(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】心臓血管の外部サポート循環装置において、血液性状値を連続的に監視するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/14 20060101AFI20230808BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
A61M1/14
A61B5/00 D
(21)【出願番号】P 2020537507
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2019050934
(87)【国際公開番号】W WO2019155365
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】102018000002461
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516213079
【氏名又は名称】ユーロセッツ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ペトラリーア,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲッリ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ベリアート,ミルコ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/180953(WO,A1)
【文献】特開2017-217296(JP,A)
【文献】特表2017-518106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓血管の外部サポート循環装置(2)において血液性状値を連続的に監視するためのデバイス(1)であって、前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)は、患者から血液を酸素供給器(4)へ搬送し、ポンプ(5)がそれに沿って配置された静脈ライン(3)、及び前記酸素供給器(4)から血液を患者に戻す動脈ライン(6)を備え、前記酸素供給器(4)は、前記静脈ライン(3)に接続された少なくとも1つの血液入口ポート、及び前記動脈ライン(6)に接続された少なくとも1つの血液出口ポートを備え、作動ガスの少なくとも1つの入口チャネル(30)及び少なくとも1つの出口チャネル(31)は、酸素を血液に供給するよう、及び/または血液から二酸化炭素を除去するよう意図され、
前記デバイス(1)は、
静脈血の酸素飽和度(SAT V)及び動脈血の酸素飽和度(SAT A)それぞれから成る数量の、連続した計測に好適である、前記静脈ライン(3)に接続された1つのセンサ(7)、及び前記動脈ライン(6)に接続された1つのセンサ(8)と、
前記静脈ラインに沿って挿入され、前記ポンプ(5)によって前記酸素供給器(4)に送られる血液フロー(Q
b)によって構成される数量を連続的に計測するのに好適である、少なくとも1つのセンサ(11)と、
前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)のポイントに挿入され、ヘモグロビン(Hb)によって構成される数量を計測するのに好適な、少なくとも1つのセンサ(12)と、
オペレータによる、データ入力手段と、
マイクロプロセッサ(15)が設けられ、ディスプレイ(16)に動作可能に接続された、電子制御ユニット(14)であって、前記マイクロプロセッサ(15)は、前記センサ(7、8、11、12)によって計測され、前記オペレータによって入力されたデータを受け取り、前記データを前記ディスプレイ(16)に表示するよう適合された、電子制御ユニット(14)と、
前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)のポイントに挿入され、作動ガスのフロー(Gf)を連続的に計測するのに好適な、少なくとも1つのセンサ(19)と、
前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)のポイントに挿入され、血液中の二酸化炭素濃度を計測するよう適合された、少なくとも1つのカプノメータ(20)とを備え、
前記マイクロプロセッサ(15)には、前記酸素供給器(4)によって除去された二酸化炭素量(V’CO
2ML)に関する数量、及び前記酸素供給器(4)によって移送された酸素量(V’O
2ML)に関する数量を計算するよう適合された手段が設けられ、
前記マイクロプロセッサ(15)は、計測され及び計算された全ての数量の値を数字的形態で、ならびに前記値のうちの少なくともいくつかを図式的形態で、前記ディスプレイ(16)に表示するようプログラムされ、
前記デバイス(1)は、
患者の肺から除去された二酸化炭素量(V’CO
2NL)に関する数量を得るための取得手段を備えること、及び前記マイクロプロセッサ(15)には、除去された合計の二酸化炭素量(V’CO
2total)に関する数量を計算するよう適合された手段が設けられること、を特徴とする、デバイス(1)
であって、
前記マイクロプロセッサ(15)は、患者の肺から除去された前記二酸化炭素量(V’CO
2
NL)と、除去された合計の前記二酸化炭素量(V’CO
2total
)に関する数量との間の比率(CO
2
RNL)に関する数量を計算するよう適合された手段を備えることを特徴とする、デバイス(1)。
【請求項2】
患者によって供給された血液のフロー率(C.O.)に関する数量を得るための、取得手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記取得手段は、前記データ入力手段及び自動検出手段から成るグループから選択されることを特徴とする、請求項1
または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの人工呼吸器(29)に接続された患者の強制換気ライン(28)を備えること、及び患者の肺から除去された前記二酸化炭素量(V’CO
2NL)を自動的に検出するための前記自動検出手段は、前記人工呼吸器(29)を備えることを特徴とする、請求項
3に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
患者によって供給された血液のフロー率(C.O.)を自動的に検出するための前記自動検出手段は、患者自身に位置付けられた少なくとも1つのセンサ(26)を備えることを特徴とする、請求項
3または
4に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)のポイントに挿入され、血圧の連続的な計測に好適である、少なくとも1つのセンサ(21、22、23)を備えることを特徴とする、請求項1~
5のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記マイクロプロセッサ(15)は、搬送された酸素量(DO
2)に関する数量、及び消費酸素量(VO
2)に関する数量のうちの少なくとも一方を計算するよう適合された手段を備えることを特徴とする、請求項1~
6のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記マイクロプロセッサ(15)は、搬送された前記酸素量(DO
2)に関する数量と、前記酸素供給器(4)によって除去された前記二酸化炭素量(V’CO
2ML)に関する数量との間の比率(DO
2/V’CO
2ML)を計算するよう適合された手段を備えることを特徴とする、請求項
7に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記心臓血管の外部サポート循環装置(2)のポイントに挿入され、乳酸の連続的な計測に好適である、少なくとも1つのセンサ(24)を備える、請求項1~
8のうちいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓血管の外部サポート循環装置において、血液性状値を連続的に監視するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓手術中に重要臓器の正しい機能を保証するために、重要臓器の潅流、すなわち酸素を含んだ血液をスプレーすることを主な目的として、体外での血液循環が実現される。この目的のため、体外循環装置に含まれた設備のうちの1つは、酸素供給器から成る。酸素供給器においては、患者から採取した静脈ラインからの血液に、動脈ラインに導入して患者に戻す前に、酸素が加えられる。
【0003】
詳細には、例えば急性の心不全及び/または呼吸不全を持つ患者の場合、外部循環装置によって患者の臓器の機能をサポートすることが可能である。したがって、このような外部循環装置は、心臓血管の観点から患者の生体機能をサポートするよう設計される。換言すると、血液の一部には自然に患者の心臓によって酸素を加えられ、血液の一部には外部サポート循環装置によって酸素を加えられる。
【0004】
この心臓血管をサポートする治療は、ECMO(ExtraCorporeal Membrane Oxygenation:体外式膜型人工肺)またはECLS(Extracorporeal Life Support:体外生命維持装置)と呼ばれている。
【0005】
患者と外部サポート循環装置とから成るシステムの機能を制御するため、及び組織への酸素の供給が不十分となるのを防ぐために、現在は動脈血及び静脈血から頻繁にサンプルを採取しており、これらの血液は手術室において直接分析される。しかしこの方法は、患者の潅流状態に関して信頼性を提供できないことが判っている。
【0006】
センサによって計測され、及び/またはオペレータによって入力されたデータを受け取り、前述の血液性状を提供するために、それらを処理することができるマイクロプロセッサが設けられた、血液性状を監視するためのシステムも知られている。
【0007】
しかし、これらのシステムも不十分である。なぜなら、これらのシステムは、医療スタッフに、患者の状態及び外部サポート循環装置の完全かつ包括的な実状をもたらすための、十分な情報を提供できないからである。
【0008】
公知のタイプの監視システムは、国際公開第2016/180953号に記載されている。そこでは、酸素供給器によって取り除かれた二酸化炭素量V’CO2MLに関する数量、及び酸素供給器によって移送された酸素量V’O2MLに関する数量を計算するよう適合された手段が提供された、マイクロプロセッサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の目的は、心臓血管の外部サポート循環装置において血液性状値を連続的に監視するためのデバイスを提供し、介入中のオペレータに、デバイスの完全な誘導を可能にする情報を最適な結果のために提供することである。
【0011】
この目的内における本発明の1つの目標は、医療スタッフが、患者の生体機能を効果的に監視できるようにすること、及びその後、それに応じて循環装置の特性パラメータを調整できるようにすることである。
【0012】
本発明の1つの目標は、医療スタッフが、デバイスの動作及び患者の肺活量を、迅速かつ直観的に識別、評価できるよう、医療スタッフに数字的形態及び図式的形態の両方の情報を提供することである。
【0013】
本発明の別の目標は、使用が単純、合理的、簡易、効果的、かつ低コストの解決策の中で、言及した従来技術の欠点を克服可能な、心臓血管の外部サポート循環装置において血液性状値を連続的に監視するためのデバイスを考案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目標は、請求項1による、心臓血管の外部サポート循環装置において血液性状値を連続的に監視するための、本デバイスによって実現される。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の表及び図における限定ではない表示によって例示された、心臓血管の外部サポート循環装置において血液性状値を連続的に監視するためのデバイスの、好ましいが排他的ではない実施形態の説明からより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明による監視デバイスのディスプレイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これらの図を詳細に参照すると、全体的に参照番号1は、心臓血管の外部サポート循環装置において血液性状値を連続的に監視するためのデバイスを示す。
【0018】
例えばECMO、ECLS、またはCPB(Cardiopulmonary Bypass:心肺バイパス)の治療に使用される、
図1において参照番号2で識別される循環装置は、患者から酸素供給器4に血液を搬送し、それに沿って少なくとも1つのポンプ5が配置された、静脈ライン3と、酸素供給器4から患者へ血液を戻す動脈ライン6とを備える。公知のように、ECMO及びECLSの治療において、循環装置2は患者の機能をサポートし、したがって彼/彼女と共に動作する。一方でCPBの治療において、循環装置2は患者の機能に完全に取って代わる。したがってこの患者は、血液からの二酸化炭素の除去に助力しない。
【0019】
酸素供給器4は、静脈ライン3に接続された少なくとも1つの血液入口ポート、及び動脈ライン6に接続された少なくとも1つの血液出口ポート、ならびに、酸素を血液に供給し、及び/または血液から二酸化炭素を除去するよう意図された作動ガスの、少なくとも1つの入口チャネル30、及び少なくとも1つの出口チャネル31を備える。
【0020】
図1において参照番号28で示された換気ラインも設けられ、患者の呼吸を機械的に補助するために適合された人工呼吸器29に接続される。
【0021】
デバイス1は、静脈ライン3に接続された1つのセンサ7、及び動脈ライン6に接続された1つのセンサ8を備える。それらはそれぞれ、静脈血の酸素飽和度SvO2及び動脈血の酸素飽和度SaO2から成る数量の、連続的な計測に好適である。センサ7及び8は、それぞれ静脈血の酸素飽和度センサ及び動脈血の酸素飽和度センサとも定義できる。
【0022】
好ましくは、センサ7は、酸素供給器4に入る静脈ライン3における入力コネクタに挿入され、一方でセンサ8は、酸素供給器4からの動脈ライン6における出力コネクタに挿入される。
【0023】
適切には、静脈ライン3に沿って、及び動脈ライン6に沿って、静脈血の温度TVenを検出するよう適合されたセンサ9、及び動脈血の温度TArtを検出するよう適合されたセンサ10がそれぞれ挿入される。センサ9及び10は、それぞれ静脈血温度センサ及び動脈血温度センサとも定義できる。
【0024】
デバイス1は、静脈ライン3に沿って挿入され、ポンプ5によって酸素供給器4に送られる血液フローによって構成される値Qbを連続的に計測するのに好適である、少なくとも1つのセンサ11も備える。センサ11は、血液フローセンサとも定義できる。
【0025】
心臓血管の外部サポート循環装置2のポイントに挿入され、ヘモグロビンHbによって構成される値を計測するのに好適な、少なくとも1つのセンサ12も提供される。センサ12は、ヘモグロビンセンサとも定義できる。
【0026】
デバイス1には、図に詳細に示されないが、オペレータによってデータを入力するよう適合された、電子制御ユニット14の手段がさらに設けられる。電子制御ユニット14にはマイクロプロセッサ15が設けられ、かつディスプレイ16に動作可能に接続される。容易に理解されるように、データを入力する手段はボタンタイプである。
【0027】
マイクロプロセッサ15は、センサ7、8、9、10、11、12によって計測されたデータ、及びオペレータによって入力されたデータを受け取るよう適合され、それらを少なくとも部分的にディスプレイ16に表示させる。
【0028】
マイクロプロセッサ15は、計測及び計算された全ての値を数字的形態で、ならびにこれらの値のうちの少なくともいくつかを図式的形態で、ディスプレイ16に表示するようプログラムされる。
【0029】
計測または入力された様々な数量の数値は、関連するボックス内に示され、図において参照番号17で識別される。
【0030】
適切には、オペレータが複数の利用可能なスクリーンページの中で動かすことができ、どの数量を表示するか、ならびに図式的形態及び/または数字的形態かを選択できる、ナビゲータボタン18も設けられる。
【0031】
好ましくは、ディスプレイ16はタッチスクリーンタイプであり、いくつかのナビゲーションボタン18はボックス17に対応し、それらの内側で、測定または計算された数で示される値が示される。これらのボックス17を選択することによって、これらの数量の図式的傾向を経時的に視認することが可能になる。
【0032】
本発明によると、デバイス1は、入口チャネル30に沿って挿入され、作動ガスのフローGfの連続的な計測に好適な少なくとも1つのセンサ19と、出口チャネル31に沿って挿入され、かつ静脈血から除去されたCO2%と示される二酸化炭素濃度を計測するよう適合された少なくとも1つのカプノメータと、を備える。センサ19は、作動ガスのフローセンサとも定義できる。
【0033】
さらに本発明によると、マイクロプロセッサ15には、V’CO2MLと示される、酸素供給器4によって除去された二酸化炭素量に関する数量と、V’O2MLと示される、酸素供給器4によって移送された酸素量に関する数量とを計算するよう適合された手段が設けられる。
【0034】
酸素供給器4によって移送された酸素量に関するV’O2MLは、以下の数式によって計算される。
V’O2ML=Qb×CaO2-CvO2×10
ここで、ポンプ5によって酸素供給器4に搬送された血液フローに関する数量Qbは、センサ11によって検出され、動脈血及び静脈血それぞれの酸素含有量に関する数量CaO2及びCvO2は、以下の数式によって計算される。
CaO2=0.0138×Hb×SaO2
CvO2=0.0138×Hb×SvO2
ここで、数量Hb、SaO2、及びSvO2はそれぞれ、センサ12によって検出されたヘモグロビン、センサ8によって検出された動脈血飽和度、及びセンサ7によって検出された静脈血飽和度に相当する。
【0035】
数量V’O2MLは、一般にml/minで表わされる。
【0036】
酸素供給器4によって除去された二酸化炭素量に関するV’CO2MLは、以下の数式によって計算される。
V’CO2ML=CO2%×Gf×10
ここで、数量CO2%は、カプノメータ20によって検出された酸素のパーセンテージに相当し、数量Gfは、センサ19によって検出された作動ガスのフローに相当する。
【0037】
数量V’CO2MLは、一般にml/minで表わされる。
【0038】
有利には、デバイス1は、V’CO2NLと示される、患者の肺から除去された二酸化炭素量に関する数量を得るための、手動及び/または自動の取得手段を備える。マイクロプロセッサには、V’CO2totalと識別される、除去された合計の二酸化炭素量に関する数量を計算するよう適合された、手段が設けられる。より詳細には、除去された合計の二酸化炭素量V’CO2totalは、酸素供給器4によって除去された二酸化炭素量に関するV’CO2MLと、患者の肺から除去された二酸化炭素量に関するV’CO2NLとの合計に相当する。
V’CO2total=V’CO2ML+V’CO2NL
【0039】
V’CO2NLしたがってV’CO2totalの連続的な計算は、医療スタッフが患者の生体機能を効果的に監視するのを可能にし、それによってその後の循環装置2の特性パラメータを規制するのを可能にする。
【0040】
詳細には、患者の、酸素を血液に供給する能力、及び二酸化炭素を除去する能力によって、医療スタッフは、例えば酸素供給器4を通過する作動ガスのフローGfを増減させることによって、循環装置2を調整する。これは、循環装置2が患者の心臓血管機能をサポートすることを意味するためであり、患者の機能が改善すると、正しい酸素量を血液へ提供するために、酸素供給器4によってもたらされる助力を軽減させること、及びその逆も望ましい。
【0041】
好ましくは、マイクロプロセッサ15は、患者の肺から除去された二酸化炭素量V’CO2NLと、除去された合計の二酸化炭素量に関する数量V’CO2totalとの間の比率に関する数量を計算するよう適合された、手段を備える。この比率はCO2RNLと示される。
CO2RNL=V’CO2NL/V’CO2total
【0042】
有利には、循環装置2は、C.O.(Cardiac Output:心拍出量)と示される、患者によって供給された血液のフロー率に関する数量を得るための、取得手段を備える。C.O.の数量は、各脈拍(脈動出力またはストロークと呼ばれる)で心室によって放出され、略語SVで識別される血液の体積に、心拍数(HR)を乗算した以下の数式に相当する。
C.O.=SV×HR
【0043】
したがって、患者によって供給された血液のフロー率は、心臓が1分間に噴出させる血液量に相当する。
【0044】
上述の取得手段、すなわち患者の肺から除去された二酸化炭素量V’CO2NLに関するもの、及び患者によって供給された血液のフロー率C.O.に関するものは、データ入力手段及び自動検出手段を含むグループから選択される。より詳細には、患者の肺から除去された二酸化炭素量V’CO2NLを自動的に検出するための自動検出手段は、人工呼吸器29に相当し、その一方で、患者によって供給された血液のフロー率C.O.を自動的に検出するための自動検出手段は、患者に位置付けられたセンサ26を備える。
【0045】
換言すると、患者の肺から除去された二酸化炭素量V’CO2NLに関する数字、及び患者によって供給された血液のフロー率C.O.に関する数字は、データ入力手段を使用して医療スタッフによって手動で入力され得る。または患者自身に位置付けられた人工呼吸器29及びセンサ26それぞれによって自動的に検出され得る。
【0046】
好ましくは、マイクロプロセッサ15には、略語DO2として公知の、搬送された酸素量に関する数量と、略語VO2として公知の、組織レベルで消費された酸素量に関する数量と、略語O2ERとして公知の、酸素吸収率に関する数量と、を計算するよう適合された手段も設けられる。
【0047】
より詳細には:
搬送された酸素量DO2は、以下の数式によって計算される。
DO2=C.O.×Hbx1.34×SaO2+K
ここで、センサはC.O.、Hb、SaO2に関するデータを提供し、Kは、動脈ライン及び静脈ラインにおける酸素の圧力差を表わす定数を指す。
組織レベルで消費された酸素量VO2は、以下の数式によって計算される。
VO2=C.O.×(Hbx1.34×SaO2+KーHbx1.34×SvO2+K)
ここで、センサは、C.O.、Hb、SaO2、SvO2に関するデータを提供し、Kは上記で指定されたものによる定数を指す。
【0048】
酸素吸収率O2ERは、以下の数式によって計算される。
O2ER=VO2/DO2
【0049】
有利には、マイクロプロセッサ15は、搬送された酸素量DO2と酸素供給器4によって除去された二酸化炭素量V’CO2MLとの間の比率である、数量DO2/V’CO2MLを計算するよう適合された手段を備える。この比率は、CPBの治療の場合に特に有用である。ここで、酸素供給器4によって除去された二酸化炭素量V’CO2MLは、患者がバイパスされることによって除去された合計の二酸化炭素量に相当する。したがって患者は、血液から二酸化炭素を排除することには全く助力せず、患者の腎臓における任意の問題の存在を識別するための、重要なパラメータを提供する。
【0050】
デバイス1は、心臓血管の外部サポート循環装置2のポイントに挿入され、血圧の連続的な計測に好適な、少なくとも1つのセンサ21、22、23を備え、乳酸を連続的に計測するのに好適な、センサ24を備える。センサ24は、乳酸センサとも定義できる。
【0051】
より詳細には、デバイス1は、参照番号21及び22で識別され、循環装置2の離れたポイントに設置された、少なくとも2つのセンサを備え、関連のデータは、PIN及びPOUTと示された、ディスプレイ16の下方縁部における2つボックスに示される。センサ21及び22は、酸素供給器4に対して反対の両側に配置され、したがって数量PINは、酸素供給器4への血液入口ポートにおける圧力に相当し、一方で数量POUTは、酸素供給器4からの血液出口ポートにおける圧力に相当する。センサ21及び22は、それぞれ入口圧力センサ及び出口圧力センサとも定義できる。
【0052】
センサ21及び22によって検出された2つの圧力値PINとPOUTとの間の差に関する、略語ΔPとして公知の数量が、さらに計算される。
【0053】
ECMOまたはECLSの治療の場合、デバイス1は、静脈ライン3に沿ってポンプ5の上流に設置され、ポンプ自体による血液吸引圧の値を検出するよう適合された別のセンサ23を備え、コードPdrainで識別される。センサ23は、吸引圧センサとも定義できる。
【0054】
CPBの治療ではない場合、デバイス1は、
図1において参照番号27で示され、患者の平均血圧PMPを測定するためのセンサを備える。センサ27は、平均血圧センサとも定義できる。
【0055】
このようなセンサ27は、患者の血圧、したがって収縮期圧及び拡張期圧の両方を検出するために患者に適用される、圧力変換機のタイプである。センサ27は、動作可能にマイクロプロセッサ15に接続され、当該分野の技術者に公知のタイプのアルゴリズムに基づき、患者の平均血圧PMPを計算するようプログラムされる。例えば、マイクロプロセッサ15は、所定の時間間隔で、センサによって検出された最大及び最小血圧に基づいて、平均血圧PMPを計算するよう適合される。
【0056】
したがってセンサ23及び27は、実行される治療のタイプによって、互いに交換される。
【0057】
本発明の機能は以下のとおりである。
【0058】
一旦循環装置2が患者に接続され、デバイス1が電源に接続されると、患者をサポートするために外部循環を続けることが可能となる。
【0059】
外部循環を用い、上述した全てのセンサによる、マイクロプロセッサ15へのデータの送信によって、監視も開始される。
【0060】
動作の特定のポイントにおいて、ディスプレイは、センサによって検出された様々な数量の瞬時値を示すことになり、例えば事前に設定した一定の時間間隔でアップデートされる。
【0061】
有利には、マイクロプロセッサ15には、ディスプレイ16に図式的形態で示す手段が設けられ、少なくとも1つの数量が、その図によって横座標に表わされる時間の関数として、縦座標に表わされる。詳細には、特定の段階において、オペレータは、時間の関数として特定の数量の傾向を知る必要がある場合があり、この場合関連のボックス17を押圧することによって、対応するグラフがディスプレイ16上に示される。
【0062】
同時に、マイクロプロセッサ15は、数量V’CO2ML及びV’O2MLの計算を続ける。
【0063】
好適には、デバイス1は、患者の肺から除去された二酸化炭素量V’CO2NLも検出し、除去された合計の二酸化炭素量V’CO2totalに関する数量を計算する。
【0064】
これらの数量の図式的表示は、医療スタッフに、患者の生体機能について認識できる情報、すなわち患者から除去された二酸化炭素量V’CO2NLを迅速且つ容易に提供し、それによって酸素供給器のパラメータを、除去された合計の二酸化炭素量V’CO2totalが必要な値に相当するよう、十分に規制する。
【0065】
換言すると、医療スタッフが、患者から除去された二酸化炭素量V’CO2NLが経時的に増加するのを検出し、それが患者の呼吸機能の改善に相当する場合、医療スタッフは、患者から除去される二酸化炭素量を減少させるよう、酸素供給器4を調整する。同様に、医療スタッフが、患者から除去された二酸化炭素量V’CO2NLが経時的に低下するのを検出し、それが患者の呼吸機能の悪化に相当する場合、医療スタッフは、患者から除去される二酸化炭素量を増加させ、発生した不足を補うよう酸素供給器4を調整する。医療スタッフは、患者の肺機能が自給自足に達するまで、上述のように酸素供給器4の調整を続ける。
【0066】
説明した発明が、意図した目標を実現したことが、実際に確認されている。詳細には、酸素供給器によって除去された二酸化炭素量に関する図式的表示、及び酸素供給器によって移送された酸素量に関する図式的表示は、医療スタッフが、酸素供給器の動作、及びいかに外部循環が進行しているかについての、迅速かつ直観的な情報を得ることを可能にする、という事実が強調される。
【0067】
詳細には、患者から除去された二酸化炭素量、及び除去された合計の二酸化炭素量に関する数量の、数字的表示及び図式的表示は、医療スタッフが、外部循環の全体的状況を制御下に維持するのを可能にする。