(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】複合プラズマ源
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/46 B
(21)【出願番号】P 2022039182
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521488440
【氏名又は名称】明遠精密科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】寇崇善
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0048984(KR,A)
【文献】特表2018-507514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマイクロ波共振チャンバーと、第2のマイクロ波共振チャンバーと、少なくとも一対の中空金属管と、を備える反応チャンバーと、
前記中空金属管にそれぞれ嵌められる二つの中空ゾーンを有するフェライトコアと、前記二つの中空ゾーンにより、前記フェライトコアに絡み付けられる誘導コイルと、駆動電源と、を備える少なくとも一つのフェライト変圧器コアと、
少なくとも一つのマイクロ波源と、を備え、
前記中空金属管の両端は、それぞれ、前記第1のマイクロ波共振チャンバー及び前記第2のマイクロ波共振チャンバーと連通し、
少なくとも一つのマイクロ波が、前記反応チャンバーに導入されることにより、前記反応チャンバーにおける作動ガスがプラズマに励起してプラズマを生成し、
前記駆動電源は、前記誘導コイルに電気的に接続されており、これにより、前記反応チャンバーの前記中空金属管において、誘導電界が生成され、
前記誘導電界は、前記プラズマを励起することにより、前記反応チャンバーにおいて、クローズ経路を有する電流が形成されて、前記作動ガスを更に解離させて、前記プラズマの密度を増加し、
前記マイクロ波源は、前記反応チャンバーの前記第1のマイクロ波共振チャンバー、前記第2のマイクロ波共振チャンバー、又は前記第1のマイクロ波共振チャンバー及び前記第2のマイクロ波共振チャンバーに同軸に設けられている、マグネトロン、中央金属棒および円筒形外管を備え、
前記中央金属棒は、前記円筒形外管内に位置し、前記中央金属棒の一端が前記マグネトロンの出力アンテナと連接し、前記中央金属棒の他端が前記反応チャンバーに伸び込み、これにより、前記マグネトロンで生成した前記マイクロ波が、前記中央金属棒および前記円筒形外管を経由して、前記反応チャンバーに導入され、
前記中空金属管の両端が、それぞれ、少なくとも一つの電気的バリアゾーンを経由して、前記第1のマイクロ波共振チャンバー及び前記第2のマイクロ波共振チャンバーと連通することにより、前記反応チャンバーと前記フェライト変圧器コアとの間に、短絡が生成することを防止することを特徴とする、
複合プラズマ源。
【請求項2】
前記電流は、前記第1のマイクロ波共振チャンバー、前記中空金属管および前記第2のマイクロ波共振チャンバーを循環し、前記クローズ経路を構成することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項3】
前記マイクロ波源は、更に、マイクロ波マッチングエレメントを備え、前記マイクロ波マッチングエレメントは、前記マグネトロンで生成された前記マイクロ波の前記中央金属棒および前記円筒形外管を経由して、前記反応チャンバーに導入されるときの反射量を減少するためのものであり、これにより、前記マイクロ波が前記反応チャンバーに入り込むことを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項4】
前記マイクロ波マッチングエレメントは
、前記円筒形外管
の外周において前記円筒形外管の延在方向と直交する方向に延在するように設けられている金属同軸管を備え、前記金属同軸管は、同軸に設けられている、横管、金属板、及びクロスバーを有し、前記横管は、
前記円筒形外管の延在方向と直交する方向に延在するように前記円筒形外管に設けられており、前記クロスバーは、前記円筒形外管から前記横管に伸び込み、前記金属板は前記クロスバーに設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の複合プラズマ源。
【請求項5】
前記金属板は、前記クロスバーに移動可能に設けられており、インピーダンス整合を行って、前記マイクロ波の前記反射量を改善することを特徴とする、請求項4に記載の複合プラズマ源。
【請求項6】
前記出力アンテナと前記中央金属棒との間に径勾配ゾーンが設けられており、これにより、前記マグネトロンで生成された前記マイクロ波の前記出力アンテナから前記中央金属棒に伝導するときの反射量を減少することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項7】
前記円筒形外管はセラミックチューブであることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項8】
前記円筒形外管は閉じた真空管であることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項9】
前記電気的バリアゾーンはセラミックリングであることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項10】
前記第1のマイクロ波共振チャンバー及び前記第2のマイクロ波共振チャンバーは、中空な円筒であることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項11】
前記作動ガスの気圧は1Torrよりも高く、ガス流量は10slmよりも多いことを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項12】
前記中空金属管の数量及び/又は管径は、前記作動ガスの流量の増加に応じて増加しており、これにより、前記プラズマの前記中空金属管での安定性を確保し、空気伝導を増加することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項13】
前記プラズマのパワー密度は、前記中空金属管の数量に対応することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項14】
前記フェライト変圧器コアの数量は、二セットであり、且つ前記誘導コイルは、電力を供給するための前記駆動電源に並列接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項15】
前記フェライト変圧器コアで生成する電場は、前記マイクロ波を前記反応チャンバーに導入する中央金属棒に垂直であり、これにより、前記マイクロ波を生成するマイクロ波源を干渉することを回避することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項16】
前記駆動電源は、交流電源、直流電源、又はパルス電源であることを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【請求項17】
前記第1のマイクロ波共振チャンバーはガス入口を有し、前記第2のマイクロ波共振チャンバーはガス出口を有することを特徴とする、請求項1に記載の複合プラズマ源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ源に関し、特に、複合プラズマ源とその操作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ(Plasma)は、半導体プロセスやその他の工業製造で広く使用されており、その長所は、ガスの分子を分解することができ、中性ラジカル、イオン、原子、及び電子を生成し、分子で構成する反応性の高い混合物を励起して、プロセスに必要なさまざまな物理的および化学的反応を提供する点にある。
従来のプラズマを生成するメカニズムは多くあり、そのうちの一つは、フェライト変圧器コアを利用してインダクタンス結合プラズマ放電を発生する。その主なメカニズムは、
図1に示すように、フェライト変圧器コア502を利用して、環状真空チャンバー(Toroidal Vacuum Chamber)500において、誘導電界を生成して、ガスを放電する。環状真空チャンバー500は、一端がガス入口506であり、他端がガス出口508である。このような方式は、変圧器の原理に類似する。電源がフェライト変圧器コア502の一次側と連接し、プラズマがシングルラップの二次側になって、磁束が互いに接続するため、良好なカップリング効率を形成する。プラズマにおいて、電子ドリフト電流は、誘導電界に駆動されて、真空チャンバー500に沿ってクローズ経路を形成して流動する。このため、このメカニズムも変圧器結合プラズマ (Transformer Coupled Plasma, TCP)と称する。
従来技術によれば、フェライト変圧器コア502を交流電源と接続することにより、環状真空チャンバー500において、誘導電界を生成して、プラズマにおいて、電流を励起することができるが、環状真空チャンバー500の構成は、セラミックリング504を利用して電気的バリアゾーンを形成することが必要である。そうしないと、フェライト変圧器コア502が短絡して、環状真空チャンバー500において、誘導電界を生成することができず、そして電気的バリアゾーンが十分に小さくないと、十分に強い電場強度を生成して、プラズマを安定に励起して保持することができない。しかしながら、フェライト変圧器コア502で生成する強い電場は、環状真空チャンバー500の金属の構造の影響により、セラミックリング504で構成する電気的バリアゾーンに集中し、場合によっては、領域放電によってセラミックリング504が破裂し、電気的障壁が破壊され、逆放電によって電源が損傷することさえあり、又は反応チャンバーを保護するメッキ層が離脱するという問題がある。
【0003】
Anderson氏は、米国特許第3,500,118号および第3,987,334号で、このような方法を記載し、米国特許第4,180,763号では、フェライトコアTCPを照明の用途に適用することを提案した。Reinberg氏らは、米国特許第4,431,898号で、半導体プロセスにおいて、プラズマによりフォトレジストを除去することを提案した。このTCP技術は、ガスを解離して、大きな活性化率を有するプラズマ源を提供することに使用されている。ある高気圧大ガス流量の応用では、ハイパワー密度のプラズマを使用して、作動ガスの化学活性化を行い、又はガスの性質や成分を変更して、これらの化学活性化されたガスを真空処理システムに送ることが必要である。
このような応用は、「遠隔プラズマ処理」と呼ばれ、これらは、(1)チャンバーを遠隔に洗浄すること、(2)チャンバーでポリマーの表面を遠隔に灰化すること、及び(3)真空フォアラインでの下流のフォアラインの洗浄および後処理ガスの削減、を含む。これらの応用は、大流量(1slmより大きく)のマイナスの電気を帯びたプラズマ放電ガス(例えばO2、NF3、SF6)及びより高いガス圧力(1Torrより大きく)に関与する。このため、ハイパワー密度が必要であり、そうしないと、作動ガスの高度な解離および活性化を実現することができない。高気圧大流量の操作条件では、多くのインダクタンス結合プラズマ源装置と同じように、TCPの誘導電磁界の強度は、プラズマ放電を点火することが不十分であり、その他の方式により、真空反応チャンバーに高強度な電場を生成して、プラズマ放電を点火することが必要である。例えば高電圧電極を増設し、又は電気的絶縁なチャンバーの一部に高い交流電圧を流して、局所的な無線周波数グロー放電を発生する。しかし、これでは高電圧放電装置の寿命および可用性率が制限される。例えば、ある文献では、回路に共振回路を加えて高電圧(1~10kV)を生成することにより、領域放電を有効に発生してプラズマを生成することができるが、プラズマを生成した後、同じ電圧の使用を持続すると、極めて多い電流が生成してパワー素子を損壊するという記載がある。このため、回路に高圧リレー(Relay)を増設することにより、プラズマを生成した後、電源回路が非共振回路に迅速に変換されて、電圧を降下して大電流による損壊を回避することができる。しかし、リレーが故障し、又は制御信号が遅延してリレーを即時に起動できない場合には、パワー素子が損壊する。一方、高電圧電極を使用すると、真空チャンバーの絶縁部品が破壊されやすく、短絡を発生し、そしてチャンバーの壁にあるメッキ層が離脱して、プロセスチャンバーに入って、粒子による汚染が発生する。
ある応用では、例えばパネルディスプレイの製造において、プロセスシステムの体積が大きいため、大量のガス(>30slm)を使用しないと、プロセスの需要に満足することができない。このため、従来技術に係る環状真空チャンバーの構造によれば、操作気圧およびパワー密度を大幅に上げることが必要である。しかしながら、そうすると、イオンと電子の衝突、二極拡散(ambipolar diffusion)及び放熱性能の制限により、真空チャンバー内の円筒形プラズマ(cylindrical plasma column)の直径が小さくなって、プラズマが拡散モード(diffusion mode)から収縮モード (contraction mode)へ変換されて、真空チャンバーを充満することができなくなり、一部のガスがプラズマによって反応できない。これにより、全体のガスの活性化率が降下して、プロセスの要求に満足することができない。酷い場合には、プラズマが不安定となって、プラズマを維持することができず、消火することさえある。したがって、プラズマの安定性を確保するために、従来技術の環状真空チャンバーの構造をどのように改善するかが、ガス流をさらに増加させるために克服しなければならない問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術の課題を解決するために、本発明の目的は、従来のTCPプラズマ技術の欠点を改善し、更に、作動ガスの流量を増加することにある。
その主な技術は、(1)マイクロ波プラズマとTCPプラズマを結合するメカニズムにより、複合プラズマ源を構成する。マイクロ波共振チャンバーを利用して、高強度の電場を生成してプラズマを生成した後、TCPのプラズマに対する高効率なエネルギー結合メカニズムにより、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する。これにより、高電圧点火装置の欠点を解決することができると共に、マイクロ波は、初期的なプラズマを励起して維持する役割を担当するため、TCPの弱電場による欠点を解決することができ、プラズマの安定性を向上することができる。
(2)反応チャンバーは、二つのマイクロ波共振チャンバー及び複数セットの中空金属管で構成され、従来技術に係る環状真空チャンバー(Toroidal Vacuum Chamber)に比べて、空気伝導を大幅に増加することができ、ガス流量が多い場合には、ガス圧力を数Torrの範囲に維持することができる。同時に、各セットの中空金属管のパワーが分散されるため、各中空金属管のエネルギー密度が降下して、プラズマの拡散モード(Diffusion Mode)から収縮モード(Contraction Mode)への変換を減少することができる。
【0005】
本発明の主な目的は、マイクロ波プラズマ及びTCPプラズマを結合したメカニズムによって構成される複合プラズマ源を提供することにある。
【0006】
本発明の次の目的は、マイクロ波共振チャンバーを利用して、高強度の電場を生成してプラズマを生成した後、TCPのメカニズムにより、エネルギーを有効にカップリングして、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する複合プラズマ源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る複合プラズマ源は、第1のマイクロ波共振チャンバーと、第2のマイクロ波共振チャンバーと、少なくとも一対の中空金属管と、を備える反応チャンバーと、中空金属管にそれぞれ嵌められる二つの中空ゾーンを有するフェライトコアと、二つの中空ゾーンにより、フェライトコアに絡み付けられる誘導コイルと、駆動電源と、を備える少なくとも一つのフェライト変圧器コアと、少なくとも一つのマイクロ波源と、を備え、中空金属管の両端は、それぞれ、第1のマイクロ波共振チャンバー及び第2のマイクロ波共振チャンバーと連通し、少なくとも一つのマイクロ波は、反応チャンバーに導入されることにより、反応チャンバーにおける作動ガスがプラズマに励起してプラズマを生成し、駆動電源は、誘導コイルに電気的に接続されており、これにより、反応チャンバーの中空金属管において、誘導電界が生成され、誘導電界は、プラズマを励起することにより、反応チャンバーにおいて、クローズ経路を有する電流が形成されて、作動ガスを更に解離させて、プラズマの密度を増加し、マイクロ波源は、反応チャンバーの第1のマイクロ波共振チャンバー、第2のマイクロ波共振チャンバー、又は第1のマイクロ波共振チャンバー及び第2のマイクロ波共振チャンバーに設けられており、同軸に設けられている、マグネトロン、中央金属棒および円筒形外管を備え、中央金属棒は、円筒形外管内に位置し、中央金属棒の一端がマグネトロンの出力アンテナと連接し、中央金属棒の他端が反応チャンバーに伸び込み、これにより、マグネトロンで生成したマイクロ波は、中央金属棒および円筒形外管を経由して、反応チャンバーに導入され、中空金属管の両端は、それぞれ、少なくとも一つの電気的バリアゾーンを経由して、第1のマイクロ波共振チャンバー及び第2のマイクロ波共振チャンバーと連通することにより、反応チャンバーとフェライト変圧器コアとの間に、短絡が生成することを防止することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る複合プラズマ源は、電流は、第1のマイクロ波共振チャンバー、中空金属管および第2のマイクロ波共振チャンバーを循環し、クローズ経路を構成することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る複合プラズマ源は、マイクロ波源は、更に、マイクロ波マッチングエレメントを備え、マイクロ波マッチングエレメントは、マグネトロンで生成されたマイクロ波の中央金属棒および円筒形外管を経由して、反応チャンバーに導入されるときの反射量を減少するためのものであり、これにより、マイクロ波が反応チャンバーに入り込むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る複合プラズマ源は、マイクロ波マッチングエレメントは、横方向に沿って円筒形外管に設けられている金属同軸管を備え、金属同軸管は、同軸に設けられている、横管、金属板、及びクロスバーを有し、横管は、横方向に沿って円筒形外管に設けられており、クロスバーは、円筒形外管から横管に伸び込み、金属板はクロスバーに設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る複合プラズマ源は、金属板は、クロスバーに移動可能に設けられており、インピーダンス整合を行って、マイクロ波の反射量を改善することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る複合プラズマ源は、出力アンテナと中央金属棒との間に径勾配ゾーンが設けられており、これにより、マグネトロンで生成されたマイクロ波の出力アンテナから中央金属棒に伝導するときの反射量を減少することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る複合プラズマ源は、円筒形外管はセラミックチューブであることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る複合プラズマ源は、円筒形外管は閉じた真空管であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る複合プラズマ源は、電気的バリアゾーンはセラミックリングであることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る複合プラズマ源は、第1のマイクロ波共振チャンバー及び第2のマイクロ波共振チャンバーは、中空な円筒であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る複合プラズマ源は、作動ガスの気圧は1Torrよりも高く、ガス流量は10slmよりも多いことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る複合プラズマ源は、中空金属管の数量及び/又は管径は、作動ガスの流量の増加に応じて増加しており、これにより、プラズマの中空金属管での安定性を確保し、空気伝導を増加することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る複合プラズマ源は、プラズマのパワー密度は、中空金属管の数量に対応することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る複合プラズマ源は、フェライト変圧器コアの数量は、二セットであり、且つ誘導コイルは、電力を供給するための駆動電源に並列接続されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る複合プラズマ源は、フェライト変圧器コアで生成する電場は、マイクロ波を反応チャンバーに導入する中央金属棒に垂直であり、これにより、マイクロ波を生成するマイクロ波源を干渉することを回避することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る複合プラズマ源は、駆動電源は、交流電源、直流電源、又はパルス電源であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る複合プラズマ源は、第1のマイクロ波共振チャンバーはガス入口を有し、第2のマイクロ波共振チャンバーはガス出口を有することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る複合プラズマ源の操作方法は、マイクロ波の電場により、作動ガスにプラズマを生成して、変圧器結合プラズマ技術により、プラズマにエネルギーを効率良く結合することにより、プラズマの密度が更に増加して、高度に解離された活性化ガスが生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る複合プラズマ源とその操作方法には、次のような効果がある。
(1)マイクロ波プラズマ及びTCPプラズマを結合したメカニズムにより、複合プラズマ源を構成する。
(2)マイクロ波共振チャンバーを利用して、高強度の電場を生成してプラズマを生成した後、TCPのメカニズムにより、エネルギーを有効にカップリングして、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する。
(3)高電圧点火装置の欠点を解決することができると共に、マイクロ波は、初期的なプラズマを励起して保持するため、TCPの弱い電場による欠点を解決することができ、プラズマの安定性を向上することができる。
(4)反応チャンバーが強い電場を有する特性を利用して、プロセス条件が調整されても、プラズマの密度を一定に維持することができる。気圧が1Torr~5Torrであっても、高強度の電場を有効に励起することができ、プラズマを安定的に生成する要求に合うことができる。
(5)作動ガスの流量の大きさによって、中空金属管のセット数を増加して流量を分散することができる。プラズマの安定性を確保することができると共に、空気伝導を増加することができる。
(6)本発明に係るプラズマがマイクロ波に励起されるため、本発明に係る電気的バリアゾーンを広くすることができ、寿命の増加およびシステムの安定性に有利である。
(7)ガスの流量が多い場合には、ガスの圧力を数Torrの範囲に維持することができる。
(8)各セットの中空金属管のパワーを分散するため、各中空金属管のエネルギー密度が降下して、プラズマが拡散モード(Diffusion Mode)から収縮モード(Contraction Mode)へ変換することを減少することができる。
(9)反応チャンバーにおける高強度の電場を利用して、高気圧および大ガス流量で、プラズマを安定に励起して、十分な自由電子を提供して、フェライト変圧器コアの誘導による電場に駆動されて加速することにより、反応チャンバー内に、クローズ経路の電子ドリフト電流を形成して、ガスを有効に解離させて高密度なプラズマを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来技術の環状低電界プラズマ源の環状真空チャンバーを示す断面図である。
【
図2】本発明に係る複合プラズマ源を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る複合プラズマ源の操作を別の視点から見た図である。
【
図4】本発明に係る複合プラズマ源のマイクロ波源を示す断面図である。
【
図5】本発明に係る複合プラズマ源のフェライト変圧器コアを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、下記の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0028】
さらに、明細書全体および特許請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0029】
この記事での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するだけために使用される。
【0030】
次に、この記事で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0031】
本発明に係る複合プラズマ源とその操作方法は、マイクロ波プラズマ(Microwave Plasma)及び変圧器結合プラズマ(Transformer Coupled Plasma,TCP)技術を結合して、複合プラズマ源を構成して、作動ガスの解離および化学活性化を行うことにより、高気圧および大ガス流量で、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する装置とその方法である。
本発明では、まず、マイクロ波により、マイクロ波共振チャンバーで高強度の電場(マイクロ波電場)を生成して、作動ガスでプラズマを生成して、変圧器結合プラズマ技術により、エネルギーを有効にカップリングして、プラズマ放電による電子ドリフト電流を生成し、更に、作動ガスを有効に解離させて、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する。
【0032】
図2から
図5を参照する。本発明に係る複合プラズマ源100は、反応チャンバー10と、少なくとも一つのフェライト変圧器コア50と、を備える。反応チャンバー10は、第1のマイクロ波共振チャンバー12と、第2のマイクロ波共振チャンバー14と、少なくとも一対の中空金属管16と、を備える。中空金属管16の両端は、それぞれ、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14と連通する。
反応チャンバー10は、まず、マイクロ波により、作動ガス200でプラズマを生成し、フェライト変圧器コア50が誘導電界400(これはTCP誘導電界)を生成する。これにより、プラズマを励起して、プラズマを放電して電流を生成する。
図2に示すように、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14は、例えば、横方向に沿う中空な円筒である。なお、上記の対になる中空金属管16は、それぞれ、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14と連通し、互いに距離を置いて設けられている。
上記のフェライト変圧器コア50は、フェライトコア52と、誘導コイル56と、駆動電源58と、を備える。フェライトコア52は少なくとも二つの中空ゾーン54を備える。中空ゾーン54は、それぞれ、反応チャンバー10の対になる中空金属管16を嵌める。フェライトコア52は、例えば「日」字形を呈する。誘導コイル56は、上記の二つの中空ゾーン54を利用して、フェライトコア52に絡み付け、例えば、「日」字形を呈するフェライトコア52の中央にあるクロスバーに絡み付ける。駆動電源58は、例えば、電線を経由して誘導コイル56の両端に電気的に接続されていることにより、反応チャンバー10(例えば中空金属管16内)において、誘導電界400を生成する。
誘導電界400は、プラズマを安定に励起して十分な自由電子を提供して、フェライトコア52の誘導により生成された電場に駆動されて加速される。このため、反応チャンバー10内にクローズ経路の電流(例えば電子ドリフト電流)を形成することができ、更に、ガスを有効に解離させて高密度のプラズマを生成する。上記の電子ドリフト電流は、反応チャンバー10において、第1のマイクロ波共振チャンバー12、中空金属管16及び第2のマイクロ波共振チャンバー14を循環することにより、クローズ経路を形成する。これにより、作動ガス200を更に解離させて、プラズマの密度を増加することができる。本発明に係る作動ガス200の種類は、特に限定されず、何のガスであっても、プラズマを生成することができれば、本発明に係る作動ガス200とすることができる。反応チャンバー10の寸法および中空金属管16の間隔と管径は、実際の必要によって決めることができ、上記の例に限定されない。
【0033】
本発明に係る複合プラズマ源は、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12と第2のマイクロ波共振チャンバー14とにおける高強度の電場を利用して、高気圧及び大ガス流量(気圧>1Torr、ガス流量>1slm)で、プラズマを安定に励起して、十分な自由電子を提供して、フェライト変圧器コア50の誘導による電場に駆動されて加速されて、反応チャンバー10内に、クローズ経路の電子ドリフト電流を形成し、更に、ガスを有効に解離させて高密度のプラズマを生成する。
変圧器結合という技術は、プラズマにエネルギーを極めて有効に送ることができるが、多くのインダクタンス結合プラズマ装置と同じように、誘導電磁界の強度(10V/cm)は作動ガス200を貫通するのに十分ではない。特に、高気圧及び大ガス流量では、高電圧装置を利用して、反応チャンバー10(真空チャンバー)において、初始的な放電を発生して、プラズマを生成する目的を達成できるが、高電圧放電装置の寿命及び可用性率が制限され、且つ反応チャンバー10自身が破壊されやすい。特に、変圧器結合プラズマ(TCP)は低電界強度のメカニズムに属し、気圧または気流が乱れる(例えば、プロセスが作動ガスの流量を変更するとき)と、プラズマが不安定になりやすく、更に、消火することがある。本発明では、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14が強いマイクロ波電場300を有する特性を利用し、プロセス条件が調整されるときでも、一定のプラズマ密度を維持することができるため、上記の欠点を克服することができる。
【0034】
一方、高気圧と大流量と高パワー密度では、イオンと電子の衝突、二極拡散(ambipolar diffusion)の制限により、従来技術では環状真空チャンバー内の円筒形プラズマ(cylindrical plasma column)が収縮しやすい。これにより、プラズマが真空チャンバーを充満することができず、更に、プラズマが不安定となって、そして従来技術の環状真空チャンバーが使用する単一の金属管の耐えられるパワー密度および気圧気流が限られる。
これに対し、本発明では、より大きいマイクロ波共振チャンバー及び複数セットの金属管の組合せにより、作動ガスの流量を分散すると共に、電源をグループ化する方法により、各金属管内のパワー密度を減らして、高気圧および大流量の操作の目標を達成することができる。
【0035】
詳細には、上記の第1のマイクロ波共振チャンバー12の一側には、作動ガス200を導入するためのガス入口11が設けられている。第2のマイクロ波共振チャンバー14の一側には、作動ガス200を導出するためのガス出口15が設けられている。ガス入口11とガス出口15とは、例えば、それぞれ、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14の対向側に位置する。第1のマイクロ波共振チャンバー12と第2のマイクロ波共振チャンバー14は、中空な円筒である。中空金属管16は、対になるように設けられていることが好ましい。これにより、作動ガス200は中空金属管16を対称的に流れる。
中空金属管16の数量は、一対でもいいし、例えば二対またはそれ以上でもよい。中空金属管16は、互いに間隔を置くことが好ましい。中空金属管16の両端は、例えば、それぞれ、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14の対向側と連通する。多くの応用は、大流量の腐食性を有する活性化粒子の生成(例えばNF3、SF6プラズマ)に関連するため、金属製の反応チャンバー10の内部を保護することが必要である。このため、本発明では、アルミ製の反応チャンバー10(第1のマイクロ波共振チャンバー12、第2のマイクロ波共振チャンバー14及び中空金属管16を備え)に対して、陽極処理を選択的に行って保護膜を形成する。
【0036】
本発明は、更に、マイクロ波を生成するための少なくとも一つのマイクロ波源20を備える。マイクロ波源20により、マイクロ波が反応チャンバー10に導入され、共振周波数は2.45GHであり、パワーは例えば800W~1000Wの範囲に入り、共振モードはTE
111モードである。これにより、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14の高強度のマイクロ波電場300を利用して、反応チャンバー10における作動ガス200を励起してプラズマを生成する。上記のマイクロ波源20の数量は一つでもよく、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12又は第2のマイクロ波共振チャンバー14に設けられており、例えば、
図2に示すように、側面または上面に位置する。
マイクロ波源20からのマイクロ波の伝導方向は、中空金属管16に垂直であることが好ましい。一方、マイクロ波源20の数量は、例えば二つ又はそれ以上でもよい。そうすると、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12と第2のマイクロ波共振チャンバー14とに設けることができる。本発明では、
図5に示すように、四つの中空金属管16及び二つのマイクロ波源20を例にして説明したが、これに限定されない。一方、フェライトコア52の中空ゾーン54の数量は中空金属管16に対応するため、本発明では、2セットのフェライト変圧器コア50を例にし、これは「田」字形を呈する。2セットのフェライト変圧器コア50の二つの誘導コイル56は、それぞれ、この2対の中空ゾーン54を利用して、この二つのフェライトコア52に絡み付けられる。この二つの誘導コイル56は、例えば駆動電源58に電気的に並列接続されており、誘導コイル56に電力を供給する。
【0037】
詳細には、
図4に示すように、本発明に係るマイクロ波源20は、例えば、同軸なマグネトロンマイクロ波源であり、同軸であるように設けられている、マグネトロン22と、中央金属棒24と、円筒形外管26と、を備える。マグネトロン22は反応チャンバー10に設けられている。中央金属棒24の一端はマグネトロン22の出力アンテナ23と連接し、中央金属棒24の他端は反応チャンバー10に伸び込む。中央金属棒24は円筒形外管26内に位置する。これにより、マグネトロン22からのマイクロ波を、中央金属棒24及び円筒形外管26を経由して反応チャンバー10に導入することができる。
円筒形外管26は、閉じた真空管であることが好ましい。これにより、真空を保持することに加えて、プラズマが中央金属棒24と直接に接触することを防止することができる。円筒形外管26の材料は、例えばセラミックを採用し、アルミナセラミックであることが好ましい。出力アンテナ23と中央金属棒24との直径は、例えば同じでもよい。一方、出力アンテナ23と中央金属棒24との直径が異なり、例えば、そのうちの一方の直径がより大きく、他方が直径がより小さい場合には、本発明に係る出力アンテナ23と中央金属棒24との間に、一端の直径がより大きく、他端の直径がより小さい径勾配ゾーン25を選択的に設けてもよい。これにより、マグネトロン22からのマイクロ波の出力アンテナ23から中央金属棒24に伝導するときの反射量を減少することができる。径勾配ゾーン25は、出力アンテナ23の端部に位置してもいいし、中央金属棒24の端部に位置してもよく、マイクロ波の反射を降下する効果を達成できればよい。
【0038】
また、本発明に係るマイクロ波源20は、更に、マイクロ波マッチングエレメント30を選択的に備える。マイクロ波マッチングエレメント30は、マグネトロン22からのマイクロ波の中央金属棒24及び円筒形外管26を経由して反応チャンバー10に導入されるときの反射量を減少するためのものである。マイクロ波マッチングエレメント30により、反応チャンバー10にマイクロ波を有効に送ることができる。
上記のマイクロ波マッチングエレメント30は、例えば、円筒形外管26の外周において円筒形外管26の延在方向と直交する方向に延在するように設けられている金属同軸管を備える。前記金属同軸管は、同軸に設けられている、横管32aと、金属板32bと、クロスバー32cと、を有する。横管32aは、円筒形外管26の延在方向と直交する方向に延在するように円筒形外管26に設けられている。クロスバー32cは、円筒形外管26から横管32aに伸び込む。金属板32bはクロスバー32cに設けられている。金属板32bは、クロスバー32cに移動可能に設けられている。金属板32bの位置を調整することにより、インピーダンス整合を行うと、マイクロ波の反射量を改善することができ、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14に、マイクロ波を有効に送ることができる。
第1のマイクロ波共振チャンバー12と第2のマイクロ波共振チャンバー14との品質係数(Quality factor)は2,000を超えるため、高強度の電場を有効に励起することができ、気圧が1Torr~5Torrである条件で、プラズマを安定に生成するという要求を達成することができる。一方、一般的には、自由電子と中性ガス分子の衝突周波数が凡そ数GHz/Torrである。この衝突周波数は、数Torrの圧力範囲でマイクロ波周波数2.45GHzに近似するため、マイクロ波が1Torrより高い圧力範囲でプラズマを励起することに有利である。
【0039】
図2に示すように、反応チャンバー10の第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14は、中空金属管16により互いに連通する。中空金属管16は、管径が例えば2.5センチであり、数量及び/又は管径が作動ガス200の流量の増加に応じて増加することができる。すなわち、本発明では、作動ガス200の流量によって、中空金属管16のセット数を増加して流量を分散することができる。これにより、中空金属管16におけるプラズマの安定性を確保することができ、更に、空気伝導(gas conductance)を増加することができる。
また、反応チャンバー10のガス出口15の直径が5センチでもよい。この直径は、2.45GHzのマイクロ波のカットオフ直径(Cut-off)よりも小さいため、マイクロ波を伝送することができず、第2のマイクロ波共振チャンバー14の特性に対する影響は極めて小さい。しかし、従来技術の2.5センチに比べると、本発明に係るシステムの空気伝導の増加が多いため、反応チャンバー10の圧力が降下し、マイクロ波共振チャンバーで、大ガス流量のプラズマを励起する性能に有利である。また、複数の中空金属管16により、中空金属管16とマイクロ波共振チャンバーとの内部のパワー密度を増加することができ、すなわち、プラズマのパワー密度は中空金属管16の数量に対応する。これにより、相対的に高い真空圧力及び大ガス流量(> 1Torr、> 10slm)で、プラズマが極めて高い密度を有する状態を実現することができ、ガスを活性化する機能を達成することができる。
【0040】
また、
図3及び
図5に示すように、このセットの中空金属管16は、フェライト変圧器コア50のフェライトコア52の一対の中央中空ゾーン54を挿通する。フェライト変圧器コア50が交流の駆動電源58と電気的に接続すると、反応チャンバー10内に誘導電界400が生成されて、プラズマにおいて、電流が励起される。しかし、反応チャンバー10の構造は、電気的に絶縁する必要がある。そうしないと、フェライト変圧器コア50が短絡して、反応チャンバー10で誘導電界400を生成することができない。本発明では、この電気的な絶縁は、中空金属管16と第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14の連接箇所に、セラミックリングを使用することにより達成される。
なお、フェライト変圧器コア50に励起される電場は、反応チャンバー10の金属構成の影響により、セラミックリングで構成される電気的バリアゾーン17に集中する。従来技術では、電気的バリアゾーンが十分に小さくないと、十分に強い電場の生成、及びプラズマを励起して安定に維持することができない。しかし、強い電場により、領域性放電が発生してセラミックリングが破裂して、電気的な絶縁を破壊することがあり、更に、逆放電して駆動電源を損壊し、又は反応チャンバーを保護するメッキ層の離脱が発生する。なお、本発明に係るプラズマは、第1のマイクロ波共振チャンバー12及び第2のマイクロ波共振チャンバー14に励起されるため、電気的バリアゾーンの電場強度が重要なパラメータではなく、本発明に係る電気的バリアゾーンはより広くてもよいため、上記の従来技術の欠点を減少することができ、寿命の延び及びシステムの安定性に有利である。
【0041】
本発明では、
図5に示すように、複数の中空金属管16及びそれに関連する二つ又は複数のフェライトコア52を採用してもよい。これらのフェライトコア52が単独の一次電流源(すなわち、駆動電源58)と並列接続して電力を供給することにより、中空金属管16でのプラズマにおける電子ドリフト電流をサポートする。
図5は、複数の中空金属管16でのプラズマにおける電子ドリフト電流が、反応チャンバー10(第1のマイクロ波共振チャンバー12、第2のマイクロ波共振チャンバー14及び中空金属管16)におけるプラズマにおいて、どのように連携して動作するかを示す。一方、フェライト変圧器コア50の誘導による電場と反応チャンバー10に差し込まれた中央金属棒24のなす角度は90度であるため、マイクロ波源20に対して干渉を発生しない。
【0042】
図5は、更に、本発明に係る駆動TCPプラズマの電源回路を示す。この電源回路は、駆動電源58と、フェライト変圧器コア50と、プラズマと、から構成される。本発明では、駆動電源58が交流電源を例にして説明する。採用される交流電源の周波数は、プラズマを駆動可能であり、パワー素子の耐えられる電圧及び耐えられる電流、及びフェライトコア52の損失によって、適当に決められ、凡そ100kHz~500kHzの範囲に入る。交流電源は、一定のパワー又は一定の電流で操作される。出力電圧は、凡そ250V~350Vの範囲に入り、なお、最大パワーは10kWである。
従来技術では、交流電源の負荷インピーダンスは、プラズマを励起する過程中に、低密度プラズマから安定的な高密度プラズマへの変化が極めて大きく、パワー素子に対して挑戦が大きい。これに比べて、本発明では、初期に、マイクロ波共振チャンバーが一定密度のプラズマを励起したため、動的変化を大幅に減少することができ、パワー素子が故障になる確率を降下することができる。また、本発明に係る駆動マイクロ波源20の駆動電源58は、直流でもいいし、パルスでもよく、例えば、スイッチング(switching)回路から、高圧変圧器を経由して、電圧を1kV程度に上昇して、倍電圧回路を経由してマグネトロンを駆動し、その操作パワーは50W~1000Wの範囲に入る。従来のマグネトロンの仕様なら、ほぼ全反射に耐えられるため、プラズマを始めるのに有利である。
【0043】
本発明に係る複合プラズマ源とその操作方法によれば、次のような効果がある。
(1)マイクロ波プラズマ及びTCPプラズマを結合したメカニズムにより、複合プラズマ源を構成する。
(2)マイクロ波共振チャンバーを利用して、高強度の電場を生成してプラズマを生成した後、TCPのメカニズムにより、エネルギーを有効にカップリングして、ハイパワー及び高密度のプラズマを生成する。
(3)高電圧点火装置の欠点を解決することができると共に、マイクロ波は、初期的なプラズマを励起して保持するため、TCPの弱い電場による欠点を解決することができ、プラズマの安定性を向上することができる。
(4)反応チャンバーが強い電場を有する特性を利用して、プロセス条件が調整されても、プラズマの密度を一定に維持することができる。気圧が1Torr~5Torrであっても、高強度の電場を有効に励起することができ、プラズマを安定的に生成する要求に合うことができる。
(5)作動ガスの流量の大きさによって、中空金属管のセット数を増加して流量を分散することができる。プラズマの安定性を確保することができると共に、空気伝導を増加することができる。
(6)本発明に係るプラズマがマイクロ波に励起されるため、本発明に係る電気的バリアゾーンを広くすることができ、寿命の増加およびシステムの安定性に有利である。
(7)ガスの流量が多い場合には、ガスの圧力を数Torrの範囲に維持することができる。
(8)各セットの中空金属管のパワーを分散するため、各中空金属管のエネルギー密度が降下して、プラズマが拡散モード(Diffusion Mode)から収縮モード(Contraction Mode)へ変換することを減少することができる。
(9)反応チャンバーにおける高強度の電場を利用して、高気圧および大ガス流量で、プラズマを安定に励起して、十分な自由電子を提供して、フェライト変圧器コアの誘導による電場に駆動されて加速することにより、反応チャンバー内に、クローズ経路の電子ドリフト電流を形成して、ガスを有効に解離させて高密度なプラズマを生成する。
【0044】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、発明を限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、添付の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 反応チャンバー
11 ガス入口
12 第1のマイクロ波共振チャンバー
14 第2のマイクロ波共振チャンバー
15 ガス出口
16 中空金属管
17 電気的バリアゾーン
20 マイクロ波源
22 マグネトロン
23 出力アンテナ
24 中央金属棒
25 径勾配ゾーン
26 円筒形外管
30 マイクロ波マッチングエレメント
32a 横管
32b 金属板
32c クロスバー
50 フェライト変圧器コア
52 フェライトコア
54 中空ゾーン
56 誘導コイル
58 駆動電源
100 複合プラズマ源
200 作動ガス
300 マイクロ波電場
400 誘導電界
500 真空チャンバー
502 フェライト変圧器コア
504 セラミックリング
506 ガス入口
508 ガス出口