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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20230808BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20230808BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230808BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230808BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08G59/68
C08G59/42
H01L23/30 R
H05K1/03 610L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548205
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033298
(87)【国際公開番号】W WO2020059434
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2018177552
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019024413
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106139
【氏名又は名称】サンアプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118061
【弁理士】
【氏名又は名称】林 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】舩山 淳
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102964778(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107090294(CN,A)
【文献】国際公開第2012/136273(WO,A1)
【文献】特開2015-209492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)、および硬化促進剤(C)を含有するエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤(C)が一般式(1)で示されるイミダゾリウムカチオン(D)と、アニオン(E)からなるイミダゾリウム塩(S)を含み、アニオン(E)がカルボキシラートアニオン(E1)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R2及びR3は、同一または異なって、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。]
【請求項2】
エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)、および硬化促進剤(C)を含有するエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤(C)が一般式(1)で示されるイミダゾリウムカチオン(D)と、アニオン(E)からなるイミダゾリウム塩(S)を含み、アニオン(E)が、一般式(2)で示されるアニオン(E2)であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化2】
[式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R2及びR3は、同一または異なって、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。]
【化3】
[式(2)中、Yは、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミド基からなる群より選ばれる基を表わす。R6、R7はそれぞれ、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エーテル基を有してもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は水素原子を示し、R6、R7が相互に結合し環を形成しても良い。]
【請求項3】
活性エステル化合物(B)が分子内中に2個以上のエステル基を含む請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
一般式(1)中のR1が水素原子である請求項1~のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
一般式(2)中のR6、R7が、相互に結合し環を形成している請求項2~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
一般式(2)中のR6、R7が、相互に結合しその環がベンゼン環である請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなるプリント配線基板。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を用いてなる半導体封止材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、プリント配線板や半導体封止材料などの電子部品用のエポキシ樹脂系封止剤の製造に適したエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その優れた接着性、絶縁性、耐熱性からプリント配線板や半導体封止材料として用いられてきた。しかしこのエポキシ樹脂も近年の高周波通信、例えば1GHz以上での高周波通信でのエネルギー損失を抑制するために低誘電正接化か望まれている。この低誘電正接化ニーズにこたえるため、従来エポキシ樹脂の硬化物に使用されていたフェノール樹脂の代わりに活性エステル化合物を用いた方法が開示されている(例えば、特許文献1)。こうすることで、エポキシ樹脂と活性エステルの反応であるので、水酸基が原理上、生成しないため、低誘電正接化を実現できた。
【0003】
しかしながら、活性エステル化合物とエポキシ樹脂との反応は非常に遅く、より有効な硬化促進剤の開発が急務である。一般的に最も有効とされている硬化促進剤は、4-ジメチルアミノピリジンであるが、この化合物は求核性が非常に強いために、硬化促進剤として働く半面、エポキシ樹脂中の塩素原子に結合した炭素原子に求核してしまうため、エポキシ樹脂中の共有結合で結合している塩素原子が脱離し、樹脂中に遊離塩素を生成してしまう。この遊離塩素が、電子部品用のデバイスの信頼性を悪化させるという観点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-252957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、活性エステル化合物とエポキシ樹脂との反応において硬化促進剤として優れ、なおかつ遊離塩素を生成しない硬化促進剤を用いたエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)、および硬化促進剤(C)を含有するエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤(C)が一般式(1)で示されるイミダゾリウムカチオン(D)と、アニオン(E)からなるイミダゾリウム塩(S)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R2及びR3は、同一または異なって、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。]
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、活性エステル化合物とエポキシ樹脂との反応において硬化促進剤として優れ、なおかつ遊離塩素を生成しないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、活性エステル化合物(B)、および硬化促進剤(C)を含有するエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤(C)が一般式(1)で示されるイミダゾリウムカチオン(D)とアニオン(E)からなるイミダゾリウム塩(S)を含む。
【0011】
エポキシ樹脂(A)は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0012】
エポキシ樹脂(A)の例としては、DIC株式会社製の:HP-4032、HP-4700、HP-7200、HP-820、HP-4770、HP-5000、EXA-850、EXA-830、EXA-1514、EXA-4850シリーズ;日本化薬株式会社製の:EPPN-201L、BREN-105、EPPN-502H、EOCN-1020、NC-2000-L、XD-1000、NC-7000L、NC-7300L、EPPN-501H、NC-3000;三菱ケミカル株式会社製の:XY-4000などが挙げられる。
【0013】
活性エステル化合物(B)とは、フェノール性水酸基をエステル化して得られるエステル化合物であり、分子中に2個以上のエステル基をもつことが好ましく、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば、とくに制限なく使用できる。
好ましい活性エステル化合物(B)は、多価カルボン酸とフェノール性水酸基を有する化合物とエステル化する、又は多価フェノールとカルボン酸とエステル化することで得られる。
多価カルボン酸とは、2つ以上のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族カルボン酸や、芳香族化合物の水素原子を2つ以上のカルボキシル基で置換したカルボン酸等が挙げられる。多価フェノールとは、2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であり、芳香族化合物の水素原子を2つ以上の水酸基で置換したもの等が挙げられる。
【0014】
好ましい活性エステル化合物(B)の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等の芳香環の水素原子の2つ以上をカルボキシル基で置換したものから選ばれる芳香族カルボン酸と、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルプロパン、ジフェニルメタン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン等の芳香環の水素原子の1つを水酸基で置換したフェノール類とが縮合反応によって得られる芳香族エステルが挙げられる。
【0015】
活性エステル化合物(B)の配合量は、硬化性及び低誘電正接化の観点から、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基等量と活性エステル化合物(B)のエステル基等量のモル比が、0.6~1.4であることが好ましい。
【0016】
硬化促進剤(C)は、一般式(1)で示されるイミダゾリウムカチオン(D)と、アニオン(E)からなるイミダゾリウム塩(S)を含む。
【0017】
イミダゾリウムカチオン(D)は、一般式(1)であらわされ、式(1)中、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R2及びR3は、同一または異なって、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を表し、R4及びR5は、同一または異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
【0018】
【化2】
【0019】
イミダゾリウムカチオン(D)は、エポキシ樹脂組成物の硬化性の観点から、R1が水素原子のものが特に好ましい。さらにR4、R5は、水素原子が好ましい。
【0020】
イミダゾリウムカチオン(D)の具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-メチル-2,3,4-トリエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、及び1,2,3-トリエチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0021】
イミダゾリウムカチオン(D)の製造は、例えば、四級化アミンカチオンのアルキル炭酸塩を使用する反応、および四級化アミンカチオンの水酸化物を使用する反応等により得られる。
【0022】
アニオン(E)としては、カルボキシラートアニオン(E1)、ボレートアニオン、スルホネートアニオンが挙げられる。
カルボキシラートアニオン(E1)の具体例としては、オクチル酸、フタル酸、イソフタル酸、安息香酸、コハク酸、マレイン酸などからのアニオンが挙げられる。
ボレートアニオンの具体例としては、テトラフェニルボレートなどが挙げられる。
スルホネートアニオンの具体例としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などからのアニオンが挙げられる。
これらの中で、カルボキシラートアニオン(E1)が、硬化性の観点で好ましく、下記一般式(2)で示さる特定のカルボキシラートアニオン(E2)が、同様の観点でさらに好ましい。
【0023】
【化3】
【0024】
一般式(2)中、Yは、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミド基からなる群より選ばれる基を表わす。R6、R7はそれぞれ、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エーテル基を有してもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は水素原子を示し、R6、R7が相互に結合し環を形成しても良い。
【0025】
式(2)のアニオン(E2)のYは、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミド基からなる群より選ばれるが、これにより、式(2)中のカルボキシラートアニオンと官能基Yとの2つの官能基が、エポキシ樹脂(A)と活性エステル化合物(B)の反応を促進させることができるため好ましい。
【0026】
上記の反応機構で反応を促進することができるため、官能基Yとしては、カルボキシル基、水酸基、チオール基がより好ましく、さらにカルボキシル基、水酸基が最も好ましい。
【0027】
式(2)のアニオン(E2)のR6、R7は、それぞれ、水酸基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エーテル基を有してもよい炭素数1~10の炭化水素基、又は水素原子を示し、R6、R7が相互に結合し環を形成しても良い。好ましくは、R6、R7が相互に結合し環を形成していることで、その環がベンゼン環であることがさらに好ましい。
【0028】
アニオン(E2)の中で、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基と活性エステル化合物(B)のエステル基の相互作用の強さの観点から、フタル酸、サリチル酸からのアニオンが特に好ましい。
【0029】
イミダゾリウム塩(S)の合成方法としては、例えば、前記のイミダゾリウムを有するカチオン(D)とアニオン(E)となりうるカルボン酸を一定な比率で反応させる方法が挙げられる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、これを硬化することにより、最終的に硬化エポキシ樹脂が得られる。硬化促進剤(C)の配合量はエポキシ樹脂(A)と活性エステル化合物(B)の反応性に応じて調整されるが、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して通常1~25重量部、好ましくは2~20重量部である。最適な配合量は、要求される硬化特性などに合わせて設定すればよい。
【0031】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらにシリカ、アルミナなどの無機充填材(H)を含むことが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物を電子部品の封止などに用いる場合、得られる半導体装置の耐半田性向上などを目的として、エポキシ樹脂組成物中に配合されるものであり、その種類については、特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに他の機能性ある化合物(機能性添加剤)を含むことが好ましい。
【0033】
機能性添加剤には、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン及びフェニルトリメトキシシラン、等のアルコキシシラン類やチタネートエステル類及びアルミナートエステル類に代表されるカップリング剤;カーボンブラック等の着色剤;臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びリン系化合物等の難燃剤;シリコーンオイル及びシリコーンゴム等の低応力成分;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸、該高級脂肪酸の金属塩類及びパラフィン等の離型剤;マグネシウム、アルミニウム、チタン及びビスマス系等のイオンキャッチャー、ビスマス酸化防止剤等の各種添加剤;ベンゾオキサジン、シアネートエステル、ビスマレイミドのような耐熱性UPさせる変性化合物が挙げられる。
【0034】
他の機能性ある化合物は、「総説エポキシ樹脂第一巻」、「総説エポキシ樹脂第一巻」、エポキシ樹脂技術協会、2003;エクトロニクス実装学会誌、14、204、2011;journal of Applied Polymer Science,109,2023-2028,2008;Polymer Preprints,Japan,60,1K19,2011;ネックワークポリマー,33,130,2012;Polym.Int.54,1103-1109,2005;Journal of Applied Polymer Science,92,2375-2386,2004;ネックワークポリマー,29,175,2008;高分子論文集,65,562,2008;高分子論文集,66(6),217,2009などに記載されている。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記成分及び、必要に応じて、その他の添加剤等を、ミキサーを用いて常温で均一混合し、さらにロール、ニーダー、コニーダー及び二軸押出機等の混練機を用いて、加熱混練した後、冷却、粉砕することによって得ることができる。また、上記で得たエポキシ樹脂組成物は、紛体である場合、使用にあたっての作業性を向上させるために、プレス等により加圧タブレット化して使用することもできる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物の用い方としては、例えば、プリント配線基板や半導体素子等の各種の電子部品を封止し、具体例に半導体装置を製造する場合、トランスファーモールド、コンプレッションモールド及びインジェクションモールド等の従来からの成形方法により、硬化成形すればよい。
【実施例
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0038】
<イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法>
攪拌式のオートクレーブに、炭酸ジエチル(東京化成工業株式会社社製)141部および溶媒のエタノール500部を仕込み、この中に1-メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社社製)82部を仕込み、反応温度135℃にて80時間反応させた。これにより、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムのエチル炭酸塩(S-1-1)のエタノール溶液を得た。滴下ロート、および還流管を備え付けたガラス製丸底3つ口フラスコに、フタル酸(東京化成工業株式会社社製)166部を徐々に投入し、その後、エバポレータで溶剤を除去することで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・フタル酸塩(S-1)を得られた。
【0039】
<イミダゾリウム塩(S-2)の製造方法>
イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法の1-メチルイミダゾールの代わりに、1,2ジメチルイミダゾール(東京化成工業株式会社社製)96部を用いることで、1-エチル-2,3-メチルイミダゾリウム・フタル酸塩(S-2)を得られた。
【0040】
<イミダゾリウム塩(S-3)の製造方法>
イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法のフタル酸の代わりに、マレイン酸(東京化成工業株式会社社製)116部を用いることで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・マレイン酸塩(S-3)を得られた。
【0041】
<イミダゾリウム塩(S-4)の製造方法>
イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法のフタル酸の代わりに、サリチル酸(東京化成工業株式会社社製)138部を用いることで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・サリチル酸塩(S-4)を得られた。
【0042】
<イミダゾリウム塩(S-5)の製造方法>
イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法のフタル酸の代わりに、コハク酸(東京化成工業株式会社社製)118部を用いることで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・コハク酸塩(S-5)を得られた。
【0043】
<イミダゾリウム塩(S-6)の製造方法>
イミダゾリウム塩(S-1)の製造方法のフタル酸の代わりに、p-トルエンスルホン酸(東京化成工業株式会社社製)172部を用いることで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・p-トルエンスルホン酸塩(S-6)を得られた。
【0044】
<イミダゾリウム塩(S-7)の製造方法>
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・クロライド(東京化成工業株式会社社製)146部をメタノール500部に溶かした溶液を、テトラフェニルボレート・ナトリウム(東京化成工業株式会社社製)342部をメタノール1000部に溶かした溶液中に撹拌しながら、滴下することで沈殿物を生成させた。その沈殿物を取り出し、減圧乾燥機で溶剤を除去することで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフェニルボレート(S-7)を得られた。
【0045】
<活性エステル化合物(B-1)の製造方法>
滴下ロート、および還流管を備え付けたガラス製丸底3つ口フラスコに、イソフタル酸(東京化成工業株式会社社製)33部と、1―ナフトール(東京化成工業株式会社社製)58部、および無水酢酸(東京化成工業株式会社社製)49部を入れ、窒素雰囲気化で145℃5時間反応させることで、1―ナフトールのアセチル化を行った。さらに、200~250℃で反応することで、脱酢酸しながら、1―ナフトールのエステル化反応を行った。得られた生成物をメタノールで十分洗浄し、50℃で減圧乾燥することで1―ナフトールと、イソフタル酸の活性エステル化合物(B-1)が得られた。
【0046】
実施例1
エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名NC3000(軟化点58℃、エポキシ当量273)100部;活性エステル化合物(B-1)65部;イミダゾリウム塩(S-1)をエポキシ樹脂硬化促進剤として7部;1重量%のシランカップリング剤で処理した溶融シリカ粉末1000部、カルナバワックス1.5部およびカーボンブラック1部を均一に粉砕混合後、 100℃の熱ロールを用いて10分間溶融混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物(封止材)を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
<性能評価>
<ゲルタイム>
キュラストメーター7型(株式会社エー・アンド・デイ製、商品名)を使用して、温度175℃、樹脂用ダイスP-200および振幅角度±1/4°の条件で、それぞれの上記エポキシ樹脂組成物について硬化トルクを測定し、硬化トルクの立ち上がる点をゲルタイム(単位は秒)とした。
【0048】
<硬化性(硬化トルク)>
上記のキュラストメーターでの測定で、測定開始から300秒後の硬化トルクの値(単位はkgf・cm)を硬化性(脱型時の強度および硬度)の指標とした。
【0049】
<遊離塩素イオンの測定>
上記エポキシ樹脂組成物の内、エポキシ樹脂と活性エステル化合物(B-1)とエポキシ樹脂硬化促進剤のみを10分間、130℃で溶融混練し、175℃で30分硬化させた組成物10部を超純水100部と一緒にオートクレーブ中で130℃、20時間加熱した後の液を、イオンクロマトグラフを用いて塩素含量を測定した。
【0050】
実施例2~7、比較例1
表2のように、硬化促進剤を変えて、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物(封止材)を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。なお、比較例の硬化促進剤には、4-ジメチルアミノピリジンを用いた。
【0051】
表1から明らかなように、本発明の実施例1~7のエポキシ樹脂組成物(封止材)は、硬化性は比較例と比べてそれ以上もしくは同等レベルであり、遊離塩素イオンが極めて少なく電子部品用デバイスに用いた時に信頼性が高くなり、最適であることが分かる。
【0052】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子部品用のデバイスにおいて、高周波通信でのエネルギー損失を抑制でき、またデバイスの信頼性を高めることができるため、プリント配線板や半導体などの電子部品用のエポキシ樹脂系封止剤の製造に好適である。