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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20230808BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022509283
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000750
(87)【国際公開番号】W WO2021192496
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020050765
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】本間 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
(72)【発明者】
【氏名】クマール スミット
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026263(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014015621(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、前記ステアリングホイール本体と前記エアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備え、
前記エアバッグモジュールは、前記ステアリングホイール本体に前記ダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に、前記エアバッグモジュールに力を印加するように構成さ
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つのコイルスプリングを有し、
前記エアバッグモジュール及び前記ステアリングホイール本体の少なくとも一方は、前記少なくとも一つのコイルスプリングを受ける座面に、当該少なくとも一つのコイルスプリングに対して、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向への分力を作用させる傾斜面を備える、
ステアリングホイール。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記エアバッグモジュール及び前記ステアリングホイール本体のうち、前記ステアリングホイール本体に設けられている、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、前記ステアリングホイール本体と前記エアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備え、
前記エアバッグモジュールは、前記ステアリングホイール本体に前記ダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に、前記エアバッグモジュールに力を印加するように構成され、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つのコイルスプリングを有し、
前記少なくとも一つのコイルスプリングは、前記エアバッグモジュールに接触する一端部及び前記ステアリングホイール本体に接触する他端部の少なくとも一方に、当該少なくとも一つのコイルスプリングに対して、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向への分力を作用させる傾斜面を有する、
テアリングホイール。
【請求項4】
ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、前記ステアリングホイール本体と前記エアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備え、
前記エアバッグモジュールは、前記ステアリングホイール本体に前記ダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に、前記エアバッグモジュールに力を印加するように構成され、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つのコイルスプリングを有し、
前記コイルスプリングは、中心軸が前記第1の方向に対して傾斜するように設けられている、
テアリングホイール。
【請求項5】
前記少なくとも一つのコイルスプリングは、前記エアバッグモジュールの重心よりも下側の位置に設けられている、請求項からのいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項6】
前記少なくとも一つのコイルスプリングは、前記エアバッグモジュールの中心の左右の少なくともいずれか一方の位置に設けられている、請求項からのいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項7】
前記コイルスプリングは、前記エアバッグモジュール及び前記ステアリングホイール本体の一方の座面に固定された第1の端部と、前記エアバッグモジュール及び前記ステアリングホイール本体に対して固定されていない第2の端部と、を有し、
前記座面の面積は、前記コイルスプリングのコイル径が画定するコイル面積よりも大きい、請求項からのいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項8】
ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、前記ステアリングホイール本体と前記エアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備え、
前記エアバッグモジュールは、前記ステアリングホイール本体に前記ダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に、前記エアバッグモジュールに力を印加するように構成され、
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つのコイルスプリングを有し、
前記コイルスプリングは、圧縮コイルスプリングであり、
前記コイルスプリングは、前記エアバッグモジュールの座面に固定された第1の端部と、前記ステアリングホイール本体に対して固定されていない第2の端部と、を有し、
前記ステアリングホイールは、
少なくとも、前記コイルスプリングの前記第2の端部と当接して前記コイルスプリングを圧縮状態に保持する保持位置と、前記コイルスプリングの前記第2の端部から離間して前記コイルスプリングを前記圧縮状態から解放する解放位置と、の間で移動可能なストッパと、
前記ステアリングホイール本体に設けられたストッパ接触部と、を備え、
前記ストッパ接触部は、前記エアバッグモジュールが前記ダンパユニットを介して前記ステアリングホイール本体に取り付けられる際に前記ストッパに接触して当該ストッパを前記保持位置から前記解放位置に移動させ、それにより前記コイルスプリングの前記第2の端部が前記ステアリングホイール本体の座面に接触可能に構成される、
テアリングホイール。
【請求項9】
前記ダンパユニットは、前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールを押し上げる前記方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つのシートスプリングを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項10】
前記シートスプリングは、前記エアバッグモジュールの下側に設けられている、請求項に記載のステアリングホイール。
【請求項11】
前記ステアリングホイールは、
前記エアバッグモジュールと前記ステアリングホイール本体との間に設けられ、前記エアバッグモジュールが前記ステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、前記第1の方向と交差する方向であって前記エアバッグモジュールを押し上げる方向に、前記エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つの弾性体をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のステアリングホイール。
【請求項12】
前記少なくとも一つの弾性体は、
(1)前記エアバッグモジュールの中心から見て上側及び下側の少なくとも一方に、又は
(2)前記エアバッグモジュールの中心から見て左右の少なくともいずれか一方に
位置している、請求項11に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両衝突時に、運転者の安全を守るために、フロントエアバッグ機能を有するステアリングホイールが広く採用されている。例えば、特許文献1に開示されたエアバッグ装置では、ホーンスイッチ機構が組み付けられるバッグホルダと該バッグホルダに対し組み付けられたパッドとの間に、折り畳まれたエアバッグが収容されている。ホーンスイッチ機構は、バッグホルダに形成された取付孔に挿入されて組み付けられ、パッドには、ホーンスイッチ機構を支持するスイッチ支持部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010―69938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエアバッグ装置のようなエアバッグモジュールは、ステアリングホイール本体に取り付けられた後に、エアバッグモジュールが自重によってわずかにずり下がり、ステアリングホイール本体に対する位置がずれてしまうことがある。このような位置ずれが生じると、例えば、エアバッグモジュールとステアリングホイール本体との間において上側では隙間が大きく、下側では隙間が小さくなる等、ステアリングホイール全体の意匠性を低下させる可能性がある。
【0005】
本発明は、ステアリングホイール全体の意匠性の向上に寄与するステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、ステアリングホイール本体とエアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備え、エアバッグモジュールは、ステアリングホイール本体にダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、ダンパユニットは、エアバッグモジュールがステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、第1の方向と交差する方向であってエアバッグモジュールを押し上げる方向に、エアバッグモジュールに力を印加するように構成されている。
【0007】
この態様によれば、エアバッグモジュールは、第1の方向に向かってダンパユニットを介してステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、この取り付け方向(すなわち第1の方向)に対して交差する方向へとダンパユニットによって押し上げられる。これにより、エアバッグモジュールの自重によるずり下がりが抑制され、エアバッグモジュールのステアリングホイール本体に対する位置を、本来の取り付け位置に保持することができる。したがって、ステアリングホイール全体の意匠性の向上を実現することができる。また、このようなエアバッグモジュールの押し上げを、ステアリングホイール本体とエアバッグモジュールとを連結するダンパユニットの機能を有効に利用して達成することができる。ここで、ダンパユニットの機能とは、ダンパユニットが、ステアリングホイール本体の振動をエアバッグモジュールに伝達しながら、その振動を減衰させる機能という。
【0008】
本発明の別の態様に係るステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、エアバッグモジュールと、ステアリングホイール本体とエアバッグモジュールとを連結するダンパユニットと、を備えた、ステアリングホイールであって、エアバッグモジュールは、ステアリングホイール本体にダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられ、ステアリングホイールは、エアバッグモジュールとステアリングホイール本体との間に設けられ、エアバッグモジュールがステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、第1の方向と交差する方向であってエアバッグモジュールを押し上げる方向に、エアバッグモジュールを付勢する少なくとも一つの弾性体をさらに備える。
【0009】
この態様によれば、上記同様に、エアバッグモジュールは、第1の方向に向かってダンパユニットを介してステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、この取り付け方向(すなわち第1の方向)に対して交差する方向へと弾性体によって押し上げられる。よって、上記同様に、エアバッグモジュールの自重によるずり下がりが抑制され、ステアリングホイール全体の意匠性の向上を実現することができる。
【0010】
ここで、弾性体は、ダンパユニットとは別体であるものの、例えば、従来、フロントエアバッグに採用されている支持スプリングを利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の第1実施例に係るステアリングホイールの外観を示す斜視図である。
図2図1のステアリングホイールの構成を示す模式断面図である。
図3図1のステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す側面図である。
図4図1のステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す斜視図である。
図5図1のステアリングホイールのステアリングホイール本体の構成を示す正面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7図1のステアリングホイールにおいて、エアバッグモジュールがダンパユニットを介してステアリングホイール本体に取り付けられた取付状態を示す側面図である。
図8図7のB部拡大断面図である。
図9A】第1実施形態の第2実施例に係るステアリングホイールのストッパが、保持位置にある状態を示す図である。
図9B図9Aのストッパが、解放位置に移動した状態を示す図である。
図10】第1実施形態の第3実施例に係るステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す側面断面図である。
図11】第1実施形態の第4実施例に係るステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す側面図である。
図12】第1実施形態の第5実施例に係るステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す斜視図である。
図13図12のステアリングホイールのダンパユニットの構成を示す側面図である。
図14】第1実施形態の第5実施例に係るステアリングホイール本体を示す正面図である。
図15】第2実施形態の第1実施例に係るステアリングホイールを示す正面図である。
図16図15のステアリングホイールの構成を示す側面図である。
図17】第2実施形態の第2実施例に係るステアリングホイールを示す正面図である。
図18】第3実施形態に係るステアリングホイールの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明する。なお、添付の図面の記載において同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものである。また、以下では複数の実施形態についてそれぞれ1つ以上の実施例を説明するが、後の実施例では、先の実施例と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については言及しない。
【0013】
[複数の実施形態の主な共通事項]
複数の実施形態に係るステアリングホイールは、例えば自動車などの車両の運転席側に配置されるものであり、複数の機能を有している。例えば、ステアリングホイールは、車両の操舵装置としての機能のほか、車両緊急時のフロントエアバッグとしての機能と、ステアリングホイール本体の振動を減衰するダイナミックダンパとしての機能と、を有している。車両緊急時とは、例えば、車両の衝突が発生した時をいう。フロントエアバッグとしての機能は、主として、ステアリングホイールに搭載されたエアバッグモジュールによって達成される。ダイナミックダンパとしての機能は、主として、エアバッグモジュールとステアリングホイール本体との間に設けられた少なくとも一つのダンパユニットによって達成される。ステアリングホイールは、上記機能に加えて、ステアリングホイール本体に対するエアバッグモジュールの取付け位置を保持するために、エアバッグモジュールを押し上げる機能を有している。また、ステアリングホイールは、ホーン装置としての機能を有していてもよい。
【0014】
複数の実施形態に係るステアリングホイールでは、エアバッグモジュールがステアリングホイール本体に少なくとも一つのダンパユニットを介して第1の方向に向かって取り付けられる。この「第1の方向」とは、例えば、ステアリングシャフトの軸方向又は長手方向となり得る。ステアリングシャフトは、一般に傾斜した状態で車体に備えられ、ステアリングシャフトの上端部にステアリングホイールが装着される。運転手からの操舵力がステアリングホイールからステアリングシャフトに伝達され、ステアリングギア等を介して車輪に伝達され、車輪の向きが変更される。また、一般に、エアバッグモジュール及びステアリングホイール本体がそれぞれ所定の厚みを有し、それらの厚み方向に沿って両者が順に重なるように配置されることを考慮すると、「第1の方向」とは、例えば、エアバッグモジュール、ステアリングホイール本体あるいはステアリングホイールの厚み方向、又は、エアバッグモジュールとステアリングホイール本体との積層方向ともなり得る。さらに、ステアリングホイール本体が、その厚み方向に直交する方向に平面を広く画定することを考慮すると、「第1の方向」とは、例えば、ステアリングホイール本体の平面の垂直方向ともなり得る。以下では、「第1の方向」が、ステアリングシャフトの軸方向に一致するものとして説明する。
【0015】
複数の実施形態に係るステアリングホイールでは、エアバッグモジュールがステアリングホイール本体に取り付けられた状態において、エアバッグモジュールが「第1の方向」と交差する方向へと押し上げられる。これにより、エアバッグモジュールの自重によるずり下がりが抑制される。このような押し上げ機能は、いくつかの実施形態(例えば後述の第1及び第2実施形態)では、主として、少なくとも一つのダンパユニットによって達成される。他のいくつかの実施形態(例えば後述の第3実施形態)では、主として、ダンパユニットとは別体の弾性体によって達成される。
【0016】
以下では、説明の便宜のために、ステアリングホイールが車両に取り付けられ、かつ外力を受けていない状態を「取付状態」と呼ぶことがある。また、ステアリングシャフトの軸方向(すなわち第1の方向)を「Z軸方向」と呼ぶ。Z軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計の9時と3時とを結ぶ方向を「X軸方向」と呼び、また、同時計の12時と6時とを結ぶ方向を「Y軸方向」と呼ぶ。X軸方向は、ステアリングホイール又は車両の幅方向に相当するともいえる。Y軸方向は、ステアリングホイールの上下方向である。なお、ステアリングシャフトが傾斜している場合、Y軸方向は、車両の高さ方向に対して傾斜する。また、X軸、Y軸及びZ軸のいずれか二つによって構成される平面を、「XY面」、「YZ面」及び「XZ面」と呼ぶ。Z軸方向において、Z軸第1方向はステアリングシャフトの下端部側に向かい、Z軸第2方向はステアリングシャフトの上端部側(運転者側)に向かっている。Y軸方向において、Y軸第1方向は車両の高さ方向の上方側に向かい、Y軸第2方向は車両の高さ方向の下方側に向かっている。
【0017】
[第1実施形態]
(第1実施例)
図1及び2に示すように、ステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体2と、エアバッグモジュール3と、ステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3とを連結するダンパユニット4と、を備えている。ダンパユニット4は、ステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3との間に設けられている。エアバッグモジュール3は、ステアリングホイール本体2にダンパユニット4を介してZ軸方向に向かって取り付けられる。この取り付け状態において、エアバッグモジュール3及びダンパユニット4は、ステアリングホイール本体2の中央に埋め込むように設けられている。
【0018】
ステアリングホイール本体2は、車両の操舵装置としての機能を有する。ステアリングホイール本体2は、その骨組み部分を構成する芯金を有する。芯金は、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウムなどの金属及び樹脂等により成形される。ステアリングホイール本体2の芯金は、中央のボス領域21と、運転者が把持する円形のリム22と、ボス領域21及びリム22を連結するスポーク23とを有する。ボス領域21は、ステアリングホイール本体2をステアリングシャフトSに連結するためのシャフト取付部211と、ダンパユニット4を取り付けるためのダンパ取付部212とを有する(参照:図5)。シャフト取付部211はボス領域21の中央部に形成される一方、ダンパ取付部212はシャフト取付部211の外側に形成されている。シャフト取付部211は、ステアリングシャフトSを取り付けるための取付け孔を有している。ダンパ取付部212の詳細は、後述する。
【0019】
ステアリングホイール本体2は、芯金上に、一つ以上の層を有するものであってもよい。例えば、ステアリングホイール本体2は、芯金上に、その一部又は全部を覆うように、例えば発砲ポリウレタン樹脂などの軟質合成樹脂被覆の層を設けてもよい。また、ステアリングホイール本体2は、芯金上に、外側に向かって順次、絶縁層としてのウレタン層と、ステアリングホイール本体2を温めるヒーター機能のためのヒーター電極の層と、絶縁層としての表皮層と、運転者によるステアリングホイール本体2の把持を検知するためのセンサ電極の層と、を有するものであってもよい。
【0020】
エアバッグモジュール3は、フロントエアバッグとしての機能と、ホーン装置としての機能とを有する。エアバッグモジュール3は、折り畳まれた袋状のエアバッグクッション31と、車両緊急時にエアバッグクッション31にガスを供給するインフレータ32と、ステアリングホイール本体2のボス領域21を運転手側から覆うホーンカバー33及びハウジング34と、を有する。ホーンカバー33は、ステアリングホイール1の運転者側に向かう意匠面を構成する部分、すなわち可視部分となる一方、エアバッグクッション31、インフレータ32及びハウジング34は、不可視部分となる。
【0021】
インフレータ32は、金属製の重量物であり、エアバッグモジュール3の構成要素において最も重いものである。したがって、インフレータ32の位置又は重心が、実質的にエアバッグモジュール3の重心Gとなる(参照:図3)。例えば、インフレータ32は、ガス噴出孔を有する低背の中空円盤体を有する場合、かかる中空円盤体の中心が実質的にエアバッグモジュール3の重心Gとなり得る。他方、エアバッグモジュール3の中心についても、エアバッグモジュール3の重心Gとなり得る。もっとも、エアバッグモジュール3の構成要素において最も平面的に大きい構成要素(例えばホーンカバー33)の中心を、エアバッグモジュール3の中心と捉えることも可能である。
【0022】
ホーンカバー33は、例えば樹脂製からなり、全体として箱状を有している(参照:図4)。ハウジング34は、例えば金属製からなり、全体として皿状をなしている(参照:図4)。ホーンカバー33及びハウジング34は、エアバッグクッション31を収容する容器35を構成する。ハウジング34は、XY面に沿った底面(第1主面341)を有しており、第1主面341の中央にインフレータ32が取り付けられている。また、ハウジング34は、第1主面341から立ちあがる周壁に、例えばリベットによってホーンカバー33が取り付けられている。
【0023】
ホーンカバー33は、ホーンを鳴らすときに運転者が押すホーンスイッチとなる部分である。エアバッグモジュール3は、ダンパユニット4を介してステアリングホイール本体2に対してZ軸方向にスライド可能に構成されている。ホーンカバー33が運転者によってZ軸方向に押されると、エアバッグモジュール3がダンパユニット4の付勢力に抗してステアリングホイール本体2に近づく。このとき、エアバッグモジュール3及びステアリングホイール本体2のそれぞれに設けた接点が電気的に導通され、ホーンが鳴るようになっている。
【0024】
車両緊急時に、エアバッグモジュール3はフロントエアバッグとして起動する。具体的には、衝突時に、インフレータ32が、車両のセンサから信号を受信して作動し、エアバッグクッション31にガスを供給し始める。ガスの供給を受けたエアバッグクッション31は、急速に膨張してホーンカバー33を破裂させ、破裂されたホーンカバー33から車室空間の運転者側に向かってさらに膨張する。その結果、完全に膨張したエアバッグクッション31によって、運転者が拘束される。
【0025】
図3及び4に示すように、ダンパユニット4は、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に可動に係合する係合部41と、ステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3とを連結するダンパ部42と、を有する。係合部41及びダンパ部42は、エアバッグモジュール3のハウジング34の第1主面341に取り付け可能に構成されている。
なお、ダンパユニット4を介してステアリングホイール本体2にエアバッグモジュール3を取り付ける際、ダンパユニット4はエアバッグモジュール3に予め取り付けられている。このため、以下の説明では、ダンパユニット4とエアバッグモジュール3とを合わせて「エアバッグダンパアッセンブリ5」と呼ぶことがある。
【0026】
係合部41は、2つのピン43を有する。2つのピン43は、ハウジング34の第1主面341からZ軸第1方向に向かって突出するように設けられている。また、2つのピン43は、エアバッグモジュール3の中心の左右両側に配置されている。具体的には、2つのピン43のそれぞれは、X軸方向の両端側、かつ、エアバッグモジュール3の重心Gの上方、すなわちY軸第1方向側に配置されている。
【0027】
ダンパ部42は、2つの係合部スプリング44と、2つの支持スプリング45と、1つのプレート状ダンパ47とを有する。係合部スプリング44及び支持スプリング45の一方又は両方は、エアバッグモジュール3を押し上げる方向に付勢するコイルスプリングとなり得るものである。ここでは、2つの係合部スプリング44は、互いに同じ仕様の圧縮コイルスプリングであり、2つの支持スプリング45も、互いに同じ仕様の圧縮コイルスプリングである。支持スプリング45のコイル径は、係合部スプリング44のコイル径よりも小さい。
【0028】
2つの係合部スプリング44は、それぞれ、2つのピン43の外周側に設けられている。したがって、2つの係合部スプリング44は、2つのピン43と同様に、X軸方向の両端側、かつエアバッグモジュール3の重心Gの上方に配置されている。2つの支持スプリング45は、エアバッグモジュール3の中心の左右両側に配置されており、それぞれ、2つの係合部スプリング44の下方に配置されている。具体的には、2つの支持スプリング45は、X軸方向の両端側、かつエアバッグモジュール3の重心Gの下方、すなわちY軸第2方向側に配置されている。
【0029】
係合部スプリング44及び支持スプリング45は、いずれも、Z軸第1方向側の端部がステアリングホイール本体2に接触し、かつ、Z軸第2方向側の端部に接触する。ステアリングホイール本体2に取り付けられる前の状態、すなわちエアバッグダンパアッセンブリ5の状態においては、係合部スプリング44及び支持スプリング45のいずれも、Z軸第2方向側の端部が固定端になり、Z軸第1方向側の端部が自由端になっている。なお、固定端及び自由端は、それぞれ、後述する特許請求の範囲に記載の「第1の端部」及び「第2の端部」の一例である。
【0030】
プレート状ダンパ47は、エアバッグモジュール3のY軸第2方向の端部に、ハウジング34の第1主面341からZ軸第1方向に向かって突出するように設けられている。プレート状ダンパ47では、Z軸第2方向側の端部が固定端になり、Z軸第1方向側の端部が自由端になっている。プレート状ダンパ47は、エアバッグモジュール3の中心下側に配置されている。具体的には、プレート状ダンパ47は、2つの係合部スプリング44及び2つの支持スプリング45よりもX軸方向の中心側、かつエアバッグモジュール3の重心Gの下方、すなわちY軸第2方向側に配置されている。
【0031】
<ステアリングホイール本体2のダンパ取付部212>
次に、図5及び図6を参照しつつ、ステアリングホイール本体2のダンパ取付部212の構成について説明する。
【0032】
ダンパ取付部212は、図5に示すように、2つのピン43を挿し込むための2つの取付用貫通孔213と、2つの係合部スプリング44のそれぞれの自由端を受けるための2つの平面部214と、2つの支持スプリング45のそれぞれの自由端を受けるための2つの座面215と、プレート状ダンパ47の自由端と当接する平面部217と、を有する。平面部214及び平面部217は、XY面に平行している。
【0033】
座面215は、図6に示すように、XY面に対して傾斜する傾斜面として形成されている。より詳しく説明すると、取付状態において、座面215は、Y軸第2方向に位置する下方端部が、Y軸第1方向に位置する上方端部よりも、エアバッグモジュール3側に近づくように、傾斜している。この傾斜によって、ダンパユニット4(ここでは支持スプリング45)に対して、エアバッグモジュール3を押し上げる方向への分力を作用させる。この傾斜の角度、すなわち座面215とXY面とを挟む角度θは、そのような分力を作用させることができる角度であればよく、例えば3度~30度の範囲に設定することができ、好ましくは10度~20度の範囲に設定するとよい。10度未満であると、エアバッグモジュール3の重量によってはエアバッグモジュール3を十分に押し上げることができない一方、20度を超えると、エアバッグモジュール3の重量によってはエアバッグモジュール3を押し上げ過ぎてしまうからである。
【0034】
また、座面215の面積は、支持スプリング45のコイル径が画定するコイル面積よりも大きい(参照:図7)。これにより、エアバッグダンパアッセンブリ5をステアリングホイール本体2に取り付ける際に、支持スプリング45の自由端を座面215に着座させ易くなる。また、取り付け後においては、支持スプリング45が、傾斜した座面215を受け面としているものの、この受け面との当接の安定性が確保され易くなる。
【0035】
<ダンパユニット4の機能>
続いて、図7及び図8を参照しつつ、ダンパユニット4の3つの機能について説明する。
【0036】
(係合機能)
エアバッグモジュール3は、ダンパユニット4を介して、ステアリングホイール本体2のダンパ取付部212と係合し、ステアリングホイール本体2に取り付けられている。具体的には、ダンパユニット4の2つのピン43のそれぞれを、ステアリングホイール本体2の2つの取付用貫通孔213のそれぞれに挿し込むことで、エアバッグモジュール3をステアリングホイール本体2に対して係合する。係合状態において、ピン43の周りでは、係合部スプリング44がZ軸方向においてエアバッグモジュール3とステアリングホイール本体2との間に介在する。エアバッグモジュール3は、ピン43の周りでは、ステアリングホイール本体2に対してZ軸方向に可動になっている。
【0037】
(ダンパ機能)
係合部スプリング44は、エアバッグモジュール3とステアリングホイール本体2の平面部214との間に介在している。支持スプリング45は、エアバッグモジュール3とステアリングホイール本体2の座面215との間に介在している。プレート状ダンパ47は、エアバッグモジュール3とステアリングホイール本体2の平面部217との間に介在している。したがって、ステアリングホイール本体2が振動する場合、その振動は、ステアリングホイール本体2から、係合部スプリング44、支持スプリング45及びプレート状ダンパ47を介してエアバッグモジュール3に伝達され、減衰される。
【0038】
(押上機能)
図8に示すように、支持スプリング45は、傾斜している座面215と当接することで、長手方向の中間部がY軸第1方向に向かって撓むように変形する。言い換えれば、傾斜している座面215によって、支持スプリング45は、Y軸第2方向に位置する部分が、Y軸第1方向に位置する部分よりも圧縮される。よって、支持スプリング45のY軸第2方向に位置する部分がエアバッグモジュール3を付勢する一部の弾性力は、各支持スプリング45のY軸第1方向に位置する部分がエアバッグモジュール3を付勢する他の一部の弾性力よりも大きくなる。この結果、その2つの弾性力の合力F(すなわち、支持スプリング45全体による弾性力)は、Z軸方向と交差する方向であって、エアバッグモジュール3を押し上げる方向に向かうように形成されている。具体的には、合力Fの方向は、Z軸第2方向及びY軸第1方向によって挟まれた範囲に向かっている。また、各支持スプリング45は、エアバッグモジュール3の重心G(図3参照)よりもY軸第2方向側に設けられている。このため、上記方向を有する合力Fの作用によって、エアバッグモジュール3に、図7の時計回り方向のモーメント、すなわちY軸第1方向に向かうようなモーメントが入力される。その結果、合力Fによって、エアバッグモジュール3は、Y軸第1方向に向けて押し上げられるように付勢されている。
【0039】
また、合力Fの分力の作用から捉えると、合力Fは、Y軸第1方向に向かう分力Fyと、Z軸第2方向に向かう分力Fzとの2つの力に分解することができる。よって、支持スプリング45は、エアバッグモジュール3を、取付け方向(第1の方向、Z軸方向)と直交するY軸第1方向に押し上げるように、エアバッグモジュール3を付勢する。
【0040】
以上説明した第1実施形態の第1実施例によれば、エアバッグモジュール3がダンパユニット4を介してステアリングホイール本体2に取り付けられた状態において、ダンパユニット4が、上記取付け方向と交差する方向であって、エアバッグモジュール3を押し上げる方向(すなわちY軸第1方向)に、エアバッグモジュール3に力を印加する。これにより、取付状態においてエアバッグモジュール3の自重によるY軸第2方向へのずり下がりが抑制され、エアバッグモジュール3のステアリングホイール本体2に対する位置(特に、Y軸方向の位置)を、本来の取り付け位置に保持することができる。したがって、例えばホーンカバー33とステアリングホイール本体2との本来の位置関係が保持され、ステアリングホイール1全体の意匠性の向上を実現することができる。また、このようなエアバッグモジュール3の押し上げを、ステアリングホイール本体2とエアバッグモジュール3とを連結するダンパユニット4の機能を有効に利用して達成することができる。ここで、ダンパユニット4の機能とは、ダンパユニット4が、ステアリングホイール本体2の振動をエアバッグモジュール3に伝達しながら、その振動を減衰させる機能という。
【0041】
とりわけ、ダンパユニット4における、コイルスプリングである支持スプリング45を利用して、エアバッグモジュール3を押し上げる方向に付勢する。このようなコイルスプリングという簡易な構成により、押し上げ機能を達成することができる。また、支持スプリング45を2つ設け、エアバッグモジュール3の中心の左右両側にそれぞれ位置させているため、エアバッグモジュール3を左右方向においてバランスよく押し上げることができる。さらに、支持スプリング45をエアバッグモジュール3の重心Gよりも下側に位置させているため、エアバッグモジュール3を効率よく押し上げることができる。
【0042】
加えて、支持スプリング45を受ける座面215を傾斜面としているため、エアバッグモジュール3を押し上げる方向への分力を作用させることができる。また、傾斜面である座面215を採用することによって、支持スプリング45は、その中心軸をZ軸方向に対して傾斜するように取り付けられなくでも、上記エアバッグモジュール3を押し上げる方向への分力を発生することができる。これにより、支持スプリング45を取り付ける場合、必要となるエアバッグモジュール3及びステアリングホイール本体2の間の空間が小さくなり、ステアリングホイール1の小型化の実現に有利となる。
【0043】
(第2実施例)
続いて、図9A及び図9Bを参照しつつ、第1実施形態の第2実施例に係るステアリングホイール1における、コイルスプリングの仮保持機構について説明する。この仮保持機構の点において、第2実施例に係るステアリングホイール1は、第1実施例に係るステアリングホイール1と相違する。仮保持機構は、主として、ストッパ48及びストッパ接触部248により構成される。図9Aは、仮保持機構のストッパ48が保持位置にある状態を示し、図9Bは、ストッパ48が開放位置に移動した状態を示している。
【0044】
ストッパ48は、支持スプリング45を圧縮状態に保持する図9Aに示す保持位置と、支持スプリング45を圧縮状態から解放する図9Bに示す解放位置と、の間で移動可能に構成されている。ストッパ48は、例えば、ダンパユニット4の一部として設けられ、エアバッグモジュール3のハウジング34の第1主面341からZ軸第1方向に突出して取り付けられる。ストッパ接触部248は、ストッパ48に対応する位置に、ステアリングホイール本体2に設けられる。
【0045】
エアバッグダンパアッセンブリ5がステアリングホイール本体2に取り付けられる前では、図9Aに示すように、ストッパ48は、支持スプリング45の自由端(第2の端部)と当接して支持スプリング45を圧縮状態に保持する。
【0046】
一方、エアバッグダンパアッセンブリ5がステアリングホイール本体2に取り付けられる際に、ストッパ48は、ストッパ接触部248に接触させられ保持位置から解放位置に移動させられる。すなわち、エアバッグダンパアッセンブリ5がZ軸第1方向に向かって、ステアリングホイール本体2側に近づく過程において、ストッパ48の凹部付近にストッパ接触部248が接触し、ストッパ48を解放方向へと回動させる。
【0047】
その結果、エアバッグダンパアッセンブリ5がステアリングホイール本体2に取り付けられた後では、ストッパ48は、図9Bに示すように、支持スプリング45の自由端から離間して、支持スプリング45を圧縮状態から解放する。この解放により、支持スプリング45は、ステアリングホイール本体2の座面215と当接する。
【0048】
このように、第1実施形態の第2実施例に係るストッパ48及びストッパ接触部248によれば、簡易な構成を用いて、エアバッグダンパアッセンブリ5の支持スプリング45の姿勢を仮保持することができる。これにより、エアバッグダンパアッセンブリ5をステアリングホイール本体2に取り付けるときに、自由長の支持スプリング45がピン43よりも先にステアリングホイール本体2に当たることによって、ピン43がステアリングホイール本体2に挿し込みにくくなることや、係合不良等の問題を抑制することができる。また、エアバッグダンパアッセンブリ5をステアリングホイール本体2に取り付けた際に、仮保持が解除されることによって、支持スプリング45による上述のダンパ機能及び押上機能を発揮することができる。
【0049】
(第3実施例)
続いて、図10を参照しつつ、第1実施形態の第3実施例について説明する。第3実施例に係るダンパユニット4と、第1実施例に係るダンパユニット4との相違は、第3実施例に係る支持スプリング45の取付け方である。
【0050】
支持スプリング45は、図10に示すように、その中心軸L45がZ軸第1方向に対して傾斜するように設けられている。よって、支持スプリング45は、中心軸L45に沿う弾性力をエアバッグモジュール3に付勢することができる。言い換えれば、エアバッグモジュール3は、支持スプリング45の作用によって、取付け方向と交差する方向に押し上げられる。この場合、ステアリングホイール本体2の座面215に傾斜面を設けなくてもよい。
【0051】
このように、第3実施例に係るダンパユニット4の支持スプリング45によっても、エアバッグモジュール3を押し上げることを実現できる。
【0052】
(第4実施例)
続いて、図11を参照しつつ、第1実施形態の第4実施例について説明する。第4実施例に係るダンパユニット4と、第1実施例に係るダンパユニット4との相違は、第4実施例に係るピン43及び係合部スプリング44の取付け方である。
【0053】
係合部スプリング44は、図11に示すように、中心軸L44がZ軸第1方向に対して傾斜するように設けられている。ピン43も同様に設けられている。よって、係合部スプリング44は、中心軸L44に沿う弾性力をエアバッグモジュール3に付勢することができる。言い換えれば、エアバッグモジュール3は、係合部スプリング44の作用によって、取付け方向と交差する方向に押し上げられる。本実施例では、支持スプリング45は、中心軸L45がZ軸第1方向と平行するように設けられている。
【0054】
このように、第4実施例に係るダンパユニット4の係合部スプリング44によっても、エアバッグモジュール3を押し上げることを実現できる。
【0055】
(第5実施例)
続いて、図12乃至14を参照しつつ、第1実施形態の第5実施例について説明する。第5実施例に係るダンパユニット4と、第1実施例に係るダンパユニット4との相違は、主として、ピン43及び係合部スプリング44の数と、支持スプリング45の数と、ステアリングホイール本体2のダンパ取付部212の構成である。
【0056】
ダンパユニット4は、図12に示すように、3つのピン43及び3つの係合部スプリング44を有しているが、支持スプリング45を有していない。また、ダンパ取付部212は、図14に示すように、3つのピン43及び3つの係合部スプリング44に対応するように、3つの取付用貫通孔213と、3つの平面部214とを有する。また、3つのピン43のそれぞれは、ハウジング34の第1主面341のX軸方向の両側と、Y軸第2方向に設けられている。すなわち、3つのピン43は、Z軸方向に直交する平面においてアナログ12時間時計で見た場合、3時、6時及び9時の方向に配置されている。3時及び9時の方向に配置された2つのピン43は、エアバッグモジュール3の重心よりも上側に位置し、6時の方向に配置されたピン43は、エアバッグモジュール3の重心よりも下側に位置している。また、3つの係合部スプリング44のそれぞれも、同様に設けられている。
【0057】
各係合部スプリング44は、図13に示すように、中心軸L44がZ軸第1方向に対して傾斜するように設けられている。各ピン43も同様に設けられている。よって、3つの係合部スプリング44は、中心軸L44に沿う弾性力をエアバッグモジュール3に付勢することができる。言い換えれば、エアバッグモジュール3は、係合部スプリング44の作用によって、取付け方向と交差する方向に押し上げられる。
【0058】
このように、第5実施例に係るダンパユニット4の3つの係合部スプリング44によれば、より安定してエアバッグモジュール3を押し上げることができる。なお、3つの係合部スプリング44のいずれか一つを、好ましくは3時及び9時の方向に配置された2つの係合部スプリング44又は6時の方向に配置された1つの係合部スプリング44を上記の傾斜配置とすることで、エアバッグモジュール3を取付け方向と交差する方向に押し上げるようにしてもよい。
【0059】
[第2実施形態]
(第1実施例)
続いて、図15及び図16を参照しつつ、第2実施形態の第1実施例について説明する。第2実施形態の第1実施例に係るステアリングホイール1と、第1実施形態の第1実施例に係るステアリングホイール1との相違は、前者が支持スプリング51及び/又は支持スプリング52をさらに有することと、支持スプリング45の取付け方である。
【0060】
支持スプリング45は、その中心軸L45がZ軸第1方向と平行するように設けられている。第2実施形態では、支持スプリング51及び/又は支持スプリング52が、エアバッグモジュール3を取付け方向と交差する方向に押し上げる少なくとも一つの弾性体として機能する。このような少なくとも一つの弾性体は、エアバッグモジュール3の中心から見て上側及び下側の少なくとも一方に位置している。
【0061】
支持スプリング51は、例えばエアバッグモジュール3のY軸第1方向側に設けられた引張コイルスプリングである。支持スプリング51は、エアバッグモジュール3のY軸第1方向側の端部と、ステアリングホイール本体2のY軸第1方向側の端部とを連結することで、エアバッグモジュール3を引き上げるように、エアバッグモジュール3を付勢している。
【0062】
支持スプリング52は、例えばエアバッグモジュール3のY軸第2方向側に設けられた圧縮コイルスプリングである。支持スプリング52は、エアバッグモジュール3のY軸第2方向側の端部と、ステアリングホイール本体2のY軸第2方向側の端部とを連結することで、エアバッグモジュール3を押し上げるように、エアバッグモジュール3を付勢している。
【0063】
このように、第2実施形態の第1実施例に係る支持スプリング51及び/又は支持スプリング52によれば、エアバッグモジュール3を引き上げる及び/又は押し上げることができる。よって、エアバッグモジュール3の自重によるずり下がりが抑制され、ステアリングホイール全体の意匠性の向上を実現することができる。また、従来フロントエアバッグに採用されている支持スプリング45の取付け方を利用又は踏襲することができる。よって、ステアリングホイール1の設計自由度の向上を実現することができる。
【0064】
(第2実施例)
続いて、図17を参照しつつ、第2実施形態の第2実施例について説明する。第2実施形態において、第2実施例に係るステアリングホイール1と、第1実施例に係るステアリングホイール1との相違は、前者が、支持スプリング51及び/又は支持スプリング52に代えて、支持スプリング53及び支持スプリング54を有していることである。
【0065】
支持スプリング53及び支持スプリング54は、エアバッグモジュール3の中心から見て左右両側に配置されており、エアバッグモジュール3を取付け方向と交差する方向に押し上げる弾性体として機能する。一例を上げると、支持スプリング53及び支持スプリング54のそれぞれは、例えばエアバッグモジュール3のX軸方向の両側に設けられた引張コイルスプリングである。支持スプリング53は、エアバッグモジュール3のX軸第1方向側の端部と、ステアリングホイール本体2のX軸第1方向側の端部とを連結する。支持スプリング54は、エアバッグモジュール3のX軸第2方向側の端部と、ステアリングホイール本体2のX軸第2方向側の端部とを連結する。これらの連絡によって、エアバッグモジュール3を引き上げるように、エアバッグモジュール3を付勢している。
【0066】
このように、第2実施例に係る支持スプリング53及び支持スプリング54によっても、エアバッグモジュール3を引き上げることができ、エアバッグモジュール3の自重によるずり下がりを抑制することができる。
【0067】
[第3実施形態]
続いて、図18を参照しつつ、第3実施形態について説明する。第3実施形態に係るステアリングホイール1と、第1実施形態に係るステアリングホイール1との相違は、前者が、支持スプリング45を有しておらず、代わりにエアバッグモジュール3を支えるためのシートスプリング61を有することである。なお、シートスプリング61は、第1実施形態に係るプレート状ダンパ47(参照:図3)と同じものとして構成してもよいし、別体として構成してもよい。ここでは、別体であるとの前提とする。
【0068】
シートスプリング61は、エアバッグモジュール3を取付け方向と交差する方向に押し上げる弾性体として機能する。例えばシートスプリング61は、板バネであり、エアバッグモジュール3のY軸第2方向の端部に設けられている。また、シートスプリング61は、エアバッグモジュール3の中心ら見て下側に位置している。取付状態において、シートスプリング61は、ステアリングホイール本体2の当接部261と当接し、エアバッグモジュール3を取付け方向と交差する方向に押し上げる。その結果、エアバッグモジュール3の自重によるY軸第2方向へのずり下がりが抑制される。
【0069】
このように、第3実施形態に係るシートスプリング61によっても、エアバッグモジュール3のステアリングホイール本体2に対する位置(特に、Y軸方向の位置)を、本来の取り付け位置に保持することができる。また、シートスプリング61の構成はシンプルであるため、ステアリングホイール1の小型化、及びステアリングホイール1の構成の簡易化を実現することができる。
【0070】
[その他の変形例]
以上説明した各実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0071】
例えば、ダンパユニット4は、ダンパ部42が主としてコイルスプリングによって構成されるものとしたが、かかる構成に限定されるものではなく、例えば、ゴムのような他の弾性部材によって構成されるものとしてもよい。
【0072】
座面215の傾斜面は、XY面に対して所定の角度に傾いた平面構成として説明したが、平面構成以外であってもよい。すなわち、座面215の傾斜面は、凹面、凸面、曲面又は階段状の面からなる構成であってもよい。
【0073】
座面215の傾斜面は、ステアリングホイール本体2側ではなく、または、ステアリングホイール本体2側とともに、エアバッグモジュール3側に設けてもよい。また、ステアリングホイール本体2側及び/又はエアバッグモジュール3側における座面の傾斜面は、ステアリングホイール本体2又はエアバッグモジュール3の一部によって形成してもよいし、これらに取り付けた別体の部材(例えばカラー)によって形成してもよい。
【0074】
ピン43の数は2つ又は3つとして説明したが、上記構成に限定されるものではなく、例えば、ピン43の数は、1つ又は4つ以上であってもよい。同様に、支持スプリング45、支持スプリング51、支持スプリング52、支持スプリング53、支持スプリング54、及び係合部スプリング44のそれぞれの数も、1つ又は4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…ステアリングホイール、2…ステアリングホイール本体、3…エアバッグモジュール、4…ダンパユニット、5…エアバッグダンパアッセンブリ、21…ボス領域、22…リム、23…スポーク、31…エアバッグクッション、32…インフレータ、33…ホーンカバー、34…ハウジング、41…係合部、42…ダンパ部、43…ピン、44…係合部スプリング、45…支持スプリング、47…プレート状ダンパ、48…ストッパ、51~54…支持スプリング、61…シートスプリング、211…シャフト取付部、212…ダンパ取付部、213…取付用貫通孔、214…平面図、215…座面、217…平面部、248…ストッパ接触部、341…第1主面、G…重心、S…ステアリングシャフト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18