(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】T細胞受容体およびB細胞受容体の機能的なサブユニットペア遺伝子の解析方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20230809BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230809BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230809BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230809BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230809BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20230809BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230809BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20230809BHJP
C12Q 1/6881 20180101ALI20230809BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20230809BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230809BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230809BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230809BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230809BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230809BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230809BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230809BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230809BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12Q1/02
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6881 Z
C12N5/078
C12N5/10
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C07K14/705
C07K14/725
C12P21/02 C
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020538495
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019033095
(87)【国際公開番号】W WO2020040302
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2018157760
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514286871
【氏名又は名称】Repertoire Genesis株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/222056(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/075939(WO,A1)
【文献】特表2018-509911(JP,A)
【文献】国際公開第2017/123557(WO,A1)
【文献】特開2014-023445(JP,A)
【文献】特表2013-535209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0275296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0080078(US,A1)
【文献】国際公開第2019/073965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6869
C12N 15/12
C12N 15/63
C12Q 1/02
C12Q 1/6813
C12Q 1/6851
C12Q 1/686
C12Q 1/6876
C12Q 1/6881
C12N 5/078
C12N 5/10
C12N 7/01
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C07K 14/705
C07K 14/725
C12P 21/02
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子の配列解析をする方法であって、
(1)TCRまたはBCRを発現する活性化された
単一の細胞から
得られるTCRまたはBCRの核酸を含む核酸試料を提供する工
程と、
(2)
該活性化された単一の細胞における該TCRまたは該BCRの核酸配列を決定する工程と、
(3)
該活性化された単一の細胞における決定された該核酸配列に基づいて、
該活性化された単一の細胞におけるサブユニットペア遺伝子
の組み合わせを、TCRまたはBCR
の機能的なサブユニットペア遺伝子
として同定する工程と
を含み、
該工程(1)が、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを用いた逆転写と、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とを実施することを含む、方法。
【請求項2】
前記工程(1)の前に、前記TCRまたはBCRを発現する細胞の少なくとも一部を活性化する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化が、前記細胞を、任意の抗原もしくはその抗原MHC複合体、または任意の抗原に結合したMHCを有する抗原提示細胞で刺激することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原が、ウイルス構成物質、細菌構成物質、非自己細胞構成物質、およびがん細胞特異的構成物質からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原が、ウイルスペプチド、ウイルスペプチド糖脂質複合体、細菌ペプチド、細菌ペプチド糖脂質複合体、非自己細胞ペプチド、非自己細胞ペプチド糖脂質複合体、がん細胞特異的ペプチド、およびがん細胞特異的ペプチド糖脂質複合体からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化が、抗CD3および/または抗CD28抗体、ホスホリパーゼC(PLC)活性化剤、カルシウムイオノフォア、プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(ConA)、およびトル様受容体の活性化剤からなる群より選択される因子で刺激することを含む、前記細胞を、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が末梢血単核細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(1)が、前記活性化された細胞を活性化されていない細胞から分離することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性化された細胞の分離が、抗原-MHC分子複合体または2個~10、000個の抗原-MHC分子複合体の重合体により行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗原-MHC分子複合体の重合体が、エピトープダイマー、エピトープトライマー、エピトープテトラマー、およびエピトープペンタマーからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(1)が、
a)前記細胞のRNAと、逆転写に必要な試薬と、テンプレートスイッチに必要な試薬と、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬とを混合し、混合物を逆転写が生じる条件に供して、複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含むcDNAを提供する工程と、
b)該工程a)から得られたcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応が生じる条件に供して、該複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供する工程と
を含み、
該テンプレートスイッチに必要な試薬は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを含み、
該ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、該TCRまたは該BCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーを含み、該C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、該工程a)においてプライマー機能の一部又は全部が阻害されており、該工程b)ではプライマー機能の阻害が解除されるように設計された改変オリゴヌクレオチドプライマーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、必要に応じて、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含む5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、前記5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを含まず、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとして機能する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記逆転写に必要な試薬が、
(i)TCRαのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRβのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;
(ii)TCRδのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRγのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;または
(iii)BCR重鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびBCR軽鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー
を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬が、
(i)TCRαのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびTCRβのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;
(ii)TCRδのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびTCRγのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;または、
(iii)BCR重鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびBCR軽鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー
を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
TCRαおよびTCRβの両方、TCRδおよびTCRγの両方、またはBCR重鎖およびBCR軽鎖の両方が共増幅されることを特徴とする、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記改変オリゴヌクレオチドプライマーが、同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取る、或いは熱不安定性修飾基を含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
プライマー機能が阻害されなかった一部の改変オリゴヌクレオチドプライマーが、鋳型RNAにハイブリダイズすることで逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーとして機能する、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(3)は、以下:
(3-1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供する工程と、
(3-2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供する工程と、
(3-3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録する工程と、
(3-4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出する工程と、
(3-5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類する工程と、
(3-6)該工程(3-5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せを算出することで、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する工程と
を含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)を発現する細胞を製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、
(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程と
を含む方法。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを産生する細胞を製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、
(5)該ベクターを細胞に導入する工程と
を含む方法。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、
(5)該ベクターを細胞に導入する工程と、
(6)該細胞を培養して、培養上清からTCRまたはBCR核酸を含むウイルスまたはファージを得る工程と、
を含む方法。
【請求項23】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のRNAを製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、
(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供する工程と
を含む方法。
【請求項24】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、
(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程と、
(6)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程と
を含む方法。
【請求項25】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)請求項22に記載の方法によって製造されたウイルスまたはファージを細胞に感染させる工程と、
(5)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程と
を含む方法。
【請求項26】
請求項1~19のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施する工程と、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、
(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供し、mRNAを提供する工程と、
(6)該mRNAを、in vitroで該mRNAからタンパク質が生成される条件に供し、該タンパク質を提供する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少量の細胞からのT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子を解析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に進歩した次世代シーケンス解析技術により大規模な遺伝子の塩基配列決定が可能になった。ヒト試料からTCR遺伝子をPCR増幅し、次世代シーケンス解析技術を利用することで、従来は小規模かつV鎖使用頻度など限られた情報を得るTCRレパトア解析から、クローンレベルのより詳細な遺伝子情報を入手して解析する次世代TCRレパトア解析法が実現できるようになった。特許文献1は、集団細胞からアダプタープライマーにより非バイアス的に増幅された核酸試料を用いてT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の可変領域のレパトア(repertoire)を定量的に解析する方法を開示する。
【0003】
特許文献2は、ワンステップで、逆転写テンプレートスイッチングPCRを実施するための技術を利用したT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のレパトア解析方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/075939号
【文献】国際公開第2017/222056号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、単一細胞から、迅速に、簡便に、かつ高い特異性で、機能的なT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のペア遺伝子を解析する方法を提供する。
【0006】
本開示は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子の配列解析をする方法であって、
(1)活性化されたTCRまたはBCRを発現する細胞からTCRまたはBCRの核酸を含む核酸試料を提供する工程と、
(2)該TCRまたは該BCRの核酸配列を決定する工程と、
(3)決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度またはその組み合わせを算出し、TCRまたはBCR機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する工程と
を含む、方法。
(項目2)前記工程(1)の前に、前記TCRまたはBCRを発現する細胞の少なくとも一部を活性化する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)前記活性化が、前記細胞を、任意の抗原もしくはその抗原MHC複合体、または任意の抗原に結合したMHCを有する抗原提示細胞で刺激することを含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)前記抗原が、ウイルス構成物質、細菌構成物質、非自己細胞構成物質、およびがん細胞特異的構成物質からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)前記抗原が、ウイルスペプチド、ウイルスペプチド糖脂質複合体、細菌ペプチド、細菌ペプチド糖脂質複合体、非自己細胞ペプチド、非自己細胞ペプチド糖脂質複合体、がん細胞特異的ペプチド、およびがん細胞特異的ペプチド糖脂質複合体からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目6)前記活性化が、抗CD3および/または抗CD28抗体、ホスホリパーゼC(PLC)活性化剤、カルシウムイオノフォア、プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(ConA)、およびトル様受容体の活性化剤からなる群より選択される因子で刺激することを含む、前記細胞を、項目1または2に記載の方法。
(項目7)前記細胞が末梢血単核細胞である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)前記工程(1)が、前記活性化された細胞を活性化されていない細胞から分離することを含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)前記活性化された細胞の分離が、抗原-MHC分子複合体または2個~10、000個の抗原-MHC分子複合体の重合体により行われる、項目8に記載の方法。
(項目10)前記抗原-MHC分子複合体の重合体が、エピトープダイマー、エピトープトライマー、エピトープテトラマー、およびエピトープペンタマーからなる群から選択される、項目9に記載の方法。
(項目11)前記核酸試料が、単一の活性化された細胞から得られることを特徴とする、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)前記工程(1)が、
a)前記細胞のRNAと、逆転写に必要な試薬と、テンプレートスイッチに必要な試薬と、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬とを混合し、混合物を逆転写が生じる条件に供して、複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含むcDNAを提供する工程と、
b)該工程a)から得られたcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応が生じる条件に供して、該複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供する工程と
を含み、
該テンプレートスイッチに必要な試薬は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを含み、
該ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、該TCRまたは該BCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーを含み、該C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、該工程a)においてプライマー機能の一部又は全部が阻害されており、該工程b)ではプライマー機能の阻害が解除されるように設計された改変オリゴヌクレオチドプライマーである、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、必要に応じて、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含む5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、前記5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを含まず、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとして機能する、項目13に記載の方法。
(項目15)前記逆転写に必要な試薬が、
(i)TCRαのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRβのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;
(ii)TCRδのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRγのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;または
(iii)BCR重鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびBCR軽鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー
を含む、項目12~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)前記ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬が、
(i)TCRαのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびTCRβのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;
(ii)TCRδのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびTCRγのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;または、
(iii)BCR重鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーおよびBCR軽鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー
を含む、項目12~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)TCRαおよびTCRβの両方、TCRδおよびTCRγの両方、またはBCR重鎖およびBCR軽鎖の両方が共増幅されることを特徴とする、項目12~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)前記改変オリゴヌクレオチドプライマーが、同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取る、或いは熱不安定性修飾基を含む、項目12~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)プライマー機能が阻害されなかった一部の改変オリゴヌクレオチドプライマーが、鋳型RNAにハイブリダイズすることで逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーとして機能する、項目12~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)前記工程(3)は、以下:
(3-1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供する工程と、
(3-2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供する工程と、
(3-3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録する工程と、
(3-4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出する工程と、
(3-5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類する工程と、
(3-6)該工程(3-5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せを算出することで、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する工程と
を含む、項目12~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)TCRまたはBCRを発現する細胞におけるT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子の配列解析するためのシステムであって、
(A)該細胞の少なくとも一部を活性化するための活性剤と、
(B)活性化された該細胞から得られたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するための核酸処理用キットと、
(C)活性化された該細胞に含まれる核酸配列を決定するシーケンサと、
(D)決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度またはその組み合わせを算出し、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する分析機と
を含む、システム。
(項目22)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)を発現する細胞を製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、
(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程と
を含む方法。
(項目23)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを産生する細胞を製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、
(5)該ベクターを細胞に導入する工程と
を含む方法。
(項目24)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、
(5)該ベクターを細胞に導入する工程と、
(6)該細胞を培養して、培養上清からTCRまたはBCR核酸を含むウイルスまたはファージを得る工程と、
を含む方法。
(項目25)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のRNAを製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、
(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供する工程と
を含む方法。
(項目26)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、
(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程と、
(6)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程と
を含む方法。
(項目27)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
(4)項目24に記載の方法によって製造されたウイルスまたはファージを細胞に感染させる工程と、
(5)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程と
を含む方法。
(項目28)項目1~20のいずれか一項の記載の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、
(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、
(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供し、mRNAを提供する工程と、
(6)該mRNAを、in vitroで該mRNAからタンパク質が生成される条件に供し、該タンパク質を提供する工程と
を含む方法。
【0007】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0008】
国際公開第2017/222056号および国際公開第2017/222057号の内容はその全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、単一細胞から、より迅速に、より簡便に、かつ高い特異性で、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のペア遺伝子(例えば、TCRα/β、TCRδ/γ、BCR重鎖/軽鎖)の両方を共増幅し、機能的なTCRまたはBCRのペア遺伝子配列情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、セルソーターによるPBMCの分離の結果を示す。P1がリンパ球ゲート、P2がCMVpp65ペプチドMHC複合体テトラマー陽性のCD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)ゲート、P3がCMVpp65ペプチドMHC複合体テトラマー陰性のCD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)ゲートを示す。
【
図2】
図2は、実施例1におけるワンステップRT-TS-PCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル16、32、48、64、および90は細胞をインプットしていないネガティブコントロールウェルを示す。
【
図3】
図3は、実施例1におけるセミネステドPCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル16、32、48、64、および90は細胞をインプットしていないネガティブコントロールウェルを示す。
【
図4】
図4は、実施例1におけるセミネステドPCR反応産物の電気泳動像とシークエンシングによるV領域の決定結果を示す。ウェル16、32、48、64、および90は細胞をインプットしていないネガティブコントロールウェルを示す。
【
図5】
図5は、実施例2においてTCRαおよびTCRβを別々の反応系で増幅したセミネステドPCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル10、12、15、25~28、36、50、53、54、59、61、65、67、70、72、75、77および81はTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル4、34、51、52、68および85と、TCRβのウェル1、5~9、11、13、19、20、29、32、33、40、55、56、58、62、63、66、73、74、78、83および86は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。
【
図6】
図6は、実施例2においてTCRαおよびTCRβを同一反応系で増幅したセミネステドPCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル1、5~13、15、19、20、25~29、32~34、36、40、50~56、58、59、61~63、65~68、70、72~75、77、78、81、83、85および86はバンドが確認されたウェルを示す。
【
図7】
図7は、実施例3においてCMVpp65ペプチドで刺激し、ソートした細胞でのセミネステドPCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル6、7、12、13、15、18、20、29、31、32、33、37、38、44、52、60、77、86および87がTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル1、11、26、49、50および74と、TCRβのウェル1、3、5、8、10、14、17、25、27、30、40、51、54~58、61、63、67、76および78は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。
【
図8】
図8は、実施例3においてM1ペプチドで刺激し、ソートした細胞でのセミネステドPCR反応産物の電気泳動像を示す。ウェル13、36、39、42、54、57、67、82および90がTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル2、3、26~28、31、32、34、35、40、41、75、77、85および89とTCRβのウェル8、11、25、33、37、38、61、74、76、78、79、83および87は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。
【
図9】
図9は、実施例4においてBCRμ、BCRκおよびBCRλを同一反応系で増幅したセミネステドPCR産物の電気泳動像を示す。
【
図10】
図10は、実施例4においてBCRμ、BCRκおよびBCRλを別々の反応系で増幅したセミネステドPCR産物の電気泳動像を示す。
【
図11】
図11は本開示のレパトア解析システムのブロック図を示す。
【
図12】
図12は、実施例7においてTCRαおよびTCRβを別々の反応系で増幅したセミネステドPCR産物の電気泳動像を示す。条件1において、ウェル1~5および7~15がTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル6は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。条件2において、ウェル3~5、7、8、11、12および15~19がTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル1および2とTCRβのウェル6、10および13は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。条件3において、ウェル1、5、8、12~17および19がTCRα/β両方でバンドが確認されたウェル、TCRαのウェル11とTCRβのウェル2、7、9、10および18は片方のみバンドが確認されたウェルを示す。
【
図13】
図13は、TCRペア遺伝子全長タンパクコーディング領域cDNAのPCRクローニング結果を示す。
【
図14】
図14は、構築したpcDNA3.1V5HisB/TCRα、pcDNA3.1V5HisB/TCRβ発現プラスミドの電気泳動像を示す。
【
図15】
図15は、TCRC領域cDNAのPCRクローニング結果を示す。
【
図16】
図16は、TCRC領域から3’UTR領域までのcDNAのPCRクローニング結果を示す。
【
図17】
図17は、TCRペア遺伝子V(D)Jタンパクコーディング領域cDNAのPCRクローニング結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
(定義)
本明細書において、数値の前の「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0013】
本明細書において「細胞を活性化する」とは、任意の抗原またはTCRもしくはBCRの発現を誘導する任意の作用物質と、細胞とを接触させて、細胞におけるTCRまたはBCRのmRNA発現量を増加させることをいう。TCRもしくはBCRの発現を誘導する任意の作用物質としては、例えば、抗CD3および/または抗CD28抗体、イオノマイシン、PMA、PHA、ConA、およびトル様受容体の活性化剤が挙げられるが、これらに限定されない。細胞を活性化することを目的として使用される抗原および作用物質を「活性剤」と称することもある。
【0014】
本明細書において、「活性化」は、代表的に、細胞増殖とサイトカインや免疫関連タンパク増加を伴うT細胞/B細胞の免疫作用の亢進と表現することができる。一つの具体的な判定手法としては、T細胞の場合シャーレ内での細胞殺傷アッセイ法が挙げられる。この手法では、「活性化」される場合T細胞が殺傷したターゲット細胞の数が増えるため、細胞数をカウントすることによって活性を測定することができる。
【0015】
より詳細に説明すると、生物学的には、細胞増殖によるクローンの増加(非特異的活性化剤では全細胞が増えるが、他方、特定の抗原の場合、特定の抗原に結合するT細胞、B細胞のみ増加する。)、および免疫活性を亢進させるインターフェロンやインターロイキンなどのサイトカインのタンパク質発現量の定量またはmRNA発現量の定量、TCRやBCR/イムノグロブリンのタンパク量の増加によっても測定することができる。具体的には、それらを計測するためのより簡便なアッセイ系として遺伝子発現解析によるmRNA量増加や顕微鏡観察による細胞のブラストサイト化(細胞が増殖し、ブドウの房のように凝集すること)の判定などの手法を利用することができる。また、細胞障害性Tリンパ球のマーカーであるCD8およびCD103等を検出する手法も利用可能である。B細胞の活性化については、イムノグロブリンのタンパク質発現量の定量またはmRNA発現量の定量によって判定することもできる。
【0016】
本明細書において、TCRまたはBCRの「機能的なサブユニットペア遺伝子」とは、細胞において発現された場合、ペア遺伝子(TCRα/β、TCRδ/γ、BCR重鎖/軽鎖などのサブユニット)から翻訳および生合成されたタンパクが対合してTCRタンパク複合体またはBCR/イムノグロブリンタンパク複合体を形成し、実際に機能するTCRまたはBCRを構成するペア遺伝子をいう。
【0017】
本明細書において「T細胞受容体(TCR)」とは、免疫系をつかさどるT細胞の細胞膜に発現する抗原を認識する受容体をいう。α鎖、β鎖、γ鎖およびδ鎖が存在し、αβまたはγδの二量体を構成する。前者の組み合わせからなるTCRをαβTCR、後者の組み合わせからなるTCRをγδTCRと呼び、それぞれのTCRを持つT細胞はαβT細胞、γδT細胞と呼ばれる。構造的にB細胞の産生する抗体のFabフラグメントと非常に類似しており、MHC分子に結合した抗原分子を認識する。成熟T細胞の持つTCR遺伝子は遺伝子再編成を経ているため、一個体は多様性に富んだTCRを持ち、様々な抗原を認識することができる。TCRはさらに細胞膜に存在する不可変なCD3分子と結合し複合体を形成する。CD3は細胞内領域にITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)と呼ばれるアミノ酸配列を持ち、このモチーフが細胞内のシグナル伝達に関与するとされている。それぞれのTCR鎖は可変部(V)と定常部(C)から構成され、定常部は細胞膜を貫通して短い細胞質部分を持つ。可変部は細胞外に存在して、抗原-MHC複合体と結合する。可変部には超可変部、あるいは相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域が3つ存在し、この領域が抗原-MHC複合体と結合する。3つのCDRはそれぞれCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれるが、TCRの場合、この内CDR1とCDR2はMHCと結合し、CDR3が抗原と結合すると考えられている。TCRの遺伝子再構成は免疫グロブリンとして知られるB細胞受容体の過程と同様である。αβTCRの遺伝子再編成ではまず、β鎖のVDJ再編成が行われ、続いてα鎖のVJ再編成が行われる。α鎖の再編成が行われる際にδ鎖の遺伝子は染色体上から欠失するため、αβTCRを持つT細胞がγδTCRを同時に持つことはない。逆にγδTCRを持つT細胞ではこのTCRを介したシグナルがβ鎖の発現を抑制するため、γδTCRを持つT細胞がαβTCRを同時に持つこともない。
【0018】
本明細書において「B細胞受容体(BCR)」とは、膜結合型免疫グロブリン(mIg)分子と会合したIgα/Igβ(CD79a/CD79b)ヘテロ二量体(α/β)から構成されるものをいう。mIgサブユニットは抗原に結合し、受容体の凝集を起こすが、一方、α/βサブユニットは細胞内に向かってシグナルを伝達する。BCRが凝集すると、チロシンキナーゼのSyk及びBtkと同様に、SrcファミリーキナーゼのLyn、Blk、及びFynを速やかに活性化するといわれる。BCRシグナル伝達の複雑さによって多くの異なる結果が生じるが、その中には、生存、耐性(アネルギー;抗原に対する過敏反応の欠如)またはアポトーシス、細胞分裂、抗体産生細胞または記憶B細胞への分化などが含まれる。
【0019】
本明細書において「レパトア(repertoire)」または「可変領域のレパトア」とは、TCRまたはBCRで遺伝子再構成により任意に作り出されたV(D)J領域の集合をいう。TCRレパトア、BCRレパトア等と熟語で使用されるが、これらは例えば、T細胞レパトア、B細胞レパトアなどと称されることもある。例えば、「T細胞レパトア」とは、抗原認識において重要な役割を果たすT細胞受容体(TCR)の発現によって特徴づけられるリンパ球の集合をいう。T細胞レパトアの変化は、生理的状態および疾患状態における免疫状態の有意な指標をもたらすため、T細胞レパトア解析は、疾患の発症に関与する抗原特異性T細胞の同定およびTリンパ球の異常の診断のために行われてきた。TCR可変領域に特異的な抗体のより大きなパネルを用いた蛍光活性化セルソーター分析による可変領域の使用の比較(van den Beemd R et al. (2000) Cytometry 40: 336-345; MacIsaac C et al. (2003) J Immunol Methods283: 9-15; Tembhare P et al. (2011) Am J Clin Pathol 135: 890-900; Langerak AWet al. (2001) Blood 98: 165-173)、複数のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Rebai N et al.(1994) Proc Natl Acad Sci U S A 91: 1529-1533)、またはPCRに基づく酵素結合免疫吸着検定法(Matsutani T et al. (1997) Hum Immunol 56:57-69; Matsutani T et al. (2000) Br J Haematol 109: 759-769)は、T細胞レパトアの変化を検出するために広く使用されてきた。CDR3スペクトラタイピングとして公知の鎖長分布の分析は、V-(D)-J領域における非鋳型ヌクレオチドの付加に基づいており、T細胞のクローナリティおよび多様性を評価するために使用されてきた(Matsutani T etal. (2007) Mol Immunol 44: 2378-2387; Matsutani T et al. (2011) Mol Immunol 48:623-629)。T細胞の抗原特異性をさらに同定するために、TCRクローンタイプのPCRクローニングおよびその後の抗原認識領域、CDR3の配列決定が必要であった。これらの従来のアプローチが、一般的に使用されるが、TCRレパトアを研究するのに時間がかかり労力を有する方法である。
【0020】
本明細書において「抗原-MHC分子複合体の重合体」とは、抗原(例えば、ペプチド断片)とMHC分子との複合体を複数重合させたものをいう。抗原-MHC分子複合体の重合体の非限定的な作製方法としては、抗原とMHC分子を複合体化してモノマー抗原-MHC分子複合体を形成し、次いでモノマー複合体のC末端のリジン残基をビオチン化し、次いで、ビオチン-アビジン結合を利用してテトラマー化する方法が挙げられる。重合体は、セルソーターによる分離のために蛍光標識されてもよい。抗原-MHC分子複合体の重合体としては、エピトープダイマー、エピトープトライマー、エピトープテトラマー、およびエピトープペンタマー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において「共増幅(co-amplification)」は、2以上の核酸分子を同じ機会に増幅することを意味する。共増幅は、同時期に増幅することのみを意図するものではなく、厳密に同時期に増幅していない場合でも、「共増幅」の後の少なくともある時点において、その2以上の核酸分子が「共増幅」の前と比べて増幅した結果が得られていればよく、同一反応系において2以上の核酸分子を異なる時期に増幅することも包含する。2以上の核酸分子としては、TCRαおよびTCRβ、TCRδおよびTCRγ、ならびにBCR重鎖およびBCR軽鎖などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書において「データベース」とは、遺伝子に関する任意のデータベースをいい、特に本開示では、T細胞受容体およびB細胞受容体レパトアを含むデータベースをいう。このようなデータベースとしては、IMGT(the international ImMunoGeneTics information system、 www.imgt.org)データベース、日本DNAデータバンク (DDBJ、DNA Data Bank of Japan、www.ddbj.nig.ac.jp)データベース、GenBank(米国生物工学情報センター、www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/)データベース、ENA(EMBL(欧州分子生物学研究所)、www.ebi.ac.uk/ena)データベース等をあげることができるがこれに限定されない。
【0023】
本明細書において「可変領域のレパトア(repertoire)」とは、TCRまたはBCRで遺伝子再構成により任意に作り出されたV(D)J領域の集合をいう。
【0024】
本明細書において「インデックス配列」とは、増幅産物が同定できるように、ユニークさを付与するための配列である。したがって、目的とする配列とは異なることが好ましい。また、増幅に影響しない配列であることが好ましい。インデックス配列についての判定基準およびその代表例については以下のとおりである。すなわち、インデックス配列の判定基準について説明すると、インデックス配列は、複数のサンプルを混合して同時にシーケンスする際に、各サンプルを識別するために付加する塩基配列である。一つのサンプル由来のリードには、一つのインデックス配列が対応付けられ、獲得されたリード配列がどのサンプルに由来するかを識別することができる。A、C、G、Tの4種の塩基の任意配列であり、理論的には10塩基で約100万、20塩基で約1兆種類の配列を作り出すことができる。塩基配列長は、好ましくは、2塩基以上40塩基以下であり、より好ましくは、6塩基以上10塩基以下である。同時に、連続する配列(AA、CC、GG、TT)を含まない配列を用いることが望ましい。
【0025】
本明細書において「アイソタイプ」とは、IgM、IgA、IgG、IgEおよびIgD等において、同じタイプに属するが、相互に配列が異なるタイプを言う。アイソタイプは種々の遺伝子の略称や記号を用いて表示される。
【0026】
本明細書において「サブタイプ」とは、BCRの場合IgAおよびIgGにおいて存在するタイプ内のタイプであって、IgGについては、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4、IgAについてはIgA1もしくはIgA2が存在する。TCRについても、β鎖およびγ鎖において存在することが知られており、それぞれTRBC1、TRBC2、あるいはTRGC1、TRGC2が存在する。
【0027】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。従って本明細書において「相同体」または「相同遺伝子産物」は、本明細書にさらに記載する複合体のタンパク質構成要素と同じ生物学的機能を発揮する、別の種、好ましくは哺乳動物におけるタンパク質を意味する。
【0028】
本明細書において「被験体」とは、本開示の解析のための試料の起源または本開示の診断の対象を指し、被験体としては、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等)があげられるが、霊長類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0029】
本明細書において「試料」とは、被験体等から得られた任意の物質をいい、例えば、核酸(例えば、RNA)、細胞、組織、器官等が含まれる。当業者は本明細書の記載をもとに適宜好ましい試料を選択することができる。
【0030】
本明細書において「手段」とは、ある目的を達成する任意の道具となり得るものをいう。
【0031】
本明細書において「診断」とは、被験体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状または未来を判定することをいう。本開示の方法、装置、システムを用いることによって、体内の状態を調べることができ、そのような情報を用いて、被験体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。本明細書において、狭義には、「診断」は、現状を診断することをいうが、広義には「早期診断」、「予測診断」、「事前診断」等を含む。本開示の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができ、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。本明細書において、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることを明確にするために、特に「予測診断、事前診断もしくは診断」を「支援」すると称することがある。
【0032】
本開示の診断薬等の医薬等としての処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量を決定することができる。
【0033】
本明細書において「トリミング」とは、遺伝子解析において、不適切な部分の除去を行うこという。トリミングは、リード両端から低クオリティ領域、もしくは実験手順において付与された人工的核酸配列の部分配列、もしくはその両方を削除することで行われる。トリミングは、当該分野で公知のソフトウエアおよび文献(例えば、cutadapt http://journal.embnet.org/index.php/embnetjournal/article/view/200/(EMBnet.journal、2011);fastq-mcf Aronesty E.、 The Open Bioinformatics Journal(2013) 7、 1-8 (DOI:10.2174/1875036201307010001);およびfastx-toolkit http://hannonlab.cshl.edu/fastx_toolkit/ (2009))を参照しておこなうことができる。
【0034】
本明細書において「適切な長さ」とは、本開示の遺伝子解析において、アラインメント等の分析を行う際に、分析に適合するような長さをいう。そのような長さは、例えば、C領域上の配列決定開始位置から、V領域上のD領域寄りの100塩基を含む長さ以上とするようにして決定することができ、例えば、本開示では、TCRの場合、200ヌクレオチド長以上、好ましくは250ヌクレオチド長以上であってよく、BCRの場合、300ヌクレオチド長以上、好ましくは350ヌクレオチド長以上であってよいが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書において「入力配列セット」とは、本開示の遺伝子解析において、TCRもしくはBCRの解析の対象となる配列のセットをいう。
【0036】
本明細書において「遺伝子領域」とはV領域、D領域、J領域およびC領域等の各領域をさす。このような遺伝子領域は、当該分野で公知であり、データベース等を参酌して適宜決定することができる。本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。本明細書において「相同性検索」とは、相同性の検索をいう。好ましくは、コンピュータを用いてインシリコで行うことができる。
【0037】
本明細書において「近似する」とは、相同性検索を行った際に、相同性の程度が高いことをいう。相同性検索を行うソフトウェア(BLAST、FASTA等)を行った際には通常相同性の高い順序で列挙されるため、順位の高いものを適宜選択することで近似することができる。
【0038】
本明細書において「最も近しい」とは、相同性検索を行った際に、相同性の程度が最も高いことをいう。ソフトウェアで相同性検索を行った場合は1位で表示されるものを選択する。
【0039】
本明細書において「参照アリル」とは、相同性検索を行った際に、参照データベースにおいてヒットする参照アリルをいう。
【0040】
本明細書において「アラインメント」(英語では、alignmentまたはalign)とは、バイオインフォマティクスにおいて、DNAやRNA、タンパク質等の生体分子の一次構造の類似した領域を特定できるように並ぶように並べたもの、および並べることをいう。機能的、構造的、あるいは進化的な配列の関係性を知る手がかりを与えることができる。
【0041】
本明細書において「アサイン」とは、ある配列(例えば、核酸配列、タンパク質配列等)に、特定の遺伝子名、機能、特徴領域(例えば、V領域、J領域など)等情報を割り当てることをいう。具体的には、ある配列に特定の情報を入力またはリンクさせる等により達成することができる。
【0042】
本明細書において「CDR3」とは、3つめの相補性決定領域(complementarity-determining region: CDR)をいい、ここで、CDRとは、可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、この超可変領域のことをいう。軽鎖と重鎖の可変領域に、それぞれ3つのCDR(CDR1~CDR3)と、3つのCDRを取り囲む4つのFR(FR1~FR4)が存在する。CDR3領域は、V領域、D領域、J領域にまたがって存在するとされているため、可変領域の鍵を握るといわれており、分析対象として用いられる。
【0043】
本明細書において「参照V領域上のCDR3先頭」とは、本開示が対象とするV領域中のCDR3の先頭に該当する配列をいう。
【0044】
本明細書において「参照J上のCDR3末尾」とは、本開示が対象とするJ領域中のCDR3の末尾に該当する配列をいう。
【0045】
本明細書において「ランダムな変異が全体的に散在することを許容する条件」とは、ランダム変異が、結果として散在することになる任意の条件をいい、例えば、BLAST/FASTA最適パラメータであれば、以下の条件でよく表現される:アラインメント全長にわたり最大33%の不一致を許容し、かつ、その中の任意の30bpについて、最大60%の一連でない不一致を許容する。本開示で用いられるIgG等の分子のアイソタイプ等の機能的等価物は、データベース等を検索することによって、見出すことができる。本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、好ましくは電子的に、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.、 J.Mol.Biol.215:403-410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman、 Proc.Natl.Acad.Sci.、USA 85:2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman、J.Mol.Biol.147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch、 J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。BLASTが代表的に用いられている。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイ
ゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本開示において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
(好ましい実施形態)
【0046】
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
(解析方法)
【0047】
一つの局面において、本開示は、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子の配列解析をする方法であって、(1)活性化されたTCRまたはBCRを発現する細胞からTCRまたはBCRの核酸を含む核酸試料を提供する工程と、(2)該TCRまたは該BCRの核酸配列を決定する工程と、(3)決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度またはその組み合わせを算出し、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する工程とを含む、方法を提供する。本開示の方法は、活性化された細胞を使用することにより、TCRまたはBCRの機能的なペア遺伝子の配列情報を単一細胞から取得することができる。従来の解析技術(特許文献1および2)では、バルク細胞を使用するものであるため、TCR/BCRの絶対量が少ない単一細胞からTCRまたはBCRの機能的なペア遺伝子の配列情報を取得することができたことは予想外であった。バルク細胞から得られるTCR/BCRのペア遺伝子の配列情報は、単に複数の細胞における各遺伝子の出現頻度を明らかにすることはできるが、機能的なTCR/BCRを形成するペア遺伝子を同定することはできない。一方、単一細胞から得られる情報は、実際に機能的に発現したTCR/BCRに基づいているという点でさらに優れている。また、本開示の方法は、TCR/BCRのペア遺伝子を共増幅することを可能にするものでもある。特許文献1および2に開示される方法では、TCRαおよびTCRβは、別々のPCR反応により増幅されていたため、TCR/BCRのペア遺伝子を共増幅することができたことは予想外である。このように、本開示の方法は、従来技術と比べてより迅速かつ簡便に、より有益な情報(例えば、機能的なペア遺伝子の配列情報)を取得することを可能にする。
【0048】
機能的なペア遺伝子は、ペア遺伝子(例えば、TCRαおよびTCRβ等)が両方とも全長のタンパクを発現し得る配列を有するかどうかという基準で決定される。具体的には、ペア遺伝子の配列が遺伝子再編成により対象のCDR3領域がインフレームでつながり、C領域のストップコドンまで他のストップコドンの挿入がなく、全長のタンパクを発現し得る配列を有する場合、当該ペア遺伝子は、機能的なペア遺伝子であると判断することができる。
【0049】
得られたペア遺伝子の配列が機能的であることを確認するための試験を、追加的にまたは代替的に行ってもよい。確認実験(Validation実験)において、サブユニットペア遺伝子を同時にリンパ球細胞、あるいはそれに準じる細胞に発現させた場合に、タンパク質が合成され(必要に応じて、BCRの糖鎖修飾などの翻訳後修飾を受け)た後、膜に局在するTCR複合体/BCR複合体を形成できること、BCR複合体の場合はイムノグロブリンとして分泌されること、および/または、抗原が既知でる場合は抗原と結合できることを確認する。
【0050】
本開示の一実施形態において、前記工程(1)の前に、前記TCRまたはBCRを発現する細胞の少なくとも一部を活性化する工程をさらに包含してもよいし、別の実施形態において、第三者によりすでに活性化された細胞を使用してもよい。活性化された細胞は、凍結保存されていてもよい。活性化は、前記細胞を、任意の抗原もしくはその抗原MHC複合体、または任意の抗原に結合したMHCを有する抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージ、ヘルパーT細胞など)で刺激することにより行われ得る。TCRまたはBCRを発現する細胞としては、T細胞またはB細胞を含む血液細胞、末梢血単核細胞、骨髄中リンパ球細胞、脾臓内リンパ球細胞、胸腺内リンパ球細胞、肝臓内リンパ球細胞、腎臓内リンパ球細胞、その他の組織内リンパ球細胞、がん組織浸潤リンパ球細胞、疾患組織浸潤リンパ球細胞、アレルギー反応組織中のリンパ球細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
特定の実施形態において、活性化は、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、4週間行われ得る。好ましい実施形態では、活性化は、4日~10日の範囲内の任意の期間行われ、より好ましくは、7日間である。活性化の期間は、細胞増殖やサイトカイン産生の程度に応じて適宜変更可能である。
【0052】
本開示の一実施形態において、抗原は、ウイルス構成物質、細菌構成物質、非自己細胞構成物質、およびがん細胞特異的構成物質からなる群から選択されるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、抗原は、ウイルスペプチド、ウイルスペプチド糖脂質複合体、細菌ペプチド、細菌ペプチド糖脂質複合体、非自己細胞ペプチド(例えば、動植物細胞またはドナーにとって他者のヒトの細胞)、非自己細胞ペプチド糖脂質複合体、がん細胞特異的ペプチド、およびがん細胞特異的ペプチド糖脂質複合体からなる群から選択され得るがこれらに限定されない。タンパク質(特に膜タンパク質)の多くは、糖や脂質による修飾を受けており、タンパク質やペプチドに糖や脂質が結合した物質がエピトープとしてTCRやBCRのターゲットとなることが考えられる。
【0053】
本開示の別の実施形態においては、活性化は、抗CD3および/または抗CD28抗体、2、4、6-トリメチル-N-(m-3-トリフルオロメチルフェニル)ベンゼンスルホアミド(m-3M3FBS)などのホスホリパーゼC(PLC)活性化剤、イオノマイシンなどのカルシウムイオノフォア、ホルボールミリステートアセテート(PMA)などのプロテインキナーゼC(PKC)活性化剤、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(ConA)、およびトル様受容体の活性化剤からなる群より選択される因子で刺激することにより行われ得る。これらの因子は、細胞を抗原非特異的に活性化することができる。
【0054】
細胞を非特異的に活性化することにより、検体中のT細胞/B細胞中のTCRペア/BCRペア配列を均一かつ網羅的に得ることが可能である。網羅的解析より得たペア遺伝子情報をデータベース化し、AIなどを活用したコンピュータ解析を行うことにより、どのような配列同士がペアとなるか、傾向をつかむことができ、モデル化(数式化)が可能となることが期待される。また、均一に取得されたペア遺伝子をクローニングし、細胞でタンパク質発現させ精製し、タンパク質やペプチドとの結合性をシステマティックかつ網羅的に解析(BIACORE機器やFRET解析機といった機器を使用した方法が実施可能:結合性解析のマニュアル、教科書:「分子間相互作用解析ハンドブック、羊土社、磯辺俊明・中山敬一・伊藤隆司編集」、「タンパク質実験ハンドブック、羊土社、竹縄忠臣編集」)する、あるいは適切な細胞で発現させタンパク質やペプチドによるリガンド結合アッセイやシグナル活性化アッセイ(例えばFLIPR細胞内カルシウム検出アッセイなど)を行うことにより、ペア遺伝子に加え抗原配列情報もデータベース化することが可能と考えられる。それらのデータは、AIなどを活用したコンピュータ解析を行うことにより、どのような配列同士がペアとなるかに加え、そのペアはどのような抗原と結合するかモデル化可能になることが期待される。最終的には特定の抗原をターゲットとしたペア遺伝子配列をコンピュータ上でデザインすることも可能になると考えられる。
【0055】
トル様受容体の活性化剤としては、Resiquimod(TLR7の活性化剤)、リポポリサッカライド(LPS)(TLR4の活性化剤)などが挙げられるが、これらに限定されない。トル様受容体はヒトではTLR1~TLR10の10種類存在し、組織や細胞の発現特異性が異なっており、それらを活性化することにより特定の配列ペアのTCRやBCRを介さずランダムにリンパ球細胞を活性化することができる。他のトル様受容体として、ImiquimodおよびGardiquimod(TLR7の活性化剤)、CpG合成オリゴヌクレオチドODN-2006(配列tcgtcgttttgtcgttttgtcgtt、TLR9の活性化剤)、リポタンパク(TLR1、TLR2、TLR6の活性化剤)、ペプチドグリカン(TLR2の活性化剤)、リポテイコ酸(TLR2の活性化剤)、真菌の多糖(TLR2の活性化剤)、ウイルス糖タンパク(TLR2、TLR4の活性化剤)、二本鎖RNA(TLR3の活性化剤)、合成核酸ポリI/ポリC(TLR3の活性化剤)、フラジェリン(TLR5の活性化剤)、一本鎖RNA(TLR7、TLR8の活性化剤)、非メチル化CpG DNA(TLR9の活性化剤)なども同様に使用可能である。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態において、工程(1)は、活性化された細胞を活性化されていない細胞から分離することを含み得る。活性化された細胞の分離は、例えば、抗原-MHC分子複合体または2個~10、000個の抗原-MHC分子複合体の重合体により行われ得る。抗原-MHC分子複合体の重合体としては、エピトープダイマー、エピトープトライマー、エピトープテトラマー、およびエピトープペンタマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、抗原-MHC分子複合体の重合体は、エピトープテトラマーである。抗原-MHC分子複合体の重合体は、標識されていてもよい。分離する手段としては、セルソーターなどが挙げられるが、これに限定されない。活性化された細胞の分離は、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD24、CD34、CD45、CD103をさらに指標としてもよい。活性化されたT細胞を分離するための好ましい指標はCD8である。活性化されたB細胞を分離するための好ましい指標はCD19である。
【0057】
本開示の工程(1)は、ワンステップ逆転写テンプレートスイッチングPCRにより行うことができる。具体的には、工程(1)は、a)前記細胞のRNAと、逆転写に必要な試薬と、テンプレートスイッチに必要な試薬と、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬とを混合し、混合物を逆転写が生じる条件に供して、複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含むcDNAを提供する工程と、b)該工程a)から得られたcDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応が生じる条件に供して、該複数種類のTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供する工程とを含み得る。該テンプレートスイッチに必要な試薬は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを含み得、該ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、該TCRまたは該BCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーを含み得、該C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、該工程a)においてプライマー機能の一部又は全部が阻害されており、該工程b)ではプライマー機能の阻害が解除されるように設計された改変オリゴヌクレオチドプライマーであり得る。ワンステップ逆転写テンプレートスイッチングPCRは、参照によって本願明細書に組み込まれる国際公開第2017/222056号に詳細に記載されている。
【0058】
逆転写テンプレートスイッチングPCRは、鋳型となるRNAの5’末端の配列が未知であるか、共通配列を有していない場合にでも、そのRNAを鋳型とするRT-PCR増幅を可能とする技術である。逆転写テンプレートスイッチングPCRにおいては、逆転写酵素が鋳型RNAの5’末端に達すると、逆転写酵素の有するターミナルトランスフェラーゼ活性により、新たに合成したcDNAの3’末端に特定の短い配列が自動的に付加される現象を利用する。例えば、Moloney Murine Leukemia Virus由来の逆転写酵素(MMLV RT)は、シトシンリッチな短い配列(例、CC、CCC、CCCC)を、合成したcDNAの3’末端に付加する。この短い付加配列に相補的な配列を、特定のアンカー配列(第1のアンカー配列)の3’末端に付加したヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド(テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチド)を逆転写時に系内に加えると、cDNAの3’末端の付加配列と、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドの3’末端の当該付加配列の相補配列との間の相互作用を介して、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドが合成されたcDNAの3’末端にハイブリダイズし、逆転写酵素のための鋳型を延長する。その結果、逆転写酵素は、鋳型RNAの5’末端に達すると、鋳型をテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに乗り換え、その5’末端までcDNA合成を続けるため、cDNAの3’端に、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドのアンカー配列(第1のアンカー配列)に相補的な配列が付加される。逆転写のプライマーとして、鋳型RNA中の特定配列に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドプライマーか、特定のアンカー配列(第2のアンカー配列)が5’末端に付加したオリゴヌクレオチドプライマー(ランダムプライマー、オリゴ(dT)プライマー等)を用いることにより、新たに合成されるcDNAは5’末端にも既知配列を備える。その結果、当該既知配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー、及び前記第1のアンカー配列の少なくとも一部を含むオリゴヌクレオチドプライマーを含むプライマーセットを用いることにより、新たに合成されたcDNAを鋳型とするPCR増幅が可能となる。
【0059】
本開示の方法においては、「ワンステップ(一段階)」で逆転写テンプレートスイッチングPCRを実施する。「ワンステップ逆転写テンプレートスイッチPCR(RT-TS-PCR)」とは、逆転写、テンプレートスイッチおよびPCRに必要な試薬を反応開始時においてすべて混合しておき、さらなる逆転写に必要な試薬も、テンプレートスイッチに必要な試薬も、PCR増幅に必要な試薬も追加せずに、好ましくは、反応系を開放せずに(即ち、チューブの開閉や試薬の添加を行わずに)、同一の反応系において反応を進行することを特徴とする、逆転写反応からの核酸増幅方法を意味する。
【0060】
本開示の方法において、「セミワンステップ」で逆転写テンプレートスイッチングPCR(RT-TS-PCR)を実施してもよい。「セミワンステップ逆転写テンプレートスイッチングPCR(RT-TS-PCR)」とは、逆転写およびテンプレートスイッチの反応の後に、バッファー交換を行わずに、同一反応系にPCR増幅に必要な試薬(プライマー等)を含む、逆転写およびテンプレートスイッチの反応で使用した同じバッファーを添加することで、同一反応系においてその後のPCR反応を進行することを特徴とする、逆転写反応からの核酸増幅方法を意味する。
【0061】
一つの実施形態において、前記テンプレートスイッチに必要な試薬は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドを含み得る。さらなる実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含む5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを含んでもよいし、含まなくてもよい。本明細書の実施例において実証されるように、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチド(TS-Oligo)は、予想外にもPCR増幅におけるフォワードプライマーとしても機能することができる。したがって、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、上記5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを含まなくてもよいし、通常使用される量よりも少量であってもよい。
【0062】
逆転写用プライマーを添加せずに、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーのみを添加して、逆転写PCRを行っても、高い特異性でPCR増幅を達成することができる。理論に束縛されることを望まないが、逆転写反応時において、改変オリゴヌクレオチドプライマーのうちの一部は、その機能が阻害されておらず、機能が阻害されていない一部の改変オリゴヌクレオチドプライマーが逆転写プライマーとしても機能することができるか、あるいは、逆転写反応時において、改変オリゴヌクレオチドプライマーの機能が一部阻害されているため、機能が一部阻害された改変オリゴヌクレオチドプライマーが限定的に逆転写プライマーとして機能することができる。したがって、いくつかの実施形態では、逆転写に必要な試薬は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを含まなくてもよいし、含んでいたとしても、本方法において使用される逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは通常使用する量よりも少量であってもよい。いくつかの実施形態において、上記組成物中の逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、例えば、約40nM以下、好ましくは、約20nM以下、約10nM以下、約2.5nM以下、約2.0nM以下、約0.63nM以下、約0.2nM以下、約0.16nM以下、約0.02nM以下、約2.0pM以下、約0.2pM以下、又は約0.02pM以下である。別の実施形態において、上記組成物中の逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、改変オリゴヌクレオチドプライマーに対して約10分の1以下、好ましくは、約20分の1以下、約40分の1以下、約160分の1以下、約200分の1以下、約635分の1以下、約2,000分の1以下、約2,500分の1以下、約20,000分の1以下、約200,000分の1以下、約2,000,000分の1以下、又は約20,000,000分の1以下のモル比で含む。
【0063】
本開示の方法における逆転写テンプレートスイッチングPCRは、PCRにおける少なくとも一方のオリゴヌクレオチドプライマーとして、改変により逆転写におけるプライマー機能の一部又は全部が阻害されており、PCRの核酸増幅の工程ではプライマー機能の阻害が解除される。このことによって、同一の反応系にありながら逆転写反応段階とPCRの核酸増幅段階の各段階で使われるプライマーを機能的に分けることが達成され、各反応段階におけるプライマー濃度に大きく差をつけることを特徴とする。
【0064】
プライマー機能の阻害・解除する手段として、例えば、以下のアプローチが挙げられる。1)熱不安定性修飾基を含む、または逆転写反応段階では折り畳み構造を保持するように設計されたプライマーによって逆転写時のプライマー機能を阻害する。逆転写反応後、熱処理によって熱不安定修飾基の乖離または折り畳み構造の解消により、プライマー機能の阻害が解除される。2)人工塩基を含むプライマーによって逆転写反応段階ではプライマーとして機能を阻害する。
【0065】
逆転写反応の結果、逆転写反応によって鋳型RNAから、プライマー中に含まれる人工塩基と対をなす核酸が組み込まれたcDNAを合成され、当該人工核酸に対してプライマーがアニーリング可能となり、プライマー機能の阻害が解除される。
【0066】
ワンステップRT-PCRにおいては、一般的に、逆転写の開始時点において、反応系内に、鋳型RNAをcDNAに逆転写するために必要な全ての試薬と、得られたcDNAを鋳型としてPCRを行うために必要な全ての試薬が含まれる。PCRプライマーのTmは通常50℃以上に設定されるので、逆転写が進行可能な温度域(例えば、42℃)では、プライマーの特異性が十分発揮されない可能性がある。また、PCRにおいては鋳型のコピー数が指数関数的に増加するため、必要とされるPCRプライマーの濃度は、逆転写用のプライマー濃度よりも圧倒的に高い。従って、逆転写を行う際に、PCRプライマーが鋳型RNAにミスアニールし、そこを起点とした非特異的逆転写を生じ、最終的に非特異的なPCR産物を生じてしまうおそれがある。本開示においては、PCRにおけるリバースプライマーとして、改変により逆転写におけるプライマー機能の一部又は全部が阻害されており、且つ該逆転写の結果、又は熱変性処理により、該逆転写の産物を鋳型とするPCRにおけるプライマー機能を獲得する改変オリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより、非特異的逆転写を抑制することができる。
【0067】
本明細書において、「オリゴヌクレオチド」、「プライマー」、又は「オリゴヌクレオチドプライマー」は、通常は一本鎖であるポリヌクレオチドを表す。天然に生ずるものであっても合成のものであってもよい。通常は約5~約50ヌクレオチド、より好ましくは約10~約30ヌクレオチド、またはより好ましくは約15~約25ヌクレオチドの配列から構成される。オリゴヌクレオチドには、DNA、RNA、DNA/RNAキメラが包含される。
【0068】
本明細書において、「フォワードプライマー」との用語は、RT-PCRにおける鋳型RNAをセンス鎖としたときに、そのアンチセンス鎖にアニーリングするオリゴヌクレオチドプライマーを意味する。「リバースプライマー」は、センス鎖にアニーリングするオリゴヌクレオチドプライマーを意味する。
【0069】
一つの実施形態において、本開示に用いられる改変オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む。該部分配列の長さは、特に限定されないが、通常、10~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは18~25塩基である。該部分配列は、鋳型RNAに含まれる増幅を意図する領域の3’末端の部分配列であり得る。該改変オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、その3’末端に、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む。該改変オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列の5’末端に、付加配列を含んでいてもよい。付加配列は、特に限定されないが、非特異的なハイブリダイゼーションを避ける観点から、好適には、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含まない。付加配列としては、例えば、特定の制限酵素認識配列を挙げることが出来る。付加配列の長さは、特に限定されないが、非特異的なハイブリダイゼーションを避けるため、短い方が好ましい。付加配列の長さは、通常1~50塩基、好ましくは1~30塩基、より好ましくは1~10塩基である。一つの実施形態において、該改変オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列からなり、付加配列を含まない。
【0070】
本開示に用いられる改変オリゴヌクレオチドプライマーにおける改変の実施形態として、例えば、以下を挙げることができる。
(1)熱不安定性修飾基を含む、オリゴヌクレオチドプライマー
(2)同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取ることで分子内ヘアピンループ形成し、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列がマスクされた構造を呈する、オリゴヌクレオチドプライマー
(3)人工塩基を含む、オリゴヌクレオチドプライマー
【0071】
以下各実施形態について詳述する。
【0072】
(1)熱不安定性修飾基を含む、オリゴヌクレオチドプライマー
この実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマーが熱不安定性修飾基を含むことにより、修飾ヌクレオチドプライマーは、これがハイブリダイズしたポリヌクレオチドに沿って鎖を伸長することができず、すなわち、酵素の阻害により、または標的核酸へのハイブリダイゼーションの低下により、伸長可能ではない。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドプライマーの1又はそれ以上のヌクレオチド間結合又は3’末端ヒドロキシル基に、熱不安定性修飾基が置換する。したがって、鎖伸長は、修飾または修飾されたヌクレオチドが除去されないかぎり、そして除去されるまで、実質的な程度では生じない。該修飾基は熱不安定性であるが、PCR増幅における最初の変性温度(例えば、約80-105℃、好ましくは約85-100℃、より好ましくは約90-96℃(例、95℃))に到達するまでは、殆ど解離しないため、逆転写におけるプライマー機能の一部又は全部が阻害される。最初の変性温度に到達すると、修飾オリゴヌクレオチドプライマーからの修飾基の部分的または完全な解離が熱的に誘導され、修飾オリゴヌクレオチドプライマーは対応する未修飾オリゴヌクレオチドプライマーに変換される。未修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、活性状態のホスホジエステル結合を有し、ポリメラーゼによる伸長が可能である。
【0073】
熱不安定性修飾基を含む、オリゴヌクレオチドプライマーとしては、US patent No. 8133669(開示内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれる)に開示された、3’末端のヒドロキシル基が、熱不安定性修飾基に置換された修飾オリゴヌクレオチドプライマー、US patent No. 8361753(開示内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれる)に開示された、1又はそれ以上のヌクレオチド間結合において熱不安定性修飾基を含む修飾オリゴヌクレオチドプライマー等を挙げることができる。
【0074】
(1-1) 3’末端のヒドロキシル基が、熱不安定性修飾基に置換された修飾オリゴヌクレオチドプライマー(US patent No. 8133669)
一つの実施形態において、該修飾オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端に含まれる該修飾基は、
【化1】
[式中、
Z
10は、O、S、およびSeからなる群から選択され;
各R
7、各R
8、各R
9、および各R
10は、水素、直鎖状または分枝鎖状であり、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基からなる群から独立に選択され、該ヒドロカルビルは、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個の置換基を包含していてもよい、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
各X
6、各X
7、各X
8、および各X
9は、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルケニルアリール、アルケニレン、アルキル、低級アルキル、アルキレン、アルキニル、アルキニルアリール、アルコキシ、低級アルコキシ、アルキルアリール、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アルキルチオ、アルキニレン、アミド、アミジノ、アミノ、アリールアルキニル、アラルキル、アロイル、アリールアルキル、アリール、アリールカルボニルアミノ、アリーレン、アリールオキシ、アリールスルホニルアミノ、カルバメート、ジチオカルバメート、シクロアルケニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、グアニジニル、ハロ、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、ヘテロ環、ヘテロ環、ヒドロカルビル、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルカルボニル、ヒドロカルビルオキシカルボニル、ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ヒドロカルビレン、オルガノスルフィニル、ヒドロキシル、オルガノスルフィニル、オルガノスルホニル、スルフィニル、スルホニル、スルホニルアミノ、およびスルフリルからなる任意の置換または非置換の基から独立に選択され;
各X
10は、O、S、Se、NR
11、N-OR
11、およびCR
11R
12からなる群から独立に選択され;各R
11および各R
12は、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルケニルアリール、アルケニレン、アルキル、低級アルキル、アルキレン、アルキニル、アルキニルアリール、アルコキシ、低級アルコキシ、アルキルアリール、アルキルカルボニルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアミノ、アルキルチオ、アルキニレン、アミド、アミジノ、アミノ、アリールアルキニル、アラルキル、アロイル、アリールアルキル、アリール、アリールカルボニルアミノ、アリーレン、アリールオキシ、アリールスルホニルアミノ、カルバメート、ジチオカルバメート、シクロアルケニル、シクロアルキル、シクロアルキレン、グアニジニル、ハロ、ハロゲン、ヘテロアリール、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、ヘテロ環、ヘテロ環、ヒドロカルビル、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルカルボニル、ヒドロカルビルオキシカルボニル、ヒドロカルビルカルボニルオキシ、ヒドロカルビレン、オルガノスルフィニル、ヒドロキシル、オルガノスルフィニル、オルガノスルホニル、スルフィニル、スルホニル、スルホニルアミノ、およびスルフリルからなる任意の置換または非置換の基から独立に選択され;
各Y
1は、O、S、Se、NR
6、N-OR
6、およびCR
6R
7からなる群から独立に選択される]
からなる群から選択されるいずれかの基である。
【0075】
好ましい実施形態において、該修飾基は、O-(p-トルエン)スルホネート;O-リン酸;O-硝酸;O-[4-メトキシ]テトラヒドロピラニル;O-[4-メトキシ]-テトラヒドロチオピラニル;O-テトラヒドロチオピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロフラニル;O-[2-メチル、4-メトキシ]-テトラヒドロピラニル;O-[5-メチル]-テトラヒドロピラニル;O-テトラヒドロピラニル;O-テトラヒドロフラニル;O-フェノキシアセチル;O-メトキシアセチル;O-アセチル;O-C(O)-OCH3;O-C(O)-CH2CH2CN;およびO-C(S)-OCH3からなる群から選択される。一部の特に好ましい形態において、該修飾基は、O-メトキシテトラヒドロピラニル;O-テトラヒドロピラニル;およびO-テトラヒドロフラニルからなる群から選択される。
【0076】
別の実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、式V
【化2】
[式中、
Z
3は3’-O-オリゴヌクレオチジル残基、またはオリゴヌクレオチドプライマーであり、
Bは、置換もしくは非置換のプリンもしくはピリミジン、その任意のアザ誘導体もしくはデアザ誘導体、または核酸ポリメラーゼにより認識可能であることが好ましい、任意のNTP類似体による任意の「ユニバーサル塩基」もしくは「縮重塩基」から選択され;
Aは、O、S、Se、CR
1R
2、およびNR
1からなる群から選択され;
各R
1および各R
2は、H、F、Cl、Br、I、OR
3、SR
3、NR
3R
4、C(Y)R
5、ならびに置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびアラルキルからなる群から独立に選択され、
任意の置換基は各々、場合によって、1つまたは複数のヘテロ原子を含有する可能性があり;
各Yは、O、S、Se、CR
1R
2、およびNR
1からなる群から独立に選択され;
各R
3および各R
4は、H、または置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルからなる群から独立に選択され、任意の置換基は各々、場合によって、1つまたは複数のヘテロ原子を含有する可能性があり;
各R
5は、H、F、Cl、Br、OR
3、SR
3、NR
3R
4、ならびに置換または非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換のアラルキルからなる群から独立に選択され、任意の置換基は各々、場合によって、1つまたは複数のヘテロ原子を含有する可能性があり;
X
4は、R
1、F、Cl、Br、I、OR
3、SR
3、SeR
3、NR
3R
4、NR
3OR
3、NR
3-NR
3R
4、CN、N
3、C(Y)R
5、NO
2、CN、およびSSR
3からなる群から独立に選択され;
X
5は、O、S、Se、NR
6、N-OR
6、およびCR
6R
7からなる群から選択され;
Y
1は、O、S、Se、NR
6、N-OR
6、CR
6R
7、およびC(Y)からなる群から選択され;
各R
6および各R
7は、水素、また、直鎖状または分枝鎖状であり、置換されていてもよい、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基からなる群から独立に選択され、該ヒドロカルビルは、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1個の置換基を包含していてもよい、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり;
X
5およびY
1は各々、場合によって、式IBで示されるNTP分子のX
4、X
5、Z
3、A、W、またはB部分に対して、適切な原子または原子群を介して共有結合する可能性がある]
で表される化合物である。
【0077】
式Vの特定の実施形態において、Bは、チミン、シトシン、アデニン、グアニン、ウラシル、アミノアリルウラシル、7-デアザグアニン、7-デアザ-7-メチルグアニン、7-デアザ-7-ヨードグアニン、7-デアザ-7-アミノアリルグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、7-デアザデニン、2、6-ジアミノプリン、5-ニトロシトシン、5-アミノアリルシトシン、5-(ビオチン-16)-シトシン、5-(フルオレセイン-11)-シトシン、4-メチルアミノ-シトシン、および2-チオ-5-メチルウラシル、または4-チオ-5-メチルウラシルである。
【0078】
式Vの好ましい実施形態において、Bは、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、またはウラシルである。
【0079】
好ましい実施形態において、修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、
【化3】
からなる群から選択されるいずれかの化合物である。
【0080】
上記1-1の修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、US patent No. 8361753に記載された方法により製造することができる。
【0081】
(1-2) 1又はそれ以上のヌクレオチド間結合において熱不安定性修飾基を含む修飾オリゴヌクレオチドプライマー(US Patent No. 8361753)
一つの実施形態においては、該修飾オリゴヌクレオチドプライマー中の修飾基は、式I:
【化4】
[式中、
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基であり;
Xは、O、S、S(O)、S(O)
2、C(O)、C(S)またはC(O)NHであり;およびR
1は、水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を含む。
【0082】
一つの実施形態において、修飾基は、式Ia:
【化5】
[式中、
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2-5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基であり;および
R
1は水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を提供する。
【0083】
式Iaの修飾基の好ましい実施形態は以下のとおりである:
【化6】
4-オキソ-1-ペンチル、
【化7】
5-オキソ-1-ヘキシル、
【化8】
6-オキソ-1-ヘプチル、
【化9】
4-オキソ-1-ヘキシル、
【化10】
5-メチル-4-オキソ-1-ヘキシル、
【化11】
2-メチル-5-オキソ-ヘキシル、
【化12】
1-エチル-4-オキソ-ペンチル、
【化13】
1-メチル-4-オキソ-ペンチル、
【化14】
1、1-ジメチル-4-オキソ-ペンチル、
【化15】
4-オキソ-1-オクチル
【化16】
4-オキソ-1-テトラデシル、および
【化17】
4-オキソ-1-エイコサミル。
【0084】
1つの態様において、修飾基は式Ib:
【化18】
[式中、
kは0~2の整数であり;
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基であり;および
R
1は、水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を提供する。
【0085】
好ましい実施形態において、式Ibの修飾基は下記に示す4-メチルチオ-1-ブチルである:
【化19】
【0086】
1つの態様においては、修飾基は式Ic:
【化20】
[式中、
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基であり;および
R
1は、水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を提供する。
【0087】
好ましい実施形態において、式Icの修飾基は下記に示す3-(N-tert-ブチルカルボキサミド)-1-プロピルである:
【化21】
【0088】
1つの態様において、修飾基は式Id:
【化22】
[式中、
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖のヒドロカルビレン基であり;および
各R
1は、独立して、水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を提供する。
【0089】
修飾基式Idの好ましい実施形態として、2-(N-ホルミル-N-メチル)アミノエチルまたは2-(N-アセチル-N-メチル)アミノエチルが挙げられる(下記に示す):
【化23】
2-(N-アセチル-N-メチル)アミノエチル
【0090】
別の態様において、修飾基は式II:
【化24】
[式中、
Lは、1~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子、さらにより好ましくは4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖のヒドロカルビレン基であり;および
R
2は、水素、シアノ、または5~10個の原子を有する任意に置換されていてもよい炭素環、複素環、アリールまたはヘテロアリールである]
の化合物を提供する。
【0091】
好ましい実施形態において、式IIの修飾基は下記に示すN-(2-ヒドロキシエチル)-フタルイミドである:
【化25】
N-(2-ヒドロキシエチル)-フタルイミド
【0092】
別の態様において、修飾基は式III:
【化26】
[式中、
L
aおよびL
bは、それぞれ独立して、単結合、または1~8個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基から選択され;
Aは、O、S、S(O)、S(O)
2、Se、CR
3R
4、NR
3、C(O)、C(S)またはCNR
3であり;
Bは、C(O)R
3、C(S)R
3、C(O)NR
3R
4、OR
3またはSR
3であり;および
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素または1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビル基であり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、これは任意に、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールオキシ、およびヘテロアリールからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよい]
の化合物を提供する。
【0093】
別の実施形態において、修飾基は、式IV:
【化27】
[式中、
L
a、L
bおよびL
cは、それぞれ独立して、単結合、または1~8個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子、より好ましくは3~4個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビレン基から選択され;
Dは、O、S、S(O)、S(O)
2、CR
5R
6、またはNR
5であり;
Eは、O、S、S(O)、S(O)
2、CR
5R
6、またはNR
6であり;
Fは、水素、C(O)R
7、C(S)R
7、C(O)NR
7R
8、OR
7またはSR
7であり;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素、アリール、アルキル、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、またはアミノであってもよく、またはR
5およびR
6は、一緒になって、5~10個の原子からなり、D、R
5、R
6、EおよびL
bを含む単環または二環を形成してもよく、ただし、R
5およびR
6が一緒になって環を形成する場合、nは0-2であり;および
R
7およびR
8は、それぞれ独立して、アリール、アルキル、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、任意に置換されていてもよいシクロアルキル、任意に置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいアリールオキシ、または任意に置換されていてもよいヘテロアリールから選択される]
の化合物を提供する。
【0094】
R
5およびR
6が一緒になって環を形成する式IVの化合物の1つの実施形態において、修飾基は下記に示すメトキシメチル-シクロヘキシ-1、3-イル-エチルである:
【化28】
メトキシメチル-シクロヘキシ-1、3-イル-エチル
【0095】
1つの態様において、修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、構造I:
【化29】
[式中、
Nucはプライマー配列中のヌクレオシドであり;
UおよびZは、独立して、O、S、Se、NR
9、またはCR
9R
10であり;
R
9およびR
10は、それぞれ独立して、水素、または1~10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の任意に置換されていてもよいヒドロカルビルであり;好ましくは、ヒドロカルビルは、アルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、それぞれは独立して、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミドまたは検出可能な標識から選択される少なくとも1つの置換基を含んでいてもよく;
Yは、O、SまたはSeであり;
Wは、Qが熱的に切断されることを可能とする任意の化学成分、例えばO、S、S(O)、S(O)
2、Se、C(O)、C(S)、C(O)NH、C(N)H、NH、-C(=NR
11)-またはNR
9であり;
R
11は、水素または1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいヒドロカルビルであり;好ましくは、R
11は、H、アルキルまたは低級アルキルであり;および
Qは1またはそれ以上の熱切断性基を含む修飾基である]
の修飾骨格を有する。
【0096】
一つの実施形態において、修飾基Qは、上記式I、Ia、Ib、Ic、Id、II、IIIまたはIVから選択される1またはそれ以上の熱切断性基を含む。
【0097】
修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、少なくとも1つのヌクレオチド間結合において、上述のいずれかの修飾基を含む。修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、その3’末端に、1またはそれ以上の、上述のいずれかの修飾基を含む。修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、その3’末端の最後の6個のヌクレオチド間結合のいずれか、好ましくは最後の3個のヌクレオチド間結合のいずれかに、1またはそれ以上の上述のいずれかの修飾基を含む。
【0098】
別の実施形態において、オリゴヌクレオチドプライマーは、オリゴヌクレオチドプライマーの3’-末端で終わる2、3、4、5または6個の修飾ヌクレオチド間結合の連続する配列を含むことができる。さらに別の実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマーは、複数の非連続的3’修飾ヌクレオチド間結合を含んでいてもよい。修飾オリゴヌクレオチドプライマーの5’-末端も、修飾ヌクレオチド間結合を含むヌクレオチドの配列を有していてもよい。さらに別の実施形態においては、オリゴヌクレオチドのすべてのヌクレオチド間結合が修飾されていてもよい。
【0099】
別の好ましい実施形態においては、修飾オリゴヌクレオチドプライマーはオリゴヌクレオチドプライマーの3’nヌクレオチド間結合に修飾基を含み、ここでnは3’末端のヌクレオチド間結合である。さらに別の実施形態においては、修飾基は、オリゴヌクレオチドの3’n-1、n-2、n-3またはn-4ヌクレオチド間結合に存在する。さらに別の実施形態においては、オリゴヌクレオチドは、n、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の2またはそれ以上;好ましくはn、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の2またはそれ以上;好ましくはn、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の3またはそれ以上;好ましくはn、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の4またはそれ以上;好ましくはn、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の5またはそれ以上、または好ましくはn、n-1、n-2、n-3、n-4、n-5またはn-6位の6またはそれ以上に修飾基を有する。
【0100】
上記1-2の修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、US Patent No. 8361753に記載された方法により製造することができる。
【0101】
(2)同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取ることで分子内ヘアピンループを形成し、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列がマスクされた構造を呈する、オリゴヌクレオチドプライマー
この実施形態においては、同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取ることで分子内ヘアピンループを形成する。当該相補領域は、1又はそれ以上のオリゴヌクレオチドで構成される第1の配列と、それに対して1又はそれ以上の相補的なオリゴヌクレオチドを含む第2の配列の組みを指す。
【0102】
第1の配列と第2の配列の位置は、互いに隣接していてもよいが、第1の配列と第2の配列の間には1又はそれ以上のオリゴヌクレオチドを介して位置することでもよい。第1の配列または第2の配列が、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む場合は、第1の配列と第2の配列の相補的結合によって、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列がマスクされる。従って、この場合において、第1の配列と第2の配列のオリゴヌクレオチドの数は特に限定されない。
【0103】
第1の配列または第2の配列が、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含まない場合は、第1の配列と第2の配列のオリゴヌクレオチドの間には鋳型RNAの部分配列に相補的な配列が含まれ、分子内ヘアピンループ形成により、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列がマスクされる。
【0104】
鋳型RNAの部分配列に相補的な配列がマスクされているため、逆転写時においては、鋳型RNAの対応する部分配列にハイブリダイズすることができず、プライマー機能の一部又は全部が阻害されている。しかしながら、PCR増幅における変性温度(例えば、約55~105℃、好ましくは約85~100℃、より好ましくは約90~96℃(例、95℃))においては、ヘアピンループ構造が解離し、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列が曝露されるため、引き続く対合温度において、cDNA中の対応する部分配列にハイブリダイズ可能となる(即ち、プライマー機能を獲得する)。ヘアピンループのループ部分の長さは、通常、5~25塩基程度である。該ループ部分のヌクレオチド配列は、分子内ヘアピンループを形成することができる限り、特に限定されない。
【0105】
(3)人工塩基を含む、オリゴヌクレオチドプライマー
この実施形態の改変オリゴヌクレオチドプライマーは、人工塩基(非天然塩基)を含むので、該改変オリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列の相補配列が、鋳型RNA(人工塩基を含まない鋳型RNA)中に実質的に存在しない。そのため、鋳型RNAへの該改変オリゴヌクレオチドプライマーのハイブリダイゼーションが抑制されているので、逆転写におけるプライマー機能の一部又は全部が阻害されることになる。一つの実施形態において、該改変オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端の15塩基のうち、1塩基以上、好ましくは、3塩基以上、5塩基以上、10塩基以上、12塩基以上、好ましくは15塩基全てが、人工塩基である。好ましい実施形態において、該改変オリゴヌクレオチドプライマーの最も3’末端の塩基が、人工塩基である。
【0106】
この実施形態の改変オリゴヌクレオチドプライマーは、該改変オリゴヌクレオチドプライマーの人工塩基を含む部分配列を含む、逆転写を開始するためのオリゴヌクレオチドプライマーと組み合わせて使用される。人工塩基を含む部分配列の長さは、10~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは18~25塩基である。人工塩基を含む部分配列は、特に限定されないが、例えば、該改変オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端の部分配列であり得る。逆転写を開始するためのオリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列、及び前記人工塩基を含む部分配列を含み、該人工塩基を含む部分配列は、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列の5’側に付加される。鋳型RNAの部分配列の長さは、特に限定されないが、通常、10~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは18~25塩基である。該部分配列は、鋳型RNAに含まれる増幅を意図する領域の3’末端の部分配列であり得る。逆転写を開始するためのオリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、その3’末端に、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む。
【0107】
このような組み合わせを用いて、ワンステップ逆転写テンプレートスイッチングPCRを行うと、逆転写において、5’末端に、改変オリゴヌクレオチドプライマーの人工塩基を含む部分配列が付加されたcDNAが合成されるので、その結果、上記人工塩基を含む改変オリゴヌクレオチドプライマーは、該cDNAを鋳型とするPCRにおけるプライマー機能を獲得する。そして、該cDNAを鋳型とし、該改変オリゴヌクレオチドプライマーを一方のプライマーとするPCR増幅を行うことにより、目的とする領域を特異的に増幅することができる。
【0108】
人工塩基としては、Z塩基/F塩基(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997、 94、 105061;Nat. Struct. Biol. 1998、 5、 950;Nat. Struct. Biol. 1998、 5、 954)、Q塩基(J. Am. Chem. Soc. 1999、 121、 2323)、iso-G塩基/iso-C塩基(J. Am. Chem. Soc. 1989、 111、 8322)、2-チオT(TS)塩基(Nucleic Acids Res. 2005、 33、 5640)、P塩基/Z塩基(Nucleic Acids Res. 2007、 35、 4238)、PICS塩基(J. Am. Chem. Soc. 1999、 121、 11585)、5SICS塩基/MMO2塩基/NaM塩基(J. Am. Chem. Soc. 2009、 131、 14620)、2-amino-6-dimethylaminopurine(x)/2-oxopyridine(y)(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2001、 98、 4922)、2-アミノ-6-(2-チエニル)プリン(s)(J. Am. Chem. Soc. 2005、 127、 17286;Nucleic Acids Res. 2005、 33、 e129;Biotechniques 2006、 40、 711)、imidazolin-2-one(z)(J. Am. Chem. Soc. 2004、 126、 13298)、Ds塩基/Pa塩基(Nat. Methods 2006、 3、 729)、Pn塩基(J. Am. Chem. Soc. 2007、 129、 15549)、Px塩基(Nucleic Acids Res. 2009、 37、 e14)、xA塩基、xT塩基(J. Am. Chem. Soc. 2004、 126、 11826)、Im-NO塩基/Na-ON塩基、Im-ON塩基/Na-NO塩基(J. Am. Chem. Soc. 2009、 131、 1644;Angew. Chem. Int. Ed. 2005、 44、 596)等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらの人工塩基は、以下の塩基対を形成することにより、逆転写及び/又はPCR増幅に寄与し得る:Z-F塩基対、Q-F塩基対、isoG-isoC塩基対、A-TS塩基対、P-Z塩基対、PICS-PICS塩基対(自己相補的)、5SICS-MMO2塩基対、5SICS-NaM塩基対、x-y塩基対、s-y塩基対、s-z塩基対、Ds-Pa塩基対、Ds-Pn塩基対、Ds-Px塩基対、xA-T塩基対、A-xT塩基対、Im-NO-Na-ON塩基対、Im-ON-Na-NO塩基対。
【0109】
以下に、本開示の方法を、更に詳細に記載する。
【0110】
本開示の方法においては、まず、
i)テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチド、
ii)該テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含む5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマー、及び上記改変オリゴヌクレオチドプライマーからなるプライマーセット、並びに
iii)鋳型RNA
を含む、該鋳型RNAをcDNAにテンプレートスイッチング逆転写するため、及び該cDNAの少なくとも一部をPCR増幅するために必要な全ての試薬(但し、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを除く)を含む、組成物が提供される。
【0111】
テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、逆転写酵素が鋳型RNAの5’末端に達した時に、逆転写酵素の有するターミナルトランスフェラーゼ活性により、新たに合成したcDNAの3’末端に付加される配列(単に、RT付加配列という場合がある)に相補的な配列、及びアンカー配列を含み、RT付加配列の相補配列の5’末端にアンカー配列(第1のアンカー配列)が付加されている。好ましくは、RT付加配列の相補配列は、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドの3’末端に位置する。RT付加配列は、逆転写酵素の種類に依存する。例えば、Moloney Murine Leukemia Virus由来の逆転写酵素(MMLV RT)は、シトシンリッチな短い配列(例、CC、CCC、CCCC)を、合成したcDNAの3’末端に付加するので、その相補配列であるグアニンリッチな短い配列(例、GG、GGG、GGGG)が、RT付加配列の相補配列として、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれる。アンカー配列とは、オリゴヌクレオチドの5’末端に付加される、人工的な配列を意味する。アンカー配列は自然界に存在しない配列であることが好ましい。アンカー配列の長さは、特に限定されないが、通常、10塩基~100塩基程度、好ましくは15塩基~50塩基程度
である。
【0112】
テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。逆転写における鋳型として効率的に機能するため、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、好適には、RNA又はDNA/RNAキメラであり、より好ましくはDNA/RNAキメラである。一つの実施形態において、RT付加配列の相補配列の部分がRNAであり、アンカー配列の部分がDNA又はDNA/RNAキメラである。テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、以下に説明する5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとしても機能する。したがって、いくつかの実施形態では、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーの添加を省略または少量にすることができる。
【0113】
5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーは、上記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列(第1のアンカー配列)の一部または全部を含む。アンカー配列の一部または全部の長さは、通常、10~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは18~25塩基である。PCRにおけるプライマーとして機能し得るよう、DNAまたはDNA/RNAキメラであり、好ましくはDNAである。5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーは、PCRにおけるフォワードプライマーであり得る。
【0114】
鋳型RNAとしては、mRNA、rRNA、tRNA、non-coding RNA、化学的に合成したRNA等を用いることができるが、これらに限定されない。mRNA、rRNA及びtRNAは、如何なる細胞・組織に由来するものであってもよい。mRNA、rRNA及びtRNAは、セルソーター等を利用して得られた微量の細胞・組織(例えば、シングルセル)から採取されたものであってもよい。mRNA、rRNA及びtRNAは、トータルRNAの一部として含まれるような形態でもよい。
【0115】
上記組成物には、該鋳型RNAをcDNAにテンプレートスイッチング逆転写するため、及び該cDNAの少なくとも一部をPCR増幅するために必要な全ての試薬(但し、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを除く)が含まれる。該試薬としては、上述のテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチド、プライマーセット、及び鋳型RNA以外に、以下を挙げることが出来る。
・逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)
・耐熱性DNAポリメラーゼ(DNA依存的DNAポリメラーゼ)
・dNTPs混合物
【0116】
cDNAの3’末端にRT付加配列を形成するため、使用する逆転写酵素はターミナルトランスフェラーゼ活性を有する。ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素としては、Moloney Murine Leukemia Virus由来の逆転写酵素(MMLV RT)等が挙げられるが、これらに限定されない。ターミナルトランスフェラーゼ活性は、好ましくは、シトシンリッチな短い配列(例、CC、CCC、CCCC)を、合成したcDNAの3’末端に付加する活性である。
【0117】
耐熱性DNAポリメラーゼとしては、代表的にはTaq、Tth、KOD、Pfu、Bst等を挙げることができるが、これらに限定されず、PCRに使用可能な様々な耐熱性DNAポリメラーゼが開発されており、いずれも本開示に使用可能である。PCRに使用可能な耐熱性DNAポリメラーゼは当業者に周知であり、適宜選択可能である。
【0118】
一つの実施形態において、上記組成物は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを更に含む。逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含むことにより、鋳型RNAにハイブリダイズし、逆転写を開始する。該部分配列の長さは、特に限定されないが、通常、10~40塩基、好ましくは15~30塩基、より好ましくは18~25塩基である。逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、その3’末端に、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む。鋳型RNAの部分配列に相補的な配列の5’末端にアンカー配列(第2のアンカー配列)が付加されていてもよい。第2のアンカー配列は自然界に存在しない配列であることが好ましい。第2のアンカー配列の長さは、特に限定されないが、通常、10塩基~100塩基程度、好ましくは15塩基~50塩基程度である。第2のアンカー配列は、上記第1のアンカー配列と非同一であることが好ましい。一つの実施形態において、第2のアンカー配列には、人工塩基が含まれる。一つの実施形態において、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、第2のアンカー配列を含まない。逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、特定の遺伝子に特異的なプライマー、mRNAのポリAテイルに結合するオリゴdTプライマー、またはランダムヘキサマープライマーのようなランダムプライマーのいずれかであるが、好ましくは、特定の遺伝子に特異的なプライマーである。該プライマーは、目的とする遺伝子をコードするRNA(例、mRNA)の部分配列に相補的な配列を含む。逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーは、逆転写におけるプライマーとして機能し得るよう、DNAまたはDNA/RNAキメラであり、好ましくはDNAである。
【0119】
一つの実施形態において、鋳型RNA上の、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする領域と、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする領域とが、少なくとも一部重複する。重複するハイブリダイゼーション領域の長さは、通常10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは18塩基以上であるが、特に限定されない。重複するハイブリダイゼーション領域の長さは、例えば、40塩基以下、30塩基以下、25塩基以下であり得る。
【0120】
好ましい実施形態において、改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端よりも、鋳型RNAの5’側(上流)に位置する。即ち、改変オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端よりも、鋳型RNAの5’側(上流)で、鋳型RNAにハイブリダイズするように、両プライマーをデザインする。このように半入れ子状の位置関係に上記2つのプライマーをデザインすることにより、増幅の特異性の上昇が期待できる。この場合、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域と、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域とを、一部重複させて半入れ子状としてもよいし、重複させずに完全な入れ子状としてもよい。
【0121】
逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域と、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域とを、一部重複させる場合、例えば、改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端よりも、例えば1~12塩基、好ましくは1、2、3、4又は5塩基、鋳型RNAの5’側(上流)になるように(即ち、改変オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端よりも、例えば1~10塩基、好ましくは1、2、3、4又は5塩基、鋳型RNAの5’側(上流)にハイブリダイズするように)両プライマーをデザインすることが好ましいが、これらに限定されない。
【0122】
別の実施形態において、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域と、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域とが、少なくとも一部重複し、改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域の5’末端と一致する。即ち、改変オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端と同じ位置で、鋳型RNAにハイブリダイズする。
【0123】
一つの実施形態において、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域と、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする鋳型RNAの領域が同一である。この実施形態においては、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーが、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーに対応する未修飾オリゴヌクレオチドプライマーであり得る。
【0124】
別の実施形態において、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーは、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの部分配列を、その3’末端に含む。当該部分配列(以下、共通配列と呼ぶ場合がある。)の長さは、通常10塩基以上、好ましくは15塩基以上、より好ましくは18塩基以上であるが、特に限定されない。当該3’末端部分配列の長さは、例えば、40塩基以下、30塩基以下、25塩基以下であり得る。一つの実施形態において、当該共通配列は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端の部分配列であり得る。別の実施形態において、当該共通配列の3’末端は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの3’末端よりも、少なくとも1塩基(例えば1~20塩基、1~10塩基、1~8塩基)、5’側に位置する。一つの実施形態において、該共通配列は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーに含まれる、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列、又はその部分配列である。一つの実施形態において、該共通配列は、第2のアンカー配列又はその部分配列である。一つの実施形態において、該共通配列は、鋳型RNAの部分配列に相補的な配列と第2のアンカー配列とに跨る、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの部分配列である。一つの実施形態において、上記改変オリゴヌクレオチドプライマーが人工塩基を含むオリゴヌクレオチドプライマーであり、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーが人工塩基を含有する第2のアンカー配列を5’末端に含み、共通配列が、第2のアンカー配列又はその部分配列である。
【0125】
上記組成物が、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを含む場合、該オリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、逆転写を開始するのに十分な量があればよい。逆転写において、増幅を意図する領域を含むcDNAを1コピー合成することができれば、その後のPCRにより、これを検出可能なレベルにまで増幅することが可能である。従って、該組成物中に(反応系内に)少なくとも1コピー、好ましくは10コピー以上、より好ましくは100コピー以上の、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーが含まれていればよい。逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの濃度が高すぎると、非特異的なハイブリダイゼーションによる副反応を引き起こす可能性がある。上記組成物中の逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、例えば、約40nM以下、好ましくは、約20nM以下、約10nM以下、約2.5nM以下、約2.0nM以下、約0.63nM以下、約0.2nM以下、約0.16nM以下、約0.02nM以下、約2.0pM以下、約0.2pM以下、又は約0.02pM以下である。
【0126】
別の実施形態において、上記組成物は、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを含まない。この実施形態においては、上述の改変オリゴヌクレオチドプライマーとして、熱不安定性修飾基を含み、且つ鋳型RNAの部分配列に相補的な配列を含む、オリゴヌクレオチドプライマーが用いられる。該改変オリゴヌクレオチドプライマーは、好ましくは、1又はそれ以上のヌクレオチド間結合或いは3’末端において熱不安定性修飾基を含む。該改変オリゴヌクレオチドプライマーに含まれる熱不安定性修飾基は、PCR増幅における最初の変性温度(例えば、約80~105℃、好ましくは約85~100℃、より好ましくは約90~96℃(例、95℃))に到達するまでは、殆ど解離しないが、本開示者は、この熱不安定性修飾基が逆転写を進行する温度(例、45℃)において、わずかに解離し、それにより生じた対応する未修飾オリゴヌクレオチドが、逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーとして機能することができる。
【0127】
上記組成物は、必要に応じてバッファー、塩(マグネシウムイオン等)、RNAaseインヒビターを含んでいてもよい。
【0128】
上記組成物中に含まれる、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドの濃度は、本開示の方法を実施可能な限り特に限定されないが、例えば、0.05~5.0μM、好ましくは0.1~1.0μM程度である。
【0129】
上記組成物中に含まれる、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマー及び上記改変オリゴヌクレオチドプライマーの濃度は、従来法のPCRを行う際のプライマー濃度と同等であり、例えば0.1~1.0μM程度である。
【0130】
上記組成物中に含まれ得るその他の構成因子(鋳型RNA、逆転写酵素、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTPs混合物、バッファー、塩、RNAaseインヒビター)の濃度は、ワンステップRT-PCRの先行技術において周知であり、更に、本開示の文脈で使用される濃度の最適化がルーチン実験から得られ得る。
【0131】
次に、上記で提供された組成物を、逆転写が進行可能な温度でインキュベートする。逆転写が進行可能な温度は、逆転写酵素の種類によって適宜調整することができるが、通常、37℃~62℃、好ましくは37℃~55℃である。インキュベート時間は、鋳型RNAのサイズ等を考慮して適宜調整することができるが、通常、30秒~120分、好ましくは5分~60分である。当該インキュベーションにより、組成物中に含まれていた逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー、或いは改変オリゴヌクレオチドプライマーから熱不安定性修飾基が解離することにより生じた未修飾オリゴヌクレオチドが、逆転写をプライムし、鋳型RNAに相補的なcDNA(アンチセンス鎖)が合成される。逆転写酵素は、鋳型RNAの5’末端に達すると、鋳型をテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに乗り換え、その5’末端までcDNA合成を続けるため、3’端に、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドのアンカー配列に相補的な配列が付加された1本鎖のcDNA(アンチセンス鎖)を生じる。
【0132】
次に、得られたcDNAを含む反応混合液を、PCRが進行可能な複数回の熱サイクリングプロトコールに付す。該熱サイクリングプロトコールは、変性(熱変性とも呼ぶ。)、アニーリング、伸長の3つの温度ステップのサイクルで構成される。変性は二本鎖DNAを解離させるのに十分な温度であれば特に限定されず、好ましい熱変性温度の下限は90℃、上限は100℃である。アニーリングは解離したDNAにプライマーをアニーリングするステップで、その際の温度(アニーリング温度)は特に限定されないが、好ましいアニーリング温度の下限は45℃であり、さらに好ましくは50℃である。一方好ましい上限は75℃であり、さらに好ましくは70℃である。伸長はDNAポリメラーゼで相補鎖を合成するステップで、その際の温度(伸長温度)は特に限定されないが、好ましい伸長温度の下限は50℃であり、上限は80℃である。前記サイクルにおいて、アニーリング温度は伸長反応温度を超えない。アニーリングと伸長とを1つの温度で実施することにより、実質的に2つの温度ステップのサイクルとして熱サイクリングプロトコールを構成することも可能である。この場合、好ましいアニーリング及び伸長の温度の下限は50℃であり、更に好ましくは55℃である。一方好ましい上限は70℃であり、さらに好ましくは65℃である。各ステップにおけるインキュベーション時間としては、1秒~5分を例示することができるが、当業者であれば、増幅産物のサイズ等を考慮し、容易に適切なインキュベーション時間を設定することができる。
【0133】
反応混合液を熱サイクリングプロトコールに付す前に、逆転写酵素を失活させるための変性工程(プレインキュベーション工程)を実施してもよい。該変性温度は、逆転写酵素を失活させることが出来るかぎり特に限定されないが、好ましい熱変性温度の下限は90℃、上限は100℃である。変性時間は、逆転写酵素を失活させることが出来るかぎり特に限定されないが、通常1分以上15分以下である。
【0134】
改変オリゴヌクレオチドプライマーとして、熱不安定性修飾基を含むオリゴヌクレオチドプライマーを用いた場合、熱サイクリングプロトコールの最初の変性工程、或いはプレインキュベーション工程において、修飾オリゴヌクレオチドプライマーから修飾基が解離し、対応する未修飾オリゴヌクレオチドプライマーに変換される。未修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、活性状態のホスホジエステル結合を有し、ポリメラーゼによる伸長をプライムできる。
【0135】
熱サイクリングの最初のアニーリング及び伸長工程においては、逆転写工程で得られた1本鎖のcDNA(アンチセンス鎖)の3’端に存在するアンカー配列に相補的な配列に、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーがアニールし、ポリメラーゼによる伸長が生じ、5’末端にアンカー配列(第1のアンカー配列)が付加されたcDNA(センス鎖)が合成される結果、センス鎖の5’末端にアンカー配列が付加された2本鎖cDNAが生じる。
【0136】
そして、上記2本鎖cDNAを含む反応混合物を、引き続き複数回の熱サイクリングプロトコールに付すことにより、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーと改変オリゴヌクレオチドプライマーにはさまれた領域(即ち、5’末端アンカー配列から改変オリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする領域まで)が増幅される。
【0137】
熱サイクリングの回数は、鋳型RNAの量等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、20回以上、好ましくは30回以上、40回以上、45回以上、50回以上、又は55回以上である。一般的なRT-PCRの場合、鋳型RNAのコピー数が少ない場合(例えば、シングルコピー)であっても、40回程度熱サイクリングをおこなえば、増幅反応は飽和に達するが、本開示の方法においては(特に、熱不安定性修飾基を含む改変オリゴヌクレオチドプライマーを用いた場合)、45回以上、50回以上、又は55回以上の熱サイクリングを行っても、増幅反応が飽和に達せず、更なる増幅が可能であり得る。理論には拘束されないが、本開示の方法においては(特に、熱不安定性修飾基を含む改変オリゴヌクレオチドプライマーを用いた場合)、1回の熱サイクルあたりの増幅効率が一般的なRT-PCRよりも抑制されている可能性があり得る。従って、例えば増幅を意図する鋳型RNAのコピー数が少ない場合(例、100コピー以下、10コピー以下、シングルコピー)や、シングルセルから単離したRNA(特にトータルRNA)を鋳型RNAとして、本開示の方法を実施する場合、熱サイクリングの回数を、40回以上、45回以上、50回以上、又は55回以上とすることが好ましい。
【0138】
本開示の方法によれば、逆転写テンプレートスイッチングPCRを、高い特異性で、ワンステップで実施することが期待できる。逆転写テンプレートスイッチングPCRにおいては、その特異性が実質的にリバースプライマーのみで決定され得るが、本開示においては、リバースプライマーとして、上述の改変オリゴヌクレオチドプライマーを採用することにより、高い特異性で目的とする遺伝子を増幅することができる。特に、鋳型となるRNAのコピー数が少ない場合(例えば、シングルセル由来のRNAを鋳型とする場合)、PCRのサイクル数を多くした場合であっても、副反応の発生を抑制しつつ、特異的PCR産物を増幅することが期待できる。従って、例えば、抗原受容体(例、抗体(重鎖、軽鎖)、T細胞受容体(α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖)の定常領域に特異的なリバースプライマーを、上述の改変オリゴヌクレオチドプライマーとして、抗原受容体(例、抗体(重鎖、軽鎖)、T細胞受容体(α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖)の定常領域に特異的なリバースプライマーを用いることにより、シングルセルレベルで、抗原受容体の抗原認識部位の配列解析を実施することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示において使用されうる逆転写に必要な試薬としては、逆転写酵素に加え、(i)TCRαのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRβのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;(ii)TCRδのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRγのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;または(iii)BCR重鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびBCR軽鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーを含みうる。
【0140】
本開示の1つの実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、必要に応じて、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含む5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含んでもよい。
【0141】
本開示の1つの実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、前記5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを含まず、前記テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとして機能し得る。
【0142】
機能的なサブユニットペア遺伝子は、TCRαとTCRβ、TCRδとTCRγ、およびBCR重鎖とBCR軽鎖の遺伝子であり得る。したがって、本開示のいくつかの実施形態において、逆転写に必要な試薬は、(i)TCRαのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRβのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;(ii)TCRδのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびTCRγのC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマー;または(iii)BCR重鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーおよびBCR軽鎖のC領域、3’非翻訳領域またはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に相補的である逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーであり得る。また、ポリメラーゼ連鎖反応に必要な試薬は、(i)TCRαのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー、およびTCRβのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;(ii)TCRδのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー、およびTCRγのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー;または、(iii)BCR重鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー、およびBCR軽鎖のC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーを含み得る。
【0143】
本開示の方法は、予想外なことに、TCRまたはBCRのペア遺伝子を予想外にも共増幅することが可能であり、各遺伝子をそれぞれ個別に反応で増幅する必要はない。したがって、本開示の方法は、TCRαおよびTCRβの両方、TCRδおよびTCRγの両方、またはBCR重鎖およびBCR軽鎖の両方が共増幅されることを特徴とする。
【0144】
本開示の特定の実施形態において、改変オリゴヌクレオチドプライマーは、同一の改変オリゴヌクレオチドプライマーの配列上に1又はそれ以上の相補領域を有し、PCRの初期熱変性処理前までは当該相補領域によって折り返し構造を取る、或いは熱不安定性修飾基を含み得る。また、プライマー機能が阻害されなかった一部の改変オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型RNAにハイブリダイズすることで逆転写を開始するオリゴヌクレオチドプライマーとして機能し得る。
【0145】
TCRまたはBCRの機能的ペア遺伝子の核酸配列を決定する工程(2)は、当該分野で公知の任意の配列決定法を使用し得る。本実施例で示されるように、種々の配列決定法が利用可能である。本開示の方法では、次世代シークエンサーを適用することが可能である点でも有利である。以下に、典型的な配列決定方法を説明する。
【0146】
本開示の方法において、逆転写テンプレートスイッチPCRを行った後にさらに、配列解析のために適切な配列が付加された核酸試料を提供する工程をさらに含んでもよい。当業者であれば、配列解析の種類に応じて、配列解析のための適切な配列を選択することができるが、配列解析のために適切な配列としては、例えば、ブリッジPCRまたはエマルジョンPCRを使用する配列解析に適切な配列が挙げられるが、これらに限定されない。ブリッジPCRを使用した配列解析ために付加される適切な配列は、インデックス配列、タグ配列、配列解析の基板(例えば、フローセル)に固定化するための配列等を含む。
【0147】
好ましい実施形態では、本開示の解析方法において、配列解析のための核酸試料を提供するために、上記逆転写テンプレートスイッチPCR(第1のPCR増幅反応)、タグPCR(第2のPCR増幅反応)、およびインデックスPCR(第3のPCR増幅反応)が行われ得る。
【0148】
逆転写テンプレートスイッチPCR(第1のPCR増幅反応)で使用される5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーは、第1の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーと称することもある。第1の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーは、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドに含まれるアンカー配列の少なくとも一部を含むオリゴヌクレオチドプライマーである。第1のPCR増幅反応では、テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドが、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとしても機能するため、上記第1の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーを使用しなくてもよい。
【0149】
一つの実施形態において、TCRまたはBCRの機能的ペア遺伝子の核酸配列を決定する工程(2)は、c)逆転写テンプレートスイッチPCRのPCR増幅産物と、第1のタグ配列が付加された第2の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーと、第2のタグ配列が付加された第2のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーとを含む混合物を、ポリメラーゼ連鎖反応が生じる条件に供して、タグ配列が付加された複数種類のT細胞レセプター(TCR)またはB
細胞レセプター(BCR)の核酸配列を含む核酸試料を提供する工程と、d)前記工程c)のPCR増幅産物と、第3の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーと、第3のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーとを含む混合物を、ポリメラーゼ連鎖反応が生じる条件に供して、インデックス配列が付加された前記複数種類のT細胞レセプター(TCR)またはB細胞レセプター(BCR)の核酸配列を含む核酸試料を提供する工程であって、該第3の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーおよび該第3のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、配列解析の基板に固定化するための配列およびインデックス配列が付加されている、工程とをさらに含んでもよい。
【0150】
タグ配列は、シークエンシング(例えば、MiSeqによるシークエンシング)を行うために使用される配列であり、タグ配列からシークエンシングが開始される。また、タグ配列は、インデックス配列を付加するインデックスPCR(第3のPCR増幅反応)のプライミングサイトとして機能してもよい。第1のタグ配列は、第2の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーに付加された配列であり得、第2のタグ配列は、第2のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーに付加された配列であり得る。
【0151】
本明細書において「第1のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー」とは、本開示の逆転写テンプレートスイッチングPCRによるPCR増幅反応において使用されるプライマーであって、TCRまたはBCRのC領域または3’非翻訳領域、あるいはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に特異的な配列を含むプライマーをいう。
【0152】
本明細書において「第2のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー」とは、タグ配列が付加されたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するためのPCR増幅反応(第2のPCR増幅反応)において使用されるプライマーであって、TCRまたはBCRのC領域または3’非翻訳領域、あるいはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に特異的な配列を含むプライマーをいう。第2のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、第3のPCR増幅反応のためのプライミングサイトとなるタグ配列が付加されている。
【0153】
本明細書において「第3のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマー」とは、インデックス配列が付加されたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するためのPCR増幅反応(第3のPCR増幅反応)において使用されるプライマーであって、TCRまたはBCRのC領域または3’非翻訳領域、あるいはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に特異的な配列を含むプライマーをいう。第3のTCRまたはBCRのC領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、必要に応じて、配列解析の基板に固定化するための配列およびインデックス配列が付加されている。
【0154】
本明細書において、「第1の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマー」とは、本開示の逆転写テンプレートスイッチングPCRによるPCR増幅反応において使用されるプライマーである。テンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドは、5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーとしても機能し得るため、第1の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーが使用されない、または少量で使用され得る。
【0155】
本明細書において、「第2の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマー」とは、タグ配列が付加されたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するためのPCR増幅反応(第2のPCR増幅反応)において使用されるプライマーである。
【0156】
本明細書において、「第3の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマー」とは、インデックス配列が付加されたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するためのPCR増幅反応(第3のPCR増幅反応)において使用されるプライマーである。第3の5’アンカーオリゴヌクレオチドプライマーは、必要に応じて、配列解析の基板に固定化するための配列およびインデックス配列が付加されている。
【0157】
本明細書において「第1のPCR増幅反応」とは、本開示のワンステップ逆転写テンプレートスイッチングPCRにより被験体から得られたRNAを鋳型として行われるPCR増幅反応である。
【0158】
本明細書において「第2のPCR増幅反応」とは、本開示の解析のための試料生産において、第1のPCR増幅反応の後その産物を鋳型としてなされるPCR増幅反応であって、タグ配列が付加されたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するためのPCR増幅反応をいう。第2のPCR増幅反応では、第3のPCR増幅反応のためのプライミングサイトを提供するためのタグ配列が付加された核酸試料が提供される。このタグ配列は、配列解析における開始地点にもなる。
【0159】
本明細書において「第3のPCR増幅反応」とは、本開示の解析のための試料生産において、第2のPCR増幅反応の増幅産物を鋳型としてなされるPCR増幅反応であって、その産物は、本開示の配列解析における使用に適切な配列を含む。第3のPCR増幅反応では、配列解析の基板に固定化するための配列およびインデックス配列が付加される。
【0160】
本開示のさらなる実施形態において、工程(3)は、(3-1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供する工程と、(3-2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供する工程と、(3-3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録する工程と、(3-4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出する工程と、(3-5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類する工程と、(3-6)該工程(3-5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せを算出することで、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する工程とを含み得る。
【0161】
1つの実施形態では、BCRの機能的なサブユニットペア遺伝子の解析を行う場合、前記C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、IgM、IgA、IgG、IgEおよびIgDからなる群より選択される目的とするアイソタイプC領域または3’非翻訳領域、ありはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に完全マッチの配列を含み、かつ他のC領域または3’非翻訳領域に相同性を持たない配列を有する。好ましくは、前記C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、IgAまたはIgGについては、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のいずれか、またはIgA1もしくはIgA2のいずれかであるサブタイプに完全マッチする配列である。別の実施形態では、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子の解析を行う場合、前記C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、α鎖、β鎖、γ鎖およびδ鎖からなる群より選択される目的とする鎖のC領域または3’非翻訳領域、あるいはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域に完全マッチし、かつ他のC領域に相同性を持たない配列である。
【0162】
別の実施形態では、前記C領域特異的プライマー、3’非翻訳領域特異的プライマー、またはC領域と3’非翻訳領域にまたがるプライマーは、前記データベース中の同じアイソタイプのC領域または3’非翻訳領域、あるいはC領域および3’非翻訳領域にまたがる領域のアレル配列についてすべてに完全マッチする配列部分を選択することが好ましい。このような完全マッチを選択することによって、精度の高い分析を行うことができる。
【0163】
遺伝子解析としては、任意の解析手法を用いて行うことができ、たとえば、公知のIMGT(the international ImMunoGeneTics information system、http://www.imgt.org)データベースから入手されるV、D、J、C配列をリファレンス配列として各リード配列のV、D、J、C配列をアサインして、IMGTのHighV-Questを利用する手法、あるいは、本明細書においても解析システムの好ましい例として記載される出願人が開発した新たなソフトウェア(Repetoire Genesis)を使用することができる。
【0164】
個々の増幅分子を配列決定することで、異なる配列を識別することができ、したがって配列決定はクローン増殖における量的変化を検出するための感度を有する。概して、提供する本開示の一つの実施形態において、T細胞および/またはB細胞における組換えDNA配列のプロファイルを決定するための方法を提供する。本方法は、対象から試料を単離する工程、1ラウンドまたは複数ラウンドの核酸増幅、個々の核酸を空間的に単離する工程、および核酸を配列決定する工程を含む工程を含み得る。
(解析システム)
【0165】
別の局面において、本開示は、TCRまたはBCRを発現する細胞におけるT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)の機能的なサブユニットペア遺伝子の配列解析するためのシステムであって、(A)該細胞の少なくとも一部を活性化するための活性剤と、(B)活性化された該細胞から得られたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するための核酸処理用キットと、(C)活性化された該細胞に含まれる核酸配列を決定するシーケンサと、(D)決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度および/またはその組み合わせを算出し、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する分析機とを含む、システムを提供する。ここで使用されうる、解析システムの構成要件は、(解析方法)において説明されている任意の具体的な実施形態を実現するものが利用されうる。
【0166】
すなわち、(A)該細胞の少なくとも一部を活性化するための活性剤としては、(解析方法)において説明されている任意の具体的な実施形態を実現するものが利用されうる。(B)活性化された該細胞から得られたTCRまたはBCRの核酸配列を含む核酸試料を提供するための核酸処理用キットは、(解析方法)において説明されている任意の具体的な実施形態を実現するものが利用され得、核酸を細胞から入手するための任意の試薬などを含むキットであってよい。(C)活性化された該細胞に含まれる核酸配列を決定するシーケンサは任意の配列を決定する装置を利用することができ、(解析方法)において説明されている任意の具体的な実施形態を実現するものが利用され得、例えば、いわゆる次世代シーケンサを利用することができる。本開示の遺伝子同定方法は、例えば、「次世代シークエンサー:目的別アドバンスメソッド」(細胞工学別冊)、およびCold Spring Harb Protoc. 2015 Nov; 2015(11): 951-969.等の文献を参照して適宜実施することができる。(D)決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度またはその組み合わせを算出し、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する分析機は、(解析方法)において説明されている任意の具体的な実施形態を実現するものが利用され得、決定された該核酸配列に基づいて、各遺伝子の出現頻度またはその組み合わせを算出し、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する計算を実現する任意のCPUを備えたコンピュータなどを利用することができる。
【0167】
遺伝子の発現の測定は、当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、遺伝子の発現量を測定する技術としては、マイクロアレイ、RNA-Seq、定量的PCR等が挙げられる。好ましくは、RNA-Seqを採用することができる。シークエンシングの手法は、核酸試料の配列を決定することができる限り限定されず、当技術分野で公知の任意のものを利用することができるが、次世代シークエンシング(NGS)を用いることが好ましい。次世代シークエンシングとしては、パイロシークエンシング、合成によるシークエンシング(シークエンシングバイシンセシス)、ライゲーションによるシークエンシング、イオン半導体シークエンシングなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
本開示の方法において(1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供するステップは、例えば、V領域について言えば、そのV領域の情報を含むデータベースを適宜選択し、これを提供することで達成されうる。
【0169】
本開示の方法において、(2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供するステップは、必要な場合には適宜ソフトウェア等の機能を用いてトリミングを行い、また、必要な場合は、長さを適宜選択した上で、抽出した入力配列セットを提供することで達成する。入力配列は、例えば、公知の方法で増幅した増幅産物のセット、または本開示の逆転写テンプレートスイッチングPCRによってPCR増幅した増幅産物のセットでありうる。
【0170】
本開示の方法において、(3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録するステップは、相同性検索を行うソフトウェアを適宜用いて、遺伝子領域(例えば、V領域等)ごとに、参照データベースとの相同性検索を入力配列セットに対して行い、その結果得られる近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録することによって行われる。
【0171】
本開示の方法において(4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出するステップは、配列アラインメントから、既知の情報などを元に、V領域および/またはJ領域を決定することによって達成することができる、このような抽出においては、好ましくは、該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、参照V領域上のCDR3先頭および参照J上のCDR3末尾を目印に、CDR3配列を抽出することで達成することができる。
【0172】
本開示の方法において、(5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類するステップは、当該分野で公知の方法を用いてアミノ酸への翻訳を行い、そのアミノ酸配列について相同性検索等により、D領域に該当する配列を抜き出すことなどで達成することができる。好ましくは、該CDR3の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類することができる。
【0173】
本開示の方法において、(6)(5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せを算出することで、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を導出するステップは、上記までのステップで算出したV領域、D領域、J領域および/またはC領域の出現頻度を、例えば、リストで整理するなどにより算出することができる。これにより、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を導出することができる。
【0174】
【0175】
S1(ステップ(1))において、参照データベースが提供される。これは、外部記憶装置1405に保存されたものであってもよいが、通常は、通信デバイス1411を通じて、公共で提供されるデータベースとして取得することができる。あるいは入力装置1409を用いて入力し、必要に応じてRAM1403または外部記憶装置1405に記録してもよい。ここでは、V領域などの目的とする領域を含むデータベースが提供される。
【0176】
S2(ステップ(2))では、入力配列セットが提供される。ここでは、入力装置1409を用いるか通信デバイス1411を介して、例えばPCR増幅反応で増幅した増幅産物のセットから得られる配列情報のセットが入力される。ここでは、PCR増幅反応の増幅産物を受け取り、それを遺伝子配列解析する装置が接続されていてもよい。そのような接続はシステムバス1420を通じて行われるかまたは通信デバイス1411を通じて行われる。ここでは、必要に応じてトリミングおよび/または適切な長さのものの抽出を行うことができる。そのような処理は、CPU1401で行われる。トリミングおよび/または抽出をするためのプログラムはそれぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
【0177】
S3(ステップ(3))では、アラインメントがなされる。ここでは、該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行うが、この相同性検索は、通信デバイス1411等を介して得られた参照データベースに対して相同性検索プログラム処理を行う。この処理はCPU1401で行われる。また、その結果得られた結果を分析して近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを行う。この処理もまたCPU1401で行われる。これらを実行するためのプログラムは、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
【0178】
S4(ステップ(4))では、D情報の核酸配列を検出する。この処理もまたCPU1401で行われる。これらを実行するためのプログラムは、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。ここでは、該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインする。アサイン処理もまたCPU1401でなされる。また、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出することもまたCPU1401でなされる。アサインおよび抽出の処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。ここでは、好ましくは、配列アラインメントから、既知の情報などを元に、V領域および/またはJ領域を決定することによって達成することができる。結果は、RAM1403または外部記憶装置1405に保存することができる。このような抽出においては、好ましくは、該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、参照V領域上のCDR3先頭および参照J上のCDR3末尾を目印に、CDR3配列を抽出することで達成することができる。このような処理もまたCPU1401において行うことができる。そのためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
【0179】
S5(ステップ(5))では、D領域を分類する。該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類する処理がなされるが、これもまたCPU1401でなされる。この処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。得られたアミノ酸配列について相同性検索等により、D領域に該当する配列を抜き出してもよい。このような処理もまた、CPU1401でなされる。この処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。好ましくは、該CDR3の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類することができる。この処理もまた、CPU1401でなされる。この処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
【0180】
S6(ステップ(6))では、上記分類に基づいてV領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せの出現頻度を算出することで、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する。この算出および導出のための処理もまた、CPU1401でなされる。この処理のためのプログラムもまた、それぞれ外部記憶装置または通信デバイスまたは入力装置を介して提供されうる。
【0181】
1つの好ましい実施形態では、本開示において使用される遺伝子領域は、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の全部を含む。
【0182】
1つの実施形態では、前記参照データベースは、各配列に一意のIDが割り振られたデータベースである。IDが一意に割り振られることによって、IDという簡単な指標を元に遺伝子の配列を分析することができる。
【0183】
1つの実施形態では、前記入力配列セットは、非バイアス配列セットである。非バイアスの配列セットは、本明細書において記載されるような逆転写テンプレートスイッチングPCRによってPCR増幅することによって実施することができる。
【0184】
別の実施形態では、前記配列セットはトリミングされたものである。トリミングを行うことによって、不要なあるいは不適切な核酸配列を除くことができ、分析の効率を上げることができる。
【0185】
好ましい実施形態では、トリミングは、リード両端から低クオリティ領域を削除し;リード両端からテンプレートスイッチングオリゴヌクレオチドの配列と10bp以上マッチする領域を削除し;および残った長さが200bp以上(TCR)もしくは300bp以上(BCR)なら高クオリティとして解析に使用するステップによって達成される。好ましくは、前記低クオリティは、QV値の7bp移動平均が30未満のものである。
【0186】
好ましい実施形態では、前記近似する配列は、最も近しい配列である。具体的な実施形態では、前記近似する配列は、1.一致塩基数、2.カーネル長、3.スコア、4.アラインメント長の順位によって決定される。
【0187】
別の実施形態では、前記相同性検索は、ランダムな変異が全体的に散在することを許容する条件で行われる。このような条件は、例えば、BLAST/FASTA最適パラメータであれば、以下の条件でよく表現される:アラインメント全長にわたり最大33%の不一致を許容し、かつ、その中の任意の30bpについて、最大60%の一連でない不一致を許容する1つの実施形態では、前記相同性検索は、デフォルト条件に比べて(1)ウィンドウサイズの短縮、(2)ミスマッチペナルティの低減、(3)ギャップペナルティの低減および(4)指標の優先順位のトップが一致塩基数の少なくとも1つの条件を含む。
【0188】
別の実施形態では、前記相同性検索は、BLASTまたはFASTAにおいて以下の条件
V ミスマッチペナルティ=-1、最短アラインメント長=30、最短カーネル長=15
D ワード長=7(BLASTの場合)またはK-tup=3(FASTAの場合)、ミスマッチペナルティ=-1、ギャップペナルティ=0、最短アラインメント長=11、最短カーネル長=8
J ミスマッチペナルティ=-1、最短ヒット長=18、最短カーネル長=10
【0189】
C 最短ヒット長=30、最短カーネル長=15で実施される。この条件は、例えば、より短い(~200bp)配列を用いて一部の領域だけでも分類する状況(「好ましい例」から外れる状況)であれば使用することができ、イルミナ製シーケンサを利用する状況でも使用することができる。この場合は、相同性検索にbwaもしくはbowtieを用いる可能性が考えられる。
【0190】
特定の実施形態では、前記D領域の分類は、前記アミノ酸配列の出現頻度によってなされる。
【0191】
さらなる実施形態では、前記ステップ(5)において、D領域の参照データベースが存在する場合は、前記CDR3の核酸配列との相同性検索結果とアミノ酸配列翻訳結果の組合せを分類結果とする。
【0192】
別の実施形態では、前記ステップ(5)において、D領域の参照データベースが存在しない場合、前記アミノ酸配列の出現頻度のみによって分類がなされる。
【0193】
具体的な実施形態では、前記出現頻度は、遺伝子名単位および/またはアリル単位でなされる。
【0194】
別の実施形態では、前記ステップ(4)は該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、参照V領域上のCDR3先頭および参照J上のCDR3末尾を目印に、CDR3配列を抽出するステップを包含する。
【0195】
更なる実施形態では、前記ステップ(5)は、該CDR3の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類するステップを包含する。
【0196】
1つの局面では、本開示はTCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を解析するシステムであって、該システムは:(1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供する手段:(2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供する手段;(3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録する手段;(4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出する手段;(5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類する手段;(6)(5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せの出現頻度を算出することで、TCRまたはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定する手段;を包含する、システムを提供する。
【0197】
別の局面では、本開示は、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を解析する方法の処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、該方法は以下のステップ:(1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供するステップ:(2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供するステップ;(3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録するステップ;(4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出するステップ;(5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類するステップ;(6)(5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せの出現頻度を算出することで、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定するステップ;を包含する、プログラムを提供する。
【0198】
さらに別の局面では、本開示は、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を解析する方法の処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを格納する記録媒体であって、該方法は以下のステップ:(1)V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の少なくとも1つを含む遺伝子領域ごとの参照データベースを提供するステップ:(2)必要に応じてトリミングを行い、必要に応じて適切な長さのものを抽出した入力配列セットを提供するステップ;(3)該入力配列セットについて、該遺伝子領域ごとに、該参照データベースと相同性検索を行い、近似する参照アリルおよび/または該参照アリルの配列とのアラインメントを記録するステップ;(4)該入力配列セットについてV領域およびJ領域をアサインし、アサイン結果に基づいて、D領域の核酸配列を抽出するステップ;(5)該D領域の核酸配列をアミノ酸配列に翻訳し、該アミノ酸配列を利用してD領域を分類するステップ;(6)(5)での分類に基づいて、V領域、D領域、J領域および必要に応じてC領域の各出現頻度、もしくはその組合せの出現頻度を算出することで、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子を同定するステップ;を包含する、記録媒体を提供する。
【0199】
(システム構成)
次に、
図11の機能ブロック図を参照して、本開示のシステム1の構成を説明する。なお、本図においては、単一のシステムで実現した場合を示している。
【0200】
本開示の遺伝子分析システム1は、コンピュータシステムに内蔵されたCPU1401にシステムバス1420を介してRAM1403、ROMやHDD、磁気ディスク、USBメモリ等のフラッシュメモリなどの外部記憶装置1405及び入出力インターフェース(I/F)1425が接続されて構成される。入出力I/F1425には、キーボードやマウスなどの入力装置1409、ディスプレイなどの出力装置1407、及びモデムなどの通信デバイス1411がそれぞれ接続されている。外部記憶装置1405は、情報データベース格納部1430とプログラム格納部1440とを備えている。何れも、外部記憶装置1405内に確保された一定の記憶領域である。
【0201】
このようなハードウェア構成において、入力装置1409を介して各種の指令(コマンド)が入力されることで、又は通信I/Fや通信デバイス1411等を介してコマンドを受信することで、この記憶装置1405にインストールされたソフトウェアプログラムがCPU1401によってRAM1403上に呼び出されて展開され実行されることで、OS(オペレーションシステム)と協働してこの発明の機能を奏するようになっている。
【0202】
データベース格納部1430には、参照データベースや入力配列セットあるいは生成した分類データやTCRもしくはBCRレパトアのデータ等、もしくは通信デバイス1411等を介して取得した情報が随時書き込まれ、更新される。各入力配列セット中の各々の配列、参照データベースの各遺伝子情報ID等の情報を各マスタテーブルで管理することにより、蓄積対象となるサンプルに帰属する情報を、各マスタテーブルにおいて定義されたIDにより管理することが可能となる。
【0203】
データベース格納部1430には、入力配列セットエントリー情報として、試料提供者ID、試料情報、核酸分析結果、既知の個体・生理情報、及びTCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子の分析結果が試料IDに関連付けて格納される。ここで、TCRもしくはBCRの機能的なサブユニットペア遺伝子の分析結果は、核酸分析結果を本開示の処理によって処理して得られる情報である。
【0204】
また、プログラム格納部1440に格納されるコンピュータプログラムは、コンピュータを、上記した処理システム、例えば、トリミング、抽出、アラインメント、アサイン、分類、翻訳等を行う処理を実施するシステムとして構成するものである。これらの各機能は、それぞれが独立したコンピュータプログラムやそのモジュール、ルーチンなどであり、上記CPU1401によって実行されることでコンピュータを各システムや装置として構成させるものである。なお、以下においては、それぞれのシステムにおける各機能が協働してそれぞれのシステムを構成しているものとする。
【0205】
(製造方法)
本開示は、以下の製造物を製造する方法を提供する。
A.TCR/BCR発現細胞
B.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージを産生する細胞
C.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージ
D.TCR/BCRまたはその相補鎖配列を有するRNA
E.TCR/BCRタンパク質(細胞内合成)
F.TCR/BCRタンパク質(in vitro無細胞内合成)
【0206】
本開示の製造方法において使用される製造用コンストラクトは、例えば、以下:
W.TCR/BCR配列を組み込んで作成した発現ベクター(ベクターの構造により発現させることができる細胞が異なる。哺乳動物細胞用発現ベクター、昆虫細胞用発現ベクター、細菌用発現ベクター、酵母用発現ベクターなど)
X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター
Y.ターゲットゲノム領域とともにTCR/BCR配列を組み込んで作成した相同組換え用ベクター(マウス用相同組換えベクター、ヒト細胞用相同組換えベクターなど)
Z.TCR/BCR配列の5’末端にT7やSP6などin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
本開示の製造方法の典型的な例を以下に挙げる。
【0208】
A.TCR/BCR発現細胞
【0209】
A-1(A&WまたはX):目的の細胞(リンパ球、株化培養細胞、昆虫細胞、大腸菌、酵母など)に、「W.TCR/BCR配列を組み込んで作成した発現ベクター」あるいは「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」を導入することにより製造する(通常の発現ベクターに加え、多くの場合、ウイルス産生用ベクターを細胞での遺伝子発現のために使用することが可能である。)。
【0210】
A-2(A&C):目的の細胞(リンパ球、株化培養細胞、昆虫細胞、大腸菌、酵母など)に、下記Cの項で製造した「C.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージ」を感染させ、製造する。
【0211】
A-3(A&Y):目的の細胞(ヒトやマウス、各種モデル動物のリンパ球、各種初代培養細胞、ES細胞、各種株化細胞など)に「Y.適切なベクターにターゲットゲノム領域とともにTCR/BCR配列を組み込んで作成した相同組換え用ベクター」を導入し、製造する。必要に応じて、薬剤選択などにより相同組換えが生じた細胞のみを選択してもよい。
【0212】
A-4(A&D):目的の細胞(ヒトやマウス、各種モデル動物のリンパ球、骨髄細胞、脾細胞、ES細胞、各種株化細胞など)に下記Dの項で製造したTCR/BCRのmRNAを導入し作成する。
【0213】
B.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージを産生する細胞
【0214】
B-1(B&X):適切なウイルス作成用細胞や細菌に「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」を導入し、必要に応じて、コンポーネントタンパク質発現ベクターを導入し、ヘルパーファージ処理を行い、製造する。
【0215】
C.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージ
【0216】
C-1(C&X):適切なウイルスパッケージング細胞に「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」を導入し、必要に応じてコンポーネントタンパク質発現ベクターを導入し、ヘルパーファージ処理を行い、次いで、細胞を必要時間培養して、培養上清からTCR/BCR核酸を含むウイルスやファージを回収する。
D.TCR/BCRまたはその相補鎖配列を有するRNA
【0217】
D-1(D&WまたはX):「W.TCR/BCR配列を組み込んで作成した発現ベクター」あるいは、「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」のうちin vitro転写RNA合成用のベクターに組み込んだTCR/BCR発現ベクターや、TCR/BCR配列の5’上流直近領域にT7やSP6などのin vitro転写用プロモーターを持つベクターを用いて、当該分野で周知の分子生物学実験書や市販のキットに従って、RNAポリメレース反応によりRNAを製造する。
【0218】
D-2(D&Z):「Z.TCR/BCR配列の5’末端にT7やSP6などin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片」を用い、D-1と同様に一般的な分子生物学実験書や市販のキットに従って、RNAポリメレース反応によりRNAを製造する。
E.TCR/BCRタンパク質(細胞内合成)
【0219】
E-1(E&WまたはX):タンパク質発現に適した細胞(株化した細胞、酵母、細菌など)に「W.TCR/BCR配列を組み込んで作成した発現ベクター」あるいは「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」を導入しタンパク産生させる。あるいはA-1,2で製造したTCR/BCR発現細胞のうち遺伝子安定発現株、タンパク高発現株などを増殖させてもよい。
【0220】
株化細胞や酵母の発現系では通常、膜結合型タンパク(TCR/BCR)は細胞を破砕し細胞破砕液(ホモジネート)から、分泌型イムノグロブリン、分泌されうるTCRフォーム(C領域の膜貫通領域を置換、欠損させたタンパクなど)は培養上清から、しかるべき手段により精製される。細菌の発現系ではタンパク局在は多様であるが、細胞内の各画分(ペリプラスム、細胞質可溶性画分、インクルージョンボディなど)の溶出液や破砕液、あるいは分泌型として培養液から精製される。
【0221】
E-2(E&Y):目的の細胞(ヒトやマウス、各種モデル動物のリンパ球、各種初代培養細胞、ES細胞、各種株化細胞など)に「Y.適切なベクターにターゲットゲノム領域とともにTCR/BCR配列を組み込んで作成した相同組換え用ベクター」を導入し、相同組み換え細胞を製造(A-3)し、製造した細胞タンパクを精製し、製造する。
【0222】
E-3(E&C):目的の細胞(リンパ球、株化培養細胞、昆虫細胞、酵母、細菌など)に、上記C-1の項で製造した「C.TCR/BCR核酸を含むウイルスやファージ」を感染させ、遺伝子発現およびタンパク質産生を行う。D-1の項と同様に必要に応じ破砕・溶出処理などを実施後、精製する。
【0223】
F.TCR/BCRタンパク質(in vitro無細胞内合成)
【0224】
F-1(E&WまたはX):「W.TCR/BCR配列を組み込んで作成した発現ベクター」あるいは、「X.TCR/BCR配列を組み込んで作成したウイルスやファージ産生用ベクター」のうちTCR/BCR配列の5’上流直近領域にT7やSP6などのin vitro転写用プロモーターを持つベクターを用いて、無細胞系システム(ウサギ網状赤血球、小麦胚芽、大腸菌などの細胞抽出液を利用した合成系が利用できキットも販売されている)にて断続的にmRNA合成、およびタンパク質合成を行い、製造する。
【0225】
F-2(E&Z):「Z.TCR/BCR配列の5’末端にT7やSP6などin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片」から無細胞系システム(ウサギ網状赤血球、小麦胚芽、大腸菌などの細胞抽出液を利用した合成系が利用できキットも販売されている)にて断続的にmRNA合成、およびタンパク質合成を行い、製造する。
【0226】
E-6(E&D):上記Dの項目にて製造したRNAを用い、in vitro翻訳系、無細胞系システム(ウサギ網状赤血球、小麦胚芽、大腸菌などの細胞抽出液を利用した合成系が利用できキットも販売されている)などにて断続的にタンパク質合成を行い、製造する。
【0227】
したがって、ある局面において、本開示は、以下を提供する。
【0228】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)を発現する細胞を製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程とを含む方法を提供する。
【0229】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを産生する細胞を製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、(5)該ベクターを細胞に導入する工程とを含む方法を提供する。
【0230】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)核酸を含むウイルスまたはファージを製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むウイルス産生ベクターまたはファージ産生ベクターを提供する工程と、(5)該ベクターを細胞に導入する工程と、(6)該細胞を培養して、培養上清からTCRまたはBCR核酸を含むウイルスまたはファージを得る工程と、を含む方法を提供する。
【0231】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)のRNAを製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供する工程とを含む方法を提供する。
【0232】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含む発現コンストラクトを提供する工程と、(5)該発現コンストラクトを細胞に導入する工程と、(6)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程とを含む方法を提供する。
【0233】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、(4)上記ウイルスまたはファージを製造する方法によって製造されたウイルスまたはファージを細胞に感染させる工程と、(5)該細胞を該TCRまたはBCRを発現する条件に供する工程とを含む方法を提供する。
【0234】
本開示は、本開示の解析方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有するT細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)タンパク質を製造する方法であって、(4)該TCRまたはBCRの核酸配列を含むin vitro転写RNA合成用のベクター、あるいは該TCRまたはBCRの核酸配列にin vitro転写用プロモーター配列を結合させたDNA断片を提供する工程と、(5)該ベクターまたはDNA断片をin vitroでRNAポリメラーゼ反応が開始する条件に供し、mRNAを提供する工程と、(6)該mRNAを、in vitroで該mRNAからタンパク質が生成される条件に供し、該タンパク質を提供する工程とを含む方法を提供する。
【0235】
いくつかの実施形態において、上記発現コンストラクトは、例えば、発現ベクター、ウイルスまたはファージ産生用ベクター、および相同組換え用ベクターから選択され得る。
【0236】
さらなる局面において、本開示は、上記本開示の方法に従って解析された機能的なサブユニットペア遺伝子の配列に基づいて、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCR)を製造する方法であって、(4)該機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有する核酸を、発現ベクターに導入する工程と、(5)該発現ベクターを細胞や細菌に導入する工程と、(6)該細胞や細菌が該TCRまたはBCRを発現することができる条件下で該TCRまたはBCRを発現させる工程とを含む、方法を提供する。(4)該機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有する核酸を、発現ベクターに導入する工程は、制限酵素、リガーゼなどの任意の核酸処理のための酵素等を当該分野において公知の任意の酵素、手段などを利用することができる。(5)該発現ベクターを細胞に導入する工程は、核酸を細胞や細菌に導入するための任意の試薬、例えば、遺伝子導入や形質転換のための任意の試薬を利用することができる。(6)該細胞や細菌が該TCRまたはBCRを発現することができる条件下で該TCRまたはBCRを発現させることは、細胞や細菌を適宜の温度(例えば、10~50℃、例えば、37℃など)を利用することができ、細胞は5%CO2などの環境で利用することができる。TCRまたはBCRの製造は、「目的別で選べる
核酸実験の原理とプロトコール」、羊土社、平尾一郎、胡桃坂仁志編集;「目的別で選べる遺伝子導入プロトコール」、羊土社、仲嶋一範、北村義浩、武内恒成編集;「目的別で選べるタンパク質発現プロトコール」、羊土社、永田恭介、奥脇暢編集;および「タンパク実験プロトコール1」、学研メディカル秀潤社、大野茂男、西村善文監修などの文献に記載される慣例的な手法で行われ得る。あるいは、細胞や細菌を使用しない無細胞系タンパク質合成方法が当該分野で公知であり、この方法は、遺伝子DNA断片の5’上流にT7やSP6のプロモーター配列を含む発現ベクターに組み込むなどし、in vitro転写法でmRNAを合成し、合成したmRNAから大腸菌ホモジネート系や小麦胚芽系などの実験系を利用するものである。
【0237】
また、TCRまたはBCRを発現する細胞は、典型的には以下の方法で作成され得る。機能的なサブユニットペア遺伝子の配列を有する核酸をゲノム配列と相同性を持たせた領域に挿入し、必要に応じて、機能的タンパクドメインを付与するなどして相同組換えドナーベクターに挿入する。次いで、TCRやBCRの遺伝子座で相同組換えを生じさせ、必要に応じて、相同組換え細胞を組換えを起こしていない細胞から分離・選択して、得ることもできる。相同組換えベクターや相同組み換え細胞、相同組換え動物の作成は「実験医学 All Aboutゲノム編集」、羊土社、真下知士、山本 卓 編集、「Nature. 2018 Jul;559(7714):405-409. Reprogramming human T cell function and specificity with non-viral genome targeting.」Roth TLら、などを参考にして行いうる。
【0238】
本明細書中で挙げられた科学文献、特許公報、公開公報などの参考文献を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0239】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0240】
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明する。本実施例において用いられる各種試薬は、具体的に示したもののほか、TOYOBO、タカラバイオ、富士フィルム和光純薬、ニッポンジーン、ナカライテスク、サーモフィッシャー、ニューイングランドバイオラボ、プロメガなどから入手されるものも用いることができることが理解される。
【0241】
(調製例)
実施例で使用される試薬類の調製例を以下に示す。
・試薬のリスト
-PrimeScript II HighFidelity Onestep RT-PCR kit(R026A、タカラバイオ)
-40U/μl RNasin Plus RNase Inhibitor(N2611、Promega)
-200U/μl SuperScript IV Reverse Transcriptase(18090010、Invitrogen)
-2×KAPA HiFi Hot Start Ready Mix(KK2602、日本ジェネティクス)
-AMPure XP(A63881、Beckman Coulter)
-PE標識HLA-A*02:01 CMV pp65 Tetramer(株式会社医学生物学研究所)
-PE標識HLA-A*02:01 Influenza M1 Tetramer(株式会社医学生物学研究所)
-MACS buffer(130-091-221、Miltenyi Biotec)
・使用したオリゴヌクレオチド配列
-hTCRαBlock primer(CA2;23塩基):GTGCATAGACCTCATGTCTAGCA(配列番号1)
-hTCRαRT primer(CA1;23塩基):TGTTGAAGGCGTTTGCACATGCA(配列番号2)
-hTCRβBlock primer(CB2;23塩基):AGGCAGTATCTGGAGTCATTGAG(配列番号3)
-hTCRβRT primer(CB1(3);23塩基):GAACTGGACTTGACAGCGGAAGT(配列番号4)
-TS-Oligo(30塩基):AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACAT[G][G](G)※(配列番号5)
※[]の右端から2、3番目の2塩基はRNA、()の右端の1塩基はLNA
-TS-Primer(30塩基):AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATGGG(配列番号6)
-Forward TS-Tag primer v1(64塩基):
GTCTC{GTGGGCTCGGAGATGTGTAT}AAGAGACAGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATGGG(配列番号7)(下線部がMiSeqシークエンシングタグ配列部位、{ }に囲まれた配列がサンガーシークエンシングプライマー配列)
-hTCRαReverse Tag primer(51塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGGAGGGTCAGGGTTCTGGA(配列番号8)
(下線部がMiSeqシークエンシングタグ配列部位、{ }に囲まれた配列がサンガーシークエンシングプライマー配列)
-hTCRαReverse Tag primer/hTCA-R-TP5-1(53塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGACTTGTCACTGGATTTAGAG(配列番号9)
-hTCRβReverse Tag primer(52塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGGCTCAAACACAGCGACCTC(配列番号10)
(下線部がMiSeqシークエンシングタグ配列部位、{ }に囲まれた配列がサンガーシークエンシングプライマー配列)
・シークエンシングプライマー
P5-seq(21塩基):GGCAGCGTCAGATGTGTATAA(配列番号11)
CA3(23塩基):ACTTTGTGACACATTTGTTTGAG(配列番号12)
CB3(23塩基):ACTGTGCACCTCCTTCCCATTCA(配列番号13)
【0242】
(実施例1:単一細胞を用いた解析とバルク細胞を用いた解析の比較)
【0243】
実験A
【0244】
(試薬)
実験Aでの追加の試薬は以下のとおりである。
-APC標識抗ヒトCD8抗体(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
【0245】
A1.細胞調製と培養
A1-1.細胞単離
ヒトボランティア(HLA-A*02型保有、CMV感染歴あり)より末梢血を採取し、フィコール密度勾配法にて末梢血単核細胞(Peripheral blood mononuclear cells;PBMC)を単離し、実験用に細胞培養した。
【0246】
通常のレパトア解析で全細胞集団の解析を行うため分離直後のPBMC(およそ100万細胞)をTorizol試薬に溶解、-80℃保管した。
【0247】
A1-2.細胞培養
PBMCをサイトメガロウイルス(Cytomegalovirus;CMV)のpp65タンパクエピトープペプチドで「活性化」処理し、1週間培養後シングルセルソーティングレパトア解析実験に使用した。ここで、「活性化」は、例えば、細胞増殖活性、インターフェロンγやインターロイキンなどのサイトカイン分泌量増加、MHC-CMVpp65ペプチド提示細胞に対する殺傷活性の増加、TCRタンパク量の増加などを指標に確認することができる。
【0248】
CMV(Human betaherpesvirus 5)のpp65(AKI22842.1)の全長アミノ酸配列は次の通りである。下線部の9アミノ酸残基を本実施例において使用したペプチドエピトープ部位である。
【0249】
MESRGRRCPEMISVLGPISGHVLKAVFSRGDTPVLPHETRLLQTGIHVRVSQPSLILVSQYTPDSTPCHRGDNQLQVQHTYFTGSEVENVSVNVHNPTGRSICPSQEPMSIYVYALPLKMLNIPSINVHHYPSAAERKHRHLPVADAVIHASGKQMWQARLTVSGLAWTRQQNQWKEPDVYYTSAFVFPTKDVALRHVVCAHELVCSMENTRATKMQVIGDQYIKVYLESFCEDVPSGKLFMHVTLGSDVEEDLTMTRNPQPFMRPHERNGFTVLCPKNMIIKPGKISHIMLDVAFTSHEHFGLLCPKSIPGLSISGNLLMNGQQIFLEVQAIRETVELRQYDPVAALFFFDIDLLLQRGPQYSEHPTFTSQYCIKGKLEYRHTWDRHDEGAAQGDDDVWTSGSDSDEELVTTERKTPRVTGGGAMAGASTSAGRKRKSASSATACTSGVMTRGRLKAESTVAPEEDTDEDSDNEIHNPAVFTWPPWQAGILARNLVPMVATVQGQNLKYQEFFWDANDIYRIFAELEGVWQPAAQPKRRRHRQDALPGPCIASTPKKHRG(配列番号804)
【0250】
通常のレパトア解析で全細胞集団の解析を行うため、ペプチド刺激した染色用細胞の一部(100万細胞)をTorizol試薬に溶解、-80℃保管した。
【0251】
A2.細胞マーカー染色およびエピトープ染色とシングルセルソーティング
A2-1.細胞マーカー抗体とエピトープペプチドによる染色
エピトープペプチドで処理し培養したPBMCは遠心分離とMACS buffer再懸濁による洗浄後、MACS buffer中で蛍光物質phycoerythrin(PE)標識MHC pp65エピトープテトラマーと室温で20分、蛍光物質allophycocyanin(APC)標識抗CD8抗体と4℃で15分反応させた。
A2-2.シングルセルソーティング
【0252】
反応後、細胞は遠心分離、MACS bufferへの再懸濁を行い洗浄し、セルソーター(BD社FACS Aria)にて、分離を行った。PE標識MHC CMVpp65エピトープテトラマーとAPC標識抗CD8抗体で染色したPBMCを、メーカーのマニュアルに従いFSC-A(Forward Scatter Area、前方散乱光領域で細胞の大きさの指標値)とSSC-A(Side Scatter Area、細胞内小器官など複雑さの指標)で展開し、XY軸の右下にリンパ球細胞群ゲート(P1)を得た。P1はさらにPE(MHC CMVpp65エピトープテトラマー陽性)とAPC(CD8陽性)で展開し、PE(MHC CMVpp65エピトープテトラマー陽性)とAPC(CD8陽性)のP2ゲートにMHC CMVpp65エピトープテトラマー反応性細胞障害性T細胞を、P3ゲートにMHC CMVpp65エピトープテトラマー非反応性の細胞障害性T細胞の分画を得た。APC陽性(CD8陽性)、PE陽性(MHC pp65エピトープテトラマー陽性)細胞群(
図1のP2領域)を96ウェルプレートに1細胞ずつ分注し、シングルセルレパトア解析に供した。
【0253】
シングルセルソート後、通常のバルク細胞のレパトア解析のためにP2領域の細胞(およそ35万細胞)、並びにP3領域のAPC陽性(CD8陽性)、PE陰性(MHC pp65エピトープテトラマー陰性)細胞(およそ24万細胞)をチューブにソートし、Torizol試薬に溶解、-80℃保管した。
【0254】
A3.One-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅
A3-1.One-step RT-TS-PCR反応 本明細書において実施される「One-step RT-TS-PCR反応」は、以下の工程を含む。
【0255】
細胞を分注したプレートに以下の表1に示される反応液を10μl/wellずつ添加し、RT-PCR反応を行った。反応液を2μl分取しアガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図2)。その結果、半数以上のウェルでDNAバンドが確認された。
【表1】
【0256】
A3-2.セミネステドPCR
One-step RT-TS-PCR反応液を分取し、TCRα、TCRβそれぞれ個別での増幅確認のため、およびDNA断片に共通シークエンシングプライマー認識配列を付加するため、5’側はテンプレートスイッチ配列、3’側はブロックプライマーの内側の配列にそれぞれシークエンシング用配列を付与したプライマーを用いてセミネステド形式でPCR反応を行った(表2)。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図3)。その結果、400塩基対以上の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとして、TCRαは64ウェル、TCRβは32ウェルでDNAバンドが確認され、そのうち22ウェルはTCRαおよびTCRβ両方のcDNAバンドが確認できた。
【表2】
【0257】
A3-3.シークエンシング-1
PCR増幅したTCRαおよびTCRβのcDNA断片をAMPure XP DNAキットで精製し、P5-seqプライマーにてサンガー法シークエンシングを実施した。得られた配列は、TCRα/β配列データベース(The International Immunogenetics Information System;IMGT、http://www.imgt.org/)をダウンロードし、blast相同性検索を行うとともに、IMGT Webレパトア配列解析システムIMGT/V-QUEST(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/vquest)で解析することにより、TCR増幅の有無、増幅された塩基配列を確認した。確認されたV領域番号を
図4(電気泳動像の下)に示す。シークエンシングの結果、TCRαは59ウェル、TCRβは30ウェルのTCR cDNA断片の増幅が確認できた。表2Aに決定したTCRα/βの配列ペア情報(?は未同定の意味)とクローンランキング、配列例(ウェルNo.3のシークエンシングデータ)を示す。TRAV21/J49とTRBV6-5/J1-2のペアなど特定のクローン(CMVpp65エピトープペプチド反応性メモリーT細胞由来と考えられる)が、顕著に増殖しているようであった。
【表2A】
【0258】
A3-4.シークエンシング-2
「3-1.One-step RT-TS-PCR反応」で得られたRT-PCR産物のうち電気泳動でバンドが確認できたサンプル(本解析ではWell No.1から30までを対象とした。バンドが確認できたのは、No.1、2、3、4、5、6、7、11、12、13、15、18、19、21、22、23、24、25、28、30の20サンプル)を3倍希釈し、その後、反応液17~18μlをAMPure XP DNAキットでDNAを精製し、18μlの10mMTrisCl緩衝液中に回収した。必要DNA量が回収できた19サンプル(No.23以外のサンプル)について、一つの反応系ではTCRαC領域プライマー(CA3プライマー)で、もう一つの反応系ではTCRβC領域プライマー(C1とC2領域の共通配列であるCB3プライマー)を使用し、それぞれTCRαcDNA増副産物およびTCRβ増幅産物のサンガー法シークエンシングを実施した。得られた配列は、IMGT TCRα/β配列データベースを用いin house blast相同性検索を行うとともに、Repertoire Genesis社内解析システムで解析などを行い、TCR増幅の有無および増幅された塩基配列を確認した。表3に本解析で解析されたV・J領域のデータと、参考として「A3-3シークエンシング-1」でセミネステドPCR増幅産物をシークエンシングして得られた結果(Well No.1~30の結果のみ)を示す。TCRαのV領域が決定できたサンプルが10ウェル、TCRβのV領域が決定できたサンプルが11ウェル、TCRα/βペアで同定できたのが6ウェルであった。RT-PCR-セミネステドPCR産物をシークエンシング場合、同じサンプルでTCRαのV領域が決定できたサンプルが20ウェル、TCRβのV領域が決定できたサンプルが12ウェル、TCRα/βペアで同定できたのが9ウェルであった。解析できる比率はわずかに下がったが、より簡便に配列決定が可能であった。
【0259】
配列解析に加えTCR cDNAクローニングを行う場合は本手法でシークエンシングし、目的の配列を含むWellのOne-step RT-PCR反応液よりクローニングプライマーでTCR cDNA断片を増幅し、別に遺伝子合成やPCR反応で合成したC領域DNA断片とクローニングベクターや発現ベクターにアッセンブルクローニング(複数のDNA断片が一度に高確率でライゲーション可能な手法)することにより、タンパク発現実験に利用可能なTCRαおよびTCRβのcDNA配列が入手することもできる。
【表3】
【0260】
A3-5.シークエンシング-3(MiSeq次世代シークエンサー使用)
サンガーダイレクトシークエンシング法にてペア配列決定がなされたサンプルのうち16ウェルのサンプル(Well No.2、3、5、6、13、21、22、30、46、47、49、54、55、78、79、87)について、MiSeq次世代シークエンサーでのシークエンシングを行った。「A3-2.セミネステドPCR」で増幅および精製したDNA断片を次代シークエンサーで配列解析するため、表4に示されるPCR反応液と反応サイクルでインデックス付加PCRを行った。PCR産物はAMPure XP DNAキットで精製し、メーカーのプロトコールに従いMiSeq次世代シークエンサーでのシークエンシングランを行った。得られたシークエンシングデータはRepertoire Genesisソフトウェアやin house blast解析などで解析した。
【表4】
【0261】
結果を表5に示す。サンガー法ではJ領域未決定など一部シークエンスが不明瞭だったWell No.21、46、47のTCRβの配列についても明確なデータが得られた。Well No.87のサンプルはサンガー法ではややデータが不明瞭でTRBV28/J2-3と判定されていたが、MiSeqシークエンサーにより明確なデータが得られ、TRBV28/J1-1が正しいことが判明した。
【0262】
また、Well No.2、3、5、21、22、46、55ではTRAV21/J49とTRAV24/J49の両方が発現しており、対応ペアのTCRβはTRBV6-5/J1-2の1種類のみであることが判明した。この結果は多分子の結果をまとめて1つの蛍光データとして検出しているサンガーキャピラリーシークエンシング法では解析が難しく、多分子の結果をそれぞれの分子ごとのデータとして検出できる次世代シークエンサーを使用することにより初めて解析できた。
【表5】
【0263】
次にMiSeqシークエンシングデータのリード1(TCR cDNAの3’側C領域側からシークエンシングしたデータ)とリード2(TCR cDNAの5’側からシークエンシングしたデータ)をfastq-joinプログラムで結合させ、逆相補鎖配列に変換し、通常のcDNAと同じ向きの配列に変換した。配列両末端にプライマー配列を持つクローンのみピックアップ、プライマー配列を除去後、該当クローンをランダムに選抜し、塩基配列アッセンブルマルチプルアラインメント解析により増幅したcDNAの塩基配列を得た。DNA断片が長く(概ね500~580塩基対より長い場合)結合率が良くない場合は、結合出来た配列に加え、該当クローンに振り分けられたリードで結合できなかった配列のリード1の逆相補佐配列、リード2のそのままの配列を利用し、低クオリティー領域の除去などを行いった後、塩基配列アッセンブルマルチプルアラインメント解析を行い増幅したcDNAの塩基配列を得た。得られたcDNA塩基配列はEnsembleのGeneデータベースなど公共データベース上の遺伝子配列と比較し、5’のアミノ酸配列開始コドンから配列が得られているか確認した。また、アミノ酸配列置換し、リーダー領域と可変部領域(フレームワーク部4か所:FR1~4、と可変領域3か所:CDR1~3)のアミノ酸配列予測を行った。解析例として得られたウェルNo.13のTCRα、TCRβの塩基配列、アミノ酸翻訳配列を示す。(下線はEnsembleのGeneデータベース上でアノテーション付けされている翻訳開始コドンと、コンピュータ解析で同定したCDR3領域部位を示す。)いずれもインフレームで翻訳開始コドンからCDR3領域を含むC領域のN末アミノ酸配列までタンパク情報が得られた。また、塩基配列確認より、No.13のTCRβはC領域がC1型であることが確認できた。
【0264】
これらの解析で得られた可変領域のcDNA断片、cDNA塩基配列は必要に応じ再増幅や人工的に遺伝子合成を行うなどして、クローンによってあるいは機能的に相違が少ないC領域の配列と結合させ、全長コーディング領域を得ることにより、細菌・細胞系や人工合成系でのタンパク質発現、タンパク質合成が出来、タンパク標品作成、エピトープ探索、TCR導入T細胞療法などへの応用が可能である。
【0265】
>ウェルNo.13 TCRα塩基配列
GGGCTGCAAAACGTTTTTCTGCTGTGGGTACGTGAGCAGGAAACATGGAGAAGAATCCTTTGGCAGCCCCATTACTAATCCTCTGGTTTCATCTTGACTGCGTGAGCAGCATACTGAACGTGGAACAAAGTCCTCAGTCACTGCATGTTCAGGAGGGAGACAGCACCAATTTCACCTGCAGCTTCCCTTCCAGCAATTTTTATGCCTTACACTGGTACAGATGGGAAACTGCAAAAAGCCCCGAGGCCTTGTTTGTAATGACTTTAAATGGGGATGAAAAGAAGAAAGGACGAATAAGTGCCACTCTTAATACCAAGGAGGGTTACAGCTATTTGTACATCAAAGGATCCCAGCCTGAAGACTCAGCCACATACCTCTGTGCCCGGAACACCGGTAACCAGTTCTATTTTGGGACAGGGACAAGTTTGACGGTCATTCCAAATA(配列番号14)
>ウェルNo.13 TCRαアミノ酸翻訳配列
AAKRFSAVGT*AGNMEKNPLAAPLLILWFHLDCVSSILNVEQSPQSLHVQEGDSTNFTCSFPSSNFYALHWYRWETAKSPEALFVMTLNGDEKKKGRISATLNTKEGYSYLYIKGSQPEDSATYLCARNTGNQFYFGTGTSLTVIPN(配列番号15)
>ウェルNo.13 TCRβ塩基配列
GGTCTCAGAATGACTTCCTTGAGAGTCCTGCTCCCCTTTCATCAATGCACAGATACAGAAGACCCCTCCGTCATGCAGCATCTGCCATGAGCATCGGCCTCCTGTGCTGTGCAGCCTTGTCTCTCCTGTGGGCAGGTCCAGTGAATGCTGGTGTCACTCAGACCCCAAAATTCCAGGTCCTGAAGACAGGACAGAGCATGACACTGCAGTGTGCCCAGGATATGAACCATGAATACATGTCCTGGTATCGACAAGACCCAGGCATGGGGCTGAGGCTGATTCATTACTCAGTTGGTGCTGGTATCACTGACCAAGGAGAAGTCCCCAATGGCTACAATGTCTCCAGATCAACCACAGAGGATTTCCCGCTCAGGCTGCTGTCGGCTGCTCCCTCCCAGACATCTGTGTACTTCTGTGCCAGCAGTCAACAGACAGGGACGATAGGTGGCTACACCTTCGGTTCGGGGACCAGGTTAACCGTTGTAGAGGACCTGAACAAGGTGTTCCCACCC(配列番号16)
>ウェルNo.13 TCRβアミノ酸翻訳配列
SQNDFLESPAPLSSMHRYRRPLRHAASAMSIGLLCCAALSLLWAGPVNAGVTQTPKFQVLKTGQSMTLQCAQDMNHEYMSWYRQDPGMGLRLIHYSVGAGITDQGEVPNGYNVSRSTTEDFPLRLLSAAPSQTSVYFCASSQQTGTIGGYTFGSGTRLTVVEDLNKVFPP(配列番号17)
【0266】
A3-6.バルク細胞レパトア解析
培養直後の(1)PBMC(およそ100万細胞)、(2)ペプチド刺激し1週間培養した細胞(100万細胞)、(3)P2領域CD8+陽性、MHC pp65エピトープテトラマー陽性細胞(およそ35万細胞)、並びに(4)P3領域CD8+陽性、MHC pp65エピトープテトラマー陰性細胞コールによりTCRαおよびTCRβレパトア解析を行った。その結果(クローンランキング上位50種のリスト)を、表6~13に示す。ペプチド刺激と培養により、(2)の細胞群では刺激によって増殖したと思われる細胞クローンの特定の配列(TCRα:TRAV21/J49、TRAV24/J49、TRAV3/J26、TRAV5/J20など、TCRβ:TCRBV6-5/J1-2、TRBV28/J1-1、TRBV6-6/J1-2など)の比率が増加し、それらはセルソーティングにより(3)P2領域CD8+陽性、MHC pp65エピトープテトラマー陽性細胞に分画および濃縮されており、(4)P2領域CD8+陽性、MHC pp65エピトープテトラマー陰性細胞にはほとんど確認されなかった。これらデータをシングルセルレパトア解析結果と比べると、実際にTRAV21/J49&TCRBV6-5/J1-2ペア配列、TRAV24/J49&TCRBV6-5/J1-2ペア配列が得られていることが分かり、実験の成否を確認することができた。このように、細胞群全体のレパトア解析データを参照データとし、実験過程の成否の確認や、目的の陽性クローンが得られているかどうか、またどの程度シングルセルスクリーニングすればよいか確認することができる。例えば、TCR配列の多様性が低い場合(クロナリティーが高い場合)は多数の細胞を解析しても、得られるTCRα/βペア配列の数には限りがあるが、多様性が高い場合は解析するシングルセル数に比例して、より多くのTCRα/βペア配列入手できることが期待される。
【表6-1】
【表6-2】
【表7-1】
【表7-2】
【表8-1】
【表8-2】
【表9-1】
【表9-2】
【表10-1】
【表10-2】
【表11-1】
【表11-2】
【表12-1】
【表12-2】
【表13-1】
【表13-2】
(表6~13において「*」はストップコドンを示す。)
【0267】
(実施例2:One-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅)
【0268】
実験B
【0269】
(試薬)
実験Bでの追加の試薬は以下のとおりである。
-FITC標識抗ヒトCD8抗体(ベックマンコールター)
-Alexa647標識抗ヒトCD3抗体(ベックマンコールター)
-eFluor780(65-0865-14、eBioscience)
【0270】
B1.細胞調製と培養
B1-1.細胞単離
ヒトボランティア(HLA-A*02型保有者)より末梢血を採取し、フィコール密度勾配法にて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、実験に使用した。
【0271】
B1-2.細胞培養
PBMCはCMVpp65タンパクエピトープペプチドで処理し、2週間培養後にもう一度ペプチド処理を実施し、26日目にシングルセルソーティングレパトア解析実験に使用した。
【0272】
B2-1.細胞マーカー抗体とエピトープペプチドによる染色
エピトープペプチドで処理し培養したPBMCは遠心分離とPBS再懸濁による洗浄を行った。PBS中、死細胞染色蛍光試薬eFluor780と共に氷上で30分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、バックグラウンド軽減試薬(human FcR blocking試薬)Clear Backと共に氷上で10分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、phycoerythrin(PE)標識MHC pp65エピトープテトラマーと共に氷上で30分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、alexa647標識抗CD3抗体とFITC標識抗CD8抗体と共に氷上で30分インキュベートし、シングルセルソーティングに供した。
【0273】
B2-2.シングルセルソーティング
細胞は染色後、洗浄、PBS中に再懸濁し、セルソーター(SONY社、SH800)にて、リンパ球細胞集団のうち、eFluor780陰性、alexa647陽性(CD3陽性)、FITC陽性(CD8陽性)、PE陽性(MHCエピトープテトラマー陽性)細胞群を96ウェルプレートに1細胞、あるいは複数細胞(5個、25個および100個)ずつ分注した。
【0274】
B3.One-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅
B3-1.One-step RT-TS-PCR反応
細胞を分注したプレートは-80℃超低温冷凍庫に保管し、5日後にドライアイス梱包して、宅配便業者の冷凍宅配便サービスを利用し、1日かけておよそ500km離れた研究施設へ輸送し、-80℃超低温冷凍庫に保管した。8日間-80℃超低温冷凍庫に保管後、プレートを取り出し、氷上にて反応液を10μl/wellずつ添加し、One-step RT-TS-PCR反応を行った(表14)。
【表14】
【0275】
B3-2.セミネステドPCR
One-step RT-TS-PCR反応液は純水(DW)を2倍量加え1.5μlを分取し、TCRαおよびTCRβそれぞれ別個のチューブで、あるいは同一チューブでDNA断片にシークエンシングプライマー認識配列を付加するため、5’側はテンプレートスイッチ配列、3’側はブロックプライマーの内側の配列にアダプター配列を付加(シークエンシング用Index配列を付加するための配列)したプライマーを用いてセミネステド形式でPCR反応を行った(表15)。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った。
【表15】
【0276】
CMVpp65ペプチド刺激し、ソートした細胞のうちTCRαおよびTCRβについて別々に反応を行った結果を
図5に示す。およそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとして、1ウェルに1細胞注入したウェルでは全80ウェル中TCRαは26ウェル、TCRβは45ウェルでDNAバンドが確認され、そのうち20ウェルはTCRαおよびTCRβ両方のcDNAバンドが確認できた。
【0277】
CMVpp65ペプチド刺激し、ソートした細胞のうちTCRαおよびTCRβを同一反応液の中で反応を行った結果を
図6に示す。同様におよそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとして、1ウェルに1細胞注入したウェルでは全80ウェル中50ウェルでDNAバンドが確認できた。
【0278】
いずれの条件でも反応のポジティブコントロールとして設定した5細胞(ウェル41,42、89および90)、25細胞(ウェル43、44、91および92)および100細胞(ウェル45、46、93および94)注入したウェルあるいは株化T細胞由来RNAを入れたウェル(ウェル48:Jurkat細胞由来RNA、ウェル96:MOLT4細胞由来RNAをインプット)では、ほぼ全ての条件で良好な増幅が見られた。ウェル47および95には細胞を注入しなかった。
【0279】
以上の解析によりプレートに単離後、冷凍保管した細胞でも本One-step RT-TS-PCR法にてT細胞のTCRα/βペア配列の同定が可能であることが示された。
【0280】
B3-3.シークエンシング配列決定(MiSeq次世代シークエンサー使用)
PCR増幅しバンドが確認されたサンプル(
図5の別々にPCRしたサンプル中、TCRαについて26サンプル、TCRβについて45サンプル、
図6の同一反応液中でPCRしたサンプル中50サンプル)をAMPure XP DNAキットで精製し、イルミナ社MiSeq次世代シークエンサーで配列解析するため、表16に示すPCR反応液と反応サイクルでインデックス付加PCRを行った。PCR産物はAMPure XP DNAキットで精製しメーカーのプロトコールに従いMiSeq次世代シークエンサーでのシークエンシングランを行った。得られたシークエンシングデータはRepertoire Genesisソフトウェアで解析した。
【表16】
【0281】
TCRαおよびTCRβを別々に増幅し、シークエンシングしたサンプルの結果を表17に、同一チューブで増幅、シークエンシングした結果を表18に示す。いずれも同じ18サンプルTCRα/βペアの配列(V領域、J領域、CDR3領域)を同定することができた。
【表17】
【表18】
【0282】
(実施例3:One-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅(2))
【0283】
実験C
【0284】
C1.細胞調製と培養
C1-1.細胞単離
ヒトボランティア(HLA-A*02型保有者2名)より末梢血を採取、フィコール密度勾配法にて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、実験に使用した(実験Bと同一実験)。
【0285】
C1-2.細胞培養
一方のボランティア由来PBMCはCMVpp65タンパクエピトープペプチドで処理(以降のCMV処理、染色は実験Bと同一実験)、もう一方のボランティア由来PBMCはInfluenza M1タンパクエピトープペプチドで処理し、2週間培養後にもう一度ペプチド処理を実施し、26日目にシングルセルソーティングレパトア解析実験に使用した。
【0286】
Infuluenza M1タンパク(P03485)の全長アミノ酸配列は次の通りである。下線部の9アミノ酸残基が本実施例で使用したペプチドエピトープである。
【0287】
MSLLTEVETYVLSIIPSGPLKAEIAQRLEDVFAGKNTDLEVLMEWLKTRPILSPLTKGILGFVFTLTVPSERGLQRRRFVQNALNGNGDPNNMDKAVKLYRKLKREITFHGAKEISLSYSAGALASCMGLIYNRMGAVTTEVAFGLVCATCEQIADSQHRSHRQMVTTTNPLIRHENRMVLASTTAKAMEQMAGSSEQAAEAMEVASQARQMVQAMRTIGTHPSSSAGLKNDLLENLQAYQKRMGVQMQRFK(配列番号805)
【0288】
C2.細胞マーカー染色およびエピトープ染色とシングルセルソーティング
C2-1.細胞マーカー抗体とエピトープペプチドによる染色
エピトープペプチド処理し培養したPBMCは遠心分離とPBS再懸濁による洗浄を行った。PBS中、死細胞染色蛍光試薬eFluor780と共に氷上で30分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、バックグラウンド軽減試薬(human FcR blocking試薬)Clear Backと共に氷上で10分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、phycoerythrin(PE)標識MHC pp65エピトープテトラマーあるいはPE標識MHC M1エピトープテトラマーと共に氷上で30分インキュベートし、PBSで再懸濁し、遠心分離により細胞を沈降させて上清を除去することにより洗浄した。次いで、alexa647標識抗CD3抗体とFITC標識抗CD8抗体と共に氷上で30分インキュベートし、シングルセルソーティングに供した。
【0289】
C2-2.シングルセルソーティング
細胞は染色後、洗浄、PBS中に再懸濁し、セルソーター(SONY社、SH800)にて、リンパ球細胞集団のうち、eFluor780陰性、alexa647陽性(CD3陽性)、FITC陽性(CD8陽性)、PE陽性(MHCエピトープテトラマー陽性)細胞群を96ウェルプレートに1細胞、あるいは複数細胞(10個および100個)ずつ分注した(CMV処理および染色した細胞は実験Bと同じ検体で-80℃保管せずにすぐOne-step RT-TS-PCR実験に使用した。)。
【0290】
C3.One-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅
C3-1.One-step RT-TS-PCR反応
細胞を分注したただちに表19に示す反応試薬中でOne-step RT-TS-PCR反応を行った。
【表19】
【0291】
C3-2.セミネステドPCR
One-step RT-TS-PCR反応液は純水(DW)を2倍量加え1.5μlを分取し、TCRαおよびTCRβそれぞれ別個のチューブで、あるいは同一チューブでDNA断片にシークエンシングプライマー認識配列を付加するため、5’側はテンプレートスイッチ配列、3’側はブロックプライマーの内側の配列にアダプター配列を付加(シークエンシング用Index配列を付加するための配列)したプライマーを用いてセミネステド形式でPCR反応を行った(表20)。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った。
【表20】
【0292】
CMVpp65ペプチドで刺激し、ソートした細胞の結果(TCRαおよびTCRβ別々に実施)を
図7に示す。およそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとして、1ウェルに1細胞注入したウェルでは全80ウェル中TCRαは25ウェル、TCRβは41ウェルでDNAバンドが確認され、そのうち19ウェルはTCRαおよびTCRβ両方のcDNAバンドが確認できた。
【0293】
M1ペプチド刺激、ソートした細胞の結果(TCRα、TCRβ別々に実施)を
図8に示す。およそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとすると、1ウェルに1細胞注入したウェルでは全80ウェル中TCRαは24ウェル、TCRβは21ウェルでDNAバンドが確認され、そのうち9ウェルはTCRα、TCRβ両方のcDNAバンドが確認できた。
【0294】
いずれの条件でも反応のポジティブコントロール的に設定した10細胞(ウェル21および22)、100細胞(ウェル23)注入したウェルあるいは株化T細胞由来RNAを入れたウェル(ウェル72:Jurkat細胞由来RNA、ウェル96:MOLT4細胞由来RNAをインプット)では、ほぼ全ての条件で良好な増幅が見られた。
【0295】
C3-3.シークエンシング
PCR増幅しバンドが確認されたサンプル(
図7のCMVpp65ペプチドで刺激し、ソートしたサンプル中、TCRαについて25サンプル、TCRβについて41サンプル、
図8のM1ペプチドで刺激し、ソートしたサンプル中、TCRαについて24サンプル、TCRβについて21サンプル)をAMPure XP DNAキットで精製し、P5-seqプライマーにてサンガー法シークエンシングを実施した。得られたシークエンシングデータをRepertoire Genesisソフトウェアで解析した。
【0296】
CMVpp65ペプチドで刺激し、ソートしたサンプルのシークエンシングおよびRepertoire Genesisソフトウェア解析結果を表21に示す。シークエンシングしたTCRα25サンプル、TCRβ41サンプル全てで何らかのTCR cDNA配列が確認され、19サンプルでTCRα/βペアの配列解析(少なくともTCRα/β両方のV領域を同定)がなされた。
【0297】
M1ペプチドで刺激し、ソートしたサンプルの結果を表22に示す。シークエンシングしたTCRα24サンプル中22サンプル、TCRβ21サンプル全てで何らかのTCR cDNA配列が確認され、7サンプルでTCRα/βペアの配列解析がなされた。
【表21】
【表22】
【0298】
C3-4.シークエンシング配列決定-2
「C3-3.シークエンシング配列決定」においてTCRα/βペアの配列を解析できたもののうち、一部配列情報が不明確なサンプルを含むCMVpp65ペプチドで刺激し、ソートした細胞4ウェル(Well No.6、12、15、20)由来、およびM1ペプチドで刺激し、ソートした細胞3ウェル(Well No.13、36、39)由来のPCR産物精製物(「C3-3.シークエンシング配列決定」中のPCRで増幅したDNAサンプル)をイルミナ社MiSeq次世代シークエンサーで配列解析するため、表23のPCR反応液と反応サイクルでインデックス付加PCRを行った。PCR産物をAMPure XP DNAキットで精製し、メーカーのプロトコールに従いMiSeq次世代シークエンサーでのシークエンシングランを行った。
【表23】
【0299】
得られたシークエンシングデータをRepertoire Genesisソフトウェアで解析した。その結果、サンガー法シークエンシングデータとの比較結果を表24に示す。サンガー法では精度良く解析できなかったサンプル(CMV-No.20 TCRα/β)、およびストップコドンを含むCDR3であると判定されていたサンプル(CMV-No.12 TCRβ、CMV-No.15 TCRβ)の配列について正確な解析結果が得られ、新たにCDR3アミノ酸配列の正確な同定ができた。サンガー法ではシークエンシングエラーや非特異的増幅DNA断片の混入などによりうまく解析できないサンプルが存在するが、イルミナ社MiSeqなどいわゆる次世代シークエンサーによる分子レベルでの複数リードの解析でより精度良い配列データが得られることが確認できた。
【表24】
【0300】
(実施例4:One-step RT-TS-PCR法によるBCRの増幅)
【0301】
実験D
【0302】
D1.細胞調製と培養
【0303】
(調製例)
実施例で使用される試薬類の調製例を以下に示す。
・試薬のリスト(実験D用の追加分)
-FITC標識抗ヒトCD19抗体(560994、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
-PE-Cy5標識抗ヒトCD8抗体(557746、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
-Clear back Human Fc receptor blocking reagent(MTG-001、株式会社医学生物学研究所)
-Resiquimod(SML0196、Sigma-Aldrich)
-7-AAD(51-88981E、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
・使用したオリゴヌクレオチド配列
-hBCRμBlock primer(CM2(2);19塩基):TCCTGTGCGAGGCAGCCAA(配列番号604)
-hBCRμRT primer(CM1(2);23塩基):TGATGTCAGAGTTGTTCTTG(配列番号605)
-hBCR Kappa Block primer(CK2;18塩基):CTGTACTTTGGCCTCTCT(配列番号606)
-hBCR Kappa RT primer(CK1;19塩基):TTGTGTTTCTCGTAGTCTG(配列番号607)
-hBCR Lambda Block primer(CL2;16塩基):CCGGGTAGAAGTCACT(配列番号608)
-hBCR Lambda RT primer(CL1;19塩基):TGTCTTCTCCACGGTGCTC(配列番号609)
-hBCRμReverse Tag primer(CM-ST1-R-(3)、53塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGGTATCCGACGGGGAATTCTC(配列番号610)
-hBCR Kappa Reverse Tag primer(CK-ST1-R、51塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGTTATTCAGCAGGCACACA(配列番号611)
-hBCR Lambda Reverse Tag primer(CL-ST1-R、51塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGTGTGGCCTTGTTGGCTTG(配列番号612)
【0304】
D1-1.細胞単離
ヒトボランティア(2名)より末梢血を採取、フィコール密度勾配法にて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、実験に使用した。
【0305】
D1-2.細胞培養
PBMCは2検体とも、細胞調製後一晩培養し、10μg/mlのResiquimodを含む培地で2日間培養し、シングルセルソーティングレパトア解析実験に使用した。2日間Resiquimod処理して、IL-6、BCRμ、BCRκおよびBCRλのmRNAレベルが上昇することを確認することによって、B細胞が活性化するかどうかを事前に確認した(参考文献:Eur J Immunol. 2018 Feb; 48(2): 283-292. BAFF augments IgA2 and IL‐10 production by TLR7/8 stimulated total peripheral blood B cells)。CD19をB細胞の細胞マーカーとして使用した。
【0306】
D2.細胞マーカー染色とシングルセルソーティング
D2-1.細胞マーカー抗体による染色
Resiquimodを含む培地で培養したPBMCは遠心分離により沈降させ、MACS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄後を行った後、MACS buffer中、Clear Back Human Fc receptor blocking reagentで氷上、5分間処理、MACS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄を2回行った後、FITC標識CD19抗体とPE-Cy7標識抗CD8抗体で氷上、30分間染色、MACS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄後、死細胞染色試薬7-AADで氷上、10分間染色、MACS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄後、最終的に1mlのMACS bufferに懸濁し、シングルセルソーティングに供した。
【0307】
D2-2.シングルセルソーティング
染色した細胞は、セルソーター(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、FACSMelody)にて、リンパ球細胞集団ゲート中で、7-AAD陰性、FITC陽性(CD19陽性)、PE-Cy7陰性(CD8陰性)細胞群をOne-step RT-TS-PCR反応液(D3-1)を加えた96ウェルプレートに1細胞(各ドナー24ウェルずつ)、あるいは実験のポジティブコントロール的に複数細胞(各ドナー5細胞、25細胞各3ウエルずつ)インプットした。ネガティブコントロールとして細胞をインプットしないウェルを4ウェル置いた。
【0308】
D3.One-step RT-TS-PCR法によるBCRμ(Ig重鎖μ)、BCRκ(Ig軽鎖κ)、BCRλ(Ig軽鎖λ)の増幅
D3-1.One-step RT-TS-PCR反応
細胞を分注したプレートにて細胞はただちに表25の反応試薬中でのOne-step RT-TS-PCR反応を行った。
【表25】
【0309】
D3-2.セミネステドPCR
One-step RT-TS-PCR反応液は純水(DW)を2倍量加え1.5μlを分取し、BCRμ、BCRκ、BCRλを同一チューブ中で、あるいは個別のチューブで表.24の反応液中、セミネステド形式のPCR反応を行った。DNA断片にシークエンシングプライマー認識配列を付加するため、5’側はテンプレートスイッチ配列、3’側はブロックプライマーの内側の配列にアダプター配列を付加(シークエンシング用Index配列を付加するための配列)したプライマーを用いた。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った。
【表26】
【0310】
同一チューブ内でセミネステドPCRした結果を
図9に示す。およそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとすると、シングルセル解析(1ウェルに1細胞注入)したウェルでは48ウェル中37ウェル(ドナーA:20ウェル、ドナーB:17ウェル)で目的長のDNAバンドが確認された。反応のポジティブコントロール的に設定した5細胞(ウェル25~27および57~59)、25細胞(ウェル38~30および60~62)注入したウェルでは、全てのウェルで良好な増幅が見られた。ウェル31、32、63および64は細胞を注入しなかった。
【0311】
個別のチューブ内で、BCRμ、BCR Kappa、BCR LambdaをセミネステドPCRした結果を
図10に示す。およそ400塩基対以上800塩基以下の長さの産物が確認されたウェルをポジティブとすると、シングルセル解析したウェルではBCRμが48ウェル中15ウェル、BCR Kappaが48ウェル中14ウェル、BCR Lambdaが48ウェル中15ウェルで目的長のDNAバンドが確認された。9ウェル(No.13、17、18、22、23、36、38、55、56)でペア遺伝子(重鎖BCRμと軽鎖BCR KappaとBCR Lambdaのいずかあるいは両方)の増幅が確認された。
【0312】
D3-3.シークエンシング配列決定
PCR増幅しバンドが確認された同一チューブ反応系の37ウェルのセミネステドPCRサンプルと別々の反応系でペア増幅が確認された9ウェル由来19のセミネステドPCRサンプルはAMPure XP DNAキットで精製し、イルミナ社MiSeq次世代シークエンサーで配列解析するため、次のPCR反応液と反応サイクルでインデックス付加PCRを行った。PCR産物をAMPure XP DNAキットで精製し、メーカーのプロトコールに従いMiSeq次世代シークエンサーでのシークエンシングランを行った。得られたシークエンシングデータをRepertoire Genesisソフトウェアで解析した。
【表27】
【0313】
その結果、同一チューブで行った結果では全リードの10%の数が得られたクローンについて、配列決定としたところ、シークエンシングした37ウェルのサンプルのうち、BCRμは16ウェル、BCR Kappaは13ウェル、BCR Lambdaは17ウェル(うち3ウェルは2本の染色体由来と考えられる2配列を同定)でインフレームCDR3を含む遺伝子配列が解析され、10ウェル(No.)でBCR重鎖・軽鎖のペア遺伝子が解析出来た。(表中に複数のV、D、J領域が表示されている場合、相同性のスコアが同一で候補が2つになったことを示す。ほとんどの場合、それら2つの配列にほとんど違いがなくゲノム上の位置は異なるものの、cDNA上では区別不能のためなのが原因と考えられる。)
【0314】
個別に解析したシークエンシング結果でも、全リードの20%の数が得られたクローンについ、配列決定としたところ、解析した19のBCR cDNA断片、全ての配列解析が出来、18の配列でタンパク翻訳可能なインフレームCDR3配列が得られ、その結果9ウェルのサンプル全てでストップコドンが挿入されBCR重鎖・軽鎖のペア遺伝子が解析出来た。No.38 BCR KappaはCDR3にストップコドンが存在しインフレーム配列クローンではないと考えられたが、BCR Lambdaがインフレーム配列であり、そちらが軽鎖として重鎖と結合していると考えられた。別々に解析した19配列は同一チューブで解析した結果と全く同一であった。同一チューブでの反応の方が簡便で電気泳動チェックの手間が少なくて済むがシークエンシングする検体総数は多くなり、個別チューブで反応する場合は途中の実験の手間はかかるが、シークエンシング数は少なく済むなどそれぞれ利点があり、TCRの解析時と同様、ペア遺伝子の同定率が良いことが予想される場合は同一チューブでのサンプルをシークエンシングし、同定率が良くなさそうな難解析サンプルは個別に増幅するなど使い分けることが有効であると考えられる。
【表28-1】
【表28-2】
【表29】
【0315】
次にMiSeqシークエンシングデータのリード1(BCR cDNAの3‘側C領域側からシークエンシングしたデータ)とリード2(BCR cDNAの5‘側からシークエンシングしたデータ)をfastq-joinプログラムで結合させ、逆相補佐配列に変換し、通常のcDNAと同じ向きの配列に変換した。両末端にプライマー配列を持つクローンのみピックアップ、プライマー配列を除去後、該当クローンをランダムに選抜し、塩基配列アッセンブルマルチプルアラインメント解析により増幅したcDNAの塩基配列を得た。DNA断片が長く(概ね500~580塩基対より長い場合)、結合率が良くない場合は、結合出来た配列に加え、該当クローンに振り分けられたリードで結合できなかった配列のリード1の逆相補佐配列、リード2のそのままの配列を利用し、低クオリティー領域の除去などを行った後、塩基配列アッセンブルマルチプルアラインメント解析を行い増幅したcDNAの塩基配列を得た。得られたcDNA塩基配列はEnsembleのGeneデータベースなど公共データベース上の遺伝子配列と比較し、5’のアミノ酸配列開始コドンから配列が得られているか確認した。また、アミノ酸配列置換し、リーダー領域と可変部領域(フレームワーク部4か所:FR1~4、と可変領域3か所:CDR1~3)のアミノ酸配列予測を行った。解析例として得られたウェルNo.18のBCRμ、BCR Lambda、ウェルNo.55のBCRμ、BCR Lambdaの塩基配列、アミノ酸翻訳配列を示す。(下線はEnsembleのGeneデータベース上でアノテーション付けされている翻訳開始コドンと、コンピュータ解析で同定したCDR3領域部位を示す。)いずれもインフレームで翻訳開始コドンからCDR3領域を含むC領域のN末アミノ酸配列までタンパク情報が得られた。
【0316】
>ウェルNo.18 BCRμ塩基配列
GGCACTAGAAGTCGGCGGTGTTTCCATTCGGTGATCAGCACTGAACACAGAGGACTCACCATGGAGTTTGGGCTGAGCTGGGTTTTCCTCGTTGCTCTTTTAAGGGGTGTCCAGTGTCAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCGTGGTCCAGCCTGGGAGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTAGCTATGGCATGCACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGCAAGGGGCTGGAGTGGGTGGCAGTTATATCATATGATGGAAGTAATAAATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCTGAGGACACGGCTGTGTATTACTGTGCCAAATCCCGACCCCTGAAGGTGGTAGCTGCTACTTTTCTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGGGAGTGCATCCGCCCCAACCCTTTTCCCCCTCGTCTCCTGT(配列番号796)
>ウェルNo.18 BCRμアミノ酸翻訳配列
GTRSRRCFHSVISTEHRGLTMEFGLSWVFLVALLRGVQCQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKSRPLKVVAATFLDYWGQGTLVTVSSGSASAPTLFPLVSC(配列番号797)
>ウェルNo.18 BCRLambda塩基配列
GGGGGTCTCAGGAGGCAGCGCTCTCGGGACGTCTCCACCATGGCCTGGGCTCTGCTATTCCTCACCCTCCTCACTCAGGGCACAGGGTCCTGGGCCCAGTCTGCCCTGACTCAGCCTGCCTCCGTGTCTGGGTCTCCTGGACAGTCGATCACCATCTCCTGCACTGGAACCAGCAGTGACGTTGGTGGTTATAACTATGTCTCCTGGTACCAACAGCACCCAGGCAAAGCCCCCAAACTCATGATTTATGATGTCAGTAATCGGCCCTCAGGGGTTTCTAATCGCTTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCAACACGGCCTCCCTGACCATCTCTGGGCTCCAGGCTGAGGACGAGGCTGATTATTACTGCAGCTCATATACAAGCAGCAGCACTCTCGGGGTATTCGGCGGAGGGACCAAGCTGACCGTCCTAGGTCAGCCCAAGGCTGCCCCCTCGGTCACTCTGTTCCCGCCCTCCTCTGAGGAGCTT(配列番号798)
>ウェルNo.18 BCRLambdaアミノ酸翻訳配列
GGLRRQRSRDVSTMAWALLFLTLLTQGTGSWAQSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYDVSNRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCSSYTSSSTLGVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEEL(配列番号799)
>ウェルNo.55 BCRμ塩基配列
GCCTCGCACAGTGAATCCTGCTCCCCACCATGGACATACTTTGTTCCACGCTCCTGCTACTGACTGTCCCGTCCTGGGTCTTATCCCAGGTCACCTTGAGGGAGTCTGGTCCTGCGCTGGTGAAACCCACACAGACCCTCACACTGACCTGCACCTTCTCTGGGTTCTCACTCAGCACTAGTGGAATGTGTGTGAGCTGGATCCGTCAGCCCCCAGGGAAGGCCCTGGAGTGGCTTGCACGCATTGATTGGGATGATGATAAATACTACAGCACATCTCTGAAGACCAGGCTCACCATCTCCAAGGACACCTCCAAAAACCAGGTGGTCCTTACAATGACCAACATGGACCCTGTGGACACAGCCACGTATTACTGTGCACGGATAGGTCTAGGTGGCTATTCTTACTACTACTACTACGGTATGGACGTCTGGGGCCAAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCAGGGAGTGCATCCGCCCCAACCCTTTTCCCCCTCGTCTCCTGT(配列番号800)
>ウェルNo.55 BCRμアミノ酸翻訳配列
LAQ*ILLPTMDILCSTLLLLTVPSWVLSQVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTFSGFSLSTSGMCVSWIRQPPGKALEWLARIDWDDDKYYSTSLKTRLTISKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCARIGLGGYSYYYYYGMDVWGQGTTVTVSSGSASAPTLFPLVSC(配列番号801)
>ウェルNo.55 BCRKappa塩基配列
GGAGGAACTGCTCAGTTAGGACCCAGACGGAACCATGGAAGCCCCAGCGCAGCTTCTCTTCCTCCTGCTACTCTGGCTCCCAGATACCACTGGAGAAATAGTGATGACGCAGTCTCCAGCCACCCTGTCTGTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCCTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGTGCATCCACCAGGGCCACTGGTATCCCAGCCAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCTGGGACAGAGTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGTCTGAAGATTTTGCAGTTTATTACTGTCAGCAGTATAATAACTGGCCTCCGGAGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAACGAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGT(配列番号802)
>ウェルNo.55 BCRKappaアミノ酸翻訳配列
EELLS*DPDGTMEAPAQLLFLLLLWLPDTTGEIVMTQSPATLSVSPGERATLSCRASQSVSSNLAWYQQKPGQAPRLLIYGASTRATGIPARFSGSGSGTEFTLTISSLQSEDFAVYYCQQYNNWPPEYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTAS(配列番号803)
【0317】
これらの解析で得られた可変領域のcDNA断片、cDNA塩基配列は必要に応じ再増幅や人工的に遺伝子合成を行うなどして、クローンによって機能的に相違が少ないC領域の配列と結合させ、全長コーディング領域を得る、あるいはCD3ζ細胞内領域、CD28細胞内領域、4-1BB細胞内領域、ICOS細胞内領域、OX40細胞内領域などの様々なタンパクの細胞内領域やシグナル伝達ドメイン、機能ドメイン、タンパク断片、人工デザインタンパク断片、それらのキメラタンパクと結合させ、キメラタンパクコーディング領域を得ることにより、細菌・細胞系や人工合成系でのタンパク発現、タンパク質合成が出来、抗体作成、抗体医薬品、CART療法などへの応用が可能である。
【0318】
(実施例5:TCR(あるいはBCR)ペア遺伝子クローニング)
【0319】
実験E
【0320】
(試薬)
実験Eでの追加の試薬は以下のとおりである。
-大腸菌コンピテントセル(ニッポンジーン)
-pcDNA3.1(+)/V5His(B)ベクター(Themofisher Scientific)
-pMXsベクター(CELL BIOLABS)
-制限酵素EcoRI(ニッポンジーン)
-制限酵素EcoRV(ニッポンジーン)
-NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEW England BioLabs)
-NucleoSpin Plasmid(タカラバイオ)
・使用するオリゴヌクレオチド配列
〇TCRクローニングpcDNA3.1(+)/V5His(B)用フォマードプライマー
-TS-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATAAGCAGTGGTATCAACGCA(配列番号745)
-hTCRa-VX-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGAT(配列番号746)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はTCRαV領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hTCRa-V24-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATTTTCTGCTGTGGGTACGTGAG(配列番号747)
-hTCRb-VX-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGAT(配列番号748)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はTCRβV領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hTCRb-V6.5-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATGAGAGTCCTGCTCCCCTTTC(配列番号749)
〇TCRクローニングpMXs用フォマードプライマー
-TS-AdpMXEI:CCAGTGTGGTGGTACGGGAAGCAGTGGTATCAACGCA(配列番号750)
-hTCRa-VX-F-AdpMXEI:CCAGTGTGGTGGTACGGG(配列番号751)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はTCRαV領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hTCRb-VX-F-AdpMXEI:CCAGTGTGGTGGTACGGG(配列番号752)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はTCRβV領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hTCRa-V24-F-AdpMXEI:CCAGTGTGGTGGTACGGGTTTCTGCTGTGGGTACGTGAG(配列番号753)
-hTCRb-V6.5-F-AdpMXEI:CCAGTGTGGTGGTACGGGGAGAGTCCTGCTCCCCTTTC(配列番号754)
(下線部はベクターのアーム領域と相同なアッセンブリーライゲーションするためのアダプター配列)
〇TCRクローニング共通リバースプライマー
-hTCRa-C-R:AGGGTCAGGGTTCTGGATAT(配列番号755)
-hTCRb-C1-R:GAACACCTTGTTCAGGTCCT(配列番号756)
-hTCRb-C2-R:GAACACGTTTTTCAGGTCCT(配列番号757)
〇hTCRα用シークエンシングプライマー
hTCRaC-F0:TCTGCCTATTCACCGATTTTG(配列番号758)
hTCRaC-F1:GGACTTCAAGAGCAACAGTGC(配列番号759)
hTCRaC-F2:TGTCAAGCTGGTCGAGAAAAG(配列番号760)
hTCRaC-F3:ACGCCTTCAACAACAGCATTA(配列番号761)
hTCRaC-R1v1:CTTTTCTCGACCAGCTTGACA(配列番号762)
hTCRaC-R2:CCACTTTCAGGAGGAGGATTC(配列番号763)
hTCRaC-R4:CAAAATCGGTGAATAGGCAGA(配列番号764)
hTCRaC-R5:ATAGACCTCATGTCTAGCACAG(配列番号765)
〇hTCRβ用シークエンシングプライマー
hTCR-CB-F2:GCTGTGTTTGAGCCATCAGAA(配列番号766)
hTCRbC-F5:TGAATGGGAAGGAGGTGCACAGT(配列番号767)
hTCR-CB-R2:TTCTGATGGCTCAAACACAGC(配列番号768)
hTCR-CB2:AGGCAGTATCTGGAGTCATTGAG(配列番号769)
hTCR-CB3:ACTGTGCACCTCCTTCCCATTCA(配列番号770)
hTCRbC2-CloR1:GTTTAGCCTATTTCGTACTTGG(配列番号771)
hTCRbC1-R1:AGTCACTTAGGCATGCTAAGGTC(配列番号772)
・使用する合成遺伝子断片(カスタム合成2本鎖DNA、Thermofisher Scientificやジーンデザイン、INTEGRATED DNA TECHNOLOGIESなどで合成可能である。別法としてバルクPBMC細胞からRNAを調製しcDNAをPCR増幅することも可能である。遺伝子には人種や個人レベルでの多型が存在することが知られており、必要であれば目的の遺伝子型の塩基配列を変更する。)
【0321】
〇pcDNA3.1(+)/V5His(B)用
【0322】
-hTCRaCFull-AdpD3EV:
ATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTGAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号773)
【0323】
-hTCRaCFull_noSTOP-AdpD3EV:
ATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTTAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号774)
【0324】
-hTCRbC1Full-AdpD3EV:
AGGACCTGAACAAGGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTTCCCTGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACGGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCCGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTTACCTCGGTGTCCTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCCTGCTAGGGAAGGCCACCCTGTATGCTGTGCTGGTCAGCGCCCTTGTGTTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTTCTGAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号775)
【0325】
-hTCRbC1Full_noSTOP-AdpD3EV:
AGGACCTGAACAAGGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTTCCCTGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACGGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCCGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTTACCTCGGTGTCCTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCCTGCTAGGGAAGGCCACCCTGTATGCTGTGCTGGTCAGCGCCCTTGTGTTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTTCTTAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号776)
【0326】
-hTCRbC2Full-AdpD3EV:
AGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTAGATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号777)
【0327】
-hTCRbC2Full_noSTOP-AdpD3EV:
AGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTTAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号778)
【0328】
〇pMXs用
【0329】
-hTCRaCFull-AdpMXEI:
ATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTGACCAGCTGAGCGCCGGTCG(配列番号779)
【0330】
-hTCRbC1Full-AdpMXEI:
AGGACCTGAACAAGGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTTCCCTGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACGGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCCGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTTACCTCGGTGTCCTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCCTGCTAGGGAAGGCCACCCTGTATGCTGTGCTGGTCAGCGCCCTTGTGTTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTTCTGACCAGCTGAGCGCCGGTCG(配列番号780)
【0331】
-hTCRbC2Full-AdpMXEI:
AGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTAGCCAGCTGAGCGCCGGTCG(配列番号781)
【0332】
E1.クローニング用DNA断片の調製
E1-1.可変領域DNA断片の調製
TCR(あるいはBCR)の単一細胞の機能的ペア遺伝子について、One-step RT-TS-PCR反応、あるいはセミネステドPCR増幅産物精製DNAを鋳型に以下のPCR反応により、可変領域を増幅する。TCRβはC領域が2種類存在するが、シークエンシングデータやJ領域データ(J1-1~6はC1が結合、J2-1~7はC2が結合している。)よりC1クローンかC2クローンかを判別し、リバース側プライマーを選択する。(ただし、TCRβのC1配列とC2配列で機能に大きな違いはないと考えられており、どちらも使用可能な場合が多い。)DNAの増幅はアガロースゲル電気泳動などで確認する。One-step RT-TS-PCR時に5‘側に付加した配列をフォワード側のプライマーにTCRのC領域の配列をリバース側のプライマーに使用することにより、どのようなV領域も一度に増幅が出来る。電気泳動やシークエンシングの結果よりスタートコドンを含まない短い断片や、非特異配列存在が考えられる場合や2本の染色体からの転写産物が確認された場合などは該当V領域特異的配列を使用して増幅を行うことにより、より純度の高いDNA断片が得られる。増幅産物をAMPureXPやDNA精製用カラムで精製する。400塩基以下の短いDNA断片や7000塩基以上の長い断片などが見られる場合、必要に応じアガロースゲル電気泳動で目的長のDNA断片を切り出し、精製する。本プロトコールでは可変領域のみを増幅しているがOne-step-RT-TS PCRの逆転写プライマーとブロックプライマー、あるいはセミネステドPCRのプライマーをストップコドンより3’下流(PCR産物にストップコドン部位が含まれれば、コーディング領域を含む形でもよい)に設計してPCRすることにより翻訳開始コドンからストップコドンまで含む(pcDNA3.1(+)/V5His(B)などに組み込みタグ付きタンパク用コンストラクトを構築する場合はストップコド
ンを何らかのアミノ酸コーディングコドンに変換する。)こともできる。同様にPCRを行わず全長コーディング領域を含むDNA断片を合成することもできる。
【表30】
【0333】
例えば、実施例1(実験A)で得られたウェルNo.13のTCRα(V24・J49・Cクローン)/TCRβ(V6-5・D1・J1-2・C1クローン)ペアは次のような反応で増幅できると考えられる。
【表31】
【表32】
【0334】
E1-2.クローニングベクターの調製
メーカーのプロトコールに従い、発現ベクターpcDNA3.1(+)/V5His(B)はEcoRVで、レトロウイルスベクターpMXsはEcoRIで消化する。必要に応じアガロースゲル電気泳動を行い酵素消化された直鎖DNAバンドを切り出しDNA精製カラムなどでDNAを精製する。
【0335】
E2.DNA断片のライゲーション、大腸菌への導入によるクローン取得、配列確認
E2-1.DNA断片のライゲーションと大腸菌への導入
調製した可変領域DNA断片、遺伝子合成したC領域断片(PCR増幅も可能)、制限酵素消化したベクターDNAの3種のDNA断片をNEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixなどを用いアッセンブリーライゲーションする。
【0336】
アッセンブリーライゲーションはDNAの5’末端と3’末端が15~25塩基同一でオーバーラップすることによりDNAの結合がなされるので、対応するDNA断片同士を反応に用いる。ベクターをpcDNA3.1(+)/V5His(B)などC末端にタンパクタグ配列を付加できるものを利用する場合はC領域のストップコドンをそのまま利用すれば、通常のTCRが、ストップコドンを翻訳可能なアミノ酸コドンに変化させることによりTCRにタグ配列が付加されたタンパクを発現可能なコンストラクトが得られる。
【0337】
ライゲーションの反応液組成や反応条件はメーカーのプロトコールに準ずる。ライゲーション産物を一部分取し、コンピテントセルを形質転換、寒天培地にプレーティングし、遺伝子組換え大腸菌を得る。
【0338】
次の表に発現ベクターpcDNA3.1(+)/V5His(B)とレトロウイルスベクターpMXs使用時のTCRα/βの可変領域増幅プライマーセット、C領域DNA断片の種類と発現ベクターや調製ウイルスから発現されるタンパク種を示す。
【表33-1】
【表33-2】
【表34】
【0339】
E2-2.プラスミドDNA調製
プラスミド遺伝子組換え体シングルコロニーは液体培地で培養、集菌し、一般的なアルカリ抽出法やNucleoSpin Plasmidなど市販のキットでプラスミドDNAを調製する。
【0340】
E2-3.プラスミドDNAインサートの配列確認
得られたプラスミドはそれぞれTCRα用シークエンシングプライマー、TCRβ用シークエンシングプライマー、ベクタープライマーを用い一般的なサンガー配列解析法でインサート配列のシークエンシングを行う。塩基配列の置換(少なくともミスセンス変異やナンセンス変異がなく)、挿入、欠失がないクローンをTCR発現コンストラクトとして使用する。
【0341】
E3.TCR(あるいはBCR)発現コンストラクトの利用
TCR発現コンストラクトはペア遺伝子2つセットで、目的によっては片方のみでもよいが、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、ヒートショック法などにより、必要に応じ前処理して導入能を上昇させたリンパ球細胞、各種初代培養細胞や株化細胞、細菌、真菌などに導入し遺伝子発現させ、細胞ベースでの各種バイオアッセイによるエピトープ探索、機能解析、タンパク質合成などに利用できる。
【0342】
pMXsなどウイルスベクターにTCRを組み込んだものは、293T細胞などパッケージング細胞へ必要な他のウイルス構成タンパク発現コンストラクトとコトランスフェクションして培養することにより、遺伝子導入用ウイルスを調製することができる。作成したウイルスをペア遺伝子2つセットで、目的によっては片方のみでもよいが、細胞に感染させタンパク発現させることが出来る。T7プロモーターが組み込まれたpcDNA3.1(+)/V5His(B)ベクターなどin vitro転写開始プロモーターが翻訳開始点の上流にあるコンストラクトは、細胞や細菌に遺伝子導入することなく一般手的な分子生物学や生化学の教科書、実験プロトコール書籍に従い、あるいは市販のキットなどを利用することによりTCRα/βのmRNAの合成、タンパク質合成を行うことができる。
【0343】
合成したタンパクはそのまま、あるいはペアでリフォールディングするなど必要な処理をした後、エピトープやリガンド、結合タンパクの探索、立体構造解析決定のための標品、ウエスタンブロッティングなどの陽性コントロール標品などとして幅広く活用できる。
【0344】
(実施例6:BCR(あるいはTCR)ペア遺伝子クローニング)
【0345】
実験F
【0346】
・試薬のリスト(実験F用の追加分)
-大腸菌コンピテントセル(ニッポンジーン)
-pcDNA3.1(+)/V5His(B)ベクター(Themofisher Scientific)
-pMXsベクター(CELL BIOLABS)
-制限酵素EcoRI(ニッポンジーン)
-制限酵素EcoRV(ニッポンジーン)
-NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEW England BioLabs)
-NucleoSpin Plasmid(タカラバイオ)
・使用したオリゴヌクレオチド配列
〇BCRクローニングpcDNA3.1(+)/V5His(B)用フォマードプライマー
-TS-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATAAGCAGTGGTATCAACGCA(配列番号782)
-hBCRH-VX-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGAT(配列番号783)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はBCR重鎖V領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hBCRH-V3.30-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATACTAGAAGTCGGCGGTGTTTC(配列番号784)-hBCRH-V2.70-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATACAGTGAATCCTGCTCCCCAC(配列番号785)-hBCRLam-VX-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGAT(配列番号786)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はBCR軽鎖λ、V領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hBCRLam-V2.14-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATTCTCAGGAGGCAGCGCTCTC(配列番号787)
-hBCRKap-VX-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGAT(配列番号788)NNNN------NNNN(「NNNN------NNNN」はBCR軽鎖κ、V領域5’非翻訳領域の16-35塩基程度の配列)
-hBCRK-V3.15-F-AdpD3EV:TGGTGGAATTCTGCAGATAGGAACTGCTCAGTTAGGAC(配列番号789)
(下線部はベクターのアーム領域と相同なアッセンブリーライゲーションするためのアダプター配列)
〇BCRクローニング共通リバースプライマー
-hBCRM-C-R:GTTGGGGCGGATGCACTCCC(配列番号790)
-hBCRLam-C2-R:GGCAGCCTTGGGCTGACC(配列番号791)
-hBCRKap-C1-R:CAGATGGTGCAGCCACAGTTC(配列番号792)
・使用する合成遺伝子断片(カスタム合成2本鎖DNA、Thermofisher Scientificやジーンデザイン、INTEGRATED DNA TECHNOLOGIESなどで合成可能である。別法としてバルクPBMC細胞からRNAを調製しcDNAをPCR増幅することも可能である。遺伝子には人種や個人レベルでの多型が存在することが知られており、必要であれば目的の遺伝子型の塩基配列を変更する。)
【0347】
〇pcDNA3.1(+)/V5His(B)用
【0348】
-hBCRKapCFull-AdpD3EV:
GAACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGTTAGATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号793)
-hBCRLamC2Full-AdpD3EV:
【0349】
GGTCAGCCCAAGGCTGCCCCCTCGGTCACTCTGTTCCCGCCCTCCTCTGAGGAGCTTCAAGCCAACAAGGCCACACTGGTGTGTCTCATAAGTGACTTCTACCCGGGAGCCGTGACAGTGGCTTGGAAAGCAGATAGCAGCCCCGTCAAGGCGGGAGTGGAGACCACCACACCCTCCAAACAAAGCAACAACAAGTACGCGGCCAGCAGCTATCTGAGCCTGACGCCTGAGCAGTGGAAGTCCCACAGAAGCTACAGCTGCCAGGTCACGCATGAAGGGAGCACCGTGGAGAAGACAGTGGCCCCTACAGAATGTTCATAGATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号794)
【0350】
-hBCRμCFull-AdpD3EV:
GGGAGTGCATCCGCCCCAACCCTTTTCCCCCTCGTCTCCTGTGAGAATTCCCCGTCGGATACGAGCAGCGTGGCCGTTGGCTGCCTCGCACAGGACTTCCTTCCCGACTCCATCACTTTCTCCTGGAAATACAAGAACAACTCTGACATCAGCAGCACCCGGGGCTTCCCATCAGTCCTGAGAGGGGGCAAGTACGCAGCCACCTCACAGGTGCTGCTGCCTTCCAAGGACGTCATGCAGGGCACAGACGAACACGTGGTGTGCAAAGTCCAGCACCCCAACGGCAACAAAGAAAAGAACGTGCCTCTTCCAGTGATTGCTGAGCTGCCTCCCAAAGTGAGCGTCTTCGTCCCACCCCGCGACGGCTTCTTCGGCAACCCCCGCAAGTCCAAGCTCATCTGCCAGGCCACGGGTTTCAGTCCCCGGCAGATTCAGGTGTCCTGGCTGCGCGAGGGGAAGCAGGTGGGGTCTGGCGTCACCACGGACCAGGTGCAGGCTGAGGCCAAAGAGTCTGGGCCCACGACCTACAAGGTGACCAGCACACTGACCATCAAAGAGAGCGACTGGCTCGGCCAGAGCATGTTCACCTGCCGCGTGGATCACAGGGGCCTGACCTTCCAGCAGAATGCGTCCTCCATGTGTGTCCCCGATCAAGACACAGCCATCCGGGTCTTCGCCATCCCCCCATCCTTTGCCAGCATCTTCCTCACCAAGTCCACCAAGTTGACCTGCCTGGTCACAGACCTGACCACCTATGACAGCGTGACCATCTCCTGGACCCGCCAGAATGGCGAAGCTGTGAAAACCCACACCAACATCTCCGAGAGCCACCCCAATGCCACTTTCAGCGCCGTGGGTGAGGCCAGCATCTGCGAGGATGACTGGAATTCCGGGGAGAGGTTCACGTGCACCGTGACCCACACAGACCTGCCCTCGCCACTGAAGCAGACCATCTCCCGGCCCAAGGGGGTGGCCCTGCACAGGCCCGATGTCTACTTGCTGCCACCAGCCCGGGAGCAGCTGAACCTGCGGGAGTCGGCCACCATCACGTGCCTGGTGACGGGCTTCTCTCCCGCGGACGTCTTCGTGCAGTGGATGCAGAGGGGGCAGCCCTTGTCCCCGGAGAAGTATGTGACCAGCGCCCCAATGCCTGAGCCCCAGGCCCCAGGCCGGTACTTCGCCCACAGCATCCTGACCGTGTCCGAAGAGGAATGGAACACGGGGGAGACCTACACCTGCGTGGTGGCCCATGAGGCCCTGCCCAACAGGGTCACCGAGAGGACCGTGGACAAGTCCACCGGTAAACCCACCCTGTACAACGTGTCCCTGGTCATGTCCGACACAGCTGGCACCTGCTACTGAATCCAGCACAGTGGCGGC(配列番号795)
(下線部はベクターのアーム領域と相同なアッセンブリーライゲーションするためのアダプター配列)
【0351】
F1.クローニング用DNA断片の調製
BCR(あるいはTCR)の単一細胞機能的ペア遺伝子については、One-step RT-TS-PCR反応、あるいはセミネステドPCR増幅産物精製DNAを鋳型に以下のPCR反応により、可変領域を増幅する。One-step RT-TS-PCR時に5‘側に付加した配列をフォワード側のプライマーにTCR/BCRのC領域の配列をリバース側のプライマーに使用することにより、どのようなV領域も一度に増幅が出来る。電気泳動やシークエンシングの結果よりスタートコドンを含まない短い断片や、非特異配列存在が考えられる場合や2本の染色体からの転写産物が確認された場合などは該当V領域特異的配列を使用して増幅を行うことにより、より純度
の高いDNA断片が得られる。増幅産物をAMPureXPやDNA精製用カラムで精製する。400塩基以下の短いDNA断片や7000塩基以上の長い断片などが見られる場合、必要に応じアガロースゲル電気泳動で目的長のDNA断片を切り出し、精製する。本プロトコールでは可変領域のみを増幅しているがOne-step-RT-TS PCRの逆転写プライマーとブロックプライマー、あるいはセミネステドPCRのプライマーをストップコドンより3’下流(PCR産物にストップコドン部位が含まれれば、コーディング領域を含む形でもよい)に設計してPCRすることにより翻訳開始コドンからストップコドンまで含む(pcDNA3.1(+)/V5His(B)などに組み込みタグ付きタンパク用コンストラクトを構築する場合はストップコドンを何らかのアミノ酸コーディングコドンに変換する。)こともできる。同様にPCRを行わず全長コーディング領域を含むDNA断片を合成することもできる。
【0352】
例えば、実施例4(実験D)で得られたウェルNo.18のBCR重鎖(V3-30・D2-15・J4クローン)/BCR軽鎖λ(V2-14・J2・C2クローン)ペア、ウェルNo.55のBCR重鎖(V2-70・D?・J6クローン)/BCR軽鎖κ(V3-15・J2クローン)ペアは次のような反応で増幅できると考えられる。
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【0353】
F1-2.クローニングベクターの調製
メーカーのプロトコールに従い、発現ベクターpcDNA3.1(+)/V5His(B)はEcoRVで消化する。必要に応じアガロースゲル電気泳動を行い酵素消化された直鎖DNAバンドを切り出しDNA精製カラムなどでDNAを精製する。
【0354】
F2.DNA断片のライゲーション、大腸菌への導入によるクローン取得、配列確認
F2-1.DNA断片のライゲーションと大腸菌への導入
調製した可変領域DNA断片、遺伝子合成したC領域断片(PCR増幅も可能)、制限酵素消化したベクターDNAの3種のDNA断片をNEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixなどを用いアッセンブリーライゲーションする。
【0355】
アッセンブリーライゲーションはDNAの5‘末端と3’末端が15~25塩基同一でオーバーラップすることによりDNAの結合がなされるので、対応するDNA断片同士を反応に用いる。
【0356】
本実施例では重鎖は配列解析した元のBCRのクラス(BCRμ)の全長配列をクローニングするプロトコールを示しているが、C領域の合成DNAをBCRγ、α、δ、εの配列にし、可変領域を遺伝子合成あるいはJ領域3‘末端と他のクラスのC領域5’末端のキメラプライマーを使用してPCR増幅するなどすることにより、違うクラスのBCR全長配列を調製することもできる。
【0357】
ベクターをpcDNA3.1(+)/V5His(B)などC末端にタンパクタグ配列を付加できるものを利用する場合はC領域のストップコドンをそのまま利用すれば、通常のBCRが、ストップコドンを翻訳可能なアミノ酸コドンに変化させることによりBCRにタグ配列が付加されたタンパクを発現可能なコンストラクトが得られる。
【0358】
ライゲーションの反応液組成や反応条件はメーカーのプロトコールに準ずる。ライゲーション産物を一部分取し、コンピテントセルを形質転換、寒天培地にプレーティングし、遺伝子組換え大腸菌を得る。
F2-2プラスミドDNA調製
【0359】
プラスミド遺伝子組換え体シングルコロニーは液体培地で培養、集菌し、一般的なアルカリ抽出法やNucleoSpin Plasmidなど市販のキットでプラスミドDNAを調製する。
【0360】
F2-3.プラスミドDNAインサートの配列確認
得られたプラスミドはそれぞれBCR重鎖C領域、軽鎖κC領域、軽鎖λC領域中にクローン共通に設計したシークエンシングプライマー、並びにベクタープライマーを用い一般的なサンガー配列解析法でインサート配列のシークエンシングを行う。(BCRは体細胞変異で塩基置換が入ることが知られており、変異が見られない部位のプライマーやクローンごとに変異含有を許すプライマーを設計してもよい。)塩基配列の置換(少なくともミスセンス変異やナンセンス変異がなく)、挿入、欠失がないクローンをBCR発現コンストラクトとして使用する。
【0361】
F3.BCR(あるいはTCR)発現コンストラクトの利用
BCR発現コンストラクトはペア遺伝子2つセットで、目的によっては片方のみでもよいが、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、ヒートショック法などにより、必要に応じ前処理して導入能を上昇させたリンパ球細胞、各種初代培養細胞や株化細胞、細菌、真菌などに導入し遺伝子発現させ、細胞ベースでの各種バイオアッセイによるエピトープ探索、機能解析、タンパク質合成などに利用できる
【0362】
pMXsなどウイルスベクターにBCRを組み込んだものは、293T細胞などパッケージング細胞へ必要な他のウイルス構成タンパク発現コンストラクトとコトランスフェクションして培養することにより、遺伝子導入用ウイルスを調製することができる。作成したウイルスをペア遺伝子2つセットで、目的によっては片方のみでもよいが、細胞に感染させタンパク発現させることが出来る。T7プロモーターが組み込まれたpcDNA3.1(+)/V5His(B)ベクターなどin vitro転写開始プロモーターが翻訳開始点の上流にあるコンストラクトは、細胞や細菌に遺伝子導入することなく一般手的な分子生物学や生化学の教科書、実験プロトコール書籍に従い、あるいは市販のキットなどを利用することによりBCR重鎖/軽鎖のmRNAの合成、タンパク質合成を行うことができる。BCR重鎖/軽鎖とファージタンパクとのキメラタンパクを発現するファージ作成用ベクターを作成するこにより、抗原ペプチド探索のためのファージディスプレイ法などに利用可能な人工ファージを製造できる。
【0363】
合成したタンパクはそのまま、あるいはペアでリフォールディングするなど必要な処理をした後、エピトープやリガンド、結合タンパクの探索、立体構造解析決定のための標品、ウエスタンブロッティングなどの陽性コントロール標品などとして幅広く活用できる。エ抗原やエピトープが判明したイムノグロブリンはそれらタンパクの検出抗体(ウエスタンブロッティング、免疫染色)や重鎖可変領域と軽鎖可変領域をCD3ζ細胞内領域、CD28細胞内領域、4-1BB細胞内領域、ICOS細胞内領域、OX40細胞内領域などの様々なタンパクの細胞内領域やシグナル伝達ドメイン、機能ドメイン、タンパク断片、人工デザインタンパク断片、それらのキメラタンパクと結合させ、キメラタンパク発現コンストラクトを調製し、CART療法への応用などに活用できる。
(実施例7:Semi-one-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅)
実験G
G1. 細胞調製と培養
(調製例)
本実施例で使用される試薬類の調製例を以下に示す。
・試薬のリスト(実験G用の追加分)
-D―PBS(14249-24、ナカライテスク)
-バンバンカー(CS-02-001、日本ジェネティクス)
-Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(DB11161、ThermoFisher Scientific)
-PE-Cy7標識抗ヒトCD8抗体(557746、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
-FITC標識抗ヒトC4抗体(560994、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
-40U/μl RNasin RNase Inhibitor(N211B、Promega)
-40U/μl RNase Inhibitor(315-08121、ニッポンジーン)
-ECOS X Competent E. coli DH5 α(310-07733、ニッポンジーン)
-NucleoSpin Plasmid Transfection-grade(U0490B、タカラバイオ)
・使用したオリゴヌクレオチド配列
〇RT-TS-PCR用プライマー
-hTCRαRT primer(CA1;23塩基):TGTTGAAGGCGTTTGCACATGCA(配列番号2)
-hTCRαRT primer(hTCRaC-CloR1;21塩基):ATAGCAGGGCCTCGATAATGA(配列番号806)
-hTCRαRT primer(hTCRaC-CloR2;22塩基):AGGACCTAGAGCCCAAGAGAAC(配列番号807)
-hTCRαPCR primer(hTCRaC-R4;21塩基):CAAAATCGGTGAATAGGCAGA(配列番号764)
-hTCRαPCR primer(hTCRaC-R2v0;21塩基):GGAGCACAGGCTGTCTTACAA(配列番号808)
-hTCRβRT primer(CB1(3);23塩基):GAACTGGACTTGACAGCGGAAGT(配列番号4)
-hTCRβRT primer(hTCRbC1-R1;23塩基):AGTCACTTAGGCATGCTAAGGTC(配列番号772)
-hTCRβRT primer(hTCRbC1-R3;21塩基):CTGGGTTAGGGAGATTTCAGC(配列番号809)
-hTCRβRT primer(hTCRbC2-CloR1;23塩基):GGTTTAGCCTATTTCGTACTTGG(配列番号771)
-hTCRβRT primer(hTCRbC2-CloR2;21塩基):GTTGGGAGCTCAATCTTCAGG(配列番号810)
-hTCRβPCR primer(CB2;23塩基):AGGCAGTATCTGGAGTCATTGAG(配列番号3)
-hTCRβPCR primer(hTCRbC1-R2v2;20塩基):CTAAGGTCCCCCTGGGTTAG(配列番号811)
-hTCRβPCR primer(hTCRbC2-CloR3;21塩基):CTAGCCTCTGGAATCCTTTCT(配列番号812)
-Forward TS-Tag primer v1(64塩基):
GTCTC{GTGGGCTCGGAGATGTGTAT}AAGAGACAGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATGGG(配列番号7)(下線部がMiSeqシークエンシングタグ配列部位、{ }に囲まれた配列がサンガーシークエンシングプライマー配列)
-hTCRαReverse Tag primer/hTCA-R-TP5-1(53塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGACTTGTCACTGGATTTAGAG(配列番号9)
-hTCRβReverse Tag primer(52塩基):
TCGTC{GGCAGCGTCAGATGTGTATAA}GAGACAGGCTCAAACACAGCGACCTC(配列番号10)
(下線部がMiSeqシークエンシングタグ配列部位、{ }に囲まれた配列がサンガーシークエンシングプライマー配列)
〇TCRクローニング用V配列特異的アダプター付きフォワードプライマー
-hTCRaV38.2-F1-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATAGCAGGGACCTGTGAGCAT(配列番号813)
-hTCRbV14-F1-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATGGGTCCTGCCATGGTTTCCA(配列番号814)
-hTCRaV13.2-F2-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATGGCTGGAGATTGCAGGTTTAT(配列番号815)
-hTCRbV4.1-F1-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATAGGCTAGCATGGGCTGCAGGCT(配列番号816)
-hTCRaV27-F3-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATGGCTCTTTCAGGAGCAGCTAA(配列番号817)
-hTCRbV7.6-F1-AdpD3EV:
TGGTGGAATTCTGCAGATGGTAAAGCCCTCATCCTGTC(配列番号818)
(下線部はベクターのアーム領域と相同なアッセンブリーライゲーションするためのアダプター配列)
〇TCRクローニング用アダプター付き共通リバースプライマー
-hTCRaC-AdpD3EV:
GCCGCCACTGTGCTGGATTCAGCTGGACCACAGCCGCAG(配列番号819)
-hTCRaC-NT-AdpD3EV:
CCGCCACTGTGCTGGATTAAGCTGGACCACAGCCGCAG(配列番号820)
-hTCRbC1-AdpD3EV:
GCCGCCACTGTGCTGGATTCAGAAATCCTTTCTCTTGAC(配列番号821)
-hTCRbC1-NT-AdpD3EV:
GCCGCCACTGTGCTGGATTAAGAAATCCTTTCTCTTGAC(配列番号822)
-hTCRbC2-AdpD3EV:
GCCGCCACTGTGCTGGATCTAGCCTCTGGAATCCTTTCT(配列番号823)
-hTCRbC2-NT-AdpD3EV:
GCCGCCACTGTGCTGGATTAAGCCTCTGGAATCCTTTCT(配列番号824)
(下線部はベクターのアーム領域と相同なアッセンブリーライゲーションするためのアダプター配列)
〇TCRC領域クローニングとシークエンシング用共通フォワードプライマー
-hTCRa-C-F:ATATCCAGAACCCTGACCCT(配列番号825)
-hTCRb-C1-F:AGGACCTGAACAAGGTGTTC(配列番号826)
-hTCRb-C2-F:AGGACCTGAAAAACGTGTTC(配列番号827)
〇TCR-VJ領域クローニング用共通リバースプライマー
-hTCRa-C-R:AGGGTCAGGGTTCTGGATAT(配列番号755)
-hTCRb-C1-R:GAACACCTTGTTCAGGTCCT(配列番号756)
-hTCRb-C2-R:GAACACGTTTTTCAGGTCCT(配列番号757)
〇TCRC領域クローニング用共通フォワードプライマー
-hTCRaC1E4-R2:CTTCCAAATCATTTTAATGAAGGCATC
-hTCRbC1-R1v2:AGTCACTTAGGCATGCTAAGGTC
-hTCRbC2E4-R1:GCAACCAGGCCCAACACACAA
〇TCRシークエンシング用プライマー
hTCRaC-R4: CAAAATCGGTGAATAGGCAGA(配列番号764)
hTCRaC-R5:ATAGACCTCATGTCTAGCACAG(配列番号765)
hTCR-CB2-R2: TTCTGATGGCTCAAACACAGC(配列番号828)
hTCR-CB2:AGGCAGTATCTGGAGTCATTGAG(配列番号769)
hTCR-CB3:ACTGTGCACCTCCTTCCCATTCA(配列番号770)
〇シークエンシング用ベクタープライマー
T7:TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号853)
CMV-Fwd2:CGCAAATGGGCGGTAGGCGTG(配列番号854)
BGH-Reverse:TAGAAGGCACAGTCGAGG(配列番号855)
G1-1 細胞単離
ヒトボランティアより末梢血を採取、フィコール密度勾配法にて末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、細胞凍結保存試薬(バンバンカー)に懸濁、-80℃凍結保管し、実験に使用した。
G1-2 細胞培養
凍結保管PBMCは起眠後、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28を含む培地で3日間培養した。実験直前にマグネティックスタンドでDynabeads Human T-Activator CD3/CD28を除去し、シングルセルソーティングレパトア解析実験に使用した。
G2. 細胞マーカー染色とシングルセルソーティング
G2-1 細胞マーカー抗体による染色
Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28を含む培地で培養したPBMCは遠心分離により沈降させ、D-PBS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄後を行った後、D-PBS buffer中、PE-Cy7標識抗ヒトCD8抗体とFITC標識抗ヒトCD4抗で氷上、30分間処理した。D-PBS bufferによる再懸濁、遠心分離による洗浄を2回行った後、最終的に0.7mlのD-PBS bufferに懸濁し、シングルセルソーティングに供した。
G2-2 シングルセルソーティング
染色した細胞は、セルソーター(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、FACSMelody)にて、リンパ球細胞集団ゲート中で、PE-Cy7陽性(CD8陽性)、FITC陰性(CD4陰性)細胞群をTCRα/βそれぞれ異なる認識部位の逆転写プライマーを使用したRT-TS-PCR反応液(G3-2)を加えた96ウェルプレートに1細胞(各RTプライマーセット群15ウェル、あるいは19ウェルずつ)、あるいは実験のポジティブコントロール的に複数細胞(10細胞、各1ウェルずつ)インプットした。
G3. Semi-one-step RT-TS-PCR法によるTCRαおよびTCRβcDNAの増幅
G3-1 Semi-one-step RT-TS-PCR反応
細胞を分注したプレートにてただちに表39の反応試薬中で45℃で30分間加熱することによりRT-TS反応を行った。表39中の条件1はこれまでの実験と同様TCR、C領域コーディング領域にアニーリングするRTプライマーとPCRプライマーを用いたが、条件2と3においては後の実験で全長タンパクコーディング領域(全長open reading frame;ORF領域)をクローニング出来るよう、RTプライマーとPCRプライマーをストップコドンの3’下流部位、あるいはストップコドンを含む配列部位にデザインし使用した。
【表39】
引き続き、表40のPCRプライマーを含む反応試薬を各ウェルに添加、混合しPCR反応を行った。逆転写反応を行った後、一度反応を止め、バッファー変更などは行わず簡便にPCRプライマーを含む同一バッファーを加える方法のため、一連の本解析手法をSemi-one step RT-TS PCR反応と名付け、得られた反応液をSemi-one step RT-TS PCR反応液とした。
【表40】
G3-2 セミネステドPCR
Semi-one-step RT-TS-PCR反応液は純水(DW)を3倍量加え2.0μlを分取し、TCRα、TCRβを個別のチューブで表41の反応液中、セミネステド形式のPCR反応を行った。DNA断片にシークエンシングプライマー認識配列を付加するため、5’側はテンプレートスイッチ配列、3’側はPCRプライマーの内側の配列にアダプター配列(MiSeqシークエンシング用Index配列を付加するための配列)を付加したプライマーを用いた。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った。
【表41】
セミネステドPCRの結果を
図12に示す。シングルセル解析(1ウェルに1細胞注入)したウェルでは、条件1では15ウェル中14ウェル、条件2では19ウェル中12ウェル、条件3では19ウェル中10ウェルでTCRα、TCRβ両方のDNAバンドが確認された。反応のポジティブコントロールとして設定した10細胞注入したウェルでは、全3条件でTCRα、TCRβ両方の良好な増幅が見られた。
G3-3 シークエンシングレパトア配列決定
次に得られたセミネステドPCR反応液を精製し、サンガー法によるシークエンシングを行った。本実験にはあとに示すRT-PCR反応液から全長タンパクコーディング領域(全長ORF領域)のクローニングを行うことを目的として含むため、要件にあった条件2と3のうち比較的良好な条件2を解析対象とした。本実験ではバンドのシグナル強度が全般的に弱かったため、条件2のシングルセル解析全19サンプルと比較対象的に条件1のNo1~4のTCRα、TCRβセミネステドPCR反応液中のDNAを精製し、TCRα、TCRβいずれのサンプルでも一定量以上のDNAが回収されたもの(条件2のNo1~12、16~19の16サンプル、条件1のNo1~4の4サンプル)についてシークエンシング解析に供した。得られた配列は、TCRα/β配列データベースに対して、blast相同性検索を行いTCR増幅の有無、増幅された塩基配列のVJレパトア配列(TCRβは加えてC領域も)の同定を行った。表42に決定したTCRα/βの配列ペア情報(?は未同定の意味)を示す。
【表42】
その結果、DNAバンドが不明瞭であったサンプル含め、シークエンシングした全てのセミネステドPCR反応物のDNA精製物でTCRに由来する配列を確認できた。電気泳動でのDNAバンド検出限界は数ナノグラム/バンド程度であった。本結果によりTCR増幅は電気泳動結果のみで成否判定がなされるべきではなく、費用対効果の観点から、解析した全てのウェルをシークエンシングまで進めることも効果的な場合があると考えられた。
G4 TCRペア遺伝子の全長タンパクコーディング領域cDNAクローニングと発現ベクター構築
G4-1 PCR反応
条件3のNo1、3、4のTCRα、TCRβペア遺伝子クローニングのため、それぞれ可変領域(V領域)の開始コドン上流、あるいは開始コドンを含む開始コドン上流とORF領域のプライマーを設計した。翻訳開始コドンはEnsembleのGeneデータベース上でアノテーション付けされている部位とした。実施例5で示した通り、ベクターとのアッセンブリーライゲーションを行うため、設計したV領域プライマーにはベクター配列との同一配列を付加した(本実施例では実施例5と同様にpcDNA3.1(+)V5His(B)用にデザインした。)。ストップコドン側のプライマーもストップコドンから上流側20塩基ほどの配列にベクター配列との同一配列を付加したプライマーを作成した。ベクターのV5Hisタグ配列との融合タンパク発現用のDNA配列作成のためストップコドンをアミノ酸コーディングコドンへ変更(TCRαCとTCRβC1はTGAから、TCRβC2はTAGからTTA/ロイシンコーディングへ置換)したプライマーも作成し、実験に使用した。
純水で4倍希釈したSemi-one-step RT-TS-PCR反応液は2.0μlを分取し、TCRα、TCRβを個別のチューブで表43の反応液中、PCR反応を行い、全長タンパクコーディング領域cDNAクローニングを試みた。V領域Fプライマーはクローンごとに変更する必要があるが、表44のリストの通り使用した。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図13)。尚、この反応はTCRα、TCRβの両方でかつストップコドンありとストップコドンなしのプライマーでの反応を同一チューブで行うことも可能である。その場合、ベクターにアッセンブリーライゲーションすると、1本のチューブ中の一度の反応でより簡便に4種類のTCR発現コンストラクト(pcDNA3.1V5His(B)の場合、pcDNA3.1ベクターのhTCRα発現プラスミド、hTCRα V5His融合タンパ発現プラスミド、hTCRβ発現プラスミド、hTCR βV5His融合タンパ発現プラスミドの4種)を構築できることが期待できる。
【表43】
【表44】
G4-2 シークエンシング反応
得られたDNA断片はAMPure XP DNAにて精製し、TCRα用シークエンシングプライマー(hTCRa-C-F、hTCRaC-R4、hTCRaC-R5)、TCRβ用シークエンシングプライマー(hTCRb-C2-F、hTCR-CR-R2、hTCR-CB2、hTCR-CB3)を用い一般的なサンガー配列解析法で塩基配列のシークエンシングを行った。得られたシークエンシングデータもとに参考としてG3-3のセミネステドPCR反応精製DNAのシークエンシングデータを参考データとして全長タンパクコーディング領域cDNAの塩基配列を決定した。決定した塩基配列と予想されるアミノ酸配列を次に示す。(下線部が開始コドンATGあるいはストップコドンを、*はストップコドンによりタンパク合成が止まる部位、//はフレームシフト部位をそれぞれ意味する。)表には本解析結果により得られたアップデート版のTCRVJレパトア情報を示す。
No.1とNo.3において全長タンパクコーディング領域を含むTCRペアのDNAクローニングが出来た。No.4のTCRβは全長タンパクコーディング領域を含んでいたがTCRαはVJ接合領域でフレームシフトが起きており、通常の全長タンパクは発現できないものと考えられたが、生物的な意義があるかもしれず興味深い結果となった。
>条件3 No.1 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号829)
AGCAGGGACCTGTGAGC
ATGGCATGCCCTGGCTTCCTGTGGGCACTTGTGATCTCCACCTGTCTTGAATTTAGCATGGCTCAGACAGTCACTCAGTCTCAACCAGAGATGTCTGTGCAGGAGGCAGAGACCGTGACCCTGAGCTGCACATATGACACCAGTGAGAGTGATTATTATTTATTCTGGTACAAGCAGCCTCCCAGCAGGCAGATGATTCTCGTTATTCGCCAAGAAGCTTATAAGCAACAGAATGCAACAGAGAATCGTTTCTCTGTGAACTTCCAGAAAGCAGCCAAATCCTTCAGTCTCAAGATCTCAGACTCACAGCTGGGGGATGCCGCGATGTATTTCTGTGCCCGGTATTCAGGAGGAGGTGCTGACGGACTCACCTTTGGCAAAGGGACTCATCTAATCATCCAGCCCTATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGC
TGA
>条件3 No.1 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号830)
MACPGFLWALVISTCLEFSMAQTVTQSQPEMSVQEAETVTLSCTYDTSESDYYLFWYKQPPSRQMILVIRQEAYKQQNATENRFSVNFQKAAKSFSLKISDSQLGDAAMYFCARYSGGGADGLTFGKGTHLIIQPYIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*
>条件3 No.1 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号831)
AGCAGGGACCTGTGAGCATGGC
ATGCCCTGGCTTCCTGTGGGCACTTGTGATCTCCACCTGTCTTGAATTTAGCATGGCTCAGACAGTCACTCAGTCTCAACCAGAGATGTCTGTGCAGGAGGCAGAGACCGTGACCCTGAGCTGCACATATGACACCAGTGAGAGTGATTATTATTTATTCTGGTACAAGCAGCCTCCCAGCAGGCAGATGATTCTCGTTATTCGCCAAGAAGCTTATAAGCAACAGAATGCAACAGAGAATCGTTTCTCTGTGAACTTCCAGAAAGCAGCCAAATCCTTCAGTCTCAAGATCTCAGACTCACAGCTGGGGGATGCCGCGATGTATTTCTGTGCCCGGTATTCAGGAGGAGGTGCTGACGGACTCACCTTTGGCAAAGGGACTCATCTAATCATCCAGCCCTATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTTA
>条件3 No.1 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号832)
MACPGFLWALVISTCLEFSMAQTVTQSQPEMSVQEAETVTLSCTYDTSESDYYLFWYKQPPSRQMILVIRQEAYKQQNATENRFSVNFQKAAKSFSLKISDSQLGDAAMYFCARYSGGGADGLTFGKGTHLIIQPYIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSSL
>条件3 No.1 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号833)
GGGTCCTGCC
ATGGTTTCCAGGCTTCTCAGTTTAGTGTCCCTTTGTCTCCTGGGAGCAAAGCACATAGAAGCTGGAGTTACTCAGTTCCCCAGCCACAGCGTAATAGAGAAGGGCCAGACTGTGACTCTGAGATGTGACCCAATTTCTGGACATGATAATCTTTATTGGTATCGACGTGTTATGGGAAAAGAAATAAAATTTCTGTTACATTTTGTGAAAGAGTCTAAACAGGATGAGTCCGGTATGCCCAACAATCGATTCTTAGCTGAAAGGACTGGAGGGACGTATTCTACTCTGAAGGTGCAGCCTGCAGAACTGGAGGATTCTGGAGTTTATTTCTGTGCCAGCAGCCAAGATCGCATCGAGCAGTACTTCGGGCCGGGCACCAGGCTCACGGTCACAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGC
TAG
>条件3 No.1 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号834)
MVSRLLSLVSLCLLGAKHIEAGVTQFPSHSVIEKGQTVTLRCDPISGHDNLYWYRRVMGKEIKFLLHFVKESKQDESGMPNNRFLAERTGGTYSTLKVQPAELEDSGVYFCASSQDRIEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG*
>条件3 No.1 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号835)
GGGTCCTGCC
ATGGTTTCCAGGCTTCTCAGTTTAGTGTCCCTTTGTCTCCTGGGAGCAAAGCACATAGAAGCTGGAGTTACTCAGTTCCCCAGCCACAGCGTAATAGAGAAGGGCCAGACTGTGACTCTGAGATGTGACCCAATTTCTGGACATGATAATCTTTATTGGTATCGACGTGTTATGGGAAAAGAAATAAAATTTCTGTTACATTTTGTGAAAGAGTCTAAACAGGATGAGTCCGGTATGCCCAACAATCGATTCTTAGCTGAAAGGACTGGAGGGACGTATTCTACTCTGAAGGTGCAGCCTGCAGAACTGGAGGATTCTGGAGTTTATTTCTGTGCCAGCAGCCAAGATCGCATCGAGCAGTACTTCGGGCCGGGCACCAGGCTCACGGTCACAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTTA
>条件3 No.1 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号836)
MVSRLLSLVSLCLLGAKHIEAGVTQFPSHSVIEKGQTVTLRCDPISGHDNLYWYRRVMGKEIKFLLHFVKESKQDESGMPNNRFLAERTGGTYSTLKVQPAELEDSGVYFCASSQDRIEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRGL
>条件3 No.3 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号837)
GGCTGGAGATTGCAGGTTTATGACTGATCCTATTTGGGAAGAACAATG
ATGGCAGGCATTCGAGCTTTATTTATGTACTTGTGGCTGCAGCTGGACTGGGTGAGCAGAGGAGAGAGTGTGGGGCTGCATCTTCCTACCCTGAGTGTCCAGGAGGGTGACAACTCTATTATCAACTGTGCTTATTCAAACAGCGCCTCAGACTACTTCATTTGGTACAAGCAAGAATCTGGAAAAGGTCCTCAATTCATTATAGACATTCGTTCAAATATGGACAAAAGGCAAGGCCAAAGAGTCACCGTTTTATTGAATAAGACAGTGAAACATCTCTCTCTGCAAATTGCAGCTACTCAACCTGGAGACTCAGCTGTCTACTTTTGTGCAGAGACCTCCCCCTTTTCAGATGGCCAGAAGCTGCTCTTTGCAAGGGGGACCATGTTAAAGGTGGATCTTAATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGC
TGA
>条件3 No.3 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号838)
MAGIRALFMYLWLQLDWVSRGESVGLHLPTLSVQEGDNSIINCAYSNSASDYFIWYKQESGKGPQFIIDIRSNMDKRQGQRVTVLLNKTVKHLSLQIAATQPGDSAVYFCAETSPFSDGQKLLFARGTMLKVDLNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*
>条件3 No.3 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号839)
GGCTGGAGATTGCAGGTTTATGACTGATCCTATTTGGGAAGAACAATG
ATGGCAGGCATTCGAGCTTTATTTATGTACTTGTGGCTGCAGCTGGACTGGGTGAGCAGAGGAGAGAGTGTGGGGCTGCATCTTCCTACCCTGAGTGTCCAGGAGGGTGACAACTCTATTATCAACTGTGCTTATTCAAACAGCGCCTCAGACTACTTCATTTGGTACAAGCAAGAATCTGGAAAAGGTCCTCAATTCATTATAGACATTCGTTCAAATATGGACAAAAGGCAAGGCCAAAGAGTCACCGTTTTATTGAATAAGACAGTGAAACATCTCTCTCTGCAAATTGCAGCTACTCAACCTGGAGACTCAGCTGTCTACTTTTGTGCAGAGACCTCCCCCTTTTCAGATGGCCAGAAGCTGCTCTTTGCAAGGGGGACCATGTTAAAGGTGGATCTTAATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTTA
>条件3 No.3 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号840)
MAGIRALFMYLWLQLDWVSRGESVGLHLPTLSVQEGDNSIINCAYSNSASDYFIWYKQESGKGPQFIIDIRSNMDKRQGQRVTVLLNKTVKHLSLQIAATQPGDSAVYFCAETSPFSDGQKLLFARGTMLKVDLNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSSL
>条件3 No.3 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号841)
AGGCTAGC
ATGGGCTGCAGGCTGCTCTGCTGTGCGGTTCTCTGTCTCCTGGGAGCAGTTCCCATAGACACTGAAGTTACCCAGACACCAAAACACCTGGTCATGGGAATGACAAATAAGAAGTCTTTGAAATGTGAACAACATATGGGGCACAGGGCTATGTATTGGTACAAGCAGAAAGCTAAGAAGCCACCGGAGCTCATGTTTGTCTACAGCTATGAGAAACTCTCTATAAATGAAAGTGTGCCAAGTCGCTTCTCACCTGAATGCCCCAACAGCTCTCTCTTAAACCTTCACCTACACGCCCTGCAGCCAGAAGACTCAGCCCTGTATCTCTGCGCCAGCAGCCAGGGGCGGAGAAACTACGAGCAGTACTTCGGGCCGGGCACCAGGCTCACGGTCACAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGC
TAG
>条件3 No.3 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号842)
MGCRLLCCAVLCLLGAVPIDTEVTQTPKHLVMGMTNKKSLKCEQHMGHRAMYWYKQKAKKPPELMFVYSYEKLSINESVPSRFSPECPNSSLLNLHLHALQPEDSALYLCASSQGRRNYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG*
>条件3 No.3 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号843)
AGGCTAGC
ATGGGCTGCAGGCTGCTCTGCTGTGCGGTTCTCTGTCTCCTGGGAGCAGTTCCCATAGACACTGAAGTTACCCAGACACCAAAACACCTGGTCATGGGAATGACAAATAAGAAGTCTTTGAAATGTGAACAACATATGGGGCACAGGGCTATGTATTGGTACAAGCAGAAAGCTAAGAAGCCACCGGAGCTCATGTTTGTCTACAGCTATGAGAAACTCTCTATAAATGAAAGTGTGCCAAGTCGCTTCTCACCTGAATGCCCCAACAGCTCTCTCTTAAACCTTCACCTACACGCCCTGCAGCCAGAAGACTCAGCCCTGTATCTCTGCGCCAGCAGCCAGGGGCGGAGAAACTACGAGCAGTACTTCGGGCCGGGCACCAGGCTCACGGTCACAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTTA
>条件3 No.3 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号844)
MGCRLLCCAVLCLLGAVPIDTEVTQTPKHLVMGMTNKKSLKCEQHMGHRAMYWYKQKAKKPPELMFVYSYEKLSINESVPSRFSPECPNSSLLNLHLHALQPEDSALYLCASSQGRRNYEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRGL
>条件3 No.4 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号845)
GGCTCTTTCAGGAGCAGCTAAAGTCAGGGGCCATGTCCACCATGTGATAGAAAGACAAG
ATGGTCCTGAAATTCTCCGTGTCCATTCTTTGGATTCAGTTGGCATGGGTGAGCACCCAGCTGCTGGAGCAGAGCCCTCAGTTTCTAAGCATCCAAGAGGGAGAAAATCTCACTGTGTACTGCAACTCCTCAAGTGTTTTTTCCAGCTTACAATGGTACAGACAGGAGCCTGGGGAAGGTCCTGTCCTCCTGGTGACAGTAGTTACGGGTGGAGAAGTGAAGAAGCTGAAGAGACTAACCTTTCAGTTTGGTGATGCAAGAAAGGACAGTTCTCTCCACATCACTGCGGCCCAGCCTGGTGATACAGGCCTCTACCTCTGTGCCTATCCGAGGAGGAGGTGCTGACGGACTCACCTTTGGCAAAGGGACTCATCTAATCATCCAGCCCTATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGC
TGA
>条件3 No.4 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号846)
MVLKFSVSILWIQLAWVSTQLLEQSPQFLSIQEGENLTVYCNSSSVFSSLQWYRQEPGEGPVLLVTVVTGGEVKKLKRLTFQFGDARKDSSLHITAAQPGDTGLYLCA//IRQERTVLSTSLRPSLVIQASTSVPIRGGGADGLTFGKGTHLIIQPYIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*
>条件3 No.4 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号847)
GGCTCTTTCAGGAGCAGCTAAAGTCAGGGGCCATGTCCACCATGTGATAGAAAGACAAG
ATGGTCCTGAAATTCTCCGTGTCCATTCTTTGGATTCAGTTGGCATGGGTGAGCACCCAGCTGCTGGAGCAGAGCCCTCAGTTTCTAAGCATCCAAGAGGGAGAAAATCTCACTGTGTACTGCAACTCCTCAAGTGTTTTTTCCAGCTTACAATGGTACAGACAGGAGCCTGGGGAAGGTCCTGTCCTCCTGGTGACAGTAGTTACGGGTGGAGAAGTGAAGAAGCTGAAGAGACTAACCTTTCAGTTTGGTGATGCAAGAAAGGACAGTTCTCTCCACATCACTGCGGCCCAGCCTGGTGATACAGGCCTCTACCTCTGTGCCTATCCGAGGAGGAGGTGCTGACGGACTCACCTTTGGCAAAGGGACTCATCTAATCATCCAGCCCTATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGCTTA
>条件3 No.4 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号848)
MVLKFSVSILWIQLAWVSTQLLEQSPQFLSIQEGENLTVYCNSSSVFSSLQWYRQEPGEGPVLLVTVVTGGEVKKLKRLTFQFGDARKDSSLHITAAQPGDTGLYLCA//IRQERTVLSTSLRPSLVIQASTSVPIRGGGADGLTFGKGTHLIIQPYIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSSL
>条件3 No.4 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列(配列番号849)
GGTAAAGCCCTCATCCTGTCCTGACCCTGCC
ATGGGCACCAGTCTCCTATGCTGGGTGGTCCTGGGTTTCCTAGGGACAGATCACACAGGTGCTGGAGTCTCCCAGTCTCCCAGGTACAAAGTCACAAAGAGGGGACAGGATGTAGCTCTCAGGTGTGATCCAATTTCGGGTCATGTATCCCTTTATTGGTACCGACAGGCCCTGGGGCAGGGCCCAGAGTTTTTGACTTACTTCAATTATGAAGCCCAACAAGACAAATCAGGGCTGCCCAATGATCGGTTTTTTGCAGAGAGGCCTGAGGGATCCATCTCCACTCTGACGATCCAGCGCACAGAGCAGCGGGACTCGGCCATGTATCGCTGTGCCAGCAGCTCCTCTAGCGGGAGCTCCTACAATGAGCAGTTCTTCGGGCCAGGGACACGGCTCACCGTGCTAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGC
TAG
>条件3 No.4 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列(配列番号850)
MGTSLLCWVVLGFLGTDHTGAGVSQSPRYKVTKRGQDVALRCDPISGHVSLYWYRQALGQGPEFLTYFNYEAQQDKSGLPNDRFFAERPEGSISTLTIQRTEQRDSAMYRCASSSSSGSSYNEQFFGPGTRLTVLEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG*
>条件3 No.4 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列(配列番号851)
GGTAAAGCCCTCATCCTGTCCTGACCCTGCC
ATGGGCACCAGTCTCCTATGCTGGGTGGTCCTGGGTTTCCTAGGGACAGATCACACAGGTGCTGGAGTCTCCCAGTCTCCCAGGTACAAAGTCACAAAGAGGGGACAGGATGTAGCTCTCAGGTGTGATCCAATTTCGGGTCATGTATCCCTTTATTGGTACCGACAGGCCCTGGGGCAGGGCCCAGAGTTTTTGACTTACTTCAATTATGAAGCCCAACAAGACAAATCAGGGCTGCCCAATGATCGGTTTTTTGCAGAGAGGCCTGAGGGATCCATCTCCACTCTGACGATCCAGCGCACAGAGCAGCGGGACTCGGCCATGTATCGCTGTGCCAGCAGCTCCTCTAGCGGGAGCTCCTACAATGAGCAGTTCTTCGGGCCAGGGACACGGCTCACCGTGCTAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGCTTA
>条件3 No.4 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列(配列番号852)
MGTSLLCWVVLGFLGTDHTGAGVSQSPRYKVTKRGQDVALRCDPISGHVSLYWYRQALGQGPEFLTYFNYEAQQDKSGLPNDRFFAERPEGSISTLTIQRTEQRDSAMYRCASSSSSGSSYNEQFFGPGTRLTVLEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRGL
【表45】
G4-3.DNA断片のライゲーションと大腸菌への導入
制限酵素EcoRV消化、精製したpcDNA3.1V5His(B)ベクター20ngを、クローニングした全長タンパクコーディング領域cDNAのDNA断片(条件3 No1 TCRα-ストップコドンあり、TCRβ-ストップコドンあり)10ngを加え純水で4μlにヴォリュームアップした。ネガティブコントロールとしてベクターのみのTCR DNA断片無添加条件を置いた。DNA溶液にNEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixを4μl加え混合、50℃で30分間反応した。反応液は1.65μl分取し、大腸菌DH5α株コンピテントセルをメーカーのプロトコールに従い、形質転換した。形質転換処理した大腸菌はSOC培地19倍量を加え37℃で30分間培養し、一部を分取してアンピシリン含有LB寒天培地にプレーティングした。37℃で一晩培養したところTCRα/βDNA断片を加えたサンプルでより多数のコロニーが見られた。
EcoRV消化ベクターは平滑末端DNA断片となり、PCR断片も平滑末端であるため今回の実験はT4ライゲースなどでライゲーションすることで行う可能である。(ただしこの場合、事前にEcoRV消化pcDNA3.1V5His(B)ベクターをアルカリフォスファターゼ消化することが必要である。)
方法により多少のプラスミドコンストラクトの配列に違いは生ずるが、いずれの方法でもネイティブ型のTCR、V5Hisタグ付きのTCRの発現ベクターが構築可能である。
ライゲーションの反応液組成や反応条件はメーカーのプロトコールに準ずる。本実施例に示したように、ライゲーション産物を一部分取し、コンピテントセルを形質転換、寒天培地にプレーティングし、遺伝子組換え大腸菌のコロニーを得る。
G4-4.プラスミドDNA調製
得られた大腸菌形質転換体(G4-3)は各反応群、シングルコロニーをいくつかピックアップし、アンピシリン含有SOC培地に植菌、37℃で8時間培養し、培養液が懸濁したサンプルについてプラスミド調製を行った。
得られたプラスミドはそのまま、あるいはインサート確認のためにベクターのクローニングサイト中の制限酵素(EcoRI、XhoI)で消化後、電気泳動を行った。電気泳動像を
図14に示す。制限酵素未消化プラスミドでは元のプラスミド(レーン1)やベクターのみでアッセンブリーライゲーションしたもの(レーン2、3)に比べ、TCRα DNA断片(レーン4~7)あるいはTCRβ DNA断片(レーン8~11)を加えたものではバンドが上側にシフトしており、制限酵素消化サンプルではTCRα DNA断片あるいはTCRβ DNA断片アッセンブリーライゲーションでのみ1kbp弱のインサートDNA断片が確認された。これらのプラスミドをベクタープライマーあるいはTCR配列中のプライマーを用い、サンガー法でシークエンシングしたところ1クローン(pcDNA3.1V5HisB+TCRα-コロニーB)を除きPCR増幅DNA断片シークエンシング時の配列が確認された。pcDNA3.1V5HisB+TCRα-コロニーB由来のプラスミドはタンパクORF中にアミノ酸のミスセンス変異(アスパラギン酸がアスパラギンに置換)を生じる1塩基の変異を持つクローンであった。
EcoRV消化ベクターは平滑末端DNA断片となり、PCR断片も平滑末端であるため今回の実験は通常のT4ライゲースなどでライゲーションすることも可能である。(ただしこの場合、事前にEcoRV消化pcDNA3.1V5His(B)ベクターをアルカリフォスファターゼ消化することが必要である。)また、アダプター配列に制限酵素サイトを組み込み、制限酵素消化後、同じ酵素で消化したベクターとライゲーションしても発現プラスミドは得られる。
いずれの方法でもこれら実験系でネイティブ型のTCR、V5Hisタグ付きのTCRの発現ベクターが構築可能である。ライゲーションの反応液組成や反応条件はメーカーのプロトコールに準ずる。本実施例に示したように、ライゲーション産物を一部分取し、コンピテントセルを形質転換、寒天培地にプレーティングし、遺伝子組換え大腸菌を得る。
G4-5.プラスミドDNAインサートの配列確認
得られたプラスミドはそれぞれTCRα用シークエンシングプライマー、TCRβ用シークエンシングプライマー、ベクタープライマーを用い一般的なサンガー配列解析法でインサート配列のシークエンシングを行った。その結果、8クローン中7クローンと高効率で塩基配列変異のないクローンが得られた。8クローン中1クローン(pcDNA3.1V5HisB+TCRα-コロニーB)ではタンパクORF中にアミノ酸のミスセンス変異(アスパラギン酸がアスパラギンに置換)を生じる1塩基の変異が確認された。ベクター中のV5Hisタグ配列を含む形の配列を次に示す(下線部は開始コドンATGあるいはストップコドンを、*はストップコドンによりタンパク合成が止まる部位をそれぞれ意味する。)。
このpcDNA3.1V5HisTCRα、pcDNA3.1V5HisTCRβプラスミドクローンとも、同様の手法で先に調製した(G4-2.)ストップコドン無しDNA断片をpcDNA3.1V5HisBベクターに挿入することにより一つ目のストップコドンがL(ロイシン)に置換されタンパクC末端にV5Hisタグが融合したTCRタンパク質が発現可能になる。
これらTCRα/βペア遺伝子の発現プラスミドは同時に細胞にエレクトロポレーションや、リポフェクション法、リン酸カルシウム法などで導入しペア遺伝子発現させることができる。また、ベクター中のT7プロモーターを利用しin vitro転写反応でTCRα/βペア遺伝子mRNAを合成、細胞に導入してタンパク発現させたり、TCRα/βペア遺伝子mRNAをさらにin vitro翻訳系にてTCRα/βペア遺伝子合成に使用しタンパク合成させたりすることができる。
>pcDNA3.1V5HisB/TCRα(ストップあり)プラスミド-(pcDNA3.1V5HisB+TCRα--コロニーA、C、D由来プラスミドで同一配列)(配列番号856)
AGCAGGGACCTGTGAGC
ATGGCATGCCCTGGCTTCCTGTGGGCACTTGTGATCTCCACCTGTCTTGAATTTAGCATGGCTCAGACAGTCACTCAGTCTCAACCAGAGATGTCTGTGCAGGAGGCAGAGACCGTGACCCTGAGCTGCACATATGACACCAGTGAGAGTGATTATTATTTATTCTGGTACAAGCAGCCTCCCAGCAGGCAGATGATTCTCGTTATTCGCCAAGAAGCTTATAAGCAACAGAATGCAACAGAGAATCGTTTCTCTGTGAACTTCCAGAAAGCAGCCAAATCCTTCAGTCTCAAGATCTCAGACTCACAGCTGGGGGATGCCGCGATGTATTTCTGTGCCCGGTATTCAGGAGGAGGTGCTGACGGACTCACCTTTGGCAAAGGGACTCATCTAATCATCCAGCCCTATATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGAGAGACTCTAAATCCAGTGACAAGTCTGTCTGCCTATTCACCGATTTTGATTCTCAAACAAATGTGTCACAAAGTAAGGATTCTGATGTGTATATCACAGACAAAACTGTGCTAGACATGAGGTCTATGGACTTCAAGAGCAACAGTGCTGTGGCCTGGAGCAACAAATCTGACTTTGCATGTGCAAACGCCTTCAACAACAGCATTATTCCAGAAGACACCTTCTTCCCCAGCCCAGAAAGTTCCTGTGATGTCAAGCTGGTCGAGAAAAGCTTTGAAACAGATACGAACCTAAACTTTCAAAACCTGTCAGTGATTGGGTTCCGAATCCTCCTCCTGAAAGTGGCCGGGTTTAATCTGCTCATGACGCTGCGGCTGTGGTCCAGC
TGAATCCAGCACAGTGGCGGCCGCTCGAGTCTAGAGGGCCCGCGGTTCGAAGGTAAGCCTATCCCTAACCCTCTCCTCGGTCTCGATTCTACGCGTACCGGTCATCATCACCATCACCAT
TGA
>pcDNA3.1V5HisB/TCRα(ストップあり)プラスミド発現タンパク配列-(pcDNA3.1V5HisB+TCRα--コロニーA、C、D由来プラスミドで同一配列)(配列番号857)
MACPGFLWALVISTCLEFSMAQTVTQSQPEMSVQEAETVTLSCTYDTSESDYYLFWYKQPPSRQMILVIRQEAYKQQNATENRFSVNFQKAAKSFSLKISDSQLGDAAMYFCARYSGGGADGLTFGKGTHLIIQPYIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS*IQHSGGRSSLEGPRFEGKPIPNPLLGLDSTRTGHHHHHH*
>pcDNA3.1V5HisB/TCRβ(ストップあり)プラスミド-(pcDNA3.1V5HisB+TCRβ-コロニーA、B、C、D由来プラスミドで同一配列)(配列番号858)
GGGTCCTGCC
ATGGTTTCCAGGCTTCTCAGTTTAGTGTCCCTTTGTCTCCTGGGAGCAAAGCACATAGAAGCTGGAGTTACTCAGTTCCCCAGCCACAGCGTAATAGAGAAGGGCCAGACTGTGACTCTGAGATGTGACCCAATTTCTGGACATGATAATCTTTATTGGTATCGACGTGTTATGGGAAAAGAAATAAAATTTCTGTTACATTTTGTGAAAGAGTCTAAACAGGATGAGTCCGGTATGCCCAACAATCGATTCTTAGCTGAAAGGACTGGAGGGACGTATTCTACTCTGAAGGTGCAGCCTGCAGAACTGGAGGATTCTGGAGTTTATTTCTGTGCCAGCAGCCAAGATCGCATCGAGCAGTACTTCGGGCCGGGCACCAGGCTCACGGTCACAGAGGACCTGAAAAACGTGTTCCCACCCGAGGTCGCTGTGTTTGAGCCATCAGAAGCAGAGATCTCCCACACCCAAAAGGCCACACTGGTGTGCCTGGCCACAGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAGCTGAGCTGGTGGGTGAATGGGAAGGAGGTGCACAGTGGGGTCAGCACAGACCCGCAGCCCCTCAAGGAGCAGCCCGCCCTCAATGACTCCAGATACTGCCTGAGCAGCCGCCTGAGGGTCTCGGCCACCTTCTGGCAGAACCCCCGCAACCACTTCCGCTGTCAAGTCCAGTTCTACGGGCTCTCGGAGAATGACGAGTGGACCCAGGATAGGGCCAAACCTGTCACCCAGATCGTCAGCGCCGAGGCCTGGGGTAGAGCAGACTGTGGCTTCACCTCCGAGTCTTACCAGCAAGGGGTCCTGTCTGCCACCATCCTCTATGAGATCTTGCTAGGGAAGGCCACCTTGTATGCCGTGCTGGTCAGTGCCCTCGTGCTGATGGCCATGGTCAAGAGAAAGGATTCCAGAGGC
TAGATCCAGCACAGTGGCGGCCGCTCGAGTCTAGAGGGCCCGCGGTTCGAAGGTAAGCCTATCCCTAACCCTCTCCTCGGTCTCGATTCTACGCGTACCGGTCATCATCACCATCACCAT
TGA
>pcDNA3.1V5HisB/TCRβ(ストップあり)プラスミド発現タンパク配列-(pcDNA3.1V5HisB+TCRβ-コロニーA、B、C、D由来プラスミドで同一配列)(配列番号859)
MVSRLLSLVSLCLLGAKHIEAGVTQFPSHSVIEKGQTVTLRCDPISGHDNLYWYRRVMGKEIKFLLHFVKESKQDESGMPNNRFLAERTGGTYSTLKVQPAELEDSGVYFCASSQDRIEQYFGPGTRLTVTEDLKNVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFYPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSESYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDSRG*IQHSGGRSSLEGPRFEGKPIPNPLLGLDSTRTGHHHHHH*
G5. TCRペア遺伝子のV(D)J領域断片、C領域断片のcDNAクローニングと全長タンパクコーディング領域発現ベクター
G5-1 PCR反応-1
条件3のNo1、3、4のTCRα、TCRβペア遺伝子クローニングのため、実施例5で示した通り、V(D)J領域断片とC領域断片を別々に調製し、全長タンパクコーディング領域発現ベクターを構築するため、まず、ヒトCD8陽性T細胞由来cDNAを鋳型に表46の反応液中、PCR反応を行い、TCRαC領域、TCRβC2領域のcDNAクローニングを行った。反応液3μlを用い、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図15)。
【表46】
今回は使用しなかったが、アダプターなしのC領域断片を3’UTRの比較的末端領域まで増幅することを試みた。公共ゲノムデータベースのアノテーション情報などを参考にし、3’UTRの比較的末端領域にリバース側のプライマーを設計し、ヒトCD8陽性T細胞由来cDNAを鋳型に表47の反応液中、PCR反応を行い、TCRのC領域から3’UTR領域までのcDNAクローニングを行った。反応液3μlを用い、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図16)。本DNAはアダプターが付加されていないが、TCRC領域標品として各種ベクターにライゲーションするためのアダプター付きcDNA断片などをPCR調製する際の鋳型などとして使用できる。
【表47】
G5-2 PCR反応-2
条件3のNo1、3、4のTCRα、TCRβペア遺伝子クローニングのため、それぞれ可変領域(V領域)の開始コドン上流、あるいは開始コドンを含む開始コドン上流とORF領域のプライマーを設計した(F4-1)。
セミネステドPCR反応液精製DNA溶液(G3-2で調製しG3-3でシークエンシング用に精製したDNAサンプル)は2.0μlを分取し、表48の反応液中、PCR反応を行い、TCR V(D)Jタンパクコーディング領域cDNAクローニングを行った。V領域Fプライマーはクローンごとに変更する必要があるが表49のリストの通り使用した。反応液を3μl分取し、アガロースゲル電気泳動にてバンドの確認を行った(
図17)。
【表48】
【表49】
G5-3.DNA断片のライゲーションと大腸菌への導入
制限酵素EcoRV消化、精製したpcDNA3.1V5His(B)ベクターへ、G5-1でクローニングした3’アダプター付きTCR C領域DNA断片(ストップコドンあり、あるいはストップコドンなしのいずれも可能)とF5-2でクローニングした5’アダプター付きTCR V(D)Jタンパクコーディング領域cDNAをNEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mixなどを用いアッセンブリーライゲーションする。
今回の一連の実験系によりネイティブ型のTCR、V5Hisタグ付きのTCRの発現ベクターが構築可能である。
ライゲーションの反応液組成や反応条件はメーカーのプロトコールに準ずる。ライゲーション産物を一部分取し、コンピテントセルを形質転換、寒天培地にプレーティングし、遺伝子組換え大腸菌を得る。
G5-4.プラスミドDNA調製
プラスミド遺伝子組換え体シングルコロニーは液体培地で培養、集菌し、一般的なアルカリ抽出法やNucleoSpin Plasmidなど市販のキットでプラスミドDNAを調製する。
G5-5.プラスミドDNAインサートの配列確認
得られたプラスミドはそれぞれTCRα用シークエンシングプライマー、TCRβ用シークエンシングプライマー、ベクタープライマーを用い一般的なサンガー配列解析法でインサート配列のシークエンシングを行う。PCR増幅断片のシークエンシングデータと比較し塩基配列の置換(少なくともミスセンス変異やナンセンス変異がなく)、挿入、欠失がないクローンをTCR発現コンストラクトとして使用する。
(注記)
【0364】
本開示を好ましい実施形態を強調して説明してきたが、好ましい実施形態が変更され得ることは当業者にとって自明であろう。本開示は、本開示が本明細書に詳細に記載された以外の方法で実施され得ることを意図する。したがって、本開示は添付の「特許請求の範囲」の精神および範囲に包含されるすべての変更を含むものである。
【0365】
ここで述べられた特許および特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。本願は、2018年8月24日に出願された日本国特許出願第2018-157760号の優先権の利益を請求し、その内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0366】
本開示によれば、TCRまたはBCRの機能的ペア遺伝子を解析する非常に簡便かつ精度の高い方法が提供され、疾患特異的かつ機能的なTCRまたはBCRの製造、あるいは大規模な定量的分析が必要とされる臨床応用場面において特に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0367】
配列番号1:hTCRαBlock primer(CA2;23塩基)
配列番号2:hTCRαRT primer(CA1;23塩基)
配列番号3:hTCRβBlock primer(CB2;23塩基)
配列番号4:hTCRβRT primer(CB1(3);23塩基)
配列番号5:TS-Oligo(30塩基)
配列番号6:TS-Primer(30塩基)
配列番号7:Forward TS-Tag primer v1(64塩基)
配列番号8:hTCRαReverse Tag primer(51塩基)
配列番号9:hTCRαReverse Tag primer/hTCA-R-TP5-1(53塩基)
配列番号10:hTCRβReverse Tag primer(52塩基)
配列番号11:P5-seq(21塩基)
配列番号12:CA3(23塩基)
配列番号13:CB3(23塩基)
配列番号14:実験AにおけるウェルNo.13 TCRα塩基配列
配列番号15:実験AにおけるウェルNo.13 TCRαアミノ酸翻訳配列
配列番号16:実験AにおけるウェルNo.13 TCRβ塩基配列
配列番号17:実験AにおけるウェルNo.13 TCRβアミノ酸翻訳配列
配列番号18~416:表6~13におけるCDR3配列
配列番号417~485:表17~18におけるCDR3配列
配列番号486~579:表21~22におけるCDR3配列
配列番号580~603:表24におけるCDR3配列
配列番号604:hBCRμBlock primer(CM2(2);19塩基)
配列番号605:hBCRμRT primer(CM1(2);23塩基)
配列番号606:hBCR Kappa Block primer(CK2;18塩基)
配列番号607:hBCR Kappa RT primer(CK1;19塩基)
配列番号608:hBCR Lambda Block primer(CL2;16塩基)
配列番号609:hBCR Lambda RT primer(CL1;19塩基)
配列番号610:hBCRμReverse Tag primer(CM-ST1-R-(3)、53塩基)
配列番号611:hBCR Kappa Reverse Tag primer(CK-ST1-R、51塩基)
配列番号612:hBCR Lambda Reverse Tag primer(CL-ST1-R、51塩基)
配列番号613~744:表28~29におけるCDR3配列
配列番号745:TS-AdpD3EV
配列番号746:hTCRa-VX-F-AdpD3EV
配列番号747:hTCRa-V24-F-AdpD3EV
配列番号748:hTCRb-VX-F-AdpD3EV
配列番号749:hTCRb-V6.5-F-AdpD3EV
配列番号750:TS-AdpMXEI
配列番号751:hTCRa-VX-F-AdpMXEI
配列番号752:hTCRb-VX-F-AdpMXEI
配列番号753:hTCRa-V24-F-AdpMXEI
配列番号754:hTCRb-V6.5-F-AdpMXEI
配列番号755:hTCRa-C-R
配列番号756:hTCRb-C1-R
配列番号757:hTCRb-C2-R
配列番号758:hTCRaC-F0
配列番号759:hTCRaC-F1
配列番号760:hTCRaC-F2
配列番号761:hTCRaC-F3
配列番号762:hTCRaC-R1v1
配列番号763:hTCRaC-R2
配列番号764:hTCRaC-R4
配列番号765:hTCRaC-R5
配列番号766:hTCR-CB-F2
配列番号767:hTCRbC-F5
配列番号768:hTCR-CB-R2
配列番号769:hTCR-CB2
配列番号770:hTCR-CB3
配列番号771:hTCRbC2-CloR1
配列番号772:hTCRbC1-R1
配列番号773:hTCRaCFull-AdpD3EV
配列番号774:hTCRaCFull_noSTOP-AdpD3EV
配列番号775:hTCRbC1Full-AdpD3EV
配列番号776:hTCRbC1Full_noSTOP-AdpD3EV
配列番号777:hTCRbC2Full-AdpD3EV
配列番号778:hTCRbC2Full_noSTOP-AdpD3EV
配列番号779:hTCRaCFull-AdpMXEI
配列番号780:hTCRbC1Full-AdpMXEI
配列番号781:hTCRbC2Full-AdpMXEI
配列番号782:TS-AdpD3EV
配列番号783:hBCRH-VX-F-AdpD3EV
配列番号784:hBCRH-V3.30-F-AdpD3EV
配列番号785:hBCRH-V2.70-F-AdpD3EV
配列番号786:hBCRLam-VX-F-AdpD3EV
配列番号787:hBCRLam-V2.14-F-AdpD3EV
配列番号788:hBCRKap-VX-F-AdpD3EV
配列番号789:hBCRK-V3.15-F-AdpD3EV
配列番号790:hBCRM-C-R
配列番号791:hBCRLam-C2-R
配列番号792:hBCRKap-C1-R
配列番号793:hBCRKapCFull-AdpD3EV
配列番号794:hBCRLamC2Full-AdpD3EV
配列番号795:hBCRμCFull-AdpD3EV
配列番号796:実験DにおけるウェルNo.18 BCRμ塩基配列
配列番号797:実験DにおけるウェルNo.18 BCRμアミノ酸翻訳配列
配列番号798:実験DにおけるウェルNo.18 BCRLambda塩基配列
配列番号799:実験DにおけるウェルNo.18 BCRLambdaアミノ酸翻訳配列
配列番号800:実験DにおけるウェルNo.55 BCRμ塩基配列
配列番号801:実験DにおけるウェルNo.55 BCRμアミノ酸翻訳配列
配列番号802:実験DにおけるウェルNo.55 BCRKappa塩基配列
配列番号803:実験DにおけるウェルNo.55 BCRKappaアミノ酸翻訳配列
配列番号804:CMV(Human betaherpesvirus 5)のpp65(AKI22842.1)のアミノ酸配列
配列番号805:Infuluenza M1タンパク(P03485)のアミノ酸配列
配列番号806:hTCRαRT primer(hTCRaC-CloR1;21塩基)
配列番号807:hTCRαRT primer(hTCRaC-CloR2;22塩基)
配列番号808:hTCRαPCR primer(hTCRaC-R2v0;21塩基)
配列番号809:hTCRβRT primer(hTCRbC1-R3;21塩基)
配列番号810:hTCRβRT primer(hTCRbC2-CloR2;21塩基)
配列番号811:hTCRβPCR primer(hTCRbC1-R2v2;20塩基)
配列番号812:hTCRβPCR primer(hTCRbC2-CloR3;21塩基)
配列番号813:hTCRaV38.2-F1-AdpD3EV
配列番号814:hTCRbV14-F1-AdpD3EV
配列番号815:hTCRaV13.2-F2-AdpD3EV
配列番号816:hTCRbV4.1-F1-AdpD3EV
配列番号817:hTCRaV27-F3-AdpD3EV
配列番号818:hTCRbV7.6-F1-AdpD3EV
配列番号819:hTCRaC-AdpD3EV
配列番号820:hTCRaC-NT-AdpD3EV
配列番号821:hTCRbC1-AdpD3EV
配列番号822:hTCRbC1-NT-AdpD3EV
配列番号823:hTCRbC2-AdpD3EV
配列番号824:hTCRbC2-NT-AdpD3EV
配列番号825:hTCRa-C-F
配列番号826:hTCRb-C1-F
配列番号827:hTCRb-C2-F
配列番号828:hTCR-CB2-R2
配列番号829:No.1 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号830:No.1 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号831:No.1 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号832:No.1 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号833:No.1 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号834:No.1 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号835:No.1 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号836:No.1 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号837:No.3 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号838:No.3 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号839:No.3 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号840:No.3 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号841:No.3 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号842:No.3 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号843:No.3 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号844:No.3 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号845:No.4 TCRα PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号846:No.4 TCRα PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号847:No.4 TCRα PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号848:No.4 TCRα PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号849:No.4 TCRβ PCR産物(Stopあり)塩基配列
配列番号850:No.4 TCRβ PCR産物(Stopあり)アミノ酸配列
配列番号851:No.4 TCRβ PCR産物(Stopなし)塩基配列
配列番号852:No.4 TCRβ PCR産物(Stopなし)アミノ酸配列
配列番号853:T7
配列番号854:CMV-Fwd2
配列番号855:BGH-Reverse
配列番号856:pcDNA3.1V5HisB/TCRα(ストップあり)プラスミド
配列番号857:pcDNA3.1V5HisB/TCRα(ストップあり)プラスミド発現アミノ酸配列
配列番号858:pcDNA3.1V5HisB/TCRβ(ストップあり)プラスミド
配列番号859:pcDNA3.1V5HisB/TCRβ(ストップあり)プラスミド発現アミノ酸配列
【配列表】