(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】船舶の推進力出力を制御するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/21 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
B63H21/21
(21)【出願番号】P 2021578210
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2020068505
(87)【国際公開番号】W WO2021001418
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】522000496
【氏名又は名称】ヤラ・マリーン・テクノロジーズ・アーエス
【氏名又は名称原語表記】YARA MARINE TECHNOLOGIES AS
【住所又は居所原語表記】Drammensveien 134, Building No. 6, 0277 Oslo, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】イデスコグ、リヌス
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513057(JP,A)
【文献】特開2018-9474(JP,A)
【文献】特開2004-52697(JP,A)
【文献】特開昭61-291296(JP,A)
【文献】国際公開第2019/011779(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0324256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/21
B63H 21/14
B63H 3/10
F02D 29/02
F02D 45/00
F02D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(2)のプロペラシャフト(6)に適用される推進力出力を制御する方法(100)であって、前記船舶(2)は、推進力源(4)と、前記プロペラシャフト(6)とを含み、
前記推進力源(4)は、前記プロペラシャフト(6)に接続された内燃機関(14)を含み、
前記方法(100)は、
- 前記推進力源(4)によって推進力を生成するステップ(102)と、
- 前記内燃機関(14)の運転パラメータの現在値を決定するステップ(106)であって、前記運転パラメータは、前記推進力と異なるパラメータである、ステップ(106)と、
- 前記運転パラメータの前記現在値を第1のパラメータ制限値と比較するステップ(110)と
を含み、
前記内燃機関(14)は、少なくとも1つのシリンダ装置(22)と、ターボチャージャ(24)とを含み、
前記シリンダ装置(22)は、燃焼室(26)と、シリンダボア(28)と、前記シリンダボア(28)内で往復運動するように構成されたピストン(30)と、前記燃焼室(26)に接続されたガス入口(32)と、前記燃焼室(26)に接続されたガス出口(34)とを含み、
前記ガス出口(34)は、前記ターボチャージャ(24)のタービン側に接続され、及び前記ガス入口(32)は、前記ターボチャージャ(24)のコンプレッサ側に接続され、
前記内燃機関(14)の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ(18)は、前記ターボチャージャ(24)のパラメータを感知するように構成される、方法(100)において、
前記運転パラメータは、
- 前記ターボチャージャ(24)の回転速度と、前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の出口における圧力との間の相関性、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ(24)のタービン(46)にわたるエネルギー収支
の1つであり、
前記方法(100)は、
- 前記推進力源(4)の前記推進力の現在値を決定するステップ(104)、
- 前記推進力の前記現在値を下限動力値と比較するステップ(108)
を含み、
前記推進力の前記現在値が前記下限動力値と等しいか若しくはそれを下回る場合、
及び/又は、前記運転パラメータの前記現在値が前記第1のパラメータ制限値に達する場
合、前記方法(100)は、
- 前記内燃機関(14)の動力出力を引き上げるステップ(112)
を含むことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
前記運転パラメータの前記現在値が前記第1のパラメータ制限値に達する場合、
- 前記下限動力値を引き上げるステップ(114)
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
- 前記下限動力値の引き上げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ(116)
を含む、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
- 前記内燃機関(14)のさらなる運転パラメータの現在値を決定する任意選択的なステップ(118)であって、前記さらなる運転パラメータは、前記推進力と異なるパラメータである、任意選択的なステップ(118)
を含み、
- 前記推進力の前記現在値を上限動力値と比較するステップ(120)と、
- 前記運転パラメータの前記現在値又は前記さらなる運転パラメータの前記現在値を第2のパラメータ制限値と比較するステップ(122)と
を含み、
前記推進力の前記現在値が前記上限動力値と等しいか若しくはそれを超える場合、
及び/又は、前記運転パラメータの前記現在値若しくは前記さらなる運転パラメータの前記現在値が前記第2のパラメータ制限値に達する場
合、
- 前記内燃機関(14)の動力出力を引き下げるステップ(124)
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記運転パラメータの前記現在値又は前記さらなる運転パラメータの前記現在値が前記第2のパラメータ制限値に達する場合、
- 前記上限動力値を引き下げるステップ(126)
を含む、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
- 前記上限動力値の引き下げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ(128)
を含む、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記推進力源(4)は、前記プロペラシャフト(6)に接続されたさらなる内燃機関(14’)を含み、
前記内燃機関(14)の前記動力出力を引き上げる前記ステップ(112)は、
- 前記さらなる内燃機関(14’)の動力出力を引き下げるステップ(130)
を含む、請求項
4~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記内燃機関(14)の動力出力を引き下げる前記ステップ(124)は、
- 前記さらなる内燃機関(14’)の動力出力を引き上げるステップ(132)
を含む、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記船舶(2)は、前記プロペラシャフト(6)に接続された可変ピッチプロペラ(8)を含み、前記内燃機関(14)の前記動力出力を引き下げる前記ステップ(124)は、
- 前記可変ピッチプロペラ(8)のピッチを引き下げるステップ(134)
を含む、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記さらなる運転パラメータは、前記ターボチャージャ(24)及び/又は前記シリンダ装置(22)に関連する、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記さらなる運転パラメータは、
- 前記ターボチャージャ(24)の回転速度、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記タービン側の入口における温度、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記タービン側の出口における温度、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の出口における圧力
の1つに関連する、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記さらなる運転パラメータは、
- 前記シリンダ装置(22)の温度、又は
- 前記燃焼室(26)内の圧力
の1つに関連する、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記さらなる運転パラメータは、
- 前記ターボチャージャ(24)の回転速度と、前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の出口における圧力との間の相関性、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ24の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ(24)のタービン(46)にわたるエネルギー収支
の1つに関連する、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項14】
船舶(2)のプロペラシャフト(6)に適用される推進力出力を制御するためのシステム(10)であって、推進力源(4)と、制御装置(12)とを含み、
前記推進力源(4)は、前記プロペラシャフト(6)に接続された内燃機関(14)を含み、
前記制御装置(12)は、制御ユニット(16)と、前記内燃機関(14)の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ(18)を含み、
前記制御ユニット(16)は、
- 前記少なくとも1つのセンサ(18)を利用して、前記内燃機関(14)の
、推進力と異なるパラメータである運転パラメータの現在値を決定するこ
とと、
- 前記運転パラメータの前記現在値を第1のパラメータ制限値と比較することと、
前記内燃機関(14)は、少なくとも1つのシリンダ装置(22)と、ターボチャージャ(24)とを含み、
前記シリンダ装置(22)は、燃焼室(26)と、シリンダボア(28)と、前記シリンダボア(28)内で往復運動するように構成されたピストン(30)と、前記燃焼室(26)に接続されたガス入口(32)と、前記燃焼室(26)に接続されたガス出口(34)とを含み、
前記ガス出口(34)は、前記ターボチャージャ(24)のタービン側に接続され、及び前記ガス入口(32)は、前記ターボチャージャ(24)のコンプレッサ側に接続され、
前記内燃機関(14)の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための前記少なくとも1つのセンサ(18)は、前記ターボチャージャ(24)のパラメータを感知するように構成される、システム(10)において、
前記運転パラメータは、
- 前記ターボチャージャ(24)の回転速度と、前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の出口における圧力との間の相関性、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記回転速度の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ
(24
)の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の微分値の絶対値、
- 前記ターボチャージャ(24)の前記コンプレッサ側の前記出口における前記圧力の振幅の変動、
- 前記ターボチャージャ(24)のタービン(46)にわたるエネルギー収支
の1つであり、
前記制御装置(12)は、前記推進力源(4)の
動力出力を測定する少なくとも1つの動力出力測定装置(20、20’)を含み、
前記制御ユニット(16)は、
- 前記動力出力測定装置(20、20’)を利用して、前記推進力源(4)の推進力の現在値を決定することと、
- 前記推進力の前記現在値を下限動力値と比較することと
を行うように構成され、
前記推進力の前記現在値が前記下限動力値と等しいか又はそれを下回る場合、
及び/又は、前記運転パラメータの前記現在値が前記第1のパラメータ制限値に達する場
合、前記制御ユニット(16)は、
- 前記内燃機関(14)の動力出力を引き上げること
を行うように構成されることを特徴とする、システム(10)。
【請求項15】
前記制御ユニット(16)は、任意選択的に、
- 前記内燃機関(14)の
、推進力と異なるパラメータである、さらなる運転パラメータの現在値を決定するこ
とを行うように構成され、
前記制御ユニット(16)は、
- 前記推進力の前記現在値を上限動力値と比較することと、
- 前記運転パラメータの前記現在値又はさらなる運転パラメータの現在値を第2のパラメータ制限値と比較することと
を行うように構成され、
前記推進力の前記現在値が前記上限動力
値と等しいか若しくはそれを超える場合、
及び/又は、前記運転パラメータの前記現在値若しくは前記さらなる運転パラメータの前記現在値が前記第2のパラメータ制限値に達する場
合、前記制御ユニット(16)は、
- 前記内燃機関(14)の動力出力を引き下げること
を行うように構成される、請求項14に記載のシステム(10)。
【請求項16】
前記内燃機関(14)の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための前記少なくとも1つのセンサ(18)は、前記シリンダ装置(22)のパラメータを感知するように構成される、請求項14又は15に記載のシステム(10)。
【請求項17】
前記制御装置(12)は、視覚的及び/又は聴覚的な指示手段(50)を含み、前記運転パラメータの前記現在値が前記第1のパラメータ制限値に達する場合、前記制御ユニット(16)は、
- 前記下限動力値を引き上げることと、
- 前記視覚的及び/又は聴覚的な指示手段(50)を介して前記下限動力値の前記引き上げを示すことと
を行うように構成される、請求項
15に記載のシステム(10)。
【請求項18】
前記運転パラメータの前記現在値又は前記さらなる運転パラメータの前記現在値が前記第2のパラメータ制限値に達する場合、前記制御ユニット(16)は、
- 前記上限動力値を引き下げることと、
- 前記視覚的及び/又は聴覚的な指示手段(50)を介して前記上限動力値の前記引き下げを示すことと
を行うように構成される、請求項
17に記載のシステム(10)。
【請求項19】
前記推進力源(4)は、前記プロペラシャフト(6)に接続されたさらなる内燃機関(14’)を含み、
前記制御ユニット(16)は、前記内燃機関(14)の前記動力出力を引き上げるために、前記さらなる内燃機関(14’)の動力出力を引き下げるように構成される、請求項14~18のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項20】
前記制御ユニット(16)は、前記内燃機関(14)の前記動力出力を引き下げるために、前記さらなる内燃機関(14’)の動力出力を引き上げるように構成される、請求項19に記載のシステム(10)。
【請求項21】
前記船舶(2)は、前記プロペラシャフト(6)に接続された可変ピッチプロペラ(8)を含み、前記制御ユニット(16)は、前記内燃機関(14)の前記動力出力を引き下げるために、前記可変ピッチプロペラ(8)のピッチを引き下げるように構成される、請求項15に記載のシステム(10)。
【請求項22】
前記少なくとも1つのセンサ(18)は、
- 前記ターボチャージャ(24)の回転速度センサ、
- 前記ターボチャージャ(24)の圧力センサ、
- 前記ターボチャージャ(24)の温度センサ、
- 前記シリンダ装置(22)の温度センサ、
- 前記燃焼室(26)の圧力センサ
の1つである、請求項14~21のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項23】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法(100)の前記ステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項24】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法(100)の前記ステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体(90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法と、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御するためのシステムとに関する。本発明は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、プロペラシャフトを介してプロペラに接続される推進力源を含む。このようにして、推進力源は、船舶を推進するように配置される。
【0003】
推進力源は、少なくとも1つの内燃機関、ICEを含む。そのような船舶は、例えば、タンカー、RORO船、旅客フェリー、内航船など、商業輸送に使用される大型船舶である。
船の推進力は、ブリッジから制御される。ブリッジでは、人員は、船舶を制御するためのサポート情報にアクセスすることができる。情報は、例えば、地図、計器、船内通信装置の1つ又は複数を介して提供され得る。船舶の速度及びコースを制御するための制御装置もブリッジに設けられている。
【0004】
特許文献1は、エンジン及び可変ピッチプロペラを含む船舶の推進力を制御するためのユーザボード及び制御装置を開示している。トルク及びエンジン速度は、出力設定値に対応するように調整される。この調整は、前記船舶の燃料消費量が所望の燃料消費量範囲内に収まるように、前記エンジンのエンジン速度及び前記可変ピッチプロペラのプロペラピッチの運転状態で前記船舶が運転されるようなものである。出力設定値は、ユーザボードを用いて設定することができる。
特許文献2は、2エンジン1軸方式のプロペラを用いた自動速度制御方法を開示している。2エンジン1軸方式の2つのエンジンを別々に使用し、単一エンジンの出力領域を変えることなく総出力の範囲を広げることで幅広い速度制御を行うためのものである。実際の船速信号が設定船速信号より大きい場合、両方のエンジンを減速方向に制御し、出力が定格速度の40%になると、クラッチがエンジンの一方を解放し、他方のエンジンの出力は、80%まで引き上げられるように制御される。実際の船速がより小さい場合、他方のエンジンの出力が引き上げられ、それが85%になると、停止していたエンジンが始動され、両方のエンジンが42.5%の出力の回転で制御され、クラッチが接続されて2エンジン駆動に変換され、その際、変換前後の出力は、変わらない。この自動速度制御方法は、2つのエンジンの測定された回転速度に基づく。
非特許文献1は、船舶用ディーゼルエンジンのエンジン定格領域を特に開示している。
特許文献3は、船舶の燃料消費量を制御するための方法を開示している。船舶は、エンジンと可変ピッチプロペラとを含み、トルク及びエンジン速度は、出力設定点の値に対応するように調整される。この調整は、船舶の燃料消費量が所望の燃料消費量範囲内に入り、且つ/又は保持されるようなエンジン速度及び可変ピッチプロペラのプロペラピッチの運転状態でエンジンが運転されるようなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/011779号パンフレット
【文献】特開昭61291296A号公報
【文献】国際公開第2016/169991号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【文献】Claudiu Nichita:“X_DF Technology”,SNAME,9 January 2018,XP055733787
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
船舶のプロペラシャフトに適用される推進力を制御するための方法及び/又はシステムであって、推進力源によって生成される推進力だけでなく、推進力源の内燃機関の動作も考慮することを可能にする方法及び/又はシステムを実現することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、請求項1に係る方法を提供する。この方法は、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法であって、船舶は、推進力源と、プロペラシャフトとを含む、方法である。推進力源は、プロペラシャフトに接続された内燃機関を含む。方法は、
- 推進力源によって推進力を生成するステップと、
- 推進力源の推進力の現在値を決定するステップと、
- 内燃機関の運転パラメータの現在値を決定するステップであって、運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、ステップと、
- 推進力の現在値を下限動力値と比較するステップと、
- 運転パラメータの現在値を第1のパラメータ制限値と比較するステップと
を含む。推進力の現在値が下限動力値と等しいか若しくはそれを下回る場合、及び/又は運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、方法は、
- 内燃機関の動力出力を引き上げるステップ
を含む。
【0009】
方法は、内燃機関、ICEの動力出力を引き上げるステップを含む。このステップは、推進力の現在値が下限動力値と等しいか又はそれを下回る場合だけでなく、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合にも実行されるため、推進力出力を制御する方法は、ICEが好ましくない低動力出力状態で動作されることを防止するために推進力源のICEの運転状態を考慮する。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、請求項14に係るシステムを提供する。このシステムは、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御するためのシステムである。このシステムは、推進力源と、制御装置とを含む。推進力源は、プロペラシャフトに接続された内燃機関を含む。制御装置は、制御ユニットと、内燃機関の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサと、推進力源の少なくとも1つの動力出力測定装置とを含む。制御ユニットは、
- 動力出力測定装置を利用して、推進力源の推進力の現在値を決定することと、
- 少なくとも1つのセンサを利用して、内燃機関の運転パラメータの現在値を決定することであって、運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、決定することと、
- 推進力の現在値を下限動力値と比較することと、
- 運転パラメータの現在値を第1のパラメータ制限値と比較することと
を行うように構成される。推進力の現在値が下限動力値と等しいか若しくはそれを下回る場合、及び/又は運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニットは、
- 内燃機関の動力出力を引き上げること
を行うように構成される。
【0011】
同様に、方法に関連して上述したように、システムの制御ユニットは、推進力の現在値が下限動力値と等しいか又はそれを下回る場合だけでなく、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合にもICEの動力出力を引き上げるように構成されるため、推進力出力を制御するためのシステムは、ICEが好ましくない低動力出力状態で動作されることを防止するために推進力源のICEの現在の運転状態も考慮する。
【0012】
第1のパラメータ制限値は、ICEがICEの下限動力出力レベル、すなわちICEがそれ未満で動作される場合、例えばICEに害を及ぼし得、且つ/又はICEを不安定に及び/若しくは非効率的に動作させ得るレベルで動作されていることを示す運転パラメータの値を表す。
【0013】
より具体的には、船舶のプロペラシャフトに接続された推進力源は、動力ウィンドウ内でプロペラシャフトに推進力を与える。動力ウィンドウは、下限動力値及び上限動力値によって定められる。船舶が航行しているとき、すなわち船舶が推進力源によって推進されているとき、推進力源からプロペラシャフトに適用される現在の推進力出力が監視される。推進力源は、プロペラシャフトに適用される推進力が動力ウィンドウ内に留まるように制御される。推進力源の推進力を制御することに関連して、下限動力値は、下限設定値を形成し得る。上限動力値は、上限設定値を形成し得る。推進力源を動力ウィンドウ外で動作させると、少なくともより長い期間にわたってICEに害が及び、且つ/又はICEの非効率な動作を引き起こす可能性がある。
【0014】
実際には、これは、プロペラシャフトに適用される推進力が上限動力値を超えることができず、また下限動力値を下回ることもできず、少なくともより長い期間にわたってICEに害が及ばないように推進力源が制御されることを意味する。好適には、船舶のブリッジ上の人員が推進力源を制御するために使用する制御手段は、プロペラシャフトに適用される推進力を動力ウィンドウ内に制限するように構成される。
【0015】
従来、このような制御手段は、最も単純な形態では、ブリッジ上の人員と、船舶のエンジンルーム内のエンジン操作員との間の直接通信から、推進力源が上限動力値を超えることを自動的に防止する安全システムまで及んでいた。
【0016】
本発明者は、推進力源の下限動力出力が推進力源の所定の下限動力値によって定められるだけでなく、推進力源のICEの運転状態によっても定められると有益であろうことを認識した。すなわち、ICEの運転状態に応じて、設定された所定の下限動力値で推進力源を動作させると、ICEの好ましくない動作につながる可能性がある。より具体的には、例えば特定の海況及び/若しくは気象条件下など、船舶の特定の運転状態下並びに/又はICEの特定の運転状態、例えばICEのメンテナンス要求及び/若しくは燃料エネルギー含有量(例えば、使用される燃料の種類に依存)に起因するICEの特定の運転状態下において、推進力源の下限動力値に近い推進力出力をプロペラシャフトに適用すると、ICEに害を与え、且つ/又はICEを非効率的に、及び/若しくは環境に有害な方法において、及び/若しくは不規則に動作させることになる。一方、船舶の通常の運転状態下及び最近整備されたICEでは、推進力源の下限動力値がICEの安全な動作を提供するであろう。このように、本発明によれば、推進力の現在値と下限動力値とを比較するだけでなく、ICEの運転パラメータの現在値と第1のパラメータ制限値とを比較することにより、ICEの好ましくない動作は、内燃機関の動力出力を引き上げることによって防止される。したがって、ICEは、その下限動力出力レベルよりも上で動作される。
【0017】
船舶は、例えば、タンカー、RORO船、旅客フェリー又は内航船など、例えば商業輸送に使用される大型船舶であり得る。船舶の長さは、少なくとも90mであり得る。典型的には、船舶の自重トン数は、少なくとも4200トンであり得る。推進力源の最大動力出力は、少なくとも3MWであり得る。推進力源の最大動力出力は、3~85MWの範囲内であり得る。ICEの最大動力出力は、少なくとも2MWであり得る。
【0018】
推進力源は、少なくとも1つのICEを含む。いくつかの実施形態によれば、推進力源は、プロペラシャフトに接続された少なくとも1つのさらなるICE、すなわち少なくとも2つのICEを含む。
【0019】
制御装置は、本明細書で考察されるプロペラシャフトに適用される推進力出力の制御を実行するための専用のものであり得る。代替的に、制御装置は、船舶の推進及び/又はICEに関連するさらなる制御タスクを実行するように構成され得る。同様に、制御ユニットは、本明細書で考察される制御を実行するための専用の制御ユニットであり得る。代替的に、制御ユニットは、さらなる制御タスクを実行するように構成され得る。さらなる代替形態によれば、制御ユニットは、分散型制御ユニットであり得、すなわち本明細書で考察される制御を集合的に実行するように構成された複数のプロセッサ又は同様のデバイスを含み得る。
【0020】
推進力の現在値は、代替的に、推進力の瞬間値又は推進力の実勢値と呼ばれることがある。同様に、運転パラメータの現在値は、代替的に、運転パラメータの瞬間値又は運転パラメータの実勢値と呼ばれることがある。
【0021】
上述したように、第1のパラメータ制限値は、運転パラメータの値を表す。この値は、ICEが下限動力出力レベルで動作されていることを示す。特定の運転パラメータに応じて、第1のパラメータ制限値を下回るか又は超えることは、運転パラメータが、ICEの下限動力出力レベルを示す値に達したことを示す。様々な例の運転パラメータの考察を参照して、以下をさらに参照されたい。
【0022】
したがって、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達することに関連して、達するという用語は、運転パラメータが第1のパラメータ制限値と等しいか、又はそれを下回るか又はそれを超えることを意味する。運転パラメータは、ICEの下限動力出力レベルを上回るレベルに対応する運転パラメータのレベルから、第1のパラメータ制限値に達する。
【0023】
本方法の実施形態によれば、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、本方法は、
- 下限動力値を引き上げるステップ
を含み得る。このようにして、推進力源の下限動力値は、ICEの現在の運転状態に適合され得る。プロペラシャフトに適用される推進力出力の制御は、主に、推進力の現在値と、更新された、すなわち引き上げられた下限動力値との比較に基づき得る。
【0024】
下限動力を引き上げるステップが実行されている本方法の実施形態によれば、方法は、
- 下限動力値の引き上げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ
を含み得る。このようにして、人員は、船舶の運転状態が変化したことを認識することができる。下限動力値の引き上げにより、船舶の速度範囲は、狭められ、したがって船舶が制御され得る状態も狭められている。
【0025】
実施形態によれば、方法は、
- 内燃機関のさらなる運転パラメータの現在値を決定する任意選択的なステップであって、さらなる運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、任意選択的なステップ
を含み得る。この場合、方法は、
- 推進力の現在値を上限動力値と比較するステップと、
- 運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値を第2のパラメータ制限値と比較するステップと
を含み得る。推進力の現在値が上限動力値と等しいか若しくはそれを超える場合、及び/又は運転パラメータの現在値若しくはさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、方法は、
- 内燃機関の動力出力を引き下げるステップ
を含み得る。このようにして、推進力源のICEが好ましくない高い動力出力状態で動作されることを防止することができる。すなわち、方法は、ICEの動力出力を引き下げるステップを含む。このステップは、推進力の現在値が上限動力値と等しいか又はそれを超える場合だけでなく、運転パラメータ又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合にも実行されるため、推進力出力を制御する方法は、ICEが好ましくない高い動力出力状態で動作されることを防止するために推進力源のICEの運転状態を考慮する。
【0026】
第2のパラメータ制限値は、ICEがICEの上限動力出力レベル、すなわちICEがそれを超えて動作されると、例えばICEに害を与え、且つ/又はICEの不安定及び/若しくは非効率的な動作を引き起こし得るレベルで動作されていることを示す運転パラメータ又はさらなる運転パラメータの値を表す。
【0027】
特定の運転パラメータに応じて、第2のパラメータ制限値を超えることは、運転パラメータ又はさらなる運転パラメータが、ICEの上限動力出力レベルを示す値に達したことを示す。様々な例の運転パラメータの考察を参照して、以下をさらに参照されたい。
【0028】
したがって、運転パラメータ又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達することに関連して、達するという用語は、運転パラメータが第2のパラメータ制限値と等しいか又はそれを超えることを意味する。
【0029】
運転パラメータは、ICEの上限動力出力レベル未満のレベルに対応する運転パラメータのレベルから第2のパラメータ制限値に達する。
【0030】
上述したように、運転パラメータの現在値と第2のパラメータ制限値とを比較するステップで利用される運転パラメータは、運転パラメータの現在値と第1のパラメータ制限値とを比較するステップで利用される運転パラメータと同じであり得る。代替的に、運転パラメータの現在値と第2のパラメータ制限値とを比較するステップで利用される運転パラメータは、運転パラメータの現在値と第1のパラメータ制限値とを比較するステップで利用される運転パラメータと異なる運転パラメータ、すなわちさらなる運転パラメータであり得る。
【0031】
方法の実施形態によれば、運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、方法は、
- 上限動力値を引き下げるステップ
を含み得る。このようにして、推進力源の上限動力値は、ICEの現在の運転状態に適合され得る。プロペラシャフトに適用される推進力出力の制御は、主に、推進力の現在値と、更新された、すなわち引き下げられた上限動力値との比較に基づくことができる。
【0032】
上限動力値を引き下げるステップが実行されている方法の実施形態によれば、方法は、
- 上限動力値の引き下げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ
を含み得る。このようにして、人員は、船舶の運転状態が変化したことを認識することができる。上限動力値の引き下げにより、船舶の速度範囲は、狭められ、したがって船舶が制御され得る状態も狭められている。
【0033】
推進力源が、プロペラシャフトに接続されたさらなる内燃機関を含む方法の実施形態によれば、内燃機関の動力出力を引き上げるステップは、
- さらなる内燃機関の動力出力を引き下げるステップ
を含み得る。このようにして、さらなるICEの動力出力を引き下げるステップは、さらなるICEの動力出力を引き下げる前と同じ推進力出力が船舶のプロペラシャフトに適用されることを維持するために、ICEの動力出力を引き上げることを提供し得る。すなわち、ICEは、さらなるICEの動力出力の引き下げを補償する。その結果、ICEの動力出力を引き上げるステップが達成され得る。
【0034】
推進力源が、プロペラシャフトに接続されたさらなる内燃機関を含む方法の実施形態によれば、内燃機関の動力出力を引き下げるステップは、
- さらなる内燃機関の動力出力を引き上げるステップ
を含み得る。このようにして、さらなるICEの動力出力を引き上げるステップは、さらなるICEの動力出力を引き上げる前と同じ推進力出力が船舶のプロペラシャフトに適用されることを維持するために、ICEの動力出力を引き下げることを提供し得る。すなわち、ICEは、さらなるICEの動力出力の引き上げを補償する。その結果、ICEの動力出力を引き下げるステップが達成され得る。
【0035】
発明によれば、内燃機関は、少なくとも1つのシリンダ装置と、ターボチャージャとを含む。シリンダ装置は、燃焼室と、シリンダボアと、シリンダボア内で往復運動するように構成されたピストンと、燃焼室に接続されたガス入口と、燃焼室に接続されたガス出口とを含む。ガス出口は、ターボチャージャのタービン側に接続される。ガス入口は、ターボチャージャのコンプレッサ側に接続される。運転パラメータ及び/又は選択的にさらなる運転パラメータは、ターボチャージャ及び/又は選択的にシリンダ装置に関連する。このようにして、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、ICEの運転パラメータに関連し得る。それにより、ICEの下限及び/又は上限動力出力レベルでの運転が識別され得る。
【0036】
本システムの実施形態によれば、制御ユニットは、任意選択的に、
- 内燃機関のさらなる運転パラメータの現在値を決定することであって、さらなる運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、決定すること
を行うように構成され得る。制御ユニットは、
- 推進力の現在値を上限動力値と比較することと、
- 運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値を第2のパラメータ制限値と比較することと
を行うように構成され得る。推進力の現在値が上限動力値と等しいか若しくはそれを超える場合、及び/又は運転パラメータの現在値若しくはさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニットは、
- 内燃機関の動力出力を引き下げること
を行うように構成され得る。このようにして、本方法を参照して上述したように、推進力源のICEが好ましくない高い動力出力状態で動作されることを防止することができる。すなわち、制御ユニットは、ICEの動力出力を引き下げるように構成される。これは、推進力の現在値が上限動力値と等しいか又はそれを超える場合だけでなく、運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合にも実行されるため、推進力出力を制御するためのシステムは、ICEが好ましくない高い動力出力状態で動作されることを防止するために推進力源のICEの運転状態を考慮する。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、コンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、本明細書で考察される態様及び/又は実施形態のいずれか1つによる方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、本明細書で考察される態様及び/又は実施形態のいずれか1つによる方法のステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0039】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の詳細な記載を検討すると明らかになるであろう。
【0040】
その特定の特徴及び利点を含む本発明の様々な態様及び/又は実施形態は、以下の詳細な記載及び添付の図面で考察される例示的な実施形態から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御するシステムを概略的に示す。
【
図4】船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法を示す。
【
図5】実施形態によるコンピュータ可読記憶媒体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明の態様及び/又は実施形態をより詳細に記載する。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。よく知られている機能又は構造については、簡潔及び/又は明確にするために必ずしも詳細に記載しない。
【0043】
図1は、一実施形態による船舶2を示す。船舶2は、旅客運搬及び/又は物品運搬などの商業輸送に使用されるように構成されている。
【0044】
船舶2は、推進力源4と、プロペラシャフト6と、プロペラ8とを含む。推進力源4は、プロペラシャフト6に接続されており、プロペラシャフト6に推進力出力を適用するように構成されている。また、プロペラ8は、プロペラシャフト6に接続されている。このように、推進力源4は、船舶2を推進するように配置されている。
【0045】
さらに、船舶2は、プロペラシャフト6に適用される推進力出力を制御するシステム10を含む。
【0046】
これらの実施形態では、船舶2は、1つのプロペラシャフト6及び1つの推進力源4を含む。代替的な実施形態では、船舶2は、1つ又は複数のさらなるプロペラシャフトと、さらなるプロペラシャフトのそれぞれに接続された1つのさらなる推進力源とを含み得る。
【0047】
図2は、船舶のプロペラシャフト6に適用される推進力出力を制御するためのシステム10を概略的に示す。船舶は、
図1を参照して上述したような船舶2であり得る。
【0048】
システム10は、推進力源4と、制御装置12とを含む。推進力源4は、船舶のプロペラシャフト6に接続された内燃機関、ICE14を含む。
【0049】
制御装置12は、制御ユニット16と、ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ18と、推進力源4の少なくとも1つの動力出力測定装置20、20’とを含む。
【0050】
図2に2つの動力出力測定装置20、20’が示されている。第1の動力出力測定装置20は、プロペラシャフト6に適用されるトルクを測定するように構成されたトルクメータを含み得る。例えば、回転速度計によって提供されるか又はICE14の回転速度データから計算される、プロペラシャフト6の角速度ωに関する知識を用いて、プロペラシャフト6に適用される推進力出力を計算し得る。第2の動力測定装置20’は、燃料ラック位置センサを含み得る。このセンサにより、ICE14に噴射される燃料の量が推定される。例えば、ICE14に噴射された燃料の推定量と、ICE14の回転速度とにより、プロペラシャフト6に適用される推進力出力の測定値を得ることができる。
【0051】
制御装置12は、図示された動力出力測定装置20、20’の一方のみ又は両方を含み得る。後者の場合、動力出力測定装置20、20’が提供する測定値は、互いに補完し得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、推進力源4は、破線で描かれたICE14’によって示されるように、プロペラシャフト6に接続されたさらなるICE14’を含み得る。そのような実施形態では、推進力源4の第2の動力測定装置20’は、さらなるICE14’のためにも燃料ラック位置センサを含むであろう。
【0053】
本発明は、特定のタイプの出力測定装置に限定されない。したがって、代替的又は追加的に、制御装置12は、上述したものと異なる出力測定装置を含み得る。出力測定装置のさらなる例は、燃料ラック位置センサ以外のICE14又はICE14、14’に噴射される燃料の量を決定するための他の手段、例えば燃料ライン上の質量流量計若しくは体積流量計又はICE14の回転速度センサと連動した平均シリンダ圧決定手段などを含み得る。出力測定装置が、ICE14又はICE14、14’に関連する測定値を提供するように構成されている場合、ICE14又はICE14、14’に接続されているトランスミッションにおける既知の損失及び既知の動力取り出し装置の動力消費に基づいて、推進力源の推進力出力を推定し得る。
【0054】
ICE14及びさらなるICE14’のそれぞれは、大型のディーゼルエンジンであり得る。ICE14及びさらなるICE14’のそれぞれは、2ストロークエンジン又は4ストロークエンジンであり得る。
【0055】
推進力源4は、その中で推進力源4を動作させることができる動力ウィンドウを有する。動力ウィンドウは、下限動力値及び上限動力値によって定められる。下限及び上限動力値は、制御ユニット16において設定され得る。制御ユニット16は、プロペラシャフト6に適用される推進力源4の動力出力を動力ウィンドウ内に維持するように構成される。
【0056】
ユーザインタフェース21が制御ユニット16に接続され得る。ユーザインタフェース21は、船舶のブリッジに配置され得る。ユーザインタフェース21を介して、制御装置12のユーザ制御可能な側面が人員によって制御され得る。例えば、ユーザインタフェース21は、船舶の推進力がそのあたりで制御される設定値を設定するための手動制御可能な装置又は自動操縦システムを含み得る。
【0057】
ユーザインタフェース21を介して、制御装置12からの/制御装置12に関する情報が船舶上の人員に提示され得る。
【0058】
図3は、
図2に示すICE14の断面を概略的に示す。以下では、ICE14について言及する。しかしながら、同じ説明は、さらなるICE14’を含む実施形態においてさらなるICE14’にも適用され得る。
【0059】
ICE14は、少なくとも1つのシリンダ装置22と、ターボチャージャ24とを含む。シリンダ装置22は、燃焼室26と、シリンダボア28と、シリンダボア28内で往復運動するように構成されたピストン30と、燃焼室26に接続されたガス入口32と、燃焼室26に接続されたガス出口34とを含む。ガス出口34は、ターボチャージャ24のタービン側に接続される。ガス入口32は、ターボチャージャ24のコンプレッサ側に接続される。ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ18は、ターボチャージャ24及び/又はシリンダ装置22のパラメータを感知するように構成される。
【0060】
接続ロッド36は、ピストン30をICE14のクランクシャフト38に接続する。1つ又は複数の吸気弁40は、ガス入口32を通るガスの流れを制御するために配置される。1つ又は複数の排気弁42は、ガス出口34を通るガスの流れを制御するために配置される。吸気弁及び排気弁40、42は、1つの共通のカムシャフト又はそれぞれ1つのカムシャフト(図示せず)によって制御される。燃料は、燃料インジェクタ44を介して燃焼室26に噴射される。
【0061】
典型的には、ICE14は、4~20個のシリンダ装置の範囲内の任意の数のシリンダ装置22を含み得る。すなわち、ICE14は、4~20気筒のICEであり得る。
【0062】
公知の態様では、ターボチャージ24は、共通のシャフト(図示せず)を介してコンプレッサ48を駆動するタービン46を含む。タービン46は、燃焼室26から排出された排気ガスによって駆動される。コンプレッサ48は、燃焼室26への吸気のために、新鮮なガス、典型的には空気を圧縮する。
【0063】
ICE14は、複数のターボチャージャ24を含み得る。例えば、ICE14は、それぞれがICE14のシリンダ装置22の半分に接続された2つのターボチャージャを含み得る。
【0064】
ターボチャージャ24の回転速度は、タービン46、コンプレッサ48及びこれらを接続する共通シャフトの回転速度に関係する。
【0065】
ICE14は、推奨下限動力出力レベルと推奨上限動力出力レベルとを有する。推奨下限動力出力レベル及び推奨上限動力出力レベルは、ICE14が効率的に、且つ/又は確実に、且つ/又は環境に優しい方法において、且つ/又はICE14を害することなく動作され得る動力範囲を規定する。
【0066】
図2及び3を参照すると、上述したように、制御装置12は、制御ユニット16と、ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ18と、推進力源4の少なくとも1つの動力出力測定装置20、20’とを含む。
【0067】
制御ユニット16は、実質的に任意の適切なタイプのプロセッサ回路又はマイクロコンピュータ、例えばデジタル信号処理のための回路(デジタル信号プロセッサ、DSP)、中央演算処理装置(CPU)、処理ユニット、処理回路、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ又は命令を解釈して実行し得る他の処理ロジックの形態をとり得る少なくとも1つの計算ユニットを含む。本明細書で利用される「計算ユニット」という表現は、例えば、上述したもののいずれか、いくつか又はすべてなど、複数の処理回路を含む処理回路を表し得る。制御ユニット16は、メモリユニットを含む。計算ユニットは、メモリユニットに接続されている。メモリユニットは、例えば、計算ユニットが計算を実行するためにイネーブルしなければならない格納されたプログラムコード及び/又は格納されたデータを計算ユニットに提供する。このようなデータは、ICE14の運転パラメータ、ICE14の燃料消費量、回転速度及び/若しくは動力出力に関連するデータテーブル、並びに/又はターボチャージャ24の回転速度、圧力、シリンダ圧力、並びに/又はICEの出力シャフトトルク、並びに/又は燃料ラック位置センサの位置等に関連し得る。
【0068】
計算ユニットは、計算の部分的若しくは最終的な結果並びに/又は測定及び/若しくは決定されたパラメータを、例えば計算又は値の決定に使用するためのテーブルとしてメモリユニットに格納するようにも適合されている。メモリユニットは、データ又はプログラム、すなわち一連の命令を一時的又は恒久的に格納するために使用される物理的なデバイスを含み得る。いくつかの実施形態によれば、メモリユニットは、シリコンベースのトランジスタを含む集積回路を含み得る。メモリユニットは、異なる実施形態において、例えばメモリカード、フラッシュメモリ、USBメモリ、ハードディスク又は例えばROM(リードオンリーメモリ)、PROM(プログラマブルリードオンリーメモリ)、EPROM(消去可能PROM)、EEPROM(電気的消去可能PROM)、その他など、データを格納するための他の同様の揮発性又は不揮発性の格納ユニットを含み得る。
【0069】
制御ユニット16は、入力信号及び出力信号をそれぞれ受信及び/又は送信するための装置をさらに含む。これらの入力信号及び出力信号は、入力信号受信装置が情報として検出することができ、計算ユニットによって処理可能な信号に変換することができる波形、パルス又は他の属性を含み得る。
【0070】
例えば、ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ18及び動力出力測定装置20、20’は、入力信号受信装置によって受信されるそのような信号を提供する。これらの信号は、その後、計算ユニットに供給される。ユーザインタフェース21は、入力信号受信装置に信号を送信し得る。
【0071】
出力信号送信装置は、計算ユニットからの計算結果を、その信号が意図されている構成要素に伝達するための出力信号に変換するように配置される。出力信号送信装置は、例えば、ICE14及び推進力源4内に含まれている場合にさらなるICE14’の動作を制御するための制御信号を送信し得、任意選択的に可変ピッチプロペラ8に送信し得る。出力信号送信装置は、推進力源4及び/又はICE14の動作に関連するデータ及び/又は情報を表す信号をユーザインタフェース21に送信し得る。
【0072】
入力信号及び出力信号を送受信するための各装置への接続のそれぞれは、ケーブル、データバス、例えばCAN(コントローラエリアネットワーク)バス、MOST(media orientated systems transport)バス若しくは他のバス構成又は無線接続の中から選択される1つ又は複数の形態をとり得る。
【0073】
したがって、制御装置12は、ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを感知するための少なくとも1つのセンサ18及び推進力源4の少なくとも1つの動力出力測定装置20、20’からの入力を受けた制御ユニット16の制御下において、推進力源4の少なくとも一部、特にICE14の回転速度及び/又は動力出力など、ICE14を制御するように構成される。
【0074】
制御ユニット16は、以下を行うように構成される:
- 動力出力測定装置20、20’を利用して、推進力源4の推進力の現在値を決定すること。このようにして、推進力源4が出力する推進力を断続的又は連続的に監視することができる。
- 少なくとも1つのセンサ18を利用して、ICE14の運転パラメータの現在値を決定すること。その運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである。このようにして、ICE14の1つの運転パラメータを断続的又は連続的に監視することができる。
- 推進力の現在値を下限動力値と比較すること。
- 運転パラメータの現在値を第1のパラメータ制限値と比較すること。
推進力の現在値が下限動力値と等しいか若しくはそれを下回る場合、及び/又は運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニット16は、
- ICE14の動力出力を引き上げること
を行うように構成される。
【0075】
推進力源4の動作中、推進力源は、推進力源の利用可能な動力ウィンドウ内の設定値に基づいて制御される。設定値は、例えば、ユーザインタフェース21を介して且つ例えば現在の運転状態下で船舶2をどのように推進させるかに基づいて、人員又は自動操縦システムによって選択される。
【0076】
下限動力値は、推進力源4から船舶2のプロペラシャフト6に出力される推進力の下限設定値又は閾値を形成する。下限動力値は、例えば、船舶の航海上の要求、及び/又は所望の最小船速、及び/又は船舶の操舵方向に基づく値であり得る。また、制御装置12で適用される下限動力値は、例えば、ICE14のアイドル速度に基づいて定められ得る。
【0077】
第1のパラメータ制限値は、ICE14の動力出力が低すぎるためにICE14が動作上の欠点を示し始める関連パラメータの閾値を形成する。第1のパラメータ制限値は、
図4を参照して後述するように、ICE14の態様及び/又はパラメータに関連し得る。
【0078】
新しい又は整備済みのICE14の場合及び船舶2の通常の運転状態下では、共通してICE14に関連する第1のパラメータ制限値に達する前に、推進力源4に関連する下限動力値に達する。しかしながら、船舶の特定の運転状態、例えば特定の海況及び/若しくは気象条件下並びに/又はICEの特定の運転状態、例えばICE14のメンテナンス状況に関連する状態及び/若しくは燃料エネルギー含有量の下では、下限動力値に達する前に第1のパラメータ制限値に達する可能性がある。
【0079】
一例として、ICE14の特定の構成要素が適切に動作していない場合、推進力源4が下限動力値に近いが、それより上で動作されているとき、ICE14の推奨下限動力出力レベルに達する。
【0080】
上述した制御ユニット16の構成により、推進力源4に関連する下限動力値と、ICE14に関連する第1のパラメータ制限値とに関連して、上述した両方の運転状態を考慮する。制御ユニット16は、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達したことに応答して、ICE14の動力出力を引き上げるように構成されるため、通常であれば推進力源4が下限動力値に近いところで動作されるであろうときに下限動力出力レベル未満で動作することに起因して、ICE14が害を受け、且つ/又は非効率的に動作され、及び/若しくは環境に有害な方法で動作されないことが保証され得る。
【0081】
ICE14の動力出力は、例えば、ICE14のシリンダに噴射される燃料の量を増加させることによって及び/又は後述する方法で引き上げることができる。
【0082】
実際には、純粋に例として言及すると、本発明に従ってICE14の動力出力を引き上げることは、以下の状況を回避するために実行され得る:2ストロークディーゼルエンジンの形態のICE14は、低いエンジン速度でシリンダに給気を供給するように構成された電気駆動式の補助ブロワを含み得る。すなわち、低いエンジン速度では、ターボチャージャは、シリンダに給気するために十分な空気を供給できない。下限動力値に近い設定値で推進力源4を動作させると、ICE14が低速で動作し、補助ブロワが自動的に起動されることがある。これは、次に、ICE14の動力出力を引き上げる。これにより、ターボチャージャ24のコンプレッサによってより高い給気圧が生成され、補助ブロワが停止される。その後、推進力源の設定値は、補助ブロワが再び起動されるように、ICE14の動力出力及び回転速度を引き下げる。したがって、補助ブロワは、自動的に頻繁にオン及びオフされることになる。これは、好ましくない。したがって、本発明によれば、ICE14の運転パラメータは、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の圧力であり得る。第1のパラメータ制限値は、好適には、補助ブロワが起動される直前の圧力レベルに設定され得る。運転パラメータの現在値を決定し、運転パラメータの現在値と第1のパラメータ制限値とを比較し、「運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合」という条件が満たされることに起因して、制御ユニット16は、ICE14の動力出力を引き上げる。したがって、補助ブロワを自動的にオン及びオフすることが回避される。
【0083】
実施形態によれば、制御ユニット16は、任意選択的に、
- ICE14のさらなる運転パラメータの現在値を決定することであって、さらなる運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、決定すること
を行うように構成され得る。さらなる運転パラメータは、上述の運転パラメータとも異なるパラメータである。したがって、後述するように、ICE14を制御する際、ICE14のさらなる運転パラメータが考慮され得る。さらに、制御ユニット16は、以下を行うように構成され得る:
- 推進力の現在値を上限動力値と比較すること。
- 運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値を第2のパラメータ制限値と比較すること。
推進力の現在値が上限動力値と等しいか若しくはそれを超える場合、及び/又は運転パラメータの現在値若しくはさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニット16は、
- ICE14の動力出力を引き下げること
を行うように構成される。
【0084】
上記の考察から理解されるように、第2のパラメータ制限値は、第1のパラメータ制限値と同じ運転パラメータに関連し得るか、又は異なる運転パラメータ、すなわちさらなる運転パラメータに関連し得る。
【0085】
上限動力値は、推進力源4から船舶2のプロペラシャフト6に出力される推進力の上限設定値又は閾値を形成する。上限動力値は、例えば、船舶の航海上の要求、並びに/又は所望の最大速度、並びに/又は推進力源の上限動力に関連する態様、並びに/又はプロペラの制限、並びに/又は潜在的な船舶及び/若しくは貨物の損傷の最小化に基づく値であり得る。制御装置12で適用される上限動力値は、例えば、推進力源の上限動力に関連する態様及び/又はプロペラの制限に基づいて定められ得る。
【0086】
第2のパラメータ制限値は、ICE14の高すぎる動力出力のためにICE14が動作上の欠点を示し始める関連パラメータの閾値を形成する。第2のパラメータ制限値は、
図4を参照して後述するように、ICE14の態様及び/又はパラメータに関連し得る。
【0087】
新しい又は整備済みのICE14の場合及び船舶2上の通常の運転状態下では、ICE14に関連する第2のパラメータ制限値に達する前に、推進力源4に関連する上限動力値に達する。しかしながら、船舶の特定の運転状態、例えば特定の海況及び/若しくは気象条件下並びに/又はICEの特定の運転状態、例えばICE14のメンテナンス状況に関連する状態及び/若しくは燃料エネルギー含有量の下では、上限動力値に達する前に第2のパラメータ制限値に達する可能性がある。
【0088】
一例として、ICE14の特定の構成要素が適切に動作していない場合、推進力源4が上限動力値に近いが、それ未満で動作されているとき、ICE14の推奨上限動力出力レベルに達する。
【0089】
ここでも、制御ユニット16の上述した構成により、上述した両方の運転状態を考慮する。今回は、推進力源4に関連する上限動力値と、ICE14に関連する第2のパラメータ制限値とに関連している。制御ユニット16は、運転パラメータ又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達したことに応答して、ICE14の動力出力を引き下げるように構成されるため、通常であれば推進力源4が上限動力値に近いところで動作されるであろうときに上限動力出力レベルを超えて動作することに起因して、ICE14が害を受け、且つ/又は非効率的に動作し、及び/若しくは環境に有害な方法で動作されないことが保証され得る。
【0090】
ICE14の動力出力は、ICE14のシリンダに噴射される燃料の量を減らすことによって及び/又は後述する方法で引き下げられ得る。
【0091】
推進力源の推進力の現在値が、ICE14のパラメータを測定することを介して、動力出力測定装置20、20’を利用して間接的に決定される場合、第1又は第2のパラメータ制限値と比較される、決定されたICE14の運転パラメータ又はさらなる運転パラメータは、推進力の現在値を間接的に決定するために利用されるパラメータと異なるICE14のパラメータであり得る。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、制御装置12は、視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50を含み得る。運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニット16は、以下を行うように構成され得る:
- 下限動力値を引き上げること。
- 視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50を介して下限動力値の引き上げを示すこと。
このようにして、ICE14の動力出力の引き上げは、主に推進力源4の推進力に関連する状態に基づいて制御ユニット16によって制御される。すなわち、ICE14の第1のパラメータ制限値に達する前に、推進力源4の下限動力値に達する。さらに、船舶上の人員は、視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50を介して、引き上げられた下限動力値を認識することになり、したがって船舶を制御する際、推進力源4の下限動力出力のそれに続く引き上げを考慮に入れることができる。
【0093】
いくつかの実施形態によれば且つ方法100を参照して後述するように、制御装置12は、いかなる視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50も含まなくてもよい。したがって、制御ユニット16は、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達したことに応答して、下限動力出力値の引き上げを示すことなく、下限動力出力値を引き上げるように構成され得る。
【0094】
純粋に一例として述べれば、下限動力値の引き上げは、例えば、推進力源4の最大動力出力に応じて、0.5%若しくは1.0%又は2~10%など、より大きい値であり得る。最大動力出力が大きいほど、下限動力値の引き上げが小さくなる。
【0095】
視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50は、船舶2上の人員に視覚的及び/又は聴覚的な情報を提供するためのスクリーン、及び/又はランプ、及び/又はディスプレイ、及び/又はスピーカー、及び/又はブザー、及び/又は同様の装置を含み得る。視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50は、ユーザインタフェース21の一部を形成し得る。
【0096】
視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50は、下限動力値の実際の引き上げを数字、例えば引き上げの割合で表示し得るか、又は引き上げ後に利用可能な推進力源4の動力ウィンドウを表示し得る。代替的に、視覚的指示手段50は、例えば、推進力源4の動力ウィンドウの下限を表す線を移動させることにより、下限動力値の引き上げをグラフィカルに表示し得る。
【0097】
船舶のいくつかの運転状態下でICE14の第1のパラメータ制限値に再び達する場合、下限動力値をさらに引き上げ得る。
【0098】
いくつかの実施形態によれば、運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、制御ユニット16は、以下を行うように構成され得る:
- 上限動力値を引き下げること。
- 視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50を介して上限動力値の引き下げを示すこと。
このようにして、ICE14の動力出力の引き下げは、主に推進力源4の推進力に関する状態に基づいて制御ユニット16によって制御される。すなわち、ICE14の第2のパラメータ制限値に達する前に、推進力源4の上限動力値に達する。さらに、船舶上の人員は、視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50を介して、引き下げられた上限動力値を認識し、したがって船舶を制御する際、推進力源4の上限動力出力のそれに続く引き下げを考慮に入れることができる。
【0099】
いくつかの実施形態によれば且つ方法100を参照して後述するように、制御装置12は、いかなる視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50も含まなくてもよい。したがって、制御ユニット16は、運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達したことに応答して、上限動力出力値の引き下げを示すことなく、上限動力出力値を引き下げるように構成され得る。
【0100】
純粋に一例として述べれば、上限動力値の引き下げは、例えば、推進力源4の最大動力出力に応じて、0.5%若しくは1.0%又は2~10%など、より大きい値であり得る。最大動力出力が大きいほど、上限動力値の引き下げが小さくなる。
【0101】
視覚的及び/又は聴覚的な指示手段50は、上限動力値の実際の引き下げを数字、例えば引き下げの割合で表示し得るか、又は引き下げ後に利用可能な推進力源4の動力ウィンドウを表示し得る。代替的に、視覚的指示手段50は、例えば、推進力源4の動力ウィンドウの上限を表す線を移動させることにより、上限動力値の引き下げをグラフィカルに表示し得る。
【0102】
船舶のいくつかの運転状態下でICE14の第2のパラメータ制限値に再び達する場合、上限動力値をさらに引き下げ得る。
【0103】
初期状態では、それぞれの下限及び上限動力値は、上述の考察に従って設定された開始値であり得る。上述した下限動力値の引き上げ及び上限動力値の引き下げは、それぞれの下限及び上限動力値が船舶及び/又はICE14の現在の運転状態に適合され得ることを伴う。船舶及び/又はICE14の正常な運転状態が再び確立されると、下限動力値及び上限動力値の一方又は両方は、元の開始値にリセットされ得るか、又は新たな要求又は要望に対応する新たな開始値にリセットされ得る。
【0104】
推進力源4が、プロペラシャフト6に接続されたさらなる内燃機関14’を含むいくつかの実施形態によれば、制御ユニット16は、
- 内燃機関14の動力出力を引き上げるために、さらなる内燃機関14’の動力出力を引き下げること
を行うように構成され得る。このようにして、推進力源4の集合的な動力出力が維持され得る一方、ICE14は、第1のパラメータ制限値に対応する動力出力を上回る動力出力で動作される。
【0105】
さらなるICE14’の動力出力の引き下げは、いくつかの状況下において、さらなるICE14’が遮断され、且つ/又はプロペラシャフトから切り離されることを伴う場合がある。
【0106】
推進力源4が、プロペラシャフト6に接続されたさらなる内燃機関14’を含むいくつかの実施形態によれば、制御ユニット16は、
- 内燃機関14の動力出力を引き下げるために、さらなる内燃機関14’の動力出力を引き上げること
を行うように構成され得る。このようにして、推進力源4の集合的な動力出力が維持され得る一方、ICE14は、第2のパラメータ制限値に対応する動力出力よりも低い動力出力で動作される。
【0107】
さらなるICE14’の動力出力の引き上げは、いくつかの状況下において、さらなるICE14’が遮断状態から始動され、且つ/又は切り離された状態からプロペラシャフトに接続されることを伴う場合がある。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、船舶は、プロペラシャフト6に接続された可変ピッチプロペラ8を含み得る。制御ユニット16は、
- 内燃機関14の動力出力を引き下げるために、可変ピッチプロペラ8のピッチを引き下げること
を行うように構成され得る。このようにして、可変ピッチプロペラ8のピッチを引き下げることでICE14の負荷が低減される。したがって、ICE14の動力出力は、ピッチの低減後に第2のパラメータ制限値に対応する動力出力を下回る。
【0109】
同様に、制御ユニット16は、
- ICE14の動力出力を引き上げるために、可変ピッチプロペラ8のピッチを引き上げること
を行うように構成され得る。このようにして、可変ピッチプロペラ8のピッチを引き上げることでICE14の負荷が引き上げられ得る。したがって、ICE14の動力出力は、ピッチを引き上げた後、第1のパラメータ制限値に対応する動力出力を上回る。
【0110】
可変ピッチプロペラは、そのようなものとして知られており、本明細書でさらに説明しない。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのセンサ18は、以下の1つであり得る:
- ターボチャージャ24の回転速度センサ。
- ターボチャージャ24の圧力センサ。
- ターボチャージャ24の温度センサ。
- シリンダ装置22の温度センサ。
- 燃焼室26の圧力センサ。
このようにして、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、そのようなセンサによって測定されるパラメータの1つに直接的又は間接的に関連し得る。
【0112】
したがって、上述のセンサは、公知であり、本明細書でこれ以上説明しない。少なくとも1つのセンサ18は、ICE14の少なくとも1つの運転パラメータを連続的又は断続的に感知及び/又は測定するように構成される。制御ユニット16は、少なくとも1つのセンサ18から、運転パラメータに関連する感知及び/又は測定されたデータを受信するように構成される。このようにして、制御ユニット16は、ICE14の運転パラメータの現在値を決定するように構成される。
【0113】
同様に、動力出力測定装置20、20’は、推進力源4の推進力に関連する少なくとも1つのパラメータ又はデータを連続的又は断続的に感知及び/又は測定するように構成される。制御ユニット16は、感知及び/又は測定されたパラメータ及び/又はデータを受信するように構成される。このようにして、制御ユニット16は、動力出力測定装置20、20’を利用して、推進力源4の推進力の現在値を決定するように構成される。
【0114】
図2及び3では、少なくとも1つのセンサ18及び動力出力測定装置20、20’は、概略的にのみ示されている。したがって、システム10における少なくとも1つのセンサ18及び動力出力測定装置20、20’の実際の位置は、センサ及び動力出力測定装置20、20’の種類並びに感知及び/又は測定されるパラメータに依存する。
【0115】
図4は、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法100を示す。
【0116】
方法100は、
図1を参照して上述したような船舶2と、
図2及び3に関連して上述したようなシステム10とに関連して実行することができる。したがって、以下では、
図1~3を同様に参照する。このように、船舶2は、推進力源4と、プロペラシャフト6とを含む。推進力源4は、プロペラシャフト6に接続されたICE14を含む。
【0117】
方法100は、以下のステップを含む:
- 推進力源4によって推進力を生成するステップ102。
- 推進力源4の推進力の現在値を決定するステップ104。
- ICE14の運転パラメータの現在値を決定するステップ106。運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである。
- 推進力の現在値を下限動力値と比較するステップ108。
- 運転パラメータの現在値を第1のパラメータ制限値と比較するステップ110。
推進力の現在値が下限動力値と等しいか若しくはそれを下回る場合、及び/又は運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、方法100は、
- ICE14の動力出力を引き上げるステップ112
を含む。
【0118】
上述したように、このようにして、ICE14が好ましくない低動力出力状態で運転されることが防止される。
【0119】
方法100のいくつかの実施形態によれば、運転パラメータの現在値が第1のパラメータ制限値に達する場合、方法100は、
- 下限動力値を引き上げるステップ114
を含み得る。このようにして、下限動力値は、ICE14の現在の運転状態に適合され得る。
【0120】
下限動力を引き上げるステップ114が実行されている方法100のいくつかの実施形態によれば、方法100は、
- 下限動力値の引き上げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ116
を含み得る。したがって、人員は、船舶2の変更された運転状態を認識することができる。
【0121】
方法100のいくつかの実施形態によれば、方法100は、
- ICE14のさらなる運転パラメータの現在値を決定する任意選択的なステップ118であって、さらなる運転パラメータは、推進力と異なるパラメータである、任意選択的なステップ118
を含み得る。方法100は、
- 推進力の現在値を上限動力値と比較するさらなるステップ120と、
- 運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値を第2のパラメータ制限値と比較するさらなるステップ122と
を含み得る。推進力の現在値が上限動力値と等しいか若しくはそれを超える場合、及び/又は運転パラメータの現在値若しくはさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、方法100は、
- ICE14の動力出力を引き下げるステップ124
を含み得る。
【0122】
上述したように、このようにして、ICE14が好ましくない高い動力出力状態下で動作されることが防止される。
【0123】
方法100のいくつかの実施形態によれば、運転パラメータの現在値又はさらなる運転パラメータの現在値が第2のパラメータ制限値に達する場合、方法100は、
- 上限動力値を引き下げるステップ126
を含み得る。このようにして、上限動力値は、ICE14の現在の運転状態に適合され得る。
【0124】
方法100のいくつかの実施形態によれば、上限動力値を引き下げるステップが実行され、方法100は、
- 上限動力値の引き下げを視覚的及び/又は聴覚的に示すステップ128
を含み得る。したがって、人員は、船舶2の変更された運転状態を認識することができる。
【0125】
推進力源4が、プロペラシャフト6に接続されたさらなるICE14’を含む方法100のいくつかの実施形態によれば、ICE14の動力出力を引き上げるステップ112は、
- さらなるICE14’の動力出力を引き下げるステップ130
を含み得る。したがって、さらなるICE14’の動力出力を引き下げるステップは、さらなるICE14’の動力出力を引き下げる前と同じ推進力出力が船舶2のプロペラシャフト6に適用されることを維持するために、ICE14の動力出力を引き上げることを提供し得る。
【0126】
図2及び3を参照して上述したように、さらなるICE14’の動力出力を引き下げるステップ130は、さらなるICE14’が遮断され、且つ/又はプロペラシャフトから切り離されることを伴うことがある。
【0127】
推進力源4が、プロペラシャフト6に接続されたさらなるICE14’を含む方法100のいくつかの実施形態によれば、ICE14の動力出力を引き下げるステップ124は、
- さらなるICE14’の動力出力を引き上げるステップ132
を含み得る。したがって、さらなるICE14’の動力出力を引き上げるステップ132は、さらなるICE14’の動力出力を引き上げる前と同じ推進力出力が船舶2のプロペラシャフト6に適用されることを維持するために、ICE14の動力出力を引き下げることを提供し得る。
【0128】
図2及び3を参照して上述したように、さらなるICE14’の動力出力を引き上げるステップ132は、さらなるICE14’を起動し、且つ/又はプロペラシャフトに接続することを伴い得る。
【0129】
船舶2が、プロペラシャフト6に接続された可変ピッチプロペラ8を含むいくつかの実施形態によれば、ICE14の動力出力を引き下げるステップ124は、
- 可変ピッチプロペラ8のピッチを引き下げるステップ134
を含み得る。このようにして、ICE14の負荷、したがってICE14の動力出力を引き下げることができる。
【0130】
同様に、いくつかの実施形態によれば、ICE14の動力出力を引き上げるステップ112は、
- 可変ピッチプロペラ8のピッチを引き上げるステップ136
を含み得る。このようにして、ICE14の負荷、したがってICE14の動力出力を引き上げることができる。
【0131】
上述したように、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、ICE14のターボチャージャ24及び/又はICE14のシリンダ装置22に関連し得る。
【0132】
以下では、ターボチャージャ24及びシリンダ装置22の例示的な運転パラメータ並びに特にその下限及び/又は上限動力出力レベルにおけるICE14の運転状態を決定するためのそれらの使用について考察する。
【0133】
いくつかの実施形態によれば、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、ICE14がその出力シャフトに適用する動力出力に関連し得る。これに関連して、ICEの出力シャフトに適用される動力出力は、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力と必ずしも一致しないことに留意されたい。ICEの出力シャフトとプロペラシャフトとの間の1つ若しくは複数のトランスミッション及び/又はICEの出力シャフトとプロペラシャフトとの間に接続された1つ若しくは複数の動力取り出しユニット、PTOにより、ICEの出力シャフトに適用される動力出力は、プロペラシャフトに適用される推進力と異なる場合がある。
【0134】
後述する運転パラメータの少なくとも一部は、ICE14がその出力シャフトに適用する動力出力に間接的に関連するパラメータを形成する。
【0135】
いくつかの実施形態によれば、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、
- ターボチャージャ24の回転速度、
- ターボチャージャ24のタービン側の入口における温度、
- ターボチャージャ24のタービン側の出口における温度、
- ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力
の1つに関連し得る。このようにして、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、ターボチャージャ24に関連し得る。
【0136】
ターボチャージャ24の低い回転速度は、ICE14がその低い動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第1のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の下限回転速度閾値を表し得る。第1のパラメータ制限値は、ICE14の信頼できる及び/又は効率的な動作を許容する十分に低い給気圧力を表す回転速度であるように選択され得る。
【0137】
ターボチャージャ24の高い回転速度は、ICE14がその上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の上限回転速度閾値を表し得る。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の回転速度がターボチャージャ24の最大許容回転速度を超えないように選択され得る。
【0138】
ターボチャージャ24のタービン側の入口における高い温度は、ICE14が上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24のタービン側の入口における上限温度閾値を表し得る。第2のパラメータ制限値は、シリンダ装置の温度と相互に関連があるターボチャージャ24のタービン側の入口における温度が、例えば、シリンダ装置の一部に損傷を与える可能性のある温度又はICE14の熱過負荷を引き起こす可能性のある温度を超えないように選択され得る。
【0139】
ターボチャージャ24のタービン側の出口における高い温度は、ICE14がその下限動力出力レベルで動作していることを示し得る。高温は、ターボチャージャ24が最適に動作しておらず、ICE14の排気ガスから抽出される仕事がターボチャージャ24に対して指定されたものよりも少ないことを示し得る。したがって、第1のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24のタービン側の出口における上限温度を表し得る。第1のパラメータ制限値は、ICE14の排気ガスからの特定の仕事の抽出を示す温度を表すように選択され得る。
【0140】
ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における低い圧力は、ICE14がその下限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第1のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における下限圧力閾値を表し得る。第1のパラメータ制限値は、ICE14の信頼できる及び/又は効率的な動作が可能な十分に低い給気圧力を表すように選択され得る。
【0141】
ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における高い圧力は、ICE14がその上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の上限圧力閾値を表し得る。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の給気圧力が、ICE14の最大許容給気圧力を超えないように選択され得る。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、
- シリンダ装置の温度、又は
- 燃焼室内の圧力
の1つに関連し得る。このように、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、シリンダ装置22に関連し得る。
【0143】
シリンダ装置22の高い温度は、ICE14がその上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第2のパラメータ制限値は、シリンダ装置22の上限温度閾値を表し得る。第2のパラメータ制限値は、シリンダ装置22の温度が、例えば、シリンダ装置22の一部に損傷を与える可能性のある温度又はICE14の熱過負荷を引き起こす可能性のある温度を超えないように選択され得る。
【0144】
燃焼室26内の高い圧力は、ICE14が上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。したがって、第2のパラメータ制限値は、燃焼室26内の上限圧力閾値を表し得る。第2のパラメータ制限値は、燃焼室26内の圧力がICE14に機械的又は熱的な過負荷を引き起こさないように選択され得る。
【0145】
発明によれば、運転パラメータ及び/又は選択的にさらなる運転パラメータは、
- ターボチャージャ24の回転速度と、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力との間の相関性、
- ターボチャージャ24の回転速度の微分値の絶対値、
- ターボチャージャ24の回転速度の振幅の変動、
- ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の微分値の絶対値、
- ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の振幅の変動、
- ターボチャージャ24のタービン46にわたるエネルギー収支
の1つに関連し得る。このようにして、運転パラメータ及び/又はさらなる運転パラメータは、ターボチャージャ24の動的な態様に関連する。
【0146】
ターボチャージャ24の回転速度と、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力との間の低い又は一貫性のない相関性は、ICE14がその上限動力出力レベルで動作していることを示し得る。ターボチャージャ24の回転速度と、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力との間の低い又は一貫性のない相関性は、ターボチャージャ24のタービンの失速を示し得るものであり、この失速は、望ましくない。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の回転速度と、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力との間の相関性が特定の差又は特定の商を超えないように選択され得る。
【0147】
ターボチャージャ24の回転速度の微分値の高い絶対値は、ICE14が動的な上限動力出力限界に近い状態で動作しており、ターボチャージャ24の脈動的な回転を引き起こしていることを示し得る。ICE14の動的動作は、例えば、船舶が高波を通過するなどの特定の海況によって引き起こされることがある。ターボチャージャ24の回転速度の微分値の高い絶対値は、ターボチャージャ24の回転速度の変化が速いことを示す。このような速い変化は、排気ガスの流れが脈動していることを示しており、その結果、ターボチャージャ24のタービン46の失速を引き起こす可能性がある。ICE14の動力出力が低下すると、ICE14で生成される排気ガスが少なくなり、その結果、ターボチャージャの回転速度が低下し、コンプレッサ48の出口側の圧力が低下する。したがって、ターボチャージャ24の回転速度の変化が抑えられる。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の回転速度の変化中にタービン46の失速が防止されるように選択され得る。より低い第2のパラメータ制限値は、ICE14のより低い平均動力出力におけるよりもICE14のより高い平均動力出力において選択され得る。
【0148】
ターボチャージャ24の回転速度の振幅の変動は、ターボチャージャ24の脈動回転中のターボチャージャ24の最大回転速度と最小回転速度との差に関連する。ターボチャージャ24の脈動回転は、例えば、船舶が高波の中を航行するなど、特定の海況によって引き起こされることがある。
【0149】
ターボチャージャ24の回転速度の振幅の高い変動は、ICE14が動的な上限動力出力限界に近い状態で動作しており、ターボチャージャ24の脈動的な回転を引き起こしていることを示し得る。ICE14の動的動作は、例えば、船舶が高波を通過するなどの特定の海況によって引き起こされることがある。ターボチャージャ24の回転速度の振幅の高い変動は、ターボチャージャ24の回転速度の変動が大きいことを示している。このような大きい変動は、排気ガスの流れが脈動していることを示し、その結果、ターボチャージャ24のタービン46の失速を引き起こす可能性がある。ICE14の動力出力が低下すると、ICE14で生成される排気ガスが少なくなり、その結果、ターボチャージャの回転速度が低下し、コンプレッサ48の出口側の圧力が低下する。したがって、ターボチャージャ24の回転速度の変化が抑えられる。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の回転速度の変化中にタービン46の失速が防止されるように選択され得る。より低い第2のパラメータ制限値は、ICE14のより低い平均動力出力におけるよりもICE14のより高い平均動力出力において選択され得る。
【0150】
ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の微分値の高い絶対値は、ICE14が動的な上限動力出力限界に近い状態で動作しており、ターボチャージャ24の脈動的な回転を引き起こしていることを示し得る。ICE14の動的動作は、例えば、船舶が高波を通過するなどの特定の海況によって引き起こされることがある。ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の微分値の高い絶対値は、ターボチャージャ24の回転速度の変化が速いことを示している。このような速い変化は、排気ガスの流れが脈動していることを示しており、その結果、ターボチャージャ24のタービン46の失速を引き起こす可能性がある。ICE14の動力出力が低下すると、ICE14で生成される排気ガスが少なくなり、その結果、ターボチャージャの回転速度が低下し、コンプレッサ48の出口側の圧力が低下する。したがって、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口での圧力変化が抑えられる。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の変化中にタービン46の失速が防止されるように選択され得る。より低い第2のパラメータ制限値は、ICE14のより低い平均動力出力におけるよりもICE14のより高い平均動力出力において選択され得る。
【0151】
ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の振幅の変動は、ターボチャージャ24の脈動回転中のターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口での最大圧力と最小圧力との間の差に関連する。ターボチャージャ24の脈動的な回転は、例えば、船舶が高波を通過するなど、特定の海況によって引き起こされることがある。
【0152】
ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口における圧力の振幅の高い変動は、ICE14が動的な上限動力出力限界に近い状態で動作しており、ターボチャージャ24の脈動的な回転を引き起こしていることを示し得る。ICE14の動的動作は、例えば、船舶が高波を通過するなどの特定の海況によって引き起こされることがある。ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口での圧力の振幅の大きい変動は、ターボチャージャ24のコンプレッサ側の出口での大きい圧力変動を示す。このような大きい変動は、排気ガスの流れが脈動していることを示し、その結果、ターボチャージャ24のタービン46の失速を引き起こす可能性がある。ICE14の動力出力が低下すると、ICE14で生成される排気ガスが少なくなり、その結果、ターボチャージャの回転速度が低下し、コンプレッサ48の出口側の圧力が低下する。したがって、ターボチャージャ24の回転速度の変化が抑えられる。第2のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の圧力変化時にタービン46の失速が防止されるように選択され得る。より低い第2のパラメータ制限値は、ICE14のより低い平均動力出力におけるよりもICE14のより高い平均動力出力において選択され得る。
【0153】
タービン46にわたる低いエネルギー収支は、ICE14がその下限出力で動作していることを示し得る。したがって、第1のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24の下限エネルギー抽出閾値を表し得る。第1のパラメータ制限値は、ターボチャージャ24のタービン46における十分に高いエネルギー抽出を表すように選択され得る。タービン46の入口側及び出口側の両方で温度及び圧力を測定することにより、タービン46で抽出されたエネルギーを計算し、第1のパラメータ制限値を表す1つ又は複数の予想されるエネルギー抽出値と比較し得る。
【0154】
当業者は、船舶のプロペラシャフトに適用される推進力出力を制御する方法100が、プログラムされた命令によって実施され得ることを理解するであろう。これらのプログラムされた命令は、通常、コンピュータプログラムによって構成される。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又は制御ユニットで実行されると、コンピュータ又は制御ユニットが、本発明による方法ステップ102~134の少なくともいくつかなど、所望の制御を実行することを保証する。コンピュータプログラムは、通常、コンピュータプログラムが記憶された適切なデジタル記憶媒体を含むコンピュータプログラム製品の一部である。
【0155】
当然のことながら、上述した運転パラメータ及び/又はICE14の他の運転パラメータの2つ又は3つ以上が決定され、それぞれのパラメータ制限値と比較され得る。いくつかの状態下では、特定の運転パラメータは、ICE14がその下限又は上限動力出力レベルで動作されていることを示し得る一方、他の状態下では、異なる運転パラメータは、ICE14がその下限又は上限動力出力レベルで動作されていることを示し得る。
【0156】
図5は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、本明細書で考察される態様及び/又は実施形態のいずれか1つに従って方法100のステップを実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体90の実施形態を示す。
【0157】
コンピュータ可読記憶媒体90は、例えば、制御ユニット16の1つ又は複数の計算ユニットにロードされると、いくつかの実施形態に従ってステップ102~134の少なくともいくつかを実行するためのコンピュータプログラムコードを有するデータキャリアの形態で提供され得る。データキャリアは、例えば、ROM(リードオンリーメモリ)、PROM(プログラマブルリードオンリーメモリ)、EPROM(消去可能PROM)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的消去可能PROM)、ハードディスク、CD ROMディスク、メモリスティック、光記憶装置、磁気記憶装置又は機械可読データを非一時的に保持し得るディスク又はテープなどの任意の他の適切な媒体であり得る。コンピュータ可読記憶媒体90は、サーバ上のコンピュータプログラムコードとしてさらに提供され得、例えばインターネット若しくはイントラネット接続を介して又は他の有線若しくは無線の通信システムを介して遠隔地から制御ユニット16にダウンロードされ得る。
【0158】
図5に示すコンピュータ可読記憶媒体90は、USBメモリスティックの形態の非限定的な例である。
【0159】
前述の内容は、様々な例示的な実施形態を説明するものであり、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解されたい。当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、例示の実施形態を変更することができ、例示の実施形態の異なる特徴を組み合わせて、本明細書に記載されたもの以外の実施形態を創出できることを理解するであろう。