(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】端子付き電線、コネクタ、及び、コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/62 20060101AFI20230808BHJP
H01R 13/56 20060101ALI20230808BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01R4/62 A
H01R13/56
H01R43/00 B
(21)【出願番号】P 2020214014
(22)【出願日】2020-12-23
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 良
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257843(JP,A)
【文献】実開昭50-056979(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0114363(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102006031839(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03537545(EP,A1)
【文献】特開2014-157786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/62
H01R 13/56
H01R 13/58
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、複数種類の金属材がクラッド接合された複合金属材から構成される端子と、を備える端子付き電線であって、
前記端子は、
前記複数種類の前記金属材のうちの各々の前記金属材から構成される複数の接続部を有し、
前記電線が有する導体芯線は、
前記複数の前記接続部のうちの当該導体芯線を構成する導体材料に対応する前記接続部に、電気的に接続され、
前記端子は、
前記複数種類の前記金属材として、銅又は銅合金、及び、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、
銅又は銅合金から構成され、相手側端子との電気的接続のための接点部と、
銅又は銅合金から構成され、前記接点部に繋がる一の前記接続部と、
アルミニウム又はアルミニウム合金から構成され、前記一の前記接続部にクラッド接合される他の前記接続部と、を有する、
端子付き電線。
【請求項2】
請求項1
に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を収容するハウジングと、を備える、
コネクタ。
【請求項3】
請求項
2に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングは、
前記端子を保持する端子保持部と、前記電線の前記端子に対する変位を抑制する変位抑制部と、を有する、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1
に記載の端子付き電線と、前記端子付き電線を収容するハウジングと、を有するコネクタを製造するための、製造方法であって、
前記複数の前記接続部の少なくとも一部が露出するように前記端子を前記ハウジングに保持する第1工程と、
前記電線の前記導体芯線を構成する導体材料に対応する前記接続部に、前記電線の前記導体芯線を選択的に接続する第2工程と、を備える、
コネクタの製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の製造方法であって、
前記ハウジングは、
前記端子を保持する端子保持部を有する第1部品と、前記端子に繋がる前記電線の前記端子に対する変位を抑制する変位抑制部を有する第2部品と、を有し、
当該製造方法は、
前記第1工程及び前記第2工程の後、前記第1部品と前記第2部品とを組み付ける第3工程を、更に備える、
コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と、複数種類の金属材がクラッド接合された複合金属材から構成される端子と、を備える端子付き電線に関する。更に、本発明は、その端子付き電線を利用したコネクタ、及び、そのコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車等の車両において、各種の電装品等への電力供給、電装品等と制御装置との通信、及び、電装品等や制御装置のアース接続などの目的で、種々の端子付き電線が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、端子付き電線の使用目的に応じた導電性および耐久性、並びに、端子付き電線の重量などの観点から、端子を構成する金属材の種類や、電線(特に導体芯線)を構成する金属材の種類が選択される。例えば、銅又は銅合金で構成された銅端子、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成されたアルミ端子、銅又は銅合金で導体芯線が構成された銅電線、及び、アルミニウム又はアルミニウム合金で導体芯線が構成されたアルミ電線などの中から、使用目的に応じた端子および電線が適宜選択される。ここで、異種金属同士の安定的な電気的接合は一般に困難であることから、通常、導体芯線を構成する導体材料と端子を構成する金属材とが同一であるように、電線および端子が選択される。しかし、そのような選択に備えて多種多様な材質の電線および端子を準備・管理することは、煩雑である。端子付き電線の製造の生産性向上の点では、電線や端子の共通化(例えば、導体芯線を構成する導体材料の種別が異なっても、出来る限り共通の端子を用いること)を図ることが望ましい。
【0005】
本発明の目的の一つは、生産性に優れた端子付き電線、その端子付き電線を用いたコネクタ、及び、そのコネクタの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線、コネクタ、及び、コネクタの製造方法は、下記[1]~[5]を特徴としている。
[1]
電線と、複数種類の金属材がクラッド接合された複合金属材から構成される端子と、を備える端子付き電線であって、
前記端子は、
前記複数種類の前記金属材のうちの各々の前記金属材から構成される複数の接続部を有し、
前記電線が有する導体芯線は、
前記複数の前記接続部のうちの当該導体芯線を構成する導体材料に対応する前記接続部に、電気的に接続され、
前記端子は、
前記複数種類の前記金属材として、銅又は銅合金、及び、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、
銅又は銅合金から構成され、相手側端子との電気的接続のための接点部と、
銅又は銅合金から構成され、前記接点部に繋がる一の前記接続部と、
アルミニウム又はアルミニウム合金から構成され、前記一の前記接続部にクラッド接合される他の前記接続部と、を有する、
端子付き電線であること。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線と、
前記端子付き電線を収容するハウジングと、を備える、
コネクタであること。
[3]
上記[2]に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングは、
前記端子を保持する端子保持部と、前記電線の前記端子に対する変位を抑制する変位抑制部と、を有する、
コネクタであること。
[4]
上記[1]に記載の端子付き電線と、前記端子付き電線を収容するハウジングと、を有するコネクタを製造するための、製造方法であって、
前記複数の前記接続部の少なくとも一部が露出するように前記端子を前記ハウジングに持する第1工程と、
前記電線の前記導体芯線を構成する導体材料に対応する前記接続部を選択し、選択され
た前記接続部に前記前記導体芯線を電気的に接続する第2工程と、を備える、
コネクタの製造方法であること。
[5]
上記[4]に記載の製造方法であって、
前記ハウジングは、
前記端子を保持する端子保持部を有する第1部品と、前記端子に繋がる前記電線の前記端子に対する変位を抑制する変位抑制部を有する第2部品と、を有し、
当該製造方法は、
前記第1工程及び前記第2工程の後、前記第1部品と前記第2部品とを組み付ける第3工程を、更に備える、
コネクタの製造方法であること。
【0007】
上記[1]の構成の端子付き電線によれば、複数種類の金属材を互いに密着した状態で接合するクラッド接合によって一体化された複合金属材から端子が構成される。端子は、複数種類の金属材のうちの各々の金属材から構成される複数の接続部を有する。それら複数の接続部のうち、電線の導体芯線を構成する導体材料に対応する金属材で構成された接続部に、電線の導体芯線が電気的に接続される。ここで、導体芯線を構成する導体材料に「対応する」金属材とは、前者の導体材料と後者の金属材とが同一であること、及び、両者が完全に同一でなくとも両者の自然電位の差がガルバニック腐食による品質劣化の懸念がない程度に小さいことを表す。これにより、電線の導体芯線を構成する導体材料の種別(以下、単に「電線の種別」ともいう。)によらず、共通の端子を用いて、端子付き電線を製造できる。よって、本構成の端子付き電線は、従来の端子付き電線に比べて生産性に優れている。例えば、本構成の端子付き電線は、自動機による製造に適している。
【0008】
なお、クラッド接合は、金属材の接合面同士を密着させて加圧処理および熱処理を施すことで、双方の金属材を構成する金属原子の相互拡散を促し、双方の接合面同士を強固に拡散接合する手法である。メッキ等の手法とは異なり、クラッド接合によって接合された接合面間には、一般に脆弱な金属間化合物が生じない。この点で、クラッド接合は、メッキ等の手法に比べて接合強度に優れ、接合面間の剥離等が生じ難い。
【0009】
更に、電線の導体芯線を接続部に電気的に接続する方法は、特に制限されず、例えば、レーザを用いた溶接、加圧による圧着、及び、超音波接合などの方法が用いられ得る。
【0011】
更に、上記[1]の構成の端子付き電線によれば、導体芯線が銅又は銅合金から構成される銅電線を用いる場合、銅又は銅合金から構成される一の接点部に導体芯線を接合すればよく、導体芯線がアルミニウム又はアルミニウム合金から構成されるアルミ電線を用いる場合、アルミニウム又はアルミニウム合金から構成される他の接点部に導体芯線を接合すればよい。即ち、自動車のワイヤハーネス等に一般に用いられる銅電線およびアルミ電線の何れに対しても、共通の端子を用いて、端子付き電線を製造できる。
【0012】
上記[2]の構成のコネクタによれば、電線の種別によらず端子を共通化できる。そのため、例えば、ハウジングにあらかじめ端子を収容し(例えば、インサート成形し)、その後、電線の種別に応じた接続部に電線の導体芯線を接続することで、コネクタを製造できる。これにより、コネクタの製造にあたって電線の種別によらずハウジング及び端子を共通化でき、コネクタの生産性を向上できる。
【0013】
上記[3]の構成のコネクタによれば、コネクタの端子保持部に保持された端子に繋がる電線が端子に対して変位することが、変位抑制部によって抑制される。これにより、コネクタを実際に使用する際、電線に及んだ外力等によって電線に位置ズレが生じて接続部と導体芯線との接合箇所に負荷が及ぶことを、抑制できる。よって、端子と電線との電気的接続の信頼性を向上できる。
【0014】
上記[4]の構成のコネクタの製造方法によれば、電線の種別によらず共通の構造を有する端子をハウジングにあらかじめ保持させ(例えば、インサート成形し)、その後、電線の種別に応じた接続部を選択して電線の導体芯線を接合することで、コネクタを製造できる。これにより、コネクタの製造にあたって電線の種別によらずハウジング及び端子を共通化でき、効率よくコネクタを製造できる。
【0015】
上記[5]の構成のコネクタの製造方法によれば、コネクタの端子保持部に保持された端子に繋がる電線が端子に対して変位することが、変位抑制部によって抑制される。これにより、製造後のコネクタを実際に使用する際、電線に及んだ外力等によって電線に位置ズレが生じて接続部と導体芯線との接合箇所に負荷が及ぶことを、抑制できる。よって、端子と電線との電気的接続の信頼性を向上できる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、生産性に優れた端子付き電線、その端子付き電線を用いたコネクタ、及び、そのコネクタの製造方法を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る端子付き電線を構成する、端子と、銅電線及びアルミ電線とが、分離した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る端子付き電線を示す斜視図であり、
図2(a)は、
図1に示す端子の銅接続部に
図1に示す銅電線が接合された端子付き電線を示し、
図2(b)は、
図1に示す端子のアルミ接続部に
図1に示すアルミ電線が接合された端子付き電線を示す。
【
図3】
図3(a)は、
図2(a)に示す端子付き電線の側面図であり、
図3(b)は、
図2(b)に示す端子付き電線の側面図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の実施形態に係るコネクタの製造手順を説明するための第1の図であり、
図4(b)は、その製造手順を説明するための第2の図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の実施形態に係るコネクタの製造手順を説明するための第3の図であり、
図5(b)は、その製造手順を説明するための第4の図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る端子を示し、
図6(a)は、その斜視図であり、
図6(b)は、その側面図である。
【
図7】
図7は、他の変形例に係る端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、まず、本発明の実施形態に係る端子付き電線2について説明する。端子付き電線2は、
図1~
図3に示すように、端子20に対して、銅電線10A又はアルミ電線10Bが接合されることで構成される。銅電線10A及びアルミ電線10Bは、自動車のワイヤハーネス等に用いられることが想定される。
【0020】
以下、説明の便宜上、
図1~
図7に示すように、「前後方向」、「上下方向」、「幅方向」、「前」、「後」、「上」、及び「下」を定義する。前後方向、上下方向、及び幅方向は互いに直交している。前後方向は、端子付き電線2の延在方向と一致している。以下、端子付き電線2を構成する各部材について順に説明する。
【0021】
まず、銅電線10A及びアルミ電線10Bについて説明する。
図1に示すように、銅電線10Aは、銅又は銅合金で構成された導体芯線11と、導体芯線11の周囲を覆う絶縁性の被覆12と、で構成される。導体芯線11は、単線であっても、複数の細い導体線心が集合した電線束であってもよい。同様に、アルミ電線10Bは、アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された導体芯線11と、導体芯線11の周囲を覆う絶縁性の被覆12と、で構成される。導体芯線11は、単線であっても、複数の細い導体線心が集合した電線束であってもよい。
【0022】
次いで、端子20について説明する。端子20は、
図1及び
図3に示すように、大略的には、前後方向に延びる形状を有している。具体的には、端子20は、前後方向に延びる角筒状の接点部21と、接点部21の底壁(下壁)の後端部から連続して後方へ向けて前後方向に延びる矩形平板状の第1接続部22と、第1接続部22より後側且つ下側の位置にて前後方向に延びる矩形平板状の第2接続部23と、第1接続部22の後端部と第2接続部23の前端部と互いに上下にオフセットさせた状態で繋ぐ段差部24と、を一体に備えている。接点部21は、前側から、相手側端子(オス端子、図示省略)が挿入され接続される部分である。
【0023】
接点部21、第1接続部22、及び、段差部24における境界位置24a(
図1及び
図3参照)より上側の部分(以下、「銅材部分」と呼ぶ)は、銅又は銅合金で一体に構成されている。第2接続部23、及び、段差部24における境界位置24aより下側の部分(以下、「アルミ材部分」と呼ぶ)は、アルミニウム又はアルミニウム合金で一体に構成されている。
【0024】
銅材部分とアルミ材部分とは、それぞれの境界位置24aに対応する部分がクラッド接合によって前後方向に並列的に並ぶように一体化されることで、一体化されている。即ち、端子20は、所謂「並列クラッド材」を用いて構成されている。
【0025】
なお、上述したように、クラッド接合は、金属材の接合面同士を密着させて加圧処理および熱処理を施すことで、双方の金属材を構成する金属原子の相互拡散を促し、双方の接合面同士を強固に拡散接合する手法である。メッキ等の手法とは異なり、クラッド接合によって接合された接合面間には、一般に脆弱な金属間化合物が生じない。この点で、クラッド接合は、メッキ等の手法に比べて接合強度に優れ、接合面間の剥離等が生じ難い。
【0026】
端子20は、銅材部分及びアルミ材部分に対して、クラッド接合を行った後に曲げ加工及びプレス加工等を施すことで形成してもよいし、曲げ加工及びプレス加工等を施した後にクラッド接合を行うことで形成してもよい。
【0027】
端子20では、第1接続部22の上面(即ち、銅材部分の上面)が、銅接続部25Aを構成し、第2接続部23の上面(即ち、アルミ材部分の上面)が、アルミ接続部25Bを構成している。アルミ接続部25Bは、銅接続部25Aに対して、後側の位置であり且つ下方にオフセットさせた位置に配置されている。以上、端子付き電線2を構成する各部材について説明した。
【0028】
以下、説明の便宜上、電線10A及び電線10Bを区別する必要がない場合、電線10A及び電線10Bの各々を「電線10」と呼び、銅接続部25A及びアルミ接続部25Bを区別する必要がない場合、銅接続部25A及びアルミ接続部25Bの各々を「接続部25」と呼ぶことがある。
【0029】
端子付き電線2では、銅電線10Aを用いる場合、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、銅接続部25Aから銅電線10Aが後方に延出するように、銅接続部25Aに、銅電線10Aの(銅又は銅合金で構成された)導体芯線11が選択的に接合される。一方、アルミ電線10Bを用いる場合、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、アルミ接続部25Bからアルミ電線10Bが後方に延出するように、アルミ接続部25Bに、アルミ電線10Bの(アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された)導体芯線11が選択的に接合される。なお、係る接合の方法は、特に制限されず、例えば、レーザを用いた溶接、圧着、及び、超音波接合などの方法が用いられ得る。更に、レーザを用いる場合、ガルバノスキャナ等を用いて所定の接合箇所に選択的にレーザ照射を行うようにすれば、端子付き電線2の製造の自動化(即ち、作業者の手作業ではなく、自動機による製造)を図ることも可能である。
【0030】
このように、銅電線10Aを用いる場合及びアルミ電線10Bを用いる場合の何れの場合であっても、端子20と導体芯線11との接合に関して、前者の導体材料と後者の金属材とが同一となる、又は、両者が完全に同一でなくとも両者の自然電位の差がガルバニック腐食による品質劣化の懸念がない程度に小さくなるので、長期に亘る安定的な電気的接続が可能となる。加えて、自動車のワイヤハーネス等に一般に用いられる銅電線10A及びアルミ電線10Bの何れに対しても、共通の端子20を用いて、端子付き電線2を製造できる。
【0031】
更に、
図3(a)から理解できるように、銅電線10Aを用いる場合、銅接続部25Aに接合された(銅又は銅合金で構成された)導体芯線11を、アルミ接続部25Bから隔離するように、銅接続部25Aとアルミ接続部25Bとが互いにオフセットさせた位置に配置されている。同様に、
図3(b)から理解できるように、アルミ電線10Bを用いる場合、アルミ接続部25Bに接合された(アルミニウム又はアルミニウム合金で構成された)導体芯線11を、銅接続部25Aから隔離するように、銅接続部25Aとアルミ接続部25Bとが互いにオフセットさせた位置に配置されている。これにより、端子付き電線2が被水した場合等であっても、導体芯線11と、銅接続部25A及びアルミ接続部25Bのうち導体芯線11と接合されていない接続部25と、の間でのガルバニック腐食の発生を抑制できる。なお、オフセットの方向は特に制限されず、図示される上下方向のオフセットだけでなく、幅方向や斜め方向でのオフセットが採用されてもよい。
【0032】
次いで、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタ1について説明する。コネクタ1は、
図4及び
図5に示すように、複数の端子付き電線2と、複数の端子付き電線2を収容するハウジング30と、で構成されている。
【0033】
ハウジング30は、
図5に示すように、互いに上下に組み付け可能な、樹脂製の下ハウジング31、及び、樹脂製の上ハウジング32で構成されている。下ハウジング31は、主として、複数の端子20を保持する機能を果たし、上ハウジング32は、下ハウジング31に組み付けられることで、主として、端子20から延びる電線10の端子20に対する変位を抑制する機能を果たす。
【0034】
図4(a)に示すように、下ハウジング31は、前後方向且つ幅方向に延びる略直方体状の形状を有している。下ハウジング31には、インサート成形によって、前後方向に延びる複数の端子20が、幅方向に間隔を空けて一列に並ぶように一体化されている。この結果、下ハウジング31の前端部を構成する(幅方向に延びる)接点部保持部33には、各端子20の接点部21の側面全体が埋設されている。下ハウジング31の接点部保持部33より後側の領域を構成する接続部保持部34には、各端子20の第1接続部22、第2接続部23及び段差部24が、それらの上面が露出するように埋設されている。この結果、各端子20について、銅接続部25A及びアルミ接続部25Bが露出している。接続部保持部34の幅方向両側面には、一対の係合凹部35が形成されている。
【0035】
図5(a)に示すように、上ハウジング32は、前後方向且つ幅方向に延びる略矩形平板状の形状を有しており、上ハウジング32の下面は、下ハウジング31の接続部保持部34に上方から組み付け可能な形状を有している。上ハウジング32の下面には、下ハウジング31に一体化されている複数の端子20に対応して、上方に窪み且つ前後方向に延びる複数の電線保持部36が、幅方向に間隔を空けて一列に並ぶように形成されている。上ハウジング32の幅方向両側面には、下ハウジング31の一対の係合凹部35に対応して、一対の係合凸部37が形成されている。
【0036】
以下、コネクタ1の組み付け手順について説明する。まず、
図4(b)に示すように、下ハウジング31に既に一体化されている複数の端子20の各々に、銅電線10A又はアルミ電線10Bが接合される。
図4(b)に示す例では、幅方向に並ぶ複数の端子20に、銅電線10A及びアルミ電線10Bが幅方向に交互に並ぶように接合されている。銅電線10Aが接続される端子20については、銅接続部25Aに銅電線10Aの導体芯線11が選択的に接合され、アルミ電線10Bが接続される端子20については、アルミ接続部25Bにアルミ電線10Bの導体芯線11が選択的に接合される。ここで、複数の端子20の各々と導体芯線11との接合は、個別に行われてもよいし、一括して(1アクションで)行われてもよい。この接合の際、例えば、上述したガルバノスキャナを用いたレーザ照射等が用いられ得る。
【0037】
このように、複数の電線10が複数の端子20にそれぞれ接合されることで、
図4(b)に示すように、複数の電線10は、幅方向に間隔を空けて一列に並んだ状態で、下ハウジング31の後端縁から後方へ向けて延出している。
【0038】
次いで、
図5(a)に示すように、上ハウジング32が、上方から、下ハウジング31の接続部保持部34を覆うように、且つ、複数の電線10が対応する電線保持部36にそれぞれ収容されるように、且つ、上ハウジング32の一対の係合凸部37が下ハウジング31の一対の係合凹部35に係合するように、下ハウジング31に組み付けられる。これにより、コネクタ1の組み付けが完了して、
図5(b)に示すコネクタ1が得られる。
【0039】
コネクタ1の組付完了状態では、一対の係合凸部37と一対の係合凹部35との係合により、上ハウジング32及び下ハウジング31が互いに組み付けられた状態が維持され得る。更に、複数の電線10が、複数の電線保持部36と複数の端子20との間に位置し、且つ、複数の電線保持部36の内部に収容された状態に維持されるので、各電線10が、対応する端子20に対して変位することが抑制され得る。
【0040】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る端子付き電線2によれば、複数種類の金属材(銅材及びアルミ材)が互いに密着した状態で接合されたクラッド接合によって一体化され、この複合金属材から端子20が構成される。端子20は、複数種類の金属材のうちの各々の金属材によって構成される複数の接続部25(銅接続部25A及びアルミ接続部25B)を有する。それら複数の接続部25のうち、電線10A(電線10B)の導体芯線11を構成する金属材である銅材(アルミ材)に対応する金属材で構成された銅接続部25A(アルミ接続部25B)に、電線10A(電線10B)の導体芯線11が接合される。これにより、電線10の種別(電線10Aか電線10Bか)によらず、共通の端子20を用いて、端子付き電線2を製造できる。よって、本実施形態に係る端子付き電線2は、製造の合理性に優れている。
【0041】
更に、本実施形態に係る端子付き電線2によれば、銅接続部25Aとアルミ接続部25Bとがオフセットされた位置に配置されることで、銅接続部25A(アルミ接続部25B)に接合された導体芯線11が、アルミ接続部25B(銅接続部25A)から隔離される。これにより、端子付き電線2が被水した場合等であっても、導体芯線11と他の接続部との間でのガルバニック腐食の発生を抑制できる。
【0042】
更に、本実施形態に係る端子付き電線2によれば、銅電線10Aを用いる場合には端子20の銅接続部25Aに銅電線10Aを接合すればよく、アルミ電線10Bを用いる場合には端子20のアルミ接続部25Bにアルミ電線10Bを接合すればよい。即ち、自動車のワイヤハーネス等に一般に用いられる銅電線10Aおよびアルミ電線10Bの何れに対しても、共通の端子20を用いて、端子付き電線2を製造できる。
【0043】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、電線10の種別によらず端子20を共通化できるため、ハウジング30にあらかじめ端子20を収容し(具体的には、インサート成形し)、その後に、電線10の種別に応じた接続部25に電線10の導体芯線11を接合することで、コネクタ1を製造できる。これにより、コネクタ1の製造にあたり、電線10の種別によらずハウジング30及び端子20を共通化できる。
【0044】
更に、本実施形態に係るコネクタ1によれば、コネクタ1の端子保持部(接点部保持部33及び接続部保持部34)に保持された端子20に接続された電線10が端子20に対して変位することが、変位抑制部(電線保持部36)によって抑制される。これにより、電線10に及んだ外力等によって電線10に位置ズレが生じ、端子20の接続部と電線10の導体芯線11との接合箇所に負荷が及ぶことを、抑制できる。よって、端子20と電線10との電気的接続の信頼性を向上できる。
【0045】
更に、本実施形態に係るコネクタ1の製造方法によれば、電線10の種別によらず共通の構造を有する端子20をハウジング30にあらかじめ保持させ(具体的には、インサート成形し)、その後に、電線10の種別に応じた接続部25に電線10の導体芯線11を接合することで、コネクタを製造できる。これにより、コネクタ1の製造にあたり、電線10の種別によらずハウジング30及び端子20を共通化できる。
【0046】
更に、本実施形態に係るコネクタ1の製造方法によれば、コネクタ1の端子保持部(接点部保持部33及び接続部保持部34)に保持された端子20に接続された電線10が端子20に対して変位することが、変位抑制部(電線保持部36)によって抑制される。これにより、電線10に及んだ外力等によって電線10に位置ズレが生じ、端子20の接続部25と電線10の導体芯線11との接合箇所に負荷が及ぶことを、抑制できる。よって、端子20と電線10との電気的接続の信頼性を向上できる。
【0047】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
上記実施形態では、端子20において、「第1接続部22、及び、段差部24における境界位置24aより上側の部分」(=銅材部分)と、「第2接続部23、及び、段差部24における境界位置24aより下側の部分」(=アルミ材部分)との、それぞれの境界位置24aに対応する部分がクラッド接合によって前後方向に並列的に並ぶように一体化されることで、銅材部分とアルミ材部分とが一体化されている(
図1及び
図3参照)。即ち、端子20は、所謂「並列クラッド材」を用いて構成されている。これに対し、
図6に示すように、端子20の第2接続部23が2層で構成され、「第1接続部22、段差部24、及び、第2接続部23の下層部分」(=銅材部分)における第2接続部23の下層部分と、「第2接続部23の上層部分」(=アルミ材部分)とが、クラッド接合によって上下方向に積層されるように一体化されることで、銅材部分とアルミ材部分とが一体化されていてもよい。即ち、端子20は、所謂「積層クラッド材」を用いて構成されていてもよい。
【0049】
図6に示す例でも、上記実施形態と同様、第1接続部22の上面(即ち、銅材部分の上面)が、銅接続部25Aを構成し、第2接続部23の上面(即ち、アルミ材部分の上面)が、アルミ接続部25Bを構成しており、アルミ接続部25Bは、銅接続部25Aに対して、後側の位置であり且つ下方にオフセットさせた位置に配置されている。よって、上記実施形態と同様、端子付き電線2が被水した場合等であっても、導体芯線11と、銅接続部25A及びアルミ接続部25Bのうち導体芯線11と接合されていない接続部25と、の間でのガルバニック腐食の発生を抑制できる。
【0050】
更に、
図7に示すように、端子20において、第2接続部23及び段差部24を省略し、矩形平板状の第1接続部22の先端部における周縁部に囲まれた中央部のみが2層で構成され、「第1接続部22における中央部を除いた部分、及び、中央部の下層部分」(=銅材部分)における中央部の下層部分と、「中央部の上層部分」(=アルミ材部分)とが、クラッド接合によって上下方向に積層されるように一体化されることで、銅材部分とアルミ材部分とが一体化されていてもよい。この場合、第1接続部22における中央部以外の部分の上面(即ち、銅材部分の上面)が、銅接続部25Aを構成し、第1接続部22における中央部の上面(即ち、アルミ材部分の上面)が、アルミ接続部25Bを構成している。
図7に示す例では、アルミ接続部25Bは、銅接続部25Aに対して、後側の位置である一方で、上下方向の同じ位置に配置されている。
【0051】
更に、上記実施形態では、端子20を構成する複数種類の金属材として、銅材とアルミ材の2種類の金属材が採用されている。これに対し、複数種類の金属材として、銅材及びアルミ材以外の組み合わせの2種類の金属材が採用されてもよいし、3種類以上の金属材が採用されてもよい。
【0052】
ここで、上述した本発明に係る端子付き電線2、端子付き電線2を用いたコネクタ1、及び、コネクタ1の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[7]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
電線(10A,10B)と、複数種類の金属材がクラッド接合された複合金属材から構成される端子(20)と、を備える端子付き電線(2)であって、
前記端子(20)は、
前記複数種類の前記金属材のうちの各々の前記金属材から構成される複数の接続部(25A,25B)を有し、
前記電線(10A,10B)が有する導体芯線(11)は、
前記複数の前記接続部(25A,25B)のうちの当該導体芯線(11)を構成する導体材料に対応する前記接続部に、電気的に接続される、
端子付き電線(2)。
[2]
上記[1]に記載の端子付き電線(2)において、
前記端子(20)は、
前記複数の前記接続部のうちの一の前記接続部(25A)に接続された前記導体芯線(11)を、前記複数の前記接続部のうちの他の前記接続部(25B)から隔離するように、前記一の前記接続部(25A)と前記他の前記接続部(25B)とが互いにオフセットされた位置に配置される、ように構成される、
端子付き電線(2)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の端子付き電線(2)において、
前記端子(20)は、
前記複数種類の前記金属材として、銅又は銅合金、及び、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、
銅又は銅合金から構成され、相手側端子との電気的接続のための接点部(21)と、
銅又は銅合金から構成され、前記接点部(21)に繋がる一の前記接続部(25A)と、
アルミニウム又はアルミニウム合金から構成され、前記一の前記接続部(25A)にクラッド接合される他の前記接続部(25B)と、を有する、
端子付き電線(2)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の端子付き電線(2)と、
前記端子付き電線(2)を収容するハウジング(30)と、を備える、
コネクタ(1)。
[5]
上記[4]に記載のコネクタ(1)において、
前記ハウジング(30)は、
前記端子(20)を保持する端子保持部(33,34)と、前記電線(10A,10B)の前記端子(20)に対する変位を抑制する変位抑制部(36)と、を有する、
コネクタ(1)。
[6]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の端子付き電線(2)と、前記端子付き電線(2)を収容するハウジング(30)と、を有するコネクタ(1)を製造するための、製造方法であって、
前記複数の前記接続部(25A,25B)の少なくとも一部が露出するように前記端子(20)を前記ハウジング(30)に保持する第1工程と、
前記電線(10A,10B)の前記導体芯線(11)を構成する導体材料に対応する前記接続部(25A,25B)を選択し、選択された前記接続部(25A,25B)に前記導体芯線(11)を電気的に接続する第2工程と、を備える、
コネクタ(1)の製造方法。
[7]
上記[6]に記載の製造方法であって、
前記ハウジング(30)は、
前記端子(20)を保持する端子保持部(33,34)を有する第1部品(31)と、前記端子(20)に繋がる前記電線(10A,10B)の前記端子(20)に対する変位を抑制する変位抑制部(36)を有する第2部品(32)と、を有し、
当該製造方法は、
前記第1工程及び前記第2工程の後、前記第1部品(31)と前記第2部品(32)とを組み付ける第3工程を、更に備える、
コネクタの製造方法。
【符号の説明】
【0053】
1 コネクタ
2 端子付き電線
10A 銅電線(電線)
10B アルミ電線(電線)
11 導体芯線
20 端子
21 接点部
25A 銅接続部(一の接続部)
25B アルミ接続部(他の接続部)
30 ハウジング
31 下ハウジング(第1部品)
32 上ハウジング(第2部品)
33 接点部保持部(端子保持部)
34 接続部保持部(端子保持部)
36 電線保持部(変位抑制部)