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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】圧力測定装置および射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/20 20060101AFI20230808BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B29C45/20
B29C45/76
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022163288
(22)【出願日】2022-10-11
【審査請求日】2023-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】佐光 巧
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-527741(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02686695(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B29C
G01L 7/00-27/02
G01N 11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の成形材料を射出する射出ユニットに取り付け可能な圧力測定装置であって、
前記射出ユニットに取り付けられ、前記射出ユニットによって射出された前記成形材料が流通する測定シリンダと、
締結手段と、
前記測定シリンダに取り付けられ、前記成形材料が流通する互いに仕様が異なる複数のダイと、
前記成形材料の排出先を、前記複数のダイのいずれか1つに択一的に切り換える流路切換ピンと、
前記測定シリンダ内の前記成形材料の圧力を測定する圧力センサと、を備え
前記測定シリンダは、
前記射出ユニットのノズル取付孔に螺合する第1のシリンダと、
側面に前記複数のダイが取り付けられるダイ取付孔が形成された第2のシリンダと、を含み、
前記締結手段は、前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとを締結し、
正面視において、前記第2のシリンダの中心軸を通る鉛直線と、前記ダイ取付孔の中心を通る直線とのなす角度は、40°以下である、圧力測定装置。
【請求項2】
前記複数のダイは、
断面円筒形状の第1のキャピラリーが形成された第1のキャピラリーダイと、
断面円筒形状の第2のキャピラリーが形成された第2のキャピラリーダイと、を含み、
前記第1のキャピラリーは、所定の流入角、直径および有効長を有し、
前記第2のキャピラリーは、前記第1のキャピラリーと同一の流入角および直径を有し、前記第1のキャピラリーよりも短い有効長を有する、請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項3】
前記複数のダイは、
断面矩形形状の第1のスリットが形成された第1のスリットダイと、
断面矩形形状の第2のスリットが形成された第2のスリットダイと、を含み、
前記第1のスリットは、所定の流入角、幅、隙間および有効長を有し、
前記第2のスリットは、前記第1のスリットと同一の流入角、幅および隙間を有し、前記第1のスリットよりも短い有効長を有する、請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項4】
前記締結手段は、前記第1のシリンダに形成されるフランジと当接するとともに前記第2のシリンダに螺合するカバーナットである、請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項5】
前記測定シリンダを所望の温度に加熱するヒータをさらに備える、請求項1に記載の圧力測定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の圧力測定装置が取り付けられた射出成形機であって、
前記圧力センサで測定した前記成形材料の前記圧力に基づき、前記成形材料の粘度を算出する制御装置を備える、射出成形機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記粘度の算出にあたり、バーグレー補正を実施可能であるとともに、バーグレー補正の実施の有無を切り換え可能に構成される、請求項6に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記粘度の算出によって得られたデータに基づき、グラフを描画可能に構成される、請求項6に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記グラフは、剪断速度および前記粘度の対数グラフである、請求項8に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の成形材料を射出する射出ユニットに取り付け可能な圧力測定装置と、当該圧力測定装置が取り付けられた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形を行うにあたり、成形材料の溶融粘度を把握したいという需要がある。例えば、溶融粘度を把握しておくことで、成形条件を導き出す参考になる。特に、生分解プラスチック材料や、ナノファイバー、金属粉末、セラミックス粉末等が添加されたコンパウンド材料といった材料は、溶融特性や流動特性についての知見が乏しいことが多く、溶融粘度を把握しておくことは有用である。あるいは、溶融粘度を測定することで、品質管理に役立てることもできる。例えば、バージン材とリサイクル材とを混合して成形材料として使用する場合は、溶融粘度を確認することで成形材料の劣化度合いを推定することができる。
【0003】
成形材料の溶融粘度を測定する装置の1つに、キャピラリーレオメータがある。キャピラリーレオメータは、シリンダと、シリンダ出口に取り付けられた細孔を有するダイと、シリンダ内圧力を測定する圧力センサと、を備える装置である。キャピラリーレオメータは、シリンダに充填した試料をピストンで押し出し、このときのシリンダ内圧力を測定することで、試料の粘度測定を行う。本明細書では、特に断りがない限り、断面円筒形状の細孔を有するダイをキャピラリーダイといい、断面矩形形状の細孔を有するダイをスリットダイという。
【0004】
キャピラリーレオメータを含めた一般的な粘度測定装置は、比較的高価であり、射出成形機のユーザに広く普及しているとはいえない。また、シリンダに手作業で試料としての成形材料を充填するといった作業も必要となり、測定に手間がかかる。そのため、射出成形機の装置を利用して、より簡易な機構で溶融粘度を測定することが考えられる。例えば、特許文献1は、ノズルが取り付けられたノズルアダプタに圧力センサを設け、樹脂圧力を測定することで溶融粘度を算出する射出成形機を開示している。特許文献1の射出成形機は、ノズルをキャピラリーダイとして使用することで、キャピラリーレオメータと同様の測定を行っている。射出成形機を使用することで、実際の射出成形に近い環境下で測定ができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-066700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粘度測定のための圧力測定を行うにあたり、ダイを異なる仕様のものに交換する場合がある。例えば、ダイの細孔入口および細孔出口で生じた圧力損失を考慮して真の剪断応力を求めるバーグレー(Bagley)補正を実施する場合は、細孔の有効長が異なる2以上のダイを使用し、それぞれのダイを使用時の圧力を測定する必要がある。特許文献1の射出成形機において、バーグレー補正を実施しようとすると、測定の途中でキャピラリーダイとして使用するノズルを交換しなければいけない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、使用するダイを、互いに仕様が異なる複数のダイから択一的に選択可能に構成することで、より簡易に圧力測定を行うことができる、射出成形機に取り付け可能な圧力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、射出成形機の成形材料を射出する射出ユニットに取り付け可能な圧力測定装置であって、射出ユニットに取り付けられ、射出ユニットによって射出された成形材料が流通する測定シリンダと、締結手段と、測定シリンダに取り付けられ、成形材料が流通する互いに仕様が異なる複数のダイと、成形材料の排出先を、複数のダイのいずれか1つに択一的に切り換える流路切換ピンと、測定シリンダ内の成形材料の圧力を測定する圧力センサと、を備え、前記測定シリンダは、前記射出ユニットのノズル取付孔に螺合する第1のシリンダと、側面に前記複数のダイが取り付けられるダイ取付孔が形成された第2のシリンダと、を含み、前記締結手段は、前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとを締結し、正面視において、前記第2のシリンダの中心軸を通る鉛直線と、前記ダイ取付孔の中心を通る直線とのなす角度は、40°以下である、圧力測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る圧力測定装置は、射出成形機に取り付け可能であり、互いに仕様が異なる複数のダイのうち、使用するダイを流路切換ピンによって択一的に選択可能に構成される。これにより、ダイの切り換えが必要な場合であっても、容易にダイの切り換え作業を行うことができる。ひいては、より簡易に圧力測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】射出ノズルが取り付けられた状態の、本発明の実施形態に係る射出成形機の概略構成図である。
図2】圧力測定装置が取り付けられた状態の、本発明の実施形態に係る射出成形機の概略構成図である。
図3】圧力測定装置を上方から見た斜視図である。
図4】圧力測定装置を下方から見た斜視図である。
図5】圧力測定装置の側面断面図である。
図6】圧力測定装置のVI-VI矢視図であり、正面断面図である。
図7】第1のキャピラリーダイおよび第2のキャピラリーダイの断面図である。
図8】制御装置のブロック図である。
図9】「シンプル測定モード」時の粘度測定用のGUIの一例である。
図10】「バーグレー補正モード」時の粘度測定用のGUIの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。各図面において、視認性を向上させる等の目的のため、一部の構成要素は図示省略されていることがある。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0012】
本実施形態の射出成形機は、成形材料を射出する射出ユニット1と、不図示の金型の開閉および型締を行う不図示の型締ユニットと、射出ユニット1および型締ユニットを制御する制御装置7と、を備える。射出成形を行う際は、射出ユニット1は、成形材料を可塑化させ、所定量を計量した後に、射出ノズル46から射出する。型締ユニットは、金型を保持するとともに、金型を開閉および型締可能に構成されている。型締ユニットは、射出成形にあたり、成形材料が射出されるときは、金型を閉じ、所定圧力の型締力を金型に対して付与する。射出ノズル46から金型のキャビティ内に射出された成形材料が冷却されて成形品となった後、型締ユニットは金型を開いて成形品を排出し、再度金型を閉じる。型締ユニットとしては、直圧式やトグル式等、周知の構成が採用できる。
【0013】
本明細書において、射出成形機によって射出可能な材料を広く成形材料といい、樹脂を主材とする材料の他、金属粉末にバインダーとしての樹脂を添加したMIM材や、セラミック粉末にバインダーとしての樹脂を添加したCIM材も含まれる。また、以下においては、熱可塑性の成形材料を使用する射出成形機を例として説明するが、本発明は熱硬化性の成形材料を使用する射出成形機にも適用可能である。熱硬化性の成形材料には、熱硬化性液状材料であるLIM材が含まれる。
【0014】
本実施形態の射出成形機は、可塑化部2と射出部4とが別体に構成された、いわゆるスクリュプリプラ式射出成形機である。図1に示されるように、射出ユニット1は、可塑化部2と、ジャンクション3と、射出部4と、を備える。図1においては、一部の構成が断面図して示される。以下においては、図1における左側、すなわち成形材料が射出される側を前側とする。また、図1における右側、すなわち成形材料が供給される側を後側とする。
【0015】
可塑化部2は、可塑化シリンダ21と、可塑化スクリュ23と、逆止装置25と、可塑化スクリュ駆動装置27と、ヒータ29と、を備える。可塑化シリンダ21は、バンドヒータ等のヒータ29によって所定の温度に加熱される中空の筒体である。可塑化シリンダ21の後端部には、成形材料が供給される材料投入口211が形成されている。可塑化スクリュ23は、可塑化シリンダ21内に回転自在に設けられる。可塑化スクリュ23は、材料投入口211から可塑化シリンダ21内に供給された成形材料を、ヒータ29による熱と、剪断熱によって溶融しながら、前方へと送る。逆止装置25は、可塑化スクリュ23を前進させる任意のアクチュエータであり、例えば流体圧シリンダまたは電動シリンダである。逆止装置25は、計量完了時に可塑化スクリュ23を前進させて流路を塞ぎ、射出時の成形材料の逆流を防止する。可塑化スクリュ駆動装置27は、可塑化スクリュ23を回転させる任意のアクチュエータであり、例えば油圧モータまたは電動モータである。
【0016】
ジャンクション3は、可塑化部2と射出部4とを接続する。ジャンクション3は、ヒータによって所定の温度に加熱されていてもよい。
【0017】
射出部4は、射出シリンダ41と、プランジャ42と、プランジャ駆動装置43と、エンコーダ44と、ノズルシリンダ45と、射出ノズル46と、ヒータ47,48と、を備える。
【0018】
射出シリンダ41は、バンドヒータ等のヒータ47によって所定の温度に加熱される中空の筒体である。プランジャ42は、射出シリンダ41内に進退自在に設けられた、略円柱状部材である。プランジャ駆動装置43は、プランジャ42を前後退させる任意のアクチュエータであり、例えば油圧シリンダまたは電動シリンダである。エンコーダ44は、プランジャ42の位置を読み取るセンサである。エンコーダ44で読み取ったプランジャ42の位置情報と不図示のタイマーにより、プランジャ42の移動速度である射出速度が算出可能である。
【0019】
ノズルシリンダ45は、射出シリンダ41の前方に取り付けられ、バンドヒータ等のヒータ47によって所定の温度に加熱される筒体である。ノズルシリンダ45は、ジャンクション3と射出シリンダ41とを接続する供給流路と、射出シリンダ41と射出ノズル46とを接続する排出流路と、をそれぞれ有する。ノズルシリンダ45の前面には、射出ノズル46を取付可能なノズル取付孔451が形成されている。より具体的には、ノズル取付孔451の内壁には、射出ノズル46の後端部に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成される。射出ノズル46は、射出成形時はノズルシリンダ45に取り付けられる。射出ノズル46は、コイルヒータ等のヒータ48により所定温度に加熱される。
【0020】
可塑化部2によって溶融された成形材料は、ジャンクション3、ノズルシリンダ45を通り、射出シリンダ41へと送られる。射出シリンダ41ではプランジャ42の前方に成形材料が貯留され、所望の量の成形材料が計量される。計量後、逆止装置25により可塑化部2への逆流が防止された後、プランジャ42を前進させると、ノズルシリンダ45を経由して射出ノズル46へと成形材料が送られる。このようにして、成形材料が射出ノズル46から射出される。
【0021】
ここで、本実施形態の圧力測定装置5について説明する。圧力測定装置5は、成形材料の粘度測定のための圧力測定を行う際、射出ユニット1に取り付けられる。圧力測定装置5の取り付け位置は、射出シリンダ41よりも前方であればよいが、作業性の観点からは、図2に示されるように、射出ノズル46に代えて取り付けられることが好ましい。すなわち、射出ノズル46をノズルシリンダ45から取り外し、ノズルシリンダ45のノズル取付孔451に圧力測定装置5の測定シリンダ50を取り付ければよい。圧力測定装置5の詳細な取り付け方法については、後述する。
【0022】
図3から図6に示されるように、本実施形態の圧力測定装置5は、測定シリンダ50と、圧力センサ61と、第1のキャピラリーダイ62と、第2のキャピラリーダイ63と、流路切換ピン64と、固定プレート65と、位置決めロッド66と、ヒータ67,68と、を備える。
【0023】
測定シリンダ50は、射出ユニット1に取り付けられ、射出ユニット1によって射出された成形材料が流通する。本実施形態の測定シリンダ50は、第1のシリンダ51と、第2のシリンダ52と、を含み、第1のシリンダ51と第2のシリンダ52とは分離可能に構成される。第1のシリンダ51および第2のシリンダ52は、カバーナット53によって締結される。カバーナット53には、バンドヒータであるヒータ67が巻回される。
【0024】
第1のシリンダ51は、流路511と、取付部512と、フランジ513と、を有する。流路511は、第1のシリンダ51の内部に軸方向に貫通して形成され、ノズルシリンダ45の排出流路と接続される。取付部512は、第1のシリンダ51の後端部に設けられ、ノズル取付孔451に形成された雌ねじと螺合する雄ねじが形成される。フランジ513は、第1のシリンダ51の前端部に設けられ、カバーナット53と当接する。
【0025】
第2のシリンダ52は、流路521と、流路切換ピン取付孔522と、流路523と、ダイ取付孔524と、圧力センサ取付孔525と、位置決めロッド挿通孔526と、ヒータ取付孔527と、を有する。また、第2のシリンダ52の後端部には、カバーナット53の内孔に形成された雌ねじと螺合する雄ねじが形成される。
【0026】
流路521は、第2のシリンダ52の内部に軸方向に形成され、流路511と流路切換ピン取付孔522とに接続される。流路切換ピン取付孔522は、第2のシリンダ52の前面に形成された穴である。流路切換ピン取付孔522には、流路切換ピン64が回転自在に嵌挿される。流路523は、第2のシリンダ52の内部に径方向に形成され、流路切換ピン取付孔522とダイ取付孔524とに接続される。ダイ取付孔524は、第2のシリンダ52の側面に形成された穴である。ダイ取付孔524には、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63が、それぞれ固定される。本実施形態では、ダイ取付孔524の内壁には雌ねじが、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63の外周には雄ねじがそれぞれ形成され、互いが螺合することで容易に脱着が可能となっている。圧力センサ取付孔525は、第2のシリンダ52の側面と流路521とに貫通して形成された孔である。圧力センサ取付孔525には、圧力センサ61が取り付けられる。位置決めロッド挿通孔526は、第2のシリンダ52の側面と流路切換ピン取付孔522とに貫通して形成された孔である。位置決めロッド挿通孔526には、位置決めロッド66が挿通される。ヒータ取付孔527は、第2のシリンダ52に形成された孔であり、カートリッジヒータであるヒータ68が挿通される。
【0027】
流路523、ダイ取付孔524および位置決めロッド挿通孔526は、ダイの個数に応じて複数設けられる。本実施形態では、2つの流路523、ダイ取付孔524および位置決めロッド挿通孔526が、それぞれ設けられる。ただし、3以上のダイが取り付け可能に構成されてもよい。
【0028】
圧力センサ61は、測定シリンダ50内の成形材料の圧力を測定する圧力トランスデューサである。圧力センサ61の測定位置は、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63よりも上流側の位置であればよいが、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63に近接していることが望ましい。本実施形態では、圧力センサ61は、圧力センサ取付孔525に固定され、第2のシリンダ52の流路521内を流通する成形材料の圧力を測定する。本実施形態では、圧力の検出値は制御装置7へと送られ、制御装置7が粘度の算出を行う。ただし、圧力の検出値を表示する表示器を設け、測定者が表示された検出値を読み取って粘度の算出を行ってもよい。
【0029】
本実施形態では、成形材料が流通する互いに仕様が異なるダイとして、第1のキャピラリーダイ62と、第2のキャピラリーダイ63と、が測定シリンダ50に取り付けられる。図7に示されるように、第1のキャピラリーダイ62には、所定の流入角、直径および有効長を有する、断面円筒形状の細孔である第1のキャピラリー621が形成される。また、第2のキャピラリーダイ63には、第1のキャピラリー621と同一の流入角および直径を有し、第1のキャピラリー621よりも短い有効長を有する第2のキャピラリー631が形成される。第1のキャピラリー621および第2のキャピラリー631には、流路切換ピン64を経由して送られた成形材料が流通する。ここで、流入角とは、細孔入口に形成されてもよいテーパー部のテーパー角度のことをいう。本実施形態の第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63のようにテーパー部を設けない場合は、流入角は180°として扱われる。第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63における、第1のキャピラリー621および第2のキャピラリー631以外の流路は、圧力損失が無視できる程度の流路径を有していればよい。また、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63の流路出口には、任意の形状の工具と嵌合する工具穴622,632がそれぞれ形成されてもよい。本実施形態では、六角レンチと嵌合する六角穴が、工具穴622,632として形成される。このようにすれば、ダイ取付孔524への、第1のキャピラリーダイ62および第2のキャピラリーダイ63の取り付け作業が容易となる。
【0030】
流路切換ピン64は、複数のダイから、本実施形態では第1のキャピラリーダイ62と第2のキャピラリーダイ63とから、使用するダイを択一的に選択する。換言すれば、流路511,521から供給される成形材料の排出先を、複数のダイのいずれか1つに択一的に切り換える。本実施形態の流路切換ピン64は、流路切換ピン取付孔522に回転自在に嵌挿された円筒状部材であり、流路641と、工具穴642と、凹部643と、を有する。流路641は、中間部で90°屈曲しており、入口側は流路521と接続され、出口側は流路523の1つと接続される。流路切換ピン64を回転させることで、流路641と接続される流路523を切り換えることができ、ひいては、使用するダイを選択することができる。工具穴642は、流路切換ピン64の前面に形成され、任意の形状の工具と嵌合する穴である。本実施形態では、六角レンチと嵌合する六角穴が、工具穴642として形成される。工具穴642に工具を嵌合させることで、流路切換ピン64を回転させることができる。凹部643は、流路切換ピン64の側面に形成された穴であり、流路641が流路523の1つと接続されたときに、位置決めロッド挿通孔526の1つと接続される位置に設けられる。すなわち、本実施形態では、流路切換ピン64は第2のシリンダ52の中心軸上に設けられ、流路641の出口側と流路523とが接続されたとき、凹部643と位置決めロッド挿通孔526は、中心軸を挟んで反対側に位置する。
【0031】
固定プレート65は、第2のシリンダ52の前面にボルト等で固定される板状部材であり、流路切換ピン64と当接して、流路切換ピン64の脱落を防止する。工具穴642を覆わないように、固定プレート65の中央部には開口が形成される。
【0032】
位置決めロッド66は、位置決めロッド挿通孔526に挿通される棒状部材を有する。位置決めロッド66は、流路切換ピン64を回転させて使用するダイを選択した後に、位置決めロッド挿通孔526に挿通される。これにより、位置決めロッド66の先端が凹部643に嵌合し、流路切換ピン64が正確に位置決めされるとともに不意の回転が防止される。
【0033】
本実施形態の流路切換ピン64は、工具を利用して手動で回転可能に構成されるが、流体圧シリンダや電動モータ等の任意のアクチュエータにより自動で回転可能に構成されてもよい。このとき、流路切換ピン64によるダイの切り換えは、制御装置7により制御されてもよい。
【0034】
以上のような圧力測定装置5により、溶融した成形材料の圧力が測定される。圧力測定装置5を射出ユニット1に装着した状態で、射出成形時と同様に、成形材料の溶融、計量および射出が行われる。プランジャ42によって押し出された成形材料は、ノズルシリンダ45を通り、流路511、流路521、流路641、流路523を順に通過して、複数のダイのうち流路切換ピン64で選択した1つのダイから排出される。このとき、圧力センサ61は、流路521を流動する成形材料の圧力を測定する。本実施形態のような圧力測定装置5であれば、使用するダイを流路切換ピン64により容易に切り換え可能であるので、作業性がよい。
【0035】
第1のキャピラリーダイ62または第2のキャピラリーダイ63から排出された成形材料が飛散しないためには、第1のキャピラリーダイ62または第2のキャピラリーダイ63、ひいては、ダイ取付孔524が下方を向くよう、測定シリンダ50が射出ユニット1に取り付けられることが好ましい。測定シリンダ50は、具体的には以下の手順で取り付けられる。まず、カバーナット53を第1のシリンダ51に挿通し、第1のシリンダ51の取付部512をノズルシリンダ45のノズル取付孔に螺合させる。次に、第1のシリンダ51と第2のシリンダ52とを係合させ、第2のシリンダ52のダイ取付孔524が下方を向くように位置決めする。この状態で、カバーナット53を第2のシリンダ52に螺合させ、カバーナット53の壁面531が第1のシリンダ51のフランジ513と当接するまで、カバーナット53を回転させる。このようにして、第1のシリンダ51と第2のシリンダ52とが締結される。
【0036】
第2のシリンダ52に取り付けられる各部材は、第1のシリンダ51と第2のシリンダ52の締結前に取り付けられてもよいし、締結後に取り付けられてもよい。また、本実施形態では、カバーナット53により第1のシリンダ51と第2のシリンダ52とを締結したが、ボルト等の他の締結手段が使用されてもよい。
【0037】
以上のような手順で第1のシリンダ51と第2のシリンダ52との締結を終えた後は、第1のシリンダ51がノズル取付孔451に螺合したとき、ダイ取付孔524が下方を向くよう、位置合わせが行われている。そのため、上記の手順により締結された第1のシリンダ51および第2のシリンダ52であれば、以降は組みあがった状態でノズルシリンダ45に取り付けられてもよい。ただし、取り付ける射出成形機が変更になる場合は、再度同様の手順での位置合わせが必要となる。
【0038】
すべてのダイ取付孔524が下方を向くようにするためには、ダイ取付孔524が第2のシリンダ52の側面の片側に形成されている必要がある。正面視において、第2のシリンダ52の中心軸を通る鉛直線と、ダイ取付孔524の中心を通る直線とのなす角度は、40°以下であることが望ましい。
【0039】
ここで、本実施形態の制御装置7について説明する。制御装置7は、射出ユニット1および型締ユニットを制御するとともに、圧力測定装置5によって測定した成形材料の圧力値に基づき、粘度の算出を行う。
【0040】
制御装置7は、ハードウェアとソフトウェアを任意に組み合わせて構成されてよく、例えば図8に示されるように、演算装置71と、記憶装置72と、入力装置73と、表示装置74と、を備える。演算装置71は、CPU等の任意の演算回路であり、各部を制御するための種々の演算を行うとともに、粘度測定に係る演算を行う。記憶装置72は、RAM、ROMおよび補助記憶装置が任意で組み合わされて構成されてよく、演算装置71による演算に必要なデータ等を記憶する。入力装置73および表示装置74は、それぞれ単体の装置であってもよいし、タッチパネルのように両者を兼用する装置であってもよい。本実施形態では、入力装置73および表示装置74として、タッチパネルおよび入力キーとを備えた操作盤が設けられる。
【0041】
制御装置7は、射出成形時および粘度測定時に、射出ユニット1の可塑化スクリュ駆動装置27、逆止装置25およびプランジャ駆動装置43を制御して、成形材料の溶融、計量、および射出を行う。
【0042】
制御装置7は、ヒータ29,47,48,67,68を制御し、可塑化シリンダ21、射出シリンダ41、ノズルシリンダ45、射出ノズル46、測定シリンダ50を、所望の温度に加熱する。ただし、射出成形のときは、ヒータ67,68は使用されない。また、粘度測定のときは、ヒータ48は使用されない。ヒータ29,47,48,67,68には熱電対等の温度センサが設けられており、ヒータ29,47,48,67,68は測定温度に基づきフィードバック制御されてよい。
【0043】
制御装置7は、圧力測定装置5の圧力センサ61で測定した成形材料の圧力に基づき、粘度の算出を行う。制御装置7は、粘度を算出するにあたり、バーグレー補正を実施可能であってよい。バーグレー補正は、ダイの細孔入口および細孔出口で生じた圧力損失を考慮して真の剪断応力を求める補正である。バーグレー補正を実施する場合は、1回の粘度算出にあたり、2回の圧力測定が必要となる上、ダイの切り換えが必要となる。そのため、バーグレー補正の実施の有無を測定者が任意に切り換え可能に構成し、より正確に粘度を検出したい場合はバーグレー補正を実施し、簡易な測定で十分であればバーグレー補正を実施しないようにしてもよい。また、制御装置7は、粘度を算出するにあたり、ラビノビッチ(Rabinowitsch)補正を実施可能であってよい。ラビノビッチ補正は、流体である成形材料の非ニュートン性を考慮して真の剪断速度を求める補正である。ラビノビッチ補正は常に実施してもよいし、ラビノビッチ補正の実施の有無を測定者が任意に切り換え可能に構成してもよい。演算を容易にすることを優先する場合は、ラビノビッチ補正は実施しなくてもよい。
【0044】
粘度算出においては、測定シリンダ50内の成形材料の圧力の値が用いられる。圧力の検出値は成形材料の射出中に上下し得るが、検出圧力として、検出値が略横ばいになった時点の検出値を使用してよい。あるいは、検出圧力として、圧力が略横ばいになっていると推定される、射出後半における検出値の平均値を使用してよい。また、粘度算出においては、射出速度の値も用いられる。計算に使用する射出速度は、設定値でもよいし、エンコーダ44に基づいて算出した実測値でもよいが、実測値を使用した方がより正確な粘度計算を行うことができる。実測値の場合は、射出速度が略横ばいになった時点の値を使用してよいし、射出後半における射出速度の平均値を使用してよい。
【0045】
図9および図10は、表示装置74に表示される、粘度測定用のGUI8の一例を示している。粘度測定用のGUI8へは、通常の射出成形用のGUIから移動可能である。GUI8は、例えば、測定条件入力フォーム811と、測定結果表示テーブル812と、読込結果表示テーブル813と、モード切換ボタン82と、測定開始ボタン83と、データ読込ボタン841と、データクリアボタン842と、選択ボタン851と、選択解除ボタン852と、グラフ描画ボタン86と、保存ボタン87と、設定ボタン88と、閉ボタン89と、を備える。
【0046】
測定条件入力フォーム811は、粘度の算出にあたって必要なデータおよび粘度測定に係る設定値の入力欄を有する。具体的に、測定者は、入力装置73を介して、ダイの仕様(キャピラリーダイの場合はキャピラリーの直径および有効長)、射出速度の設定値、任意に設定可能な測定名を入力する。本実施形態では、射出速度について、複数の値を入力可能に構成される。制御装置7は、複数の射出速度が入力されているとき、所定の順番で射出速度を変更して複数回の粘度測定を行う。
【0047】
本実施形態では、ヒータ温度は通常の射出成形用のGUIにおいて設定するが、測定条件入力フォーム811にヒータ温度に係る入力欄を設けてもよい。ヒータ29,47,67,68に係るヒータ温度としては、通常、同一の温度が設定される。粘度測定を行うにあたっては、各部の温度が安定していることが望ましい。例えば、射出成形用のGUIから粘度測定用のGUI8に移行した後、任意に設定した昇温待ち時間が経過するまで粘度測定を開始できないように制限を設け、温度の安定性を担保してもよい。
【0048】
モード切換ボタン82が押下されると、バーグレー補正の実施の有無が切り換えられる。具体的に、モード切換ボタン82により、バーグレー補正を実施しない「シンプル測定モード」と、バーグレー補正を実施する「バーグレー補正モード」に切り換えることができる。前述の通り、ラビノビッチ補正を実施可能に構成する場合は、ラビノビッチ補正の有無についても、選択可能に構成されてよい。
【0049】
測定開始ボタン83が押下されると、入力されたデータおよび設定値に基づき、成形材料を圧力測定装置5から射出して、溶融した成形材料の粘度測定を行う。前述の通り、複数の射出速度が入力されているときは、連続して複数回の測定が行われる。また、「バーグレー補正モード」が選択されている場合、一方のダイ、例えば第1のキャピラリーダイ62を使用した測定が完了した後、ダイの切り換えを促すメッセージが表示される。測定者は、流路切換ピン64を操作して他方のダイ、例えば第2のキャピラリーダイ63に切り換え、ダイの切り換えが完了したことを制御装置7に入力する。これを受けて、同一の射出速度で第2のキャピラリーダイ63を使用した測定が行われる。ただし、前述した通り、流路切換ピン64によるダイの切り換えは、制御装置7によりアクチュエータを制御することで、自動で行われてもよい。このとき、測定途中で測定者によるダイの切り換えに係る手動操作が不要となるので、より効率よく粘度測定が行える。
【0050】
本実施形態において、粘度測定時の計量値は、射出ユニット1で計量可能な最大値である。すなわち、プランジャ42が後退限に達するまで、成形材料の計量を行う。ただし、安定した測定が行える範囲内で、計量値は別の値でもよいし、任意に設定可能に構成してもよい。
【0051】
測定結果表示テーブル812は、現在の粘度測定によって得られたデータを測定回ごとに一覧表示する。また、読込結果表示テーブル813は、過去の粘度測定によって得られたデータを測定回ごとに一覧表示する。データ読込ボタン841が押下されると、記憶装置72の補助記憶装置またはフラッシュメモリ等の外部記憶媒体75に保存されている測定結果に係るデータを参照して、読込結果表示テーブル813に表示する。データクリアボタン842が押下されると、測定結果表示テーブル812および読込結果表示テーブル813に表示されているデータをリセットする。測定結果表示テーブル812および読込結果表示テーブル813に表示されるデータは、測定結果に係るデータの一部であってもよい。測定結果表示テーブル812および読込結果表示テーブル813に表示されるデータには、例えば、射出速度、剪断速度、検出圧力、粘度、温度、測定名のデータが含まれてよい。表示するデータは、測定者が任意に選択可能であってよい。測定者は、測定結果表示テーブル812と読込結果表示テーブル813のデータを比較することで、成形材料の特性を把握することが容易となる。測定結果のデータに含まれる射出速度および温度は、設定値、実測値、またはその両方であってよい。特に、実測値が設定値と略同一になることが見込まれる場合は、設定値のみがデータとして保存されてもよい。
【0052】
測定者によるタップ操作等により、測定結果表示テーブル812または読込結果表示テーブル813に表示されるデータのうち、1以上の行が仮選択される。この状態で選択ボタン851が押下されると、仮選択された行が選択される。あるいは、仮選択を挟まずに、測定者によるタップ操作等により、行が直接選択可能なように構成されてもよい。この場合、選択ボタン851は省略されてもよい。選択解除ボタン852が押下されると、行の選択がリセットされる。ここで、グラフ描画ボタン86が押下されると、選択した行のデータに基づき、グラフが表示装置74に表示される。つまり、制御装置7は、粘度の算出によって得られたデータに基づき、グラフを描画可能に構成される。表示されるグラフは、いわゆるフローカーブ、すなわち、剪断速度をx軸、粘度をy軸とする、対数グラフであってよい。グラフ表示可能に構成することで、成形材料の特性が視覚的に理解できる。グラフのデータは、画像データとして、記憶装置72の補助記憶装置またはフラッシュメモリ等の外部記憶媒体75に保存可能であってもよい。
【0053】
保存ボタン87が押下されると、測定結果に係るデータが、CSV形式等の任意の形式で出力され、記憶装置72の補助記憶装置またはフラッシュメモリ等の外部記憶媒体75に保存される。出力されるデータには、測定回ごとのダイの仕様(キャピラリーダイの場合はキャピラリーの直径および有効長)、射出速度、剪断速度、検出圧力、粘度、温度、測定名のデータが含まれてよい。補正を実施した場合は、補正前の粘度と補正後の粘度の両方のデータが含まれてよい。
【0054】
設定ボタン88が押下されると、所定の設定画面が表示される。本実施形態では、通常、粘度測定ごとに変更する必要のない設定情報を、測定条件入力フォーム811とは別の設定画面に表示している。設定画面においては、例えば、プランジャ42の直径、粘度測定時に設定可能な射出速度の最小値および最大値、昇温待ち時間が設定できる。これらの設定については、変更にパスワード等の認証を要するようにしてもよい。また、プランジャ42の直径は射出成形機の機種設定のデータを参照してもよく、このときプランジャ42の直径に係る入力欄は省略されてもよい。
【0055】
閉ボタン89が押下されると、粘度測定用のGUI8が閉じられ、通常の射出成形用のGUIに移動する。
【0056】
以下に、制御装置7が溶融した成形材料の圧力に基づき、粘度を算出する計算式を具体的に説明する。ここで、
ηap[Pa・s]:見かけの粘度
η[Pa・s]:真の粘度
τap[Pa]:見かけの剪断応力
τ[Pa]:真の剪断応力
γap[s-1]:見かけの剪断速度
γ[s-1]:真の剪断速度
[Pa]:第1のキャピラリーダイ62使用時の検出圧力
[Pa]:第2のキャピラリーダイ63使用時の検出圧力
[Pa]:有効長が0mmのときの推定圧力
[mm]:第1のキャピラリー621および第2のキャピラリー631の直径
[mm]:第1のキャピラリー621の有効長
[mm]:第2のキャピラリー631の有効長
Q[mm/s]:体積流量
[mm]:プランジャ42の直径
V[mm/s]:射出速度
n:構造粘度指数
とする。
【0057】
見かけの粘度ηapは、以下の式の通り、見かけの剪断応力τapを見かけの剪断速度γapで除した値である。
【0058】
【数1】
【0059】
ここで、見かけの剪断応力τapは、以下の式で求められる。バーグレー補正を行わない場合は、見かけの剪断応力τapの算出にあたり、第1のキャピラリーダイ62を使用しても第2のキャピラリーダイ63を使用してもよいが、1のキャピラリーダイ62を使用した場合の方が測定誤差は小さい。以下の式は、第1のキャピラリーダイ62を使用した場合の計算式であり、第2のキャピラリーダイ63を使用した場合は、検出圧力Pおよび有効長Lに代えて検出圧力Pおよび有効長Sを使用する。
【0060】
【数2】
【0061】
また、見かけの剪断速度γapは、以下の式で求められる。
【0062】
【数3】
【0063】
以上の計算式により、見かけの剪断応力τapおよび見かけの剪断速度γから、見かけの粘度ηapが求められる。簡易的な粘度測定を行う場合は、以上の計算式により見かけの粘度ηapを求めればよい。より正確な粘度測定を行う場合は、バーグレー補正およびラビノビッチ補正のうち、少なくとも一方、好ましくは両方の補正が行われる。
【0064】
バーグレー補正は、細孔入口および細孔入口で生じた圧力損失を考慮して、真の剪断応力τを求める補正である。成形材料が細孔を通過するとき、細孔入口、細孔内部および細孔出口で圧力損失が発生する。第1のキャピラリーダイ62使用時の検出圧力Pから細孔(キャピラリー)の有効長が0mmのときの推定圧力Pを差し引くことで、細孔入口および細孔出口で圧力損失が発生しなかったときの第1のキャピラリーダイ62使用時の圧力(P-P)を推定できる。バーグレー補正を行った真の剪断応力τは、以下の式で求められる。
【0065】
【数4】
【0066】
ここで、推定圧力Pは、以下の式で求められる。式から明らかなとおり、バーグレー補正を行う場合は、使用するダイを切り換えて2回の圧力測定を行い、第1のキャピラリーダイ62使用時の検出圧力Pと、第2のキャピラリーダイ63使用時の検出圧力Pと、を把握しておく必要がある。
【0067】
【数5】
【0068】
見かけの剪断速度γapは、測定対象である成形材料の構造粘度指数nが1であるとき、すなわち、成形材料がニュートン流体であった場合の剪断速度の値である。しかしながら実際は、成形材料は一般に非ニュートン流体であるため、真の剪断速度γと見かけの剪断速度γapとにはずれが生じる。ラビノビッチ補正は、見かけの剪断速度γapに構造粘度指数nによって定まる所定の係数を乗算し、真の剪断速度γを得る補正である。ラビノビッチ補正を行った真の剪断速度γは、以下の式で求められる。
【0069】
【数6】
【0070】
ここで、構造粘度指数nは、見かけの剪断速度γapの対数と真の剪断応力τの対数の勾配である。ゆえに、構造粘度指数nは、以下の式で求められる。ただし、バーグレー補正を行わず、ラビノビッチ補正のみ行う場合は、真の剪断応力τに代えて見かけの剪断応力τapを計算に用いる。
【数7】
【0071】
バーグレー補正およびラビノビッチ補正により、それぞれ真の剪断応力τおよび真の剪断速度γが算出される。このとき、真の粘度ηは、以下の式の通り、真の剪断応力τを真の剪断速度γで除した値である。
【数8】
【0072】
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【0073】
例えば、本実施形態では、断面円筒形状の細孔であるキャピラリーを有するキャピラリーダイを使用する場合の粘度算出に係る計算式を説明したが、キャピラリーダイに代えて、断面矩形形状の細孔であるスリットを有するスリットダイが使用されてもよい。すなわち、成形材料の粘度を検出するにあたり、所定の流入角、幅、隙間および有効長を有する第1のスリットが形成された第1のスリットダイと、第1のスリットと同一の流入角、幅および隙間を有し、第1のスリットよりも短い有効長を有する第2のスリットが形成された第2のスリットダイと、が使用されてもよい。
【0074】
スリットダイを使用する場合は、見かけの剪断応力τap、見かけの剪断速度γap、真の剪断応力τおよび真の剪断速度γは、キャピラリーダイを使用した場合の式に代えて、以下の式で求められる。ただし、
ηap[Pa・s]:見かけの粘度
η[Pa・s]:真の粘度
τap[Pa]:見かけの剪断応力
τ[Pa]:真の剪断応力
γap[s-1]:見かけの剪断速度
γ[s-1]:真の剪断速度
[Pa]:第1のスリットダイ使用時の検出圧力
[Pa]:第2のスリットダイ使用時の検出圧力
[Pa]:有効長が0mmのときの推定圧力
B[mm]:スリットの幅
H[mm]:スリットの隙間
[mm]:第1のスリットの有効長
[mm]:第2のスリットの有効長
[mm]:プランジャ42の直径
V[mm/s]:射出速度
n:構造粘度指数
とする。
【0075】
【数9】
【0076】
ただし、本式は第1のスリットダイを使用した場合の式であり、第2のスリットダイを使用した場合は、検出圧力Pおよび有効長Lに代えて検出圧力Pおよび有効長Sを使用する。
【0077】
【数10】
【0078】
【数11】
【0079】
ただし、
【0080】
【数12】
【0081】
【数13】
【0082】
ただし、
【0083】
【数14】
【0084】
本実施形態の圧力測定装置5は、複数種類のダイを切り換えて粘度測定を行う場合において、特に有効である。本実施形態では、バーグレー補正を実施できるように、有効長のみが異なる2種類のダイが測定シリンダ50に取り付けられたが、有効長以外の仕様が異なっていてもよい。バーグレー補正以外に、粘度測定にあたり仕様の異なるダイに交換するケースとしては、例えば、以下のような状況が考えられる。ある成形材料について剪断速度と粘度の関係を調べる場合、射出速度を変えて複数回粘度測定を行うことになる。しかしながら、射出成形機において、射出速度には上限および下限が存在するため、射出成形機のスペックによっては所望の剪断速度が得られない場合がある。こういった場合は、キャピラリーダイの場合は直径が異なるダイ、スリットダイの場合は幅および隙間の少なくとも一方が異なるダイに切り換えれば、所望の剪断速度における粘度を測定することができる。
【0085】
圧力測定装置5を取付可能な射出成形機は、可塑化部と射出部とを一体に構成した、いわゆるインラインスクリュ式射出成形機でもよい。ただし、本実施形態の射出成形機のように、可塑化スクリュ23を前進させて逆流防止する逆止装置25を備えたスクリュプリプラ式射出成形機であれば、インラインスクリュ式射出成形機と比べて計量・射出の安定性に優れているので、より正確に成形材料の粘度の測定を行う事ができる。
【符号の説明】
【0086】
1 射出ユニット
451 ノズル取付孔
5 圧力測定装置
50 測定シリンダ
51 第1のシリンダ
52 第2のシリンダ
524 ダイ取付孔
61 圧力センサ
62 第1のキャピラリーダイ
621 第1のキャピラリー
63 第2のキャピラリーダイ
631 第2のキャピラリー
64 流路切換ピン
67 ヒータ
68 ヒータ
7 制御装置
【要約】      (修正有)
【課題】射出成形機に取り付け可能な圧力測定装置であって、容易にダイの切り換え作業が可能な圧力測定装置を提供する。
【解決手段】射出成形機の成形材料を射出する射出ユニットに取り付け可能な圧力測定装置5であって、射出ユニットに取り付けられ、射出ユニットによって射出された成形材料が流通する測定シリンダと、測定シリンダに取り付けられ、成形材料が流通する互いに仕様が異なる複数のダイ62,63と、成形材料の排出先を、複数のダイ62,63のいずれか1つに択一的に切り換える流路切換ピン64と、測定シリンダ内の成形材料の圧力を測定する圧力センサと、を備える、圧力測定装置5が提供される。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10