(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】フルカラー撮像のためのメタ表面およびシステムならびに撮像の方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20230808BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020541555
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 US2019015704
(87)【国際公開番号】W WO2019148200
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シェイン・コルバーン
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】アルカ・マジュンダール
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/044637(WO,A1)
【文献】特開2014-230239(JP,A)
【文献】特開2013-162369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0111856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/32
G02B 3/00- 3/14
G02B 1/00- 1/08
G02B 5/00- 5/136
G02B26/06
G02B27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長範囲にわたる光学活性を有するメタ表面であって、
第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポストと、
前記第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える、前記複数のポストの個々のポスト間の間隙と
を備え、
前記複数のポストの前記ポストの直径が、前記メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わ
り、
各ポストの直径が中心部分の周りで変わり、前記中心部分の周りで前記ポストの直径が変わる一連の同心円を規定するメタ表面。
【請求項2】
前記メタ表面を通過した前記波長範囲の光を拡張焦点深度に合焦するように構成される、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項3】
前記拡張焦点深度が、
前記波長範囲にわたってスペクトル的に不変である、請求項2に記載のメタ表面。
【請求項4】
前記メタ表面を通過した前記波長範囲の光の波面を符号化するように構成される、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項5】
前記メタ表面の少なくとも一部が、前記メタ表面の長さに沿ったポスト直径の勾配に基づくレンズ効果をもたらすように整形されるレンズを規定する、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項6】
パターン形成および前記メタ表面の部分間の回折の差異によって規定される3次位相プレートである、請求項5に記載のメタ表面。
【請求項7】
前記メタ表面を通過した光の位相プロファイルが、次式で与えられ、
【数1】
上式で、
fが、前記メタ表面の焦点距離であり、
xおよびyが、前記基板の平面における前記メタ表面の座標であり、
λが、前記メタ表面の動作波長であり、
Lが、前記メタ表面のアパーチャ幅の半分であり、
αが、前記メタ表面の3次位相強度である、請求項6に記載のメタ表面。
【請求項8】
αが、
0π~
200πの範囲の中である、請求項7に記載のメタ表面。
【請求項9】
前記波長範囲が、
400nm~
700nmの範囲の光を含む、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項10】
前記第1の材料が窒化ケイ素である、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項11】
前記間隙物質が空気またはポリマーである、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項12】
前記複数のポストの周期性が前記波長範囲中の最小波長より小さく、前記複数のポストの直径が前記波長範囲中の前記最小波長の
25%と前記波長範囲中の前記最小波長の
90%の範囲の中であり、前記複数のポストの厚さが前記波長範囲の平均波長の
0.75倍と前記波長範囲の前記平均波長の
1.5倍の範囲の中である、請求項1に記載のメタ表面。
【請求項13】
波長範囲にわたる光学活性を有するメタ表面であって、
第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および
前記第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える、前記複数のポストの個々のポスト間の間隙
を備え、
前記複数のポストの前記ポストの直径が、前記メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる、メタ表面と、
前記メタ表面を通過した光を吸収するように位置決めされ、前記吸収した光に基づいて信号を生成するように構成される光検出器と、
前記光検出器に動作可能に結合されるコントローラであって、前記コントローラによって実行されると、
前記メタ表面を通過した前記波長範囲内の光に基づいて前記光検出器で複数の信号を生成すること、
前記複数の信号を計算によって再構築して、複数の計算によって再構築した信号を提供すること、および
前記複数の計算によって再構築した信号で、前記光検出器によって吸収した前記光に基づいて画像を生成すること
を含む動作をデバイスに実施させる論理を含む、コントローラと
を備え
、
各ポストの直径が中心部分の周りで変わり、前記中心部分の周りで前記ポストの直径が変わる一連の同心円を規定する撮像システム。
【請求項14】
前記メタ表面を通過した前記波長範囲の光を拡張焦点深度に合焦するように前記メタ表面が構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記拡張焦点深度が、
前記波長範囲にわたってスペクトル的に不変である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の信号を計算によって再構築することが、前記複数の信号をデジタルでフィルタ処理することを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の信号をデジタルでフィルタ処理することが、ウィーナフィルタで前記複数の信号をデジタルでフィルタ処理することを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラが、前記コントローラによって実行されると、前記デバイスに、
理想的な前記メタ表面のレンズ動作からの前記メタ表面の合焦挙動の逸脱を考慮して打ち消すため、前記複数の信号をデコンボリューションすること
を含む動作を実施させる論理をさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
第2のメタ表面をさらに備え、前記メタ表面の前記光軸に対する前記第2のメタ表面の変位が合焦における非線形な変化をもたらすように、前記メタ表面および前記第2のメタ表面が構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記メタ表面の前記光軸と同軸上に位置決めされる光軸を有する屈折レンズをさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
画像を生成する方法であって、
メタ表面を通過した光に基づいて光検出器で複数の信号を生成するステップであって、前記メタ表面が
第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および
前記第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える、前記複数のポストの個々のポスト間の間隙
を備え、
前記複数のポストの前記ポストの直径が、前記メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる、ステップと、
前記複数の信号を計算によって再構築して、複数の計算によって再構築した信号を提供するステップと、
前記複数の計算によって再構築した信号で、前記光検出器によって吸収した前記光に基づいて画像を生成するステップと
を含
み、
各ポストの直径が中心部分の周りで変わり、前記中心部分の周りで前記ポストの直径が変わる一連の同心円を規定する方法。
【請求項22】
前記複数の信号を計算によって再構築するステップが、前記複数の信号をデジタルでフィルタ処理するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記メタ表面を通過した波長範囲の光を拡張焦点深度に合焦するように前記メタ表面が構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
理想的な前記メタ表面のレンズ動作からの前記メタ表面の合焦挙動の逸脱を考慮して打ち消すため、前記複数の信号をデコンボリューションするステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連分野の相互参照
本出願は、その開示がその全体で参照によって本明細書に組み込まれる、2018年1月29日に出願された米国特許出願第62/623,170号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のカメラは、最小の収差で撮像するための、縦続接続され嵩張ったガラス光学系のシステムを含む。これらのシステムは高品質画像を提供する一方で、機能性の改善には、サイズおよび重さの増加の代償がかかり、小型の画像センサが好ましい場合がある様々な用途でそれらを使用するのに制限がかかる。システムの複雑さを減らすための1つの道は、計算撮像によるものであり、そこでは、光学的ハードウェアの収差補正および機能性のほとんどがソフトウェア領域での後処理にシフトされ、著しく簡単な光学系で高品質画像を可能にする。あるいは、設計者は、回折光学要素(DOE)と交換することによって光学系を小型化することができ、DOEは、より小型のフォームファクタで屈折型システムの機能性を模倣する。メタ表面はそのようなDOEの極端な例であり、DOEでは、共振サブ波長光学アンテナの準周期的配列が、波面に空間的に変動する変化を付与する。これらの要素は、波長程度の厚さのものであり、高度に小型なシステムを可能にする一方で、サブ波長共振器の設計における多数の自由度によって、レンズ、ホログラフィックプレート、ブレーズド格子、および偏光光学部品の前例のない機能性および平坦な実装が可能になっている。
【0003】
広帯域の照明の下で撮像するためにアクロマチックメタ表面レンズを設計することには、メタ表面コミュニティにおいて、未解決の問題が残っている。メタ表面における強度の色収差は、サブ波長光学散乱体の局所的な共振挙動、ならびに散乱体の空間的配置から発生する位相ラッピング不連続性の両方から生じる。レンズでは、この色度は、画像における波長依存性のぼけとして現れ、これが狭帯域動作にメタ表面ベース撮像を束縛する。この問題を解決するのを試みる膨大な仕事があるが、これまで、提示された解決策は、離散的な波長または狭帯域のいずれかで働く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのために、本開示は、たとえば、全可視領域にわたる広帯域の白色光照明の下で、フルカラー撮像を実現し、高品質画像を生成するために、メタ表面、メタ表面を含むシステム、およびメタ表面を使用して画像を生成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一態様では、本開示は、波長範囲にわたる光学活性を有するメタ表面であって、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポストと、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙とを備え、複数のポストのポストの直径が、メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる、メタ表面を提供する。
【0006】
計算撮像とメタ表面の両方は別個に光学システムを簡略化するための手段を約束している一方で、これらの分野の相乗的な組合せによって、システムの性能をさらに拡張して、たとえば、メタ表面で撮像する全可視スペクトルで使用するため、高度な能力を容易にすることができる。したがって、別の態様では、本開示は、波長範囲にわたる光学活性を有するメタ表面であって、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙を備え、複数のポストのポストの直径がメタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる、メタ表面と、メタ表面を通過した光を吸収するように位置決めされ、吸収した光に基づいて信号を生成するように構成される光検出器と、光検出器に動作可能に結合されるコントローラであって、コントローラによって実行されると、メタ表面を通過した波長範囲内の光に基づいて光検出器で複数の信号を生成すること、複数の信号を計算によって再構築して、複数の計算によって再構築した信号を提供すること、および複数の計算によって再構築した信号で、光検出器によって吸収した光に基づいて画像を生成することを含む動作をデバイスに実施させる論理を含む、コントローラとを備える撮像システムを提供する。
【0007】
さらに別の態様では、本開示は、メタ表面を通過した光に基づいて光検出器で複数の信号を生成するステップであって、メタ表面が、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙を備え、複数のポストのポストの直径がメタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる、ステップと、複数の信号を計算によって再構築して、複数の計算によって再構築した信号を提供するステップと、複数の計算によって再構築した信号で、光検出器によって吸収した光に基づいて画像を生成するステップとを含む、画像を生成する方法を提供する。
【0008】
この概要は、下の詳細な説明でさらに記載される簡略化した形式の概念の選択を導くために設けられる。この概要は、特許請求する主題のキーとなる特徴を識別することは意図しておらず、特許請求する主題の範囲を規定することにおける助けとして使用することも意図していない。
【0009】
上の態様および特許請求する主題の付随する利点の多くは、添付する図面と一緒に考えれば、以下の詳細な説明を参照することによって、それらをよりよく理解できるので、より容易にわかることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、メタ表面は窒化ケイ素のナノポストから作られており、厚さT、格子定数p、および直径dが設計パラメータである。
【
図1B】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、ナノポストの配列を備えるメタ表面の概略図である。
【
図1C】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、厳密な結合波分析を介したナノポストの伝達振幅および位相のシミュレーションである。シングレットメタ表面レンズの光軸に沿ったシミュレーション強度である。
【
図1D】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、拡張焦点深度メタ表面である。
【
図1E】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、上から下に向かって、各パネルで400nm、550nm、および700nmの波長が使用され、点線は、センサが置かれることになる所望の焦点面を示し、シングレットメタ表面レンズの光学画像である。
【
図1F】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、拡張焦点深度デバイスである。
【
図1G】撮像メタ表面の設計、シミュレーション、および製造を示す図であり、スケールバーは25μmである。
【
図2A】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、青の照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2B】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、緑の照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2C】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、赤照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2D】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。変調伝達関数(MTF)がやはり計算された。1の正則化周波数が579サイクル/mmの同じカットオフ周波数に対応する。
【
図2E】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、青の照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2F】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、緑の照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2G】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。シングレットメタレンズ(上の行)および拡張焦点深度レンズ(下の行)の点像分布関数(PSF)が、赤の照明条件下で測定された。スケールバーは25μm長のものである。
【
図2H】撮像メタ表面の特徴付けを示す図である。変調伝達関数(MTF)がやはり計算された。1の正則化周波数が579サイクル/mmの同じカットオフ周波数に対応する。
【
図3A】離散的波長での撮像を示す図である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが示されている。
【
図3B】離散的波長での撮像を示す図である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが示されている。
【
図3C】離散的波長での撮像を示す図である。1951空軍解像度チャートの画像は、シングレットメタレンズでキャプチャされた。
【
図3D】離散的波長での撮像を示す図である。1951空軍解像度チャートの画像は、デコンボリューションなしに拡張焦点深度(EDOF)でキャプチャされた。
【
図3E】離散的波長での撮像を示す図である。1951空軍解像度チャートの画像は、デコンボリューションありで拡張焦点深度(EDOF)レンズでキャプチャされた。
【
図3F】離散的波長での撮像を示す図である。2値モナリザパターンの画像は、シングレットメタレンズで撮られた。スケールバーは20μm長のものである。
【
図3G】離散的波長での撮像を示す図である。2値モナリザパターンの画像はデコンボリューションなしにEDOFデバイスで撮られた。スケールバーは20μm長のものである。
【
図3H】離散的波長での撮像を示す図である。2値モナリザパターンの画像は、デコンボリューションありでEDOFデバイスで撮られた。スケールバーは20μm長のものである。
【
図4A】白色光での撮像を示す図である。画像は、白色光照明下で撮られたカラー印刷したRGBテキストの写真である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが左列に示される。スケールバーは20μm長のものである。
【
図4B】白色光での撮像を示す図である。画像は、白色光照明下で撮られたカラー印刷したROYGBIVテキストの写真である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが左列に示される。スケールバーは20μm長のものである。
【
図4C】白色光での撮像を示す図である。画像は、白色光照明下で撮られたカラー印刷したカラーの虹パターンの写真である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが左列に示される。スケールバーは20μm長のものである。
【
図4D】白色光での撮像を示す図である。画像は、白色光照明下で撮られたカラー印刷した青空、緑の葉、多色の花を有する風景(D)の写真である。撮像のために使用される適切にトリミングした元の対象パターンが左列に示される。スケールバーは20μm長のものである。
【
図5】直径の関数としてのナノポストの伝達振幅および位相を示す図である。633nmの固定厚および400nmの格子定数を有するポスト直径の関数としての400nm(青)、550nm(緑)、および700nm(赤)の入力波長についての伝達係数。点線が位相であり、実線が対応する振幅である。
【
図6A】格子定数および直径の関数としてのナノポストの伝達振幅および位相を示す図である。550nmの波長でのポスト直径と格子定数の両方の関数としての伝達振幅。点線が設計したメタ表面で使用される格子定数を示す。
【
図6B】格子定数および直径の関数としてのナノポストの伝達振幅および位相を示す図である。550nmの波長でのポスト直径と格子定数の両方の関数としての位相。点線が設計したメタ表面で使用される格子定数を示す。
【
図7A】製造したメタ表面の走査型電子顕微鏡写真である。製造したメタ表面レンズの図である(スケールバーは20μm)。
【
図7B】製造したメタ表面の走査型電子顕微鏡写真である。個々のナノポストを示す、レンズの高倍率の図である(スケールバーは2μm)。
【
図8】本開示の実施形態に従ったシステムを示す図である。ファイバ結合したLED(Thorlabs製M455F1、M530F2、およびM625F2)が試験中のメタ表面レンズを照明し、メタ表面レンズが光を40x対物レンズ(Nikon Plan Fluor、NA=0.75、WD=0.66mm)の作動距離に置かれた平面に合焦する。チューブレンズ(Thorlabs製ITL200)が画像をカメラ(AmScope MU300)上に拡大投影している。
【
図9】本開示の実施形態に従ったシステムを示す図である。ファイバ結合したLED(Thorlabs製M455F1、M530F2、M625F2、およびMCWHF2)が、標準的な8.5インチx11インチのプリンタ用紙上の対象パターンを照明する。入射LED光がパターンを散乱させて、メタ表面レンズが集めて合焦し、40x対物レンズ(Nikon Plan Fluor、NA=0.75、WD=0.66mm)の作動距離で画像を生成する。次いでチューブレンズ(Thorlabs製ITL200)が画像を、結果がセーブされてソフトウェアにデコンボリューションされるカメラ(AmScope MU300)上に拡大投影している。
【
図10A】異なる3次位相強度のシステムでキャプチャした画像である。より高いαでは信号対雑音比(SNR)が減少するが、カラーリンギングおよび色のぼやけも減少することを示す、異なる3次位相強度αを有するレンズを使用してキャプチャおよび処理した画像である。
【
図10B】異なる3次位相強度のシステムでキャプチャした画像である。より高いαでSNRが減少することを示す、異なる3次位相強度を有するデバイスについての緑の光のMTFである。
【
図11A】異なるデコンボリューション方法についての画像品質比較を示す図である。10
3のλで、青、緑、赤の全変動正則化デコンボリューション画像である。
【
図11B】異なるデコンボリューション方法についての画像品質比較を示す図である。5x10
3のλで、青、緑、赤の全変動正則化デコンボリューション画像である。
【
図11C】異なるデコンボリューション方法についての画像品質比較を示す図である。10
4のλで、青、緑、赤の全変動正則化デコンボリューション画像である。
【
図11D】異なるデコンボリューション方法についての画像品質比較を示す図である。ウィーナフィルタを使用してデコンボリューションした画像の同じ組である。ここでは、画像はα=55π EDOFメタ表面レンズを使用してキャプチャされる。
【
図12】非ゼロ発生源帯域を有する理論的MTFと経験的MTFの比較を示す図である。MTFは、シングレットレンズの解析的回折限界解法(Diff)、0nm(「0nm」)および30nm(「30nm」)の帯域の発生源で照明されるシミュレーションした位相マスク、ならびに、約30nm帯域幅の緑色LED(Thorlabs製M530F2)で照明されこの波長で合焦するように配置された、測定されて製造されたシングレットメタレンズ(「測定されたレンズ」)およびEDOF(「測定されたEDOF」)メタレンズについて示される。
【
図13A】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。0°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図13B】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。0°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図13C】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。5°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図13D】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。5°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図13E】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。10°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図13F】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズのシミュレーションしたオフアクシス性能を示す図である。シングレット(EDOF)メタレンズの光軸に沿ってシミュレーションした強度断面が左(右)に示される。10°の入射角度が示される。各図において、400nm、550nm、および700nmのシミュレーション波長が上から下に向かって使用される。
【
図14】シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズの効率を示す図である。シングレットメタレンズおよびEDOFメタレンズの効率が撮像実験で使用したLEDの3つの波長について示される。効率が焦点面における光パワーと入射ビームのものの比として規定される。誤差棒は、95%信頼区間を表しており、3つの測定値の標準偏差を波及させることによって見出されている。理論的効率がレーリーゾンマーフェルト回折積分によって計算される。測定した効率が理論的に計算した効率より低く、これは製造上の不完全さと考えられる。製造した構造の寸法における不一致がより短い波長でより有害であるために、波長で測定した効率が増加するのを製造上の不完全さとやはり考えている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
メタ表面およびメタ表面を含むシステムが本明細書に開示される。そのようなメタ表面は、基板上の複数のポストから形成することができる。メタ表面は、波長範囲にわたって光学的に活性であるように構成され、ある実施形態では、レンズを形成するように構成される。特に、本明細書に記載されるメタ表面は、メタ表面を通過した光を、拡張焦点深度に合焦するように構成される。したがって、開示されるメタ表面は、一般的に、たとえば計算再構築などといった後処理と組み合わせて、色収差なしまたは最小の色収差でカラー画像を生成するのに好適である。
【0012】
メタ表面
一態様では、本開示は、光学活性を有するメタ表面を提供する。一実施形態では、メタ表面が、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙を含む。一実施形態では、
図7Aおよび
図7Bを参照してさらにここで議論されるように、複数のポストのポストの直径が、メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる。
【0013】
上記のように、本明細書で記載されるメタ表面は、波長範囲にわたって光学活性を有する。波長範囲中の光がメタ表面上に当たると光学活性が生じる。一実施形態では、実施例に開示されるように、光が基板に垂直にメタ表面上に当たるときに所望の光学活性を実現するようにメタ表面が構成される。他の実施形態では、非垂直で当たる角度も光学活性を生じさせる。非垂直で当たることのために設計されたメタ表面は、入射の角度を考慮するために、異なる位相プロファイルを有する。同じポスト直径および厚さを使用でき、変えられるのはポストの方位だけである。
【0014】
一実施形態では、光学活性は、回折と反射からなるグループから選択される。本明細書で使用する「光学活性」という用語は、主に、光がメタ表面を通過し複数のポストにより影響を受けるときの光の回折を記述するために使用される。しかし、他の実施形態では、当たる光を回折する代わりに反射するように構成されるメタ表面に基づいて、光学活性は反射である。選択されるパラメータに基づいて、特に厚さおよび周期性を変えることによって、光を回折する代わりに反射するメタ表面を製造することができる。
【0015】
代表的なメタ表面は、
図1Aおよび
図1Bに図示され、基板上に正方形のパターンで第1の材料から形成される、複数の円筒状ポストを備える。基板は、複数のポストを支持するのに十分な任意の材料であってよく、メタ表面の光学的効果に悪影響を与えない。ガラスが例示的な基板である。一実施形態では、基板は、本質的に平坦である。別の実施形態では、基板は曲がっている。メタ表面の性質によって、また、メタ表面のパターン形成の容易さによって、平坦な表面と曲がった表面の両方がメタ表面でパターン形成することができる。
【0016】
ポストの各々は、直径(
図1Aでは「d」)、厚さ(
図1Aでは「t」、ポストの高さとも呼ばれる)、および周期性(
図1Aでは「p」、基板の平面における隣接ポスト間の中心間距離によって規定される)によって規定される。
【0017】
上記のように、メタ表面は波長範囲にわたって光学活性を有する。そのような波長範囲は、たとえば、可視光、赤外光、紫外光などを含むことができる。一実施形態では、波長範囲は、約400nm~約700nmの範囲の光を含む。
【0018】
一実施形態では、複数のポストの周期性は、波長範囲中の最小波長より小さい。たとえば、波長範囲が可視光を含み、波長範囲中の最小波長が400nmである場合、複数のポストの周期性は、400nm未満である。
【0019】
一実施形態では、複数のポストの直径は、波長範囲中の最小波長の約25%と波長範囲中の最小波長の約90%の範囲の中にある。一実施形態では、複数のポストの直径は、波長範囲中の最小波長の約35%と波長範囲中の最小波長の約85%の範囲の中にある。
【0020】
一実施形態では、複数のポストの厚さは、波長範囲中の平均波長の約0.75倍と波長範囲中の平均波長の約1.5倍の範囲の中にある。一実施形態では、複数のポストの厚さは、波長範囲中の平均波長の約0.8倍と波長範囲中の平均波長の約1.2倍の範囲の中にある。
【0021】
上記のように、メタ表面の第1の材料は、間隙物質の屈折率と異なる第1の屈折率を有する。一実施形態では、第1の材料の屈折率と間隙物質の屈折率との間の差異は、少なくとも約0.5である。一実施形態では、第1の材料の屈折率と間隙物質の屈折率との間の差異は、約0.5~約1.7の範囲にある。
【0022】
一実施形態では、第1の材料の屈折率は約1.5~約2.8の範囲にある。一実施形態では、第1の材料の屈折率は約1.8~約2.7の範囲にある。
【0023】
第1の材料は、たとえば、間隙物質に対する屈折率などといった屈折率、複数のポストを作るための適合性などに基づいて選択することができる。一実施形態では、第1の材料は窒化ケイ素を含む。一実施形態では、第1の材料はポリマーを含む。
【0024】
一実施形態では、間隙物質は空気または別の気体である。一実施形態では、間隙物質はポリマーである。
【0025】
ポストが図示され記載されるが、導波体の周期性が波長範囲の最小波長の波長未満である場合など、基板から突出する他の導波体を使用できることを理解されよう。そのような追加の導波構造の例としては、たとえば、フィン、V字型などが挙げられる。本明細書の他の箇所で記載される設計パラメータおよび材料は、そのような追加の導波構造に適用される。
【0026】
一実施形態では、メタ表面の光学活性はレンズを含む。一実施形態では、メタ表面は、メタ表面を通過する波長範囲の光にレンズ効果をもたらすように整形されたレンズを規定する。一実施形態では、そのようなレンズ効果は、メタ表面の長さに沿った、ポスト直径の勾配に部分的に起因する。たとえば、
図7Bに示されるように、ポストの直径は、図示される線に沿って異なり、ポスト直径勾配を規定する。ポスト直径のそのような差異は、メタ表面を通過する光の位相を変えて、レンズ効果に貢献するように構成される。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載されるメタ表面は、メタ表面を通過した波長範囲の光を、拡張焦点深度に合焦するように構成される。本明細書で使用する拡張焦点深度とは、撮像される対象物の焦点が合ったままになるように、センサ位置をシフトできる距離のことを呼ぶ。レンズの焦点深度は、典型的には、4λN2であって、λが波長であり、Nがf値である。拡張焦点深度は、焦点深度がこの式から離れてより長くなるものである。実施例を参照して本明細書でさらに議論されるように、拡張焦点深度は、実質的に、波長範囲にわたってスペクトル的には不変である。さらに、本開示のメタ表面は、メタ表面を通過した波長範囲の光の波面を符号化するように構成することができる。この点について、拡張焦点深度中の光を受け取る光検出器によって生成される信号は、デジタルでフィルタ処理してそのような信号をデコンボリューションすることなどによって後処理して、拡張焦点深度なしのメタ表面よりも少ない色収差で点光源の画像を生成することができる。
【0028】
一実施形態では、本開示のメタ表面は、回転非対称で変わる直径を有する複数のポストを規定する。
図7Aおよび
図7Bで示されるように、ポストの直径は、中心部分(ここでは十字線として示される)の周りで変わり、その周りでポスト直径が変わる一連の同心円を規定する。さらに示されるように、ポストの直径は、中心部分と同軸でない複数の同心円(やはり十字線として示される)を規定するためにさらに変わる。図示した実施形態では、メタ表面は、中心部分の周りに向かい合う対で配設されるそのような同軸でない同心円を規定するが、他の構成が可能である。
【0029】
一実施形態では、ポスト直径の非対称の変形形態は、3次関数に従う。この点に関して、メタ表面は、複数のポストおよびポストの直径のパターン形成によって規定される3次位相プレートであってよい。一実施形態では、メタ表面を通過した光の位相プロファイルは、次式で与えられる。
【0030】
【0031】
上式で、
fは、メタ表面の焦点距離である。
xおよびyは、基板の平面におけるメタ表面の座標である。
zは、メタ表面の伝播方向である。
λは、メタ表面の動作波長である。
Lは、メタ表面のアパーチャ幅の半分である。
αは、メタ表面の3次位相強度である。
【0032】
実施例および
図10Aおよび
図10Bを参照してさらに本明細書で議論されるように、αをゼロから増加することなどによって、3次関数の3次位相強度を変えると、メタ表面によって生成される画像の色収差を低減することができる。したがって、一実施形態では、αは、約0π~約200πの範囲の中である。一実施形態では、αは、約20π~約80πの範囲の中である。一実施形態では、αは、約55πである。たとえば
図10Aに示されるように、αをゼロ以上に増加させるなどでαを変えることによって、色収差を減少させることなどにより、画像品質を改善することができる。
【0033】
システム
別の態様では、本開示は、画像を生成するためのシステムを提供する。一実施形態では、システムは、
図8および
図9に示されるように、メタ表面およびコントローラを含む。一実施形態では、メタ表面は、本明細書に記載されるような任意のメタ表面である。一実施形態では、システムは、波長範囲にわたって光学活性を有するメタ表面と、メタ表面を通過した光を吸収するように位置決めされ、吸収した光に基づいて信号を生成するように構成される光検出器と、光検出器に動作可能に結合されるコントローラとを含む。
【0034】
上で議論したように、一実施形態では、そのようなメタ表面は、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙を含むことができ、複数のポストのポストの直径は、メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる。一実施形態では、メタ表面は、メタ表面を通過した波長範囲の光を、拡張焦点深度に合焦するように構成され、たとえば、拡張焦点深度は、実質的に、波長範囲にわたってスペクトル的に不変である。
【0035】
一実施形態では、光検出器は、拡張焦点深度に合焦された波長範囲内からの光を吸収するように位置決めされる。この点に関して、光検出器は、メタ表面を通過してメタ表面によって影響を受けた(たとえば、合焦された)波長範囲の中の光に基づいて、1つまたは複数の電気信号などといった、1つまたは複数の信号を生成するように構成される。
【0036】
上記のように、コントローラは、
図8および
図9に示されるように光検出器に動作可能に結合される。一実施形態では、コントローラは、波長範囲内の吸収した光に基づいた信号などといった、光検出器によって生成された1つまたは複数の信号を受け取るように構成される。一実施形態では、光検出器に動作可能に結合されるコントローラは、コントローラによって実行されると、動作をデバイスに実施させる論理を含む。そのような動作は、たとえば、信号を計算によって再構築するために光検出器によって生成される信号を処理するための動作を含むことができる。この点に関して、コントローラは、複数の計算によって再構築した信号で、光検出器によって吸収した光に基づいて画像を生成することを含む動作を実施するための論理をさらに含むことができる。本明細書に記載されるメタ表面は、メタ表面を通過した光の色収差を減少または低減するように構成されるが、そのような効果は、たとえば、拡張焦点深度にわたって光を合焦するように構成されないメタ表面に対して、信号対雑音比が付随して増加することももたらす場合がある。したがって、複数の計算によって再構築した信号をもたらすために複数の信号を計算によって再構築することを含む動作は、光検出器によって吸収される光に基づいた画像がより鮮鋭になるように、信号対雑音比を計算によって低減するのに好適な場合がある。
【0037】
一実施形態では、複数の信号を計算によって再構築することが、複数の信号をデジタルでフィルタ処理することを含む。そのようなデジタルのフィルタ処理は、
図11A~
図11Dを参照して本明細書でさらに示されて議論されるように、光検出器からの信号から生成される画像の品質を改善するのに好適な場合がある。一実施形態では、複数の信号をデジタルでフィルタ処理することが、ウィーナフィルタで複数の信号をデジタルでフィルタ処理することを含む。たとえば、
図11Dを参照されたい。一実施形態では、ウィーナフィルタを使用することは、画像に相当する周波数(フーリエ)領域を、たとえば、波長範囲の平均波長などといった、測定した波長範囲内の1つの波長で測定した点像分布関数によって決定される関数で乗算することを含む。一実施形態では、ウィーナフィルタを使用することは、システムの信号対雑音比を推定することをさらに含む。この点に関して、キャプチャした画像は、フーリエ変換によって周波数領域に変換される。そのように変換した画像が(点像分布関数および信号対雑音比から決定される)ウィーナフィルタ関数によって乗算され、次いで、再構築した画像を提供するためにフーリエ領域に戻して変換される。
【0038】
一実施形態では、複数の信号をデジタルでフィルタ処理することは、全変動正則化器で複数の信号をデジタルでフィルタ処理することを含む。たとえば、
図11A~
図11Cを参照されたい。全変動正則化器は、画像のノイズ低減とぼけ低減を平衡させるのに好適な場合がある。この技法は、より高品質な画像を作ることができるが、本明細書でさらに議論されるように、一般的により長い計算時間を使用する。
【0039】
一実施形態では、複数の信号を計算によって再構築することが、理想的なメタ表面のレンズ動作からのメタ表面の合焦挙動の逸脱を考慮して逸脱を打ち消すため、複数の信号をデコンボリューションすることを含む。一実施形態では、デコンボリューションは、メタ表面の効果が波長範囲にわたって均等に光を変えるために、波長範囲の中の各波長について均一な複数の信号のデコンボリューションを含む。デコンボリューションは、本明細書に記載されるメタ表面の色収差および/または他の収差を補償するのに好適であってよい。パワーを計算することおよび/または処理することは、一般的に容易に得られ、たとえば、本明細書に記載されるメタ表面を含むシステムへと組み込まれるのに好適な比較的小さいフォームファクタであってよい。本明細書でさらに議論されるように、本開示のメタ表面と本明細書に記載されるデコンボリューション方法の組合せは、嵩張る従来の屈折型要素を置き換えるのに好適であってよい。一実施形態では、システムは、メタ表面を通して光を放出するように構成される光源を含む。一実施形態では、光源は、波長範囲の中の光を含む光を放出するように構成される。一実施形態では、光源は、可視光、赤外光、紫外光、およびそれらの組合せからなるグループから選択される波長を有する光を放出するように構成される。一実施形態では、光源は、各々が異なる波長範囲で光を放出するように構成される複数の光源を含む。
【0040】
一実施形態では、光源は、たとえば
図8に示されるように、基板の平面に垂直などといった、メタ表面の光軸に平行な光を放出するように位置決めされる。一実施形態では、光源は、たとえば
図9に示されるように、メタ表面の光軸に平行でない角度で光を放出するように位置決めされる。
【0041】
一実施形態では、システムは、唯一の光学要素としてメタ表面を備える。一実施形態では、システムは、単一のメタ表面を含む。
【0042】
一実施形態では、システムは、メタ表面に加えて1つまたは複数の光学要素を含む。一実施形態では、システムは、本明細書に記載されるようなメタ表面などといった、第2のメタ表面を含む。本明細書の他の場所に記載される設計原理および材料は、第2のメタ表面に適用することができる。
【0043】
2つのメタ表面は、アルバレスレンズの性質を生じるように設計および構成することができる。一実施形態では、アルバレスレンズは、可変焦点距離レーザに組み込まれる。一実施形態では、アルバレスレンズは、カメラに組み込まれる。さらなる実施形態では、カメラは、モバイルフォンカメラである。一実施形態では、アルバレスレンズは、視力向上レンズ(たとえば、眼鏡)に組み込まれる。
【0044】
そのような第2のメタ表面は、たとえば焦点の非線形な変化を実現するためにメタ表面の中心光軸に対して動くように構成することができる。一実施形態では、コントローラは、メタ表面および第2のメタ表面を運動の発生源などで動かして、組み合わせた光学要素の光パワーを変えるように構成される。
【0045】
一実施形態では、システムは、屈折レンズを含む。一実施形態では、屈折レンズの光軸は、メタ表面の光軸と同軸上に位置決めされる。
図9を参照して本明細書でさらに議論されるように、魚眼レンズなどといった、屈折レンズは、オフアクシス撮像に関連する画像品質低下を減少させるのに好適な場合があり、その場合、光源の中心軸はメタ表面の光軸と同一直線上にない。
【0046】
方法
別の態様では、本開示は、メタ表面および光検出器で画像を生成する方法を提供する。一実施形態では、メタ表面は、本明細書に記載される任意のメタ表面である。一実施形態では、メタ表面は、本明細書に記載されるようなシステムの部分である。実施例に記載されるように、拡張焦点深度で光を合焦するものなどといった、本開示のメタ表面で生成される画像は、たとえばより狭い焦点に光を合焦するメタ表面よりも、より小さい色収差を有する画像を生成するのに適している。したがって一実施形態では、本開示の方法で使用するのに好適なメタ表面は、第1の屈折率を有し正方形のパターンで基板上に配置される第1の材料を備える複数のポスト、および、第1の屈折率より小さい第2の屈折率を有する間隙物質を備える複数のポストの個々のポスト間の間隙を含み、複数のポストのポストの直径は、メタ表面の光軸の周りで回転非対称で変わる。
【0047】
一実施形態では、方法は、メタ表面を通過した光に基づいて光検出器で複数の信号を生成するステップと、複数の信号を計算によって再構築して、複数の計算によって再構築した信号を提供するステップと、複数の計算によって再構築した信号で、光検出器によって吸収した光に基づいて画像を生成するステップとを含む。上記のように、一実施形態では、複数の信号を計算によって再構築するステップが、ウィーナフィルタなどで複数の信号をデジタルでフィルタ処理するステップを含む。一実施形態では、複数の信号を計算によって再構築するステップが、全変動正則化器で複数の信号をデジタルでフィルタ処理するステップを含む。
【0048】
一実施形態では、方法は、理想的なメタ表面のレンズ動作からのメタ表面の合焦挙動の逸脱を考慮して逸脱を打ち消すため、複数の信号をデコンボリューションするステップを含む。
【0049】
(実施例)
(実施例1)
本実施例は、全可視領域にわたる広帯域の白色光照明の下で高品質画像を生成することができる、単一のメタ表面および計算的に安価なデジタルフィルタを備えるフルカラー撮像システムを実現するため、計算による後処理と組み合わせて使用する光学的ハードウェアを記載する。
【0050】
結果
線形でシフト不変である光学システムの3D点像分布関数(PSF)は、完全にその挙動を特徴付ける。光学システムの画像平面において、2D PSFは、システムの幾何形状および収差に関係するサイズおよび形状を有する点光源の画像に対応する。波長が変わると、画像センサの位置が固定されるために、キャプチャした画像中の色に依存するぼけを引き起こす色収差に起因して画像平面がシフトする。メタ表面光学系では、この焦点シフトは、光の波長に反比例し、多色画像を著しくぼけさせる。全可視領域にわたって不変であるPSFでメタ表面を設計することによってこのぼけを低減する。これは、拡張焦点深度(EDOF)を実現するために位相マスクを使用して光の波面を符号化することによって達成された。このEDOFによって、不鮮明な焦点の深度にわたって空間周波数情報を保存することに起因して、システムが焦点のシフトに対して耐性をもつ。これは、入射光がより大きい体積にわたって広がると、信号対雑音比(SNR)が減ることとキャプチャした画像がぼけることのトレードオフをもたらすが、波長依存性のぼけを有する単純なレンズと異なり、EDOFシステムは、広い周波数帯にわたりスペクトル的に不変のぼけを有することができ、その帯域幅は焦点深度とともに増加する。引き起こされるぼけがスペクトル的に不変であることによって、高品質画像を取り出すための、単一の波長非依存性フィルタでの後処理が可能になる。
【0051】
波面の符号化のための2次位相マスクの要件によって、システムのサイズおよび複雑さが増える。さらに、これらの位相マスクは、本質的に自由形状であることが多く(すなわち、回転非対称または高次多項式によって特徴付けられる)、回折要素を作るためのダイアモンド旋盤加工およびマルチステージリソグラフィなどといった伝統的な手段では製造するのが困難である。メタ表面ベースのシステムは平坦な性質を有するが、単一のリソグラフィステージを使用して、小型で均一な厚さのデバイスに自由形状の要素を変換することができる。この設計の自由度によって、レンズ機能性と波面の符号化機能性を単一の要素に組み合わせることも可能になる。様々な異なる波面符号化マスクがEDOFを作ることができる。典型的には、これらのマスクは、広い範囲にわたる非回折ビームを生成し、レンズと組み合わせて、細長い焦点を作ることができる。3次関数は、それらが簡単で矩形の分離特性をもつために、通常の選択である。さらに、単項式である位相マスクについて、マスク関数が3次である場合にだけ、変調伝達関数が焦点ずれ(たとえば、色焦点シフト)に対して影響を受けないということが、光学的伝達関数を表す曖昧度関数に適用される定常位相方法によって示されうる。こうした波長に影響を受けないこと、および拡張焦点深度システムでそれらが幅広く使用されることの結果として、3次位相項をこの仕事で同様に使用するよう選択した。ここで、次式の形の位相で焦点深度を増加するため、光を合焦することと波面を符号化することを同時に行うことができる単一の要素を設計した。
【0052】
【0053】
上式で、xおよびYは平面内の座標であり、λは動作波長であり、fは定格焦点距離であり、Lはアパーチャ幅の半分であり、αは3次位相の範囲を表す。2つのメタ表面を設計した。1つは、単純なレンズである、α=0を有し、1つは、EDOFを有する、α=55πを有する。両方のデバイスは、550nmにおいて、200μmの定格焦点距離を有する。我々のデバイスは、400nmの周期を有する正方格子上に位置決めされる二酸化ケイ素基板の上の、厚さ633nmの円筒形窒化ケイ素のナノポストからなる(
図1Aおよび
図1B)。ナノフィンまたはV字型アンテナではなくナノポストとした我々の選択によって、偏光に依存しない挙動が可能になる一方で、窒化ケイ素の高いバンドギャップによって、透明な動作と可視帯域にわたる高い効率が可能になる。各ナノポストは、低いQ値の共振を誘起する、低い反射率の上部および底部界面を有する先を切断された導波体を再現する。入射光がナノポストによって支持されるモードへと結合し、次いで、光を伝送自由空間モードに結合する前に、光の位相をシフトする。直径を調整することによって、ナノポストによって支持されるモード構造を変えて、モードの全体挙動を変化させ、異なる位相シフトを誘起する。広帯域の可視領域動作(400~700nm)に関心があることに起因して、我々のナノポストでは、550nmの中心定格設計波長を選択した。厳密結合波分析(RCWA)によるポストの直径の関数としての伝達係数をシミュレーションした(
図1C)。伝達係数は、広い範囲にわたって、位相で2π以上の変化および均一な振幅を呈している。我々のメタ表面の設計では、0~2πの間に10の異なる位相ステップの組を使用して、共振による落ち込みから離して直径を選択することによって振幅の低下を回避した。波長の関数として性能を分析するために両方のメタ表面をシミュレーションした。
図1Dおよび
図1Eは、それぞれ、α=0およびα=55πの設計についての色焦点シフトを示し、黒い点線は、所望の焦点面を示す。α=0では緑の光(550nm)だけが焦点が合っている一方、α=55πではすべてのシミュレーションした波長がEDOFの部分として所望の面に当たることがわかる。メタ表面は、電子ビームリソグラフィおよびドライエッチングを使用して製造した。
図1Fおよび
図1Gは、最終デバイスの光
学画像を示す。製造したα=0のレンズおよびα=55πのレンズは、既存の可視波長メタレンズと同等の、試験した波長についてそれぞれ63%と57%の合焦効率の平均測定値を呈示する。以降では、α=0のメタ表面をシングレットメタレンズ、α=55πのメタ表面をEDOFメタレンズと表す。
【0054】
我々の計算撮像システムは、行列式f=Kx+nの問題を提起し、ここで、所望の画像xは、システムカーネルKによってぼけさせられ、ノイズnによって乱されて、キャプチャした画像fを生成する。線形ウィーナフィルタまたは正則化最適化ベースの手法などといった、様々な異なる方法がxを推定するために利用可能である。この仕事では、計算の複雑さが低いことに起因してウィーナフィルタを選択する。さらに、再構築した画像品質が、より進んだデコンボリューション方法のものと同等である。画像をフィルタ処理するために必要であるため、較正PSF測定値によってカーネルKを得る。赤(625nm)、緑(530nm)、および青(455nm)のLED照明について、シングレットメタレンズとEDOFメタレンズの両方で、PSFを測定して、変調伝達関数(MTF)を計算した(
図2A~
図2H)。シングレットでは、緑の照明でのしっかり合焦したスポットが、赤および青の照明下の大きいぼけとは劇的に異なり、これらの照明条件下のMTFにおける大きい差異に変換されている。この設計では、赤および青の波長についてのMTF中のゼロが、空間周波数情報の回復不能な損失をもたらし、計算による再構築を不可能にする。しかし、EDOFメタ表面では、MTF波長不変であるだけでなく、カットオフ空間周波数まで、ゼロももたない。こうした空間周波数成分を保持することによって、所望の画像xを取り出すための計算による再構築が可能になる。
【0055】
システムの撮像能力を呈示するため、数センチメートルの程度の焦点距離よりもはるかに長い物体距離で、標準的なプリンタ用紙上にパターンを照射した。次いで、メタ表面は、散乱光を合焦することによって画像を形成した。最初に、LEDでの別個の赤(625nm)、緑(530nm)、および青(455nm)の照明下で、狭帯域(約30nm帯域幅)の撮像性能を試験した。
図3C~
図3Eは、シングレットレンズによる1951空軍解像度チャート(
図3A)の一部のキャプチャした画像を、デコンボリューションありおよびデコンボリューションなしのEDOFレンズによるものと比較する。パターンは緑の光では焦点が合っている一方で、青または赤の照明に切り換えると、シングレットによってキャプチャした画像はひどい歪を受ける。デコンボリューションなしのEDOFレンズでは、画像はすべての波長でぼけるが、ぼけは波長にわたって均一に現れる。しかし、キャプチャ後デコンボリューションありでは、結果として得られる画像は、すべての波長で焦点が合って現れ、シングレットのものに対して色収差が大きく減少した、かなりの性能改善を実現する。空軍パターン画像の構造的類似性(SSIM)の点で、この性能改善を数量化した。デコンボリューションしたEDOFシステムの画像は、α=0のシステムのものと比較して、0.209高いSSIMを有した。白黒の2値モナリザパターン(
図3Bおよび
図3F~
図3H)を含むより複雑なパターンも撮像し、EDOFレンズを使用して色収差の低減をやはり観察した。我々のデコンボリューションした画像のSNRは、シングレットメタレンズでの合焦した緑の画像のものと比較して低い一方で、我々のシステムは、広い波長範囲にわたって合焦した画像を呈する。我々の実験的な設定と同等の微小光撮像シナリオに最適化した計算アルゴリズムと組み合わせれば、撮像性能をさらに改善することができる。
【0056】
最終的に、白色光源を使用した広帯域照明下でシステムを試験した(
図4Aおよび
図4B)。この条件下で、シングレットレンズは、カラー印刷したRGBテキストをかなりぼやけさせ(
図4A)、レンズが緑の光に合焦するように位置決めされたとき、緑の文字Gについては著しくよい画像品質であった。
図4Aは、同じ対象パターンをEDOFレンズでキャプチャすることにより形成されたRGBテキストのスペクトル的に均一なぼけをやはり示す。デコンボリューション後は各個々の記号を明瞭に認識することができるが、シングレットレンズで直接キャプチャした画像では、青Bはぼやけ、赤Rは判読できない。デコンボリューションした画像は、指向性のアーティファクトを生成する場合があるPSFの非対称な形状から生じる、いくつかの誤った水平線および垂直線を呈するが、これらは、より進んだデコンボリューションならびに回転対称PSFを使用することにより補正することができる。
図4Bは、ROYGBIVテキストについての同様の画像品質改善を呈示しており、記号は、シングレットメタレンズによってかなりぼやけさせられるが、EDOFデバイスでキャプチャしデコンボリューションした後は焦点が合う。虹パターン(
図4C)の場合には、シングレットによって引き起こされる色のぼけが、個々の色の帯を不明瞭にし緑のストライプがかろうじて明らかであるが、デコンボリューションしたEDOF画像は別個の帯およびエッジを明瞭に示す。多色の花および葉を有する風景画像(
図4D)の場合には、デコンボリューションしたEDOF画像中では、シングレットによってひどくぼやけさせられた茎および葉の構造が合焦し、花の色のリンギングアーティファクトが低減される。
【0057】
議論
アクロマチック帯域が狭いまたはカラー画像を生成するために離散的な波長の画像が重ね合わされる場合のメタ表面設計と比較して、我々の知る限り、直接白色光で、合焦した全可視スペクトル撮像を呈示するのは、我々が最初である。この挙動は
図4A~
図4Dで観察され、単一の画像がキャプチャされると、デコンボリューション後、赤、緑、および青の光が合焦するだけでなく、黄色、橙色、および紫色などといった、中間色も合焦する。さらに、我々のメタレンズは、様々な異なる幾何形状および材料を使用するように拡張できる簡単な透過型散乱体に依拠する一方、既存の広帯域アクロマチックメタレンズは、注意深く設計した分散特性を有する散乱体を必要とする。しかし、我々のシステムでは、我々の修正した位相マスクを組み合わせたデジタルフィルタが、広帯域な色の撮像を可能にし、必要な後処理は、システムを複雑にして、キャプチャした画像をデコンボリューションするのに遅延時間をもたらす。多くの写真およびビデオ用途で、このことは、問題の原因とならない。というのは、任意のキャプチャしたフレームをセーブし、次いでオフラインでデコンボリューションすることができるためである。実時間の撮像では、我々のシステムは、やはり働くことになる。というのは、我々のフィルタは、FPGAまたはGPUによって加速できるO(NlogN)高速フーリエ変換アルゴリズムに依拠するためである。そのようなハードウェア加速技法は、追加回路を必要とし、システムの複雑さを増して、所与の用途について設計者がシステム要件と費用の釣り合いをとることが必要になる。我々が実装したシステムは、我々の小さい(200μm)焦点距離およびアパーチャ幅から生じる空間帯域幅積が制限されることからも影響を受ける。典型的には、光学システムの空間帯域幅積は、システムの寸法がスケールダウンし、画像中の情報容量および解像可能な点の数が減ると減少することになる。我々のメタレンズの小さいアパーチャは、光収集をやはり制限し、このことがSNRを減少させて、より強い入射パワーまたは露出時間を増やすことが必要になる。しかし、これらの制限は、我々のハイブリッド型光デジタルシステムに固有ではなく、その代わり、我々の短い焦点距離から生じ、同じ長さのスケールにおける任意の実装に存在することになる。
【0058】
報告したシステムは、計算による撮像と約0.45のNAを有するEDOFメタ表面を組み合わせて、最小の色収差で完全な可視スペクトル対象パターンを撮像して、我々のデバイスを顕微鏡検査、ハイパースペクトル撮像、および極薄カメラに好都合にしている。我々の知る限り、今日までで、以前の最も短い値と比較して、焦点距離で2.4X以上低減させた、最も短い焦点距離メタ表面でやはり撮像している。本システムは、幾何収差と競わなければならないが、これらは、(たとえば、メタ表面を積み重ねることによる)光学要素のさらなる相互最適化および後処理アルゴリズムによって回避することができる。光学メタ表面と計算による撮像を組み合わせることにおいて、この仕事は、ハイブリッドシステムを設計するためのモデルを提供しており、光学的ハードウェアとソフトウェアが一緒に高品質画像を生成する一方で、システムサイズおよび複雑さを最小化する。
【0059】
画像品質への3次位相強度αの影響
焦点深度と結果として得られる画像の信号対雑音比(SNR)との間にトレードオフがあるため、画像品質へのαパラメータの影響を分析した。広い範囲のα値を有するEDOFメタ表面の組を製造した。
図10Aは、異なるα値を有する4つのレンズ設計を使用してキャプチャおよびデコンボリューションした白色光画像の組を示す。α=0の設計が、チューリップ画像での明らかなカラーリンギング、RGBテキストおよびROYGBIVテキストでの歪、ならびに虹パターンでのエッジのぼけを有する一方、これらのアーティファクトは、非ゼロαでの撮像およびデコンボリューションのときには低減される。α=20πの場合、最大強度の合焦画像が見られるが、黄色であるべきだが緑に見える、長い茎構造を有するチューリップ画像に明らかな、いくつかの色収差が依然として存在する。より大きいαに推移すると、強度でははっきりと低下があるが、リンギングアーティファクトのいくつかは減少し、チューリップの茎は、均一に黄色に見える。
図10Bは、3つの異なるα値のレンズについて、緑の光の変調伝達関数(MTF)を比較して所与の波長についてSNRの減少を呈示する。SNRの減少は、より大きいαにおけるMTFの値がより低いことから明らかである。MTFは、どのくらい効率的に空間周波数情報が物体から画像に伝達できるかに関係するために、より低いMTFが、より小さいSNRに変換する。ここで、α=0レンズは、緑の光で合焦するように位置決めされ、広いMTFを実現するが、この設計波長から遠い波長で照明された場合、
図2Dのように、そのスペクトルにおいてゼロを有するかなり狭いMTFを見ることになる。
【0060】
異なるデコンボリューション方法での画像比較
ウィーナデコンボリューションを使用することに加えて、全変動(TV)正則化器を使用した最適化などといったより進んだ後処理アルゴリズムを我々のシステムでやはり試験した。最適化問題は次式のようである。
【0061】
【0062】
上式で、TVは、全変動正則器を示し、Kは測定したカーネルであり、fは修正しないキャプチャした画像、λは雑音低減とデコンボリューションの間のバランスを制御するパラメータであり、xは潜像である。分割ブレグマン方法を使用して問題を解決するオープンソースコードを使用してこの最適化を実施した。我々の画像は、典型的には、約20回の繰り返しの後に解決策へと変換することになり、これは単一の画像について平均で55.5秒かかる。しかし、我々のウィーナフィルタでは、画像品質は同等であって、平均で画像当たり単に0.56秒かかった。これは、2桁の速度上昇を表す。
図11A~
図11Dは、両方の方法を使用してデコンボリューションした画像を呈示しており、TV正則化方法についてのノイズおよび画像の鮮鋭度へのλパラメータの影響を示す。より小さいλでは、デコンボリューションした画像はノイズがより小さいが、鮮鋭度が低いエッジを有する。λを大きくすると、エッジがより強調されるが、ノイズもより目立つようになる。TV正則化手法は、かなりの品質の画像をもたらし、ノイズと滑らかさの微調整制御を可能にする一方で、同等の画像品質を有する線形ウィーナフィルタの簡単さおよび相対的な速度によって、線形ウィーナフィルタを使用するのが正しいと判断した。
【0063】
画像の構造的類似性により色不変性を査定する
異なる照明波長の下で我々が設計したフルカラーシステムでキャプチャした画像間の不変性のレベルを査定するため、比較のための定量化できる測定基準が必要であった。画像品質を査定し、基準の「完全な」画像に対して試験画像を評価するための標準的な技法は、構造的類似性(SSIM)である。この測定基準は、画像の
【0064】
【0065】
および
【0066】
【0067】
方向の平均、分散、および共分散(σxy)の計算に基づいた、ルーマ、コントラスト、および構造成分の重み付け組合せ関数を使用する。我々の計算で使用される式を下に示す。
【0068】
【0069】
上式で、C
1=(k
1L)
2、C
2=(k
2L)
2、Lは画素値のダイナミックレンジであり、k
1=0.01、k
2=0.03である。0のSSIMは、ゼロ類似性を意味し、1のSSIMは、試験画像が正確に基準と一致することを意味する。
図3A、
図3C、
図3D、および
図3Eの、我々の空軍試験チャート画像の場合についてSSIMを計算した。ここで、色収差の概念を獲得するため、とても離れた波長で照明されるときに、どのように同様の画像が現れて見えるのかに関心があった。これを試験するため、α=0レンズを用いて、青の光でキャプチャした画像を、赤の光でキャプチャした画像と比較し、赤の光の画像を基準として取り扱った(
図3A)。この計算によって、0.748のSSIMがもたらされた。
図3Cの画像についてこの計算を繰り返して、EDOFキャプチャした画像およびデコンボリューションした青の光の画像をその赤の基準画像と比較した。この場合、0.956のSSIM、すなわちSSIMにおいて実質的に0.209の改善となり、EDOFレンズおよびデコンボリューションを用いて、シングレットメタ表面システムと比較してはるかに色収差を減らした画像を達成することができる。
【0070】
非ゼロ発生源帯域幅を有する理論的MTFと実験的MTFの比較
我々のPSFを測定し、LED発生源によって作られるインコヒーレント光を使用して撮像した。しかし、LEDは、システムのMTFの空間カットオフ周波数を減らす無視できない帯域幅を有する。我々のシステムの性能をよりよく理解するため、530nm波長(我々の測定で使用した緑のLEDの中心波長)を使用して、我々のシングレットレンズおよびEDOFレンズの測定したMTFを、同じ焦点距離およびアパーチャ幅の回折限界シングレットレンズのものと比較した。このMTFには解析的な解決策が存在し、便宜のために下に提供する。
【0071】
【0072】
上式で、
【0073】
【0074】
およびrはアパーチャ半径、λは波長、z
iは画像距離である。このMTFは、システム解像度への発生源帯域幅の影響を理解するために、本明細書の別のところに示される我々のメタレンズについての測定したMTF、ならびにシミュレーションしたシングレットレンズMTFを加えて、
図12にプロットされる。MTFをシミュレーションするために、レーリーゾンマーフェルト回折積分を解くために以前と同じ角スペクトル伝搬関数を使用して、結果として得られる焦点からMTFを計算した。0nm発生源帯域幅では、我々のシミュレーションしたMTFは、解析的回折限界解法と厳密に一致する。しかし、30nm(我々の実験で使用した緑のLEDの帯域幅を近似する)のFWHMを有する発生源では、カットオフ周波数は、900サイクル/mm近くへとかなり下がった。緑の光の照明についての我々の測定したMTF(
図2A~
図2Hから再生成されるデータ)は、我々の位相プロファイルすなわち0~2πの範囲中の10個の(連続的とは反対に)離散的な位相ステップの離散的空間サンプリングに起因するこの理想的な30nmのシミュレーションよりも低いカットオフ周波数を有しており、我々の焦点を測定するときに我々の散乱体設計を使用する合焦誤差および製造上の不完全さがある。
【0075】
オフアクシスメタレンズ性能
通常の入射における我々のデバイスの性能を分析することに加えて、オフアクシスで照明されるときのデバイスの性能をやはり検査した。これらのシミュレーションでは、レーリーゾンマーフェルト回折積分を解くために以前と同じ角スペクトル伝搬関数を使用したが、代わりに、横成分を有する波ベクトルを有する平面波で要素を励起した。
図13A~
図13Fは、0°、5°、および10°の照明角度についてシングレットメタレンズとEDOFメタレンズの両方についての、シミュレーションした強度断面積を示す。これらのシミュレーションから、オフアクシス照明で焦点の拡張がやはり生じることを観察した。しかし一般的に、EDOFメタレンズがオフアクシスで撮像できる一方、キャプチャした画像品質を下げることになる幾何収差を受ける。我々の設計は、色収差を減らすことに焦点を合わせているため、オフアクシス撮像には最適化されない。我々の方法を、魚眼レンズでのスタック設計を使用するなどといった、幾何収差を減らすための技法と組み合わせると、この画像品質の低下を緩和することができる。
【0076】
方法
設計およびシミュレーション
ポストの直径が変えられると、全可視領域(400~700nm)にわたる波長で0~2πの位相を与えるように、ナノポストが設計された。
図5は、厳密結合波分析(RCWA)シミュレーションによって計算された、400nm、550nm、および700nmにおける3つの代表的な波長についての伝達振幅および位相を示す。窒化ケイ素のポストと二酸化ケイ素基板の両方で使用される屈折率は、分散を考慮された。位相プロファイルを実施するのに単位セル近似を使用させることを可能にする、弱く結合したポストを設けるナノポスト設計を確かにするために、直径の関数としての伝達振幅(
図6A)および位相(
図6B)は、格子定数の広い範囲にわたり位相が最小の変化を示すよう、格子定数が掃引されるようにシミュレーションされた。メタ表面を公称で550nm用に設計するため、RCWAデータは、所与の位置における位相を、最も正確に所望の位相をもたらすポストの直径にマッピングするためのルックアップテーブルとして働いた。我々の設計の空間的範囲が大きいことに起因して、我々のデバイスの完全有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを実施するには、メモリ要件が、我々が利用可能な計算リソースを超えた。そのため、RCWAで計算した伝達係数が使用され、メタ表面は、複雑な振幅マスクとしてモデル化され、さらにその性能が、角スペクトル伝搬関数を使用してレーリーゾンマーフェルト回折積分を評価することによってシミュレーションされた。
【0077】
製造
一実施形態では、プラズマ促進化学気相堆積によって、窒化ケイ素の633nmの膜が、融解石英ウェハ基板上に最初に堆積された。ウェハは、一時的に、保護用フォトレジスト相でコートされ、より小さい部片へとダイシングされ、その後アセトンおよびイソプロピルアルコール中での音波処理によって洗浄された。次いで試料は、ZEP-520Aでスピンコートされ、その後、電荷消散層として8nmのAu/Pdをスパッタした。試料は、JEOL JBX6300FS電子ビームリソグラフィシステムを使用して露光され、TFAタイプ金エッチャントによって電荷消散層が除去された。酢酸アミル中で現像した後、試料上にアルミニウムの層が蒸着され、リフトオフを実施した後、後続のエッチングのためのアルミニウムハードマスクが窒化ケイ素層上に残された。試料を、CHF
3とO
2の化学物質で、誘導結合プラズマエッチャーを使用してエッチングし、残ったアルミニウムを、AD-10フォトレジスト現像機で浸漬することによって除去した。製造したデバイスの走査型電子顕微鏡写真が
図7Aおよび
図7Bに提示される。
【0078】
デバイス特性
製造したメタ表面の焦点面は、
図8に提示される実験的設定によって特徴付けられた。ファイバ結合LEDからの光が試験中のメタ表面を照射し、平行移動可能なステージ、対物レンズ、結像レンズ、およびカメラから組み立てられた特別製の顕微鏡がデバイスの焦点面のスナップショットを撮る。効率を測定するために(
図14)、同じ設定に、フリップミラー、ピンホール、および光検出器(Newport 818-SL)を追加して使用した。効率は、焦点面におけるパワーと入射ビームのパワーの比を考慮して計算された。入射ビームのパワーは、メタレンズの幅と等しい領域を撮像するために設定されるピンホール開口を有する1個のガラスを通してパワーを測定することによって見出された。カメラは、レンズキャップを装着して一連の較正画像を撮ることによって、暗雑音を補正した。レンズの変調伝達関数(MTF)は、フーリエ変換しその後測定した焦点の振幅を考えることによって決定された。
【0079】
撮像
画像は、
図9に示した設定を使用してキャプチャされた。ファイバ結合したLEDからの光が、標準的な8.5インチx11インチの紙に印刷されたパターンにオフアクシスで入射する。印刷したパターンから散乱された光を合焦することによって、メタ表面がその焦点面近くに画像を生成し、対物レンズ、結像レンズ、およびカメラからなる平行移動可能な顕微鏡がこの画像をキャプチャする。画像キャプチャの前に、レンズキャップを装着して一連の画像を撮った後に、カメラの暗雑音が減算される。
【0080】
本開示の目的での、「上」「下」「垂直」「水平」「内向き」「外向き」「内側」「外側」「前」「後」などの用語は、記述的であって、特許請求する主題の範囲を限定しないと考えるべきであることに留意されたい。さらに、本明細書での「含む(including)」「備える、含む(comprising)」または「有する(having)」およびそれらの変形体の使用は、その後に挙げられる項目およびそれらの等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。別段に制限されない限り、本明細書での「接続した」「結合した」および「取り付けた」という用語およびそれらの変形体は広義に使用され、直接および間接の接続、結合、および取付けを包含する。「約」という用語は、言及した値のプラスマイナス5%を意味する。
【0081】
本開示の原理、代表的な実施形態、および動作モードが、上の記述中に記載されている。しかし、保護されることが意図される本開示の態様は、開示される特定の実施形態に限定されると考えるべきでない。さらに、本明細書に記載される実施形態は、限定ではなく、例示と考えるべきである。本開示の精神から逸脱することなく、他人が変形形態および変更形態を作れることならびに等価物を採用できることが理解されよう。したがって、すべてのそのような変形形態、変更形態、および等価物が、特許請求されるような本開示の精神および範囲に入ることが、明確に意図される。
【0082】
例示的な実施形態を図示し記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更をそこに行えることが理解されよう。
【0083】
排他的特性または特権が主張される本発明の実施形態が以下のように規定される。