IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロケット フレールの特許一覧

特許7328233オリゴカーボネートポリオールを使用して合成したマルチブロックポリマー
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】オリゴカーボネートポリオールを使用して合成したマルチブロックポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/18 20060101AFI20230808BHJP
   C08G 63/64 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G64/18
C08G63/64
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020542204
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 FR2018052502
(87)【国際公開番号】W WO2019077230
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】1759693
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク コルパール
(72)【発明者】
【氏名】ルネ サン-ルー
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506645(JP,A)
【文献】国際公開第2012/108492(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/157661(WO,A1)
【文献】特開平04-248833(JP,A)
【文献】特開2013-108074(JP,A)
【文献】特開平02-014273(JP,A)
【文献】特開2013-010948(JP,A)
【文献】特開2013-018979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/18
C08G 63/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートブロックを有するマルチブロックポリマーを製造するためのプロセスであって:
・ 工程(1)、反応器の中に以下のものを導入する工程:
- 式(A1)のモノマー:
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は、式(A2)のダイマー:
【化2】
(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は(A1)と(A2)との混合物;
・ 工程(2)、前記反応器の中に、ジオールモノマー(B1)又はトリオールモノマー(B2)、又は(B1)と(B2)との混合物を導入する工程(ここで、(B1)及び(B2)は共に、(A1)及び(A2)とは異なる);
- 前記反応器の中での、(A1)及び(A2)の、(B1)及び(B2)に対するモル比は、次式に従う:
【数1】
・ 続く工程(3)、モノマー及びダイマーの(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)をエステル交換により重縮合させて、5000g/mol未満の数平均分子量(Mn)、及び少なくとも2個のヒドロキシルタイプの鎖末端基を有するオリゴカーボネートポリオールを得る工程、
・ 工程(4)、前記オリゴカーボネートポリオールを回収する工程、
・ 工程(5)、前記オリゴカーボネートポリオールを以下のもののいずれかと反応させる工程、
- 芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び
- ジオール又はジアミンから選択される1種又は複数種の化合物、
又は:
- 1種又は複数種のオリゴエーテルジオール、及び
- 1種又は複数種のカップリング剤
の工程を含む、プロセス。
【請求項2】
工程(1)において、前記モノマー(A1)を、単独又は前記ダイマー(A2)との混合物として、前記反応器の中に導入することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記反応器の中での、(A1)及び(A2)の(B1)及び(B2)に対するモル比で、次式、
【数2】
が、1未満且つ0.5より大であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
、R、R、及びRが、独立して、1~10個の炭素原子を含むアルキル基から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記モノマー(A1)が、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ジオールモノマー(B1)及び前記トリオールモノマー(B2)が、脂肪族ジオール又はトリオールから選択され、それらが具体的には、直鎖状若しくは分岐状、又はそうでなければ環状、芳香族、若しくは非芳香族のジオール又はトリオールであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ジオール(B1)が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、及び1,10-デカンジオールから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ジオール(B1)が、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、又は2-メチル-1,3-プロパンジオールから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ジオール(B1)が、以下の環状脂肪族ジオール
・ ジアンヒドロヘキシトールたとえば、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディド;
・ シクロヘキサンジメタノールたとえば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール;
・ トリシクロデカンジメタノール;
・ ペンタシクロペンタンジメタノール;
・ デカリンジメタノールたとえば、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、及び2,3-デカリンジメタノール;
・ ノルボルナンジメタノールたとえば、2,3-ノルボルナンジメタノール、及び2,5-ノルボルナンジメタノール;
・ アダマンタンジメタノールたとえば、1,3-アダマンタンジメタノール;
・ シクロヘキサンジオールたとえば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジオール;
・ トリシクロデカンジオール;
・ ペンタシクロペンタデカンジオール;
・ デカリンジオール;
・ ノルボルナンジオール;又は
・ アダマンタンジオール;
から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(3)が、エステル交換による重縮合のための触媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記モノマー(A1)及び前記ダイマー(A2)の量に対する前記触媒のモル量が、10-7%~1重量%の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(3)が、不活性雰囲気下、たとえば窒素下で実施されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
工程(3)の少なくとも一部が、100℃~250℃の範囲の温度で実施されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記1種又は複数種のジオールが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビドから選択され、及び二酸が、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸、マレイン酸、又はフマル酸から選択されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
工程(5)が、前記オリゴカーボネートポリオールを、芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び1種又は複数種のジオールと反応させて、ポリ(エステル-b-カーボネート)を形成させる工程であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記1種又は複数種のジオールが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及びイソソルビドから選択されることを特徴とする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記1種又は複数種の追加の二酸が、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸、マレイン酸、及びフマル酸から選択されることを特徴とする、請求項15又は16に記載のプロセス。
【請求項18】
工程(5)が、前記オリゴカーボネートポリオールを、芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び1種又は複数種のジアミンと反応させて、ポリ(アミド-b-カーボネート)を形成させる工程であることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記1種又は複数種のジアミンが、1,4-ジアミノブタン(プトレッシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、ルシフェリン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、及び1,8-ジアミノナフタレンから選択されることを特徴とする、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記1種又は複数種の二酸が、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸、マレイン酸、又はフマル酸から選択されることを特徴とする、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項21】
工程(5)が、前記オリゴカーボネートポリオールを、
- 1種又は複数種のオリゴエーテルジオール、及び
- 1種又は複数種のカップリング剤、
と反応させて、ポリ(エーテル-b-カーボネート)を形成させる工程であることを特徴
とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記1種又は複数種のカップリング剤が、2個の、イソシアネート、イソシアヌレート、ラクタム、ラクトン、カーボネート、エポキシ、オキサゾリン、又はイミド官能基を含む化合物から選択され、前記官能基が同一であっても、或いは異なっていてもよいことを特徴とする、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記カップリング剤が、ジイソシアネート、又は2個のエポキシ官能基を含む化合物であることを特徴とする、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記オリゴエーテルジオールが、ヒドロキシテレケリックポリエチレンオキシド、ヒドロキシテレケリックポリプロピレンオキシド、ヒドロキシテレケリックポリブチレンオキシド、ヒドロキシテレケリックフルオロ化若しくはペルフルオロ化オリゴエーテル、及びヒドロキシテレケリッククロロフルオロオリゴエーテルから選択されることを特徴とする、請求項21~23のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチブロックポリマー、並びに、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーと他のジオール及び/又はトリオールとの間の、特定の反応条件下、とりわけ使用する化学種の相対量の特定条件下での反応により得られる新規なオリゴカーボネートポリオールを使用するそれらの合成に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアンヒドロヘキシトールを使用することは、それがバイオベースの由来であるので、製造された製品の化石燃料フットプリントを低減させ、多くの従来からの解決法のように、ホスゲンを使用したり、フェノールを発生したりしない(これら2つの反応生成物は、使用者にとって有害であるだけでなく、食品と接触する各種の用途では禁止されている)という点で有利であり、調節された構成の製品が得られ、最終的には、それらの製品を使用することによって、特に摩耗抵抗性、引掻き抵抗性及びUV抵抗性が高いコーティングを製造することが可能となる。
【0003】
ポリ-又はオリゴ-カーボネートジオールは、今日では周知の化学種であり、接着剤のみならず、各種のコーティングたとえば、ペイント、ラッカー、及びワニスの製造において、多くの用途を見出している。それらの周知の用途の一つが、ポリウレタン樹脂タイプのコーティングの製造である。エーテル成分(ポリテトラメチレングリコール)、エステル成分(特に、アジピン酸エステル)、及びポリラクトン成分(なかんずく、ポリカプロラクトンベース)と同じ立場で、ポリカーボネートジオールは、これらポリウレタン樹脂のための出発物質の一つを構成している。
【0004】
エーテルは、加水分解に対しては良好な抵抗性を有しているものの、それらは、光及び熱に対する抵抗性が低い。エステルは、それらと同じ性質に関しては、全く逆の挙動を示す。ポリカプロラクトンに関しては、それらもやはり、加水分解に関連する欠陥を有している。したがって、ポリカーボネートジオールが、現時点では、最終製品での、加水分解、熱、及び光に対する抵抗性の面での長続きする品質を得る目的で最適な妥協点を与えていると認識されている。このことは、とりわけ、まさに上述のような攻撃に晒される外用のペイントのような用途での、ポリウレタンタイプのコーティングでは特に重要である。
【0005】
ポリカーボネートポリオールをベースとするポリウレタンタイプの物質の製造は、今日では、多くの文献に記載されている。例を挙げれば、国際公開第2015/026613号パンフレットには、水圧ポンプのためのピストンシールが記載されているが、前記シールは、ポリウレタンタイプのものであり、ポリカーボネート-イソシアネートプレポリマー、ポリカーボネートポリオール、ジオール、及び硬化剤の間の反応によって得られている。
【0006】
オリゴカーボネートジオールに関しては、それらの合成法もまた、従来技術において広範囲な教示がある。それらの反応生成物は、脂肪族ポリオールを、ホスゲン、ビスクロロカルボン酸エステル、ジアリールカーボネート、それらの環状カーボネート、又はそうでなければジアルキルカーボネートと反応させることにより調製される。これに関しては、文献の米国特許出願公開第2005/065360号明細書を参照されたい。
【0007】
したがって、当業者は、製造するポリ-又はオリゴ-カーボネートジオールの優れた性
能レベルの維持を目指しながらも、今日では、新しい制約、とりわけ環境に関わる制約にも取り組まなくてはならない。化石資源たとえば石油の枯渇やコスト上昇に直面して、短期間で再生可能である生物資源から得られるポリマー物質の開発が、疑いもなく、エコロジー的及び経済的に主たる緊急課題となってきた。この文脈において、ジヒドロキシル化モノマーとしての植物の(ポリ)サッカライドから誘導されるジアンヒドロヘキシトールを重縮合反応において使用することが、石油化学由来のモノマーを置き換えるのに有望と考えられる。
【0008】
ジアンヒドロヘキシトールを取り入れたポリカーボネートジオールを製造するために、いくつかの試みがなされてきた。この点に関しては、文献の特開2014-62202号公報及び特開2014-80590号公報が公知である。第一の出願には、リンベースの化合物、フェノール性化合物、及びポリカーボネートジオールを含む組成物が記載されており、後者は、250~5000の間の数平均分子質量と、少なくとも95%に等しい、ヒドロキシル基と末端基との間のモル比とを有している。第二の出願には、ジオールと、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディドから選択されるジアンヒドロヘキシトールとからなるポリカーボネートジオールが記載されており、それは、NMRで測定して250~5000の間の重量平均分子質量を有していながらも、それと同時に、末端基を合計した数に対して、5%以上のアルキルオキシ又はアリールオキシ末端基の比率を有している。
【0009】
しかしながら、これらの反応生成物はジオールとジアンヒドロヘキシトールとの間の反応により得られるが、ただし、さらにジフェニルカーボネートの存在下でもある。そのために、ポリカーボネートジオールを合成する際にフェノールが発生する。現在では、フェノールは、(その反応生成物について、及び最終用途についての両方で)使用者に有害であるだけではなく、食品と接触する用途では禁止されている反応生成物である。したがって、フェノールの存在は完全に受容不能となっていて、次いでそれを除去するためには蒸留をしなければならない。このことは、上述の2件の特許出願を説明する試験でも明瞭に記述されていることである。
【0010】
欧州特許第2 559 718号明細書もまた公知であり、そこには、イソソルビド、イソマンニド、及びイソイディドから選択されるジオール、他のジオール、並びにジエステルカーボネート、たとえばジフェニルカーボネートの間の並発反応が記載されている。この場合、そのようにしてポリカーボネートジオールが得られるものの、それはまったくランダムな構造を有しているが、その理由は、ジエステルカーボネートの反応性が高いので、それが、ジアンヒドロヘキシトールと他のジオールとの両方に非選択的に反応するからである。その製品の、たとえば加水分解、光、及び熱に対する抵抗性のような最終的な性質は、その構造に直接関係するので、前記ポリカーボネートジオールは、その最終的な構造の関数として変動するような性質を有することになるであろう。このように、性質の調節ができないということは、今考慮している製品の工業的な使用には、適応させることができない。
【0011】
したがって、天然由来のモノマーたとえばジアンヒドロヘキシトールを使用して有利にオリゴカーボネートポリオールを製造するが、ホスゲンを使用することなく且つ反応の際にフェノールを発生させることなく製造し、最後に、それと同時に、合成された反応生成物の構造を調整することが可能となるように製造する目的で、本出願会社は、以下に示すプロセス、すなわちジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーを、他のジオール及び/又はトリオールと反応させて、完全に制御することが可能で、制御された交互構造(alternating architecture)を有するオリゴカーボネートポリオールを得ることからなる、プロセスを開発するのに成功した。ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカ
ーボネート)及び/又はジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーに対して、他のジオール及び/又はトリオールを過剰モル使用することによって、ヒドロキシル末端基を得ることが可能となる。
【0012】
そうすることによって、先に述べた技術的な制約の解決を達成することに成功した。さらには、その最終的に得られたポリカーボネートジオールは、接着剤、並びに各種のコーティングたとえば、ペイント、ラッカー、及びワニスの製造において使用することができる。これらのオリゴカーボネートポリオールは、とりわけ、摩耗抵抗性、引掻き抵抗性、及びUV抵抗性の点で、特に有利な性質を有するポリウレタン樹脂を製造するのに使用することができる。
【0013】
反応に与るイソソルビドビス(アルキルカーボネート)は、特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレットに記載の方法に従って製造するのが有利である。この方法は、少なくとも1種のジアンヒドロヘキシトール、少なくとも2モル当量のジ(アルキル)カーボネート、及びエステル交換反応触媒を反応させることからなっている。従来技術に記載されているプロセスとは異なった、この方法では、人にとって有害であったり、又は環境に対して危険であったりする、いかなる化合物も発生しない。したがって、特許出願の欧州特許第2 033 981号明細書に、合成法が記載されているが、それの欠点は、フェノールが生成することであって、フェノールは、次いで、反応副生物として蒸留除去する必要がある。米国特許出願公開第2004/241553号明細書、及び特開06-261774号公報に関しては、それらは、毒性のあるクロロギ酸エステルの使用をベースとするものであった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、第一の態様においては、本発明は、ポリカーボネートブロックを有するマルチブロックポリマーを製造するためのプロセスに関し、それには以下の工程が含まれる:
・ 工程(1)、反応器の中に以下のものを導入する工程:
- 式(A1)のモノマー:
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は、式(A2)のダイマー:
【化2】

(式中、R及びRは、同一又は異なったアルキル基である)、
- 又は(A1)と(A2)との混合物;
・ 工程(2)、反応器の中に、ジオールモノマー(B1)又はトリオールモノマー(B2)、又は(B1)と(B2)との混合物を導入する工程(ここで、(B1)及び(B2)は共に、(A1)及び(A2)とは異なる);
- 反応器の中での、(A1)及び(A2)の、(B1)及び(B2)に対するモル比は、次式に従う:
【数1】

・ それに続く工程(3)、モノマー及びダイマーの(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)をエステル交換により重縮合させて、5000g/mol未満のモル質量、及び少なくとも2個のヒドロキシルタイプの鎖末端基を有するオリゴカーボネートポリオールを得る工程、
・ 工程(4)、オリゴカーボネートポリオールを回収する工程、
・ 工程(5)、オリゴカーボネートポリオールを以下のもののいずれかと反応させる工程、
- 芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び
- ジオール又はジアミンから選択される1種又は複数種の化合物、
又は:
- 1種又は複数種のオリゴエーテルジオール、及び
- 1種又は複数種のカップリング剤。
【0015】
したがって、工程(5)は、オリゴカーボネートポリオールを、芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び1種又は複数種のジアミンと反応させて、ポリ(アミド-b-カーボネート)を形成させる工程であってもよい。
【0016】
別な方法として、工程(5)が、オリゴカーボネートポリオールを、
- 1種又は複数種のオリゴエーテルジオール、及び
- 1種又は複数種のカップリング剤、
と反応させて、ポリ(エーテル-b-カーボネート)を形成させる工程であってもよい。
【0017】
最後に、工程(5)は、オリゴカーボネートポリオールを、芳香族又は脂肪族二酸から選択される1種又は複数種の二酸、及び1種又は複数種のジオールと反応させて、ポリ(エステル-b-カーボネート)を形成させる工程であってもよい。
【0018】
第二の態様においては、本発明は、本発明におけるプロセスによって得ることが可能なポリカーボネートブロックを有するマルチブロックポリマーに関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「オリゴカーボネートポリオール」という用語は、カーボネート結合を介して結合された、モノマー又はダイマーの反応により形成された繰り返し単位、特には先に述べた繰り返し単位を含み、その中で、鎖末端基がヒドロキシル官能基である各種のポリマーを意味している。これらの繰り返し単位は、上で先に示したように、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)とモノマー(B1)及び/又は(B2)との反応により形成される。
【0020】
本発明の目的のためには、「モノマー」という用語は、このモノマーの混合物にまで拡張される。別の言い方をすれば、「モノマー(A1)」又は「式(A1)のモノマー」という用語は、式(A1)の1種だけのモノマーが使用されるか、又はそうでなければ、式(A1)の各種のモノマーの混合物が使用されるということを意味している。同様の意味合いが、「モノマー(A2)」又は「式(A2)のダイマー」、「モノマー(B1)」又は「式(B1)のモノマー」、或いは「モノマー(B2)」又は「式(B2)のモノマー」などの用語にもあてはまる。
【0021】
先にも説明したように、本発明は、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)と、モノマー(B1)及び/又は(B2)との重縮合によりヒドロキシテレケリックオリゴカーボネートを製造するためのプロセスにも関する。
【0022】
本発明において使用される「1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール」又は「ジアンヒドロヘキシトール」という用語には、イソソルビド(D-グルシトールの脱水により得られる)、イソマンニド(D-マンニトールの脱水により得られる)、及びイソイディド(D-イジトールの脱水により得られる)が包含される。
【0023】
本発明においては、「ジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマー」という用語は、式(A2)の、すなわち、二価のカーボネート官能基を介して互いに結合されたジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートの2つの分子からなる、化合物を意味している。したがって、その化合物には、合計して2個のカーボネート末端基が含まれる。
【0024】
モノマー(A1)及び(A2)
工程(1)において使用されるモノマー(A1)は、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)、イソマンニドビス(アルキルカーボネート)、及びイソイディドビス(アルキルカーボネート)から選択することができる。
【0025】
モノマー(A1)には、1種又は複数種のジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)が含まれていてよいが、1種だけのジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)、特にはイソソルビドビス(アルキルカーボネート)が含まれているが好ましく、このものは、他の2つの立体異性体よりも大量且つ安価に入手することが可能である。
【0026】
モノマー(A1)に存在するアルキル基のR及びRには、1~10個の炭素原子、
特には1~6個の炭素原子、たとえば1~4個の炭素原子が含まれていてよく、最も特には、メチル基及びエチル基から選択される。
【0027】
一つの実施態様においては、そのモノマー(A1)が、イソソルビドビス(アルキルカーボネート)、特にはイソソルビドビス(エチルカーボネート)又はイソソルビドビス(メチルカーボネート)である。
【0028】
モノマー(A1)は、たとえば、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)を製造するための、すでに公知のプロセスを使用して得ることができる。
【0029】
モノマー(A1)は、特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレット(Roquette Freresの名称による)に記載のプロセスに従って、ジアンヒドロヘキシトールを、少なくとも2モル当量のジ(アルキル)カーボネート及びエステル交換反応触媒と反応させることによって調製するのが有利である。大過剰のジアルキルカーボネートを使用することによって、ダイマーの生成を抑制することができる。この方法は、人にとって有害であったり、又は環境に対して危険であったりする化合物を発生しないという利点を有している。
【0030】
モノマー(A1)はさらに、ジアンヒドロヘキシトールとアルキルクロロホーメートと反応させることによっても製造することができるが、これらの反応剤を、1:2のモル比で反応器の中に導入する。このタイプのプロセスは、たとえば、文献の特開06-261774号公報の実施例5に記載されている。本願出願人の見出したところでは、このプロセスに従うと、ジアンヒドロヘキシトールビス(アルキルカーボネート)のみが生成し、ダイマーはまったく生成しない。
【0031】
工程(1)において使用されるダイマー(A2)は、(A1)のダイマーである。使用するジアンヒドロヘキシトールに依存して、ダイマー(A2)の1種又は複数種の「立体配座」が得られる。
【0032】
ダイマー(A2)は、イソソルビドカーボネートダイマー、イソマンニドカーボネートダイマー、又はイソイディドカーボネートダイマーから選択することができる。
【0033】
ダイマー(A2)には、1種又は複数種のジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマーが含まれていてよいが、1種だけのジアンヒドロヘキシトールカーボネートダイマー、特にはイソソルビドカーボネートダイマーが含まれているのが好ましく、このものは、他の2つの立体異性体よりも大量且つ安価に入手することが可能である。
【0034】
ダイマー(A2)に存在するアルキル基のR及びRには、1~10個の炭素原子、特には1~6個の炭素原子、たとえば1~4個の炭素原子が含まれていてよく、極めて特には、メチル基又はエチル基から選択される。
【0035】
一つの実施態様においては、そのダイマー(A2)が、イソソルビドカーボネートダイマー、特には、イソソルビドエチルカーボネートダイマー又はイソソルビドメチルカーボネートダイマーである。
【0036】
ダイマー(A2)は、たとえば、第一の工程において、1モルのジアンヒドロヘキシトールを1モルのアルキルクロロホーメートと反応させて、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートを形成させ、次いで第二の工程において、1モルのホスゲンを2モルの、第一の工程で形成されたジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネートと反応させることにより、製造することができる。
【0037】
モノマー(A1)及びダイマー(A2)を製造することが可能なまた別な方法では、それらの同時合成が可能なプロセスを使用する。詳しくは、本願出願人は、そのような混合物が製造できるプロセスも開発した。そのプロセスは、国際特許出願の国際公開第2011/039483号パンフレットに詳しく記載されている。
【0038】
この調製プロセスには、順に以下の工程が含まれる:
(a)以下のものを含む初期反応混合物を調製する工程:
- 少なくとも1種のジアンヒドロヘキシトール、
- 存在しているジアンヒドロヘキシトールの量を基準にして、少なくとも2モル当量の、少なくとも1種のジアルキルカーボネート、及び
- エステル交換反応触媒、たとえば、炭酸カリウム、
(b)反応混合物から、得られたアルコール、又は反応混合物の中に存在している成分の内の別のものと形成する共沸混合物を分離するのに十分な理論蒸溜段数を有する精留塔を備えた反応器の中で、反応混合物を加熱して、エステル交換反応によって形成されるアルコールR-OHの沸点以上、又は得られたアルコールR-OHが、その反応混合物の中に存在している成分の内の別のものと形成する共沸混合物の沸点以上、最大でもその反応混合物の沸点に等しい温度とする工程。
【0039】
プロセスの最後に得られる溶液には、ジアルキルカーボネートと共に、モノマー(A1)及びダイマー(A2)の混合物が含まれる。蒸留を実施して、ジアルキルカーボネートを含まない、(A1)と(A2)との混合物を回収する。(A1)/(A2)の比率は、初期反応混合物を変化させることにより変えることが可能であり、前記混合物に、反応媒体中に最初に存在していたジアンヒドロヘキシトールの量を基準にして、有利には2.1~100モル当量、好ましくは5~60モル当量、特には10~40モル当量のジアルキルカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートの量が多いほど、(A1)/(A2)の比率が高い。
【0040】
たとえば、本願出願人の見出したところでは、先に記載したプロセス条件の下で、炭酸カリウムの存在下に、イソソルビドとジメチルカーボネートとを反応させることによって、約4(ジアルキルカーボネート/イソソルビド比が10の場合)から約20(ジアルキルカーボネート/イソソルビド比が40の場合)までの範囲の(A1)/(A2)比で、(A1)及び(A2)を含む溶液を得ることが可能となった。
【0041】
次いで(A1)と(A2)とを、真空蒸留技術を用い、たとえば強制薄膜式(wiped-film)蒸発器を使用して分離することができる。
【0042】
(A1)と(A2)とを同時に合成するこのプロセスは、たとえば特開06-261774号公報に記載のプロセスにおいて使用されているアルキルクロロホーメートよりは毒性が低い反応剤を使用するという利点を有しており、合成時の副生物も、クロロホーメートを用いた合成の際に発生する塩素化合物よりは毒性が低い(そのアルキルがメチルの場合にはメタノール、そのアルキルがエチルの場合にはエタノール)。
【0043】
一つの実施態様においては、モノマー(A1)のみが合成される。工程(1)において反応器に導入されるのはこのモノマーのみである、すなわち、反応器の中にはダイマー(A2)は一切導入されない。
【0044】
また別な実施態様においては、モノマー(A1)とダイマー(A2)との混合物が合成される。工程(1)において、この混合物が反応器の中に導入される。
【0045】
モノマー(B1)及び(B2)
ジオールモノマー(B1)及びトリオールモノマー(B2)は、脂肪族ジオール又はトリオールから選択することができるが、それらは具体的には、直鎖状若しくは分岐状、又はそうでなければ環状、芳香族、若しくは非芳香族のジオール又はトリオールである。
【0046】
一つの実施態様においては、そのジオール(B1)又はトリオール(B2)には、2~14個の炭素が含まれる。
【0047】
直鎖状(非分岐状)の脂肪族ジオールは、以下のジオールから選択することができる:エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、好ましくはエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオール。
【0048】
直鎖状の脂肪族トリオールは、以下のトリオールから選択するのがよい:グリセロール、1,2,4-トリヒドロキシブタノール、1,2,5-ペンタンジオール、又は1,2,6-ヘキサンジオール。
【0049】
分岐状の脂肪族ジオール(非反応性の側鎖を担持している)は、以下のジオールから選択することができる:1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、又は2-メチル-1,3-プロパンジオール。
【0050】
環状ジオール又はトリオールには、1個又は複数の環、たとえば2~4個の環、好ましくは2個の環が含まれていてよい。それぞれの環には、4~10個の原子が含まれているのが好ましい。それらの環の中に含まれる原子は、炭素、酸素、窒素、又は硫黄から選択することができる。環の成分原子が、炭素であるか、又は炭素及び酸素であるのが好ましい。
【0051】
芳香族ジオールには、好ましくは、6~24個の炭素原子が含まれる。
【0052】
非芳香族の環状ジオールには、4~24個の炭素原子、有利には6~20個の炭素原子が含まれていてよい。
【0053】
環状脂肪族ジオールは、具体的には以下のジオールから選択することができる:
・ ジアンヒドロヘキシトール、たとえばイソソルビド、イソマンニド、及びイソイディド(バイオベースの複素環式ジオール);
・ シクロヘキサンジメタノールたとえば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール;
・ トリシクロデカンジメタノール;
・ ペンタシクロペンタンジメタノール;
・ デカリンジメタノールたとえば、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、及び2,3-デカリンジメタノール;
・ ノルボルナンジメタノールたとえば、2,3-ノルボルナンジメタノール、及び2,5-ノルボルナンジメタノール;
・ アダマンタンジメタノールたとえば、1,3-アダマンタンジメタノール;
・ シクロヘキサンジオールたとえば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、及び1,4-シクロヘキサンジオール;
・ トリシクロデカンジオール;
・ ペンタシクロペンタデカンジオール;
・ デカリンジオール;
・ ノルボルナンジオール;
・ アダマンタンジオール;
・ スピログリコール;
・ 2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール;
・ ジ-O-メチレン-D-グルシトール、及びジメチル-ジ-O-メチレン-D-グルカレート。
【0054】
芳香族環状ジオールは、具体的には以下のジオールから選択することができる:
・ 1,4-ベンゼンジメタノール;
・ 1,3-ベンゼンジメタノール;
・ 1,5-ジメタノール;
・ 2,5-フランジメタノール;
・ ナフタレン-2,6-ジカルボキシレート。
【0055】
芳香族環状トリオールは、以下のトリオールから選択することができる:ピロガロール、ヒドロキシキノール、フロログルシノール。
【0056】
本発明のプロセスに従って、(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)以外のモノマーを導入してもよい。
【0057】
たとえば、3個以上のアルコール又はアルキルカーボネート官能基を含むモノマーを導入することも可能である。カルボン酸、カルボン酸エステル、及びアミン官能基、又はそれらの官能基の混合したものから選択される数個の官能基を含むモノマーを導入することもまた可能である。その他のモノマー、たとえば、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルカーボネート、3以上の重合度を有する(A1)のオリゴマーを、導入してもよい。
【0058】
その他の反応生成物、又はそうでなければ、たとえばジアンヒドロヘキシトールジアルキルエーテル、ジアンヒドロヘキシトールモノアルキルエーテル、又はジアンヒドロヘキシトールモノアルキルエーテルモノアルキルカーボネート(これらは、(A1)又は(A2)の合成副生物であってもよい)のような反応生成物を導入することもまた可能である。アルコール又はカーボネート官能基と反応することが可能な官能基を1つだけ含んでいる化合物である、鎖停止剤を導入することもまた可能である。
【0059】
しかしながら、反応器の中に導入されるモノマーの合計量に関して言えば、(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)を合計したものが、導入されるモノマーの合計量の、90mol%より大、有利には95%より大、さらには99%より大を占めているのが好ましい。反応器の中に導入されるモノマーが、実質的に(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)のみからなっているのが、極めて好ましい。導入されるジアリールカーボネート及びハロゲン化モノマーの量が、たとえば導入されるモノマーの合計モノマー数の5%未満の量に制限されるのが、明らかに好ましい。特に好ましい実施態様においては、ジアリールカーボネート及びハロゲン化モノマーから選択されるモノマーがまったく導入されない。
【0060】
(B1)及び(B2)に対する(A1)及び(A2)のモル比
反応器の中での、(A1)及び(A2)の(B1)及び(B2)に対するモル比は、次式に従う:
【数2】
【0061】
有利には、上で定義されたような、反応器の中での、(A1)及び(A2)の(B1)及び(B2)に対するモル比は、厳密には、1未満且つ0.5より大、特に厳密には1未満且つ0.7より大、より特に厳密には、1未満且つ0.9より大である。
【0062】
このモル濃度、及び他のジオール(B1)及び/又はトリオール(B2)の過剰量の極めて特殊な選択をした結果、それぞれの鎖末端にヒドロキシル官能基を有するオリゴカーボネートポリオールが得られ、それによって、それらがポリマーたとえば、ポリウレタンの調製に有用なものとなる。
【0063】
その比率が低いほど、得られるオリゴカーボネートのモル質量も小さくなる。
【0064】
導入工程(1)と(2)の順序は、重要ではない。工程(2)の前に工程(1)を実施してもよいし、或いはその逆であってもよい。これら2つの工程を同時に実施することもまた可能である。一つの変法においては、(A1)及び/又は(A2)と、(B1)及び/又は(B2)とのプレミックスを調製し、その後でそれらを反応器の中に導入する。プロセスにおいてダイマー(A2)を使用する場合、それを(A1)との混合物として導入してもよい。この混合は、たとえば、国際特許出願の国際公開第2012/136942号パンフレットに記載の合成プロセスに直接従って実施することができる。モノマー又はダイマーの混合物を導入するような場合には、これらのモノマーのそれぞれの量を、クロマトグラフ法、たとえばガスクロマトグラフィー(GC)によって求めることができる。
【0065】
たとえば、混合物の(A1)及び(A2)の量を求めるためには、成分のそれぞれの量を、トリメチルシリル誘導体の形態にして、GCにより分析を実施することにより、測定してもよい。
【0066】
そのサンプルは、次の方法に従って調製すればよい:ビーカーの中に、500mgのサンプルと、50mgの純度公知のグルコースペンタアセテート(内部標準)とを量り込む。50mLのピリジンを添加し、完全に溶解するまで撹拌を続ける。コップに1mLを採取し、0.5mLのビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドを添加してから、70℃で40分間加熱する。
【0067】
クロマトグラムを作製するには、以下のものを備えたVarian 3800クロマトグラフを使用することができる:
- 長さ30m、直径0.32mmで、膜厚0.25μmのDB1カラム
- ガラスウールを用い、300℃に加熱したFocus Linerを備えた1177タイプのインゼクター、スプリット比;30、ヘリウム流量;1.7mL/分、
- 温度300℃に加熱し、感度10-11に調節したFID検出器。
【0068】
クロマトグラフの中に1.2μLのサンプルをスプリットモードで導入することが可能であるが、カラムは、100℃から320℃まで昇温速度7℃/分になるように加熱してから、320℃で15分間保持する。これらの分析条件下では、(A1)がイソソルビドビス(メチルカーボネート)且つ(A2)が(A1)のダイマーである場合、(A1)が約0.74の相対保持時間、(A2)が約1.34~1.79の範囲の相対保持時間を有
し、内部標準が、約15.5分の保持時間を有する。
【0069】
クロマトグラムを使用すれば、それぞれの成分の質量パーセントは、相当するピークの面積を求め、それぞれの成分について、全部のピーク(内部標準のピークは除く)の合計した面積に対して、それらのピークの面積の比率を計算することによって、計算することができる。
【0070】
エステル交換重縮合反応
本発明のプロセスによりポリカーボネートを形成することを可能とするためには、エステル交換反応によって、モノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)を、モノマー(B1)及び/又は(B2)と反応させるが、この反応は、反応器の中で行わせる。
【0071】
この反応は、触媒無しで行わせることも可能である。しかしながら、適切な触媒を存在させることによって、反応を加速させたり、及び/又は工程(3)の際に形成されるポリカーボネートの重合度を増大させたりすることが可能となる。
【0072】
工程(3)の縮合エステル交換反応のタイプ及び条件には、特段の制限はない。
【0073】
しかしながら、工程(3)は、エステル交換による重縮合についての公知の触媒の存在下で実施するのが有利であり、触媒が、少なくとも1種のアルカリ金属イオン若しくはアルカリ土類金属イオン、1種の四級アンモニウムイオン、1種の四級ホスホニウムイオン、1種の環状窒素含有化合物、1種の塩基性ホウ素ベース化合物、又は1種の塩基性リンベース化合物を含んでいれば有利である。
【0074】
少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒の例としては、セシウム、リチウム、カリウム又はナトリウム塩を挙げることができる。それらの塩は、具体的には、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩、ステアリン酸、ホウ水素化物、ホウ化物、リン酸塩、アルコキシド、又はフェノキシド、及びさらにはそれらの誘導体であってよい。
【0075】
少なくとも1種のアルカリ土類金属イオンを含む触媒としては、カルシウム、バリウム、マグネシウム、又はストロンチウムの塩を挙げることができる。それらの塩は、具体的には、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩、又はステアリン酸塩、及びさらにはそれらの誘導体であってよい。
【0076】
塩基性ホウ素ベース化合物に関しては、それらは、好ましくは、アルキル若しくはフェニルホウ素誘導体、たとえばテトラフェニルホウ素の塩である。
【0077】
塩基性リンベース化合物を含む触媒としては、ホスフィンを挙げることができる。四級アンモニウムイオンを含む触媒は、好ましくは水酸化物、たとえばテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0078】
環状窒素含有化合物を含む触媒は、好ましくは、トリアゾール、テトラゾール、ピロール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピコリン、ピペリジン、ピリジン、アミノキノリン、又はイミダゾールの誘導体である。
【0079】
触媒は、少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒、環状窒素含有化合物を含む触媒、及び四級アンモニウムイオンを含む触媒、たとえば炭酸セシウム、トリアゾール又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドから選択するのが好ましく、最も好ましくは炭酸セシウムである。
【0080】
任意成分の触媒の、(A1)及び(A2)の量に対するモル量は、有利には10-7%~1%の範囲、好ましくは10-4%~0.5%の範囲である。その量は、使用した触媒の関数として調整することができる。例としては、10-3%~10-1%の、少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含む触媒を使用するのが好ましい。
【0081】
場合によっては、添加剤たとえば安定剤を、(A1)及び/又は(A2)並びに(B1)及び/又は(B2)に対して添加することもできる。
【0082】
その安定剤は、たとえば、リン酸をベースとする化合物たとえば、リン酸トリアルキル、亜リン酸をベースとする化合物たとえば、亜リン酸塩若しくはリン酸塩誘導体、又はそれらの酸の塩たとえば、亜鉛塩であってよく、この安定剤によって、ポリマー製造の際にその着色を抑制することが可能となる。溶融状態で重縮合を実施する場合には特に、それを使用するのが有利となりうる。しかしながら、安定剤の使用量は、一般的には、(A1)、(A2)、(B1)、及び(B2)の合計モル数の0.01%未満である。本発明におけるポリカーボネート製造プロセスにおいては、(A1)及び/又は(A2)並びに(B1)及び/又は(B2)の重縮合工程は、工程(3)の間に実施される。その重合のタイプ及び条件には、特段の制限はない。この反応は、溶融状態で、すなわち、溶媒を使用せずに反応媒体を加熱することによって実施することができる。この重合はさらに、溶媒の存在下で実施することもまた可能である。溶融状態でこの反応を実施するのが好ましい。
【0083】
工程(3)は、ポリカーボネートを得るのに十分な時間をかけて実施する。工程(3)の実施時間が、1時間~24時間、たとえば2~12時間であるのが有利である。
【0084】
本発明におけるプロセスの工程(3)の少なくとも一部を、100℃~250℃、好ましくは150~235℃の範囲の温度で実施するのがよい。工程(3)の際に、反応器を、100℃~250℃、好ましくは150℃~235℃の範囲の温度に温度調節するのが好ましい。
【0085】
工程(3)の全部を、等温条件下で実施することも可能である。しかしながら、一般的には、この工程の間に、温度を段階的に上げるか、又は温度傾斜(temperature ramp)を使用するかのいずれかで、温度を上昇させるのが好ましい。工程(3)の間にこのように昇温させることによって、エステル交換による重縮合反応の進行度を改良し、それにより、最終的に得られるポリカーボネートの分子質量を増大させることが可能となるが、後者はさらに、プロセスの工程(3)を全部、その最高温度で実施した場合よりは、着色の程度が低い。
【0086】
言うまでもないことではあるが、工程(3)は、不活性雰囲気下、たとえば窒素下で実施するのが好ましい。
【0087】
本発明におけるプロセスの際に、発生するアルコールを除去するために反応器の中を真空にすることは、必要ないが、その理由は、発生するアルコールは、フェノールよりは容易に蒸留除去することが可能であるからである。したがって、本発明におけるプロセスは、エステル交換による重縮合の工程を、高真空下で実施する必要はないという利点を有している。したがって、本発明のプロセスの一つの変法においては、工程(3)の少なくとも一部が、30kPa~110kPa、有利には50~105kPa、好ましくは90~105kPaの範囲の圧力で、たとえば大気圧で実施される。工程(3)の全工程の少なくとも半分を、この圧力で実施するのが好ましい。
【0088】
しかしながら、工程(3)の全期間又は一部期間を、少し高い真空下、たとえば反応器
の圧力を100Pa~20kPaの間として、実施することも可能である。言うまでもないことではあるが、この真空は、反応器の内温及び重合度に合わせて調節するが、重合度が低いときに、圧力が低すぎたり、温度が高すぎたりすると、反応がうまく進行しない可能性があるが、その理由は、蒸留によってモノマーが、反応器から抜き出されてしまうからである。反応の最後のところでは、この工程を少し高い真空で実施するのがよく、それによって、残存している化学種のいくつかを除去することがさらに可能となる。
【0089】
その反応器は、一般的に、重縮合反応の際にエステル交換によって発生するアルコールを除去するための手段、たとえば凝縮器に接続された蒸留塔頂を備えている。
【0090】
その反応器は、一般的に、撹拌手段、たとえばパドル撹拌システムを備えている。
【0091】
工程(3)の際にモノマー(A1)及び/又はダイマー(A2)は、モノマー(B1)及び/又は(B2)と交互に反応するという利点を有している。そのために、その反応によって、交互構造を有するオリゴマーが生成する。
【0092】
モノマー(B1)及び/又は(B2)の追加の導入の、1段又は複数段の工程を実施することも可能であるが、これは、縮合エステル交換工程(3)が開始された後に実施される。
【0093】
このプロセスは、バッチ式、連続式、又は半連続半バッチ式で実施することができる。
【0094】
このプロセスで形成されたオリゴカーボネートは、工程(4)で回収する。工程(4)に続く工程で、そのようにして得られた反応生成物の精製を、たとえば溶媒たとえばクロロホルムの中にその反応生成物を溶解させ、次いで非溶媒たとえばメタノールを添加することにより沈殿させることにより、実施することも可能である。
【0095】
本発明のプロセスのおかげで、工程(4)の終了時には、採用されたモノマー又はダイマーの合計重量に対する、回収されたオリゴカーボネートの重量の比率で定義される重量収率で、60%以上、有利には70%より大、好ましくは80%より大の値を得ることができる。
【0096】
有利なことには、本発明におけるオリゴカーボネートは、50ppb未満のフェノール含量を含む。
【0097】
残存フェノール含量は、酸加水分解によって予め完全に加水分解させておいたサンプルについての、ガスクロマトグラフィーによって測定される。当業者ならば、オリゴカーボネートの酸加水分解、及び定量的な応答を測定する目的の内部標準を用いたガスクロマトグラフィーによるその粗反応生成物の分析は、容易に実施することができる。
【0098】
本発明におけるプロセスの工程(4)の終わりに得られるオリゴカーボネートポリオールは、5000g/mol未満のモル質量、及びヒドロキシルタイプの鎖末端基を有している。
【0099】
工程(3)において、(A1)及び/又は(A2)の量に対する、モノマー(B1)及び/又は(B2)の量を減らすか、又はそれぞれ増やすことによって、オリゴカーボネートのモル質量を下げるか、又はそれぞれ上げることが可能である。
【0100】
工程(3)において(B1)の量に対するモノマー(B2)の量を減らすか、又はそれぞれ増やすことによって、オリゴカーボネートの分岐度を下げるか、又はそれぞれ上げる
ことも可能である。
【0101】
オリゴカーボネートの分岐度が高いほど、このオリゴマーから得られるポリマー物質の架橋密度が高くなる。
【0102】
本発明におけるプロセスの工程(4)の最後に得られるオリゴカーボネートポリオールはさらに、100mgKOH/gより高いOH価を有している。
【0103】
本発明におけるプロセスの工程(5)の目的は、ポリマー物質を調製することであるが、それが特徴としているのは、オリゴカーボネートポリオールを各種のモノマーと反応させて、マルチブロック-タイプのポリマー、又はセグメント化ポリマーを得ることである。一般的に、目標とするマルチブロックポリマーは、以下のものである:
- ポリ(エステル-b-カーボネート)(オリゴカーボネートを、ジオール及び二酸と反応させた場合)、
- ポリ(アミド-b-カーボネート)(オリゴカーボネートを、ジアミン及び二酸と反応させた場合)、
- ポリ(エーテル-b-カーボネート)(次のものを反応させた場合:ポリエーテル、オリゴカーボネート、及びたとえばジイソシアネートタイプ又はジカルボン酸タイプのカップリング剤)。
【0104】
ポリ(エステル-b-カーボネート)の場合においては、オリゴカーボネートジオール及び他のジオール[E]の合計モル量と当量の、二酸[D]のモル量を使用するのが好ましい。
【0105】
その二酸[D]は、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸(furanic acid)、マレイン酸、又はフマル酸から選択することができる。
【0106】
前記1種又は複数種のジオール[E]は、具体的には、以下のものから選択すればよい:エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド。
【0107】
ポリ(アミド-b-カーボネート)の場合においては、オリゴカーボネートジオール及びジアミン[F]の合計モル量と当量の、二酸[D]のモル量を使用するのが好ましい。
【0108】
その二酸[D]は、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸、マレイン酸、又はフマル酸から選択することができる。
【0109】
そのジアミン[F]は、芳香族又は脂肪族、直鎖状若しくは環状若しくは複素環式のジアミン及び脂肪族若しくは芳香族の二酸から選択することができる。具体的には、それらは以下のジアミンから選択するのがよい:1,4-ジアミノブタン(プトレッシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、1,6-ジアミノブタン(ルシフェリン)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、及び1,8-ジアミノナフタレン。
【0110】
ポリ(エーテル-b-カーボネート)の場合においては、オリゴカーボネートジオール及びオリゴエーテルジオール[H]の合計モル量と当量の、鎖カップリング剤[G]のモル量を使用するのが好ましい。
【0111】
少なくとも2個のヒドロキシル官能基と反応することが可能な、前記1種又は複数種の
化合物[G]は、具体的には、以下の二酸から選択するのがよい:テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、ナフタレンジカルボン酸、フラン酸、マレイン酸、又はフマル酸。
【0112】
化合物[G]は、ヒドロキシル官能基に対する反応性を有するカップリング剤、好ましくは、2個の、イソシアネート、イソシアヌレート、ラクタム、ラクトン、カーボネート、エポキシ、オキサゾリン又はイミド官能基(前記官能基が同一であっても、或いは異なっていてもよい)を含む化合物から選択されるカップリング剤であってもよい。
【0113】
カップリング剤[G]は、たとえば、ジイソシアネート、ビス(カプロラクタム)、又はビス(オキサゾリン)(たとえばベンジルビス(オキサゾリン))、又は2個のエポキシ官能基を有する化合物であってよい。
【0114】
そのオリゴエーテルジオールは、以下のものであってよい:ヒドロキシテレケリックポリエチレンオキシド、ヒドロキシテレケリックポリプロピレンオキシド、ヒドロキシテレケリックポリブチレンオキシド、ヒドロキシテレケリックフルオロ化若しくはペルフルオロ化オリゴエーテル(たとえば、Fomblin Z-DOL)、又はヒドロキシテレケリッククロロフルオロオリゴエーテル。
【0115】
本発明によるポリマーが相分離(phase segregation)を有しているのが有利である。
【0116】
ここで、以下の実施例により、実施態様を詳しく説明する。これら説明のための実施例が、いかなる点においても、本発明の範囲を限定するものではないということを指摘しておく。
【実施例
【0117】
使用した分析法:
DSC
ポリエステルの熱的性質は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定した:最初にサンプルを、窒素雰囲気下、オープンな「るつぼ」の中で、10℃から280℃へと加熱し(10℃・min-1)、冷却して10℃とし(10℃・min-1)、次いで、第一の工程と同じ条件下でもう一度加熱して320℃とする。ガラス転移温度としては、第二の加熱の中点をとる。各種の融点は、第一の加熱における吸熱ピーク(ピーク開始点)として求める。同様にして、第一の加熱において、融解エンタルピー(曲線より下の面積)を求める。
【0118】
サイズ排除クロマトグラフィー
Mnに関しては、ポリスチレン標準を使用し、THF中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって求める。そのサンプルは、THF中に5mg/mLの濃度で溶解させることにより調製する。
【0119】
アルコール数の測定
OH価は、無水トリフルオロ酢酸を添加する誘導体化法を使用し、内部標準としてα,α,α-トリフルオロトルエンを使用するH NMRにより求める。
【0120】
これを実施するためには、10mgのオリゴカーボネートジオールを0.6mLのCDCl3の中に溶解させ、次いでTFAAを過剰に添加し、24時間かけて反応させる。10μLのα,α,α-トリフルオロトルエン(内部標準)を添加してから、H NMRにより分析する。
【0121】
OH含量は、5.4~5.6ppmの間のピーク(誘導体化されたOH基に対してα位のプロトンの信号を示す)の積分値を、1.4~1.9ppmの間及び4.05~4.15ppmの間のピークの積分値を合計したものと比較することにより求める。当業者ならば、OH価を直ちに容易に求めることができる。
【0122】
シャルピー衝撃強度
DIN EN ISO 179法に従う
ノッチ無し;ISO 179/1eU
ノッチ有り:ISO 179/1eA
【0123】
本発明によるオリゴカーボネートの合成例
本発明におけるポリカーボネートジオールオリゴマーを製造するのに有用なイソソルビドビス(メチルカーボネート)は、下記のプロトコルに従って得られる。
【0124】
イソソルビドビス(メチルカーボネート)(IBMC)の合成
800gのイソソルビド(5.47mol)、次いで5362gのジメチルカーボネート(=20当量のジメチルカーボネート)、及び2266gの炭酸カリウムを、サーモスタット調節伝熱流体浴により加熱する、機械的パドル撹拌システム、反応媒体の温度を調節するためのシステム、及び還流ヘッドを搭載した精留塔を備えた、20リットルの反応器の中に導入する。その反応混合物を、十分に還流させながら1時間加熱し、その時間が経過した後、塔頂での蒸気温度が64℃に達したら、生成したメタノールの除去を開始する。次いで、68℃~75℃の間の温度での反応媒体の加熱を13時間続けると、その時間の後では、塔頂での蒸気温度が90℃に達し、この温度(ジメチルカーボネートの沸点)で安定化する。この現象は、エステル交換が完了し、メタノールがもはや生成しないことを示すものである。
【0125】
合成1により得られた反応生成物の一部を、高真空下(<1mbar)、ショートパス配置とした強制薄膜式蒸発器で蒸留除去する。蒸発器を加熱して140℃とし、その反応生成物を、70℃で、140g/hの流量で導入する。
【0126】
そのようにして得られた留出物は、白色の固形物であり、それには、イソソルビドビス(メチルカーボネート)を100重量%で含み、痕跡量のダイマーも含まない。
【0127】
オリゴカーボネートの調製
イソソルビドビス(メチルカーボネート)(A1)及びジオール(B1)の量:下記の表1に示した量の、イソソルビド及びヘキサンジオール又はブタンジオール、並びに炭酸セシウムを、セラミックオーブンにより加熱され、機械式パドル撹拌システム、反応媒体の温度を調節するためのシステム、窒素入口ライン、凝縮器及び凝縮物を捕集するための受器に結合された蒸留塔頂、並びに調節可能な真空システムを備えた、200mLの反応器の中に導入する。(A1)/(B1)のモル比は、0.9/1である。炭酸セシウムの量は17.1mg(2.5×10-4mol)である。
【0128】
そのシステムを窒素雰囲気下に置き、伝熱流体の手段により反応媒体を加熱する。溶融させた反応媒体を均一にするために、温度を徐々に上げて65℃とし、5回の「真空(300mbar)-窒素気流」のサイクルを加えてから、温度上昇を続ける。それぞれのホールドの間での温度上昇には、15分かける。第一のホールドは、温度100℃、5mL/分の窒素気流下で、2時間実施する。次いで、15分かけて温度を180℃とし、50mbarの真空をかける。このステージを3時間続ける。
【0129】
次いで、その反応生成物を窒素下に冷却し、温度が60℃の領域に達したら、サンプル
チューブに注ぎ込む。
【0130】
実施例1~5に、1種だけのジオールBを使用した反応の合成及び性質を示すが、ジオールBのタイプを変化させた。
【0131】
【表1】
【0132】
実施例6及び7は、各種のジオール(B)と、さらにジオール(C)のイソソルビドを使用して合成している。
【0133】
【表2】
【0134】
本発明によるオリゴカーボネートの使用例
実施例8:PBSをベースとするポリ(エステル-b-カーボネート)の合成
1458gの1,4-ブタンジオール、1889.0gのコハク酸、及び540gの、実施例2からのオリゴカーボネートを、7.5リットルの反応器に添加する。次いでその反応混合物を、2barの圧力、一定の撹拌(150rpm)の下で、加熱(4℃/分)して225℃とする。エステル化度は、捕集した留出物の量から推定する。次いで、圧力を下げて0.7mbarとし、温度を230℃にする。減圧の際に、11.586gのジルコニウムテトラ-n-ブチレートを触媒として添加する。これらのエステル化交換反応条件を350分間維持する。最後に、反応器の底バルブからポリマーロッドをキャストし、温度調節した水浴の中で冷却及び細断して約15mgの粒状物の形状にする。
【0135】
SECにより、THF中で測定したこのポリマーのモル質量は、24,000g/mo
lである。そのポリマーの融点は108℃であり、一つは-40℃、もう一つは-28℃の2つのガラス転移温度を有しており、その結晶化温度は55℃であり、その結晶化度は23%である(DSCにより求めたデータ)。そのポリマーは不透明で白色であるが、これは、DSCによって観察された相分離を裏付けている。
【0136】
実施例9:PETをベースとするポリ(エステル-b-カーボネート)の合成
682gのエチレングリコール、1600gのテレフタル酸、及び720gの、実施例2からのオリゴカーボネートを、7.5リットルの反応器に添加する。次いでその反応混合物を、5barの圧力、一定の撹拌(150rpm)の下で、加熱(10℃/分)して265℃とする。エステル化度は、捕集した留出物の量から推定する。次いで、圧力を下げて0.7mbarとし、温度を270℃にする。減圧の際に、8.586gのジルコニウムテトラ-n-ブチレートを触媒として添加する。これらのエステル化交換反応条件を350分間維持する。最後に、反応器の底バルブからポリマーロッドをキャストし、温度調節した水浴の中で冷却及び細断して約15mgの粒状物の形状にする。
【0137】
SECにより、THF中で測定したこのポリマーのモル質量は、17,900g/molである。そのポリマーの融点は238℃であり、一つは-37℃、もう一つは78℃の2つのガラス転移温度を有しており、その結晶化温度は115℃であり、その結晶化度は29%である(DSCにより求めたデータ)。そのポリマーは不透明で白色であるが、これは、DSCによって観察された相分離を裏付けている。
【0138】
実施例10:ポリ(エーテル-b-カーボネート)ウレタンの合成
44.5gの、実施例3からのオリゴカーボネート、20gのポリプロピレングリコール(Mn=450g/mol)、8gのイソソルビド、及び100mgジブチルスズジラウレートを反応器の中に導入する。その混合物を、機械的撹拌により150rpmで撹拌し、窒素気流下で15分かけて90℃にまで加熱する。次いで、窒素気流下及び機械的撹拌下のままで、その反応媒体を、10℃/分の速度で190℃とし、190℃で15分間保持し、次いで5℃/分の速度で265℃にする。この温度を2時間30分維持する。
【0139】
そのようにして得られたポリマーは、非晶質で白色の物質であって、1つは-40℃、もう1つは90℃の2つのガラス転移温度を有している。SECによりTHF中で、PS補正を用いて求めたそのポリマーのモル質量は、23,800g/molである。