(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】刃物用研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230809BHJP
B24B 3/36 20060101ALI20230809BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230809BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230809BHJP
C08J 5/14 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B3/36 P
B24B37/24 D
C08L67/02
C08L75/04
C08J5/14 CFF
(21)【出願番号】P 2019171991
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519419(JP,A)
【文献】特開2004-082314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
B24B 3/36
C08L 67/02
C08L 75/04
C08J 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状を有するとともに、その外周縁に形成された研磨面によって刃物の刃部を研磨する刃物用研磨パッドであって、
疎水性繊維によって構成された繊維基体と、当該繊維基体に含浸されたポリウレタン樹脂とによって構成され、
上記ポリウレタン樹脂は油剤をポリウレタン樹脂の質量に対し5質量%以上、30質量%以下の割合で
含んでおり、
上記繊維基体を構成する疎水性繊維の少なくとも一部は、刃物用研磨パッドの平面な面に対して水平方向に配向し、当該繊維の端部が上記研磨面に露出しており、
上記疎水性繊維の含有量は、刃物用研磨パッドの全重量に対し40質量%以上、95質量%以下の割合であり、
さらに、上記繊維基体は不織布からなり、当該不織布の繊度は0.7~30dtexであることを特徴とする刃物用研磨パッド。
【請求項2】
上記油剤は、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油のうち、1種または2種以上の混合物からなることを特徴とする
請求項1に記載の刃物用研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刃物用研磨パッドに関し、詳しくは円盤状を有するとともに、その外周縁に形成された研磨面によって刃物の刃部を研磨する刃物用研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、剃刀刃等の刃物を大量生産する場合、最初に帯状で送られる金属の端部を研削加工して刃部を形成し、その後形成された刃部の両側面に略円盤状の刃物用研磨工具を並列に位置させ、当該刃物用研磨工具を回転させることにより刃部の仕上げ研磨(仕上げ研削)を行うようにした装置が知られている(特許文献1)。
特許文献1の刃物用研磨工具は、回転可能な回転部材の外周にらせん状に連続した状態で設けられており、上記刃物用研磨パッドの外周縁の部分が刃物の刃部に接触して研磨を行う研磨面を構成している。
ここで、特許文献1における刃物研削装置では、最終的な磨き革による研磨工程が不要であるとされているものの、刃部の仕上げ研磨のために牛や馬の革からなる革砥が広く用いられてきた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭47-9360号公報
【文献】特公平05-032076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記特許文献2の革砥は天然物由来であることから、品質にばらつきがあり、加工する現場の温度や湿度などの環境により物性が変動しやすいという問題があることから、刃物用研磨工具として使用する場合には微妙な調整が必要とされている。
このような問題に鑑み、本発明は扱いやすく、また革砥からなる刃物用研磨工具と同等以上の研磨性能を得ることが可能な刃物用研磨パッドを提供するものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかる刃物用研磨パッドは、円盤状を有するとともに、その外周縁に形成された研磨面によって刃物の刃部を研磨する刃物用研磨パッドであって、
疎水性繊維によって構成された繊維基体と、当該繊維基体に含浸されたポリウレタン樹脂とによって構成され、
上記ポリウレタン樹脂は油剤をポリウレタン樹脂の質量に対し5質量%以上、30質量%以下の割合で含んでおり、
上記繊維基体を構成する疎水性繊維の少なくとも一部は、刃物用研磨パッドの平面な面に対して水平方向に配向し、当該繊維の端部が上記研磨面に露出しており、
上記疎水性繊維の含有量は、刃物用研磨パッドの全重量に対し40質量%以上、95質量%以下の割合であり、
さらに、上記繊維基体は不織布からなり、当該不織布の繊度は0.7~30dtexであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記請求項1の発明によれば、繊維基体に疎水性繊維を使用したことで、研磨の際に用いられる油性研磨剤との相性がよくなり、研磨面に研磨剤を保持しやすくなることから、革砥と同様以上の仕上げ研磨性能を得ることができ、また革砥よりも性質が安定しているため容易に使用することができる。
また、ポリウレタン樹脂は元来疎水性を示しているが、これに油剤を含ませることで、ポリウレタン樹脂中に均一に分散した油剤が研磨加工時に溶出して疎水性繊維に油剤がなじみ、より高い研磨剤との親和性を得ることができ、高い仕上げ研磨性能を得ることができる。具体的には、刃物の研磨の際に、刃部先端の先鋭化された形状を崩さずにバリ(刃返り)を除去することができるとともに、刃部の表面を滑らかに研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1は刃物としての剃刀刃1を製造する剃刀刃製造装置2の概略図を示し、剃刀刃製造装置2は、帯状の材料3を供給する材料供給手段4と、材料3の端部を研削して剃刀刃1の刃部1aを形成する研削手段5と、研削された刃部1aを仕上げ研磨する研磨手段6と、刃部1aの形成された材料3を所定間隔で切断して剃刀刃1とする切断手段7とを備えている。なお、このような剃刀刃製造装置2自体は従来公知であるため、以下に説明する構成を除き、詳細な説明については省略するものとする。
上記材料供給手段4には、材料としてロール状に巻回された帯状のステンレス鋼が装着されており、当該材料供給手段4から上記材料3を所定速度で送り出すようになっている。なお、上記材料3には必要に応じて予め所定位置に穴や切欠きが形成され、また焼き入れや焼きなましなどの処理も行われている。
研削手段5は、上記材料供給手段4によって送られる材料3の側部に沿った位置に複数の研削工具5a~5cを備えており、この研削工具5a~5cは搬送される材料3の端部の一面および他面を斜めに研削するように配置されている。
また研削手段5は、複数の研削工具5a~5cを備え、これら研削工具5a~5cが上流側から順に荒加工、中加工、仕上げ加工といった複数の過程で研削工程を行うことで、材料の端部を任意の形状の刃部1aへと研削するものとなっている。
【0009】
上記研磨手段6は、上記研削手段5の下流側に設けられており、上記研削手段5で、例えば刃部1aの先端から5μmにおける刃部1aの厚みが2μm未満、刃部1aの先端から20μmにおける刃部1aの厚みが6μm前後となる程度に先鋭化された刃部1aの形状を崩さずに刃部1aの先端に生じたバリ(刃返り)を除去したり、刃部1aの表面をサブミクロンの表面粗さに滑らかに研磨することで剃刀刃1の切れ味を向上させるものとなっている。
図2は研磨手段6を材料3の進行方向に対し垂直となる面から見た図を示しており、研磨手段6は回転可能に設けられた円筒状の回転治具11と、当該回転治具11に設けられた略円盤形状を有する複数の刃物用研磨パッド12と、刃物用研磨パッド12の外周縁に形成された研磨面12aに研磨剤を供給する図示しない研磨剤供給手段とを備えている。
図2に示すように、回転治具11は搬送される材料3の搬送方向と平行に設けられ、材料3の両側の端部に刃部1aを形成する場合には、材料3の両側部にそれぞれ回転治具11が設けられるようになっている。
また刃物用研磨パッド12は回転治具11の軸方向に所定の間隔で設けられており、一方の回転治具11に設けられた刃物用研磨パッド12と他方の回転治具11に設けられた刃物用研磨パッド12とが干渉しないよう、偏倚した位置に交互に設けられている。
【0010】
図3に示すように、刃物用研磨パッド12はそれぞれ所定厚さを有した略円盤状を有しており、中央には上記回転治具11に装着するための円形の貫通穴が設けられている。
そして上下の回転治具11に刃物用研磨パッド12を軸方向に偏倚させて設けることで、各刃物用研磨パッド12の研磨面12aを上記刃部1aの両側に接触させることが可能となっている。
また
図3において材料3の一面側に示される回転治具11は図示反時計回りに回転し、他面側に示される回転治具11は図示時計回りに回転し、接触した研磨面12aが刃部1aの先端部から基部に向けて移動しながら研磨を行うようになっている。
そして上記研磨剤供給手段は、各刃物用研磨パッド12の研磨面12aに油性成分からなる研磨剤を供給するようになっており、上記研磨剤としては従来公知のものを使用することができ、例えば油脂材料に酸化クロム(III)やアルミナ、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、CBN、人工ダイヤモンドなどの研磨成分を混合したものを用いることができる。
【0011】
このような構成を有する研磨手段6により刃部1aの研磨を行うと、研削手段5によって形成された刃部1aのバリが除去され、また刃部1aの表面が滑らかに研磨されて、剃刀刃1の切れ味を向上させることが可能となっている。
なお、刃物用研磨パッド12の研磨面12aが刃部1aに接触する位置や角度は任意に設定可能であり、上記研削手段5と同様、複数回に分けて刃部1aの研磨を行うようにしてもよい。
また特許文献1に記載されているように、刃物用研磨パッド12の研磨面12aをらせん状に連続して設けることも可能であり、また刃物用研磨面12aの外径を異ならせて全体を円錐台形状とすることも可能である。
【0012】
上記切断手段7は上記材料3を等間隔に切断するようになっており、これにより剃刀刃1が得られるようになっている。
なお、研磨手段6と切断手段7との間や切断手段7の後に、刃部1aに錆防止などのコーティングを行うコーティング手段や、刃部1aに電解研磨加工を行う電解研磨手段を設けてもよい。
そして、本実施例の剃刀刃製造装置2では、研磨手段6に用いる刃物用研磨パッド12として、疎水性繊維によって構成された繊維基体と、当該繊維基体に含浸されたポリウレタン樹脂とによって構成されたものを使用し、上記ポリウレタン樹脂は油剤をポリウレタン樹脂に対して5質量%以上、30質量%以下の割合で含んだものとなっている。
【0013】
上記繊維基体としては、ポリエチレンテレフタレート繊維等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ナイロン6繊維、ナイロン66繊維等のポリアミド繊維などの油分との馴染みのよい親油性を有する疎水性繊維を使用することができ、これらの繊維を1種または2種以上用いることができる。
繊維は親水性繊維と疎水性繊維に大別される。親水性繊維はその分子構造中にヒドロキシル基(―OH)、アミノ基(―NH)、カルボキシル基(―COOH)、アミド基(―NHCO)の親水基を有し、水と馴染み易い反面、油と馴染みにくく、さらに、親水性繊維を刃物用研磨パッド12として使用した場合には研磨加工時の冷却水により繊維が膨潤、軟化し、繊維のコシがなくなるため刃部1aのバリを取り除くことができない。
一方、疎水性繊維ではその分子構造中に親水基を持たない、あるいは、少量しか持たないため、疎水性・親油性を有し研磨剤とポリウレタン樹脂との馴染みがよく、研磨加工時の冷却水により繊維が膨潤、軟化により繊維のコシがなくなることもない。
疎水性繊維のなかでも公定水分率の低い繊維が好ましく、公定水分率が5%未満の繊維がより好ましく、3%以下の繊維がさらに好ましい。具体的には、特に親油性に優れ、公定水分率が1%未満の、ポリエステル繊維を使用することが望ましく、特にポリエチレンテレフタレート繊維の使用が望ましい。
【0014】
各繊維の繊度としては0.7~30dtexのものを用いるのが望ましく、1.0~20dtexのものを用いるのがより望ましく、2.0~10dtexのものを用いるのがさらに望ましい。繊度が0.7~30dtexであれば、繊維と繊維との間に空隙を確保できるとともに不織布の剛性を高めることができ、研磨効率向上に寄与する。
これに対し、繊度が30dtexより太すぎると繊維の剛性が高くなりすぎて繊維の交絡が困難になるうえ、曲げ難く粗硬なものになってしまうので、研磨時の研磨傷を生じさせる恐れがある。一方、繊度が0.7dtexに満たず細すぎると刃物用研磨パッド12が軟質化してしまい、研磨した刃部1aの先端が丸くなり切れ味が低下してしまう。
【0015】
各繊維の繊維長は40~80mmの範囲であると、カード機通過性や繊維間の絡合性が良好であるとともに、研磨加工時に研磨面が摩耗していった際に適度に繊維が脱離し目詰まりを抑制できるため好ましい。
これに対し、繊維長が40mm未満では、不織布の目付や厚みにもよるが、ニードルパンチの際に表面付近の繊維が裏面まで到達し難く不織布シートの層間剥離が生じやすいので好ましくない。
一方、繊維長が80mmを著しく超過する範囲では研磨加工により研磨面が摩耗した際に、繊維の端部が表れにくいことや、繊維が脱離できずに目詰まりを形成し易く刃部1aに研磨焼けが生じるため好ましくない。
【0016】
次に、繊維基体の構成としては不織布を用いることができる。不織布の作製は、フリースの形成と、フリースの繊維の絡合に分けることができる。
フリースの形成方法としては、特に制限されないが、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法などが挙げられる。また、フリースの繊維の絡合方法としては、特に制限されないが、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法、スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法(ウォータージェット法)などが挙げられる。
これら各方法は任意に組み合わせることが可能であり、例えば、乾式法により繊維の方向性を整えたフリースを形成し、得られたフリースを複数枚積層させ、ニードルパンチにより繊維を交絡させて不織布を作製することができる。
このとき刃物用研磨パッド12として構成した際における繊維の方向は、円盤状刃物用研磨パッド12の上面視円形の面と水平な方向に配向されている。
このような構成とすることで、上記繊維の端部を刃物用研磨パッド12の外周縁の研磨面12aに露出させることができ、刃部1aを研磨する際に繊維の端部で行うことが可能となる。
また、このような構成とすることで、繊維の先端部と繊維の先端部との間に研磨剤が入り込みやすく、またこれを保持することができるため、研磨剤による効果を得やすい。
【0017】
不織布の絡合一体化方法は物理的絡合方法を用いることが好ましい。繊維の物理的絡合方法としてはニードルパンチ法の他、ウォータージェットパンチ法等が一般的であるが、本実施例ではニードルパンチ法を用いた。
ニードルパンチ法では糸を引っ掛けて絡ませる部分が複数ついた針(ニードル)又は先端がフォークのような形状になったフォーク針等を用いることができる。機械の速度(ストローク数)や針密度、ストロークの距離等々の条件はウェブの目付や厚み等々に応じて適宜選定すればよい。
またサーマルボンド法やケミカルボンド法など、ウェブにバインダー繊維や接着剤を入れ加圧下で加熱して一体化する方法では、融着部が研磨面に露出した場合に刃部1aに対するあたりが強く刃部1aに研磨傷を生じさせやすいうえ、研磨加工時に繊維が脱離しづらく目詰まりが発生し研磨焼けを起こしやすいため好ましくなく、物理的絡合方法が好ましい。
【0018】
上記不織布に供するウェブは、公知のカード機を用いて繊維を配列させシート状とすることにより、シートの平面に繊維が水平に配されることから、刃物用研磨パッド12の外周縁の研磨面12aに繊維端部が露出しやすいため好ましい。
一方、ウェブを作成せず、紡糸後直接不織布を得るスパンボンド法やメルトブロー法では、連続した長繊維であるため、研磨面に繊維端部が露出しにくく、刃物用研磨パッド12の基材として好ましくない。
【0019】
刃物用研磨パッド12を構成するポリウレタン樹脂としては、従来公知の方法で製造したものの他、市販品を使用することができる。例えばクリスボン(DIC株式会社)、サンプレン(三洋化成工業株式会社)、レザミン(大日本精化工業株式会社)が挙げられる。
またポリウレタン樹脂としては、流動開始温度を150~300℃とすることが望ましく、さらには180~230℃であることがより望ましい。流動開始温度をこのような範囲に設定することで、刃部1aの研磨をする際に摩擦熱により樹脂成分が溶出し刃部に付着することを抑制できる。
これに対し、流動開始温度を150℃未満とすると、研磨加工時の発熱により樹脂成分が溶出しやすく、刃部1aに樹脂由来の異物が付着し外観を損ねるうえ切れ味に影響を及ぼす。一方、流動開始温度が300℃を超えると、樹脂部分が硬い状態を維持してしまい、刃部1aに研磨傷を生じさせやすくなる。
なお、樹脂の流動開始温度の導出方法としては、動的粘弾性測定装置を使用して得られる温度依存性曲線より、位相角の急激な上昇が起こる点の外挿点より導出することができる。なお動的粘弾性測定装置としてはRSA-III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)を使用することができる。
【0020】
上記ポリウレタン樹脂に混合する油剤としては、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油を使用することができ、これらを1種または2種以上混合して用いてもよい。
油剤をポリウレタン樹脂に混合させることにより、研磨加工時の摩擦熱により研磨面近傍のポリウレタン樹脂の温度が上昇した際に、ポリウレタン樹脂から油剤が浸み出し、疎水性繊維表面に油剤が濡れ広がるため、繊維端部とその近傍の表面に研磨剤が馴染みやすく、刃部1aのバリ除去性能が向上する。
また、研磨時に研磨面近傍のポリウレタン樹脂から油剤が浸み出すことで、研磨表面でポリウレタン樹脂に拘束された疎水性繊維の動きの自由度が上がり、刃部1aへの当たりが軟らかくなるため、刃部1aの研磨品質が向上する。
また上記油剤は、ポリウレタン樹脂に対して5質量%以上、30質量%以下の割合で含んでいる。30質量%を超えると剛性が不足し、刃部1aの先端が丸くなることや、過剰量の油剤が溶出し研磨剤の流動性が高まり、研磨砥粒が研磨に寄与することなく排出されてしまうことで研磨効率が低下するという問題が生じる。一方、5質量%に満たないと、研磨剤が刃物用研磨パッド12に馴染みにくく、刃部1aのバリを容易に除去することができない。
【0021】
固体油脂としては、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂などが例示される。
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが例示される。
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが例示される。
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが例示される。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコールなどが例示される。
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリー2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-クチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、クロタミトン(C13H17NO)などが例示される。
【0022】
上記油剤の中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸オクタドデシル、ステアリン酸オクタドデシルステアロイル、アジピン酸プロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジオクチル、グリセリン脂肪酸エステル等の合成エステル油が研磨剤、ポリウレタン樹脂、疎水性繊維の3者に対して相性が良く、かつ、ポリウレタン樹脂への分散性も良好であり、研磨加工時に溶出した油剤が疎水性繊維になじみ、疎水性繊維表面に研磨剤を付着させやすくなり、多くの研磨剤を研磨に寄与させることができるため好ましい。
【0023】
剃刀刃1の研磨加工に使用される研磨剤は、固形研磨剤と液状研磨剤に大別される。
液状研磨剤は油脂類を乳化したO/W型のエマルジョンに研磨砥粒を分散させたもので、スプレーガンによって回転している刃物用研磨パッド12の研磨面12aに噴射塗布して使用され、液状研磨剤中の水分による冷却効果が期待できるが、固形研磨剤と比べ多量の液状研磨剤を使用する。
一方、固形研磨剤は棒状に成形されたもので、刃物用研磨パッドに12こすり付けて使用され、液状研磨剤と比べ刃物用研磨パッド12に長時間保持することができるため、塗布回数を少なくでき作業効率がよく、固形研磨剤の使用量を少なくできるというコストメリットがある反面、冷却効果を有しないため刃部1aに研磨焼けを生じさせやすい。
本願の発明品は固形研磨剤を使用した場合においても、研磨時に添加された油剤が溶出することで刃部1aに対する接触抵抗および研磨負荷が低減し、摩擦熱による研磨焼けを防止することが出来る。
【0024】
そして、上記素材を用いて作成された刃物用研磨パッド12の厚みとしては、2.0~10.0mmの範囲とすることが好ましい。2.0mm未満では厚みが小さ過ぎ、刃物用研磨パッド12の剛性が低下し製品寿命が短くなるため好ましくない。
また10mmを超過する厚みでは含浸処理した際に樹脂の付着量が不織布シートの厚み中央側と表面側で差ができやすく、研磨面12aにおいて樹脂の粗密が生じ、刃部1aに対する当たり方が不均一になるため好ましくない。
【0025】
また刃物用研磨パッド12は、全体の密度を0.3~0.8g/cm3とすることが望ましく、0.35~0.75g/cm3とすることがより望ましい。このような密度とすることで刃物用研磨パッド12全体が適度な剛性を有し、研磨効率の向上に寄与する。
これに対し、密度が0.3g/cm3未満となると耐久性が劣り、また0.8g/cm3を超えると構成する繊維と繊維との間の空隙が少なくなり、研磨時に研磨屑の目詰まりが生じやすく研磨材の保持量が減ることから研磨焼けが起きる原因となる。
【0026】
刃物用研磨パッド12は、全体の圧縮弾性率を70~98%とすることが好ましく、80~95%とすることがより好ましく、85~92%とすることがさらに好ましい。
圧縮弾性率が上記範囲内であることにより、刃物用研磨パッド12と刃部1aとの密着性がより良好となる。また、圧縮弾性率は、用いる樹脂の種類により調整することができる。
【0027】
さらに、刃物用研磨パッド12は、全体の圧縮率を1.0~6.0%とすることが好ましく、1.2~5.5%とすることがより好ましく、1.5~5.0%とすることがさらに好ましい。このような圧縮率とすることで刃部1aを研磨する際の研磨面12a追従性を良好なものとすることができる。
これに対し、圧縮率が1.0%未満となると研磨面12aの変形量が少なくなり刃部1aに傷がつきやすくなり、6.0%を超えると変形しすぎてしまい、研磨の際に刃部1aの先端が丸くなり切れ味が低下してしまう。また、圧縮率は、上記密度を調整することにより調整することができる。
【0028】
刃物用研磨パッド12のA硬度は、50~90°とすることが好ましく、53~85°とすることがより好ましく、55~80°とすることがさらに好ましい。
A硬度が50°以上であることにより、刃物用研磨パッド12の寿命がより向上する傾向にある。また、A硬度が90°以下であることにより、研磨傷の発生を抑制し、得られる剃刀刃1の刃部1aの研磨品質がより向上する傾向にある。また、A硬度は、例えば、用いる樹脂の種類及び付着量により調整することができる。
【0029】
そして、刃物用研磨パッド12の全重量に占める上記繊維基体の含有量を40~95質量%の割合とすることが望ましく、55~85質量%の割合とすることがより望ましく、65~80質量%の割合とすることがさらに望ましい。この範囲で繊維を含有させることで、上記ポリウレタン樹脂が付着した繊維と繊維との間に研磨剤を効率的に保持しやすく、繊維端部が研磨面に露出することが可能となる。
これに対し、繊維基体含有量が40質量%未満となるとポリウレタン樹脂の量が多く空隙が少なくなり、研磨剤の保持量が減ることから研磨焼けが起きる原因となる。一方、繊維基体含有量が95質量%を超えると繊維の脱離が起きやすく耐久性に劣り製品寿命が短くなる。
【0030】
以下、上記刃物用研磨パッド12の製造方法について説明する。
最初に、刃物用研磨パッド12を構成する上記疎水性繊維基体を準備する。上述したように疎水性繊維基体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレンなどの疎水性を有する繊維を使用した乾式不織布を用いることができる。具体的には、繊維を開繊機でほぐした後、カード機で繊維を一方向にそろえシート化したものを積層してウェブを形成後、ニードルパンチで繊維間を結合することにより、繊維が直径方向に配向する疎水性繊維基体を得ることができる。
次に、ポリウレタン樹脂に上記油剤を混合させ、当該油剤を含んだポリウレタン樹脂を上記疎水性繊維基体に含浸させる。
ポリウレタン樹脂含浸疎水性繊維基体を乾燥機で乾燥させた後、両面をスライス処理し、円盤状にカットし、刃物用研磨パッド12が得られる。
【0031】
【0032】
上記表1は、本発明にかかる実施例品1~4と、比較に用いた比較例品1~2に対して行った実験結果をまとめた表となっており、これら実施例品および比較例品についてそれぞれ以下の2種類の実験を行った。
【0033】
実験1:刃物用研磨パッド12への固形研磨剤の浸透状態の観察
固形研磨剤(株式会社光陽社製、アロックス5)を使用しながら刃物用研磨パッド12を用いて研削加工済みの剃刀刃1の刃部1aを40分間研磨した。研磨後の刃物用研磨パッド12に対し固形研磨剤の浸透を確認するため、刃物用研磨パッド12の研磨面から垂直方向にサンプルを切り出し、研磨面12aの断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5500LV)のSEM反射電子像により観察した。
【0034】
実験2:切れ味評価
切断荷重試験機により、試験片(細長いウールフェルト)の両端部を保持し、これに対して実験1で研磨した結果得られた剃刀刃1を下降させて、試験片が切断されるときの抵抗値を測定し、これを革砥からなる刃物用研磨工具で研磨した剃刀刃1の抵抗値と比較した。
【0035】
実施例1
繊度2.2dtexのポリエチレンテレフタレート繊維で形成された厚さ6.2mm、密度0.226g/cm3、目付(単位面積あたり重量)1620g/cm2のニードルパンチ不織布からなる疎水性繊維基体を用いた。
含浸工程では、流動開始温度が215℃のポリエステル系熱可塑性ポリウレタンを樹脂固形分が30%となるようにDMFに混合し、油剤のパルミチン酸イソプロピル(富士フイルム和光純薬株式会社製)とを溶解した樹脂溶液を用いた。
樹脂溶液はポリウレタン樹脂の100質量部に対して、油剤を10質量部、有機溶剤のDMFの604質量部を配合した。樹脂溶液を疎水性繊維基体に含浸させ、一対のマングルローラーの間を通した。
樹脂溶液含浸後の疎水性繊維基体を乾燥機で乾燥させ、両面をスライス処理した後、円盤状にカットし、刃物用研磨パッド12を得た。
製造した実施例1の刃物用研磨パッド12は、厚み4.14mm、密度0.45g/cm3、圧縮弾性率90.8%、圧縮率4.9%、ショアA硬度66.0°であった。
また、刃物用研磨パッド12に占める疎水性繊維の含有量は全重量に対し78質量%の割合であり、刃物用研磨パッド12を構成するポリウレタン樹脂の流動開始温度は215℃であった。また、樹脂部分に対する油剤の割合は9質量%であった。
【0036】
実施例2
流動開始温度が215℃のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用し、疎水性繊維の含有量を全重量に対し70質量%とし、樹脂部分に対する油剤の割合を29質量%とした以外は実施例1と同様にして刃物用研磨パッド12を得た。
製造した実施例2の刃物用研磨パッド12は、厚み4.20mm、密度0.50g/cm3、圧縮弾性率89.2%、圧縮率4.5%、ショアA硬度68.0°であった。
【0037】
実施例3
流動開始温度が215℃のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用し、疎水性繊維の含有量を全重量に対し80質量%とし、樹脂部分に対する油剤の割合を5質量%とした以外は実施例1と同様にして刃物用研磨パッド12を得た。
製造した実施例3の刃物用研磨パッド12は、厚み4.15mm、密度0.43g/cm3、圧縮弾性率88.7%、圧縮率4.8%、ショアA硬度66.5°であった。
【0038】
実施例4
流動開始温度が225℃のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を使用し、疎水性繊維の含有量を全重量に対し75質量%とした以外は実施例1と同様にして刃物用研磨パッド12を得た。
製造した実施例4の刃物用研磨パッド12は、厚み4.54mm、密度0.47g/cm3、圧縮弾性率87.4%、圧縮率4.1%、ショアA硬度72.0°であった。
【0039】
比較例1
流動開始温度が215℃のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用し、ポリウレタン樹脂に油剤を混合せず、疎水性繊維の含有量を全重量に対し84質量%とした以外は実施例1と同様にして刃物用研磨パッドを得た。
製造した比較例1の刃物用研磨パッドは、厚み4.22mm、密度0.41g/cm3、圧縮弾性率85.4%、圧縮率5.5%、ショアA硬度63.0°であった。
【0040】
比較例2
流動開始温度が215℃のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用し、疎水性繊維の含有量を全重量に対し64質量%とし、樹脂部分に対する油剤の割合を40質量%とした以外は実施例1と同様にして刃物用研磨パッドを得た。
製造した比較例2の刃物用研磨パッドは、厚み4.25mm、密度0.54g/cm3、圧縮弾性率87.7%、圧縮率5.2%、ショアA硬度67.0°であった。
【0041】
実験1の結果について説明すると、
図4には実施例1にかかる刃物用研磨パッド12と、比較例1にかかる刃物用研磨パッドについてのSEM反射電子像(50倍)を示す。SEM反射電子像は原子番号依存性があることから、砥粒成分など原子番号の大きいものは明るく、有機成分など原子番号の小さいものは暗い像となる。
研磨面12aの断面を撮影したSEM反射電子像を無作為に10枚選択し、各研磨面の断面において明るく検出される固形研磨剤成分について、研磨面12aから研磨剤の浸透厚みが最も薄い箇所の固形研磨剤浸透厚みをそれぞれ測定し、平均値を算出した。
そして実験結果としては、研磨剤浸透厚みの平均値が100μm以上の場合を〇とし、100μmに満たない場合を×と評価した。
図4に示す通り、実施例1は内部まで研磨剤が浸透していることが確認でき、これに対し比較例1では研磨剤が研磨面12a近くに薄く付着し、内部への浸透が少ないことが確認できる。
以上のように、実験1によれば、実施例にかかる刃物用研磨パッド12は、研磨加工時の摩擦熱により近傍のポリウレタン樹脂の温度が上昇した際に、ポリウレタン樹脂に混合した油剤が浸み出すことで繊維端部とその近傍の表面に研磨剤が馴染みやすく、研磨剤を良好に保持することができているものと推察される。
【0042】
実験2の結果について説明すると、実験2では、切断荷重試験機を用いて、試験片(細長いウールフェルト)の両端部を保持し、これに対して各実施例、比較例の刃物用研磨パッド12で研磨された剃刀刃1を下降させて、試験片が切断されるときの抵抗値を測定した。
そして、革砥からなる刃物用研磨工具を用いて研磨した剃刀刃1による切断抵抗値を1とし、測定した切断抵抗値が1を下回った場合には従来よりも良好な切れ味が得られているものと考えられる。
実験の結果、実施例1~4の刃物用研磨パッド12を用いて研磨を行った剃刀刃1については切断抵抗値がいずれも1以下であり、特に実施例1や実施例3は0.8、実施例2や実施例4は0.9と、革砥よりも切断抵抗値が低く、一定時間連続して研磨した場合でも良好な切れ味が持続している結果が得られた。
これに対し比較例1~2の刃物用研磨パッドを用いて研磨を行った剃刀刃1については切断抵抗値がいずれも1を超えており、革砥を用いた場合に比べて切れ味が低下するという結果が得られた。
これは比較例1では、油剤を加えないことで固形研磨剤との親和性が低くなり、一定時間連続して研磨した場合に刃部1aのバリが完全に除去できないことや、固形研磨剤を使用した研磨加工において刃物用研磨パッド12から油剤が溶出しないため、刃部1aに対し大きな摩擦抵抗が生じ研磨焼けが発生したことで切断抵抗値が高くなったものと考えられる。
また比較例2では、油剤添加量が多いため研磨時に研磨面近傍のポリウレタン樹脂の油剤が多量に溶出することで、固形研磨剤の砥粒成分が溶出した油剤と共に研磨に寄与することなく流出し、研磨性能が低下したため、刃部1aを先鋭化することができず切断抵抗値が高くなったものと考えられる。
【0043】
なお、上記実施例の刃物用研磨パッド12では刃物として剃刀刃1の刃部1aを研磨するようになっているが、それ以外の刃物であっても研磨可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 剃刀刃(刃物) 1a 刃部
2 剃刀刃製造装置 3 材料
5 研削手段 6 研磨手段
11 回転治具 12 刃物用研磨パッド
12a 研磨面