(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】電極製造システム、クリーニングユニット、及び電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230808BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230808BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230808BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20230808BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20230808BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230808BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 A
H01G11/06
H01G11/50
H01G11/86
H01G13/00 381
(21)【出願番号】P 2021501649
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051291
(87)【国際公開番号】W WO2020170607
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2019028605
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】直井 雅也
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-21699(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/04
H01G 11/06
H01G 11/50
H01G 11/86
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極における前記活物質にアルカリ金属をドープする処理を行うように構成されたドープユニットと、
前記処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングするように構成されたクリーニングユニットと、
前記電極を前記ドープユニットから前記クリーニングユニットに搬送するように構成された搬送ユニットと、
を備える電極製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造システムであって、
前記搬送ユニットは、前記電極を前記ドープユニットから前記クリーニングユニットに連続的に搬送するように構成された、
電極製造システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極製造システムであって、
前記クリーニングユニットは、前記活物質層未形成部と接触する洗浄ローラを有する電極製造システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電極製造システムであって、
前記洗浄ローラがブラシローラである電極製造システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電極製造システムであって、
JIS S 3016‐1995で規定される前記洗浄ローラの硬さが、1N/cm
2以上1000N/cm
2以下である電極製造システム。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の電極製造システムであって、
前記洗浄ローラの少なくとも一部、及び洗浄液を収容するように構成されたタブクリーニング槽をさらに備える電極製造システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電極製造システムであって、
前記タブクリーニング槽に前記洗浄液を供給するように構成された洗浄液供給ユニットをさらに備える電極製造システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電極製造システムであって、
前記活物質層未形成部は、前記電極の長手方向に延びる帯状の形態を有する電極製造システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電極製造システムであって、
前記ドープユニットは、
アルカリ金属イオンを含む溶液を収容するように構成されたドープ槽と、
前記ドープ槽に収容される対極ユニットと、
を備え、
前記搬送ユニットは、前記電極を、前記ドープ槽内を通過する経路に沿って搬送するように構成された電極製造システム。
【請求項10】
集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極をクリーニングするクリーニングユニットであって、
前記活物質にアルカリ金属をドープする処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングするように構成されたクリーニングユニット。
【請求項11】
請求項10に記載のクリーニングユニットと、
前記電極における前記活物質にアルカリ金属をドープする処理を行うように構成されたドープユニットと、
を備える電極製造システム。
【請求項12】
集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極における前記活物質にアルカリ金属をドープする処理を行い、
前記処理が行われた前記電極を搬送し、
前記処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングする電極製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電極製造方法であって、
前記処理が行われた前記電極を連続的に搬送する、
電極製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電極製造方法であって、
洗浄ローラを前記活物質層未形成部に接触させることで、前記活物質層未形成部をクリーニングする電極製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の電極製造方法であって、
前記電極の搬送速度V2(m/min)に対する、前記洗浄ローラの周速度V1(m/min)の比であるV1/V2比が、-5.0以上0.99以下、又は、1.01以上5.0以下である電極製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電極製造方法であって、
前記V1/V2比が、0.1以上0.9以下、又は、1.1以上2.0以下である電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2019年2月20日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2019-28605号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2019-28605号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は電極製造システム、クリーニングユニット、及び電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる蓄電デバイスに対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足する蓄電デバイスとして、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法として、例えば、連続式の方法がある。連続式の方法では、帯状の電極をドープ溶液中で移送させながらプレドープを行う。連続式の方法は、特許文献1~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
帯状の電極は、集電体と、活物質層とを備える。集電体の表面の一部を、活物質層未形成部とすることがある。活物質層未形成部とは、活物質層が形成されていない部分である。プレドープを行うとき、活物質層未形成部にもドープ溶液が付着する。活物質層未形成部に付着したドープ溶液の残渣は、電池の集電タブと活物質層未形成部との溶接に対し悪影響を及ぼすため、除去されることが好ましい。
【0008】
本開示の一局面では、活物質層未形成部をクリーニングすることができる電極製造システム、クリーニングユニット、及び電極製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一局面は、集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極における前記活物質にアルカリ金属をドープする処理を行うように構成されたドープユニットと、前記処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングするように構成されたクリーニングユニットと、前記電極を前記ドープユニットから前記クリーニングユニットに搬送するように構成された搬送ユニットと、を備える電極製造システムである。
【0010】
本開示の一局面である電極製造システムは、クリーニングユニットにより、活物質層未形成部をクリーニングすることができる。
【0011】
本開示の別の局面は、集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極をクリーニングするクリーニングユニットであって、前記活物質にアルカリ金属をドープする処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングするように構成されたクリーニングユニットである。
【0012】
本開示の別の局面であるクリーニングユニットは、活物質層未形成部をクリーニングすることができる。
【0013】
本開示の別の局面は、集電体の表面に活物質を含む活物質層が形成された活物質層形成部と、前記集電体の表面に前記活物質層が形成されていない活物質層未形成部とを有する帯状の電極における前記活物質にアルカリ金属をドープする処理を行い、前記処理が行われた前記電極を搬送し、前記処理が行われた前記活物質層形成部に隣接する前記活物質層未形成部をクリーニングする電極製造方法である。
【0014】
本開示の別の局面である電極製造方法によれば、活物質層未形成部をクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1におけるII-II断面を表す断面図である。
【
図3】電極製造システムの構成を表す説明図である。
【
図7】上方から見たときの洗浄ローラユニットの構成を表す説明図である。
【
図8】正面から見たときのプーリー及びベルトの構成を表す説明図である。
【
図10】洗浄ローラユニットの構成を表す説明図である。
【
図11】洗浄ローラユニットの構成を表す平面図である。
【
図12】洗浄ローラユニットの構成を表す正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…電極、3…集電体、5…活物質層、6…活物質層形成部、7…活物質層未形成部、11…電極製造システム、15…電解液処理槽、17、19、21…ドープ槽、23…洗浄槽、25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93…搬送ローラ、101…供給ロール、103…巻取ロール、105…支持台、107…循環濾過ユニット、109、110、111、112、113、114…電源、117…タブクリーナー、119…回収ユニット、121…端部センサ、131…上流槽、133…下流槽、137、139、141、143…対極ユニット、149、151…空間、153…導電性基材、155…アルカリ金属含有板、157…多孔質絶縁部材、161…フィルタ、163…ポンプ、165…配管、201、203…洗浄ローラユニット、205…洗浄液タンク、207…ポンプ、209…乾燥ユニット、211…第1部、213…第2部、215…支持板、217…ブラシローラ、219…クリーニング槽、221…モーター、223、225、231…プーリー、227…軸、229…軸受、233…ベルト、235…配管、237…ブローノズル、239…制御系、241…端部位置調整ユニット、243…ロール駆動ユニット、245、249…歯車、247…小型モーター、248…オーバーフロー配管、250…廃液タンク、301…洗浄ローラユニット、311…第1部、313…第2部、315…ブラシアーム、317…支持軸、318…固定部、319…ブラシ軸、321…モーター、323…グリースレスベアリング、325…本体部、327…第1突出部、329…第2突出部、331…第3突出部、333…第4突出部、335…固定ねじ
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極1の構成
図1、
図2に基づき、電極1の構成を説明する。電極1は帯状の形状を有する。電極1は、集電体3と、活物質層5とを備える。集電体3は帯状の形状を有する。活物質層5は、集電体3の両面にそれぞれ形成されている。
【0018】
電極1の表面には、活物質層形成部6と、活物質層未形成部7とがある。活物質層形成部6は、集電体3の表面に活物質層5が形成された部分である。活物質層未形成部7は、集電体3の表面に活物質層5が形成されていない部分である。活物質層未形成部7では、集電体3が露出している。
【0019】
活物質層未形成部7は、電極1の長手方向Lに延びる帯状の形態を有する。活物質層未形成部7は、電極1の幅方向Wにおいて、電極1の端部に位置する。
【0020】
集電体3として、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体3は、前記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体3の厚みは、例えば、5~50μmである。
【0021】
活物質層5は、例えば、活物質及びバインダー等を含有するスラリーを集電体3上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0022】
前記バインダーとして、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0023】
前記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。
【0024】
活物質層5の厚さは特に限定されない。活物質層5の厚さは、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。活物質層5に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されない。活物質は、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0025】
負極活物質は特に限定されない。負極活物質として、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例として、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例として、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0026】
正極活物質として、例えば、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。
【0027】
活物質層5が含む活物質は、後述する電極製造システム11を用いて、アルカリ金属がプレドープされる。活物質にプレドープするアルカリ金属として、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極1をリチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層5の密度は、好ましくは1.30~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.40~1.90g/ccである。
【0028】
2.電極製造システム11の構成
電極製造システム11の構成を、
図3~
図5に基づき説明する。
図3に示すように、電極製造システム11は、電解液処理槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23と、搬送ローラ25、27、29、31、33、35、37、39、40、41、43、45、46、47、49、51、52、53、55、57、58、59、61、63、64、65、67、69、70、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール101と、巻取ロール103と、支持台105と、循環濾過ユニット107と、6つの電源109、110、111、112、113、114と、タブクリーナー117と、回収ユニット119と、端部センサ121と、を備える。
【0029】
ドープ槽17、19、21はドープユニットの一部に対応する。搬送ローラ群は搬送ユニットに対応する。
【0030】
電解液処理槽15は、上方が開口した角型の槽である。電解液処理槽15の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液処理槽15は、仕切り板123を備える。仕切り板123は、その上端を貫く支持棒125により支持されている。支持棒125は図示しない壁等に固定されている。仕切り板123は上下方向に延び、電解液処理槽15の内部を2つの空間に分割している。電解液処理槽15の中を電極1が通過するとき、電解液が電極1に含浸される。電解液が電極1に含浸されることにより、ドープ槽17、19、21で電極1がプレドープされ易くなる。
【0031】
仕切り板123の下端に、搬送ローラ33が取り付けられている。仕切り板123と搬送ローラ33とは、それらを貫く支持棒127により支持されている。なお、仕切り板123の下端付近は、搬送ローラ33と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ33と、電解液処理槽15の底面との間には空間が存在する。
【0032】
ドープ槽17の構成を
図4に基づき説明する。ドープ槽17は、上流槽131と下流槽133とから構成される。上流槽131は供給ロール101の側(以下では上流側とする)に配置され、下流槽133は巻取ロール103の側(以下では下流側とする)に配置されている。
【0033】
まず、上流槽131の構成を説明する。上流槽131は上方が開口した角型の槽である。上流槽131の底面は、略U字型の断面形状を有する。上流槽131は、仕切り板135と、4個の対極ユニット137、139、141、143と、を備える。
【0034】
仕切り板135は、その上端を貫く支持棒145により支持されている。支持棒145は図示しない壁等に固定されている。仕切り板135は上下方向に延び、上流槽131の内部を2つの空間に分割している。仕切り板135の下端に、搬送ローラ40が取り付けられている。仕切り板135と搬送ローラ40とは、それらを貫く支持棒147により支持されている。なお、仕切り板135の下端付近は、搬送ローラ40と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ40と、上流槽131の底面との間には空間が存在する。
【0035】
対極ユニット137は、上流槽131のうち、上流側に配置されている。対極ユニット139、141は、仕切り板135を両側から挟むように配置されている。対極ユニット143は、上流槽131のうち、下流側に配置されている。
【0036】
対極ユニット137と対極ユニット139との間には空間149が存在する。対極ユニット141と対極ユニット143との間には空間151が存在する。対極ユニット137、139、141、143は、電源109の端子109Bに接続される。対極ユニット137、139、141、143は同様の構成を有する。ここでは、
図5に基づき、対極ユニット137、139の構成を説明する。
【0037】
対極ユニット137、139は、導電性基材153と、アルカリ金属含有板155と、多孔質絶縁部材157とを積層した構成を有する。導電性基材153の材質として、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板155の厚さは、例えば、0.03~6mmである。
【0038】
多孔質絶縁部材157は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材157は、アルカリ金属含有板155の上に積層されている。多孔質絶縁部材157が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材157がアルカリ金属含有板155の上に積層されている際の形状である。多孔質絶縁部材157は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0039】
多孔質絶縁部材157は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材157を通過することができる。そのことにより、アルカリ金属含有板155は、ドープ溶液に接触することができる。
【0040】
多孔質絶縁部材157として、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定できる。メッシュの目開きは、例えば、0.1μm~10mmであり、0.1~5mmであることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定できる。メッシュの厚みは、例えば、1μm~10mmであり、30μm~1mmであることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定できる。メッシュの目開き率は、例えば、5~98%であり、5~95%であることが好ましく、50~95%であることがさらに好ましい。
【0041】
多孔質絶縁部材157は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0042】
下流槽133は、基本的には上流槽131とは同様の構成を有する。ただし、下流槽133の内部には、搬送ローラ40ではなく、搬送ローラ46が存在する。また、下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源110の一方の極に接続される。
【0043】
ドープ槽19は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽19の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ52、58が存在する。また、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源111の一方の極に接続される。また、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源112の一方の極に接続される。
【0044】
ドープ槽21は、基本的にはドープ槽17と同様の構成を備える。ただし、ドープ槽21の内部には、搬送ローラ40、46ではなく、搬送ローラ64、70が存在する。また、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源113の一方の極に接続される。また、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143は、電源114の一方の極に接続される。
【0045】
洗浄槽23は、基本的には電解液処理槽15と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽23の内部には、搬送ローラ33ではなく、搬送ローラ75が存在する。
【0046】
搬送ローラ群のうち、搬送ローラ37、39、43、45、49、51、55、57、61、63、67、69は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、電極1を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極1を搬送する経路は、供給ロール101から、電解液処理槽15の中、ドープ槽17の中、ドープ槽19の中、ドープ槽21の中、洗浄槽23の中、タブクリーナー117の中を順次通り、巻取ロール103に至る経路である。
【0047】
その経路のうち、電解液処理槽15の中を通る部分は、まず、搬送ローラ29、31を経て下方に移動し、次に、搬送ローラ33により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0048】
また、上記の経路のうち、ドープ槽17の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ37により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ40により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ41、43により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ46により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ47により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽19に向かう。
【0049】
また、上記の経路のうち、ドープ槽19の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ49により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ52により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ53、55により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ58により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ59により移動方向を水平方向に変えられ、ドープ槽21に向かう。
【0050】
また、上記の経路のうち、ドープ槽21の中を通る部分は以下のとおりである。まず、搬送ローラ61により移動方向を下向きに変えられ、上流槽131の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ64により移動方向を上向きに変えられ、上流槽131の空間151を上方に移動する。次に、搬送ローラ65、67により移動方向を下向きに変えられ、下流槽133の空間149を下方に移動する。次に、搬送ローラ70により移動方向を上向きに変えられ、下流槽133の空間151を上方に移動する。最後に、搬送ローラ71により移動方向を水平方向に変えられ、洗浄槽23に向かう。
【0051】
また、上記の経路のうち、洗浄槽23の中を通る部分は、まず、搬送ローラ73により移動方向を下向きに変えられて下方に移動し、次に、搬送ローラ75により移動方向を上向きに変えられるという経路である。
【0052】
供給ロール101は、電極1を巻き回している。すなわち、供給ロール101は、巻き取られた状態の電極1を保持している。供給ロール101に保持されている電極1における活物質には、未だアルカリ金属がドープされていない。
【0053】
搬送ローラ群は、供給ロール101に保持された電極1を引き出し、搬送する。巻取ロール103は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極1を巻き取り、保管する。なお、巻取ロール103に保管されている電極1は、ドープ槽17、19、21において、プレドープの処理を受けている。そのため、巻取ロール103に保管されている電極1における活物質には、アルカリ金属がドープされている。
【0054】
支持台105は、電解液処理槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23を下方から支持する。支持台105は、その高さを変えることができる。循環濾過ユニット107は、ドープ槽17、19、21にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット107は、フィルタ161と、ポンプ163と、配管165と、を備える。
【0055】
ドープ槽17に設けられた循環濾過ユニット107において、配管165は、ドープ槽17から出て、ポンプ163、及びフィルタ161を順次通り、ドープ槽17に戻る循環配管である。ドープ槽17内ドープ溶液は、ポンプ163の駆動力により、配管165、及びフィルタ161内を循環し、再びドープ槽17に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ161により濾過される。異物として、ドープ溶液から析出した異物や、電極1から発生する異物等が挙げられる。フィルタ161の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂である。フィルタ161の孔径は適宜設定できる。フィルタ161の孔径は、例えば、0.2μm以上50μm以下である。
【0056】
ドープ槽19、21に設けられた循環濾過ユニット107も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、
図3、
図4において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0057】
図4に示すように、電源109の端子109Aは、搬送ローラ37、39と接続する。また、電源109の端子109Bは、ドープ槽17の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ37、39と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0058】
図4に示すように、電源110の端子110Aは、搬送ローラ43、45と接続する。また、電源110の端子110Bは、ドープ槽17の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ43、45と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽17の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0059】
電源111の一方の端子は、搬送ローラ49、51と接続する。また、電源111の他方の端子は、ドープ槽19の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ49、51と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0060】
電源112の一方の端子は、搬送ローラ55、57と接続する。また、電源112の他方の端子は、ドープ槽19の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ55、57と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽19の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0061】
電源113の一方の端子は、搬送ローラ61、63と接続する。また、電源113の他方の端子は、ドープ槽21の上流槽131が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ61、63と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の上流槽131において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0062】
電源114の一方の端子は、搬送ローラ67、69と接続する。また、電源114の他方の端子は、ドープ槽21の下流槽133が備える対極ユニット137、139、141、143と接続する。電極1は搬送ローラ67、69と接触する。電極1と対極ユニット137、139、141、143とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、ドープ槽21の下流槽133において、電極1と対極ユニット137、139、141、143とは電解液を介して電気的に接続する。
【0063】
タブクリーナー117は、電極1の活物質層未形成部7を洗浄する。タブクリーナー117の詳しい構成は後述する。回収ユニット119は、電解液処理槽15、ドープ槽17、19、21、及び洗浄槽23のそれぞれに配置されている。回収ユニット119は、電極1が槽から持ち出す液を回収し、槽に戻す。
【0064】
端部センサ121は、電極1の幅方向Wにおける端部の位置を検出する。後述する端部位置調整ユニット241は、端部センサ121の検出結果に基づき、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。
【0065】
3.タブクリーナー117の構成
タブクリーナー117の構成を、
図6~
図9に基づき説明する。タブクリーナー117はクリーニングユニットに対応する。
図6に示すように、タブクリーナー117は、洗浄ローラユニット201、203、洗浄液タンク205、ポンプ207、乾燥ユニット209、オーバーフロー配管248、及び廃液タンク250を備える。
【0066】
洗浄ローラユニット201は、搬送ローラ79と、搬送ローラ81との間に設けられている。
【0067】
洗浄ローラユニット201は、第1部211と、第2部213とを備える。第1部211と第2部213とは、電極1を両側から挟むように配置されている。
【0068】
第1部211は、
図6に示すように、支持板215と、ブラシローラ217と、クリーニング槽219と、モーター221とを備える。ブラシローラ217は洗浄ローラに対応する。クリーニング槽219はタブクリーニング槽に対応する。また、第1部211は、
図7に示すように、プーリー223と、プーリー225と、軸227とを備える。なお、
図6では、プーリー223と、プーリー225との記載を便宜上省略している。
【0069】
支持板215は板状の部材である。ブラシローラ217は、軸227に取り付けられている。ブラシローラ217の外周部分はブラシにより構成されている。JIS S 3016‐1995で規定されるブラシローラ217の硬さは、通常、1N/cm2以上1000N/cm2以下であり、5N/cm2以上500N/cm2以下であることが好ましく、10N/cm2以上300N/cm2以下であることがより好ましく、20N/cm2以上100N/cm2以下であることが特に好ましい。ブラシローラ217の硬さとは、外周部分に存在するブラシの硬さを意味する。
【0070】
このような硬さを有するブラシ素材として、プラスチック、動物繊維等が挙げられる。ブラシ素材とは、ブラシローラ217の素材である。プラスチックとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロプレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。動物繊維として、例えば、馬毛、豚毛、山羊毛等が挙げられる。
【0071】
軸227は、支持板215に設けられた軸受229に軸支されている。軸227及びブラシローラ217の軸方向は電極1の幅方向Wと平行である。
【0072】
なお、本実施形態では、洗浄ローラとしてブラシローラ217を採用しているが、洗浄ローラとしてスポンジローラを採用することもできる。洗浄ローラとしてスポンジローラを採用した場合、JIS K 6253‐3で規定されるタイプEデュロメーターで測定したスポンジローラの硬さが、1以上40以下であることが好ましい。
【0073】
このような硬さのスポンジ素材として、例えば、エラストマー等が挙げられる。スポンジ素材とは、スポンジローラの素材である。エラストマーとして、例えば、ポリオレフィンゴム、スチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリウレタン、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0074】
クリーニング槽219は、ブラシローラ217の下方において、支持板215に固定されている。クリーニング槽219は洗浄液を収容する。クリーニング槽219に収容される洗浄液は、例えば、カーボネート系溶剤である。カーボネート系溶剤として、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。クリーニング槽219は、上側において開放されている。ブラシローラ217のうち、下側の一部は、クリーニング槽219の内部に入り、洗浄液に浸漬される。
【0075】
モーター221は支持板215に取り付けられている。プーリー223はモーター221に取り付けられている。プーリー225は軸227に取り付けられている。
【0076】
第2部213は、基本的には、第1部211を、
図6において左右反転させた構成を有する。ただし、第2部213はモーター221を備えない。また、第2部213における軸227には、
図7に示すように、プーリー231が取り付けられている。
【0077】
第1部211及び第2部213は、それぞれ、電極1に接近した位置(以下では接近位置とする)と、電極1から離れた位置(以下では離間位置とする)との間を移動可能である。電極1にプレドープを行うときは、第1部211及び第2部213の位置を接近位置とする。第1部211及び第2部213の位置が接近位置であるとき、
図7に示すように、第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは、それぞれ、電極1の活物質層未形成部7に接する。第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは、活物質層形成部6には接しない。
【0078】
第1部211及び第2部213が離間位置にあるとき、第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは、それぞれ、電極1のいずれの部分にも接触しない。電極1を電極製造システム11に通すときは、第1部211及び第2部213の位置を離間位置とする。
【0079】
図8に示すように、プーリー223、プーリー225、及びプーリー231には、ベルト233が架け渡されている。ベルト233は、プーリー225とプーリー231の部分では、8の字状に架け渡されている。
図8において、モーター221が時計回りに回転すると、プーリー225及び第1部211のブラシローラ217も時計回りに回転する。一方、プーリー231及び第2部213のブラシローラ217は反時計回りに回転する。すなわち、第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは反対方向に回転する。
【0080】
図6に示すように、洗浄ローラユニット203は、搬送ローラ83と、搬送ローラ85との間に設けられている。洗浄ローラユニット203は、洗浄ローラユニット201と同様の構成を有する。
【0081】
洗浄液タンク205は洗浄液を保持している。洗浄液タンク205は、ポンプ207、及び配管235を介して、洗浄ローラユニット201、203のクリーニング槽219と連通している。ポンプ207の動作により、洗浄ローラユニット201、203のクリーニング槽219内の洗浄液は、少しずつ、洗浄液タンク205内の洗浄液と入れ替えられる。すなわち、ポンプ207は、洗浄ローラユニット201、203のクリーニング槽219に洗浄液を供給する。洗浄液タンク205、ポンプ207、及び配管235は洗浄液供給ユニットに対応する。
【0082】
乾燥ユニット209は、洗浄ローラユニット203と、搬送ローラ85との間に設けられている。乾燥ユニット209は、複数のブローノズル237を備えている。複数のブローノズル237は、露点が-40℃以下である窒素を電極1に吹きつけ、電極1を乾燥させる。
【0083】
オーバーフロー配管248は、クリーニング槽219においてオーバーフローした洗浄液を廃液タンク250に流す。廃液タンク250は、オーバーフロー配管248を流下した洗浄液を貯留する。
【0084】
電極製造システム11は、
図9に示す制御系239を備える。制御系239は、端部位置調整ユニット241と、2つの端部センサ121と、ロール駆動ユニット243と、を備える。2つの端部センサ121のうち一方は、
図3に示すように、供給ロール101の付近に配置されている。2つの端部センサ121のうち他方は、巻取ロール103の付近に配置されている。
【0085】
端部位置調整ユニット241は、CPU、メモリ等を備えるコンピュータである。ロール駆動ユニット243は、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を変化させることができる。供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置が変化すると、電極1の幅方向Wにおける位置が変化する。
【0086】
制御系239が実行する処理は以下のとおりである。端部位置調整ユニット241は、端部センサ121を用いて、供給ロール101の付近及び巻取ロール103の付近において、電極1の幅方向Wにおける端部の位置を検出する。端部位置調整ユニット241は、その検出結果に基づき、ロール駆動ユニット243を用いて、供給ロール101及び巻取ロール103の幅方向Wにおける位置を調整する。調整後の供給ロール101及び巻取ロール103の位置は、ブラシローラ217が活物質層未形成部7と接触し、活物質層形成部6とは接触しなくなる位置である。
【0087】
4.ドープ溶液の組成
電極製造システム11を使用するとき、電解液処理槽15、及びドープ槽17、19、21に、ドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。ドープ溶液は電解液である。
【0088】
溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0089】
また、前記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。前記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0090】
前記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部として、例えば、PF6
-、PF3(C2F5)3
-、PF3(CF3)3
-等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4
-、BF2(CF)2
-、BF3(CF3)-、B(CN)4
-等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO2)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3
-等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0091】
前記ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。アルカリ金属塩の濃度がこの範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0092】
前記ドープ溶液は、さらに、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0093】
前記ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。難燃剤の添加量は、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量は、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。
【0094】
5.電極製造システム11を使用した電極製造方法
プレドープされた電極1を製造する製造方法は以下のとおりである。プレドープ前の電極1を供給ロール101に巻き回す。次に、プレドープ前の電極1を供給ロール101から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール103まで通紙する。このとき、タブクリーナー117の洗浄ローラユニット201、203を構成する第1部211及び第2部213の位置は、離間位置にしておく。そして、電解液処理槽15と、ドープ槽17、19、21と、洗浄槽23とを上昇させ、
図3に示す定位置へセットする。
【0095】
次に、電解液処理槽15、及びドープ槽17、19、21にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、前記「4.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽23に洗浄液を収容する。洗浄槽23に収容される洗浄液は有機溶剤である。有機溶剤として、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。タブクリーナー117の洗浄ローラユニット201、203を構成する第1部211及び第2部213の位置を接近位置とする。
【0096】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール101から巻取ロール103まで、上述した経路に沿って電極1を搬送する。電極1を搬送する経路は、ドープ槽17、19、21内を通過する経路である。電極1がドープ槽17、19、21内を通過するとき、活物質層5に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。
【0097】
さらに、搬送ローラ群は、電極1を洗浄槽23に搬送する。電極1は、搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽23で洗浄される。
【0098】
さらに、搬送ローラ群は、電極1をタブクリーナー117に連続的に搬送する。電極1のうち、タブクリーナー117に搬送された部分は、プレドープの処理が既に行われた部分である。
【0099】
タブクリーナー117の洗浄ローラユニット201、203は、それぞれ、電極1のうち、活物質層未形成部7をクリーニングする。クリーニングされる部分は、プレドープの処理が既に行われた活物質層形成部6に隣接する活物質層未形成部7である。隣接するとは、例えば、幅方向Wにおいて隣接することである。洗浄ローラユニット201、203が行うクリーニングは以下のとおりである。クリーニングとは、少なくとも活物質未形成部7において、ドープ溶液の少なくとも一部を除去することを意味する。
【0100】
第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは、それぞれ、回転しながら、活物質層未形成部7に接触する。第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とは、それぞれ、クリーニング槽219の中の洗浄液に浸漬されているので、洗浄液を含んだ状態で、活物質層未形成部7に接触する。その結果、活物質層未形成部7はクリーニングされる。
【0101】
電極1に接触する部分でのブラシローラ217の周速度をV1とする。電極1の搬送速度をV2とする。V2は正の値である。V1の単位とV2の単位とは同じである。ブラシローラ217のうち、電極1に接触する部分が電極1の搬送方向に移動している場合、V1は正の値である。ブラシローラ217のうち、電極1に接触する部分が電極1の搬送方向とは反対方向に移動している場合、V1は負の値である。V2に対するV1の比を、V1/V2比とする。V1/V2比は、V1をV2で除した値である。V1/V2比は、効果的に活物質層未形成部7をクリーニングし、かつ電極1を安定して搬送する観点から、-5.0以上0.99以下、又は、1.01以上5.0以下であることが好ましい。V1/V2比は、0.01以上0.95以下、又は、1.05以上3.0以下であることがより好ましい。V1/V2比は、0.1以上0.9以下、又は、1.1以上2.0以下であることがさらに好ましい。また、V1/V2比は、0でないことが好ましい。
【0102】
タブクリーナー117の乾燥ユニット209は、洗浄ローラユニット201、203を通過した電極1を乾燥させる。次に、電極1は巻取ロール103に巻き取られる。
【0103】
電極1は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極製造システム11は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、電極製造システム11は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0104】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0105】
6.電極製造システム11が奏する効果
(1A)タブクリーナー117は活物質層未形成部7をクリーニングする。そのため、電極製造システム11は、製造した電極1の活物質層未形成部7にドープ溶液等が残留することを抑制できる。
【0106】
(1B)タブクリーナー117は、活物質層未形成部7と接触するブラシローラ217を用いて活物質層未形成部7をクリーニングする。そのため、タブクリーナー117は、活物質層未形成部7を一層効果的にクリーニングできる。
【0107】
(1C)JIS S 3016‐1995で規定されるブラシローラ217の硬さは、1N/cm2以上1000N/cm2以下である。そのため、活物質層未形成部7を傷つけることを抑制しつつ、活物質層未形成部7をクリーニングすることができる。
【0108】
(1D)V1/V2比が、-5.0以上0.99以下、又は、1.01以上5.0以下である場合、電極1の搬送速度とブラシローラ217の周速度との間に差があることにより、ブラシローラ217は、活物質層未形成部7に触れる状態となるだけでなく、活物質層未形成部7からドープ溶液の残渣を拭きとることが可能となる。そのため、活物質層未形成部7を一層効果的にクリーニングすることができる。
【0109】
V1/V2比が、-5.0以上0.99以下、又は、1.01以上5.0以下の範囲の中でも特に、0.01以上0.95以下、又は、1.05以上3.0以下である場合、前記の効果に加え、ブラシローラ217同士が噛み合うことによって集電体3等を傷つけたり切断したりすることを抑制できる。その結果、活物質層未形成部7に対し、一層安定したクリーニングが可能となる。
【0110】
(1E)タブクリーナー117は、クリーニング槽219を備える。クリーニング槽219は、ブラシローラ217の一部、及び洗浄液を収容する。そのため、ブラシローラ217は、洗浄液を含んだ状態で活物質層未形成部7と接触する。その結果、タブクリーナー117は、活物質層未形成部7を一層効果的にクリーニングできる。
【0111】
(1F)タブクリーナー117は、ポンプ207により、クリーニング槽219に洗浄液を供給することができる。また、タブクリーナー117は、オーバーフロー配管248により、洗浄処理に使用済みの洗浄液を、クリーニング槽219から廃液タンク250に順次排出することができる。そのため、クリーニング槽219に収容された洗浄液が減少したり、汚れたりすることを抑制できる。
【0112】
(1G)活物質層未形成部7は、電極1の長手方向に延びる帯状の形態を有する。そのため、タブクリーナー117は、活物質層未形成部7を容易にクリーニングすることができる。
【0113】
(1H)搬送ローラ群は、電極1を、ドープ槽17、19、21の中を通過し、タブクリーナー117に至る経路に沿って搬送する。そのため、プレドープの処理と、活物質層未形成部7のクリーニングとを連続して行うことができる。
<第2実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0114】
前述した第1実施形態では、
図7に示す機構によって、洗浄ローラユニット201、203のブラシローラ217を回転させていた。これに対し、第2実施形態では、
図10に示す機構によって、洗浄ローラユニット201、203のブラシローラ217を回転させる点で、第1実施形態と相違する。
【0115】
図10に示すように、第1部211の軸227には、歯車245と、小型モーター247とが取り付けられている。小型モーター247は固定されている。小型モーター247の駆動力により、軸227、ブラシローラ217及び歯車245は回転する。
【0116】
第2部213の軸227には、歯車249が取り付けられている。歯車249は歯車245と噛み合っている。歯車245が回転すると、歯車249、第2部213の軸227、及びブラシローラ217も回転する。よって、小型モーター247の駆動力により、第1部211のブラシローラ217と、第2部213のブラシローラ217とがそれぞれ回転する。第1部211のブラシローラ217の回転方向と、第2部213のブラシローラ217の回転方向とは反対方向である。
【0117】
2.電極製造システム11が奏する効果
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果を奏する。
<第3実施形態>
1.第1実施形態との相違点
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0118】
第1実施形態では、タブクリーナー117は、
図6及び
図7に示す洗浄ローラユニット201、203を備えていた。これに対し、第3実施形態では、洗浄ローラユニット201、203の代わりに、
図11、
図12に示す洗浄ローラユニット301を備える。
【0119】
洗浄ローラユニット301は、第1実施形態における洗浄ローラユニット201、203の位置に設けられている。洗浄ローラユニット301は、第1部311と、第2部313と、を備える。第1部311と第2部313とは、電極1を両側から挟むように配置されている。
【0120】
第1部311は、ブラシアーム315と、支持軸317と、固定部318と、ブラシローラ217と、ブラシ軸319と、モーター321と、を備える。
【0121】
ブラシアーム315は、支持軸317に対し回転可能に取り付けられている。ブラシアーム315は、支持軸317が取り付けられる部分に、グリースレスベアリング323を備える。
【0122】
図12に示すように、ブラシアーム315は、本体部325と、第1突出部327と、第2突出部329と、第3突出部331と、第4突出部333と、を備える。
【0123】
本体部325は、支持軸317が通る部分である。
図12に示すように、第1突出部327、第2突出部329、及び第3突出部331は、本体部325よりも、電極1の方向に突出している。第1突出部327、第2突出部329、及び第3突出部331は、幅方向Wに沿って、互いに間隔をおいて並んでいる。第4突出部333は、本体部325から、電極1とは反対方向に突出している。
【0124】
支持軸317及び固定部318は、それぞれ、電極製造システム11のフレームに固定されている。固定部318は、電極製造システム11のフレームの一部であってもよい。よって、支持軸317及び固定部318の位置は、搬送ローラ群に対し固定された位置である。支持軸317の軸方向は幅方向Wと平行である。
【0125】
第4突出部333は、固定ねじ335により、固定部318に固定される。そのことにより、ブラシアーム315の位置は固定される。
【0126】
ブラシ軸319は、第1突出部327、及び第2突出部329により、回転可能に支持されている。第1突出部327、及び第2突出部329は、それぞれ、ブラシ軸319が取り付けられる部分に、グリースレスベアリング323を備える。ブラシ軸319の軸方向は、幅方向Wと平行である。
【0127】
ブラシローラ217は、ブラシ軸319に軸支されている。ブラシローラ217は、活物質層未形成部7に接する。ブラシローラ217は、活物質層形成部6には接しない。ブラシアーム315は、幅方向Wにおける位置を調整可能である。ブラシアーム315の幅方向Wにおける位置を調整することにより、ブラシローラ217の幅方向Wにおける位置を調整することができる。
【0128】
モーター321は、第2突出部329と第3突出部331との間に配置されている。モーター321は、ブラシ軸319及びブラシローラ217を回転駆動する。
【0129】
第2部313は、基本的には、第1部311を、
図11、
図12において左右反転させた構成を有する。ただし、第2部313は固定部318を備えない。第2部313のブラシアーム315は、支持軸317を中心として回転可能である。第2部313の第4突出部333には重り337が吊り下げられる。そのため、第2部313のブラシアーム315は、ブラシローラ217を電極1に押し付ける方向に付勢される。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0130】
(1)ブラシローラ217の代わりに、他の洗浄ローラを使用してもよい。
【0131】
(2)タブクリーナー117は、洗浄ローラを使用する方法以外の方法で活物質層未形成部7をクリーニングしてもよい。
【0132】
(3)タブクリーナー117が備える洗浄ローラユニットの数は2以外でもよく、例えば、1、3、4、5・・・とすることができる。
【0133】
(4)以下の処理を行ってもよい。アルカリ金属をドープする処理が行われた電極1を供給ロール101に設置する。電極1を供給ロール101からタブクリーナー117に搬送してクリーニングを行う。クリーニングされた電極1を巻取ロール103に巻取り、保管する。
【0134】
(5)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0135】
(6)上述した電極製造システムの他、当該電極製造システムを構成要素とする上位のシステム、端部位置調整ユニット241としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、ドーピング方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【0136】
<実施例>
(各実施例及び比較例1で使用する電極1の製造)
長尺の帯状の集電体3を用意した。集電体3は負極集電体である。集電体3のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmであった。集電体3の表面粗さRaは0.1μmであった。集電体3は銅箔から成っていた。集電体3の両面に、それぞれ負極活物質層5を形成した。
【0137】
集電体3の片側に形成された負極活物質層5の塗工量は50g/m2であった。負極活物質層5は、集電体3の長手方向に沿って形成された。負極活物質層5は、集電体3の幅方向Wにおける端部から幅130mmにわたって形成された。集電体3の幅方向Wにおけるもう一方の端部での負極活物質層未形成部は20mmであった。負極活物質層未形成部とは、負極活物質層5が形成されていない部分である。その後、乾燥、及びプレスを行うことにより、電極1を得た。
【0138】
負極活物質層5は、負極活物質、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、バインダー及び分散剤を、質量比で88:3:5:3:1の比率で含んでいた。負極活物質は、Si系活物質と黒鉛系活物質の混合物であった。負極活物質は、Si系活物質と、黒鉛系活物質とを、質量比で2:8の比率で含んでいた。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0139】
図3に示す電極製造システム11を用意し、電極1を通紙した。また、ドープ槽17、19、21にそれぞれ対極ユニット139、141、143を設置した。次に、ドープ槽17、19、21内にドープ溶液を供給した。ドープ溶液は、1.4MのLiPF
6を含む溶液であった。ドープ溶液の溶媒は、EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とDMC(ジメチルカーボネート)とを、1:1:1の体積比で含む混合液であった。
【0140】
次に、電極製造システム11に通紙した電極1及び対極ユニット139、141、143を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極1を0.1m/minの速度で搬送しながら、5Aの電流を通電した。このとき、電極1が備える負極活物質層95の幅方向Wにおける中心と、対極ユニット51が備えるリチウム金属板の幅方向Wにおける中心とが一致していた。通電時間は、不可逆容量を考慮した上、負極活物質層5におけるリチウムドープ割合が負極の放電容量C2の15%になる時間とした。
【0141】
なお、不可逆容量は、リチウムをドープした後の電極1の放電容量を測定することにより予め見積もっておいた。この工程により、負極活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極1はプレドープされた負極となった。なお、電極1はリチウムイオン二次電池用負極である。
【0142】
電極1を、洗浄槽23を通過させた後、巻き取った。洗浄槽23には、25℃のDMC(ジメチルカーボネート)を収容しておいた。以上のようにして、プレドープされた電極1を製造した。
【0143】
(実施例1)
上記のように製造した電極1を、再び、第3実施形態の電極製造システム11に通紙した。ブラシローラ217として、ポリプロピレン製の線径0.1mmのブラシローラを用いた。JIS S 3016‐1995で規定されるブラシローラの硬さは40N/cm2であった。重り337の重さを300gとした。ドープ槽17、19、21にドープ溶液を供給した。
【0144】
電極1を、搬送速度1.0m/minで搬送しながら、タブクリーナー117を用いてクリーニングを行った。ブラシローラ217の周速度V1は0.79m/minであった。V1/V2比は、0.79であった。
【0145】
巻取ロール103に巻き取られた電極1のうち、長さ4mの部分を、捲回機を用いて積層させた。積層させた電極1と、電池用集電体とをレーザー溶接した。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0146】
実施例1では、V1/V2比が1より小さかった。そのことにより、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接できた。
【0147】
なお、本実施例、後述する各実施例、及び比較例1において、クリーニングが十分に行われた否かは、以下のように判断した。溶接前のタブを目視にて確認し、ドープ溶液由来の固形成分が見られなかった場合は、クリーニングが十分に行われたと判断した。ドープ溶液由来の固形成分が見られた場合は、クリーニングが十分に行われなかったと判断した。
(実施例2)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を1.0m/minとした。V1/V2比は、1であった。活物質層未形成部7はクリーニングされていた。ただし、レーザー溶接のとき、銅のスパッタが一定量発生した。また、溶接部の一部にブロウホールが見られた。
【0148】
実施例2では、V1/V2比が1であった。そのことにより、実施例2と比べて、実施例1の方が、活物質層未形成部7のクリーニングが一層十分に行われていた。
【0149】
(実施例3)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を1.18m/minとした。V1/V2比は、1.18であった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0150】
実施例3では、V1/V2比が1より大きかった。そのことにより、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接できた。
【0151】
(実施例4)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を1.57m/minとした。V1/V2比は、1.57であった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0152】
実施例4では、V1/V2比が1より大きかった。そのことにより、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接できた。
【0153】
(実施例5)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を2.36m/minとした。V1/V2比は、2.36であった。活物質層未形成部7はクリーニングされていた。ただし、ブラシローラ217同士が噛み込み易くなることで電極1にしわが発生し、活物質層未形成部7の位置ずれが発生した。このため、電極1の搬送が不安定になった。その結果、実施例5と比べて、実施例1の方が、活物質層未形成部7のクリーニングが一層十分に行われていた。
【0154】
(実施例6)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を4.71m/minとした。また、電極1の搬送速度V2を3.0m/minとした。V1/V2比は、1.57であった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0155】
実施例6では、搬送速度V2が速くても、V1/V2比を適切な範囲内とすることによって、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接できた。
【0156】
(実施例7)
基本的には実施例1と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を-0.39m/minとした。また、電極1の搬送速度V2を1.0m/minとした。V1/V2比は-0.39であった。
【0157】
活物質層未形成部7はクリーニングされていた。ただし、ブラシローラ217同士が噛み込み易くなることで電極1にしわが発生し、活物質層未形成部7の位置ずれが発生した。このため、電極1の搬送が不安定になった。その結果、実施例7と比べて、実施例1の方が、活物質層未形成部7のクリーニングが一層十分に行われていた。
【0158】
(実施例8)
基本的には実施例4と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217として、線径が0.3mmのブラシローラを使用した。V1/V2比は、1.57であった。活物質層未形成部7はクリーニングされていた。ただし、レーザー溶接のとき、銅のスパッタが一定量発生した。また、溶接部の一部にブロウホールが見られた。
【0159】
実施例8では、ブラシローラ217の線径が大きすぎたため、活物質層未形成部7とブラシローラ217との接触面積が減少した。そのため、実施例8と比べて、実施例1の方が、活物質層未形成部7のクリーニングが一層十分に行われ、タブ部の溶接が一層良好に行われた。
【0160】
(実施例9)
基本的には実施例4と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217として、素材が山羊毛のブラシローラを使用した。JIS S 3016‐1995で規定されるブラシローラの硬さは10N/cm2であった。V1/V2比は、1.57であった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0161】
実施例9では、適切な素材のブラシローラ217を使用したため、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接できた。
(実施例10)
基本的には実施例4と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217として、素材が山羊毛のブラシローラを使用した。また、ブラシローラ217の周速度V1を-0.39m/minとした。V1/V2比は、-0.39であった。
【0162】
活物質層未形成部7はクリーニングされていた。ただし、ブラシローラ217同士が噛み込み易くなることで電極1にしわが発生し、活物質層未形成部7の位置ずれが発生した。このため、電極1の搬送が不安定になった。その結果、実施例9と比べて、実施例1の方が、活物質層未形成部7のクリーニングが一層十分に行われていた。
【0163】
実施例10では、ブラシローラ217の素材が柔らかい天然素材であっても、V1の方向がV2の方向と反対である場合、ブラシローラ217同士が噛み込み易くなった。
【0164】
(実施例11)
基本的には実施例10と同様の操作を行った。ただし、
図10に示す洗浄ローラユニット201、203を備えたタブクリーナー117を使用した。V1/V2比は、-0.39であった。
【0165】
ブラシローラ217同士が噛み込むことはなく、集電体3の破断は発生しなかった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0166】
実施例11では、ブラシローラ217の位置を固定し、ブラシローラ217と電極1との距離を一定とした。ブラシローラ217と電極1との距離を一定とすることにより、V1の方向がV2の方向と反対である場合でも、電極1が破断せず、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接された。
【0167】
(実施例12)
基本的には実施例11と同様の操作を行った。ただし、ブラシローラ217の周速度V1を1.57m/minとした。V1/V2比は、-1.57であった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0168】
実施例12では、ブラシローラ217の位置を固定し、ブラシローラ217と電極1との距離を一定とした。ブラシローラ217と電極1との距離を一定とすることで、ブラシローラ217の回転が高速であり、V1の方向がV2の方向に対して逆転している場合でも、電極1が破断せず、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接された。
【0169】
(実施例13)
基本的には実施例4と同様の操作を行った。ただし、実施例4で使用したブラシローラ217に代えて、素材がオレフィン系スポンジであるスポンジローラを使用した。JIS
K 6253‐3で規定されるタイプEデュロメーターで測定したスポンジローラの硬さは20であった。V1/V2比は、1.57であった。
【0170】
集電体3の破断は発生しなかった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタは発生しなかった。また、溶接部にブロウホールは見られなかった。
【0171】
実施例13では、洗浄ローラがスポンジローラであっても、活物質層未形成部7のクリーニングが十分に行われ、タブ部が良好に溶接された。
【0172】
(比較例1)
基本的には実施例1~5、7~13と同様の操作を行った。ただし、タブクリーナー117を使用しなかった。レーザー溶接のとき、銅のスパッタが大量に発生した。また、溶接部にブロウホールが散見された。タブクリーナー117を使用しない場合、レーザー溶接に不具合が発生した。