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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】水着
(51)【国際特許分類】
   A41D 7/00 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
A41D7/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530646
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025845
(87)【国際公開番号】W WO2021006150
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019126218
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】水口 愛
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓之
(72)【発明者】
【氏名】富村 真司
(72)【発明者】
【氏名】亀井 美予子
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-105477(JP,A)
【文献】特開2009-293145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性生地で構成されており、着用時に少なくとも臀部及び腹部を覆う水着であって、
腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部と、
左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように配置されており、かつ腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯を有することを特徴とする水着。
【請求項2】
第1補強帯は、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るように配置されている請求項1に記載の水着。
【請求項3】
第1緊締部は、二重生地で構成されている請求項1又は2に記載の水着。
【請求項4】
第1補強帯は、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の水着。
【請求項5】
前記2本の第1補強帯の交点は、肋骨の下縁から上前腸骨棘の下縁までの間に位置する請求項1~4のいずれか1項に記載の水着。
【請求項6】
前記2本の第1補強帯の交点からの水平距離が5cmである部位における衣服圧は、22hPa以上である請求項1~5のいずれか1項に記載の水着。
【請求項7】
前記2本の第1補強帯の交点からの垂直距離が7cmである部位における衣服圧は、1.5hPa以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の水着。
【請求項8】
左右のそれぞれにおいて、臀部及び少なくとも大腿部の一部を覆うように配置されている第2緊締部を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の水着。
【請求項9】
第2緊締部は、二重生地で構成されている請求項8に記載の水着。
【請求項10】
左右のそれぞれにおいて、臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本以上の第2補強帯が互いに交差するように配置されており、前記2本以上の第2補強帯の交点は、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置する請求項1~9のいずれか1項に記載の水着。
【請求項11】
前記2本以上の第2補強帯の交点は、ハムストリングスの一部を覆う領域に位置する請求項10に記載の水着。
【請求項12】
競泳用水着である請求項1~11のいずれかに記載の記載の水着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時に少なくとも着用者の臀部及び腹部を覆う水着に関する。
【背景技術】
【0002】
水泳、特に競泳においては、水の抵抗を低くした水着が求められる。水の抵抗としては、身体形状に依存する形状抵抗などがある。特許文献1には、水泳時の腰や脚の位置が上半身の位置より下がることに起因する形状抵抗を、大臀筋及びハムストリングスの一部を覆う領域に緊締部を設けることで抑制した水着が記載されている。特許文献2には、大腿部領域の外側に沿って、臀部領域まで延びてから、臀部領域から内向きに上臀部領域を通って水着の中心線の方に延びる張力バンドを備えることで、適切な体位を保てるように補助する性能を高めた水着が提案されている。特許文献3には、張力の異なる素材を体幹の前部のX構造に隣接するように配置することで体幹をサポートした水着が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-91894号公報
【文献】特表2017-525864号公報
【文献】国際公開公報2017/144940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3に記載の水着の場合、水泳の際の腹部の落ち込みを抑制する効果が不充分であった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するため、水泳の際の腹部の落ち込みを抑制し、フラットな姿勢をサポートする水着を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、伸縮性生地で構成されており、着用時に少なくとも臀部及び腹部を覆う水着であって、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部と、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように配置されており、かつ腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯を有することを特徴とする水着に関する。
【0007】
本発明の水着において、第1補強帯は、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るように配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明の水着において、第1緊締部は、二重生地で構成されていてもよい。また、本発明の水着において、第1補強帯は、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成されていてもよい。
【0009】
本発明の水着において、前記2本の第1補強帯の交点は、肋骨弓の下縁から上前腸骨棘の下縁までの間に位置することが好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの水平距離が5cmである腹部における衣服圧は、20hPa以上であることが好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの垂直距離が7cmである腹部における衣服圧は、1.5hPa以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の水着は、左右のそれぞれにおいて、臀部及び少なくとも大腿部の一部を覆うように配置されている第2緊締部を有することが好ましい。
【0011】
本発明の水着の左右のそれぞれの臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本以上の第2補強帯が互いに交差するように配置されており、前記2本以上の第2補強帯の交点は、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置することが好ましい。前記2本以上の第2補強帯の交点は、ハムストリングスの一部を覆う領域に位置することがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、水泳の際の腹部の落ち込みを抑制し、フラットな姿勢をサポートする水着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態の水着(オールインワン女子用ハーフスパッツ型)の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。
図2図2は本発明の一実施形態の水着(オールインワン女子用ハーフスパッツ型)の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。
図3図3は本発明の一実施形態の水着(女子用ワンピースタイプ)の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。
図4図4は本発明の一実施形態の水着(女子用ワンピースタイプ)の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。
図5図5は下半身の背部の膝から腰部までの部分的模式図であり、2本以上の第2補強帯の交点の位置を示す。
図6図6は比較例2の水着(オールインワン女子用ハーフスパッツ型)の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、上述した課題を解決するために検討を重ねた。その結果、腹部を覆う領域に第1緊締部及び2本の第1補強帯を設けることで、腹部に対する圧力を高め、水泳の際の腹部の落ち込みを抑制し、フラットな姿勢をサポートすることができることを見出した。具体的には、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部により、腹部に面圧をかけることで腹圧が高まり、フラットな姿勢をサポートすることができる。併せて、腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯が、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように配置されていることにより、第1緊締部と相乗的に腹圧を効果的に高めるため、より効果的にフラットな姿勢をサポートすることができる。同等のサポート効果を得る際に、第1緊締部のみの場合に比べて、第1緊締部及び第1補強帯を併用した方が、相乗作用により、効果的に腹圧を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい。特に、該水着を着用した場合、各種競泳項目においてタイムが速くなりやすく、競泳用水着として好適である。
【0015】
本発明の1以上の実施形態の水着は、着用時に少なくとも臀部及び腹部を覆う水着であればよく、その形状は特に限定されない。ワンピースタイプ、オールインワンタイプ(ハーフスパッツ型、ロングスパッツ型)、フルボディタイプ等のいずれであってもよい。袖なしでもよく、袖ありでもよい。また、本発明の水着は、特に限定されないが、着用性の観点から、バックホールを有することが好ましい。
【0016】
本発明の1以上の実施形態において、伸縮性生地とは、生地の体長方向及び/又は身幅方向における伸長率が0%を超えることを意味する。
【0017】
本発明の1以上の実施形態において、緊締部は、それに隣接している他の部分より緊締力が高いことを意味する。具体的には、本発明において、緊締部は、それに隣接している他の部分より体長方向及び/又は身幅方向(周方向とも称される。)の伸長率が高い、或いは、体長方向及び/又は身幅方向の引張弾性率が高い。
【0018】
本発明の1以上の実施形態において、生地の伸長率は、JIS L 1096 8.14.1 A法(荷重17.6N、引張速度200mm/min)に基づいて測定するものである。
【0019】
本発明の1以上の実施形態において、引張弾性率は、JIS L 1096 8.14.A法に基づいて、測定算出することができる。具体的には、生地片を幅5cm、長さ10cmになるように引張試験機に固定し、5%伸長時の応力の傾きから引張弾性率(N/mm2)を求める。生地片の長さは、測定方向と一致する方向のサイズを意味する。例えば、体長方向の引張弾性率を測定する場合、生地片の長さは、生地片の体長方向のサイズを意味し、身幅方向の引張弾性率を測定する場合、生地片の長さは、生地片の身幅方向のサイズを意味する。
【0020】
本発明の1以上の実施形態において、水着を構成する伸縮性生地としては、特に限定されず、通常水着に用いられる伸縮性生地を用いることができる。例えば、弾性糸を含むワンウェイ又はツーウェイの織物或いは弾性糸を含むワンウェイ又はツーウェイの編物が好ましい。前記弾性糸は、ポリウレタン系弾性糸及びポリエステル系弾性糸からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。ストレッチ性が高く、スポーツ衣料に適しているからである。前記弾性糸は、ベアヤーン(裸糸)として、非弾性糸(リジッド糸)と引きそろえて使用してもよいし、又は表面にポリエステル繊維もしくはナイロン繊維が被覆されたカバードヤーンとして使用してもよい。また、前記伸縮性生地は、二重生地であってもよい。
【0021】
前記伸縮性生地は、目付が50g/m2以上400g/m2以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは80g/m2以上300g/m2以下の範囲であり、さらに好ましくは100g/m2以上200g/m2以下の範囲である。この範囲であれば透けなどの問題を起こさず、審美性に適しており、また重量感もなく着用性に優れる。
【0022】
前記伸縮性生地は、特に限定されないが、例えば、着用性及びフィット性の観点から、体長方向の伸長率が15%以上75%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上65%以下であり、さらに好ましくは25%以上55%以下である。また、水着を構成する伸縮性生地は、特に限定されないが、例えば、着用性及びフィット性の観点から、身幅方向の伸長率が30%以上75%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以上65%以下である。
【0023】
本発明の1以上の実施形態において、第1緊締部は、特に限定されないが、所定の緊締力を得られやすい観点から、二枚の生地を重ね合せた二重生地で構成されていることが好ましい。具体的には、緊締部以外の他の部分を構成する第1生地に第2生地を重ね合せた二重生地であってもよい。二枚の生地の端部を接着剤で貼り合せることで二重生地とすることができる。第1生地及び第2生地は、繊維構成や伸長率等が同じ生地であってもよく、異なる生地であってもよい。第2生地は、第1生地の裏側に配置されてもよく、第1生地の表側に配置されてもよい。
【0024】
第1緊締部は、腹部に対する面圧を高めやすく、かつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、体長方向の伸長率が10%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上45%以下であり、さらに好ましくは10%以上40%以下である。また、第1緊締部は、腹部に対する面圧を高めやすく、かつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、身幅方向の伸長率が20%以上70%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上60%以下である。
【0025】
前記2本の第1補強帯は、左右対称的に配置されており、正面から見ると略X字状の構造になっている。より効果的に腹部に対する圧力を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、前記2本の第1補強帯の交点は、肋骨弓の下縁から上前腸骨棘までの間に位置することが好ましく、肋骨弓の下縁から腸骨陵までの間に位置することがより好ましい。
【0026】
第1補強帯は、腹部においては、第1緊締部と重なっている。第1緊締部との相乗効果をより高める観点から、上背部においては、第1緊締部と重なるか、或いは、第1緊締部の周縁部に配置されていることが好ましい。
【0027】
第1補強帯は、より効果的に腹圧を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るように配置されていることが好ましい。
【0028】
第1補強帯は、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成してもよい。具体的には、水着を構成する伸縮性生地上に、テープ状の接着剤等の接着剤を貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、テープ状の伸縮性生地をテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、張力テープをテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、張力テープをテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せた後、その上からテープ状の伸縮性生地をテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよい。
【0029】
より効果的に腹圧を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、第1補強帯の長手方向の伸長率は、0%以上35%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上30%以下である。具体的には、テープ状の接着剤、テープ状の伸縮性生地又は張力テープの長手方向の伸長率は、20%以上65%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上60%以下である。
【0030】
第1補強帯は、例えば、表面摩擦を低減する観点から、幅が5mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは10mm以上20mm以下である。具体的には、テープ状の接着剤、テープ状の伸縮性生地及び張力テープは、例えば、表面摩擦を低減する観点から、いずれも、幅が5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。
【0031】
前記接着剤は、ホットメルト接着剤であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、特に限定されず、例えば、シートタイプ、不織布タイプ、液状タイプなどが挙げられる。シートタイプ及び不織布タイプは、所定の幅になるようにテープ状にカットして、第1補強帯を設ける箇所に配置した後に加熱すればよい。液状タイプは、第1補強帯を設ける箇所に所定の幅になるようにテープ状に塗布した後に加熱すればよい。
【0032】
前記テープ状の伸縮性生地としては、水着を構成する伸縮性生地として上記で列挙したものを所定の幅になるようにテープ状にカットしたものを適宜用いることができる。
【0033】
前記張力テープとしては、特に限定されず、編物及び織物のいずれを用いてもよい。例えば、市販されている各種張力バンドを適宜選択して用いることができる。前記張力テープは、特に限定されないが、体長方向(張力テープの長手方向と一致する)の引張弾性率が5×10-5N/mm2以上30×10-5N/mm2以下であることが好ましく、10×10-5N/mm2以上20×10-5N/mm2以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明の1以上の実施形態の水着において、特に限定されないが、より効果的に腹部に対する圧力を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、前記2本の第1補強帯の交点における衣服圧は、25hPa以上であることが好ましく、30hPa以上であることがより好ましく、35hPa以上であることがさらに好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの水平距離(身幅方向)が5cmである部位(第1緊締部が配置されている。)における衣服圧は、22hPa以上であることが好ましく、24hPa以上であることがより好ましく、26hPa以上であることがさらに好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの垂直距離(体長方向)が7cmである部位(第1緊締部が配置されている。)における衣服圧は、1.5hPa以上であることが好ましく、2.0hPa以上であることがより好ましく、2.5hPa以上であることがさらに好ましい。
【0035】
また、本発明の1以上の実施形態の水着において、特に限定されないが、腹部における着用感を阻害しない観点から、前記2本の第1補強帯の交点における衣服圧は、50hPa以下であることが好ましく、48hPa以下であることがより好ましく、46hPa以下であることがさらに好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの水平距離(身幅方向)が5cmである部位(第1緊締部が配置されている。)における衣服圧は、32hPa以下であることが好ましく、30hPa以下であることがより好ましく、28hPa以下であることがさらに好ましい。また、前記2本の第1補強帯の交点からの垂直距離(体長方向)が7cmである部位(第1緊締部が配置されている。)における衣服圧は、4.2hPa以下であることが好ましく、4.1hPa以下であることがより好ましく、4.0hPa以下であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の1以上の実施形態において、衣服圧は、マネキン(サンクリエイト社製の女性用マネキン)を用い、測定部位に衣服圧センサーを取り付け、衣服圧測定用装置(イエムアイ・テクノ社製の「接触圧測定器 AMI3037-2(2B)」)で測定することができる。
【0037】
本発明の1以上の実施形態の水着は、下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートする観点から、さらに、左右のそれぞれにおいて、臀部及び少なくとも大腿部の一部を覆うように配置されている第2緊締部を有することが好ましい。より好ましくは、第2緊締部は、臀部及び大腿部全体を覆う。さらに好ましくは、第2緊締部は、水着の下端まで延びている。
【0038】
本発明の1以上の実施形態において、第2緊締部は、特に限定されないが、所定の緊締力を得られやすい観点から、二枚の生地を重ね合せた二重生地で構成されていることが好ましい。具体的には、緊締部以外の他の部分を構成する第1生地に第2生地を合せた二重生地であってもよい。二枚の生地の端部を接着剤で貼り合せることで二重生地とすることができる。第1生地及び第2生地は、繊維構成や伸長率等が同じ生地であってもよく、異なる生地であってもよい。第2生地は、第1生地の裏側に配置されてもよく、第1生地の表側に配置されてもよい。
【0039】
第2緊締部は、下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートしやすい観点から、体長方向の伸長率が10%以上50%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上45%以下であり、さらに好ましくは10%以上40%以下である。また、第2緊締部は、下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートしやすい観点から、身幅方向の伸長率が20%以上70%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上60%以下である。第1緊締部及び第2緊締部は、同じ生地で構成してもよく、異なる生地で構成してもよい。
【0040】
より効果的に下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートする観点から、本発明の1以上の実施形態の水着の左右のそれぞれにおいて、臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って互いに交差するように配置されている2本以上の第2補強帯を有し、前記2本以上の第2補強帯の交点は、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置することが好ましい。クロール、バタフライ、背泳ぎ及び平泳ぎ時等の各種水泳時に、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3を覆う領域の皮膚伸びが大きく、上述したように、第2緊締部を設けるとともに、体長方向(身長方向とも称される。)に沿って2本以上の補強帯が互いに交差するよう、かつ前記2本以上の補強帯の交点が水泳時の皮膚延びが大きい臀部のトップからハムストリングスの近位1/3までの領域に位置するように配置することで、より効果的に下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートすることができる。例えば、水泳時の大臀筋、中臀筋、小殿筋及びハムストリングスを含む股関節伸筋群、並びに半腱様筋、半腱膜筋、中臀筋(外側)、小殿筋(外側)及び大腿筋膜張筋を含む股関節内旋筋群の筋負担が軽減される。ハムストリングスは、大腿後面(下肢後面)にある大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋を合わせた呼び方である。本発明の1以上の実施形態において、「ハムストリングスの近位1/3」とは、ハムストリングスの近位端から遠位端までの身長方向の長さを100%とした場合、近位端からの距離が100%/3である部位をいう。また、「臀部のトップ」とは、大殿筋の上端から下端までの身長方向の長さを100%とした場合、大殿筋の下端からの距離が100%/2である部位をいう。図5は下半身の背部の膝から腰部までの部分的模式図であり、2本以上の第2補強帯の交点の位置が示されている。
【0041】
第2補強帯は、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って配置されている。第2補強帯は、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、交点が臀部のトップからハムストリングスの近位1/3までの領域に位置するように、体長方向に沿って2本以上、例えば、2本、3本、4本等配置されていればよく、特に限定されない。着用感の観点から、第2補強帯は、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、2本配置されていることが好ましい。第2補強帯は、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、2本配置されている場合は、左右それぞれにおいて、臀部から大腿部に掛けて、略X字状の構造となる。
【0042】
第2補強帯は、腰部まで延びていてもよい。より効果的に下肢の水中姿勢を安定化することができる。第2補強帯は、水着の下端まで延びていてもよい。より効果的に水中姿勢を安定化することができる。第2補強帯の少なくとも一本は、より効果的に水中姿勢を安定化する観点から、仙骨周辺を通るように配置されていることが好ましい。第2補強帯の交点は、より効果的に水中姿勢を安定化し、ハムストリングスの動きをサポートする観点から、ハムストリングスの一部を覆う領域に位置することが好ましく、大腿二頭筋及び/又は半腱様筋の一部を覆う領域に位置することがより好ましい。
【0043】
第2補強帯は、特に限定されないが、例えば、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成して構成してもよい。具体的には、水着を構成する伸縮性生地上に、テープ状の接着剤を貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、テープ状の伸縮性生地をテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、張力テープをテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよく;水着を構成する伸縮性生地上に、張力テープをテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せた後、その上からテープ状の伸縮性生地をテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることで構成してもよい。より効果的に下肢の水中姿勢を安定化する観点から、水着を構成する伸縮性生地上に、張力テープをテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せた後、その上からテープ状の伸縮性生地をテープ状の接着剤等の接着剤を介して貼り合せることが好ましい。
【0044】
下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートする効果を高める観点から、第2補強帯の長手方向の伸長率は、0%以上35%以下であり、さらに好ましくは0%以上30%以下である。具体的には、テープ状の接着剤、テープ状の伸縮性生地又は張力テープの長手方向の伸長率は、20%以上65%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上60%以下である。
【0045】
第2補強帯は、例えば、表面摩擦を低減する観点から、幅が5mm以上30mm以下であることが好ましく、より好ましくは10mm以上20mm以下である。具体的には、前記テープ状の接着剤、テープ状の伸縮性生地及び張力テープは、例えば、表面摩擦を低減する観点から、いずれも、幅が5mm以上30mm以下であることが好ましく、10mm以上20mm以下であることがより好ましい。
【0046】
前記接着剤は、ホットメルト接着剤であることが好ましい。ホットメルト接着剤としては、特に限定されず、例えば、シートタイプ、不織布タイプ、液状タイプなどが挙げられる。シートタイプ及び不織布タイプは、所定の幅になるようにテープ状にカットして、第2補強帯を設ける箇所に配置した後に加熱すればよい。液状タイプは、第2補強帯を設ける箇所に所定の幅になるようにテープ状に塗布した後に加熱すればよい。
【0047】
前記テープ状の伸縮性生地としては、水着を構成する伸縮性生地として上記で列挙したものを所定の幅になるようにテープ状にカットしたものを適宜用いることができる。
【0048】
前記張力テープとしては、特に限定されず、編物及び織物のいずれを用いてもよい。例えば、市販されている各種張力バンドを適宜選択して用いることができる。前記張力テープは、特に限定されないが、体長方向の引張弾性率が5×10-5N/mm2以上30×10-5N/mm2以下であることが好ましく、10×10-5N/mm2以上20×10-5N/mm2以下であることがより好ましい。
【0049】
第2補強帯は、第1補強帯と同じ構成にしてもよく、異なる構成にしてもよい。
【0050】
本発明の水着は、臀部及び大腿部において、第2緊締部及び第2補強帯を有することで、より効果的に、下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートすることができる。第2緊締部は、体長方向の引張弾性率が160×10-5N/mm2以上220×10-5N/mm2以下であることが好ましい。より好ましくは165×10-5N/mm2以上200×10-5N/mm2以下であり、さらに好ましくは170×10-5N/mm2以上190×10-5N/mm2以下である。第2緊締部及び1本の第2補強帯を含む箇所は、体長方向の引張弾性率が180×10-5N/mm2以上340×10-5N/mm2以下であることが好ましい。より好ましくは200×10-5N/mm2以上320×10-5N/mm2以下であり、さらに好ましくは220×10-5N/mm2以上300×10-5N/mm2以下である。第2緊締部及び2本の第2補強帯の交点を含む箇所は、体長方向の引張弾性率が220×10-5N/mm2以上420×10-5N/mm2以下であることが好ましい。より好ましくは240×10-5N/mm2以上400×10-5N/mm2以下であり、さらに好ましくは、260×10-5N/mm2以上380×10-5N/mm2以下である。第2緊締部、第2緊締部及び1本の第2補強帯を含む箇所、並びに、第2緊締部及び2本の第2補強帯の交点を含む箇所の体長方向の引張弾性率が上述した範囲内であると、水着が着用しやすいうえ、ハムストリングスの動き、例えばキック等をサポートする効果が高まる。
【0051】
以下図面を用いて本発明の1以上の実施形態の水着を説明するが、本発明は、図面に示されたものに限定されない。図1は本発明の一実施形態の水着の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。該実施形態の水着1は、女子用オールインワンハーフスパッツ型水着である。図1に示されているように、水着1は、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部2と、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るように配置されており、腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯3を有する。
【0052】
水着1は、バックホールを有しており、第1緊締部は上背部の一部を覆っており、上背部において、第1緊締部2の両端部は、バックホールの上部において、互いに離れている。場合によっては、第1緊締部2の両端部は、バックホールの上部において、互いに繋がっていてもよい。水着1において、鼠径部の周縁部を覆う領域には逆ハ字状に配置された第3補強帯5を有してもよく、第3補強帯5は上背部まで延びていてもよい。第3補強帯5は、第1緊締部2の周縁部と重なるように配置されていてもよい。
【0053】
2本の第1補強帯3は、左右対称的に配置されており、正面から見ると略X字状の構造になっている。より効果的に腹圧を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、2本の第1補強帯の交点4は、肋骨弓の下縁から上前腸骨棘までの間に位置することが好ましく、肋骨弓の下縁から腸骨陵までの間に位置することがより好ましい。第1補強帯3は、脇下において、第1緊締部2の周縁部と重なっていてもよい。
【0054】
水着1は、さらに、左右のそれぞれにおいて、臀部及び大腿部を覆うように配置されている第2緊締部6を有する。下肢の水中姿勢を安定化させるとともに、ハムストリングスの動きをサポートすることができる。
【0055】
図2は、本発明の他の一実施形態の水着の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。該実施形態の水着11は、女子用オールインワンハーフスパッツ型水着である。図2において、図1と同じ符号は、同じ構成を示しており、説明を省略する。
【0056】
該実施形態の水着11には、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本の第2補強帯17及び18が互いに交差するように配置されており、第2補強帯17及び18の交点19は、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3までの間に位置する。第2補強帯17及び18は、いずれも、腰部から大腿部の内側部に至るように配置されている。
【0057】
第2補強帯18は、腰部から大腿部の外側部に至るように配置されていてもよい。第2補強帯17及び18は、いずれも、水着11の下端部に至るように配置されていてもよい。該実施形態において、第2補強帯は左右のそれぞれにおいて2本であるが、3本以上、4本以上等であってもよい。
【0058】
水着11は、背面において、腰部に配置されている第4補強帯20を有してもよい。体幹をサポートする効果をより高めることができる。
【0059】
第1緊締部2及び第2緊締部6は、いずれも、水着を構成する表地101に裏地102を重ね合せた二重生地で構成することができる。
【0060】
第1補強帯3、第2補強帯17、18、第3補強帯5及び第4補強帯20は、上述したとおり、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成してもよい。例えば、第3補強帯5は、第1緊締部2を構成する生地と、第1緊締部2に隣接するその他の部分を構成する生地を貼り合せたテープ状の接着剤で構成することができる。第4補強帯20は、第2緊締部6を構成する生地と、第2緊締部6に隣接するその他の部分を構成する生地を貼り合せたテープ状の接着剤で構成することができる。
【0061】
着用性の観点から、臀部の周方向において、縫製ライン及び補強帯を含めたシームの本数は合計で9本以下であることが好ましい。また、着用性の観点から、左右の大腿部の股下から膝上までのそれぞれの周方向において、縫製ライン及び補強帯を含めた合計で4本以下であることが好ましい。
【0062】
図3は、本発明の他の一実施形態の水着の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。該実施形態の水着21は、女子用ワンピースタイプ水着である。図3に示されているように、水着21は、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部22と、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように配置されており、腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯23を有する。図3に示すように、第1緊締部22は、水着の前面の下部において、2本の第1補強帯23で挟まれている領域(腹部及び大腿部の付け根周辺)を全体的に覆うように配置されていてもよい。
【0063】
水着21は、バックホールを有しており、第1緊締部は上背部の一部を覆っており、上背部において、第1緊締部22の両端部は、バックホールの上部において、互いに離れている。場合によっては、第1緊締部22の両端部は、バックホールの上部において、互いに繋がっていてもよい。水着21は、側腹部から上背部に至るように配置されている第3補強帯25を有してもよく、第3補強帯25は、第1緊締部22の周縁部と重なるように配置されていてもよい。
【0064】
2本の第1補強帯23は、左右対称的に配置されており、正面から見ると略X字状の構造になっている。より効果的に腹圧を高めつつ、フラットな姿勢を維持しやすい観点から、2本の第1補強帯の交点24は、肋骨弓の下縁から上前腸骨棘までの間に位置することが好ましく、肋骨弓の下縁から腸骨陵までの間に位置することがより好ましい。第1補強帯23は、脇下において、第1緊締部22の周縁部と重なっていてもよい。
【0065】
図4は本発明の他の一実施形態の水着の裏側(体表面側)の模式図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。該実施形態の水着31は、女子用ワンピースタイプ水着である。図4において、図3と同じ符号は、同じ構成を示しており、説明を省略する。
【0066】
水着31は、さらに、左右のそれぞれにおいて、臀部を覆うように配置されている第2緊締部26を有する。
【0067】
第1緊締部22及び第2緊締部26は、いずれも、水着を構成する表地101に裏地102を重ね合せた二重生地で構成することができる。
【0068】
第1補強帯23及び第3補強帯25は、上述したとおり、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成してもよい。例えば、第3補強帯25は、第1緊締部22を構成する生地と、第1緊締部22に隣接するその他の部分を構成する生地を貼り合せたテープ状の接着剤で構成することができる。
【0069】
図1図4に示された水着において、緊締部及び補強帯は水着の裏側(体表面側)に配置されているが、本発明の水着は、これらに限定されない。例えば、必要に応じて、緊締部及び補強帯の全部又は一部は水着の表側に配置されていてもよい。また、図1図4においては、女子用水着を説明しているが、着用時に少なくとも臀部及び腹部を覆う水着であれば、他のタイプの女子用水着や男子用水着に適用することができる。また、本発明の範囲内において、適宜様々な変更は当業者に明らかな範囲で可能である。
【0070】
本発明は、特に限定されないが、好ましくは、以下の態様を含む。
[1] 伸縮性生地で構成されており、着用時に少なくとも臀部及び腹部を覆う水着であって、
腹部全体を覆い、かつ上背部に至るように配置されている第1緊締部と、
左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように配置されており、かつ腹部を覆う領域で交差している2本の第1補強帯を有することを特徴とする水着。
[2] 第1補強帯は、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るように配置されている、[1]に記載の水着。
[3] 第1緊締部は、二重生地で構成されている、[1]又は[2]に記載の水着。
[4] 第1補強帯は、接着剤、伸縮性生地及び張力テープからなる群から選ばれる一種以上で構成されている、[1]~[3]のいずれか1項に記載の水着。
[5] 前記2本の第1補強帯の交点は、肋骨の下縁から上前腸骨棘の下縁までの間に位置する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の水着。
[6] 前記2本の第1補強帯の交点からの水平距離が5cmである部位における衣服圧は、22hPa以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の水着。
[7] 前記2本の第1補強帯の交点からの垂直距離が7cmである部位における衣服圧は、1.5hPa以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の水着。
[8] 左右のそれぞれにおいて、臀部及び少なくとも大腿部の一部を覆うように配置されている第2緊締部を有する、[1]~[7]のいずれか1項に記載の水着。
[9] 第2緊締部は、二重生地で構成されている、[8]に記載の水着。
[10] 左右のそれぞれにおいて、臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本以上の第2補強帯が互いに交差するように配置されており、前記2本以上の第2補強帯の交点は、臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の水着。
[11] 前記2本以上の第2補強帯の交点は、ハムストリングスの一部を覆う領域に位置する、[10]に記載の水着。
[12] 競泳用水着である、[1]~[11]のいずれかに記載の記載の水着。
【実施例
【0071】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
実施例及び比較例では、下記の生地を用いた。
生地101:表地は、平織りと二重織を組み合わせた織物で、目付けは138g/m2であり、織物の繊維組成は、ナイロン繊維65%、ポリウレタン弾性繊維35%であった。経糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:78dtex)にナイロン繊維(繊度:33dtex、フィラメント数:10本)をカバーリングした糸を用いた。緯糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:55dtex)にナイロン繊維(繊度:33dtex、フィラメント数10本)をカバーリングした糸とポリウレタン弾性繊維(繊度:44dtex)にナイロン繊維(繊度:33dtex、フィラメント数10本)をカバーリングした糸を用いた。密度(打ち込み本数)は、経糸184本/インチ、緯糸188本/インチであった。該生地を経糸が周方向に沿うように用いた。生地101の体長方向の伸長率は37.4%であり、身幅方向の伸長率は53.3%であった。
生地102:裏地は、平織りの織物で、目付けは114g/m2であり、織物の繊維組成は、ナイロン繊維66%、ポリウレタン弾性繊維34%であった。経糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:55dtex)にナイロン繊維(繊度:24dtex、フィラメント数:7本)をカバーリングした糸を用いた。緯糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:44dtex)にナイロン繊維(繊度:24dtex、フィラメント数7本)をカバーリングした糸を用いた。密度(打ち込み本数)は、経糸219本/インチ、緯糸187本/インチであった。該生地を経糸が周方向に沿うように用いた。生地102の体長方向の伸長率は54.6%であり、身幅方向の伸長率は49.5%であった。
二重生地:生地101と生地102をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」)で生地端を貼り合わせて二重生地として用いた。なお、生地101と生地102は、いずれも経糸が周方向に沿うように用いた。二重生地の体長方向の伸長率は30.9%であり、身幅方向の伸長率は56.8%であった。
補強帯用伸縮性生地:平織りの織物で、目付けは140g/m2であり、織物の繊維組成は、ナイロン繊維63%、ポリウレタン弾性繊維37%であった。経糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:78dtex)にナイロン繊維(繊度:33dtex、フィラメント数:10本)をカバーリングした糸を用いた。緯糸は、ポリウレタン弾性繊維(繊度:55dtex)にナイロン繊維(繊度:33dtex、フィラメント数10本)をカバーリングした糸を用いた。密度(打ち込み本数)は、経糸178本/インチ、緯糸180本/インチであった。
補強帯用張力テープ:サン化成株式会社製の「RF-6200」、ポリエステル系繊維で構成されたニット、幅10mm、長手方向の弾性率17.5×10-5N/mm2
【0073】
(実施例1)
生地101、及び二重生地(生地101に生地102を貼り合せた)を用いて図2に示すようなオールインワン女子用ハーフスパッツ型水着11(JASPO規格Mサイズ)を作製した。第1緊締部2は、図2に示されているように、生地101と生地102の二重生地を用い、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るような配置とした。第2緊締部6は、図2に示されているように、生地101と生地102の二重生地を用い、臀部及び大腿部を覆うような配置とした。
2本の第1補強帯3は、第1緊締部2の裏側にテープ状のホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)を、図2に示すように、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部、反対側の大腿部の外側を通り、水着の端部に至るようにかつ、それらの交点4がへそを覆う箇所に位置するように貼り合せることで形成した。
左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本の第2補強帯17及び18が互いに交差するように、かつ、第2補強帯17及び18の交点19が臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置するように配置した。具体的には、第2補強帯17は、腰部から大腿部の内側部に至るように配置された。第2補強帯18は、腰部から大腿部の内側部に至る、かつ水着1の下端部まで延びるように配置された。交点19は、臀部の下縁から臀溝付近に位置するように配置された。ここで「臀部の下縁」とは、大殿筋の上端から下端までの身長方向の長さを100%とした場合、下端からの距離が100%/4である部位をいう。第2補強帯17及び18は、第2緊締部6の裏側(体表面側)に、先ず補強帯用張力テープ(サン化成株式会社製の「RF-6200」、ポリエステル系繊維で構成されたニット、幅10mm、長手方向の弾性率17.5×10-5N/mm2)をその長手方向が体長方向に沿うようホットメルト接着剤で貼り合わせた後、その上からさらに幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地が前記張力テープを覆うように、かつ該テープ状の補強帯用伸縮性生地の長手方向(緯糸方向)が体長方向に沿うようにホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。
第3補強帯5は、幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。
第4補強帯20は、幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。
【0074】
(実施例2)
2本の第1補強帯3を、第1緊締部2の裏側に、幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地をテープ状のホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合せることで形成した以外は、実施例1と同様にして水着11を作製した。
【0075】
(実施例3)
2本の第1補強帯3を、第1緊締部2の裏側に、先ず補強帯用張力テープ(サン化成株式会社製の「RF-6200」、ポリエステル系繊維で構成されたニット、幅10mm、長手方向の弾性率17.5×10-5N/mm2)をその長手方向が体長方向に沿うようホットメルト接着剤で貼り合わせた後、その上から前記張力テープを覆うように幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)でさらに貼り合わせることで形成した以外は、実施例1と同様にして水着11を作製した。
【0076】
(実施例4)
生地101、及び二重生地(生地101に生地102を貼り合せた)を用いて図3に示すような女子用ワンピースタイプの水着21(JASPO規格Mサイズ)を作製した。第1緊締部22は、図3に示されているように、生地101と生地102の二重生地を用い、腹部全体を覆い、かつ上背部に至るような配置とした。
2本の第1補強帯23は、図3に示すように、第1緊締部22の裏側にテープ状のホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)を、左右対称的に、片側の脇ぐりから、腹部を通り、反対側の水着の端部に至るように、かつ、それらの交点24がへそを覆う箇所に位置するように貼り合せることで形成した。
第3補強帯25は、第1緊締部22を構成する二重生地とその他の部分を構成する生地101をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。
【0077】
(比較例1)
緊締部及び補強帯を設けず、生地101を用いて図3に示すようなワンピースタイプの水着を作製した。
【0078】
(比較例2)
生地101、及び二重生地(生地101に生地102を貼り合せた)を用いて図6に示すようなオールインワン女子用ハーフスパッツ型水着41(JASPO規格Mサイズ)を作製した。二重生地で、臀部及び大腿部を覆う緊締部36及び側腹部以外の腹部を覆う緊締部37を形成した。図6に示されているように、左右それぞれの臀部から大腿部に掛けて、体長方向に沿って2本の第2補強帯32及び33が互いに交差するように、かつ、第2補強帯32及び33の交点34が臀部のトップからハムストリングスの近位1/3の間に位置するように配置した。具体的には、第2補強帯32は、腰部から大腿部の外側部に至るように、かつ水着41の下端部まで延びるように配置された。第2補強帯33は、腰部から大腿部の内側部に至るように配置された。交点34は、臀部の下縁から臀溝付近に位置するように配置された。第2補強帯32及び33、並びに水着の側部に配置されている補強帯38は、先ず補強帯用張力テープ(サン化成株式会社製の「RF-6200」、ポリエステル系繊維で構成されたニット、幅10mm、長手方向の弾性率17.5×10-5N/mm2)をその長手方向が体長方向に沿うようホットメルト接着剤で貼り合わせた後、その上からさらに幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地が前記張力テープを覆うように、かつ該テープ状の補強帯用伸縮性生地の長手方向(緯糸方向)が体長方向に沿うようにホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。鼠径部を覆う領域に逆ハ字状に配置された補強帯35及び腰部に配置されている補強帯40は、それぞれ、幅20mmのテープ状にカットした補強帯用伸縮性生地をホットメルト接着剤(ユタックス社製、品名「J861」、幅20mm)で貼り合わせることで設けた。
【0079】
水着11から、図2(c)に示されているように、幅5cm、長さ15cmの生地片200(第2緊締部及び1本の第2補強帯を含む領域)、及び幅5cm、長さ15cmの生地片300(第2緊締部)、幅5cm、長さ15cmの生地片400(第2緊締部及び2本の第2補強帯の交点を含む領域)をカットして、下記のように引張弾性率を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0080】
(引張弾性率の測定)
JIS L 1096 8.14.A法に基づいて、具体的には、生地片を幅5cm、長さ10cmになるように引張試験機に固定し、5%伸長時の応力の傾きから体長方向の引張弾性率(N/mm2)を求めた。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1~4、比較例1及び2の水着による衣服圧を下記のように測定し、その結果を下記表2に示した。
【0083】
(衣服圧の測定)
マネキン(サンクリエイト社製、女性用マネキン)に、衣服圧センサーを、それぞれ、へそに該当する部位(測定部位1)、へそからの身幅方向の垂直距離が5cmである部位(測定部位2)、へそからの体長方向の垂直距離が7cmである部位(測定部位3)に貼り付けた後、衣服圧測定用装置(エイエムアイ・テクノ社製、品名「接触圧測定器 AMI3032-2(2B)」)にて衣服圧を測定した。
【0084】
【表2】
【0085】
比較例1と比較例2の対比から分かるように、第1緊締部を設けることで、腹部における衣服圧が高くなっている、すなわち第1緊締部により腹部に対する圧力が高まる。実施例1~4と、比較例2の対比により、第1緊締部と第1補強帯を設けることで、相乗効果が生じ、第1緊締部と第1補強帯がともに配置されている領域、例えば測定部位1に加えて、第1緊締部のみが配置されている領域、例えば、測定部位2及び3においても、衣服圧が高くなっている、すなわち、腹部に対する圧力が高まることが分かる。このように、第1緊締部と第1補強帯を設けることにより、効果的に腹部に対する圧力を高め、腹部の落ち込みを抑制するとともに、フラットな姿勢をサポートすることができる。
【0086】
実施例1~4、比較例1及び2の水着を全日本インカレ出場レベルの女子大生(9名)に着用させ、下記表3に示す種目における25mプールにてスタート(飛び込み)からゴール(壁タッチ)までのタイムを測定し、比較例1を基準として、その差を求めた。差が「-」であることは、タイムが比較例1より速いことを意味する。また、水泳中におけるボディポジション(ここでは腹部と下肢の水中での位置をいう。)の落ち込みに対する抑制感の程度を、比較例2を基準に下記の5段階の基準で評価した。その結果を下記表3に示した。
1:低い
2:やや低い
3:同じ
4:やや高い
5:高い
【0087】
【表3】
【0088】
上記表2のデータから分かるように、実施例の水着を着用した方が、比較例の水着を着用した場合と比べて、ボディポジションが高かった。これは、実施例1~実施例3の水着を着用することで、水泳の際の腹部及び下肢の落ち込みが抑制され、また実施例4の水着を着用することで腹部の落ち込みが抑制され、フラットな姿勢がサポートされることを意味する。また、実施例の水着を着用した方が、比較例の水着を着用した場合と比べて、タイムが速かった。これは、水泳の際の腹部の落ち込みの抑制に加えて実施例1~実施例3の水着では脚部の落ち込みも抑制され、よりフラットな姿勢を維持することで、タイムも速くなること意味する。
【0089】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は例示であって、本発明はこれらに限定されない。本発明の範囲は、請求の範囲の記載に基づいて解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の水着は、練習用水着として用いてもよく、女子の場合は、競泳用水着としても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0091】
1、11、21、31、41 水着
2、22 第1緊締部
3、23 第1補強帯
4、24 2本の第1補強帯の交点
5、25 第3補強帯
6、26、36 第2緊締部
17、18、32、33 第2補強帯
19、34 2本の第2補強帯の交点
20 第4補強帯
35、38、40 補強帯
37 緊締部
101 表地
102 裏地
200、300、400 生地片
図1
図2
図3
図4
図5
図6