(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】薬剤分包装置、薬剤分包装置の制御プログラム、およびこの制御プログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230809BHJP
B65B 1/30 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61J3/00 310E
B65B1/30 A
(21)【出願番号】P 2020558345
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044826
(87)【国際公開番号】W WO2020105551
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018217761
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【氏名又は名称】川上 桂子
(72)【発明者】
【氏名】小田 智生
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直道
(72)【発明者】
【氏名】圓井 善三
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-95654(JP,A)
【文献】特開2013-43051(JP,A)
【文献】特開2019-111371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルに区切られ、前記複数のセルの各々に薬剤が手撒きで投入されるセルトレイと、前記複数のセルの各々から薬剤を分包紙に受け入れて薬包に包装する分包ユニットと、操作に関する入出力を行う入出力インタフェースと、制御部とを備えた薬剤分包装置であって、前記制御部が、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する分割データ生成部と、前記薬剤分割データに基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる作業指示生成部とを有する、薬剤分包装置。
【請求項2】
前記セルトレイ上で、前記複数のセルを個別に識別可能とする識別手段をさらに有し、前記制御部が、前記識別手段を制御する識別制御部をさらに有し、前記識別制御部が、手撒きで投入する薬剤の種類が前記入出力
インタフェースを介して特定されたとき、前記薬剤分割データにしたがい、前記セルトレイにおいて当該薬剤を投入すべきセルを識別可能な状態とする、請求項1に記載の薬剤分包装置。
【請求項3】
前記識別手段が、前記複数のセルのそれぞれに対応して設けられた発光素子を有する、請求項2に記載の薬剤分包装置。
【請求項4】
前記分包ユニットが、前記分包紙を送り出しつつ、分包紙の送り方向に平行な方向に横シールを形成する第1封止機構と、前記分包紙の送り方向に交差する方向に縦シールを形成する第2封止機構とを有し、前記制御部が、前記薬剤分割データに基づき、前記第1封止機構および第2封止機構の動作を制御する分包制御部をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤分包装置。
【請求項5】
複数のセルに投入された薬剤を1つの薬包に分包する場合、前記分包制御部が、前記複数のセルから分包紙へ薬剤を送り出す間に、前記第1封止機構を少なくとも1回停止させる、請求項4に記載の薬剤分包装置。
【請求項6】
1つの処方データに対して、前記セルトレイに対する複数回の手撒き作業が必要な場合、1つの薬包に分包されるべき薬剤が2回の手撒き作業に分割されないよう、前記作業指示生成部が作業指示データを生成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤分包装置。
【請求項7】
複数のセルに区切られ、前記複数のセルの各々に薬剤が手撒きで投入されるセルトレイと、前記複数のセルの各々から薬剤を分包紙に受け入れて薬包に包装する分包ユニットと、操作に関する入出力を行う入出力インタフェースとを備えた薬剤分包装置の制御プログラムであって、前記薬剤分包装置が備えるプロセッサに、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する処理と、前記薬剤分割データに基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる処理とを実行させる命令を含む、薬剤分包装置の制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤分包装置に関し、特に、手撒きでの作業を支援する機能を備えた薬剤分包装置と、この装置の動作を制御する制御プログラムと、この制御プログラムを記録した記録媒体とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処方された薬剤を1回の服用分ずつ個別包装(分包)することができる薬剤分包装置が知られている。薬剤分包装置によれば、例えば、起床時、朝食後、昼食後、夕食後、または寝る前、等の服薬タイミングに分けて、処方にしたがって必要な薬剤のみが分包される。また、個々の包装材に患者氏名や服薬タイミングを印刷することもできる。これにより、薬の飲み忘れや飲み間違いを防止できるという利点がある。
【0003】
薬剤分包装置は、一般的に、処方に従って薬剤を1回の服用分ずつに分割して収容する複数のマスを備えたトレイと、前記のマスから分包紙に薬剤を送り込み、熱溶着等によって、薬剤を1回分の服薬量に分けて密封包装する分包ユニットとを備えている。
【0004】
薬剤分包装置で扱われる薬剤の種類と大きさは、様々である。このため、例えば、1回の服用分として処方される薬剤の錠数が多かったり、処方される薬剤のサイズが大きかったりする場合、トレイの1つのマスに、1回の服用分の薬剤が入りきらず、1回の服用分の薬剤を複数のマスに分けて収容せざるを得ない場合がある。
【0005】
このような状況を鑑み、例えば、下記の特許文献1には、薬剤を分割収容するための分割マスが所望の複数マス分送られるのに対して、包装材が1包分だけ送られてヒートシール包装が加えられるように、分割器の回転速度と包装装置の分包速度との関係を選択可能な構成が開示されている。すなわち、この構成においては、必要な場合に、複数マス分の薬剤を1つの分包袋内に収容することができる。
【0006】
また、下記の特許文献2には、1個の薬剤収容室内に収容されている薬剤を1包分の袋体にて包装する第1のモードと、複数個の薬剤収容室内に収容されている薬剤を1包分の袋体内にて包装する第2のモードとを有する薬剤分包装置が開示されている。すなわち、この薬剤分包装置においては、第2のモードを選択することにより、複数マス分の薬剤を1つの分包袋内に収容することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第2606110号公報
【文献】特開2002-104301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の薬剤分包装置には、粉末状、粒状、またはカプセル状等の固形薬剤を、処方に応じて、自動的にトレイに分割する仕組みの他に、薬剤師がトレイのマスに手で薬剤を投入する作業(いわゆる「手撒き」)が行える仕組みを備えたものもある。
【0009】
上述したように、1回の服用分として処方される薬剤の錠数が多かったり、処方される薬剤のサイズが大きかったりすることが原因で、1回の服用分の薬剤を複数のマスに収容する場合、これを手撒きで行うと、どのマスへどの薬剤を投入すべきかが分かりづらくなり、ミスが起こりやすい。
【0010】
そのため、手撒きユニットを備えた薬剤分包装置においては、手撒き作業における人為的ミスを防ぐために、手撒きユニットのそれぞれのセルに投入すべき薬剤を指示する機能を備えることが望ましい。
【0011】
上記の要求を鑑み、本発明は、手撒き作業における人為的ミスを未然に防ぐために、手撒き作業を支援する機能を備えた薬剤分包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、以下に開示する薬剤分包装置は、複数のセルに区切られ、前記複数のセルの各々に薬剤が手撒きで投入されるセルトレイと、前記複数のセルの各々から薬剤を分包紙に受け入れて薬包に包装する分包ユニットと、操作に関する入出力を行う入出力インタフェースと、制御部とを備えた薬剤分包装置であって、前記制御部が、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する分割データ生成部と、前記薬剤分割データに基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる作業指示生成部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、セルトレイのそれぞれのセルに投入すべき薬剤を分かりやすく指示することができ、手撒き作業における人為的ミスを未然に防ぐことに寄与する薬剤分包装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、第1の実施形態にかかる薬剤分包装置100を上から見たときの外観を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、薬剤分包装置100を正面から見たときの外観を示す正面図である。
【
図2】
図2は、薬剤分包装置の機能的な概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、手撒きユニットが備えるセルトレイの外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、分包ユニットから排出される薬包シートの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、制御部2による処理フローを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6に示したステップS103の内部処理フローを示すフローチャートである。
【
図9】
図9の(a)~(d)は、薬包に対する薬剤の割り当ての一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、
図6に示したステップS104の内部処理フローを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、1つのセルに投入されるべき薬剤の情報の一例を示す図である。
【
図12】
図12の(a)~(d)は、セルに対する薬剤の割り当ての一例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、作業指示生成部212によって生成され、入出力ユニット1のモニタに表示される作業指示画面の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、作業指示生成部212によって生成され、入出力ユニット1のモニタに表示される作業指示画面の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、1回の服用量の手撒きに複数セルが必要な場合に、手撒き作業を2回に分割する例を示す図である。
【
図16】
図16は、分包ユニット5の構成の一部を示す斜視図である。
【
図17】
図17の(a)および(b)は、縦ローラ55の動作を示す断面模式図である。
【
図18】
図18は、1つの薬包に1~6セル分の薬剤を封入する際の、横ローラ54の送り量と途中停止タイミングの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の構成にかかる薬剤分包装置は、複数のセルに区切られ、前記複数のセルの各々に薬剤が手撒きで投入されるセルトレイと、前記複数のセルの各々から薬剤を分包紙に受け入れて薬包に包装する分包ユニットと、操作に関する入出力を行う入出力インタフェースと、制御部とを備えた薬剤分包装置であって、前記制御部が、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する分割データ生成部と、前記薬剤分割データに基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる作業指示生成部とを有する。
【0016】
第1の構成によれば、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、分割データ生成部が、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する。そして、この薬剤分割データに基づいて、作業指示生成部が、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる。
【0017】
これにより、この薬剤分包装置を用いて作業を行う薬剤師は、どのセルにどの薬剤をいくつ投入すれば良いかを、入出力インタフェースからの出力に基づいて確認することができる。この結果、特に、1回に服用すべき薬剤の錠数が多い場合において、調剤ミスを未然に防ぐことができる。
【0018】
本発明の第2の構成にかかる薬剤分包装置は、第1の構成において、前記セルトレイ上で、前記複数のセルを個別に識別可能とする識別手段をさらに有し、前記制御部が、前記識別手段を制御する識別制御部をさらに有し、前記識別制御部が、手撒きで投入する薬剤の種類が前記入出力ユニットを介して特定されたとき、前記薬剤分割データにしたがい、前記セルトレイにおいて当該薬剤を投入すべきセルを識別可能な状態とする。
【0019】
第2の構成によれば、ある薬剤を手撒きで投入する際に、入出力インタフェースからの作業指示データの出力に加えて、手撒き用のセルトレイにおいて、その薬剤をどのセルに投入すれば良いかが識別可能な状態とされるので、薬剤を投入する箇所を誤るという人為的なミスをより効果的に防止することができる。
【0020】
本発明の第3の構成にかかる薬剤分包装置は、第2の構成において、前記識別手段が、前記複数のセルのそれぞれに対応して設けられた発光素子を有する。
【0021】
第3の構成によれば、手撒き用セルトレイの各セルに対応して設けられた発光素子により、薬剤を投入すべきセルを識別可能な状態とすることができる。これにより、薬剤を投入する箇所を誤るという人為的なミスをより効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の第4の構成にかかる薬剤分包装置は、第1~第3のいずれかの構成において、前記分包ユニットが、前記分包紙を送り出しつつ、分包紙の送り方向に平行な方向に横シールを形成する第1封止機構と、前記分包紙の送り方向に交差する方向に縦シールを形成する第2封止機構とを有し、前記制御部が、前記薬剤分割データに基づき、前記第1封止機構および第2封止機構の動作を制御する分包制御部をさらに有する。
【0023】
第4の構成によれば、分包制御部が、横シールを形成する第1封止機構と、縦シールを形成する第2封止機構とを、薬剤分割データに基づいて制御することにより、処方すべき薬剤の量に適した大きさの薬包を形成することができる。
【0024】
本発明の第5の構成にかかる薬剤分包装置は、第4の構成において、複数のセルに投入された薬剤を1つの薬包に分包する場合、前記分包制御部が、前記複数のセルから分包紙へ薬剤を送り出す間に、前記第1封止機構を少なくとも1回停止させる。
【0025】
第5の構成によれば、複数のセルに投入された薬剤を1つの薬包に分包する場合、前記複数のセルから分包紙へ薬剤を送り出す間に、前記第1封止機構を少なくとも1回停止させることにより、分包紙の送り方向の数か所に薬剤を分散させることができる。これにより、薬包にシワができたり、横シールを形成する部分の分包紙の合わせ目がずれたりするといった不具合が抑制され、分包紙をきれいにシールすることができる。
【0026】
本発明の第6の構成にかかる薬剤分包装置は、第1~第5のいずれかの構成において、1つの処方データに対して、前記セルトレイに対する複数回の手撒き作業が必要な場合、1つの薬包に分包されるべき薬剤が2回の手撒き作業に分割されないよう、前記作業指示生成部が作業指示データを生成する。
【0027】
第6の構成によれば、1つの薬包に分包されるべき薬剤が2回の手撒き作業に分割されないので、1つの薬包の分包作業が長時間中断されることによるシールの不具合等を未然に防ぐことができる。
【0028】
本発明の一実施形態にかかる、薬剤分包装置の制御プログラムは、複数のセルに区切られ、前記複数のセルの各々に薬剤が手撒きで投入されるセルトレイと、前記複数のセルの各々から薬剤を分包紙に受け入れて薬包に包装する分包ユニットと、操作に関する入出力を行う入出力インタフェースとを備えた薬剤分包装置の制御プログラムであって、前記薬剤分包装置が備えるプロセッサに、処方データに含まれる薬剤の1錠が1つのセルおよび1つの薬包の少なくとも一方に対して占める1錠占有率に基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す薬剤分割データを生成する処理と、前記薬剤分割データに基づいて、前記複数のセルの各々に投入すべき薬剤の錠数を表す作業指示データを生成し、前記入出力インタフェースを介して出力させる処理とを実行させる命令を含む。
【0029】
この制御プログラムによって制御される薬剤分包装置を用いて作業を行う薬剤師は、どのセルにどの薬剤をいくつ投入すれば良いかを、入出力インタフェースからの出力に基づいて確認することができる。この結果、特に、1回に服用すべき薬剤の錠数が多い場合において、調剤ミスを未然に防ぐことができる。
【0030】
本発明は、前記の制御プログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としても実施可能である。
【0031】
[実施の形態]
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0032】
[第1の実施形態]
図1Aは、第1の実施形態にかかる薬剤分包装置100を上から見たときの外観を示す平面図である。
図1Bは、薬剤分包装置100を正面から見たときの外観を示す正面図である。
【0033】
図1Aおよび
図1Bに示すように、薬剤分包装置100は、入出力ユニット1、手撒きユニット4、分包ユニット5、本体パネル6、コードリーダ(
図1A,1Bには図示せず)などを備えている。
図1Aに示すように、手撒きユニット4は薬剤分包装置100の上面に設けられており、入出力ユニット1は、手撒きユニット4の横に設置することができる。これにより、薬剤師は、入手力ユニット1の画面を見ながら、手撒き作業を行うことができる。
【0034】
図2は、薬剤分包装置100の機能的な概略構成を示すブロック図である。
図2に示すように、入出力ユニット1、制御部2、手撒きユニット4、分包ユニット5、本体パネル6、コードリーダ8は、内部バス7によって相互に接続されている。
【0035】
入出力ユニット1は、処方データを読み込み、操作画面を表示して薬剤師の指示を受け付ける。すなわち、入出力ユニット1は、薬剤分包装置100を操作するための入出力インタフェースとして機能する。入出力ユニット1は、薬剤分包装置100の内蔵ユニットとして構成しても良いし、パーソナルコンピュータ、タブレット端末またはPDA端末などの、薬剤分包装置100とは別体のハードウェアとして実現しても良い。入出力ユニット1を薬剤分包装置100とは別体に構成する場合、入出力ユニット1と薬剤分包装置100との間の通信は、有線および無線のいずれであっても良い。なお、入出力ユニット1としては、任意のデバイスを用いることができる。例えば、ディスプレイはウェアラブル端末であっても良いし、入力デバイスとして、タッチパネル以外に、キーボード、マウス、音声入力装置、ジェスチャ入力装置等の任意のデバイスを用いることができる。入出力ユニット1は、スピーカを備えて音声を出力可能としても良い。
【0036】
[制御部2]
制御部2は、薬剤分包装置100の各部の動作を制御する。制御部2は、ハードウェア構成としては、
図2に示すように、プロセッサ21および記憶部22を有する。記憶部22は、RAM、ROM、EEPROM、ハードディスク装置、またはSSD(SolidStateDrive)などで実現できる。制御部2は、記憶部22に予め記憶された各種のプログラムを、プロセッサ21によって実行することにより、後述する各種の処理を実行する。なお、制御部2は、ASICまたはDSPなどの集積回路であってもよい。
【0037】
なお、前記プログラムは、例えばCD、DVD、または半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、不図示のディスクドライブなどの読取装置によって前記記録媒体から読み取られて記憶部22にインストールされる。本発明は、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な前記記録媒体の発明としても捉えることができる。
【0038】
また、記憶部22には、例えば医薬品マスタ、患者マスタ、カセットマスタ、および薬局マスタなどの各種のデータベースが記憶されている。なお、制御部2は、例えばCD、DVD、または半導体メモリなどの記録媒体から不図示のディスクドライブなどの読取装置によって読み取られたデータに基づいて、記憶部22に記憶されている前記各種のデータベースを更新することが可能である。また、制御部2は、ユーザ操作に応じて前記各種のデータベースの内容を変更することも可能である。
【0039】
前記医薬品マスタ(薬剤データベース)には、薬ID、薬品コード、薬品名、JANコード(またはRSSコード)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬、錠剤、水剤、外用薬など)、錠剤のサイズ(高さ、長さ、幅)、体積情報およびセル比体積情報(いずれも後述)、比重、薬品種(普通薬、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項などの医薬品各々に関する情報が含まれる。また、医薬品マスタには、錠剤の画像が含まれていても良い。錠剤の画像は、写真画像とイラスト画像との両方が登録されていても良いが、写真画像およびイラスト画像のいずれか一方だけであっても良い。前記患者マスタには、患者ID、氏名、性別、年齢、既往歴、処方薬履歴、家族情報、診療科、病棟、および病室などの患者に関する情報が含まれる。前記薬局マスタには、薬局名、薬剤師の氏名、薬剤師のIDなどの薬局に関する情報が含まれる。
【0040】
なお、上記で例示した各種のデータベースを薬剤分包装置100の外部に設け、必要に応じて薬剤分包装置100からアクセスするようにしても良い。
【0041】
[手撒きユニット4]
図3は、手撒きユニット4が備えるセルトレイの外観を示す斜視図である。手撒きユニット4のセルトレイは、
図3に示すように、マトリクス状に区分された複数のセル41を備えている。なお、セルトレイは、手撒きユニット4に固定されていても良いし、手撒きユニット4に対して脱着可能に構成されていても良い。
【0042】
図3に例示した手撒きユニット4では、6行8列で合計48個のセル41が設けられている。以下、セル41のそれぞれを区別して説明する際には、41
01~41
48の参照符号を用いる。なお、
図3においては、図示の簡略化のために、参照符号41
01~41
48の一部のみを表記している。なお、本実施形態においては、セルトレイにおけるセル41の個数は48個とするが、セルの個数はこの例に限定されず、任意である。
【0043】
セル41に投入された薬剤の分包の順序は、任意に設定することが可能である。例えば、
図3において付与した参照符号と同じ順に分包されるようにしても良い。または、セル41
01~41
06、41
12~41
07、41
13~41
18…のように、列の端まで分包したらその横のセルへ移動するようにしても良い。または、41
06~41
48、41
47~41
05、41
04~41
46…のように、右上から開始して左方向へ進み、行の端まで分包したら、その下のセルへ移動して右方向へ進むようにしても良い。あるいは、41
06~41
48、41
05~41
47、41
04~41
46…のように右上から1行ずつ同じ方向に分包していくようにしても良い。これらに限らず、その他の任意の分包順序を採用することができる。
【0044】
薬剤師が、処方データにしたがってセル41へ薬剤の手撒きを完了すると、処方データで指定された用法・用量のとおりに正しく薬剤が投入されているか否かが、他の薬剤師または手撒きを行った薬剤師本人により、鑑査される。
【0045】
セル41のそれぞれの底面は、
図3では図示を省略しているが、セル毎に個別に開閉するセルシャッタ44(
図2)を有している。セルシャッタ44が開口すると、当該セル41内の薬剤が分包ユニット5へ送り出される。セルシャッタ44は、分包ユニット5の動作と連動して開閉制御される。鑑査が完了した後、薬剤師が分包処理をスタートさせるスタートボタンを操作することにより、セルシャッタ44が一つずつ開口して、セル41内の薬剤が分包ユニット5へ順次送り出される。分包ユニット5へ送り出された薬剤は、後に説明するように、分包ユニット5において薬包に分包される。なお、ここでは、セル41の底面が個別に開閉されるものとしたが、セル41の下方に、セル41と同数のセルを有する送り出し機構を別途設けてもよい。そして、分包処理のスタートボタンが操作されると全てのセルシャッタ44が一斉に開放されるようにして、セル41の薬剤を送り出し機構のセルに一斉に投下し、分包処理を行う際には、送り出し機構のセルを個別に開放するようにしても良い。
【0046】
手撒きユニット4においては、
図3に示すように、それぞれのセル41の枠の一辺に、LED42が埋め込まれている。LED42は、単色光を発光するものであっても良いし、複数色の光を切り替えて発光するものであっても良い。LED42の発光制御については、後に説明する。
【0047】
[分包ユニット5]
分包ユニット5は、手撒きユニット4から送り出されてくる薬剤を分包する。分包紙は、紙またはセロハン等を材料としており、熱溶着によって、薬剤を薬包に分けて密封包装する。分包紙を熱溶着させるために、分包ユニット5は、横ローラ54と縦ローラ55とを備えている。横ローラ54および縦ローラ55の構造および動作については、後で説明する。
【0048】
図4は、分包ユニット5から排出される薬包シート501の一例を示す図である。
図4に示すように、薬包シート501は、薬剤が分包された薬包502が連なった状態に形成される。薬包502の間にはミシン目503が形成されており、このミシン目503に沿って薬包502を個々に切り離せる。
図4には示していないが、薬包502の表面に、患者の氏名や顔写真、薬剤名、用法・用量等の様々な情報を印刷することが可能である。
【0049】
薬包シート501においては、長手方向に平行な中央線で分包紙を二つ折りし、分包ユニット5において、分包紙を長手方向に送り出しながら薬剤を受け入れた後、熱溶着によって、長手方向に沿って延びる横シール504と、長手方向に交差する方向に伸びる縦シール505とを形成することにより、薬剤が封入された薬包502が形成される。ミシン目503は、縦シール505上に形成される。この工程については、後で、より詳しく説明する。
【0050】
なお、薬剤分包装置100では、薬包シート501における薬包502の順序を、「連続」および「反復」の2種類から選択することができる。「連続」が選択されると、同じ服用時期の薬包502が連続するように薬包シート501が形成される。「反復」が選択されると、1日分の薬包502が服用時期の順に並ぶように薬包シート501が形成される。例えば、「朝食後」、「昼食後」、「夕食後」の3種類の服用時期について5日分が処方される場合、「連続」が選択されると、「朝食後」の薬包502が5つ連続し、その後に「昼食後」の薬包502が5つ連続し、さらにその後に「夕食後」の薬包502が5つ連続した状態で、薬包シート501が形成される。一方、「反復」が選択されると、「朝食後」、「昼食後」、および「夕食後」のセットが5日分繰り返される順序に、薬包シート501が形成される。「連続」と「反復」のいずれを選択するかは、薬剤師が入出力ユニット1から指定することができる。
【0051】
[コードリーダ8]
コードリーダ8は、薬品を識別するコードを読み取るものであり、薬局の薬品棚などに設けられた錠剤の収容容器(箱、瓶など)またはPTPシートなどに記載されたJANコード、RSSコード、またはQRコード(登録商標)を読み取るコード読取手段であって、例えばPDAなどの携帯端末である。なお、コードリーダ8は、薬剤師などが薬品を保管庫から取り出す際に使用する従来周知の補助装置などであってもよい。前記補助装置は、薬剤師等が処方箋に従って薬品棚から薬品を取り出して手動で調剤する際に用いられ、例えば、前記収容容器に記載されたJANコードから薬品を読み取って、その読み取られた薬品と処方データとの照合を行う。
【0052】
コードリーダ8により読み取られた情報は、コードリーダ8から無線通信により入出力ユニット1に入力される。このように無線通信を利用すれば、コードリーダ8を薬剤分包装置100または薬品棚などに自由に持ち運び可能である。もちろん、コードリーダ8が入出力ユニット1に有線接続されることも考えられる。なお、薬局内に薬剤分包装置100が複数台設けられる場合には、薬剤分包装置100の各々に予め対応付けられたコードリーダ8が個別に設けられる。
【0053】
なお、コードリーダ8は、読み取るコードの種類(規格)に応じて、任意のハードウェアで構成することができる。例えば、コードの読み取り方式は、光学的読み取りに限らず、磁気的読み取り、または電磁的読み取りであっても良い。また、コードリーダ8は、必須ではなく、省略することもできる。
【0054】
[制御部2の機能]
次に、薬剤分包装置100において各種の動作を制御する制御部2の機能について説明する。上述したように、制御部2は、プロセッサ21と記憶部22とを備えている。記憶部22に記憶されたプログラムにしたがって、プロセッサ21が、記憶部22に記憶されているデータや入力されたデータを処理することにより、以下の各種機能が実現される。
【0055】
図5は、制御部2の機能ブロック図である。
図5に示すように、制御部2は、プロセッサ21および記憶部22によって実現される機能的モジュールとして、分割データ生成部211、作業指示生成部212、識別制御部213、分包制御部214を備えている。なお、これらのモジュールは、必要なときに呼び出されまたは生成されて動作するものであって、常駐していることは必須ではない。
【0056】
図6は、制御部2による処理の手順を示すフローチャートである。
【0057】
制御部2は、処方箋に基づく薬剤の処方データを入力すると(ステップS101)、記憶部22に格納されている薬剤データベースから、処方データに含まれる薬剤に関する情報を取得する(ステップS102)。そして、制御部2の分割データ生成部211が、処方データに含まれる薬剤を、複数の薬包にどのように分割して収容するかを決定する(ステップS103)。分割データ生成部211は、さらに、それぞれの薬包に割り当てられた薬剤を、手撒きユニット4の複数のセル41にどのように割り当てるかを決定する(ステップS104)。
【0058】
次に、制御部2の作業指示生成部212が、分割データ生成部211による処理の結果に基づき、薬剤師に対する作業指示画面を生成し、入出力ユニット1のモニタに表示させる(ステップS105)。また、制御部2の識別制御部213が、手撒きユニット4のLED42を点灯制御する(ステップS106)。薬剤師は、モニタに表示される作業指示画面を見ながら、かつ、手撒きユニット4のLED42の点灯にしたがって、手撒き作業を行う。手撒き作業が終了すると、分包制御部214が、分包ユニット5を制御して分包処理を実行する(ステップS107)。
【0059】
制御部2による以上の処理により、薬剤分包装置100は、処方データにしたがった薬包シート501を作成することができる。
【0060】
[分割データ生成部の処理]
分割データ生成部211は、処方データに基づき、手撒きユニット4のセル41の各々に投入すべき薬剤の種類および数を表す薬剤分割データを生成する。なお、投入すべき薬剤の種類が1種類だけである場合、あるいは、投入すべき薬剤の種類が決まっている場合は、薬剤分割データは、投入すべき薬剤の錠数だけを表せばよい。以下に、薬剤分割データの生成の手順について、具体的に説明する。
図7は、処方データの一例である。
【0061】
ここで、
図7に示すような処方データが発行されているものとする。正確には、
図7に示す「薬品名」および「1回量」が処方データに含まれる。分割データ生成部211は、
図6のステップS101でこれらのデータを取得する。各薬品についての、「体積情報」、「1錠占有率」、「薬品占有率」は、記憶部22の薬剤データベースに記憶されており、分割データ生成部211は、
図6のステップS102において、これを記憶部22から取得する。
図7の例では、1回の服用量に、A薬品4錠、B薬品20錠、C薬品4錠、D薬品15錠が含まれている。この場合、1回の服用量に含まれる錠数が非常に多いので、手撒きユニット4のセル41には全ての錠剤が収まらない。また、この1回分の錠剤は、標準サイズの1薬包に収まらないので、複数の薬包に分割される。
【0062】
図7に示す体積情報とは、薬剤分包装置100の薬包1包あたりに各薬剤が収容できる最大の錠数である。1錠占有率とは、体積情報の逆数を%で表したものであり、1つの薬包に収容可能な最大錠数に対する1錠の比である。なお、「1錠占有率」として、1つの薬包の実際の容積に対する、各薬剤の体積比を用いることも可能である。薬品占有率は、薬包1包に、各薬剤の1回量の錠数が収容された場合の占有率であり、1回量に1錠占有率を乗じて得られる。
【0063】
分割データ生成部211は、これらのデータを用いて、上記のステップS103において、1回量の薬剤を複数の薬包に割り当てる処理を行う(ステップS103)。
図8は、ステップS103の処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【0064】
分割データ生成部211は、最初に、この1回量の薬剤を収容するために必要な薬包の数(分割包数)を、以下の式により算出する(ステップS103a)。ここで、小数点以下は切り上げとする。
[分割包数]=[総薬品占有率]÷[許容占有率]・・・(式1)
なお、総薬品占有率とは、
図7に示した薬品占有率の総和である。また、許容占有率とは、予め定められた値であり、1つの薬包について許容される占有率である。この例では、許容占有率を100%と設定しているものとするが、例えば、薬包にゆとりを持たせるために、90%や80%といった値に設定しても良い。
【0065】
図7の例では、総薬品占有率は、80.0+100.0+80.0+100.0=360.0%であり、許容占有率は100%であるので、式1より、分割包数は4となる。
【0066】
次に、分割データ生成部211は、以下の式により、薬包の目標占有率を算出する(ステップS103b)。
[目標占有率]=[総薬品占有率]÷[分割包数]・・・(式2)
【0067】
この例では、総薬品占有率が360.0%、分割包数が4であるので、目標占有率は90.0%となる。
【0068】
次に、分割データ生成部211は、目標占有率を基準として、4つの薬包のそれぞれに対して薬剤の割り当てを行う。分割データ生成部211は、まず、変数nに初期値として「1」を設定する(ステップS103c)。次に、分割データ生成部211は、処方データに含まれる薬剤であって、まだ薬包への割り当てを行っていない薬剤のうち、1錠占有率の最も大きい薬剤を1錠選択し、第nの薬包に割り当てて(ステップS103d)、第nの薬包の占有率を算出する(ステップS103e)。
図7の例では、最初に、1錠占有率が最も大きい薬剤としてA薬品が選択され、第1の薬包に割り当てられる。
図9の(a)は、ステップS103d~S103eを4回繰り返すことにより、4つの薬包のうちの第1の薬包502aに、A薬品が4錠割り当てられた段階の様子を模式的に示したものである。この段階において、第1の薬包502aの占有率は80.0%である。
【0069】
次に、
図9の(b)に示すように、分割データ生成部211は、第1の薬包502aへD薬品2錠を割り当てる。ここで、A薬品の5錠目を割り当てずに、D薬品2錠を割り当てる理由は、次のとおりである。A薬品の5錠目を割り当てると、第1の薬包502aの占有率が100%となり、目標占有率の90%を大きく超えてしまう。したがって、分割データ生成部211は、A薬品の5錠目を割り当てることをせずに、A薬品の次に1錠占有率の高いD薬品を選択し、D薬品の1錠目を第1の薬包502aに割り当てる。この時点で、第1の薬包502aの占有率は、A薬品4錠(80%)に、D薬品1錠(6.67%)が加算され、86.67%となる。この占有率は、目標占有率である90%に到達していないので、分割データ生成部211は、D薬品の2錠目を第1の薬包502aに割り当てる。この結果、
図9の(b)に示すように、第1の薬包502aには、A薬品4錠とD薬品2錠とが割り当てられて、占有率は93.4%となる。この時点で、占有率が目標占有率である90%を超えたので(ステップS103fにおいてYES)、分割データ生成部211の処理は、ステップS103gへ遷移する。
【0070】
ステップS103gにおいて、分割データ生成部211は、変数nの値を1だけ加算する。変数nの値が分割包数を超えていなければ(ステップS103hにおいてNO)、分割データ生成部211は、下記の式に基づいて、目標占有率を更新する(ステップS103i)。
[目標占有率]=([総薬品占有率]-[割当済み薬剤の占有率])÷[残りの包数]・・・(式3)
【0071】
ここでは、総薬品占有率が360%であり、割当済み薬剤の占有率(すなわち第1の薬包502aの占有率)が93.4%であるので、第2~第4の薬包502b~502dについての更新後の目標占有率は、88.8%となる(
図9の(c)参照)。
【0072】
目標占有率を更新した後は、分割データ生成部211は、すべての薬包について割り当てが済むまで、ステップS103d~S103iの処理を繰り返す。これにより、最終的に、
図9の(d)に示すように、第1~第4の薬包502a~502dに、全ての薬剤が割り当てられる。
【0073】
なお、すべての薬包について割り当てが完了した後、分割データ生成部211は、処方データ中の全ての薬剤について割り当てが完了しているか否かを判断する(ステップS103j)。ここで、まだ割り当てられていない薬剤が残っている場合は(ステップS103jにおいてNO)、分割包数を1だけ増やすと共に、これまでの割り当て結果を全てリセットして(ステップS103k)、ステップS103bへ戻り、最初の薬包から割り当てをやり直す。
【0074】
なお、以上の説明においては、1錠占有率の高い順に薬剤を割り当てていく例を説明したが、この順に限らず、処方データの順に薬剤を割り当てるようにしても良い。また、上記の説明においては、すべての薬包において薬剤ができるだけ均等になるように、割当を行っている。しかし、これに限らず、薬包数ができるだけ少なくなることを目的として、占有率が100%を超えない限りできるだけ多くの薬剤を1つの薬包に割り当てるような制御としても良い。
【0075】
以上のとおり、薬包に対する薬剤の割り当て処理が行われ、どの薬包にどの薬剤を何錠ずつ割り当てるべきかが決定されると、
図6に示したステップS103が完了し、ステップS104へ処理が進む。ステップS104では、分割データ生成部211は、それぞれの薬包に割り当てられた薬剤を、手撒きユニット4のセル41に割り当てる処理を行う。
【0076】
このステップS104の内部処理フローを、
図10に示す。ここでは、第1の薬包502aに割り当てられた薬剤(A薬品4錠およびD薬品2錠)をセル41に割り当てる場合の具体的処理を説明する。なお、
図11に示すように、各薬剤について、1つのセル41に収容可能な最大錠数が、セル比体積情報として、記憶部22の薬剤データベースに格納されている。この最大錠数は、セル41の実際の容積に基づいて求められた錠数であっても良いし、ゆとりを持たせて、セル41の実際の容積よりも小さい容積(例えば実際の容積の50%)に対して収容可能な錠数として定義されていても良い。なお、ここでの「1錠占有率」は、
図7に示した薬包に対する1錠占有率とは異なり、1つのセルに対する1錠占有率である。すなわち、ここでの「1錠占有率」は、セル比体積情報の逆数を%で表したものであり、1つのセル41に収容可能な最大錠数に対する1錠の比である。なお、「1錠占有率」として、1つのセル41の実際の容積に対する、各薬剤の体積比を用いることも可能である。
【0077】
図10に示すように、最初に、分割データ生成部211は、最初に、第1の薬包502aの薬剤を収容するために必要なセル41の数(必要セル数)を、以下の式により算出する(ステップS104a)。ここで、小数点以下は切り上げとする。
[必要セル数]=[総薬品占有率]÷[許容占有率]・・・(式4)
なお、総薬品占有率とは、
図11に示した薬品占有率の総和である。また、許容占有率とは、予め定められた値であり、1つのセル41について許容される占有率である。この例では、許容占有率を100%と設定しているものとするが、例えば、ゆとりを持たせるために、90%や80%、あるいは50%といった値に設定しても良い。
【0078】
図11の例では、総薬品占有率は、160.0+26.6=186.6%であり、許容占有率は100%であるので、式4より、分割包数は2となる。
【0079】
次に、分割データ生成部211は、以下の式により、セル41の目標占有率を算出する(ステップS104b)。
[目標占有率]=[総薬品占有率]÷[必要セル数]・・・(式5)
【0080】
この例では、総薬品占有率が186.6%、必要セル数が2であるので、目標占有率は93.3%となる。
【0081】
次に、分割データ生成部211は、目標占有率を基準として、2つのセル(以下、「第1のセル」および「第2のセル」と称する)に対する薬剤の割り当てを決定する。分割データ生成部211は、まず、変数nに初期値として「1」を設定する(ステップS104c)。次に、分割データ生成部211は、第1の薬包502aに割り当てられた薬剤であって、まだセルへの割り当てを行っていない薬剤のうち、1錠占有率の最も大きい薬剤を1錠選択し、第n(最初はn=1)のセルに割り当てて(ステップS104d)、第nのセルの占有率を算出する(ステップS104e)。
図11の例では、まず、1錠占有率が最も大きい薬剤として、A薬品が選択され、第1のセルに割り当てられる。
図12の(a)は、ステップS104d~S104eを2回繰り返すことにより、第1のセルに、A薬品が2錠割り当てられた段階の様子を模式的に示したものである。この段階において、第1のセルの占有率は80.0%である。
【0082】
次に、
図12の(b)に示すように、分割データ生成部211は、第1のセルへD薬品1錠を割り当てる。ここで、A薬品の3錠目を割り当てずに、D薬品1錠を割り当てる理由は、次のとおりである。
図11に示すように1錠占有率が40%であるA薬品の3錠目を第1のセルに割り当てると、第1のセルの占有率が120%となり、目標占有率の90%および許容占有率の100%を大きく超えてしまう。したがって、分割データ生成部211は、A薬品の3錠目を割り当てることをせずに、A薬品の次に1錠占有率の高いD薬品を選択し、D薬品の1錠目を第1のセルに割り当てる。この時点で、第1のセルの占有率は、A薬品2錠(80%)に、D薬品1錠(13.3%)が加算され、93.3%となる。この占有率は、目標占有率に到達しているので(ステップS104fにおいてYES)、分割データ生成部211の処理は、ステップS104gへ遷移する。
【0083】
ステップS104gにおいて、分割データ生成部211は、変数nの値を1だけ加算する。変数nの値が必要セル数を超えていなければ(ステップS104hにおいてNO)、分割データ生成部211は、下記の式に基づいて、目標占有率を更新する(ステップS104i)。
[目標占有率]=([総薬品占有率]-[割当済み薬剤の占有率])÷[残りのセル数]・・・(式6)
【0084】
ここでは、総薬品占有率が186.6%であり、割当済み薬剤の占有率(すなわち第1のセルの占有率)が93.4%であるので、更新後の目標占有率は、93.3%となる(
図12の(c)参照)。
【0085】
目標占有率を更新した後は、分割データ生成部211は、すべてのセルについて割り当てが済むまで、ステップS104d~S104iの処理を繰り返す。これにより、最終的に、
図12の(d)に示すように、第1のセルおよび第2のセルに、全ての薬剤が割り当てられる。
【0086】
なお、すべてのセルについて割り当てが完了した後、分割データ生成部211は、対象とする薬包に割り当てられた全ての薬剤について、セルへの割り当てが完了しているか否かを判断する(ステップS104j)。ここで、まだ割り当てられていない薬剤が残っている場合は(ステップS104jにおいてNO)、必要セル数を1だけ増やすと共に、これまでの割り当て結果を全てリセットして(ステップS104k)、ステップS104bへ戻り、最初のセルから割り当てをやり直す。
【0087】
以上の処理を、全ての薬包について行うことにより、それぞれの薬包に割り当てられた薬剤について、手撒きユニット4の複数のセル41のどこへ何錠ずつ投入すべきかが決定される。
【0088】
以上のとおり、セルに対する薬剤の割り当て処理が行われ、どのセルにどの薬剤を何錠ずつ投入すべきかが決定されると、
図6に示したステップS104が完了し、ステップS105へ処理が進む。
【0089】
[作業指示生成部212の処理]
作業指示生成部212は、ステップS104で決定された割り当て結果にしたがい、手撒きユニット4のそれぞれのセル41に投入すべき薬剤の種類と錠数に関する情報を含む作業指示画面を生成する。
【0090】
図13および
図14に、作業指示生成部212によって生成され、入出力ユニット1のモニタに表示される作業指示画面の一例を示す。
図13に示す作業指示画面は、画面の右上部分に、手撒き作業を行う薬剤の名称が表示される薬品明細部1301を有している。
【0091】
薬剤師は、手撒きする薬剤を、保管庫等からあらかじめ取り出しておく。薬剤師が、薬剤の容器等に付与されているバーコード等のコードを、コードリーダ8で読み取ると、コードリーダ8で読み取られたコード情報が、制御部2へ送信される。制御部2は、ここで読み取られたデータに基づいて、コードリーダ8で読み取られた容器の薬剤が、処方データ上の薬剤のいずれかと一致するか否かを判断する。一致していることが確認されると、制御部2は、
図13に示したように、手撒き作業指示画面の薬品明細部1301へ、当該薬剤の名称を表示させる。
【0092】
そして、薬剤師が、薬品明細部1301において、その薬剤の行1302を選択操作すると、作業指示生成部212は、
図14に示すようなセル一覧表を生成し、モニタに表示させる。
【0093】
このセル一覧表は、前述のように、分割データ生成部211の割り当て処理によって生成されたデータに基づくものであり、手撒きユニット4のどのセルにどの薬剤を何錠投入するかを表している。すなわち、
図14に示すセル一覧表は、手撒きユニット4のセル41と同じ行数および列数を有している。そして、それぞれのセル41に対応するマス目の中に、当該セルに投入すべき薬剤の錠数が数字で表示されている。薬剤師は、このセル一覧表を見ながら手撒き作業を行うことにより、セル41のそれぞれに正しい数の薬剤を投入することができる。
【0094】
なお、
図14に示したセル一覧表のデザインはあくまでも例示であって、これに限定されない。また、薬剤分包装置100においては、薬包シート501を、同じ服用時期の薬包を連続させる「連続モード」と、1日分の薬包を服用時期の順に連続させてそれを日数分反復する「反復モード」とを選択可能である。作業指示生成部212は、どちらのモードが選択されているかに応じて、セル一覧表の表示態様を切り替えることができる。
【0095】
また、全ての薬剤を分包するための必要なセルの数が、手撒きユニット4におけるセル41の総数を超える場合、作業指示生成部212は、手撒き作業を複数回に分けて行うように、作業指示画面を生成する。例えば、
図3に示した例では、セル41の個数は48であるが、必要なセル数が48を超える場合は、1回目の作業指示画面において、48個以内のセル41に対する手撒き作業を行わせる。そして、制御部2は、1回目の手撒き作業が完了すると、手撒きユニット4に投入された薬剤を分包ユニット5へ送り込み、分包処理を行わせる。1回目の手撒き作業で投入された薬剤の分包処理が完了すると、作業指示生成部212は、2回目の手撒き作業を指示する作業指示画面を生成し、入出力ユニット1のモニタに表示させる。なお、前述のように、手撒きユニット4の下に送り出し機構を有し、分包処理のスタートボタンが押されると、手撒きユニット4内の薬剤が一斉に送り出し機構に投下される構成の場合は、1回目の手撒き作業で手撒きされた薬剤の分包処理と、2回目の手撒き作業とを並行して行うことができる。
【0096】
なお、上述のように、手撒き作業を複数回に分けて行う場合、作業指示生成部212は、1つの薬包に投入されるべき薬剤の手撒きが、2回の手撒き作業に分割されないように、作業指示画面を生成する。この具体例を、
図15に示す。
図15の例では、起床時の1回の服用量を収容するために必要なセル数が6、朝食後の1回の服用量を収容するために必要なセル数が5、昼食後の1回の服用量を収容するために必要なセル数が4、夕食後の1回の服用量を収容するために必要なセル数が3、眠前の1回の服用量を収容するために必要なセル数が2である、3日分の処方データが入力されたものとする。つまり、この例では、例えば、起床時の服用分の薬剤は6セルに分割して投入されており、分包処理の際には、6セル分の薬剤を1つの薬包に封入する。
【0097】
図15において、一番上の行から順番に手撒きユニット4に薬剤を投入していくものとした場合の、必要なセル数の
累計が、最も右の列に示されている。そして、
図3に示したように、手撒きユニット4のセル数が48であったとすると、作業指示生成部212は、
図15に示すように、3日目の起床時の服用分までを、1回目の手撒き作業で投入するものとして、作業指示画面を作成する。すなわち、1回目の手撒き作業においては、48個のセル41のうち、46個のみを使用する。そして、3日目の朝食後服用分以降の処方を、2回目の手撒き作業で投入するように、作業指示生成部212が作業指示画面を生成する。
【0098】
つまり、1回目の手撒き作業において48個のセル41を全て使用するものとすると、3日目の朝食後の服用分(5セル)が、1回目の手撒き作業(2セル)と、2回目の手撒き作業(3セル)とに分割されることとなる。この場合、3日目の朝食後の服用分(5セル)の薬剤は、1回目の手撒き作業が完了した後、分包処理が開始されるが、2回目の手撒き作業が完了するまで、薬包の途中で分包処理が中断してしまう。このような中断が起こることは望ましくない。このため、本実施形態においては、1つの薬包に封入される薬剤が複数のセルにまたがっている場合、これらの複数のセルが、2回の手撒き作業に分離されないように、作業指示生成部212が手撒き作業の対象セル数を調整して、作業指示画面を生成する。
【0099】
なお、このように、手撒き作業を複数回に分けて行わせる場合、作業指示画面において、現在の手撒き作業が何回目の手撒き作業であるかがわかるような表示(テキスト表示等)を行うことが望ましい。また、
図15の例では、3日目の起床時までを1回目の手撒き作業で行うものとしたが、1回目と2回目の手撒き作業を分断する箇所は、他の箇所であっても良い。
【0100】
なお、この例では、作業指示生成部212が、モニタに表示させる作業指示画面を生成するものとした。しかし、作業指示の提供の方法はこれに限定されない。例えば、音声によるガイダンスを行う構成としても良い。
【0101】
[識別制御部213]
第1の実施形態においては、識別制御部213は、手撒きユニット4において、セル41の横に設けられたLED42の点灯制御を行うことにより、どのセルに薬剤を投入すれば良いかを識別可能とする。
【0102】
薬剤分包装置100においては、手撒き作業が行われる際に、入出力ユニット1と手撒きユニット4とが連動し、入出力ユニット1のモニタに上述の手撒き作業指示画面を表示すると共に、手撒きユニット4において、薬剤を投入すべきセル41のLED42が点灯する。
【0103】
すなわち、前述のように、薬剤師が、薬品明細部1301において、手撒きする薬剤の行1302を選択操作すると、当該薬剤が投入されるべきセル41のLED42が点灯し、他のセル41のLEDは消灯した状態となる。これにより、薬剤師が、誤ったセルに薬剤を投入してしまうことを防止することができる。
【0104】
なお、1つの薬包に封入されるべき薬剤が複数のセル41にわたる場合には、1薬包ごとの境界のセル位置がわかるように、LED42を発光させても良い。例えば、1薬包に封入される薬剤が3つのセル41に分割されている場合、3セル目、6セル目、9セル目・・・のLED42を点灯させたり、これらのLEDを点滅させたりしても良い。また、それぞれのLED42が複数色の光を呈することが可能な構成とすれば、より複雑な識別制御が可能となる。例えば、1薬包に封入される薬剤が3つのセル41に分割されている場合、3セル毎または3セル目毎に、LED42の発光色を異ならせても良い。このように、1薬包ごとの境界のセル位置がわかるようにLED42を発光制御することにより、1薬包ごとのセルの境界が分かりやすくなり、薬剤を誤ったセルに投入してしまう事故を未然に防ぐことができる。
【0105】
なお、ここでは、LEDを点灯させることによって、薬剤を投入すべきセルを識別可能とする構成例を説明したが、LED以外の識別手段を用いても良い。例えば、プロジェクトマッピングにより、薬剤を投入すべきセルを識別可能とし、かつ、投入する薬剤の数を投影するようにしても良い。
【0106】
[分包制御部214]
手撒きユニット4に対する手撒き作業と、薬剤が正しく投入されているかの確認作業が完了し、分包スタートボタンが押下されると、前述したように、手撒きユニット4のセル4101~4148の底面が順次開口することにより、セル4101~4148内の薬剤が分包ユニット5に順次送り出され、分包ユニット5において分包される。なお、前述したとおり、セルの開口順序は任意に設定することができる。
【0107】
分包ユニット5は、
図16に示すように、一対の横ローラ54(第1封止機構)と、一対の縦ローラ55(第2封止機構)とを備えている。これら一対のローラは、ヒータを備えており、分包紙500を挟み込んで熱溶着させる。横ローラ54は、分包紙を一定の方向に送りつつ、分包紙500の送り方向に平行な横シール504を形成する。縦ローラ55は、分包紙の送り方向に交差する方向に、縦シール505を形成する。
【0108】
横ローラ54と縦ローラ55とは、同軸まわりに回転するよう形成されている。
図17は、縦ローラ55を回転軸Xに垂直な断面で見た場合の断面模式図である。なお、
図17は、模式図であって、縦ローラ55の構成を正確に表したものではない。縦ローラ55は、
図17に示すように、回転軸Xに垂直な断面において略長方形を有し、その断面においける両短辺に、ヒータ55hを備えている。
【0109】
図17の(a)に示すように、縦ローラ55は、縦ローラ55aと縦ローラ55bとを備えている。縦ローラ55aは、回転軸Xまわりを反時計周りに回転する。縦ローラ55bは、回転軸Xまわりを時計周りに回転する。そして、
図17の(a)の状態からそれぞれ90度回転すると、縦ローラ55aと縦ローラ55bとは、
図17の(b)に示すように相対し、ヒータ55hで分包紙500を挟み込んで熱溶着させる。なお、ここでは、縦ローラ55が180度回転するごとに縦シールが形成される構成を例示したが、360度回転に1回だけ縦シールが形成される構成としても良い。
【0110】
なお、横ローラ54は、
図16に示すように、常に分包紙500に接触しており、分包紙500と接触する面の全周にヒータ(図示省略)を備えている。したがって、横ローラ54は、分包紙が送られている間、常に分包紙500に接触しながら、分包紙の送り方向に沿って横シール504を連続的に形成する。一方、縦ローラ55は、回転軸X周りで180度回転する毎に、分包紙500に接触し、所定の間隔で縦シール505を形成する。
【0111】
このような構成により、分包ユニット5は、熱溶着によって横シール504および縦シール505を形成することにより、薬包502を形成することができる。
【0112】
なお、横ローラ54と縦ローラ55とは、回転軸は同軸であるが、その回転速度を別個に制御することができる。したがって、例えば、縦ローラ55を停止させて横ローラ54だけを回転させることにより、横シール504だけを所望の長さにわたって形成することができる。言い換えれば、縦ローラ55を動かすタイミングを調整することにより、横方向(分包紙の送り方向)の袋長を様々に異ならせることができる。
【0113】
さらに、複数セル分の薬剤を1つの薬包に分包する場合、セルから分包紙への薬剤投入タイミングに合わせて横ローラ54の送り量を細かく制御することにより、薬包の横方向(分包紙の送り方向)に薬剤をうまく分散させることができる。
【0114】
図18は、袋長を80mm、90mm、100mm、110mmに設定するそれぞれの場合について、1つの薬包に1~6セル分の薬剤を封入する際の、ローラ(横ローラ54)の送り量と途中停止タイミングの一例を示したものである。ただし、
図18に示したタイミングは、あくまでも一例であり、停止の回数や停止位置は任意に設定することが可能である。なお、図中の「ローラの送り量と途中停止タイミング」の欄に記載されている数値は、最後に形成された縦シール505からの距離(分包紙の送り方向における距離)を表す。
【0115】
例えば袋長が80mmで、1つの薬包に1セル分の薬剤を封入する場合は、最後に形成された縦シール505から39mmだけ分包紙を送ったところで横ローラ54を停止させる。そして、横ローラ54が停止したところでセルから分包紙へ薬剤を投入する。その後、横ローラ54と縦ローラ55とを回転させることにより、最後に形成された縦シール505から80mmのところに次の縦シール505を形成する。これにより、1つのセル分の薬剤を封入した80mmの薬包が1つ形成される。
【0116】
また、袋長が80mmで、1つの薬包に3セル分の薬剤を封入する場合は、最後に形成された縦シール505から39mmだけ分包紙を送ったところで、横ローラ54を停止させる。そして、横ローラ54が停止したところで、1セル目と2セル目の合計2つのセルから分包紙へ薬剤を投入する。次に、横ローラ54だけ回転させて、最後に形成された縦シール505から55mmだけ分包紙を送ったところで、横ローラ54を停止させ、そこで3セル目の薬剤を分包紙へ投入する。その後、横ローラ54と縦ローラ55とを回転させることにより、最後に形成された縦シール505から80mmのところに次の縦シール505を形成する。これにより、3つのセルの薬剤を封入した80mmの薬包が1つ形成される。また、最後に形成された縦シール505から39mmの箇所と、55mmの箇所の2箇所に分散させて薬剤を投入するので、1か所に3セル分の薬剤をまとめて投入する場合に比べて、分包紙のたわみが小さくて済む。この結果、薬包にシワができたり、横シール504を形成する部分の分包紙の合わせ目がずれたりするといった不具合が抑制され、分包紙をきれいにシールすることができる。なお、ここでは、横ローラ54の回転を停止させてから薬剤を投入するものとしているが、手撒きユニット4のセル41からの薬剤の投入は、横ローラ54の回転中に行うこともできる。
【0117】
[変形例]
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記で説明した態様に限定されず、種々の変更が可能である。
【0118】
例えば、上記の説明においては、手撒きユニット4のみを備えた薬剤分包装置100を例示したが、錠剤カセットまたは散剤カセットをさらに備えた薬剤分包装置にも、本発明を適用することができる。また、分包ユニット5を備えず、手撒きユニット4上に薬剤トレイをセットして薬剤を投入し、投入が完了したら薬剤トレイ全面をシールする、いわゆるブリスターパック用の薬剤分包装置に対しても、本発明を適用することができる。例えば、本出願人が先に出願した特願2010-504097号(国際公開第2010/032418号)に開示された散薬分包機や、同じく特願2010-504097号(国際公開第2010/032418号)に開示された錠剤分包機、および、本出願人が先に出願したPCT/JP2018/18110号に開示されたブリスター包装機等を、本発明に適用することができる。
【0119】
また、
図6のステップS104の処理の説明において、複数種類の薬剤を1つのセルに割り当てる例を説明したが、1つのセルには1種類の薬剤のみを割り当てるようにしても良い。このような割り当てにすることにより、セル内の薬剤の数え間違いを効果的に防止することができ、調剤事故を未然に防ぐことができる。
【0120】
また、上記の実施形態においては、分包ユニット5がヒートローラによって分包紙を熱溶着させて薬包を形成する構成を例示した。しかし、分包ユニットの構成例はこれに限定されず、任意の包装装置を使用することができる。例えば、本出願人が先に出願した特願2003-401593号(特開2005-162240号公報)に開示された薬剤包装装置を、本発明の分包ユニットに適用することができる。
【0121】
手撒きユニット4のLED42には、上述したように、薬剤を投入すべきセルを薬剤師に識別させる機能の他に、以下のような機能を持たせることもできる。
【0122】
例えば、薬剤分包装置100の動作中に、何らかの異常や、エラーによる動作中断等が発生した場合に、LED42を特別なパターンで発光または点滅させることにより、操作者が離れたところに居たり、周囲環境に雑音が多い場合であったりしても、これを操作者に報知することができる。なお、事象に応じてLED42の発光パターンを異ならせることも好ましい。例えば、何らかのエラーが生じた場合には、手撒きユニット4の全てのLED42を赤色で点滅させたり、何らかのワーニング(警告)が生じた場合は、手撒きユニット4の全てのLED42を黄色で点滅させたりすることが考えられる。
【0123】
また、手撒きユニット4は、薬剤分包装置100の上面に設けられており、LED42が点滅しても、遠くに居る操作者からは視認しにくい場合がある。このため、薬剤分包装置100の筐体に反射板等を取り付けて、LED42の光を水平方向に拡散させれば、遠くからでもLEDの点灯状態を視認しやすくなる。
【0124】
また、上記の説明では、処方データを入力して、制御部2の分割データ生成部211が、どの薬剤をどのセルに投入すべきかを決定している。しかし、制御部2の分割データ生成部211によらず、薬剤師が、本体パネル6から、薬包数や1薬包あたりのセル数を設定および変更できるようにしても良い。
【0125】
例えば、3薬包分の薬剤を手撒きする場合であって、かつ、1薬包に1セルが対応する場合、3セル分のLED42を点灯させるようにする。また、本体パネル6から、薬剤師が薬包数を変更できるものとし、薬包数を3から2に変更する入力を行った場合、3セル分点灯されていたLED42のうち1つを消灯し、2セル分のLED42を点灯させるようにする。
【0126】
また、例えば、1薬包に投入すべき薬剤が5セルに分割して手撒きされる場合、薬剤師が、本体パネル6から、5セルを6セルに変更すると、その変更に連動して、LED42の点灯状態も変更される。例えば、変更前に5セルごとに薬包の境目をLED42の点灯によって表示していた場合、点灯の間隔が6セルごとに変更される。このように、設定の変更に応じてLEDの表示状態を変化させることにより、薬包数や1薬包毎の撒き位置の区切りが一目で区別できるようになる。
【0127】
さらに、本体パネル6から、薬包数や1薬包あたりのセル数が設定されている場合のLED42の点灯状態を、制御部2の分割データ生成部211による決定にしたがうLED42の点灯状態とは異ならせることも望ましい。ここでの「点灯状態を異ならせる」とは、例えば、LEDの発光色を異ならせること等を含む。このように点灯状態を異ならせることにより、処方データに基づいて自動的に設定された手撒き指示に従っているのか、本体パネル6から薬剤師が設定した手撒き手順に従っているのかを区別しやすくなる。
【0128】
また、上記の実施形態においては、入出力ユニット1のモニタへの作業指示画面の表示と、手撒きユニット4におけるLED42の点灯との両方によって、薬剤師に作業指示を行う例を説明した。しかし、手撒きユニットにおけるLED等による指示を省略し、モニタへの作業指示画面の表示のみで作業指示を行う構成や、入出力ユニット1における作業指示を省略して、手撒きユニット4におけるLED点灯だけを行う構成も、本発明の実施形態に含まれる。
【0129】
また、上記の実施形態においては、横ローラ54と縦ローラ55の回転速度を別個に制御することが可能な構成を例示した。この構成によれば、
図18に例示したように、複数種類の袋長を有する薬包を作ることができる。しかし、袋長が一定で構わなければ、横ローラ54と縦ローラ55とが一体になって回転する構成としても良い。
【0130】
さらに、上記の実施形態においては、手撒きユニット4と分包ユニット5との両方を備えた薬剤分包装置100を例示した。しかし、手撒き作業と分包処理とを別個の装置で行うようにしても良い。例えば、薬剤分包装置100から分包ユニット5を省略した形態の薬剤分配装置において、手撒き作業のみを行い、手撒きによって薬剤が投入されたセルトレイを、分包ユニット5を備えた装置において分包処理するような仕組みも、本発明の一実施形態に含まれる。
【0131】
上記各実施形態で説明した処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。この場合、各処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、プロセッサ等により行われる。それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。記憶装置(記憶媒体)は、一時的でない有形のものであり、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。
【0132】
上記の各実施形態で説明した各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。なお、上記実施形態に係る表示装置の表示処理をハードウェアにより実現する場合、各処理を行うためのタイミング調整を行う必要があるのは言うまでもない。上記実施形態においては、説明便宜のため、実際のハードウェア設計で生じる各種信号のタイミング調整の詳細については省略している。
【符号の説明】
【0133】
1…入出力ユニット
2…制御部
4…手撒きユニット
5…分包ユニット
6…本体パネル
8…コードリーダ
21…プロセッサ
22…記憶部
211…分割データ生成部
212…作業指示生成部
213…識別制御部
214…分包制御部
41…セル
42…LED
44…セルシャッタ
54…横ローラ
55…縦ローラ
501…薬包シート
502…薬包
503…ミシン目
504…横シール
505…縦シール