔料の例としては、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、サチンホワイト、リトポン、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、活性白土及び珪藻土等の無機顔料、並びにプラスチック顔料等の有機顔料を挙げることができる。塗工層が顔料を含有する場合、顔料は、前記顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
少なくとも一つの実施態様として、塗工層は、実質的に顔料を含有しない。塗工層が実質的に顔料を含有しないことによって、耐皺発生性が良化する。ここで、「実質的に顔料を含有しない」とは、エネルギー分散形X線分光器等の元素分析機能付の電子顕微鏡で用紙の断面を観察したときに、原紙層を覆う顔料から成る層が認められないことを指す。例えば、原紙層の片面あたりの塗工層の付与量に対して、顔料が10質量%未満であれば原紙層を顔料で十分に覆うことができないために顔料から成る層が認められない。
【0043】
透気度はISO5636-5:2003に準拠して測定される数値であって、原紙層の透気度が30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の10倍以上である。いくつかの実施態様として、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の11倍以上である。また、いくつかの実施態様として、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上6000倍以下である。6000倍以下であると耐皺発生性及び耐画質劣化性が良化する。少なくとも一つの実施態様として、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下である。
転写捺染用紙から原紙層の透気度は、例えば、用紙の断面を観察しながら塗工層をスライスして除去し、露出した原紙層として測定できる。
【0044】
カルボキシメチルセルロース及び澱粉類を少なくとも含有する塗工層と上記の様な透気度の構成とを採用することによって、昇華型染料インク等のインク中のインク溶媒と色材とを効率良く分離及びインク溶媒の吸収ができ、同時に塗工層に色材を保持できる。結果として、転写捺染用紙は、耐皺発生性、転写性、耐画質劣化性及び発色性を有することができる。原紙層の透気度が30sec超であると、転写捺染用紙は、耐皺発生性及び耐画質劣化性を有することができない。原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の10倍未満であると、転写捺染用紙は、転写性及び耐画質劣化性を有することができない。
【0045】
透気度を調整する方法は、塗工紙分野で従来公知の方法である。原紙層の透気度は、抄造紙の密度及び厚さ、パルプの叩解度、填料の種類及び含有量、バインダーの種類及び含有量、カレンダー処理条件によって調整できる。原紙層の透気度の値を下げる方法は、例えば、密度を小さくする、厚さを小さくする、パルプの叩解を抑える、非平板状填料の使用量及び填料量を減少する、低分子量バインダーの使用量及びバインダー量を減少する、並びにカレンダー圧を抑える等を挙げることができる。ただし、過度に厚さを小さくすると、吸収容量の低下又は皺の発生をもたらす。原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度は、塗工層塗工液の乾燥固形分量としての付与量、塗工層塗工液の塗工方法、塗工層塗工液の乾燥方法及び乾燥時間、並びにカレンダー処理条件等によって調整できる。原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度の値を上げる方法は、例えば、付与量を増す、エアナイフコーター等の非接触型の塗工方式を使用して塗工層塗工液の乾燥時間を短くする、カレンダー圧を増す等を挙げることができる。ただし、過度に付与量を増すと、吸収速度の低下をもたらす。
【0046】
少なくとも一つの実施態様として、転写捺染用紙は、ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下であり、及び塗工層の多糖類において澱粉類の少なくとも一種が尿素燐酸エステル化澱粉であって、尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下である。
【0047】
少なくとも一つの実施態様として、転写捺染用紙は、ISO5636-5:2003に準拠して測定される透気度であって、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下であり、塗工層の多糖類において澱粉類の少なくとも一種が尿素燐酸エステル化澱粉であって、尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下であり、及びカルボキシメチルセルロースにおいてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下かつエーテル化度が0.6以上1.27以下である。
【0048】
塗工層は、必要に応じて塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、分散剤、定着剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等を挙げることができる。
また、塗工層は、転写捺染法で従来公知の各種助剤を含有することができる。助剤は、塗工層塗工液の各種物性を最適化する、又は昇華型染料インク等のインクが含む色材の染着性を向上させるため等に加えられるものである。助剤は、例えば、各種界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、pH調整剤、アルカリ剤、濃染化剤、脱気剤及び還元防止剤等を挙げることができる。
【0049】
転写捺染紙は、昇華型染料インク等を備える従来公知の各種印刷方法を用いて、転写捺染用紙の塗工層を有する面側に図柄を印刷することによって得ることができる。
転写捺染用紙に図柄を印刷する従来公知の各種印刷方法は、特に限定されない。印刷方法は、例えば、グラビア印刷方式、インクジェット印刷方式、電子写真印刷方式及びスクリーン印刷方式などを挙げることができる。少なくとも一つの実施態様として、転写捺染用紙に図柄を印刷する印刷方法はインクジェット印刷方式である。
【0050】
転写捺染法は、転写捺染用紙に図柄を印刷して転写捺染紙を得る工程と、転写捺染紙の図柄を印刷した面と被印刷物とを対向して密着させる工程とを有する方法である。密着させる工程には、必要に応じて、加熱及び/又は加圧が含まれる。密着させる工程における加熱及び加圧のそれぞれの条件は、転写捺染法で従来公知の条件である。密着させる工程は、例えば、プレス機又は加熱ドラム等により転写捺染紙を被印刷物に密着させ加熱及び/又は加圧する方法を挙げることができる。
少なくとも一つの実施態様として、転写捺染法のインクは昇華型染料インクである。
【0051】
被印刷物は、繊維材料であって、特に限定されない。繊維材料は、天然素材由来の繊維材料及び合成樹脂由来の繊維材料のいずれでも構わない。天然素材由来の繊維材料は、例えば、綿、麻、リヨセル、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維材料、絹、羊毛、獣毛等の蛋白質系繊維材料等を挙げることができる。合成樹脂由来の繊維材料は、例えば、ポリアミド繊維(ナイロン)、ビニロン、ポリエスエル、ポリアクリル等を挙げることができる。少なくとも一つの実施態様として、昇華型染料インクを用いる場合、繊維材料はポリエステルである。繊維材料の構成としては、織物、編物、不織布等の単独、混紡、混繊又は交織等を挙げることができる。さらに、これらの構成が複合化してよい。また、必要に応じて、染着促進に効果のある薬剤などで被印刷物を前処理してよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の付与量は乾燥固形分量を表す。
【0053】
(原紙層)
叩解の程度として濾水度380mlcsf~480mlcsfの間に調整したLBKP100質量部からなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム20質量部、両性澱粉1~2質量部、硫酸バンド0.8質量部、アルキルケテンダイマー型サイズ剤0.1質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、得られた抄造紙に対してマシンカレンダー処理をして原紙層を得た。ここで、叩解度、両性澱粉の添加量、及びカレンダー条件を調整して表1及び表2に記載した透気度を有する原紙層を作製した。
【0054】
(塗工層塗工液)
塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
セルロース類 種類及び質量部は表1及び表2に記載
澱粉類 種類及び質量部は表1及び表2に記載
重質炭酸カルシウム 質量部は表1及び表2に記載
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度8~10質量%に調整した。
【0055】
(転写捺染用紙)
転写捺染用紙を以下の手順にて作製した。
原紙層の片面に対して、塗工層塗工液をエアナイフコーターにて塗工及び熱風乾燥機にて乾燥して塗工層を設けた。乾燥後に、カレンダー処理を施して転写捺染用紙を得た。付与量は、表1及び表2に記載する。塗工液の付与量、乾燥温度及び時間、並びにカレンダー処理条件を調整して、原紙層の片面に塗工層を有する、表1及び2に記載した透気度の転写捺染用紙を作製した。
【0056】
【0057】
【0058】
(転写捺染紙)
得られた転写捺染用紙に、昇華型染料インクを使用したインクジェットプリンター(JV2-130II、ミマキエンジニアリング社製)を用いて、昇華型染料インク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の各インク単色、並びにイエローとシアンとの混色であるグリーン、イエローとマゼンタとの混色であるレッド、シアンとマゼンタとの混色であるブルー、及びイエローとシアンとマゼンタとの混色であるブラックから成る評価用図柄を印刷し、転写捺染紙を得た。
【0059】
(耐皺発生性)
インクジェットプリンターで混色であるグリーン、レッド、ブルー及びブラックとから成る4cm×4cm各ベタ画像を含む評価用図柄を転写捺染用紙の塗工層を有する側の面に印刷し、転写捺染紙を得た。得られた転写捺染紙の印刷部において、ベタ画像に発生する皺について観察し、下記の基準で評価した。本発明において、転写捺染用紙は、評価3~5であれば耐皺発生性を有するものとする。
5:図柄に、皺が認められない。
4:図柄に、印刷直後で極僅かに皺が認められるが、間もなく消失する。
3:図柄に、皺が僅かに認められる。しかしながら、実用可能である。
2:図柄に、皺が少し認められる。商品の図柄によっては実用できない。
1:図柄に、明らかに転写不良になる皺が認められる。
【0060】
(転写捺染)
被印刷物として、白色ポリエステル布を使用した。転写捺染紙の塗工層を有する側の面と白色ポリエステル布とを対向させて密着した。白色ポリエステル布が密着した状態の転写捺染紙を、熱転写用プレス機(米国INSTA社、ヒートプレス機モデル204)を用いて、温度140℃、10~14分間加熱した。
【0061】
(転写性)
転写捺染時の加熱時間を変化させて、図柄を形成した白色ポリエステルにおける図柄の色濃度を観察し、下記の基準で評価した。加熱時間は、10分間、12分間及び14分間とした。本発明において、転写捺染用紙は、評価が3~5であれば転写性を有するものとする。
5:10分、12分及び14分で色濃度に変化が無い。
4:10分と12分との間では色濃度の変化が極僅かに認められる。
12分と14分との間では色濃度の変化が認められない。
3:10分と12分との間では色濃度の変化が僅かに認められる。
12分と14分との間では色濃度の変化が認められない。
2:12分と14分との間では色濃度の変化が僅かに認められる。
1:12分と14分との間で色濃度の変化が認められる。
【0062】
(耐画質劣化性)
転写捺染時の加熱時間を10分とした。図柄が形成された白色ポリエステル布について、図柄の鮮鋭性の観点から観察し、下記の基準で評価した。本発明において、転写捺染用紙は、評価が2~4であれば耐画質劣化性を有するものとする。
4:画質の劣化が認められず、良好なレベル。
3:画質の劣化がほとんど認められず、概ね良好なレベル。
2:画質の劣化が僅かに認められるが、実用可能なレベル。
1:画質の劣化が認められ、実用できないレベル。
【0063】
(発色性)
白色ポリエステル布に形成した図柄において、シアン、マゼンタ、イエローの各ベタ画像を光学濃度計(X-RITE(登録商標)530、エックス-ライト・インコーポレーテッド社)を用いて光学色濃度を測定し、3色の色濃度の値を合計した。発色性は、色濃度の値から下記の基準により評価した。本発明において、転写捺染用紙は、評価が3~5であれば発色性を有するものとする。
5:合計の値が4.8以上。
4:合計の値が4.6以上4.8未満。
3:合計の値が4.4以上4.6未満。
2:合計の値が4.2以上4.4未満。
1:合計の値が4.2未満。
【0064】
各評価結果を表3及び4に記載する。
【0065】
【0066】
【0067】
表3及び4の評価結果から、本発明に該当する実施例1~33の転写捺染用紙は、耐皺発生性、転写性、耐画質劣化性及び発色性を有する、と分かる。しかしながら、本発明の構成を満足しない比較例1~5の転写捺染用紙は、これらの効果の少なくとも一つを得ることができない、と分かる。
主に、実施例2、8、及び10の間の対比から、転写捺染用紙は、塗工層の付与量が4g/m2以下であることが好ましい、と分かる。
主に、実施例8、12~14の間の対比から、転写捺染用紙は、塗工層が実質的に顔料を含有しないことが好ましい、と分かる。
主に、実施例2と19との対比及び実施例10と33との対比から、転写捺染用紙は、澱粉類が尿素燐酸エステル化澱粉であることが好ましい、と分かる。
主に、実施例2、実施例15~18及び実施例33の間の対比から、尿素燐酸エステル化澱粉の尿素置換度は0.005以上0.05以下が好ましい、と分かる。
主に、実施例2及び実施例20~23、実施例27、実施例29及び実施例31の間の対比から、転写捺染用紙は、カルボキシメチルセルロースが低分子量タイプであることが好ましい、と分かる。
主に、実施例1~6、実施例11及び実施例32との間の対比から、転写捺染用紙は、原紙層の透気度が12sec以上30sec以下かつ原紙層の片面に塗工層を有した転写捺染用紙の透気度が原紙層の透気度の12倍以上5450倍以下であることが好ましい、と分かる。
主に、実施例2及び実施例15~18並びに実施例33の間の対比から、転写捺染用紙は、多糖類が尿素燐酸エステル化澱粉であって、尿素燐酸エステル化澱粉が尿素置換度平均値0.005以上0.05以下であることが好ましい、と分かる。
主に、実施例2、実施例20~23及び実施例25~27、実施例29及び実施例31の間の対比から、転写捺染用紙は、カルボキシメチルセルロースにおいてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量が27,000以上770,000以下であることが好ましい、と分かる。
主に、実施例2、実施例21~30の間の対比から、転写捺染用紙は、カルボキシメチルセルロースにおいてエーテル化度が0.6以上1.27以下であることが好ましい、と分かる。