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  • 特許-導波路ディスプレイ要素 図1
  • 特許-導波路ディスプレイ要素 図2
  • 特許-導波路ディスプレイ要素 図3A
  • 特許-導波路ディスプレイ要素 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】導波路ディスプレイ要素
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230808BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230808BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230808BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20230808BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B5/18
G02B5/28
G02B5/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020543083
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 FI2019050240
(87)【国際公開番号】W WO2019185989
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】20185292
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルッコネン、ユーソ
(72)【発明者】
【氏名】ブロムステット、カシミール
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-535032(JP,A)
【文献】特開昭57-142608(JP,A)
【文献】特開平02-020810(JP,A)
【文献】特開平06-018727(JP,A)
【文献】特開平07-146418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153460(US,A1)
【文献】特表2008-523434(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015122055(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/34
G02B 27/01-27/02
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路ディスプレイ要素であって、前記導波路ディスプレイ要素は、
積層された複数の導波路層(12)と、
各導波路層に関連付けられ、所定の入射角を有する所定の色の光を前記導波路層内に結合するための入力結合器と
を備え、前記所定の色は各入力結合器に対して異なり、
前記入力結合器の各々は、
関連する前記導波路層上に配置され、厚さおよび屈折率を含む中間層特性を有する中間層(14)と、
前記中間層上に配置され、回折格子周期、回折格子材料、回折格子タイプを含む回折格子特性を有する入力結合格子(16)と
を備え、
異なる色の各々の光の所定の入射角は異なり、各入力結合器の前記中間層特性および前記回折格子特性は、
所定角で入射する関連する所定の色の光が、関連する前記導波路層(12)に結合され、
異なる入射角で入射する他の所定の色の入力結合を妨げる
ように決定され、
各入力結合器の中間層特性及び回折格子特性の組合せは、他の入力結合器と異なる、導波路ディスプレイ要素。
【請求項2】
前記入力結合器は、他の入力結合器と同じ中間層特性及び異なる回折格子特性を有する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項3】
異なる導波路層(12)に関連付けられた入力結合器は、異なる入力結合格子周期を有する、請求項1又は2に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項4】
前記回折格子周期は、前記要素の入射光側の一番上の導波路層(12A)から、前記導波路ディスプレイ要素の反対側の一番下の導波路層(12C)に向かって増加する、請求項3に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項5】
前記入力結合器は、他の入力結合器と同じ回折格子特性及び異なる中間層特性を有する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項6】
前記導波路層(12)間の1つ又は複数の光帯域通過フィルタ又はダイクロイック・ミラーをさらに備える、請求項5に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項7】
各中間層は、前記各中間層(14)が関連付けられた前記導波路層よりも小さい厚さ及び屈折率を有する、請求項1から6までのいずれかに記載の要素。
【請求項8】
各入力結合器の前記中間層(14)は、20μm以下の厚さを有する、請求項1から7までのいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項9】
各入力結合器の前記中間層(14)は、1~10μmの厚さを有する、請求項8に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項10】
前記導波路層(12)は、1.7以上の屈折率を有し、前記中間層(14)は、1.8未満の屈折率を有する、請求項1から9までのいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項11】
前記導波路層(12)は、2.0以上の屈折率を有し、前記中間層(14)は、1.7以下の屈折率を有する、請求項10に記載の導波路ディスプレイ要素。
【請求項12】
ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)又はヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)からなるパーソナル・ディスプレイ・デバイスであって、
請求項1から11までのいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素と、
異なる入射角の光線を前記ディスプレイ要素の入力結合器に投影するように構成された多色レーザー・プロジェクタと
を備えるパーソナル・ディスプレイ・デバイス。
【請求項13】
伝搬する光線を導波路ディスプレイ内に結合する方法であって、前記方法は、
請求項1から11までのいずれかに記載の導波路ディスプレイ要素を提供するステップと、
異なる入射角の光線を前記ディスプレイ要素に向け、前記ディスプレイ要素の前記異なる導波路層(12)に前記光線を選択的に結合するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記光線は、少なくとも3つの異なる波長帯域の光線を備え、前記波長帯域の各々は、異なる入射角で前記ディスプレイ要素に向けられる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折ディスプレイ技術に関する。特に、本発明は、導波路ベースの回折ディスプレイ導波路の入力結合構成に関する。この種の導波路は、パーソナル・ディスプレイ、例えばヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD:head-mounted display)、例えばニアアイ・ディスプレイ(NED:near-to-eye display)及びヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD:head-up display)において使用可能である。
【背景技術】
【0002】
HMD及びHUDは、導波路技術を用いて実施可能である。光は、導波路に結合することができ、導波路内で向けなおすことができ、及び、回折格子を用いて導波路から出力結合することができる。多色ディスプレイでは、すべての色成分(波長)は、単一の導波路層において、又は、異なる層において導くことができる。1つの周知の導波路設計では、導波路は、互いの上に積層される複数の層を備え、各層は、異なる波長帯域を導くように設計される。各層に結合された波長帯域は、入力結合格子を導波路スタックの異なる位置に水平方向に分離することにより、又は、最適な偏光及び偏光に高感度な入力結合格子を用いることにより選択可能である。前者の方法は、光投影構成を複雑にする一方、後者は、回折格子の偏光感度が最高のときでさえあまり高くないので、最適ではない。
【0003】
したがって、入力結合構成を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、導波路ベースのディスプレイのための波長に高感度な入力結合器の改良を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項で述べられるものによって達成される。
【0006】
本発明は、十分に短い波長帯域を有するレーザー光では、導波路に入射する入力光線の角度が出力光線の角度とは異なり得るというアイディアに基づく。広帯域幅照明では、導光体の面法線に対する入力及び出力の角度は、常に同じである必要があり、さもなければ、画像解像度が失われる。したがって、レーザー・プロジェクタでは、原色(R,G,B)は、角度的に分離されるか又は部分的にオーバーラップするように、入力結合領域に出射可能である。各原色が自身の導波路内で伝搬する3層導波路スタックにより、本発明を用いて、色の間のいかなるクロス結合なしで、光を入力結合することができる。
【0007】
したがって、1つの態様によれば、導波路ディスプレイ要素が提供され、導波路ディスプレイ要素は、互いの上に積層される複数の導波路層と、各導波路層に関連付けられ、所定の波長帯域内の光を導波路層内に結合するための入力結合器とを備える。各入力結合器は、導波路層上に配置され、中間層特性を有する中間層と、中間層上に配置され、回折格子特性を有する入力結合格子とを備える。各入力結合器の中間層特性及び回折格子特性の組合せは、他の入力結合器に対して異なる。
【0008】
他の態様によれば、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)又はヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)のようなパーソナル・ディスプレイ・デバイスが提供され、上記の種類の導波路ディスプレイ要素と、異なる入射角の光線をディスプレイ要素の入力結合器に投影するように構成された多色レーザー・プロジェクタとを備える。
【0009】
さらに、伝搬する光線を導波路ディスプレイ内に結合する方法が提供され、方法は、上記の種類の導波路ディスプレイ要素を提供するステップと、異なる入射角のレーザー光線をディスプレイ要素に向け、ディスプレイ要素の異なる導波路層に前記光線を選択的に結合するステップとを含む。
【0010】
本発明は、重要な利点を提供する。中間層及び入力結合格子の特性を、異なる層間で互いに異なるように選択することによって、異なる入射角を用いて、異なる波長を異なる導波路層に効率的に結合することができる。
【0011】
言い換えれば、入力結合構成間の導波路層と入力結合格子との間に提供される低屈折率の薄い層は、異なる層に対する色分離が可能であるように、角度に高感度になる。
【0012】
偏光ベースの色分離と比較して、本発明は、より高い結合効率を提供し、これは、輝度を増加し、及び/又は、電力消費を減少することができる。
【0013】
また、特に、単一の導波路層が用いられるとき、異なる色が回折する角度は、従来の解決法を用いるより良好に制御可能である。例えば、本発明では、各層の光線のホップ長、すなわち、導波路の単一の表面での連続した全反射の間の距離を短く保つことができる。これは、色のより良好な制御を可能にし、出力結合における縞模様を減少する。
【0014】
水平方向に分離された入力結合領域及び偏光に高感度な回折格子とも比較して、本発明による構造は、製造が単純である。基本的に、低屈折率材料の1つの追加の薄膜層のみが、主導波路層と回折格子との間に必要であり、薄膜層及び回折格子の特性の適切な調整が必要である。
【0015】
従属請求項は、本発明の選択された実施例に向けられる。
【0016】
いくつかの実施例では、層特性の異なる組合せは、少なくとも部分的に、入力結合器が、他の入力結合器に対して同じ中間層特性及び異なる回折格子特性を有するように達成される。
【0017】
いくつかの実施例では、層特性の異なる組合せは、少なくとも部分的に、異なる導波路層に関連付けられた入力結合器が、異なる入力結合格子周期を有するように達成される。例えば、回折格子周期は、要素の入射光側の一番上の導波路層から要素の反対側の一番下の導波路層の方に増加してもよい。
【0018】
いくつかの実施例では、層特性の異なる組合せは、少なくとも部分的に、入力結合器が、他の入力結合器に対して同じ回折格子特性及び異なる中間層特性を有するように達成される。1つ又は複数の光帯域通過フィルタ又はダイクロイック・ミラーが、導波路層間に提供されてもよい。
【0019】
いくつかの実施例では、各中間層は、各中間層が関連付けられた導波路層より小さい厚さ及び屈折率を有する。
【0020】
いくつかの実施例では、各入力結合器の中間層は、20μm以下、特に10μm以下、例えば1-10μmの厚さを有する。
【0021】
いくつかの実施例では、導波路層は、1.7以上、例えば2.0以上である屈折率を有し、中間層は、1.8未満、例えば1.7以下である屈折率を有する。
【0022】
いくつかの実施例では、入力結合器は、同じ形状を有し、要素の水平面内で互いに整列配置される。
【0023】
次に、本発明の実施例及びその利点は、添付の図面を参照してより詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】単一の導波路層及びその上に配置される入力結合器の断面詳細側面図である。
図2】3つの導波路層のスタック及びその上に提供される入力結合器の断面側面図である。
図3A】3つの導波路のスタックの第1の入力結合器のための波数ベクトル図である。
図3B】3つの導波路のスタックの第2の入力結合器のための波数ベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、屈折率n及び厚さtを有する平面導波路層12の部分を示す。導波路層12は、透明材料からなり、導波路層12によって、光線は、全反射を介して水平方向に導波路層12内で伝搬することができる。導波路層12の上面には、屈折率n及び厚さtを有する中間層14が存在する。
【0026】
中間層の上には、周期的に配列された回折格子特徴17を備える入力結合格子16が存在する。回折格子は、1次元の回折格子、すなわち単一の周期pを有する線形回折格子とすることができ、又は、異なる方向に2つの主周期を有する2次元の回折格子とすることができる(本願明細書では「周期」の参照は、周期の一方に適用する)。図1には、バイナリ回折格子が示されるが、回折格子プロファイルはいずれでもよい。他の実例は、ブレーズド回折格子及び傾斜回折格子を含む。
【0027】
導波路層12、中間層14及び回折格子16は、色/角度に高感度な層の実体10を一緒に形成する。
【0028】
一般的に、n<n及びt<tである。典型的には、t<<tである。
【0029】
1つの実例では、n=1.5~2.5であり、好ましくは、n≧1.7であり、例えば2.0である。
【0030】
1つの実例では、n=1.1~1.8であり、好ましくは、n≦1.7である。
【0031】
1つの実例では、t<t/10であり、典型的には、t<t/20である。
【0032】
1つの実例では、t=0.2~1.2mmであり、例えば0.3~0.7mmである。
【0033】
1つの実例では、t=0.5~50μmであり、典型的には、t=1~20μmである。
【0034】
図2は、3つの重ねられた層の実体10A-C、すなわち、導波路層12A-Cと中間層14A-Cとそれぞれその上に配置される入力結合格子16A-Cとを示す。1つの実例では、すべての導波路層12A-C及び中間層14A-Cは、本質的に同一であるが、入力結合格子16A-Cの周期は互いに異なる。これによって、異なる角度でスタックに向かう異なる波長λ、λ、λが生じ、波を伝搬するとき、異なる導波路層12A-Cにそれぞれ選択的に結合する。
【0035】
1つの実例では、第2の回折格子16Bの周期は、第1の回折格子16Aの周期より長く、第3の回折格子16Cの周期は、第2の回折格子16Bの周期より長い。
【0036】
隣接した入力結合格子16A/16B、16B/16Cの周期は、例えば、100-400nmだけ異なることができる。1つの実例では、第1の回折格子16Aの周期は、200-300nmであり、第2の回折格子16Bの周期は、350-450nmであり、第3の回折格子16Cの周期は、750-850nmである。
【0037】
上記実施例では、要素に到達するすべての波長の回折角を入射角に対して低く保つことができ、それによって、光線のホップ長は短いままである。
【0038】
図3Aは、3つの導波路のスタックの第1の入力結合器のための(k、k)面内の波数ベクトル図を示す。原色(青、緑、赤)は、オーバーラップしない角度で入力結合格子に入射する(3つの中心のFOVボックス)。部分的にオーバーラップする構成もまた可能である。画像は、16:9のアスペクト比を有する52度の斜めの視野を有する。ここで、すべての導波路に対して、n=2.0、n=1.7である。入力結合格子の第1の回折次数は、y方向に沿って中心から上方にFOVボックスを移動する。内径1.0及び外径nによって定義される環の内側のFOV点は、全反射を介して主導波路の内側で伝搬するモードを表す。n円の外側のFOV点は、決して存在しない禁止モードである。青色光のみが1.0/n環に入力結合していることが分かる。入力結合格子の下のn層が十分に厚いとき、伝達する回折は、n/n環内に起こらず、したがって緑色画像は、入力結合しない。第1の導波路の後、ロング・パス・フィルタを用いて、青色光を除去することができ、したがって、第2の導光体の入力結合器は、緑色光及び赤色光のみを受け取る。図3Bには、第2の導光体の入力結合器のための波数ベクトル図が示される。第2の導光体の後、緑色光は、帯域通過フィルタによって除去される。最後のガイドは、赤色光のみを受け取り、したがって、従来の入力結合器をそれのために用いることができる。帯域ベースの吸収体の代わりに、ダイクロイック・ミラー又は他の波長選択構成要素もまた用いることができる。
【0039】
導波路層は、2つの平行な主面を有する透明材料、典型的にはプラスチック又はガラスの平面部分とすることができる。中間層もまた、透明であり、典型的にはプラスチック又はガラス層である。1つの実例では、中間層は、コーティング層として提供される。例えば、回折格子は、表面レリーフ格子(SRG:surface relief grating)として、又は、回折特徴として追加の材料を表面上に提供することによって、又は、他の回折光学要素(DOE:diffractive optical element)として作製可能である。1つの実例では、回折格子は、少なくとも1つの酸化物又は窒化物材料、例えばTiO、Si及びHfOからなる線形特徴を備える。
図1
図2
図3A
図3B