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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】移動体及び光無線給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 40/22 20140101AFI20230808BHJP
   H02S 10/40 20140101ALI20230808BHJP
   H02J 50/30 20160101ALI20230808BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20230808BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230808BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230808BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230808BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230808BHJP
   B64F 3/02 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H02S40/22
H02S10/40
H02J50/30
H02J50/90
H02J7/00 P
B64C39/02
B64D47/08
B64D27/24
B64F3/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021168387
(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公開番号】P2023058380
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】今井 弘道
(72)【発明者】
【氏名】林 英誉
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109510327(CN,A)
【文献】特開2021-027680(JP,A)
【文献】特開2017-046479(JP,A)
【文献】特開2019-013063(JP,A)
【文献】特開2020-161931(JP,A)
【文献】特開2016-171616(JP,A)
【文献】特開2019-088034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0119684(US,A1)
【文献】中国実用新案第205725181(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111564912(CN,A)
【文献】特開2021-027683(JP,A)
【文献】実開平07-016556(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/30
H02S40/20-40/22
H02S10/40
H01L31/12-31/173
H01L31/04-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を受光し電力に変換する光電変換部、及び該光電変換部の受光面側に配置され、前記レーザー光を拡散させつつ透過させる拡散部材を含む受光部と、
前記光電変換部が変換した電力を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部が蓄電した電力を用いて動力装置を駆動する駆動部と、
を有し、
前記拡散部材は、前記光電変換部の受光面の1辺の長さより小さいビーム径を有するレーザー光が前記光電変換部の受光面全体に照射されるように、レーザー光を拡散さ
前記光電変換部及び前記拡散部材を覆う筐体をさらに有し、
前記筐体の内壁に反射膜が配置されている、
ことを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記拡散部材は、拡散レンズである、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記拡散部材は、拡散膜である、請求項1または2に記載の移動体。
【請求項4】
前記反射膜は、金属膜である、請求項1に記載の移動体。
【請求項5】
前記金属膜は、アルミ、金、銀のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の移動体。
【請求項6】
前記レーザー光を送出する給電装置の画像を撮像する撮像部と、
前記画像に基づいて給電装置を検出する検出部と、
給電装置に対して正対するように前記受光部の位置を制御する制御部と、
をさらに有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の移動体。
【請求項7】
給電装置と、該給電装置から電力を受電する移動体と、を有する光無線給電システムであって、
前記移動体は、
レーザー光を受光し電力に変換する光電変換部、及び該光電変換部の受光面側に配置され、前記レーザー光を拡散させつつ透過させる拡散部材を含む受光部と、
前記光電変換部が変換した電力を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部が蓄電した電力を用いて動力装置を駆動する駆動部と、
前記給電装置との間で情報を送受信する通信部と、
を有し、
前記拡散部材は、前記光電変換部の受光面の1辺の長さより小さいビーム径を有するレーザー光が前記光電変換部の受光面全体に照射されるように、レーザー光を拡散させ、
前記光電変換部及び前記拡散部材を覆う筐体をさらに有し、
前記筐体の内壁に反射膜が配置され、
前記給電装置は、
前記移動体に対してレーザー光を送出する光源部と、
前記移動体の対象領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した画像に基づいてレーザー光を送出する位置を制御する制御部と、
前記移動体との間で情報を送受信する通信部と、
を有することを特徴とする光無線給電システム。
【請求項8】
前記対象領域は、前記受光部である、請求項7に記載の光無線給電システム。
【請求項9】
前記給電装置は、前記受光部の画像を認識する画像認識部をさらに有する、請求項7または8に記載の光無線給電システム。
【請求項10】
前記給電装置は、前記移動体の位置を検出する検出部をさらに有する、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の光無線給電システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記移動体の位置に追従して前記光源部の向きを制御する、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の光無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体及び光無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体の電動化や新たな電動移動体の創出が進んでいる。電動移動体の移動距離を延ばすためには、電動移動体に対して電力を供給するための給電手法が必要である。給電手法の例として有線給電が挙げられるが、有線給電では電動移動体の移動範囲が制限されるため、電動移動体の活用性を大きく広げるべく、無線給電手法が求められている。
【0003】
無線給電手法として、これまでに、電磁誘導方式、磁界共振方式、電界結合方式、マイクロ波空間伝送方式、光無線給電方式等が知られている。これらのうち、電動移動体への給電方式として、太陽電池を用いた「光無線給電方式」が注目されている。
【0004】
光無線給電方式においては、種々の光源を用いることが検討されているが、光電変換効率の観点ではレーザー光が最も効率的であることが知られている。
【0005】
しかしながら、レーザー光は指向性が高くビーム幅が狭いがゆえに、レーザー光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池全体に対して光が均等に当たりにくいという課題がある。太陽電池の一部、例えば、太陽電池の受光面の半分以下の部分にしか光が当たらない場合、太陽電池全体に光が当たる場合と比較して発電効率が低下する。従って、太陽電池を用いた光無線給電方式においては、太陽電池と同サイズの光ビームが太陽電池に照射されること、太陽電池全体の光強度分布が均一であること、太陽電池モジュールから漏れる光が少ないこと、が求められる。
【0006】
これまでに、レーザー光を太陽電池全体に均等に照射する方法として、フライアイレンズ等を利用しVCSEL(垂直共振器面発光型レーザー)やLEDのような、ある程度ビーム幅の広い光を太陽電池の形状に合わせて照射する方法が報告されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の発明によれば、光電変換素子に入射する光ビームの経路上に一対のフライアイレンズおよび結像レンズを含む光学系を備えることで、光電変換素子の全面にわたり均一な光ビームを照射でき、受光モジュールの性能を改善することができる。しかしながら、このような構成ではフライアイレンズの特性上、光源のビーム幅がある程度広くないと十分に性能を発揮できず、ビーム幅が狭い光を適用することはできないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-36480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高効率な発電を可能にする受光モジュールを有する移動体及び光無線給電システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態に係る移動体は、レーザー光を受光し電力に変換する光電変換部、及び該光電変換部の受光面側に配置され、レーザー光を拡散させつつ透過させる拡散部材を含む受光部と、光電変換部が変換した電力を蓄電する蓄電部と、蓄電部が蓄電した電力を用いて動力装置を駆動する駆動部と、を有し、拡散部材は、光電変換部の受光面の1辺の長さより小さいビーム径を有するレーザー光が光電変換部の受光面全体に照射されるように、レーザー光を拡散させることを特徴とする。
【0010】
本開示の一実施形態に係る移動体において、拡散部材は、拡散レンズであることが好ましい。
【0011】
本開示の一実施形態に係る移動体において、拡散部材は、拡散膜であることが好ましい。
【0012】
本開示の一実施形態に係る移動体において、光電変換部及び拡散部材を覆う筐体をさらに有していることが好ましい。
【0013】
本開示の一実施形態に係る移動体において、筐体の内部に反射膜が配置されていることが好ましい。
【0014】
本開示の一実施形態に係る移動体において、反射膜は、金属膜であることが好ましい。
【0015】
本開示の一実施形態に係る移動体において、金属膜は、アルミ、金、銀のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0016】
本開示の一実施形態に係る移動体において、レーザー光を送出する給電装置の画像を撮像する撮像部と、撮像した画像に基づいて給電装置を検出する検出部と、給電装置に対して正対するように受光部の位置を制御する制御部と、をさらに有することが好ましい。
【0017】
本開示の一実施形態に係る光無線給電システムは、給電装置と、該給電装置から電力を受電する移動体と、を有する光無線給電システムであって、移動体は、レーザー光を受光し電力に変換する光電変換部、及び該光電変換部の受光面側に配置され、レーザー光を拡散させつつ透過させる拡散部材を含む受光部と、光電変換部が変換した電力を蓄電する蓄電部と、蓄電部が蓄電した電力を用いて動力装置を駆動する駆動部と、給電装置との間で情報を送受信する通信部と、を有し、拡散部材は、光電変換部の受光面の1辺の長さより小さいビーム径を有するレーザー光が光電変換部の受光面全体に照射されるように、レーザー光を拡散させ、給電装置は、移動体に対してレーザー光を送出する光源部と、移動体の対象領域を撮像する撮像部と、撮像部が撮像した画像に基づいてレーザー光を送出する位置を制御する制御部と、移動体との間で情報を送受信する通信部と、を有することを特徴とする。
【0018】
本開示の一実施形態に係る光無線給電システムにおいて、対象領域は、受光部であることが好ましい。
【0019】
本開示の一実施形態に係る光無線給電システムにおいて、給電装置は、受光部の画像を認識する画像認識部をさらに有することが好ましい。
【0020】
本開示の一実施形態に係る光無線給電システムにおいて、給電装置は、移動体の位置を検出する検出部をさらに有することが好ましい。
【0021】
本開示の一実施形態に係る光無線給電システムにおいて、制御部は、移動体の位置に追従して光源部の向きを制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高効率な発電を可能にする受光モジュールを有する移動体及び光無線給電システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの概要を説明するための図である。
図2】本開示の実施例1に係る移動体のブロック図である。
図3】本開示の実施例1に係る移動体の受光部にレーザー光を照射する様子を説明するための図である。
図4】本開示の実施例1に係る移動体の受光部を構成する拡散部材と光電変換部との間の距離を算出する方法を説明するための図である。
図5】本開示の実施例2に係る移動体の受光部にレーザー光を照射する様子を説明するための図である。
図6】本開示の実施例2に係る移動体の受光部にレーザー光を照射する様子を説明するための図であって、(a)は、レーザー光が拡散部材の中央部へ照射された場合の例を示し、(b)は、レーザー光が拡散部材の中央より外側へ照射された場合の例を示す。
図7】本開示の一実施形態に係る光無線給電システムを構成する給電装置及び移動体のそれぞれのブロック図である。
図8】本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
図9】本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの他の例の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る移動体及び光無線給電システムについて説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0025】
まず、本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの概要について説明する。図1に本開示の一実施形態に係る光無線給電システム300の概要を説明するための図を示す。光無線給電システム300は、給電装置200と、給電装置200から電力を受電する移動体100と、を有する。移動体(例えば、ドローン)100は、給電エリア400において充電することができる。移動体100は、移動体100を移動させるための電力が減少し充電が必要になった場合、あるいは、充電するよう指示を受け付けた場合などに、給電エリア400に移動して充電してよい。移動体100は、給電エリア400の位置を予め記憶しておいてよい。
【0026】
給電エリア400には、例えば、鉄塔等の構造物500に設けられた給電装置200が配置されている。給電装置200は、撮像部22であるカメラを備えており、移動体100を撮像し、撮像した画像に基づいて移動体100が給電対象であると判定した場合に、光源部21から移動体100の受光部1にレーザー光L1を照射する。移動体100の受光部1には光電変換部が設けられており、光電変換部は受光したレーザー光を電気エネルギーに変換し、蓄電部に蓄電する。移動体100は、蓄電した電力を利用して移動を継続することができる。
【0027】
レーザー光は指向性が高く、移動体100と給電装置200との間の距離が、例えば、数km離れていてもビーム径(数mm)は広がらない。一方、移動体100の受光部1を構成する光電変換部は、例えば、一辺の長さが数cmから10cm程度の長方形を有する。光電変換部は、レーザー光が光電変換部全体に均等に光が当たらないとエネルギー変換効率が低下するという性質を有する。そのため、本開示の実施形態に係る移動体100の受光部1は、光電変換部に均等にレーザー光が照射されるような構成を有している。以下、移動体100の受光部1の構成について説明する。
【0028】
[実施例1]
図2に、本開示の実施例1に係る移動体100のブロック図を示す。移動体100は、受光部1と、蓄電部2と、駆動部3と、撮像部4と、検出部5と、制御部6と、通信部7と、記憶部8と、を有し、これらは、バス10により接続されている。
【0029】
受光部1は、レーザー光L1を受光し電力に変換する光電変換部、及び該光電変換部の受光面側に配置され、レーザー光L1を拡散させつつ透過させる拡散部材を含む。光電変換部及び拡散部材については後述する。
【0030】
蓄電部2は、光電変換部が変換した電力を蓄電する。蓄電部2は二次電池等の蓄電池であってよい。蓄電池として、例えば、リチウムイオン電池等を用いてよい。
【0031】
駆動部3は、蓄電部2が蓄電した電力を用いて動力装置を駆動する。駆動部3は、移動体100がドローンである場合は、回転翼を回転させるモータであってよい。
【0032】
撮像部4は、レーザー光を送出する給電装置200の画像を撮像する。撮像部4には、例えば、カメラを用いてよい。
【0033】
検出部5は、撮像部4が撮像した画像に基づいて給電装置200を検出する。検出部5は、画像に含まれる給電装置200を画像認識により検出してよい。画像認識を用いることにより、移動体100は給電装置200の位置を正確に把握することができる。
【0034】
制御部6は、給電装置200の光源部21に対して正対するように移動体100の受光部1の位置を制御する。この場合、制御部6は、受光部1のみの位置を制御してもよいし、移動体100全体の位置を制御してもよい。制御部6は、CPU等のマイクロコンピュータ(マイコン)を用いてよい。制御部6は、給電装置200の位置に追従して、受光部1の向きを制御することができる。従って、制御部6は、光源部21がレーザー光を照射している状態で、給電装置200と移動体100の相対的な位置が変動した場合であっても、給電装置200の位置をトラッキングし、光源部21から出射されたレーザー光を移動体100の受光部1に正確に照射させることができる。トラッキングとは、ここでは、検出した給電装置200を継続して検出し続けることをいう。移動体100は、電波、画像認識、センサ等の任意の手法により給電装置200をトラッキングしてよい。
【0035】
通信部7は、給電装置200との間で情報を送受信する。
【0036】
記憶部8は、例えば、半導体メモリであってよい。記憶部27は、給電エリア400の位置情報、給電装置200に関する識別情報、及び移動体100を制御するためのプログラムを格納してよい。
【0037】
図3に、本開示の実施例1に係る移動体100の受光部1にレーザー光を照射する様子を説明するための図を示す。
【0038】
光電変換部11には、シリコン太陽電池を用いてよい。シリコン太陽電池を構成するシリコンは、結晶構造が、単結晶、多結晶、非晶質(アモルファス)のいずれであっても利用可能である。しかしながら、電力変換効率が高い点で単結晶シリコンにより構成されていることが好ましい。光電変換部11には、多元素化合物半導体を用いた太陽電池(CIS(Copper Indium Selenium)太陽電池、CIGS(Copper Indium Gallium Selenium)太陽電池)や、III-V族多接合太陽電池(GaAs族太陽電池等)等を用いてもよい。
【0039】
シリコン太陽電池の場合、起電圧は0.8V程度であるため、出力電圧を高くするためには、複数個のセルを直列に接続する必要がある。1つのシリコン太陽電池を複数個のセルに分割した場合、それぞれのセルの起電圧は均一であることが好ましいため、それぞれのセルに均一に光が照射されることが好ましい。そのため、レーザー光は光電変換部11に均一に照射されることが好ましい。
【0040】
シリコン太陽電池の場合、シリコン(Si)のバンドギャップに相当する波長が約1.1μmであるので、光は、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーを持たないと吸収されない。そのため、照射するレーザー光の波長は、バンドギャップに相当する波長より短い波長である必要がある。一方、バンドギャップに相当する波長よりも大幅に短い波長の光は、エネルギーの大半がシリコン太陽電池の発熱を引き起こし、その結果、エネルギー変換効率は低下する。従って、シリコン太陽電池においては、エネルギー変換効率を考慮すると、照射するレーザー光の波長は、シリコンのバンドギャップに相当する波長である1.1μmよりも若干短波長の波長1μm程度であることが好ましい。また、波長1μmのレーザー光は、可視光の範囲よりも長波長であるため、人体に対しても安全と言える。
【0041】
拡散部材12は、給電装置200の光源部21から照射されたレーザー光L1を拡散させながら透過させる。拡散部材12により拡散されたレーザー光(以下、「拡散光」ともいう)L2は、光電変換部11の受光面と同程度の大きさの範囲に拡散されることが好ましい。即ち、拡散部材12は、光電変換部11の受光面の1辺の長さ(h)より小さいビーム径(d)を有するレーザー光L1が光電変換部11の受光面全体に照射されるように、レーザー光L1を拡散させる。その結果、拡散光L2は、光電変換部11の受光面全体に照射される。
【0042】
拡散部材12により拡散されるレーザー光の幅は、拡散部材12の入射面と光電変換部11の受光面との間の距離によって決められる。図4に、本開示の実施例1に係る移動体の受光部1を構成する拡散部材12と光電変換部11との間の距離を算出する方法を説明するための図を示す。拡散部材12の入射面と光電変換部11の受光面との間の距離をL、拡散角をθとすると、拡散範囲xは、以下の式(1)により算出される。
【0043】
【数1】
ここで、レーザー光L1の光源発散角は0°としている。例えば、拡散範囲xを50mmとした場合、式(1)より、距離Lは43.1mmと算出される。拡散範囲xを光電変換部11の受光面の1辺の長さh以上とする(x≧h)ことにより、拡散光L2を光電変換部11の受光面全体に照射させることができる。
【0044】
レーザー光L1が拡散部材12を通ることによって光電変換部11の大きさに合わせて拡散されて、光電変換部11全体にレーザー光L2が照射されることによってより高効率な給電が可能となる。
【0045】
拡散部材12には、拡散レンズや拡散膜を用いることができる。拡散レンズとして、例えば、フレネルレンズを用いてよい。フレネルレンズは1枚用いれば足りるため、レンズを複数枚用いる場合に比べて、レンズによる光の損失を最小限に抑えることが可能となる。
【0046】
拡散膜として、例えば、レンズ拡散板(LSD(Light Shaping Diffuser))、ホログラフィックディフューザー、エンジニアドディフューザー等を用いてよい。これらの拡散膜を用いることにより、入射光の強度プロファイルを制御しつつ均質化することができ、ビーム幅が狭いレーザー光L1を光電変換部11の受光面の大きさまで広げた拡散光L2を生成することができる。
【0047】
実施例1に係る移動体100によれば、光電変換部11の大きさよりもビーム幅が狭いレーザー光L1を拡散部材12により拡散させ、拡散光L2を光電変換部11全体に照射させることができるため、レーザー光L1のビーム幅を光電変換部11の大きさに合わせる必要がない。また、レーザー光は、給電装置200と移動体100との間の距離が長距離に渡って離間していても光の減衰が少ないため、高効率な光無線給電を行うことができる。さらに、拡散部材12を1つだけ用いることにより、拡散部材12における損失を最小限に抑制しながら光無線給電を行うことができる。
【0048】
[実施例2]
次に、本開示の実施例2に係る移動体について説明する。図5に、本開示の実施例2に係る移動体の受光部にレーザー光を照射する様子を説明する図を示す。図6(a)及び(b)に、本開示の実施例2に係る移動体の受光部にレーザー光を照射する様子を説明する図を示す。図6(a)は、レーザー光が拡散部材の中央部へ照射された場合の例を示し、図6(b)は、レーザー光が拡散部材の中央より外側へ照射された場合の例を示す。実施例2に係る移動体の受光部1´が、実施例1に係る移動体の受光部1と異なっている点は、光電変換部11及び拡散部材12を覆う筐体13をさらに有する点である。実施例2に係る移動体のその他の構成は、実施例1に係る移動体における構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0049】
筐体13の内部には光電変換部11及び拡散部材12が配置されている。筐体13の一部には開口部131が設けられおり、筐体13の開口部131に、拡散部材12の表面121が配置されている。従って、拡散部材12に入射したレーザー光L1は拡散部材12によって拡散され、拡散光L2が光電変換部11の受光面11Sに入射する。
【0050】
図5に示すように、レーザー光L1を給電装置200の光源部21から移動体の受光部1´に照射する場合、レーザー光L1が、拡散部材12の表面121に垂直な方向に対して所定の角度αだけずれているとする。この場合、拡散光の一部(例えば、L21、L22)は、直接、光電変換部11の受光面11Sに入射せず、筐体13の内壁13Wに入射する。拡散光の一部(L21、L22)は、筐体13の内壁13Wで反射されて、その反射光(L21´、L22´)が、光電変換部11の受光面11Sに入射する。従って、筐体13が無い場合には、光電変換部11の受光面11Sに入射せず、発電に寄与しなかった拡散光の一部(L21、L22)を筐体13の内壁13Wで反射させて、反射光(L21´、L22´)を光電変換部11の受光面11Sに入射させて、発電に寄与させることができる。このように、筐体13で光電変換部11及び拡散部材12を覆うことにより、レーザー光L1が拡散部材12の表面121と垂直に入射しなかった場合でも、発電効率の低下を抑制することができる。
【0051】
筐体13の内壁13Wに入射したレーザー光の反射率を高めるために、筐体13の内部に反射膜14を配置することが好ましい。反射膜14は、金属膜であってよい。金属膜は、アルミ、金、銀のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0052】
本開示の実施例2に係る移動体のように、拡散部材12や光電変換部11を反射素材で作製した筐体13に密閉する構成とすることにより、光電変換部11からはみ出たレーザー光が筐体13の中で反射されるため、光損失を最小限に抑えることができる。
【0053】
図6(a)は、レーザー光L1が、拡散部材12のほぼ中心に入射した場合の例を示している。このような場合であっても、拡散部材12の表面121と光電変換部11の受光面11Sとの間の距離が所定の距離よりも長い場合には、拡散光L2が受光面11Sを超えて広がる場合がある。このように、拡散光L2が光電変換部11の受光面11Sより広がった場合であっても、筐体13の内壁に設けられた反射膜14により反射させることにより、受光面11Sより広がった拡散光L2を受光面11Sに入射させて発電効率の減少を抑制することができる。
【0054】
図6(b)は、レーザー光L1が、拡散部材12の中心よりオフセットした位置に入射した場合の例を示している。このような場合、拡散部材12の表面121と光電変換部11の受光面11Sとの間の距離が適正であっても、拡散光L2が受光面11Sを超えて広がる場合がある。このように、拡散光L2が光電変換部11の受光面11Sより広がった場合であっても、筐体13の内壁に設けられた反射膜14により反射させることにより、受光面11Sより広がった拡散光L2を受光面11Sに入射させて発電効率の減少を抑制することができる。
【0055】
実施例2に係る移動体100においては、トラッキング精度が甘くてもレーザー光が拡散部材の直径内に収まってさえいれば、送電力の変化がほとんど無い。そのため、実施例2に係る移動体100の受光部1の構成は、トラッキングに適しているといえる。
【0056】
(光無線給電システム)
次に、本開示の一実施形態に係る光無線給電システムについて説明する。図7に、本開示の一実施形態に係る光無線給電システムを構成する給電装置及び移動体のブロック図を示す。光無線給電システム300は、給電装置200と、該給電装置200から電力を受電する移動体100と、を有する。図7に示す移動体100の構成は、実施例1に係る移動体100(図2)の構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0057】
給電装置200は、光源部21と、撮像部22と、制御部23と、通信部24と、画像認識部25と、検出部26と、記憶部27と、を有し、これらはバス28により接続されている。
【0058】
光源部21は、移動体に対してレーザー光を送出する。光源部21として、半導体レーザー(LD)、ファイバーレーザー等の各種レーザーを用いることができる。移動体100の受光部1に用いる光電変換部11がシリコン太陽電池である場合、光源部21が発光するレーザー光は、中心波長が900~1000nmの近赤外光であってよい。ただし、このような例には限定されず、移動体100の受光部1に含まれる光電変換部11の種類に応じて、レーザー光の波長を設定してよい。また、光源部21が送出するビームを平行光とするために、光源部21から出射されたレーザーをレンズ等で絞るようにしてよい。
【0059】
撮像部22は、移動体100の対象領域を撮像する。撮像部22には、例えば、カメラを用いてよい。対象領域は、移動体100の受光部1であってよい。あるいは、対象領域は、移動体100に設けられたマーカーであってもよい。
【0060】
制御部23は、撮像部22が撮像した画像に基づいてレーザー光L1を送出する位置を制御する。制御部23には、CPU等のマイクロコンピュータ(マイコン)を用いてよい。制御部23は、移動体100の位置に追従して、光源部21の向きを制御することができる。従って、制御部23は、光源部21がレーザー光を照射している状態で、移動体100の位置が変動した場合であっても、移動体100の位置をトラッキングし、光源部21から出射したレーザー光を移動体100の受光部1に正確に照射することができる。トラッキングとは、ここでは、検出した移動体100を継続して検出し続けることをいう。給電装置200は、電波、画像認識、センサ等の任意の手法により移動体100をトラッキングしてよい。
【0061】
通信部24は、移動体100との間で情報を送受信する。例えば、通信部24は、移動体100から給電を要求する信号を受信することができる。
【0062】
画像認識部25は、移動体100の受光部1の画像を認識する。画像認識部25は、撮像した移動体100の受光部1の画像を用いて画像認識を行うことにより、移動体100が給電対象であるか否かを判断することができる。
【0063】
検出部26は、移動体100の位置を検出する。検出部26は、移動体100の位置に加えて、移動体100までの距離、及び移動体100に対する角度の少なくともいずれかを検出してよい。検出部26には、LiDAR(Light Detection and Ranging)やレーダ等のセンサ、若しくは、これらの組み合わせを用いてよい。LiDAR等のセンサを用いることにより、移動体100の位置、給電装置200から移動体100までの距離、及び移動体100に対する角度を正確に検出することができる。
【0064】
記憶部27は、例えば、半導体メモリであってよい。記憶部27は、移動体100に関する識別情報や、給電装置200を動作させるためのプログラムを格納することができる。
【0065】
図8に、本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの動作を説明するためのシーケンス図を示す。まず、ステップS101において、移動体100は、充電残量が少なくなった時、近くの給電エリア400(図1参照)に移動する。あるいは、移動体100は、充電するよう指示を受け付けた場合などに、給電エリア400に移動してよい。給電エリア400の位置は、移動体100の記憶部8に予め記憶されていてよい。
【0066】
次に、ステップS102において、移動体100は、給電装置200を検知する。移動体100は、撮像部4を用いて給電装置200の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて検出部5が給電装置200の位置を検出してよい。
【0067】
次に、ステップS103において、移動体100は、受光部1の向きを制御する。移動体100は、給電装置200の位置を検出しているため、給電装置200の位置に対して受光部1が正対するように制御部6が受光部1の向きを制御する。制御部6は、移動体100の位置を変えずに受光部1の向きのみを制御してもよい。あるいは、制御部6は、駆動部3を制御して、移動体100全体の向きを変えることにより、受光部1が給電装置200に対して正対するように制御してもよい。
【0068】
次に、ステップS104において、移動体100は、給電装置200に対して給電を要求する。例えば、移動体100の通信部7が、給電装置200に対して、給電を要求する信号を送信することにより、給電を要求してよい。ただし、移動体100が給電エリア400内に入ったことを給電装置200が検知した時点で、自動的に移動体100に対して給電を実行するようにしてもよく、この場合は、移動体100は給電装置200に対して給電を要求しなくてもよい。
【0069】
次に、ステップS105において、給電装置200が、移動体100の受光部1を検知する。例えば、給電装置200の撮像部22が、移動体100の受光部1の画像を撮像し、撮像した画像に基づいて、画像認識部25が画像処理を行い、検出部26が受光部1の位置を検出してよい。
【0070】
次に、ステップS106において、給電装置200が光源部21の向きを制御する。給電装置200の制御部23は、光源部21のみを制御して、光源部21の向きを移動体100の受光部1に向けるようにしてもよく、給電装置200全体の向きを制御することにより、光源部21の向きを移動体100の受光部1に向けるようにしてもよい。あるいは、制御部23は、レーザー光を反射するミラーの角度を制御することにより、レーザー光の向きを制御してもよい。
【0071】
次に、ステップS107において、給電装置200が移動体100に向けてレーザー光を照射する。
【0072】
次に、ステップS108において、レーザー光が拡散部材12に当たり、円形もしくは矩形状に拡散する。
【0073】
次に、ステップS109において、拡散された光が光電変換部11全体に照射され、光電変換部11において、レーザー光のエネルギーが電気エネルギーに変換される。変換された電気エネルギーは蓄電部2に蓄電される。
【0074】
以上のようにして、給電装置200の光源部21から照射されたレーザー光により、移動体100への光無線給電が実行される。なお、移動体100の蓄電部2に十分電力が蓄電された場合には、通信部7が、給電が完了したことを給電装置200に通知するようにしてよい。
【0075】
(変形例)
以上の説明においては、移動体100がドローンである場合を例にとって説明したが、移動体はドローンのような飛行体には限られず、電気自動車等の移動体であってもよい。ここでは、移動体が電気自動車である場合を例にとって説明する。図9に、本開示の一実施形態に係る光無線給電システムの他の例の概要を説明するための図を示す。
【0076】
まず、電気自動車600が給電エリア400に進入する。電気自動車600は、電信柱700に設置された給電装置200が発している電波を受信して、光源部21の位置を把握し、受光部1の向きを制御する。
【0077】
給電装置200は、受光部1の位置を検知し、光源部21の向きを制御した後、レーザー光L1を受光部1に向けて照射する。以上のようにして、給電装置200から電気自動車600への光無線給電を実行することができる。
【0078】
なお、給電装置200が電気自動車600に向けて給電を行っている際に、電気自動車600は、例えば、矢印Aに向けて移動していてもよい。給電装置200は電気自動車600の受光部1の位置をトラッキングしているため、電気自動車600が移動していても、光源部21から照射されたレーザー光L1は受光部1に照射することができるためである。この場合、給電装置200と電気自動車600とは互いにトラッキングし合っていてよい。
【符号の説明】
【0079】
1 受光部
2 蓄電部
3 駆動部
4 撮像部
5 検出部
6 制御部
7 通信部
8 記憶部
11 光電変換部
12 拡散部材
100 移動体
200 給電装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9