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特許7328479重症熱性血小板減少症候群ウイルスの外膜糖タンパク質に結合する抗体及びその用途
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  • 特許-重症熱性血小板減少症候群ウイルスの外膜糖タンパク質に結合する抗体及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】重症熱性血小板減少症候群ウイルスの外膜糖タンパク質に結合する抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230809BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230809BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230809BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230809BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230809BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 S
A61P31/14
C07K16/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
G01N33/53 V
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018549916
(86)(22)【出願日】2017-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2017003156
(87)【国際公開番号】W WO2017164678
(87)【国際公開日】2017-09-28
【審査請求日】2020-02-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2016-0034727
(32)【優先日】2016-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】516308858
【氏名又は名称】インスティチュート パストゥール コリア
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョリ
(72)【発明者】
【氏名】オ,ミョン-ドン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ワン ボム
(72)【発明者】
【氏名】キム,スンテク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ジ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】コ,メヒュン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】飯室 里美
【審判官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】Chinese Journal of Virology, 2015 Jan, vol.31, no.1, pp.18-23
【文献】“Product Name Anti- G2 (SFTS virus, strain HN6), Catalog No IT-017-005M2”(data sheet), Immune Technology Corp. [online], 12013.02.19 uploaded, <URL: http://immune-tech.com/images/IT-017-005M2.pdf>, [2021.03.22 retrieved] which retrieved from the internet: <URL: http://immune-tech.com/product_info.php?products_id=1405>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K16/00-16/46
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)の外膜糖タンパク質Gcに特異的に結合する抗体であって、以下を含む抗体
列番号21の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号41の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号61の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号26の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号46の重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、及び、配列番号66の重鎖相補性決定領域3(HCDR3)。
【請求項2】
前記抗体は、以下を含む、請求項1に記載の抗体
列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖、及び、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖。
【請求項3】
前記配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列;並びに、
前記配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列
を含む核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含むベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体を含むSFTSV診断または検出用組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体を含むSFTSV診断または検出用キット。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体を含む薬学的組成物。
【請求項9】
SFTSを予防または治療するために用いられる、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
SFTSVを診断、予防または治療するために用いられる、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体を用いた、SFTSV診断用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome、SFTS)の病原体である重症熱性血小板減少症候群ウイルス(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus、SFTSV)を検出または診断し、SFTSを治療するために使用されるSFTSVの外膜糖タンパク質に特異的に結合する抗体に関する。
【0002】
本出願は、2016年3月23日出願の韓国特許出願第10-2016-0034727号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0003】
〔背景技術〕
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は新種のダニ媒介感染病疾患であり、主にフタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)またはタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)類によって媒介される重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)によって発生する。2009年中国でSFTSが最初報告され、2012年日本及び韓国でも疾患及びウイルスが報告されている。SFTSの主な症状は発熱、腹痛、吐逆、嘔吐、血小板減少症または白血球減少症などであり、重度の場合、多発性臓器不全が発生して死亡に至ることもある。SFTSは、中国、日本または韓国で毎年発生しているが、致死率が非常に高く、春から夏までの期間に主に発生する。SFTSVの野生宿主としてはセスジネズミが有力であり、中国の主要発病地ではヤギ、牛、犬またはニワトリなどの家畜から血清抗体が高い比率で発見されたことから、家畜が宿主の役割をする可能性もあると推定される。感染者の体液を媒介にしたヒト-ヒト感染が報告されているが、SFTSを効果的に治療できると証明された治療剤または予防法は未だない。
【0004】
SFTS感染如何を確認するため、血液内の抗SFTSV抗体価を確認する方法がある。このとき、抗SFTSV抗体価は主にSFTSVのNタンパク質に対する抗体で測定する。前記抗体はSFTSVが死滅したときに露出するSFTSV内部タンパク質に対する抗体である。したがって、従来の抗SFTSV抗体価の確認を通じた診断は、生きて活発に活動するウイルスの存在を正確に把握できないという限界を有する。SFTSを診断する他の方法であるSFTSVのRNA配列をヒト由来検体で検出する方法は、高い正確度を有すると知られているが、検体から良質のウイルスRNAを分離し難いという問題がある。
【0005】
一方、国際公開WO2015/053455A1公報に、SFTSVに対する抗体の検出方法が開示されているが、具体的に抗体がSFTSVのどの抗原に結合するか及びこのような抗体の中和活性については全く開示されていない。
【0006】
したがって、従来の死滅した状態のSFTSVタンパク質量を測定する酵素免疫反応診断方法の不正確なウイルス力価測定方法、または従来の血液内の低純度のウイルスRNA分離方法の限界を克服して、SFTSVを効果的に検出、分離または精製できる抗体または方法の開発が求められている実情である。
【0007】
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、SFTSVを効果的に検出または診断してSFTSを治療できる抗体を提供することを目的とする。また、本発明は、SFTSV、特にSFTSVの外膜糖タンパク質に特異的に結合する抗体を提供することを他の目的とする。
【0008】
〔課題を解決するための手段〕
上記の課題を達成するため、本発明は、SFTSV、特にその外膜糖タンパク質に特異的に結合する新規な抗体を提供する。また、本発明は、前記抗体を使用してSFTSVを効果的に検出、分離または精製する方法を提供する。また、本発明は、前記抗体を使用してSFTSを効果的に予防または治療する方法を提供する。
【0009】
本発明者らは従来のSFTSV診断方法の限界を克服するため、鋭意研究に努めた結果、SFTSVの外膜糖タンパク質、特にGcまたはGnに特異的に結合する新規な抗体を見つけ、それを用いてSFTSVを効果的に検出できることを見出して本発明の完成に至った。
【0010】
SFTSVはマイナス一本鎖RNAウイルスであって、ブニヤウイルス(Bunyaviridae)とフレボウイルス(Phlebovirus)属に属する。前記ウイルスは直径80~100nmの球状ウイルスであり、フタトゲチマダニを媒介体にする。前記ウイルスの遺伝体はlarge(L)、Medium(M)及びsmall(S)セグメントから構成され、これらはRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、糖タンパク質前駆体(M)、糖タンパク質N(Gn)、糖タンパク質C(Gc)、ヌクレオカプシドタンパク質(NP)及び非構造タンパク質(NSs)の6つのタンパク質をコーディングする。
【0011】
本発明において、「抗体」は完全な抗体、及びその任意の抗原結合部分または一本鎖を含むことができる。天然発生「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された、少なくとも2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3つのドメインからなる。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は1つのドメインCLからなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域と、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域とに細分化される。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのFRからなり、これらはアミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配列される。重鎖及び軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
【0012】
本発明は、SFTSVの外膜糖タンパク質、特にSFTSVの外膜糖タンパク質GcまたはGnに特異的に結合する抗体を提供する。望ましくは、前記抗体は下記のような特定のアミノ酸配列を含むか、又は、それからなり得る。また、重鎖と軽鎖の定常領域で自明な一部変形の場合、同一または類似の結合特異性を有する範囲で本発明の範疇に含まれる。また、それぞれのこれら抗体はSFTSVの外膜糖タンパク質に結合できるため、VH、VL、全長軽鎖及び全長重鎖配列(アミノ酸配列及び前記アミノ酸配列をコーディングするヌクレオチド配列)は混合及びマッチングされて本発明の他のSFTSVの外膜糖タンパク質結合抗体を産生することができる。
【0013】
一実施例において、本発明のGc外膜糖タンパク質に結合する抗体クローン(Ab1~5)のアミノ酸配列を下記表1~8に示した。
【0014】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列
【0015】
【表1】
【0016】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域1(LFR1またはHFR1)のアミノ酸配列
【0017】
【表2】
【0018】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域1(LCDR1またはHCDR1)のアミノ酸配列
【0019】
【表3】
【0020】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域2(LFR2またはHFR2)のアミノ酸配列
【0021】
【表4】
【0022】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域2(LCDR2またはHCDR2)のアミノ酸配列
【0023】
【表5】
【0024】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域3(LFR3またはHFR3)のアミノ酸配列
【0025】
【表6】
【0026】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域3(LCDR3またはHCDR3)のアミノ酸配列
【0027】
【表7】
【0028】
Gc外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域4(LFR4またはHFR4)のアミノ酸配列
【0029】
【表8】
【0030】
一実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gcに特異的に結合する抗体は、配列番号1、2、3、4及び5からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖、並びに配列番号6、7、8、9及び10からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。このような特定の配列からなる抗体は、外膜糖タンパク質Gcに特異的且つ効果的に結合することができ、SFTSVの検出に非常に有用に使用できる。
【0031】
他の実施形態において、望ましくは、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gcに特異的に結合する抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号8のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、並びに配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体として提供できる。
【0032】
さらに他の実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gcに特異的に結合する抗体は、配列番号21、22、23、24及び25からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号41、42、43、44及び45からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号61、62、63、64及び65からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号26、27、28、29及び30からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号46、47、48、49及び50からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、並びに配列番号66、67、68、69及び70からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むことができる。
【0033】
さらに他の実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gcに特異的に結合する抗体は、配列番号21の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号41の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号61の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号26の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号46の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号66の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号22の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号42の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号62の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号27の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号47の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号67の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号23の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号43の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号63の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号28の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号48の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号68の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号24の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号44の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号64の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号29の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号49の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号69の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;または配列番号25の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号45の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号65の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号30の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号50の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号70の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体として提供できる。
【0034】
一実施例において、本発明のGn外膜糖タンパク質に結合する抗体クローン(Ab6~10)のアミノ酸配列を下記表9~16に示した。
【0035】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列
【0036】
【表9】
【0037】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域1(LFR1またはHFR1)のアミノ酸配列
【0038】
【表10】
【0039】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域1(LCDR1またはHCDR1)のアミノ酸配列
【0040】
【表11】
【0041】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域2(LFR2またはHFR2)のアミノ酸配列
【0042】
【表12】
【0043】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域2(LCDR2またはHCDR2)のアミノ酸配列
【0044】
【表13】
【0045】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域3(LFR3またはHFR3)のアミノ酸配列
【0046】
【表14】
【0047】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖の相補性決定領域3(LCDR3またはHCDR3)のアミノ酸配列
【0048】
【表15】
【0049】
Gn外膜糖タンパク質に結合する抗体の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域4(LFR4またはHFR4)のアミノ酸配列
【0050】
【表16】
【0051】
一実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gnに特異的に結合する抗体は、配列番号81、82、83、84及び85からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖、及び配列番号86、87、88、89及び90からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含むことができる。このような特定の配列からなる抗体は、外膜糖タンパク質Gnに特異的且つ効果的に結合することができ、SFTSVの検出に非常に有用に使用できる。
【0052】
他の実施形態において、望ましくは、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gnに特異的に結合する抗体は、配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号89のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体、並びに配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖及び配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗体として提供できる。
【0053】
さらに他の実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gnに特異的に結合する抗体は、配列番号101、102、103、104及び105からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号121、122、123、124及び125からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号141、142、143、144及び145からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号106、107、108、109及び110からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号126、127、128、129及び130からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、並びに配列番号146、147、148、149及び150からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含むことができる。
【0054】
さらに他の実施形態において、本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質Gnに特異的に結合する抗体は、配列番号101の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号121の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号141の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号106の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号126の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号146の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号102の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号122の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号142の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号107の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号127の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号147の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号103の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号123の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号143の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号108の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号128の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号148の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;配列番号104の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号124の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号144の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号109の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号129の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号149の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体;または配列番号105の軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号125の軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、配列番号145の軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、配列番号110の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号130の重鎖相補性決定領域1(HCDR2)、及び配列番号150の重鎖相補性決定領域1(HCDR3)を含む抗体として提供できる。
【0055】
一実施形態において、本発明の抗体は、上述した抗体を含めて、上記表1または表9に示された重鎖及び軽鎖を含む抗体と相同性のあるアミノ酸を含む抗体を含むことができる。また、本発明の抗体は、前記LCDR1、LCDR2及びLCDR3配列を含む軽鎖可変領域、並びにHCDR1、HCDR2及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域を含み、これらCDR配列のうち1つ以上は本明細書に記載された抗体またはその保存的変形に基づいた特定アミノ酸配列を有し得る。また、本発明の抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質GcまたはGn結合抗体の機能的特性を有する抗体であり得、表1または表9に示された重鎖及び軽鎖を含む抗体と同じエピトープに結合する抗体であり得る。また、本発明の抗体は、変形された抗体を操作するための出発物質として本明細書に記載された1種以上の軽鎖または抗体配列を有する抗体を使用して製造され、出発抗体から一部変更された特性を有する抗体を全て含むことができる。
【0056】
本発明において、前記抗体は、抗体の特性を改善するために軽鎖または重鎖内のフレームワーク領域が変形されたものを含むことができる。また、前記抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質に対し、少なくとも1×10-1、1×10-1、1×10-1、1×1010-1または1×1011-1の親和定数(K)を有し得る。
【0057】
また、本発明の抗体は、SFTSV外膜糖タンパク質に特異的に結合する完全ヒト抗体であり得る。これはキメラ抗体などと比べると、ヒト対象体に投与したとき、より減少した抗原性を有し得る。ヒト抗体は、抗体の可変領域または全長鎖をヒト胚線(germline)兔疫グロブリン遺伝子を使用したシステムから収得した場合、特定胚線配列の産生物であるか、若しくは、それから誘導された重鎖可変領域、軽鎖可変領域、全長重鎖または全長軽鎖を含むことができる。また、本発明の抗体は、抗原性を有する非免疫化(de-immunized)抗体であり得る。
【0058】
また、本発明において、抗体は二重特異的または多重特異的抗体であり得る。本発明の抗体またはその抗原-結合断片は、2つ以上の相異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異的分子であり得る。
【0059】
一実施形態において、本発明の抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質に特異的に結合する単一クローン抗体であり得る。例えば、本発明の抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質に特異的に結合するヒトまたはヒト化単一クローン抗体、若しくは、キメラ抗体であり得、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域を含むことができる。また、本発明の抗体は、一本鎖抗体であり得、Fab断片であり得、scFv(single-chain variable fragment)であり得、IgGアイソタイプであり得るが、scFvであることが望ましい。
【0060】
本発明において、単一クローン抗体は通常の単一クローン抗体方法によって産生でき、合成された抗体遺伝子を抗体発現用ベクター、望ましくはpcDNA、pCI、pCMVまたはpCEP4などに挿入して発現及び精製することができる。また、Bリンパ球のウイルス性または発癌性形質転換を用いることができ、マウスシステムを用いて製造されたマウス単一クローン抗体の配列に基づいて製造することができる。例えば、標準分子生物学技術を用いて、重鎖及び軽鎖兔疫グロブリンをコーディングするDNAをマウスハイブリドーマから得て、それと共に非マウス兔疫グロブリン配列を含むようにすることができる。
【0061】
一実施形態において、本発明は、アミノ酸がそれぞれのヒトVHまたはVL胚線配列からの抗体フレームワークに置換されたフレームワークを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0062】
他の実施形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4及び5からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖を含むポリペプチド、並びに配列番号6、7、8、9及び10からなる群より選択されたいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含むポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。一具現例において、前記核酸は、配列番号161、162、163、164、165、166、167、168、169及び170からなる群より選択されたいずれか1つの核酸配列であり得、これを下記表17に示した(表において、太字で示した部分は軽鎖可変領域(VL)であり、下線で示した部分は重鎖可変領域(VH)である)。
【0063】
【表17】
【0064】
さらに他の実施形態において、本発明の抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質に対する抗体特異性が維持される範囲内で、上記表1~表16に示されたアミノ酸配列のうちいずれか1つと少なくとも90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。また、本発明の前記抗体を発現可能な核酸は、SFTSVの外膜糖タンパク質に対する抗体特異性が維持される範囲内で、上記表17に示された核酸配列のうちいずれか1つと少なくとも90%、95%、97%、98%または99%の配列同一性を有する核酸配列を含むことができる。
【0065】
また、本発明は、前記核酸を含むベクター及び宿主細胞を提供する。本発明のベクターは、前記SFTSVの外膜糖タンパク質Gcに結合する抗体のアミノ酸配列をコーディングする核酸、またはGnに結合する抗体のアミノ酸をコーディングする核酸を含むことができる。または、本発明のベクターは、上記の2種の核酸を全て含むことで、二重特異的抗体を発現することができる。
【0066】
一実施形態において、本発明は、(1)本発明の抗体の重鎖をコーディングする第1組換えDNA切片、及び(2)本発明の抗体の軽鎖をコーディングする第2組換えDNA切片を含む宿主細胞を提供する。他の実施形態において、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖それぞれをコーディングする組換えDNA切片を含む宿主細胞を提供する。一部実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト単一クローン抗体またはその抗原結合断片である。
【0067】
本発明のSFTSVの外膜糖タンパク質結合抗体をコーディングするポリヌクレオチドを発現させるため、多様な発現ベクターを使用することができる。哺乳動物宿主細胞から抗体を産生するため、ウイルス由来及び/または非ウイルス発現ベクターを使用できる。例えば、pcDNA、pCI、pCMVまたはpCEP4などのベクターと、HEK293、CHOまたはCHO-DG44などの宿主細胞を使用することができる。
【0068】
本発明の抗体を保有して発現する宿主細胞は、原核または真核細胞であり得る。例えば、前記宿主細胞はE.Coli、望ましくは、E.coli ER2738.HB2151、BL21などであり得、これらは本発明のポリヌクレオチドをクローニングして発現させるのに有用であり得る。また、他の微生物宿主として、バチルス、例えばバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、または他の腸内細菌、例えばサルモネラ(Salmonella)またはセラチア(Serratia)、若しくは多様なシュードモナス(Pseudomonas)種を使用できる。本発明の抗体を発現させるため、他の微生物、例えば酵母を使用でき、バキュロウイルスベクターと結合された昆虫細胞も使用できる。
【0069】
望ましい一実施形態において、本発明のSFTSV外膜糖タンパク質結合ポリペプチドを発現させて製造するとき、哺乳動物宿主細胞を使用することができる。例えば、内因性兔疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株または外因性発現ベクターを保有する哺乳動物細胞株が挙げられる。また、任意の動物またはヒト細胞であって、例えば、CHO細胞株、Cos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、HEK細胞株、形質転換されたB-細胞及びハイブリドーマを含む。また、兔疫グロブリンを分泌可能な多くの好適な宿主細胞株を使用でき、望ましくはHEK293、CHOまたはCHO-DG44を使用することができる。
【0070】
また、本発明は、本発明の1種以上のSFTSV外膜糖タンパク質結合分子(例えば、GcまたはGn結合抗体またはその抗原結合断片)を含むSFTSV診断用組成物を提供する。本発明の診断用組成物は、SFTSVの検出、分離または精製に有用に使用することができる。また、前記組成物は、SFTSVの診断に適した1種以上の他の製剤をさらに含むことができる。また、本発明は、本発明の抗体を使用してSFTSVを診断する方法を提供する。前記方法は、SFTSVの定量的/定性的検出または診断に使用することができる。具体的に、前記診断方法は、生物学的サンプル(例えば、血液、血清、細胞または組織)から、若しくは、SFTSが発生したか又は発生する危険のある対象から、SFTSVの外膜糖タンパク質及び/または核酸発現及びSFTSVの外膜糖タンパク質機能を決定する診断検定を含むことができる。本発明において、検出は定量及び/または定性分析を含み、存在/不存在の検出及びウイルス量(titer)の検出を含むものである。このような方法は当業界で公知であり、当業者であれば本願の実施のために適切な方法を選択することができる。
【0071】
本発明において、SFTSVの検出または診断は、抗原-抗体の複合体を検出する放射免疫分析、ウエスタンブロッティング、ELISA(Enzyme linked immunosorbent assay)または免疫蛍光分析などを通じて行うことができる。本発明において、抗原は放射能物質、酵素または蛍光物質などで標識することができる。
【0072】
一態様において、本発明の診断方法は、SFTSVの外膜糖タンパク質に対する抗体を磁石ビーズに結合させた複合体を用いることができる。具体的に、前記方法は、SFTSVの外膜糖タンパク質GcまたはGnに特異的な抗体を磁石ビーズに結合させた複合体を用いて、SFTSVをより効果的に検出、分離または精製することができる。前記SFTSV外膜糖タンパク質に対する抗体-磁石ビーズ複合体は、抗体の特性を用いて検体内に存在するSFTSVと結合するようになり、このとき磁力で磁石ビーズを引っ張れば、ウイルスと検体内の他の物質とを分離してウイルスを効果的に精製することができる。このようにして精製されたウイルスは不純物が除去されて、相対的にRNA分離が容易であり、それによって良質の精製結果データが得られる。また、磁石ビーズに吸着している状態のウイルスに他の抗体を用いた免疫化学反応をさらに行うことができ、それによって検体内に存在するSFTSVを迅速に確認することができる。図4にこのような診断方法を概略的に示した。
【0073】
また、本発明は、SFTSVの外膜糖タンパク質に結合する抗体を含むSFTSV診断用キットを提供する。前記キットは、上述した抗体のいずれか1つ以上及び抗原-抗体複合体検出用試薬を含むことができる。前記抗原-抗体複合体検出用試薬は、放射免疫分析、ELISAまたは免疫蛍光分析などで使用される試薬であり得る。
【0074】
例えば、前記免疫反応を検出するため、検出試薬は直接的またはサンドイッチ方式で間接的に標識することができる。直接的標識方法の場合、アレイなどに使用される血清試料はCy3またはCy5のような蛍光標識で標識される。サンドイッチ方式の場合、標識されていない血清試料を先に検出試薬が付着されたアレイと反応させて結合させた後、標的タンパク質を標識された検出抗体と結合させて検出する。サンドイッチ方式の場合、敏感度と特異性を高めることができ、pg/mLレベルまで検出可能である。その外に、放射能物質、発色物質、磁性粒子または高密度電子粒子などを標識物質として使用することができる。蛍光光度計は走査型共焦点顕微鏡を使用でき、例えばAffymetrix,Inc.またはAgilent Technologies,Incなどから入手できる。
【0075】
本発明のキットは、結合分析に必要な1つ以上の付加成分をさらに含むことができ、例えば結合バッファー、試料準備に必要な試薬、血液採取用注射器または陰性及び/または陽性対照群をさらに含むことができる。このような多様な検出試薬を含むことができる本願のキットは、分析形態によってELISA分析用、ディップスティックラピッドキット(dip stick rapid kit)分析用、マイクロアレイ用、遺伝子増幅用、または免疫分析用などで提供され、分析形態に合わせて適切な検出試薬を選別することができる。
【0076】
また、本発明は、本発明のSFTSV外膜糖タンパク質に結合する抗体を含む薬学的組成物を提供する。望ましくは、前記薬学的組成物は、SFTSの予防用または治療用で使用可能である。本発明の抗体は、SFTSVを中和してウイルスの増殖を遮断することで、SFTSを効果的に予防または治療することができる。
【0077】
本発明において、前記組成物は、SFTSV関連疾患の治療または予防に適した1種以上の他の製剤をさらに含むことができる。薬学的組成物に使用可能な担体は組成物の効果を向上させるか、組成物を安定化させるか、または組成物の製造を容易にすることができる。薬学的に許容される担体は、生理的に許容可能な溶媒、分散媒質、コーティング剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、等張化剤または吸収遅延剤などを含むことができる。
【0078】
本発明において、前記薬学的組成物は当業界で公知の多様な方法で投与でき、投与経路及び/または方式は所望の結果によって変わり得る。前記薬学的組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、腹膜内または皮下注射などの投与方式で投与することができる。投与経路によっては、活性化合物である抗体を酸の作用及び化合物を不活性化する他の自然条件から保護する物質でコーティングすることができる。
【0079】
本発明において、前記薬学的組成物は滅菌した流体であり得る。流体組成物の適当な流動性を維持するため、例えばレシチンのようなコーティング剤または界面活性剤などを使用できる。また、前記薬学的組成物は、等張化剤(例えば、糖、ポリアルコール、マンニトール、ソルビトール及び塩化ナトリウムなど)または吸収遅延剤(アルミニウムモノステアレートまたはゼラチンなど)を含むことができる。
【0080】
本発明において、前記薬学的組成物は、当業界で公知の通常実施される方法で製造でき、望ましくはGMP条件下で製造することができる。前記薬学的組成物は、SFTSV外膜糖タンパク質結合抗体の治療有効用量または効能用量を含むことができる。また、前記薬学的組成物のうち活性成分の投与量レベルは、患者に毒性を示さず、目的とする治療効果を達成するのに十分な量であり得る。
【0081】
本発明において、治療投与量は安全性及び効能が最適化されるように滴定することができる。本発明の抗体を全身投与する場合、投与量範囲は宿主体重1kg当り約0.0001~100mg、より一般的は0.01~15mgの範囲であり得る。例示的な治療法は、2週に1回、または1ヶ月に1回、または3ヶ月~6ヶ月毎に1回の全身投与を伴う。全身投与の一方法において、投与量は1~1000μg/mL、一部方法では25~500μg/mLの血漿抗体濃度に達するように調整できる。または、頻度を減らして投与することが求められる場合は、徐放製剤を通じて抗体を投与することができる。投与量及び頻度は患者の抗体半減期によって変わり得る。予防的用途では、相対的に少ない投与量を長期にわたって相対的に間隔を空けて投与することができる。
【0082】
また、本発明は、前記薬学的組成物を使用してSFTSを予防または治療する方法を提供する。前記予防または治療方法は、本発明の抗体を含む組成物の治療学的に有効な量の投与を含むことができる。「治療学的に有効な量」とは、SFTS疾患の予防または治療に有効な本発明の抗体またはこれを含む組成物の量を意味する。
【0083】
また、本発明は、SFTSV診断用組成物を製造するためのSFTSV外膜糖タンパク質結合抗体の用途を提供する。前記診断用組成物を製造するため、本発明の抗体またはそれを含む組成物は許容される担体などの追加成分を含むことができる。
【0084】
また、本発明は、SFTSV外膜糖タンパク質結合抗体の用途を提供する。SFTSVに特異的に結合する本発明の抗体は、SFTSV診断用で使用でき、SFTS疾患が発生したか又は発生する危険のある対象から、SFTSVの外膜糖タンパク質及び/または核酸発現、及び前記タンパク質の機能を決定する診断用途で使用できる。また、本発明の抗体は、SFTSが発生する危険があるか又は発生した対象に、SFTSVによって発病するSFTSの予防または治療用途で使用できる。
【0085】
〔発明の効果〕
本発明の抗体は、SFTSVの外膜糖タンパク質GcまたはGnに特異的に結合可能であるため、本発明の抗体を使用することでSFTSVを効果的に検出または診断でき、SFTSを治療することができる。
【0086】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕抗体クローンAb1~Ab10のアミノ酸配列を示した図である。
【0087】
図2〕SFTSV外膜糖タンパク質Gc及びGnに対し、精製されたscFv切片抗体のELISA分析結果を示した図である。これらデータは3回反復サンプルの平均±S.Dを示す。
【0088】
図3〕SFTSV感染の免疫蛍光分析結果(A)、及び蛍光強度測定結果(B)である。免疫蛍光分析結果から、SFTSV感染されたVero細胞がGnに対する抗体と反応することが見られ、Ab10は投与量依存的にウイルス感染を抑制することが見られた。Ab10はMAb4-5に比べてウイルス侵入に対する抑制能力が著しく優れた。
【0089】
図4〕抗体-磁石ビーズ複合体を用いてSFTSVを検出する方法を概略的に示した図である。
【0090】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述される実施例によって限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0091】
実施例1:細胞の準備
アフリカミドリザル腎臓由来のVero細胞を韓国細胞株銀行から購入し、2%熱不活性化されたウシ胎児血清(Gibco)及びペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco)を補充したロズウェルパーク記念研究所(Roswell Park Memorial Institute(RPMI))-1640培地(Welgene)で5%二酸化炭素雰囲気、37℃で培養した。
【0092】
実施例2:ウイルス菌株の準備
本実験で使用されたSFTSウイルスは、ソウル大学病院に入院して2012年に死亡した63歳女性患者の血清サンプルから分離したKF358691である[Kim KH、Yi J、Kim G、Choi SJ、Jun KI、Kim NH、et al.Severe fever with thrombocytopenia syndrome、South Korea、2012.Emerging infectious diseases.2013;19(11):1892-4.]。分離したウイルスをVero細胞の単一層に接種して5%二酸化炭素雰囲気、37℃で培養した。ウイルスをVero細胞で増殖させ、すべての実験はウイルス培養第三継代数(viral passage)で行われた。Reed-Muench法を用いてVero細胞で50%組織培養物感染投与量(TCID50)を滴定した。
【0093】
実施例3:組換えSFTSウイルス糖タンパク質及び単鎖可変切片抗体融合タンパク質の準備
本実験で使用されたSFTSウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列は既に報告されている[Kim KH、Yi J、Kim G、Choi SJ、Jun KI、Kim NH、et al.Severe fever with thrombocytopenia syndrome、South Korea、2012.Emerging infectious diseases.2013;19(11):1892-4.]。SFTSウイルス糖タンパク質をコーディングするDNA鎖を得るため、配列番号171のSFTSウイルス糖タンパク質のアミノ酸配列(GenBank Accession No:AGT98506、Gn糖タンパク質に対してアミノ酸20-452、Gc糖タンパク質に対してアミノ酸563-1035)に相応するヒトコドン最適化されたDNA配列を合成した(GenScript)。
【0094】
ヒト兔疫グロブリンG1(IgG1)Fc領域(Gc-Fc、Gn-Fc)又はヒトIgk-鎖定常領域(Gc-Ck、Gn-Ck)に融合した組換えSFTSウイルス糖タンパク質Gc及びGnを過剰発現させるため、SFTS糖タンパク質コーディング遺伝子を[Park S、Lee DH、Park JG、Lee YT、Chung J.A sensitive enzyme immunoassay for measuring cotinine in passive smokers.Clinica chimica acta;international journal of clinical chemistry.2010;411(17-18):1238-42.]、[Lee Y、Kim H、Chung J.An antibody reactive to the Gly63-Lys68 epitope of NT-proBNP exhibits O-glycosylation-independent binding.Experimental & molecular medicine.2014;46:e114.]に開示された方法によって準備した。
【0095】
まず、ヒト骨髄由来のcDNAライブラリ(Clontech Laboratories)から2種のプライマー(5’-GAGCCCAAATCTTGTGACAAAACTCAC-3’)及び(5’-GGATCCTCATTTACCCGGGGACAGGGAG-3’)を用いて、ヒトIgG1のFc領域を増幅させて得たDNA配列または合成されたヒトIgk-鎖の定常領域(UniProtKB/Swiss-Prot:P01834.1)を、追加される遺伝子配列のDNA3’側に位置するように変形した。追加される遺伝子配列はSfiI制限酵素を通じて遺伝子追加可能に変形されたpCEP4ベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0096】
抗体クローンは、各クローンのscFvコーディングDNAを使用して単鎖可変切片-ヒトIgG1 Fc領域融合タンパク質(scFv-Fc)の形態で生産された。その後、前記ベクターをポリエチレンイミン(Polysciences)を使用してHEK293F細胞(Invitrogen)に形質注入させ、形質注入された細胞を100U/Lペニシリン-ストレプトマイシンを含むFreeStyleTM 293発現培地に培養した。過剰発現された組換えSFTSウイルス糖タンパク質融合タンパク質を、タンパク質A/KappaSelectカラム及びAKTAピュアークロマトグラフィーシステムを使用した親和性クロマトグラフィー(GE Healthcare)を通じて精製した。
【0097】
実施例4:抗体ライブラリ構成及びバイオパニング(biopanning)
Ficoll-Paque溶液(GE Healthcare)を使用してSFTSから回復した患者の末梢血単核細胞を収集した。全体RNAをTRIzol試薬(Invitrogen)を使用して分離し、オリゴ(dT)プライミング(priming)と共に、SuperScriptIII第一鎖cDNA合成キット(Invitrogen)を使用して全体RNAからcDNAを合成した。前記cDNAを使用して、pComb3XSSファージミド(phagemid)ベクター使用してヒト単鎖可変切片(scFv)抗体のファージディスプレイライブラリを製作した。そして[Barbas CF、Burton DR、Scott JK、Silverman GJ.Phage display:a laboratory manual:CSHL Press;2004.]に記載されたように、ライブラリからscFvクローンを選択するために4ラウンドのバイオパニングを行った。バイオパニングの各ラウンド毎に、組換えSFTSウイルス糖タンパク質GcまたはGnヒトIgG1 Fc領域融合タンパク質(Gc-Fc、Gn-Fc)3μgを、メーカーの指示に従って5×10個の磁気性ダイナビーズ(Dynabeads)M-270エポキシビーズ(Invitrogen)のコーティングに使用した。そして、タンパク質と結合されたビーズはバイオパニング手順で使用した。
【0098】
実施例5:SFTSウイルスに対する単鎖可変切片抗体のスクリーニング
SFTSウイルス糖タンパク質に結合する個別的な抗体クローンを選択するため、バイオパニングの最後のラウンドからファージクローンを選択し、ファージ酵素免疫分析法のためにscFv-ディスプレイファージを製造した。マイクロタイタープレート(Corning)を一晩中4℃でウェル当り100ngの組換えGc、GnヒトIgk鎖定常領域融合タンパク質(Gc-Ck、Gn-Ck)でコーティングした。前記ウェルを37℃で1時間、100μlのPBS内3%(w/v)BSAで遮断し、37℃で2時間ファージを含む50μlの培養物上清液で培養して、150μlのPBS内0.05%(v/v)Tween20で3回洗浄した。その後、遮断バッファー(1:5000)に希釈された50mlのホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)-結合された抗M13抗体(GE Healthcare)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間培養した。150μlの0.05%PBSTで3回洗浄した後、50μlの2,2-アジノ-ビス-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)基質溶液(Pierce)を各ウェルに添加して室温で30分間培養した。その後、各ウェルの吸光度をマイクロプレートリーダー(Labsystems)を使用して405nmで測定した。
【0099】
実施例6:中和分析
SFTSウイルス特異的scFv-Fc融合抗体(100μl/ml)を系列希釈して0.01μl/mlまで10倍ずつ減少させた。各濃度のscFvsを100 TCID50 SFTSウイルス(菌株KF358691)の同じ体積に混合し、37℃で1時間培養した。その後、前記ウイルス-抗体混合物を8-ウェル共焦点顕微鏡チャンバ内のVero細胞の単一層に移し、37℃で1時間培養した。ウイルス-抗体混合物を除去した後、サンプルを5%二酸化炭素雰囲気、37℃で、2%FBS及び抗生剤が含まれたRPMI-1640培地で培養した。8-ウェル共焦点顕微鏡チャンバ内のVero細胞は免疫蛍光分析(IFA)のために使われた。すべての実験は3回行われ、相対的な中和効果は陽性対照群としてMAb4-5[Xiling Guo et al.A human antibody neutralizing SFTS virus、an emerging hemorrhagic fever virus、2013.Clin.Vaccine Immunol.2013;20(9):1426-32).]及び陰性対照群として抗ニューカッスル病ウイルス(NDV)抗体と比べてそれぞれ測定した。
【0100】
実施例7:免疫蛍光分析(IFA)及び蛍光強度測定
相対的な中和効果は免疫蛍光分析(IFA)を使用して測定した。Ab10、MAb4-5(陽性対照群)、抗NDV(陰性対照群)があるか又はないウイルス-抗体混合物で処理されたか又は処理されていない細胞を2日間培養した。前記細胞を室温で1時間リン酸塩バッファー食塩水(PBS)で4%パラホルムアルデヒドで固定させた。スライドを1%ウシ血清アルブミン(BSA)内の0.1%トリトンX-100で遮断及び透過させた後、一晩中4℃で抗SFTSウイルス糖タンパク質GnクローンAb6抗体(5μl/ml)とともに培養した。細胞を洗浄してフルオレセインイソチオシアネート(FITC)-結合された抗ヒトIgG(Pierce)で室温で1時間培養した。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)は核を染色するのに使用した。サンプルを共焦点顕微鏡(Leica、Buffalo Grove、IL、USA)で実験した。蛍光信号強度はコンピューター補助Leica application suite advanced fluorescence(LAS AF)を使用して測定した。顕微鏡写真は×10/0.3レンズを使用して各スライドの5ヶ所領域で撮影し、分析のために3つの中間値を使用した。405nm青色ダイオードレーザーでDAPI信号を設定し、アルゴンイオンレーザーでAlexa 488を調整した。
【0101】
実施例8:SFTSウイルスに対するscFv抗体の産生
ヒトscFvライブラリを組換えSFTSウイルス糖タンパク質に対してバイオパニングした。4ラウンドのパニングの後、抗体クローンを酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)を通じてスクリーニングした。10個のクローン(Gcに対してAb1~5及びGnに対してAb6~10)がELISAを通じてSFTSウイルスを認識することが示された。前記ELISA分析の結果を図2に示し、各抗体クローンのアミノ酸配列を図1に示した。
【0102】
実施例9:SFTSウイルスに対する抗体の中和活性
SFTSウイルスに対して精製されたscFv-hFc抗体の中和活性は、Vero細胞で実験した。実験した10個のクローン(Ab1~Ab10)のうち、Ab10が最も強い中和活性を見せた。Ab10 scFv-hFc抗体(100μl/ml)を0.01μl/mlで10倍ずつ希釈し、100 TCID50 SFTSウイルス(KF358691菌株)に対して滴定した。SFTSV感染の免疫蛍光分析結果及び蛍光強度測定結果を図3に示した。
【0103】
免疫蛍光分析(IFA)において、Ab10(100μl/ml)で処理された細胞は最も少ないウイルス感染を見せ、中和活性は投与量依存的であった。すなわち、処理されるMAb 10の量が多いほどSFTSウイルスに感染された細胞の数が少なかった。MAb 4~5(陽性対照群)に比べて、Ab10は著しく高い中和活性を見せた。陰性対照群抗体は中和活性を全く見せなかった。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】抗体クローンAb1~Ab10のアミノ酸配列を示した図である。
図2】SFTSV外膜糖タンパク質Gc及びGnに対し、精製されたscFv切片抗体のELISA分析結果を示した図である。
図3】SFTSV感染の免疫蛍光分析結果(A)、及び蛍光強度測定結果(B)である。
図4】抗体-磁石ビーズ複合体を用いてSFTSVを検出する方法を概略的に示した図である。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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