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特許7328633電流センサ及びそのコアホールドユニット
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  • 特許-電流センサ及びそのコアホールドユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】電流センサ及びそのコアホールドユニット
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20230809BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R33/02 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019076671
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020160035
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】児玉 将行
(72)【発明者】
【氏名】東森 勇季
(72)【発明者】
【氏名】藤井 靖高
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-162003(JP,A)
【文献】特開2012-122793(JP,A)
【文献】特開2013-242294(JP,A)
【文献】特開2013-044671(JP,A)
【文献】特開2017-117643(JP,A)
【文献】特開2014-122819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の一部に間隙部を有するU形形状であり磁性材で形成されたコアと、厚みと巾に直交する方向に延伸した板形状のバスバーを組み付けることができる絶縁材からなるホールド部材であって、U形形状のコアの内周面と、外周面と、厚み方向で成す側面と、前記内周面と外周面と側面に接する天面にそれぞれ沿う壁形状で成す第1の凹部と第2の凹部を有するコア挿入部と、前記第1及び第2の凹部の間にあり前記バスバーの厚みに沿い、前記第1及び第2の凹部の開口側にU形形状の開口がある溝形状のバスバー挿入部を有し、コアの間隙部側からホールド部材にコアを挿入でき、コアと同一方向からバスバーを挿入することができる ホールド部材。
【請求項2】
前記ホールド部材は、前記コアの挿入方向とは逆方向に開口形状を成す第3の凹部を有し、前記第3の凹部は前記第1及び第2の凹部の前記コアの天面に沿う第1面に対向する第2面に形成され、前記第1及び第2の凹部の間に側面を有していることを特徴とする請求項1記載のホールド部材。
【請求項3】
前記ホールド部材の溝形状に前記バスバーを挿入し、前記第1及び第2凹部に前記コアを挿入し、前記第3の凹部に感磁素子を挿入した状態で、バスバーの延伸方向に流れる電流によりバスバー周辺に磁束が発生し、その磁束は前記コアに集磁され、集磁された磁束はコアの間隙部を鎖交し、前記第3の凹部に挿入した感磁素子で、前記コアの間隙部を鎖交する磁束を検出することで、バスバーに流れる電流を検出することができる電流センサに用いる請求項2記載のホールド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサの構成部材であるコア、バスバーのホールド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電流センサは、通電経路を形成するバスバーと、バスバーの電流より発生する磁束を、環状の一部に間隙を有するU形形状の磁性材で、前記磁束を間隙部に集磁するコアと、コアの間隙部に挿入され磁束密度を検出する感磁素子と、それらを保持するケースで構成される。
【0003】
また従来の電流センサは、コアとバスバーをインサート成形することにより、コアとバスバーとモールド樹脂が一体となったコアホールドユニットを有している。インサート成形は、コアとバスバーを成形金型内に直接挿入する方法と、コアとバスバーをホールド部材で一体化し、一体化した組立品を成形金型内に挿入する方法がある。コア及びバスバーが複数の場合、成形金型内への挿入作業効率に優れる前記ホールド部材による組立品の挿入方法が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-242294号公報(第13頁、図3
【文献】特開2016-206172号公報(第16頁、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の通り、複数のコアとバスバーをホールド部材で予め組み立てた後、インサート成形を行う従来のホールド部材は、前記集磁の間隙を有するU形形状のコアの内径で成す内周面や外径で成す外周面をホールドするため、コア内周面及び外周面と垂直で成す方向からホールド部材にコアを挿入する構造であり、バスバーは前記コアの間隙巾方向に対し垂直方向から間隙部を通過させコア内径内に挿入し、バスバーの板厚をホールドする構造である。この場合、ホールド部材へのコアとバスバーの挿入方向が90度異なり、ホールド部材に対しコアとバスバーを同一方向から挿入することができないため、組立効率の悪化や複雑な機構を有した設備による組立が必要となる。
【0006】
また前記の通り、組立品をインサート成形する際、成形金型内に組立品を挿入することとなるが、コア間隙部側からインサート成形金型内に組立品を挿入する場合、組立品を成形金型へ挿入する方向と前記ホールド部材へのコア挿入方向が90度異なるため、組立品を成形金型に挿入する際、ホールド部材からのコア脱落や位置ズレ防止を目的とした係止構造がホールド部材に必要となる。
【0007】
また前記の通り、間隙部を有するU形形状のコアは、板状の磁性材をプレス金型で打ち抜き、積み上げることで形成する積層コアか、板状の磁性材を芯に巻き付け環状にした後、環状の一部をカットすることで間隙部を有する巻きコアが一般的に用いられる。いずれのコアも間隙部には磁性材の打ち抜きバリもしくはカットバリが残る可能性がある。一方、前記コアの間隙内に感磁素子を配置し、バスバーから発生する磁束を間隙内に集磁し、感磁素子で検出する電流センサにおいて、感磁素子と間隙部の相対位置が重要であり、ケース内におけるコア間隙部の位置決め及び固定がインサート成形を行う時重要となる。コア間隙部をインサート成形金型内に位置決めする場合、コア間隙巾に沿う凸形状を有する成形金型に挿入することで、間隙部の位置決めを行う方法が用いられる。前記凸形状を有する成形金型へコア間隙部を挿入する際、コア間隙部と凸形状が直接接触することで、コア間隙部のプレスバリもしくはカットバリが成形金型内に脱落し、ケースのモールド樹脂内に導電体である磁性材異物が練り込まれる可能性がある。電流センサのバスバーには高電圧が印加されるため、バスバー間及びバスバーとコア間は絶縁体であるモールド樹脂により絶縁を行うが、前記異物が練り込まれた場合、バスバー間及びバスバーとコア間の絶縁破壊に至る可能性がある。
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、ホールド部材へのコアとバスバーを同一方向から挿入でき、組立品をインサート成形金型に挿入する際の方向も、前記ホールド部材へのコア及びバスバーの挿入方向から変えることなく挿入することができ、組立品を成形金型内に挿入する際のコア脱落や位置ズレ防止の係止構造が必要なく、コア間隙部を成形金型に直接接触させることなく金型内に間隙部を位置決めできるホールド部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電流センサに用いるコアホールドユニットは、環状の一部に間隙部を有するU形形状のコアと、通電経路を形成するバスバーを、インサート成形によりモールド樹脂で一体としたものであり、ホールド部材に前記コアとバスバーを共に同一方向から組付けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ホールド部材へのコア及びバスバーの組立効率が向上し、設備による組立を行う際は設備の機構を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)(B)は本発明の実施の形態1におけるコアホールドユニットの斜視図である。
図2】(A)(B)は本発明の実施の形態1におけるホールド部材にバスバーを組み付けたアセンブリの斜視図である。
図3】(A)(B)は本発明の実施の形態1におけるホールド部材にバスバーを組み付けた後、コアを組み付けたアセンブリの斜視図である。
図4】(A)は図3の平面図、(B)及び(C)は断面図である。
図5】(A)(B)は本発明の実施の形態1におけるホルダーの斜視図である。
図6】(A)は図5の平面図、(B)(C)(D)は断面図である。
図7】は本発明の実施の形態1におけるコアの斜視図である。
図8】(A)は本発明の実施の形態1におけるバスバーの斜視図、(B)(C)はバスバーの正面図である。
図9】(A)は本発明の形態1における電流センサユニットの斜視図である。(B)はコアホールドユニットと感磁素子との位置関係を示した斜視図、(C)は電流センサユニットの平面図、(D)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1におけるコアホールドユニット100の斜視図である。図1においてコアホールドユニット100は、複数のバスバー2と複数のコア4をインサート成形前に組み立てるためのホールド部材であるホルダー3に挿入し、前記コア4とバスバー2とホルダー3で成すアセンブリをインサート成形金型(図示せず)内に挿入し、モールド樹脂(ケース1)によるインサート成形を行うことで一体構造となる。
【0013】
図8は本発明の実施の形態1におけるバスバー2の斜視図及び正面図である。バスバー2は銅材もしくはアルミ材から成り、板厚2a長さ2b巾2cの板状外形で、位置決め用の凹部2dもしくは凸部2eを有す。
図7は本発明の実施の形態1におけるコア4の斜視図である。図7においてコア4は、間隙部4aを有するU形形状であり、板状の磁性材をプレス金型で打ち抜き、積み上げることで形成する積層コアか、板状の磁性材を芯に巻き付け環状にした後、環状の一部をカットすることで間隙部4aを得る巻きコアであり、内周面4b、外周面4c、天面4d、底面4e、側面4fを有する。
図5は本発明の実施の形態1におけるホルダー3の斜視図、図6はその平面図及び断面図である。図5においてホルダー3はモールド樹脂材から成り、コア4を挿入するコア挿入部3a、バスバー2を挿入するバスバー挿入部3b、成形金型用位置決め及び感磁素子5a挿入に用いる凹部3cを有す。バスバー挿入部3bはバスバー2の板厚2aと同等もしくは若干の大小を持たせた寸法の溝形状を有す。コア挿入部3a及びバスバー挿入部3bは、コア4及びバスバー2を共に矢印方向kから挿入するように開口している。図6においてコア挿入部3aはコア4の外周面4cに沿う樹脂壁3f、内周面4bに沿う樹脂壁3g、側面4fに沿う樹脂壁3h、底面4eに沿う樹脂壁3iを有し、凹部3cは樹脂壁3d、3eを有する。
図2は本発明の実施の形態1におけるホルダー3にバスバー2を挿入した斜視図である。図2においてホルダー3のバスバー挿入部3bにバスバー2を挿入することでホルダー3に対するバスバー2の板厚2a方向及び巾2c方向の位置決め及びホールドが可能となる。また、バスバー2に設けられた凹部2dもしくは凸部2eをホルダー3に組み合わせることにより、バスバー2の長さ2b方向におけるホルダー3への位置決めも可能となる。
図3は本発明の実施の形態1におけるホルダー3にバスバー2を組み付けた後、コア4を組み付けたアセンブリの斜視図、図4はその平面図及び断面図である。図3においてホルダー3のコア挿入部3aにコア4を挿入することで、樹脂壁3gによりホルダー3に対するコア4の間隙4a巾方向の位置決めを可能とし、樹脂壁3hによりホルダー3に対するコア4の厚み方向の位置決めが可能となる。
図9は本発明の実施の形態1における電流センサユニット200の斜視図である。図9において電流センサユニット200は、感磁素子5a、その出力信号や制御電源を入出力するコネクタ5b及びそれらを実装したプリント基板5cから成る信号処理部5を有し、感磁素子5aをコアモールドユニット100の凹部3cに挿入し、プリント基板5cをねじ6にてコアモールドユニット100に位置決め固定する。
【0014】
このように構成されたコアホールドユニット100においては、ホルダー3に対するバスバー2の挿入とコア4の挿入を共に同一の矢印方向kとし、ホルダー3の方向を変えることなく、バスバー2とコア4をホルダー3に挿入することが可能となり組立の効率化や組立機構の簡易化が可能となる。
【0015】
またコア4に近接するバスバー2に対し、コア4を樹脂壁3f、3g、3h、3iで遮断することにより、バスバー2に高電圧が印加された場合においても、バスバー2とコア4の絶縁をホルダー3で確保することが可能となる。
【0016】
またホルダー3へのバスバー2及びコア4の挿入方向kと同一方向である矢印方向j(図3参照)から、アセンブリをインサート成形金型に挿入することで、ホルダー3へのバスバー2及びコア4の挿入からアセンブリをインサート成形金型に挿入するまでホルダー3の方向を変えることなく作業ができ、インサート成形金型への挿入時におけるホルダー3からバスバー2及びコア4の脱落を防止できる。
【0017】
またホルダー3の凹部3cに沿う凸形状を有するインサート成形金型にアセンブリを挿入することにより、コア4の間隙部4aをインサート成形金型に直接接触させることなくコア4の間隙部4aの間隙巾方向及び間隙巾の垂直方向を位置決めできることで、コア間隙部のプレスバリもしくはカットバリが成形金型内に脱落することがない。よってバスバー間及びバスバーとコア間の絶縁破壊の原因となる導電体である磁性材異物が、ケース1のモールド樹脂内に練り込まれることのない信頼性の高い絶縁が確保できる。
またこのように構成された電流センサユニット200においては、凹部3cに挿入された感磁素子5aにより、バスバー2を流れる電流により発生しコアの間隙部4aに集磁された磁束を検出し、電流センサユニット200の外部に出力される。バスバー2に高電圧が印加された場合、バスバー2に近接したコア4には容量結合により電圧が誘導され、コア4も高電圧化する。高電圧化したコアの間隙部4a内に配置された感磁素子5aに放電した場合、感磁素子5aは故障する可能性があるが、ホルダー3の感磁素子配置部3cの凹形状に沿う樹脂壁3d及び3eにより、コア4と感磁素子5aは信頼性の高い絶縁が確保できる。
【符号の説明】
【0016】
1:ケース(モールド樹脂材)
2:バスバー(銅材もしくはアルミ材)
2a:バスバーの板厚
2b:バスバーの長さ
2c:バスバーの巾
2d:バスバーの長さ方向位置決め形状(凹)
2e:バスバーの長さ方向位置決め形状(凸)
3:ホルダー(モールド樹脂材)
3a:コア挿入部
3b:バスバー挿入部
3c:成形金型へのホールド部材位置決め部及び感磁素子配置部
3d:成形金型へのホールド部材位置決め部(コア間隙巾方向)
3e:成形金型へのホールド部材位置決め部(コア間隙巾の垂直方向)
3f:コア外周面4cに沿うホールド部材の樹脂壁
3g:コア間隙部4a及び内周面4bに沿うホールド部材の樹脂壁
3h:コア側面4fに沿うホールド部材の樹脂壁
3i:コア底面4eに沿うホールド部材の樹脂壁
4:コア(磁性材)
4a:コアの間隙部
4b:コアの内周面
4c:コアの外周面
4d:コアの天面
4e:コアの底面
4f:コアの厚み方向で成す側面
5:信号処理部
5a:感磁素子
5b:コネクタ
5c:プリント基板
6:ねじ
j:インサート成形金型内へのアセンブリ挿入方向
k:ホルダーへのバスバー及びコア挿入方向
100:コアホールドユニット
200:電流センサユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9