(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】太陽電池および太陽電池の製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0352 20060101AFI20230808BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20230808BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20230808BHJP
【FI】
H01L31/04 340
H01L31/04 440
H01L31/06 300
(21)【出願番号】P 2022098517
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202210590274.5
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519095533
【氏名又は名称】ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】沈夢超
(72)【発明者】
【氏名】王利朋
(72)【発明者】
【氏名】楊忠翔
(72)【発明者】
【氏名】ワウ ショウ
(72)【発明者】
【氏名】楊潔
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007382(JP,A)
【文献】特開2017-022380(JP,A)
【文献】中国特許第113675289(CN,B)
【文献】特開2006-024757(JP,A)
【文献】特許第6916972(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第113675289(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-30/57
H10K 30/80-39/18
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N型初期ベースを提供することと、
前記N型初期ベースの第1表面にP型エミッタを形成することであって、前記P型エミッタは第1部および第2部を含み、前記第1部の天面は第1ピラミッド構造を含み、前記第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は前記第1ピラミッド構造の中心に対して凹んでまたは突出し、前記第2部の天面は第2ピラミッド構造を含み、前記第2ピラミッド構造の斜面は平面であり、前記N型初期ベースの第1表面に対して垂直な方向において前記第1部の接合深さは前記第2部の接合深さよりも深いことと、
前記N型初期ベースの第2表面にかつ前記N型初期ベースから離れる方向に、トンネル層及びドープされた導電層を順に形成することと、
を含み、
前記P型エミッタはさらにトランジション領域を含み、前記トランジション領域は前記第1部と前記第2部との間に位置し、前記トランジション領域の天面ドーピング濃度は前記第2部の天面ドーピング濃度より大きく、かつ前記第1部の天面ドーピング濃度より小さ
く、
前記P型エミッタを形成する方法は、
前記N型初期ベースの天面に3価のドーピング源を堆積させることと、
所定領域の前記N型初期ベースの天面を外部エネルギー源処理工程で処理し、前記外部エネルギー源処理工程で処理された前記3価のドーピング源が前記N型初期ベースの内部に拡散することと、
前記N型初期ベースを高温処理して、前記N型初期ベース内にP型エミッタを形成し、前記N型初期ベースは前記P型エミッタの天面から露出し、前記N型初期ベース中には、前記P型エミッタ以外の領域にN型ベースを形成し、ここで、前記所定領域の前記N型初期ベース内に前記第1部のP型エミッタを形成し、前記所定領域外の前記N型初期ベース内に前記第2部のP型エミッタを形成することと、を含み、
前記N型初期ベースの天面に3価のドーピング源を堆積させるステップを実行する際に、前記N型初期ベースの天面に第1薄膜層を形成し、前記第1薄膜層は前記3価のドーピング源を含み、また前記第1薄膜層は、ホウ素、酸素、ケイ素、塩素、窒素、及び炭素の少なくとも1つを含んでいて、ここで、堆積時間は20s~5000sであって、温度は500°C~1300°Cであり、
前記N型初期ベースを高温処理するステップにおいて、500s~10000sの時間、500℃~1500℃の温度で第1流量の酸素を通過させて、前記第1薄膜層が除去された前記N型初期ベースの天面に第2薄膜層を形成し、前記第2薄膜層の厚さは前記第1薄膜層の厚さより小さい、
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1流量は200sccm~80000sccmであることを特徴とする請求項
1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記外部エネルギー源処理工程は、レーザードーピング工程、プラズマ放射、または標的イオン注入工程のいずれかを含むことを特徴とする請求項
1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
第1金属電極を形成し、前記第1金属電極は前記第1部のP型エミッタに電気的に接続されることをさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属電極の幅は前記第1部のP型エミッタの幅より小さいまたは等しいことを特徴とする請求項
4に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、光起電力の分野に関し、特に太陽電池および太陽電池の製造方法、光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は良好な光電変換能力を有しているが、太陽電池ではp-n接合を形成するためにシリコンウェハー表面に拡散処理を行う必要があり、現在の太陽電池では、通常、シリコンウェハー表面にボロン拡散を行うことで、シリコンウェハー表面にエミッタを形成する。エミッタは、一方ではシリコンウェハーとp-n接合を形成し、もう一方では金属電極と電気的に接続されており、エミッタ内を移動するキャリアを金属電極で収集することができる。従って、エミッタは太陽電池の光電変換能力に大きな影響を与える。
【0003】
しかし、現在の太陽電池の光電変換性能は低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、少なくとも太陽電池の光電変換性能を向上させることに有利である太陽電池および太陽電池の製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例は太陽電池が提供され、N型ベースと、前記N型ベースの第1表面に設置されたP型エミッタと、前記N型ベースの第2表面に位置し、前記N型ベースから離れる方向で順に設置されたトンネル層及びドープされた導電層と、を備え、ここで、前記P型エミッタは第1部および第2部を含み、前記第1部の天面は第1ピラミッド構造を含み、前記第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は第1ピラミッド構造の中心に向かって凹んでいるまたは突き出ている、前記第2部の天面は第2ピラミッド構造を含み、前記第2ピラミッド構造の斜面は平面であり、前記N型ベースの第1表面に対して垂直な方向において第1部の接合深さは第2部の接合深さよりも深い。
【0006】
また、前記第1部のP型エミッタの結晶構造は転位を有する。
【0007】
また、前記第1部のP型エミッタのシート抵抗は前記第2部のP型エミッタのシート抵抗より小さい。
【0008】
また、前記第1部のP型エミッタのシート抵抗は20ohm/sq~300ohm/sqであり、前記第2部のP型エミッタのシート抵抗は100ohm/sq~1000ohm/sqである。
【0009】
また、前記第1ピラミッド構造の高さは、0.1μm~5μmであり、前記第1ピラミッド構造の底面の一次元寸法は、0.1μm~5μmである。
【0010】
また、前記第1ピラミッド構造の少なくとも一部がさらに第1サブ構造を含み、前記第1サブ構造は第1ピラミッド構造の頂部に位置し、前記第1サブ構造は球体または球状体のいずれかである。
【0011】
また、前記第1部の接合深さと前記第2部の接合深さの比は2以上である。
【0012】
また、前記第1部の接合深さは、2μm~10μmであり、前記第2部の接合深さを0.1μm~3μmである。
【0013】
また、前記第1部のP型エミッタの天面ドーピング濃度は、前記第2部のP型エミッタの天面濃度より大きいか、または等しい。
【0014】
また、前記第1部のP型エミッタの天面ドーピング濃度は1E18~5E20atom/cm3である。
【0015】
また、前記第1部の天面ドーピング濃度と前記第1部の底面ドーピング濃度の差は1E16atom/cm3~5E20atom/cm3である。
【0016】
また、前記第2部の天面ドーピング濃度と前記第2部の底面ドーピング濃度の差は1E16atom/cm3-1E20atom/cm3である。
【0017】
また、前記第2部の幅と前記第1部の幅の比は60以上である。
【0018】
また、第1金属電極をさらに含み、前記第1金属電極は前記N型ベースの第1表面上に設けられ、前記第1部のP型エミッタに電気的に接続される。
【0019】
また、記P型エミッタはさらにトランジション領域を含み、前記トランジション領域は前記第1部と前記第2部との間に位置し、前記トランジション領域の天面ドーピング濃度は前記第2部の天面ドーピング濃度より大きいまたは等しく、また前記第1部の天面ドーピング濃度より小さいまたは等しい。
【0020】
従って、本願の実施例は、太陽電池の製造方法がさらに提供され、N型ベースを提供することと、前記N型ベースの第1表面にP型エミッタが形成され、前記P型エミッタは第1部および第2部を含み、前記第1部の天面は第1ピラミッド構造を含み、前記第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は第1ピラミッド構造の中心に対して凹または凸であり、前記第2部の天面は第2ピラミッド構造を含み、前記第2ピラミッド構造の斜面は平面であり、前記N型ベースの第1表面に対して垂直な方向で前記第1部の接合深さは前記第2部の接合深さよりも深いことと、前記N型ベースの第2表面、また前記N型ベースから離れる方向に、トンネル層、ドープされた導電層が順に形成されていることと、を含む。
【0021】
また、前記P型エミッタを形成する方法は、N型初期ベースを提供することと、前記N型初期ベースの天面に3価のドーピング源を堆積させることと、所定領域の前記N型初期ベースの天面を外部エネルギー源処理工程で処理し、外部エネルギー源処理工程で処理された3価のドーピング源が前記N型初期ベースの内部に拡散することと、前記N型初期ベースを高温処理して、前記N型初期ベース内にP型エミッタを形成し、前記N型初期ベースは前記P型エミッタの天面を露出させ、前記N型初期ベース中には、前記P型エミッタ以外の領域に前記N型ベースを形成し、ここで、前記所定領域の前記N型初期ベース内に前記第1部のP型エミッタを形成し、前記所定領域外の前記N型初期ベース20内に前記第2部のP型エミッタを形成することと、を含む。
【0022】
また、前記N型初期ベースの天面上に3価のドーピング源を堆積させるステップを実行する際に、前記第1薄膜層を形成し、前記第1薄膜層は3価のドーピング源を含み、また前記第1薄膜層は、ホウ素、酸素、ケイ素、塩素、窒素、及び炭素の少なくとも1つを含んでいて、ここで、堆積時間は20sか~5000sであって、温度は500°C~1300°Cであることと、前記N型初期ベース20の高温処理を行うステップにおいて、500s~10000sの時間、500℃~1500℃の温度で第1流量の酸素を通過させて第2薄膜層を形成し、前記第2薄膜層の厚さは前記第1薄膜層の厚さより小さいことと、をさらに含む。
【0023】
また、前記第1流量は200sccm~80000sccmである。
【0024】
また、前記外部エネルギー源処理工程は、レーザードーピング工程、プラズマ放射、または標的イオン注入工程のいずれかを含む。
【0025】
また、第1金属電極を形成し、前記第1金属電極は前記第1部のP型エミッタに電気的に接続されることをさらに含む。
【0026】
また、前記第1金属電極の幅は前記第1部のP型エミッタの幅より小さいまたは等しい。
【0027】
従って、本願の実施例は、光起電力モジュールがさらに提供され、上記のいずれかにおける太陽電池が接続された電池ストリングと、前記電池ストリングの表面を覆うために用いられた封止層と、前記封止層から離れた前記電池ストリングの表面を覆うために用いられるカバープレートと、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本願の実施例によって提供される技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0029】
本願実施例で提供する太陽電池の製造方法の技術的提案において、第1部のP型エミッタの天面は、第1ピラミッド構造を含み、また第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は、第1ピラミッド構造の中心に対して凹んでいるまたは突き出ている。すなわち、第1部のP型エミッタ表面の結晶構造が不規則な四面体構造であるため、第1部のP型エミッタに転位が形成されることになり、第1部のP型エミッタの内部に深いエネルギー準位を有させ、第1部のP型エミッタのシート抵抗を下げ、第1部のP型エミッタのドーピング濃度を大幅に高めることなく、第1部のP型エミッタの抵抗を下げる。これで、第1部のP型エミッタの良好なパッシベーション能力が維持されるだけでなく、オーミック接触も改善され、太陽電池の光電変換能力を高めることができる。また、第2部のP型エミッタの接合深さがより小さく、そして第2部の天面の第2ピラミッド構造の斜面が平面であり、すなわち第2部のP型エミッタは規則な四面体構造であり、すなわち第2部のP型エミッタに転位が形成されないため、第2部のP型エミッタはより大きなシート抵抗を維持でき、さらに第2部の良好なパッシベーション能力を維持できる。これで、太陽電池の光電変換効率を全体的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明されるが、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、特に断りのない限り、添付の図面における図は縮尺に制限されない。
【
図1】
図1は、本願の一実施例により提供される太陽電池の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本願の一実施例により提供される太陽電池における第1のピラミッド構造の電子顕微鏡図である。
【
図4】
図4は、本願の一実施例により提供される太陽電池における別の第1のピラミッド構造の電子顕微鏡図である。
【
図5】
図5は、本願の一実施例により提供される太陽電池における第2のピラミッド構造の電子顕微鏡図である。
【
図6】
図6は、本願の一実施例により提供される別の太陽電池の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本願の一実施例により提供される光起電力モジュールの構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法におけるN型初期ベースを形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法における第1薄膜層を形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法におけるP型エミッタを形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図11】
図11は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法における第2薄膜層を形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法における反射防止層を形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図13】
図13は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法における第1金属電極を形成するステップに対応する構成を示す図である。
【
図14】
図14は、本願の一実施例に係る太陽電池の製造方法におけるトンネル層及びドープされた導電層を形成するステップに対応する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
背景技術から、現在の太陽電池は光電変換能力が低いことは明らかである。
【0032】
分析の結果、現在の太陽電池の光電変換能力が低い原因のひとつは、通常エミッタが金属電極に電気的に接続され、金属電極がエミッタ内のキャリアを収集できるようになっていることがわかった。金属電極とエミッタの間の接触抵抗を下げるためには、エミッタのシート抵抗を下げる必要がある。しかし、現在、エミッタのシート抵抗を下げるために、エミッタのドーピング濃度を高めることが一般的である。しかし、エエミッタドーピング濃度を増加すると、エミエミッタピング元素が多くなりすぎるため、エミッタ中のドーピング元素がより強い再結合中心となり、オージェ再結合が増加し、エミッタのパッシベーション能力が悪くなり、太陽電池の光電変換能力が悪くなる。
【0033】
本願の実施例は太陽電池を提供し、N型ベースの第1表面上に位置したP型エミッタに配置され、第1部のP型エミッタの天面が第1ピラミッド構造を含み、また第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面が、第1ピラミッド構造の中心に対して凹んでいるまたは突き出ている。すなわち、第1部のP型エミッタ表面の結晶構造が不規則な四面体構造であることにより、第1部のP型エミッタの内部に深いエネルギー準位を有することができ、第1部のP型エミッタのシート抵抗を下げ、第1部のP型エミッタのドーピング濃度を大幅に高めることなく、第1部のP型エミッタの抵抗を下げ、第1部のP型エミッタの良好なパッシベーション能力が維持されるだけでなく、オーミック接触も改善され、太陽電池の光電変換能力を高めることができる。また、第2部のP型エミッタの接合深さがより小さく、そして第2部の天面の第2ピラミッド構造の斜面が平面であり、すなわち第2部のP型エミッタは規則な四面体構造であり、すなわち第2部のP型エミッタに転位が形成されないため、第2部のP型エミッタはより大きなシート抵抗を維持でき、さらに第2部の良好なパッシベーション能力を維持できる。これで、太陽電池の光電変換効率を全体的に向上させることができる。
【0034】
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部がなくても、以下の各実施例に基づく種々の変更や修正によっても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0035】
図1は、本願の一実施例により提供される太陽電池の構成を示す図であり、
図2は、
図1中の破線枠における部分拡大図である。
【0036】
図1及び
図2を参照すると、太陽電池は、N型ベース100と、N型ベース100の第1表面に設置されたP型エミッタ10と、N型ベース100の第2表面に位置し、N型ベース100から離れる方向で順に設置されたトンネル層150及びドープされた導電層160と、を備え、ここで、P型エミッタ10は第1部11および第2部12を含み、第1部11の天面は第1ピラミッド構造1を含み、第1ピラミッド構造1の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は第1ピラミッド構造1の中心に向かって凹んでいるまたは突き出ている、第2部12の天面は第2ピラミッド構造2を含み、第2ピラミッド構造2の斜面は平面であり、N型ベース100の第1表面に対して垂直な方向において第1部11の接合深さは第2部12の接合深さよりも深く。
【0037】
N型ベース100は、入射光線を受け、光生成キャリアを生成するために用いられ、いくつかの実施例では、N型ベース100はN型シリコンベース100であってもよく、N型シリコンベースの材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン又は微結晶シリコンの少なくとも1つを含んでもよい。N型ベース100はN型半導体ベース100であり、すなわちN型ベース100内にN型ドープイオンをドープし、N型ドープイオンはリンイオン、ヒ素イオン又はアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
【0038】
いくつかの実施例では、太陽電池はTOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contactトンネル酸化層パッシベーション接触)電池であり、N型ベース100の第1表面は第2表面に相対して設置され、N型ベース100の第1表面及び第2表面の両方は、入射光線又は反射光線を受け取るために使用されてもよい。いくつかの実施例において、第1表面は、N型ベース100の裏面であってもよく、第2表面は、N型ベース100の正面であってもよい。また、他のいくつかの実施例では、第1表面をN型ベース100の正面としてもよいと、第2表面はN型ベース100の裏面である。
【0039】
いくつかの実施例では、N型ベース100の第2表面をピラミッドテクスチャーに設置することができ、N型ベース100の第2表面が入射光線に対する反射率を低くし、したがって光線への吸収や利用率が比較的高い。N型ベース100の第1表面を非ピラミッドテクスチャーに設置することができ、例えば、積層ステップ形状など、N型ベース100の第1表面に位置するトンネル酸化層110が高い密度および均等性を有することができ、トンネル酸化層110はN型ベース100の第1面に対して、良好にパッシベーション効果がある。いくつかの実施例において、第1表面はN型ベース100の裏面であってもよく、第2表面は、N型ベース100の正面であってもよい。また、他のいくつかの実施例では、第1表面がN型ベース100の正面であってもよいと、第2表面はN型ベース100の裏面である。
【0040】
図3を参照すると、第1ピラミッド構造1は、底面と底面に接する3つの斜面を含み、また、3つの斜面はそれぞれ接して四面体構造を形成している。ここで、第1ピラミッド構造1の少なくとも1つの斜面の少なくとも一部の表面は、第1ピラミッド構造1の中心に対して凹んでいるまたは突き出していて、すなわち、第1ピラミッド構造1の少なくとも1つの斜面は、不規則な変形を有する、例えば、第1ピラミッド構造1の斜面の1つは、第1ピラミッド構造1の中心に対してのみ凹であってもよく、あるいは第1ピラミッド構造1の中心に対してのみ凸であり、または斜面の一部が第1ピラミッド構造1の中心に対して凹であり他の部分が第1ピラミッド構造1の中心に対して凸である。いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造1の斜面のうちの1つだけが不規則な変形を有していてもよく、他のいくつかの実施例では、2つの斜面が不規則な変形を有していてもよく、さらに他のいくつかの実施例では、3つの斜面が全て不規則な変形を有していてもよい。さらに、さらなる実施例では、第1ピラミッド構造1の底面の少なくとも一部の表面は、第1ピラミッド構造1の中心に対して凹んでいるまたは突き出していて、すなわち、第1ピラミッド構造1の底面も不規則な変形を有する。
【0041】
理解できるのは、ここでの第1ピラミッド構造1及び第2ピラミッド構造2はテクスチャー構造とは異なるものであり、本願の実施例における第1ピラミッド構造1及び第2ピラミッド構造2はP型エミッタ10の結晶構造形態であり、P型エミッタ10の結晶構造の形態を変えることにより、第1部11のP型エミッタ10の性能が変わるようになる。
【0042】
具体的には、第1ピラミッド構造1のうちに少なくとも1つの斜面に不規則変形を有するように設置し、第1ピラミッド構造1の結晶構造を規則な四面体構造から不規則な四面体構造に変形させ、第1部11のP型エミッタ10の内部に深いエネルギー準位を有し、第1部11のP型エミッタ10シート抵抗を下げることができる。このように、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を大幅に上げることなく、第1部11のP型エミッタ10の抵抗の下げを実現することができる。理解できるのは、ここでの規則な四面体構造とは、四面体構造の斜面及び底面に不規則に変形していないことを意味し、例えば四面体構造の斜面及び底面が平面であってもよい。
【0043】
図1及び
図2を引き続き参照すると、具体的には、いくつかの実施例において、第1部11のP型エミッタ10の結晶構造は転位を有する。いくつかの実施例では、転位はダングリングボンドの列によって形成され、従って、第1部11のP型エミッタ10の結晶構造に転位があると同時に、ダングリングボンドがそれに対応して作られるようになっている。転位及びダングリングボンドは第1部11のP型エミッタ10内に深いエネルギー準位を有することができ、形成された深いエネルギー準位により第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げることができる。つまり、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を大幅に上げることなく、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げることが可能となり、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗が比較的低い場合、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を下げることを実現でき、第1部11のP型エミッタ10のパッシベーションが良好となるだけでなく、P型エミッタ10のオーミック接触も改善することができる。
【0044】
理解できるのは、第1部11のP型エミッタ10の第1ピラミッド構造1の高さ及び底面の一次元寸法が大きいほど、第1ピラミッド構造1の全体寸法が大きくなり、単位面積当たりの第1部11のP型エミッタ10の第1ピラミッド構造1の数が少なくなる。第1部11のP型エミッタ10の転位は第1ピラミッド構造1によって形成されるので、単位面積あたりの第1部11のP型エミッタ10の第1ピラミッド構造1の数が少ないほど、形成された転位少なくなり、つまり転位密度が小さい。これに対応して、第1ピラミッド構造1の寸法が小さいほど、単位面積あたりの第1部11のP型エミッタ10の第1ピラミッド構造1の数が多くなり、転位密度を大きくすることができるようになる。これを踏まえて、いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造1の高さを0.1μm~5μm、第1ピラミッド構造1の底面の一次元寸法を0.1μm~5μmと設置する。この範囲では、一方では第1部11のP型エミッタ10における転位密度が大きくなり、転位に基づいて形成される深いエネルギー準位が大きくなり、これによって第1部11のP型エミッタ10は比較的小さいシート抵抗を有することができ、オーミック接触が改善されることになる。もう一方では、この範囲では、第1部11のP型エミッタ10の転位密度を大きくしすぎないようにすることで、転位密度が大きくなりすぎて第1部11のP型エミッタ10に深すぎるエネルギー準位ができてしまうという問題を防止でき、ひいてはP型エミッタ10に比較的強い再結合中心の問題を形成できるため、第1部11のP型エミッタ10のパッシベーション能力を向上させることができる。
【0045】
図4を参照すると、いくつかの実施例では、前記第1ピラミッド構造1の少なくとも一部がさらに第1サブ構造13を含み、第1サブ構造13は第1ピラミッド構造1の頂部に位置し、第1サブ構造13は球体または球状体のいずれかである。第1サブ構造13も第1ピラミッド構造1の不規則変形の一つである。第1サブ構造13の存在により第1ピラミッド構造1の変形がより深く、それに対応して、より大きな転位が形成でき、形成された深いエネルギー準位がより大きく、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗をさらに下げる。
【0046】
図1、
図2及び
図5を参照すると、第2部12の天面の第2ピラミッド構造2の斜面を平面に設置し、すなわち第2ピラミッド構造2を不規則に変形させず、第2ピラミッド構造2を規則な四面体構造にし、従って、第2部12のP型エミッタ10の中で転位やダングリングボンドが発生せず、第2部12のP型エミッタ10に深いエネルギー準位を有することで、第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗が高くなり、第2部12のP型エミッタ10をより良いパッシベーション能力を維持することができ、これにより、太陽電池の開放電圧と短絡電流を高くすることができ、太陽電池の光電変換能力を向上させることができる。他のいくつかの実施例では、第2部12のP型エミッタ10の天面は、第2ピラミッド構造2を含むように設置することができ、且つ第2ピラミッド構造2の少なくとも1つの斜面の少なくとも一部の表面は、第2ピラミッド構造2の中心に対して凹または凸である。つまり、P型エミッタ10の天面全体が不規則な四面体構造を有し、全体のP型エミッタ10が転位とダングリングボンドを有するようになり、P型エミッタ10のシート抵抗を下げることができる。
【0047】
いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗は第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗より小さい。すなわち、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗が小さくなるため、第1部11のP型エミッタ10におけるキャリアの転送速度を高めることができ、第1部11のP型エミッタ10が金属電極と電気的接続を形成する際に、第1部11のP型エミッタ10から金属電極へのキャリア転送に役立ち、金属電極によるキャリアの収集速度が高まり、太陽電池の光電変換能力の向上に役たつことができる。第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗を小さく設置することで、第2部12のP型エミッタ10の優れたパッシベーション能力を維持し、キャリア再結合を抑制してキャリアの数を増やし、太陽電池の開放電圧および短絡電流を向上させることができる。第1部11のシート抵抗を第2部12のシート抵抗より小さく設置することで、オーミック接触を改善しつつ、P型エミッタ10のパッシベーション効果をより良好に保つことができ、太陽電池全体としての光電変換能力を向上させることができる。
【0048】
具体的に、いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗は20ohm/sq~300ohm/sqであってもよく、例えば、20ohm/sq~50ohm/sq、50ohm/sq~100ohm/sq、100ohm/sq~150ohm/sq、150ohm/sq~200ohm/sq、200ohm/sq~250ohm/sqあるいは250ohm/sq~300ohm/sqであってもよく、第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗は100ohm/sq~1000ohm/sqであってもよく、例えば、100ohm/sq~200ohm/sq、200ohm/sq~300ohm/sq、300ohm/sq~500ohm/sq、500ohm/sq~700ohm/sq、700ohm/sq~800ohm/sqあるいは800ohm/sq~1000ohm/sqであってもよい。第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を20ohm/sq~300ohm/sqの範囲に設置すると、第2部12のシート抵抗に比べて第1部11が非常に小さくなるので、第1部11のP型エミッタ10のオーミック接触を改善でき、金属電極と第1部11のP型エミッタ10に電気接触するように設置すると、第1部11のP型エミッタ10の金属電極に対する接触抵抗を下げることができるので、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10におけるキャリア転送効率を改善できる。一方、この範囲では、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗は小さすぎるようにならず、第1部11のP型エミッタ10が比較的強い再結合中心になることを防いでいる。また、第2部12のP型エミッタ10の抵抗を1100ohm/sq~1000ohm/sqに設置することで、第2部12のP型エミッタ10でのキャリア再結合を抑制し、エミッタのパッシベーション効果に役立ち、太陽電池の開放電圧及び短絡電流も改善し、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0049】
第1部11の接合深さは第2部12の接合深さより大きく、すなわち第1部11のP型エミッタ10の接合深さは深く、第2部12のP型エミッタ10の接合深さは浅くなっている。つまり、第1部11の厚みが比較的大きく、一方では、第1部11のP型エミッタ10にドーピング元素をより多く格納することができ、例えばホウ素など、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度が比較的高いため、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗がさらに下げられ、オーミック接触の改善に役に立ち、他方では第1部11のP型エミッタ10の接合深さが深いため、金属電極を第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続するように設置することができ、そうすると、金属電極を形成するペーストの焼結時に、P型エミッタ10を貫通してN型初期ベースと直接接触する問題を防止することができる。また、第2部12の接合深さが浅いように設置し、すなわち第2部12のP型エミッタ10の厚さが浅いので、第2部12のドーピング元素の数が第1部11のドーピング元素の数よりさらに少なく、すなわち第2部12のP型エミッタ10のドーピング濃度が比較的低く、従って、第1部11のP型エミッタ10と比較して第2部12のP型エミッタ10がより良いパッシベーション効果を有し、キャリア再結合を下げ、太陽電池の開放電圧および短絡電流を増加することができる。
【0050】
いくつかの実施例では、第1部11の接合深さと第2部12の接合深さの比は2以上であり、好ましくは、第1部11の接合深さと第2部12の接合深さの比は2~5の間であり、例えば、2、2.5、3、3.5、4、4.5または5であり得る。第1部11の接合深さが第2部12の接合深さに比べてはるかに大きいため、第1部11のP型エミッタ10の接合深さも大きくなり、金属電極を第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続された設置する場合、焼結時にペーストが第1部11のP型エミッタ10を焼き切ることがなく、金属電極とベース100との接触によりp-n接合が損傷する問題を防止でき、太陽電池の光電変換能力をより確実に向上させることは保証できる。
【0051】
第1部11の接合深さを大きくしすぎないようにして、第1部11のP型エミッタ10の中のドーピング元素が多すぎて強い再結合中心が形成されないようなことを考慮し、いくつかの実施例では、第1部11の接合深さを2μm~10μmに設置し、例えば、2μm~3μm、3μm~4μm、4μm~5μm、5μm~6μm、6μm~7μm、7μm~8μm、8μm~9μmあるいは9μm~10μmに設置してもよく、第2部12の接合深さを0.1μm~3μmに設置し、例えば、0.1μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、2μm~2.5μmあるいは2.5μm~3μmに設置してもよく、この範囲では、第2部12のP型エミッタ10の中のドーピング元素が比較的少ないため、より良好なパッシベーション効果を有するようになる。
【0052】
いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度は、第2部12のP型エミッタ10の天面濃度より大きいか、または等しい。具体的には、いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度は第2部12のP型エミッタ10の天面濃度よりも大きい。第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が比較的大きいと、第1部11のシート抵抗がさらに小さくなることに役立ち、第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が比較的小さいと、第2部12のシート抵抗が比較的大きくなり、第2部12のP型エミッタ10のパッシベーション効果を維持することに役たつ。
【0053】
他のいくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が等しく、すなわち第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が比較的小さい。第1部11のP型エミッタ10表面の結晶構造は不規則な四面体構造であるため、第1部11のP型エミッタ10に転位が生じ、第1部11のP型エミッタ10の内に深いエネルギー準位が形成されたため、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げることができ、オーミック接触を改善することが可能となる。同時に、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が比較的小さいため、第1部11のP型エミッタ10のパッシベーション効果もより良好に保つことができる。具体的には、いくつかの実施例では、P型エミッタ10のドーピング元素は、P型の3価のドーピング源であってよく、例えば、ホウ素であってよい。
【0054】
具体的には、いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度は1E18~5E20atom/cm3であってもよく、例えば、1E15~1E16atom/cm3、1E16~1E17atom/cm3、1E17~1E18atom/cm3、1E18~1E19atom/cm3あるいは1E19~5E20atom/cm3であってもよい。この範囲では、一方では、形成された第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を高くしたことで、第1部11のP型エミッタ10に比較的小さいシート抵抗を有するようにして、キャリア転送速度を高めることができ、他方、この範囲では、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が大きすぎないようにならなく、すなわち第1部11のP型エミッタ10中のドーピング元素の含有量が多すぎないようにならないため、第1部11のP型エミッタ10中のドーピング元素が多すぎて強い再結合中心となり、第1部11のP型エミッタ10のパッシベーション能力の低さが問題になることを避けることができる。
【0055】
いくつかの実施例では、第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度は1E18~1E20atom/cm3であってもよく、例えば、1E15~1E16atom/cm3、1E16~1E17atom/cm3、1E17~1E18atom/cm3、1E18~1E19atom/cm3あるいは1E19~1E20atom/cm3であってもよい。第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度を1E14~9E19atom/cm3に設置することにより、第2部12のP型エミッタ10中のドーピング元素が比較的少なくなるため、第2部12のP型エミッタ10のパッシベーション能力を比較的よく維持でき、形成された太陽電池の開放電圧および短絡電流を効果的に向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施例では、P型エミッタ10の天面に沿ってP型エミッタ10の底面に向かった方向で、第1部11のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度は徐々に下げ、そして第2部12のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度は、徐々に下げる。すなわち、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10の内部の両方に高濃度から低濃度までのドーピング濃度の差があり、このように、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10のキャリアが濃度の比較的高い領域から濃度の比較的低い領域に転送し、ベース100中にまで転送し、キャリア転送速度を速め、太陽電池の開放電圧を向上させることに役たつ。
【0057】
具体的には、いくつかの実施例では、第1部11の天面ドーピング濃度と第1部11の底面ドーピング濃度の差は1E16atom/cm3~5E20atom/cm3である。この範囲では、一方では第1部11のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度差を比較的大きくすることができ、キャリアの転送に役たつ。もう一方では、この範囲では、第1部11のP型エミッタ10の内部全体のドーピング濃度を比較的大きくすることができるため、比較的低いシート抵抗を維持することが可能となる。
【0058】
いくつかの実施例では、第2部12の天面ドーピング濃度と第2部12の底面ドーピング濃度の差は1E16atom/cm3-1E20atom/cm3である。この範囲では、第2部12のP型エミッタ10の内部のドーピング濃度はあまり小さくならないため、第2部12のP型エミッタ10の内部のキャリアの正常な転送を確保できる。また、この範囲内では、第2部12のP型エミッタ10の全体の濃度を比較的小さいようにすることで、第2部12のP型エミッタ10にオージェ再結合が生じることを防ぐことができる。
【0059】
いくつかの実施例では、第2部12の幅と第1部11の幅の比は60以上であり、好ましくは、第2部12の幅と第1部11の幅の比は60~200であっても良く、例えば、60、80、100、120、140、160、180または200であり得る。第2部12の幅を第1部11の幅よりはるかに大きく設置すると、すなわち、シート抵抗が比較的小さい第2部12のP型エミッタ10が占める割合が大きく、第2部12のP型エミッタ10は良好なパッシベーション能力を有し、キャリア再結合を抑制できるため、P型エミッタ10は全体としてのパッシベーション能力が比較的良い。第1部11のP型エミッタ10は、金属電極と電気的に接続するだけで、金属電極とオーミック接触を改善できるため、第1部11のP型エミッタ10の幅を比較的小さく設置し、オーミック接触の改善を実現すると同時に、エミッタの良好なパッシベーション能力を維持することができる。
【0060】
図1を参照すると、いくつかの実施例では、また第1金属電極140を含み、第1金属電極140はN型ベース100の第1表面上に設けられ、第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続される。P型エミッタ10中のキャリアは、第1部11のP型エミッタ10と電気的に接続された第1金属電極140に転送され、また第1部11のP型エミッタ10はシート抵抗が小さいことで、第1部11のP型エミッタ10と第1金属電極140との接触電極が小さくなるので、第1金属電極140へのキャリアの転送速度を向上させることができる。また、第1部11のP型エミッタ10は接合深さが大きいので、実際に第1金属電極140を準備する際に形成された第1金属電極140が第1部11のP型エミッタ10を突き抜ける可能性が低くなり、形成されたp-n接合の構造を損なわず、太陽電池の完全性の確保に役立ち、太陽電池の光電変換能力を比較的良く維持することができる。
【0061】
図6を参照すると、いくつかの実施例では、P型エミッタ10はさらにトランジション領域14を含み、トランジション領域14は第1部11と第2部12との間に位置し、トランジション領域14の天面ドーピング濃度は第2部12の天面ドーピング濃度より大きいまたは等しく、また第1部11の天面ドーピング濃度より小さいまたは等しい。具体的には、いくつかの実施例では、第1部11の天面ドーピング濃度が第2部12の天面ドーピング濃度よりも大きい場合、トランジション領域14の天面ドーピング濃度は、第2部12の天面ドーピング濃度よりも大きく、また第1部11の天面ドーピング濃度よりも小さいように設置し、すなわち第1部11に沿って第2部12に向かった方向で、トランジション領域14のドーピング濃度が徐々下げている。このように、P型エミッタ10のドーピング元素の濃度を緩やかに変化させる余地を多く提供することで、第1部11と第2部12の間のポテンシャルエネルギー差の急激な変化を避け、トランジション領域14でキャリアが再結合する確率を低減させることができる。また、トランジション領域14を設置することで、トランジション領域14中のシート抵抗も徐々に変化するようにしていて、キャリアに対するトランジション領域14の転送抵抗を下げ、このように、第2部12のP型エミッタ10中のキャリアを第1部11のP型エミッタ10の中に転送することに役立ち、ひいては第1金属電極140の中まで転送して、キャリアの転送効率を向上させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
【0062】
理解できるのは、他のいくつかの実施例では、トランジション領域14の天面ドーピング濃度も第1部11の天面ドーピング濃度と等しくてもよく、または第2部12の天面ドーピング濃度と等しくてもよい。さらなるいくつかの実施例では、トランジション領域14の天面ドーピング濃度はまた、第1部11の天面ドーピング濃度と等しいと同時に、第2部12の天面ドーピング濃度と等しくてもよい。
【0063】
図1を参照すると、いくつかの実施例では、反射防止層130をさらに含み、反射防止層は第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10の天面に位置し、ベースからの入射光線の反射を減少することに用いられる。いくつかの実施例では、反射防止層は窒化ケイ素層であってもよく、窒化ケイ素層は窒化ケイ素材料を含む。
【0064】
トンネル層150は、ベースの第2表面の界面パッシベーションを実現するために使用される。具体的には、いくつかの実施例では、トンネル層150の材料は誘電体材料であってよく、例えば酸化ケイ素。
【0065】
ドープされた導電層160はフィールドパッシベーションを形成するために使用され、いくつかの実施例では、ドープされた導電層160の材料はドープされたシリコンであってもよく、具体的には、いくつかの実施例ではドープされた導電層160はベースと同じ導電タイプのドープされた要素を有し、ドープされたシリコンはN型ドーピング多結晶シリコン、N型ドーピング微結晶シリコンまたはN型ドーピング非晶質シリコンの一種または多種を含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施例では、また第1パッシベーション層170を含み、第1パッシベーション層170はベースから離れたドープされた導電層160の表面上に位置し、いくつかの実施例では、第1パッシベーション層170の材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素あるいはリコンオキシ炭窒化物のうちの一種あるいは多種であってもよい。具体的には、いくつかの実施例では、第1パッシベーション層170は単層構造であってもよい。他のいくつかの実施例では、第1パッシベーション層170はまた多層構造であってもよい。
【0067】
いくつかの実施例では、また第2金属電極180を含み、第2金属電極180が第1パッシベーション層170を貫通してドープされた導電層160と電気的接続される。
【0068】
前述実施例で提供される太陽電池では、第1ピラミッド構造1の斜面の少なくとも1つが不規則な変形を有するように設置され、第1ピラミッド構造1の結晶構造が規則な四面体構造から不規則な四面体構造に変化し、第1部11のP型エミッタ10の内部に深いエネルギー準位を有することができ、第1部11のP型エミッタ10シート抵抗を下げることができる。このように、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を大きく上げることなく、第1部11のP型エミッタ10抵抗の下げを実現することができる。また、第2部12の天面の第2ピラミッド構造2の斜面が平面であり、すなわち第2ピラミッド構造2が不規則に変形しておらず、第2ピラミッド構造2が規則な四面体構造となっていて、従って、第2部12のP型エミッタ10に転位やダングリングボンドが発生せず、第2部12のP型エミッタ10中に深いエネルギー準位を形成せず、第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗が比較的高くなり、第2部12のP型エミッタ10の比較的良好なパッシベーション能力が維持でき、太陽電池の開放電圧と短絡電流が比較的高くなり、太陽電池の光電変換能力を改善できる。
【0069】
それに対応して、本願の実施例は、太陽光発電モジュールをさらに提供し、
図7を参照すると、太陽光発電モジュールは、前述実施例で提供された複数の太陽電池101が接続された電池ストリングと、電池ストリングの表面を覆うために用いられた封止層102と、封止層102から離れた電池ストリングの表面を覆うために用いられるカバープレート103と、を含み、。太陽電池101は、一枚または複数枚形で電気的に接続されて複数の電池ストリングを形成し、複数の電池ストリングは、直列および/または並列に電気的に接続されている。
【0070】
具体的には、いくつかの実施例では、複数の電池ストリングは、導電テープ104で電気的に接続することができる。封止層102は、太陽電池101の正面だけでなく裏側も覆い、具体的には、封止層102は、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)粘着フィルム、ポリオレフィンエラストマー(POE)粘着フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)粘着フィルム等の有機封止用粘着フィルムであってもよい。いくつかの実施例では、カバープレート103はガラスカバープレート、プラスチックカバープレート等光透過性のあるカバープレート103であってもよい。具体的には、カバープレート103の封止層102に向かう面を凹面または凸面であっても良く、入射光線の利用率を高める。
【0071】
それに対応して、本願の別の実施例では、また太陽電池の準備方法を提供し、この太陽電池の準備方法は、先の出願の実施例で提供される太陽電池を形成することができ、本願の別の実施例で提供される半導体構造の準備方法は、添付図面と共に以下に詳細に説明される。
【0072】
図8~
図14は、本願の他の実施例で提供される太陽電池の準備方法における各ステップに対応する構造を示す模式図である。
【0073】
N型ベースを提供する。
【0074】
N型ベースは、入射光線を受光して光生成キャリアを生成するために用いられ、いくつかの実施例では、N型ベースはN型シリコンベースであってもよく、N型シリコンベースの材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、または微結晶シリコンの少なくとも1つを含んでもよい。N型ベースは、N型半導体ベースであり、すなわちN型ベース内は、N型ドープイオンをドープし、N型ドープイオンはリンイオン、ヒ素イオン又はアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
【0075】
図8~
図12を参照すると、N型ベースの第1表面にP型エミッタ10が形成され、P型エミッタ10は第1部11および第2部12を含み、第1部11の天面は第1ピラミッド構造1(
図2参照)を含み、第1ピラミッド構造1の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は第1ピラミッド構造1の中心に対して凹または凸であり、第2部12の天面は第2ピラミッド構造2(
図2参照)を含み、第2ピラミッド構造2の斜面は平面であり、N型ベース100の第1表面に対して垂直な方向で第1部11の接合深さは第2部12の接合深さよりも深い。
【0076】
形成された第1ピラミッド構造1では、少なくとも1つの斜面の少なくとも一部の表面が第1ピラミッド構造1の中心に対して凹または凸であり、すなわち第1ピラミッド構造1の少なくとも1つの斜面が不規則な変形をしており、これにより第1ピラミッド構造1の結晶構造が規則な四面体構造から不規則な四面体構造へ変化している。不規則な四面体構造により、エミッタに転位やダングリングボンドが発生し、エミッタが変調をきたす。具体的には、生じた転位やダングリングボンドが第1部11のP型エミッタ10の内部に深いエネルギー準位を形成し、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げる。第1部11のP型エミッタ10の構造を変えることで、比較的小さいシート抵抗を有するようになり、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を大きく上げることなく、第1部11のP型エミッタ10の抵抗を下げることを実現できる。
【0077】
第2部12の天面の第2ピラミッド構造2の斜面を平面に設置し、すなわち第2ピラミッド構造2が不規則な変形をしておらず、第2ピラミッド構造2が規則な四面体構造となり、従って、第2部12のP型エミッタ10中に転位やダングリングボンドが発生せず、第2部12のP型エミッタ10中に深いエネルギー準位が形成されず、第2部12のP型エミッタ10のシート抵抗は比較的高くなり、第2部12のP型エミッタ10の比較的良好なパッシベーション能力が維持でき、太陽電池の開放電圧および短絡電流をより高くすることができ、太陽電池の光電変換能力を改善することができる。
【0078】
具体的には、いくつかの実施例では、P型エミッタ10を形成する方法は以下を含み、
【0079】
図8を参照すると、N型初期ベース20を提供し、N型初期ベース20はN型ベース100及びP型エミッタ10を形成する基礎として使用されるので、N型初期ベース20とN型ベース100の材料は同じであってもよい。
【0080】
いくつかの実施例では、N型初期ベース20の第1表面をピラミッドテクスチャーに設置することができ、N型初期ベース20の第1表面が入射光線に対する反射率を低くし、したがって光線への吸収や利用率が比較的高い。いくつかの実施例では、N型初期ベース20はN型初期半導体ベースであり、すなわちN型初期ベース20内はN型ドープイオンをドープし、N型ドープイオンはリンイオン、ヒ素イオン又はアンチモンイオンのいずれかであってもよい。
【0081】
具体的には、P型エミッタ10の形成方法は、
図9~
図10を参照すると、N型初期ベース20の天面に3価のドーピング源を堆積させることを含む。N型初期ベース20の天面に3価のドーピング源を堆積させることは、その後N型初期ベース20に拡散してP型エミッタ10を形成するために使用される。いくつかの実施例では、3価のドーピング源は、ホウ素ソースであっても良く、特に三塩化ホウ素または三臭化ホウ素のいずれかであってもよい。
【0082】
図9を参照すると、いくつかの実施例では、N型初期ベース20の天面上に3価のドーピング源を堆積させるステップを実行する際に、第1薄膜層110を形成することができ、第1薄膜層110は3価のドーピング源を含み、また第1薄膜層110は、ホウ素、酸素、ケイ素、塩素、窒素、及び炭素の少なくとも1つを含んでいて、ここで、堆積時間は20sか~5000sであって、温度は500°C~1300°Cである。具体的には、いくつかの実施例では、3価のドーピング源がホウ素源である場合、第1薄膜層110の主成分は酸化ケイ素及び酸化ホウ素を含んでもよく、ここで、3価のドーピング源は、酸化ホウ素の形態で第1薄膜層110に貯蔵できる。酸化ケイ素の硬度が高いため、ドーピング工程でN型初期ベース20を保護することができる。また、第1薄膜層110は微量の塩素、窒素、炭素を含み、これらの元素により、第1薄膜層110の屈折率は現在のホウケイ酸ガラスより高い。このように、その後、外部エネルギー源処理工程を用いて所定領域の第1薄膜層110を処理することにより、第1薄膜層110が外部エネルギー源をより多く吸収し、例えばレーザー光であっても良く、より多くのレーザー光を第1薄膜層110の内部に照射することができ、レーザー光の損失を低減し、N型初期ベース20に拡散する3価のドーピング源の量を増加させることができる。
【0083】
また、第1薄膜層110の厚みが薄いため、比較的薄い第1薄膜層110に比較的多くの3価のドーピング源が貯まると、第1薄膜層110の3価のドーピング源を凝集させることになり、3価のドーピング源の濃度が高まり、このように、ドーピングプロセスを用いて3価のドーピング源をN型初期ベース20に拡散する際に、ドーピングプロセスの行いに役に立ち、また、比較的大きな濃度の第1部のP型エミッタをより形成しやすくなり、第1部のP型エミッタのシート抵抗を下げる。また、第1薄膜層110の厚みが小さいため、第1薄膜層110に3価のドーピング源があまり多く貯まらなく、このように、N型初期ベース20の内部に3価のドーピング源元素が多くドープすることを防止でき、N型初期ベース20の内部に3価のドーピング源元素が多すぎて、比較的多い3価のドーピング源元素が強い再結合中心になり、形成された第1部11のP型エミッタ10のパッシベーション能力が低いという問題を防止することができる。
【0084】
いくつかの実施例では、第1薄膜層110の形成方法は、N型初期ベース20の第1表面上に三価のドーピング源が堆積され、三価のドーピング源は三価の元素を含む単体又は化合物であることを含む。具体的には、いくつかの実施例では、三価のドーピング源がホウ素源である場合、三価の元素を含む単体又は化合物は、三臭化ホウ素又は三塩化ホウ素であってもよい。いくつかの実施例では、化学気相成長法又はスピンコーティングによって、N型初期ベース20の第1表面上に3価のドーピング源として三塩化ホウ素が堆積されてもよく、3価のドーピング源の濃度は1E18~9E22atom/cm3であってもよい。
【0085】
いくつかの実施例では、3価のドーピング源を堆積させる方法は、以下のようにしても良く、N型初期ベース20に対して石英ボート進入工程を行い、N型初期ベース20が石英ボートに進入した後、温度が第1プリセット温度まで上昇し、N型初期ベース20の第1表面上に3価のドーピング源が堆積され、第1プリセット温度は500℃~900℃であってもよく、その後、温度が第2プリセット温度まで上昇し、第2プリセット温度は第1プリセット温度より大きく、例えば、900℃~1300℃であってもよく、その同時に、窒素環境下でp-n接合を形成することで、形成された第1薄膜層110の緻密さと均等性を高めることができる。いくつかの実施例では、3価のドーピング源が堆積する同時に、少量の酸素を導入することができ、例えば100sccm~2000sccmであっても良く、これにより、より高密度な第1薄膜層110の形成がさらに促進される。
【0086】
図10を参照すると、3価のドーピング源を堆積させた後、所定領域のN型初期ベース20の天面を外部エネルギー源処理工程で処理し、外部エネルギー源処理工程で処理された3価のドーピング源がN型初期ベース20の内部に拡散して所定領域のN型初期ベース20内に第1部11のP型エミッタ10を形成し、N型初期ベース20は第1部11のP型エミッタ10の天面を露出させた。所定領域に外部エネルギー源プロセスを行い、所定領域の第1薄膜層110にある3価のドーピング源がN型初期ベース20の内部に拡散する。同時に、外部エネルギー源処理工程により、所定領域N型初期ベース20の結晶構造を変形させて第1ピラミッド構造1を形成する。なお、外部エネルギー源処理工程を行う前は、N型初期ベース20の構造は規則な四面体構造であった。外部エネルギー源処理工程の後、第1ピラミッド構造1の少なくとも一部の表面は、第1ピラミッド構造1の中心に対して凹または凸であり、すなわち第1ピラミッド構造1が規則な四面体構造から不規則な四面体構造に変化する。第1ピラミッド構造1によって所定の領域のN型初期ベース20に転位およびダングリングボンドが発生し、所定の領域のN型初期ベース20に3価のドーピング源をドープすると、形成された第1部11のP型エミッタ10の天面は第1ピラミッド構造1を有りするようになり、第1部11のP型エミッタ10は深いエネルギー準位を形成し、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げることができる。
【0087】
いくつかの実施例では、外部エネルギー源処理工程は、レーザードーピング工程、プラズマ放射、または標的イオン注入工程のいずれかを含む。また、レーザードーピング工程を例として挙げると、レーザードーピング工程の操作は簡単で、規模化には役に立ち、またレーザードーピング工程は効率が高く、3価のドーピング源をN型初期ベース20に効率よくドープすることができる。また、第1薄膜層110は一定量のレーザーエネルギーを吸収することができ、N型初期ベース20の保護的役割を果たし、N型初期ベース20へのレーザードーピングの損傷を低減することができ、形成された第1部11のP型エミッタ10は高い完全性を持ち、したがって第1部11のP型エミッタ10は比較的良好なパッシベーション能力を有りするようにすることができる。また、第1薄膜層110の3価ドーピング源の濃度が高いため、レーザードーピングを採用した場合、3価ドーピング源がN型初期ベース20にドープしやすくなり、形成された第1部11のP型エミッタ10の接合深さが比較的大きい。つまり、比較的小さいレーザーエネルギーを用いることで、形成される第1部11のP型エミッタ10の接合深さを大きくすることができ、したがって、第1部11のP型エミッタ10の接合深さを期待通りにしつつ、レーザーエネルギーを小さくすることで、N型初期ベース20へのレーザー損傷をより低減させることができる。
【0088】
また、レーザー工程により所定領域のN型初期ベース20に照射することで、第1部11のP型エミッタ10の結晶構造が不規則な四面体構造に変化しやすくなり、第1部11のP型エミッタ10の内部の転位密度が高くなり、シート抵抗をさらに下げることができる。
【0089】
いくつかの実施例では、第1部11のP型エミッタ10を形成した後、N型初期ベース20の第1表面の洗浄ステップを行い、第1薄膜層110を除去することをさらに含む。このように、第1薄膜層110に残存する3価のドーピング源を同時に除去できると同時に、N型初期ベース20の表面の吸着不純物を全て除去でき、漏電の減少を促進する。また、第1薄膜層110には3価のドーピング源が多量に含まれているため、その後の高温工程で第2薄膜層を形成する工程では、この3価のドーピング源は、非活性化3価ドーピング源に変換され、例えば、非活性化ボロン。非活性化3価ドーピング源の存在は、N型初期ベース20表面でのキャリア再結合を増加し、太陽電池の光電変換効率に影響を与える。したがって、第2薄膜層を形成するステップの前に第1薄膜層110を除去することにより、その後の第2薄膜層の形成後に、N型初期ベース20の表面における非活性化3価ドーピング源の量を下げることもでき、N型初期ベース20の表面におけるキャリア再結合を減少させて太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。具体的には、洗浄ステップは、アルカリ溶液または酸溶液を用いてN型初期ベース20表面を洗浄することであってよく、ここで、アルカリ溶液は、KOHまたはH2O2水溶液の少なくともいずれかであってよく、酸溶液は、HFまたはHCl水溶液の少なくともいずれかであってよい。
【0090】
第1部11のP型エミッタ10を形成した後、
図11~
図12を参照すると、N型初期ベース20を高温処理して、N型初期ベース20内にP型エミッタ10を形成し、N型初期ベース20はP型エミッタ10の天面を露出させ、具体的には、N型初期ベース20中には、P型エミッタ10以外の領域にN型ベース100を形成し、所定領域外のN型初期ベース20内に第2部12のP型エミッタ10を形成する。所定領域のN型初期ベース20表面のみに外部エネルギー源処理工程を行うため、所定領域に対応する第1薄膜層110の3価のドーピング源はN型初期ベース20の内部に拡散し、従って、形成された第1部11のP型エミッタ10の接合深さは、第2部12のP型エミッタ10の接合深さよりも大きくする。そこで、金属電極を第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続されるように設置でき、このように、金属電極を形成するペーストに焼結を行う時にP型エミッタ10を貫通してN型初期ベース20と直接接触する問題防止することが可能である。また、第2部12の接合深さが比較的浅く、すなわち第2部12のP型エミッタ10の厚さが比較的小さいので、第2部12のドーピング元素の数は第1部11のドーピング元素の数に比べてより少なく、すなわち第2部12のP型エミッタ10のドーピング濃度は比較的小さく、したがって第1部11のP型エミッタ10に比べて、第2部12のP型エミッタ10はより良いパッシベーション効果を有し、これはキャリア再結合を減少することに役立ち、太陽電池の開放電圧および短絡電流を向上させることができる。
【0091】
N型初期ベース20を高温処理した後、3価のドーピング源の一部がN型初期ベース20にドープされ、N型初期ベース20の一部が第2部12のP型エミッタ10に変換される。つまり、N型初期ベース20のうち第1部11のP型エミッタ10および第2部12のP型エミッタ10以外の部分がN型ベース100となる。
【0092】
具体的には、
図11を参照すると、いくつかの実施例では、N型初期ベース20の高温処理を行うステップにおいて、500s~10000sの時間、500℃~1500℃の温度で第1流量の酸素を通過させて第2薄膜層120を形成し、第2薄膜層120の厚さは第1薄膜層110の厚さより小さい。第2薄膜層120を形成する工程で通過させる酸素量を多く設置することで、より多くの3価のドーピング源と酸素を反応させ、形成された第2薄膜層120の厚さを第1薄膜層110の厚さより大きくする。このように、一方では、比較的薄い第1薄膜層110に多くの3価のドーピング源が貯まると、第1薄膜層110の3価のドーピング源が凝集されるので、3価のドーピング源の濃度が高まり、レーザードーピングが容易になるとともに、第1薄膜層110は比較的薄いので、N型初期ベース20へのレーザー照射を容易にすることができる。もう一方では、第2薄膜層120を厚く設置することで、第2薄膜層120が所定領域外のN型初期ベース20の第1表面に3価のドーピング源を比較的多く吸収し、第1部11のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度および第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度を下げ、パッシベーション能力を改善できる。
【0093】
具体的には、いくつかの実施例では、第1流量は200sccm~80000sccmである。例えば、200sccm~1000sccm、1000sccm~5000sccm、5000sccm~10000sccm、10000sccm~20000sccm、20000sccm~30000sccm、30000sccm~50000sccm、50000sccm~70000sccm、70000sccm~80000sccmであってもよい。この範囲で第1流量を設置すると、第1流量が大きいことを確保でき、形成された第2薄膜層120が比較的厚く、第2薄膜層120が3価のドーピング源を比較的多く吸収することができ、第2部12のP型エミッタ10の天面ドーピング濃度が小さくなり、第2部12のP型エミッタ10が大きなシート抵抗を実現することに役たち、第2部12のP型エミッタ10のパッシベーション能力を改善することができる。
【0094】
図12を参照すると、いくつかの実施例では、またN型初期ベース20に対して洗浄ステップを行い、第2薄膜層120を除去すること、N型初期ベース20の第1表面に反射防止層130を形成し、反射防止層130はP型エミッタ10の天面に位置すること、を含み、いくつかの実施例では、反射防止層130は窒化ケイ素層であってよく、窒化ケイ素層は窒化ケイ素材料を含む。具体的には、いくつかの実施例では、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、プラズマ化学気相成長法)法を用いて反射防止層130を形成することができる。
【0095】
図13を参照すると、いくつかの実施例では、第1金属電極140を形成し、第1金属電極140は第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続されることをさらに含む。第1金属電極140はN型初期ベース20の第1表面に位置し、第1部11のP型エミッタ10はシート抵抗が小さいので、第1金属電極140を第1部11のP型エミッタ10に電気的に接続されように設置することにより、第1金属電極140と第1部11のP型エミッタ10の接触抵抗を減少し、反射防止層の第1金属電極140によるキャリアの転送を促進する。具体的な原理は次のように、
【0096】
入射光線は第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10を通ってN型初期ベース20中に至り、N型初期ベース20に複数の電子正孔対を生成する。N型初期ベース20中の電子正孔対は光電効果により電子と正孔に分離し、分離した電子はN型初期ベース20へ、分離した正孔は第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10へそれぞれ移動する。ここでは、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10に移動した電子は、第1部11のP型エミッタ10に接する第1金属電極140に集められ、反射防止層の第1金属電極140に沿って転送される。つまり、第1部11と第2部12の電子は第1部11のP型エミッタ10と接する第1金属電極140に転送される必要があり、従って、第1部11のP型エミッタ10と第1金属電極140の接触抵抗を改善すれば、キャリアの転送を大きく改善することができる。
【0097】
いくつかの実施例では、第1金属電極140の形成方法は、所定領域反射防止層130の天面に導電性ペーストを印刷することを含み、導電性ペースト中の導電材料は、銀、アルミニウム、銅、錫、金、鉛またはニッケルの少なくとも1つであってもよく、導電性ペーストを焼結処理し、例えば750℃~850℃のピーク温度で焼結処理し、反射防止層の第1金属電極140を形成する。
【0098】
いくつかの実施例では、第1金属電極140の幅は第1部11のP型エミッタ10の幅より小さいまたは等しく、これにより、第1金属電極140は第1部11のP型エミッタ10によって確実に包囲され、第1金属電極140の側面及び底面も第1部11のP型エミッタ10と接触し、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗が比較的小さいため、第1金属電極140の側面の一部が比較的大きいシート抵抗を有する第2部12のP型エミッタ10と接触した場合と比較して、第1金属電極140と第1部11のP型エミッタ10との接触抵抗はより小さく、第1部11のP型エミッタ10及び第2部12のP型エミッタ10におけるキャリアの転送を改善することを促進できる。
【0099】
図14を参照すると、N型ベース100の第2表面、またN型ベース100から離れる方向に、トンネル層150、ドープされた導電層160が順に形成されている。
【0100】
トンネル層150は、N型ベース100の第2表面の界面パッシベーションを実現するために使用される。いくつかの実施例では、トンネル層150は、堆積工程を用いて形成でき、例えば、化学気相蒸着工程が用いられてもよい。他のいくつかの実施例では、トンネル層150はまた、その場生成工程を用いて形成されてもよい。具体的には、いくつかの実施例では、トンネル層150の材料は誘電体材料であってもよく、例えば、酸化ケイ素。
【0101】
ドープされた導電層160は、フィールドパッシベーションを形成するために使用され、いくつかの実施例では、ドープされた導電層160の材料は、ドープされたシリコンであってもよく、具体的には、いくつかの実施例では、ドープされた導電層160は、N型ベース100と同じ導電タイプのドープされた要素を有し、ドープされたシリコンはN型ドーピング多結晶シリコン、N型ドーピング微結晶シリコンまたはN型ドーピング非晶質シリコンの一種または多種を含んでもよい。いくつかの実施例では、堆積工程を用いてドープされた導電層160を形成できる。具体的には、N型ベース100の表面から離れたトンネル層150に真性多結晶シリコンを堆積して多結晶シリコン層を形成し、イオン注入及びソース拡散によりリンイオンをドープしてN型ドーピング多結晶シリコン層を形成し、N型ドーピング多結晶シリコン層をドープされた導電層160とする。
【0102】
図1を参照すると、いくつかの実施例では、N型ベース100から離れたドープされた導電層160の表面に第1パッシベーション層170を形成することをさらに含む。いくつかの実施例では、第1パッシベーション層170の材料は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、又はリコンオキシ炭窒化物のうちの一種または多種であってもよい。具体的には、いくつかの実施例では、第1パッシベーション層170は単層構造であってもよい。他のいくつかの実施例では、第1パッシベーション層170はまた多層構造であってもよい。具体的には、いくつかの実施例では、PECVD法を用いて第1パッシベーション層170を形成することができる。
【0103】
いくつかの実施例では、第2金属電極180を形成することを含み、第2金属電極180が第1パッシベーション層170を貫通してドープされた導電層160と電気的に接続される。具体的には、第2金属電極180の形成方法は第1金属電極140の形成方法と同じであってもよく、また第1金属電極140の材料は第2金属電極180の材料と同じであってもよい。
【0104】
前述実施例で提供される太陽電池の準備方法において、形成された第1ピラミッド構造1の斜面の少なくとも1つが不規則な変形を有することにより、第1ピラミッド構造1の結晶構造が規則な四面体構造から不規則な四面体構造へ変化する。不規則な四面体構造により、エミッタに転位やダングリングボンドが発生し、エミッタが変調をきたす。具体的には、発生した転位とダングリングボンドにより、第1部11のP型エミッタ10内部に深いエネルギー準位を形成し、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げる。第1部11のP型エミッタ10の構造を変更することにより、第1部11のP型エミッタ10が比較的小さいシート抵抗を有するようになり、第1部11のP型エミッタ10のドーピング濃度を大きく上げることなく、第1部11のP型エミッタ10のシート抵抗を下げることができ、オーミック接触を改善するだけでなく、第1部11のP型エミッタ10のパッシベーション効果の維持も促進でき、形成した太陽電池の光電変換能力を全体的に向上させることができる。
【0105】
本願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本願の着想から逸脱することなく、若干の可能な変動および修正を加えることができるため、本願の保護範囲は、本願の請求項によって規定される範囲に従うべきである。
【0106】
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
【要約】
【課題】本願の実施例は、太陽電池の技術分野に関し、太陽電池および太陽電池の製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池は、N型ベースと、N型ベースの第1表面に設置されたP型エミッタと、N型ベースの第2表面に位置し、N型ベースから離れる方向で順に設置されたトンネル層及びドープされた導電層と、を備え、ここで、P型エミッタは第1部および第2部を含み、第1部の天面は第1ピラミッド構造を含み、第1ピラミッド構造の少なくとも一つの斜面の少なくとも一部の表面は第1ピラミッド構造の中心に向かって凹んでいるまたは突き出ている、第2部の天面は第2ピラミッド構造を含み、第2ピラミッド構造の斜面は平面であり、N型ベースの第1表面に対して垂直な方向において第1部の接合深さは第2部の接合深さよりも深い。本願の実施例は、太陽電池の光電変換性能を向上させることに有利である。
【選択図】
図1