(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】アンカー添加剤並びにその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230808BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20230808BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230808BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230808BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20230808BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20230808BHJP
C08G 77/20 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J183/04
C09J11/08
C09J11/06
C09J183/07
C09J183/05
C08G77/20
(21)【出願番号】P 2020568538
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2018093727
(87)【国際公開番号】W WO2020000387
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンクィ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ツイホア
(72)【発明者】
【氏名】チュウ、ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ウェンジ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シェングラン
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-207105(JP,A)
【文献】特開平04-076060(JP,A)
【文献】特表2010-500462(JP,A)
【文献】特表2008-528788(JP,A)
【文献】米国特許第05270110(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00- 77/62
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤のためのアンカー添加剤の製造方法であって、
1)出発原料(A)及び(B)を組み合わせる工程であって、
出発原料(A-1)と(A-2)とを>50℃~160℃の温度で組み合わせて、出発原料(A)を形成し、出発原料(A)を冷却し、その後出発原料(A)及び(B)を-20℃~50℃の温度で組み合わせて、アンカー添加剤となる反応生成物を形成する工程を含み、
ここで、出発原料(A)が、
(A-1)式R
1SiR
2
3(式中、R
1は脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R
2は炭化水素オキシ基及びアシルオキシ基からなる群から独立して選択される)の不飽和シランと、
(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランであって、前記トリアルコキシシランは、式R
3Si(OR
4)
3(式中、各R
3はエポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択されるアンカー促進基を含み、各R
4は炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である)を有する、トリアルコキシシランと、を含むシラン組成物であり、
ただし、(A-1)及び(A-2)は、重量比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で使用され、
出発原料(B)が、単位式:
(R
7R
5
cR
6
(2-c)SiO
1/2)
2(R
5
2SiO
2/2)
a(R
5R
6SiO
2/2)
b(式中、各R
7はOH及びOR
4からなる群から独立して選択され、各R
5は脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、各R
6は脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧0であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1である値を有する)を有するポリジオルガノシロキサンであり、
出発原料(A)及び(B)を組み合わせた量は100
重量%であり、
そのうちの出発原料(A)のシラン組成物の量が33
重量%~67
重量%であり、
出発原料(B)のポリジオルガノシロキサンの量が67
重量%~33
重量%である、
製造方法(但し、アンカー添加剤が、アルミニウムキレート化合物を含有するアンカー添加剤である製造方法を除く)。
【請求項2】
出発原料(A-1)において、各R
1がアルケニルであり、各R
2がアルコキシ又はアセトキシである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A-1)がビニルトリアセトキシシランである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
出発原料(A-2)において、各R
4がメチル又はエチルであり、各R
3がグリシドキシアルキル又はエポキシシクロヘキシルアルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(A-2)がグリシドキシプロピルトリメトキシシランである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
出発原料(B)において、各R
7がOH及びOCH
3からなる群から独立して選択され、各R
5がメチル及びエチルからなる群から選択され、各R
6がビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択される
、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(B)がα,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(I)請求項1に記載の製造方法にしたがってアンカー添加剤を製造する工程、及び
(II)工程(I)で製造したアンカー添加剤0.1
重量%~5
重量%及びシリコーン感圧接着剤95
重量%~99.9
重量%を混合する工程(ここで、アンカー添加剤とシリコーン感圧接着剤の合計量が100
重量%である)を含む、感圧接着剤組成物の製造方法。
【請求項9】
前記感圧接着剤組成物が、
脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサン 10
重量%~60
重量%;ポリオルガノシリケート樹脂、分枝状ポリオルガノシロキサン、又はこれらの組み合わせ 5
重量%~40
重量%;ポリオルガノハイドロジェンシロキサン 0.01
重量%~5
重量%;ヒドロシリル化反応触媒 0.01
重量%~5
重量%
を含む、請求項8に記載の感圧接着剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記感圧接着剤組成物が、溶剤、反応性希釈剤、及びヒドロシリル化反応抑制剤のうち1つ以上を更に含む、請求項9に記載の感圧接着剤組成物の製造方法。
【請求項11】
接着剤物品の製造方法であって、
1)請求項8に記載の製造方法によって感圧接着剤組成物を製造する工程、
2)前記感圧接着剤組成物を基材上にコーティングする工程、及び
3)前記感圧接着剤組成物を硬化させる工程、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の接着剤物品の製造方法によって接着剤物品を製造する工程を含む
とともに、前記
工程で製造された接着剤物品を、電子デバイスの加工中に保護又はマスキングをするために使用する、接着剤物品の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカー添加剤、その調製方法、及びその添加剤を含有する感圧接着剤組成物に関する。この組成物を基材上で硬化させることによって調製された感圧接着剤積層体物品は、エレクトロニクス用途において、加工中の保護及び/又はマスキングのために有用である。
【背景技術】
【0002】
保護フィルム及びキャリアテープは、シリコーン感圧接着剤のエレクトロニクス製造業界における2つの主な用途である。通常、保護フィルム及びキャリアテープにおける感圧接着剤(PSA)の厚さは、従来のテープ用途よりも比較的薄い。これらの用途のために市販されているPSAは、主に溶剤系である。
【0003】
基材上の接着剤被覆が不均一であるゆえに保護フィルムへの接着力が高すぎるという欠点に悩むことになり得、保護フィルムが除去される際に保護された基材がPSAにより損傷し得る。更に、不均一な接着面は、加工保護中にキャリアテープへの不安定な接着力を有するという欠点をもつ場合があり、このことにより、キャリアテープを除去したとき、表面保護及び/又はプロセスマスキングにおいて、表面が損傷するか又は品質の問題が起こる場合がある。
【0004】
発明が解決しようとする課題
エレクトロニクス製造業界では、以下の特性:低ヘイズ、良好な摩擦落ち抵抗、室温での良好な接着力、及びエージング後の接着安定性、のうち1つ以上を有する感圧接着剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
アンカー添加剤の製造方法は、
1)出発原料(A)及び(B)を-20℃~160℃の温度で組み合わせることであって、出発原料(A)は、
(A-1)式R1SiR2
3(式中、R1は末端脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R2は独立して選択される炭化水素オキシ基又はアシルオキシ基である)の不飽和シランと、
(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランであって、このトリアルコキシシランは、式R3Si(OR4)3(式中、各R3はエポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択されるアンカー促進基を含み、各R4は炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である)を有する、トリアルコキシシランと、を含む33%~67%のシラン組成物であり、
ただし、(A-1)及び(A-2)は、重量比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で存在し、
出発原料(B)は、単位式:
(R7R5
cR6
(2-c)SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)a(R5R6SiO2/2)b(式中、各R7はOH及びOR4からなる群から独立して選択され、各R5は末端脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び末端脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、各R6は末端脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧0であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1であるような値を有する)を有する33%~67%のポリジオルガノシロキサンであり、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた量は最大で100%になる、組み合わせること、を含む。アンカー添加剤は、この方法の反応生成物として調製される。
【0006】
感圧接着剤組成物は、上記の0.1%~5%のアンカー添加剤、及び95%~99.9%のシリコーン感圧接着剤組成物を含む。
【0007】
感圧接着剤組成物を使用して、1)バッキング基材の表面に感圧接着剤組成物をコーティングすることと、2)組成物を硬化させてバッキング基材表面に感圧接着剤を形成することと、を含む方法において接着剤物品を調製することができる。
【0008】
上記のように調製された接着剤物品は、電子デバイスに接着させ、感圧接着剤がバッキング基材とデバイスの表面との間に存在するようにしてもよい。接着剤物品により、製造、出荷、及び/又は使用中に電子デバイスを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】接着剤物品100の部分断面図を示す。接着剤物品は、フィルム基材103の第1の表面102上で本明細書に記載の感圧接着剤組成物を硬化させることによって調製された感圧接着剤101を含む。物品100は、フィルム基材103の反対側の表面105に設けられた第2の基材104を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、アンカー添加剤を提供する。アンカー添加剤は、硬化性組成物、例えばヒドロシリル化反応硬化性である組成物に対して特に十分適している。アンカー添加剤及びアンカー添加剤を含む硬化性組成物は、優れた物理的特性を有し、多様な最終用途に十分適している。アンカー添加剤を含む硬化性組成物は、接着特性を始めとする望ましい特性を有するフィルムを形成する。例えば、アンカー添加剤を含む硬化性組成物は、低ヘイズ、良好な摩擦落ち抵抗、室温での良好な接着力、及びエージング後の接着安定性を有するフィルムを形成し得る。アンカー添加剤、硬化性組成物、及び関連する方法を、以下で更に詳細に記載する。
【0011】
アンカー添加剤は、
1)出発原料(A)及び(B)を-20℃~160℃の温度で組み合わせることであって、出発原料(A)は、
(A-1)式R1SiR2
3(式中、R1は末端脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R2は独立して選択される炭化水素オキシ基又はアシルオキシ基である)の不飽和シランと、
(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランであって、このトリアルコキシシランは、式R3Si(OR4)3(式中、各R3はエポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択されるアンカー促進基を含み、各R4は炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である)を有する、トリアルコキシシランと、を含む33%~67%のシラン組成物であり、
ただし、(A-1)及び(A-2)は、比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で存在し、
出発原料(B)は、単位式:
(R7R5
cR6
(2-c)SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)a(R5R6SiO2/2)b(式中、各R7はOH及びOR4からなる群から独立して選択され、各R5は末端脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び末端脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、各R6は末端脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧0であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1であるような値を有する)を有する33%~67%のポリジオルガノシロキサン組成物であり、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた量は最大で100%になる、組み合わせること、を含む方法により調製され得る。
【0012】
出発原料(A-1)は、脂肪族不飽和一価炭化水素基を有するシランである。出発原料(A-1)は、式R1SiR2
3(式中、R1は脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R2は独立して選択される炭化水素オキシ基又はアシルオキシ基である)の不飽和シランである。R1は、以下に定義するアルケニル基及びアルキニル基により例示される。R1の様々な例としては、CH2=CH-、CH2=CHCH2-、CH2=CH(CH2)4-、CH2=C(CH3)CH2-H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)CH2-H2C=CHCH2CH2-、H2C=CHCH2CH2CH2-、HC≡C-、HC≡CCH2-、HC≡CCH(CH3)-、HC≡CC(CH3)2-、及びHC≡CC(CH3)2CH2-が挙げられる。あるいは、各R1はビニル、アリル、ヘキセニル、又はウンデシレニルなどのアルケニル基であってもよい。あるいは、各R1はビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択されてもよい。あるいは、各R1はビニルであってもよい。各R2は独立して選択される炭化水素オキシ基又はアシルオキシ基である。あるいは、R2は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシにより例示されるアルコキシ基などの炭化水素オキシ基であってもよい。あるいは、R2はアセトキシなどのアシルオキシ基であってもよい。
【0013】
あるいは、不飽和シランは、アルケニル官能性アルコキシシランなどの炭化水素オキシシランであってもよい。出発原料(A-1)に好適なアルケニル官能性アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリエトキシシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。あるいは、出発原料(A-1)はビニルトリメトキシシランであってもよい。あるいは、出発原料(A-1)は、アルケニル官能性アセトキシシランなどのアルケニル官能性アシルオキシシランであってもよい。出発原料(A-1)に好適なアルケニル官能性アセトキシシランとしては、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ヘキセニルトリアセトキシシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。あるいは、出発原料(A-1)はビニルトリアセトキシシランであってもよい。
【0014】
出発原料(A-2)は、アンカー促進基R3を有するトリアルコキシシランである。R3のアンカー促進基は、エポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択され得る。あるいは、R3はエポキシ官能基及びアクリレート官能基からなる群から選択されてもよい。あるいは、各R3はエポキシ官能基であってもよい。各R4は、1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子の、独立して選択されるアルキル基である。あるいは、各R4はメチルである。あるいは、各R4はエチルである。好適なエポキシ官能基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルなどのエポキシアルキル基により例示される。好適なアクリレート官能基は、3-メタクリロイルオキシプロピル及び3-アクリロイルオキシプロピルなどの(メタ)アクロイロイルオキシアルキル((meth)acroyloyloxyalkyl)により例示される。出発原料(A-2)に好適なエポキシ官能性トリアルコキシシランとしては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。好適なアクリレート官能性トリアルコキシシランの例としては、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。あるいは、出発原料(A-2)は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0015】
出発原料(A-1)及び(A-2)は、重量比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で存在する。あるいは、重量比(A-1)/(A-2)は、0.4/1~2.3/1であってもよく、あるいは0.4/1~1/1及び1/1~2.3/1、あるいは1/1であってもよい。
【0016】
本方法は、出発原料(A-1)と(A-2)とを組み合わせることと、その後、工程1)において出発原料(B)を加えることと、を任意選択的に更に含んでもよい。出発原料(A-1)と(A-2)との組み合わせは、物理的な混合物、反応生成物、又はこれらの組み合わせであってもよい。例えば出発原料(A-1)がアルコキシ基を有する場合、(A-1)と(A-2)との組み合わせは、1つのシラン分子がアルコキシ基及びアセトキシ基の両方を有する転位反応生成物を含んでもよい。出発原料(A-1)及び(A-2)は、-20℃~160℃、あるいは>50℃~140℃の温度で組み合わせてもよい。
【0017】
出発原料(A)は、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた重量を基準として、33%~67%の量で使用される。あるいは、出発原料(A)は、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた重量を基準として、40%~65%、あるいは45%~60%、あるいは50%~56%の量で使用されてもよい。出発原料(A)及び(B)は、-20℃~160℃の温度で組み合わせてもよい。あるいは、シラン(A-1)とシラン(A-2)とを>50℃~140℃の温度で組み合わせるなどの場合などの特定の実施形態では、本方法は、出発原料(A)及び(B)を組み合わせる前に出発原料(A)を冷却することを更に含んでもよい。あるいは、出発原料(A)及び(B)は、-20℃~50℃、あるいは0℃~50℃、あるいは40℃~50℃の温度で組み合わせてもよい。
【0018】
出発原料(B)は、単位式(B-1):(R7R5
cR6
(2-c)SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)a(R5R6SiO2/2)b(式中、各R7はOH及びOR4からなる群から独立して選択され、R4は上記のとおりであり、
各R5は脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R6は脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧1であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1であるような値を有する)を有するポリジオルガノシロキサンを含む。この式において、各R5は、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であってもよい。あるいは、R5は、以下に定義するアルキル基、アリール基、又はシクロアルキル基であってもよい。R5のアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はヘキシル(各々の分枝状及び直鎖状の異性体を含む)であってもよい。あるいは、R5はメチル及びフェニルなどのアルキル及びアリールであってもよい。各R6は、下記のようなアルケニル又はアルキニルであってもよい。R6の様々な例としては、
CH2=CH-、CH2=CHCH2-、CH2=CH(CH2)4-、CH2=C(CH3)CH2-H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)-、H2C=C(CH3)CH2-H2C=CHCH2CH2-、H2C=CHCH2CH2CH2-、HC≡C-、HC≡CCH2-、HC≡CCH(CH3)-、HC≡CC(CH3)2-、及びHC≡CC(CH3)2CH2-が挙げられる。あるいは、各R6はビニル、アリル、又はヘキセニルなどのアルケニルであってもよく、あるいはビニルであってもよい。各R7は、ヒドロキシル基、又はメトキシなどのアルコキシ基であってもよい。
【0019】
単位式(B-1)において、下付き文字a、b、及びcは、12≧a≧1、12≧b≧0、及び2≧c≧1となる値を有し得る。数量(b+c)は、0を超える平均値を有する。
【0020】
出発原料(B)は、加水分解性基及び脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基の両方を有するポリジオルガノシロキサンを含み、これは、α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチビニルシロキサン(methyvinylsiloxane));α,ω-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α,ω-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン);α,ω-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン;α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチヘキセニルシロキサン(methyhexenylsiloxane));α,ω-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α,ω-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン);α,ω-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン;α-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチビニルシロキサン);α-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン);α-ヒドロキシ,メチル,ビニルシロキシ末端,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン;α-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチヘキセニルシロキサン);α-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端α,ω-メトキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端α,ω-メトキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン);α-ヒドロキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端α,ω-メトキシ,メチル,ヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン;α,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチビニルシロキサン);α,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン);α,ω-メトキシ,メチル,ビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン;α,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン;α,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチヘキセニルシロキサン);及びこれらの2つ以上の組み合わせ、により例示される。あるいは、出発原料(B)は、α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチビニルシロキサン)及びα-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチビニルシロキサン)、並びにこれらの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0021】
出発原料(B)は、加水分解性基を有し脂肪族不飽和を含まないポリジオルガノシロキサン、を任意選択的に更に含んでもよい。最大20%、あるいは5%~20%、あるいは10%~15%の出発原料(B)は、加水分解性基を有し、脂肪族不飽和を含まないポリジオルガノシロキサンであってもよい。このポリジオルガノシロキサンは、単位式(B-2):(R7R5
2SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)d(式中、R5及びR7は上記のとおりであり、下付き文字dは≧1である)を有し得る。出発原料(B)は、0~20%、あるいは5%~15%のこの追加のポリジオルガノシロキサンを含んでもよい。この追加のポリジオルガノシロキサンの例としては、α,ω-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α,ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;α-ヒドロキシ,ジメチルシロキシ末端ω-メトキシ,ジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン;及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0022】
出発原料(B)は、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた重量を基準として、33%~67%の量で使用される。あるいは、出発原料(B)は、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた重量を基準として、35%~55%、あるいは45%~50%の量で使用されてもよい。アンカー添加剤の製造方法は、不活性条件下で実施してもよい。すなわち、アンカー添加剤を作製する反応器などの装置を、出発原料(A-1)、(A-2)、及び(B)を導入する前に窒素などの不活性ガスでパージしてもよい。この装置を、出発原料(A-1)、(A-2)、及び(B)を導入する前に、例えば加熱により乾燥してもよい。この方法は、1つ以上の追加工程を任意選択的に更に含んでもよい。工程(1)の後、アンカー添加剤を濾過して副生成物を除去してもよい。
【0023】
本発明はまた、硬化性組成物を提供する。硬化性組成物は、(I)上記のアンカー添加剤を含む。硬化性組成物は、(II)ヒドロシリル化硬化性組成物を更に含む。硬化性組成物は、(I)0.1%~5%のアンカー添加剤、及び(II)95%~99.9%のヒドロシリル化硬化性組成物を含み得る。
【0024】
ヒドロシリル化硬化性組成物は、
(a)1分子当たり平均して少なくとも2つの脂肪族不飽和炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)1分子当たり平均して、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(c)硬化性組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、1~1000ppmの白金族金属もたらすのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み得る。上記の出発原料(a)、(b)、及び(c)に加えて、ヒドロシリル化硬化性組成物は、(d)ポリシロキサン樹脂、(e)分枝状ポリオルガノシロキサン、(f)溶剤、(g)反応性希釈剤、及び(h)ヒドロシリル化反応抑制剤からなる群から選択される1つ以上の追加の出発原料を更に含んでもよい。ヒドロシリル化硬化性組成物が感圧接着剤組成物である場合、典型的には、出発原料(d)、出発原料(e)、又は(d)及び(e)の両方が存在する。シリコーン感圧接着剤は、当該技術分野において既知である。例えば、上記のアンカー添加剤は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,121,368号又は国際公開第2013/123619号におけるシリコーン感圧接着剤中で使用され得、加えて又は代わりに、これら文献中で列挙され得る任意のアンカー添加剤中で使用され得る。
【0025】
(a)脂肪族不飽和を有するポリジオルガノシロキサン
本明細書に記載の感圧接着剤組成物中の出発原料(a)は、末端脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサンである。出発原料(a)は、式(a-1):
(R8
2R9SiO1/2)2(R8
2SiO2/2)e(R8R9SiO2/2)f(式中、各R8は末端脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基及び末端脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基からなる群から独立して選択され、各R9は脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字eは150~15,000の平均値を有し、下付き文字fは0~100の平均値を有する)を含む。R8に好適な一価炭化水素基及び一価ハロゲン化炭化水素基は、以下に定義するとおりである。あるいは、各R8はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基であってもよい。あるいは、各R8はアルキル基又はアリール基であってもよい。あるいは、各R8はメチル又はフェニルであってもよい。各R9は、以下に定義するアルケニル基又はアルキニル基であってもよい。あるいは、各R9は、ビニル、アリル、及びヘキセニルから選択されるアルケニル基であってもよい。あるいは、下付き文字eは150~1,000であってもよい。あるいは、下付き文字eは、出発原料(a)のポリジオルガノシロキサンに400mPa・s~100,000mPa・sの粘度を付与するのに十分な値を有し得る。粘度は、本明細書の参考例に後述される技術によって測定される。あるいは、下付き文字eは、出発原料(a)に450mPa・s~<100,000mPa・s、あるいは450mPa・s~35,000mPa・sの粘度を付与するのに十分な値を有し得る。あるいは、出発原料(a)は、式(a-2):(R8
2R9SiO)-(R8
2SiO)f-(OSiR8
2R9)(式中、下付き文字fは150~2,000の平均値を有し、R8及びR9は上記のとおりである)を有してもよい。
【0026】
出発原料(a)は、
a-3)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
a-4)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
a-5)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
a-6)α,ω-フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
a-7)α,ω-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
a-8)a-3)、a-4)、a-5)、a-6)、及びa-7)のうち2つ以上の組み合わせ、などのポリジオルガノシロキサンを含み得る。対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡などの、出発原料(a)としての使用に好適なポリジオルガノシロキサンの調製方法は当該技術分野において公知である。
【0027】
出発原料(a)の量は、感圧接着剤組成物中の他の出発原料の種類及び量、組成物中の出発原料の脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子の濃度、溶剤又は反応性希釈剤の有無、並びに抑制剤の有無、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発原料(a)の量は、シリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、10%~98%、あるいは40%~90%、あるいは10%~60%であってもよい。
【0028】
(b)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
出発原料(b)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。出発原料(b)は、感圧接着剤組成物中で架橋剤として機能する。出発原料(b)は、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素結合水素原子を有し得る。
【0029】
出発原料(b)は、単位式(b-1)(R8
3SiO1/2)p(R8
2SiO2/2)q(R8SiO3/2)r(SiO4/2)s(R8HSiO2/2)t(R8
2HSiO1/2)u(式中、R8は上記のとおりであり、下付き文字p、q、r、s、t、及びuは、p≧0、q≧0、r≧0、s≧0、t≧0、u≧0、(t+u)≧2となる値を有し、かつ数量(p+q+r+s+t+u)は、5~100、あるいは10~60の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンもたらすのに十分である)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含んでもよい。あるいは、出発原料(b)は、単位式(b-2):(R8
3SiO1/2)2(R8
2SiO2/2)aa(R8HSiO2/2)bb(式中、各R8はメチル及びフェニルからなる群から選択され、下付き文字aaは0~30であり、下付き文字bbは5~50である)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含んでもよい。
【0030】
あるいは、出発原料(b)は、
式(b-3):R8
3SiO(R8
2SiO)g(R8HSiO)hSiR8
3、
式(b-4):R8
2HSiO(R8
2SiO)i(R8HSiO)jSiR8
2H、又は
(b-3)及び(b-4)の両方、のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含んでもよい。式(b-3)及び(b-4)中、R8は上記のとおりである。下付き文字gの平均値は0~2000であり、下付き文字hの平均値は2~2000であり、下付き文字iの平均値は0~2000であり、下付き文字jの平均値は0~2000である。
【0031】
出発原料(b)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(b-5)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、(b-6)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(b-7)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(b-8)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(b-9)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(b-10)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(b-11)α,ω-トリメチルシロキシ末端ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(メチルフェニルシロキサン/ジメチルシロキサン)、(b-12)α,ω-ジメチルハイドロジェン-シロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン、並びに(b-13)(b-5)、(b-6)、(b-7)、(b-8)、(b-9)、(b-10)、(b-11)、及び(b-12)のうち2つ以上の組み合わせ、により例示される。
【0032】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンを調製する方法、例えば、オルガノハロシランの加水分解及び縮合は、当技術分野において公知である。
【0033】
出発原料(b)の量は、組成物中の脂肪族不飽和一価炭化水素基の濃度、及び出発原料(b)のSiH含有量、並びに溶剤又は反応性希釈剤の有無、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発原料(b)の量は、シリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、0.01%~10%、あるいは3%~8%、あるいは0.01%~5%であってもよい。しかしながら、出発原料(b)の量は、組成物中の他の出発原料における脂肪族不飽和基に対するシリコーン結合水素の総モル比(全体のSiH/Vi比)を0.5/1~50/1、あるいは1/1~20/1とするのに十分であり得る。
【0034】
(c)ヒドロシリル化反応触媒
感圧接着剤組成物中の出発原料(c)は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。ヒドロシリル化反応触媒は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、そのような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスホノ)エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及びマトリックス又はコアシェル型構造にマイクロカプセル化された、上記化合物と低分子量オルガノポリシロキサン又は白金化合物との錯体であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedtの触媒)が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化触媒は、米国特許第3,159,601号、同3,220,972号、同3,296,291号、同3,419,593号、同3,516,946号、同3,814,730号、同3,989,668号、同4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において既知である。
【0035】
本明細書で使用される触媒の量は、他の出発原料の選択、並びに他の選択物質それぞれのケイ素結合水素原子及び末端脂肪族不飽和基の含有量、溶剤又は反応性希釈剤の有無、並びに抑制剤の有無、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、触媒の量はSiHと脂肪族不飽和基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であり、あるいは触媒の量は、感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、1ppm~1000ppm、あるいは5ppm~200ppm、あるいは50ppm~150ppm、あるいは5ppm~100ppmの白金族金属もたらすのに十分である。
【0036】
シリコーン感圧接着剤組成物は、(d)ポリシロキサン樹脂、(e)分枝状ポリオルガノシロキサン、(f)溶剤、(g)反応性希釈剤、及び(h)ヒドロシリル化反応抑制剤からなる群から選択される1つ以上の追加の出発原料を更に含んでもよい。
【0037】
(d)ポリシロキサン樹脂
出発原料(d)に好適なポリシロキサン樹脂は、式RM
3SiO1/2(式中、各RMは独立して選択される一価有機基であり、本明細書に記載されるような一価炭化水素基又は一価ハロゲン化炭化水素基であり得る)の単官能性単位(「M」単位)及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)を含む、ポリオルガノシリケート樹脂を含む。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂において、各RMは、本明細書に記載されるR8及びR9からなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各RMは、アルキル、アルケニル及びアリールからなる群から選択されてもよい。あるいは、各RMは、メチル、ビニル、及びフェニルから選択されてもよい。あるいは、RM基の少なくとも1/3、あるいは少なくとも2/3がメチル基である。あるいは、M単位は、(Me3SiO1/2)、(Me2PhSiO1/2)、及び(Me2ViSiO1/2)によって例示され得る。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素によって例示される上記のものなどの溶剤に、又は低粘度の直鎖状及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶性である。
【0038】
調製された場合、ポリオルガノシリケート樹脂は、上記のM単位及びQ単位を含み、ポリオルガノシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を有する単位を更に含み、式Si(OSiRM
3)4[式中、RMは上記のとおりである。]を含んでもよく、例えば、ネオペンタマーはテトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29SiNMRスペクトル法を用いて、M単位及びQ単位のヒドロキシル含有量及びモル比を測定することができ、この比は、M単位及びQ単位をネオペンタマーから外した{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。M:Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂の樹脂性部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂性部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1であってもよい。
【0039】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRMによって表される炭化水素基の種類などの様々な要因に依存する。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外されるとき、GPCを使用して測定される数平均分子量を指す。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、3,000Da超、あるいは>3,000~8,000Daであってもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、3,500~8,000Daであってもよい。
【0040】
本明細書に記載の感圧接着剤組成物における使用に好適なポリオルガノシリケート樹脂であるMQ樹脂を開示するため、米国特許第8,580,073号(第3欄5行目~第4欄31行目)、及び米国特許出願公開第2016/0376482号(段落[0023]~[0026])が、参照により本明細書に組み込まれる。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解、又はシリカヒドロゾルキャッピング法などの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、米国特許第2,676,182号(Daudtら)、米国特許第4,611,042号(Rivers-Farrellら)、及び米国特許第4,774,310号(Butlerら)に開示されているものなどのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスにより調製されてもよい。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下で、シリカヒドロゾルをトリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン、又はこれらの混合物と反応させることと、M単位及びQ単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られるコポリマーは通常、2~5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0041】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、4つの加水分解性置換基を有するトリオルガノシラン及びシラン又はアルカリ金属シリケートであってもよい。トリオルガノシランは、式RM
3SiX1(式中、RMは上記のとおりであり、X1は、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、あるいはハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有してもよい。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX2
4[式中、各X2は、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである。]を有することができる。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0042】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂は、典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、すなわち、式HOSi3/2及び/又はHORM
2SiO1/2を含有する。ポリオルガノシリケート樹脂は、FTIR分光法によって測定される、最大2%のケイ素結合ヒドロキシル基を含んでもよい。特定の用途では、ケイ素結合ヒドロキシル基の量は、0.7%未満、あるいは0.3%未満、あるいは1%未満、あるいは0.3%~0.8%であることが望ましい場合がある。ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、シリコーン樹脂を、適切な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンと反応させることによってトリ炭化水素シロキサン基又は異なる加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂のケイ素結合ヒドロキシル基と反応させるのに必要な量のモル過剰量で添加することができる。
【0043】
一実施形態では、ポリオルガノシリケート樹脂は、2%以下、あるいは0.7%以下、あるいは0.3%以下、あるいは0.3%~0.8%の、式XSiO3/2及び/又はXRM
2SiO1/2(式中、RMは上記のとおりであり、Xは、X1について上述した加水分解性置換基を表す)で表される単位を更に含んでもよい。ポリオルガノシロキサン中に存在するシラノール基の濃度は、FTIR分光法を使用して測定することができる。
【0044】
あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂は、末端脂肪族不飽和基を有してもよい。末端脂肪族不飽和基を有するポリオルガノシリケート樹脂は、最終生成物中に3~30モル%の不飽和有機基を提供するのに十分な量の不飽和有機基含有末端保護剤及び脂肪族不飽和を含まない末端保護剤と、Daudtらの生成物を反応させることによって調製することができる。末端封鎖剤の例としては、シラザン、シロキサン及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。好適な末端封鎖剤は、当該技術分野において公知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号、及び同第4,585,836号に例示されている。単一の末端保護剤又はこのような剤の混合物を使用して、このような樹脂を調製することができる。
【0045】
あるいは、出発原料(d)のポリオルガノシリケート樹脂は、単位式(d-1):(R8
3SiO1/2)m(R8
2R9SiO1/2)n(SiO4/2)o(式中、R8及びR9は上記のとおりであり、下付き文字m、n、及びoは、m≧0、n≧0、o>1、かつ(m+n)>4となる平均値を有する)を含んでもよい。あるいは、出発原料(d)は、単位式(d-2):(R8
3SiO1/2)z(SiO4/2)o(式中、各R8はメチル及びフェニルからなる群から独立して選択され、下付き文字oは上記のとおりであり、下付き文字zは>4である)を含む。
【0046】
出発原料(d)の正確な量は、出発原料(a)の種類及び量、出発原料(b)の種類及び量、組成物中の出発原料の脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子の濃度、溶剤又は反応性希釈剤の有無、並びに抑制剤の有無、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発原料(a)(及び存在する場合は(e))、並びに(d)は、出発原料(d)の量の出発原料(a)及び(e)を組み合わせた量に対するモル比(樹脂/ポリマー、すなわちd/(a+e)比)0.05/1~1.5/1、あるいは0.6/1~0.9/1、あるいは0.7/1~0.8/1もたらすのに十分な量で存在する。あるいは、出発原料(d)は、シリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、10%~60%、あるいは12%~51%、あるいは25%~40%の量で存在してもよい。
【0047】
(e)分枝状ポリオルガノシロキサン
本明細書に記載のシリコーン感圧接着剤組成物中の出発原料(e)は、分枝状ポリオルガノシロキサンである。出発原料(e)は、単位式(e-1)(R8
3SiO1/2)cc(R8
2R9SiO1/2)dd(R8
2SiO2/2)ee(SiO4/2)ff(式中、R8及びR9は、出発原料(a)に関して上述したとおりであり、下付き文字g、h、i、及びjは、2≧cc≧0、4≧dd≧0、995≧ee≧4、ff=1、数量(cc+dd)=4となる平均値を有し、かつ数量(cc+dd+ee+ff)は、分枝状ポリオルガノシロキサンに、回転粘度測定(参考例に後述)により測定して>170mPa・sの粘度を付与するのに十分な値を有する)のQ分枝状ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。あるいは、粘度は、>170mPa・s~1000mPa・s、あるいは>170mPa・s~500mPa・s、あるいは180mPa・s~450mPa・s、あるいは190mPa・s~420mPa・sであってもよい。出発原料(e-1)に好適な分枝状シロキサンは、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものにより例示される。
【0048】
あるいは、出発原料(e)は、式(e-2):[R9R8Si-(O-SiR8
2)x-O]y-Si-[O-(R8
2SiO)vSiR8
3]w(この式(e-2)中の各R8は炭素原子が1~6個のアルキル基、又は炭素原子が6~10個のアリール基であり、この式(e-2)中の各R9は炭素原子が2~6個のアルケニル基であり、下付き文字v、w、x、及びyは200≧v≧1、2≧w≧0、200≧x≧1、4≧y≧0、及び数量(w+y)=4となる値を有する)を含んでもよい。あるいは、この式(e-2)において、各R8はメチル及びフェニルからなる群から独立して選択され、各R9は、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択される。出発原料(e)に好適な分枝状ポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシリケート樹脂と、環状ポリジオルガノシロキサン又は直鎖状ポリジオルガノシロキサンとを含む混合物を、酸又はホスファゼン塩基などの触媒の存在下で加熱し、その後触媒を中和するなどの既知の方法により調製してもよい。
【0049】
あるいは、出発原料(e)は、単位式(e-3):(R8
3SiO1/2)gg(R9R8
2SiO1/2)hh(R8
2SiO2/2)ii(R8SiO3/2)jj(式中、R8及びR9は上記のとおりであり、下付き文字ggは≧0、下付き文字hhは>0、下付き文字iiは15~995であり、下付き文字jjは>0である)のT分枝状ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。下付き文字ggは、0~10であり得る。あるいは、下付き文字ggについては12≧gg≧0であり、あるいは、10≧gg≧0であり、あるいは、7≧gg≧0であり、あるいは、5≧gg≧0であり、あるいは、3≧gg≧0である。
【0050】
あるいは、下付き文字hhは≧1である。あるいは、下付き文字hhは≧3である。あるいは、下付き文字hhについては12≧hh>0であり、あるいは、12≧hh≧3であり、あるいは、10≧hh>0であり、あるいは、7≧hh>1であり、あるいは、5≧hh≧2であり、あるいは、7≧hh≧3である。あるいは、下付き文字iiについては800≧ii≧15であり、あるいは、400≧ii≧15である。あるいは、下付き文字jjは≧1である。あるいは、下付き文字jjは1~10である。あるいは、下付き文字jjについては10≧jj>0であり、あるいは、5≧jj>0であり、あるいは、jj=1である。あるいは、下付き文字jjは1~10であり、あるいは、下付き文字jjは1又は2である。あるいは、下付き文字jj=1の場合、下付き文字hhは3であってもよく、下付き文字ggは0であってもよい。下付き文字hhの値は、シルセスキオキサンの重量を基準として、0.1%~1%、あるいは0.2%~0.6%のアルケニル含有量を有する単位式(e-3)のシルセスキオキサンもたらすのに十分であり得る。出発原料(e-3)に好適なシルセスキオキサンは、米国特許第4,374,967号に開示されているものにより例示される。
【0051】
出発原料(e)の量は、出発原料(a)の種類及び量、出発原料(d)の種類及び量、組成物中の出発原料の脂肪族不飽和基及びケイ素結合水素原子の濃度、溶剤又は反応性希釈剤の有無、並びに抑制剤の有無、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発原料(e)の量は、シリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、0%~40%、あるいは5%~40%、あるいは10%~35%、あるいは15%~30%、あるいは20%~65%、あるいは25%~60%であってもよい。
【0052】
f)溶剤
出発原料(f)は、溶剤である。出発原料(f)は、炭化水素、ケトン、酢酸エステル、エーテル、平均重合度が3~10である環状シロキサン、及び/又はハロゲン化炭化水素などの有機溶剤であってもよい。出発原料(f)に好適な炭化水素は、i)ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素;ii)ヘキサン、ヘプタン、オクタン、若しくはイソパラフィンなどの脂肪族炭化水素;又はこれらの組み合わせであり得る。あるいは、出発原料(f)は、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルであってもよい。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。好適な酢酸エステルとしては、酢酸エチル又は酢酸イソブチルが挙げられる。好適なエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル又は1,4-ジオキサンが挙げられる。重合度が3~10、あるいは3~6である好適な環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。好適なハロゲン化炭化水素としては、トリクロロエチレン;パークロロエチレン;トリフルオロメチルベンゼン;1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン;メチルペンタフルオロベンゼン;ジクロロメタン;1,1,1-トリクロロエタン;及び塩化メチレンが挙げられる。
【0053】
溶剤の量は、選択される溶剤の種類、並びにシリコーン感圧接着剤組成物のために選択される他の出発原料の量及び種類を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、溶剤の量はシリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、0%~90%、あるいは0%~50%、あるいは20%~60%の範囲であってもよい。溶剤は、例えば混合及び送達を補助するために、シリコーン感圧接着剤組成物の調製中に添加することができる。溶剤の全て又は一部を、他の出発原料のうち1のつと共に添加してもよい。例えば、ポリオルガノシリケート樹脂、及びポリジオルガノシロキサン(並びに存在する場合、分枝状ポリオルガノシロキサン)を、シリコーン感圧組成物中の他の出発原料と組み合わせる前に、芳香族炭化水素などの溶剤に溶解させてもよい。溶剤の全て又は一部は、任意選択的に、シリコーン感圧接着剤組成物の調製後に除去してもよい。
【0054】
(g)反応性希釈剤
出発原料(g)は、オレフィン反応性希釈剤である。オレフィン反応性希釈剤は、1分子当たり8~18個の炭素原子及び少なくとも1つの脂肪族不飽和の炭化水素化合物を含む。オレフィン反応性希釈剤は、直鎖状であってもよい。反応性希釈剤は直鎖状であっても分枝状であってもよい。脂肪族不飽和はペンダントでも末端でもよい。出発原料(g)に好適な反応性希釈剤の例としては、(g-1)n-ドデセン;(g-2)n-テトラデセン;(g-3)n-ヘキサデセン;(g-4)n-オクタデセン;(g-5)(g-1)、(g-2)、(g-3)、及び/又は(g-4)のいずれかの分枝状異性体;並びに(g-6)(g-1)、(g-2)、(g-3)、(g-4)、及び/又は(g-5)のうち2つ以上の組み合わせ、が挙げられる。反応性希釈剤は、末端位置に二重結合を有してもよい。あるいは、出発原料(g)は12~14個の炭素原子を含んでもよい。あるいは、出発原料(g)は、n-テトラデセンを含んでもよい。
【0055】
出発原料(g)の量は、出発原料(a)及び(d)、並びに/又は存在する場合は(e)の選択及び量を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら、出発原料(g)の量は、シリコーン感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、0%~<5%、あるいは0.5%~<5%、あるいは1%~3%、あるいは1.2%~3%、あるいは1.9%~2.6%、あるいは2%~2.5%であってもよい。
【0056】
(h)ヒドロシリル化反応抑制剤
感圧接着剤組成物は、(h)ヒドロシリル化反応抑制剤を任意選択的に更に含んでもよい。ヒドロシリル化反応の抑制剤は、(h-1)アセチレン系アルコール(メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらのうち2つ以上の組み合わせなど);(h-2)シクロアルケニルシロキサン(1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びこれらのうち2つ以上の組み合わせにより例示されるメチルビニルシクロシロキサンなど);(h-3)エン-イン化合物(3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらのうち2つ以上の組み合わせなど);(h-4)ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール;(h-5)ホスフィン;(h-6)メルカプタン;(h-7)ヒドラジン;(h-8)テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン;(h-9)フマル酸(フマル酸ジアルキル、フマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキル、及びこれらのうち2つ以上の組み合わせなど);(h-10)マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸;(h-11)ニトリル;(h-12)エーテル;(h-13)一酸化炭素;(h-14)ベンジルアルコールなどのアルコール;(h-15)シリル化アセチレン系化合物;並びに(h-16)(h-1)~(h-15)のうち2つ以上の組み合わせ、により例示される。
【0057】
シリル化アセチレン系化合物を使用すると、本明細書に記載の感圧接着剤組成物を硬化させることにより調製される感圧接着剤の着色(例えば黄変)が、シリル化アセチレン系化合物を含有しない、又は上述したもののような有機アセチレンアルコールを含有する感圧接着剤と比較して低減させる又は最小限に抑えられ得る。シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン及びこれらの組み合わせにより例示される。あるいは、抑制剤は、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、又はこれらの組み合わせによって例示される。抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることにより、上述のアセチレン系アルコールをシリル化するといった、当該技術分野において既知の方法により調製され得る。
【0058】
抑制剤の量は、出発原料の所望のポットライフ、感圧接着剤組成物を硬化するために選択する温度、使用する特定の抑制剤、並びに使用する他の出発原料の選択及び量、を始めとする様々な要因に依存する。しかしながら抑制剤の量は、存在する場合、感圧接着剤組成物中の全出発原料を組み合わせた重量を基準として、0%~5%、あるいは0.05%~1%、あるいは0.01%~0.5%、あるいは0.0025%~0.025%であり得る。
【0059】
あるいは、ヒドロシリル化硬化性組成物はシリコーン感圧接着剤組成物であってもよく、この組成物は、
(a)10%~60%の、1分子当たり平均して少なくとも2つの脂肪族不飽和炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサンと、
(b)0.01%~5%の、1分子当たり平均して、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(c)0.01%~5%のヒドロシリル化反応触媒と、
5%~40%の、(d)ポリシロキサン樹脂、(e)分枝状ポリオルガノシロキサン、又は(d)及び(e)両者の組み合わせと、
(f)0%~50%の溶剤及び/又は(g)0%~5%の反応性希釈剤と、
(h)0%~5%のヒドロシリル化反応抑制剤と、を含み得る。
【0060】
本明細書の感圧接着剤組成物は、上記の0.1%~5%のアンカー添加剤と、上記の95%~99.9%のシリコーン感圧接着剤組成物と、を含み得る。感圧接着剤組成物において、出発原料は、出発原料を混合した際、感圧接着剤組成物の粘度が以下の参考例に記載の回転粘度測定法により測定して300mPa・s~5,000mPa・sとなり得るように選択される。理論に束縛されるものではないが、300mPa・s未満の粘度では、感圧接着剤組成物が適用されるバッキング基材の表面を、感圧接着剤組成物が硬化前に流動し得、これにより、基材上の接着剤被覆が不均一になり得、感圧接着剤組成物を硬化させることにより調製された感圧接着剤の接着面(例えば、感圧接着剤組成物が適用され硬化されるバッキング基材とは反対側の表面)の光学的特性に悪影響が及ぼされる場合があると考えられる。理論に束縛されるものではないが、感圧接着剤組成物の粘度が5,000mPa・sを超える場合、感圧接着剤組成物は、Gravure又はCommaといった一部のコーティング機での使用には適さない場合があると考えられる。
【0061】
感圧接着剤組成物の製造方法
感圧接着剤組成物は、上記のように調製したアンカー添加剤と上記のようなシリコーン感圧接着剤組成物の他の出発原料全てとを、周囲温度又は高温での混合といった任意の都合のよい手法で組み合わせることを含む方法により調製することができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、ヒドロシリル化反応触媒の前、例えば、感圧接着剤組成物を高温で調製する、及び/又は感圧接着剤組成物を一部型組成物として調製する際に添加してもよい。
【0062】
本方法は、溶剤中に1つ以上の出発原料(例えばヒドロシリル化反応触媒、及び存在する場合は樹脂)を送達することを更に含んでもよく、これら出発原料は組成物中の1つ以上の他の出発原料と組み合わせる際に溶剤中に溶解させてもよい。当業者であれば、結果として得られる感圧接着剤組成物が無溶剤である(すなわち、感圧接着剤組成物は溶剤を含まない、又は出発原料の送達に由来する微量の残留溶剤を含み得るが、溶剤、例えばトルエン又は非官能性ポリジオルガノシロキサンなどの有機溶剤)ことが望ましい場合、出発原料のうち2つ以上を混合した後で溶剤を除去してもよいことを理解するであろう。この実施形態では、感圧接着剤組成物中には溶剤を意図的に添加していない。
【0063】
あるいは、感圧接着剤組成物は、例えば感圧接着剤組成物を使用前に長期間、例えば感圧接着剤組成物を基材上にコーティングする前に最大6時間保管する場合、複数部型組成物として調製してもよい。複数部型組成物において、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発原料、例えばポリオルガノハイドロジェンシロキサンとは別個の部分に保存され、それらの部分は感圧接着剤組成物の使用直前に組み合わされる。
【0064】
例えば、複数部型組成物は、混合といった任意の都合のよい手法により、末端脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び任意選択的に、1つ以上のその他追加の上記出発原料のうち少なくともいくつかを含む出発原料を組み合わせて基部を形成することにより調製してもよい。硬化剤は、混合といった任意の都合のよい手法により、末端脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサン、ヒドロシリル化反応触媒、及び任意選択的に、1つ以上のその他追加の上記出発原料のうち少なくともいくつかを含む出発原料を組み合わせることにより調製してもよい。出発原料は、周囲温度又は高温で組み合わせてもよい。ヒドロシリル化反応抑制剤は、基部、硬化剤部、又は別個の追加部のうち1つ以上に含まれてもよい。アンカー添加剤は基部に添加してもよく、又は別個の追加部として添加してもよい。樹脂を、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加してもよい。分枝状ポリオルガノシロキサンを基部に添加してもよい。溶剤又は反応性希釈剤を基部に添加してもよい。あるいは、分枝状ポリオルガノシロキサンを含む出発原料、並びに溶剤及び/又は反応性希釈剤の一部又は全てを、別個の追加部に添加してもよい。二部型組成物を用いるとき、基部の量の、硬化剤部に対する重量比は、1:1~10:1の範囲とすることができる。感圧接着剤組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化して感圧接着剤を形成する。
【0065】
上述した方法は、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。上記のように調製した感圧接着剤組成物を使用して、基材上に接着剤物品、例えば、感圧接着剤(上記の感圧接着剤組成物を硬化させることにより調製する)を形成してもよい。したがって、本方法は、感圧接着剤組成物を基材に適用すること、を更に含んでもよい。
【0066】
感圧接着剤組成物を基材に適用することは、任意の都合のよい手段によって実施することができる。例えば、感圧接着剤硬化性組成物は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、又はカーテンコーターにより基材上に適用され得る。
【0067】
基材は、感圧接着剤組成物を硬化させて、基材上に感圧接着剤を形成するために使用する硬化条件(後述)に耐えることができる任意の材料であることができる。例えば、120℃以上、あるいは150℃以上の温度での熱処理に耐えることができる任意の基材が適している。このような基材に好適な材料の例としては、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフィド(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)などのプラスチックフィルムが挙げられる。あるいは、基材は、アルミニウム箔又は銅箔などの金属箔であってもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは5マイクロメートル~300マイクロメートルとすることができる。
【0068】
感圧接着剤の基材への結合を向上させるために、接着剤物品の形成方法は、感圧接着剤組成物を適用する前に基材を処理すること、を任意選択的に更に含んでもよい。基材の処理は、感圧接着剤組成物を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法により実施してもよい。
【0069】
フィルム又はテープなどの接着剤物品は、上記の感圧接着剤硬化性組成物を上記の基材上に適用することにより調製され得る。感圧接着剤組成物が溶剤を含有する場合、本方法は、硬化前及び/又は硬化中に溶剤の全て又は一部を除去することを更に含んでもよい。溶剤の除去は、感圧接着剤組成物を完全には硬化させずに溶剤を気化させる温度で加熱すること、例えば70℃~120℃、あるいは50℃~100℃、あるいは70℃~80℃の温度で、溶剤の全て又は一部を除去するのに十分な時間(例えば30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)加熱すること、などの任意の都合のよい手法で実施してもよい。
【0070】
感圧接着剤組成物の硬化は、感圧接着剤組成物を硬化させるのに十分な時間(例えば、30秒間~1時間、あるいは1分間~5分間)、80℃~200℃、あるいは90℃~180℃、あるいは100℃~160℃、あるいは110℃~150℃の温度で加熱することにより実施してもよい。硬化速度を速める必要がある場合、又はプロセスオーブンの温度を下げる必要がある場合は、触媒濃度を上げることができる。これにより、基材上に感圧接着剤が形成される。硬化は、基材をオーブン内に入れることによって行うことができる。基材に適用する感圧接着剤組成物の量は具体的な用途に依存するが、硬化後、感圧接着剤の厚さが5マイクロメートル~100マイクロメートルとなり得るのに十分な量であり得る。保護フィルムの場合、厚さは6マイクロメートル~50マイクロメートル、あるいは8マイクロメートル~40マイクロメートル、あるいは10~30マイクロメートルとなり得る。
【0071】
本明細書に記載の方法は、例えば、接着剤物品の使用前に感圧接着剤を保護するために、基材の反対側の感圧接着剤に除去可能な剥離ライナーを適用すること、を任意選択的に更に含んでもよい。剥離ライナーは、感圧接着剤組成物の硬化前、硬化中、又は硬化後に適用してもよく、あるいは硬化後に適用してもよい。
【0072】
上述のように調製された接着剤物品(例えば、保護フィルム)は、電子デバイス加工での使用に適している。例えば、一実施形態では、接着剤物品は、低接着力、低剥離力での除去能、高接着安定性、及び/又は低移行性(電子デバイスへ感圧接着剤が全く又はほとんど移らない)を有する保護フィルムとして、フレキシブルOLEDデバイス製造プロセスなどの電子デバイス製造プロセスにおいて使用されてもよい。
【0073】
例えば、フレキシブルOLEDデバイスによって例示される電子デバイスを製造するための方法は、基材の表面上にOLEDモジュール、例えば、基材の反対側のOLEDモジュールの表面上に不活性化層を形成することと、保護フィルム(すなわち、本明細書に記載されるように調製された感圧接着剤を含む接着剤物品)を、OLEDモジュールの反対側の不活性化層の表面に適用することと、を含む。本方法は、加工後に保護フィルムを除去すること、を更に含む。保護フィルムは、加工後に電子デバイスを損傷することなく除去することができる。
【0074】
代替的な実施形態では、上述のように調製された接着剤物品は、スクリーンなどの電子デバイスの表面保護、又はスマートフォン若しくはタブレットなどのデバイスの出荷中の他の表面保護、又はそのようなデバイスのスクリーン保護のためのエンドユーザに使用されてもよい。選択された感圧接着剤及び基材は、典型的には、スクリーン保護用途向けに透過性である。接着剤物品は、出荷後に電子デバイスを損傷することなく除去することができる。
【実施例】
【0075】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明することを意図しており、本特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈してはならない。表1の出発原料を本明細書の実施例で使用した。
【表1】
表1
【0076】
本明細書中の表において、「N/A」は該当しないことを意味し、「NR」は報告されていないことを意味する。
【0077】
参考例-アンカー添加剤サンプルの一般手順
上記表1の出発原料を以下の表2及び表3に示す重量部で使用し、サンプルを調製した。最初に、(A-1)不飽和シランと(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランとを、窒素でパージした反応器内で組み合わせた。これらシランを加熱し、140℃で240分間混合した。得られた混合物を、50℃未満の温度にまで冷却した。次に、(B)ヒドロキシル及び脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンを反応器に添加した。得られた混合物を、0~50℃の温度で40分間混合した。得られたアンカー添加剤サンプルを、窒素で30秒間パージしたポリテトラフルオロエチレン容器内に濾過した。
【表2】
表2-比較アンカー添加剤サンプル
【表3】
表3-アンカー添加剤サンプル
【0078】
参考例2-感圧接着剤サンプル作製の一般手順
表1の出発原料を表4及び表5に示す量で以下のように使用し、サンプルを調製した。最初に、高接着力のPSA1と低接着力のPSA2とを混合比1:9でブレンドした。次に、上記のように調製した各アンカー添加剤を添加した。次に、ヘプタン溶剤(f-2-1)を添加した。得られた組成物を混合した。次に、架橋剤(b-9-1)を混合しながら添加した。次に、Karstedtの触媒(c-1-1)を混合しながら添加し、感圧接着剤組成物サンプルを調製した。混合は、RTで空気に曝露させながら実施した。
【0079】
次に、以下のようにPSAテープサンプルを調製した。厚みが50±5マイクロメートル、ヘイズが3.0±0.2であるPETフィルム上に上記のように調製した組成物を適用してその厚さを30±5マイクロメートルで制御した。これらのサンプルを、150℃のオーブン内に2分間置くことで硬化させた。
【0080】
直接摩擦落ち試験(direct rub-off test)(参考例3に後述)のため、上記のように調製したサンプルを沸騰水に2時間入れ、次にPETシートを拾い上げて水を掃き、それらをRTで維持することにより摩擦落ち試験用のPSAテープサンプルを調製した。
【0081】
硬化PSAを備えたPETフィルムをガラスに付着させ、サンプルをRTで24時間維持することにより、初期接着力試験(参考例3を参照)用のサンプルを調製した。
【0082】
硬化PSAを備えたPETフィルムをガラスに付着させ、これらを70℃及びRH80%のオーブン内に3日間置き続け、次にサンプルをRTで30分間維持することにより、エージング処理を伴う接着力試験(参考例3を参照)用のサンプルを調製した。表4及び表5は、感圧接着剤組成物の成分(重量部の量)及び試験結果を示す。サンプル番号は、上記のように調製したアンカー添加剤に対応している。
【0083】
参考例3-試験方法
Brookfield粘度計DV-IIを用いた回転粘度測定を用いて、RTで粘度を測定した。
【0084】
ヘイズメーターによる、硬化PSAを備えた/備えていないPETフィルムのヘイズ。BYK Haze-gard Plusを使用してヘイズを測定した。透過率、ヘイズ、及び透明度を報告した。
【0085】
摩擦落ち抵抗(摩擦落ち)は、指を用いてPETフィルム上の硬化感圧接着剤をこすり落とし、接着剤層の分離状態を確認することにより測定した。本明細書の表において、「不合格」は指を使用して感圧接着剤を基材からこすり落とすことができたことを意味し、「合格」は指を使用してPSAを基材からこすり落とすことができなかったことを意味する。
【0086】
機器である接着力/剥離試験機AR-1500を用いて、PSAテープをガラスから剥離させ、ガラス上に移動した接着剤及びPETフィルムと共に離れた接着剤がいくらかあるかを確認することにより、接着力を試験した。PETシートの幅は1インチであった。剥離速度及び剥離角度は、それぞれ0.3m/分及び180°であった。
【表4】
表4-比較感圧接着剤サンプル
【表5】
表5-感圧接着剤サンプル
【0087】
産業上の利用可能性
上記のように調製した接着剤物品は、マスキングテープ、キャリアテープ、又は他の保護フィルムとしての保護などのエレクトロニクス用途において有用である。接着剤物品を調製するために使用される感圧接着剤は、上記参考例3の試験方法で評価した場合、低ヘイズ(良好な光学的透過率)、良好な摩擦落ち抵抗、ガラスへの良好な接着力、及びエージング後の良好な接着力(エージング後に接着力が望ましくない程度までは増加しない)を有する。特定の保護用途では、接着剤物品中の感圧接着剤は、低い剥離力(例えば、特定の基材に対する15g/インチ以下の接着力)を有することが望ましい場合がある。本明細書に記載の組成物及び方法によって製造された感圧接着剤は、キャリアテープ用途のために、0.5g/インチ~400g/インチ、あるいは0.5g/インチ~200g/インチの接着力(参考例2に記載される剥離力によって測定される)を有し得る。あるいは感圧接着剤は、保護フィルム用途のために、0.5g/インチ~15g/インチの剥離力を有してもよい。
【0088】
本明細書に記載の接着剤物品中の感圧接着剤を調製するために使用される感圧接着剤組成物は、参考例2に記載の回転粘度測定技術により測定して、300mPa・s~5,000mPa・s、あるいは300mPa・s~4,000mPa・s、あるいは500mPa・s~3,000mPa・s、あるいは500mPa・s~2,500mPa・sの粘度を有してもよい。理論に束縛されるものではないが、接着剤物品が保護フィルム用途で使用される場合、低コーティング厚(例えば、バッキング基材上で5マイクロメートル~15マイクロメートル)は、従来のコーティング装置及びプロセスによる加工性を確保するために、これらの範囲の粘度によって促進され得ると考えられる。
【0089】
更に、特定の保護フィルム用途(例えば、スクリーン保護)には、良好な光学特性(光学的透明度)が望ましい。参考例3の技術により測定して良好なコーティング外観及び低ヘイズを有する、透過性バッキング基材(PI又はPETなど)及び低コーティング厚、例えば5マイクロメートル~15マイクロメートル)の感圧接着剤を備えた接着剤物品。
【0090】
用語の定義及び使用
本明細書で使用される略語は、以下の表6における定義を有する。
【表6】
表6-略語
【0091】
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全出発原料の量は、合計100重量%である。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、2.0~4.0の範囲だけでなく、2.1、2.3、3.4、3.5、及び4.0も個別に含み、並びに範囲内に包含される任意の他の数も含む。更に、例えば、2.0~4.0の範囲の開示は、例えば、2.1~3.5、2.3~3.4、2.6~3.7、及び3.8~4.0の部分集合、並びにその範囲内に包含される任意の他の部分集合も含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群「水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基」の開示には、その要素である個々のアルキル、下位群であるアルキル及びアリール、並びに任意の他の個々の要素及びその中に包含される下位群を包含する。
【0092】
「アルキル」は、分枝状又は非分枝状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソプロピルを含む)、ブチル(イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチルを含む)、ペンチル(イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチルを含む);並びにヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、並びにデシル、更には6個以上の炭素原子の分枝状飽和一価炭化水素基が挙げられる。アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子を有する。あるいは、アルキル基は、1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子、あるいは1個の炭素原子を有してもよい。
【0093】
「アラルキル」及び「アルカリール」は、それぞれ、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を指す。例示的なアラルキル基としては、ベンジル、トリル、キシリル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。アラルキル基は、少なくとも7個の炭素原子を有する。単環式アラルキル基は7~12個の炭素原子、あるいは7~9個の炭素原子、あるいは7~8個の炭素原子を有してもよい。多環式アラルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有していてよい。
【0094】
「アルケニル」は、二重結合を有する、分枝状又は非分枝状一価炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、ビニル、アリル、及びヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルケニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0095】
「アルキニル」は、三重結合を有する、分枝状又は非分枝状一価炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、エチニル及びプロピニルが挙げられる。アルキニル基は、少なくとも2個の炭素原子を有する。あるいは、アルキニル基は、2~12個の炭素原子、あるいは2~10個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子、あるいは2~4個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有してもよい。
【0096】
「アリール」とは、環炭素原子からの水素原子の除去により、アレーンから誘導された炭化水素基を意味する。アリールは、フェニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。アリール基は、少なくとも5個の炭素原子を有する。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、あるいは6~7個の炭素原子、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、あるいは10~14個の炭素原子、あるいは12~14個の炭素原子を有してもよい。
【0097】
「炭素環」及び「炭素環式」は、炭化水素環を指す。炭素環は、単環式でも多環式でもよく、例えば、2環式又は2個を超える環を有するものでもよい。2環式炭素環は、縮合環、橋かけ環又はスピロ多環式環でもよい。炭素環は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式炭素環は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式炭素環は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。炭素環は、飽和(例えば、シクロペンタン又はシクロヘキサン)、部分不飽和(例えば、シクロペンテン又はシクロヘキセン)、又は完全不飽和(例えば、シクロペンタジエン又はシクロヘプタトリエン)であってもよい。
【0098】
「シクロアルキル」は、炭素環を含む飽和炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びメチルシクロヘキシルによって例示される。シクロアルキル基は、少なくとも3個の炭素原子を有する。単環式シクロアルキル基は、3~9個の炭素原子、あるいは4~7個の炭素原子、あるいは5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式シクロアルキル基は、7~17個の炭素原子、あるいは7~14個の炭素原子、あるいは9~10個の炭素原子を有してもよい。
【0099】
「一価炭化水素基」は、水素原子及び炭素原子からなる一価の基を意味する。一価炭化水素基としては、上記に定義したアルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、及びシクロアルキル基が挙げられる。
【0100】
「一価ハロゲン化炭化水素基」とは、炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、式としてはハロゲン原子で置換されている一価炭化水素基を意味する。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロアルキル基、ハロゲン化炭素環式基、及びハロアルケニル基が挙げられる。ハロアルキル基としては、フッ素化アルキル基及びフッ素化シクロアルキル基(例えば、トリフルオロメチル(CF3)、フルオロメチル、トリフルオロエチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル);並びに塩素化アルキル基及び塩素化シクロアルキル基(例えば、クロロメチル、3-クロロプロピル、2,2-ジクロロシクロプロピル、2,3-ジクロロシクロペンチル)が挙げられる。ハロアルケニル基としては、クロロアリル基が挙げられる。
【0101】
用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0102】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0103】
添付の特許請求の範囲及び本発明の実施形態は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲及び本発明の実施形態内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。
【0104】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、感圧接着剤組成物は、
(I)
1)出発原料(A)及び(B)を-20℃~160℃の温度で組み合わせることであって、出発原料(A)は、
(A-1)式R1SiR2
3(式中、R1は脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R2は炭化水素オキシ基及びアシルオキシ基からなる群から独立して選択される)の不飽和シランと、
(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランであって、このトリアルコキシシランは、式R3Si(OR4)3(式中、各R3はエポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択されるアンカー促進基を含み、各R4は炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である)を有する、トリアルコキシシランと、を含む33%~67%のシラン組成物であり、
ただし、(A-1)及び(A-2)は、重量比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で使用され、
出発原料(B)は、単位式(B-1):
(R7R5
cR6
(2-c)SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)a(R5R6SiO2/2)b(式中、各R7はOH及びOR4からなる群から独立して選択され、各R5は脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、各R6は脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧0であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1であるような値を有する)を有する33%~67%のポリジオルガノシロキサンであり、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた量は最大で100%になる、組み合わせること、を含む方法により調製されるアンカー添加剤、並びに
(II)シリコーン感圧接着剤組成物、を含む。
【0105】
第2の実施形態では、出発原料(A-1)において、各R1はアルケニルであり、各R2はアルコキシ又はアセトキシである。
【0106】
第3の実施形態では、出発原料(A-2)において、各R2はメチル又はエチルであり、各R3はグリシドキシアルキル又はエポキシシクロヘキシルアルキルからなる群から選択される。
【0107】
第4の実施形態では、出発原料(B)において、各R7はOH及びOCH3からなる群から独立して選択され、各R5はメチル及びエチルからなる群から選択され、各R6はビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択される。
【0108】
第5の実施形態では、出発原料(B)は、加水分解性基及び脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基の両方を有するポリジオルガノシロキサンを含み、出発原料(B)は、単位式(B-2):(R7R5
2SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)d(式中、R5及びR7は上記のとおりであり、下付き文字dは≧1である)の最大20%のポリジオルガノシロキサンを更に含む。
【0109】
第6の実施形態では、シリコーン感圧接着剤組成物は、(a)10%~60%の、脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基を有するポリジオルガノシロキサン、(b)0.01%~5%のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(c)0.01%~5%のヒドロシリル化反応触媒、(d)5%~40%のポリオルガノシリケート樹脂、(f)0%~50%の溶剤、及び(h)0%~5%のヒドロシリル化反応抑制剤を含み、この出発原料の各々は上に記載されている。
【0110】
第7の実施形態では、感圧接着剤組成物は複数部型組成物として調製される。
【0111】
第8の実施形態では、接着剤物品の調製方法は、
1)出発原料を組み合わせて感圧接着剤組成物を形成することであって、この出発原料は、
(I)
1)出発原料(A)及び(B)を-20℃~160℃の温度で組み合わせることであって、出発原料(A)は、
(A-1)式R1SiR2
3(式中、R1は脂肪族不飽和を有する一価炭化水素基であり、各R2は炭化水素オキシ基及びアシルオキシ基からなる群から独立して選択される)の不飽和シランと、
(A-2)アンカー促進基を有するトリアルコキシシランであって、このトリアルコキシシランは、式R3Si(OR4)3(式中、各R3はエポキシ官能基、アシルオキシ官能基、及びアクリレート官能基からなる群から選択されるアンカー促進基を含み、各R4は炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である)を有する、トリアルコキシシランと、を含む33%~67%のシラン組成物であり、
ただし、(A-1)及び(A-2)は、重量比(A-1)/(A-2)が0.4/1~2.5/1の値を有する量で使用され、
出発原料(B)は、単位式(B-1):(R7R5
cR6
(2-c)SiO1/2)2(R5
2SiO2/2)a(R5R6SiO2/2)b(式中、各R7はOH及びOR4からなる群から独立して選択され、各R5は脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基、及び脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化ヒドロカルビル基からなる群から独立して選択され、各R6は脂肪族不飽和を有する独立して選択される一価炭化水素基であり、下付き文字aは≧0であり、下付き文字bは≧0であり、下付き文字cは2≧c≧1であるような値を有する)を有する33%~67%のポリジオルガノシロキサンであり、出発原料(A)及び(B)を組み合わせた量は最大で100%になる、組み合わせること、を含む方法により調製されるアンカー添加剤、並びに
(II)シリコーン感圧接着剤組成物を含む、形成することと、
2)バッキング基材の表面に感圧接着剤組成物をコーティングすることと、
3)感圧接着剤組成物を硬化させて、バッキング基材の表面に感圧接着剤を形成することと、を含む。
【0112】
第9の実施形態では、本方法は、組成物を表面にコーティングする前にバッキング基材を処理すること、を更に含む。
【0113】
第10の実施形態では、本方法は、4)感圧接着剤を電子デバイスに接着させ、感圧接着剤がバッキング基材と電子デバイスの表面との間に存在するようにすること、を更に含む。
【0114】
第11の実施形態では、方法は、製造中に第11~第13の実施形態のいずれか1つに記載の方法により調製された接着剤物品を電子デバイスに接着させることと、電子デバイスに対して加工工程を実行することと、その後、電子デバイスから接着剤物品を除去することと、を含む。
【0115】
第12の実施形態では、方法は、デバイスの製造後及び出荷前又は最終使用前に、第11~第13の実施形態のいずれか1つに記載の方法により調製された接着剤物品を電子デバイスに接着させること、を含む。
【0116】
第13の実施形態では、接着剤物品は光学的に透過性であり、本方法は、電子デバイスのスクリーン保護のために、第11~第13の実施形態のいずれか1つに記載の方法により調製された接着剤物品を使用すること、を更に含む。