(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-07
(45)【発行日】2023-08-16
(54)【発明の名称】布地を洗濯する方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/22 20060101AFI20230808BHJP
D06F 35/00 20060101ALI20230808BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20230808BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20230808BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230808BHJP
D06L 1/16 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C11D1/22
D06F35/00 Z
C11D3/36
C11D3/386
C11D3/20
D06L1/16
(21)【出願番号】P 2022520718
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 US2020070605
(87)【国際公開番号】W WO2021072418
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】ブエノ・ロモ、ローラ
(72)【発明者】
【氏名】アマドール・ザマレノ、カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーカー、アンジュ・ディーパリ・マッセイ
(72)【発明者】
【氏名】ムーン、リビ
(72)【発明者】
【氏名】スーター、フィリップ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ロブレス、エリック・サン・ホセ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0130860(US,A1)
【文献】特開昭61-132674(JP,A)
【文献】特開2003-041480(JP,A)
【文献】特表2001-519831(JP,A)
【文献】特表2003-504455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地を洗濯する方法であって、
(a)洗濯洗剤を水に接触させて洗浄液を形成する工程であって、該洗濯洗剤が洗浄性界面活性剤を含み、該洗浄液が、100ppm~2500ppmの範囲の濃度で洗浄性界面活性剤を含む、工程と、
(b)布地を該洗浄液に接触させて、該洗浄液中で該布地を洗浄する工程と、
(c)該布地を該洗浄液に接触させてから少なくとも6分間後、カルシウムカチオンを該洗浄液に導入してカルシウム富化洗浄液を形成する工程であって、該カルシウム富化洗浄液が、20ppm~400ppmの範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む、工程と、
(d)該カルシウム富化洗浄液中で該布地を少なくとも2分間洗浄する工程と、
(e)該布地から過剰な該カルシウム富化洗浄液を除去し、該布地を水中ですすぐ工程と、
を含
み、工程(c)における前記カルシウムカチオンが、水性カルシウムスラリーの形態で前記洗浄液に導入され、該水性カルシウムスラリーが、5重量%~80重量%のカルシウム塩を含む、方法。
【請求項2】
前記洗濯洗剤が、キレート剤、及び任意に他の洗剤成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗濯洗剤が、洗浄性界面活性剤を含み、工程(a)で形成された前記洗浄液が300ppm~2500ppmの範囲の濃度の該洗浄性界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄性界面活性剤が、アルキルベンゼンスルホネートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性カルシウムスラリーが、カルシウムカチオンを水に接触させて、5重量%~80重量%のカルシウム塩の範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む水性カルシウムスラリーを形成することによって形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)で形成された前記カルシウム富化洗浄液が、100ppm超~300ppmの範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記洗濯洗剤がキレート剤を含み、該キレート剤が、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)及びその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン)酸(DTPMP)及びその塩から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記洗濯洗剤がキレート剤を含み、工程(a)で形成された前記洗浄液が10ppm~300ppmの範囲の濃度で該キレート剤を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記洗濯洗剤がアミラーゼ酵素を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗濯洗剤がクエン酸を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において前記布地を前記洗浄液と接触させる前に、工程(a)に導入される前記水をキレート剤で前処理する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地を洗濯する方法に関する。この方法は、洗浄サイクルの中間にカルシウムカチオンを導入する。この方法は、特に化粧品などの汚れ、及び油脂に対して、改善された洗浄性能を提供する。この方法はまた、カルシウムが洗浄液に導入されるときに観察され得る、例えば草染み除去が不十分になることなどの、望ましくない汚れ除去性能の歪みを軽減する。
【背景技術】
【0002】
洗浄中の自動洗濯機の洗浄液中には、強化された充填特性及び乳化特性を介した、酵素安定性及び改善された界面活性剤性能のために、カルシウムの存在が必要である。したがって、カルシウムの存在は、油脂汚れなどの界面活性剤感受性汚れに対する改善された洗浄性能をもたらし得る。しかしながら、洗浄中の早い段階でカルシウムが過剰な濃度で存在すると、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)などの一部の硬度感受性界面活性剤の沈殿をもたらす可能性があり、擦り付けられた草などの硬度感受性タイプの汚れに対する洗浄性能の低下につながり得る。したがって、擦り付けられた草に対する弱点を最小限に抑えながら、油脂除去性能を最大化するために、洗浄の間にカルシウムレベルを適合させることができるシステムを開発することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
洗浄サイクル中に多くのタイプ/量の洗浄活性物質を添加することなく、他のタイプの汚れに対する洗浄効果を維持しながら、油脂汚れに対する改善された洗浄性能を達成するための、布地を処理する方法を提供するニーズが存在する。好ましくは、洗浄添加剤に関連する製造コスト又は自動洗濯機に関連する運転コスト/エネルギー消費を著しく増加させることなく、成果が達成されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、布地を洗濯する方法であって、
(a)洗濯洗剤を水に接触させて洗浄液を形成する工程であって、該洗濯洗剤が洗浄性界面活性剤を含み、該洗浄液が、100ppm~2500ppmの範囲の濃度で洗浄性界面活性剤を含む、工程と、
(b)布地を該洗浄液に接触させて、該洗浄液中で該布地を洗浄する工程と、
(c)該布地を該洗浄液に接触させてから少なくとも6分間後、カルシウムカチオンを該洗浄液に導入してカルシウム富化洗浄液を形成する工程であって、該カルシウム富化洗浄液が、20ppm~400ppmの範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む、工程と、
(d)該カルシウム富化洗浄液中で該布地を少なくとも2分間洗浄する工程と、
(e)該布地から過剰な該カルシウム富化洗浄液を除去し、該布地を水中ですすぐ工程と、
を含む、方法、を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
布地を洗濯する方法
布地を洗濯する方法は、
(a)洗濯洗剤を水に接触させて洗浄液を形成する工程であって、該洗濯洗剤が洗浄性界面活性剤を含み、該洗浄液が、100ppm~2500ppmの範囲の濃度で洗浄性界面活性剤を含む、工程と、
(b)布地を該洗浄液に接触させて、該洗浄液中で該布地を洗浄する工程と、
(c)該布地を該洗浄液に接触させてから少なくとも6分間後、カルシウムカチオンを該洗浄液に導入してカルシウム富化洗浄液を形成する工程であって、該カルシウム富化洗浄液が、20ppm~400ppmの範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む、工程と、
(d)該カルシウム富化洗浄液中で該布地を少なくとも2分間洗浄する工程と、
(e)該布地から過剰な該カルシウム富化洗浄液を除去し、該布地を水中ですすぐ工程と、
を含む。
【0006】
この布地は、工程(b)において布地を洗浄液と接触させる前に、キレート剤で前処理され得る。
【0007】
工程(a)、洗浄液の形成
工程(a)では、洗濯洗剤を水に接触させて洗浄液を形成する。
【0008】
典型的には、この洗濯洗剤は洗浄性界面活性剤を含み、工程(a)で形成された洗浄液は、100ppm~2500ppm、又は300ppm~2500ppmの範囲の濃度の洗浄性界面活性剤を含む。
【0009】
好ましくは、この洗濯洗剤はキレート剤を含み、工程(a)で形成された洗浄液は、0ppm~300ppm、又は10ppm~300ppm、又は50ppm~300ppm、又は更には100ppm~300ppmの範囲の濃度でキレート剤を含む。
【0010】
工程(b)、布地の洗浄
工程(b)では、布地を洗浄液に接触させて、布地を洗浄液中で洗浄する。
【0011】
工程(c)、カルシウムカチオン導入
工程(c)では、布地を洗浄液に接触させてから少なくとも6分後にカルシウムカチオンを洗浄液に導入して、カルシウム富化洗浄液を形成する。工程(c)では、布地を洗浄液に接触させてから少なくとも8分後、又は少なくとも10分後、又は更には少なくとも15分後にカルシウムカチオンを洗浄液に導入して、カルシウム富化洗浄液を形成することが好ましい場合がある。
【0012】
工程(c)におけるカルシウムカチオンは、水性カルシウムスラリーの形態で洗浄液に導入され得る。水性カルシウムスラリーについては、以下でより詳細に記載する。
【0013】
典型的には、工程(c)で形成されたカルシウム富化洗浄液は、20ppm~400ppm、又は50ppm~300ppm、又は10ppm~300ppm、又は50ppm~300ppm、又は更には100ppm~300ppmの範囲の濃度でカルシウムカチオンを含む。
【0014】
工程(d)、カルシウム富化洗浄液中での洗浄
工程(d)では、カルシウム富化洗浄液中で布地を少なくとも2分間洗浄する。
【0015】
工程(e)、すすぎ
工程(e)では、過剰のカルシウム富化洗浄液を布地から除去し、布地を水中ですすぐ。
【0016】
カルシウムカチオン
カルシウムカチオンは、典型的には塩の形態である。好適なカルシウム塩は、酢酸カルシウム、ヒ酸カルシウム、アジ化カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、臭素酸カルシウム、臭化カルシウム、炭酸カルシウム(アラゴナイト)、炭酸カルシウム(方解石)、塩素酸カルシウム、過塩素酸カルシウム四水和物、塩化カルシウム、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウム六水和物、カルシウムシアナミド、クロム酸カルシウム、クエン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フルオロケイ酸カルシウム、ギ酸カルシウム、リン酸二カルシウム、水素化カルシウム、水酸化カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、モリブデン酸カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸カルシウム四水和物、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム四水和物、シュウ酸カルシウム、シュウ酸カルシウム水和物、酸化カルシウム、過塩素酸カルシウム、過マンガン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸一カルシウム、リン酸三カルシウム、亜セレン酸カルシウム、硫酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム四水和物、水酸化燐灰石、及びこれらの任意の組み合わせである。
【0017】
好ましいカルシウム塩は、炭酸カルシウムである。
【0018】
水性カルシウムスラリー
典型的には、水性カルシウムスラリーは、5重量%~80重量%、又は10重量%~70重量%、又は20重量%~70重量%、又は30重量%~70重量%のカルシウム塩を含む。
【0019】
水性カルシウムスラリーは、典型的には、カルシウム塩などのカルシウムカチオンを水に接触させて水性カルシウムスラリーを形成することによって形成される。
【0020】
洗濯洗剤
洗濯洗剤は、典型的には、洗浄性界面活性剤を含む。洗濯洗剤は、キレート剤を含んでよく、かつ任意に他の洗剤成分を含んでもよい。洗剤成分については、以下でより詳細に記載する。
【0021】
好ましくは、洗浄性界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホネートを含む。
【0022】
好適なキレート剤は、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)及びその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン)酸(DTPMP)及びその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(DDTMP)及びその塩、アミノトリス(メチレンホスホン)酸(ATMP)及びその塩、ニトリロテトラ(メチレンホスホン)酸(NTMP)及びその塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)及びその塩、テトラエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(TDTMP)及びその塩、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(HDTMP)及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)及びその塩、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)及びその塩、ジスルホン化カテコール、メチルグリシン二酢酸(MGDA)及びその塩、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)(GLDA)及びその塩、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、キレート剤は、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)及びその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン)酸(DTPMP)及びその塩から選択される。
【0024】
洗濯洗剤は、アミラーゼ酵素を含み得る。
【0025】
洗濯洗剤は、クエン酸を含み得る。
【0026】
試験法
染み除去の測定:
任意の洗浄サイクルによって達成される染み除去性能の程度は、洗浄前と後との間の染み及び織物の背景の色差として計算される。初期色差は、初期の視認性(INi、式1)として定義され、一方、最終的な視認性(FNi、D式2)は、洗浄後の染みと、織物の初期背景との間の色差を指す。所与の染みiについての染み除去指数(SRIi)は、式3に示すとおり計算される。
【0027】
【実施例】
【0028】
実施例1:洗浄液に注入されたカルシウムの関数としての布地処理プロセスの染み除去性能の比較。
全ての実験は、Electrolux W565Hプログラマブルフロントローディング洗濯機(Front-Loading Washing Machine、FLWM)を使用して実施される。全ての洗濯機は、90℃綿サイクルを実施することによって、使用前に洗浄される。次に、全ての実験は、40℃で45分間の洗浄サイクルを使用して、実施され、この主洗浄時間は30分間である。全ての場合において、バラスト負荷は、60%のニット綿見本(50cm×50cm)と、40%のポリコットン布地見本(50cm×50cm)とで構成される。更に、2つの内部反復を有する、油脂、酵素、微粒子、及び着色飲料タイプの汚れからなる染みのセットを、各洗浄に添加する。この染みのセットは、分析される染みを含有する2つのニット綿見本(20cm×20cm)で構成される。全ての見本は、Warwick Equest Ltd(UK)により供給される。全ての実験は、表1に示す組成の液体洗剤配合物で実施された(TTWは、それにより形成された水性洗浄液中のそれぞれの成分)。全ての実験で使用される水の硬度は、中程度(約8gpg)である。
【0029】
【0030】
全ての場合において、前述の組成物を用いた3kgのバラスト負荷、4SBL汚れシート(WFK Tesgewebe GmbH、ドイツ)、及び分析対象の染みを、最初に洗濯機のドラムに添加する。次に、比較洗浄プロセス(実験A)において、必要な投与量の液体洗剤配合物(38g)を小さなプラスチック容器に添加し、洗濯機のドラムに導入してから、洗浄サイクルを開始する。
【0031】
本発明の洗浄プロセスでは、バラスト負荷、SBL汚れシート、染み、及び必要な投与量の液体洗剤配合物(38g)を、あらかじめ比較洗浄プロセスについて実施した後、22gpg(ガロン当たりのグレイン)当量の濃度を達成するのに必要な濃度を有する20mLのCaCl2.2H2O水溶液を、各実験(B~E)について以下に記載されるように異なる時点で注入した。
B)t=0分で配合物から送達されるカルシウム(比較例)
C)洗浄時間t=5分でのカルシウム注入(比較例)
D)洗浄時間t=15分でのカルシウム注入(本発明)
E)洗浄時間t=25分でのカルシウム注入(本発明)
【0032】
CaCl2.2H2Oの注入は、洗濯機の引き出しを介して行い、続いて0.4Lの水を添加して、残留化学物質が機械の引き出しに残らないようにした。全ての実験は、4つの外部反復を考慮して実施された。各サイクルが終了した後、バラスト負荷及び染みを洗濯機から取り出し、Electrolux T3290ガス乾燥機に導入し、そこで低温で30分間乾燥させる。次いで、次の実験を開始する前に、4分間のすすぎサイクルを用いて、全ての洗濯機がすすぎ洗いされる。
【0033】
表2は、各実験について得られた染み除去性能の結果を示す。染み除去指数(Stain Removal Index、SRI)は、D65標準イルミナント条件下での画像解析を介して計算される。提示された結果は、各実験条件での2つの内部反復、及び4つの外部反復の平均である。
【0034】
【0035】
【0036】
表2及び表3において、油脂染み(ベーコン油脂、調理済みビーフ及び化粧品)について観察された染み除去における利点は、カルシウム塩が洗浄液に注入された時間に関係なく、全ての本発明の洗浄プロセス(実験D~E)において観察され得る。しかしながら、擦り付けられた草などの、洗浄液中に存在する硬度のレベルによって悪影響を受ける一部の染みについて観察された染み除去の程度の損失を軽減するためには、洗浄中のカルシウム塩の注入の遅延(実験E)が必要である。
【0037】
実施例2:短い洗浄サイクルにおけるカルシウム存在下での布地処理プロセスの染み除去性能の比較
全ての実験は、Peerless Systemsプラットフォームで行われる中規模ハイスループット機器で実施される。これは、並行して動作するGanguli and Eenderbug(1980)によって使用されたものと同様の三枚羽根ポスト攪拌器を備えた容量1Lの10個の容器からなる。容器の充填、洗浄、排水、及びすすぎがシステムによって自動的に行われるように、機器を自動化する。
【0038】
初めに、洗浄プロセスを開始する前に、目標洗浄温度(30℃)の水道水0.25Lを機器の容器の各々に添加することによって容器の洗浄が実施される。1800度/秒の一定の撹拌下で2分間、容器内に水を入れておいた。洗浄段階で使用した水を排水した後、目標洗浄温度(30℃)の水道水1Lを各容器に添加する。次に、表4に示す必要な投与量(3.8g)の液体潜在配合物(TTWは、それにより形成された水性洗浄液中のそれぞれの成分)を各容器に添加し、1800度/秒の一定撹拌下で2分間撹拌する。この時点で、50gのニット綿見本(5cm×5cm)及び分析対象の染みを含む試験物品(10gの7cm×7cmのニット綿見本)を含むバラストを手作業で各容器に加え、洗浄プロセスを開始する。
【0039】
洗浄プロセス(実験A)では、洗浄プロセス中にカルシウムを添加することなく、主洗浄を12分間行う。他の洗浄プロセス(実験B~D)では、洗浄中に22gpg(ガロンあたりのグレイン)を達成するために必要な濃度を有する10mLのCaCl2.2H2O水溶液を、以下に記載されるように異なる時間に注入する。
B)洗浄時間t=0分でカルシウムが注入される(比較例)
C)洗浄時間t=2分でカルシウムが注入される(比較例)
D)洗浄時間t=6分でカルシウムが注入される(本発明)
【0040】
全ての場合において、主洗浄は、30℃、1800度/秒の一定撹拌下で12分間行われ、続いて15分間30℃ですすぐ。全ての場合において、各洗浄サイクルが終了した後、バラスト負荷及び染みを容器から取り出し、個別の乾燥バッグに導入する。その後、Electrolux T3290ガス乾燥機内において、織物を低温で30分間乾燥させる。染み除去の程度は、洗浄前後の染みと織物のバックグラウンドとの間の色差として、式1~式3に記載されるように計算される。
【0041】
【0042】
表5は、各実験について得られた染み除去性能の結果を示す。染み除去指数(SRI)は、D65標準イルミナント条件下での画像解析を介して計算される。提示された結果は、各実験条件での2つの内部反復、及び4つの外部反復の平均である。
【0043】
【0044】
表5では、ベーコン油脂及び調理済みビーフの染み除去における利点は、カルシウムが洗浄液に注入される時間(実験B~D)に関係なく観察されているが、擦り付けられた草などの硬度感受性染みで観察された弱点を軽減するためには、カルシウムの注入を遅延(実験D)させることが必要であることを示している。これらの結果は、前に表3で記載された傾向と一致している。
【0045】
実施例3:長い洗浄サイクルにおけるカルシウム塩存在下での布地処理プロセスの染み除去性能の比較
全ての実験は、Peerless Systemsプラットフォームで行われる中規模ハイスループット機器で実施される。これは、並行して動作するGanguli and Eenderbug(1980)によって使用されたものと同様の三枚羽根ポスト攪拌器を備えた容量1Lの10個の容器からなる。容器の充填、洗浄、排水、及びすすぎがシステムによって自動的に行われるように、機器を自動化する。
【0046】
初めに、目標洗浄温度(30℃)の水道水0.25Lを機器の容器の各々に添加することによって洗浄プロセスを開始する前に、容器の洗浄が実施される。1800度/秒の一定の撹拌下で2分間、容器内に水を入れておいた。洗浄段階で使用した水を排水した後、目標洗浄温度(30℃)の水道水1Lを各容器に添加する。次に、表4に示す必要な投与量(3.8g)の液体洗剤配合物(TTWは、それにより形成された水性洗浄液中のそれぞれの成分)を各容器に添加し、1800度/秒の一定撹拌下で2分間撹拌する。この時点で、50gのニット綿見本(5cm×5cm)及び分析対象の染みを含む試験物品(10gの7cm×7cmのニット綿見本)を含むバラストを手作業で各容器に加え、洗浄プロセスを開始する。
【0047】
比較例の洗浄プロセス(実験A)では、洗浄プロセス中に塩を添加することなく、主洗浄を90分間行う。本発明の洗浄プロセス(実験B~E)では、洗浄中に22gpg(ガロンあたりのグレイン)を達成するために必要な濃度を有する10mLのCaCl2.2H2O水溶液を、以下に記載されるように異なる時間に注入する。
B)洗浄時間t=0分でカルシウムが注入される(比較例)
C)洗浄時間t=14分でカルシウムが注入される(本発明)
D)洗浄時間t=45分でカルシウムが注入される(本発明)
E)洗浄時間t=75分でカルシウムが注入される(本発明)
【0048】
全ての場合において、主洗浄は、30℃、1800度/秒の一定撹拌下で90分間行われ、続いて15分間30℃ですすぐ。全ての場合において、各洗浄サイクルが終了した後、バラスト負荷及び染みを容器から取り出し、個別の乾燥バッグに導入する。その後、Electrolux T3290ガス乾燥機内において、織物を低温で30分間乾燥させる。染み除去の程度は、洗浄前後の染みと織物のバックグラウンドとの間の色差として、式1~式3に記載されるように計算される。
【0049】
表6は、各実験について得られた染み除去性能の結果を示す。染み除去指数(SRI)は、D65標準イルミナント条件下での画像解析を介して計算される。提示された結果は、各実験条件での2つの内部反復、及び4つの外部反復の平均である。
【0050】
【0051】
表6は、ベーコン油脂、焦がしバター、及び化粧品の汚れについて、洗浄中のカルシウムの添加が染み除去効果をもたらすことを示している。この利点は、カルシウムが洗浄中に注入される時間に関係なく、全ての本発明の洗浄プロセス(実験C~E)について観察される。
【0052】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。