(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】TIM-3に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230808BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230808BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230808BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230808BHJP
C12N 5/20 20060101ALI20230808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230808BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20230808BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230808BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230808BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230808BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230808BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230808BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230808BHJP
A61P 5/16 20060101ALI20230808BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230808BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230808BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230808BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230808BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
C07K16/46
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/20
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/00
A61P31/22
A61P31/18
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P1/16
A61P7/06
A61P7/04
A61P3/10
A61P5/16
A61P21/04
A61K45/00
A61P25/00
A61P35/04
A61P37/02
A61K39/395 N
G01N33/531 A
(21)【出願番号】P 2021508051
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2019083727
(87)【国際公開番号】W WO2019206095
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】201810371407.3
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC CCTCC C2017181
(73)【特許権者】
【識別番号】519228566
【氏名又は名称】アンプソース・バイオファーマ・シャンハイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AMPSOURCE BIOPHARMA SHANGHAI INC.
【住所又は居所原語表記】No. 3, Lane 908, Ziping Road, Pudong New Area, Shanghai 201318, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】李強
(72)【発明者】
【氏名】薛▲トウ▼▲トウ▼
(72)【発明者】
【氏名】鄭雲程
(72)【発明者】
【氏名】肖亮
(72)【発明者】
【氏名】劉登念
(72)【発明者】
【氏名】孫見宇
(72)【発明者】
【氏名】胡江江
(72)【発明者】
【氏名】馬心魯
(72)【発明者】
【氏名】朱康勇
(72)【発明者】
【氏名】李媛麗
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/068803(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/079115(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/117002(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/155607(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/178493(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3つの重鎖可変領域(VH)のCDRであって、
(i)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H1の配列を含むCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H2の配列を含むCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H3の配列を含むCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)のCDR、および
3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L1の配列を含むCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L2の配列を含むCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L3の配列を含むCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
または、
(b)3つの重鎖可変領域(VH)のCDRであって、
(i)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H1の配列を含むCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H2の配列を含むCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H3の配列を含むCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)のCDR、および
3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L1の配列を含むCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L2の配列を含むCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L3の配列を含むCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
から選ばれる相補性決定領域(CDR)を含み、
前記重鎖可変領域(VH)に含まれるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、および前記軽鎖可変領域(VL)に含まれるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3はKabat、Chothia、またはIMGT番号付けシステムにより定義される、TIM-3と特異的に結合可能な抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
(ただし、前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはIMGT番号付けシステムにより定義される)
(2)(a)SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、または(b)SEQ ID NO:7に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および、SEQ ID NO:8に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
(ただし、前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR和前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはKabat番号付けシステムにより定義される)
または
(3)SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
(ただし、前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはChothia番号付けシステムにより定義される)
を含む、請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)IMGT番号付けシステムにより定義されるCDRであって、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)のCDRであって、
(i)SEQ ID NO:18のみからなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:19のみからなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:20のみからなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)のCDR、
および
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:27のみからなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:25のみからなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23のみからなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
または、
(2)Chothia番号付けシステムにより定義されるCDRであって、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:16のみからなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:17のみからなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15のみからなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDRであって、
(iv)SEQ ID NO:24のみからなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:25のみからなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:26のみからなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
または、
(3)Kabat番号付けシステムにより定義されるCDRであって、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:13のみからなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:14のみからなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15のみからなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDR
(iv)SEQ ID NO:21のみからなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:22のみからなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23のみからなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
または、
(4)Kabat番号付けシステムにより定義されるCDRであって、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:13のみからなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:28のみからなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15のみからなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDRであって、
(iv)SEQ ID NO:29のみからなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:30のみからなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23のみからなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
を含む、請求項1に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:18に示すCDR-H1、SEQ ID NO:19に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:20に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:27に示すCDR-L1、SEQ ID NO:25に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含み、
上記各CDRはIMGT番号付けシステムにより定義される、請求項3に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:16に示すCDR-H1、SEQ ID NO:17に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:24に示すCDR-L1、SEQ ID NO:25に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:26に示すCDR-L3を含み、
上記各CDRはChothia番号付けシステムにより定義される、請求項3に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項6】
(a)前記抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:13に示すCDR-H1、SEQ ID NO:14に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:21に示すCDR-L1、SEQ ID NO:22に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含み、または
(b)前記抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:13に示すCDR-H1、SEQ ID NO:28に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:29に示すCDR-L1、SEQ ID NO:30に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含み、
上記各CDRはKabat番号付けシステムにより定義される、請求項3に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:1に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:1に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:1に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:2に示す配列、
(v)SEQ ID NO:2に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:2に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
または、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:3に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:3に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:3に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:4に示す配列、
(v)SEQ ID NO:4に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:4に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
または、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:5に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:5に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:5に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:6に示す配列、
(v)SEQ ID NO:6に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:6に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
または、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:7に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:7に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:7に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:8に示す配列、
(v)SEQ ID NO:8に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:8に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
または、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:9に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:9に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:9に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:10に示す配列、
(v)SEQ ID NO:10に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:10に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
または、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:11に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:11に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:11に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:12に示す配列、
(v)SEQ ID NO:12に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:12に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)SEQ ID NO:1に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:2に示す配列を含むVL、
(2)SEQ ID NO:3に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:4に示す配列を含むVL、
(3)SEQ ID NO:5に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:6に示す配列を含むVL、
(4)SEQ ID NO:7に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:8に示す配列を含むVL、
(5)SEQ ID NO:9に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:10に示す配列を含むVL、または
(6)SEQ ID NO:11に示す配列を含むVHおよびSEQ ID NO:12に示す配列を含むVL、
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)ヒトIgG1重鎖定常領域、
(2)ヒトIgG4重鎖定常領域、
(3)由来する野生型配列と比べてLeu234Ala、Leu235Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体、
(4)由来する野生型配列と比べてAsn297Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体、
(5)由来する野生型配列と比べてAsp265Ala、Pro329Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体、
(6)由来する野生型配列と比べてSer228Proの置換を有するヒトIgG4重鎖定常領域の変異体、
から選ばれる重鎖定常領域を含み、
上記アミノ酸位置は、EU番号付けシステムによる位置であり、
前記軽鎖定常領域はκ軽鎖定常領域である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体もしくはその抗原結合断片はSEQ ID NOs:32~37のいずれか1つに示す重鎖定常領域(CH)を含み、
前記抗体もしくはその抗原結合断片はSEQ ID NO:31に示す軽鎖定常領域(CL)を含む、請求項9に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体もしくはその抗原結合断片はキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体もしくはその抗原結合断片はscFv、Fab、Fab’、(Fab’)
2、Fv断片、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体および多特異性抗体から選ばれる、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体もしくはその抗原結合断片は、100×10
-12Mまたはより低いK
DでヒトTIM-3と結合する、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片をコードする、分離した核酸分子。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項16】
請求項14に記載の核酸分子または請求項15に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項17】
前記抗体もしくはその抗原結合断片の発現が許容される条件で、請求項16に記載の宿主細胞を培養することと、
培養した宿主細胞培養物から前記抗体もしくはその抗原結合断片を回収することと、
を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片を調製する方法。
【請求項18】
ハイブリドーマ細胞株#22であり、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)に寄託され、受託番号CCTCC NO.C2017181を有する、ハイブリドーマ細胞株。
【請求項19】
請求項18に記載のハイブリドーマ細胞株から産生される、モノクローナル抗体。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片と、医薬的に許容されるベクターおよび/または賦形剤および/または安定剤とを含む、医薬組成物。
【請求項21】
PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIGIT、VISTA、CTLA-4、OX40、BTLA、4-1BB、CD96、CD27、CD28、CD40、LAIR1、CD160、2B4、TGF-R、KIR、ICOS、GITR、CD3、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、SLAMF7、NKp80、B7-H3およびその任意の組み合わせから選ばれる受容体またはリガンドと特異的に結合する第2抗体、または前記第2抗体をコードする核酸を更に含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記第2抗体はヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記第2抗体は、ヒトPD-L1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片の薬剤の調製における使用であって、前記薬剤は、少なくとも、
(1)体外または被験者の体内で免疫細胞活性を向上させることと、
(2)被験者において免疫応答を増強することと、
(3)被験者において癌を治療することと、
(4)被験者において感染性疾患を治療することと、
(5)被験者において自己免疫疾患を治療することと、
(6)(1)~(5)の任意の組み合わせと、
のうちのいずれか1つに用いられる、使用。
【請求項25】
前記癌は、固形腫瘍、血液腫瘍および転移性病巣から選ばれ、
前記感染性疾患は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染および寄生虫感染から選ばれ、且つ
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、インスリン依存性糖尿病、バセドウ病、重症筋無力症、自己免疫肝炎および多発性硬化症から選ばれる、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記癌は、肺癌、鱗状細胞肺癌、メラノーマ、腎癌、乳癌、IM-TN乳癌、結腸直腸癌、白血病、または癌の転移性病であり、且つ
前記感染性疾患は、HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、または敗血症である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体もしくはその抗原結合断片および取扱説明書を含む、診断性または治療性キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療性モノクローナル抗体分野に属し、より具体的に、本発明は、ヒトTIM-3に対する抗体もしくはその抗原結合断片に関し、更に、前記抗体の抗感染、抗腫瘍および抗自己免疫疾患等における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン-3(T-cell immunoglobulin and mucin domain 3、TIM-3)は、近年、発見された重要な免疫検査点分子である。TIM-3分子は1回膜貫通分子であり、その構造はIgVサブユニット、ムチンドメイン様ドメイン、1回膜貫通ドメインおよびTyrを豊富に含む細胞内ドメインを含む(非特許文献1)。IgVサブユニットは細胞の外側に位置し、ムチンドメイン様ドメインと共にリガンドの識別に関与する。
【0003】
TIM-3は、IFN-γを分泌するCD4+Tヘルパー細胞1(Th1)およびCD8+細胞毒性T細胞(Tc1)の表面で高発現する(非特許文献2)。ガレクチン-9(Galectin-9、Gal-9)はTIM-3の天然リガンドの1つであり、Gal-9は内因性ガラクトシド結合アグルチニンタンパク質のファミリーメンバーに属し、組織における分布は十分に広く、細胞の凝集、接着、分化、アポトーシス、腫瘍の転移および炎症反応の調節等の面で重要な役割を果たす。Gal-9は、T細胞の表面のTIM-3と結合することにより、細胞内信号経路をトリガし、T細胞の機能枯渇またはアポトーシスを誘導し、免疫反応を低減し、自己免疫疾患、アレルギー疾患および拒絶反応で重要な調節作用を果たす。従って、TIM-3はネガ型免疫調節分子と考えられる。その後、TIM-3も、調節性T細胞(regulatory cell、Treg)、単核球、マクロファージ、樹状細胞(dendritic cells、DCs)、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell、NK)等を含む天然免疫細胞の表面で発現されることが見出された(非特許文献3)。現在、TIM-3/Gal-9が複数種の細胞の免疫応答を調節でき、炎症、自己免疫疾患および腫瘍の発生発展に広く関与することが研究により実証された(非特許文献4、5、6及び7)。
【0004】
近年、研究により、病原体の感染過程において、TIM-3のT細胞での高発現はT細胞の機能枯渇と密に関連することが見出され、また、マクロファージでの発現も上昇することが見出され(非特許文献8及び9)、TIM-3が感染免疫の過程においても重要な役割を果たすことが示唆された。Wangらは、ヒト結核菌に感染した患者において、末梢血単核球は、マウス抗ヒトTIM-3抗体によりTIM-3経路を遮断した後、T細胞によるIFN-γの生成を著しく強化することができ、T細胞枯渇を改善し、生体の結核菌に対する抵抗を強化することを見出した(非特許文献10)。Jayaramanらは、C57BL/6Jマウスが呼吸器を介して結核菌に感染した後、TIM3-Ig融合タンパク質を注射すると、体内結核菌の除去を増強できることを見出した(非特許文献11)。Maらは、正常なまたはHCVに感染したヒトDC細胞がTIM-3抗体で遮断された後、抗原の摂取を増強し、成熟を加速し、IL-12の分泌を増加させることができることを見出した(非特許文献12)。Nebbiaらは、組換えTIM3-Fc融合タンパク質でTIM-3経路を遮断することによりHBV特異性CD8+T細胞の機能枯渇を改善できることを見出した。体外でTIM-3経路を遮断することにより、一部の慢性HBV患者の末梢血単核球HBVの特異性CD8+T細胞にIFN-γおよびTNF-αの発現を回復させることができることを見出した(非特許文献13)。上記一連の研究により、TIM-3抗体(アンタゴニスト抗体)または融合タンパク質(TIM-3の細胞外ドメインのみで構成される)でその信号経路を遮断することにより体内および体外で免疫細胞の機能を逆転させ、生体の抗感染能力を増強できることがいずれも実証されている。従って、TIM-3は抗感染免疫治療に用いられる1つの潜在的な介入標的である。
【0005】
TIM-3は、重要な免疫調整制御標的として、複数種の免疫細胞での異常発現が複数種の腫瘍の発生、発展に密に関連する。現在、TIM-3の泌尿器系腫瘍、腎細胞癌、結腸癌、乳癌、血液腫瘍等の複数種の悪性腫瘍を含むCD8+T細胞の表面での発現が上昇することが見出された。TIM-3は、T細胞の機能枯渇を調節してその免疫応答を抑制することができ、閉鎖性抗体または融合タンパク質でTIM-3下流の信号を抑制することにより、T細胞から分泌されるIFN-γを増加させることができる。腎透明細胞癌、肝癌の体外実験において、モノクローナル抗体を用いてTIM-3/Gal-9経路を抑制した後、腫瘍は顕著に抑制される(非特許文献14及び15)。抗TIM-3モノクローナル抗体を皮下注射することにより、マウス体内のEIAリンパ腫の成長を抑制することができる(非特許文献16)。
【0006】
従って、臨床的には、高い特異性および親和性、より低い毒副作用およびより良好な臨床薬効を有するTIM-3遮断抗体が差し迫って必要となり、これも腫瘍、感染性または自己免疫疾患の患者により多くの投薬の選択肢を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Lee J 他, Genes Immun, 2011年, 12: p.595-604
【文献】Rodriguez-Manzanet R 他, Immunol Rev, 2009年, 229(1): p.259-270
【文献】Andemon AC 他, Science, 2007年, 318 (5853): p.1141-1143
【文献】Anderson DE, Expert Opin Ther Targets, 2007年, 11(8): p.1005-1009
【文献】Anderson AC, Curr Opin Immunol, 2006年, 18(6): p.665-669
【文献】Degauque N 他, Transplantation, 2007年, 84: S12-16
【文献】Zhu C他, Nat Immunol, 2005年, 6: p.1245-1252
【文献】Gorman JV 他, J Immunol, 2014年, 192(7): p.3133-3142
【文献】Jost S他, Retrovirology, 2013年, 10: 74
【文献】Wang X 他, J Infect, 2011年, 62(4): p.292-300
【文献】Jayaraman P 他, J Exp Med, 2010年, 207(11): p.2343-2354
【文献】Ma CJ 他, PLoS One, 2014年, 9(1): e87821
【文献】Nebbia G 他, PLoS One, 2012年, 7(10): e47648
【文献】Komohara Y 他, Cancer Immunol Res, 2015年, 3(9): p.999-1007
【文献】Yan W 他, Gut, 2015年, 64(10): p.1593-1604
【文献】Fourcade J 他, Exp Med, 2010年, 207(10): p.2175-2186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明において、高い親和性および特異性でTIM-3と結合する抗体もしくはその抗原結合断片を開示する。抗体分子をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および抗体分子を製造するための方法を更に提供する。抗体分子を含む二重特異性抗体、多特異性抗体、および医薬組成物を更に提供する。また、本発明に開示される抗TIM-3抗体もしくはその抗原結合断片(単独で、あるいは他の活性剤もしくは治療方式と組み合わせる)の、癌、感染性疾患、クローン病、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)および糸球体腎炎等の疾患を治療、予防および/または診断する薬剤の調製における使用を更に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、本発明は、TIM-3と特異的に結合可能な抗体もしくはその抗原結合断片であって、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)のCDRであって、
(i)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H1の配列、または前記VHに含まれるCDR-H1の配列と比べて具有1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H2の配列、または前記VHに含まれるCDR-H2の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:1に示すVHに含まれるCDR-H3の配列、または前記VHに含まれるCDR-H3の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)のCDR、
および/または、
3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L1の配列、または前記VLに含まれるCDR-L1の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L2の配列、または前記VLに含まれるCDR-L2の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:2に示すVLに含まれるCDR-L3の配列、または前記VLに含まれるCDR-L3の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
または、
(b)3つの重鎖可変領域(VH)のCDRであって、
(i)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H1の配列、または前記VHに含まれるCDR-H1の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H2の配列、または前記VHに含まれるCDR-H2の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:7に示すVHに含まれるCDR-H3の配列、または前記VHに含まれるCDR-H3の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)のCDR、
および/または、
3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L1の配列、または前記VLに含まれるCDR-L1の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L2の配列、または前記VLに含まれるCDR-L2の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:8に示すVLに含まれるCDR-L3の配列、または前記VLに含まれるCDR-L3の配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列を有するCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
から選ばれる相補性決定領域(CDR)を含むTIM-3と特異的に結合可能な抗体もしくはその抗原結合断片を提供する。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに記載の置換は保存的置換である。
【0011】
いくつかの好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域(VH)に含まれるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3、および/または前記軽鎖可変領域(VL)に含まれるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3はKabat、Chothia、またはIMGT番号付けシステムにより定義される。
【0012】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:11のいずれか1つに示すVH
から選ばれる重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、
および/または
(b)SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:10、およびSEQ ID NO:12のいずれか1つに示すVL
から選ばれる軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
を含む。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態において、前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび/または前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはKabat、Chothia、またはIMGT番号付けシステムにより定義される。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および/または、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRを含み、前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはIMGT番号付けシステムにより確定される。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:18、またはSEQ ID NO:18と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:19、またはSEQ ID NO:19と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:20、またはSEQ ID NO:20と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および/または
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDRであって、
(iv)SEQ ID NO:27、またはSEQ ID NO:27と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:25、またはSEQ ID NO:25と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23、またはSEQ ID NO:23と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)CDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)CDRはIMGT番号付けシステムにより定義される。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに記載の置換は保存的置換である。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:18に示すCDR-H1、SEQ ID NO:19に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:20に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:27に示すCDR-L1、SEQ ID NO:25に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含む。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および/または、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはChothia番号付けシステムにより定義される。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:16、またはSEQ ID NO:16と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:17、またはSEQ ID NO:17と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15、またはSEQ ID NO:15と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および/または
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDRであって、
(iv)SEQ ID NO:24、またはSEQ ID NO:24と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:25、またはSEQ ID NO:25と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:26、またはSEQ ID NO:26相比1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)CDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)CDRはChothia番号付けシステムにより定義される。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに記載の置換は保存的置換である。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:16に示すCDR-H1、SEQ ID NO:17に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:24に示すCDR-L1、SEQ ID NO:25に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:26に示すCDR-L3を含む。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:1に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および/または、SEQ ID NO:2に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、または、
(b)SEQ ID NO:7に示す重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDR、および/または、SEQ ID NO:8に示す軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)に含まれる3つのCDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)に含まれる3つのCDRはKabat番号付けシステムにより定義される。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:13、またはSEQ ID NO:13と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:14、またはSEQ ID NO:14と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15、またはSEQ ID NO:15と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および/または
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)CDRであって、
(iv)SEQ ID NO:21、またはSEQ ID NO:21と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:22、またはSEQ ID NO:22と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23、またはSEQ ID NO:23と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)CDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)CDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)CDRはKabat番号付けシステムにより定義される。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに記載の置換は保存的置換である。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:13に示すCDR-H1、SEQ ID NO:14に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:21に示すCDR-L1、SEQ ID NO:22に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含む。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)3つの重鎖可変領域(VH)CDRであって、
(i)SEQ ID NO:13、またはSEQ ID NO:13と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)の配列からなるCDR-H1、
(ii)SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:28相比1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H2、
(iii)SEQ ID NO:15、またはSEQ ID NO:15と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-H3、
という3つの重鎖可変領域(VH)CDR、
および/または、
(b)3つの軽鎖可変領域(VL)のCDRであって、
(iv)SEQ ID NO:29、またはSEQ ID NO:29と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L1、
(v)SEQ ID NO:30、またはSEQ ID NO:30と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L2、
(vi)SEQ ID NO:23、またはSEQ ID NO:23と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、または3つの置換、欠落、または追加)を有する配列からなるCDR-L3、
という3つの軽鎖可変領域(VL)のCDR、
を含み、
前記重鎖可変領域(VH)CDRおよび前記軽鎖可変領域(VL)CDRはKabat番号付けシステムにより定義される。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、(i)~(vi)のいずれか1つに記載の置換は保存的置換である。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、SEQ ID NO:13に示すCDR-H1、SEQ ID NO:28に示すCDR-H2、およびSEQ ID NO:15に示すCDR-H3を含み、且つ、前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、SEQ ID NO:29に示すCDR-L1、SEQ ID NO:30に示すCDR-L2、およびSEQ ID NO:23に示すCDR-L3を含む。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)の免疫グロブリンに由来するフレームワーク領域(FR)を更に含む。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、マウス免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)のフレームワーク領域(FR)を含み、および/または前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、マウス免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)のフレームワーク領域(FR)を含む。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のVHは、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖可変領域(VH)のフレームワーク領域(FR)、および/または前記抗体もしくはその抗原結合断片のVLは、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖可変領域(VL)のフレームワーク領域(FR)を含む。このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖可変領域FRおよび/または軽鎖可変領域FRは、1つまたは複数の非ヒト由来(例えば、マウス由来)アミノ酸残基を含んでもよく、例えば、前記重鎖のフレームワーク領域FRおよび/または軽鎖のフレームワーク領域FRは、1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を含んでもよく、これらの復帰変異には対応するマウス由来のアミノ酸残基がある。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)ヒト免疫グロブリンの重鎖のフレームワーク領域、または由来する配列と比べて最大で20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの重鎖のフレームワーク領域の変異体、および/または
(b)ヒト免疫グロブリンの軽鎖のフレームワーク領域、または由来する配列と比べて最大で20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有するヒト免疫グロブリンの軽鎖のフレームワーク領域の変異体、
を含む。
【0033】
従って、いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片はヒト化したものである。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のヒト化程度は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%である。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NOs:1、3、5、7、9、11のいずれか1つに示す配列、
(ii)SEQ ID NOs:1、3、5、7、9、11のいずれか1つに示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NOs:1、3、5、7、9、11のいずれか1つに示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、
および/または
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NOs:2、4、6、8、10、12のいずれか1つに示す配列、
(v)SEQ ID NOs:2、4、6、8、10、12のいずれか1つに示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NOs:2、4、6、8、10、12のいずれか1つに示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:1に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:1に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:1に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:2に示す配列、
(v)SEQ ID NO:2に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:2に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:3に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:3に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:3に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:4に示す配列、
(v)SEQ ID NO:4に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:4に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:5に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:5に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:5に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:6に示す配列、
(v)SEQ ID NO:6に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:6に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:7に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:7に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:7に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:8に示す配列、
(v)SEQ ID NO:8に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:8に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0044】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:9に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:9に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:9に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:10に示す配列、
(v)SEQ ID NO:10に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:10に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖可変領域(VH)であって、
(i)SEQ ID NO:11に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:11に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:11に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)軽鎖可変領域(VL)であって、
(iv)SEQ ID NO:12に示す配列、
(v)SEQ ID NO:12に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:12に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と、
を含む。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)SEQ ID NO:1に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:2に示す配列を有するVL、
(2)SEQ ID NO:3に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:4に示す配列を有するVL、
(3)SEQ ID NO:5に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:6に示す配列を有するVL、
(4)SEQ ID NO:7に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:8に示す配列を有するVL、
(5)SEQ ID NO:9に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:10に示す配列を有するVL、または
(6)SEQ ID NO:11に示す配列を有するVHおよびSEQ ID NO:12に示す配列を有するVL、
を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)の免疫グロブリンに由来する定常領域の配列またはその変異体を更に含み、前記変異体は、由来する配列と比べて1つまたは複数の置換、欠落、または追加を有する。いくつかの好ましい実施形態において、前記変異体は、由来する配列と比べて1つまたは複数の保存的置換を有する。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は重鎖定常領域(Fc)を有し、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEの重鎖定常領域から選ばれ、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の重鎖定常領域から選ばれ、更に、IgG1またはIgG4(例えば、ヒトIgG1またはIgG4である)の重鎖定常領域から選ばれる。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は軽鎖定常領域を有し、例えば、κまたはλの軽鎖定常領域から選ばれ、好ましくは、κ軽鎖定常領域(例えば、ヒトκ軽鎖)から選ばれる。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)またはその変異体を含み、前記変異体は、由来する配列と比べて1つまたは複数の置換、欠落、または追加(例えば、最大で20個、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの置換、欠落、または追加、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有し、および/または、
本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖は、ヒト免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)またはその変異体を有し、前記変異体は、由来する配列と比べて最大で20個の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖はマウス免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)またはその変異体を有し、前記変異体は、由来する配列と比べて最大で20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有し、および/または、
本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の軽鎖はマウス免疫グロブリンの軽鎖定常領域(CL)またはその変異体を有し、前記変異体は、由来する配列と比べて具有最大で20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有する。
【0052】
いくつかの実施形態において、定常領域が変更され、例えば、突然変異されて抗TIM-3抗体分子の性質(例えば、Fc受容体の結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上の特性を変更する)を修飾する。抗体の定常領域における少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる残基に置き換えることにより機能変更を生じ、例えば、抗体のエフェクターリガンド(例えば、FcR、または補体C1q)に対する親和性を変更することによりエフェクター機能(例えば、増強、低減、または消去)を変更する。抗体のFc領域におけるアミノ酸残基を置き換えてそのエフェクター機能を変更する方法は、本分野で知られているものである(例えば、EP388、151A1、US564、8260、US562、4821を参照)。抗体のFc領域は、ADCC、貪食作用、CDC等のようないくつかの重要なエフェクター機能を媒介する。ある場合、これらのエフェクター機能は、治療性抗体に必要であるが、他の場合、所望の目的に依存してこれらのエフェクター機能は不要であるか、更に有害である可能性がある。従って、いくつかの実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、低減され、更に消去されたエフェクター機能(例えば、ADCCおよび/またはCDC活性)を有する。S228P(EU命名法によるものであり、Kabat命名法ではS241Pである)のようなヒトIgG4で抗体構造を安定させるアミノ酸変異も考えられる。
【0053】
このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、ヒトIgG重鎖定常領域の変異体を含み、前記変異体は、由来する野生型配列と比べて、Ser228Pro、Leu234Ala、Leu235Ala、Gly237Ala、Asp265Ala、Asn297Ala、Pro329Ala、Asp356GluおよびLeu358Metという置換のうちの少なくとも1つを含む(上記アミノ酸位置はEU番号付けシステムによる位置であり、Edelman GMら、Proc Natl Acad USA、63、78-85(1969).PMID:5257969)。
【0054】
ある例示的な実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、由来する野生型配列と比べてLeu234Ala、Leu235Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体(EU番号付けシステムによる位置)を有する。このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、低減されたADCCおよびCDC活性を有する。
【0055】
ある例示的な実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、由来する野生型配列と比べてAsn297Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体を含む(EU番号付けシステムによる位置)。このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、消去されたADCC活性を有する。
【0056】
ある例示的な実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、由来する野生型配列と比べてAsp265Ala、Pro329Alaの置換を有するヒトIgG1重鎖定常領域の変異体を含む(EU番号付けシステムによる位置)。このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、消去されたADCC活性を有する。
【0057】
ある例示的な実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、由来する野生型配列と比べてSer228Proの置換を有するヒトIgG4重鎖定常領域の変異体を有する(EU番号付けシステムによる位置)。このような実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は構造が安定し、Fab-armの交換を低減することができ、半抗体を形成しにくくなる。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片の重鎖はヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域(CH)の変異体を含み、前記変異体は、由来する野生型配列と比べてほぼ変化しないエフェクター機能を有する。このような実施形態において、前記変異体は、由来する野生型配列と比べて最大で20個のアミノ酸の保存的置換(例えば、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの保存的置換、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの保存的置換)を有することができる。
【0059】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖であって、
(i)SEQ ID NO:38に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:38に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:38に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖と、
(b)軽鎖であって、
(iv)SEQ ID NO:40に示す配列、
(v)SEQ ID NO:40に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:40に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖と、
を含む。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0061】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(a)重鎖であって、
(i)SEQ ID NO:42に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:42に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(iii)SEQ ID NO:42に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む重鎖と、
(b)軽鎖であって、
(iv)SEQ ID NO:44に示す配列、
(v)SEQ ID NO:44に示す配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠落、または追加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠落、または追加)を有する配列、または
(vi)SEQ ID NO:44に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、至 少92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
から選ばれるアミノ酸配列を含む軽鎖と、
を含む。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)または(v)に記載の置換は保存的置換である。
【0063】
ある例示的な実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、
(1)SEQ ID NO:38に示す配列を有する重鎖およびSEQ ID NO:40に示す配列を有する軽鎖、または
(2)SEQ ID NO:42に示す配列を有する重鎖およびSEQ ID NO:44に示す配列を有する軽鎖、
を含む。
【0064】
本発明に開示された抗TIM-3抗体もしくはその抗原結合断片は、TIM-3の1種以上の活性を抑制、低減または中和することができ、例えば、T細胞またはNK細胞における免疫検査点を遮断したり低減したりし、または抗原提示細胞を調整することにより免疫応答を再活性化させる。
【0065】
一実施形態において、抗体分子、もしくはその抗原結合断片は、
a)100nMまたはより低い、好ましくは、≦10nM、≦1nM、≦100pM、または≦1pMのKDでTIM-3(特に、ヒトTIM-3)と結合するという性質と、
b)混合リンパ球反応(MLR)測定におけるT細胞(例えば、CD4+、またはCD8+T細胞)の増殖を増進するという性質と、
c)MLR測定におけるインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生を増進するという性質、
d)MLR測定におけるインターロイキン-2(IL-2)の分泌を増進するという性質、
e)TIM-3を発現する細胞、例えば、TIM-3を発現する急性骨髄性白血病細胞に対して細胞毒性(抗体依存性細胞介在性細胞毒性、ADCC)を有するという性質、
f)NK細胞の細胞毒性活性を増強するという性質、
g)調節性T細胞(Treg)またはマクロファージのサプレッサー活性を低減するという性質、または
h)マクロファージまたは樹状突起細胞の免疫応答を刺激する能力を増大させるという性質、
のうちの少なくとも1種を示すことができる。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、以下のモノクローナル抗体から誘導されるか、または以下のモノクローナル抗体である。
【0067】
ハイブリドーマ細胞株#22が産生するモノクローナル抗体であって、ハイブリドーマ細胞株#22は、中国典型培養物寄託センター(CCTCC)(アドレス:中国.武漢.武漢大学)に寄託され、且つ、受託番号CCTCC NO.C2017181を有する。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、scFv、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fv断片、ダイアボディ(diabody)、二重特異性抗体、多特異性抗体から選ばれる。
【0069】
本発明の第2態様において、本発明に係る抗TIM-3抗体分子をコードするヌクレオチド配列を開示する。いくつかの実施形態において、前記抗TIM-3抗体分子をコードするヌクレオチド配列は、コドンが最適化されたものである。例えば、本発明の特徴は、抗TIM-3の抗体分子の重鎖および軽鎖可変領域の第1および第2核酸をそれぞれコードすることであり、該抗体分子は、Mab22、AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7から選ばれるいずれかであるか、またはそれとほぼ同じ配列である。例えば、核酸は、表4に示すAB12S3およびAB12S4ヌクレオチド配列、またはそれとほぼ同じ配列(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、99%、またはそれ以上に類似する配列、または1つ以上のヌクレオチド置換(例えば、保存的置換)を有する配列)、または表4に示す配列と3、6、15、30、または45個以下のヌクレオチドが異なる配列を含んでもよい。
【0070】
本発明の第3態様において、本発明は、本発明の分離した核酸分子を含むベクター(例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター)を提供する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明のベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ等である。いくつかの好ましい実施形態において、前記ベクターは、被験者(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)の体内で本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を発現することができる。
【0071】
本発明の第4態様において、本発明は、本発明の分離した核酸分子または本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞)または原核細胞(例えば、大腸菌)であってもよい。適当な真核細胞は、NS0細胞、Vero細胞、Hela細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、BHK細胞、およびMDCKII細胞を含んでもよいが、これらに限定されない。適当な昆虫細胞は、Sf9細胞を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は哺乳動物細胞であり、例えば、CHO(例えば、CHO-K1、CHO-S、CHO DXB11、CHO DG44)である。
【0072】
本発明の第5態様において、前記抗体もしくはその抗原結合断片の発現が許容される条件で、本発明の宿主細胞を培養することと、培養した宿主細胞培養物から前記抗体もしくはその抗原結合断片を回収することとを含む本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を調製する方法を提供する。
【0073】
本発明の第6態様において、医薬的に許容されるベクターおよび/または賦形剤および/または安定剤と、少なくとも1種の本発明に記載の抗TIM-3抗体分子とを含む医薬組成物を開示する。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態において、前記医薬組成物は別の薬学的活性剤を含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は抗腫瘍活性を有する薬剤である。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は感染を治療するための薬剤である。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は自己免疫疾患を治療するための薬剤である。
【0075】
いくつかの好ましい実施形態において、前記医薬組成物で、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、分離した成分または同一組成物の成分として提供される。従って、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、同時に、分離してまたは順次投与することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIGIT、VISTA、CTLA-4、OX40、BTLA、4-1BB、CD96、CD27、CD28、CD40、LAIR1、CD160、2B4、TGF-R、KIR、ICOS、GITR、CD3、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、SLAMF7、NKp80、B7-H3およびその任意の組み合わせから選ばれる受容体またはリガンドと特異的に結合する第2抗体、または前記第2抗体をコードする核酸を更に含む。
【0077】
いくつかの特定の実施形態において、前記第2抗体はヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片を含む。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれるヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片は、Nivolumab(ニボルマブ(nivolumab)またはOpdivo(登録商標)またはオプジーボ)もしくはその抗原結合断片、Pembrolizumab(ペンブロリズマブ(Pembrolizumab)またはKeytruda(登録商標)またはキイトルーダ)もしくはその抗原結合断片から選ばれる。
【0078】
いくつかの特定の実施形態において、前記第2抗体はヒトPD-L1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトPD-L1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は薬剤を調製するために使用され、前記薬剤は、(1)体外または被験者(例えば、ヒト)の体内で免疫細胞活性を向上させることと、(2)被験者(例えば、ヒト)において免疫応答を増強することと、(3)被験者(例えば、ヒト)において癌を治療することと、(4)被験者(例えば、ヒト)において感染性疾患を治療することと、(5)被験者(例えば、ヒト)において自己免疫疾患を治療することと、(6)(1)~(5)の任意の組み合わせとの少なくともいずれか1つに用いられる。
【0080】
本発明の第7態様において、治療対象におけるTIM-3により媒介される病症または疾患(例えば、癌、感染性疾患、自己免疫疾患)に対する薬剤の調製における使用を提供する。前記腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫のような骨髄腫)および転移性病巣から選ばれ、癌の非限定的な実例は、肺癌(例えば、肺腺癌または非小細胞肺癌)(NSCLC)(例えば、鱗状および/または非鱗状病歴を有するNSCLCまたはNSCLC腺癌)、メラノーマ(例えば、末期メラノーマ)、腎癌(例えば、腎細胞癌)、肝癌(例えば、肝細胞癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、前立腺癌、乳癌(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、またはHer2/neuのうちの1種、2種、または全てを発現しない乳癌、例えば、三重陰性の乳癌)、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、肛門癌、胃-食道癌(例えば、食道扁平上皮癌)、中皮腫、上咽頭癌、甲状腺癌、子宮頸癌、リンパ増殖性疾患(例えば、移植後のリンパ増殖性疾患)、または血液学的癌(例えば、びまん性大B細胞リンパ腫、T-細胞リンパ腫、B-細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫)、または白血病(例えば、骨髄性白血病、またはリンパ球性白血病)から選ばれる。
【0081】
一実施形態において、癌は、末期もしくは転移性癌、メラノーマ、または非小細胞肺癌のような肺癌から選ばれる。
【0082】
一実施形態において、癌は肺癌であり、例えば、肺腺癌、非小細胞肺癌、または小細胞肺癌である。
【0083】
一実施形態において、癌はメラノーマであり、例えば、末期メラノーマである。一実施形態において、癌は、他の治療に応答しない末期または切除不可能なメラノーマである。他の実施形態において、癌はBRAF突然変異(例えば、BRAFV600突然変異)を有するメラノーマである。
【0084】
別の実施形態において、癌は肝癌であり、例えば、ウイルス感染を有してもよく有しなくてもよい末期肝癌であり、例えば、慢性ウイルス性肝炎である。
【0085】
別の実施形態において、癌は前立腺癌であり、例えば、末期前立腺癌である。
【0086】
更なる実施形態において、癌は骨髄腫であり、例えば、多発性骨髄腫である。
【0087】
更なる実施形態において、癌は腎癌であり、例えば、腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性RCC、または透明な細胞腎細胞癌(CCRCC)、または腎乳頭細胞癌)である。
【0088】
一実施形態において、腫瘍の微小環境は、レベルが上昇したPD-L1発現を有する。あるいは、腫瘍の微小環境は、増加したIFNγおよび/またはCD8発現を有することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、対象は、高いPD-L1レベルまたは発現を有する1種または複数種の腫瘍に罹患したと同定されたか、または腫瘍浸潤型リンパ球(TIL)+と同定されたか、または前述した2種の状況である。
【0090】
いくつかの実施形態において、前記感染性疾患は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染および寄生虫感染から選ばれ、例えば、感染性疾患の非限定的な実例は、HIV、(A型、B型、またはC型)肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、または敗血症等を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、インスリン依存性糖尿病、バセドウ病、重症筋無力症、自己免疫肝炎および多発性硬化症から選ばれる。
【0092】
本発明の第8態様において、対象における免疫応答を調整(例えば、刺激または抑制)する方法を提供する。方法は、単独で、あるいは1種以上の活性剤(例えば、他の免疫調節剤と組み合わせる)または手術と組み合わせて本発明に開示された抗TIM-3抗体分子(例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子)を対象に投与することにより、対象における免疫応答を調整することを含む。いくつかの実施形態において、抗体分子は、対象における免疫応答を増強、刺激、または増加する。いくつかの実施形態において、抗体分子は、対象における免疫応答を抑制、低減、または中和する。対象は、サル、霊長類のような哺乳動物であってもよく、好ましくは高等霊長類であり、例えば、ヒト(例えば、本発明に係る病症に罹患したまたは罹患する恐れがある患者)である。
【0093】
本発明の第9態様において、対象癌または腫瘍を治療する(例えば、抑制するおよび/または進行を遅延させる)方法を提供する。該方法は、本発明に係る抗TIM-3抗体分子、例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子を、単独で、あるいは1種または複数種の活性剤またはプログラムと組み合わせて対象に投与することを含む。特定の実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、共刺激分子の調節剤(例えば、共刺激分子のアゴニスト)または抑制分子の調節剤(例えば、免疫検査点分子の抑制剤)と組み合わせて投与され、例えば、本発明に記載されるとおりである。
【0094】
本発明の第10態様において、対象における癌または腫瘍細胞の成長を減少または抑制する(例えば、癌を治療する)方法を更に提供し、単独で、あるいは第2活性剤と組み合わせて本発明に記載の抗TIM-3抗体分子、例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子を対象に投与することを含む。
【0095】
本発明の第11態様において、本発明に記載の抗TIM-3抗体分子および取扱説明書を含む診断性または治療性キットを提供する。
【発明の効果】
【0096】
本発明で調製される抗TIM-3ヒト化抗体は、TIM-3との結合親和性が高く、且つ極めて強い特異性を有する。体内の抗腫瘍研究データにより、本発明に係るヒト化抗体がマウス移植腫瘍の成長を著しく抑制することができ、更に、一部のマウスの腫瘍が完全に消えることが示される。また、本発明に係る抗体は、CHO細胞発現を採用し、生産量が高く、活性が高く、精製プロセスが簡単で、且つ生産コストが低いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】マウス由来抗体とヒトTim-3抗原との結合能力の測定。
【
図2】5つの抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7と、マウス由来抗体Mab22との重鎖可変領域のアミノ酸配列の並列比較である。
【
図3】5つの抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7と、マウス由来抗体Mab22との軽鎖可変領域のアミノ酸配列の並列比較である。
【
図4】ヒト化抗体とヒトTIM-3抗原との結合能力の測定である。
【
図6】ELISAによる抗体AB12S3と異なる属種由来のTIM-3抗原との親和性である。
【
図7】ELISAによる抗体AB12S3とTIM-3抗原との特異的結合の検出である。
【
図8】HTRFによるAB12S1、AB12S3がTIM-3/Galectin-9結合を遮断する能力の検出である。
【
図9】競合ELISAによるAB12S1、AB12S3がTIM-3/PS結合を遮断する能力の検出である。
【
図10】CD8
+T細胞の表面のCD69の発現に対するAB12S1、AB12S3、AB12S4の影響である。
【
図11】抗TIM-3ヒト化抗体AB12S3が体外でT細胞の腫瘍細胞を殺傷する能力を増強する図である。
【
図12】AB12S3抗体および対照抗体AB12S1の遺伝子組み換えマウスの体内における薬効検出である。
【
図13】抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、陽性対照抗体AB12S1の、SEBにより刺激されたドナーAに由来するPBMCのIFN-γ分泌に対する促進作用である。
【
図14】抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、陽性対照抗体AB12S1の、SEBにより刺激されたドナーBに由来するPBMCのIFN-γ分泌に対する促進作用である。
【
図15】抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、およびそれとOPDIVO(登録商標)との併用の、ドナーAに由来するMLRにおけるIFN-γ分泌に対する刺激作用である。
【
図16】抗ヒトTIM-3ヒト化抗体AB12S3、およびそれとOPDIVO(登録商標)との併用の、ドナーBに由来するMLRにおけるIFN-γ分泌に対する刺激作用である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
[略称および定義]
TIM-3 T細胞の免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3
CDR Kabat番号付けシステムで定義された免疫グロブリンの可変領域における相補性決定領域
EC50 50%の効果または結合を生じる濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着測定
FR 抗体のフレームワーク領域:CDR領域を除外する免疫グロブリンの可変領域
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IL-2 インターロイキン2
IFN インターフェロン
IC50 50%の抑制を生じる濃度
IgG 免疫グロブリンG
Kabat Elvin A Kabatにより提唱された免疫グロブリンの比較および番号付けシステム
mAb モノクローナル抗体
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
V領域 異なる抗体の間の配列が可変なIgG鎖ドメインであり、軽鎖の109位のKabat残基および重鎖の113位目の残基まで延伸する
VH 免疫グロブリンの重鎖可変領域
VL 免疫グロブリンの軽鎖可変領域
VK 免疫グロブリンκの軽鎖可変領域
KD 平衡解離定数
ka 結合速度定数
kd 解離速度定数
【0099】
本発明に使用される「TIM-3」という用語は、アイソタイプ、哺乳動物(例えば、ヒト)のTIM-3、ヒトTIM-3の種相同体、およびTIM-3との共通エピトープを少なくとも1つ含む類似物を含む。TIM-3(例えば、ヒトTIM-3)のアミノ酸配列は、本分野で知られているものであり、例えば、Sabatosら、Nat Immunol、2003、4(11):1102である。いくつかの実施形態において、本発明に係る抗体分子は哺乳動物(例えば、ヒトまたはカニクイザル)のTIM-3におけるエピトープ(例えば、線形または配座エピトープ)と特異的に結合する。いくつかの実施形態において、結合エピトープは、ヒトまたはカニクイザルTIM-3のIgVドメインの少なくとも一部である。ヒトTIM-3のヌクレオチドおよびタンパク質の配列は、Genbank登録番号AF251707.1およびUniprot登録番号Q8TDQ0を参照することができる。
【0100】
「抗体」という用語は、全長抗体(2本の重鎖および2本の軽鎖を含む)、その様々な機能性断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fc、Fd、Fd’、Fv、またはscFv断片のような抗原結合部分のみを含んでもよい)および修飾された抗体(例えば、ヒト化、グリコシル化等)を含む。本発明は、グリコシル化修飾を有する抗TIM-3抗体を更に含む。いくつかの適用において、修飾して所望でないグリコシル化部位を除去し、例えば、オリゴ糖鎖でフコース修飾を行って抗体依存性細胞毒性(ADCC)の機能を増強する。別の適用において、ガラクトース化修飾を行って補体依存性細胞毒性(CDC)を変更することができる。本発明における抗TIM3抗体分子は、ヒト化される、キメラされる、ラクダ(camelid)、サメまたは体外で生成される抗体分子であってもよい。抗体および抗体断片は、任意の抗体タイプに由来してもよく、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEを含んでもよいが、これらに限定されず、且つ、任意の抗体サブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)に由来してもよい。抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、または体外で生成される抗体であってもよい。抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選ばれる重鎖定常領域を有してもよい。抗体は、例えば、κまたはλから選ばれる軽鎖を更に有してもよい。
【0101】
「モノクローナル抗体またはmAb」という用語は、単一のクローン細胞株から得られた抗体を指し、前記細胞株は、真核、原核、またはファージのクローン細胞株に限定されない。モノクローナル抗体または抗原結合断片は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ法、合成技術(例えば、CDR-grafting)、または他の従来技術で組換えを行って得ることができる。
【0102】
「抗体断片」および「抗原結合断片」とは、抗体の抗原結合断片および抗体類似物を意味し、通常、一部の親抗体(parental antibody)の抗原結合領域または可変領域(例えば、1つまたは複数のCDR)を少なくとも含む。抗体断片は、親抗体の少なくともいくつかの結合特異性を保留する。通常、モルに基づいて活性を示す場合、抗体断片は少なくとも10%の親結合活性を保留する。好ましくは、抗体断片は、少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%、またはそれ以上のターゲットに対する親抗体の結合親和性を保留する。抗体断片の実例は、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片と、ダイアボディと、線形抗体(linear antibody)と、ScFv、モノクローナル抗体、ナノ抗体、単一ドメイン抗体のような一本鎖抗体分子と、抗体断片で形成された多特異性抗体を含んでもよいが、これらに限定されない。工学的改造された抗体変異体は、Holligerら、2005、Nat Biotechnol、23:1126~1136にまとめられた。
【0103】
「Fab断片」は、1本の軽鎖、1本の重鎖のCH1、および可変領域からなる。Fab分子の重鎖は別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0104】
「Fc」領域には、抗体を含むCH1およびCH2ドメインという2つの重鎖断片が含まれる。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合により、CH3ドメインの疎水作用で一体に保持される。
【0105】
「Fab’断片」は、1本の軽鎖および1本の重鎖のVHドメインと、CH1ドメインと、CH1とCH2ドメインとの間の定常領域部分とを含み、これにより、2つのFab’断片の2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成してF(ab’)2分子を形成する。
【0106】
「F(ab’)2断片」は、2本の軽鎖および2本の重鎖のVHドメインと、CH1ドメインと、CH1とCH2ドメインとの間の定常領域部分とを含み、これにより、2本の重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する。従って、F(ab’)2断片は、2本の重鎖の間のジスルフィド結合により一体に保持された2つのFab’断片からなる。
【0107】
「FV領域」は、重鎖と軽鎖との両者に由来する可変領域を含むが、定常領域が欠ける。
【0108】
「一本鎖Fv抗体」(または「scFv抗体」)とは、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体断片を意味し、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。scFvのまとめについては、Pluckthun(1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(モノクローナル抗体薬理学)、第113巻、RosenburgおよびMooreにより編集され、Springer-Verlag、New York、269~315ページを参照することができる。国際特許出願公開番号WO88/01649、米国特許第4946778号および第5260203号も参照する。
【0109】
「抗原結合断片」は、重鎖可変領域または軽鎖可変領域鎖のみを含む免疫学的機能を有する免疫グロブリン断片である。抗原結合断片の例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片と、(ii)ジスルフィド結合によりヒンジ領域で連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片と、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片と、(iv)抗体の単一の腕のVLおよびVHドメインからなるFv断片と、(v)VHドメインからなる二重抗体(dAb)断片と、(vi)ラクダ(またはラクダ化可変ドメイン)と、(vii)一本鎖Fv(scFv)と、(viii)単一ドメイン抗体とを含む。当業者に知られている複数の従来技術を含む任意の適当な方法を使用することにより、これらの抗体断片を取得することができ、且つ、完全な抗体と同じ方法で前記断片の用途を選別することができる。
【0110】
本発明に使用される「超可変領域」または「CDR領域」、または「相補性決定領域」という用語は、抗原結合を担当する抗体アミノ酸残基を意味する。CDR領域の配列は、IMGT、Kabat、ChothiaおよびAbM法で定義できるまたは本分野でよく知られている任意のCDR領域の配列確定方法で同定できる可変領域内のアミノ酸残基である。抗体CDRは、最初にKabatらにより定義された高頻度可変領域と同定されてもよく、例えば、軽鎖可変ドメインの24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)位残基と、重鎖可変ドメインの31~35(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)位残基であり、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫ターゲットのタンパク質配列)、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.を参照する。CDRの位置も、最初にChothiaらにより述べられた「超可変リング」(HVL)構造で定義されたものと同定されてもよく、例えば、軽鎖可変ドメインの26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)位残基と、重鎖可変ドメインの26~32(H1)、52~56(H2)および95~102(H3)位残基(例えば、Chothiaら、J Mol Biol、1992、227:799-817、Tomlinsonら、J Mol Biol、1992、227:776~798を参照)である。IMGT(ImMunoGeneTics)も、CDRを含む免疫グロブリンの可変領域の番号付けシステムを提供し、IMGT番号に応じてCDR領域を定義し、例えば、軽鎖可変ドメインの27~32(L1)、50~52(L2)および89~97(L3)位残基と、重鎖可変ドメインの26~35(H1)、51~57(H2)および93~102(H3)位残基であり、Lefranc、M.P.らのDev Comp Immunol、2003、27:55~77を参照し、引用により本発明に援用する。CDRの同定に用いられる他の方法は、「AbM定義」を含み、KabatとChothiaとの間の折衷であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデルソフトウェアを用いて得られる。または、CDRの「接触定義」を含み、観察された抗原接触に基づき、MacCallumら、1996、J.Mol.Biol.、262:732~745に述べられた。CDRの「構成定義」方法において、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー寄与する残基と同定されてもよく、例えば、Makabeら、2008、Journal of Biological Chemistry、283:1156~1166を参照する。本発明に使用される方法は、これらの方法におけるいずれかにより定義されたCDRを用いるか、または基づくことができ、Kabat定義、IMGT定義、Chothia定義、AbM定義、接触定義および/または構成定義のうちのいずれかを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、少なくとも1つ、2つ、または3つの本発明に記載の抗体の重鎖可変領域に由来する相補性決定領域(CDR)を含み、該抗体は、例えば、Mab22、AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7から選ばれる任意の抗体であるか、または表1に記載されるものであるか、または表4におけるヌクレオチド配列でコードされるものであるか、または上記配列におけるいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上に類似し、または1つ以上のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、少なくとも1つ、2つ、または3つの本発明に記載の抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域に由来する相補性決定領域(CDR)を含み、該抗体は、例えば、Mab22、AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7から選ばれる任意の抗体であるか、または表1に記載されるものであるか、または表4におけるヌクレオチド配列でコードされるものであるか、または上記配列におけるいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上に類似し、または1つ以上のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの重鎖および軽鎖可変領域に由来するCDRを含み、該重鎖および軽鎖可変領域は、表1または表4に示すヌクレオチド配列でコードされるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、表1または表4に示すヌクレオチド配列でコードされるCDRに対し、CDRにおける1つ以上(または全てのCDR)は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の変更を有し、例えば、アミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠落を有する。
【0112】
「フレームワーク領域」「可変フレームワーク領域」、「FR領域」という用語は、本発明で定義された超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子の軽鎖可変フレームワーク領域、または重鎖可変フレームワーク領域は、(a)少なくとも70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、94、95、96、97、98、99%、または好ましくは100%のヒト軽鎖または重鎖可変フレームワーク領域に由来するアミノ酸残基(例えば、ヒト成熟抗体、ヒト種系配列、またはヒト共有配列の軽鎖または重鎖可変フレームワーク領域残基に由来する)を含む軽鎖または重鎖可変フレームワーク領域、(b)非ヒトフレームワーク領域(例えば、げっ歯類動物フレームワーク)、または(c)免疫除去されたまたは部分的にヒト化されたフレームワークのような修飾された(例えば、抗原決定クラスタまたは細胞毒性決定クラスタを除去するように修飾された)非ヒトフレームワーク領域から選択できる。いくつかの実施形態において、軽鎖または重鎖可変フレームワーク領域は、ヒト生殖細胞遺伝子のVLまたはVHドメインのフレームワーク領域と少なくとも70、75、80、85、86、87、88、89、90、91、92、94、95、96、97、98、99%同じまたは類似する軽鎖または重鎖可変フレームワーク領域の配列を含む。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、例えば、完全な可変領域(例えば、表1に示す)におけるFR領域のアミノ酸配列に由来する、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、10個、15個、20個、またはそれ以上の変更(例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠落)を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、例えば、完全な可変領域(例えば、表1に示す)におけるFR領域のアミノ酸配列に由来する、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、10個、15個、20個、またはそれ以上の変更(例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠落)を有する軽鎖可変領域を含む。
【0113】
「キメラ抗体(Chimeric antibody)」という用語は、マウス由来抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域とを融合した抗体であり、マウス由来抗体による免疫応答反応を軽減することができる。任意の適当な組換えDNA技術によりキメラ抗体を産生することができる。一部は本分野で知られているものである(PCT/US86/02269、EP184187、EP171496、EP173494、WO86/01533、US4816567、EP125023、Betterら、Science、1988、240:1041~1043、Liuら、PNAS、1987、84:3439~3443、Liuら、J Immunol、1987、139:3521~3526、Sunら、PNAS、1987、84:214~218、Nishimuraら、Canc Res、1987、47:999~1005、Woodら、Nature、1985、314:446~449、およびShawら、J Natl Cancer Inst、1988、80:1553~1559を参照)。本発明の1つの好ましい実施形態において、前記TIM-3キメラ抗体の抗体軽鎖可変領域は、マウス由来κ、λ鎖、またはその変異体の軽鎖FR領域を更に含む。前記TIM-3キメラ抗体の抗体重鎖可変領域は、マウス由来IgG1、IgG2、IgG3、またはその変異体の重鎖FR領域を更に含む。ヒト抗体の定常領域は、ヒト由来IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4、またはその変異体の重鎖定常領域から選択でき、好ましくは、ヒト由来IgG1またはIgG4の重鎖定常領域を含む。
【0114】
「多特異性抗体」という用語は、第1抗体もしくはその抗原結合断片と、他の抗体もしくはその抗原結合断片または抗体類似物とをカップリングすることにより形成され、且つ、そのうちの各抗体もしくはその抗原結合断片または抗体類似物は元の結合特異性を保持し、例えば、多特異性抗体は三重特異性抗体または四重特異性抗体である。「二重特異性抗体」という用語は、本発明の抗TIM-3抗体もしくはその抗原結合断片が少なくとも2種の異なる結合部位または標的分子と結合する二重特異性抗体を生成するために、誘導化を行うまたは別のペプチドまたはタンパク質(例えば、腫瘍関連抗原、サイトカインおよび細胞表面受容体)のような別の機能性分子に連結することができることを意味する。本発明の二重特異性抗体を作成するために、本発明の抗体を、他種の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣物のような1種または複数種の他の結合分子に機能的に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合、または他の方式)連結することにより、二重特異性抗体を生成することができる。例えば、「二重特異性抗体」とは、2つの可変ドメインまたはScFv単位を含むことにより、得られた抗体に2種の異なる抗原を識別させるものを意味する。
【0115】
本発明に使用される「免疫結合」および「免疫結合性質」という用語とは、非共有相互作用を意味し、免疫グロブリン分子と抗原(該抗原にとって免疫グロブリンが特異的である)との間で発生する。免疫結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の平衡解離定数(KD)で示すことができ、ここで、KD値が小さければ小さいほど、親和性は高い。選択されたポリペプチドの免疫結合性質は、本分野で公知の方法で定量することができる。1つの方法は、抗原結合部位/抗原複合物の形成および解離の速度の測定に関する。「結合速度定数」(kaまたはkon)と「解離速度定数」(kdまたはkoff)との両者は、いずれも濃度、会合および解離の実際の速度により計算できる。(Malmqvist M、Nature、1993、361:186~187を参照)。kd/kaの比率は解離定数KDに等しい(通常、Daviesら、Annual Rev Biochem、1990、59:439~473を参照)。任意の有効な方法でKD、kaおよびkd値を測定することができる。好ましい実施形態において、生物発光干渉測定法(例えば、実施例5.2に係るForteBio Octet法)で解離定数を測定する。他の好ましい実施形態において、表面プラズモン共鳴技術(例えば、Biacore)またはKinexaで解離定数を測定することができる。平衡結合定数(KD)が≦10μMで、好ましくは≦100nMで、より好ましくは≦10nMで、最も好ましくは≦100pM~約1pMである場合、本発明の抗体は、TIM-3のエピトープに特異的に結合すると考えられる。
【0116】
相同抗体
【0117】
更なる態様において、本発明の抗体に含まれる重鎖および軽鎖可変領域が含むアミノ酸配列は、本発明に係る好ましい抗体のアミノ酸配列と相同し、且つ、前記抗体は本発明の抗TIM-3抗体の所望の機能特性を保留する。
【0118】
例えば、本発明は、ヒト化された結合TIM-3の抗体もしくはその抗原結合断片を提供し、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、(a)前記重鎖可変領域は、SEQ ID NOs:1、3、5、7、9および11から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも80%が同じであるアミノ酸配列を含み、より好ましくは、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NOs:1、3、5、7、9および11から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%が同じであるアミノ酸配列を含み、(b)前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NOs:2、4、6、8、10および12から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも80%が同じであるアミノ酸配列を含み、より好ましくは、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NOs:2、4、6、8、10および12から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%が同じであるアミノ酸配列を含む。
【0119】
保存的修飾を有する抗体
【0120】
「保存的修飾」という用語とは、アミノ酸修飾が該アミノ酸配列を含む抗体の結合特徴に著しく影響したり変更したりすることがないことを意味する。このような保存的修飾はアミノ酸の置換、追加および欠落を含む。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介のような本分野で知られている標準技術の利点により本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸の置換とは、アミノ酸残基を類似する側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えることを意味する。本分野では、類似する側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーについて詳しく説明している。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。従って、本発明の抗体CDR領域における1つまたは複数のアミノ酸残基を同一側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基に置き換えることができる。
【0121】
抗TIM-3抗体の用途
【0122】
本発明に開示された抗TIM-3抗体分子は、TIM-3の1種以上の活性を抑制、低減、または中和することができ、例えば、T細胞またはNK細胞における免疫検査点を遮断するか、または抗原提示細胞を調整することにより免疫応答を再活性化させる。一実施形態において、抗体分子は、T細胞におけるIFN-γおよび/またはTNFαの分泌を増強させる活性、T細胞(例えば、CD4+またはCD8+T細胞)の増殖を増強させる活性、NK細胞の細胞毒性作用を増強させる活性、または調節性T細胞(Treg)またはマクロファージのサプレッサー活性を低減させる活性、またはマクロファージまたは樹状突起細胞の免疫応答を刺激する能力を増大させる活性の1種以上を有する。従って、このような抗体分子を用いて対象における免疫応答を増強したい病症、例えば、癌、感染性疾患および自己免疫疾患を治療または予防することができる。
【0123】
癌
【0124】
いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子を用いてTIM-3を発現する癌を治療する。TIM-3を発現する癌は、子宮頸癌(Caoら、PLOS One、2013、8(1):e53834)、肺癌(Zhuangら、Am J Clin Pathol、2012、137(6):978~985)(例えば、非小細胞肺癌)、急性骨髄性白血病(Kikushigeら、Cell Stem Cell、2010、7(6):708~17)、びまん性大B細胞リンパ腫、メラノーマ(Fourcadeら、JEM、2010、207(10):2175)、腎癌(例えば、腎細胞癌(RCC)、例えば、腎透明細胞癌、腎乳頭細胞癌、または転移性腎細胞癌)、扁平上皮癌、食道扁平上皮癌、上咽頭癌、結腸直腸癌、乳癌(例えば、エストロゲン受容体タンパク質、プロゲステロン受容体、またはHer2/neuのうちの1種、2種、または全てを発現しない乳癌、例えば、三重陰性の乳癌)、中皮腫、肝細胞癌および卵巣癌を含む。TIM-3を発現する癌は転移性癌であってもよい。一実施形態において、抗TIM-3抗体分子を用い、LILRB4(マクロファージ抑制性受容体)、CD14、CD16、CD68、MSR1、SIGLEC1、TREM2、CD163、ITGAX、ITGAM、CD11b、またはCD11cのようなマクロファージの細胞マーカーを特徴とする癌の1種以上を治療する。このような癌の実例は、びまん性大B細胞リンパ腫、多形性膠芽腫、腎臓腎透明細胞癌、膵臓癌、肉腫、肝臓肝細胞癌、肺腺癌、腎臓乳頭細胞癌、皮膚の皮膚メラノーマ、脳低レベル神経膠腫、肺扁平上皮癌、卵巣性嚢胞性腺腫、頭部および頸部扁平上皮癌、乳房浸潤性癌、急性骨髄性白血病、子宮頸部扁平上皮癌、子宮頸部内腺癌、子宮癌、結腸直腸癌、子宮体子宮内膜癌、甲状腺癌、膀胱尿路上皮癌、副腎皮質癌、腎容態細胞および前立腺癌を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの態様において、本発明は、対象における免疫応答を調整(例えば、刺激または抑制)する方法を提供する。方法は、単独で、あるいは1種以上の活性剤または手術と組み合わせて(例えば、他の免疫調節剤と組み合わせ)本発明に開示された抗TIM-3抗体分子(例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子)を対象に投与し、対象における免疫応答を調整することを含む。いくつかの実施形態において、抗体分子は対象における免疫応答を増強、刺激、または増加する。いくつかの実施形態において、抗体分子は対象における免疫応答を抑制、低減、または中和する。
【0126】
対象は、サル、霊長類のような哺乳動物であってもよく、好ましくは、ヒト(例えば、本発明に記載の病症に罹患したまたは罹患する恐れがある患者)のような高等霊長類である。いくつかの実施形態において、対象は免疫応答を増強する必要があり、いくつかの実施形態において、対象は免疫応答を抑制する必要がある。一実施形態において、対象は、本発明に係る病症を有するか、または本発明に係る癌および感染性病症のような本発明に係る病症に罹患する恐れがある。特定の実施形態において、対象は免疫が損なわれたものであるか、または免疫が損なわれる恐れがあるものである。例えば、対象は、化学療法および/または放射線療法を経験しているまたは経験した。あるいは、対象は、感染により免疫が損なわれたか、または免疫が損なわれる恐れがある。
【0127】
1つの態様において、対象癌または腫瘍を治療する(例えば、抑制するおよび/または進行を遅延させる)方法を提供する。該方法は、本発明に係る抗TIM-3抗体分子、例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子を、単独で、あるいは1種または複数種の活性剤またはプログラムと組み合わせて対象に投与することを含む。特定の実施形態において、抗TIM-3抗体分子は、共刺激分子の調節剤(例えば、共刺激分子のアゴニスト)または抑制分子の調節剤(例えば、免疫検査点分子の抑制剤)と組み合わせて投与され、例えば、本発明に記載されるとおりである。
【0128】
本開示は、対象における癌または腫瘍細胞の成長を減少または抑制する(例えば、癌を治療する)方法を更に提供し、単独で、あるいは第2活性剤と組み合わせて本発明に記載の抗TIM-3抗体分子、例えば、治療有効量の抗TIM-3抗体分子を対象に投与することを含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、抗TIM-3抗体分子(単独で、あるいは1種以上の免疫調節剤と組み合わせる)で治療する癌は、固形腫瘍、血液学腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫のような骨髄腫)および転移性病巣を含んでもよいが、これらに限定されない。一実施形態において、癌は固形腫瘍である。固形腫瘍の実例は悪性腫瘍を含み、例えば、肉腫および癌、例えば、各器官系の腺癌、例えば、肺、乳房、卵巣、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、肛門、生殖器および泌尿生殖道(例えば、腎、尿道、膀胱細胞、前立腺)、咽頭、CNS(例えば、脳、神経、または膠細胞)、頭頸部、皮膚(例えば、メラノーマ)および膵臓に影響を与えるもの、および悪性腫瘍を含む腺癌、例えば、結腸癌、腎癌、腎細胞癌、肝癌、非小細胞肺癌、小腸の癌および食道の癌である。癌は早期、中期、末期、または転移性癌であってもよい。
【0130】
一実施形態において、癌は、肺癌(例えば、肺腺癌または非小細胞肺癌)(NSCLC)(例えば、鱗状および/または非鱗状病歴を有するNSCLCまたはNSCLC腺癌)、メラノーマ(例えば、末期メラノーマ)、腎癌(例えば、腎細胞癌)、肝癌(例えば、肝細胞癌)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、前立腺癌、乳癌(例えば、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、またはHer2/neuのうちの1種、2種、または全てを発現しない乳癌、例えば、三重陰性の乳癌)、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC))、肛門癌、胃-食道癌(例えば、食道扁平上皮癌)、中皮腫、上咽頭癌、甲状腺癌、子宮頸癌、リンパ増殖性疾患(例えば、移植後リンパ増殖性疾患)、または血液学癌(例えば、びまん性大B細胞リンパ腫、T-細胞リンパ腫、B-細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫)、または白血病(例えば、骨髄性白血病、またはリンパ球性白血病)から選ばれる。
【0131】
別の実施形態において、癌は、癌(例えば、末期または転移性癌)、メラノーマ、または非小細胞肺癌のような肺癌から選ばれる。
【0132】
一実施形態において、癌は肺癌であり、例えば、肺腺癌、非小細胞肺癌、または小細胞肺癌である。
【0133】
一実施形態において、癌はメラノーマであり、例えば、末期メラノーマである。一実施形態において、癌は、他の治療に応答しない末期または切除不可能なメラノーマである。他の実施形態において、癌はBRAF突然変異(例えば、BRAFV600突然変異)を有するメラノーマである。
【0134】
別の実施形態において、癌は肝癌であり、例えば、ウイルス感染を有してもよく有しなくてもよい末期肝癌であり、例えば、慢性ウイルス性肝炎である。
【0135】
別の実施形態において、癌は前立腺癌であり、例えば、末期前立腺癌である。
【0136】
更なる実施形態において、癌は骨髄腫であり、例えば、多発性骨髄腫である。
【0137】
更なる実施形態において、癌は腎癌であり、例えば、腎細胞癌(RCC)(例えば、転移性RCC、または透明な細胞腎細胞癌(CCRCC)、または腎乳頭細胞癌)である。
【0138】
一実施形態において、癌の微小環境は、レベルが上昇したPD-L1発現を有する。あるいは、癌の微小環境は、増加したIFNγおよび/またはCD8発現を有することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、対象は、高発現のPD-L1を有する腫瘍に罹患したと同定されたか、または腫瘍浸潤型リンパ球(TIL)+(例えば、数が増加したTILを有する)と同定されたか、または前述した2種の状況である。いくつかの実施形態において、対象は、高発現のPD-L1かつTIL+の腫瘍に罹患したか、または罹患したと同定される。いくつかの実施形態において、本発明に記載の方法は、高発現のPD-L1腫瘍かつTIL+に罹患したか、または同定されることに基づくことを更に含む。いくつかの実施形態において、TIL+の腫瘍はCD8およびIFNγ陽性である。いくつかの実施形態において、対象は、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上に対して陽性である細胞を高い百分率で有するか、または有すると同定される。いくつかの実施形態において、対象は、PD-L1、CD8およびIFNγが全て陽性である細胞を高い百分率で有するか、または有すると同定される。いくつかの実施形態において、対象は、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上を有するか、または有すると同定され、且つ、鱗状細胞肺癌または肺腺癌のような肺癌、頭頸部癌、鱗状細胞子宮頸癌、胃癌、食道癌、甲状腺癌、メラノーマおよび/または上咽頭癌(NPC)のうちの1種または複数種の癌に罹患したか、または罹患したと同定される。いくつかの実施形態において、本発明に記載の方法は、対象が、PD-L1、CD8および/またはIFNγのうちの1つ、2つまたはそれ以上、例えば、鱗状細胞肺癌または肺腺癌、頭頸部癌、鱗状細胞子宮頸癌、胃癌、甲状腺癌、メラノーマおよび/または上咽頭癌のうちの1種または複数種に罹患したか、または罹患したと同定されることに基づくことについて更に述べた。
【0140】
いくつかの実施形態において、対象が罹患したまたは罹患したと同定された腫瘍は、高発現のPD-1、高発現のTIM-3および/または調節性T細胞の腫瘍における高レベルの浸潤のうちの1種、2種、またはそれ以上の特徴を有する。いくつかの実施形態において、対象に罹患したまたは罹患したと同定された腫瘍は、高いPD-1およびTIM-3レベルを有し、且つ腫瘍における調節性T細胞のレベルが上昇した。いくつかの実施形態において、本発明に記載の方法は、対象が、高い百分率のPD-1+細胞、高い百分率のTIM-3+細胞、および/または調節性T細胞の腫瘍における高レベルの浸潤(例えば、数または百分率が増加したTregが腫瘍に存在する)という特徴のうちの1種、2種、またはそれ以上を有するかまたはそれに基づくと同定されることを更に含む。いくつかの実施形態において、本発明に記載の方法は、対象が、高い百分率のPD-1+細胞、高い百分率のTIM-3+細胞、および/または調節性T細胞の腫瘍における高レベルの浸潤という特徴のうちのの1種、2種、またはそれ以上に罹患したかまたはをそれを有すると同定され、且つ肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、肝細胞性癌(例えば、肝細胞癌)、または卵巣癌(例えば、卵巣癌)のうちの1種または複数種に罹患したことに基づくことを更に含む。
【0141】
感染性疾患
【0142】
関する感染性生物または物質の種類に基づき、感染を細菌性、ウイルス性、真菌性、または寄生虫に広く分類する。他の一般的ではないタイプの感染は、例えば、リケッチア、マイコプラズマおよび物質に関する感染性疾患を含み、前記物質は、痒み、牛海綿状脳症(BSE)およびプリオン病(例えば、クールー病およびクロイツフェルト-ヤコブ病)の感染を引き起こす。感染を引き起こす細菌、ウイルス、真菌および寄生虫の実例は、本分野でよく知られているものである。感染は、急性、亜急性、慢性、または潜伏のものであってもよく、且つ、局所的または全身的なものであってもよい。複数種の実施形態において、単独で、あるいはアジュバントの形式でワクチンと組み合わせて抗TIM-3抗体分子を用い、例えば、病原体または毒素に対する免疫応答を刺激することができる。このような治療方法がそれに対して特に有用である可能性のある病原体の実例は、現在それに対して特に有効なワクチンがない病原体、または通常のワクチンがそれに対して完全に有効でない病原体を含む。HIV、(A型、B型およびC型)肝炎、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア(Giardia)、マラリア、リーシュマニア(Leishmania)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0143】
TIM-3抗体の治療可能な感染した病原性ウイルスのいくつかの例は、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、CMV、EpsteinBarrウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイスル、呼吸器合抱体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、虫媒性脳炎ウイルスおよびエボラウイルス(例えば、BDBV、EBOV、RESTV、SUDVおよびTAFV)を含む。
【0144】
本発明の方法により予防、治療、または管理可能な炎症性疾患の実例は、喘息(asthma)、脳炎(encephilitis)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease(COPD))、アレルギー性疾患(allergic disorders)、敗血性ショック(septic shock)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、未分化脊椎関節症(undifferentiated spondyloarthropathy)、未分化関節症(undifferentiated arthropathy)、関節炎(arthritis)、炎症性骨溶解(inflammatory osteolysis)、および慢性ウイルスまたは細菌の感染による慢性炎症を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0145】
従って、本発明の抗体およびその抗原結合断片は、炎症性および自己免疫疾患の治療において実用性を有する。
【0146】
自己免疫疾患
【0147】
免疫系の低減は、炎症、自己免疫疾患および移植抗宿主疾患(GvHD)の治療において所望されたものである。本発明の抗体を投与することにより治療できる自己免疫疾患の実例は、脱毛症(alopeciagreata)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、抗リン脂質症候群(antiphospholipid syndrome)、自己免疫アジソン病(auto-immune Addison’s disease)、腎上腺自己免疫疾患、自己免疫溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia)、自己免疫肝炎(autoimmune hepatitis)、自己免疫卵巣炎および睾丸炎(autoimmune oophoritis and orchitis)、自己免疫血小板減少症(autoimmune thrombocytopenia)、ベチェット病(Behcet’s disease)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)、心筋症(cardiomyopathy)、セリアックスプルー-皮膚炎(celiacsprue-dermatitis)、慢性疲労免疫機能障害症候群(chronic fatigue immune dysfunction syndrome(CFIDS))、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy)、Churg-Strauss症候群、瘢痕性類天疱瘡(cicatrical pemphigoid)、CREST症候群、寒冷凝集素病(cold agglutinin disease)、クローン病(Crohn’s disease)、ディスコルプス(discoidlupus)、特発性混合性クリオグロブリン血症(essential mixed cryoglobulinemia)、線維筋痛-線維筋炎(fibromyalgia-fibromyositis)、腎小球腎炎(glomerulonephritis)、Graves’病、Guillain-Barre、橋本甲状腺炎(Hashimoto’s thyroiditis)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis)、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocyto penic purpura(ITP))、IgA神経疾患、若年性関節炎(juvenile arthritis)、扁平苔癬(lichen planus)、エリテマトーデス(lupus erthematosus)、メニエール病(Meniere’s disease)、混合結合組織疾患(mixed connective tissue disease)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica(NMO))、1型または免疫により媒介された糖尿病(diabetes mellitus)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)、悪性貧血(pernicious anemia)、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)、多発軟骨炎(polychrondritis)、多腺体症候群(polyglandular syndromes)、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica)、多発性筋炎(polymyositis)および皮膚筋炎(dermatomyositis)、原発性アガンマグロブリン血症(primary agamma globulinemia)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis)、乾癬(psoriasis)、乾癬関節炎(psoriatic arthritis)、レイノールド現象(Raynauld’s phenomenon)、ライター症候群(Reiter’s syndrome)、関節リウマチ(Rheumatoid arthritis)、サルコイドーシス(sarcoidosis)、強皮症(scleroderma)、Sjogren’s症候群、スティッフパーソン症候群(stiff-mansyndrome)、全身性エリテマトーデス(systemic lupusery thematosus)、エリテマトーデス(lupus erythematosus)、高安動脈炎(takayasu arteritis)、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎(temporal arteristis/giant cell arteritis)、横断性脊髄炎(transverse myelitis)、潰瘍性結腸炎(ulcerative colitis)、ブドウ膜炎(uveitis)、脈管炎(vasculitides)(例えば、疱疹状皮膚炎および血管炎(dermatitis herpetiformis and vasculitis))、白斑(vitiligo)およびウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis)を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0148】
検出方法およびキット
【0149】
いくつかの態様において、本発明は、TIM-3のサンプル(例えば、生物サンプル、例えば、血液、血清、精液、または尿、または組織生検サンプル(例えば、過度増殖性または癌性病巣に由来する))における存在またはそのレベルを(例えば、体外または体内で)検出する方法を提供する。該方法は、評価(例えば、監視対象における本発明に係る疾患(例えば、免疫病症、癌、または感染性疾患)の治療または進展、その診断および/または分期)に使用できる。該方法は、(i)相互作用の発生が許容された条件で、サンプルと本発明に係る抗TIM-3抗体分子とを接触させ、または前記抗TIM-3抗体分子を対象に投与することと、(ii)抗体分子とサンプルとの間の複合物の形成が存在するか否かを検出することとを含んでもよい。複合物の形成は、TIM-3が存在することを表し、且つ、本発明に係る治療の適当性またはニーズを示すことができる。該方法は、例えば、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、抗体分子複合のビーズ、ELISA測定法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)に関してもよい。一般的には、体内および体外の診断方法に使用される抗TIM-3抗体分子は、検出信号を出力するように検出可能物質で直接または間接的にマークされる。適当な検出可能物質は、様々な生物活性酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質を含む。
【0150】
別の態様において、本発明は、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を含むキットを提供する。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、検出可能なマーカーを有する。1つの好ましい実施形態において、前記キットは、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を特異的に識別する第2抗体を更に含む。好ましくは、前記第2抗体は検出可能なマーカーを更に含む。
【0151】
本発明において、前記検出可能なマーカーは、蛍光、スペクトル、光化学、生物化学、免疫学、電気的、光学、または化学手段により検出可能な任意の物質であってもよい。特に好ましくは、このようなマーカーは、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法等)に適用できる。このようなマーカーは本分野でよく知られているものであり、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、塩基性ホスファターゼ、β-ガラクトシド酵素、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、蛍光染料(例えば、フルオロレッセンスイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリスリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット、またはシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750))、アクリチニウムエステル系化合物、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、金コロイドまたはカラーガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズのような熱測定マーカー、および上記マーカーにより修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)を結合するためのビオチンを含んでもよいが、これらに限定されない。該マーカーの使用を教示する特許は、米国特許3817837、3850752、3939350、3996345、4277437、4275149、および4366241(全てを引用により本発明に援用する)を含んでもよいが、これらに限定されない。本発明に含まれるマーカーは、本分野の従来方法により検出できる。例えば、放射性マーカーは、撮影フィルムまたはシンチレーションカウンターにより検出でき、蛍光マーカーは、光検出器により検出でき、発射する光を検出する。酵素マーカーは、一般的に酵素に基質を提供して酵素の基質に対する作用により生成した反応生成物を検出することにより検出され、熱測定マーカーは、着色マーカーを簡単に可視化することにより検出される。いくつかの実施形態において、異なる長さのリンカーにより上記検出可能なマーカーを本発明の組換えタンパク質に連結し、潜在的な立体障害を低減することができる。
【0152】
別の態様において、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片のキットの調製における使用を提供し、前記キットは、TIM-3のサンプルにおける存在またはそのレベルを検出するために用いられる。
【0153】
医薬組成物および組み合わせ療法
【0154】
本発明に係る抗体は、単独で使用でき、あるいは他の治療剤または治療方法と併用することができる。TIM-3抗体は、標準的な癌治療と組み合わせることもできる。
【0155】
いくつかの好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、別の薬学的活性剤を更に含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は抗腫瘍活性を有する薬剤である。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は感染を治療するための薬剤である。いくつかの好ましい実施形態において、前記別の薬学的活性剤は自己免疫疾患を治療するための薬剤である。
【0156】
いくつかの好ましい実施形態において、前記医薬組成物で、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、分離した成分または同一組成物の成分として提供される。従って、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片と前記別の薬学的活性剤とは、同時に、分離してまたは順次投与することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIGIT、VISTA、CTLA-4、OX40、BTLA、4-1BB、CD96、CD27、CD28、CD40、LAIR1、CD160、2B4、TGF-R、KIR、ICOS、GITR、CD3、CD30、BAFFR、HVEM、CD7、LIGHT、SLAMF7、NKp80、B7-H3およびその任意の組み合わせから選ばれる受容体またはリガンドと特異的に結合する第2抗体、または前記第2抗体をコードする核酸を更に含む。
【0158】
いくつかの特定の実施形態において、前記第2抗体はヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片を含む。
【0159】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物に含まれるヒトPD-1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片は、Nivolumab(ニボルマブまたはOpdivo(登録商標)またはオプジーボ)もしくはその抗原結合断片、およびPembrolizumab(ペンブロリズマブまたはKeytruda(登録商標)またはキイトルーダ)もしくはその抗原結合断片から選ばれる。
【0160】
いくつかの特定の実施形態において、前記第2抗体はヒトPD-L1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片である。いくつかの好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、ヒトPD-L1と結合する抗体もしくはその抗原結合断片を含む。
【0161】
いくつかの実施形態において、前記抗体もしくはその抗原結合断片は薬剤を調製するために用いられ、前記薬剤は、(1)体外または被験者(例えば、ヒト)の体内で免疫細胞活性を向上させることと、(2)被験者(例えば、ヒト)において免疫応答を増強することと、(3)被験者(例えば、ヒト)において癌を治療することと、(4)被験者(例えば、ヒト)において感染性疾患を治療することと、(5)被験者(例えば、ヒト)において自己免疫疾患を治療することと、(6)(1)~(5)の任意の組み合わせとの少なくともいずれか1つに用いられる。
【0162】
いくつかの好ましい実施形態において、前記癌は、固形腫瘍、血液腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫のような骨髄腫)および転移性病巣から選ばれ、例えば、肺癌、鱗状細胞肺癌、メラノーマ、腎癌、乳癌、IM-TN乳癌、結腸直腸癌、白血病、または癌の転移性病巣を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0163】
いくつかの好ましい実施形態において、前記感染性疾患は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染および寄生虫感染から選ばれ、HIV、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、または敗血症を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0164】
いくつかの好ましい実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、全身性エリテマトーデス、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫溶血性貧血、自己免疫血小板減少性紫斑病、インスリン依存性糖尿病、バセドウ病、重症筋無力症、自己免疫肝炎および多発性硬化症から選ばれる。
【0165】
誘導された抗体
【0166】
本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、誘導化を行うことができ、例えば、別の分子(例えば、別のポリペプチド、またはタンパク質)に連結され得る。通常、抗体もしくはその抗原結合断片の誘導化(例えば、マーカー)は、TIM-3(特に、ヒトTIM-3)に対する結合に悪影響を与えない。従って、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、このような誘導化の形式も含むことを意図する。例えば、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を、別の抗体(例えば、二重特異性抗体を形成する)、検出試薬、薬用試薬、および/または媒介可能抗体、または抗原結合断片が別の分子と結合するタンパク質またはポリペプチド(例えば、アビジン、またはポリヒスチジンタグ)のような1つまたは複数の他の分子基に機能的に(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有接続、または他の方式により)連結することができる。
【0167】
1タイプの誘導化抗体(例えば、二重特異性抗体)は、2つまたは多くの抗体(同一タイプまたは異なるタイプに属する)をクロス連結することにより生成されたものである。二重特異性抗体の取得方法は本分野で公知のものであり、その実例は、化学架橋法、細胞工学法(ハイブリドーマ法)、または遺伝子工学法を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0168】
別のタイプの誘導化抗体は、治療性部分に連結された抗体である。本発明に係る治療性部分は、細菌毒素、細胞毒性薬剤、または放射性毒素であり、その実例は、タキソール(taxol)、サイトカラシンB(cytochalasin B)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、ビンクリスチン(vincristine)、または他の抗代謝物、アルキル化剤、抗生物質、または抗有糸分裂薬を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0169】
別のタイプの誘導化抗体は、マークされた抗体である。例えば、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片を検出可能なマーカーに連結することができる。本発明に係る検出可能なマーカーは、蛍光、スペクトル、光化学、生物化学、免疫学、電気的、光学、または化学手段により検出可能な任意の物質であってもよい。このようなマーカーは本分野でよく知られているものであり、その実例は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、塩基性ホスファターゼ、β-ガラクトシド酵素、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ、等)、放射性核種(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、蛍光染料(例えば、フルオロレッセンスイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリスリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット、またはシアニン色素誘導体(例えば、Cy7、Alexa 750))、アクリチニウムエステル系化合物、磁気ビーズ(例えば、Dynabeads(登録商標))、金コロイドまたはカラーガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズのような熱測定マーカー、および上記マーカーにより修飾されたアビジン(例えば、ストレプトアビジン)を結合するためのビオチンを含んでもよいが、これらに限定されない。該マーカーの使用を教示する特許は、米国特許3817837、3850752、3939350、3996345、4277437、4275149、および4366241(全てを引用により本発明に援用する)を含んでもよいが、これらに限定されない。上記検出可能なマーカーは、本分野の従来方法により検出できる。例えば、放射性マーカーは、撮影フィルムまたはシンチレーションカウンターにより検出でき、蛍光マーカーは、光検出器により検出でき、発射する光を検出する。酵素マーカーは、一般的に酵素に基質を提供して酵素の基質に対する作用により生成した反応生成物を検出することにより検出され、熱測定マーカーは、着色マーカーを簡単に可視化することにより検出される。いくつかの実施形態において、このようなマーカーは、免疫学的検出(例えば、酵素結合免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法等)に適用できる。いくつかの実施形態において、異なる長さのリンカー(linker)により上記検出可能なマーカーを本発明の抗体もしくはその抗原結合断片に連結し、潜在的な立体障害を低減することができる。
【0170】
また、本発明の抗体もしくはその抗原結合断片は、更に、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル基、またはエチル基、またはグリコシル基のような化学基で誘導することができる。これらの基は、血清半減期nを増加するような抗体の生物学的特性の改善に使用できる。
【0171】
モノクローナル抗体の調製
【0172】
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、様々な技術により調製でき、通常のモノクローナル抗体の方法学、例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、1975、256:495に記載の標準体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む。体細胞ハイブリダイゼーション規程が好ましいが、原則として、Bリンパ球のウイルスまたは癌性転換のようなモノクローナル抗体を調製する他の方法を使用してもよい。
【0173】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物システムはマウス科動物システムである。マウスでハイブリドーマを調製することは非常に完備した規程である。融合に用いられる免疫された脾細胞を分離する免疫形態および技術は、本分野で知られているものである。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合規程も知られている。
【0174】
抗体もしくはその抗体断片を発現するために、標準分子生物学技術(例えば、PCR拡張、またはターゲット抗体を発現するハイブリドーマを用いるcDNAクローン)によりコードされた部分または全長軽鎖および重鎖のDNAを取得することができ、且つ、DNAを発現ベクターに挿入し、標的遺伝子と転写および翻訳調整制御された配列とを操作可能に連結し、宿主細胞をトランスフェクションして発現させることができ、発現宿主は、真核発現ベクターが好ましく、CHOおよびその誘導細胞系のような哺乳動物細胞がより好ましい。
【0175】
抗体は、公知の技術、例えば、タンパク質Aまたはタンパク質Gを用いるアフィニティクロマトグラフィーにより精製することができる。あるいは、特異性抗原もしくはそのエピトープをカラムに固定して免疫アフィニティクロマトグラフィーにより免疫特異性抗体を精製することができる。免疫グロブリンの精製は、例えば、D.Wilkinsonにより論議された(The Scientist、The Scientist、Inc.、Philadelphia PA、Vol.14、No.8(2000年4月17日)、25~28ページに公開されている)。
【0176】
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上記調製されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製できる。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、ターゲットマウスハイブリドーマから取得でき、且つ、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように標準分子生物学技術を用いて工学的改造を行う。例えば、キメラ抗体を作成するために、本分野の従来方法を用いてマウス可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、Cabillyらの米国特許No.4,816,567を参照)。VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に操作可能に連結することにより、VH領域をコードする分離したDNAを全長重鎖遺伝子に変換する。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は本分野で知られているものであり(例えば、Kabat、E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91-3242を参照)、これらの領域を含むDNA断片は、標準PCR拡張により取得できる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgD定常領域であってもよいが、最も好ましくはIgG1、またはIgG4定常領域である。
【0177】
ヒト化抗体を作成するために、本分野の従来方法を用いてマウスCDR領域をヒト由来フレーム配列に挿入することができる(Winterの米国特許No.5,225,539およびQueenらの米国特許Nos.5,530,101、5,585,089、5,693,762および6,180,370を参照)。更に、遺伝子組み換え動物を利用することもでき、例えば、HuMAbマウス(Medarex、Inc.)が、転位のないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のマイクロ遺伝子座(miniloci)に加え、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を失活させる標的突然変異(例えば、Lonbergら(1994)Nature368(6474):856~859を参照)を含み、または、ヒト重鎖遺伝子組み換えおよびヒト軽鎖トランスフェクション色体を携帯する「KMマウスTM」(特許WO02/43478を参照)が抗体ヒト化改造を行う。他の抗体ヒト化改造の方法はファージディスプレイ法を含む。
【0178】
以下の実施例により本発明について更に説明し、前記実施例は、更に限定するものと解釈すべきではない。ここで、明細書全体に引用される全ての図面および全ての参照文献、特許、および公開特許の出願内容を、参照として本発明に明確に援用する。
【実施例】
【0179】
実施例1:抗ヒトTIM-3マウス由来モノクローナル抗体の調製
【0180】
50μgのヒトTIM-3抗原((安源医薬(上海)有限公司、通常方法で発現したTIM-3であり、細胞外ドメインにHisタグが付き、タンパク質配列:Uniport entry号Q8TDQ))を、完全フロイントアジュバントで十分に乳化した後、多点免疫方式で雄性Balb/Cマウスを免疫し、免疫周期が3週間に1回であった。3回目の免疫後の10日目に、尾静脈から採血し、ELISAで血漿の抗ヒトTIM-3抗体の滴度をテストし、マウス免疫応答程度を監視し、その後、融合の3日前に、生成した抗ヒトTIM-3抗体の滴度が最も高いマウスに対して免疫を1回強化した。3日後に、マウスを殺して該マウスの脾臓を取り出してマウスの骨髄腫Sp2/0細胞株と融合した。2×108個のSp2/0細胞と2×108個の脾細胞とを混合し、50%のポリエチレングリコール(分子量1450)および5%のジメチルスルホキシド(DMSO)の溶液内で融合させた。Iscove培地(10%のウシ胎児血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.1mMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、および16μgのチミジンを含む)で脾臓細胞数を5×105/mLに調整し、0.3mLで96孔培養プレートの孔内に入れ、37℃、5%のCO2のインキュベータ内に置いた。10日間培養した後、高スループットELISA法で上清における抗体とTIM3-Hisとが高親和結合したクローンをそれぞれ検出した。更に、上記モノクローナル抗体の孔内融合細胞をサブクローン化した。更に、HTRFの方法により、ヒトGalectin-9と競合してTIM-3と結合した陽性孔をスクリーニングし(方法は、実施例5.6の抗TIM-3ヒト化抗体のTIM-3/Galectin-9結合に対する遮断のテストを参照)、ハイブリドーマ細胞株#22を取得した。
【0181】
10%のFCSを補充したRPMI 1640培地で特異性抗体を生成したクローンを培養した。細胞密度が約5×105個の細胞/mLに達すると、該培地を無血清培地に置き換えた。2~4日後に、培養した培地を遠心して培養物上清を収集した。タンパク質Gカラムで抗体を精製した。150mMのNaClでモノクローナル抗体の溶出液を透析した。0.2μmのフィルタで透析した溶液を濾過して除菌し、テスト待ちの精製したマウスモノクローナル抗体Mab22を取得した。
【0182】
実施例2:ELISA法によるマウス由来抗体とヒトTIM-3抗原との結合能力の測定
【0183】
ヒトTIM-3((安源医薬(上海)有限公司が発現したTIM-3であり、細胞外ドメインにHisタグが付き、タンパク質配列:Uniport entry号Q8TDQ))で酵素標識プレートを被覆し、室温で一晩培養した。被覆溶液を捨て、リン酸塩緩衝塩水(PBS)に溶解した脱脂乳で各孔を0.5時間閉鎖し、0.05%のツイン-20(Tween-20)を含むPBSで孔を洗浄した。その後、孔毎に50μLの精製した抗ヒトTIM-3マウス由来抗体Mab22を加え、室温で1時間インキュベートし、0.05%のツイン(Tween)20を含むPBSで孔を洗浄し、その後、孔毎に50μLのHRPでマークされた羊抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Laboratoryから購入)を検出抗体として加えた。
【0184】
結果は、
図1に示すように、マウス由来抗体Mab22およびヒトTIM-3は高い親和性を有し、EC
50は6.30ng/mLであった。
【0185】
実施例3:抗TIM-3マウス由来モノクローナル抗体のサブタイプの同定および可変領域の拡張
【0186】
抗体のサブタイプの同定:ハイブリドーマ細胞の培養上清を取り、IsoStripTMマウスモノクローナル抗体のサブタイプ同定キット(Santa Cruz Biotechnology、品番sc-24958)で抗体のサブタイプを同定した。マウスモノクローナル抗体Mab22のサブタイプは、IgG1(Kappa)型であると同定された。
【0187】
抗体の可変領域の拡張:候補ハイブリドーマ細胞#22を総数107個の細胞に培養し、1000rpmで10分間遠心して細胞を収集し、Trizolキット(Invitrogen)で総RNAを抽出し、逆転写キットSMARTer RACEで第1鎖cDNAを合成し、第1鎖cDNAを後続のテンプレートとしてハイブリドーマ細胞に対応する抗体可変領域のDNA配列を拡張した。サブタイプの同定結果に基づき、該抗体サブタイプの重鎖および軽鎖定常領域の配列を取得し、特異的なネスティッドPCRプライマーを設計し、該拡張反応に使用されるプライマー配列は抗体可変領域の第1フレーム領域は定常領域と相補的であった。通常のPCR方法を用いて標的遺伝子を拡張し、拡張した生成物を配列決定した後、ハイブリドーマクローン#22分泌抗体Mab22の重鎖可変領域の配列SEQ ID NO:1および軽鎖可変領域の配列SEQ ID NO:2を取得した。ハイブリドーマ細胞株#22は、既に2017年10月25日に中国典型培養物寄託センターに寄託された(受託番号CCTCC NO:C2017181)。
【0188】
実施例4:抗TIM-3マウスモノクローナル抗体のヒト化
【0189】
上記で取得されたMab22マウス由来抗体可変領域の配列に基づき、コンピュータ補助抗体の3次元モデリングおよび構造分析により抗体のヒト化改造を行った。CDR移植(CDR-Grafting)は、よく見られる抗体ヒト化方法であり、マウス由来抗体のFRをヒト由来抗体のFRに置き換えることにより、活性を保持して免疫原性を低減する目的を達成した。Discovery Studio分析ツールと合わせてCDR移植抗体のヒト化改造を行う方法は、主に以下のステップを含んだ。(1)抗体の3次元構造をモデリングした。(2)重要な残基を分析する。分子ドッキングを用いて可変領域およびその周辺のフレームアミノ酸配列を分析し、その空間立体結合方式を考察してCDR領域コンフォメーションの保持に極めて重要な残基を確定し、主に、1、2つのドメインの折り畳みに重要な作用を果たすVLとVHとの結合界面に位置する残基と、2、CDR領域に近く、且つタンパク質内部に埋められた残基と、3、CDR領域と直接な相互作用を有する残基との3種類を有し、相互作用は疎水相互作用/水素結合/塩橋を含んだ。(3)ヒト由来テンプレートを選択し、まず、各ハイブリドーマ細胞が分泌した抗体アミノ酸配列とヒト生殖系抗体アミノ酸配列とを比較し、相同性が高い配列を見つけ、次に、そのうちのMHC II(HLA-DR)との親和性が低いヒト生殖系(germline)抗体フレーム配列を選択し、その免疫原性を低減するという2つの条件を同時に満足する必要があった。(4)重要な残基の分析の逆接ぎ木に基づき、ヒト化抗体の配列を取得した。
【0190】
合計5つのヒト化抗体を取得し、それぞれAB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7であった。5つのヒト化抗体およびその親マウス由来抗体の可変領域のアミノ酸配列は表1に示すとおりである。
【0191】
【0192】
【0193】
図2は、5つのヒト化抗体とマウス由来抗体Mab22との重鎖可変領域のアミノ酸配列の並列比較を示す。
図3は、5つのヒト化抗体とマウス由来抗体Mab22とのの軽鎖可変領域のアミノ酸配列の並列比較を示す。可変領域において、相補性決定領域(CDRs)およびフレームワーク領域(FRs)は示すとおりであり、重鎖および軽鎖可変領域CDRはIMGT法で定義される。
【0194】
本発明で調製されたマウス由来モノクローナル抗体Mab22およびそれにより誘導された5つのヒト化抗体AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6、およびAB12S7の可変領域に含まれるCDR領域のアミノ酸配列は、表2に示すように、それぞれKabat、ChothiaおよびIMGT方法で定義される。
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
2本の重鎖および2本の軽鎖からなる全長抗体配列を取得するために、表1に示すVHおよびVL配列と抗体の重鎖定常領域(好ましくは、ヒトIgG1またはIgG4から選ばれる)および軽鎖定常領域(好ましくは、ヒトκ軽鎖から選ばれる)の配列とを通常の技術でステッチングするまたは組み立てる。例えば、一実施形態において、抗TIM-3抗体分子は表3に示す野生型ヒトIgG4の重鎖定常領域およびヒトκ軽鎖定常領域を含む。または、修飾されたヒトIgG4定常領域の配列を採用し、例えば、一実施形態において、表3に示すように、抗TIM-3抗体分子はEU番号に基づく228位目の突然変異(例えば、SがPに変化する)のヒトIgG4に含まれる。別の実施形態において、抗TIM-3抗体分子は野生型ヒトIgG1の重鎖定常領域およびヒトκ軽鎖定常領域を含む。または、修飾されたヒトIgG1定常領域の配列を採用し、例えば、表3に示すように、ヒトIgG1はEU番号に基づく297位目で置換(例えば、AsnをAlaに置換する)を含む。別の実施形態において、表3に示すように、ヒトIgG1はEU番号に基づく265位目で置換を含むか、EU番号に基づく329位目で置換を含むか、またはこの2種の置換(例えば、265位目でAspをAlaに置換する、および/または329位目でProをAlaに置換する)を含む。更なる実施形態において、表3に示すように、ヒトIgG1はEU番号に基づく234位目で置換を含むか、EU番号に基づく235位目で置換を含むか、またはこの2種の置換(例えば、234位目でLeuをAlaに置換する、および/または235位目でLeuをAlaに置換する)を含む。
【0199】
【0200】
【0201】
表4に示すように、ヒト化抗体AB12S3およびAB12S4は、EU番号に基づく228位目の突然変異(SがPに変化した)のヒトIgG4およびヒトκ軽鎖定常領域に含まれる。抗Tim-3による抗体の機能発揮の遮断にはADCCおよびCDC効果が必要としないため、AB12S3およびAB12S4の定常領域はヒトIgG4を優先的に選択するが、IgG4は半抗体を形成しやすく(Fab-armの交換が発生した)、従って、S228P改造を行うことにより、Fab-armの交換を低減することができる。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
実施例5:抗TIM-3ヒト化抗体の定性
【0207】
5.1抗TIM-3ヒト化抗体とヒトTIM-3との結合能力の測定
【0208】
通常のELISA方法を採用してヒト化抗体AB12S3およびAB12S4のヒトTIM-3((安源医薬(上海)有限公司が発現したTIM-3であり、細胞外ドメインにHisタグが付き、タンパク質配列:Uniport entry号Q8TDQ))抗原と結合する能力を測定し、具体的な方法は実施例2と同じであった。結果は
図4に示すように、ヒト化抗体AB12S3およびAB12S4は、対照抗体AB12S1(AB12S1可変領域の配列は、米国特許9605070における抗TIM-3抗体ABTIM3に由来し、本発明において、その重鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:46で、軽鎖のアミノ酸配列はSEQ ID NO:47である)と同じであり、いずれもヒトTIM-3抗原と特異的に結合することができた。一方、別の陰性対照としてのヒト化IgG非相関抗体は、ヒトTIM-3と結合できなかった。
【0209】
5.2抗TIM-3ヒト化抗体の親和性分析試験
【0210】
生物薄膜干渉技術(BLI)を用いて精製したヒト化抗体AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7と抗原との結合親和性定数を測定した(ForteBio Octet RED&QKシステム、PALL社)。抗ヒトIgG Fcのポリクローナル抗体は、アミノカップリング法によりCM5チップの表面に固定され、ヒト化抗体が流れてポリクローナル抗体と作用してチップの表面に捕獲され、抗原タンパク質を移動相とし、抗体の表面を流れてそれと相互作用した。得られたデータを処理し、Biacore T200の分析ソフトウェアを用いて1:1で結合したモデルで実験データをフィッティングし、フィッティングしたデータは実験データとほぼ重なり、結合および解離速度定数kaおよびkdを取得し、kdでkaを割って平衡解離定数KDを得た(表5を参照)。その結果、得られたヒト化抗体の親和性に明らかな損失がなく、候補抗体AB12S3、AB12S4、AB12S5、AB12S6およびAB12S7は、ヒトTIM-3との結合親和性がマウス抗Mab22との親和性にも相当し、KD値はいずれもpM級に達し、親マウスのモノクローナル抗体の親和性を良好に保留し、その免疫原性を大きく低減した。
【0211】
【0212】
5.3抗TIM-3ヒト化抗体のTm値の測定
【0213】
DSF(示差走査蛍光測定)方法で抗TIM-3抗体のTm値を測定した。具体的な実験ステップは以下のとおりであった。AB12S1、AB12S3およびAB12S4をPBSで1mg/mLに希釈し、12.5μLを取って5μLの40×SYPRO Orange dye(Life technologies社、品番4306737)および7.5μLのddH2Oを加えた。その後、上記サンプルをQ-PCRシステム(AB Applied Biosystems ABI、7500)に入れて反応させ、Q-PCRパラメータ設定は、Target(ROX)、プログラム(25℃、3min、1%の速度、95℃、95℃、2min)であった。
【0214】
結果は
図5に示すように、候補抗体AB12S3のTm値(67.89℃)および候補抗体AB12S4のTm値(66.61℃)は、対照抗体AB12S1(58.54℃)よりも少なくとも8℃高く、本発明で調製されたヒト化抗体AB12S3およびAB12S4がより優れた熱安定性を有することが明らかになった。
【0215】
5.4抗TIM-3ヒト化抗体の属種のクロス反応の測定
【0216】
通常のELISA方法を採用して抗TIM-3ヒト化抗体AB12S3と異なる属種のTIM-3抗原とのクロス反応性を測定した。
【0217】
具体的な実験ステップは以下のとおりであった。1μg/mL100μLのヒトTIM-3(安源医薬(上海)有限公司が発現したTIM-3であり、細胞外ドメインにHisタグが付き、タンパク質配列:Uniport entry号Q8TDQ)、サルTIM-3(北京Sino Biological有限公司、品番90312-C02H)、マウスTIM-3タンパク質(北京Sino Biological有限公司、品番51152-M08H)で酵素標識プレートを被覆し、室温で一晩培養した。被覆溶液を捨て、リン酸塩緩衝塩水(PBS)に溶解した脱脂乳で各孔を0.5時間閉鎖し、0.05%のツイン-20(Tween-20)を含むPBSで孔を洗浄した。その後、孔毎に50μLの精製したHRPマーカーのAB12S3抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、0.05%のツイン20(Tween-20)を含むPBSで5回洗浄し、100μLのTMBを対応する孔に入れ、室温で5分間発色した。50μLの2N H2SO4を加えて終了させ、プレートリーダにより450nmで数字を読み取った。結果をGraph Prismに導入し、EC50値を計算した。
【0218】
図6に示すように、結果により、AB12S3がヒトTIM-3およびサルTIM-3抗原と結合でき、マウスTIM-3抗原と結合しないことが示された。
【0219】
5.5抗TIM-3ヒト化抗体の特異性測定
【0220】
ヒトのTIM-3相同ファミリーにはTIM-1およびTIM-4タンパク質が更にあり、ELISA方法で抗TIM-3ヒト化抗体AB12S3がヒトTIM-3タンパク質と特異的に結合するか否かを検証した。
【0221】
具体的な実験ステップは以下のとおりであった。pH9.6の炭酸緩衝液でヒトTIM-1(北京Sino Biological有限公司、品番11051-H08H1)、ヒトTIM-3(北京Sino Biological有限公司、品番10390-H08H)、ヒトTIM-4(北京Sino Biological有限公司、12161-H08H)抗原を1μg/mLに希釈し、100μL/wellで酵素標識プレートを被覆し、4℃で一晩培養し、300μLのPBST1回洗浄し、2%のBSAを含む200μLのPBS溶液を加え、37℃で2時間閉鎖した。2%のBSAを含むPBST溶液でAB12S3を希釈し、10μg/mLを開始濃度とし、4倍に希釈し、合計11個の濃度勾配で、孔毎に100μLを対応する孔に入れ、37℃で2時間インキュベートした。300μLのPBSTで3回洗浄し、2%のBSAを含むPBS溶液を用いて1:10000でHRPでマークされた羊抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)を希釈し、孔毎に100μLを対応する孔に入れ、37℃で1時間インキュベートした。300μLのPBSTで5回洗浄し、孔毎に100μLのTMB発色液を対応する孔に入れ、室温で5分間発色し、その後、50μLの1M H2SO4溶液を加えて発色を終了させ、プレートリーダにより450nmで吸光度を測定し、結果をGraph Prismに導入してEC50値を計算した。
【0222】
図7に示すように、その結果、AB12S3がヒトTIM-3タンパク質と特異的に結合でき、ヒトTIM-1およびヒトTIM-4タンパク質と結合しないことが示された。
【0223】
5.6抗TIM-3ヒト化抗体のTIM-3/Galectin-9結合に対する遮断の検出
【0224】
HTRF方法は、均一時間解像蛍光技術の略称であった。該技術は、波長検出を用いて分子の結合作用を分析した。生物分子が相互作用する場合、2つの励起光620nmおよび665nmがあり、相互作用がない場合、620nmの励起光のみがあった。
【0225】
TIM-3/Gal9結合測定キット(Cibio、品番:63ADK000CTLPEF)を採用して抗TIM-3ヒト化抗体のTIM-3/Galectin-9結合に対する遮断作用を測定し、取扱説明書の方法に従って操作した。具体的な実験ステップは以下のとおりであった。AB12S1およびAB12S3抗体をPBSで10000ng/mL、1000ng/mLおよび100ng/mL、10ng/mLおよび1ng/mLにそれぞれ希釈した。384孔蛍光プレートを取り、孔毎に4μLの5nM TIM3-Euk溶液を入れ、更に2μLの希釈された抗体を入れ、続いて40nMのTag-Gal9を入れ、孔毎に4μLで、室温で5分間インキュベートした。最後に、Anti-Tag-XL665を加え、孔毎に4μLで、プレート封止膜で384孔プレートを閉鎖し、室温で1時間インキュベートした。多機能プレートリーダを用いて665nm/620nmでの蛍光値を読み取り、結果をGraph Prismに導入してIC50値を計算した。
【0226】
図8に示すように、その結果、AB12S3抗体(IC
50=202.4ng/mL)のTIM-3/Galectin-9結合に対する遮断能力がAB12S1抗体(IC
50=258.7ng/mL)よりも強いことが示された。
【0227】
5.7抗TIM-3ヒト化抗体のTIM-3/PtdSer結合に対する遮断のテスト
【0228】
競合ELISAの方法を採用し、TIM-3ヒト化抗体のTIM-3/PtdSer結合に対する遮断を検出した。
【0229】
具体的な実験ステップは以下のとおりであった。pH9.6の炭酸緩衝液でPtdSer(Sigma社から購入され、品番:P6641)を1.3μMに希釈し、100μL/孔で酵素標識プレートに加え、4℃で一晩培養し、300μLのPBSTで1回洗浄し、2%のBSAを含む100μLのPBS溶液を加え、37℃で2時間閉鎖した。2%のBSAを含むPBST溶液でAB12S1、AB12S3(開始濃度が800μg/mLであり、3倍の勾配で希釈し、合計7つの濃度勾配となる)およびTIM-3(終濃度6μg/mL)をそれぞれ希釈し、1:1で混合した後、孔毎に100μL加え、37℃で2時間インキュベートした。300μLのPBSTで3回洗浄し、2%のBSAを含むPBST溶液を用いて1:4000でHRPでマークされたanti-6×His tag mAb(Biolegend社から購入され、品番:652504)を希釈し、孔毎に100μL加え、37℃で1時間インキュベートした。300μLのPBSTで5回洗浄し、100μLのTMB溶液を対応する孔に入れ、室温で20分間発色し、50μLの1M H2SO4溶液を加えて発色を終了させ、プレートリーダにより450nmで吸光度を読み取り、結果をGraph Prismソフトウェアに導入しtIC50値を計算した。
【0230】
図9に示すように、その結果、AB12S3(IC
50=1.33μg/mL)のTIM-3/PtdSer結合に対する遮断能力がAB12S1(IC
50=3.20μg/mL)よりも強いことが示された。
【0231】
5.8抗TIM-3ヒト化抗体のCD8+T細胞の活性化に対する増強
【0232】
静止状態にあるT細胞が活性化された後、細胞膜の表面にCD69が発現し、FACSにより抗Tim-3抗体の存在下で超抗原SEBがCD8+T細胞を刺激した後のCD69の発現を測定し、抗TIM-3抗体のTリンパ球機能に対する増強作用を評価した。密度勾配遠心法(LymphoprepTM、ヒトのリンパ球分離液、STEMCELL社)を採用してヒト末梢血から新鮮な単核球(ヒトPBMC細胞)を取得し、T細胞選別試薬(STEMCELL社、#19053)を用いて高純度のCD8+T細胞を取得した。取得したCD8+T細胞を、1ng/mLのブドウ球菌腸毒素B(SEB)を含む培液で再懸濁し、細胞密度を5.6×105/mLに調整し、孔毎に180μL(105細胞/孔)で96孔の細胞培養プレートに接種した。抗体AB12S3およびAB12S4を10倍の勾配で希釈した後、孔毎にそれぞれ20μL加え、またAB12S1を陽性対照とし、各サンプルは合計100μg/mL、10μg/mL、1μg/mLという3つ濃度を有した。各抗体の各濃度は3つの孔に対応した。48時間後に、細胞を収集し、FACSでCD8+T細胞の表面のCD69の発現を検出し、方法は以下のとおりであった。300gの細胞を5min遠心してから上清を捨て、2%のBSAを含むPBSを用いて200μL/孔で洗浄し、遠心後に100μL/孔で再懸濁し、CD69抗体(BD社、#555531)を2.5μL/孔で加え、4℃で1時間インキュベートした後に遠心し、2%のBSAを含む100μLのPBSで再懸濁した後、機器でCD69の発現を検出した。
【0233】
結果は
図10に示すように、AB12S1およびAB12S4に対し、AB12S3で処理した場合のCD8
+T細胞の表面のCD69の発現は著しく向上した。
【0234】
5.9抗TIM-3ヒト化抗体の体外でT細胞を刺激して腫瘍細胞を殺傷する能力
【0235】
ヒト非小細胞肺癌細胞株HCC827細胞(中国科学院細胞ライブラリ)およびヒト乳腺導管癌細胞株HCC1954細胞(中国科学院細胞ライブラリ)をそれぞれ96孔細胞培養プレートに接種し、濃度5μg/mLのヒト化TIM-3抗体AB12S3を加え、分離された健康なボランティアの血清IgGを陰性対照とし、その後、4:1のMOI(multiplicity of infection)で抗CD3抗体(OKT3)およびインターロイキン-2(Sino Biological社、11848-HNAY1)の活性化したT細胞を加え、24時間培養し、細胞増殖試薬CCK-8(東仁化学)を用いて細胞の生存状況を測定し、T細胞を追加しない培養孔(即ち、ターゲット細胞群)の生存率を100%と記し、細胞の生存状況を測定し、且つ、以下の式で殺傷率(%)を計算した。
[式1]
殺傷率%=(1-テスト群OD値/ターゲット細胞群OD値)×100%
SPSSを用いてAB12S3群およびヒトIgG群の3つの複数の孔の差異を統計し、p値を計算した。
【0236】
結果は
図11に示すように、AB12S3群はHuIgG群と比べ、ターゲット細胞HCC827の殺傷率が59.2%から75.8%に上昇し、殺傷率が27.9%向上し、p<0.01であった。ターゲット細胞HCC1954に対する殺傷率が42.4%から60.8%に上昇し、殺傷率が43.3%向上し、p<0.01であった。実験により、抗TIM-3ヒト化抗体AB12S3がT細胞の腫瘍細胞に対する殺傷能力を著しく増強することができることが示された。
【0237】
5.10抗TIM-3ヒト化抗体のhTIM3遺伝子組み換えマウスの体内での薬効の検出
【0238】
マウス皮下腫瘍モデルを用いてAB12S3抗体の薬効を検証し、遺伝子組み換えマウスモデルを用いて評価した。6~7週齢のヒトTim-3雄性遺伝子組み換えマウス(Beijing Biocytogen社)の1匹毎に0.1mL(5×105個)のMC38細胞を皮下注射し、腫瘍体積が100mm3程度に達すると、ランダムに群を分け、各群に5匹で、陰性対照群(生理食塩水)、10mg/kgのAB12S1抗体群、10mg/kgのAB12S3抗体群という3群に分けた。投与方式は腹腔内投与であり、3日に1回、合計6回で、腫瘍体積を測定した。
【0239】
結果は、
図12に示すように、陰性対照群と比較し、AB12S3抗体は顕著な腫瘍成長を抑制する機能を有したが、対照抗体AB12S1は顕著な腫瘍抑制効果がなかった。
【0240】
5.11抗TIM-3ヒト化抗体のSEBがPBMCを刺激してIFN-γを分泌することに対する促進作用
【0241】
TIM-3は、CD8
+T細胞、CD4
+T細胞、Th1細胞等のような活性化したT細胞で発現でき、抗TIM-3抗体は、TIM-3と結合してTIM-3の活性を抑制することにより、最終的にIFN-γの分泌を促進した。本実施例はSEBを用いてPBMC(Tリンパ球等を含む)を刺激し、IFN-γの分泌を検出指標として抗TIM-3抗体の活性を検出した。ヒト(ドナーAおよびドナーB)末梢血から新鮮な単核球(PBMC細胞)を取得した後、PBMCを96孔プレートに接種し、1ng/mlのSEB溶液および異なる濃度のAB12S3を加え、対照抗体AB12S1と37℃、5%のCO2のインキュベータで72hインキュベートした。作用が終了した後、上清を吸い取り、IFN-γ検出キットで上清内のIFN-γの含有量を検出した。
図13および14に示すように、AB12S3は、SEBがPBMCを刺激してIFN-γを分泌する活性を著しく促進し、且つ、対照抗体AB12S1よりも強かった。
【0242】
5.12抗TIM-3ヒト化抗体の混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン分泌に対する影響
【0243】
CD14磁気ビーズ選別キットでドナーAおよびドナーBのPBMCからCD14
+単核球を選別した後、GM-CSFおよびrhIL-4で7日間誘導し、成熟した樹状細胞(DC)に分化させた。CD4
+T細胞磁気ビーズ選別キットでPBMCからCD4
+T細胞を選別し、その後、CD4
+T細胞と成熟したDC細胞とを混合し、異なる濃度のAB12S3を加え、単一薬剤またはOPDIVO(登録商標)併用群(OPDIVO(登録商標)の濃度はいずれも0.02μg/mlである)を設け、37℃のインキュベータに入れて5日間作用した。作用が終了した後、上清を吸い取り、IFN-γ検出キットで上清内のIFN-γの含有量を検出した。AB12S3、PD-1抗体OPDIVO(登録商標)、AB12S3とPD-1抗体OPDIVO(登録商標)との併用のMLRにおけるIFN-γの分泌に対する作用を検出し、
図15および16に示すように、AB12S3とOPDIVO(登録商標)との併用はMLRにおけるIFN-γの分泌に対して協同促進作用を有した。
【0244】
本発明で言及された全ての文献は、それぞれの文献が参照として単独で引用されるように、いずれも参照として本願に引用される。また、本発明の上記内容を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更または修正を行うことができ、これらの等価形態も同様に本願の付属の特許請求の範囲により限定される範囲内に含まれることが理解すべきである。
【配列表】