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特許7328486溶存ガス除去方法および溶存ガス除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】溶存ガス除去方法および溶存ガス除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
B01D19/00 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019029395
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020131140
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591006003
【氏名又は名称】株式会社トリケミカル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】230116296
【弁護士】
【氏名又は名称】薄葉 健司
(72)【発明者】
【氏名】本宮 直志
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正幸
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/060820(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/141152(WO,A1)
【文献】特表2013-544647(JP,A)
【文献】特開2010-000503(JP,A)
【文献】実開昭64-052513(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0157983(US,A1)
【文献】特開昭57-105207(JP,A)
【文献】特表2007-533419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
C02F 1/20
C03B 5/225
F17D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンベA内の液体に存する溶存ガス量を基準値以下にする為の装置であって、
前記装置は容器B内の液体が前記ボンベA内に輸送される輸送路を具備してなり、
前記輸送路における略水平面方向に延在した輸送路には減圧室が構成されてなり、
前記減圧室における略水平面方向に延在した輸送路は、
前記輸送路を輸送される液体の平均深さHが0.5cm~0.3mを満たす事が出来るよう、かつ、前記輸送路を輸送される液体の幅方向の平均長Wが4cm以上を満たす事が出来るよう構成されてなり、
3.8≦W/Hである
装置。
【請求項2】
前記減圧室における略水平面方向に延在した輸送路は、
前記輸送路を輸送される液体の平均深さHが0.5cm~3cmを満たす事が出来るよう、かつ、前記輸送路を輸送される液体の幅方向の平均長Wが4cm以上を満たす事が出来るよう構成されてなる
請求項1の装置。
【請求項3】
前記輸送路は、更に、前記略水平面方向に延在した輸送路の出口側端に繋がった上下方向の輸送路を具備すると共に、前記略水平面方向に延在した輸送路の入口側端に繋がった上下方向の輸送路を具備する
請求項1又は請求項2の装置。
【請求項4】
前記減圧室の内形は略扁平箱形状であり、
前記略扁平箱形状減圧室における前記輸送液体の輸送方向の平均長L1と、前記略扁平箱形状減圧室における前記輸送方向に略直交する幅方向の平均長W1と、前記略扁平箱形状減圧室における前記輸送液体の深さ方向の平均長H1とが、L1>H1,W1>H1を満たすよう構成されてなる
請求項1~請求項3いずれかの装置。
【請求項5】
前記L1が13cm以上、前記W1が4cm以上、前記H1が0.5cm~0.3mである
請求項4の装置。
【請求項6】
0<H/S(前記Hは前記減圧室内を輸送される液体の深さの平均値で単位はcm。前記Sは前記減圧室内を輸送される液体と気相との界面の面積で単位はcm。)<0.039cm-1である
請求項1~請求項5いずれかの装置。
【請求項7】
前記装置は前記輸送路に接続される容器Bを更に具備してなる
請求項1~請求項6いずれかの装置。
【請求項8】
前記装置は前記輸送路に接続されるボンベAを更に具備してなる
請求項1~請求項7いずれかの装置。
【請求項9】
前記装置は容器B内の液体がボンベA内に充填される際に用いられる装置であって、
前記充填の作業中に液体中の溶存ガス量が基準値以下になる
請求項1~請求項6いずれかの装置。
【請求項10】
ガス供給装置と冷却装置とを更に具備してなり、
前記ガス供給装置は前記液体を輸送する為のものであり、
前記冷却装置は前記輸送路を冷却する為のものである
請求項1~請求項9いずれかの装置。
【請求項11】
ボンベA内の液体の溶存ガス量を基準値以下にする為の方法であって、
前記ボンベA内の液体は容器B内から輸送され、
前記輸送の途中において前記液体は平均深さが0.5cm~0.3mであるよう制御され、
前記液体の平均深さが0.5cm~0.3mの状態、かつ、3.8≦幅(前記輸送途中における液体の幅方向の平均長)W/深さ(前記輸送途中における液体の深さの平均深さ)Hである個所において、前記液体は減圧処理を受ける
方法。
【請求項12】
前記輸送の途中において前記液体は平均深さが0.5cm~3cmであるよう制御され、
前記液体の平均深さが0.5cm~3cmの状態、かつ、3.8≦幅(前記輸送途中における液体の幅方向の平均長)W/深さ(前記輸送途中における液体の深さの平均深さ)Hである個所において、前記液体は減圧処理を受ける
請求項11の方法。
【請求項13】
容器B内の液体がボンベA内に充填される際に用いられる方法であって、
前記充填の作業中に液体中の溶存ガス量が基準値以下になる
請求項11又は請求項12の方法。
【請求項14】
容器B内の液体をボンベA内に輸送する為の輸送路が冷却される
請求項11~請求項13いずれかの方法。
【請求項15】
請求項11~請求項14いずれかの方法であって、
前記方法は請求項1~請求項10いずれかの装置が用いられて処理される
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶存ガス除去技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボンベに充填された液体にはガスが含まれている。溶存ガスが邪魔にならない場合も有る。しかし、溶存ガスが問題を引き起こす事も多い。このような観点から、溶存ガス除去(脱気)処理が行われている。例えば、図3において、11は大型の原料容器であり、容器内に液体12が保存されている。13は円筒状ボンベである。原料容器11内にガスが加圧され、原料容器11内の液体12は円筒状ボンベ13内に輸送される。所定量の液体が円筒状ボンベ13内に充填された後、ポンプ(真空ポンプ)14で円筒状ボンベ13内のガスが排気される。円筒状ボンベ13内の減圧によって、円筒状ボンベ13内に充填されている液体に溶けている溶存ガスが気相側に移行する。すなわち、減圧処理によって、溶存ガスの除去が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-30065
【文献】特表2011-504803
【文献】特開2006-234650
【文献】特開2003-71206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶存ガスの除去には時間が掛かっていた。円筒状ボンベ13が、例えば断面積が0.015mで、高さが0.85mであり、この円筒状ボンベ13内に0.008mの液体が充填されていた場合を考える。ポンプ14による排気動作で、円筒状ボンベ13内の真空吸引(減圧)処理が行われる。この動作に要する時間は約1分程度である。しかし、前記排気動作の後、約6時間程度の静置が必用であった。この静置によって、溶存ガス(円筒状ボンベ13内に充填されている液体に溶けている溶存ガス)が気相側に移行する。この移行は徐々に進行するから、時間が掛かっていた。溶存ガス量を基準値(顧客(出荷先)が前記基準値を指定)以下にする為には、前記操作(排気→静置)は、通常、3回行われていた。そうすると、要する時間は約18時間である。溶存ガス量の更なる低下が顧客から求められた場合、前記操作が5回以上も必用な場合が有った。そうすると、要する時間は約30時間である。この為、ボンベに充填してから出荷までに約1日も掛かっていた。前記操作が自動的に行われるとは言え、場合によっては、人の配置が必要である。時間も人員も多く必要な為、コストが高く付いていた。
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は前記問題点を解決する事である。すなわち、溶存ガスの除去処理が短時間で終わる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記除去処理に長時間が掛かる原因の探求が鋭意推し進められて行った。その結果、円筒状ボンベ13下方部の位置に存在する液体に溶存しているガスが上方に向って移動して気相まで到達するには時間が掛かる事に気付いた。深さと時間との関係が直線的であるか否かは別として、減圧処理によって、深い(下方)位置の液体に溶存しているガスが気相まで上昇するに要する時間は、浅い(上方)位置の液体に溶存しているガスが気相まで上昇するに要する時間に比べて、長いであろう事は理解できるであろう。この因果関係は、言われれば、当然である。しかし、この事に気付いて対処しようとする者は誰もいなかった。本発明は斯かる現象(因果関係)に基づいてなされたものである。すなわち、下方位置の液体に溶存しているガスも除去されなければならないのであるから、脱気処理時の液相の深さを浅くしておけば良いであろう事に気付いたのである。
【0007】
本発明は斯かる知見に基づいてなされた。
【0008】
本発明は、
容器A内の液体に存する溶存ガス量を基準値以下にする為の装置であって、
前記装置は容器B内の液体が容器A内に輸送される輸送路を具備してなり、
前記輸送路は減圧室を具備してなる
装置を提案する。
【0009】
本発明は、前記装置であって、前記減圧室は、好ましくは、幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)W>深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)Hを満たすよう構成されてなる装置を提案する。
【0010】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、前記輸送路は略水平面方向に延在した輸送路を具備してなり、前記略水平面方向に延在した輸送路に前記減圧室が構成されてなる装置を提案する。
【0011】
本発明は、前記装置であって、前記輸送路は、好ましくは、更に、前記略水平面方向に延在した輸送路の一端側に繋がった上下方向の輸送路と、前記略水平面方向に延在した輸送路の他端側に繋がった上下方向の輸送路とを具備する装置を提案する。
【0012】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、前記Wは前記Hの1.3倍以上である装置を提案する。
【0013】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、前記Hは0.3m以下である装置を提案する。
【0014】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、前記Wは4cm以上である装置を提案する。
【0015】
本発明は、前記装置であって、前記減圧室の内形は、例えば略扁平箱形状であり、前記略扁平箱形状における前記輸送液体の輸送方向の平均長L1と、前記略扁平箱形状における前記輸送方向に略直交する幅方向の平均長W1と、前記略扁平箱形状における前記輸送液体の深さ方向の平均長H1とが、L1>H1,W1>H1を満たすよう構成されてなる装置を提案する。
【0016】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、前記L1が13cm以上、前記W1が4cm以上、前記H1が0.3m以下である装置を提案する。
【0017】
本発明は、前記装置であって、好ましくは、0<H/S(前記Hは前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚。前記Sは前記減圧室を輸送される液体と気相との界面の面積。前記H,Sの物理量の単位はcm。)≦0.0395である装置を提案する。
【0018】
本発明は、前記装置であって、前記装置は容器Bを更に具備してなる装置を提案する。
【0019】
本発明は、前記装置であって、前記装置は容器Aを更に具備してなる装置を提案する。
【0020】
本発明は、
容器A内の液体の溶存ガス量を基準値以下にする為の方法であって、
前記容器A内の液体は容器B内から輸送され、
幅(前記輸送途中における液体の幅方向の平均長)W>深さ(前記輸送途中における液体の深さの平均厚)Hである個所において、前記液体は減圧処理を受ける
方法を提案する。
【0021】
本発明は、
容器A内の液体の溶存ガス量を基準値以下にする為の方法であって、
前記容器A内の液体は容器B内から輸送され、
前記輸送途中において、前記液体は、その厚さが0.3m以下であるよう制御され、
前記液体の厚さが0.3m以下の状態において、前記液体は減圧処理を受ける
方法を提案する。
【0022】
本発明は、
容器A内の液体の溶存ガス量を基準値以下にする為の方法であって、
前記容器A内の液体は容器B内から輸送され、
前記輸送途中において、前記液体は、その厚さが0.3m未満であるよう制御され、
前記液体の厚さが0.3m未満の状態において、前記液体は減圧処理を受ける
方法を提案する。
【0023】
本発明は、前記方法が前記装置において実施される方法を提案する。
【発明の効果】
【0024】
溶存ガスの除去処理(脱気処理)が短時間で終わる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態になる装置(溶存ガス除去装置)の要部の概略図
図2】本発明の特長を表すグラフ
図3】従来の溶存ガス除去の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態が説明される。
【0027】
第1の発明は装置である。前記装置は、容器A内の液体に存する溶存ガス量を基準値以下にする為の装置である。前記基準値は前記液体を購入する顧客によって決められている。前記基準値は前記液体が使用される用途によって決まる。前記装置は、容器B内の液体が容器A内に輸送される輸送路を具備する。前記輸送路は減圧室を具備する。本発明は前記輸送路(液体の輸送途中)において減圧処理が行われるように構成された。
【0028】
輸送路における液体の深さ(平均深さ:高さ:厚さ)は、円筒状ボンベに充填(保管:保存)された液体の深さ(高さ)よりも遥かに小さく出来る。勿論、前記円筒状ボンベを扁平箱形状にしておけば、充填(保管:保存)液体の高さを小さくできる。高さが小さな構造のボンベで脱気処理すれば、脱気に要する時間が短縮される。しかし、高さを低く(この事は、ボンベ容量が同じであれば、面積を広くと言う事になる。)した前記扁平箱形状のボンベでは、ボンベの設置(保管)に大面積を要する。これは現実的ではない。従って、高さを低く(面積を大きく)した前記扁平箱形状のボンベは未だ提供されていない。
【0029】
さて、上述の通り、液体の輸送路における途中であれば、その輸送路における液体の深さ(厚さ)を浅くするのは容易である。前記輸送路の一部を扁平箱形状としても、前記扁平箱形状ボンベの場合に起きた問題は大幅に改善される。本発明にあっては、溶存ガス除去(脱気)処理を、ボンベに充填された後の段階ではなく、ボンベに充填される前の段階、即ち、輸送途中において、行われるようにした。従って、脱気に要する時間が大幅に短縮できた。
【0030】
前記輸送路は、好ましくは、略水平面方向に延在した輸送路を具備する。前記略水平面方向に延在した輸送路に前記減圧室が構成されている。前記輸送路が略水平方向に延在した輸送路を持っていると、この輸送路が、仮に、背が高い場合であっても、液体輸送量を少なくすれば、この輸送路における液体の深さを浅くできる。従って、前記輸送路が略水平面方向に延在した輸送路を具備している事は好都合である。勿論、通常は、輸送路は傾いておらず、水平方向である。しかし、輸送に問題がなければ、輸送路は多少傾いていても差し支えない。前記「略水平面方向」の「略」とは、そのような意味合いである。
【0031】
前記輸送路は、好ましくは、前記略水平面方向に延在した輸送路の一端側に繋がった上下方向の輸送路を具備する。前記輸送路は、好ましくは、前記略水平面方向に延在した輸送路の他端側に繋がった上下方向の輸送路を具備する。上下方向の輸送路は、前記略水平面方向に延在した輸送路の何れか一端側のみでも良い。勿論、両端側に設けられている事は更に好ましい。特に、前記容器A側に接続される上下方向の輸送路が設けられている事は好ましかった。その理由は、前記略水平面方向に延在した輸送路において、液体は脱気処理される。この脱気処理された液体は前記上下方向の輸送路の内壁を伝わって落下して前記容器A内に充填される。前記上下方向の輸送路の内壁を伝わって落下している液体は、恰も、薄膜状態である。従って、液相厚さは非常に薄い。この薄膜状態でも脱気処理が行われるから、脱気が効果的である。更には、前記略上下方向の輸送路の内壁を伝わって落下して行く液体は、恰も、撹拌作用の如きの作用を受けていた。従って、脱気が、一層、効果的であった。
【0032】
前記減圧室は、好ましくは、幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)W>深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)Hを満たすよう構成されている。この要件は、前記減圧室を輸送される液体の深さが浅い事を意味している。これは、川幅が広い川と川幅が狭い川とを考えたならば自明であろう。川幅が狭い上流側と川幅が広い下流側とを考えたならば自明であろう。幅が広くなればなる程、そこを流れる一定量の液体の高さ(深さ)は浅くなる。従って、前記W>前記Hの要件が好ましい事は容易に理解されるであろう。更に好ましくは、前記Wは前記Hの3.8倍以上であった。もっと好ましくは、前記Wは前記Hの18.4倍以上であった。すなわち、斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0033】
前記Hは、好ましくは、3cm以下であった。更に好ましくは2cm以下であった。下限値に理論上の制限はない。前記Hが0に近付く程、脱気(溶存ガス除去)に要する時間は短縮される。しかし、前記Hが0に近付くと、液体輸送量が少なくなる。これでは全体の効率が低下する。従って、前記Hの下限値は0.5cm程度であった。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0034】
前記減圧室の内形は、例えば略扁平箱形状である。この「略扁平箱形状」の「略」の意味合いは、変形を許容するからである。例えば、減圧室の底面側が円弧形状(楕円弧形状:波形状:曲線)であっても良いと言う意味である。本発明の技術的思想からすると、減圧室の底面側が平坦な構造(形状)である必要はない。同様な理由により、減圧室の上面側(天面)が平坦な構造(形状)である必要はない。特に、上面側にあっては、輸送される液体が天面に接っしてないから、底面側以上に制約がない。同様な理由により、減圧室の側面側が平坦な構造(形状)である必要はない。勿論、底面側が平坦な構造(形状)の方が製造は容易である。前記減圧室を前記略扁平箱形状に構成した場合、要件(L1>H1,W1>H1)が満たされていることが好ましかった。前記L1=前記略扁平箱形状における前記輸送液体の輸送方向の平均長。前記W1=前記略扁平箱形状における前記輸送方向に略直交する幅方向の平均長。前記H1=前記略扁平箱形状における前記輸送液体の深さ方向の平均長。更に好ましくは、0<H1/L1<2.2,0<H1/W1<6.8であった。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0035】
好ましくは前記L1が13cm以上であった。更に好ましくは前記L1が0.5m以上であった。もっと好ましくは前記L1が0.8m以上であった。好ましくは前記W1が4.2cm以上である。更に好ましくは前記W1が4.5cm以上であった。もっと好ましくは前記W1が9.2cm以上であった。好ましくは前記H1が0.3m以下であった。更に好ましくは前記H1が2cm以下であった。前記H1の下限値は0.5cm程度であった。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0036】
前記減圧室は要件(0<H/S≦0.04(前記H=前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚。前記S=前記減圧室を輸送される液体と気相との界面の面積。)前記H,Sの物理量の単位はcm。)を満たしているのも好ましかった。更に好ましくは0<H/S≦0.003であった。もっと好ましくは0<H/S≦0.0007であった。要するに、前記減圧室における液体の深さに比べて気相に露出している液体の表面積が大きいと言うことである。こうしておけば、減圧による脱気が効果的に行われた。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0037】
前記深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)H、前記幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)W、前記輸送液体の輸送方向の平均長L1、前記輸送方向に略直交する幅方向の平均長W1、前記輸送液体の深さ方向の平均長H1等における「平均」の意味は次の通りである。前記W,H,L1,W1,H1が、場所に依らずに一定の場合は、平均は前記一定の値である。前記W,H,L1,W1,H1に変動がある場合は、その方向に沿った長さでの積分値を求め、前記積分値を前記長さで割った値が平均値となる。液体の深さ(液体の深さの平均厚)Hは次のようにして求められる。幅方向(液体の流路方向に対して直交方向)における液体の深さが一定で液体の流路方向に沿っての液体の深さが変化している場合は、液体の流路方向に沿っての液体の深さの積分値(流路方向に沿っての垂直面での断面積)を求め、この積分値(断面積)を前記流路方向の長さで割った値が前記深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)Hである。幅方向(液体の流路方向に対して直交方向)における液体の深さが変化していて液体の流路方向に沿っての液体の深さが一定の場合は、液体の幅方向に沿っての液体の深さの積分値(流路方向に直交方向の垂直面での断面積)を求め、この積分値(断面積)を前記幅方向の長さで割った値が前記深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)Hである。幅方向(液体の流路方向に対して直交方向)における液体の深さも液体の流路方向に沿っての液体の深さも共に変化している場合は、前記領域における液体の体積値を求め、前記体積値を面積値(前記領域における液体と気相との界面における面積値)で割った値が前記深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)Hである。但し、例えば前記減圧室の底面の一部に凹条溝が有る場合、前記凹条溝の個所では深さが深くなっている。前記凹条溝の個所においては、液体が溜まっているものの、液体が輸送されることはない。すなわち、前記凹条溝に溜まった液体は容器A内に輸送される事はない。このような場合は、その個所における深さは「前記深さ(前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚)H」には参入されない。つまり、無視される。前記幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)Wは次のようにして求められる。深さ方向における前記幅が同一(一定)の場合、即ち、液体の流路方向においてのみ前記幅が変化している場合、前記液体と気相との界面における面積値を求め、前記面積値を液体の流路方向における長さで割った値が前記幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)Wである。深さ方向における前記幅も液体の流路方向における幅も変化している場合、前記領域における液体の体積値を求め、前記体積値を面積値(前記領域における液体と気相との界面における面積値)で割った値が前記幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)Wである。他の物理量の平均値も上記に準じてもとめる事が出来る。前記幅(前記減圧室を輸送される液体の幅方向の平均長)Wの算出に際しては、基本的には、気・液界面における幅の平均値を考えれば良い。なぜならば、溶存ガスの放出は液面の広さに大きく依存するからである。他の物理量の平均値も前記算出に準じて決められる。
【0038】
前記L1は、好ましくは、13cm以上であった。更に好ましくは0.5m以上あった。もっと好ましくは0.8m以上であった。好ましくは12m以下であった。前記W1は、好ましくは、4.2cm以上であった。更に好ましくは4.5cm以上であった。もっと好ましくは9.2cm以上であった。好ましくは0.6m以下であった。前記H1は、好ましくは、0.5cm以上であった。更に好ましくは1cm以上であった。好ましくは0.3m以下であった。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0039】
前記H/S(前記Hは前記減圧室を輸送される液体の深さの平均厚。前記Sは前記減圧室を輸送される液体と気相との界面の面積。前記H,Sの物理量の単位はcm。)は、好ましくは、0.04以下であった。更に好ましくは0.002以下であった。もっと好ましくは0.0007以下であった。好ましくは、0以上であった。更に好ましくは0.000007以上であった。斯かる寸法関係を満たすことによって、本発明の特長が格段に奏された。
【0040】
第2の発明は方法である。前記方法は、容器A内の液体の溶存ガス量を基準値以下にする為の方法である。前記容器A内の液体は容器B内から輸送される。前記液体は輸送途中で減圧処理を受ける。特に、幅(前記輸送途中における液体の幅方向の平均長)W>深さ(前記輸送途中における液体の深さの平均厚)Hである個所において、前記液体は減圧処理を受ける。或いは、前記輸送途中において、前記液体は、その厚さが0.3m以下(例えば、0.3m未満)であるよう制御される。そして、前記液体の厚さが0.3m以下(例えば、0.3m未満)の状態において、前記液体は減圧処理を受ける。又は、前記減圧処理は前記装置が用いられて行われる。
【0041】
以下、具体的な実施例が挙げられる。但し、本発明は以下の実施例にのみ限定されない。本発明の特長が大きく損なわれない限り、各種の変形例や応用例も本発明に含まれる。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態になる装置(溶存ガス除去装置)の要部の概略図である。
【0043】
1,2,3は輸送路である。輸送路1,2,3は、金属製管でも、樹脂製管でも、何でも良い。輸送される液体4に応じて選択される。本例では、耐食性の観点から、ステンレス製のものとした。容器B内の液体4が、輸送路2,1,3を介して、容器A内に輸送される。容器Bは、図3における原料容器11が相当する。容器Aは、図3における円筒状ボンベ13が相当する。図1では、容器Bは省略されている。
【0044】
輸送路1は水平方向に配置されている。輸送路1は扁平箱形状(直方体形状:内形における高さ(上下方向寸法)H1、長さ(液体流路に沿った方向の長さ:図1では左右方向における長さ)L1、幅(図1では紙面に垂直な方向に沿った方向の長さ)W1)である。前記H1は3~8cmである。前記L1は50~80cmである。前記W1は4~9.2cmである。勿論、条件(L1>H1,W1>H1)が満たされている。条件(0<H1/L1<2.2,0<H1/W1<6.8)も満たされている。一つの具体例では、H1=3.2cm,L1=79.2cm,W1=9.2cmであった。
【0045】
輸送路2は上下方向に配置されている輸送路である。輸送路2は輸送路1の上流側の一端部に連結されている。輸送路3は上下方向に配置されている輸送路である。輸送路3は輸送路1の下流側の一端部に連結されている。輸送路2,3は、輸送路1が扁平箱形状であったのに対して、如何なる形状でも良い。扁平箱形状でも良いし、丸管状でも良い。本実施形態では、輸送路2,3は丸管であった。
【0046】
輸送路2には冷却機構(図示せず)が設けられている。容器B(図示せず)内に圧力を加え(加圧は不活性ガスの導入による。)、容器B内の液体4を輸送路2に押出(輸送)した際、輸送路2が冷却されていることから、輸送路2を輸送される液体4中に不活性ガスが溶け難くなっている。
【0047】
5は輸送路1の天面に設けられた排気口である。排気口5には真空ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0048】
上記装置において、不活性ガスが容器B(図示せず)内に導入された。これによって、容器B内が加圧された。容器B内の液体4は輸送路2に輸送された。本例では、液体4の輸送速度は0.67L/minであった。前記輸送速度は容器A内への液体4の充填量と充填時間から算出された。前記液体4の輸送量と輸送路1の形状(H1=3.2cm,L1=79.2cm,W1=9.2cm)との関係から、輸送路1を輸送される液体4の厚さ(深さ)Hは0.5cmである。従って、H/W1(W=W1)=0.054である。真空ポンプ(図示せず)が作動し、輸送路1,3内の気体が排気された。真空度は真空ポンプの性能から6.5Kpa程度である。
【0049】
輸送路1内を輸送(通過)される液体4の深さは非常に浅い。従って、輸送路1内を輸送(通過)中の液体4に溶存していたガスはスムーズに気相に放出された。輸送路3内における液体4は輸送路3内壁を伝わって落下していた。従って、この段階の液体4は薄膜状態であった。かつ、輸送路3内壁を伝わって落下して行く液体4は、恰も、捩れているかの如くであった。恰も撹拌が行われているような様子であった。輸送路3においても、液体4中に溶存しているガスの脱気が効果的に行われていた。
【0050】
図3の円筒状ボンベ13(内容積が0.01m)と同体積の容器B内に液体4が充填された。この充填段階では液体4中に含まれていた溶存ガスの除去は完了している。充填に要した時間は10分間であった。従来例で述べた時間に比べて大幅に短縮されていることが判る。
【0051】
図2は、上記実施形態による溶存ガスの除去作業が行われた液体が容器A内に充填された後の容器内圧と温度との関係を示すグラフである。●印が上記実施形態による場合の内圧で、■印が同じ液体の理論蒸気圧である。両者がほぼ同じと言うことは、溶存ガスが十分に除去されていることを示している。
【符号の説明】
【0052】
1,2,3 輸送路
4 液体
5 排気口

図1
図2
図3