(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20230808BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20230808BHJP
B29C 45/06 20060101ALI20230808BHJP
B29C 45/12 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/03
B29C45/06
B29C45/12
(21)【出願番号】P 2022069853
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】合葉 修司
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192701(JP,A)
【文献】特開2006-103203(JP,A)
【文献】特開2021-084381(JP,A)
【文献】特開2005-138367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、
それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、
前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機において、
前記射出装置と前記型締装置を制御する制御装置と、設定時間を予め記憶する記憶装置とを備え、
前記第1の射出ユニットは、第1の射出シリンダと、前記第1の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第1の射出軸とを備え、
前記第2の射出ユニットは、第2の射出シリンダと、前記第2の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第2の射出軸とを備え、
前記制御装置は、型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で前記型締装置の動作を一時停止したあと、前記第1の射出軸の前進を開始して前記第1の射出ユニットの射出充填を開始し、前進中の前記第1の射出軸が所定の位置に到達した時点で前記型締装置の動作を再開するように制御し、
さらに前記制御装置は、所定時点から前記設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御し、
前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、
前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、
射出成形機。
【請求項2】
前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填を開始したあとから前記型締装置の型締め動作の完了までの間の期間に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始することが可能な時間に設定されている、
請求項
1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記設定時間は、前記型締装置の動作の再開後から前記型締装置の型締め動作の完了までの間の期間に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始することが可能な時間に設定されている、
請求項
2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記所定時点は、
前記第1の射出ユニットが射出充填を開始した時点である、
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記所定時点は、
前記型締装置が一時停止した時点である、
請求項
1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記設定時間を補正する補正装置を備え、
前記補正装置は、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間
が基準時間よりも長いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を長くし、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間
が前記基準時間よりも短いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を短くして、前記設定時間を補正し、
前記記憶装置は、前記補正装置で補正された設定時間を前記設定時間の新たな値として記憶する、
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記補正装置は、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの前記時間
が前記基準時間よりも長いとき、それらの前記差分の絶対値を前記設定時間に加算し、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの前記時間
が前記基準時間よりも短いとき、それらの前記差分の絶対値を前記設定時間から減算して、前記設定時間を補正し、
前記記憶装置は、前記補正装置で補正された設定時間を前記設定時間の新たな値として記憶する、
請求項6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記第2のキャビティ空間は、予め前記第1の成形品を収容して、前記第2の射出ユニットによって前記成形材料が射出充填されて、前記第1の成形品と結合して当該第1の成形品を含む第2の成形品を成形する、
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記第1の成形品を前記第2のキャビティ空間を構成する部分の所定位置まで移動する移動装置を備える、
請求項
1に記載の射出成形機。
【請求項10】
第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、
それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、
前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機において、
前記射出装置と前記型締装置を制御する制御装置と、設定時間を予め記憶する記憶装置と、前記設定時間を補正する補正装置とを備え、
前記制御装置は、所定時点から前記設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御し、
前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、
前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間であり、
前記補正装置は、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間が基準時間よりも長いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を長くし、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間が前記基準時間よりも短いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を短くして、前記設定時間を補正し、
前記記憶装置は、前記補正装置で補正された設定時間を前記設定時間の新たな値として記憶する、
射出成形機。
【請求項11】
第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、
それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、
前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機の制御方法において、
前記第1の射出ユニットは、第1の射出シリンダと、前記第1の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第1の射出軸とを備え、
前記第2の射出ユニットは、第2の射出シリンダと、前記第2の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第2の射出軸とを備え、
型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で前記型締装置の動作を一時停止させたあと、前記第1の射出軸の前進を開始して前記第1の射出ユニットの射出充填を開始させ、前進中の前記第1の射出軸が所定の位置に到達した時点で前記型締装置の動作を再開させ、
さらに所定時点から記憶装置に予め記憶された設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始させ、
前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、
前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、
射出成形機の制御方法。
【請求項12】
第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、
それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、
前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機の制御プログラムにおいて、
コンピュータを前記射出成形機の制御装置として動作させ、
前記第1の射出ユニットは、第1の射出シリンダと、前記第1の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第1の射出軸とを備え、
前記第2の射出ユニットは、第2の射出シリンダと、前記第2の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第2の射出軸とを備え、
前記制御装置は、型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で前記型締装置の動作を一時停止したあと、前記第1の射出軸の前進を開始して前記第1の射出ユニットの射出充填を開始し、前進中の前記第1の射出軸が所定の位置に到達した時点で前記型締装置の動作を再開するように制御し、
さらに前記制御装置は、所定時点から記憶装置に予め記憶された設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御し、
前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、
前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、射出成形機の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に射出成形機は、閉じた金型の中に流動可能な成形材料を射出充填して、金型の中で成形材料を固化させたあと、金型を開いて成形品を取り出すことを繰り返す。このような射出成形機には、成形材料の射出充填を複数回に分けて行い、先に射出充填した成形材料が固化した後に、次の成形材料を射出充填するものがある。例えば、2色成形、多色成形、2層成形または多層成形と称される射出成形を行う射出成形機がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
成形材料の射出充填を複数回に分けて行う場合、例えば、射出充填を2回に分けて行う場合、1回目の射出充填により成形材料が固化したものに対する2回目の射出充填と、新たな1回目の射出充填を、1つの型締め装置の1回の動作に合せて行うことで、成形体の生産性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1回目の射出充填は、ガス抜き不良やショートショットへの対策として、例えば、ガスだけが漏れる程度に金型装置を開いた状態または型締め圧力が型締め完了後の所定の型締め圧力よりも小さい状態のうち、つまり、型閉じが完了する前または型閉じ後に行われる型締めが完了する前に成形材料の射出充填を開始することが好ましいが、2回目以降の射出を同じタイミングで行うと、バリが生じることがある。このため、2回目以降の射出は、型締めが完了してから行うことが望ましい。ただし、型締めが完了したことを確認してから2回目以降の射出を行うと、その間に無駄な時間が生じてしまうことがある。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、適切なタイミングで複数の成形材料の射出を行うことのできる射出成形機、射出成形機の制御方法及びプログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、射出成形機が提供される。この射出成形機は、第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備える。それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を型締装置に搭載し、または、第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを型締装置に少なくとも搭載する。第1のキャビティ空間に第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、第2のキャビティ空間に第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する。さらに、この射出成形機は、射出装置と型締装置を制御する制御装置と、設定時間を予め記憶する記憶装置とを備える。制御装置は、所定時点から設定時間の経過後に第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御する。所定時点は、第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点である。設定時間は、第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である。
【0008】
本発明の一態様によれば、適切なタイミングで複数の成形材料の射出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】射出成形機1の構成を示すブロック図である。
【
図4】図
2にA-Aで示した射出成形機1の矢視断面図である。
【
図5】固定側金型301と可動側金型302が閉じられた際の射出成形機1の側面を示した図である。
【
図6】固定側金型301と可動側金型302が閉じられた際の射出成形機1の上面を示した図である。
【
図7】成形品の成形の流れを示すアクティビティ図である。
【
図8】射出ユニット21の構成例を示した図である。
【
図10】射出成形機1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【
図11】射出成形機1の動作の流れを示すアクティビティ図である。
【
図14】
図12にB-Bで示した射出成形機10の矢視断面図である。
【
図15】固定側金型311,321と可動側金型312,322が閉じられた際の射出成形機1
0の側面を示した図である。
【
図16】固定側金型311,321と可動側金型312,322が閉じられた際の射出成形機1
0の上面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本開示の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0013】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0014】
1.射出成形機の概要
図1は、射出成形機1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、射出成形機1は、射出装置2と、1つの型締装置3と、移動装置4と、制御装置5と、記憶装置6と、補正装置7と、表示装置8と、操作盤9とを備える。また、射出装置2は、第1の射出ユニットである射出ユニット21と、第2の射出ユニットである射出ユニット22とを少なくとも有する。また、移動装置4は、型締装置3に備えられてもよい。また、記憶装置6と補正装置7は、制御装置5に備えられてもよい。この射出成形機1は、成形品を射出成形するが、その成形材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び、軽金属材料など、があるが、射出成形機1は、熱可塑性樹脂(以下、樹脂材料と称する)を成形するものとして説明する。
【0015】
2.型締装置3と移動装置4
まず、型締装置3と移動装置4について説明する。
図2は、射出成形機1の側面を示した図であり、
図3は、射出成形機1の上面を示した図である。また、
図4は、
図2にA-Aで示した射出成形機1の矢視断面図である。これらの図に示すように、型締装置3は、1つの金型装置300を少なくとも搭載する。この金型装置300は、固定側金型301と可動側金型302とから構成され、型締装置3により固定側金型301と可動側金型302が閉じられた際に、それぞれが連通していない第1のキャビティ空間300aと第2のキャビティ空間300bとを少なくとも形成する。
図5は、固定側金型301と可動側金型302が閉じられた際の射出成形機1の側面を示した図である。
図6は、固定側金型301と可動側金型302が閉じられた際の射出成形機1の上面を示した図である。なお、第1のキャビティ空間300aと第2のキャビティ空間300bは、それぞれ独立して金型装置300に形成されている。第1のキャビティ空間300aと第2のキャビティ空間300bは、それぞれ射出装置2側から順に、スプル部、ゲート部および製品部で少なくとも構成されている。スプル部とゲート部の間にランナ部を備える場合もある。また、ランナ部は、必要に応じて、ホットランナ装置によって構成されている場合もある。
【0016】
ここで、型締装置3の概略について説明する。型締装置は、直圧方式とトグル方式に大別されるが、型締装置3は、一例として直圧方式である。この型締装置3は、固定プラテン31と、可動プラテン32と、支持プラテン33と、タイバ34と、型開閉駆動装置35と、型締駆動装置36と、不図示の突出装置と、を備えている。
【0017】
固定プラテン31と支持プラテン33は、タイバ34の両端に固定されている。可動プラテン32は、固定プラテン31と支持プラテン33の間を移動する。固定プラテン31に固定側金型301が取り付けられ、可動プラテン32に可動側金型302が取り付けられている。また、支持プラテン33に型開閉駆動装置35と型締駆動装置36が取り付けられている。型開閉駆動装置35と型締駆動装置36のそれぞれの駆動軸が可動プラテン32に取り付けられ、型開閉駆動装置35と型締駆動装置36は、例えば、電動式または油圧式などの各種方式で駆動する。なお、型開閉駆動装置35と型締駆動装置36は、1つの駆動装置で構成されていてもよい。
【0018】
型開閉駆動装置35は、例えばボールねじ機構と回転モータを備えて、固定側金型301と可動側金型302を開閉する際に可動プラテン32を大きく移動させる。可動プラテン32に付与される圧力は、例えば、回転モータに流れる電流値から検出することができる。また可動プラテン32に付与される圧力は、例えば、ロードセルのような圧力検出器で検出されてもよい。可動プラテン32の位置および移動速度は、例えば回転モータの回転数を検出するロータリエンコーダのような位置検出器で検出することができる。また例えば可動プラテン32の位置および移動速度は、リニアエンコーダのような位置検出器で検出されてもよい。
【0019】
型締駆動装置36は、例えば油圧アクチュエータを備えて、固定側金型301と可動側金型302を型締めする際に可動プラテン32に大きな圧力を付与する。固定側金型301と可動側金型302を締め付ける圧力は、例えば油圧アクチュエータに備える圧力検出器から検出することができる。また金型を締め付ける圧力は、例えば、ロードセルのような圧力検出器で検出されてもよい。
【0020】
固定側金型301と可動側金型302とにより形成される第1のキャビティ空間300aは、射出ユニット21によって成形材料が射出充填され、これにより、第1の成形品が成形される。また、第2のキャビティ空間300bは、予め第1の成形品を収容して、射出ユニット22によって成形材料が射出充填されて、第1の成形品と結合して当該第1の成形品を含む第2の成形品を成形される。射出ユニット21が射出充填する成形材料と、射出ユニット22が射出充填する成形材料は、それぞれ、成分の異なるもの、または、同一の成分で色の異なるものである。なお、両者が、同一の成形材料であってもよい。言い換えれば、射出ユニット21が射出充填する第1の成形材料と、射出ユニット22が射出充填する第2の成形材料は、それぞれ、成分が異なりかつ色が同じもの、成分が同じでかつ色が異なるもの、または、成分と色の両方が異なるものである。なお、第1の成形材料と第2の成形材料の両者が、同一の成形材料、すなわち、成分と色の両方が同じものであってもよい。このように、射出成形機1は、第1のキャビティ空間300aに第1の射出ユニットである射出ユニット21によって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、第2のキャビティ空間300bに第2の射出ユニットである射出ユニット22によって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する。
【0021】
第2の成形品を成形するためには、第1の成形品を第2のキャビティ空間300bに収容する必要がある。このため、移動装置4は、第1の成形品を第2のキャビティ空間300bを構成する部分の所定位置まで移動する。例えば、移動装置4は、駆動機構41と、ロータリーテーブル42と、歯車43と、回転軸44とを備えて構成される。ロータリーテーブル42は、回転軸44によって可動プラテン32に回転自在に取り付けられている。ロータリーテーブル42は、可動側金型302が配設され、駆動機構41が発生させる動力が歯車43を介して伝達され、回転軸44を中心軸にして回転する。ロータリーテーブル42は、型締装置3によって金型装置300が開いたときに少なくとも所定の回転角度だけ回転すればよい。回転する方向は、例えば、常に時計回りでもよいし、常に反時計回りでもよいし、または、回転する毎に必要に応じて時計回りと反時計回りを切り換えるようにしてもよい。所定の回転角度および所定の回転方向は、例えば、キャビティ空間の数などのような各種構成に応じて決定すればよい。本実施形態のロータリーテーブル42は、1回の回転で180度回転する。この回転により、可動側金型302と固定側金型301とが対向する際の向きが変わり、可動側金型302のうち、第1のキャビティ空間300aを構成している部分が、第2のキャビティ空間300bを構成している部分となり、第2のキャビティ空間300bを構成している部分が、第1のキャビティ空間300aを構成している部分となる。ロータリーテーブル42が回転する際に、可動側金型302に第1の成形品が付されていれば、この第1の成形品は、第2のキャビティ空間300bに収容される。なお、移動装置4は、駆動機構41と、ロータリーテーブル42と、歯車43とを備えて構成されるものに限らず、第1のキャビティ空間300aで成形された第1の成形品を、第2のキャビティ空間300bに収容することができるものであれば、どのような構成であってもよい。例えば、ロボットハンドを備えるように移動装置4を構成し、金型装置300における第2のキャビティ空間300bを構成する部分に移動させて、このロボットハンドで、第1の成形品を、第2のキャビティ空間300bに収容するようにしてもよい。
【0022】
3.成形品の成形の流れ
ここで、成形品の成形の流れを説明する。
図7は、成形品の成形の流れを示すアクティビティ図である。まず、固定側金型301と可動側金型302とを閉じ(A101)、射出ユニット21により第1のキャビティ空間300aに成形材料を射出充填し(A102)、その後に、固定側金型301と可動側金型302とを開く(A103)。続いて、第1の成形品を移動し(A104)、固定側金型301と可動側金型302とを閉じる(A105)。
【0023】
次に、射出ユニット21により第1のキャビティ空間300aに成形材料を射出充填するとともに(A106)、射出ユニット22により第2のキャビティ空間300bに成形材料を射出充填する(A107)。そして、固定側金型301と可動側金型302とを開き(A108)、第2の成形品を取り出す(A109)。このA104からA109のアクティビティは、第2の成形品が所定数成形されるまで繰り返される。所定数とは、所望する第2の成形品の数よりも、1だけ少ない数である。第2の成形品が所定数成形されると、第1の成形品を移動し(A110)、固定側金型301と可動側金型302とを閉じる(A111)。そして、射出ユニット22により第2のキャビティ空間300bに成形材料を射出充填し(A112)、その後に、固定側金型301と可動側金型302とを開き(A113)、第2の成形品を取り出して(A114)、成形品の成形を終了する。
【0024】
4.射出ユニット21と射出ユニット22
次に、射出ユニット21と射出ユニット22の構成について説明する。射出ユニットは、スクリュプリプラ方式とインラインスクリュ方式に大別されるが、射出ユニット21と射出ユニット22は、一例としてスクリュプリプラ方式である。なお、射出ユニット21と射出ユニット22は、同様の構成であるため、ここでは、射出ユニット21の構成についてのみ説明し、射出ユニット22の構成の説明は省略する。
【0025】
図8は、射出ユニット21の構成例を示した図である。なお、
図8では、射出ユニット21の一部を断面で示している。同図に示すように、射出ユニット21は、可塑化シリンダ210と、射出シリンダ220と、それらを接続するジャンクション230を備える。可塑化シリンダ210は、シリンダ孔210aと、シリンダ孔210aの中で回転する可塑化スクリュ211を備える。可塑化シリンダ210には、外部から樹脂材料が供給され、可塑化シリンダ210の中の樹脂材料は、可塑化シリンダ210の外周に巻き回されたヒータで加熱されながら回転する可塑化スクリュ211で可塑化されて溶融する。可塑化シリンダ210の中の樹脂材料は、回転する可塑化スクリュ211によって、可塑化スクリュ211の先端に向って移動しながら溶融して、流動可能な状態の溶融樹脂となってジャンクション230に形成されている連通路230aを経由して射出シリンダ220に送られる。
【0026】
射出シリンダ220は、シリンダ孔220aと、シリンダ孔220aの中を前後に移動する射出軸221を備える。また、射出シリンダ220は、先端部に射出ノズル222を有し、この射出ノズル222が固定側金型301に接続されている。シリンダ孔220aにおける射出軸221の先端面の前方には、射出ノズル222に連通する射出室220bが形成されている。射出軸221は、シリンダ孔220aの中で前後方向に移動して、射出室220bの容積を増減する。射出軸221は、電動式または油圧式などの各種方式で駆動される。そして、射出軸221の動作により、成形材料である溶融樹脂が、第1のキャビティ空間300aに射出充填される。
【0027】
連通路230aは、ジャンクション230の中に形成されて、可塑化シリンダ210のシリンダ孔210aの中と射出シリンダ220の射出室220bの中を連通し、可塑化シリンダ210から射出シリンダ220に溶融樹脂を送るときには開かれ、溶融樹脂を射出充填するときには閉じられる。連通路230aの開閉は、不図示の逆流防止装置によって行われる。例えば、逆流防止装置は、可塑化スクリュ211の先端面に対面する位置に連通路230aの可塑化シリンダ側の開口を形成するとともに当該開口に対して可塑化スクリュ211を前後に移動可能に構成したものでもよい。連通路230aを閉じるときには、可塑化スクリュ211を前進させて、連通路230aの可塑化シリンダ側の開口を可塑化スクリュ211の先端面で塞ぐ。連通路230aを開くときには、可塑化スクリュ211を後退させて、連通路230aの可塑化シリンダ側の開口と可塑化スクリュ211の先端面との間に隙間を開ける。その他、逆流防止装置は、連通路230aを開閉することが可能な各種の開閉弁を採用してもよい。
【0028】
溶融樹脂は、射出軸221を後ろに押しながら射出軸221が所定の位置に後退するまで、可塑化シリンダ210から射出シリンダ220の射出室220bの中に流れ込む。溶融樹脂は、射出軸221が後退した位置によって計量される。このとき射出軸221は、溶融樹脂の圧力よりも小さい圧力でかつ射出軸221の前進方向の圧力である背圧が付与されている場合もある。なお、射出軸221は、例えば、射出プランジャである。
【0029】
このように、第1の射出ユニットである射出ユニット21は、第1の射出シリンダである射出シリンダ220と、第1の射出シリンダのシリンダ孔220aの中を前後に移動する第1の射出軸である射出軸221とを備え、同様に、第2の射出ユニットは、第2の射出シリンダと、第2の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第2の射出軸とを備える。
5.制御装置5と記憶装置6と補正装置7
次に、制御装置5の構成について説明する。
図9は、制御装置5の構成を示した図である。同図に示すように、制御装置5は、処理部51と、記憶部52と、一時記憶部53と、外部装置接続部54と、通信部55とを有しており、これらの構成要素が制御装置5の内部において通信バス56を介して電気的に接続されている。
【0030】
処理部51は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)により実現されるもので、記憶部52に記憶された所定のプログラムに従って動作し、種々の機能を実現する。
【0031】
記憶部52は、様々な情報を記憶する不揮発性の記憶媒体である。これは、例えばハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスにより実現される。なお、記憶部52は、制御装置5と通信可能な別の装置に配するようにすることも可能である。
【0032】
一時記憶部53は、揮発性の記憶媒体である。これは、例えばランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリにより実現され、処理部51が動作する際に一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶する。
【0033】
外部装置接続部54は、例えばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)や高精細度マルチメディアインターフェース(High-Definition Multimedia Interface:HDMI(登録商標))といった規格に準じた接続部であり、キーボード等の入力装置やモニタ等の表示装置を接続可能としている。
【0034】
通信部55は、例えばローカルエリアネットワーク(Local Area Network:LAN)規格に準じた通信手段であり、制御装置5とローカルエリアネットワークやこれを介したインターネット等のネットワークとの間の通信を実現する。
【0035】
なお、制御装置5には、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能であり、複数のコンピュータを用いて制御装置5を構成することも可能である。
【0036】
このように、制御装置5は、コンピュータであり、このコンピュータを射出成形機の制御プログラムにより動作させることで、制御装置として動作する射出成形機の制御プログラムは、コンピュータを射出成形機の制御装置として動作させるものである。
【0037】
ここで、制御装置5の特徴について説明する。制御装置5は、所定時点から設定時間の経過後に射出ユニット22の射出充填を開始するように、射出ユニット22を制御する。所定時点は、射出ユニット21が射出充填を開始する時点または射出ユニット21が射出充填を開始するよりも前の時点である。例えば、所定時点は、射出ユニット21が射出充填を開始した時点であってもよく、型締装置3が一時停止した時点であってもよい。設定時間は、射出ユニット21の射出充填の開始よりも射出ユニット22の射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である。具体的には、制御装置5は、型締装置3による型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で型締装置3の動作を一時停止したあと、射出軸221の前進を開始して射出ユニット21の射出充填を開始し、前進中の射出軸221が所定の位置に到達した時点で型締装置3の動作を再開する。ここで、設定時間は、例えば、量産成形の前に行われるテスト成形で求められる。具体的には、第2の成形品にバリなどの成形不良が発生しない充分な長さの設定時間、例えば、型締め完了後に射出ユニット22の射出充填を開始することができる設定時間などを仮で設定し、徐々に設定時間を短くしながらテスト成形を繰り返し、第2の成形品にバリなどの成形不良が発生したときの直前の設定時間を正式な設定時間として採用する。正式な設定時間は、第2の成形品にバリなどの成形不良が発生せず、かつ1回の成形サイクルの時間をより短くできる最適な設定時間とも言える。また、第2の成形品の良否判定をオペレータによる目視の代わりに撮像装置などを利用して自動で行うことができれば、前述のテスト成形において最適な設定時間を自動で求めることも可能である。なお、正式な設定時間には、最適な設定時間と言える範囲において、ある程度のマージンを持たせておいてもよい。
【0038】
設定時間は、射出ユニット21の射出充填を開始したあとから型締装置3の型締め動作の完了までの間の期間に射出ユニット22の射出充填を開始することが可能な時間に設定されている。また、設定時間は、型締装置3の動作の再開後から型締装置3の型締め動作の完了までの間の期間に射出ユニット22の射出充填を開始することが可能な時間に設定されていてもよい。なお、設定時間は、予め記憶装置6に記憶されている。
【0039】
記憶装置6は、設定時間を記憶するもので、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ等のストレージデバイス、不揮発性のメモリ等により実現される。なお、制御装置5の記憶部52を記憶装置6として用いることも可能である。
【0040】
補正装置7は、記憶装置6に記憶されている設定時間を補正する。補正装置7には、制御装置5と同様にコンピュータを用いることもできるが、制御装置5で、補正装置7の機能を実行させるようにしてもよい。
【0041】
補正装置7は、所定時点から型締装置3の型締めが完了するまでの時間が、基準時間よりも長いとき、それらの差分に基づき設定時間を長くし、所定時点から型締装置3の型締めが完了するまでの時間が、基準時間よりも短いとき、それらの差分に基づき設定時間を短くして、設定時間を補正する。具体的には、補正装置7は、所定時点から型締装置3の型締めが完了するまでの時間が、基準時間よりも長いとき、それらの差分の絶対値を設定時間に加算し、所定時点から型締装置3の型締めが完了するまでの時間が、基準時間よりも短いとき、それらの差分の絶対値を設定時間から減算して、設定時間を補正する。基準時間は、例えば、前回の良品成形時の値や、その平均値等である。また、補正装置7により設定時間の補正が行われると、記憶装置6は、補正装置7で補正された設定時間を、設定時間の新たな値として記憶する。なお、補正された設定時間には、最適な設定時間と言える範囲において、ある程度のマージンを持たせておいてもよい。
【0042】
また、制御装置5は、型締装置3により固定側金型301と可動側金型302とを閉じる型閉工程、第1のキャビティ空間300aおよび第2のキャビティ空間300bに溶融樹脂を射出充填する射出充填工程、射出装置2により第1のキャビティ空間300aおよび第2のキャビティ空間300b中の溶融樹脂に保持圧力を付与する保圧工程、保持圧力が開放されたあとに冷却により成形品を固化する冷却工程、型締装置3により固定側金型301と可動側金型302とを開く型開工程、可塑化シリンダ210で樹脂材料を溶融して射出シリンダ220で溶融樹脂を計量する計量工程等の制御を行う。また例えば、制御装置5は、型開工程のあと、移動装置4によって第1の成形品を第2のキャビティ空間300bに収容する移動工程の制御を行う。また例えば制御装置5は、型開工程のあと、不図示の取出装置によって第2の成形品を取り出す取出工程の制御を行う。また例えば、制御装置5は、型開工程のあとに移動装置4に移動命令信号を出力するとともに取出装置に取出命令信号を出力し、移動装置4から出力される移動完了信号および取出装置から出力される取出完了信号を受信するとつぎのサイクルの型閉工程を開始するように制御してもよい。
【0043】
6.表示装置8と操作盤9
表示装置8は、射出成形機1の動作状況や、各種設定等を表示する。表示装置8は、表示画面上に透明なタッチパネルを重ねて、入力キーを備えるようにしてもよく、このタッチパネルを操作盤9として用いるようにしてもよい。操作盤9は、オペレータが射出成形機1を操作する操作キーを有する。また操作盤9は、オペレータが成形条件を含む射出成形機1の設定を入力する入力キーを有する。
【0044】
7.射出成形機1の動作
次に、射出成形機1の動作例を説明する。
図10は、射出成形機1の動作の流れを示すアクティビティ図である。制御装置5は、まず、型締装置3を動作させる(A201)。そして、型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で、制御装置5は、型締装置3を一時停止させる(A202)。この状態で、制御装置5は、射出ユニット21の射出軸221を前進させて第1のキャビティ空間300aに成形材料の射出充填を開始させるとともに(A203)、設定時間の計時を開始する(A204)。
【0045】
その後、射出ユニット21による成形材料の射出充填が継続され、前進中の射出軸221が所定の位置に到達した時点で型締装置3の動作を再開させる(A205)。そして、型締装置3による型締め動作が完了すると、制御装置5は、型締装置3の動作を停止させる(A206)。一方、射出ユニット21による成形材料の射出充填が完了すると、制御装置5は、射出ユニット21による成形材料の射出充填を停止する(A207)。これらの間に、設定時間が計時されると、制御装置5は、射出ユニット22の射出軸を前進させて第2のキャビティ空間300bに成形材料の射出充填を開始させ(A208)、射出ユニット22による成形材料の射出充填が完了すると、制御装置5は、射出ユニット22による成形材料の射出充填を停止する(A209)。その後、補正装置7は、必要に応じて設定時間の補正を行い(A210)、射出成形機1の動作の1サイクルを終了する。なお、補正装置7による補正は、1サイクル毎に行ってもよく、数サイクルに1度行うようにしてもよい。また、所定回数の補正を行った後は、補正を省略するようにしてもよい。
【0046】
次に、射出成形機1の動作の別例を説明する。
図11は、射出成形機1の動作の流れを示すアクティビティ図である。制御装置5は、まず、型締装置3を動作させる(A301)。そして、型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で、制御装置5は、型締装置3を一時停止させるとともに(A302)、設定時間の計時を開始する(A303)。
【0047】
続いて、制御装置5は、射出ユニット21の射出軸221を前進させて第1のキャビティ空間300aに成形材料の射出充填を開始させる(A304)。その後、射出ユニット21による成形材料の射出充填が継続され、前進中の射出軸221が所定の位置に到達した時点で型締装置3の動作を再開させる(A305)。そして、型締装置3による型締め動作が完了すると、制御装置5は、型締装置3の動作を停止させる(A306)。一方、射出ユニット21による成形材料の射出充填が完了すると、制御装置5は、射出ユニット21による成形材料の射出充填を停止する(A307)。これらの間に、設定時間が計時されると、制御装置5は、射出ユニット22の射出軸を前進させて第2のキャビティ空間300bに成形材料の射出充填を開始させ(A308)、射出ユニット22による成形材料の射出充填が完了すると、制御装置5は、射出ユニット22による成形材料の射出充填を停止する(A309)。その後、補正装置7は、必要に応じて設定時間の補正を行い(A310)、射出成形機1の動作の1サイクルを終了する。なお、補正装置7による補正は、1サイクル毎に行ってもよく、数サイクルに1度行うようにしてもよい。また、所定回数の補正を行った後は、補正を省略するようにしてもよい。
【0048】
8.射出成形機10
次に、射出成形機1の変形例として、射出成形機10について説明する。
図12は、射出成形機10の側面を示した図であり、
図13は、射出成形機10の上面を示した図である。また、
図14は、
図12にB-Bで示した射出成形機10の矢視断面図である。
図15は、固定側金型311,321と可動側金型312,322が閉じられた際の射出成形機10の側面を示した図である。
図16は、固定側金型311,321と可動側金型312,322が閉じられた際の射出成形機10の上面を示した図である。これらの図に示すように、型締装置3は、第1のキャビティ空間310aを形成する第1の金型装置である金型装置310と第2のキャビティ空間320aを形成する第2の金型装置である金型装置320を少なくとも搭載する。
【0049】
射出成形機1と射出成形機10の相違点は、第1の射出ユニットである射出ユニット23と第2の射出ユニットである射出ユニット24の配設位置が、射出ユニット21と射出ユニット22の配設位置と異なる点と、金型装置310における第1のキャビティ空間310aを固定側金型311と可動側金型312、または、固定側金型311と可動側金型322で形成し、金型装置320における第2のキャビティ空間320aを固定側金型321と可動側金型322、または、固定側金型321と可動側金型312で形成する点である。なお、射出成形機10の動作は、射出成形機1の動作と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
また、射出成形機1の構成と射出成形機10の構成は、適宜組み合わせ可能である。例えば、射出成形機1と同様に射出ユニット21と射出ユニット22を配設し、型締装置3に、固定側金型311、固定側金型321、可動側金型312、可動側金型322を搭載するようにしてもよく、射出成形機10と同様に、射出ユニット23と射出ユニット24を配設し、型締装置3に固定側金型301と可動側金型302を搭載するようにしてもよい。
【0051】
また、射出成形機1の構成と射出成形機10の構成は、型締装置3の可動プラテン32側に射出装置2を配置し、可動プラテン32に搭載した可動側金型の方からキャビティ空間に成形材料を射出充填するような構成でもよい。このとき、移動装置4としてロータリーテーブル42を備えるのであれば、ロータリーテーブル42は、回転軸44によって固定プラテン31に回転自在に取り付けられるとともに固定側金型を搭載する。
【0052】
また、射出成形機1の構成は、第1のキャビティ空間300aと第2のキャビティ空間300bを含めた3つ以上のキャビティ空間を形成した1つの金型装置300を1つの型締装置3に搭載し、第1の射出ユニットである射出ユニット21と第2の射出ユニットである射出ユニット22とを含めた3つ以上の射出ユニットを射出装置2に備えるようにしてもよい。このとき、制御装置5は、射出ユニット21と射出ユニット22とを除く射出ユニットのそれぞれに対して行う制御として、射出ユニット21と同じタイミングで射出充填を開始するように制御を行ってもよいし、射出ユニット22と同じタイミングで射出充填を開始するように制御を行ってもよいし、または、射出ユニット22とは異なる設定時間を設けて射出ユニット22が射出充填を開始するタイミングとは異なるタイミングでかつ射出ユニット21の射出充填の開始から遅れて射出充填を開始するように制御を行ってもよい。また補正装置7は、例えば、射出ユニット22以外の射出ユニットにも設定時間が設けられていれば、それぞれの設定時間を補正することができる。
【0053】
また、射出成形機10の構成は、第1の金型装置である金型装置310と第2の金型装置である金型装置320を含め3つ以上の金型装置を1つの型締装置3に搭載し、第1の射出ユニットである射出ユニット23と第2の射出ユニットである射出ユニット24とを含めた3つ以上の射出ユニットを備えるようにしてもよい。このとき、制御装置5は、射出ユニット23と射出ユニット24とを除く射出ユニットのそれぞれに対して行う制御として、射出ユニット23と同じタイミングで射出充填を開始するように制御を行ってもよいし、射出ユニット24と同じタイミングで射出充填を開始するように制御を行ってもよいし、または、射出ユニット24とは異なる設定時間を設けて射出ユニット24が射出充填を開始するタイミングとは異なるタイミングでかつ射出ユニット23の射出充填の開始から遅れて射出充填を開始するように制御を行ってもよい。また補正装置7は、例えば、射出ユニット24以外の射出ユニットにも設定時間が設けられていれば、それぞれの設定時間を補正することができる。
【0054】
また、射出成形機1の構成と射出成形機10の構成は、移動装置4を備えていなくてもよい。すなわち、射出成形機1において、移動装置4を備えずに、第1のキャビティ空間300aで第1の成形品を成形し、第1のキャビティ空間300aと連通していない第2のキャビティ空間300bで第1の成形品を含まない第2の成形品を成形する場合にも本発明は適用可能である。また同様に、射出成形機10において、移動装置4を備えずに、第1のキャビティ空間310aで第1の成形品を成形し、第1のキャビティ空間310aと連通していない第2のキャビティ空間320aで第1の成形品を含まない第2の成形品を成形する場合にも本発明は適用可能である。
【0055】
4.その他
本発明は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0056】
(1)第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機において、前記射出装置と前記型締装置を制御する制御装置と、設定時間を予め記憶する記憶装置とを備え、前記制御装置は、所定時点から前記設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御し、前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、射出成形機。
【0057】
(2)前記第1の射出ユニットは、第1の射出シリンダと、前記第1の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第1の射出軸とを備え、前記第2の射出ユニットは、第2の射出シリンダと、前記第2の射出シリンダのシリンダ孔の中を前後に移動する第2の射出軸とを備え、前記制御装置は、型閉じ動作の途中の状態、または、当該型閉じ動作の完了後に行われる型締め動作の途中の状態で前記型締装置の動作を一時停止したあと、前記第1の射出軸の前進を開始して前記第1の射出ユニットの射出充填を開始し、前進中の前記第1の射出軸が所定の位置に到達した時点で前記型締装置の動作を再開する、上記(1)に記載の射出成形機。
【0058】
(3)前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填を開始したあとから前記型締装置の型締め動作の完了までの間の期間に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始することが可能な時間に設定されている、上記(2)に記載の射出成形機。
【0059】
(4)前記設定時間は、前記型締装置の動作の再開後から前記型締装置の型締め動作の完了までの間の期間に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始することが可能な時間に設定されている、上記(3)に記載の射出成形機。
【0060】
(5)前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始した時点である、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0061】
(6)前記所定時点は、前記型締装置が一時停止した時点である、上記(2)ないし(4)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0062】
(7)前記設定時間を補正する補正装置を備え、前記補正装置は、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間が、基準時間よりも長いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を長くし、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの時間が、前記基準時間よりも短いとき、それらの差分に基づき前記設定時間を短くして、前記設定時間を補正し、前記記憶装置は、前記補正装置で補正された設定時間を前記設定時間の新たな値として記憶する、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0063】
(8)前記補正装置は、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの前記時間が、前記基準時間よりも長いとき、それらの前記差分の絶対値を前記設定時間に加算し、前記所定時点から前記型締装置の型締めが完了するまでの前記時間が、前記基準時間よりも短いとき、それらの前記差分の絶対値を前記設定時間から減算して、前記設定時間を補正し、前記記憶装置は、前記補正装置で補正された設定時間を前記設定時間の新たな値として記憶する、上記(7)に記載の射出成形機。
【0064】
(9)前記第2のキャビティ空間は、予め前記第1の成形品を収容して、前記第2の射出ユニットによって前記成形材料が射出充填されて、前記第1の成形品と結合して当該第1の成形品を含む第2の成形品を成形する、上記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の射出成形機。
【0065】
(10)前記第1の成形品を前記第2のキャビティ空間を構成する部分の所定位置まで移動する移動装置を備える、上記(2)に記載の射出成形機。
【0066】
(11)第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機の制御方法において、所定時点から記憶装置に予め記憶された設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始させ、前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、射出成形機の制御方法。
【0067】
(12)第1の射出ユニットと第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備え、それぞれが連通していない第1のキャビティ空間と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を前記型締装置に搭載し、または、前記第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と前記第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを前記型締装置に少なくとも搭載し、前記第1のキャビティ空間に前記第1の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第1の成形品を成形し、前記第2のキャビティ空間に前記第2の射出ユニットによって成形材料を射出充填して第2の成形品を成形する射出成形機の制御プログラムにおいて、コンピュータを前記射出成形機の制御装置として動作させ、前記制御装置は、所定時点から記憶装置に予め記憶された設定時間の経過後に前記第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御し、前記所定時点は、前記第1の射出ユニットが射出充填を開始する時点または前記第1の射出ユニットが射出充填を開始するよりも前の時点であり、前記設定時間は、前記第1の射出ユニットの射出充填の開始よりも前記第2の射出ユニットの射出充填の開始を遅らせることが可能な時間に設定された遅延時間である、プログラム。
もちろん、この限りではない。
【0068】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 :射出成形機
2 :射出装置
3 :型締装置
4 :移動装置
5 :制御装置
6 :記憶装置
7 :補正装置
8 :表示装置
9 :操作盤
10 :射出成形機
21 :射出ユニット
22 :射出ユニット
23 :射出ユニット
24 :射出ユニット
31 :固定プラテン
32 :可動プラテン
33 :支持プラテン
34 :タイバ
35 :型開閉駆動装置
36 :型締駆動装置
41 :駆動機構
42 :ロータリーテーブル
43 :歯車
44 :回転軸
51 :処理部
52 :記憶部
53 :一時記憶部
54 :外部装置接続部
55 :通信部
56 :通信バス
210 :可塑化シリンダ
210a:シリンダ孔
211 :可塑化スクリュ
220 :射出シリンダ
220a:シリンダ孔
220b:射出室
221 :射出軸
222 :射出ノズル
230 :ジャンクション
230a:連通路
300 :金型装置
300a:第1のキャビティ空間
300b:第2のキャビティ空間
301 :固定側金型
302 :可動側金型
310 :金型装置
310a:第1のキャビティ空間
311 :固定側金型
312 :可動側金型
320 :金型装置
320a:第2のキャビティ空間
321 :固定側金型
322 :可動側金型
【要約】 (修正有)
【課題】適切なタイミングで複数の成形材料の射出を行うことのできる射出成形機、射出成形機の制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】射出成形機は、第1と第2の射出ユニットとを少なくとも有する射出装置と、1つの型締装置とを備える。それぞれが連通していない第1と第2のキャビティ空間とを少なくとも形成する1つの金型装置を型締装置に搭載し、または、第1のキャビティ空間を形成する第1の金型装置と第2のキャビティ空間を形成する第2の金型装置とを型締装置に搭載する。第1のキャビティ空間に第1の射出ユニットによって第1の成形品を成形し、第2のキャビティ空間に第2の射出ユニットによって第2の成形品を成形する射出成形機において、射出装置と型締装置を制御する制御装置と、設定時間を予め記憶する記憶装置とを備える。制御装置は、所定時点から設定時間の経過後に第2の射出ユニットの射出充填を開始するように制御する。
【選択図】
図1