(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】機械学習装置、加工状態予測装置、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
B24B 39/00 20060101AFI20230808BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20230808BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B24B39/00
B24B49/10
G05B19/4155 V
(21)【出願番号】P 2021574030
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2021002485
(87)【国際公開番号】W WO2021153514
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020015704
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】荻野 秀雄
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071389(JP,A)
【文献】特開2019-038027(JP,A)
【文献】特開2006-026747(JP,A)
【文献】特開2018-106417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-3/60
B24B21/00-51/00
B23Q15/00-15/28
G05B1/00-7/04
G05B11/00-13/04
G05B17/00-17/02
G05B19/18-19/416
G05B19/42-21/02
G06N3/00-3/12
G06N7/08-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のワークの加工面に任意の工具を押し当てて表面処理を行ったバニシング加工において、少なくとも前記バニシング加工前の前記ワークに係る情報、及び前記バニシング加工の加工条件に係る情報を含む加工情報を、入力データとして取得する入力データ取得部と、
前記バニシング加工後の前記ワークの加工状態、及び前記加工状態が正常の場合の前記ワークの表面粗さを含む加工状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、
前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、これから行うバニシング加工の加工情報を入力し前記これから行うバニシング加工における加工状態情報を出力する学習済みモデルを生成する学習部と、
を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記ワークに係る情報は、前記ワークの材質、硬度、厚さ、及び加工前の表面粗さの少なくとも1つを含み、
前記バニシング加工の加工条件に係る情報は、工具とワークとの相対回転数、工具とワークの相対送り速度、及び転圧量の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記加工状態情報は、前記バニシング加工後のワークにおいて、うねり及び変形無しを示す加工状態が正常か、否か、及び前記加工状態が正常の場合の加工後表面粗さの少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2に記載の機械学習装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機械学習装置により生成された、これから行うバニシング加工の加工情報を入力し前記これから行うバニシング加工における前記加工状態情報を出力する学習済みモデルと、
バニシング加工に先立って、前記これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を入力する入力部と、
前記入力部により入力された前記加工情報を前記学習済みモデルに入力することで、前記学習済みモデルが出力する前記これから行うバニシング加工における前記加工状態情報を予測する予測部と、
を備える加工状態予測装置。
【請求項5】
前記ワークに係る情報は、前記ワークの材質、硬度、厚さ、及び加工前の表面粗さの少なくとも1つを含み、
前記バニシング加工の加工条件に係る情報は、工具とワークとの相対回転数、工具とワークの相対送り速度、及び転圧量の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の加工状態予測装置。
【請求項6】
前記加工状態情報は、前記これから行うバニシング加工後の加工対象のワークにおいて、うねり及び変形無しを示す加工状態が正常か、否か、及び前記加工状態が正常の場合の加工後表面粗さの少なくとも1つを含む、請求項4又は請求項5に記載の加工状態予測装置。
【請求項7】
前記予測部により予測された前記加工後表面粗さと、予め設定された要求精度とを比較し、前記加工後表面粗さが前記要求精度内か否かを判定する決定部を備える、請求項6に記載の加工状態予測装置。
【請求項8】
前記学習済みモデルを、前記加工状態予測装置からネットワークを介してアクセス可能に接続されるサーバに備える、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の加工状態予測装置。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の機械学習装置を備える、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の加工状態予測装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の加工状態予測装置を備える、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置、加工状態予測装置、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品等のワークの切削加工後の表面粗さを一定値以内に収める仕上げ加工の手段として、バニシング加工がある。
バニシング加工は、
図8(後述する特許文献1の
図1に相当)に示すように、ローラ(又は球面)状の工具Tを金属であるワークWの加工面に転圧させながら押し付けることで表面を平滑に仕上げる塑性加工法で、加工部付近が硬化し、圧縮残留応力が付与されることで、加工部の耐摩耗性や疲労強度の向上が見込めるため、主に自動車部品等の仕上げ加工で使用されている。
なお、
図8の領域Aでは、工具TがワークWの表面に押し付けられ徐々に加圧される。また、領域Bでは、接触圧力がワークWの降伏点を越えて塑性変形を起こす。また、領域Cでは、工具Tが加工面から離脱し、ワークWの金属は微小な距離Drだけ弾性回復する。これにより、工具Tが通った箇所は、表面の凹凸がならされて粗さが小さくなる。
ここで、距離Drは、弾性回復量ともいう。また、距離Dvは、工具TがワークWの表面から押し付けられる距離で、転圧量(又はバニシング量)ともいう。また、バニシング加工を行う前の表面からバニシング加工を行い距離Drだけ弾性回復した後の表面までの距離Dsを寸法変化量ともいう。
この点、加工後表面粗さに対する転圧量と加工前表面粗さとの関係を示す応答曲面を作成し、作成した応答曲面に基づいて、バニシング工具のローラ回転数や送り速度、転圧量等を決定する技術が知られている。例えば、特許文献1参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バニシング加工では、加工後に要求される材料の寸法や表面粗さに応じて、転圧量、工具とワークとの相対回転数(ローラ回転数)、工具とワークとの相対送り速度等の加工条件を適宜調節しなければならない。
特に中空ワークの場合、
図9に示すように、ワークの肉厚が薄いと転圧量によってはうねりや変形が生じることもあり、ワーク材質(硬度)と肉厚に応じた転圧量の調整が難しいため、熟練者の経験に基づいて加工条件を決定することも多い。
さらに塑性加工には弾性回復(元の形状に戻す働き)も伴い、ワーク材質、硬度や前記バニシング加工条件によりその弾性回復量も差が生じることから、要求される寸法や表面粗さが実現できなかった場合には、加工条件の再調整や再加工を行う必要がある。しかしながら、加工条件の再調整や再加工は手間がかかる。
【0005】
そこで、実際に加工運転をしたりシミュレーションをすることなく、指定された加工条件でバニシング加工を行った場合の加工後のワークの加工状態を精度良く出力する学習済みモデルを作成すること、及び当該学習済みモデルを利用して加工後のワークの加工状態を精度良く予測することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の機械学習装置の一態様は、任意のワークの加工面に任意の工具を押し当てて表面処理を行ったバニシング加工において、少なくとも前記バニシング加工前の前記ワークに係る情報、及び前記バニシング加工の加工条件に係る情報を含む加工情報を、入力データとして取得する入力データ取得部と、前記バニシング加工後の前記ワークの加工状態、及び前記加工状態が正常の場合の前記ワークの表面粗さを含む加工状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部と、前記入力データ取得部により取得された入力データと、前記ラベル取得部により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、これから行うバニシング加工の加工情報を入力し前記これから行うバニシング加工における加工状態情報を出力する学習済みモデルを生成する学習部と、を備える。
【0007】
(2)本開示の加工状態予測装置の一態様は、(1)の機械学習装置により生成された、これから行うバニシング加工の加工情報を入力し前記これから行うバニシング加工における前記加工状態情報を出力する学習済みモデルと、バニシング加工に先立って、前記これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を入力する入力部と、前記入力部により入力された前記加工情報を前記学習済みモデルに入力することで、前記学習済みモデルが出力する前記これから行うバニシング加工における前記加工状態情報を予測する予測部と、を備える。
【0008】
(3)本開示の制御装置の一態様は、(2)の加工状態予測装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
一態様によれば、実際に加工運転をしたりシミュレーションをすることなく、指定された加工条件でバニシング加工を行った場合の加工後のワークの加工状態を精度良く出力する学習済みモデルを作成することができる。さらに、当該学習済みモデルを利用することで精度の良い加工後のワークの加工状態の予測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る予測システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】ワークに係る情報、バニシング加工の加工条件に係る情報、及びラベルデータの一例を示す図である。
【
図3】
図2に示すワーク毎の加工前表面粗さと加工後表面粗さの一例を示す図である。
【
図4】
図1の加工状態予測装置に提供される学習済みモデルの一例を示す図である。
【
図5】運用フェーズにおける加工状態予測装置の予測処理について説明するフローチャートである。
【
図8】バニシング加工の原理を説明するための模式図である。
【
図9】中空ワークの場合における転圧量過大による変形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を用いて説明する。
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る予測システムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、予測システム1は、工作機械10、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30を有する。
【0012】
工作機械10、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30は、図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。また、工作機械10、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30は、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、工作機械10、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30は、係る接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。なお、後述するように、加工状態予測装置20は、機械学習装置30を含むようにしてもよい。また、工作機械10は、加工状態予測装置20及び機械学習装置30を含むようにしてもよい。
【0013】
工作機械10は、当業者にとって公知の工作機械であり、制御装置101を組み込んで有する。工作機械10は、制御装置101の動作指令に基づいて動作する。後述するように、工作機械10は、バニシング加工に先立って、工作機械10の通信部(図示しない)を介して、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を加工状態予測装置20に出力してもよい。
なお、バニシング加工の加工条件に係る情報には、
図8に示すように、工具TとワークWとの相対回転数、工具TとワークWの相対送り速度、及び転圧量Dv等が含まれてもよい。また、加工対象のワークWに係る情報には、ワークWの材質、硬度、厚さ、及び加工前表面粗さ等が含まれてもよい。ただし、加工対象のワークWに係る情報には、ワークWが中空ワークの場合にのみ、ワークWの厚さ(肉厚)が含まれてもよい。
【0014】
制御装置101は、当業者にとって公知の数値制御装置であり、バニシング加工用のプログラムに基づいて動作指令を生成し、生成した動作指令を工作機械10に送信する。これにより、制御装置101は、工作機械10にバニシング加工を行わせることができる。なお、制御装置101は、図示しない工作機械10の通信部を介して、工作機械10の代わりに、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を加工状態予測装置20に出力してもよい。
また、制御装置101は、工作機械10とは独立した装置でもよい。
【0015】
加工状態予測装置20は、運用フェーズにおいて、バニシング加工に先立って、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を取得する。そして、加工状態予測装置20は、取得したこれから行うバニシング加工の加工情報を、後述する機械学習装置30から提供された学習済みモデルに入力する。これにより、加工状態予測装置20は、これから行うバニシング加工における加工状態情報を予測することができる。
なお、加工状態情報には、これから行うバニシング加工後の加工対象のワークにおいて、うねり及び変形無しを示す加工状態が正常か、否か、及び前記加工状態が正常の場合の加工後表面粗さを含む。
そこで、加工状態予測装置20を説明する前に、学習済みモデルを生成するための機械学習について説明する。
【0016】
<機械学習装置30>
機械学習装置30は、例えば、予め、任意のワークの加工面に任意の工具を押し当てて表面処理を行ったバニシング加工における、バニシング加工前のワークに係る情報、及びバニシング加工の加工条件に係る情報を含む加工情報を、入力データとして取得する。
また、機械学習装置30は、取得された入力データにおけるバニシング加工後のワークの加工状態、及び加工状態が正常の場合のワークの表面粗さを含む加工状態情報、を示すデータをラベル(正解)として取得する。
機械学習装置30は、取得した入力データとラベルとの組の訓練データにより教師あり学習を行い、後述する学習済みモデルを構築する。
そうすることで、機械学習装置30は、構築した学習済みモデルを加工状態予測装置20に提供することができる。
機械学習装置30について、具体的に説明する。
【0017】
機械学習装置30は、
図1に示すように、入力データ取得部301、ラベル取得部302、学習部303、及び記憶部304を有する。
【0018】
入力データ取得部301は、学習フェーズにおいて、図示しない通信部を介して、任意のワークの加工面に任意の工具を押し当てて表面処理を行ったバニシング加工における、バニシング加工前のワークに係る情報、及びバニシング加工の加工条件に係る情報を含む加工情報を、入力データとして工作機械10から取得する。
【0019】
図2は、ワークに係る情報、バニシング加工の加工条件に係る情報、及びラベルデータの一例を示す図である。
図2に示すように、加工情報に含まれるワークに係る情報は、ワークの「材質」、「ブリネル硬度」、「厚さ」、及び「加工前表面粗さ」を含む。
ワークに係る情報に含まれる「材質」には、炭素鋼の場合、「S45C」以外に「C15C」、「S50C」、「S55C」、「S60C」等がある。また、ワークに係る情報に含まれる「材質」には、鋳鉄の場合、「FC100」、「FC150」、「FC200」、「FC250」、「FC300」、「FC350」等がある。また、ワーク情報に含まれる「材質」には、アルミニウム合金の場合、「A5056」及び「AC3A」以外に「A4032」、「A5052」、「A5083」、「A6061」、「A7075」等がある。また、ワーク情報に含まれる材質には、マグネシウム合金の場合、「AZ31」、「AZ91」等がある。
【0020】
ワークに係る情報に含まれる「硬度」として、「ブリネル硬度」が設定される。なお、「ビッカース硬度」等が、ワークに係る情報に含まれる「硬度」として設定されてもよい。
ワークに係る情報に含まれる「厚さ」は、上述したように、ワークが中空ワークの場合にのみ設定される。このため、「材質」が「S45C(炭素鋼)」、「SCM440(クロムモリブデン鋼)」、「SUS303(クロムステンレス鋼)、及び「A5056(アルミニウム合金)」のワークは中空ワークでないことから、「厚さ」は、空欄を示す「-」が格納される。
ワークに係る情報に含まれる「加工前表面粗さ」は、例えば、触針やレーザ光等による表面粗さ測定機等を用いて加工前に予め測定され、算術平均粗さ(Ra)の値で設定される。ただし、「加工前表面粗さ」は、最大高さ(Ry)、又は十点平均粗さ(Rz)の値で設定されてもよい。
なお、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、及び十点平均粗さ(Rz)は、公知の手法(例えば、JIS B 0601:1994、JIS B 0031:1994等参照)を用いて算出でき、詳細な説明は省略する。
【0021】
次に、バニシング加工の加工条件に係る情報は、
図2に示すように、上述したワークに係る情報が示す各ワークに対して行ったバニシング加工における「相対回転数(周速)」、「相対送り速度」、及び「転圧量」を含む。なお、「相対回転数(周速)」は、例えば、
図8に示すように、工具TとワークWとの相対回転数を示す。また、「相対送り速度」は、工具TとワークWとの相対送り速度を示す。また、「転圧量」は、距離Dvを示す。
そして、入力データ取得部301は、取得した入力データを記憶部304に記憶する。
【0022】
ラベル取得部302は、入力データのそれぞれのバニシング加工後のワークの加工状態、及び加工状態が正常の場合のワークの表面粗さを含む加工状態情報を、ラベルデータ(正解データ)として取得する。ラベル取得部302は、取得したラベルデータを記憶部304に記憶する。
具体的には、ラベル取得部302は、例えば、
図2に示すように、バニシング加工後のワークにおいて、うねり及び変形等が無い場合を「正常」とし、うねりや変形等がある場合を「異常」とする「加工状態」を、ラベルデータとして取得する。また、ラベル取得部302は、例えば、「加工前表面粗さ」の場合と同様に、触針やレーザ光等による表面粗さ測定機等を用いて、「加工状態」が正常のワークで測定された「加工後表面粗さ」を、ラベルデータとして取得する。
【0023】
なお、
図2のラベルデータの「加工状態」は、例えば、加工後にオペレータの目視によりワークの状態が判定された結果であり、オペレータにより入力されてもよい。また、ラベルデータの「加工後表面粗さ」は、例えば、加工後に表面粗さ測定機等を用いてオペレータにより測定されたワークの表面粗さであり、オペレータにより入力されてもよい。あるいは、ラベルデータの「加工状態」及び「加工後表面粗さ」は、例えば、加工後に撮影されたワークの画像の画像処理により判定されたワークの状態、及び測定された表面粗さであってもよい。
また、ラベルには、「加工状態」が正常か、否かに限定されず、「1」及び「0」等の2値で表されてもよい。
また、
図2では、「材質」が「AC3A(アルミニウム合金)」のワークは、中空ワークで、
図9に示すように、バニシング加工によりうねりや変形等が発生したため、「加工状態」が「異常」と判定され、「加工後表面粗さ」は、空欄を示す「-」が格納される。
【0024】
図3は、
図2に示すワーク毎の加工前表面粗さと加工後表面粗さの一例を示す図である。
ここで、「加工後表面粗さ」は、算術平均粗さ(Ra)の値で設定されたが、最大高さ(Ry)、又は十点平均粗さ(Rz)の値で設定されてもよい。
【0025】
学習部303は、上述の入力データとラベルとの組を訓練データとして受け付ける。学習部303は、受け付けた訓練データを用いて、教師あり学習を行うことにより、これから行うバニシング加工の加工条件を示す情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を入力し、これから行うバニシング加工後の加工対象のワークの加工状態を示す加工状態情報を出力する学習済みモデル250を構築する。
そして、学習部303は、構築した学習済みモデル250を加工状態予測装置20に対して提供する。
なお、教師あり学習を行うための訓練データは、多数用意されることが望ましい。例えば、顧客の工場等で実際に稼働している様々な場所の工作機械10から訓練データが取得されてもよい。
【0026】
図4は、
図1の加工状態予測装置20に提供される学習済みモデル250の一例を示す図である。ここでは、学習済みモデル250は、
図4に示すように、加工対象のワークに係る情報、及びこれから行うバニシング加工の加工条件に係る情報を入力層として、これから行うバニシング加工後の加工対象のワークの加工状態を示す加工状態情報を出力層とする多層ニューラルネットワークを例示する。
ここで、加工対象のワークに係る情報には、材質、ブリネル硬度、厚さ、及び加工前表面粗さが含まれる。また、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報には、工具とワークとの相対回転数、工具とワークとの相対送り速度、及び転圧量が含まれる。また、加工状態情報には、加工対象のワークの「加工状態が正常」か、否か、及び「加工後表面粗さ」が含まれる。
【0027】
また、学習部303は、学習済みモデル250を構築した後に、新たな訓練データを取得した場合には、学習済みモデル250に対してさらに教師あり学習を行うことにより、一度構築した学習済みモデル250を更新するようにしてもよい。
そうすることで、普段の工作機械10の加工動作から訓練データを自動的に得ることができるため、ワークの加工状態の予測精度を日常的に上げることができる。
【0028】
上述した教師あり学習は、オンライン学習で行ってもよく、バッチ学習で行ってもよく、ミニバッチ学習で行ってもよい。
オンライン学習とは、工作機械10において加工が行われ、訓練データが作成される都度、即座に教師あり学習を行うという学習方法である。また、バッチ学習とは、工作機械10において加工が行われ、訓練データが作成されることが繰り返される間に、繰り返しに応じた複数の訓練データを収集し、収集した全ての訓練データを用いて、教師あり学習を行うという学習方法である。さらに、ミニバッチ学習とは、オンライン学習と、バッチ学習の中間的な、ある程度訓練データが溜まるたびに教師あり学習を行うという学習方法である。
【0029】
記憶部304は、RAM(Random Access Memory)等であり、入力データ取得部301により取得された入力データ、ラベル取得部302により取得されたラベルデータ、及び学習部303により構築された学習済みモデル250等を記憶する。
以上、加工状態予測装置20が備える学習済みモデル250を生成するための機械学習について説明した。
次に、運用フェーズにおける加工状態予測装置20について説明する。
【0030】
<運用フェーズにおける加工状態予測装置20>
図1に示すように、運用フェーズにおける加工状態予測装置20は、入力部201、予測部202、決定部203、通知部204、及び記憶部205を含んで構成される。
なお、加工状態予測装置20は、
図1の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の図示しない演算処理装置を備える。また、加工状態予測装置20は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった図示しない主記憶装置を備える。
【0031】
そして、加工状態予測装置20において、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行なう。この演算結果に基づいて、加工状態予測装置20が各ハードウェアを制御する。これにより、
図1の機能ブロックによる処理は実現される。つまり、加工状態予測装置20は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0032】
入力部201は、バニシング加工に先立って、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を、工作機械10から入力する。入力部201は、入力された加工情報を予測部202に出力する。
なお、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報には、工具とワークとの相対回転数、工具とワークとの相対送り速度、及び転圧量が含まれてもよい。また、加工対象のワークに係る情報には、材質、硬度、厚さ(中空ワークの場合)、及び加工前表面粗さが含まれてもよい。
【0033】
予測部202は、入力部201により入力された加工情報に含まれるこれから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を、
図3の学習済みモデル250に入力する。そうすることで、予測部202は、学習済みモデル250の出力から、これから行うバニシング加工により加工対象のワークの「加工状態が正常」か、否か、及び「加工状態が正常」の場合の「加工後表面粗さ」を予測することができる。
【0034】
決定部203は、予測部202により予測された「加工状態が正常」か、否かを判定する。
決定部203は、予測部202により予測された「加工状態が正常」の場合、「加工後表面粗さ」と、予め設定された要求精度αと、を比較し、「加工後表面粗さ」が要求精度α内か否かを判定する。「加工後表面粗さ」が要求精度α内の場合、決定部203は、入力された加工情報に基づいて、工作機械10にワークに対してバニシング加工を実行させることを決定する。
一方、決定部203は、「加工状態が正常」でない(すなわち、加工状態が異常)の場合、又は「加工後表面粗さ」が要求精度α内でない場合、これから行うバニシング加工の加工情報の変更を決定する。
そうすることで、加工状態予測装置20は、「加工状態が正常」、及び「加工後表面粗さ」が要求精度α内となるように、工作機械10のオペレータに対してこれから行うバニシング加工の加工条件の見直しを促すことができる。
なお、要求精度αは、工作機械10に要求されるサイクルタイムや加工精度等に応じて適宜設定されてもよい。
【0035】
通知部204は、入力された加工情報に基づいて工作機械10にバニシング加工を実行させる決定を決定部203から受信した場合、例えば、工作機械10及び/又は制御装置101に含まれる液晶ディスプレイ等の出力装置(図示しない)に、入力された加工情報に基づくバニシング加工の実行指示を出力してもよい。
一方、通知部204は、加工情報の変更の決定を決定部203から受信した場合、工作機械10及び/又は制御装置101の出力装置(図示しない)に、これから行うバニシング加工の加工条件の変更指示を出力してもよい。
なお、通知部204は、スピーカ(図示しない)を介して音声により通知してもよい。
【0036】
記憶部205は、ROMやHDD等であり、各種の制御用プログラムとともに、学習済みモデル250、及び要求精度αを記憶してもよい。
【0037】
<運用フェーズにおける加工状態予測装置20の予測処理>
次に、本実施形態に係る加工状態予測装置20の予測処理に係る動作について説明する。
図5は、運用フェーズにおける加工状態予測装置20の予測処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、加工情報が入力される度に繰り返し実行される。
【0038】
ステップS11において、入力部201は、バニシング加工に先立って、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を工作機械10から取得する。
【0039】
ステップS12において、予測部202は、ステップS11で入力された加工情報を学習済みモデル250に入力することで、加工対象のワークの「加工状態が正常」か、否か、及び「加工後表面粗さ」を予測する。
【0040】
ステップS13において、決定部203は、ステップS12で予測された「加工状態が正常」か、否かを判定する。「加工状態が正常」の場合、処理はステップS14へ進む。一方、「加工状態が正常」でない場合、処理は、ステップS16へ進む。
【0041】
ステップS14において、決定部203は、ステップS13で判定された「加工状態が正常」の場合、「加工後表面粗さ」と、予め設定された要求精度αと、を比較し、「加工後表面粗さ」が要求精度α内か否かを判定する。「加工後表面粗さ」が要求精度α内の場合、処理はステップS15へ進む。一方、「加工後表面粗さ」が要求精度α内でない場合、処理はステップS16へ進む。
【0042】
ステップS15において、通知部204は、入力された加工情報に基づくバニシング加工の実行指示を、工作機械10及び/又は制御装置101の出力装置(図示しない)に出力する。
【0043】
ステップS16において、通知部204は、工作機械10及び/又は制御装置101の出力装置(図示しない)に、これから行うバニシング加工の加工情報の変更指示を出力する。この場合、工作機械10のオペレータは、「加工状態が正常」、及び「加工後表面粗さ」が要求精度α内となるように、これから行うバニシング加工の加工条件の見直しを行い、見直した加工情報を加工状態予測装置20に入力する(すなわち、ステップS11の処理に戻る)。
【0044】
以上により、一実施形態に係る加工状態予測装置20は、バニシング加工に先立って、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を学習済みモデル250に入力することで、これから行うバニシング加工の加工対象のワークの加工状態が正常か、否か、及び加工後表面粗さを予測する。
これにより、加工状態予測装置20は、実際に加工運転をしたりシミュレーションをすることなく、指定された加工条件でバニシング加工を行った場合の加工後のワークの加工状態を予測することができる。
【0045】
具体的には、学習モデルの構築後は、バニシング加工運転や加工後のワーク計測をすることなく、これから実施しようとしている加工条件で加工すると、うねりや変形が生じることなく正常に加工できるか、さらにはどれくらいの表面粗さが得られるかが、容易に予測できるようになる。
そうすることで、バニシング加工の加工条件の再調整や再加工といった試行錯誤(トライ・アンド・エラー)の手間を解消することができる。
【0046】
以上、一実施形態について説明したが、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0047】
<変形例1>
上述の実施形態では、機械学習装置30は、工作機械10、制御装置101、及び加工状態予測装置20と異なる装置として例示したが、機械学習装置30の一部又は全部の機能を、工作機械10、制御装置101、又は加工状態予測装置20が備えるようにしてもよい。
【0048】
<変形例2>
また例えば、上述の実施形態では、加工状態予測装置20は、工作機械10や制御装置101と異なる装置として例示したが、加工状態予測装置20の一部又は全部の機能を、工作機械10又は制御装置101が備えるようにしてもよい。
あるいは、加工状態予測装置20の入力部201、予測部202、決定部203、通知部204及び記憶部205の一部又は全部を、例えば、サーバが備えるようにしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、加工状態予測装置20の各機能を実現してもよい。
さらに、加工状態予測装置20は、加工状態予測装置20の各機能を適宜複数のサーバに分散される、分散処理システムとしてもよい。
【0049】
<変形例3>
また例えば、上述の実施形態では、加工状態予測装置20は、機械学習装置30から提供されたこれから行うバニシング加工の加工情報を入力し当該加工によるワークの加工状態情報を出力する学習済みモデル250を用いて、入力された加工情報からこれから行うバニシング加工により加工対象のワークの「加工状態が正常」か、否か、及び「加工後表面粗さ」を予測したが、これに限定されない。例えば、
図6に示すように、サーバ50は、機械学習装置30により生成された学習済みモデル250を記憶し、ネットワーク60に接続されたm個の加工状態予測装置20A(1)-20A(m)と学習済みモデル250を共有してもよい(mは2以上の整数)。これにより、新たな工作機械、及び加工状態予測装置が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
なお、加工状態予測装置20A(1)-20A(m)の各々は、工作機械10A(1)-10A(m)の各々と接続される。
また、工作機械10A(1)-10A(m)の各々は、
図1の工作機械10に対応する。加工状態予測装置20A(1)-20A(m)の各々は、
図1の加工状態予測装置20に対応する。
あるいは、
図7に示すように、サーバ50は、例えば、加工状態予測装置20として動作し、ネットワーク60に接続された工作機械10A(1)-10A(m)の各々に対して、入力されたこれから行うバニシング加工の加工情報から当該加工によるワークの「加工状態が正常」か、否か、及び「加工後表面粗さ」の加工状態情報を予測してもよい。これにより、新たな工作機械が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
【0050】
<変形例4>
また例えば、上述の実施形態では、機械学習装置30は教師あり学習を実行したが、これに限定されず、他の学習方法(例えば、+報酬/-報酬を与える強化学習等)により学習モデルを構築してもよい。
【0051】
なお、一実施形態における、加工状態予測装置20、及び機械学習装置30に含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0052】
加工状態予測装置20、及び機械学習装置30に含まれる各構成部は、電子回路等を含むハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。また、ハードウェアで構成する場合、上記の装置に含まれる各構成部の機能の一部又は全部を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等の集積回路(IC)で構成することができる。
【0053】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0054】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0055】
以上を換言すると、本開示の機械学習装置、加工状態予測装置、及び制御装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0056】
(1)本開示の機械学習装置30は、任意のワークの加工面に任意の工具を押し当てて表面処理を行ったバニシング加工において、少なくともバニシング加工前のワークに係る情報、及びバニシング加工の加工条件に係る情報を含む加工情報を、入力データとして取得する入力データ取得部301と、バニシング加工後のワークの加工状態、及び加工状態が正常の場合のワークの表面粗さを含む加工状態情報、を示すラベルデータを取得するラベル取得部302と、入力データ取得部301により取得された入力データと、ラベル取得部302により取得されたラベルデータと、を用いて、教師あり学習を実行し、これから行うバニシング加工の加工情報を入力しこれから行うバニシング加工における加工状態情報を出力する学習済みモデル250を生成する学習部303と、を備える。
この機械学習装置30によれば、実際に加工運転をしたりシミュレーションすることなく、指定された加工条件でバニシング加工を行った場合の加工後のワークの加工状態を精度良く出力する学習済みモデル250を生成することができる。
【0057】
(2) (1)に記載の機械学習装置30において、ワークに係る情報は、ワークの材質、硬度、厚さ、及び加工前の表面粗さの少なくとも1つを含み、バニシング加工の加工条件に係る情報は、工具とワークとの相対回転数、工具とワークの相対送り速度、及び転圧量の少なくとも1つを含んでもよい。
そうすることで、機械学習装置30は、バニシング加工前のワークに係る情報、及びバニシング加工の加工条件に係る情報に応じた加工状態情報を出力する学習済みモデル250を生成することができる。
【0058】
(3) (1)又は(2)に記載の機械学習装置30において、加工状態情報は、バニシング加工後のワークにおいて、うねり及び変形無しを示す加工状態が正常か、否か、及び加工状態が正常の場合の加工後表面粗さの少なくとも1つを含んでもよい。
そうすることで、機械学習装置30は、これから行うバニシング加工に応じた加工後のワークの加工状態情報を精度良く出力する学習済みモデル250を生成することができる。
【0059】
(4)本開示の加工状態予測装置20は、(1)から(3)のいずれかに記載の機械学習装置30により生成された、これから行うバニシング加工の加工情報を入力しこれから行うバニシング加工における加工状態情報を出力する学習済みモデル250と、バニシング加工に先立って、これから行うバニシング加工の加工条件に係る情報、及び加工対象のワークに係る情報を含む加工情報を入力する入力部201と、入力部201により入力された加工情報を学習済みモデル250に入力することで、学習済みモデル250が出力するこれから行うバニシング加工における加工状態情報を予測する予測部202と、を備える。
この加工状態予測装置20によれば、実際に加工運転をしたりシミュレーションをすることなく、指定された加工条件でバニシング加工を行った場合の加工後のワークの加工状態を予測することができる。
【0060】
(5) (4)に記載の加工状態予測装置20において、ワークに係る情報は、ワークの材質、硬度、厚さ、及び加工前の表面粗さの少なくとも1つを含み、バニシング加工の加工条件に係る情報は、工具とワークとの相対回転数、工具とワークの相対送り速度、及び転圧量の少なくとも1つを含んでもよい。
そうすることで、加工状態予測装置20は、バニシング加工前のワークに係る情報、及びバニシング加工の加工条件に係る情報に応じた加工状態情報を予測することができる。
【0061】
(6) (4)又は(5)に記載の加工状態予測装置20において、加工状態情報は、これから行うバニシング加工後の加工対象のワークにおいて、うねり及び変形無しを示す加工状態が正常か、否か、及び前記加工状態が正常の場合の加工後表面粗さの少なくとも1つを含んでもよい。
そうすることで、加工状態予測装置20は、これから行うバニシング加工に応じた加工後のワークの加工状態情報を精度良く予測することができる。
【0062】
(7) (6)に記載の加工状態予測装置20において、予測部202により予測された加工後表面粗さと、予め設定された要求精度αとを比較し、加工後表面粗さが要求精度α内か否かを判定する決定部203を備えてもよい。
そうすることで、加工状態予測装置20は、加工状態が正常、及び加工後表面粗さが要求精度α内となるように、工作機械10のオペレータに対してこれから行うバニシング加工の加工条件の見直しを促すことができる。
【0063】
(8) (4)から(7)のいずれかに記載の加工状態予測装置20において、学習済みモデル250を、加工状態予測装置20からネットワーク60を介してアクセス可能に接続されるサーバ50に備えてもよい。
そうすることで、加工状態予測装置20は、新たな工作機械10、制御装置101、及び加工状態予測装置20が配置されても学習済みモデル250を適用することができる。
【0064】
(9) (4)から(8)のいずれかに記載の加工状態予測装置20において、(1)から(3)のいずれかに記載の機械学習装置30を備えてもよい。
そうすることで、加工状態予測装置20は、上述の(1)から(8)のいずれかと同様の効果を奏することができる。
【0065】
(10)本開示の制御装置101は、(4)から(9)のいずれかの加工状態予測装置20を備える。
この制御装置101によれば、上述の(4)から(9)のいずれかと同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 工作機械
101 制御装置
20 加工状態予測装置
201 入力部
202 予測部
203 決定部
204 通知部
205 記憶部
250 学習済みモデル
30 機械学習装置
301 入力データ取得部
302 ラベル取得部
303 学習部
304 記憶部
50 サーバ
60 ネットワーク