(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】植物繊維を含む伸縮織物の製造方法およびこの方法によって製造される伸縮織物
(51)【国際特許分類】
D03D 15/292 20210101AFI20230808BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
D03D15/292
D02G3/04
(21)【出願番号】P 2020545546
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2019051608
(87)【国際公開番号】W WO2019166978
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】102018000003155
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】506033115
【氏名又は名称】ロロ ピアーナ ソシエタ ペル アテオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】ソステール,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】バギアーニ,アンドレア
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00655613(GB,A)
【文献】登録実用新案第3177379(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D03D 1/00 - 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮織物を製造する方法であって、以下の操作工程を含む:
- 共に撚り合わされた複数の単一糸(10、12、14)を含む伸縮撚糸(1)を提供することであって、ここで、
一対の混合糸(10、12)であって、前記混合糸は水溶性繊維と混合された非伸張性の植物繊維とを含む混合糸と、
弾性単一糸(14)であって合成弾性繊維を含む弾性単一糸とが存在し;
- 更なるヤーンを提供することと、
- 前記伸縮撚糸(1)の一組の糸を、前記更なるヤーンの一組の糸と織り合わせることによって、織りにより織物を製造することと;および
- 前記織物から前記水溶性繊維を溶解すること。
【請求項2】
前記更なるヤーンは前記伸縮撚糸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記更なるヤーン非伸張性の植物繊維を含む非伸張性のヤーンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記混合糸の前記植物繊維が靭皮繊維である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記靭皮繊維はリネン繊維を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性繊維はアルギン酸繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水溶性繊維はポリビニルアルコールから作られた合成繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記合成弾性繊維はポリウレタン繊維を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非伸張性のヤーンは前記混合糸に使用されるのと同じタイプの植物繊維を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記非伸張性のヤーンの前記植物繊維は靭皮繊維である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記靭皮繊維はリネン繊維を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非伸張性のヤーンは、非伸張性の植物繊維で作られた第1の単一糸と、動物繊維で作られた第2の単一糸とを含み、前記糸は共に撚られている、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の
単一糸の前記植物繊維は靭皮繊維を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記靭皮繊維はリネン繊維を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の単一糸の前記動物繊維は絹繊維を含む、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記非伸張性のヤーンは共に撚られた非伸張性の植物繊維から作られた一対の単一糸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記織りは、一組の緯糸が前記非伸張性のヤーンの複数の糸と交互にされた前記伸縮撚糸(1)の複数の糸を含むように実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記織りは、一組の経糸が前記非伸張性のヤーンの複数の糸を含むように実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記織りは、前記一組の経糸が非伸張性のヤーンの前記複数の糸と交互にされた伸縮撚糸(1)の複数の糸を含むように実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記織りは、一組の緯糸が前記伸縮撚糸(1)の複数の糸を含み、一組の経糸が前記伸縮撚糸(1)の複数の糸を含むように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記水溶性繊維はアルカリ性溶液中の槽によって前記織物から溶解される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮織物の製造方法及びこの方法により製造される織物に関する。
【背景技術】
【0002】
植物繊維、特に靭皮繊維、より具体的にはリネン繊維は特に硬く不規則であり、あまり伸張性がなく、容易に折り目が付けられることが知られている。しかしながら、高い熱伝導率であることから、それらは夏物の衣服を製造するのに特に適するものであり、これにより最高級の天然繊維と見なされている。
【0003】
最新技術により、弾性ヤーン、典型的にはエラストマー(例えば、ポリウレタン)ヤーンを用いてリネンヤーンを撚ることによってリネン布を弾性のあるものとし、撚り係数を低いものから高いもの、または非常に高いものに変化させ、これは、余分に撚られたヤーンで引き起こされるものである。あるいは、この機構は、合成繊維で作られたさらなる熱収縮ヤーンによって支持されている。しかしながら、この技術では、製造業者は良好な弾性回復を有する上述のヤーンで製造された織物を得ることができず、従って、目に見える欠陥が形成されてしまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、伸縮織物の製造方法およびそのような方法によって製造される伸縮織物を提供することであり、これにより従来技術の欠点を解決することができる。
【0005】
特に本発明は、快適であり高度の弾性を有する伸縮織物を製造する方法を提供することを目的とし、同時に、弾性復帰の欠如による典型的な欠陥を形成する傾向を解決する。
【0006】
本発明によれば、この目的および他の目的は、添付の独立請求項に記載された技術的特徴を有する方法及び織物によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付の特許請求の範囲は、本発明に関する以下の詳細な説明において提供される技術的教示の不可欠な部分である。特に、添付の従属請求項は、好ましいまたは任意の技術的特徴を含む本発明のいくつかの実施形態を規定する。
【0008】
本発明のさらなる特徴および利点は、特に、以下に簡潔に記載される添付の図面を参照して、例として提供され限定的ではない以下の詳細な説明を熟読することで、最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の説明的実施形態に従って実施される方法において使用することができる伸縮撚糸の長手方向における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に、例として、
図1および
図2を参照すると、本発明は、以下の操作工程を含む伸縮織物を製造する方法を提案する:
【0011】
- 共に撚り合わされた複数の単一糸を含む伸縮撚糸(1)を提供することであって、ここで:
【0012】
一対の混合糸10、12と弾性単一糸14とが存在し、ここで混合糸は水溶性繊維と混合された実質的に非伸張性の植物繊維を含み、弾性糸は合成弾性繊維を含み;
【0013】
- 更なるヤーン、例えば実質的に非伸張性の植物繊維を含む実質的に非伸張性のヤーンを提供することと;
【0014】
- 前記伸縮撚糸1の一組の糸を、前記更なるヤーンの一組の糸、例えば、前記実質的に非伸張性のヤーンの糸と織り合わせることによって、織りにより織物を製造することと;および
【0015】
- 前記織物から水溶性繊維を溶解すること。
【0016】
前記更なるヤーンは、必ずしも実質的に非伸張性のヤーンである必要はない。あるいは、前記更なるヤーンは、伸縮撚糸1自体であってもよい。したがって、この仮説では、この方法で、緯糸と経糸の両方が前述の伸縮撚糸1から作られる織物を織ることが開発される。
【0017】
これらの特徴のおかげで、水溶性繊維は天然繊維の束によって形成された「ケージ」の内側にある種の充填物を作り出し、したがって、ヤーンは織り張力に抵抗することができる。一旦天然繊維が溶解すると、ヤーンは水溶性繊維の含有量に達する重量割合分を放出し、水溶性繊維の溶融によって形成される空洞は、次いで、細くなることなく、天然繊維を弾性ヤーンに巻き付けることを可能にする弾性を引き起こす。
【0018】
したがって、前記方法は織物中に欠陥が形成される傾向を減少させ、機械耐性を維持し、織物の弾性回復能力を改善する。
【0019】
例えば、混合ヤーンに関する限り、水溶性繊維の重量割合は、必ずしもそうではないが、有利には水溶性繊維の20%~70%の範囲にはある。
【0020】
上述の方法は理想的な弾性及び快適さを保証することができるが、合成繊維の割合が低減された(例えば、重量割合が実質的に1%~5%の範囲である)天然繊維織物を製造する。これは、さらなる合成繊維を使用せずに起こり、したがって、それらに触れたときの天然繊維に典型的な外観および特徴を、それらを着用したときの通気性および新鮮な感触とともに良好に保存する。さらに、この方法は、高品質基準を満たす性能織物を生みだす。最終的に、前述の方法は、伝統的な麻紡績システムと比較して、繊維の適切な分配を可能にする、伝統的な羊毛又は綿システムによる乾式紡績を可能にする。
【0021】
混合ヤーンの植物繊維は、好ましくは靭皮繊維である。より好ましくは、靭皮繊維はリネン繊維を含む。
【0022】
本発明の説明的実施形態では、水溶性繊維はアルギン酸繊維を含む。本発明のさらなる説明的実施形態では、水溶性繊維はポリビニルアルコールまたはPVAから作られた合成繊維を含む。
【0023】
実質的に非伸張性のヤーンは、好ましくは混合ヤーンに使用されるのと同じタイプの植物繊維を含む。
【0024】
実質的に非伸張性のヤーンは、好ましくは実質的に非伸張性の植物繊維で作られた単一糸と、動物繊維で作られた単一糸とを含み、前記糸は共に撚られている。特に、実質的に非伸張性の植物繊維は、靭皮繊維、特にリネン繊維である。特に、動物繊維は絹繊維を含む。変形例によれば、実質的に非伸張性のヤーンは、実質的に非伸張性の植物繊維、例えば純粋な靭皮繊維、特に純粋なリネンからなりうる。この変形例によれば、実質的に非伸張性のヤーンは、純粋な靭皮繊維、特にリネン繊維で作られた一対の単一糸を含むことができ、前記単一糸は共に撚られている。
【0025】
前述の方法では、織りは、好ましくは一組の緯糸が実質的に非伸張性のヤーンの複数の糸と交互になった伸縮撚糸1の複数の糸を含むように行われる。
【0026】
前述の方法では、織りは、好ましくは一組の経糸が実質的に非伸張性のヤーンの複数の糸を含むように行われる。特に、織りは、一組の経糸が実質的に非伸張性のヤーンの複数の糸と交互になった伸縮撚糸1の複数の糸を含むように行われる。
【0027】
好ましくは、水溶性繊維は、アルカリ性溶液中の槽によって織物から溶解される。
【0028】
従って、得られる織物は好ましくは、得られるべき外観および被覆に応じて、特に弾性ヤーンの安定化のための熱固定および乾燥後に、可能とされる染色および仕上げ操作を行うことができる。
【0029】
以下、本発明の2つの説明的実施形態について説明する。
【0030】
本発明の第1の説明的実施形態では、実質的に非伸張性のヤーンは、互いに撚り合わされたリネン糸および絹糸を含む。さらに、伸縮撚糸1は、一対の混合糸10、12であって、ポリビニルアルコールまたはPVA繊維と混合されたリネン繊維が存在するものと、およびポリウレタン繊維が存在する弾性糸14とを含む。
【0031】
この第1の実施形態では、一組の経糸が実質的に非伸張性のヤーンの複数の糸(互いに撚り合わされたリネン糸および絹糸を含む)からなる。さらに、一組の緯糸は、(リネン/ポリビニルアルコール混合糸およびポリウレタン繊維の弾性糸を含む)伸縮撚糸1の糸と交互にされた実質的に非伸張性のヤーン(互いに撚られたリネン糸および絹糸を含む)の複数の糸からなる。
【0032】
本発明の第2の説明的実施形態では、実質的に非伸張性のヤーンは、互いに撚り合わされた、リネン糸および絹糸を含む。さらに、伸縮撚糸1は、一対の混合糸10、12であって、ポリビニルアルコールまたはPVA繊維と混合されたリネン繊維が存在するものと、およびポリウレタン繊維が存在する弾性糸14とを含む。
【0033】
この第2の実施形態では、一組の経糸が伸縮撚糸1の糸(リネン/ポリビニルアルコール混合ヤーン糸10、12の対およびポリウレタン繊維の弾性糸14を含む)と交互にされた、実質的に非伸張性のヤーン(互いに撚られたリネン糸および絹糸を含む)の複数の糸からなる。同様に、一組の緯糸は、伸縮撚糸1の糸(リネン/ポリビニルアルコール混合ヤーン糸10、12の対およびポリウレタン繊維の弾性糸14を含む)と交互にされた、実質的に非伸張性のヤーン(互いに撚られたリネン糸および絹糸を含む)の複数の糸からなる。
【0034】
あるいは、第1の説明的実施形態および第2の説明的実施形態の双方において、そこに記載されている実質的に非伸張性のヤーン(互いに撚られたリネン糸および絹糸を含む)を、例えば、互いに撚られた2つのリネン糸を含む、ソールリネン繊維で得られる実質的に非伸張性のヤーンで置き換えることができる。
【0035】
当然ながら、本発明の原理、実施形態、および実施の詳細は、添付の特許請求の範囲によって提供される保護の範囲を超えることなく、単なる非限定的な例として、上記で説明され、図面に示されたものに対して広く変更することができる。
【0036】
例えば、本発明によれば、本発明による織物を得るために使用することができる織物は異なり、先行技術の公知の技術に従ってジャカード衣料織物およびニット織物を製造することも可能である。
【0037】
例えば、本発明によれば、直交織物またはニット織物を製造することができる。