(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 18/04 20060101AFI20230808BHJP
B60J 3/00 20060101ALI20230808BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B65H18/04
B60J3/00 H
B60R5/04 T
(21)【出願番号】P 2020536330
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2019019519
(87)【国際公開番号】W WO2020031452
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018149129
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩一
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-255453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 18/00-18/28
B60J 3/00
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の巻取軸部材と、
前記巻取軸部材の端部の開口に嵌入された嵌入部、及び、前記巻取軸部材の端部から該巻取軸部材の回転軸方向における外側の位置において前記巻取軸部材の端部に接触した規制部を有し、支持部に対して前記巻取軸部材の回転軸を中心として回転可能に支持された端部材と、を備え、
前記巻取軸部材の端部と前記規制部との間には、前記回転軸の方へ凹んで底部が前記嵌入部の外周部に繋がっている凹部が設けられ
、
前記規制部は、前記回転軸を中心とした回転方向において前記凹部の両側のそれぞれに前記巻取軸部材の端部に接触した接触部を有する、巻取装置。
【請求項2】
筒状の巻取軸部材と、
前記巻取軸部材の端部の開口に嵌入された嵌入部、及び、前記巻取軸部材の端部から該巻取軸部材の回転軸方向における外側の位置において前記巻取軸部材の端部に接触した規制部を有し、支持部に対して前記巻取軸部材の回転軸を中心として回転可能に支持された端部材と、を備え、
前記巻取軸部材の端部と前記規制部との間には、前記回転軸の方へ凹んで底部が前記嵌入部の外周部に繋がっている凹部が設けられ、
前記巻取軸部材は、前記回転軸方向に沿った溝を内周部に有し、
前記嵌入部は、前記溝に挿入された突条を外周部に有し、
前記嵌入部の突条は、前記巻取軸部材の溝における対向面に向かって凸とされ該対向面に当たった凸部を有し、
前記凹部は、前記凸部から前記回転軸方向に向かった位置にある
、巻取装置。
【請求項3】
前記嵌入部の突条は、頂面を有し、
前記巻取軸部材の溝は、前記突条の頂面に対向する底面を有し、
前記凸部は、前記突条の頂面から前記溝の底面に向かって凸とされ該底面に当たった頂面凸部を複数含み、
前記複数の頂面凸部は、前記回転軸を中心とした回転方向の順に、第一方向頂面凸部、第二方向頂面凸部、及び、第三方向頂面凸部を含み、
前記回転軸を中心として、前記第一方向頂面凸部と前記第二方向頂面凸部とのなす角度θ1が100°~165°であり、前記第二方向頂面凸部と前記第三方向頂面凸部とのなす角度θ2が100°~165°であり、前記第三方向頂面凸部と前記第一方向頂面凸部とのなす角度θ3が30°~160°であり、
θ1+θ2+θ3=360°である、
請求項2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記嵌入部の突条は、頂面、及び、該頂面を挟む一対の側部を有し、
前記巻取軸部材の溝は、前記突条の頂面に対向する底面、及び、前記突条の側部に対向する内側部を有し、
前記凸部は、前記突条の頂面から前記溝の底面に向かって凸とされ該底面に当たった頂面凸部、及び、前記突条の側部から前記溝の内側部に向かって凸とされ該内側部に当たった側部凸部を含み、
前記回転軸方向において前記頂面凸部の中心の位置と前記側部凸部の中心の位置とが異なる、
請求項2又は請求項3に記載の巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内等に設置される巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の荷室には、荷室の上部を可撓性のトノカバー(シート状部材)で覆うためにトノカバー装置が設けられることがある。また、車両用ドア等には、防眩のために可撓性のサンシェード(シート状部材)で直射日光を遮ったり、車内のプライバシーをサンシェードで確保したりするためにサンシェード装置が設けられることがある。トノカバー装置やサンシェード装置等の巻取装置は、例えば、シート状部材の一端を留めた筒状の巻取軸部材、シート状部材を巻き取る向きに巻取軸部材を付勢するためのばね、シート状部材の引出口を有するケース、等を有する。これにより、使用時にケースからシート状部材を引き出すことができ、非使用時にシート状部材を巻き取ってケースに収納することができる。
【0003】
特開2016-102000号公報に示されるトノカバー装置は、軸方向に沿った溝が内周部に形成された筒状の巻取軸部材、該巻取軸部材の外周面上に巻取可能なシート状部材、巻取軸部材の両端に取り付けられた端部材、等を備えている。端部材は、溝に挿入される突条が外周部に形成され巻取軸部材の端部の開口に嵌入される嵌入部を有し、支持部に対して巻取軸部材の回転軸を中心として回転可能に支持されている。嵌入部の突条は、頂面、及び、該頂面を挟む一対の側部を有している。巻取軸部材の溝は、嵌入部の突条の側部に対向する内側部を有している。一対の側部の少なくとも一方は、対向する内側部に向かって凸とされ該内側部に当たる凸部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻取軸部材の端部の開口に端部材の嵌入部を圧入した時に嵌入部の突条に設けられた凸部が巻取軸部材の端部に当たって削れてしまう可能性がある。凸部が削れることにより屑(カスとも呼ばれる。)が生じると、屑が巻取軸部材と端部材との間に挟まって端部材が巻取軸部材に対して僅かに斜めにずれる可能性が生じる。端部材が巻取軸部材に対して斜めにずれると、シート状部材を引き出したり巻き取らせたりする操作の時に巻取軸部材及び端部材の回転の円滑性が低下し、シート状部材の操作時に異音が発生する可能性や、車両走行時に異音が発生する可能性が生じる。
尚、上述した問題は、サンシェード装置等、トノカバー装置以外の巻取装置にも存在する。
【0006】
本発明は、シート状部材の操作性を向上させることが可能な巻取装置を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻取装置は、筒状の巻取軸部材と、
前記巻取軸部材の端部の開口に嵌入された嵌入部、及び、前記巻取軸部材の端部から該巻取軸部材の回転軸方向における外側の位置において前記巻取軸部材の端部に接触した規制部を有し、支持部に対して前記巻取軸部材の回転軸を中心として回転可能に支持された端部材と、を備え、
前記巻取軸部材の端部と前記規制部との間には、前記回転軸の方へ凹んで底部が前記嵌入部の外周部に繋がっている凹部が設けられ、
前記規制部は、前記回転軸を中心とした回転方向において前記凹部の両側のそれぞれに前記巻取軸部材の端部に接触した接触部を有する、態様を有する。
また、本発明の巻取装置は、筒状の巻取軸部材と、
前記巻取軸部材の端部の開口に嵌入された嵌入部、及び、前記巻取軸部材の端部から該巻取軸部材の回転軸方向における外側の位置において前記巻取軸部材の端部に接触した規制部を有し、支持部に対して前記巻取軸部材の回転軸を中心として回転可能に支持された端部材と、を備え、
前記巻取軸部材の端部と前記規制部との間には、前記回転軸の方へ凹んで底部が前記嵌入部の外周部に繋がっている凹部が設けられ、
前記巻取軸部材は、前記回転軸方向に沿った溝を内周部に有し、
前記嵌入部は、前記溝に挿入された突条を外周部に有し、
前記嵌入部の突条は、前記巻取軸部材の溝における対向面に向かって凸とされ該対向面に当たった凸部を有し、
前記凹部は、前記凸部から前記回転軸方向に向かった位置にある、態様を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シート状部材の操作性を向上させることが可能な巻取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は自動車に搭載した巻取装置の例を示す斜視図。
【
図3】
図3はシート状部材の図示を省略しケース部材を透視して巻取装置の端部の例を示す斜視図。
【
図4】
図4は巻取軸部材と端部材とシャフト部材とプレート部材とを例示する分解斜視図。
【
図5】
図5は別の角度から端部材と巻取軸部材とを例示する分解斜視図。
【
図9】
図9は端部材と巻取軸部材との位置関係の例を示す図。
【
図11】
図11は頂面凸部を通る位置における巻取軸部材及び端部材の縦断面の例を示す断面図。
【
図12】
図12A,12Bは頂面凸部同士の角度θ1,θ2,θ3を変えた例を模式的に示す図。
【
図13】
図13は別の巻取装置において端部材と巻取軸部材とを例示する分解斜視図。
【
図14】
図14は別の巻取装置において端部材と巻取軸部材とを例示する分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0011】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、
図1~14に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0012】
[態様1]
巻取装置1は、基本要素として、筒状の巻取軸部材10と端部材30とを備える。前記端部材30は、前記巻取軸部材10の端部11の開口12に嵌入された嵌入部31、及び、前記巻取軸部材10の端部11から該巻取軸部材10の回転軸方向D1における外側(回転軸方向外側D1o)の位置において前記巻取軸部材10の端部11に接触した規制部32を有し、支持部60に対して前記巻取軸部材10の回転軸AX1を中心として回転可能に支持されている。前記巻取軸部材10の端部11と前記規制部32との間には、前記回転軸AX1の方へ凹んで底部51が前記嵌入部31の外周部31oに繋がっている凹部50が設けられている。
【0013】
上記態様1では、巻取軸部材10の端部11の開口12に端部材30の嵌入部31が挿入されて屑80が生じた時、巻取軸部材10の端部11と端部材30の規制部32との間で回転軸AX1の方へ凹んだ凹部50に屑80が入ると容易に外へ排出される。これにより、巻取軸部材10と端部材30との間に屑80が挟まることによる端部材30の巻取軸部材10に対するずれが抑制され、シート状部材20を引き出したり巻き取らせたりする操作の時に巻取軸部材10及び端部材30が円滑に回転する。従って、本態様は、シート状部材の操作性を向上させる巻取装置を提供することができる。その結果、シート状部材の操作時や自動車の走行時に異音の発生を抑制する効果も期待される。
【0014】
ここで、本技術を適用可能な端部材は、巻取軸部材の両端に嵌入されてもよいし、巻取軸部材の一端にのみ嵌入されてもよい。
巻取装置に巻き取られるシート状部材は、スクリーン、シェード、ブラインド、等を含む概念であり、具体的には、トノカバー、サンシェード、等が含まれる。
巻取軸部材の端部と端部材の規制部との間の凹部は、端部材の規制部に設けられた凹みにより構成されてもよいし、巻取軸部材の端部に設けられた凹みにより構成されてもよいし、端部材の規制部と巻取軸部材の端部とに跨がった凹みにより構成されてもよい。
尚、上述した付言は、以下の態様においても適用される。
【0015】
[態様2]
図7,8,11等に例示するように、前記規制部32は、前記回転軸AX1を中心とした回転方向DR1において前記凹部50の両側のそれぞれに前記巻取軸部材10の端部11に接触した接触部32bを有してもよい。この態様は、回転方向DR1において規制部32の凹部50の両側にそれぞれある接触部32bが巻取軸部材10の端部11に接触しているので、巻取軸部材10の端部11に対して規制部32が精度よく位置決めされる。従って、本態様は、シート状部材の操作性をさらに向上させる巻取装置を提供することができる。
【0016】
[態様3]
図5,6等に例示するように、前記巻取軸部材10は、前記回転軸方向D1に沿った溝13を内周部10iに有してもよい。
図9等に例示するように、前記嵌入部31は、前記溝13に挿入された突条33を外周部31oに有してもよい。前記嵌入部31の突条33は、前記巻取軸部材10の溝13における対向面(底面14又は内側部15)に向かって凸とされ該対向面に当たった凸部40を有してもよい。
図11等に例示するように、前記凹部50は、前記凸部40から前記回転軸方向D1に向かった位置にあってもよい。
【0017】
上記態様3では、巻取軸部材10の端部11の開口12に挿入された端部材30の嵌入部31の突条33に設けられた凸部40に由来する屑80が生じても、巻取軸部材10の端部11と端部材30の規制部32との間で凸部40から回転軸方向D1に向かった位置において回転軸AX1の方へ凹んだ凹部50に屑80が入って容易に外へ排出される。従って、本態様は、シート状部材の操作性をさらに向上させる巻取装置を提供することができる。
ここで、対向面に向かって凸とされている凸部の形状には、対向面に向かって先細り状に出ている形状、対向面に向かって突出している形状、対向面に向かって延びている形状、対向面に向かって膨らんでいる形状、等が含まれる。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0018】
[態様4]
図7~9等に例示するように、前記嵌入部31の突条33は、頂面34を有してもよい。
図6等に例示するように、前記巻取軸部材10の溝13は、前記突条33の頂面34に対向する底面14を有してもよい。
図8,9,11等に例示するように、前記凸部40は、前記突条33の頂面34から前記溝13の底面14に向かって凸とされ該底面14に当たった頂面凸部41を複数含んでいてもよい。前記複数の頂面凸部41は、前記回転軸AX1を中心とした回転方向DR1の順に、第一方向頂面凸部41a、第二方向頂面凸部41b、及び、第三方向頂面凸部41cを含んでいてもよい。前記回転軸AX1を中心として、前記第一方向頂面凸部41aと前記第二方向頂面凸部41bとのなす角度θ1が100°~165°であり、前記第二方向頂面凸部41bと前記第三方向頂面凸部41cとのなす角度θ2が100°~165°であり、前記第三方向頂面凸部41cと前記第一方向頂面凸部41aとのなす角度θ3が30°~160°でもよい。ただし、θ1+θ2+θ3=360°である。
【0019】
上記態様4では、100°≦θ1≦165°、100°≦θ2≦165°、及び、30°≦θ3≦160°であるので、3箇所の頂面凸部41により回転軸AX1に直交し、且つ、互いに直交する2方向において巻取軸部材10に対する端部材30のがたつきが抑制される。従って、本態様は、巻取軸部材に対する端部材のがたつきを効果的に抑制可能な技術を提供することができる。
【0020】
[態様5]
図7~9等に例示するように、前記嵌入部31の突条33は、頂面34、及び、該頂面34を挟む一対の側部35を有してもよい。
図6等に例示するように、前記巻取軸部材10の溝13は、前記突条33の頂面34に対向する底面14、及び、前記突条33の側部35に対向する内側部15を有してもよい。
図7~9等に例示するように、前記凸部40は、前記突条33の頂面34から前記溝13の底面14に向かって凸とされ該底面14に当たった頂面凸部41、及び、前記突条33の側部35から前記溝13の内側部15に向かって凸とされ該内側部15に当たった側部凸部42を含んでいてもよい。
図10等に例示するように、前記回転軸方向D1において前記頂面凸部41の中心の位置L1と前記側部凸部42の中心の位置L2とが異なっていてもよい。
【0021】
上記態様5では、回転軸方向D1において頂面凸部41の中心の位置L1と側部凸部42の中心の位置L2とが異なっているので、巻取軸部材10に対する端部材30のがたつきを抑える力が回転軸方向D1において分散して生じる。従って、巻取軸部材に対する軸部材のがたつきを効果的に抑制可能な技術を提供することができる。
【0022】
(2)巻取装置の具体例:
図1は、巻取装置1を自動車100の荷室101のトノカバー装置として使用する例を示し、バックドア(tailgate)104を開け車両の一部の図示を省略して巻取装置1を示している。
図1の下部には、トノカバー等と呼ばれるシート状部材20をケース部材61から引き出した状態の巻取装置1を拡大して示している。
図1に示す自動車100は、道路上で使用されるように設計及び装備された路上走行自動車とされ、後席102の前に車室C1が形成され後席102の後に荷室101が形成された乗用自動車とされている。ケース部材61から引き出されたシート状部材20のリンフォース部材25の突出部26を自動車100のレール部材107の係止部に引っ掛けると、荷室101を上下に仕切ることができる。尚、レール部材107は自動車100の左右にあり、リンフォース部材25の一方の突出部26が左側のレール部材107の係止部に引っ掛けられ、リンフォース部材25の他方の突出部26が右側のレール部材107の係止部に引っ掛けられる。このようにして、荷室フロア108に載置された荷物を遮蔽することができ、車外から荷物を視認することができなくなり、良好な美感、及び、防犯効果が得られる。
【0023】
図2の上部には、ホルダ62の図示を省略しプレート部材63,64を分解した状態の巻取装置1の例を示している。
図2の上部に示す分解図の直下には、背後にある部位の図示を省略して前記分解図のA-A切断線における巻取装置1の断面の例を示している。さらに、
図2の下部には、スライド部材72の側面の例を示している。
ここで、符号D1は、筒状の巻取軸部材10の回転軸方向D1を示している。符号D1iは回転軸方向内側を示し、符号D1oは回転軸方向外側を示している。
図1に示す符号D21は、シート状部材20の可撓性の本体部分21をケース部材61に収容する方向である収容方向を示している。
図1に示す符号D22は、本体部分21をケース部材61から引き出す方向である引出方向を示している。
図1において、回転軸方向D1は自動車100の幅方向であり、収容方向D21は自動車100の前方向であり、引出方向D22は自動車100の後方向である。
【0024】
巻取装置1のケース部材61の両端には、所定範囲内で回転軸方向D1へ摺動可能にホルダ62A,62Bが組み付けられている。これにより、巻取装置1全体が回転軸方向D1において伸縮可能とされている。荷室101の左右の側壁に設けられた凹部にホルダ62A,62Bを嵌入することにより、巻取装置1が荷室101に組み付けられて固定される。尚、ホルダ62A,62Bをホルダ62と総称する。
【0025】
図3は、シート状部材20の図示を省略しケース部材61を透視して巻取装置1の端部の例を示している。
図4は、巻取軸部材10と端部材30とシャフト部材65とプレート部材64とを例示している。
図5は、別の角度から端部材30と巻取軸部材10とを例示している。
図6は、巻取軸部材10の例を示している。ここで、符号DR1は巻取軸部材10及び端部材30の回転方向を示し、符号D2は巻取軸部材10及び端部材30の回転軸AX1を中心とする径方向を示している。
図7,8は、端部材30の例を示している。
図8には、端部材30の規制部32において3箇所の凹部50に網掛けを付している。
図9は、端部材30と巻取軸部材10との位置関係の例を示している。巻取軸部材10については、二点鎖線で示している。
図10は、回転軸AX1に直交する方向から見た端部材30の例を示している。
図11は、頂面凸部41を通る位置における巻取軸部材10及び端部材30の縦断面の例を示している。
【0026】
巻取軸部材10は、両端が開口した長尺な筒状部材であり、ケース部材61内において長手方向(回転軸方向D1)に沿った回転軸AX1を中心として回転可能に配置される。尚、巻取軸部材は、バレル部材等とも呼ばれる。
図2に示すように、巻取軸部材10の両端部11には、端部材30が取り付けられている。ここで、一方の端部11aの開口12に端部材30Aが嵌入され、他方の端部11bの開口12に端部材30Bが嵌入されている。尚、端部11a,11bを端部11と総称し、端部材30A,30Bを端部材30と総称する。また、巻取軸部材10の中空部10hには、スライド部材72が挿入されている。
【0027】
図6等に示すように、回転軸AX1に対して垂直な断面における巻取軸部材10の外周面10oの断面形状は、略円形とされている。一方、巻取軸部材10の内周部10iの断面形状は、非円形とされている。内周部10iには、回転軸方向D1に沿った溝13が複数形成されている。便宜上、回転軸AX1を中心とする回転方向DR1において60°間隔で順に溝13a,13b,13c,13d,13e,13fが形成されているものとする。各溝13a~13fは、底面14、及び、該底面14を挟む一対の内側部15を有している。溝13a~13fの底面14は、回転軸AX1を中心とする同じ仮想円V1のほぼ円周に合わせられている。便宜上、各溝13a~13fの一対の内側部15のうち、回転方向DR1における一方側の内側部に符号15aを付し他方側の内側部に符号15bを付す。尚、溝13a~13fを溝13と総称し、内側部15a,15bを内側部15と総称する。隣り合う溝13同士の間には、中間突条17が形成されている。中間突条17の数は、溝13の数と同じである。巻取軸部材10が押出成形品である場合、外周面10o及び内周部10iは、回転軸方向D1の全体にわたって略同一形状となる。
【0028】
本具体例の6つの溝13a~13fは同一形状で等間隔に形成されているため、巻取軸部材10と端部材30とを嵌合する際に巻取軸部材10の溝13と端部材30の突条33との回転方向DR1における相対位置を合わせ易い。従って、巻取軸部材10に端部材30を取り付ける作業を容易に行うことができる。
【0029】
巻取軸部材10の材質には、アルミニウムといった金属、熱可塑性樹脂といった合成樹脂、等を用いることができる。アルミニウムを筒状に押し出し形成したパイプ材を巻取軸部材に用いると、巻取軸部材を容易に軽量かつ所要の強度にすることができる。アルミニウム製巻取軸部材の大きさは、特に限定されず、例えば、内周部の底面14を通る仮想円の径(内径)を4~20mm程度、外径を6~30mm程度とすることができる。
【0030】
図1,2に示すシート状部材20の本体部分21は、巻取軸部材10の外周面10o上に巻取可能な柔軟性を有するシート状材料で形成されている。本体部分21は、可撓性の材料が用いられ、遮光性を有する軟質材料が好ましいが、遮光率100%の不透明材料に限定されず、半透明材料等でもよい。本体部分21は、伸縮性に富みシワの発生し難いジャージ素材といった伸縮性素材等が好ましいものの、塩化ビニル樹脂等の樹脂成形材料を成形したシート、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料を用いたレザー、織物、各種網状材料、等も用いることができる。すなわち、シート状材料の概念には網状材料等が含まれ、シート状部材の概念には網状部材等が含まれる。本体部分21の一端22は、両面テープといった固定手段で巻取軸部材の外周面10oに留められている。本体部分21の先端縁(他端23)には、本体部分21よりも硬質のリンフォース部材25が取り付けられている。リンフォース部材25は、板状の部材、棒状の部材、筒状の部材、等を用いることができ、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。リンフォース部材25には、本体部分21の引き出し状態を保持するため、レール部材107の係止部に引っ掛け可能な突出部26,26が形成されている。
【0031】
図2~4等に示す端部材30の嵌入部31は、巻取軸部材10の端部11の開口12に挿入される。これにより、端部材30の規制部32が開口12を隠蔽する。端部材30と巻取軸部材10とは、回転軸方向D1及び回転方向DR1において相対移動しないように嵌合している。尚、端部材は、ローター、キャップ、等とも呼ばれる。巻取軸部材10の一方の端部11aに取り付けられる端部材30Aには、巻取軸部材10とは反対側の回転軸方向外側D1oへ突出した軸部30dが形成されている。軸部30dは、ケース部材61の端部に取り付けられたプレート部材63の軸受け部63aに対して回転軸AX1を中心として回転可能に保持されている。巻取軸部材10の他方の端部11bに取り付けられた端部材30Bには、回転軸方向D1へ貫通した軸受け孔30cが形成されている。この軸受け孔30cには、シャフト部材65が挿入される。すなわち、筒状の端部材30Bは、シャフト部材65に対して回転軸AX1を中心として回転可能に保持される軸受け部材として機能する。本具体例では、ケース部材61、ホルダ62、プレート部材63,64、及び、シャフト部材65が支持部60を構成し、この支持部60により端部材30A,30Bが回転軸AX1を中心として回転可能に支持される。これにより、シート状部材20が巻取軸部材10の外周面10o上に巻取可能となっている。
【0032】
図7,8等に示すように、回転軸AX1に対して垂直な断面における端部材30の軸受け孔30cの断面形状は、設計上、ごく一部に配置された凹み31rを除いて略円形とされている。一方、嵌入部31の外周部31oの断面形状は、非円形とされている。外周部31oには、回転軸方向D1に沿った突条33が複数形成されている。便宜上、回転軸AX1を中心とする回転方向DR1において60°間隔で順に突条33a,33b,33c,33d,33e,33fが形成されているものとする。各突条33a~33fは、頂面34、及び、該頂面34を挟む一対の側部35を有している。頂面34は、回転軸AX1を中心とする同じ仮想円V2のほぼ円周に合わせられている。便宜上、各突条33a~33fの一対の側部35のうち、巻取軸部材10の溝13の内側部15aと対向する側部に符号35aを付し他方側の内側部に符号35bを付す。尚、突条33a~33fを突条33と総称し、側部35a,35bを側部35と総称する。隣り合う突条同士の間には、突条に沿った外溝37が形成されている。突条同士の間に形成される外溝37は、中間溝と言い換えることができる。外溝37の数は、突条33の数と同じである。
【0033】
図8,9等に示す突条33は、巻取軸部材10の溝13と同数であり、溝13に挿入される。頂面34、及び、側部35a,35bは、端部材30の軸方向(D1)へ延びている。頂面34、及び、側部35a,35bの組合せは、外周部31oに間隔をあけて6つ形成されている。突条33が溝13へ挿入されることにより、端部材30は、巻取軸部材10に対して回転軸方向D1へ摺動可能に、且つ、回転方向DR1へ回転不能に取り付けられる。
【0034】
端部材30には、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。この合成樹脂には、ポリアミド、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、といった熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの樹脂に補強用繊維等といった添加材が添加されてもよい。
【0035】
図1,3に示すケース部材61は、シート状部材20の本体部分21を引き出すための引出口61aを有し、巻取軸部材10、及び、巻き取った本体部分21を収容する空間が形成されている。ケース部材61の両端には、プレート部材63,64が固定され、所定範囲内で回転軸方向D1へ摺動可能にホルダ62が取り付けられている。左側のホルダ62Aには、図示しない圧縮コイルばね、及び、
図2に示すプレート部材63が巻取軸部材10の一端とともに挿入されている。右側のホルダ62Bには、図示しない圧縮コイルばね、及び、
図2等に示すプレート部材64が巻取軸部材10の他端とともに挿入されている。これらの圧縮コイルばねにより、荷室101の側壁の凹部に嵌入されるホルダ62A,62Bが回転軸方向外側D1oへ付勢されている。
【0036】
図4等に示すプレート部材64には、シャフト部材65の星形部65aが挿入される断面星形状の星形孔64a、及び、ねじ66が挿入される係合孔64bが形成されている。例えば、ケース部材61の端部に対向する部分のプレート部材64をケース部材61の端部の開口に嵌入し、ねじ66を係合孔64bに挿入し、さらに、図示しない締結部材(例えば、ねじ)でプレート部材64をケース部材61に固定することにより、プレート部材64がケース部材61に取り付けられる。
一方、
図2に示すプレート部材63には、端部材30Aの軸部30dが回転軸AX1を中心として回転可能に挿入される軸受け部63aが形成されている。ホルダ62Aに挿入されたプレート部材63は、プレート部材64と同様に位置決めされる。端部材30Aは、ホルダ62Aに位置決めされたプレート部材63に対して回転軸AX1を中心として回転可能に支持される。すなわち、プレート部材63は、軸部30dを有する端部材30Aに対して支持部60の主要部となる。
【0037】
図4等に示すシャフト部材65は、断面星形状の星形部65a、フランジ部65b、及び、端部材30Bの軸受け孔30cに挿入される本体部65cを有している。回転軸AX1に対して垂直な断面における本体部65cの外周面の断面形状は、略円形とされている。本体部65cの外径は、端部材30Bの軸受け孔30cの内径よりもごく僅かに小さくされている。ホルダ62Bに位置決めされたプレート部材64の星形孔64aと星形部65aとが嵌合することにより、シャフト部材65が回転軸AX1を中心として回転不能に配置される。端部材30Bは、軸受け部材として機能し、ホルダ62Bに位置決めされたプレート部材64と嵌合したシャフト部材65の本体部65cに対して回転軸AX1を中心として回転可能に支持される。すなわち、シャフト部材65は、軸受け孔30cを有する端部材30Bに対して支持部60の主要部となる。
【0038】
シャフト部材65には、合成樹脂の射出成形品といった成形品等を用いることができる。この合成樹脂には、ポリアミド、PP、POM、PBT、といった熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの樹脂に補強用繊維等といった添加材が添加されてもよい。
【0039】
巻取軸部材10を回転方向DR1へ付勢する付勢部70は、巻取軸部材10の中空部に挿入されたばね(弾性部材)71、及び、スライド部材72を有する。
図2に示すばね71は、コイルばねであり、一方の端部71aがスライド部材72に取り付けられ、他方の端部71bがシャフト部材65の本体部65cに取り付けられている。コイルばねは、コイルスプリング、つる巻きばね、等とも呼ばれる。
図2に示すスライド部材72の外周部72oには、巻取軸部材10の溝13a~13fに合わせた突条72aが6つ形成されている。各突条72aが溝13に挿入されることにより、スライド部材72は、巻取軸部材10に対して、回転軸方向D1へは摺動可能に、且つ、回転方向DR1へは相対移動不能となるように嵌合する。従って、ばね71の付勢力によりシート状部材20の本体部分21が巻き取られる時、スライド部材72、及び、ばね71の端部71aが巻取軸部材10等とともに巻取方向へ回転する。また、シート状部材20の本体部分21を引き出す時、スライド部材72、及び、ばね71の端部71aが巻取軸部材10等とともに巻取方向とは反対方向へ回転し、巻取方向への付勢力が大きくなる。巻取軸部材10等の回転時にばね71の伸縮に応じてスライド部材72が巻取軸部材10に対して回転軸方向D1へ摺動するので、ばね71が波打つこと等による巻取軸部材10の内周部10iとの接触が抑制され、この接触による異音の発生が抑制される。尚、異音の発生をさらに抑制するため、ばね71と巻取軸部材10との間に防音用のチューブを入れてもよい。
【0040】
ところで、巻取軸部材10の内周部10iと端部材30の嵌入部31の外周部31oとの隙間を狭くすると、内周部10iと外周部31oとの摩擦力により巻取軸部材10から端部材30が抜け難くなるものの、巻取軸部材の開口12に端部材の嵌入部31を挿入し難くなる。一方、単に巻取軸部材の内周部10iと端部材の嵌入部の外周部31oとの隙間を広くすると、巻取軸部材の開口12に端部材の嵌入部31を挿入し易くなるものの、巻取軸部材の内周部10iと端部材の嵌入部の外周部31oとの回転方向DR1へのがたつきが大きくなり、シート状部材20の操作時や自動車の走行時に許容限度外の異音が発生する可能性があり、巻取軸部材10から端部材30が脱落する可能性がある。そこで、端部材30の突条33に凸部40(例えば
図7参照)を形成することにより、巻取軸部材10の端部11に端部材30を保持することと、巻取軸部材10の開口12に端部材30の嵌入部31を挿入することとを両立している。
【0041】
ただ、巻取軸部材10の端部11に開口12に端部材30の嵌入部31を圧入した時に嵌入部31の突条33に設けられた凸部40が巻取軸部材10の端部11に当たって削れてしまう可能性がある。凸部40が削れることにより屑80が生じると、屑が巻取軸部材10と端部材30との間に挟まって端部材30が巻取軸部材10に対して僅かに斜めにずれる可能性が生じる。端部材30が巻取軸部材10に対して斜めにずれると、シート状部材20を引き出したり巻き取らせたりする操作の時に巻取軸部材10及び端部材30の回転の円滑性が低下し、シート状部材20の操作時に異音が発生する可能性や、車両走行時に異音が発生する可能性が生じる。
【0042】
そこで、本具体例の巻取装置1は、
図11等に示すように、凸部40から回転軸方向D1(特に回転軸方向外側D1o)に向かった位置において、端部材30の嵌入部31の挿入時に巻取軸部材10の端部11に当たって削れることにより生じる屑80を外へ排出させるための凹部50を有している。屑排出用の凹部50は、巻取軸部材10の端部11と端部材30の規制部32との間にあり、回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている。本具体例の凹部50は、
図8に示すように、端部材30の規制部32に3箇所設けられた凹みにより構成されている。これにより、各凹部50は、巻取軸部材10の外周面10o及び規制部32の外周面32oから回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている。回転軸AX1を中心とした回転方向DR1において凹部50同士の間に、巻取軸部材10の端部11への接触部32bが配置されている。
【0043】
図7~9は、軸受け孔30cを有する端部材30Bを示している。端部材30Bは、巻取軸部材10の端部11の開口12に嵌入される嵌入部31と、この嵌入部31よりも太く開口12に入らない規制部32とを有する。
図6,8,9に示すように、嵌入部31の各突条33は、巻取軸部材10の溝13の底面14に対向する頂面34、溝13の内側部15aに対向する側部35a、及び、溝13の内側部15bに対向する側部35bを有する。嵌入部31の各外溝37には、巻取軸部材10の溝13の中間突条17が挿入される。
【0044】
規制部32は、巻取軸部材10の端部11から回転軸方向外側D1oの位置において巻取軸部材10の端部11に接触している。規制部32の外周面32oの断面形状は、略円形とされている。規制部32は、屑排出用の複数の凹部50を接触部32b同士の間に有し、さらに、樹脂量を減らすための複数の肉抜部32aを外周部に有している。端部材30Bを巻取軸部材10の端部11bの開口12に挿入すると、複数の接触部32bが巻取軸部材10の端面に突き当たることにより端部材30Bが位置決めされる。この状態において、各凹部50は、巻取軸部材10の外周面10o及び規制部32の外周面32oから回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている。
【0045】
図示していないが、突出した軸部30dを有する端部材30Aも、同様の嵌入部及び規制部を有している。上述したように、端部材30Aの軸部30dがプレート部材63の軸受け部63aに挿入され、端部材30Bの軸受け孔30cにシャフト部材65の本体部65cが挿入される。これにより、プレート部材63及びシャフト部材65に対して端部材30A,30B及び巻取軸部材10が回転軸AX1を中心として回転可能に支持される。
【0046】
図9に示すように、端部材30の突条33の側部35a,35bと、巻取軸部材10の溝13の内側部15a,15bと、の間には極僅かな一定の隙間が形成されるように設計されている。ここで、巻取軸部材10の内周部10iと端部材30の嵌入部31の外周部31oとのがたつきを抑制するため、突条33に複数の凸部40が配置されている。
図8,9等に示すように、複数の凸部40は、突条33の頂面34から溝13の底面14に向かって先細り状に出て該底面14に当たった複数の頂面凸部41、及び、突条33の側部35から溝13の内側部15に向かって先細り状に出て該内側部15に当たった複数の側部凸部42を含んでいる。各頂面凸部41は、突条33の頂面34に対して部分的に形成され、頂面34に合わせられた仮想円V2から外側へ出ている。各側部凸部42は、仮想円V2の外側へ出ないように突条33の側部35に対して部分的に形成されている。これらの凸部40は、端部材30の嵌入部31を巻取軸部材10の開口12に挿入したときに溝13の対向面(底面14又は内側部15)に干渉するように設計されている。金属製の巻取軸部材10に樹脂製の端部材30が取り付けられると、巻取軸部材10よりも軟質の凸部40が潰れるように変形する。これにより、巻取軸部材10の内周部10iと嵌入部31の外周部31oとに適度な摩擦力が作用し、巻取軸部材10に対する端部材30の相対移動が抑制される。
【0047】
複数の頂面凸部41は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1の順に、突条33bの頂面34に設けられた第一方向頂面凸部41a、突条33dの頂面34に設けられた第二方向頂面凸部41b、及び、突条33fの頂面34に設けられた第三方向頂面凸部41cを含んでいる。従って、嵌入部31の複数の突条33は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1の順に、頂面凸部の無い突条33a、頂面凸部41を有する突条33b、頂面凸部の無い突条33c、頂面凸部41を有する突条33d、頂面凸部の無い突条33e、及び、頂面凸部41を有する突条33fを含んでいる。尚、第一方向頂面凸部41a、第二方向頂面凸部41b、及び、第三方向頂面凸部41cは、回転軸方向D1において断続的に2箇所、配置されている。むろん、回転軸方向D1における頂面凸部41a,41b,41cの数は、1つでもよいし、3以上でもよい。
【0048】
ここで、
図8に示すように、回転軸AX1を中心として、第一方向頂面凸部41aと第二方向頂面凸部41bとのなす角度をθ1とし、第二方向頂面凸部41bと第三方向頂面凸部41cとのなす角度をθ2とし、第三方向頂面凸部41cと第一方向頂面凸部41aとのなす角度をθ3とする。θ1+θ2+θ3=360°であり、100°≦θ1≦165°であり、100°≦θ2≦165°であり、30°≦θ3≦160°である。尚、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1における各頂面凸部41の基準位置は、頂面凸部41が頂面34から出た部分の回転方向DR1における中間の位置とする。
【0049】
図12A,12Bは、第二方向頂面凸部41bが上の位置にある状態で頂面凸部同士の角度θ1,θ2,θ3を変えた例を模式的に示している。
図12Aは、θ1=θ2=100°、且つ、θ3=160°である場合の頂面凸部41a,41b,41cの位置関係を示している。
図12Bは、θ1=θ2=165°、且つ、θ3=30°である場合の頂面凸部41a,41b,41cの位置関係を示している。
角度θ1,θ2は、100°以上と直角よりも十分に大きく165°以下と平角よりも十分に小さい。残りの角度θ3は、30°以上であり、160°以下と平角よりも十分に小さい。従って、回転軸AX1を中心とした3箇所の頂面凸部41により回転軸AX1に直交し、且つ、互いに直交する2方向において巻取軸部材10に対する端部材30のがたつきが抑制される。
【0050】
また、より好ましい角度θ1,θ2,θ3の関係として、100°≦θ1≦140°、100°≦θ2≦140°、且つ、100°≦θ3≦140°としてもよい。この場合、全ての角度θ1,θ2,θ3が100°以上と直角よりも十分に大きく140°以下と平角よりも十分に小さい。さらに、角度θ1,θ2,θ3は、110°以上がより好ましく、130°以下がより好ましい。特に好ましい角度θ1,θ2,θ3は、θ1=θ2=θ3=120°である。
【0051】
尚、第一方向頂面凸部、第二方向頂面凸部、及び、第三方向頂面凸部は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1において相対的に決まる要素である。従って、例えば、符号41bを第一方向頂面凸部に当てはめて符号41cを第二方向頂面凸部に当てはめて符号41aを第三方向頂面凸部に当てはめてもよいし、符号41cを第一方向頂面凸部に当てはめて符号41bを第二方向頂面凸部に当てはめて符号41aを第三方向頂面凸部に当てはめてもよい。
【0052】
複数の側部凸部42は、回転軸AX1を中心とした所定の向き(
図8,9では右回り)の回転方向DR1へ突条33の側部35bから出た第一方向側部凸部42a、及び、所定の向きとは反対の向き(
図8,9では左回り)の回転方向DR1へ突条33の側部35aから出た第二方向側部凸部42bを含んでいる。突条33の側部35bに第一方向側部凸部42aが配置されていることにより、巻取軸部材10の端部11の開口12に挿入された嵌入部31が巻取軸部材10に対して
図9の左回りに押される。また、突条33の側部35aに第二方向側部凸部42bが配置されていることにより、巻取軸部材10の端部11の開口12に挿入された嵌入部31が巻取軸部材10に対して
図9の右回りに押される。従って、回転方向DR1の両方向において、巻取軸部材10に対する端部材30のがたつきが効果的に抑制される。
【0053】
端部材30の規制部32は、
図8,11等に示すように、凸部40から回転軸方向D1に向かった位置において回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている複数の凹部50を有している。巻取軸部材10の端部11の開口12に嵌入部31が挿入されることにより、各凹部50が巻取軸部材10の端部11と端部材30の規制部32との間に配置される。
【0054】
図8に示す複数の凹部50は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1の順に、第一方向頂面凸部41a及び第一方向側部凸部42aから回転軸方向D1に向かった位置の第一凹部50a、第二方向頂面凸部41b及び第二方向側部凸部42bから回転軸方向D1に向かった位置の第二凹部50b、及び、第三方向頂面凸部41cから回転軸方向D1に向かった位置の第三凹部50cを含んでいる。回転方向DR1において、第一凹部50aと第二凹部50bとの間、第二凹部50bと第三凹部50cとの間、及び、第三凹部50cと第一凹部50aとの間には、それぞれ、接触部32bが配置されている。すなわち、規制部32は、回転方向DR1において、第一凹部50aの両側にそれぞれに接触部32bを有し、第二凹部50bの両側にそれぞれに接触部32bを有し、第三凹部50cの両側にそれぞれに接触部32bを有している。各接触部32bは、
図11に示すように、巻取軸部材10の端部11に接触している。回転方向DR1において規制部32の凹部50の両側にそれぞれある接触部32bが巻取軸部材10の端部11に接触しているので、巻取軸部材10の端部11に対して規制部32が精度よく位置決めされている。
【0055】
ここで、端部材30を巻取軸部材10に取り付ける前において、凹部50から回転軸方向D1に向かった位置にある凸部40の体積をVとする。凹部50から回転軸方向D1に向かった位置に複数の凸部40がある場合、体積Vは複数の凸部40を合わせた体積とする。各凹部50の容積は、端部材30の圧入時に生じる屑80(
図11参照)を容易に外へ排出させる点から、凸部の体積V以上が好ましく、体積Vの2倍以上がさらに好ましい。
【0056】
尚、回転方向DR1における各凹部50の範囲は、適宜、変更可能である。例えば、第一方向頂面凸部41aから回転軸方向D1に向かった位置の凹部と第一方向側部凸部42aから回転軸方向D1に向かった位置の凹部とが分けられてもよい。
【0057】
図10は、回転軸方向D1における頂面凸部41と側部凸部42との位置関係を例示している。上述したように、頂面凸部41は、回転軸方向D1において断続的に2箇所、配置されている。各頂面凸部41の中心の位置L1は、頂面凸部41が頂面34から出た部分の回転軸方向D1における中間の位置とする。側部凸部42の中心の位置L2は、側部凸部42が側部35から出た部分の回転軸方向D1における中間の位置とする。
図10に示すように、回転軸方向D1において、側部凸部42の中心の位置L2は、2箇所ある頂面凸部41の中心の位置L1の間にある。従って、頂面凸部41の中心の位置L1と側部凸部42の中心の位置L2とは、異なる。
【0058】
回転軸方向において頂面凸部の中心の位置と側部凸部の中心の位置とが同じである場合、巻取軸部材の端部の開口に端部材の嵌入部を圧入するための荷重が高くなってしまう。また、巻取軸部材に対する端部材のがたつきを抑える力が回転軸方向において同じ位置にしか生じない。
一方、本具体例では回転軸方向D1において頂面凸部41の中心の位置L1と側部凸部42の中心の位置L2とが異なっているので、巻取軸部材10の端部11の開口12に端部材30の嵌入部31を圧入するための荷重が少なくて済む。また、巻取軸部材10に対する端部材30のがたつきを抑える力が回転軸方向D1において分散して生じる。従って、巻取軸部材に対する軸部材のがたつきが効果的に抑制される。
【0059】
尚、巻取装置1は、例えば、以下のようにして組み立てることができる。むろん、組立順は、適宜、変更可能である。
まず、端部材30Bの軸受け孔30cにシャフト部材65の本体部65cを挿入し、ばね71の一方の端部71aをスライド部材72に取り付け、ばね71の他方の端部71bをシャフト部材65の本体部65cに取り付ける。また、巻取軸部材10の中空部10hにスライド部材72を挿入し、巻取軸部材10の端部11bの開口12に端部材30Bの嵌入部31を嵌入する。さらに、巻取軸部材10の端部11aの開口12に端部材30Aの嵌入部を嵌入する。さらに、シート状部材20の本体部分21を巻取軸部材10に巻き付け、引出口61aからリンフォース部材を出した状態で巻取軸部材10等をケース部材61に入れ、プレート部材63の軸受け部63aに端部材30Aの軸部30dを入れるようにしてケース部材61の一端にホルダ62Aを取り付け、シート状部材20に巻取力が加わる状態でプレート部材64の星形孔64aにシャフト部材65の星形部65aを入れるようにしてケース部材61の他端にホルダ62Bを取り付ける。
【0060】
(3)具体例に係る巻取装置の作用、及び、効果:
図11は、巻取軸部材10の端部11の開口12に樹脂製の端部材30の嵌入部31が圧入された状態を例示している。巻取軸部材10の端部11の開口12に樹脂製の端部材30の嵌入部31が圧入された時、嵌入部31の突条33に設けられた凸部40が巻取軸部材10の端部11に当たって削れてしまうことがある。凸部40が削れると屑80が生じて巻取軸部材10の端部11に残留する。ここで、凸部40から回転軸方向D1に向かった位置において底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている凹部50があるので、屑80が凹部50に入る。凹部50は径方向外側に向かって開口しているので、凹部50内の屑80は容易に外へ排出される。これにより、巻取軸部材10と端部材30との間に屑80が挟まることによる端部材30の巻取軸部材10に対するずれが抑制され、シート状部材20を引き出したり巻き取らせたりする操作の時に巻取軸部材10及び端部材30が円滑に回転する。従って、シート状部材の操作性が向上し、シート状部材の操作時や自動車の走行時における異音の発生も抑制される。
【0061】
(4)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
巻取装置は、トノカバー装置以外にも、サンシェード装置、車内の空間を例えば前後に仕切る間仕切り装置、等でもよい。サンシェード装置は、サイドウィンドウ、リヤウィンドウ、ルーフウィンドウ、フロントウィンドウ、等に設置することができる。シート状部材の引出方向は、後方以外にも、上方、下方、左方、右方、前方、等でもよい。
付勢部に使用可能なばねは、コイルばね以外にも、渦巻きばね、エラストマーで形成された弾性部材、等でもよい。ばねの位置は、巻取軸部材の内部以外にも、端部材よりも回転軸方向外側等といった巻取軸部材の外部でもよい。付勢部は、ばねといった弾性部材等による機械式以外にも、電動式等でもよい。
シャフト部材65とプレート部材64との嵌合は、星形部65aと星形孔64aの組合せ以外にも、断面四角形状といった断面多角形状の部位と同様の形状の孔との組合せ等でもよい。
端部材の支持部は、自動車の内装材に直接設けられてもよい。例えば、プレート部材63の軸受け部63aと同様の軸受け部を内装材に形成すると、この内装材の軸受け部に端部材30Aの軸部30dを挿入することにより端部材30Aが内装材に対して回転可能に支持される。また、シャフト部材65の本体部65cと同様の突出部を内装材に形成すると、この内装材の突出部を端部材30Bの軸受け孔30cに挿入することにより端部材30Bが内装材に対して回転可能に支持される。
【0062】
巻取軸部材10の溝13は、回転軸方向D1における全体にわたって巻取軸部材10に形成される以外にも、巻取軸部材10の端部11にのみ形成されてもよい。
溝13と突条33の組合せは、回転軸AX1を中心として等間隔に配置される以外にも、不均一な間隔で配置されてもよい。巻取軸部材に形成される溝13は、6本以外にも、1本でもよいし、2~5本でもよいし、7本以上でもよい。
凸部40の形状は、対向面に向かって突出している形状、対向面に向かって延びている形状、対向面に向かって膨らんでいる形状、等でもよい。
上述した具体例では突条33に頂面凸部41と側部凸部42の両方が設けられていたが、側部凸部42が無くて頂面凸部41がある場合、及び、頂面凸部41が無くて側部凸部42がある場合も、対応する凹部50によりシート状部材の操作性を向上させる効果が得られる。また、凸部40として頂面凸部41が一つしか無い場合、及び、凸部40として側部凸部42が一つしか無い場合も、対応する凹部50によりシート状部材の操作性を向上させる効果が得られる。
【0063】
また、端部材30の嵌入部31の圧入時に嵌入部31のうち巻取軸部材10の端部11に当たって削れる部位は、凸部40に限定されず、凸部40以外の外周部31oもあり得る。従って、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1における凹部50の位置は、凸部40から回転軸方向D1に向かった位置に限定されず、凸部40に対応していない位置でもよい。尚、回転方向DR1において凸部40の位置と関係無く複数の凹部50が断続的に配置されても、嵌入部31の圧入時に外周部31oから生じた屑が凹部50に入ることにより、容易に外へ排出され、巻取軸部材10と端部材30との間に屑が挟まることによる端部材30の巻取軸部材10に対するずれが抑制される。従って、シート状部材の操作性が向上し、シート状部材の操作時や自動車の走行時に異音の発生が抑制される。
【0064】
さらに、巻取軸部材10と端部材30との嵌合に溝13と突条33の組合せを使用しない場合にも、本技術を適用可能である。
図13,14は、別の巻取装置として巻取軸部材10の内周部10i、及び、嵌入部31の外周部31oを断面略正方形にした例を分解して示している。
図13,14の下部には、端部材30を回転軸方向内側D1iから見た図を例示している。尚、上述した具体例と同じ要素は、同じ符号が付されており、詳しい説明が省略されることがある。
【0065】
図13に示す嵌入部31の外周部31oは、4面に分かれており、各面において巻取軸部材10の内周部10iに向かって先細り状に出て該内周部10iに当たった凸部40を有している。規制部32は、各凸部40から回転軸方向D1に向かった位置において回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている凹部50を有している。規制部32は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1において各凹部50の両側のそれぞれに巻取軸部材10の端部11に接触する接触部32bを有している。この場合も、巻取軸部材10の端部11の開口12に樹脂製の端部材30の嵌入部31が圧入された時、嵌入部31の外周部31oに設けられた凸部40が巻取軸部材10の端部11に当たって削れてしまうことがある。凸部40から回転軸方向D1に向かった位置において底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている凹部50があるので、屑80(
図11参照)が凹部50に入って容易に外へ排出される。従って、巻取軸部材10と端部材30との間に屑80が挟まることによる端部材30の巻取軸部材10に対するずれが抑制され、シート状部材の操作性が向上し、シート状部材の操作時や自動車の走行時における異音の発生も抑制される。
【0066】
図14に示す嵌入部31の外周部31oには、凸部40が設けられていない。ただ、嵌入部31の断面略正方形の角に対応する4本の稜線部43は、巻取軸部材10の端部11の開口12に端部材30の嵌入部31が圧入された時に巻取軸部材10の端部11に当たって削れてしまう可能性がある。
図14に示す規制部32は、各稜線部43に繋がっている位置において回転軸AX1の方へ凹んで底部51が嵌入部31の外周部31oに繋がっている凹部50を有している。規制部32は、回転軸AX1を中心とした回転方向DR1において各凹部50の両側のそれぞれに巻取軸部材10の端部11に接触する接触部32bを有している。この場合も、嵌入部31の圧入時に屑80が凹部50に入って容易に外へ排出される。従って、巻取軸部材10と端部材30との間に屑80が挟まることによる端部材30の巻取軸部材10に対するずれが抑制され、シート状部材の操作性が向上し、シート状部材の操作時や自動車の走行時における異音の発生も抑制される。
【0067】
巻取軸部材10の内周部10i、及び、嵌入部31の外周部31oの断面形状は、特に限定されず、略正方形でない略長方形、略五角形といった略多角形、略星形、等でもよい。いずれの場合も、嵌入部31の圧入時に屑80が生じ易い位置に凹部50を配置することにより、嵌入部31の圧入時に屑80が凹部50に入って容易に外へ排出される。
【0068】
(5)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、シート状部材の操作性を向上させる巻取装置等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。