(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】温熱具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/03 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A61F7/03
A61F7/08 334H
A61F7/08 334S
A61F7/08 334F
(21)【出願番号】P 2020566111
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2019042198
(87)【国際公開番号】W WO2020148966
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/000961
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高桑 穂貴
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094171(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183757(WO,A1)
【文献】特開2005-219313(JP,A)
【文献】特開2008-220788(JP,A)
【文献】特開2009-082570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
A61F 7/08
A61F 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一面に発熱層が設けられており、
前記発熱層が、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、繊維材料及び水の混合物を含み、
直線状又は円弧状の切り込みからなる一個以上の第1のスリットが、前記発熱層及び前記基材シートに形成されて
おり、
少なくとも一個の第1のスリットが、前記発熱層及び前記基材シートの両方を厚さ方向に貫通するように形成されている、温熱具。
【請求項2】
直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが同一方向を向いて並列配置されるように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、請求項1に記載の温熱具。
【請求項3】
切り込みからなる一個の第2のスリットが、第1のスリットの延びる方向と交差する方向に延びるように形成されている、請求項2に記載の温熱具。
【請求項4】
切り込みからなる複数個の第2のスリットが同一方向を向いて並列配置され且つ第1のスリットの延びる方向と交差する方向に延びるように形成されている、請求項2に記載の温熱具。
【請求項5】
第1のスリットと第2のスリットとが互いに交差しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、請求項4に記載の温熱具。
【請求項6】
直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットの群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列が一列又は複数列形成されており、
第1のスリット列が複数列形成されている場合、該第1のスリット列が互いに交差しないように形成されている、請求項1に記載の温熱具。
【請求項7】
切り込みからなる複数個の第2のスリットの群が一方向に延びるように配置された第2のスリット列が第1のスリット列と交差する方向に延びるように一列又は複数列形成されており、
第2のスリット列が複数列形成されている場合、該第2のスリット列が互いに交差しないように且つ第1のスリット列と交差する方向に延びるように形成されている、請求項6に記載の温熱具。
【請求項8】
第1のスリットと第2のスリットとが互いに交差しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、請求項7に記載の温熱具。
【請求項9】
第2のスリット列において前後に隣り合う2つの第2のスリットの間を、第1のスリット列における第1のスリットが通過するように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、請求項8に記載の温熱具。
【請求項10】
第1のスリット列において前後に隣り合う2つの第1のスリットの間を、第2のスリット列における第2のスリットが通過しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、請求項9に記載の温熱具。
【請求項11】
円弧状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが同一円周上に位置するように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、請求項1に記載の温熱具。
【請求項12】
円弧状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが二個以上の同心円上に位置するように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、請求項1に記載の温熱具。
【請求項13】
前記発熱層が吸水材料を更に含む、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の温熱具。
【請求項14】
前記発熱層を挟んで前記基材シートと反対側に、吸水材料を含む吸水材料層が更に設けられている、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の温熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、目及び目の周囲に温熱を付与する目用温熱具を提案した(特許文献1参照)。この目用温熱具は、アイマスク形状の本体部を備えたものであり、該本体部は肌側シートと外側シートとそれらの間に配置されたシート状発熱体とを有している。シート状発熱体には、一方向へ延びる切れ込みが多条に形成されており、それによって該シート状発熱体はその変形が容易になっている。その結果、この目用温熱具は、顔の湾曲形状に合うように変形してフィット性が向上し、使用感が良好なものとなる。この目用温熱具に含まれるシート状発熱体は、例えば抄紙による方法で製造することができる。
【0003】
これに加えて、本出願人は、被酸化性金属の粒子、炭素成分、水及び電解質を含む発熱組成物の層が、基材シートに塗工されてなる発熱体を備える温熱具を提案した(特許文献2)。この温熱具は、塗工による方法で製造された発熱体にスリットを設けることによって、温熱具の装着感を向上させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-82570号公報
【文献】特開2013-94171号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、基材シートの一面に発熱層が設けられた温熱具に関する。
一実施形態では、本発明の温熱具は、発熱層が、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、繊維材料及び水の混合物を含む。
一実施形態では、本発明の温熱具は、直線状又は円弧状の切り込みからなる一個以上の第1のスリットが、前記発熱層及び前記基材シートに形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の温熱具の実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す温熱具の長手方向に沿う断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す発熱体の実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す発熱性本体に形成されているスリットの配置形態を示す平面図である。
【
図6】
図6(a)ないし(f)は、
図4に示す発熱性本体に形成されているスリットの別の配置形態を示す平面図である。
【
図7】
図7(a)ないし(d)は、発熱性本体に形成されているスリットの更に別の配置形態を示す平面図である。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、
図3に示す発熱体の別の実施形態を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)及び(b)は、
図3に示す発熱体の更に別の実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、
図3に示す発熱体の更に別の実施形態を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)及び(b)は、
図3に示す発熱体の更に別の実施形態を示す断面図である。
【
図12】
図12(a)及び(b)は、
図3に示す発熱体の更に別の実施形態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の温熱具の別の実施形態を示す平面図である。
【
図14】
図14(a)及び(b)は、発熱性本体に形成されているスリットの更に別の配置形態を示す平面図である。
【
図15】
図15は、発熱性本体に形成されているスリットの更に別の配置形態を示す平面図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
特許文献1に記載の温熱具は、切れ込みが多条に形成されているのでフィット性が高いものとなっているが、抄紙による方法で製造された発熱体を備える温熱具は、塗工による方法で製造された発熱体を備える発熱具と比較して、発熱特性が劣るという問題がある。
【0008】
また特許文献2に記載の温熱具は、塗布による方法で製造された発熱体を備えるため、発熱特性は良好となる。しかし、この塗布による方法で製造された発熱体は繊維を含まない。そのため抄紙による方法で製造された発熱体と比較して、繊維間に被酸化性金属の粒子が担持されることに起因する保水性、成形性及び保形性といった良好な効果を得難い。
【0009】
本発明者は、抄紙による方法で製造された発熱体等の繊維を含む発熱体を用いる場合、該発熱体は、該発熱体に含まれる繊維の水の吸収力が低いために、被酸化性金属と酸素との酸化反応が阻害されており、その結果、良好な発熱特性が得られないのではないかと推察した。そこで、本発明者は、抄紙による方法で製造された発熱体等の繊維を含む発熱体を備える温熱具の発熱特性の向上に関して鋭意検討したところ、特定の態様のスリットを発熱体に形成することにより、該スリットを介して被酸化性金属に酸素を十分に供給させて、塗工による方法で製造された発熱体を備える温熱具と同等のレベルに発熱特性を向上できるとともに、温熱具のフィット性も向上できることを見出した。
【0010】
本発明は、フィット性の向上と発熱特性の向上とが両立した温熱具に関する。
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の温熱具の一実施形態が示されている。同図に示す温熱具1は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの両眼を覆うように当接させて、所定温度に加熱された水蒸気を目及びその周囲に温熱を付与するために用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、温熱具1は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する横方向Xに長い本体部2と、本体部2に備えられた発熱体3と、一対の耳掛け部4,4とを備えている。耳掛け部4は、本体部2の横方向Xの両外端域に設けられており、横方向Xの外方へ向けて反転可能となっている。これによって、各耳掛け部4,4を使用者の耳にそれぞれ掛けて、本体部2による使用者の両眼の被覆状態を維持できるようになっている。本体部2は、その長手方向が温熱具の横方向Xと一致している。つまり、温熱具1の横方向Xと、本体部2の横方向Xとは互いに一致している。以下の説明では、各部材における横方向は、温熱具1の横方向Xと一致する方向として説明する。
【0013】
図2には、温熱具1の分解斜視図が示されている。また
図3には、温熱具1の横方向X(長手方向)に沿う断面図が示されている。これらの図に示す温熱具1における本体部2は、使用者の肌に近い側に位置する第1シート5と、使用者の肌に遠い側に位置する第2シート6とを備えている。すなわち、同図中上方が使用者の肌に近い側であり、同図中下方が使用者の肌に遠い側である。
【0014】
図2及び
図3に示す第1シート5及び第2シート6は、これらを重ね合わせた状態でホットメルト接着剤等の接着剤7によって互いに接合されており、これによって、両シートの間に2つの発熱体3,3が離間して保持できるようになっている。
【0015】
図2に示す耳掛け部4はシート材からなり、該シート材に、横方向Xに延びる挿通部4Aが形成されている。挿通部4Aは、耳掛け部4を耳に掛ける際に耳を通すための穴である。これに代えて、挿通部4Aは、耳を通すことができる貫通スリット等によって形成されていてもよい。
図2に示すように、耳掛け部4は、温熱具1の横方向Xの両外端域において、本体部2における第1シート5の外面に接合されており、これによって、本体部2と耳掛け部4とが接合された接合領域9が形成されている。接合領域9は、本体部2における第1シート5と耳掛け部4とが面方向に連続的に又は不連続に接合して形成されている。接合領域9は、接合端部9sを軸として、耳掛け部4を反転させるときの折り曲げ部としても機能する。接合領域9は、本体部2と耳掛け部4とがヒートシール等の融着によって形成されていてもよく、超音波シール等の超音波接合によって形成されていてもよい。
【0016】
図3に示す断面図には、シート状の発熱性本体3Aが袋体内に収容されて形成された発熱体3の固定状態が示されている。同図に示す発熱体3は、発熱性本体3Aが、温熱具1を着用したときに使用者の肌に近い側に位置する肌側シート32と、温熱具1を着用したときに使用者の肌から遠い側に位置する非肌側シート33との間に配置されている。詳細には、同図に示す肌側シート32及び非肌側シート33は、これらの周縁部が互いに接合された周縁接合部35が連続的に形成されており、周縁接合部35よりも内側の部分において肌側シート32と非肌側シート33とが非接合状態となって、袋体が形成されている。このように、肌側シート32と非肌側シート33とが接合されて袋体を形成し、該袋体内に発熱性本体3Aが収容されている。
図3に示す実施形態では、発熱体3は、一面が肌側シート32からなり、他面が非肌側シート33からなる扁平な包材内にシート状の発熱性本体3Aが収容されて形成されている。
【0017】
次に、本発明で用いられる発熱体3の前提となる基本構造を
図4(a)及び(b)を参照しながら説明する。
図4(a)及び(b)には、発熱体3の拡大図が示されている。同図に示す発熱体3は、発熱性本体3Aが肌側シート32及び非肌側シート33の間に配されているものである。同図に示す発熱体3における発熱性本体3Aは、発熱層31と基材シート37とを少なくとも備えており、基材シート37の一面に発熱層31が設けられている。発熱層31は、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水を含む混合物3Mを含んでいる。発熱層31は繊維材料を含んでいない。混合物3Mは、酸素との酸化反応によって発熱可能となっている。発熱層31は、基材シート37上にのみ存在していてもよく、あるいは発熱層31が基材シート上に存在するとともに、発熱層31の下部が基材シート37中に埋没していてもよい。
図4(a)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31と基材シート37とから形成されている。必要に応じて、
図4(b)に示すように、発熱性本体3Aは、発熱層31の基材シート37が配されていない面側に、基材シート37と同一の又は異なる材料や構成で形成された第2基材シート38が更に配されていてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、後述する吸水材料を含む吸水シート等が更に配されていてもよい。
【0018】
発熱体3の基本構造として構成されてなる発熱性本体3Aは、発熱層31が、例えばペースト状物、粉体組成物、又はシート状物の態様であり得る。詳細には、発熱体3の態様として、(i)基材シート37からの脱落を生じない程度の流動性を有するペースト状の発熱層31が、基材シート37の一方の面に塗布されてなる発熱性本体3Aを含む形態(以下、この形態を「塗布タイプ」ともいう。)、(ii)粉体状の混合物3Mが、肌側シート32と非肌側シート33とが接合された袋体内で移動可能である形態(以下、この形態を「粉体タイプ」ともいう。)、又は(iii)混合物3M自体がシート状に成形されている形態(以下、この形態を「シートタイプ」ともいう。)等が挙げられる。すなわち、前述の塗布による方法で製造された発熱体は「塗布タイプ」に分類され、抄紙による方法で製造された発熱体は「シートタイプ」に分類される。
【0019】
図4(a)に示す発熱性本体3Aは、上述のとおり、発熱層31と基材シート37とから形成されている。同図に示す発熱性本体3Aには、発熱層31及び基材シート37がともに厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と基材シート37とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び基材シート37の双方に同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、一部又は全てのスリットS1が、発熱層31を厚み方向Zに貫通し、且つ基材シート37を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成されていてもよい。上述したスリットS1の各形態は、組み合わせて存在してもよい。
【0020】
また、
図4(b)に示す発熱性本体3Aには、発熱層31及び各基材シート37,38の全てをそれらの厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と各基材シート37,38とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び各基材シート37,38の全てに同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、例えば(1)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(2)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通する切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(3)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方と、発熱層31とを厚み方向Zに貫通し、両基材シート37,38のうち他方は厚み方向Zに貫通しない切り込みが形成された形態、又は上述したスリットS1の各形態の組み合わせが挙げられる。
【0021】
フィット性及び発熱特性を両立して一層優れたものとする観点から、上述したスリットS1の形態は、発熱性本体3Aの構成部材の全てを厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1であることが更に好ましい。すなわち、
図4(a)及び(b)に示すスリットS1の形態を採用することが更に好ましい。
【0022】
発熱層31に含まれる被酸化性金属の粒子としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粒子が挙げられる。被酸化性金属の粒子の粒径は、例えば0.1μm以上300μm以下程度とすることができる。電解質としては、被酸化性金属の粒子の表面に形成された酸化物の溶解が可能なものが用いられる。その例としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物のうち少なくとも一種が好ましく用いられ、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄のうち少なくとも一種がより好ましく用いられる。炭素材料としては、水分保持剤として作用するほかに、被酸化性金属への酸素保持剤及び供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。炭素材料としては例えば活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等が挙げられる。
【0023】
基材シート37は、十分なシート強度の確保の観点から、その坪量が好ましくは10g/m2以上、より好ましくは35g/m2以上であり、また、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下である。発熱層31における被酸化性金属の坪量は、十分な発熱量の確保の観点から、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上であり、また、好ましくは3000g/m2以下、より好ましくは1500g/m2以下である。第2基材シート38を用いる場合、その坪量は基材シート37と同様の範囲であることが好ましい。
【0024】
発熱持続性を向上させる観点から、発熱層31における電解質の量は、坪量として、好ましくは4g/m2以上、より好ましくは5g/m2以上であり、また、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下、更に好ましくは30g/m2以下である。同様の観点から、発熱層31における炭素材料の量は、坪量として、好ましくは4g/m2以上、より好ましくは8g/m2以上であり、また、好ましくは300g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは50g/m2以下である。これらの坪量は、基材シート37の一方の面に発熱層31を形成した場合の値である。
【0025】
上述したとおり、発熱層31は含水状態になっている。発熱層31の含水率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。発熱層31の含水率をこの範囲内に設定することで、基材シート37に加えて、発熱層31にスリットを形成させることができ、その結果、フィット性及び発熱特性に優れたものとなる。発熱層31の含水率は、発熱層31を窒素環境下で取り出し、その質量を測定する。この発熱層31を、真空中、105℃の乾燥炉において2時間水分を取り除いて、その質量を再度測定し、これらの質量の差から含水量を測定する。上述の発熱層の含水率は、一つの発熱層あたりの値である。
【0026】
図5(a)及び(b)には、発熱性本体3Aを構成する発熱層31及び基材シート37に形成されているスリットS1の一実施形態が示されている。同図に示すように、平面視において一方向に延びる直線状の切り込みからなる一個又は複数個の第1のスリットS1の群が、発熱層31及び基材シート37の双方に形成されている。第1のスリットS1は、第1の方向Yに沿って延びるように間欠的に配置されて第1のスリット列L1を形成している。
図5(a)に示す第1のスリット列L1は、第1の方向Yと直交する第2の方向Xに並んで複数列配置され且つ互いに交差しないように形成されている。
図2及び
図5(a)では、スリットS1の延びる第1の方向Yと、温熱具1の縦方向Yとが一致しており、また、第2の方向Xと、温熱具1の横方向Xとが一致している。これに代えて、
図5(b)に示すように、第1のスリット列L1は、温熱具1の縦方向Y及び横方向Xの双方と交差し、且つ縦方向Y及び横方向Xの双方に直交しないように傾斜して形成されていてもよい。
図5(b)に示す第1のスリット列L1は、複数列配置され且つ互いに交差しないように温熱具1の縦方向Y及び横方向Xの双方に傾斜して形成されている。なお、縦方向Yは、横方向Xと直交する方向であり、以下の説明では、各部材における縦方向は、温熱具1の縦方向Yと一致する方向として説明する。
【0027】
図5(a)及び(b)に示す実施形態とは別の実施形態として、
図6(a)ないし(f)に示す実施形態を採用することもできる。本実施形態では、直線状の切り込み又は円弧状の切り込みからなる一個以上の第1のスリットS1が、発熱性本体3Aにおける発熱層31と、両基材シート37,38のうち少なくとも一方のシートとに形成されているものである。直線状の切り込みからなるスリットS1の配置形態としては、
図5(a)及び(b)に示す実施形態の他に、
図6(a)に示すように、直線状のスリットS1が一方向に延びるように一個形成された形態、
図6(b)に示すように、直線状のスリットS1が複数個形成され、該スリットS1が一方向に延びるように配置された一列の第1のスリット列L1が形成された形態、又は
図6(c)に示すように、直線状のスリットS1が複数個形成され、これらのスリットが同一の方向を向いて並列配置されるように形成された形態等が挙げられる。また、円弧状の切り込みからなるスリットS1の形態としては、例えば
図6(d)に示すように、円弧状のスリットS1が一個形成された形態、
図6(e)に示すように、円弧状のスリットS1が複数個形成され、且つこれらのスリットS1が同一円周上に位置するように存在する形態、又は
図6(f)に示すように、円弧状のスリットS1が複数個形成され、且つこれらのスリットS1が二個以上の同心円状に位置するように存在する形態が挙げられる。
図6(e)及び(f)中、符号CFは仮想円の円周を示し、符号CCは仮想円の中心を示す。
【0028】
温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第1のスリットS1の長さW1(
図5(a)参照)は、好ましくは1mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下である。また、第1のスリット列L1における第1のスリットS1どうしの間隔W2(
図5(a)参照)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である。第1のスリットS1の長さW1、及びこれらの間隔W2はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
同様に、温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第1のスリット列L1どうしの間隔W3(
図5(a)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは8mm以上であり、また、好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下である。第1のスリット列L1どうしの間隔W3はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第1のスリット列L1の列数は、好ましくは1列以上、より好ましくは2列以上、更に好ましくは3列以上であり、また、好ましくは10列以下、より好ましくは5列以下である。
【0031】
図5(a)及び(b)並びに
図6(a)ないし(f)に示す実施形態のうち、フィット性及び発熱特性を更に高める観点から、一方向に延びる直線状の切り込みからなるスリットを形成した場合には、
図5(a)及び(b)並びに
図6(a)ないし(c)に示すスリットのうちいずれか一つの形態が好ましく、
図5(a)及び(b)並びに
図6(b)及び(c)に示すスリットのうちいずれか一つの形態がより好ましく、
図5(a)及び(b)に示すスリットのうちいずれか一つの形態が更に好ましい。また、円弧状の切り込みからなるスリットを形成した場合には、
図6(d)ないし(f)に示すスリットのうちいずれか一つの形態が好ましく、
図6(e)ないし(f)に示すスリットのうちいずれか一つの形態がより好ましく、
図6(f)に示すスリットの形態が更に好ましい。
【0032】
発熱体3、耳掛け部4、第1シート5及び第2シート6に用いられ得るシート材は、これらの通気性、透湿性、風合い、伸縮性、強度や、発熱シート及び発熱組成物の構成材料の漏れ出し防止等の性質を考慮して適宜決定すればよく、例えば不織布、織布、紙、樹脂フィルム、又はこれらの組み合わせ等が用いられる。通気度が高く且つ発熱シート等の漏れ出しを防止するシート材としては、メルトブローン不織布、紙及び透湿性フィルムが挙げられ、これらは単独で又は複数組み合わせて、肌側シート32、非肌側シート33、及び各基材シート37,38に好適に用いられる。強度を付与する目的で用いられるシート材としては、スパンボンド不織布が好適に用いられる。風合いを良好にする目的で用いられるシート材としては、サーマルボンド不織布が好適に用いられる。伸縮性を発現させる目的で用いられるシート材としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維を含むエアスルー不織布やスパンボンド不織布等が用いられる。上述した不織布に加えて、更に該不織布をシリコーンや界面活性剤等で表面処理したものを用いることもできる。また、これらのシート材を組み合わせて、所望の性質を発現させることもできる。特に、使用者に温感を知覚させて、温感に起因する使用感を向上させる観点から、第1シート5と肌側シート32とはともに通気性の高いシート材を用いることが好ましい。
【0033】
シート材として通気性のものを用いる場合、第1シート5の通気度は、第2シート6の通気度よりも低いことが好ましい。具体的には、第1シート5の通気度は、0.01秒/100mL以上であることが好ましく、50秒/100mL以上であることがより好ましく、2000秒/100mL以上であることが更に好ましく、また、15000秒/100mL以下であることが好ましく、10000秒/100mL以下であることがより好ましい。また、第2シート6の通気度は高ければ高いことが好ましく、具体的には、50秒/100mL以上が好ましく、4000秒/100mL以上であることがより好ましく、20000秒/100mL以上であることが更に好ましく、非通気のシートであることが一層好ましい。通気度は、JIS P8117に記載の方法によって測定されるものであり、通気度が大きいことは、空気の通過に時間がかかることを意味しているので、通気性が低いことを意味している。通気性に関して第1シート5及び第2シート6を比較すると、第1シート5の通気性が、第2シート6の通気性よりも高くなっている。また、発熱体3を複数のシート材を組み合わせた袋体の構成とした場合、発熱体3における第1シート5側に配されるシート材は、発熱体3における第2シート6側に配されるシート材の通気度よりも低いことも好ましい。すなわち、肌側シート32の通気度は、非肌側シート33の通気度よりも低いことが好ましい。
【0034】
シート材として透湿性のものを用いる場合、第1シート5の透湿度は2000g/(m2・24h)以上であることが好ましく、2500g/(m2・24h)以上であることがより好ましく、3000g/(m2・24h)以上であることが更に好ましい。第2シート6の透湿度は、第1シート5の透湿度と同じでもよく、あるいは第1シート5の透湿度よりも大きいか又は小さくてもよい。このような構成となっていることによって、使用者が温熱を知覚しやすくすることができる。透湿度は、JIS Z0208に準拠して測定される。肌側シート32及び非肌側シート33の透湿度は、第1シート5及び第2シート6と同様とすることができる。
【0035】
第1シート5及び第2シート6として不織布を用いる場合、第2シート6の坪量は、第1シート5の坪量よりも大きいことが好ましい。第1シート5の坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、また、200g/m2以下であることが好ましく、130g/m2以下であることがより好ましい。また、第2シート6の坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、30g/m2以上であることがより好ましく、また、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい。肌側シート32及び非肌側シート33の坪量は、第1シート5及び第2シート6と同様とすることができる。
【0036】
以上の構成を有する本発明の温熱具によれば、第1のスリットS1が発熱層31と両基材シート37,38のうち少なくとも一方のシートとに形成されているので、被酸化性金属の酸化に伴って発熱層31の硬化が進行する場合でも、発熱性本体3Aの可撓性を維持することができ、その結果、目へのフィット性が向上する。また、第1のスリットS1が発熱層31と両基材シート37,38のうち少なくとも一方のシートとに形成されていることによって、発熱層31と空気中の酸素との接触に起因する酸化反応が進行しやすくなるので、所望の温度に発熱するまでの時間を短くすることができ、その結果、温熱具の使用時における発熱の立ち上がり速度等の発熱特性が優れたものとなる。
【0037】
また、本発明の好ましい態様において、発熱性本体3Aに厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1を設けることによって、発熱性本体3Aの可撓性が高くなるとともに、発熱層31への酸素供給をより効果的に行うことができるので、目へのフィット性と温熱具の使用時における発熱特性とがより一層優れたものとなる。これに加えて、複数個のスリットS1が間欠的に配された第1のスリット列L1が形成されていることによって、発熱性本体3Aが完全に個々に分断されておらず、保存状態(未使用状態)での発熱体の劣化が少なくなるという利点も奏される。
【0038】
温熱具の目へのフィット性を更に高めるとともに、発熱特性をより優れたものとする観点から、発熱性本体3Aは、
図7(a)ないし(d)に示すように、第1のスリット列L1に加えて、該スリット列L1に交差する方向に延びるよう形成された第2のスリット列L2を有することが好ましい。
図7(a)ないし(d)に示す第2のスリット列L2は、第1のスリット列L1と同様に、厚み方向に非貫通又は貫通の切り込みからなる複数個の直線状の第2のスリットS2の群が横方向Xに沿って延びるように間欠的に配置されている。第2のスリット列L2は、該スリット列L2どうしが互いに交差しないように、縦方向Yに沿って複数列配置されている。
図7(a)ないし(d)に示す各スリット列L1,L2はそれぞれ直交している。
図7(a)ないし(d)に示す各スリットS1,S2は互いに交差していないが、これらの一部又は全てが交差していてもよい。
【0039】
また、第2のスリット列L2は、第1のスリット列L1と同様に一列のみ形成されていてもよい。また、第2のスリットS2は、
図6(b)及び(c)に示す第1のスリットS1と同様に、直線状のスリットS2が複数個形成され、該スリットS2が一方向に延びるように配置された一列の第2のスリット列L2が形成された形態、又は、直線状のスリットS2が複数個形成され、これらのスリットS2が同一の方向を向いて並列配置されるように形成された形態とすることができる。
【0040】
温熱具のフィット性及び発熱特性をより優れたものとする観点から、発熱性本体3Aを構成する発熱層31及び基材シート37に形成される各スリットS1,S2並びに各スリット列L1,L2が、所定の配置となるように形成することがより好ましい。詳細には、
図7(a)に示すように、第1のスリットS1と第2のスリットS2とが互いに交差しないように、第1のスリットS1及び第2のスリットS2が配置されていることがより好ましい。同図に示すように、第1のスリットS1と第2のスリットS2とは格子状に配置されており、第1のスリット列L1と第2のスリット列L2との交点を含む領域は、発熱層31及び基材シート37が切り込みによって分断されてない非分断領域3Nとなっている。非分断領域3Nは、第1のスリット列L1において隣り合う第1のスリットS1間に位置する第1スリット非形成領域と、第2のスリット列L2において隣り合う第2のスリットS2間に位置する第2スリット非形成領域とで形成されている。
【0041】
温熱具のフィット性及び発熱特性を更に優れたものとする観点から、
図7(b)及び(c)に示すように、第1のスリットS1と第2のスリットS2とが互いに交差しないように形成されていることに加えて、第2のスリット列L2において前後に隣り合う2つの第2のスリットS2の間を、第1のスリット列L1における第1のスリットS1が通過するように、第1のスリットS1及び第2のスリットS2が配置されていることが更に好ましい。
図7(b)に示す配置形態では、第1のスリットS1の長さが第2のスリットS2の長さよりも短く形成されており、列方向に隣り合う第2のスリットS2の間を、第1のスリットS1が通過するようになっている。また、
図7(c)に示す配置形態では、第1のスリットS1の長さが第2のスリットS2の長さと略同じであり、隣り合う第1のスリット列L1において形成された第1のスリット列L1のピッチが同一で、且つ位相が半ピッチずれて形成されており、各スリットS1,S2が千鳥格子状の形態となっている。「前後に隣り合う」とは、スリット列におけるスリットの配置方向に沿って隣り合うことを指す。
【0042】
また、温熱具のフィット性及び発熱特性を一層優れたものとする観点から、例えば
図7(b)、(c)及び(d)に示すように、第1のスリット列L1において前後に隣り合う2つの第1のスリットS1の間を、第2のスリット列L2における第2のスリットS2が通過しないように、第1のスリットS1及び第2のスリットS2が配置されていることがより一層好ましい。このような構成とするためには、例えば
図7(b)に示すように、隣り合うスリット列でのスリットのピッチは同じとし、一方のスリットの長さを他方のスリットの長さよりも短くしたり、
図7(c)に示すように、一方のスリットの位相を隣り合うスリット列で異なるようにしたり、
図7(d)に示すように、隣り合うスリット列でのスリットのピッチは同一とし、一方のスリットの長さを他方のスリットの長さよりも長くしたりすることによって形成することができる。
【0043】
図7(a)ないし(d)に示す配置形態はいずれも、スリットS1の延びる第1の方向Yと、温熱具1の縦方向Yとが一致しており、また、スリットS2の延びる第2の方向Xと、温熱具1の横方向Xとが一致している。これによって、第1のスリット列L1の延びる方向は温熱具1の縦方向Yと一致し、第2のスリット列L2の延びる方向は温熱具1の横方向Xと一致している。これに代えて、各スリット列L1,L2は、温熱具1の横方向X及び縦方向Yの双方と交差し、且つ温熱具1の横方向X及び縦方向Yの双方と直交しないように傾斜して形成されていてもよい。また、各スリット列L1,L2は、それぞれ複数列配置され且つ互いに交差しないように温熱具1の横方向X及び縦方向Yの双方に対して傾斜して形成されていてもよい。各スリット列L1,L2がそれぞれ傾斜して形成されている場合でも、本発明の効果は十分に奏される。
【0044】
温熱具1の縦方向Yに沿って延びる第1のスリット列L1は、温熱具1を装着した場合に、発熱体3が、使用者の目及びその周囲を覆うように、第1のスリット列L1を軸として折れ曲がるようになる。温熱具1の使用時における発熱体3の折れ曲がりに起因して、発熱層31と空気中の酸素との接触面積が増え、温熱具自体のフィット性の向上に加えて、発熱の立ち上がり速度等の発熱特性がより一層優れたものとなる。このように、装着時における発熱体3の折れ曲がりに起因する発熱特性を特に優れたものとする観点から、温熱具1の縦方向Yに沿って延びる第1のスリット列L1における第1のスリットS1の長さW1が、温熱具1の横方向Xに沿って延びる第2のスリット列L2における第2のスリットS2の長さW4よりも長いことが一層好ましい。つまり、発熱特性の向上の観点から、
図7(b)に示すスリット形態であることがより好ましく、
図7(a)又は(c)に示すスリット形態であることが更に好ましく、
図7(d)に示すスリット形態であることが一層好ましい。
【0045】
温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第2のスリットS2の長さW4(
図7(a)参照)は、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である。また、第2のスリット列L2における第2のスリットS2どうしの間隔W5(
図7(a)参照)は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。第2のスリットS2の長さW4、及びこれらの間隔W5はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第2のスリット列L2どうしの間隔W6(
図7(a)参照)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは8mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。第1のスリット列L1どうしの間隔W6はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
温熱具のフィット性を向上させるとともに、発熱特性を向上させる観点から、第2のスリット列L2の列数は、好ましくは1列以上、より好ましくは2列以上、更に好ましくは4列以上であり、また、好ましくは7列以下、より好ましくは5列以下である。
【0048】
以上は、発熱層31及び基材シート37に形成されるスリットの配置形態に関する説明であったところ、以下に、本発明で用いられる発熱体3、すなわち繊維材料を含む発熱体3の実施形態について、
図8ないし
図12を参照して説明する。以下の実施形態では、上述した実施形態と異なる点についてのみ説明し、上述した実施形態と同様の点については同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
図8(a)及び(b)は、本発明で用いられる発熱体3の一実施形態を示す断面図である。同図に示すように、発熱体3における発熱層31は、更に繊維材料3Fを含むことが好ましい。つまり、発熱層31は、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水に加えて、繊維材料3Fを含む混合物であることが好ましい。発熱層31が繊維材料3Fを含むことによって、発熱体3の保水性、成形性及び保形性が良好となる。また、発熱層31内に空隙が生じやすくなるので、発熱層31への酸素供給の増加に伴う酸化がより早期に進行し、その結果、発熱の立ち上がり速度が高く、発熱特性に優れた温熱具となる。
【0050】
図8(a)及び(b)に示す発熱層31は、粉体タイプの形態であるか、又はシートタイプの形態であり得る。特に、本発明における発熱体3として、シートタイプの態様のうち、繊維材料3Fを含む混合物が分散した状態で抄紙されて、発熱層31がシート状に成形された形態(以下、この態様を「抄紙タイプ」ともいう。)のものを用いることによって、本発明の温熱具は、塗布タイプの発熱層31を備える温熱具と同等のレベルに発熱特性を向上できるとともに、フィット性を向上させたものとなる。
【0051】
図8(a)及び(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31と基材シート37とを少なくとも備えており、基材シート37の一面に発熱層31が設けられている。
図8(a)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31と基材シート37とから形成されている。必要に応じて、
図8(b)に示すように、発熱性本体3Aは、発熱層31の基材シート37が配されていない面側に、基材シート37と同一の又は異なる材料や構成で形成された第2基材シート38が更に配されていてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、後述する吸水材料を含む吸水シート等が更に配されていてもよい。
【0052】
本実施形態におけるスリットS1は、発熱層31及び各基材シート37,38を厚み方向Zに貫通するように形成されているが、これに代えて厚み方向Zに非貫通のスリットであってもよい。詳細には、
図8(a)に示す発熱性本体3Aは、上述のとおり、発熱層31と基材シート37とから形成されている。同図に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び基材シート37がともに厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と基材シート37とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び基材シート37の双方に同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、一部又は全てのスリットS1が、発熱層31を厚み方向Zに貫通し、且つ基材シート37を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成されていてもよい。上述したスリットS1の各形態は、組み合わせて存在してもよい。
【0053】
また、
図8(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び各基材シート37,38の全てがこれらの厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と各基材シート37,38とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び各基材シート37,38の全てに同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、例えば(1)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(2)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通する切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(3)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方と、発熱層31とを厚み方向Zに貫通し、両基材シート37,38のうち他方は厚み方向Zに貫通しない切り込みが形成された形態、又は上述したスリットS1の各形態の組み合わせが挙げられる。
【0054】
繊維材料としては、天然及び合成の繊維材料を特に制限無く用いることができる。天然繊維材料としては、植物繊維(コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等)、動物繊維(羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等)、鉱物繊維(石綿等)が挙げられる。合成繊維材料としては、例えば、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等)、合成高分子繊維(ナイロン、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、レーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ等)、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらの繊維材料は単独で又は複数組み合わせて用いることができる。これらのうち、被酸化性金属との均一な分散性及び空隙の確保による酸素透過性を両立して、発熱特性を高める観点から、繊維材料は、木材パルプ、コットン及びポリエステルのうち少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0055】
発熱層31を構成する混合物に繊維材料3Fを含む場合、繊維材料は、その平均繊維長が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは2mm以上、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。繊維材料の繊維長がこのような範囲であれば、発熱層31の厚さを均一に保つことができ、発熱特性に優れた発熱体3を製造することができる。
【0056】
発熱層31を構成する混合物に含まれる繊維材料3Fの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。繊維材料の含有量がこのような範囲であれば、発熱特性に優れた発熱体3を製造することができる。
【0057】
図9(a)及び(b)並びに
図10(a)及び(b)は、発熱体3の更に別の実施形態を示す断面図である。本発明で用いられる繊維材料を含む発熱体3の実施形態としては、
図9(b)及び
図10(b)に示す態様が挙げられる。同図に示すように、発熱体3における発熱層31は、更に吸水材料3Pを含むことが好ましい。つまり、発熱層31は、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水に加えて、吸水材料3Pを含む混合物であることが好ましい。発熱層31に吸水材料3Pが含まれることによって、発熱層31の含水率を適切に制御することができ、その結果、温熱具1の発熱特性を首尾よく制御することができる。
【0058】
図9(a)及び(b)並びに
図10(a)及び(b)に示す発熱性本体3Aは、上述した実施形態と同様に、発熱層31と基材シート37とを少なくとも備えており、基材シート37の一面に発熱層31が設けられている。
図9(a)及び
図9(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31と基材シート37とから形成されている。必要に応じて、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、発熱性本体3Aは、発熱層31の基材シート37が配されていない面側に、基材シート37と同一の又は異なる材料や構成で形成された第2基材シート38が更に配されていてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、吸水材料3Pを含む吸水シート等が更に配されていてもよい。
【0059】
本実施形態におけるスリットS1は、発熱層31及び各基材シート37,38を厚み方向Zに貫通するように形成されているが、これに代えて厚み方向Zに非貫通のスリットであってもよい。詳細には、
図9(a)及び
図9(b)に示す発熱性本体3Aは、上述のとおり、発熱層31と基材シート37とから形成されている。同図に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び基材シート37がともに厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と基材シート37とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び基材シート37の双方に同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、一部又は全てのスリットS1が、発熱層31を厚み方向Zに貫通し、且つ基材シート37を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成されていてもよい。上述したスリットS1の各形態は、組み合わせて存在してもよい。
【0060】
また、
図10(a)及び
図10(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び各基材シート37,38の全てが厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と各基材シート37,38とのスリットS1の形成位置は一致している。つまり、スリットS1は、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31及び各基材シート37,38の全てに同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、例えば(1)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(2)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通する切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(3)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方と、発熱層31とを厚み方向Zに貫通し、両基材シート37,38のうち他方は厚み方向Zに貫通しない切り込みが形成された形態、又は上述したスリットS1の各形態の組み合わせが挙げられる。本実施形態において、第1のスリットS1に加えて、第2のスリットS2が形成されている場合には、第2のスリットS2は、上述したスリットS1と同様に、貫通、非貫通、又はこれらの組み合わせの形態とすることができる。
【0061】
発熱体3としては、例えば
図9(a)及び
図10(a)に示すように、発熱層31が、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、水及び吸水材料3Pを含み、且つ上述の繊維材料を含まない態様であってもよく、あるいは、
図9(b)及び
図10(b)に示す本発明の一実施形態のように、発熱層31が、吸水材料3Pを含む混合物に上述の繊維材料を更に含む態様であってもよい。これらの具体的な態様としては、例えば(i)吸水材料と、必要に応じて繊維材料とを均一に混合した状態のシート状の発熱層31であるか、(ii)吸水材料が発熱層31の厚み方向中央域に主として存在しており、且つ発熱層31の表面に吸水材料が実質的に存在していない構造を有するシート状の発熱層31であるか、又は(iii)吸水材料が発熱層31の一方の面側に主として存在しているシート状の発熱層31である態様が挙げられる。
【0062】
吸水材料3Pとしては、例えば吸水性ポリマーの粒子等が挙げられる。吸水性ポリマーの具体例としては、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸若しくはアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体などが挙げられる。吸水材料の形状は、球状、塊状、ブドウ房状、繊維状等の粒子とすることができる。吸水材料の粒径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。このような吸水性ポリマーの粒子としては、例えば、アクアリックCAやアクアリックCAW(ともに日本触媒株式会社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
【0063】
吸水材料3Pの坪量は、発熱持続性を向上させる観点から、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以下である。この坪量は、基材シート37の一方の面に発熱層31を形成した場合の値である。
【0064】
図11(a)及び(b)並びに
図12(a)及び(b)は、発熱体3の更に別の実施形態を示す断面図である。同図に示すように、発熱性本体3Aは、発熱層31を挟んで基材シート37と反対側に、吸水材料3Pを含む吸水材料層3Lが更に設けられていることも好ましい。同図に示す吸水材料層3Lは、発熱層31と接するように配置されている。このような構成であっても、発熱層31の含水率を適切に制御することができ、その結果、温熱具1の発熱特性を首尾よく制御することができる。吸水材料層3Lの態様としては、例えば(i)発熱層31上に吸水材料3Pを散布するか、(ii)発熱層31の基材シート37が配されてない面側に吸水材料3Pを含む吸水シートを重ね合わせて配置するか、又は(iii)発熱層31の基材シート37が配されてない面側に吸水材料3Pを散布若しくは該吸水シートを配し、更に吸水材料3Pの発熱層31が配されていない側の面に第2基材シート38を重ね合わせたものとすることができる。すなわち、吸水材料層3Lは、吸水材料3Pの散布、又は吸水材料3Pを含むシート状物の配置によって形成することができる。吸水材料3Pの材質、形状及び坪量は、上述と同様とすることができる。
【0065】
図11(a)及び(b)並びに
図12(a)及び(b)に示す発熱性本体3Aは、上述した実施形態と同様に、発熱層31と基材シート37とを少なくとも備えており、基材シート37の一面に発熱層31が設けられている。本発明で用いられる繊維材料を含む発熱体3の実施形態としては、
図11(b)及び
図12(b)に示す態様が挙げられる。
図11(a)及び
図11(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び基材シート37に加えて、吸水材料3Pを含む吸水材料層3Lが配置されて形成されている。必要に応じて、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、発熱性本体3Aは、吸水材料層3Lの発熱層31が配されていない面側に、基材シート37と同一の又は異なる材料や構成で形成された第2基材シート38が更に配されていてもよい。
【0066】
本実施形態におけるスリットS1は、発熱層31及び各基材シート37,38を厚み方向Zに貫通するように形成されているが、これに代えて厚み方向Zに非貫通のスリットであってもよい。詳細には、
図11(a)及び
図11(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31及び基材シート37に加えて、吸水材料層3Lを含んで形成されている。同図に示す発熱性本体3Aは、発熱層31、基材シート37及び吸水材料層3Lがともに厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31と基材シート37とのスリットS1の形成位置はそれぞれ同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、一部又は全てのスリットS1が、発熱層31及び吸水材料層3Lを厚み方向Zに貫通し、且つ基材シート37を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成されていてもよい。上述したスリットS1の各形態は、組み合わせて存在してもよい。
【0067】
また、
図12(a)及び
図12(b)に示す発熱性本体3Aは、発熱層31、各基材シート37,38及び吸水材料層3Lの全てが厚み方向Zに貫通した切り込みからなるスリットS1が複数個形成されている。同図に示すように、発熱性本体3Aの平面視において、発熱層31、各基材シート37,38及び吸水材料層3LのスリットS1の形成位置はそれぞれ一致し、同じ位置に形成されている。スリットS1の形態はこれに限られず、例えば(1)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31を厚み方向Zに貫通しない切り込みから形成されているとともに、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(2)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方を厚み方向Zに貫通し、且つ発熱層31及び吸水材料層3Lを厚み方向Zに貫通する切り込みから形成され、両基材シート37,38のうち他方は切り込みが形成されていない形態、(3)一部又は全てのスリットS1が、両基材シート37,38のうちいずれか一方、発熱層31及び吸水材料層3Lを厚み方向Zに貫通し、両基材シート37,38のうち他方は厚み方向Zに貫通しない切り込みが形成された形態、又は上述したスリットS1の各形態の組み合わせが挙げられる。本実施形態において、第1のスリットS1に加えて、第2のスリットS2が形成されている場合には、第2のスリットS2は、上述したスリットS1と同様に、貫通、非貫通、又はこれらの組み合わせの形態とすることができる。
【0068】
以上は、温熱具1に関する説明であったところ、以下に温熱具1の製造方法を説明する。温熱具1の製造方法として、(i)被酸化性金属の粒子、炭素成分、及び水を含む塗料を基材シート37の一方の面に塗工して発熱層31とし、然る後に、発熱層31及び基材シート37にスリットを形成する方法(以下、この製造方法を「塗布型の製造方法」ともいう。)、又は(ii)被酸化性金属の粒子、炭素成分、水及び繊維材料を含む組成物を抄紙して中間成形体を抄造し、該中間成形体に電解質を含有させて発熱層31を形成し、然る後に発熱層31と基材シート37とを積層して、スリットを形成する方法(以下、この製造方法を「抄紙型の製造方法」ともいう。)が挙げられる。いずれの製造方法であっても、フィット性が高く、発熱特性に優れた温熱具を製造することができる。
【0069】
温熱具1における塗布型の製造方法は、まず、基材シート37の一面に、電解質を固体状態又は水溶液の状態で塗工する工程Aと、該電解質を含まず、且つ被酸化性金属の粒子、炭素材料、及び水を含む塗料を塗工する工程Bとを備える発熱層形成工程が行われる。電解質を塗工する工程は、該電解質を固体状態で散布するか、又は水溶液をスプレーする等の手段によって行うことができる。被酸化性金属の粒子、炭素材料及び水を含む塗料を塗工する工程は、例えばダイコータ等の塗布装置を用いて該塗料を塗布することによって行うことができる。工程A及び工程Bはいずれを先に行ってもよく、また、工程A及び工程Bを同時に行ってもよい。このようにして、基材シート37の一面に、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水を含む発熱層31が形成される。発熱層31に繊維材料を含む場合には、繊維材料を混合した塗料を基材シート37に塗布するか、又は発熱層31に繊維材料を散布等することによって、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、繊維材料及び水を含む発熱層31が形成される。発熱層31を形成したあと、必要に応じて、発熱層31を挟んで基材シート37と反対側に、第2基材シート38を更に積層してもよい。
【0070】
吸水材料3Pを含む発熱体3を形成する場合、発熱層形成工程を経て発熱層31が形成された後に、又はその形成前に、或いは発熱層形成工程における工程Aと工程Bとの間に、又は発熱層31の形成と同時に、基材シート37における発熱層31の形成面側(又は形成予定面側)に吸水材料3Pを供給する吸水材料供給工程を備えていてもよい。吸水材料3Pの供給は、前記塗料に吸水材料3Pを混合して塗布したり、該吸水材料3Pを塗料上に散布したり、吸水材料3Pを含む吸水シートを塗料上に積層する等の手段によって行うことができる。発熱層31を形成したあと、必要に応じて、発熱層31を挟んで基材シート37と反対側に、第2基材シート38を更に積層してもよい。
【0071】
次いで、発熱層31及び基材シート37に対して、直線状又は円弧上の切り込みからなるスリットを形成する(スリット形成工程)。直線状の切り込みからなるスリットを形成する場合、例えば一個又は複数個の第1のスリットS1の群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列L1を一列又は複数列形成し、これに加えて、必要に応じて、第1のスリット列L1の延びる方向と交差する方向に延びる一個又は複数個の第2のスリットS2の群が一方向に延びるように配置された第2のスリット列L2を一列又は複数列形成し、発熱性本体3Aとすることができる。第1のスリット列L1及び第2のスリット列L2の各スリットS1,S2は、切断刃を用い、発熱層31及び基材シート37を備える発熱性本体3Aに切断刃を進入させることで形成する。各スリットS1,S2は、切断刃の進入の程度を適宜調整することによって、厚み方向Zに貫通又は非貫通のスリットとすることができる。
【0072】
発熱層31及び基材シート37にスリット列を形成する場合には、例えば発熱層31が形成された基材シート37を一方向に搬送させながら、搬送方向と同方向に延びるように第1のスリット列L1を一列又は複数列形成する。次いで、必要に応じて、該搬送方向と交差する方向に延びるように第2のスリット列L2を一列又は複数列形成することが好ましい。この順序で各スリット列を形成することによって、基材シートを安定して搬送することができ、スリットS1,S2の形成位置のずれが極力抑えられる点で有利である。
【0073】
第1のスリット列L1の形成には、例えばロールの周方向に沿って間欠的に延び、且つロールの軸方向に一列又は複数列配置された切断刃を有する第1カッターロールを用いることができる。また、第2のスリット列L2の形成には、ロールの軸方向に沿って間欠的に延び、且つロールの周方向に一列又は複数列配置された切断刃を有する第2カッターロールを用いればよい。
図5に示すようなスリットを形成する場合には、第2のスリット列L2を形成するための第2カッターロールを用いずに、第1カッターロールを用いて第1のスリット列L1のみを形成すればよい。
【0074】
各スリット列L1,L2をともに搬送方向に交差する方向に形成する場合には、例えば、発熱層31が形成された基材シート37を一方向に搬送させながら、切断刃が、その延びる方向とロールの軸方向とが交差するように配されたカッターロールを用いて形成すればよい。また、
図6(d)ないし(f)に示すような、円弧上の切り込みからなる第1のスリットを形成する場合には、例えば、発熱層31が形成された基材シート37を一方向に搬送させながら、ロールの周面に配された円弧上の切断刃を所定の位置に有するカッターロールを用いて形成すればよい。
【0075】
特に、塗布型の製造方法において、各スリットS1,S2を発熱層31に形成するためには、塗料の流動性を低くして、切断刃が進入する前の状態に復元しにくくすることが好ましい。塗料の流動性を低くするためには、例えば塗料に増粘剤を添加したり、塗料の含水量を少なくしたりすることによって行うことができる。また、塗料の流動性を低くさせるとともに、発熱特性を首尾よく発現させる観点から、上述の手段に加えて、塗料の塗布量を多くしたり、吸水材料の含有量を多くすることが好ましい。
【0076】
発熱層31を形成するための塗料に含まれる増粘剤は、温熱具のフィット性の向上と、発熱特性の向上と、加工性とを高いレベルで兼ね備える観点から、その含有量が、塗料100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。また、水の含有量は、温熱具の発熱特性の向上及び加工性の向上とを両立させる観点から、塗料の全体の質量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。塗料の流動性は、発熱層の加工性を向上させる観点から、塗料の粘度として、好ましくは2000mPa・s以上、より好ましくは5000mPa・s以上、また、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは15000mPa・s以下である。粘度の測定は、23℃、50%RHにおいて、B型粘度計の4号ローターを用い、該ローターを6rpmで回転させて行った。
【0077】
塗料の塗工量は、坪量として、好ましくは180g/m2以上、より好ましくは350g/m2以上であり、また、好ましくは1200g/m2以下、より好ましくは1000g/m2以下、更に好ましくは800g/m2以下である。繊維材料及び吸水材料が塗料に混合された場合であっても、上述の塗工量の範囲であればよい。このような塗工量であることによって、発熱層31及び基材シート37にスリットを形成しやすくすることができ、その結果、フィット性及び発熱特性が高い温熱具1とすることができる。吸水材料の含有量は、上述した坪量であれば、本発明の効果は十分に奏される。
【0078】
最後に、スリットが形成された発熱性本体3Aを肌側シート32と非肌側シート33とからなる袋体に収容して発熱体3を形成し、然る後に、発熱体3を、肌側シート32と第1シート5とが対向し且つ非肌側シート33と第2シート6とが対向するように、第1シート5と第2シート6との間に保持させる。このようにして、目的とする温熱具1を製造することができる。
【0079】
次に、温熱具1における抄紙型の製造方法について説明する。本製造方法は、被酸化性金属の粒子、炭素材料、繊維材料及び水を含む組成物を抄紙して中間成形体を抄造し、該中間成形体に電解質を含有させて発熱層31を形成し、然る後に発熱層31と基材シート37とを積層する。
【0080】
まず、被酸化性金属の粒子、炭素材料、繊維材料及び水を含む組成物を製造する。水を除いた前記組成物中の被酸化性金属粒子の配合量は、発熱層31の柔軟性と発熱特性とを高める観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0081】
同様の観点から、水を除いた前記組成物中の炭素材料の配合量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、発熱層31の成形性と発熱特性とを両立する観点から、水を除いた前記組成物中の繊維材料の配合量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0082】
発熱層31に吸水材料3Pを分散させた態様とする場合には、前記組成物に吸水材料3Pを含有さることができる。水を除いた前記組成物中の吸水材料3Pの配合量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0083】
前記組成物には、更に着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pH調整剤、嵩高剤等の紙の抄造の際に通常用いられる添加物を添加してもよい。該原料組成物中の該添加物の配合量は、添加する添加物に応じて適宜設定することができる。
【0084】
次に、前記組成物を抄紙して所定の形態の中間成形体を抄造する。中間成形体の抄造は、シート状、立体形状等の各種形態の成形体の抄紙に用いられる従来の方法を特に制限無く用いることができる。このような抄紙方法としては、例えば、中間成形体をシート状とする場合には、連続抄紙式である円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いた抄紙方法、バッチ方式の抄紙方法である手漉法等が挙げられ、中間成形体を立体形状とする場合には、例えば、特許3155522号公報、特許3155503号公報、及び特許3072088号公報に記載の方法を適宜採用することができる。薄型の発熱体3を形成する観点から、シート状の中間成形体を抄造することが好ましい。本工程においては、必要に応じて、成形体の表面に前記繊維状物を更に漉き合わせることもできる。
【0085】
抄造によって得られたシート状の中間成形体は、成形性及び機械的強度を維持する観点から、含水率を好ましくは70%質量%以下、より好ましくは60質量%以下、またその下限が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるまで脱水する脱水工程を有してもよい。脱水方法は、吸引による脱水、加熱空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。これらの脱水は、空気雰囲気下で行ってもよく、被酸化性金属の酸化抑制の観点から好ましくは不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。このようにして、被酸化性金属の粒子、炭素材料及び繊維材料を含み、必要に応じて吸水材料を更に含むシート状且つ乾燥状態の中間成形体が形成される。
【0086】
次に、前記中間成形体に電解質を含有させて、発熱層31を形成する。電解質を含有させる工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。本工程は、抄紙後における中間成形体の処理方法、含水率、形態等に応じて適切な方法を採用することができる。電解質を含有させる方法としては、例えば、電解質の水溶液を前記中間成形体にスプレー、浸漬、グラビアコートなどの方法で含浸したり、固体の電解質を中間成形体に散布したりすることができる。このように形成されたシート状の発熱層31は、例えばこれを積層して、基材シート37の一面に配することができる。必要に応じて、発熱層31の基材シート37が配されていない側の面に第2基材シート38を積層することもできる。
【0087】
続いて、発熱層31及び基材シート37に対して、直線状又は円弧上の切り込みからなるスリットを形成する。直線状の切り込みからなるスリットを形成する場合、例えば一個又は複数個の第1のスリットS1の群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列L1を一列又は複数列形成し、これとともに、必要に応じて、第1のスリット列L1の延びる方向と交差する方向に延びる一個又は複数個の第2のスリットS2の群が一方向に延びるように配置された第2のスリット列L2を一列又は複数列形成し、発熱性本体3Aを形成する。スリット列の形成方法は、上述した塗布型の製造方法と同様に行うことができる。
【0088】
組成物に吸水材料を含有させず、且つ発熱体3に吸水材料を含有させる場合は、スリット列を形成する前、又はその後に、発熱層31における基材シート37が配されていない面側に吸水材料3Pを散布するか、又は吸水材料3Pを含む吸水シートを配して、吸水材料3Pを含む吸水材料層3Lを有する発熱性本体3Aを形成することができる。この後、必要に応じて、第2基材シート38を吸水材料層3Lの発熱層31が配されていない面側に重ね合わせてもよい。本工程における吸水材料3Pの坪量は、上述した坪量と同様とすることができる。
【0089】
最後に、スリットが形成された発熱性本体3Aを肌側シート32と非肌側シート33とからなる袋体に収容して発熱体3を形成し、然る後に、発熱体3を、肌側シート32と第1シート5とが対向し且つ非肌側シート33と第2シート6とが対向するように、第1シート5と第2シート6との間に保持させる。このようにして、目的とする温熱具1を製造することができる。
【0090】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、温熱具1における耳掛け部4の形態は、本体部2を使用者の両眼に固定可能な態様であれば、
図1及び
図2に示すシート状の部材に限定されない。例えば、
図13に示すように、ひも状の耳掛け部4を採用したり、糸状又は帯状の耳掛け部4を採用したりしてもよい。温熱具のフィット感を高める観点から、ゴムなどの弾性体を用いて、伸縮可能な耳掛け部4とすることが好ましい。
【0091】
上述した温熱具1における発熱体3の形態は、2つの発熱体3が離間して保持された形態として説明したが、使用者の両眼及びこれらの周囲に温感を付与可能であれば温熱具の形態は特に限定されない。例えば、使用者の両眼及びその周囲を覆うことができる形状及び大きさを有する1つの発熱体が第1シート5及び第2シート6の間に保持されていてもよく、3つ以上の発熱体が第1シート5及び第2シート6の間に保持されていてもよい。
【0092】
上述した温熱具1において、発熱性本体3Aは、基材シート37と、必要に応じて第2基材シート38とが配されている形態として説明したが、これに代えて、抄紙タイプの発熱層31とする場合には、各基材シート37,38が配されていなくてもよい。すなわち、一面が肌側シート32からなり、他面が非肌側シート33からなる扁平な包材内に、上述したスリットが形成されたシート状の発熱層31のみが収容されて、発熱体3となっていてもよい。この場合であっても、発熱層31は、保水性、成形性及び保形性という良好な効果を得ることができる。また、抄紙タイプのシート状の発熱層31は、上述した各態様のスリットが形成されているので、塗布タイプの発熱体3を備える温熱具と同等のレベルに発熱特性を向上できるとともに、この発熱体3を備える温熱具は着用者へのフィット性が向上する。
【0093】
また、少なくとも発熱層31において、第1のスリット列L1及び第2のスリット列L2がそれぞれ複数列形成されている場合、第1のスリット列L1どうしの間隔W3は、
図14(a)に示すように、第2のスリット列L2どうしの間隔W6よりも大きくなっているか、又は、
図14(b)に示すように、間隔W6よりも小さくなっていることが好ましく、間隔W3は、間隔W6よりも小さくなっていることが更に好ましい、このような構成になっていることによって、発熱特性の向上に加えて、温熱具のフィット性が更に向上する。このことは、上述したスリットS1,S2を抄紙タイプの発熱層31に対して形成した場合に特に有利である。
【0094】
また、少なくとも発熱層31において、直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットS1の群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列L1が複数列形成されている場合、隣り合う任意の2本のスリット列L1,L1を、該スリット列の延びる方向に沿って見たとき、いずれの位置においても、少なくとも一方のスリット列L1を構成するスリットS1が存在していることも好ましい。
図15に示す実施形態では、隣り合う第1のスリット列L1において形成された第1のスリット列L1のピッチが同一で、且つ位相が半ピッチずれて形成されており、各スリットS1が千鳥格子状の形態となっている。隣り合う各スリット列L1のピッチは同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、隣り合う各スリット列L1の位相のずれは、周期的であってもよく、それぞれ非周期的であってもよい。
【0095】
図15に示すスリットの形成態様は、第1のスリットS1及び第1のスリット列L1のみが形成されている態様を例にとり説明したが、この形態に限られず、第2のスリットS2及び第2のスリット列L2が更に形成されていてもよい。この場合、第2のスリット列L2が複数列形成されており、隣り合う任意の2本のスリット列L2,L2を、該スリット列の延びる方向に沿って見たとき、いずれの位置においても、少なくとも一方のスリット列L2を構成するスリットS2が存在していることも好ましい。この実施形態においては、隣り合う各スリット列L2のピッチは同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。また、隣り合う各スリット列L2の位相のずれは、周期的であってもよく、それぞれ非周期的であってもよい。
【0096】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の温熱具を開示する。
<1>
基材シートの一面に発熱層が設けられており、
前記発熱層が、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水の混合物を含み、
直線状又は円弧状の切り込みからなる一個以上の第1のスリットが、前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、温熱具。
【0097】
<2>
直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが同一方向を向いて並列配置されるように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、前記<1>に記載の温熱具。
<3>
切り込みからなる一個の第2のスリットが、第1のスリットの延びる方向と交差する方向に延びるように形成されている、前記<2>に記載の温熱具。
<4>
切り込みからなる複数個の第2のスリットが同一方向を向いて並列配置され且つ第1のスリットの延びる方向と交差する方向に延びるように形成されている、前記<2>に記載の温熱具。
【0098】
<5>
第1のスリットと第2のスリットとが互いに交差しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<4>に記載の温熱具。
<6>
直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットの群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列が一列又は複数列形成されており、
第1のスリット列が複数列形成されている場合、該第1のスリット列が互いに交差しないように形成されている、前記<1>に記載の温熱具。
<7>
第1のスリット列における第1のスリットどうしの間隔は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは10mm以下である、前記<6>に記載の温熱具。
<8>
第1のスリット列の列数は、好ましくは1列以上、より好ましくは2列以上、更に好ましくは3列以上であり、また、好ましくは10列以下、より好ましくは5列以下である、前記<2>、<6>、<7>のいずれか一項に記載の温熱具。
<9>
直線状の切り込みからなる第1のスリットが複数個形成されており、
第1のスリットの群が一方向に延びるように配置された一列の第1のスリット列が、前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、前記<6>ないし<8>のいずれか一に記載の温熱具。
【0099】
<10>
第1のスリット列が複数列形成されており、
第1のスリット列どうしの間隔は、好ましくは4mm以上、より好ましくは8mm以上であり、また好ましくは25mm以下、より好ましくは15mm以下である、前記<2>、<6>ないし<8>のいずれか一に記載の温熱具。
<11>
切り込みからなる複数個の第2のスリットの群が一方向に延びるように配置された第2のスリット列が第1のスリット列と交差する方向に延びるように一列又は複数列形成されており、
第2のスリット列が複数列形成されている場合、該第2のスリット列が互いに交差しないように且つ第1のスリット列と交差する方向に延びるように形成されている、前記<6>に記載の温熱具。
<12>
第1のスリットと第2のスリットとが互いに交差しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<11>に記載の温熱具。
<13>
第2のスリット列において前後に隣り合う2つの第2のスリットの間を、第1のスリット列における第1のスリットが通過するように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<12>に記載の温熱具。
<14>
第1のスリット列において前後に隣り合う2つの第1のスリットの間を、第2のスリット列における第2のスリットが通過しないように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<13>に記載の温熱具。
【0100】
<15>
第1のスリットの長さが第2のスリットの長さよりも短く形成されており、
第1のスリットS1が、第2のスリット列方向に隣り合う第2のスリットS2の間を通過するように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<13>又は<14>に記載の温熱具。
<16>
第1のスリットS1の長さと第2のスリットS2の長さとが同じであり、
隣り合う第1のスリット列において形成された第1のスリット列のピッチが同一であり、且つ位相が半ピッチずれるように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<13>又は<14>に記載の温熱具。
<17>
第1のスリットの長さが第2のスリットの長さよりも長く形成されており、
第1のスリットが、第2のスリット列の延びる方向に隣り合う第2のスリットS2の間を通過するように、第1のスリット及び第2のスリットが配置されている、前記<14>に記載の温熱具。
<18>
第1のスリット列及び第2のスリット列はそれぞれ直交している、前記<11>ないし<17>のいずれか一に記載の温熱具。
<19>
前記温熱具は、横方向と該横方向に直交する縦方向とを有し、該横方向に長い形状を有する本体部を備え、
前記本体部は前記発熱層を備え、
第1のスリット列及び第2のスリット列は、前記横方向及び前記縦方向の双方と交差し、且つ該横方向及び該縦方向の双方と直交しないように傾斜して形成されている、前記<7>ないし<14>のいずれか一に記載の温熱具。
【0101】
<20>
前記温熱具は、横方向と該横方向に直交する縦方向とを有し、該横方向に長い形状を有する本体部を備え、
前記本体部は前記発熱層を備え、
第1のスリット列は前記縦方向に沿って延び、且つ第2のスリット列は前記横方向に沿って延びている、前記<11>ないし<18>のいずれか一に記載の温熱具。
<21>
切り込みからなる第2のスリットが複数個形成されており、
第2のスリット列における第2のスリットどうしの間隔は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である、前記<11>ないし<20>のいずれか一に記載の温熱具。
<22>
第2のスリット列の列数は、好ましくは1列以上、より好ましくは2列以上、更に好ましくは4列以上であり、また、好ましくは7列以下、より好ましくは5列以下である、前記<11>ないし<21>のいずれか一に記載の温熱具。
<23>
切り込みからなる第2のスリットが複数個形成されており、
第2のスリットの群が一方向に延びるように配置された一列の第2のスリット列が、前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、前記<11>ないし<22>のいずれか一に記載の温熱具。
<24>
第2のスリット列が複数列形成されており、
第2のスリット列どうしの間隔は、好ましくは4mm以上、より好ましくは8mm以上であり、また、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である、前記<11>ないし<22>のいずれか一に記載の温熱具。
【0102】
<25>
第2のスリットの長さは、好ましくは2mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である、前記<3>ないし<5>、<11>ないし<24>のいずれか一に記載の温熱具。
<26>
円弧状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが同一円周上に位置するように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、前記<1>に記載の温熱具。
<27>
円弧状の切り込みからなる複数個の第1のスリットが二個以上の同心円上に位置するように前記発熱層及び前記基材シートに形成されている、前記<1>に記載の温熱具。
<28>
第1のスリットの長さは、好ましくは1mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、好ましくは50mm以下、より好ましくは40mm以下である、前記<1>ないし<27>のいずれか一に記載の温熱具。
<29>
前記発熱層が繊維材料を含む、前記<1>ないし<28>のいずれか一に記載の温熱具。
【0103】
<30>
前記繊維材料は、木材パルプ、コットン及びポリエステルのうち少なくとも一種を用いることが好ましい、前記<29>に記載の温熱具。
<31>
前記繊維材料は、その平均繊維長が好ましくは0.5mm以上、より好ましくは2mm以上、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である、前記<29>又は<30>に記載の温熱具。
<32>
前記繊維材料の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である、前記<29>ないし<31>のいずれか一に記載の温熱具。
<33>
前記発熱層が吸水材料を更に含む、前記<1>ないし<32>のいずれか一に記載の温熱具。
<34>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層及び前記基材シートがともに厚み方向に貫通した切り込みからなる、前記<1>ないし<33>のいずれか一に記載の温熱具。
【0104】
<35>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層を厚み方向に貫通し、且つ前記基材シートを厚み方向に貫通しない切り込みからなる、前記<1>ないし<33>のいずれか一に記載の温熱具。
<36>
平面視において、第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層及び前記基材シートの双方に同じ位置に形成されている、前記<1>ないし<33>のいずれか一に記載の温熱具。
<37>
前記発熱層における前記基材シートが配されていない面側に、第2基材シートが配されている、前記<1>ないし<33>のいずれか一に記載の温熱具。
<38>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層、前記基材シート及び第2基材シートの全てを厚み方向に貫通した切り込みからなる、前記<37>に記載の温熱具。
<39>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方を厚み方向に貫通し、且つ前記発熱層を厚み方向に貫通しない切り込みからなり、
前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は切り込みが形成されていない、前記<37>に記載の温熱具。
【0105】
<40>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方を厚み方向に貫通し、且つ前記発熱層を厚み方向に貫通する切り込みからなり、
前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は切り込みが形成されていない、前記<37>に記載の温熱具。
<41>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方と、前記発熱層とを厚み方向に貫通し、且つ前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は厚み方向に貫通しない切り込みからなる、前記<37>に記載の温熱具。
<42>
平面視において、第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層と、前記基材シート及び第2基材シートのうち少なくとも一方とに同じ位置に形成されている、前記<37>ないし<41>のいずれか一に記載の温熱具。
<43>
前記発熱層を挟んで前記基材シートと反対側に、吸水材料を含む吸水材料層が更に設けられている、前記<1>ないし<42>のいずれか一に記載の温熱具。
<44>
前記吸水材料層は、前記発熱層上に該吸水材料が散布されて形成されたものである、前記<43>に記載の温熱具。
【0106】
<45>
前記吸水材料層は、前記発熱層の前記基材シートが配されてない面側に該吸水材料を含む吸水シートを配置して形成されたものである、前記<43>に記載の温熱具。
<46>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層、前記基材シート及び前記吸水材料層がともに厚み方向に貫通した切り込みからなる、前記<43>ないし<45>のいずれか一に記載の温熱具。
<47>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層及び前記吸水材料層を厚み方向に貫通し、且つ前記基材シートを厚み方向に貫通しない切り込みからなる、前記<43>ないし<45>のいずれか一に記載の温熱具。
<48>
平面視において、第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層、前記基材シート及び前記吸水材料層の同じ位置にそれぞれ形成されている、前記<43>ないし<47>のいずれか一に記載の温熱具。
<49>
前記吸水材料層における前記発熱層が配されていない側の面に、第2基材シートが配されている、前記<43>ないし<48>のいずれか一に記載の温熱具。
【0107】
<50>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層、前記基材シート、第2基材シート及び前記吸水材料層の全てが厚み方向に貫通した切り込みからなる、前記<49>に記載の温熱具。
<51>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方を厚み方向に貫通し且つ前記発熱層を厚み方向に貫通しない切り込みから形成されており、
前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は切り込みが形成されていない、前記<49>に記載の温熱具。
<52>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方を厚み方向に貫通し且つ前記発熱層及び前記吸水材料層を厚み方向に貫通する切り込みから形成されており、
前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は切り込みが形成されていない、前記<49>に記載の温熱具。
<53>
第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記基材シート及び第2基材シートのうちいずれか一方と、前記発熱層と、前記吸水材料層とを厚み方向に貫通し、且つ前記基材シート及び第2基材シートのうち他方は厚み方向に貫通しない切り込みが形成されている、前記<49>に記載の温熱具。
<54>
平面視において、第1のスリット及び第2のスリットのうち少なくとも一方が、前記発熱層と、前記基材シート及び第2基材シートのうち少なくとも一方と、前記吸水材料層とにそれぞれ同じ位置に形成されている、前記<49>ないし<53>のいずれか一に記載の温熱具。
【0108】
<55>
第2基材シートは、その坪量が好ましくは10g/m2以上、より好ましくは35g/m2以上であり、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下である、前記<37>ないし<42>、前記<49>ないし<54>のいずれか一に記載の温熱具。
<56>
前記吸水材料は、吸水性ポリマーの粒子であり、
前記吸水性ポリマーは、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸若しくはアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体、並びにポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体から選ばれる少なくとも一種である、前記<33>ないし<55>のいずれか一に記載の温熱具。
<57>
前記吸水材料は、その形状が、球状、塊状、ブドウ房状、及び繊維状の少なくとも一種である、前記<33>ないし<56>のいずれか一に記載の温熱具。
<58>
前記吸水材料は、その粒径が、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である、前記<33>ないし<57>のいずれか一に記載の温熱具。
<59>
前記吸水材料は、その坪量が、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以下である、前記<33>ないし<58>のいずれか一に記載の温熱具。
【0109】
<60>
前記温熱具は、使用時に使用者の両眼を覆う形状を有する本体部と、該本体部に備えられた発熱体と、該本体部に取り付けられ且つ該本体部による使用者の両眼の被覆状態を維持可能な一対の耳掛け部とを備え、
前記発熱体は、前記基材シート及び前記発熱層を含み、
前記本体部は、使用者の肌に近い側に位置する第1シートと、使用者の肌から遠い側に位置する第2シートとを備え、
第1シートと第2シートとが、両シート間に前記発熱体が保持されるように接合されている、前記<1>ないし<59>のいずれか一に記載の温熱具。
<61>
前記発熱体は、前記発熱層及び前記基材シートを含む発熱性本体が袋体内に収容されて形成されている、前記<60>に記載の温熱具。
<62>
前記温熱具は、横方向と該横方向に直交する縦方向とを有し、該横方向に長い形状を有する前記本体部を備え、
前記耳掛け部は、前記横方向の両外端域において前記本体部に接合された接合領域を有する、前記<60>又は<61>に記載の温熱具。
<63>
前記耳掛け部がシート材からなり、該シート材に、耳を通すための挿通部が形成されている、前記<60>ないし<62>のいずれか一に記載の温熱具。
<64>
前記耳掛け部がひも状の部材からなる、前記<60>ないし<62>のいずれか一に記載の温熱具。
【0110】
<65>
前記耳掛け部が弾性体からなる、前記<64>に記載の温熱具。
<66>
第1シートのJIS P8117に規定される通気度は、第2シートの該通気度よりも低いことが好ましい、前記<60>ないし<65>のいずれか一に記載の温熱具。
<67>
第1シートのJIS P8117に規定される通気度は、0.01秒/100mL以上であることが好ましく、50秒/100mL以上であることがより好ましく、2000秒/100mL以上であることが更に好ましく、また、15000秒/100mL以下であることが好ましく、10000秒/100mL以下であることがより好ましい、前記<60>ないし<66>のいずれか一に記載の温熱具。
<68>
第2シートの通気度は高ければ高いことが好ましく、具体的には、50秒/100mL以上が好ましく、4000秒/100mL以上であることがより好ましく、20000秒/100mL以上であることが更に好ましく、非通気のシートであることが一層好ましい、前記<60>ないし<67>のいずれか一に記載の温熱具。
<69>
第1シートのJIS Z0208に規定される透湿度が、2000g/(m2・24h)以上であることが好ましく、2500g/(m2・24h)以上であることがより好ましく、3000g/(m2・24h)以上であることが更に好ましい、前記<60>ないし<68>のいずれか一に記載の温熱具。
【0111】
<70>
第2シートのJIS Z0208に規定される透湿度が、第1シートの該透湿度と同じであるか、又は異なっている、前記<60>ないし<69>のいずれか一に記載の温熱具。
<71>
第1シート及び第2シートはともに不織布であり、
第2シートの坪量が、第1シートの坪量よりも大きいことが好ましい、前記<60>ないし<70>のいずれか一に記載の温熱具。
<72>
第1シートの坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、また、200g/m2以下であることが好ましく、130g/m2以下であることがより好ましい、前記<60>ないし<71>のいずれか一に記載の温熱具。
<73>
第2シートの坪量は、10g/m2以上であることが好ましく、30g/m2以上であることがより好ましく、また、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましい、前記<60>ないし<72>のいずれか一に記載の温熱具。
<74>
前記被酸化性金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物のうち少なくとも一種が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄のうち少なくとも一種が好ましく用いられる、前記<1>ないし<73>のいずれか一に記載の温熱具。
【0112】
<75>
前記被酸化性金属の坪量は、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上であり、また、好ましくは3000g/m2以下、より好ましくは1500g/m2以下である、前記<1>ないし<74>のいずれか一に記載の温熱具。
<76>
前記電解質の坪量は、好ましくは4g/m2以上、より好ましくは5g/m2以上であり、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは40g/m2以下、更に好ましくは30g/m2以下である、前記<1>ないし<75>のいずれか一に記載の温熱具。
<77>
前記炭素材料は、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、及び黒鉛のうち少なくとも一種である、前記<1>ないし<76>のいずれか一に記載の温熱具。
<78>
前記炭素材料の坪量は、好ましくは4g/m2以上、より好ましくは8g/m2以上であり、好ましくは300g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは50g/m2以下である、前記<1>ないし<77>のいずれか一に記載の温熱具。
<79>
前記発熱層の含水率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下である、前記<1>ないし<78>のいずれか一に記載の温熱具。
<80>
前記基材シートは、その坪量が好ましくは10g/m2以上、より好ましくは35g/m2以上であり、また、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下である、前記<1>ないし<79>のいずれか一に記載の温熱具。
【0113】
<81>
第1のスリット列及び第2のスリット列がそれぞれ複数列形成されており、
第1のスリット列どうしの間隔よりも、第2のスリット列どうしの間隔のほうが大きくなっている、前記<11>ないし<25>のいずれか一に記載の温熱具。
<82>
第1のスリット列及び第2のスリット列がそれぞれ複数列形成されており、
第1のスリット列どうしの間隔よりも、第2のスリット列どうしの間隔のほうが小さくなっている、前記<11>ないし<25>のいずれか一に記載の温熱具。
<83>
直線状の切り込みからなる複数個の第1のスリットの群が一方向に延びるように配置された第1のスリット列が複数列形成されており、
隣り合う任意の2本のスリット列を、該スリット列の延びる方向に沿って見たとき、いずれの位置においても、少なくとも一方のスリット列を構成するスリットが存在している、前記<6>に記載の温熱具。
【0114】
<101>
被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料及び水を含む発熱層を基材シートの一面に形成する発熱層形成工程と、該発熱層及び該基材シートにスリットを形成するスリット形成工程とを備え、
前記発熱層形成工程は、基材シートの一面に、電解質を塗工する工程と、該電解質を含まず且つ被酸化性金属の粒子、炭素材料、及び水を含む塗料を塗工する工程とを有する、温熱具の製造方法。
<102>
前記発熱層形成工程は、吸水材料を供給する工程を更に備える、前記<101>に記載の温熱具の製造方法。
<103>
水の含有量が、前記塗料の全体の質量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは25質量%以上、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である前記塗料を塗工する、前記<101>又は<102>に記載の温熱具の製造方法。
<104>
増粘剤を更に含む前記塗料を塗工する、前記<101>ないし<103>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
【0115】
<105>
前記増粘剤の含有量が、前記塗料100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である、前記<104>に記載の温熱具の製造方法。
<106>
粘度が、好ましくは2000mPa・s以上、より好ましくは5000mPa・s以上、また、好ましくは30000mPa・s以下、より好ましくは15000mPa・s以下である前記塗料を塗工する、前記<101>ないし<105>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<107>
坪量が、好ましくは180g/m2以上、より好ましくは350g/m2以上であり、好ましくは1200g/m2以下、より好ましくは1000g/m2以下、更に好ましくは800g/m2以下であるように前記塗料を塗工する、前記<101>ないし<106>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<108>
前記発熱層を挟んで前記基材シートと反対側に第2基材シートを更に積層する、前記<101>ないし<107>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
【0116】
<109>
被酸化性金属の粒子、炭素成分、水及び繊維材料を含む組成物を抄紙して中間成形体を抄造する工程と、
前記中間成形体に電解質を含有させて発熱層を形成する工程と、
前記発熱層と基材シートとを積層して、該発熱層及び該基材シートにスリットを形成する工程とを備える、温熱具の製造方法。
<110>
水を除いた前記組成物中の被酸化性金属の粒子の配合量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である、前記<109>に記載の温熱具の製造方法。
<111>
水を除いた前記組成物中の炭素材料の配合量が、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である、前記<109>又は<110>に記載の温熱具の製造方法。
<112>
水を除いた前記組成物中の繊維材料の配合量が、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下である、前記<109>ないし<111>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
【0117】
<113>
前記中間成形体の含水率が、好ましくは70%質量%以下、より好ましくは60質量%以下、またその下限が好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上となるまで脱水する工程を更に有する、前記<109>ないし<112>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<114>
窒素及びアルゴンの少なくとも一種の不活性ガス雰囲気下で電解質を含有させる、前記<109>ないし<113>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<115>
吸水材料を含む前記組成物を用いる、前記<109>ないし<114>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<116>
水を除いた前記組成物中の前記吸水材料の配合量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である、前記<115>に記載の温熱具の製造方法。
【0118】
<117>
前記発熱層における前記基材シートが配されていない面側に、吸水材料を散布するか、又は該吸水材料を含むシートを配して、吸水材料を含む吸水材料層を形成する工程を更に有する、前記<109>ないし<114>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<118>
前記吸水材料の坪量が、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは40g/m2以上であり、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、更に好ましくは70g/m2以下である、前記<117>に記載の温熱具の製造方法。
<119>
第2基材シートを前記吸水材料層の前記発熱層が配されていない面側に重ね合わせる、前記<117>又は<118>に記載の温熱具の製造方法。
【0119】
<120>
前記発熱層が一面に設けられた前記基材シートを一方向に搬送させながら、一個又は複数個の第1のスリットの群が一方向延びるように配置された第1のスリット列を、該基材シートの搬送方向と同方向に延びるように一列又は複数列形成する、前記<101>ないし<119>のいずれか一に記載の温熱具の製造方法。
<121>
第1のスリット列の延びる方向と交差する方向に延びる一個又は複数個の第2のスリットの群が一方向に延びるように配置された第2のスリット列を、前記基材シートの搬送方向と交差する方向に延びるように一列又は複数列形成する、前記<120>に記載の温熱具の製造方法。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0121】
〔実施例1〕
上述した抄紙型の製造方法によって作製したシート状物からなる抄紙タイプの発熱層31と、基材シート37とに、厚み方向に貫通した切り込みからなるスリットを形成した温熱具1を製造した。本実施例の温熱具1は、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、繊維材料及び水の混合物を含む発熱層31に、吸水材料層2Lが設けられた発熱性本体3Aを用いた。発熱性本体3Aは、被酸化性金属の粒子を400g/m
2含み、電解質を33g/m
2含み、炭素材料を32g/m
2含み、繊維材料を50g/m
2含み、吸水材料を70g/m
2含むものとした。発熱体3の大きさは、縦49mm×横49mmとした。スリット及びスリット列の形態は、
図5(a)に示す形態とし、第1のスリットS1の長さW1を10mm、第1のスリットS1どうしの間隔W2を1mm、第1のスリット列L1どうしの間隔W3を12mmとした。
【0122】
〔実施例2〕
本実施例は、
図7(a)に示すように、第1のスリット列L1及び第2のスリット列L2を有する形態とし、第2のスリットS2の長さW4を8mm、第1のスリットS1どうしの間隔W5を1mm、第2のスリット列L2どうしの間隔W6を12.25mmとしたほかは、実施例1と同様に温熱具1を製造した。
【0123】
〔実施例3〕
本実施例は、
図7(d)に示すように、第1のスリット列L1及び第2のスリット列L2を有する形態とし、第1のスリットS1の長さW1を15mm、第1のスリットS1どうしの間隔W2を1mm、第1のスリット列L1どうしの間隔W3を12mmとしたほかは、実施例2と同様に温熱具1を製造した。
【0124】
〔比較例1〕
本比較例は、発熱層31及び基材シート37に対してスリットL1を形成しなかった他は、実施例1と同様に温熱具1を製造した。
【0125】
〔参考例1〕
本参考例は、上述した塗布型の製造方法によって作製した塗布タイプの発熱層31と、基材シート37とに、厚み方向に貫通した切り込みからなるスリットを形成した温熱具1を製造した。本参考例の温熱具1は、被酸化性金属の粒子、電解質、炭素材料、繊維材料及び水の混合物を含む発熱層31に、吸水材料層2Lが設けられた発熱性本体3Aを用いた。発熱性本体3Aは、被酸化性金属の粒子を400g/m2含み、電解質を33g/m2含み、炭素材料を32g/m2含み、吸水材料を70g/m2含むものとした。発熱体3の大きさは、縦49mm×横49mmとした。スリット及びスリット列の形態は、実施例3と同様に温熱具1を製造した。
【0126】
〔参考例2〕
本参考例は、スリット及びスリットの形態を本実施例4と同様にした他は、参考例1と同様に、塗布タイプの発熱層31を備える温熱具1を製造した。
【0127】
〔フィット性の評価〕
各実施例におけるフィット性は、装着圧の測定によって評価した。具体的には、女性平均のマネキンの顔の眉上及び目じりほほ骨に感圧センサー(エイエムアイ・テクノ社製、装着圧計)を配し、この状態で、実施例の温熱具をマネキンに装着し、各部位の装着圧(kPa)を4回測定した。各部位での装着圧の算術平均値を結果として表1に示した。眉上の装着圧は、0.5kPa以上であればフィット性が良好であると判断し、0.7kPaであればフィット性が更に良好であると判断した。また、目じりの装着圧は、0.15kPa以上であればフィット性が良好であると判断し、0.2kPa以上であればフィット性が更に良好であると判断した。
【0128】
〔発熱特性の評価〕
各実施例における発熱特性は、45℃に達するまでの立ち上がり時間(45℃昇温時間、単位:分)及び最高到達温度(単位:℃)を評価項目として評価した。評価の具体的な手順は、JIS S 4100に基づいて行った。各評価は8回行い、各データの算術平均値を結果として、表1に示す。
【0129】
【0130】
表1に示すように、比較例の温熱具と比較して、いずれの実施例の温熱具も、装着圧が高いものであり、フィット性が良好となっていることが判る。特に、実施例2及び3に示すように、温熱具1の縦方向Yに沿う第1のスリットの長さが10mm以上であり、且つ第2のスリット列L2を複数列形成した場合、装着圧がより高く、フィット性に一層優れたものとなることが判る。
【0131】
また、表1に示すように、比較例の温熱具と比較して、いずれの実施例の温熱具も昇温時間が短く、且つ最高到達温度が高いものであるので、良好な発熱特性を有することが判る。特に、実施例2及び3に示すように、温熱具1の縦方向Yに沿う第1のスリットの長さが10mm以上であり、且つ第2のスリット列L2を複数列形成した場合、発熱特性に一層優れたものとなることが判る。
【0132】
また表1に示すように、抄紙タイプの発熱体3を備える各実施例の温熱具は、発熱特性及びフィット性の双方が、塗布タイプの発熱体3を備える参考例1及び2の温熱具1と同等のレベルに向上していることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明によれば、フィット性の向上と発熱特性の向上とが両立した温熱具が提供される。