(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
F02M25/08 311A
F02M25/08 311D
F02M25/08 301T
(21)【出願番号】P 2021185058
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 珠未
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048841(JP,A)
【文献】特開2022-120492(JP,A)
【文献】特開2012-193662(JP,A)
【文献】特開2004-100691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を取り込むチャージポート、前記蒸発燃料を排出するパージポート、及び大気に開放された大気ポートを有する外側ケースと、
前記外側ケースの内部に配置されると共に、前記大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続される内部空間を有する内側ケースと、
前記内側ケースの前記内部空間に配置された第1吸着室と、
前記内側ケースの前記内部空間にて前記蒸発燃料の流路における前記第1吸着室と前記大気ポートとの間に配置された第2吸着室と、
前記第1吸着室に収納された第1吸着材と、
前記第2吸着室に収納された第2吸着材と、
を備え、
前記第2吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積
は、前記第1吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積
よりも大きい、キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記外側ケースの内部かつ前記内側ケースの外部に配置されると共に、前記チャージポート及び前記パージポートが接続された第3吸着室と、
前記第3吸着室に収納された第3吸着材と、
をさらに備える、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記第2吸着室の気体の流れ方向は、前記第1吸着室の気体の流れ方向と平行である、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1
又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記第2吸着室の気体の流れ方向は、前記第1吸着室の気体の流れ方向と交差する、キャニスタ。
【請求項5】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタであって、
前記蒸発燃料を取り込むチャージポート、前記蒸発燃料を排出するパージポート、及び大気に開放された大気ポートを有する外側ケースと、
前記外側ケースの内部に配置されると共に、前記大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続される内部空間を有する内側ケースと、
前記内側ケースの前記内部空間に配置された第1吸着室と、
前記内側ケースの前記内部空間にて前記蒸発燃料の流路における前記第1吸着室と前記大気ポートとの間に配置された第2吸着室と、
前記第1吸着室に収納された第1吸着材と、
前記第2吸着室に収納された第2吸着材と、
を備え、
前記第2吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積と、前記第1吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積とは、異なり、
前記第2吸着室の気体の流れ方向は、前記第1吸着室の気体の流れ方向と交差する、キャニスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記第2吸着材は、粒状の吸着材を固めたブロック状の集塊、又は繊維状の吸着材の集合体であり、前記内側ケースに設けられた段差に接触する、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクには、蒸発した燃料の大気放出を防ぐキャニスタが装着される。キャニスタは、蒸発燃料を吸着材に吸着させると共に、吸引した空気により吸着材から燃料を脱離してパージを行い、エンジンに供給する。
【0003】
キャニスタには、通常、複数の吸着室が設けられる。これら複数の吸着室の断面積を変化させることで、通気抵抗を調整することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように断面積が異なる複数の吸着室を有するキャニスタにおいて、吸着室の配置及び形状によっては、キャニスタのケースの成形時に金型が引き抜けない部位が発生する。このような場合、ケースを複数のパーツに分割する必要がある。
【0006】
ケースが複数のパーツに分割されると、キャニスタ製造時のケースの溶着箇所が増加する。これにより、溶着設備の改修及び製造時間の増加が生じ、結果としてキャニスタの製造コストが増加する。
【0007】
本開示の一局面は、製造コストが低減できるキャニスタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離するキャニスタである。キャニスタは、蒸発燃料を取り込むチャージポート、蒸発燃料を排出するパージポート、及び大気に開放された大気ポートを有する外側ケースと、外側ケースの内部に配置されると共に、大気ポートが直接又は他の部屋を介して接続される内部空間を有する内側ケースと、第1吸着室と、第2吸着室と、第1吸着室に収納された第1吸着材と、第2吸着室に収納された第2吸着材と、を備える。
【0009】
第1吸着室は、内側ケースの内部空間に配置される。第2吸着室は、内側ケースの内部空間にて蒸発燃料の流路における第1吸着室と大気ポートとの間に配置される。第2吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積と、第1吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積とは、異なる。
【0010】
このような構成によれば、内側ケースを外側ケースの内部に挿入することで、互いに断面積の異なる第1吸着室と第2吸着室とを有するキャニスタを得ることができる。そのため、キャニスタにおけるケースの溶着箇所を減らすことができる。その結果、キャニスタの製造コストが低減される。
【0011】
本開示の一態様は、外側ケースの内部かつ内側ケースの外部に配置されると共に、チャージポート及びパージポートが接続された第3吸着室と、第3吸着室に収納された第3吸着材と、をさらに備えてもよい。このような構成によれば、主室として設けられる第3吸着室の容積を比較的容易に確保することができる。
【0012】
本開示の一態様では、第2吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積は、第1吸着室の気体の流れ方向と垂直な断面の面積よりも大きくてもよい。このような構成によれば、キャニスタの製造コストを低減しつつ、キャニスタの通気抵抗を低減することができる。
【0013】
本開示の一態様では、第2吸着室の気体の流れ方向は、第1吸着室の気体の流れ方向と平行であってもよい。このような構成によれば、内側ケースの構造を簡略化できる。その結果、キャニスタの製造コストの低減効果が促進される。
【0014】
本開示の一態様では、第2吸着室の気体の流れ方向は、第1吸着室の気体の流れ方向と交差してもよい。このような構成によれば、キャニスタの外寸の自由度を高めることができる。その結果、キャニスタの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のキャニスタにおける外側ケースの本体部の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図1とは異なる実施形態におけるキャニスタの模式的な断面図である。
【
図7】
図7Aは、
図5のキャニスタにおける第1吸着室の変形例であり、
図7Bは、
図5のキャニスタにおけるフィルタ配置の変形例である。
【
図8】
図8は、
図5のキャニスタにおける内側ケースの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すキャニスタ1は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する蒸発燃料処理装置である。
【0017】
キャニスタ1は、外側ケース2と、内側ケース3と、第1吸着室4と、第2吸着室5と、第3吸着室6と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0018】
<外側ケース>
外側ケース2は、内側ケース3と第3吸着室6とが配置される内部空間と、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23とを有する筐体である。
【0019】
チャージポート21は、配管によって車両の燃料タンクに接続される。チャージポート21は、燃料タンクで発生した蒸発燃料をキャニスタ1内に取り込むように構成されている。
【0020】
パージポート22は、パージ弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。パージポート22は、キャニスタ1内の蒸発燃料をキャニスタ1から排出し、エンジンに供給するように構成されている。
【0021】
大気ポート23は、大気に開放される。大気ポート23は、蒸発燃料を取り除いた気体を大気中に放出する。また、大気ポート23は、外部空気(つまりパージ空気)を取り込むことで、キャニスタ1が吸着した蒸発燃料を脱離(つまりパージ)させる。
【0022】
外側ケース2は、チャージポート21と、パージポート22と、大気ポート23とが設けられると共に、内側ケース3を挿入可能な開口を有する本体部2Aと、本体部2Aの開口に取り付けられる蓋部2Bとを有する。
【0023】
図2に示すように、本体部2Aは、内側ケース3が配置される第1空間2Cと、第3吸着室6が配置される第2空間2Dと、第1空間2Cと第2空間2Dとの連通路を構成する連通部2Eとを有する。
【0024】
<内側ケース>
図3A及び
図3Bに示す内側ケース3は、外側ケース2の内部に配置されると共に、大気ポート23に通ずるように接続された内部空間を有する。内側ケース3は、例えば金型を用いた樹脂の成形によって得られる。
【0025】
具体的には、内側ケース3は、円筒状の筒体31と、シール部材32とを有する。筒体31は、軸方向外側に向かって段差状に拡径する第1端部31Aと、フランジ状の第2端部31Bとを有する。
【0026】
第1端部31Aは、大気ポート23と接続される端部である(
図1参照)。第1端部31Aは、第1端部31Aよりも内側の中心空間31Fよりも内径が大きい第1拡径部31Dと、第1拡径部31Dよりも内径が大きい第2拡径部31Eとを有する。中心空間31Fには、第1吸着材7の配置によって第1吸着室4が形成される。
【0027】
第1拡径部31Dは、中心空間31Fと隣接して設けられ、例えば格子状の仕切板31Cによって中心空間31Fと区画されている。第1拡径部31Dは、第1吸着室4と第2吸着室5とを連通する空間を構成している。
【0028】
第2拡径部31Eは、第1拡径部31Dよりも軸方向外側に、第1拡径部31Dと連続して設けられている。第2拡径部31Eには、第2吸着材8の配置によって第2吸着室5が形成される。
【0029】
第2端部31Bは、第1端部31Aとは反対側の端部である。つまり、第2端部31Bは、第3吸着室6と連通する端部である。第2端部31Bは、筒体31のうち第2端部31B以外の部分よりも外径が大きい。ただし、第2端部31Bの外径は、第1端部31Aの外径以下であってもよい。
【0030】
第2端部31Bの外周面には、シール部材32が配置されている。シール部材32は、弾性を有するリング状の部材であり、第2端部31Bの外周面に設けられた溝に嵌め込まれている。シール部材32は、外側ケース2と内側ケース3との接合部分における隙間を埋めるように配置されている。
【0031】
シール部材32としては、Oリング、ガスケット等が使用できる。シール部材32の摩擦力によって、外側ケース2に対し内側ケース3の位置が保持される。なお、本実施形態では、内側ケース3は、シール部材32以外の部位で外側ケース2に接合されていない。つまり、本実施形態では、内側ケース3と外側ケース2との溶着点が存在しない。なお、内側ケース3は、シール部材32以外の部位で外側ケース2と接触してもよい。
【0032】
<第1吸着室>
図1に示すように、第1吸着室4は、内側ケース3の内部空間(具体的には中心空間31F)に配置されている。
【0033】
第1吸着室4は、第1吸着材7を収納し、外側ケース2が構成する流路によって第3吸着室6との間で気体の流通が自在となるように第3吸着室6に連通している。第1吸着室4は、気体の流れ方向が第3吸着室6と平行となるように、第3吸着室6の径方向において第3吸着室6と並ぶように配置されている。
【0034】
第1吸着室4は、内側ケース3の筒体31の内部に配置された第1フィルタ4Aと、第2フィルタ4Bとによって画定されている。第1フィルタ4Aは、仕切板31Cに接触し、第2吸着室5と第1吸着室4とを区画している。
【0035】
第2フィルタ4Bは、第3吸着室6との連通路と第1吸着室4とを区画している。第2フィルタ4Bは、格子状のグリッド4Cを介して、スプリング4Eによって第2吸着室5及び大気ポート23に向かって押圧されている。なお、グリッド4Cは、スリット状、多孔状等であってもよい。
【0036】
第1吸着室4を画定する第1フィルタ4A及び第2フィルタ4Bは、第1吸着材7を通過させない一方で、気体を通過させるように構成されている。つまり、フィルタ4A,4Bは、第1吸着材7を第1吸着室4内で挟持している。
【0037】
<第2吸着室>
第2吸着室5は、内側ケース3の内部空間(具体的には第1端部31Aの内側)に配置されている。
【0038】
第2吸着室5は、第2吸着材8を収納し、蒸発燃料の流路における第1吸着室4と大気ポート23との間に配置されている。第2吸着室5は、第1吸着室4及び大気ポート23の双方に連通している。第2吸着室5の気体の流れ方向は、第1吸着室4の気体の流れ方向と平行である。
【0039】
第2吸着室5の気体の流れ方向と垂直な断面の面積は、第1吸着室4の気体の流れ方向と垂直な断面の面積よりも大きい。また、第2吸着室5の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも小さい。ただし、第2吸着室5の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも大きくてもよい。
【0040】
第2吸着室5は、内側ケース3の第1端部31Aを塞ぐように配置されたフィルタ5Aと、第1端部31A内の段差とによって画定されている。フィルタ5Aは、大気ポート23に連通する空間と、第2吸着室5とを区画している。第2吸着室5を画定するフィルタ5Aは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0041】
フィルタ5Aは、外側ケース2に例えば超音波溶着によって固定されている。内側ケース3は、第1端部31Aがフィルタ5Aに押し当てられるように、外側ケース2に挿入される。
【0042】
また、フィルタ5Aは、内側ケース3に例えば超音波溶着によって固定されていてもよい。この場合、フィルタ5Aは、内側ケース3の挿入によって外側ケース2に取り付けられる。
【0043】
本実施形態では、第2吸着材8は、粒状の吸着材を固めたブロック状の集塊、又は繊維状の吸着材の集合体である。第2吸着材8の大気ポート23と反対側の面は、第1端部31Aの段差に接触する。そのため、第2吸着材8と仕切板31Cとの間には、第1拡径部31Dで構成されるバッファ空間が設けられている。このバッファ空間には、吸着材は配置されていない。また、このように集塊又は集合体の第2吸着材8を用いる場合、吸着材を保持するためのフィルタ5Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0044】
本実施形態では、第2吸着室5において溶着が行われないため、溶着時の振動によって吸着材の集塊又は集合体が分離することが抑制できる。また、第2吸着室5の断面積が第1吸着室4の断面積よりも大きくされているため、第2吸着材8として通気抵抗の大きい集塊又は集合体を用いても、キャニスタ1の通気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0045】
なお、内側ケース3は、第2吸着材8が充填されたカートリッジの状態で、外側ケース2の本体部2Aに組み付けられる。内側ケース3の組付け後、第1吸着材7を充填してから、外側ケース2の蓋部2Bが本体部2Aに取り付けられる。
【0046】
<第3吸着室>
第3吸着室6は、外側ケース2の内部かつ内側ケース3の外部(具体的には外側ケース2の第2空間2D)に配置されている。
【0047】
第3吸着室6は、第3吸着材9を収納し、チャージポート21及びパージポート22が接続されている。第3吸着室6は、チャージポート21から取り込んだ蒸発燃料を吸着する。また、第3吸着室6は、吸着した蒸発燃料をパージポート22から排出する。
【0048】
第3吸着室6は、外側ケース2の内部にそれぞれ配置された第1フィルタ6A及び第2フィルタ6Bによって画定されている。第1フィルタ6Aは、第3吸着室6に接続されたチャージポート21及びパージポート22に連通する空間と、第3吸着室6とを区画している。
【0049】
第2フィルタ6Bは、第1吸着室4との連通路と第3吸着室6とを区画している。第2フィルタ6Bは、格子状のグリッド6Cを介して、スプリング6Dによってチャージポート21及びパージポート22に向かって押圧されている。なお、グリッド6Cは、スリット状、多孔状等であってもよい。
【0050】
第3吸着室6を画定するフィルタ6A,6Bは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0051】
チャージポート21から取り込まれた蒸発燃料は、第3吸着室6において第3吸着材9に吸着される。第3吸着室6で吸着しきれなかった蒸発燃料は、内側ケース3内の第1吸着室4に移動し、第1吸着室4において第1吸着材7に吸着される。
【0052】
さらに、第1吸着室4で吸着しきれなかった蒸発燃料は、内側ケース3内で第2吸着室5に移動し、第2吸着室5において第2吸着材8に吸着される。蒸発燃料が吸着された気体は、大気ポート23から放出される。
【0053】
また、大気ポート23から吸気することで、第1吸着室4、第2吸着室5、及び第3吸着室6それぞれにおいて吸着材に吸着されていた蒸発燃料は、パージポート22からエンジンに排出される。その結果、蒸発燃料を含んだ空気がエンジンに供給される。
【0054】
<吸着材>
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9は、それぞれ、空気等と共にキャニスタ1に供給された蒸発燃料やブタンを吸着する。また、外部空気の導入により蒸発燃料やブタンを脱離する。脱離された蒸発燃料は、エンジンに供給される。
【0055】
第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9の素材としては、例えば活性炭、ゼオライト等が使用できる。活性炭としては、例えば、粒状の吸着材の集合体、ハニカム形状等に成形された成形活性炭、繊維状活性炭をシート状、直方体上、円柱状、角柱状に成形したもの等が用いられる。第1吸着材7、第2吸着材8及び第3吸着材9は、同じ種類の吸着材であってもよいし、異なる種類の吸着材であってもよい。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
図4Aに示すように、第1吸着室4は仕切フィルタ4Dによって、蒸発燃料の流路に沿って複数の部屋に分割されていてもよい。つまり、キャニスタ1は、複数の第1吸着室4を備えてもよい。複数の第1吸着室4に配置される吸着材は、同じ種類であっても異なる種類であってもよい。
【0057】
また、
図4Bに示すように、第1吸着室4が第1拡径部31Dまで拡張されてもよい。この場合、
図1の第1フィルタ4Aは配置されず、第1吸着材7と第2吸着材8との境界がそのまま第1吸着室4と第2吸着室5との境界となる。
【0058】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)内側ケース3を外側ケース2の内部に挿入することで、互いに断面積の異なる第1吸着室4と第2吸着室5とを有するキャニスタ1を得ることができる。そのため、キャニスタ1におけるケースの溶着箇所を減らすことができる。その結果、キャニスタ1の製造コストが低減される。
【0059】
(1b)内側ケース3の外部に第3吸着室6を配置することで、主室として設けられる第3吸着室6の容積を比較的容易に確保することができる。
【0060】
(1c)第2吸着室5の気体の流れ方向と垂直な断面の面積が第1吸着室4の気体の流れ方向と垂直な断面の面積よりも大きいことで、キャニスタ1の製造コストを低減しつつ、キャニスタ1の通気抵抗を低減することができる。
【0061】
(1d)第2吸着室5の気体の流れ方向が第1吸着室4の気体の流れ方向と平行であることで、内側ケース3の構造を簡略化できる。その結果、キャニスタ1の製造コストの低減効果が促進される。
【0062】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図5に示すキャニスタ101は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する。キャニスタ101は、外側ケース2と、内側ケース103と、第1吸着室4と、第2吸着室105と、第3吸着室6と、第1吸着材7と、第2吸着材8と、第3吸着材9とを備える。
【0063】
キャニスタ101の外側ケース2、第1吸着室4、第3吸着室6、及び吸着材7,8,9は、
図1のキャニスタ1と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態では、外側ケース2の外形が
図1と異なるが内部構造は同じである。
【0064】
<内側ケース>
内側ケース103は、外側ケース2の内部に配置されると共に、大気ポート23に通ずるように接続された内部空間を有する。内側ケース103は、例えば金型を用いた樹脂の成形によって得られる。
【0065】
図6A及び
図6Bに示すように、内側ケース103は、筒状の筒体131と、シール部材132とを有する。筒体131は、気体の流れ方向を変える第1端部131Aと、フランジ状の第2端部131Bとを有する。
【0066】
第1端部131Aは、大気ポート23と接続される端部である(
図5参照)。第1端部131Aは、中心空間131Fから気体の流れ方向を略90°回転させる回転部131Dと、回転部131Dよりも内径が大きい拡径部131Eとを有する。中心空間131Fには、第1吸着材7の配置によって第1吸着室4が形成される。
【0067】
回転部131Dは、中心空間131Fと隣接して設けられ、軸方向に延伸する仕切部材131Cによって中心空間131Fと区画されている。回転部131Dは、第1吸着室4と第2吸着室105とを連通する空間を構成している。筒体131の中心軸は、回転部131Dにおいて曲がっている。
【0068】
拡径部131Eは、回転部131Dよりも軸方向外側に、回転部131Dと連続して設けられている。拡径部131Eには、第2吸着材8の配置によって第2吸着室105が形成される。
【0069】
第2端部131Bは、第1端部131Aとは反対側の端部である。つまり、第2端部131Bは、第3吸着室6と連通する端部である。第2端部131Bは、筒体131のうち第2端部131B以外の部分よりも外径が大きい。ただし、第2端部131Bの外径は、第1端部131Aの外径以下であってもよい。
【0070】
第2端部131Bの外周面には、シール部材132が配置されている。シール部材132は、弾性を有するリング状の部材である。シール部材132の機能は、第1実施形態のシール部材32と同じである。
【0071】
<第2吸着室>
図5に示すように、第2吸着室105は、内側ケース103の内部空間(具体的には第1端部131Aの内側)に配置されている。
【0072】
第2吸着室105は、第2吸着材8を収納し、蒸発燃料の流路における第1吸着室4と大気ポート23との間に配置されている。第2吸着室105は、第1吸着室4及び大気ポート23の双方に連通している。第2吸着室105の気体の流れ方向は、第1吸着室4の気体の流れ方向と交差する(具体的には略直交する)。
【0073】
第2吸着室105の気体の流れ方向と垂直な断面の面積は、第1吸着室4の気体の流れ方向と垂直な断面の面積よりも大きい。また、第2吸着室105の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも小さい。ただし、第2吸着室105の気体の流れ方向の長さは、第1吸着室4の気体の流れ方向の長さよりも大きくてもよい。
【0074】
第2吸着室105は、内側ケース103の第1端部131Aを塞ぐように配置された第1フィルタ105Aと、第1端部131A内の段差とによって画定されている。また、第1フィルタ105Aと大気ポート23との間には、第2フィルタ105Bが配置されている。
【0075】
第1フィルタ105Aは、大気ポート23に連通する空間と第2吸着室105とを区画している。第2吸着室105を画定する第1フィルタ105Aは、第1吸着室4のフィルタ4A,4Bと同様の機能を有する。
【0076】
本実施形態では、第1フィルタ105Aは、外側ケース2の内壁と対向している。そのため、第2吸着室105を追加した蒸発燃料は、内壁との衝突によって流れの向きが変化する。
【0077】
第1フィルタ105Aは、第1端部131Aに圧入されている。また、第2フィルタ105Bは、外側ケース2に例えば超音波溶着によって固定されている。内側ケース103は、第1端部131Aが第2フィルタ105Bに押し当てられるように、外側ケース2に挿入される。
【0078】
本実施形態では、第2吸着材8は、粒状の吸着材を固めたブロック状の集塊、又は繊維状の吸着材の集合体である。第2吸着材8の大気ポート23と反対側の面は、第1端部131Aの段差に接触する。そのため、第2吸着材8と仕切部材131Cとの間には、回転部131Dで構成されるバッファ空間が設けられている。このバッファ空間には、吸着材は配置されていない。また、このように集塊又は集合体の第2吸着材8を用いる場合、吸着材を保持するための第1フィルタ105Aは必ずしも設けられなくてもよい。
【0079】
第1吸着室4を通過した気体は、回転部131Dで流れの向きが変えられ、第2吸着室105に進入する。さらに、第2吸着室105を通過した気体は、第1フィルタ105Aと対向する外側ケース2の内壁によって再び流れの向きが変えられる。その後、気体は、大気ポート23から放出される。
【0080】
<第2実施形態の変形例>
図7Aに示すように、第1吸着室4は仕切フィルタ4Dによって、蒸発燃料の流路に沿って複数の部屋に分割されていてもよい。つまり、キャニスタ101は、複数の第1吸着室4を備えてもよい。複数の第1吸着室4に配置される吸着材は、同じ種類であっても異なる種類であってもよい。
【0081】
また、
図7Bに示すように、キャニスタ101は、大気ポート23と第1フィルタ105Aとの間に配置される第2フィルタ105B(
図5参照)を有しなくてもよい。この実施形態では、第1フィルタ105Aは、内側ケース103に例えば超音波溶着によって固定されており、
図5の第2フィルタ105Bの役割を果たす。
【0082】
さらに、
図8に示すように、内側ケース103の第1端部131Aの開口は四角形状であってもよい。
【0083】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)第2吸着室105の気体の流れ方向が第1吸着室4の気体の流れ方向と交差することで、キャニスタ101の外寸の自由度を高めることができる。その結果、キャニスタ101の小型化を図ることができる。
【0084】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0085】
(3a)上記実施形態のキャニスタにおいて、内側ケースと大気ポートとの間に、吸着材を収容する補助室がさらに設けられてもよい。つまり、大気ポートは、他の部屋(つまり補助室)を介して内側ケースに接続されてもよい。
【0086】
(3b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0087】
1…キャニスタ、2…外側ケース、2A…本体部、2B…蓋部、2C…第1空間、
2D…第2空間、2E…連通部、3…内側ケース、4…第1吸着室、
4A,4B…フィルタ、4C…グリッド、4D…仕切フィルタ、5…第2吸着室、
5A…フィルタ、6…第3吸着室、6A,6B…フィルタ、6C…グリッド、
7…第1吸着材、8…第2吸着材、9…第3吸着材、21…チャージポート、
22…パージポート、23…大気ポート、31…筒体、31A…第1端部、
31B…第2端部、31C…仕切板、31D…第1拡径部、31E…第2拡径部、
31F…中心空間、32…シール部材、101…キャニスタ、103…内側ケース、
105…第2吸着室、105A,105B…フィルタ、131…筒体、
131A…第1端部、131C…仕切部材、131D…回転部、131E…拡径部。