(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】目の後部角膜表面の測定
(51)【国際特許分類】
A61B 3/107 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61B3/107
A61B3/107 ZDM
(21)【出願番号】P 2020558897
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 IB2019053797
(87)【国際公開番号】W WO2019224640
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-15
(32)【優先日】2018-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ダニール ネクラーソフ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン グリュンディッヒ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0033362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0125355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の角膜の後部角膜表面を測定するシステムであって、
前記角膜の後部の前記目の部分を表す画像データを生成するようにそれぞれ構成された複数のカメラであって、前記画像データは、前記目の前記部分の複数の特徴の場所を記述する、複数のカメラと、
コンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、
メモリであって、
前記カメラからの前記画像データを記憶すること、及び
前記角膜の前部角膜表面の形状の記述を記憶すること
を行うように構成されたメモリと、
レイトレーシングプロセスを適用して、前記後部角膜表面の形状を決定するように構成された1つ又は複数のプロセッサであって、前記レイトレーシングプロセスは、
複数の光線を定義することであって、各光線は前記複数のカメラのカメラから前記前部角膜表面及び前記後部角膜表面を通って前記目の前記部分にトレースされる、
複数の光線を定義すること、
前記光線の複数の制約を決定することであって、前記制約は、前記前部角膜表面の前記形状の前記記述及び前記画像データにおける前記特徴の場所を使用して計算される、
前記光線の複数の制約を決定すること、及び
前記制約に従って複数のパラメータを最適化することであって、前記最適化されたパラメータは前記後部角膜表面の前記形状を記述する、
前記制約に従って複数のパラメータを最適化すること
を含む、1つ又は複数のプロセッサと、
を備
え、
前記1つ又は複数のプロセッサは、
各光線について、前記前部角膜表面による屈折に続く前記光線の位置に従って前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点を計算すること、
前記後部角膜表面の形状を仮定すること、及び
各光線について、前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点における前記後部角膜表面の前記仮定された形状に従って、前記後部角膜表面が前記光線を屈折させる後角を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
カメラからトレースされる各光線について、前記目に対する前記カメラの位置に従って前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
各光線について、前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点における前記前部角膜表面の前記形状に従って前記前部角膜表面が前記光線を屈折させる前角を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、各特徴について、
その特徴に対応する前記光線を識別すること、及び
少なくとも2つのカメラからの前記画像データから、前記光線間の1つ又は複数の最短距離を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記カメラからの前記画像データ間の一致を最適化する、
前記パラメータの値を識別すること
により前記パラメータを最適化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記光線間の複数の最短距離を最小化する、
前記パラメータの値を識別すること
により前記パラメータを最適化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記
特徴のそれぞれに対応する光線間で複数の最短距離の和を最小化する、
前記パラメータの値を識別すること
により前記パラメータを最適化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記最適化されたパラメータに従って前記後部角膜表面の前記形状を更に計算する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
目の角膜の後部角膜表面を測定する方法であって、
複数のカメラのそれぞれにより、前記角膜の後部の前記目の部分を表す画像データを生成することであって、前記画像データは、前記目の前記部分の複数の特徴の場所を記述する、
前記角膜の後部の前記目の部分を表す画像データを生成することと、
前記角膜の前部角膜表面の形状の記述にアクセスすることと、
レイトレーシングプロセスを適用することであって、それにより、前記後部角膜表面の前記形状を決定する、
レイトレーシングプロセスを適用することと、
を含み、
前記レイトレーシングプロセスは、
複数の光線を定義することであって、各光線は前記複数のカメラのカメラから前記前部角膜表面及び前記後部角膜表面を通って前記目の前記部分にトレースされる、
複数の光線を定義することと、
前記光線の複数の制約を決定することであって、前記制約は、前記前部角膜表面の前記形状の前記記述及び前記画像データにおける前記特徴の場所を使用して計算される、
前記光線の複数の制約を決定することと、
前記制約に従って複数のパラメータを最適化することであって、前記最適化されたパラメータは前記後部角膜表面の前記形状を記述する、
前記制約に従って複数のパラメータを最適化することと、
を含
み、
前記光線の前記制約を決定することは、
各光線について、前記前部角膜表面による屈折に続く前記光線の位置に従って前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点を計算することと、
前記後部角膜表面の形状を仮定することと、
各光線について、前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点における前記後部角膜表面の前記仮定された形状に従って、前記後部角膜表面が前記光線を屈折させる後角を計算することと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記光線の前記制約を決定することは、
カメラからトレースされる各光線について、前記目に対する前記カメラの位置に従って前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点を計算することを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記光線の前記制約を決定することは、
各光線について、前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点における前記前部角膜表面の前記形状に従って前記前部角膜表面が前記光線を屈折させる前角を計算することを含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
前記光線の前記制約を決定することは、各特徴について、
その特徴に対応する前記光線を識別することと、
少なくとも2つのカメラからの前記画像データから、前記光線間で1つ又は複数の最短距離を計算することと、
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記制約に従って前記パラメータを最適化することは、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記
特徴のそれぞれに対応する光線間で複数の最短距離の和を最小化する、
前記パラメータの値を識別することを含む、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には眼科測定に関し、より詳細には目の後部角膜表面の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
目の角膜は、光が目をいかに通過するかに影響し、最終的には目の視覚に影響する前面及び後面を有する。前部角膜表面における空気と支質との間の屈折率差は、後部角膜表面における支質と房水との間の屈折率差よりも大きい。したがって、前部角膜表面の効果は、後部角膜表面の効果よりも大きい。しかしながら、後部角膜表面の効果は決して無視できない。光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、シャインプルーフ、プルキンエ、及びスリットランプ撮像デバイスは、後部角膜表面の形状の測定に使用することができる。しかしながら、これらのデバイスは、特定の状況では好ましくないことがある。例えば、OCT及びシャインプルーフデバイスは高価であり得る可動構成要素を有し、プルキンエデバイスは、角膜の後部からの信号が弱いことが欠点になり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特定の実施形態では、目の角膜の後部角膜表面を測定するシステムは、カメラ及びコンピュータを含む。各カメラは、角膜の後部の目の部分を表す画像データを生成する。画像データはその部分の特徴の場所を記述する。コンピュータはメモリ及び1つ又は複数のプロセッサを有する。メモリはカメラからの画像データを記憶し、角膜の前部角膜表面の形状の記述を記憶する。プロセッサはレイトレーシングプロセスを適用して、後部角膜表面の形状を決定する。レイトレーシングプロセスは、光線を定義することであって、各光線はカメラから前部角膜表面及び後部角膜表面を通って目の部分にトレースされる、定義することを含む。光線の制約が決定される。制約は、前部角膜表面の形状の記述及び画像データにおける特徴の場所を使用して計算される。パラメータは制約に従って最適化され、最適化されたパラメータは、後部角膜表面の形状を記述する。
【0004】
特定の実施形態では、プロセッサは、以下の1つ又は複数を実行することにより光線の制約を決定する:(1)カメラからトレースされる各光線について、目に対するカメラの位置に従って光線が前部角膜表面と交わる前点を計算すること、(2)各光線について、光線が前部角膜表面と交わる前点における前部角膜表面の形状に従って前部角膜表面が光線を屈折させる前角を計算すること、(3)各光線について、前部角膜表面による屈折に続く光線の位置に従って光線が後部角膜表面と交わる後点を計算すること、(4)後部角膜表面の形状を仮定し、各光線について、光線が後部角膜表面と交わる後点における後部角膜表面の仮定された形状に従って、後部角膜表面が光線を屈折させる後角を計算すること、及び/又は(5)各特徴について、その特徴に対応する光線を識別し、少なくとも2つのカメラからの画像データから、光線間での1つ又は複数の最短距離を計算すること。
【0005】
特定の実施形態では、プロセッサは、制約に従って、以下の1つ又は複数を実行することにより制約に従ってパラメータを最適化する:(1)パラメータの値を識別することであって、値はカメラからの画像データ間の一致を最適化する、識別すること、(2)パラメータの値を識別することであって、値は光線間の複数の最短距離を最小化する、識別すること、及び/又は(3)パラメータの値を識別することであって、値は光線間で複数の最短距離の和を最小化する、識別すること。プロセッサは、最適化されたパラメータに従って後部角膜表面の形状を更に計算する。
【0006】
特定の実施形態では、目の角膜の後部角膜表面を測定する方法は、複数のカメラのそれぞれにより、角膜の後部の目の部分を表す画像データを生成することを含む。画像データは、目の部分の特徴の場所を記述する。角膜の前部角膜表面の形状の記述にアクセスする。レイトレーシングプロセスが適用されて、後部角膜表面の形状を決定する。レイトレーシングプロセスは、光線を定義することであって、各光線はカメラから前部角膜表面及び後部角膜表面を通って目の部分にトレースされる、定義することを含む。光線の制約が決定され、制約は、前部角膜表面の形状の記述及び画像データにおける特徴の場所を使用して計算される。パラメータは制約に従って最適化され、最適化されたパラメータは後部角膜表面の形状を記述する。
【0007】
本開示の実施形態について添付図を参照して更に詳細に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、目の後部角膜表面を測定するシステムの実施形態を示す。
【
図2】
図2は、
図1のシステムの異なるカメラからの画像を位置合わせするのに使用することができる虹彩の画像の一例を示す。
【
図3】
図3は、
図1のシステムにより実行し得る目の後部角膜表面を測定する方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
これより説明及び図面を参照して、開示される装置、システム、及び方法の実施形態例を詳細に示す。当業者には明らかなように、開示される実施形態は例示であり、可能な全ての実施形態を網羅するものではない。
【0010】
図1は、目12の後部角膜表面を測定するシステム10の実施形態を示す。特定の実施形態では、システム10は、角膜の後部にある目12の部分、例えば、虹彩の特徴を表す画像データを生成するカメラを含む。コンピュータはレイトレーシングプロセスを使用して、目12の画像データ及び前部角膜表面の形状から後部角膜表面の形状を決定する。
【0011】
図示の例では、システム10は、少なくとも2つのカメラ22(22a~c)に結合されたコンピュータ20を含む。コンピュータ20は、1つ又は複数のプロセッサ24、インターフェース25、及びメモリ26を含む。メモリ26はデータ(画像データ27及び前部角膜表面の記述28等)及びアプリケーション(レイトレーシングモジュール29等)を記憶する。筐体30は、システム10の1つ又は複数の構成要素の少なくとも一部を含み得る。人間の目等の目12は、角膜34、虹彩36、瞳孔37、水晶体38、及び他の周知のパーツを含む。角膜34は前部角膜表面40及び後部角膜表面42を有する。角膜トポグラフィシステム及び角膜曲率計は、前部角膜表面40の形状を測定するが、システム10は後部角膜表面42の形状を測定する。
【0012】
より詳細にシステム10に関して、カメラ22は、被写体の画像をデジタルメモリに捕捉する任意の適したデジタルカメラであり得る。カメラ22のデジタル画像センサ(例えば、CCD又はCMOS)は、被写体から反射された光を検出し、反射された光を表す画像データを有するデジタル信号を生成する。画像データは、種々の方法で使用されるように記憶、処理することができる。幾つかの場合、画像データを処理して、被写体の画像を表示することができる。他の場合、画像データを処理して、画像に表された被写体の部分を識別することができる。例えば、目12の画像を捕捉する際に生成された画像データを処理して、目12の部分のランドマーク特徴、例えば、虹彩36の模様を識別することができる。ランドマーク特徴を使用して、異なるカメラからの画像を位置合わせし得る。特徴については
図2を参照してより詳細に説明する。
【0013】
図2は、特徴44を有する虹彩26の画像の一例を示す。目12の部分は、場所を確立するためにランドマークとして働き、異なるカメラ22からの画像を位置合わせ(又は見当合わせ)するのに使用することができる特徴44を有し得る。目12の任意の適した部分、例えば、虹彩又は瞳孔縁が使用可能である。部分の特徴44は、部分の画像において識別することができる模様であり得る。図示の例では、虹彩36は、特徴44として選択される色及びテクスチャの模様を有する。
【0014】
図1に戻ると、システム10はカメラ22a~cを含む。カメラ22aはオンアクシスカメラであり、カメラ22aの光軸は目12の軸(例えば、光軸又は視軸)に略一致する。カメラ22b及び22cはオフアクシスカメラであり、各カメラ22b及び22cの光軸は目12の軸に対して傾斜する。傾斜角度は任意の適した値、例えば、10度~30度、30度~40度、又は40度~60度の範囲内の値を有し得る。一般に、システム10は任意の適した数のカメラ22を有し得る。カメラ22は全てオフアクシスカメラであってもよく、又はオンアクシスカメラを含んでもよい。
【0015】
メモリ26は、画像データ27及び前部角膜表面の記述28を記憶する。画像データ27は、カメラ22から受信した画像データであり得る。前部角膜表面の記述28は、前部角膜表面40の形状を記述する。記述は、アキシャルパワー、タンジェンシャルパワー、屈折力等の表面のマップの形態又はエレベーションマップの形態であり得る。例えば、記述は、前部角膜表面28の異なる点における表面高さ及び面法線を提供し得、補間を使用して、他の点における高さ及び法線を計算し得る。記述28は、角膜トポグラフィシステム(例えば、プラチドディスクシステム)又は角膜曲率計により生成し得る。
【0016】
メモリ26はレイトレーシングモジュール28を記憶する。プロセッサ24はレイトレーシングモジュール28を使用して、レイトレーシングプロセスを適用する。レイトレーシングは通常、眼球モデル(例えば、グルストランド、ナバロ、リョウ及びブレナン、及びエムズリー(Emsley))並びに目の測定値に基づく。レイトレーシングは、光の波動性に関連する効果を無視することができ、それにより、光伝搬を光線に関して記述することができると仮定する。光線の経路は反射及び屈折により計算される。屈折はスネルの屈折の法則により定義され、スネルの屈折の法則は、異なる屈折率を有する2つの媒質を伝播する表面における光線の屈折を記述する。光線が眼球モデルを通って移動する際、レイトレーシングプロセスは、光線と表面との交点及びそれらの点での面法線を計算し、したがって、スネルの法則に従って光線の新しい方向を決定する。点及び点における面法線は、表面の形状の決定に使用することができる。
【0017】
特定の実施形態では、コンピュータ20はレイトレーシングプロセスを適用して、(1)光線を定義することであって、各光線はカメラ22から前部角膜表面40及び後部角膜表面42を通って目の部分にトレースされる、定義すること、(2)光線の制約を決定することであって、制約は、前部角膜表面40の形状及び目12の部分の特徴の場所に従って計算される、決定すること、及び(3)制約に従ってパラメータを最適化することであって、最適化されたパラメータは後部角膜表面の形状を記述する、最適化することにより目12の後部角膜表面42の形状を決定する。コンピュータ20は、インターフェース25を介して形状の記述を出力し得る。記述は、アキシャルパワー、タンジェンシャルパワー、屈折力等の表面のマップの形態又はエレベーションマップの形態であり得る。レイトレーシングプロセスについて、
図3を参照してより詳細に説明する。
図1の残り幾つかの参照番号について以下に説明する。
【0018】
図3は、
図1のシステム10により実行し得る目12の後部角膜表面42を測定する方法の一例を示す。方法はステップ100において開始され、ステップ100において、カメラ22は目12から反射された光を受け取り、反射光に応答して画像データを生成する。画像データは、角膜の後部にある目12の部分の特徴を含め、目12を記述する。この例では、部分は虹彩36である。ステップ101において、コンピュータ20のメモリ26はカメラ22からの画像データ27を記憶し、ステップ102において、角膜34の前部角膜表面40の形状の記述28を記憶する。
【0019】
ステップ104において、コンピュータ20はレイトレーシングプロセスを適用して、後部角膜表面42の形状を決定する。ステップ105~120はレイトレーシングプロセスを記述している。後部角膜表面42の形状はまず、ステップ105においてパラメータ化(すなわち、パラメータに関して表現)される。初期パラメータ化は形状の開始仮定であり、したがって、表面42はまず、母集団の平均値であるパラメータの値を選択することによりパラメータ化し得る。形状は、二重円錐、非球面、又はゼルニケ多項式に基づく関数を使用してパラメータ化し得る。ステップ106において、光線50が定義される。この方法例では、光線50はカメラ22から前部角膜表面40及び後部角膜表面42を通って虹彩36までトレースされる。例えば、特定の光線50aはカメラ22aから前部角膜表面40の点52a及び後部角膜表面42の点58aを通って虹彩36の特徴44aまでトレースされる。
【0020】
ステップ108において、光線50の制約が計算される。制約とは、1つ又は複数のパラメータの値の決定に使用される要件(例えば、既知のデータから計算される)である。この例では、既知のデータ、すなわち、記述28における前部角膜表面40の形状、カメラ22aの位置及び向き、並びに画像データ27における部分の特徴44の場所に従って計算された制約。ステップ110~116は、各光線50の制約の計算について説明している。
【0021】
ステップ110において、各光線について、光線50が前部角膜表面40と交わる前点52が、目12に対するカメラ22の位置に従って計算される。例では、ステップ110において、光線50aが前部角膜表面40と交わる前点52aが、目12に対するカメラ22aの位置に従って計算される。より詳細には、カメラ22aの点54a(例えば、カメラ22aの画像面の点)並びに目12に対するカメラ22aの位置(例えば、目12からの距離及び目12に相対する向き)を所与として、光線50をトレースして、前点52aを計算することができる。なお、カメラ22bの点54bからトレースされた光線50bは異なる前点52bをもたらす。本明細書で使用される場合、「位置」は被写体の場所(例えば、x,y,z空間における被写体の場所)及び被写体の向き(例えば、被写体が指す方向)を指す。
【0022】
ステップ112において、各光線50について、前部角膜表面40が光線50を屈折させる前角56が、光線50が前部角膜表面40と交わる前点52における前部角膜表面40の形状に従って計算される。例では、前角56aが、スネルの法則及び目12の部分の屈折率を使用して、前点52aにおける前部角膜表面40の形状に従って計算される。例では、前角56aは、前部角膜表面40に達する前の光線50aに相対して表現される。しかしながら、前角56aは、任意の適した様式で、例えば前部角膜表面40の法線又は定義された座標系に相対して表現し得る。
【0023】
ステップ114において、各光線50について、光線50が後部角膜表面42と交わる後点58が、前部角膜表面40による屈折に続く光線50の位置(例えば、場所及び向き)に従って計算される。例では、屈折に続く光線50aの位置は、前点52a、前角56a、及び角膜34の推定された厚さから計算することができる。
【0024】
ステップ116において、各光線50について、後部角膜表面42が光線を屈折させる後角60が、初期推定形状(ステップ105から)又は光線50が後部角膜表面42と交わる後点58における後部角膜表面42の最適化ルーチンの現在形状パラメータ化(ステップ120から)に従って計算される。例では、後角60aは、スネルの法則及び目12の部分の周知の屈折率を使用して、後点58aにおける後部角膜表面42の仮定形状に従って計算される。例では、後角60aは、後部角膜表面42に達する前の光線50aに相対して表現される。しかしながら、後角60aは、任意の適した様式で、例えば後部角膜表面42の法線又は定義された座標系に相対して表現し得る。
【0025】
ステップ117において、各特徴44について、同じ特徴44に対応する光線50が識別される。同じ特徴44に対応する光線50は、ステップ110~116に従って同じ特徴44にトレースされる光線である。例では、光線50a及び50bは同じ特徴44aに対応する。仮にステップ105における後部角膜表面42の初期パラメータ化が完全であった場合(且つ仮に測定が理想的であった場合)、異なるカメラ22からの、同じ特徴44に対応する光線50は、特徴44の厳密な物理的場所で交わる。しかしながら、初期パラメータ化は推定でしかなく、したがって、光線50は通常、特徴44で交わらず、互いを近くで迂回する。最小距離dminは、光線50間の最も近い距離を表し、dmin=0は、互いに交わる光線50を表し、dmin>0は、互いに迂回する光線50を表す。これらの例では、同じ特徴44に対応する光線50の最小距離dminは通常、測定及び計算で行われた仮定の不完全性に依存する。
【0026】
ステップ118において、同じ特徴44に対応する光線50について、互いに対する最小距離dminが、少なくとも2つのカメラ22からの画像から決定される。例では、同じ特徴44aに対応する光線50a及び50bについて、最小距離dminがカメラ22a及び22bからの画像から計算される。1組の光線50について、1組の光線50の各対間の最小距離dminを計算することができる。これらの距離は、スキュー線間の距離を計算する既知の数学的手順に従って計算することができる。特徴44に対応する光線50が互いに最も近い点62aを決定することもできる。点62aは、特徴44aの再構築された物理的位置を表す。
【0027】
ステップ120において、後部角膜表面42の形状を記述するパラメータは、制約に従って最適化される。後部角膜表面42の形状は、まず、ステップ105においてパラメータ化された。パラメータの最適化は、カメラ22を用いて撮影された画像間の一致を最適化するパラメータの値を決定する。例えば、値は、大半又は全ての特徴44の最小距離dminの和を最小化する等、最小距離dminを最小化し得る。任意の適した最適化技法、例えば、最小二乗又はランダムサンプルコンセンサス(RANSAC)法が使用可能である。
【0028】
ステップ122において、後部角膜表面42の形状が、最適化されたパラメータから計算される。一般に、初期パラメータ化に使用される関数が、最適化された形状のフォーマットを決定する。しかしながら、最適化された形状は、既知の技法に従って任意の適したフォーマットに変換し得る。例えば、最適化されたパラメータは、前部角膜表面28の異なる点での表面高さ及び表面法線をもたらし得、補間を使用して、他の点における高さ及び法線を計算し得る。ステップ124において、形状は、例えばディスプレイ又はメモリに出力される。次に方法は終了する。
【0029】
本明細書に開示されるシステム及び装置の構成要素(例えば、コンピュータ)は、インターフェース、論理、及び/又はメモリを含み得、任意のそれらはハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。インターフェースは、構成要素への入力を受信し、構成要素からの出力を提供し、且つ/又は入力及び/又は出力を処理することができる。インターフェースの例には、GUI、ディスプレイ画面、又はデータコネクタがある。論理は構成要素の演算を実行することができ、例えば命令を実行して入力から出力を生成する。論理は、1つ若しくは複数のコンピュータ又は1つ若しくは複数のマイクロプロセッサ等のプロセッサであり得る。論理は、コンピュータプログラム又はソフトウェア等のコンピュータにより実行することができるメモリに符号化されるコンピュータ実行可能命令であり得る。メモリは情報を記憶することができ、1つ又は複数の有形非一時的コンピュータ可読コンピュータ実行可能記憶媒体を含み得る。メモリの例には、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み取り専用メモリ(ROM))、大容量記憶媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブル記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオディスク(DVD))、及びネットワーク記憶装置(例えば、サーバ又はデータベース)がある。
【0030】
この開示について特定の実施形態に関して説明したが、実施形態の変更(置換、追加、代替、又は省略等)が当業者には明かになろう。したがって、本発明の範囲から逸脱せずに実施形態に変更を行い得る。例えば、本明細書に開示されたシステム及び装置に変更を行い得る。システム及び装置の構成要素は統合又は分離し得、システム及び装置の動作はより多数、より少数、又は他の構成要素により実行し得る。別の例として、本明細書に開示される方法に対して変更を行い得る。方法は、より多数、より少数、又は他のステップを含み得、ステップは任意の適した順序で実行し得る。
なお、本開示の態様には以下のものも含まれる。
〔態様1〕
目の角膜の後部角膜表面を測定するシステムであって、
前記角膜の後部の前記目の部分を表す画像データを生成するようにそれぞれ構成された複数のカメラであって、前記画像データは、前記目の前記部分の複数の特徴の場所を記述する、複数のカメラと、
コンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、
メモリであって、
前記カメラからの前記画像データを記憶すること、及び
前記角膜の前部角膜表面の形状の記述を記憶すること
を行うように構成されたメモリと、
レイトレーシングプロセスを適用して、前記後部角膜表面の形状を決定するように構成された1つ又は複数のプロセッサであって、前記レイトレーシングプロセスは、
複数の光線を定義することであって、各光線は前記複数のカメラのカメラから前記前部角膜表面及び前記後部角膜表面を通って前記目の前記部分にトレースされる、定義すること、
前記光線の複数の制約を決定することであって、前記制約は、前記前部角膜表面の前記形状の前記記述及び前記画像データにおける前記特徴の場所を使用して計算される、決定すること、及び
前記制約に従って複数のパラメータを最適化することであって、前記最適化されたパラメータは前記後部角膜表面の前記形状を記述する、最適化すること
を含む、1つ又は複数のプロセッサと、
を備える、システム。
〔態様2〕
前記プロセッサは、
カメラからトレースされる各光線について、前記目に対する前記カメラの位置に従って前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、態様1に記載のシステム。
〔態様3〕
前記プロセッサは、
各光線について、前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点における前記前部角膜表面の前記形状に従って前記前部角膜表面が前記光線を屈折させる前角を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、態様1に記載のシステム。
〔態様4〕
前記プロセッサは、
各光線について、前記前部角膜表面による前記屈折に続く前記光線の位置に従って前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、態様1に記載のシステム。
〔態様5〕
前記プロセッサは、
前記後部角膜表面の形状を仮定すること、及び
各光線について、前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点における前記後部角膜表面の前記仮定された形状に従って、前記後部角膜表面が前記光線を屈折させる後角を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、態様4に記載のシステム。
〔態様6〕
前記プロセッサは、各特徴について、
その特徴に対応する前記光線を識別すること、及び
少なくとも2つのカメラからの前記画像データから、前記光線間の1つ又は複数の最短距離を計算すること
により前記光線の前記制約を決定する、態様1に記載のシステム。
〔態様7〕
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記カメラからの前記画像データ間の一致を最適化する、識別すること
により前記パラメータを最適化する、態様1に記載のシステム。
〔態様8〕
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記光線間の複数の最短距離を最小化する、識別すること
により前記パラメータを最適化する、態様1に記載のシステム。
〔態様9〕
前記プロセッサは、前記制約に従って、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記光線間で複数の最短距離の和を最小化する、識別すること
ことにより前記パラメータを最適化する、態様1に記載のシステム。
〔態様10〕
前記プロセッサは、前記最適化されたパラメータに従って前記後部角膜表面の前記形状を更に計算する、態様1に記載のシステム。
〔態様11〕
目の角膜の後部角膜表面を測定する方法であって、
複数のカメラのそれぞれにより、前記角膜の後部の前記目の部分を表す画像データを生成することであって、前記画像データは、前記目の前記部分の複数の特徴の場所を記述する、生成することと、
前記角膜の前部角膜表面の形状の記述にアクセスすることと、
レイトレーシングプロセスを適用することであって、それにより、前記後部角膜表面の前記形状を決定する、適用することと、
を含み、
前記レイトレーシングプロセスは、
複数の光線を定義することであって、各光線は前記複数のカメラのカメラから前記前部角膜表面及び前記後部角膜表面を通って前記目の前記部分にトレースされる、定義することと、
前記光線の複数の制約を決定することであって、前記制約は、前記前部角膜表面の前記形状の前記記述及び前記画像データにおける前記特徴の場所を使用して計算される、決定することと、
前記制約に従って複数のパラメータを最適化することであって、前記最適化されたパラメータは前記後部角膜表面の前記形状を記述する、最適化することと、
を含む、方法。
〔態様12〕
前記光線の前記制約を決定することは、
カメラからトレースされる各光線について、前記目に対する前記カメラの位置に従って前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点を計算することを含む、態様11に記載の方法。
〔態様13〕
前記光線の前記制約を決定することは、
各光線について、前記光線が前記前部角膜表面と交わる前点における前記前部角膜表面の前記形状に従って前記前部角膜表面が前記光線を屈折させる前角を計算することを含む、態様11に記載の方法。
〔態様14〕
前記光線の前記制約を決定することは、
各光線について、前記前部角膜表面による前記屈折に続く前記光線の位置に従って前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点を計算することを含む、態様11に記載の方法。
〔態様15〕
前記光線の前記制約を決定することは、
前記後部角膜表面の形状を仮定することと、
各光線について、前記光線が前記後部角膜表面と交わる後点における前記後部角膜表面の前記仮定された形状に従って、前記後部角膜表面が前記光線を屈折させる後角を計算することと、
を含む、態様14に記載の方法。
〔態様16〕
前記光線の前記制約を決定することは、各特徴について、
その特徴に対応する前記光線を識別することと、
少なくとも2つのカメラからの前記画像データから、前記光線間で1つ又は複数の最短距離を計算することと、
を含む、態様11に記載の方法。
〔態様17〕
前記制約に従って前記パラメータを最適化することは、
前記パラメータの値を識別することであって、前記値は前記光線間の複数の最短距離を最小化する、識別することを含む、態様11に記載の方法。